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特許7410070信号解析装置、及び信号解析結果表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】信号解析装置、及び信号解析結果表示方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20231226BHJP
   H04B 17/15 20150101ALI20231226BHJP
   H04B 17/29 20150101ALI20231226BHJP
   H04J 1/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H04L27/26 100
H04B17/15
H04B17/29
H04J1/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021044118
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143559
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新妻 祐希
(72)【発明者】
【氏名】上沢 貴秋
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118797(JP,A)
【文献】特開2007-258952(JP,A)
【文献】特開2006-186994(JP,A)
【文献】特開2007-315978(JP,A)
【文献】アンリツ株式会社,MX269023A LTE TDD アップリンク測定ソフトウェア 取扱説明書 操作編,M-W3521AW-6.0,第6版,2015年11月20日,https://dl.cdn-anritsu.com/en-au/test-measurement/files/Manuals/Operation-Manual/MS2830A/LTE_TDD_UL_soft_opm_j_6_0.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04B 17/15
H04B 17/29
H04J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM方式で変調された被測定信号を受信する受信部 (21a)と、
前記受信部で受信した前記被測定信号の信号データを算出する信号データ算出部(22)と、
前記信号データに基づき該信号データのパワーを各時間について周波数ごとに算出するパワー算出部(27c)と、
所定のスロットを形成するシンボルを単位とする時間軸とリソースブロックを単位とする周波数軸とによって前記信号データのパワーの分布が、前記信号データの信号種別ごとに互いに異なる複数の色と前記信号種別の前記パワーの値に対応した色の濃淡で表示される表示部(28c)と、を備え
前記表示部は、疑似基地局のスケジュールに含まれた同一スロット内で待ち受けているPUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2の各信号、及び前記各信号以外の前記疑似基地局のスケジュールには含まれていない受信待ち受け範囲外に割り当てられている他の信号のパワーの大きさを前記複数の色の濃淡で表示するとともに、何等の信号も受信してないことを前記複数の色とは異なる色で表示することを特徴とする信号解析装置。
【請求項2】
所定のトリガー条件を満たす場合に所定のタイミングでトリガー信号を出力するトリガー信号出力部(25)と、
前記トリガー信号を受けて、前記信号データから前記所定のタイミングに応じた所定区間のIQデータを抽出する信号抽出部(26)と、をさらに備え、
前記パワー算出部は、前記信号抽出部にて抽出された前記所定区間の信号データについてパワーを算出し、
前記表示部は、前記信号抽出部にて抽出された前記所定区間の信号データについてパワー分布が表示されることを特徴とする請求項に記載の信号解析装置。
【請求項3】
OFDM方式で変調された被測定信号を受信する受信ステップ(S12)と、
前記受信ステップで受信した前記被測定信号の信号データを算出する信号データ算出ステップ(S13)と、
前記信号データに基づき該信号データのパワーを各時間について周波数ごとに算出するパワー算出ステップ(S19)と、
所定のスロットを形成するシンボルを単位とする時間軸とリソースブロックを単位とする周波数軸とによって前記信号データのパワーの分布を、前記信号データの信号種別ごとに互いに異なる複数の色と前記信号種別の前記パワーの値に対応した色の濃淡で表示する表示ステップ(S2)と、を含み、
前記表示ステップは、疑似基地局のスケジュールに含まれた同一スロット内で待ち受けているPUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2の各信号、及び前記各信号以外の前記疑似基地局のスケジュールには含まれていない受信待ち受け範囲外に割り当てられている他の信号のパワーの大きさを前記複数の色の濃淡で表示するとともに、何等の信号も受信してないことを前記複数の色とは異なる色で表示することを特徴とする信号解析結果表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局を模擬して移動端末の試験を行う際、移動信端末から送信される被測定信号を受信して解析し、その解析結果を表示する機能を有する信号解析装置、及び信号解析結果表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話システムにおいては、携帯端末の多機能化に伴い、無線基地局(以下、基地局)との間の無線による通信速度が高速化されており、近年では、例えば、LTE-Advanced方式等を採用している4G(第4世代)のサービスから5G(第5世代)のサービスへ移行するための技術開発が進展しつつある。
【0003】
こうした背景から、携帯電話等の移動体通信端末(以下、移動端末)の新機種が次々と開発されることになるが、新規に開発された移動端末については、当該移動端末が正常に動作するか否かを試験する必要がある。
【0004】
移動端末の試験に用いる装置として、例えば、模擬基地局から信号解析対象の変調信号を被試験対象である移動端末に入力し、操作者が予め指定した各解析項目の信号解析を実行し、当該各解析項目の解析結果を表示部に表示する機能を有する変調信号解析装置が従来から知られている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-104294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された変調信号解析装置では、解析項目として、例えば、変調精度(EVM)が指定された場合には、EVMの解析結果と、EVMに関する正常異常判定の判定結果が同時に表示されるようになっている(段落0056)。一例として、「EVM測定結果」として、EVMの最大値及び平均値と、正常異常判定結果が異常判定であったことを示す「エラー」とが同時に表示された例(図9参照)が挙げられている。
【0007】
特許文献1に記載された変調信号解析装置における信号解析結果の表示制御によれば、操作者は、指定した解析項目の測定値と、当該解析項目が正常か異常かを認識することが可能となる。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された変調信号解析装置では、入力された変調信号の信号データの時間領域と周波数のパワー分布を表示する機能については何等考慮されていなかった。このため、特許文献1に記載された変調信号解析装置では、待ち受け範囲内の信号が正常に受信されているか否か、あるいは待ち受け範囲外の信号が出力されているか等の判断が行えず、どの時間領域でのどのような周波数の受信が原因で異常が発生しているかに関する問題の特定が困難であるという問題点があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、被測定信号の信号データについて、時間領域と周波数のパワー分布を確認しながら、問題の発生原因を容易に特定可能な信号解析装置、及び信号解析結果表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る信号解析装置は、OFDM方式で変調された被測定信号を受信する受信部(21a)と、前記受信部で受信した前記被測定信号の信号データを算出する信号データ算出部(22)と、前記信号データに基づき該信号データのパワーを各時間について周波数ごとに算出するパワー算出部(27c)と、所定のスロットを形成するシンボルを単位とする時間軸とリソースブロックを単位とする周波数軸とによって前記信号データのパワーの分布が、前記信号データの信号種別ごとに互いに異なる複数の色と前記信号種別の前記パワーの値に対応した色の濃淡で表示される表示部(28c)と、を備え、疑似基地局のスケジュールに含まれた同一スロット内で待ち受けているPUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2の各信号、及び前記各信号以外の前記疑似基地局のスケジュールには含まれていない受信待ち受け範囲外に割り当てられている他の信号のパワーの大きさを前記複数の色の濃淡で表示するとともに、何等の信号も受信してないことを前記複数の色とは異なる色で表示する構成を有する。
【0011】
この構成により、本発明の請求項1に係る信号解析装置は、所定のスロットを形成するシンボルを単位とする時間軸とリソースブロックを単位とする周波数軸とによって表示された信号データのパワー分布を確認することで、該信号データの各時間領域における周波数ごとの受信状況を色とその濃淡によって把握でき、異常が発生しているときの当該異常の発生に関する問題の特定が容易になる。
