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特許7410091射出成形シールリングおよびそれらを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】射出成形シールリングおよびそれらを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/328 20160101AFI20231226BHJP
   F16J 15/3272 20160101ALI20231226BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20231226BHJP
   B29C 45/28 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
F16J15/328
F16J15/3272
B29C45/00
B29C45/28
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021130942
(22)【出願日】2021-08-10
(62)【分割の表示】P 2019557692の分割
【原出願日】2018-01-09
(65)【公開番号】P2022000590
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】62/444,783
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517381566
【氏名又は名称】サン-ゴバン パフォーマンス プラスティクス エルプラスエス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロニツキ、ミルコ
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-042455(JP,A)
【文献】特開昭59-077921(JP,A)
【文献】特開2007-170629(JP,A)
【文献】特開2016-173137(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第4223709(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/328
F16J 15/3272
B29C 45/00
B29C 45/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置において、
回転シャフトと、
第1の端部と前記第1の端部と係合可能な第2の端部との間に延在する円形リング本体を備える、前記回転シャフトの周りに配置された射出成形シールリングにおいて、前記円形リング本体が、
内周面と、
第1の横方向端縁および対向する第2の横方向端縁を有する前記内周面に対向し、シール面である外周面と、
前記内周面と前記対向する外周面との間に延在する第1の側面と、
前記内周面と前記対向する外周面との間に配置された、前記第1の側面と対向する第2の側面と、
前記外周面に形成され、前記外周面の前記第1の横方向端縁および前記第2の横方向端縁の両方までには延在していない凹部であって、前記凹部と前記外周面の前記第1の横方向端縁との間の横方向距離が、少なくとも0.5mmである、凹部と、
前記凹部に配置され、前記外周面を越えて延在していない、突出している射出成形ゲート痕と、を備え、
前記シールリングは、2mm~20mmの範囲の前記第1の側面から前記第2の側面までの幅を有し、
前記第1の側面、および/または前記第2の側面が前記回転シャフトに関連する溝の側壁に対して配置され
前記射出成形シールリングが熱可塑性材料により形成され、
前記凹部が前記シールリングの係合した第1および第2の端部に対して5~135度または225~355度の角度に対応する位置に配置される、射出成形シールリングと、
ハウジングまたはボアであって、前記射出成形シールリングの外周面が前記ハウジングまたは前記ボアの内周面に対して配置されるように、前記シャフトおよび前記射出成形シールリングの周りに配置されたハウジングまたはボアと、を備える装置。
【請求項2】
