(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20231226BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20231226BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20231226BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H02G3/16
H01M50/249
H01M50/298
B60R16/02 610A
(21)【出願番号】P 2021140018
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 法生
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直也
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-48910(JP,A)
【文献】特開2011-176920(JP,A)
【文献】特開2002-270082(JP,A)
【文献】特開2006-44443(JP,A)
【文献】特表2014-519695(JP,A)
【文献】特開2015-139287(JP,A)
【文献】特開2004-48862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H02G 3/08
H01M 50/249
H01M 50/298
B60R 16/02
H05K 5/02
H02B 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気・電子部品を搭載する電気接続箱であって、
収容凹部を有するケースと、
前記電気・電子部品が保持され、前記ケースの収容凹部内に組付けられるハウジングと、
前記ケースの前記収容凹部内へ引き込まれるケーブルと、
を備え、
前記ケースには、その上部に前記ケーブルを保持するケーブル導入部が設けられ、
前記ハウジングは、前記ケーブルの配索方向を規制する経路規制壁を有
し、
前記経路規制壁は、前記ケーブル導入部の下方に位置する、
電気接続箱。
【請求項2】
前記経路規制壁は、前記ケーブルを設定された配索経路へ案内するガイド面を有する、
請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
電気・電子部品を搭載する電気接続箱であって、
収容凹部を有するケースと、
前記電気・電子部品が保持され、前記ケースの収容凹部内に組付けられるハウジングと、
前記ケースの前記収容凹部内へ引き込まれるケーブルと、
を備え、
前記ハウジングは、前記ケーブルの配索方向を規制する経路規制壁を有し、
前記ケースは、前記収容凹部の開口側がバッテリパックに組付けられ、前記ケーブルが前記バッテリパックに配線される、
電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ハイブリッド車や電気自動車に搭載されるバッテリパックには、電気接続箱が設けられ、この電気接続箱からインバータや補機等の給電先へ給電用のケーブルが配線される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両に搭載される電気接続箱に走行時の振動が付与されると、ケースの導入部から引き込まれたケーブルが振動によって周囲のバスバやヒューズなどの電気・電子部品と接触して損傷するおそれがある。特に、電気接続箱の小型化に伴う省スペース化によってケーブルの配索スペースも狭くなっているため、周囲の部品へケーブルが接触しやすくなっている。
【0005】
また、例えば、電気接続箱内のバスバの締結部にバッテリパック側の電力線等の電線を締結する際に、狭いスペースへ通したケーブルが締結箇所に噛み込まないように注意して作業しなければならず、配線作業が煩雑となっている。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型化を図りつつ、内部に引き込んだケーブルを無理なく配索することができる配線作業性に優れた電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 電気・電子部品を搭載する電気接続箱であって、
収容凹部を有するケースと、
前記電気・電子部品が保持され、前記ケースの収容凹部内に組付けられるハウジングと、
前記ケースの前記収容凹部内へ引き込まれるケーブルと、