上記パワー分布については、特に、疑似基地局のスケジュールに含まれた同一スロット内で待ち受けている各信号(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2)、及び各信号以外の疑似基地局のスケジュールには含まれていない受信待ち受け範囲外に割り当てられている他の信号のパワーの大きさを複数の色の濃淡で表示するとともに、何等の信号も受信してないことを複数の色とは異なる色で表示するため、待ち受け範囲内の信号が正常に受信されているか、待ち受け範囲外の信号が出力されているかの判断、期待した信号がスケジュール通りに受信されているかの判断が容易に行えるようになる。さらには、上記各信号、及び他の信号とは別に、どのシンボルのどのRBについて何等の信号も受信していない状態であるかについても把握することができる。
【0019】
本発明の請求項に係る信号解析装置は、所定のトリガー条件を満たす場合に所定のタイミングでトリガー信号を出力するトリガー信号出力部(25)と、前記トリガー信号を受けて、前記信号データから前記所定のタイミングに応じた所定区間のIQデータを抽出する信号抽出部(26)と、をさらに備え、前記パワー算出部は、前記信号抽出部にて抽出された前記所定区間の信号データについてパワーを算出し、前記表示部は、前記信号抽出部にて抽出された前記所定区間の信号データについてパワー分布が表示される構成としてもよい。
【0020】
この構成により、本発明の請求項に係る信号解析装置は、トリガー条件を満たす所定区間の信号データのみを対象に解析を行ってその解析結果を表示することができ、表示された信号データのパワー分布を確認することで、該所定区間の信号データに異常が発生しているときには当該異常の発生に関する問題の特定が容易になる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の請求項係る信号解析結果表示方法は、OFDM方式で変調された被測定信号を受信する受信ステップ(S12)と、前記受信ステップで受信した前記被測定信号の信号データを算出する信号データ算出ステップ(S13)と、前記信号データに基づき該信号データのパワーを各時間について周波数ごとに算出するパワー算出ステップ(S19)と、所定のスロットを形成するシンボルを単位とする時間軸とリソースブロックを単位とする周波数軸とによって前記信号データのパワーの分布を、前記信号データの信号種別ごとに互いに異なる複数の色と前記信号種別の前記パワーの値に対応した色の濃淡で表示する表示ステップ(S2)と、を含み、前記表示ステップでは、疑似基地局のスケジュールに含まれた同一スロット内で待ち受けているPUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2の各信号、及び前記各信号以外の前記疑似基地局のスケジュールには含まれていない受信待ち受け範囲外に割り当てられている他の信号のパワーの大きさを前記複数の色の濃淡で表示するとともに、何等の信号も受信してないことを前記複数の色とは異なる色で表示する構成を有している。
【0022】
この構成により、本発明の請求項に係る信号解析結果表示方法は、本方法を適用した信号解析装置によって所定のスロットを形成するシンボルを単位とする時間軸とリソースブロックを単位とする周波数軸とによって表示された信号データのパワー分布を確認することで、該信号データの各時間領域における周波数ごとの受信状況を色とその濃淡で把握でき、異常が発生しているときの当該異常の発生に関する問題の特定が容易になる。
上記パワー分布については、特に、疑似基地局のスケジュールに含まれた同一スロット内で待ち受けている各信号(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2)、及び各信号以外の疑似基地局のスケジュールには含まれていない受信待ち受け範囲外に割り当てられている他の信号のパワーの大きさを複数の色の濃淡で表示するとともに、何等の信号も受信してないことを複数の色とは異なる色で表示するため、待ち受け範囲内の信号が正常に受信されているか、待ち受け範囲外の信号が出力されているかの判断、期待した信号がスケジュール通りに受信されているかの判断が容易に行えるようになる。さらには、上記各信号、及び他の信号とは別に、どのシンボルのどのRBについて何等の信号も受信していない状態であるかについても把握することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、被測定信号の信号データについて、時間領域と周波数のパワー分布を確認しながら、問題の発生原因を容易に特定可能な信号解析装置、及び信号解析結果表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係る基地局シミュレータのブロック構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る基地局シミュレータにおけるトリガー条件の設定画面の構成例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る基地局シミュレータにおけるトリガー条件の設定処理動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の第1の実施形態に係る基地局シミュレータにおけるIQデータの解析処理動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の第1の実施形態に係る基地局シミュレータのリングバッファメモリを用いたIQデータの取得イメージを説明するための概念図であり、(a)はリングバッファメモリにおけるIQデータの格納開始および格納終了とトリガー信号とのタイミングの関係を示し、(b)はIQデータの格納範囲におけるトリガー信号のタイミングを示す。
図6】本発明の第1の実施形態に係る基地局シミュレータにおけるIQデータの解析結果画面の一構成例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る基地局シミュレータの解析対象となる被測定信号のフレーム構成を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る基地局シミュレータにおけるIQデータの解析結果表示処理動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の第2の実施形態に係信号解析装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る信号解析装置、及び信号解析結果表示方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、本発明の信号解析装置を、基地局を模擬して移動端末を試験する基地局シミュレータに適用した例を挙げて説明する。まず、第1の実施形態における基地局シミュレータの構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態における基地局シミュレータ10は、移動端末(User Equipment:UE)70との間で無線周波数信号の送受信を行うことにより、UE70の通信機能を試験するものである。UE70は、所定の通信規格、例えば5G NRと呼ばれる通信規格に対応して無線周波数信号を送受信する携帯電話やモバイル端末等の端末である。
【0028】
基地局シミュレータ10は、制御部20、送受信部21、アナログ信号処理部22、アップリンク(Uplink)レイヤー処理部23、ログデータ生成部24、トリガー検出部25、IQデータメモリ部26、IQデータ解析部27、表示部28、操作部29を備えている。この基地局シミュレータ10は、図示しないCPU、ROM、RAM、FPGA、各種インタフェースが接続される入出力回路等を備えたマイクロコンピュータを含む。すなわち、基地局シミュレータ10は、ROMに予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータを、UE70を試験する基地局シミュレータとして機能させるようになっている。この基地局シミュレータ10は、本発明に係る信号解析装置を構成する。
【0029】
制御部20は、基地局シミュレータ10全体を制御する機能部であり、擬似基地局制御部20a、トリガー設定部20b、解析制御部20c、表示制御部20d、サブキャリア間隔設定部20eを有している。擬似基地局制御部20aは、複数の擬似基地局を管理し、予め設定した試験シナリオに従って各擬似基地局を模擬する無線周波数信号をUE70に送信するとともに、該無線周波数信号を受信したUE70から送信される無線周波数信号(被測定信号)を受信し、該被測定信号に含まれる信号データをIQデータ解析部27で解析させてUE70の通信機能を評価する試験を実行させる制御手段である。この試験に際し、UE70は、例えば、直交周波数多重化(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:OFDM)方式で変調された被測定信号を送信し、基地局シミュレータ10は、この被測定信号を受信部21aで受信し、IQデータ解析部27によりその解析処理を実施するようになっている。
【0030】
トリガー設定部20bは、受信した被測定信号から算出された信号データ(IQデータ)のうちの解析対象となる信号データの取得(記憶)タイミングを指示する条件を設定する制御を行う。この条件を満たす通信状態が整うと、後述するトリガー検出部25からトリガー信号が出力される。トリガー設定部20bにより設定される上記条件を以下においてはトリガー条件と称する。
【0031】
