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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20231226BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231226BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610A
H05K7/00 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021156112
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023047161
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 明紀
(72)【発明者】
【氏名】宮原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】▲櫛▼引 和也
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-201292(JP,A)
【文献】特開2010-220357(JP,A)
【文献】特開2001-045635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容することになる収容部を内部に有する本体を備える電気接続箱と、前記電子部品に接続されることになるコネクタ付き電線と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記電気接続箱の前記本体は、
前記電子部品に接続されることになるコネクタから延びる電線を径方向に挟んで保持可能に構成されたスリット状の溝を有する電線保持部を、前記内部に有し、
前記電線保持部は、
当該電線保持部の溝入口部と溝最奥部との間に幅狭部を有し、前記幅狭部における溝幅が前記溝入口部における溝幅よりも狭い、ように構成され、
前記電線保持部は、
前記幅狭部における溝幅が前記コネクタ付き電線の電線径よりも小さく、前記溝入口部における溝幅が前記電線径以上であり、且つ、前記幅狭部と前記溝最奥部との間における溝幅が前記コネクタ付き電線のコネクタが通過不能な大きさである、ように構成され、
前記コネクタ付き電線は、
前記電線保持部の前記幅狭部と前記溝最奥部との間において、前記電線保持部に前記電線が挟まれた状態にて、前記電線保持部に保持される、
ワイヤハーネス。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記収容部は、
前記電子部品を差し込むことになる貫通孔を有し、
前記電線保持部は、
前記貫通孔の孔内に開口するように前記貫通孔の孔内面に前記溝入口部が設けられ、前記貫通孔の孔内から離れる向きに延びるように前記溝が設けられる、ように構成される、
ワイヤハーネス
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスにおいて、
前記電気接続箱は、
前記収容部を環状に取り囲む外壁部と、前記外壁部の一方側の開口を塞ぐように前記外壁部に組み付けられた蓋体と、前記電線を当該電気接続箱の内外に挿通させることになる挿通孔と、を更に有し、
前記蓋体は、
前記挿通孔の少なくとも一部を構成する、
ワイヤハーネス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を収容することになる電気接続箱と、その電気接続箱を用いたワイヤハーネスと、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載されるリレーボックス等のように、リレーやヒューズ等の電子部品を収容するための収容部を内部に有する電気接続箱が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-013290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電気接続箱は、一般に、車両搭載時の姿勢における上方と下方とが開放された箱状の形状を有する本体を備えており、本体の上方からリレーやヒューズ等の電子部品を収容部に収容し、本体の下方からそれら電子部品に対応したコネクタ付き電線を収容部に接続するようになっている。電子部品及びコネクタ付き電線の収容部への取り付けが完了した後、本体の上下の開口を蓋部(いわゆるアッパカバー及びロアカバー)で塞ぐことで、電気接続箱、電子部品及びコネクタ付き電線を備えたワイヤハーネスを得られる。
【0005】
