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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】コネクタユニット
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R13/52 301G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021050052
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148389
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-08-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】池谷 一英
(72)【発明者】
【氏名】鳶野 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 佳澄
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-041508(JP,A)
【文献】特開2006-185875(JP,A)
【文献】特開2020-155222(JP,A)
【文献】特開平09-306585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0181585(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合されることになる第1コネクタ及び第2コネクタと、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間に挟まれるシール部材と、を備える、コネクタユニットであって、
前記第1コネクタは、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合方向において前記第2コネクタに向けて延びるとともに、延出先端部の内周面が前記シール部材から離れる向きに窪むように減厚された形状を有する、嵌合部を有し、
前記第2コネクタは、
前記シール部材を取り付ける取付部と、前記取付部よりも前記嵌合方向において前記第1コネクタから離れる位置に設けられて前記嵌合部の前記延出先端部を受け入れる収容部と、を有するとともに、前記嵌合部が嵌め合わされる、被嵌合部を有し、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されたとき、
前記嵌合部の前記延出先端部が前記被嵌合部の前記収容部に配置され、且つ、前記嵌合部の前記延出先端部よりも基端側の箇所と前記被嵌合部の前記取付部とに前記シール部材が挟まれて前記嵌合部と前記被嵌合部との間を封止する、ように構成され、
前記延出先端部と前記箇所との境界部の内周面には、滑らかな段差部が形成されており、
前記延出先端部の前記内周面は、前記段差部に連続し且つ前記段差部から前記延出先端部の先端側に向かうほど拡径する向きに前記嵌合方向から傾斜したテーパ面となっており
前記第1コネクタは、
前記嵌合部の周方向に間隔を空けて設けられ且つ前記嵌合部の延出向きに突出する複数の突起部を、前記嵌合部の前記延出先端部の先端面に有し、
前記第2コネクタは、
前記被嵌合部の周方向に間隔を空けて設けられ且つ前記突起部を受け入れるように窪む複数の凹部を、前記被嵌合部の前記収容部の底面に有し、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されたとき、
前記突起部が前記凹部に配置され、且つ、前記突起部の突出表面と前記凹部の溝内面とが前記嵌合方向に交差する方向において当接する、ように構成される、
コネクタユニット。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタユニットにおいて、
前記第1コネクタの前記嵌合部は、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合途中に前記延出先端部が前記シール部材に接触しない厚さを有するように、前記延出先端部が減厚された形状を有する、
コネクタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに嵌合されることになる第1コネクタ及び第2コネクタと、第1コネクタと第2コネクタとの間に挟まれるシール部材と、を備える、コネクタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、防水機能を有するコネクタユニットが提案されている。例えば、従来のコネクタユニットの一つは、一方のコネクタの嵌合部と、他方のコネクタの被嵌合部と、の間に、リング状のパッキンを設けるようになっている。このパッキンにより、双方のコネクタが嵌合されたとき、嵌合部と被嵌合部との間の隙間を通じた水の侵入が抑制されるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-311190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のコネクタユニットを実際に使用する際、環状のパッキンには、通常、本来のシール性を発揮するべく嵌合部と被嵌合部との間で押し潰される方向(即ち、径方向)の外力に加え、嵌合部と被嵌合部との相対移動に起因する嵌合方向の外力も及ぼされる。特に、シール性を高める目的でパッキンの肉厚を厚くした場合、後者の外力(即ち、嵌合方向の外力)が大きくなる傾向がある。後者の外力が過度に大きくなると、パッキンの位置ズレ等に伴うパッキンの噛み込みや、そのような噛み込みに起因するパッキン自体の損傷などが生じる可能性がある。このようなパッキンの位置ズレや損傷等が生じることは、パッキンが本来のシール性を発揮する妨げになり得るため、出来る限り抑制されることが望ましい。一方、後者の外力(即ち、嵌合方向の外力)を低減する目的でパッキンの肉厚を過度に薄くすると、パッキンに求められる本来のシール性能が損なわれる可能性がある。このように、コネクタ間のシール性能と、コネクタ同士を嵌合させる際のシール部材の位置ズレの抑制と、の両立は一般に困難である。
【0005】
本発明の目的の一つは、コネクタ間のシール性能と、シール部材を使用したコネクタ同士を嵌合させる際のシール部材の位置ズレの抑制と、を両立可能なコネクタユニットの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタユニットは、下記[1]~[]を特徴としている。
[1]
互いに嵌合されることになる第1コネクタ及び第2コネクタと、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの間に挟まれるシール部材と、を備える、コネクタユニットであって、
前記第1コネクタは、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合方向において前記第2コネクタに向けて延びるとともに、延出先端部の内周面が前記シール部材から離れる向きに窪むように減厚された形状を有する、嵌合部を有し、
前記第2コネクタは、
前記シール部材を取り付ける取付部と、前記取付部よりも前記嵌合方向において前記第1コネクタから離れる位置に設けられて前記嵌合部の前記延出先端部を受け入れる収容部と、を有するとともに、前記嵌合部が嵌め合わされる、被嵌合部を有し、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されたとき、
前記嵌合部の前記延出先端部が前記被嵌合部の前記収容部に配置され、且つ、前記嵌合部の前記延出先端部よりも基端側の箇所と前記被嵌合部の前記取付部とに前記シール部材が挟まれて前記嵌合部と前記被嵌合部との間を封止する、ように構成され、
前記延出先端部と前記箇所との境界部の内周面には、滑らかな段差部が形成されており、
前記延出先端部の前記内周面は、前記段差部に連続し且つ前記段差部から前記延出先端部の先端側に向かうほど拡径する向きに前記嵌合方向から傾斜したテーパ面となっており
前記第1コネクタは、
前記嵌合部の周方向に間隔を空けて設けられ且つ前記嵌合部の延出向きに突出する複数の突起部を、前記嵌合部の前記延出先端部の先端面に有し、
前記第2コネクタは、
前記被嵌合部の周方向に間隔を空けて設けられ且つ前記突起部を受け入れるように窪む複数の凹部を、前記被嵌合部の前記収容部の底面に有し、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとが嵌合されたとき、
前記突起部が前記凹部に配置され、且つ、前記突起部の突出表面と前記凹部の溝内面とが前記嵌合方向に交差する方向において当接する、ように構成される、
コネクタユニットであること。

上記[1]記載のコネクタユニットにおいて、
前記第1コネクタの前記嵌合部は、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合途中に前記延出先端部が前記シール部材に接触しない厚さを有するように、前記延出先端部が減厚された形状を有する、
コネクタユニットであること。
【0007】