解析制御部20cは、トリガー信号を受け取ることによりIQデータメモリ部26に記憶されたIQデータ(アナログ信号処理部22により算出されたもの)をIQデータ解析部27により解析させる解析制御を実行する。表示制御部20dは、表示部28に対し、IQデータの解析結果等、各種情報を表示させる表示制御を行う。
【0032】
サブキャリア間隔設定部20eは、被測定信号が属する通信規格、例えば、5G NRのフレーム構成(図7参照)におけるサブキャリア間隔の設定制御を行う機能部である。サブキャリア間隔設定部20eは、例えば、15kHz、30kHz、60kHz、120kHz、240kHz等の間隔でサブキャリア間隔を設定できるようになっている。
【0033】
受信部21aは、UE70が基地局シミュレータ10に対して信号(被測定信号)を送信するアップリンク(Uplink)経路に対応して設けられ、該信号(アップリンクデータ)である無線周波数信号を受信する機能部である。
【0034】
UE70が基地局シミュレータ10から信号を受信するダウンリンク(Downlink)経路に対応して送信部21bが設けられる。送信部21bは、制御部20の擬似基地局制御部20aの制御下で後述する基地局模擬演算部(図示せず)が生成したダウンリンクデータであるI相成分(同相成分)及びQ相成分(直交成分)のベースバンドデータ(以下、単に「IQデータ」という)をUE70に対して送信する。UE70は、送信部21bから送信されたベースバンドデータを受信すると、該受信に対する応答信号としてのベースバンドデータを基地局シミュレータ10に対して上述した被測定信号として送信する。
【0035】
送信部21bと受信部21aとによって送受信部21が構成されている。送受信部21は、RF(Radio Frequency)信号を介してUE70と通信するようになっている。
【0036】
アナログ信号処理部22は、受信部21aで受信したUE70からのアップリンクデータが含まれるRF信号を被測定信号として入力し、該被測定信号をアナログ信号からデジタル信号に変換したIQデータを算出する演算処理機能部である。アナログ信号処理部22は、後述のアップリンクレイヤー処理部23とともに、本発明の信号データ算出部を構成する。
【0037】
アップリンクレイヤー処理部23は、アナログ信号処理部22により算出された信号データの各レイヤーの信号処理を行う部分である。アップリンクレイヤー処理部23は、PHY層(Physical Layer、物理層)の処理を行うPHY処理部23a、その上位のMAC層(Medium Access Control Layer、媒体アクセス制御層)の処理を行うMAC処理部23b、その上位のRLC層(Radio Link Control Layer、無線リンク制御層)の処理を行うRLC処理部23c、その上位のPDCP層(Packet Data Convergence Protocol Layer、パケットデータ収束層)の処理を行うPDCP処理部23d、その上位のRRC層(Radio Resource Control Layer、無線リソース制御層)の処理を行うRRC処理部23eを備えている。
【0038】
アップリンクレイヤー処理部23において、PHY処理部23aは、アナログ信号処理部22から入力する信号データに対してPHY層の信号処理を施して該信号データをMAC処理部23bに入力する。PHY層の信号処理に係る物理層レベルのチャネル、制御情報、受信ステータス情報については例えば以下に示すものがある。
【0039】
まず、チャネルとしては、UL-RACH(UpLink-Random Access CHannel:アップリンク用ランダムアクセスチャネル)、UL-SCH(UpLink Shared CHannel:アップリンク用データチャネル)、PRACH(Physical Random Access CHannel:ランダムアクセス用物理チャネル)、PUSCH(Physical Uplink Shared CHannel:アップリンク用物理データチャネル)、PUCCH(Physical Uplink Control CHannel:アップリンク用物理制御チャネル)などが挙げられる。
【0040】
また、制御情報としては、UCI(Uplink Control Information:アップリンク用制御情報)、SR(Scheduling Request:スケジュール要求信号)、CSI(Channel State Information:チャネルステータス情報)、HARQ-ACK(Hybrid Automatic Repeat reQuest ACKnowledgement:要求応答信号)、SRS(Sounding Reference Signal:サウンディング参照信号)等が用いられる。さらには、SRが挿入されたUCIであるUCI(SR)、CSIが挿入されたUCIであるUCI(CSI)、HARQ-ACKが挿入されたUCIであるUCI(HARQ-ACK)も用いられる。
【0041】
また、受信ステータス情報としては、DTX(Discontinuous Transmission:信号無入力状態情報)、CRC NG(CRC(Cyclic Redundancy Check:誤り検出用の冗長巡回符号)失敗情報)、CRC OK(CRC成功情報)、Decode NG(復号化失敗情報)、Decode OK(復号化成功情報)等が挙げられる。
【0042】
図1に示すPHY処理部23aについては、上述したチャネル、制御情報、受信ステータス情報の処理に対応できる構成であることが開示されている。また、PHY処理部23aがデマルチプレクサ(DEMUX)を有し、PUSCHからのアップリンクデータをUL-SCHとUCIの2つに分離して送出する構成についても開示されている。
【0043】
PHY処理部23aが上述したチャネル、制御情報、受信ステータス情報の処理に対応可能な構成を有することで、基地局シミュレータ10では以下に示す試験シナリオ1~3等の種々の試験シナリオによる試験を行うことが可能である。
試験シナリオ1:
擬似基地局から試験用の信号をダウンリンクデータとしてUE70の送信し、UE70から、例えば、UCI(SR)、UCI(CSI)、UCI(HARQ-ACK)の応答があったことを確認する。
試験シナリオ2:
擬似基地局から試験用の信号をダウンリンクデータとしてUE70の送信し、UE70から、例えば、DTX、CRC NG、CRC OK、あるいはDecode NG、Decode OKのうちのいずれの応答があったにより受信ステータスを把握する。
試験シナリオ3:
試験シナリオ1、2に基づく試験をそれぞれのチャネルレベルで実行する。
【0044】
MAC処理部23bは、PHY処理部23aから入力するPHY層の各処理信号をMAC層の信号として処理し、RLC処理部23cに渡す。RLC処理部23cは、MAC処理部23bから入力するMAC層の各処理信号をRLC層の信号として処理し、PDCP処理部23dに渡す。PDCP処理部23dは、RLC処理部23cから入力するPLC層の各処理信号をPDCP層の信号として処理し、RRC処理部23eに渡す。RRC処理部23eは、PDCP処理部23dから入力するPDCP層の各処理信号をPRC層の信号として処理する。
【0045】
アップリンクレイヤー処理部23において、PHY処理部23a、MAC処理部23b、RLC処理部23c、PDCP処理部23d、RRC処理部23eにより処理された各レイヤーの信号は、ログデータ生成部24に送られる。このうちのPHY処理部23a、MAC処理部23bにより処理された各レイヤーの信号は、トリガー検出部25にも送られる。
【0046】
このようにアップリンクレイヤー処理部23は、所定の通信規格に対応して各レイヤーの通信プロトコル処理を行うよう構成され、アナログ信号処理部22からの信号データを処理してログデータ生成部24に出力するとともに、PHY層、MAC層の信号データについてはトリガー検出部25にも出力するようになっている。
【0047】
ログデータ生成部24は、アップリンクレイヤー処理部23より出力された信号データからログデータを生成するようになっている。ログデータ生成部24が生成したログデータには、時刻情報、及び識別子情報を含んでいる。ログデータ生成部24が生成したログデータは、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)やフラッシュメモリ等の大容量記憶媒体で構成されるログデータ記憶部(図示せず)に記憶されるようになっている。
【0048】
ログデータ生成部24は、IQ解析パラメータ生成部24aを有している。IQ解析パラメータ生成部24aは、上記の如く生成された信号データに基づいてIQ解析パラメータを生成し、該生成したIQ解析パラメータを後述するログデータ表示部28aに送る。
【0049】
トリガー検出部25は、アップリンクレイヤー処理部23のPHY処理部23a、及びMAC処理部23bから入力されるPHY層、MAC層の信号データに基づいて当該PHY層、MAC層の上述したチャネル、制御情報、受信ステータス情報が関与する通信状態を監視し、予め設定されているトリガー条件を満たす通信状態が発生したか否かを判定(検出)する機能を有している。トリガー条件は、例えば、解析対象とすべきチャネル、信号(例えば、PHY層、MAC層に限る)種別、及び受信ステータスとにより構成されている。トリガー条件は、例えば、制御部20に設けられている擬似基地局制御部20aの管理下にある複数の擬似基地局(セル)を対象にセルごとに設定可能である。トリガー条件は、制御部20を構成するトリガー設定部20bの制御により、後述する表示部28のトリガー設定表示部28bに表示される設定画面を用いて設定するようになっている。
【0050】