前記射出成形ゲート痕が、それが配置される前記凹部の表面から少なくとも100ミクロン延在している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記外周面、前記第1の側面、および/または前記第2の側面が、5ミクロン未満の表面粗さR値、20ミクロン未満の表面粗さR値、および/または30ミクロン未満の表面粗さRmax値を有し、全てISO 4287に記載されているように測定される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記凹部が前記第1の横方向端縁および前記第2の横方向端縁のいずれにも延在しないように、前記凹部が、前記外周面の前記第1の横方向端縁と前記第2の横方向端縁との間に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記凹部と前記外周面の前記第1の横方向端縁との間の距離が、少なくとも1mmである、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記凹部と前記外周面の前記第2の横方向端縁との間の横方向距離が、少なくとも1mmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記凹部が、1mm~20mmの範囲の面積を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記射出成形ゲート痕が、前記外周面のレベルの0.2mm以内まで延在していない、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記凹部が、前記シールリングの係合した第1および第2の端部に対して30~330度の角度に対応する位置に配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記射出成形シールリングが10mm~200mmの範囲の内径を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記射出成形シールリングが1mm~6mmの範囲の前記第1の側面から前記第2の側面までの幅を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記射出成形シールリングがその外端に第1の矩形断面を有し、その内端に第2のより狭い矩形断面を有する断面形状を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の端部が、2-Tジョイントまたは2-Lジョイントを介して前記第2の端部と係合可能である、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記熱可塑性材料が、ナイロン(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、およびポリアミドイミド(PAI)から選択される請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月10日に出願された米国仮特許出願第62/444,783
号の優先権の利益を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
開示の背景
【0002】
本開示は、一般に、自動車の変速機、トルクコンバータおよび自動クラッチなどのシス
テムに有用な構成要素に関する。本開示は、より具体的には、オイル潤滑システムおよび
空気圧システムなどの回転システムに有用な射出成形シールリング、およびそのようなシ
ールリングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シールリングは、特に高圧下でのアセンブリの部分において、流体漏洩および圧力損失
を制限するために変速機およびクラッチのようなアセンブリにおいて一般的に使用されて
いる。これらは、典型的には、オイルまたは他の潤滑剤などの液体とともに回転接続部に
使用される。
【0004】
従来の回転接続部の一例が図1の概略斜視図に示されている。ここで、シールリングは
、周囲のハウジングに対してシールするように、溝内でその接合部において回転シャフト
の周りに配置される。シールリングは、いずれかまたは両方に対して回転することができ
るように、シャフトにもハウジングにも固定されていない。シールリング自体は、図2
概略断面図に示すように、3つのシール面を有する。シールリングの外周面は、シャフト
およびシールリングが配置されているハウジングに対してシールする。一方の側面は、シ
ャフトに形成された溝の側壁に対してシールする。多くの場合、設置時に実際には一方の
側面のみが表面に対して封止される。それにもかかわらず、シールリングは、典型的には
、それらがどの方向を向いていても設置され得るように、対称であるように構成される。
したがって、シールリングは、協働面(すなわち、溝またはハウジングの面)に対してシ
ールするのに十分に平坦で円形の3つの面を有する必要がある。
【0005】