上記[1]の構成のコネクタユニットによれば、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合過程の初期には、第1コネクタの嵌合部の延出先端部がシール部材から離れる向きに減厚されているため、そのような減厚が施されない場合に比べ、延出先端部とシール部材との間に生じる摺動摩擦力を小さくすることができる。その後、嵌合過程が進行すると、第1コネクタの延出先端部よりも基端側の箇所と、第2コネクタの取付部と、にシール部材が挟まれる。即ち、シール部材が第1コネクタと第2コネクタとの間の隙間を封止する。よって、上述したように嵌合部の延出先端部が減厚されない場合に比べ、嵌合部(特に、嵌合部の先端周辺)がシール部材に及ぼす嵌合方向の外力によるシール部材の位置ズレが抑制される。加えて、嵌合部の延出先端部が被嵌合部の収容部に収まることで、単に延出先端部が被嵌合部の壁面等に突き当てられる場合に比べ、嵌合部と被嵌合部との間を通り抜けようとする水などの侵入経路(いわゆる沿面距離)を長くすることができる。これらの結果、シール部材の位置ズレを抑制しながら、第1コネクタと第2コネクタとの間のシール性能を向上させられる。したがって、本構成のコネクタユニットは、コネクタ間のシール性能と、シール部材を使用したコネクタ同士を嵌合させる際のシール部材の位置ズレの抑制と、を両立可能である。
【0008】
更に、上記[]の構成のコネクタユニットによれば、第1コネクタの嵌合部の延出先端部には、嵌合部の延出向きに突出する突起部が設けられる。この突起部は、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合時に第2コネクタの収容部に設けられる凹部に収まり、嵌合方向に交差する方向において凹部に当接することになる。これにより、嵌合方向に交差する方向における突起部と凹部との相対移動(ひいては、嵌合方向に交差する方向における第1コネクタと第2コネクタとの相対移動。いわゆるガタツキ)が抑制される。これにより、そのようなガタツキに起因してシール部材の押し潰し量が変動すること等によるシール性能の低下を抑制できる。
【0009】
上記[]の構成のコネクタユニットによれば、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合途中には、第1コネクタの延出先端部がシール部材に接触しない。これにより、コネクタ同士を嵌合させる際のシール部材の位置ズレを、更に効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、コネクタ間のシール性能と、シール部材を使用したコネクタ同士を嵌合させる際のシール部材の位置ズレの抑制と、を両立可能なコネクタユニットを提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコネクタユニットを構成する第1コネクタの斜視図である。
図2図2図1のA-A断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るコネクタユニットを構成する第2コネクタの分解斜視図である。
図4図4は、第2コネクタの図3のB-B断面に相当する図である。
図5図5(a)は、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合途中の第1段階を示す図4に相当する断面図であり、図5(b)は、図5(a)のC部の拡大図である。
図6図6(a)は、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合途中の第2段階を示す図5に相当する断面図であり、図6(b)は、図6(a)のD部の拡大図である。
図7図7(a)は、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合完了の段階を示す図5に相当する断面図であり、図7(b)は、図7(a)のE部の拡大図である。
図8図8は、変形例に係るコネクタユニットを構成する第1コネクタの斜視図である。
図9図9(a)は、図8に示す変形例における図7(a)に相当する断面図であり、図9(b)は、図9(a)のF部の拡大図である。
図10図10は、図9(a)のG-G断面図である。
図11図11(a)は、図9(a)のH-H断面図であり、図11(b)は、図11(a)のI部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタユニット100について説明する。図7等に示すように、コネクタユニット100は、互いに嵌合されることになる第1コネクタ1及び第2コネクタ2を備える。
【0014】
以下、説明の便宜上、図1図11に示すように、「嵌合方向」、「幅方向」、「上下方向」、「上」、及び「下」を定義する。「嵌合方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。嵌合方向は、第1コネクタ1と第2コネクタ2とを互いに嵌合させる際の第1コネクタ1及び第2コネクタ2の移動方向と一致している。第1コネクタ1及び第2コネクタ2の各々について、相手側のコネクタが嵌合する嵌合方向正面側を前側とし、その反対の嵌合方向背面側を後側とする。以下、コネクタユニット100を構成する各部材について順に説明する。