トリガー条件を構成する情報のうち、解析対象とするセルは、擬似基地局制御部20aの管理下にある複数の擬似基地局(セル)の中から選択的に指定することができる。解析対象とする信号若しくはチャネルは、PHY処理部23aの構成の説明に際して挙げたチャネルあるいは制御情報の中から、ULSCH、UCI(SR)、UCI(CSI)、UCI(HARQ-ACK)、PRACHあるいはSRSのいずれかを選択的に指定することができる。さらに受信ステータスについても、前述したDTX、CRC NG、CRC OK、もしくはDecode NG、Decode OKの中から選択的に指定することができる。トリガー条件には、解析対象とすべき信号の受信トータル電力(total Power)をさらに含む構成としてもよい。
【0051】
トリガー検出部25は、トリガー条件を満たす通信状態が発生したことを検出した場合、当該通信状態下の信号データを記憶することを指示するトリガー信号をIQデータメモリ部26に対して送出する機能を合わせ持っている。トリガー検出部25は、本発明のトリガー信号出力部を構成する。
【0052】
IQデータメモリ部26は、アナログ信号処理部22により算出された信号データを格納するものであり、例えば、リングバッファメモリにより構成される。IQデータメモリ部26は、トリガー検出部25からトリガー信号が入力されたときは、リングバッファメモリに対し、アナログ信号処理部22により算出された信号データ(IQデータ)が格納される。
【0053】
IQデータメモリ部26は、リングバッファメモリで構成されることにより、トリガー設定時には、例えば、図5(a)に示すように、トリガー信号が発生(入力)する前に当該バッファメモリへのIQデータの書き込みが開始され、トリガー信号発生(入力)時には、指定された範囲の事前データを上書きしない範囲でIQデータの書き込みが停止される構造となっている。かかる構造によって、IQデータメモリ部26では、トリガー信号発生時よりも前のIQデータが取得できることになる。
【0054】
ここでトリガー信号発生時のタイミングから取得するIQデータの範囲は、例えば、図5(b)に示すように、トリガー信号よりも前の時間(Trigger Offset O)とデータ取得時間(Data length L)とによって決まる。図5(b)においては、Trigger Offset OとData length Lとの比率は1対6であり、データ取得時間(Data length L)とその5倍の時間の加算時間に対応するIQデータが取得される例を挙げている。このように、IQデータメモリ部26は、トリガー信号を受けて、信号データから所定のタイミングに応じた所定区間のIQデータを抽出する機能を有しており、本発明の信号抽出部を構成する。また、IQデータメモリ部26は、アナログ信号処理部22により算出された信号データをリングバッファメモリに記憶させるものであり、本発明の記憶部を構成している。
【0055】
IQデータ解析部27は、IQデータメモリ部26に記憶されたIQデータを、解析制御部20cの制御下で解析処理する処理機能部であり、IQデータ読出し部27a、パラメータ読み込み部27b、データ解析部27cを有している。IQデータ読出し部27aは、IQデータメモリ部26に記憶されたIQデータを読み出す処理を行う。パラメータ読み込み部27bは、ログデータ生成部24のIQ解析パラメータ生成部24aが生成したIQ解析パラメータを、IQデータ読出し部27aによるIQデータの読出しに合わせて読み込む処理を実行する。データ解析部27cは、IQデータメモリ部26から読み出したIQデータをIQ解析パラメータに基づいて解析する処理を実行する。本実施形態において、データ解析部27cは、受信部21aで受信され、アナログ信号処理部22によって算出された被測定信号の信号データに基づき該信号データのパワーを各時間について周波数ごとに算出するパワー算出機能を有して構成されている。IQデータ解析部27とIQデータメモリ部26とは、有線ケーブルにより接続されていることが好ましい。
【0056】
表示部28は、ログデータ表示部28a、トリガー設定表示部28b、解析結果表示部28cを有している。ログデータ表示部28aはログを表示するための表示画面を表示する部分であり、トリガー設定表示部28bはトリガー条件を設定するための設定画面30(図2参照)を表示する部分であり、解析結果表示部28cは、解析結果画面40(図6参照)を表示する部分である。本実施形態において、解析結果表示部28cは、データ解析部27cの上述したパワー算出機能による信号データのパワーの算出結果に基づき、時間軸と周波数軸とによって当該信号データのパワーの分布を表示する機能を有して構成されている。解析結果表示部28c、解析結果画面40は、本発明の表示部に相当するものである。
【0057】
制御部20において、表示制御部20dは、ログを表示するための表示画面を生成し、操作部29の操作内容に従って、ログデータ記憶部からログデータを読み出し、それに含まれる情報に基づいてログをログデータ表示部28aに表示するようになっている。表示制御部20dはまた、トリガー条件を設定するための設定画面30(図2参照)を生成し、操作部29の操作内容に従って当該設定画面30を読み出してトリガー設定表示部28bに表示するようになっている。さらに表示制御部20dは、IQデータ解析部27によるIQデータの解析結果を表示するための解析結果画面40(図6参照)を生成し、操作部29の操作内容に従って当該解析結果画面40を読み出して解析結果表示部28cに表示するようになっている。
【0058】
操作部29は、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、試験条件等を表示するディスプレイ、これらを制御する制御回路やソフトウェア等で構成され、各試験条件の入力や、表示部28の表示内容を設定するため、試験者が操作するものである。
【0059】
上述した構成を有する基地局シミュレータ10の動作について以下に説明する。上述したように、この基地局シミュレータ10では、擬似基地局制御部20aの制御下で試験シナリオに従って実施される試験に際し、UE70からのアップリンクデータが含まれるRF信号(被測定信号)が受信部21aにより受信され、アナログ信号処理部22での信号処理によってIQデータを含む信号データが算出される。
【0060】
アナログ信号処理部22で算出された信号データは、アップリンクレイヤー処理部23に入力されて各層の信号処理が行われ、そのうちのPHY層、及びMAC層の信号処理後信号データがトリガー検出部25に入力される。アナログ信号処理部22で算出された信号データ(IQデータ)はまた、IQデータメモリ部26に入力される。
【0061】
このようなアップリンクの信号処理機能を有する基地局シミュレータ10において、アナログ信号処理部22からIQデータメモリ部26に入力される信号データの解析処理を行うためには、IQデータメモリ部26における解析対象のIQデータの取得動作を起動するトリガー信号を発出させるトリガー条件を設定する必要がある。
【0062】
基地局シミュレータ10におけるトリガー条件の設定処理動作について図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0063】
基地局シミュレータ10でトリガー条件を設定するためにはまず、操作部29で所定のトリガー設定開始操作を行う。このトリガー設定開始操作により、トリガー設定部20bは、表示部28のトリガー設定表示部28bにトリガー条件の設定画面30を表示させる(ステップS1)。
【0064】
設定画面30は、例えば、図2に示すように、セル指定ツール31、トリガータイプ指定ツール32、受信ステータス指定ツール33、OKボタン34、キャンセルボタン35を有して構成されている。セル指定ツール31は、IQデータの解析対象の擬似基地局(セル)を選択的に指定するためのものである。トリガータイプ指定ツール32は、解析対象の信号種別(トリガータイプ)を選択的に指定するためのものである。受信ステータス指定ツール33は、解析対象の信号の通信状態(受信ステータス)を選択的に指定するためのものである。OKボタン34は設定開始を指示するツールであり、キャンセルボタン35は設定のキャンセルを指示するツールである。
【0065】
ステップS1で設定画面30が表示された後、トリガー設定部20bは、当該設定画面30上でセル指定ツール31による解析対象のセルの指定を受け付ける(ステップS2)。セルの選択肢としては、擬似基地局制御部20aの管理下にある全ての擬似基地局が対象となる。
【0066】
次いで、トリガー設定部20bは、設定画面30上でトリガータイプ指定ツール32によるトリガータイプの指定を受け付ける(ステップS3)。トリガータイプの選択肢は、例えば、ULSCH、UCI(SR)、UCI(CSI)、UCI(HARQ-ACK)、PRACHあるいはSRSのいずれかが対象となる。
【0067】
引き続きトリガー設定部20bは、設定画面30上で受信ステータス指定ツール33による解析対象の信号の受信ステータスの指定を受け付ける(ステップS4)。通信状態の選択肢としては、例えば、DTX、CRC NG、CRC OK、もしくはDecode NG、Decode OKなどが存在する。
【0068】
さらにトリガー設定部20bは、設定画面30上のOKボタン34が押下されたか否かを監視し、OKボタン34が押下されることにより、上記ステップS2~S4で指定を受け付けた各項目を含むトリガー条件を設定し(ステップS5)、一連のトリガー条件設定処理を終了する。
【0069】
図2は、解析対象のセルが「CELL#1」の識別子を有するセルであり、トリガータイプが「UL-SCH」であり、受信ステータスが「CRC NG」であるトリガー条件設定時の設定画面30の表示例を示している。
【0070】
このようにして設定されたトリガー条件は、トリガー設定部20bからトリガー検出部25に渡される。トリガー検出部25は、トリガー設定部20bから取得したトリガー条件を満たす通信状態か否かを監視する。トリガー条件を満たす通信状態であることを検出すると、トリガー検出部25は、所定のタイミングでIQデータメモリ部26に対してトリガー信号を出力する。