外周面またはいずれかの側面におけるいかなる製造上の欠陥も、シールの破損を引き起
こす可能性がある。したがって、そのようなシールリングを製造するためには、高精度射
出成形技術が一般的に使用されている。射出成形は、平坦面を有する非常に精密な構造を
形成することができる。しかしながら、射出成形プロセスは、典型的には、溶融プラスチ
ック材料が型に入るシールリング上の位置に、すなわちゲート(すなわち、溶融プラスチ
ックをキャビティ内に流入させる型キャビティへの入口)を介していわゆる「痕」をもた
らす。この痕は、それが配置されている面のシールを妨げる可能性がある小さな隆起また
は他の表面の不完全さを生み出す可能性がある。この位置がシールに必要とされない唯一
の面であることから、従来のシールリングは、典型的には、シールリングの内周面に沿っ
て配置されたゲートを介して射出成形される。これは、良好なシール性能を有するシール
リングを提供することができるが、より複雑な射出システムを必要とするため製造を非常
に複雑にする。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本開示は、第1の端部と第1の端部と係合可能な第2の端部との間に延在
する円形リング本体を備える射出成形シールリングにおいて、円形リング本体が、
内周面と、
第1の横方向端縁および対向する第2の横方向端縁を有する内周面に対向する外周面と

内周面と対向する外周面との間に延在する第1の側面と、
内周面と対向する外周面との間に配置された、第1の側面と対向する第2の側面と、
外周面に形成され、外周面の第1の横方向端縁および第2の横方向端縁の両方までには
延在していない凹部と、
凹部に配置され、外周面を越えて延在していない射出成形ゲート痕とを備える、射出成
形シールリングを提供する。
【0007】
他の態様では、本開示は、本明細書に記載されているようなシールリングを製造する方
法において、
キャビティを有する型を提供することであって、前記キャビティは、射出成形シールリ
ングの逆であり、この場合、シールリングの射出成形ゲート痕の位置に対応する凹部内の
位置においてキャビティに射出成形ゲートが結合される、提供することと、
ゲートを介してキャビティ内に溶融ポリマーを注入することと、ポリマーが硬化される
ことを可能にすることと、
型からシールリングを取り外し、シールリングの凹部の表面においてポリマーランナー
からそれを切り離すことによって射出成形ゲート痕を形成することとを含む、方法を提供
する。
【0008】
他の態様では、本開示は、
回転シャフトと、
その第1の側面および/またはその第2の側面が回転シャフトに関連する溝の側壁に対
して配置された状態で、回転シャフトの周りに配置された請求項1~27および29のい
ずれか一項に記載のシールリングと、
ハウジングまたはボアであって、シールリングの外周面がハウジングまたはボアの内周
面に対して配置されるように、シャフトおよびシールリングの周りに配置されたハウジン
グまたはボアとを含む、装置を提供する。
【0009】
本開示のさらなる態様は、本明細書の開示から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面は、本開示の方法および装置のさらなる理解を提供するために含められ、本
明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、必ずしも縮尺どおりに描かれている
わけではなく、様々な要素のサイズは、明確さのために歪められることがある。図面は、
本開示の1つ以上の実施形態を示しており、詳細な説明とともに本開示の原理および動作
を説明するのに役立つ。
【0011】
図1】従来の回転接続部の概略斜視図である。
【0012】
図2図1の従来の回転接続部におけるシールリングアセンブリの概略断面図である。
【0013】
図3】本開示の一実施形態にかかるシールリングの概略斜視図である。
【0014】
図4図3のシールリングの部分概略斜視図である。
【0015】
図5図3および図4のシールリングの概略断面図である。
【0016】
図6】本開示の他の実施形態にかかるシールリングの概略断面図である。
【0017】
図7】本開示の他の実施形態にかかるシールリングの概略断面図である。
【0018】
図8】本開示の他の実施形態にかかるシールリングの概略断面図である。
【0019】
図9】本開示の他の実施形態にかかるシールリングの概略側面図である。
【0020】
図10】本開示の様々な実施形態にかかる第1および第2の端部についての異なる配置の一組の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者は、シールリングの内周面における射出成形に関して上述した欠点に注目した