ところで、ワイヤハーネスが搭載される(即ち、配索される)車両の仕様等に起因し、ワイヤハーネスの製造段階では敢えて電気接続箱の一部の収容部には電子部品を収容せず、一部の収容部をブランク箇所にする場合がある。このブランク箇所には、例えば、ワイヤハーネスを車両に搭載する段階又はその準備段階で、車両の仕様に対応した電子部品(例えば、負荷駆動用の半導体パワーインテグレーション。いわゆるP/I)を、後付けで収容する。この場合、後付けされる電子部品に接続するためのコネクタ付き電線は、電子部品の収容の前段階(即ち、ワイヤハーネスの製造段階)で、あらかじめ電気接続箱に取り付けておくことになる。一例として、電気接続箱に専用のコネクタ仮係止部を設け、ワイヤハーネスの製造段階で、このコネクタ仮係止部に後付け用のコネクタ付き電線を一時的に係止させておくことになる。
【0006】
しかし、上述した例のようにコネクタ付き電線を電気接続箱に仮係止する場合、ワイヤハーネスを車両に搭載するために輸送する際の振動等に起因し、コネクタ仮係止部からコネクタ付き電線が意図せず分離し、電気接続箱の内部に(例えば、収容部とロアカバーとの間の空間内に)コネクタ付き電線が落下する場合がある。このような落下が生じると、電子部品を後付けする工程で、電気接続箱の内部からコネクタ付き電線を外部に取り出す作業が必要になる。このような取り出し作業は、ワイヤハーネスを車両に搭載する作業の作業性を損なう原因となり得る。
【0007】
更に、コネクタ付き電線は通常は収容部の下方(即ち、ロアカバー側)に配置されるため、後付け用のコネクタ付き電線は、収容部の上方から電子部品を後付けする工程に備えて、収容部の上方に引き出してコネクタ仮係止部に係止されることになる。よって、そのようにコネクタ付き電線を引き出す分だけ、電線に無駄な余長が必要になる。電線の無駄な余長は、ワイヤハーネスの製造コストを高める原因となり得る。加えて、収容部の下方からコネクタ付き電線を収容部に取り付ける作業が完了した後、後付け用のコネクタ付き電線を収容部に仮係止させるためだけに、収容部の上方からコネクタ付き電線を引き出す作業を行うことになる。このような引き出し作業は、ワイヤハーネスを製造する作業の作業性を損なう原因となり得る。
【0008】
このように、ワイヤハーネスを車両へ搭載する際の作業性の点でも、ワイヤハーネスの製造コストやワイヤハーネスを製造する際の作業性の点でも、後付け用のコネクタ付き電線を電気接続箱へ仮保持するための構造について、改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的の一つは、後付け用のコネクタ付き電線の仮保持性能に優れた気接続箱を用いたワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスは、以下を特徴としている。
【0013】
電子部品を収容することになる収容部を内部に有する本体を備える電気接続箱と、前記電子部品に接続されることになるコネクタ付き電線と、を備えるワイヤハーネスであって、
前記電気接続箱の前記本体は、
前記電子部品に接続されることになるコネクタから延びる電線を径方向に挟んで保持可能に構成されたスリット状の溝を有する電線保持部を、前記内部に有し、
前記電線保持部は、
当該電線保持部の溝入口部と溝最奥部との間に幅狭部を有し、前記幅狭部における溝幅が前記溝入口部における溝幅よりも狭い、ように構成され、
前記電線保持部は、
前記幅狭部における溝幅が前記コネクタ付き電線の電線径よりも小さく、前記溝入口部における溝幅が前記電線径以上であり、且つ、前記幅狭部と前記溝最奥部との間における溝幅が前記コネクタ付き電線のコネクタが通過不能な大きさである、ように構成され、
前記コネクタ付き電線は、
前記電線保持部の前記幅狭部と前記溝最奥部との間において、前記電線保持部に前記電線が挟まれた状態にて、前記電線保持部に保持される、
ワイヤハーネスであること。
【発明の効果】
【0015】
発明に係るワイヤハーネスによれば、電気接続箱の本体が有する電線保持部が、電子部品に接続されることになるコネクタ付き電線を径方向に挟んで保持可能に構成されたスリット状の溝を有する。電線保持部は、電線保持部の溝入口部と溝最奥部との間に幅狭部を有し、幅狭部における溝幅がコネクタ付き電線の電線径よりも小さく、溝入口部における溝幅が電線径以上であるように構成される。そこで、後付け用のコネクタ付き電線を電気接続箱に仮保持する際、コネクタ付き電線を電線保持部の溝入口部から溝最奥部に向けて押し込むことで、電線保持部の幅狭部を電線部分で押し広げながら通過させ、電線を幅狭部と溝最奥部との間に仮保持できる。ここで、幅狭部と溝最奥部との間における溝幅はコネクタ付き電線のコネクタが通過不能な大きさであるため、コネクタを、電線保持部のスリット周縁に載せ置いた状態で仮保持できる。