【0071】
図2に示す設定画面30上で設定されたトリガー条件によれば、基地局シミュレータ10では、「CELL#1」の識別子を有するセルとUE70との模擬通信に際し、UE70からのアップリンクデータのうちのUL-SCHを使用する信号データがCRC NGとなったときにトリガー信号が出力される。
【0072】
IQデータメモリ部26は、トリガー信号を受け取ると、アナログ信号処理部22で算出された信号データから所定区間(上記所定のタイミングに対応する)のIQデータを解析対象として取得(記憶)するようになっている。そして、IQデータ解析部27は、IQデータメモリ部26が記憶しているIQデータの解析処理を実施する。
【0073】
次に、基地局シミュレータ10におけるIQデータの解析処理動作について図4に示すフローチャートを参照して説明する。ここで基地局シミュレータ10は、擬似基地局制御部20aの制御下で試験シナリオに従ってUE70の試験を実施しており、UE70との間で無線周波数信号の送受信を行っているものとする。基地局シミュレータ10におけるIQデータの解析処理は、当該試験に際し、UE70から基地局シミュレータ10に対して送出されるアップリンクデータを対象に行われることを前提としている。
【0074】
IQデータの解析処理を行うに当たって、トリガー検出部25は、トリガー設定部20bにより設定されたトリガー条件を取得し(ステップS11)、保持している。
【0075】
その後、擬似基地局制御部20aの制御によりUE70の試験が開始されると、UE70との間で無線周波数信号の送受信が行われ、UE70からのアップリンクデータが受信部21aで受信され(ステップS12)、アナログ信号処理部22に入力される。
【0076】
次いで、アナログ信号処理部22は、受信部21aから入力されるアップリンクデータを被測定信号として入力し、該被測定信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、信号データ(IQデータ)を算出する演算処理を実行する(ステップS13)。
【0077】
ステップS13での演算処理により算出された信号データは、アップリンクレイヤー処理部23、及びIQデータメモリ部26に送出される(ステップS14)。
【0078】
アップリンクレイヤー処理部23は、アナログ信号処理部22からの信号データを対象にPHY層、MAC層、RLC層、PDCP層、RRC層の処理を順次行なう(ステップS15)。そして、処理後の信号データをログデータ生成部24に送出するとともに、そのうちのPHY層、MAC層の信号データについてはトリガー検出部25に送出する。
【0079】
トリガー検出部25は、入力するPHY層、MAC層の信号データと既に取得(ステップS11参照)しているトリガー条件とを照合しつつ、信号データの通信状態が該トリガー条件を満たすか否かを判定する(ステップS16)。ここで信号データの通信状態がトリガー条件を満たしていないと判定された場合(ステップ16でNO)、ステップS12以降の処理を続行する。
【0080】
これに対し、信号データの通信状態がトリガー条件を満たしていると判定された場合(ステップ16でYES)、トリガー検出部25は、IQデータメモリ部26に対し、所定のタイミングでトリガー信号を出力する(ステップS17)。
【0081】
IQデータメモリ部26は、所定の記憶容量を有するリングバッファメモリで構成され、アナログ信号処理部22から入力する信号データのうちの上記記憶容量分の最新の信号データを常に記憶(確保)するようになっている。IQデータメモリ部26は、トリガー検出部25が出力するトリガー信号を受け取ると、確保してある信号データから上述した所定のタイミングに対応する所定区間のIQデータを抽出する(ステップS18)。
【0082】
次いで、IQデータ解析部27では、IQデータ読出し部27aが、IQデータメモリ部26から所定区間のIQデータを読み出し、データ解析部27cが、読み出したIQデータの解析処理を実行する(ステップS19)。ここでデータ解析部27cは、読み出したIQデータを、パラメータ読み込み部27bがログデータから読み込んだIQ解析パラメータに基づいて解析するようになっている。
【0083】
ステップS19におけるIQデータの解析処理の終了後、表示制御部20dは、当該IQデータの解析結果を表示部28に表示する解析結果表示処理を実行する(ステップS20)。具体的に、この信号解析装置1では、上記ステップS19においてデータ解析部27cが被測定信号の信号データのパワーを、後述するフレーム構成(図7参照)における、例えばOFDMシンボルと周波数(リソースブロック(RB))に関連付けて算出しており、ステップS20において、表示制御部20dは、これら信号データのパワー分布を時間軸と周波数軸に関連付けて表示部28の解析結果表示部28cに表示させる(図6参照)ように制御する。
【0084】
ステップS20におけるIQデータの解析結果の表示中、所定の表示終了操作が行われることにより、表示制御部20dは解析結果画面40の表示処理を終了し、擬似基地局制御部20aは上記一連のIQデータ解析処理を終了させるように制御する。
【0085】
図2に示す設定画面30を用いてトリガー条件を設定し、図4に示すフローチャートに沿ったIQデータ解析処理を実行する基地局シミュレータ10によれば、UE70からのアップリンクデータのPHY層の信号処理について上述した試験シナリオ1~3等によるIQデータの解析を行うことが可能となる。
【0086】
なお、本実施形態では、IQデータメモリ部26で抽出される信号データ(トリガー信号の出力に対応して記憶される信号)は物理層(PHY層)の信号データであり、トリガー設定部20bで設定するトリガー条件はトリガータイプ、受信ステータスを含む内容である例を挙げているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、トリガー条件については、擬似基地局制御部20aが配下の各擬似基地局に対応して管理している情報、例えば、アクトタイム(当該擬似基地局の通信動作を起動するための期間を示す)を含む情報形態であってもよい。
【0087】
図4におけるステップS19、S20の処理動作についてさらに詳しく説明する。まず、ステップS19におけるIQデータの解析処理について一例を挙げてより詳細に説明する。ステップS19において、基地局シミュレータ10のIQデータ解析部27では、アナログ信号処理部22で算出され(図4のステップS13参照)、トリガー信号を用いてIQデータメモリ部26に格納された被測定信号の信号データをIQデータ読み出し部27aによって読み出し、該読み出した信号データをデータ解析部27cによって解析する処理を実施する。
【0088】
その際、IQデータ解析部27では、パラメータ読み込み部27bが解析対象となるパラメータを読み出す一方で、データ解析部27cが、IQデータ読み出し部27aによって読み出された信号データのうちの当該パラメータに相当する信号データのパワーを、例えば、各時間について周波数ごとに算出するパワー算出処理を実施する。
【0089】
パワー算出処理の対象となる信号データ(パラメータ)としては、それぞれが擬似基地局(擬似基地局制御部20a)によって送信され、基地局シミュレータ10が同一スロット内で待ち受けている、例えば、PUSCH(アップリンク用物理データチャネル)、PUCCH(アップリンク用物理制御チャネル)などの信号データが挙げられる。PUSCH、PUCCHなどの信号データは、擬似基地局が持つスケジューリング機能によりスケジュールが組まれ、該スケジュールに従って当該擬似基地局が送信するものである。PUCCHについては複数種別が想定されており、ここでは例えば、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2が用意されているものとする。なお、パワー算出処理においては、この他、擬似基地局側でのスケジュールには含まれてはいない(受信待ち受け範囲外に割り当てられている)信号データ(以下、他の信号データ(「Other」)と呼称する)が対象となる場合がある。擬似基地局がスケジュールにはない信号データを誤送信した場合などには、当該信号データが「Other」という解析項目名でパワーの測定が行われることとなる。
【0090】
図4のステップS19におけるデータ解析部27cでの上記パワー算出処理の終了後、表示制御部20dは、当該パワー算出処理の処理結果、すなわち信号データの解析結果に基づき、時間軸と周波数軸とによって当該信号データのパワーの分布を解析結果表示部28cに表示させる表示制御(図4のステップS20参照)を実施する。
【0091】
パワー分布の表示には、例えば、図6に示す表示形態を有する解析結果画面40が用いられる。解析結果画面40は、特に、解析された種々の信号データ(パラメータ)のパワーの分布を、時間軸と周波数軸とによって表示するための機能構成を有している。以下にその構成について説明する。
【0092】
図6に示すように、解析結果画面40は、解析項目選択タブ41と、解析結果表示領域42とを有している。解析項目選択タブ41は、複数の解析項目にそれぞれ対応して複数個設けられ、所望の解析項目を選択するために押下操作するものである。この例において、解析項目選択タブ41は、解析項目として、それぞれ、PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、パワーMapを選択するためのPUSCHタブ41a、PUCCH0タブ41b、PUCCH1タブ41c、PUCCH2タブ41d、パワーMapタブ41e等の複数のタブを有している。このうち、パワーMapタブ41eは、データ解析部27cによって算出された上記各データ信号についてのパワー(解析結果)分布を表示させるために用いるものである。
【0093】