【0015】
まず、第1コネクタ1について説明する。図1に示すように、第1コネクタ1は、車両に搭載される機器の筐体50の一部を構成している。第1コネクタ1は、第2コネクタ2と嵌合されることで(図7参照)、第2コネクタ2に接続された複数の電線10(図3及び図7参照)を機器内の所定の回路に導通接続する機能を果たす。第1コネクタ1は、図1及び図2に示すように、オスハウジング4と、オスハウジング4に収容された複数のオス端子5と、を備える。
【0016】
オスハウジング4は、筐体50の一部を構成しており、図1及び図2に示すように、本体部11と、フード部12と、を一体に備える樹脂成形体である。本体部11は、幅方向及び上下方向に延びる平板状の形状を有している(図2参照)。フード部12は、本体部11から前方に突出し且つ前方に開口する略矩形筒状の形状を有している(図1参照)。
【0017】
本体部11には、前後方向に延びる棒状の金属製の複数のオス端子5が、フード部12の内部空間内にて本体部11から前方に突出するように、固定されている(図2参照)。本例では、幅方向に並ぶ複数のオス端子5が、上下2段に配置されて、本体部11から前方に延びている(図10及び図11(a)参照)。よって、本例では、第1コネクタ1と第2コネクタ2とが嵌合したとき、上下2段それぞれの電線10が、上下2段のうち対応する段に含まれるオス端子5に導通するようになっている。
【0018】
フード部12の略矩形筒状の前端部は、内周面が径方向外側に窪むように減厚された形状を有する延出先端部13を構成している(図1及び図2参照)。延出先端部13の内周面13aは、前方に向かうほど拡径する向きに嵌合方向から傾斜したテーパ面となっている。フード部12における延出先端部13の後側に隣接する略矩形筒状の箇所(減厚されていない箇所)は、第1コネクタ1と第2コネクタ2とが嵌合した状態においてパッキン7(図3等参照)の外周に接触するパッキン接触部16を構成している(図2及び図7参照)。パッキン接触部16の内周面は、嵌合方向と平行な面である。延出先端部13とパッキン接触部16との境界部の内周面には、滑らかな段差部18が形成されている(図2参照)。
【0019】
本体部11には、前方からみて略H型の形状を有するガイドリブ14が、フード部12の内部空間内にて本体部11から前方に突出するように、設けられている。第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合時、ガイドリブ14は、第2コネクタ2のガイド溝33(図3等参照)に挿入されることで、第1コネクタ1が第2コネクタ2に対して前後方向に沿って移動するように案内する機能を果たす。
【0020】
フード部12の上壁の幅方向中央部には、ロックビーク15が、上方に突出するように設けられている。第1コネクタ1と第2コネクタ2とが嵌合した状態(図7参照)において、ロックビーク15は、第2コネクタ2のロック部28の係合部31(図4等参照)と係合することで、第1コネクタ1と第2コネクタ2とを嵌合状態に維持する機能を果たす。以上、第1コネクタ1について説明した。
【0021】
次いで、第2コネクタ2について説明する。第2コネクタ2は、図3に示すように、メスハウジング6と、メスハウジング6に装着されるパッキン7と、メスハウジング6に装着されるフロントホルダ8と、メスハウジング6に収容される複数のメス端子9(図10及び図11(a)参照)と、を備える。各メス端子9は、対応する電線10の端末に接続されている。
【0022】
メスハウジング6は、図4に示すように、本体部21と、フード部22と、を一体に備える樹脂成形体である。図3及び図4に示すように、本体部21は、前後方向に延びる略直方体状の形状を有している。フード部22は、本体部21の外周の後端部から本体部21の外周を覆うように前方に延びて前方に開口する、略矩形筒状の形状を有している。本体部21の外周面とフード部22の内周面との間には、略矩形筒状の環状隙間23が画成されている(図3参照)。第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合時、環状隙間23には、第1コネクタ1のフード部12が挿入されることになる(図5参照)。
【0023】
本体部21の内部には、上下2段それぞれにて幅方向に並ぶ複数の端子収容室24が、前後方向に延びるように形成されている(図3図10及び図11(a)参照)。複数の端子収容室24の各々には、電線10の端末に設けられたメス端子9が後方側から挿入され収容されている。本体部21には、第1コネクタ1のガイドリブ14に対応して、前方からみて略H型の形状を有するガイド溝33が、後方に窪み且つ前方に開口するように、設けられている。