を備え、
前記ケースには、その上部に前記ケーブルを保持するケーブル導入部が設けられ、
前記ハウジングは、前記ケーブルの配索方向を規制する経路規制壁を有し、
前記経路規制壁は、前記ケーブル導入部の下方に位置する、電気接続箱。
【0008】
上記(1)の構成の電気接続箱によれば、ケースの収容凹部内に組付けられるハウジングが、ケースの収容凹部内へ引き込まれるケーブルの配索方向を規制する経路規制壁を有している。したがって、ケースの収容凹部内に引き込まれたケーブルを、狭いスペースにおいて配索方向を規制して予め設定した経路に沿って配索させることができる。
これにより、小型化を図りつつ、引き込んだケーブルの電気・電子部品等との干渉を抑制することができる。また、例えば、バスバの締結部へ電線を締結する際に、ケースの収容凹部内へ引き込んだケーブルの締結箇所への噛み込を抑制でき、これにより、内部の配線作業性を向上させることができる。
【0009】
(2) 前記経路規制壁は、前記ケーブルを設定された配索経路へ案内するガイド面を有する、(1)に記載の電気接続箱。
【0010】
上記(2)の構成の電気接続箱によれば、ケースの収容凹部内へ引き込んだケーブルを、経路規制壁のガイド面によってガイドし、予め設定した配索経路に沿って無理なく配索させることができる。
【0011】
(3) 電気・電子部品を搭載する電気接続箱であって、
収容凹部を有するケースと、
前記電気・電子部品が保持され、前記ケースの収容凹部内に組付けられるハウジングと、
前記ケースの前記収容凹部内へ引き込まれるケーブルと、
を備え、
前記ハウジングは、前記ケーブルの配索方向を規制する経路規制壁を有し、
前記ケースは、前記収容凹部の開口側がバッテリパックに組付けられ、前記ケーブルが前記バッテリパックに配線される、電気接続箱。
【0012】
上記(3)の構成の電気接続箱によれば、ケース内で無理なく配索されたケーブルをバッテリパック側へ円滑に配線してバッテリパックに組付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小型化を図りつつ、内部に引き込んだケーブルを無理なく配索することができる配線作業性に優れた電気接続箱を提供できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電気接続箱を示す図であって、(a)はバッテリパックへの取り付け側から視た斜視図、(b)はバッテリパックへの取り付け側と反対側から視た斜視図である。
【
図2】
図2は、電気接続箱を構成するケース及び配線ユニットの斜視図である。
【
図4】
図4は、経路規制壁が設けられたハウジングの上部における斜視図である。
【
図5】
図5は、電気接続箱のケーブル導入部におけるバッテリパックへの取り付け側から視た一部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電気接続箱を示す図であって、(a)はバッテリパックへの取り付け側から視た斜視図、(b)はバッテリパックへの取り付け側と反対側から視た斜視図である。
図2は、電気接続箱を構成するケース及び配線ユニットの斜視図である。
【0017】
図1(a)、
図1(b)及び
図2に示すように、本実施形態に係る電気接続箱10は、ケース11と、配線ユニット12とを備えている。この電気接続箱10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車に搭載するバッテリパックに組付けられる。
【0018】
電気接続箱10を構成するケース11は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金から成形されたもので、一側の開口部21で開口された収容凹部22を有している。配線ユニット12は、ケース11の収容凹部22に収容された状態でケース11に組付けられる。
【0019】
電気接続箱10は、ケース11に形成されたボルト挿通孔(図示略)に挿し込んだボルト(図示略)をバッテリパックのネジ孔へねじ込んで締結することにより、バッテリパックに組付けられる。また、電気接続箱10をバッテリパックに組付けた際に、ケース11の開口部21の縁部に装着したパッキン(図示略)によってバッテリパックとケース11との間がシールされる。
【0020】
ケース11には、長手方向の中央における側部に、信号線コネクタ40が設けられている。この信号線コネクタ40には、例えば、制御ユニット(ECU)から延びる信号線を有するワイヤハーネスのコネクタが接続される。
【0021】