解析結果表示領域42は、解析項目選択タブ41のうちの選択的に押下操作されたタブに対応する解析項目の解析結果を表示する領域である。図6に示す解析結果画面40においては、特に、パワーMapタブ41eが押下操作されたときの解析結果表示領域42におけるパワーMap画面43の表示例が開示されている。
【0094】
図6に示すように、パワーMap画面43は、パワーMap表示領域44、色分類表示領域45、濃淡調整ツール46を有している。パワーMap表示領域44は、解析された各種の信号データ(パラメータ)のパワーの分布を、時間軸と周波数軸とによって表示するための領域である。図6に示す解析結果画面40において、パワーMap表示領域44は、横軸が時間軸、縦軸が周波数軸の設定となっている。具体的に、この例においては、時間軸はOFDM方式の無線フレーム構成における所定のスロットを形成するシンボルを単位とし、周波数軸は当該無線フレーム構成におけるリソースブロックを単位とするマップ(Map)構造を採用している。
【0095】
本実施形態に係る基地局シミュレータ10が解析対象とする、例えば、5G NR規格での信号データのフレーム構成を図7に示している。図7に示すように、5G NRにおいては、複数のOFDMシンボルにより、スロット、サブフレーム、フレームが構成される。スロットは、サブキャリア間隔にかかわらず14個のOFDMシンボルで構成され、サブフレームは1ms区間として、フレームはサブフレーム10個で定義される。
【0096】
図6に示す解析結果画面40のパワーMap画面43におけるパワーMap表示領域44は、時間軸方向に14個のOFDMシンボル(「Sym」)が割り当てられている。また、周波数方向においては、サブキャリア間隔に拘わらず複数個の連続するサブキャリアによりリソースブロック(「RB」)が割り当てられている。RBの個数は、擬似基地局で事前に設定されるシステム帯域に応じて決定され、例えば、最大273個までの設定が許容されるようになっている。
【0097】
また、図6に示す解析結果画面40のパワーMap画面43において、色分類表示領域45は、上述したパワーMap表示領域44のパワーMap上にマッピングされるパラメータごとの色分類を表示する領域である。この例においては、符号S、C0、C1、C2、及びOの五種類のパラメータにそれぞれ対応する縦長の5つの色帯45a、45b、45c、45d、45eが表示されている。ここで符号S、C0、C1、C2は、PUSCHタブ41a、PUCCH0タブ41b、PUCCH1タブ41c、PUCCH2タブ41dによってそれぞれ選択可能なPUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2の各パラメータに対応している。また、符号Oは、擬似基地局側でのスケジュールには含まれてはいない他の信号データ(「Other」)に対応している。
【0098】
符号S、C0、C1、C2、及びOにそれぞれ対応する色帯45a、45b、45c、45d、45eは、互いに異なる第1の色、第2の色、第3の色、第4の色、第5の色で表示されるようになっている。また、これらの色帯45a、45b、45c、45d、45eは、それぞれの色ごとに、例えば、上方に行くにしたがって色が薄く、下方に行くにしたがって色が濃くなるように濃淡をつけて表示されるようになっている。各色帯45a、45b、45c、45d、45eにおける色の濃淡は、当該各色が割り振られたパラメータ(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、Other)ごとのパワーの値を反映したものである。具体的に、色帯45a、45b、45c、45d、45eは、符号S、C0、C1、C2、及びOでそれぞれ識別されるパラメータ(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、Other)が、例えば、薄い色から濃い色になるほど(下に向かうほど)パワーの値が小さくなることを表示できる構造となっている。
【0099】
色帯45a、45b、45c、45d、45eには、それぞれ、最上部、最下部、最上部と最下部との間の適宜な高さ位置の三箇所の位置に、符号S、C0、C1、C2、及びOで識別されるパラメータ(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、Other)のパワーの値を指すパワー指示バー45f、45g、45hが併せ表示されている。パワー指示バー45f、45gは、符号S、C0、C1、C2、及びOで識別されるパラメータ(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、Other)のパワーの最大値、最小値をそれぞれ示している。パワー指示バー45hは、パラメータ(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、Other)のパワーの基準値を示すものである。図6の例においては、パラメータ(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、Other)のパワーの基準値は-52.00(dBm/RB)であり、最大値、最小値は、それぞれ、基準値よりも5(dBm/RB)大きい-47.00(dBm/RB)、基準値よりも50(dBm/RB)小さい大-102.00(dBm/RB)となっている。
【0100】
図6に示す解析結果画面40のパワーMap画面43において、濃淡調整ツール46は、符号S、C0、C1、C2、及びOでそれぞれ識別されるパラメータ(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、Other)のパワーの最小値、最大値を設定することにより各色の濃淡を調整するものである。この例では、最大値設定ツール46a、最小値設定ツール46bを用いて、上述した基準値を起点として「5」dBm/RBより大きく、かつ、「50」dBm/RBより小さい濃淡領域を指定する例が開示されている。
【0101】
次に、上記構成を有する解析結果画面40を用いた解析結果表示処理(図4におけるステップS20の処理に相当)動作について、図8に示すフローチャートを参照してより詳しく説明する。
【0102】
この表示処理においては、基地局シミュレータ10が解析対象とする信号(UE70、及び擬似基地局から送出される被測定信号)は、例えば、5G NR規格の信号であって、LDPC(Low Density Parity Check)符号を用いて符号化された信号であるものとする。この信号は、例えば、図7に示すフレーム構成を有し、時間軸方向には14個周期でOFDMシンボル(以下、シンボル)が繰り返し現れ、それぞれのシンボルごとに周波数方向に複数のRB(リソースブロック)を有する構成となっている。
【0103】
この表示処理に先立って、基地局シミュレータ10のデータ解析部27cでは、例えば、図4のステップS19において、上述したフレーム構成を有する被測定信号のパワーを、各時間(シンボル)について周波数(RB)ごとに算出する処理(解析処理)を実行する。ここで解析対象とされる信号データは、上述したように、トリガー検出部25が発生するトリガー信号によってIQデータメモリ部26に格納された信号データ、すなわち、予め設定されたトリガー条件を満たす信号データであり、信号種別(解析項目)としては、PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、「Other」などの各パラメータが挙げられる。データ解析部27cでの上記解析処理によって算出された値、すなわち、各解析項目の解析結果データは、例えば、上述したマイクロコンピュータの記憶媒体(メモリ)に記憶されるようになっている。
【0104】
ステップS19における解析処理の終了後、表示制御部20dは、ステップS20において、上述した複数の解析項目を含む解析結果画面40(基本画面)を解析結果表示部28cに表示させるとともに、所望の解析項目の選択を受け付けつつ当該選択された解析項目の解析結果を含む表示形態の解析結果画面40へと更新表示する表示制御を実施する。このときの表示制御は、図8に示すフローチャートにしたがって実施される。
【0105】
図8に示す解析結果表示制御が開始されると、表示制御部20dはまず、図4のステップS19で算出された複数の解析項目を含む基本画面データ(画像データ)を例えばメモリから読み出し、該基本画面データに基づいて基本画面としての解析結果画面40を表示させる制御を実施する(ステップS21)。基本画面は、例えば、図6に示す解析結果画面40において、解析項目選択タブ41が表示され、解析結果表示領域42には特定の解析項目に関する解析結果が表示されていない状態の画面構成を有するものである。
【0106】
上記ステップS21での解析結果画面(基本画面)40の表示中、表示制御部20dは、操作者による所望の解析項目の選択操作を受け付ける。ここで操作者は、解析結果画面40上で解析項目選択タブ41を構成する、例えば、PUSCHタブ41a、PUCCH0タブ41b、PUCCH1タブ41c、PUCCH2タブ41d、パワーMapタブ41e等の各タブを用いて、それぞれ、PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、パワーMapなどのうちの所望の解析項目のタブ表示の選択操作を行うことができ、表示制御部20dは、これら各タブの選択操作を受け付ける。
【0107】
ここで例えば、パワーMapタブ41eの押下による「パワーMap」の選択操作を受け付けると(ステップS22)、表示制御部20dは、PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、Otherのうちの「パワーMap」の生成に係る全てのパラメータの解析結果データをメモリから読み出し、該解析結果データに基づいて各パラメータの解析結果を表示する制御を行う。