よって、コネクタ付き電線を電線保持部で仮保持すれば、この電線が意図せず電線保持部から分離することが幅狭部で抑制される。更に、上述した従来の例のように後付け用のコネクタ付き電線を収容部から引き出す必要がない分、無駄な電線の余長を低減することができる。加えて、電線保持部のスリット間にコネクタ付き電線を押し込む作業は、後付け用ではない通常のコネクタ付き電線を収容部に組み付ける側(例えば、上述した収容部の下方)から行うことができる。よって、仮保持作業の作業性を向上できる。したがって、本構成のワイヤハーネスは、従来のワイヤハーネスに比べ、後付け用のコネクタ付き電線の仮保持性能に優れている。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る電気接続箱(但し、アッパカバーの図示は省略)を用いたワイヤハーネスの斜視図である。
図2図2は、図1に示すフレームとロアカバーとの斜視図である。
図3図3は、図2に示すフレームにおける収容部を含む一部分の上面図である。
図4図4は、図3のA部の拡大図である。
図5図5は、図4のB-B断面図である。
図6図6は、図5のC-C断面図である。
図7図7は、後付け用のコネクタ付き電線を電線保持部から引き出す様子を示す、図5に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、図1に示す本発明の実施形態に係る電気接続箱1を用いたワイヤハーネス3について説明する。電気接続箱1は、典型的には、車両に搭載され、且つ、リレー及びヒューズ等の電子部品やその他の部品である複数の部品4(図1参照)及び電子部品5(図1参照)を収容する内部空間を有するリレーボックスである。
【0019】
以下、説明の便宜上、図1に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。電気接続箱1の車両搭載時において、「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、それぞれ、車両の前後方向、左右方向及び上下方向に対応している。また、電気接続箱1の内部に面する側を「内」側と呼び、電気接続箱1の外部に面する側を「外」側と呼ぶ。
【0020】
電気接続箱1では、図1に示すように、電気接続箱1の内部に位置する複数の部品4及び電子部品5に電気的に接続されたコネクタを一端に備えた複数のコネクタ付き電線2が、電気接続箱1の右方側部に設けられた電線引出孔8を介して、電気接続箱1の外部へと導出されている。電気接続箱1と、電気接続箱1から導出されたコネクタ付き電線2と、により、ワイヤハーネス3が構成される。
【0021】
複数の部品4は、ワイヤハーネス3の製造段階にて電気接続箱1の保持部12(図1参照)に収容される部品である。一方、電子部品5は、車両の仕様に対応した電子部品(例えば、負荷駆動用の半導体パワーインテグレーション。いわゆるP/I)であり、ワイヤハーネス3の製造段階では電気接続箱1には収容されず、その後のワイヤハーネス3の車両への搭載段階又は搭載の準備段階にて電気接続箱1の収容部13(図1参照)に後付けで収容される。このため、ワイヤハーネス3の製造段階では、収容部13はブランク箇所となる(図1参照)。
【0022】
電気接続箱1から延出する複数のコネクタ付き電線2のうち複数の部品4に接続されるものは、ワイヤハーネス3の製造段階にて複数の部品4にそれぞれ接続される。以下、電気接続箱1から延出する複数のコネクタ付き電線2のうち電子部品5(例えば、後付けされるP/I)に接続されるものを、特に「コネクタ付き電線2a」と呼ぶ(図3図5参照)。コネクタ付き電線2aは、図5に示すように、電線31と、電線31の一端に設けられたコネクタ32とで構成される。コネクタ付き電線2aについては、ワイヤハーネス3の製造段階では、接続対象(=後付けされる電子部品5)が存在しないため、電気接続箱1に設けられた電線保持部14によってコネクタ32が仮保持される(図3図6参照)。この点については後述される。
【0023】
電気接続箱1は、図1及び図2に示すように、フレーム6と、フレーム6の下端開口を塞ぐようにフレーム6の下方に組み付けられるロアカバー7と、フレーム6の上端開口を塞ぐようにフレーム6の上方に組み付けられるアッパカバー(図示省略)と、により構成される。電気接続箱1を構成する上記3つの部品は全て、樹脂成形体である。
【0024】
以下、電気接続箱1を構成するフレーム6、ロアカバー7、及び、アッパカバーについて順に説明する。まず、フレーム6について説明する。図2に示すように、フレーム6は、上下方向に延びる略矩形筒状の側壁部11を備える。側壁部11は、電気接続箱1の側面の外観の大部分を構成する。
【0025】