。これらの欠点を克服するために、さらに必要なシール性能を保持するために、本開示は
、射出成形プロセスがその外周面のゲートを介して行われるシールリングを提供する。型
は、シールリングの外周面に凹部が形成されるように設計されている。ゲートは、溶融プ
ラスチックの流れがこの凹部を通過し、射出成形ゲート痕が成形されたシールリングの凹
部内に配置され、その外周面を越えて延在しないように位置決めされる。凹部になってい
ない外周面の横方向部分が必要なシール性能を提供することができるように、外周面の凹
部は、外周面の第1の横方向端縁および第2の横方向端縁の両方までには延在していない
【0022】
本開示の一態様は、射出成形シールリングである。そのようなシールリングの一例が図
3の概略斜視図および図4の部分概略斜視図に示されている。射出成形シールリング30
0は、第1の端部304と第2の端部306との間に延在する円形リング本体302を有
する。以下により詳細に論じるように、第2の端部306は、シールリングの端部が引き
離されてシャフトの周りに配置され、端部がともに戻ることが可能にされるとき円形の外
周を有するように閉じることができるように、第1の端部304と係合可能である。円形
リング本体は、内周面310と、内周面に対向する外周面312とによって部分的に画定
される。外周面312は、第1の横方向端縁314および対向する第2の横方向端縁31
6を有する。内周面310と外周面312との間に延在するのは、第1の側面320と、
第1の側面320に対向する第2の側面322である。
【0023】
特に、シールリングは、その外周面312に形成された凹部330を含む。この凹部3
30は、図5の概略断面図(すなわち、凹部が配置されているシールリングの円周に沿っ
た点で取られた)にさらに詳細に示されている。凹部330は、外周面312の第1の横
方向端縁314および第2の横方向端縁316の両方までには延在していない。むしろ、
この実施形態では、凹部330は、外周面312の第1の横方向端縁314まで延在して
いるが、外周面312の第2の横方向端縁316までは延在していない。凹部に配置され
ているのは、射出成形ゲート痕340である。射出成形ゲート痕340は、外周面のシー
ルを妨げないように、外周面312を越えて(すなわち、半径方向に)延在していない。
【0024】
当業者には理解されるように、射出成形ゲート痕は、射出成形プロセスの結果として射
出成形ゲートの部位の部分に残った隆起、粗さ、または他のマークである。射出成形ゲー
ト痕は、例えば、ゲートの部位においてランナーからシールリングを切り離すことから生
じさせることができる。射出成形ゲート痕は、例えば、それが配置される凹部の表面(例
えば、図5の参照符号332によって示されるような底面)から、少なくとも100ミク
ロン、少なくとも200ミクロン、さらには少なくとも500ミクロン延在することがで
きる。例えば、特定の実施形態では、射出成形ゲート痕は、それが配置される凹部の表面
から100~1000ミクロンの範囲内、例えば100~800ミクロン、または100
~500ミクロン、または200~1000ミクロン、または200~800ミクロン、
または200~500ミクロンの範囲内に延在する。この射出成形ゲート痕は、シールリ
ングのいかなるシール面からも離れて凹部内に配置されることから、シールリングのシー
ル性能を妨げない。
【0025】
シールリングの外周面は、ハウジングまたはボアの内周面に対して適切なシールを提供
するために、表面粗さは小さいことが望ましい。もちろん、当業者には理解されるように
、従来の製造プロセスから生じるある程度の粗さが許容可能であり得る。第1および第2
の側面は、典型的には、上述したようにシール面として規定されることから、特定の望ま
しい実施形態では、また、表面粗さは小さいことが望ましい。そして、当業者には理解さ
れるように、面に窪みとして形成されたより大きな特徴(例えば、流体処理溝)の存在は
、面の表面粗さに影響を与えるとは考えられず、むしろ、面のシール部分にとって、表面
粗さは小さければ十分である。本明細書に記載の低い表面粗さを有する面は、例えば、5
ミクロン未満、2ミクロン未満、またはさらには1ミクロン未満(例えば、0.2~1ミ
クロン)の表面粗さR値、20ミクロン未満、10ミクロン未満、またはさらには5ミ
クロン未満(例えば、1~5ミクロン)の表面粗さR値、および/または30ミクロン
未満、20ミクロン未満、またはさらには10ミクロン未満(例えば、2~8ミクロン)
の表面粗さRmax値を有することができ、全てISO 4287に記載されているよう