【0108】
具体的に、表示制御部20dは、例えば、PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、及び「Other」などの各信号データのパワーの値(測定値)をメモリから読み出し、解析結果画面40における解析結果表示領域43中、パワーMap表示領域44内に、それぞれの信号ごとに時間軸と周波数軸とにより当該各信号のパワー分布を図6に示すような態様で表示させるように制御する(ステップS23)。
【0109】
図6に示すように、パワーMap表示領域44に対するパワー分布の表示態様においては、横軸は時間軸であり、♯00から♯13の符号によってそれぞれ識別される連続する14個のシンボルによって構成されている。これに対して、縦軸は周波数軸であり、♯000、♯001、♯002、・・・の符号によってそれぞれ識別される連続する複数のRBによって構成されている。このように、パワーMap表示領域44は、横軸を時間軸、縦軸を周波数軸とするMAP領域を有している。ステップS23において、表示制御部20dは、上述した各信号データについてシンボルごとの各RBにおけるパワーの値を、当該各データに予め関連づけられた互いに異なる色と該色の濃淡によって、パワーMap表示領域44内の時間軸と周波数軸からなMap上に展開して(パワー分府として)表示させる表示制御を実施する。
【0110】
パワーMap表示領域44に対する上記パワー分布の表示制御に合わせて、表示制御部20dは、解析結果画面40における色分類表示領域45に対しては、色帯45a、45b、45c、45d、45eを互いに異なる色によって表示する。これら色帯45a、45b、45c、45d、45eは、それぞれ、PUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、及び「Other」に対応したものであり、それぞれの色ごとに、例えば、上方に行くにしたがって色が薄く(パワーが大きい)、下方に行くにしたがって色が濃く(パワーが小さく)なるような形態で表示されるようになっている。
【0111】
さらに表示制御部20dは、解析結果画面40におけるパワーMap表示領域44、及び色分類表示領域45の各領域外に濃淡調整ツール46を表示させるようになっている。この解析結果画面40において、濃淡調整ツール46は、最大値設定ツール46a、最小値設定ツール46bを用いて、基準値よりも「5」dBm/RBより大きく、「50」dBm/RBより小さい濃淡調整時の状態で表示されている。
【0112】
上記ステップS23でのMAP領域に対するPUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2、及び「Other」のパワー分布の表示制御の実行中、表示制御部20dは、例えば、操作部29で表示終了操作が行われたか否かを監視する(ステップS24)。ここで表示終了操作が行われていないと判定された場合(ステップS24でNO)、表示制御部20dは、ステップS23でのパワー分布の表示制御を続行する。これに対して、表示終了操作が行われたと判定された場合(ステップS24でYES)には、上記一連の表示制御を終了する。
【0113】
次に、上記ステップS23における「パワーMap」選択時の解析結果画面40の具体的表示形態について、図6を参照してさらに詳しく説明する。図6に示す解析結果画面40において、パワーMap表示領域44には、時間軸方向の♯00~♯07までの各シンボルについては、周波数方向の連続する複数のRB(当該スクロール状態で表示可能な全てのRB)がPUSCH(符号Sに相当)に対応する第1の色で表示されている。周波数方向の連続する複数のRBについては、スクロールバー44eを用いて表示領域のスクロールを行うことによってさらに周波数の高いRBについても見ることができるようになっている。ここで表示される第1の色の濃度は、符号Sに対応する色帯45aにおける、例えば、パワー最大値からパワー最小値にかけて順に濃くなる第1の色の濃度うちのいずれかの濃度に対応するものである。
【0114】
また、♯09~♯13までの各シンボルについては、それぞれ、♯000~♯003までの連続するRBがPUCCH0(符号C0に相当)に対応する第2の色で表示されている。ここで表示される第2の色の濃度は、符号C0に対応する色帯45bにおける、例えば、パワー最大値からパワー最小値にかけて順に濃くなる第2の色の濃度うちのいずれかの濃度に対応するものである。
【0115】
また、♯08のシンボルについては、♯020のRBのみがPUCCH1(符号C1に相当)に対応する第3の色で表示されている。ここで表示される第3の色の濃度は、符号C1に対応する色帯45cにおける、例えば、パワー最大値からパワー最小値にかけて順に濃くなる第3の色の濃度うちのいずれかの濃度に対応するものである。
【0116】
また、♯08のシンボルについては、♯020のRB以外のRB、すなわち、♯000から♯019までの連続するRBと、♯021以降の連続するRBが何等の信号も受信していない状態であることを示す色(第1の色~第5の色とは異なる色)で表示されている。同様に、♯09~♯13までの各シンボルに対応する♯004以降の連続するRBについても第5の色で表示されている。
【0117】
図6に示す解析結果画面40におけるパワーMap表示領域44の表示形態によれば、符号S、C0、C1に対応する各信号(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1)について、どのシンボルについてどのRB領域でどの程度のパワーで出力されているかを容易に把握することができる。
【0118】
ここで例えば、パワーMap表示領域44上に第1の色~第3の色のいずれかの色で表示されているシンボルとRBが存在しなかった場合には、受信が期待される各信号(PUSCH、PUCCH0、PUCCH1)が擬似基地局のスケジュール通りに送信されていないことを把握することができる。これにより、操作者は、期待した信号がスケジュール通りに受信されていない問題を容易に特定することができ、該問題への対処も迅速に行うことが可能となる。
【0119】
同じくパワーMap表示領域44の表示形態によれば、♯08のシンボルの♯020のRB、及び♯08のシンボルの♯000から♯019までの連続するRBについては、何等の信号も受信していない状態であることを把握できる。
【0120】
さらにこのパワーMap表示領域44の表示形態によれば、第5の色で表示されている領域が存在していないことから、第5の色が割り当てられた色帯45eに対応する符号Oで識別される信号、すなわち、上述したOtherに相当する信号(擬似基地局でのスケジュールには含まれない信号)が擬似基地局から送信されていないことも分かる。
【0121】
見方を変えると、仮に、上述したOtherに相当する信号が無用に擬似基地局から送信されている場合には、パワーMap表示領域44上の当該Otherに相当する信号を受信しているシンボル及びRBに対応して第5の色による表示が行われることとなる。この場合、操作者は、待ち受け範囲外に信号が出力されていることを特定することができ、引いては、この問題への対処が迅速に行えるようになる。
【0122】
上述したように、本実施形態に係る基地局シミュレータ10は、OFDM方式で変調された被測定信号を受信する受信部21aと、受信部21aで受信した被測定信号の信号データを算出するアナログ信号処理部22と、信号データに基づき該信号データのパワーを各時間について周波数ごとに算出するデータ解析部27cと、時間軸と周波数軸とによって信号データのパワーの分布が表示される解析結果表示部28cと、を備えて構成されている。
【0123】
この構成により、本実施形態に係る基地局シミュレータ10は、時間軸と周波数軸とによって表示された信号データのパワー分布を確認することで、該信号データの各時間領域における周波数ごとの受信状況が把握でき、異常が発生しているときの当該異常の発生に関する問題の特定が容易になる。
【0124】
本実施形態に係る基地局シミュレータ10において、時間軸は、所定のスロットを形成するシンボルを単位とし、周波数軸はリソースブロックを単位とする構成である。
【0125】
この構成により、本実施形態に係る基地局シミュレータ10は、表示された信号データのパワー分布を確認することで、該信号データの各シンボルにおけるリソースブロックごとの受信状況が把握でき、異常が発生しているときの問題となるシンボル並びにリソースブロックを迅速に把握できる。
【0126】
本実施形態に係る基地局シミュレータ10において、パワーの分布は、所定の色の濃淡で表示される構成であってもよい。この構成により、本実施形態に係る基地局シミュレータ10は、表示された信号データのパワー分布を確認することで、該信号データの各シンボルにおけるリソースブロックごとの受信状況を色の濃淡によって容易に把握できるようになる。
【0127】
本実施形態に係る基地局シミュレータ10において、パワーの分布は、パワーの値に対応した複数の色で表示される構成を有している。
【0128】
この構成により、本実施形態に係る基地局シミュレータ10は、表示された信号データのパワー分布を確認することで、該信号データの各シンボルにおけるリソースブロックごとのパワーの値を表示されている色の濃淡によって把握でき、異常が発生しているときの問題の特定がさらに容易になる。
【0129】
本実施形態に係る基地局シミュレータ10において、パワーの分布を表示する複数の色は、同一スロット内で待ち受けているPUSCH、PUCCH0、PUCCH1、PUCCH2の各信号、及びこれら各信号以外の受信待ち受け範囲外に割り当てられている他の信号のパワーの大きさを濃淡で表示する構成を有している。
【0130】