【0024】
本体部21とフード部22との連結箇所の近傍の本体部21の外周面には、径方向外側に突出する略矩形の段部25が形成されている。本体部21の外周面における段部25の前側に隣接する矩形環状の箇所は、パッキン7が装着されるパッキン取付部26として機能する(図4等参照)。段部25の前端面は、パッキン取付部26に装着されたパッキン7の係止面として機能する(図4等参照)。
【0025】
段部25の径方向外側面とフード部22の内周面との間には、収容部27が画成されている。収容部27は、後方に窪み且つ前方に開口する略矩形環状の凹部である。第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合時、収容部27には、第1コネクタ1の延出先端部13が挿入される。
【0026】
図3に示すように、フード部22の上壁の幅方向中央部は、前後方向全域に亘って上方に突出しており、この突出部の後側領域に設けられた切欠箇所には、ロック部28が外部に露出するように設けられている。
【0027】
ロック部28は、図3及び図4に示すように、本体部21の上壁の後端部から幅方向に離れて前方に延びる片持ち梁状の一対のロックアーム29と、一対のロックアーム29の前端部から幅方向に離れて後方に延びる片持ち梁状の一対の操作アーム30と、から構成されている。一対のロックアーム29及び一対の操作アーム30は共に、上下方向に弾性変形可能である。一対のロックアーム29の前端部は、係合部31によって幅方向に連結されており、一対の操作アーム30の後端部は、操作部32によって幅方向に連結されている。
【0028】
パッキン7は、略矩形筒状のゴム製のシール部材であり、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合状態において、第1コネクタ1のフード部12(パッキン接触部16)と第2コネクタ2の本体部21(パッキン取付部26)との間の環状隙間23を通じた水の侵入を抑制する封止機能を果たす(図7参照)。図3等に示すように、パッキン7の外周面には、径方向外側に突出する3つの環状のリップ部41が、前後方向に並ぶように設けられている。図4に示すように、パッキン7は、前方から環状隙間23に挿入されて、段部25の前端面に当接するように、本体部21のパッキン取付部26に装着される。パッキン7がパッキン取付部26に装着された状態において、3つのリップ部41の頂部は、段部25の径方向外側面よりも僅かに径方向外側に位置している。
【0029】
フロントホルダ8は、本体部21の前端部に取り付け可能な形状を有する樹脂成形品であり、図4等に示すように、パッキン7が装着された本体部21の前端部に取り付けられる。フロントホルダ8は、本体部21の前端部に取り付けられた状態において、メス端子9の後方への抜けを防止するいわゆる二重係止機能、メス端子9の不完全挿入を検知する不完全挿入検知機能、並びに、パッキン7の前方への脱落を防止するパッキン脱落防止機能を果たす。以上、第2コネクタ2について説明した。
【0030】
次いで、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合過程について説明する。第1コネクタ1と第2コネクタ2とを嵌合させるためには、図5に示すように、フード部12が環状隙間23に挿入され、複数のオス端子5が複数のメス端子9に挿入され、且つ、ガイドリブ14がガイド溝33に挿入されるように、ハウジング4とハウジング6とを互いに嵌合方向に近づけていく。このとき、ガイドリブ14がガイド溝33に挿入されることで、第1コネクタ1が、第2コネクタ2に対して前後方向に沿って移動するように案内される。このため、嵌合過程が円滑に進行し得る。
【0031】
嵌合過程の進行により、ロックビーク15がロック部28の係合部31を上方に押し退けて一対のロックアーム29が上方に弾性変形する段階になると、図5に示すように、パッキン7の各リップ部41が、フード部12の延出先端部13の内周面13aによって僅かに押し潰されると共に内周面13aと擦動するようになる。なお、上述したように、延出先端部13の内周面13aがテーパ面となっていることに起因して、内周面13aが、パッキン7のリップ部41を拾い易くなっている。
【0032】
このように、パッキン7のリップ部41がフード部12と当接する初期段階では、内周面13aが径方向外側に窪むように減厚された形状を有する延出先端部13が、リップ部41と擦動する。このため、このような減厚が施されない態様に比べ、延出先端部13とリップ部41(即ち、パッキン7)との間に生じる嵌合方向の摺動摩擦力を小さくすることができる。このため、例えば、シール性を高める目的でパッキン7の肉厚(径方向の厚み)を大きくした場合であっても、フード部12の前端部分がパッキン7に及ぼす外力によるパッキン7の噛み込みや座屈などが生じることが抑制され得る。