に測定される。第1および第2の側面は、典型的には、上述したようにシール面として規
定されることから、特定の望ましい実施形態では、また、表面粗さは小さい。
【0026】
凹部は、その第1の端縁と横方向端縁との間の外周面に沿って様々な横方向位置に形成
され得る。本明細書で別途説明されるような、および図3図5の実施形態に示されるよ
うなシールリングの特定の実施形態では、凹部は、外周面の第1の横方向端縁に沿って形
成されている。凹部(すなわち、その横方向端縁)と外周面の第2の横方向端縁との間の
横方向距離は、適切なシールを提供するのに十分な表面積を提供するのに十分であること
が望ましい。例えば、本明細書に別途説明されるシールリングの特定の実施形態では、凹
部と外周面の第2の横方向端縁との間の横方向距離は、少なくとも0.2mm、例えば少
なくとも0.5mm、さらには少なくとも1.0mmである。
【0027】
本明細書で別途説明されるシールリングの他の実施形態では、凹部が第1の横方向端縁
および第2の横方向端縁のいずれにも延在しないように、凹部は、外周面の第1の横方向
端縁と第2の横方向端縁との間に形成される。そのような実施形態は、図6の概略断面図
(すなわち、凹部が配置されるシールリングの円周に沿った点で取られた)に示されてい
る。ここで、凹部630は、シールリング600の外周面612の第1の横方向端縁61
4と第2の横方向端縁616との間に形成されている。特に、凹部630は、横方向端縁
614または616のいずれにも延在していない。ここでも、凹部(すなわち、その各横
方向端縁)と外周面の第1および第2の横方向端縁との間の横方向距離は、適切なシール
を提供するのに十分な表面積を提供するのに十分であることが望ましい。例えば、本明細
書に別途説明されるシールリングの特定の実施形態では、凹部と外周面の第1の横方向端
縁との間の横方向距離は、少なくとも0.1mm、例えば、少なくとも0.2mm、少な
くとも0.5mm、さらには少なくとも1.0mmである。同様に、本明細書に別途説明
されるシールリングの特定の実施形態では、凹部と外周面の第2の横方向端縁との間の横
方向距離は、少なくとも0.1mm、例えば少なくとも0.2mm、少なくとも0.5m
m、さらには少なくとも1.0mmである。
【0028】
凹部は、様々なサイズで提供され得る。当業者であれば、本開示に基づいて、射出成形
ゲート痕がその中に配置され得るように適切なサイズの凹部を提供するであろうが、それ
でも凹部は、シールリングの外周面の第1および第2の横方向端縁の両方までには延在し
ない。本明細書に別途説明されるシールリングの様々な実施形態では、凹部は、例えば、
1~20mm、または1~15mm、または1~10mm、または1~8mm
または1~5mm、または2~20mm、または2~15mm、または2~10m
、または2~8mmの範囲内の面積(すなわち、外周面の閉塞面に対して)を有す
ることができる。
【0029】
同様に、凹部は、様々な深さで形成され得る。当業者であれば、本開示に基づいて、射
出成形ゲート痕がシールリングの外周面を越えて延在することなくその中に配置され得る
ように適切な深さの凹部を提供するであろう。本明細書に別途説明されるシールリングの
様々な実施形態では、凹部は、例えば、少なくとも0.05mm、例えば、少なくとも0
.1mm、またはさらには少なくとも0.2mmの深さ(すなわち、外周面に対して)を
有することができる。深さは、例えば、0.05~2mm、または0.1~2mm、また
は0.2~2mm、または0.05~1mm、または0.1~1mm、または0.2~1
mm、または0.05~0.7mm、または0.1~0.7mm、または0.2~0.7
mmの範囲内とすることができる。
【0030】
上述したように、射出成形ゲート痕は、シールリングの外周面を越えて延在していない
。望ましくは、射出成形ゲート痕は、製造公差を緩和するために外周面のレベルから十分
に離れるように凹部内に配置される。例えば、本明細書に別途説明されるシールリングの
特定の実施形態では、射出成形ゲート痕は、外周面のレベルの0.2mm以内、さらには
0.5mm以内までは延在していない。
【0031】
凹部は、シールリングの円周に沿って任意の都合のよい角度位置に配置され得る。例え
ば、本明細書に別途説明されるシールリングの特定の実施形態では、凹部は、シールリン
グの係合した第1および第2の端部に対して5~355度、例えば15~345度または
30~330度の角度に対応する位置に配置される。しかしながら、特定の実施形態では
、シールリングの係合した第1および第2の端部に対して180度から実質的に離れた点