この信号線コネクタ40は、内部に図示しない端子を収容するコネクタハウジング41を備えており、このコネクタハウジング41がケース11の側部に締結固定されている。この信号線コネクタ40は、コネクタハウジング41の内部に設けられた端子に接続された信号ケーブル42を有しており、この信号ケーブル42がケース11内に引き込まれている。
【0022】
また、ケース11は、その上部に、ケーブル引込部材50が取り付けられたケーブル導入部15を有している。このケーブル導入部15では、ケーブル引込部材50にケーブル51,52が保持されており、これらのケーブル51,52は、ケーブル引込部材50を介してケース11の収容凹部22内に引き込まれている。ケーブル51,52は、例えば、一方が給電線であり、他方がインターロック用の電線である。これらのケーブル51,52は、ケーブル引込部材50から引き出されて束ねられ、補機であるシートヒータ用のワイヤハーネス53とされてシートヒータ用のコネクタ(図示略)に接続されている。ケース11の収容凹部22内に引き込まれたケーブル51,52は、バッテリパックの給電部及びインターロック用のショート端子に接続される。
【0023】
図3は、配線ユニットの斜視図である。
図3に示すように、配線ユニット12は、ハウジング60を備えている。このハウジング60は、絶縁性を有する合成樹脂から成形されている。このハウジング60には、正極バスバ61、負極バスバ62が組付けられる。これらの正極バスバ61及び負極バスバ62には、例えば、インバータから延びるワイヤハーネスの電源線が接続される。
【0024】
また、ハウジング60には、その内部の収容空間60aに、フェライトやヒューズなどの電気・電子部品が組付けられる。そして、これらの正極バスバ61、負極バスバ62、フェライト及びヒューズが組付けられたハウジング60は、その開口側が図示しないカバーによって覆われる。
【0025】
配線ユニット12のハウジング60は、ケース11の収容凹部22に開口部21から組付けられて収容され、この収容された状態で、例えば、ボルトによって固定される。
【0026】
正極バスバ61及び負極バスバ62は、その端部に、スタッドボルト73a,74aが立設された締結部73,74を有している。ハウジング60は、係合溝部85,86を有している。ハウジング60に組付けられる正極バスバ61及び負極バスバ62は、各締結部73,74が係合溝部85,86に係合される。
【0027】
図4は、経路規制壁が設けられたハウジングの上部における斜視図である。
図5は、電気接続箱のケーブル導入部におけるバッテリパックへの取り付け側から視た一部の正面図である。
図6は、
図5におけるA-A断面図である。
【0028】
図4~
図6に示すように、配線ユニット12を構成するハウジング60は、経路規制壁90を有している。この経路規制壁90は、ハウジング60の上部に一体に形成されている。
【0029】
この経路規制壁90は、ケース11におけるケーブル引込部材50が取り付けられてケーブル51,52がケース11内へ引き込まれるケーブル導入部15の下方において、ケース11の内側面の近傍に配置されている。また、この経路規制壁90は、ハウジング60の係合溝部85,86に係合された正極バスバ61及び負極バスバ62の締結部73,74に対し、その後方位置である奥側に配置される。
【0030】
この経路規制壁90は、その後面側がガイド面91とされている。このガイド面91は、ハウジング60の前方側へ向かって次第に側方へ傾斜された傾斜面とされている。
【0031】
そして、ケース11のケーブル導入部15から収容凹部22内に引き込まれたケーブル51,52は、ハウジング60に一体に形成された経路規制壁90によって、その配索方向が規制されている。具体的には、ケーブル51,52は、その配索方向が、経路規制壁90のガイド面91によって、ハウジング60の前方へ向かって次第に側方へ導かれている。これにより、ケーブル51,52は、ケーブル導入部15に対し、その前方側に配置された正極バスバ61及び負極バスバ62の締結部73,74から外れた方向に導かれている。
【0032】
上記構造の電気接続箱10を組み立てるには、配線ユニット12のハウジング60をケース11の収容凹部22内に収容させてボルトによってケース11に締結する。これにより、配線ユニット12をケース11の収容凹部22内に収容させた状態に固定させる。これにより、ケース11の収容凹部22内に、配線ユニット12が組付けられた電気接続箱10が得られる。
【0033】