【0033】
この段階から嵌合過程が更に進行すると、図6に示すように、パッキン7の各リップ部41は、段差部18を乗り越えて押し潰し量が増大すると共に、パッキン接触部16の内周面と擦動するようになる。
【0034】
この段階から嵌合過程が更に進行すると、図7に示すように、ロックビーク15が係合部31を乗り越えることで、一対のロックアーム29が下方に弾性復帰し、ロックビーク15と係合部31とが前後方向に係合する。これにより、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合が完了し、コネクタユニット100が得られる。
【0035】
第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合完了の状態(以下、単に「嵌合完了状態」と呼ぶ)では、ロックビーク15と係合部31とが前後方向に係合することで(図7(a)参照)、嵌合完了状態が維持される(第1コネクタ1と第2コネクタ2との前後方向への分離が防止される)。
【0036】
更に、嵌合完了状態では、パッキン7の3つのリップ部41の全てが、パッキン取付部26とパッキン接触部16との間にて、適正な押し潰し量L(図11(b)参照)で、全周に亘って径方向に押し潰された状態となる(図7(b)参照)。これにより、フード部12(パッキン接触部16)と本体部21(パッキン取付部26)との間の環状隙間23が水密的に封止される。
【0037】
更に、嵌合完了状態では、第1コネクタ1の複数のオス端子5と第2コネクタ2の複数のメス端子9とが電気的に接続される。これにより、上下2段それぞれの4本の電線10が、上下2段のうち対応する段に含まれる4本のオス端子5を介して互いに導通接続される。
【0038】
更に、嵌合完了状態では、図7(b)に示すように、延出先端部13が収容部27に挿入されている。このため、単に延出先端部13が本体部21の壁面等に突き当てられる場合に比べ、フード部12とフード部22との間、及び、フード部12と本体部21との間を通り抜けようとする水などの侵入経路(いわゆる沿面距離)を長くすることができる。
【0039】
なお、嵌合完了状態にある第1コネクタ1と第2コネクタ2とを分離するためには、ロック部28の操作部32を下方に押し下げる。これにより、一対の操作アーム30が下方に撓むことで一対のロックアーム29が上方に撓む。この結果、係合部31が上方に移動して係合部31とロックビーク15との係合が解除された状態になる。この状態にて、第1コネクタ1及び第2コネクタ2に対して嵌合方向の互いに離れる向きに外力を加えることで、第1コネクタ1と第2コネクタ2とが分離される。
【0040】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るコネクタユニット100によれば、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合過程の初期には、第1コネクタ1のフード部12の延出先端部13がパッキン7から離れる向きに減厚されているため、そのような減厚が施されない場合に比べ、延出先端部13とパッキン7との間に生じる摺動摩擦力を小さくすることができる。更に、嵌合過程が進行すると、パッキン7は、第1コネクタ1の延出先端部13よりも基端側のパッキン接触部16と、第2コネクタ2のパッキン取付部26と、に挟まれ、第1コネクタ1と第2コネクタ2との間の隙間を封止する。そのため、例えば、シール性を高める目的でパッキン7の肉厚を厚くした場合であっても、フード部12の前端部分がパッキン7に及ぼす外力によるパッキン7の異常変形(即ち、噛み込みや座屈など)が生じることが抑制される。加えて、フード部12の延出先端部13が収容部27に収まることで、単に延出先端部13が本体部21の壁面等に突き当てられる場合に比べ、フード部12とフード部22との間、及び、フード部12と本体部21との間を通り抜けようとする水などの侵入経路(いわゆる沿面距離)を長くすることができる。したがって、本実施形態に係るコネクタユニット100は、パッキン7のシール性能と、パッキン7を使用したコネクタ同士を嵌合させる際のパッキン7の位置ズレの抑制と、を両立可能である。
【0041】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0042】