に凹部を配置することが望ましいことがある。この領域は、シールリングがシャフトの周
りに設置されるために開かれるように曲げられたときに大きな応力を受けることがあり、
凹部は、シールリングをそのような屈曲に対して弱めるように作用することがある。した
がって、特定の実施形態では、凹部は、シールリングの係合した第1および第2の端部に
対して5~135度、または15~135度、または30~135度、または225~3
30度、または225~345度、または225~355の角度に対応する位置に配置さ
れる。
【0032】
当業者には理解されるように、本明細書に記載のシールリングは、それが設置されるこ
とになるシステムの特定のパラメータ(例えば、シャフトサイズ、溝サイズ、ハウジング
またはボア内径)に応じて様々なサイズで構成され得る。例えば、本明細書に記載のシー
ルリングは、様々なサイズの回転シャフトとともに使用するために、様々な内周を有する
ように構成され得る。本明細書で別途説明されるシールリングの特定の実施形態では、内
径(例えば、内周面の直径)は、10mm~200mmの範囲内、例えば、10~150
mm、または10~100mm、または10~80mm、または10~50mm、または
20~200mm、または20~150mm、または20~100mm、または20~8
0mm、または20~50mm、または40~200mm、または40~150mm、ま
たは40~100mm、または40~80mm、または40~50mmである。
【0033】
同様に、本明細書に記載のシールリングは、様々なサイズの溝に嵌合するように様々な
幅を有するように構成され得る。本明細書に別途記載されるシールリングの特定の実施形
態では、その第1の側面から第2の側面までのシールリングの幅は、1mm~20mmの
範囲内、例えば、1~10mm、または1~8mm、または1~6mm、または1~4m
m、または2~20mm、または2~10mm、または2~8mm、または2~6mm、
または2~4mm、または4~20mm、または4~10mm、または4~8mm、また
は6~20mm、または6~10mmである。
【0034】
当業者には理解されるように、本明細書に記載のシールリングは、様々な断面形状で形
成され得る。例えば、本明細書で別途説明されるシールリングの特定の実施形態は、矩形
の断面形状(すなわち、凹部も、第1の端部もしくは第2の端部の係合特徴のいずれかも
含まないシールリングの円周に沿った位置)を有する。図3図5のシールリング300
は、略矩形断面を有し、第1の側面320は、第2の側面322と略平行である。本明細
書で別途説明されるシールリングの他の実施形態では、シールリングは、略台形断面を有
する。図7は、第1の側面720および第2の側面722は、法線から外周面712まで
実質的に同じ角度で傾斜している、略台形断面を有するシールリング700の概略断面図
である。本明細書で別途説明されるシールリングの他の実施形態では、シールリングは、
その外端に第1の矩形断面を有し、その内端に第2のより狭い矩形断面を有する断面形状
を有する。図8は、そのような断面を有するシールリング800の概略断面図である。こ
こで、第1の側面820および第2の側面822は、第1の矩形部850の両端に配置さ
れたシール面であり、第2の矩形部852は、第1の規制部850に直接隣接して配置さ
れ、内周面810まで延在している。もちろん、当業者は、例えばシールリングが配置さ
れるべき溝の特定の幾何学形状に応じて、他の断面形状が使用されてもよいことを理解す
るであろう。そして、当業者は、本明細書に記載された形状が、記載された形状から実質
的に逸脱することなく面取りまたは丸みを帯びた角を含むことができることを理解するで
あろう。例えば、図5の断面形状は、内周面の端縁において面取りされた角を含むが、そ
れでもなお矩形であると見なされる。
【0035】
様々な追加の特徴が本明細書に記載のシールリングに含めることができる。例えば、本
明細書に別途記載されるシールリングの特定の実施形態では、第1の側面、第2の側面、
または両方は、その中に形成された1つ以上の溝を含むことができる。溝は、例えば側面
に沿ってオイルまたは他の潤滑剤を引き上げるように構成することができ、したがって、
溝の側壁と側面との間に十分なシールを維持するために、側面と溝の側壁との間に十分な
オイルを維持するのを助ける。そのようなシールリングの一例が図9の部分概略側面図に
示されている。特定の実施形態では、側面に形成された溝は、いずれも側面の外端から側
面の内端まで延在していない。例えば、図9の実施形態では、溝960は、側端面920
の内端924まで延在しているが、その外端925までは延在していない。
【0036】