このように、ケース11の収容凹部22に配線ユニット12のハウジング60を組付ける際に、ケース11のケーブル導入部15から収容凹部22内に引き込まれているケーブル51,52は、ハウジング60に一体に形成された経路規制壁90によって側方へ押される。さらに、ケーブル51,52は、この経路規制壁90のガイド面91に沿って次第に側方へ導かれる。なお、ハウジング60の経路規制壁90は、ケース11の内側面に対して上縁部が近接した位置に配置される。したがって、ケーブル51,52が経路規制壁90とケース11の内面との間を通って、正極バスバ61及び負極バスバ62の締結部73,74が配置される前方側へ配索されることもない。
【0034】
このようにして組み立てられた電気接続箱10をバッテリパックに組付けるには、信号ケーブル42及びケーブル51,52の端部に設けられた図示しないコネクタや端子をバッテリパック側のコネクタや端子に接続する。さらに、正極バスバ61及び負極バスバ62の締結部73,74にバッテリパック側の電源ケーブルの端子をナットによって締結させる。このとき、ケーブル導入部15からケース11内に引き込まれたケーブル51,52は、正極バスバ61及び負極バスバ62の締結部73,74から外れた位置に配索されている。したがって、締結部73,74にバッテリパック側の電源ケーブルの端子をナットによって締結させる際に、ケーブル51,52が締結箇所に噛み込むようなことがない。つまり、ケーブル51,52が噛み込まないように注意しながら締結作業を行う必要がない。
【0035】
電気接続箱10は、バッテリパックとの配線後、ケース11をボルトによってバッテリパックへ締結することにより、パッキンによってシールされた状態でバッテリパックに組付けられる。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態に係る電気接続箱10によれば、ケース11の収容凹部22内に組付けられる配線ユニット12のハウジング60が、ケース11の収容凹部22内へ引き込まれるケーブル51,52の配索方向を規制する経路規制壁90を有している。したがって、ケース11の収容凹部22内に引き込まれたケーブル51,52を、狭いスペースにおいて配索方向を規制して予め設定した経路に沿って配索させることができる。
【0037】
これにより、小型化を図りつつ、引き込んだケーブル51,52の電気・電子部品等との干渉を抑制することができる。また、例えば、正極バスバ61及び負極バスバ62の締結部73,74へ電線を締結して接続する際に、ケース11の収容凹部22内へ引き込んだケーブル51,52の締結箇所への噛み込を抑制でき、これにより、内部の配線作業性を向上させることができる。
【0038】
しかも、経路規制壁90は、ケーブル51,52を設定された配索経路へ案内するガイド面91を有しているので、ケース11の収容凹部22内へ引き込んだケーブル51,52を、経路規制壁90のガイド面91によってガイドし、予め設定した配索経路に沿って無理なく配索させることができる。
【0039】
そして、この電気接続箱10によれば、ケース11内で無理なく配索されたケーブル51,52等をバッテリパック側へ円滑に配線してバッテリパックに組付けることができる。
【0040】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0041】
ここで、上述した本発明に係る電気接続箱の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電気・電子部品(正極バスバ61,負極バスバ62,フェライト,ヒューズ)を搭載する電気接続箱(10)であって、
収容凹部(22)を有するケース(11)と、
前記電気・電子部品(正極バスバ61,負極バスバ62,フェライト,ヒューズ)が保持され、前記ケース(11)の収容凹部(22)内に組付けられるハウジング(60)と、
前記ケース(11)の前記収容凹部(22)内へ引き込まれるケーブル(51,52)と、
を備え、
前記ハウジング(60)は、前記ケーブル(51,52)の配索方向を規制する経路規制壁(90)を有する、電気接続箱。
[2] 前記経路規制壁(90)は、前記ケーブル(51,52)を設定された配索経路へ案内するガイド面(91)を有する、[1]に記載の電気接続箱。
[3] 前記ケース(11)は、前記収容凹部(22)の開口側がバッテリパックに組付けられ、前記ケーブル(51,52)が前記バッテリパックに配線される、[1]または[2]に記載の電気接続箱。
【符号の説明】
【0042】
10:電気接続箱
11:ケース
22:収容凹部
51,52:ケーブル
60:ハウジング
61:正極バスバ(電気・電子部品)
62:負極バスバ(電気・電子部品)
90:経路規制壁
91:ガイド面