上記実施形態では、第1コネクタ1の延出先端部13の前端には、周方向の全周に亘って凹凸が形成されておらず、且つ、第2コネクタ2の収容部27の底面(後端面)には、周方向の全周に亘って凹凸が形成されていない。これに対し、図8図11に示すように、第1コネクタ1の延出先端部13の前端に、前方に突出する複数の突起部17が、周方向に間隔を空けて設けられ(図8及び図10参照)、且つ、第2コネクタ2の収容部27の底面に、複数の突起部17に対応して、後方に窪む複数の凹部34が、周方向に間隔を空けて設けられてもよい(図9(b)及び図10)。
【0043】
図8図11に示す例では、嵌合完了状態にて、複数の突起部17が複数の凹部34に挿入され(図9(b)及び図10)、且つ、周方向に互いに対向する突起部17の突出表面と凹部34の溝内面とが互いに当接している。このため、嵌合完了状態において、嵌合方向に交差する方向(上下方向及び幅方向)における第1コネクタ1(オスハウジング4)と第2コネクタ2(メスハウジング6)との相対移動(いわゆるガタツキ)が抑制される。これにより、そのようなガタツキに起因してパッキン7の押し潰し量L(図11(b)参照)が変動することによるシール性能の低下を抑制できる。
【0044】
更に、上記実施形態では、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合途中において、延出先端部13の内周面13aがパッキン7のリップ部41に接触している(図5(b)参照)。これに対し、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合途中において、延出先端部13の内周面13aがパッキン7のリップ部41に接触しない厚さを有するように、延出先端部13が減厚された形状を有していてもよい。これによれば、パッキン7の位置ズレをより効果的に抑制できる。
【0045】
ここで、上述した本発明に係るコネクタユニット100の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
互いに嵌合されることになる第1コネクタ(1)及び第2コネクタ(2)と、前記第1コネクタ(1)と前記第2コネクタ(2)との間に挟まれるシール部材(7)と、を備える、コネクタユニット(100)であって、
前記第1コネクタ(1)は、
前記第1コネクタ(1)と前記第2コネクタ(2)との嵌合方向において前記第2コネクタ(2)に向けて延びるとともに、延出先端部(13)が前記シール部材(7)から離れる向きに窪むように減厚された形状を有する、嵌合部(12)を有し、
前記第2コネクタ(2)は、
前記シール部材(7)を取り付ける取付部(26)と、前記取付部(26)よりも前記嵌合方向において前記第1コネクタ(1)から離れる位置に設けられて前記嵌合部(12)の前記延出先端部(13)を受け入れる収容部(27)と、を有するとともに、前記嵌合部(12)が嵌め合わされる、被嵌合部(6)を有し、
前記第1コネクタ(1)と前記第2コネクタ(2)とが嵌合されたとき、
前記嵌合部(12)の前記延出先端部(13)が前記被嵌合部(6)の前記収容部(27)に配置され、且つ、前記嵌合部(12)の前記延出先端部(13)よりも基端側の箇所(16)と前記被嵌合部(6)の前記取付部(26)とに前記シール部材(7)が挟まれて前記嵌合部(12)と前記被嵌合部(6)との間を封止する、ように構成される、
コネクタユニット(100)。
[2]
上記[1]に記載のコネクタユニット(100)において、
前記第1コネクタ(1)は、
前記嵌合部(12)の延出向きに突出する突起部(17)を、前記嵌合部(12)の前記延出先端部(13)に有し、
前記第2コネクタ(2)は、
前記突起部(17)を受け入れるように窪む凹部(34)を、前記被嵌合部(6)の前記収容部(27)に有し、
前記第1コネクタ(1)と前記第2コネクタ(2)とが嵌合されたとき、
前記突起部(17)が前記凹部(34)に配置され、且つ、前記突起部(17)の突出表面と前記凹部(34)の溝内面とが前記嵌合方向に交差する方向において当接する、ように構成される、
コネクタユニット(100)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタユニット(100)において、
前記第1コネクタ(1)の前記嵌合部(12)は、
前記第1コネクタ(1)と前記第2コネクタ(2)との嵌合途中に前記延出先端部(13)が前記シール部材(7)に接触しない厚さを有するように、前記延出先端部(13)が減厚された形状を有する、
コネクタユニット(100)。
【符号の説明】
【0046】
100 コネクタユニット
1 第1コネクタ
2 第2コネクタ
6 メスハウジング(被嵌合部)
7 パッキン(シール部材)
12 フード部(嵌合部)
13 延出先端部
16 パッキン接触部(延出先端部よりも基端側の箇所)
17 突起部
26 パッキン取付部(取付部)
27 収容部
34 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11