上記簡単に述べたように、第2の端部は、第1の端部と係合可能であり、円形の外周を
有するリングシールを提供する。当業者には理解されるように、第1の端部および第2の
端部は、様々な方法で互いに係合することができる。例えば、図10は、本明細書で別途
説明されるように、シールリングについての係合可能な第1および第2の端部のいくつか
の例の部分斜視概略図を提供する。係合の種類の例は、バットジョイント、フックジョイ
ント、バイアスジョイント、2-Lジョイント、および2-Tジョイントを含む。しかし
ながら、当業者であれば、シールリングの第1および第2の端部に関して様々な種類の係
合方法が使用され得ることを理解するであろう。端部は、異なる公差および拡張に適応す
るために、例えば円形シールの周囲をわずかに拡張または収縮させるように互いに対して
移動することができることが望ましい。
【0037】
射出成形プロセスが使用されて、本明細書に記載のシールリングを様々な異なる材料か
ら製造することができる。高温熱可塑性材料は、本明細書に記載のシールリングにおいて
特に有用である。例えば、本明細書に別途記載されるシールリングの特定の実施形態は、
ナイロン(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン
(PEEK)、ポリイミド(PI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、およびポリアミド
イミド(PAI)から選択される材料により構成される。そのような材料は、充填されて
いてもいなくてもよい。
【0038】
本開示の他の態様は、本明細書で別途説明される射出成形シールリングを製造する方法
に関する。本方法は、キャビティを有する型を提供することであって、キャビティは、本
明細書で別途説明される射出成形シールリングの形状の逆の形状を有し、この場合、シー
ルリングの射出成形ゲート痕の位置に対応する凹部内の位置においてキャビティに射出成
形ゲートが結合される、提供することと、ゲートを介してキャビティ内に溶融ポリマーを
注入することと、ポリマーが硬化されることを可能にすることと、型からシールリングを
取り外し、シールリングの凹部の表面においてポリマーランナーからそれを切り離すこと
によって射出成形ゲート痕を形成することとを含む。当業者は、本明細書の記載を考慮し
て、従来の射出成形装置および本明細書に記載の方法の実施における技術を使用するであ
ろう。
【0039】
本明細書に記載のシールリングは、多種多様な回転シールリング用途において工業的用
途を見出す。例えば、本明細書に記載のシールリングは、ブルドーザおよび大型トラック
などの重機用の変速機のクラッチパックに使用することができ、そのため、そのようなシ
ールリングは、高回転速度下でも400psiもの高圧条件に耐えることができる。本明
細書に記載のシールリングは、自動変速機、無段変速機、およびデュアルクラッチ変速機
などの変速機、ならびに差動装置およびカムシャフト調整装置を含む様々な種類の装置に
有用であり得る。
【0040】
したがって、本開示の他の実施形態は、回転シャフトと、シャフトの周りに配置された
本明細書に記載のシールリングとを備え、その第1の側面および/またはその第2の側面
が回転シャフトに関連する溝の側壁に対して配置され、シールリングの外周面がハウジン
グまたはボアの内周面に対して配置されるように、ハウジングまたはボアがシャフトおよ
びシールリングの周りに配置された装置である。オイルなどの潤滑剤がシールリングの外
周面およびシール側面に配置されて完全なシールを提供することができる。この構成は、
上述したように、図1および図2に関して上記示されている。特に、上述した理由により
、シールリングの外周面に射出成形ゲート痕が存在することは、射出成形ゲート痕が外周
面のレベルよりも下方の凹部内に配置されるため、ボアまたはハウジングに対するその面
のシールを実質的に妨げない。そして、凹部は、外周面の幅全体にわたっては延在してい
ないことから、ハウジングまたはボアに対する外周面のシールを実質的に妨げない。
【0041】
本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されているプロセスおよび装置に
対して様々な変更および変形を行うことができることが当業者には理解されるであろう。
したがって、本開示は、本発明のそのような変更および変形が添付の特許請求の範囲およ
びそれらの均等物の範囲内にある限り、本発明のそのような変更および変形を網羅するこ
とを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10