側壁部11により囲まれたフレーム6の内部空間のうち前端部の一部を除く大部分には、図1及び図2に示すように、保持部12が、上下方向に直交する方向に延在するように設けられている。保持部12には、複数の部品4が、保持部12の延在方向に沿って並ぶように保持されることになる。フレーム6の内部空間のうち前端部の一部には、収容部13が設けられている。収容部13には、後付される電子部品5が収容されることになる。収容部13は、電子部品5の外形状に対応した略直方体状の空間であり、上方及び下方に開放されている。
【0026】
フレーム6の内部空間において、収容部13の左後隅部に隣接する位置には、図3及び図4に示すように、電線保持部14が設けられている。電線保持部14は、収容部13の左後隅部の近傍位置に連通し、且つ、当該位置から左方に延びるスリット状の溝15を有している。溝15は、収容部13を上下方向に貫通している。
【0027】
左右方向に延びる溝15の溝幅(前後方向の距離)は、溝15の位置に応じて変化する。具体的には、図6に示すように、溝15は、収容部13に連通する溝入口部15aと、溝15の左端部である溝最奥部15bとの間に、幅狭部15cを有している。幅狭部15cの溝幅D2は、コネクタ付き電線2aの電線31の電線径D1より小さく、溝入口部15aの溝幅D3は、電線31の電線径D1以上となっている。即ち、幅狭部15cの溝幅D2は、溝入口部15aの溝幅D3より狭い。また、幅狭部15cと溝最奥部15bとの間における溝幅D4は、コネクタ付き電線2aのコネクタ32が通過不能な大きさとなっている。
【0028】
溝幅D4は、本例では、電線31の電線径D1よりも僅かに大きい。しかし、溝幅D4は、電線31の電線径D1と同じであってもよいし、電線31の電線径D1よりも僅かに小さくてもよい。溝幅D4は、電線31を径方向に挟んで保持する点で適切な大きさに設計されればよい。
【0029】
なお、図6では、説明の便宜上、電線31が単一の円形断面を有するよう図示されている。しかし、電線31は、必ずしも1本の素線で構成される必要はなく、複数の素線を束ねた電線束であってもよい。電線31が電線束である場合、電線径D1は、例えば、電線束の断面において、電線束の外周が出来る限り多くの箇所で内接する仮想的な円形の直径として定義され得る。
【0030】
側壁部11の下端部における周方向の複数箇所(本例では、10箇所)の外面には、それぞれ、上下方向に延びる貫通孔を含む被係止部16が一体に設けられている(図2参照)。被係止部16は、ロアカバー7をフレーム6に組み付ける機能を有する。
【0031】
側壁部11の上端部における周方向の複数箇所(本例では、4箇所)の外面には、それぞれ、被係止部17が一体に設けられている(図2参照)。被係止部17は、アッパカバーをフレーム6に組み付ける機能を有する。
【0032】
側壁部11における電線引出孔8(図1参照)に対応する箇所には、下方に開口する半円筒状の樋状部18が、右方に延びるように設けられている(図2参照)。樋状部18は、電線引出孔8を画成する内壁の上側部分を構成する機能を有する。
【0033】
次いで、ロアカバー7について説明する。図2に示すように、ロアカバー7は、電気接続箱1の下側側面の外観の大部分を構成する環状の側壁部21と、側壁部21の環状の下端開口を塞ぐと共に電気接続箱1の底面の外観の大部分を構成する底壁部22と、を一体に備える。側壁部21の環状の上端縁部は、フレーム6の側壁部11の環状の下端縁部に対応する形状を有し、側壁部11の環状の下端縁部と嵌合可能となっている。
【0034】
側壁部21の上端部における周方向の複数箇所(本例では、10箇所)の外面には、それぞれ、フレーム6の複数の被係止部16に対応して、上方に延びる係止片23が一体に設けられている(図2参照)。側壁部21における電線引出孔8(図1参照)に対応する箇所には、上方に開口する半円筒状の樋状部24が、右方に延びるように設けられている(図2参照)。樋状部24は、電線引出孔8を画成する内壁の下側部分を構成する機能を有する。
【0035】
次いで、図示しないアッパカバーについて説明する。アッパカバーは、電気接続箱1の上側側面の外観の大部分を構成する環状の側壁部と、当該側壁部の環状の上端開口を塞ぐと共に電気接続箱1の上面の外観の大部分を構成する上壁部と、を一体に備える。アッパカバーの側壁部の環状の下端縁部は、フレーム6の側壁部11の環状の上端縁部に対応する形状を有し、側壁部11の環状の上端縁部と嵌合可能となっている。アッパカバーの側壁部における周方向の複数箇所(本例では、4箇所)の外面には、それぞれ、フレーム6の複数の被係止部17に対応して、係止部が一体に設けられている。
【0036】
以上、電気接続箱1を構成するフレーム6、ロアカバー7、及びアッパカバーについて説明した。