この構成により、本実施形態に係る基地局シミュレータ10は、表示された信号データのパワー分布を確認することで、待ち受け範囲外に他の信号が出力されているなどの問題の特定が容易になる。
【0131】
本実施形態に係る基地局シミュレータ10は、所定のトリガー条件を満たす場合に所定のタイミングでトリガー信号を出力するトリガー検出部25と、トリガー信号を受けて、信号データから所定のタイミングに応じた所定区間のIQデータを抽出して格納するIQデータメモリ部26と、をさらに備え、データ解析部27cは、IQデータメモリ部26にて抽出された所定区間の信号データについてパワーを算出し、解析結果表示部28cは、IQデータメモリ部26にて抽出された所定区間の信号データについてパワー分布が表示される構成を有している。データ解析部27cはスロットにタイミング同期する機能と合わせて、本発明のパワー算出部を構成する。
【0132】
この構成により、本実施形態に係る基地局シミュレータ10は、トリガー条件を満たす所定区間の信号データのみを対象に解析を行ってその解析結果を表示することができ、表示された信号データのパワー分布を確認することで、該所定区間の信号データに異常が発生しているときには当該異常の発生に関する問題の特定が容易になる。
【0133】
また、本実施形態に係る信号解析結果表示方法は、OFDM方式で変調された被測定信号を受信する受信ステップ(S12)と、受信ステップで受信した被測定信号の信号データを算出する信号データ算出ステップ(S13)と、信号データに基づき該信号データのパワーを各時間について周波数ごとに算出するパワー算出ステップ(S19)と、時間軸と周波数軸とによって信号データのパワーの分布を解析結果表示部28cに表示する表示ステップ(S21)と、を含む構成を有している。
【0134】
この構成により、本実施形態に係る信号解析結果表示方法は、本方法を適用した基地局シミュレータ(信号解析装置)によって時間軸と周波数軸とによって表示された信号データのパワー分布を確認することで、該信号データの各時間領域における周波数ごとの受信状況が把握でき、異常が発生しているときの当該異常の発生に関する問題の特定が容易になる。
【0135】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る信号解析装置1の構成について図9を参照して説明する。
【0136】
図9に示すように、本実施形態に係る信号解析装置1は、基地局シミュレータ10Aと制御装置50とをハブ60を介して通信可能に接続したシステム構成を有している。制御装置50はハブ60に対して、例えば、イーサネット(登録商標)を用いたネットワーク65によって接続されている。
【0137】
基地局シミュレータ10Aは、一部の機能ブロックを除いて、概念上の構成が、第1の実施形態に係る基地局シミュレータ10(図1参照)と同等のものである。本実施形態に係る基地局シミュレータ10Aは、制御装置50の制御により基地局シミュレータとして作動するものであり、基地局を擬似した通信をUE70(第1の実施形態のものと同等)の間で行わせる擬似基地局制御機能部、IQデータの解析を制御する機能部、IQデータの解析結果を表示する機能部等が制御装置50の制御機能に委ねられている。
【0138】
図9に示すように、基地局シミュレータ10Aは、受信部11a、送信部11bを有する送受信部11、信号データ算出部12、トリガー信号出力部13、信号抽出部14、記憶部15、外部インタフェース(I/F)部16を備えて構成されている。
【0139】
基地局シミュレータ10Aにおいて、受信部11aは、第1の実施形態に係る基地局シミュレータ10の受信部21aに相当する。信号データ算出部12は、同じくアナログ信号処理部22、及びアップリンクレイヤー処理部23に相当する。トリガー信号出力部13は、同じくトリガー検出部25に相当する。信号抽出部14、及び記憶部15は、同じくIQデータメモリ部26に相当する。外部インタフェース(I/F)部16は、ハブ60との間で信号を送受信するためのインタフェース手段である。
【0140】
制御装置50は、例えば、パーソナル・コンピュータ(PC)等のコンピュータ装置により構成され、UE70の試験のための基地局シミュレータ10Aの各種制御動作を統括的に制御する制御PCとして機能する。図9に示すように、制御装置50は、制御部51、IQデータ解析部52、外部インタフェース(I/F)部53、表示部54、操作部55を有している。
【0141】
制御装置50において、制御部51は、第1の実施形態に係る基地局シミュレータ10の制御部20と同等の制御機能を有するものである。すなわち、制御部51は、第1の実施形態に係る基地局シミュレータ10の制御部20における擬似基地局制御部20a、トリガー設定部20b、解析制御部20c、表示制御部20d、サブキャリア間隔設定部20eとそれぞれ同等の擬似基地局制御部51a、トリガー設定部51b、解析制御部51c、表示制御部51d、サブキャリア間隔設定部51eを有している。また、制御装置50において、IQデータ解析部52は、第1の実施形態に係る基地局シミュレータ10のIQデータ解析部27と同等のものである。表示部54、操作部55は、同じく表示部28、操作部29とそれぞれ同等のものである。外部インタフェース(I/F)部53は、ネットワーク65を介してハブ60との間で信号を送受信するためのインタフェース手段である。
【0142】
図9に示すシステム構成を有する信号解析装置1において、基地局シミュレータ10A、及び制御装置50は、それぞれ、以下のように動作する。受信部11aは、UE70から送信された被測定信号を受信する(図4のステップS12参照)。信号データ算出部12は、被測定信号をデジタル信号に変換し、信号データを算出する処理を実行する(同、ステップS13参照)。トリガー信号出力部13は、所定のトリガー条件を満たす場合に所定のタイミングでトリガー信号を出力する(同、ステップS17参照)。信号抽出部14は、トリガー信号を受けて、信号データ算出部12によって算出された信号データから所定のタイミングに応じた所定区間のIQデータを抽出する(同、ステップS18参照)。具体的には、リングバッファメモリで構成される記憶部15に所定区間のIQデータを格納する。そして、制御装置50では、IQデータ解析部52が、リングバッファメモリに格納された所定区間のIQデータの解析処理を実行する(同、ステップS19参照)。さらに表示制御部51dは、IQデータ解析部52によるIQデータの解析結果を表示部54に表示させる制御を行う(同、ステップS20参照)。
【0143】
特に、この信号解析装置1では、上記ステップS19の処理については、被測定信号の信号データのパワーを、各時間(シンボル)について周波数(RB)ごとに算出する処理(解析処理)を実行する。また、上記S20の処理については、表示制御部51dは、表示部54に対し、解析結果画面40を用い、そのパワーMap表示領域44内に、それぞれの信号ごとに時間軸と周波数軸とにより当該各信号のパワー分布を表示させるように制御する。この信号解析及び解析結果表示の処理は、第1の実施形態に係る基地局シミュレータ10と同様(図8参照)に実施されるものである。
【0144】
このように、第2の実施形態に係る信号解析装置1は、基地局シミュレータ10Aと制御装置50とがシステムとして協働して、第1の実施形態に係る単体の基地局シミュレータ10と同様のIQデータ解析処理機能、及び解析結果表示処理機能を実現している。すなわち、本実施形態に係る信号解析装置1においては、トリガー条件を設定し、該トリガー条件を満たす通信状態でトリガー信号を出力してPHY層における所定範囲のIQデータを取得してその解析を行うとともに、その際に該IQデータ(被測定信号の信号データ)のパワーを、当該信号データのフレーム構成における各シンボル(時間)についてRB(周波数)ごとに算出する信号解析機能、及び該算出結果に基づき、時間軸と周波数軸とによって信号データのパワーの分布を表示部54に表示させる表示制御機能は第1の実施形態に係る基地局シミュレータ10と同様である。これにより、第2の実施形態に係る信号解析装置1においては、第1の実施形態に係る基地局シミュレータ10と同様の作用効果が期待できる。
【0145】
また、本実施形態に係る信号解析装置1は、信号抽出部14(IQデータメモリ部)とIQデータ解析部52は有線ケーブルで接続されている構成を有する。この構成により、本実施形態に係る信号解析装置1は、さらに基地局数が増加した場合には同種の信号解析装置を並列に接続して、送受信する信号が増加した場合にも対応することが可能になる。
【0146】
上記各実施形態では、5GNRの運用形態を例示したが、5GNRとLTEが混在した運用形態、あるいは将来5GNRと次の通信規格との運用形態となった場合にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上のように、本発明に係る信号解析装置、及び信号解析結果表示方法は、被測定信号の信号データについて、時間領域と周波数のパワー分布を確認しながら、問題の発生原因を容易に特定可能であるという効果を奏し、移動端末から送られてくる被測定信号の解析を行う信号解析装置、及び信号解析結果表示方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0148】
1 信号解析装置
10、10A 基地局シミュレータ
11a 受信部
12 信号データ算出部
13 トリガー信号出力部
14 信号抽出部
21a 受信部
22 アナログ信号処理部(信号データ算出部)
25 トリガー検出部(トリガー信号出力部)
26 IQデータメモリ部(信号抽出部)
27c データ解析部(パワー算出部)
28c 解析結果表示部(表示部)
52 IQデータ解析部(パワー算出部)
54 表示部
70 UE(User Equipment:移動端末)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9