【0037】
次いで、ワイヤハーネス3の製造手順について説明する。ワイヤハーネス3を製造するため、まず、複数の部品4を、上方から、フレーム6の保持部12に組み付ける。次いで、コネクタ付き電線2aを除いた複数のコネクタ付き電線2のコネクタを、下方から、対応する部品4にそれぞれ接続する。これにより、複数の部品4と複数のコネクタ付き電線2とがそれぞれ電気的に接続される。
【0038】
次いで、コネクタ付き電線2aのコネクタ32(即ち、コネクタ付き電線2aの一端部)を、電線保持部14を利用して電気接続箱1の保持部12に仮保持させる。具体的には、コネクタ32を、下方から、フレーム6の収容部13の内部空間を挿通させて、電線保持部14の近傍の収容部13の上縁部まで移動させる。次いで、コネクタ32の近傍のコネクタ付き電線2aの電線31を、電線保持部14の溝入口部15aから溝最奥部15bに向けて押し込む。これにより、電線保持部14の幅狭部15cを電線31で押し広げながら電線31を通過させ、電線31を幅狭部15cと溝最奥部15bとの間の溝15に保持させることができる(図6参照)。加えて、コネクタ付き電線2aのコネクタ32は、図3図5に示すように、電線保持部14の溝15の周縁に載せ置いた状態で保持させることができる。
【0039】
このように、上述した従来の例のようにコネクタ付き電線を引き出して保持する必要がない分、無駄な電線31の余長を低減することができる。更に、電線保持部14の溝15にコネクタ付き電線2aの電線31を押し込む作業は、コネクタ付き電線2a以外の複数のコネクタ付き電線2を保持部12に組み付ける側と同じ下方側から行うことができる。よって、コネクタ付き電線2aを仮保持する作業の作業性を向上できる。
【0040】
更に、幅狭部15cの溝幅D2がコネクタ付き電線2aの電線31の電線径D1より小さい。よって、製造が完了したワイヤハーネス3を車両に搭載するために輸送する際などにおいてワイヤハーネス3に振動等が付与されても、電線保持部14の溝15からコネクタ付き電線2aの電線31が意図せず分離することが抑制され得る。
【0041】
コネクタ付き電線2aの仮保持が完了すると、次いで、フレーム6にロアカバー7及びアッパカバーを組み付ける。フレーム6にロアカバー7を組み付けるためには、まず、フレーム6の内部空間から下方に向けてフレーム6の外部へと延びている複数のコネクタ付き電線2(コネクタ付き電線2aを含む)の電線を束ねた状態で、ロアカバー7の複数の係止片23(図2参照)を、下方からフレーム6の被係止部16(図2参照)の複数の貫通孔にそれぞれ挿入し、且つ、フレーム6の樋状部18とロアカバー7の樋状部24との間に電線束を配置する。そして、この状態から、ロアカバー7の側壁部21の環状の上端縁部をフレーム6の側壁部11の環状の下端縁部に嵌合させ、且つ、複数の係止片23を複数の被係止部16に係止させる。これにより、フレーム6へのロアカバー7の組み付けが完了する(図1参照)。
【0042】
同様に、フレーム6にアッパカバーを組み付けるためには、アッパカバーの側壁部の環状の下端縁部をフレーム6の側壁部11の環状の上端縁部に嵌合させ、且つ、アッパカバーの複数の係止部をフレーム6の複数の被係止部17に係止させる。これにより、フレーム6へのアッパカバーの組み付けが完了する。このように、フレーム6へのロアカバー7及びアッパカバーの組み付けが完了することで、電気接続箱1の組み付けが完了すると共に、ワイヤハーネス3の製造(組み付け)が完了する。
【0043】
電気接続箱1の組付完了状態(ワイヤハーネス3の製造完了状態)では、複数の係止片23と複数の被係止部16との係止により、ロアカバー7がフレーム6から下方へ分離することが防止される。同様に、アッパカバーの複数の係止部と複数の被係止部17との係止により、アッパカバーがフレーム6から上方へ分離することが防止される。更に、フレーム6の樋状部18とロアカバー7の樋状部24とにより電線引出孔8が画成されており(図1参照)、電線引出孔8を介して、複数のコネクタ付き電線2の電線が電気接続箱1の外部へと導出されている(図1参照)。
【0044】
製造が完了し且つコネクタ付き電線2aが仮保持された状態にあるワイヤハーネス3は、その後、車両に搭載される(即ち、配索される)。ワイヤハーネス3の車両への搭載段階又は搭載の準備段階にて、車両の仕様に対応した電子部品5が準備され、電子部品5とコネクタ付き電線2aのコネクタ32とが接続され、且つ、電子部品5が電気接続箱1の収容部13に収容される。
【0045】
具体的には、まず、フレーム6に組付けられているアッパカバーがフレーム6から取り外される。次いで、図7における黒色矢印に示すように、電線保持部14の溝15に保持されているコネクタ付き電線2aの電線31が溝15から収容部13へと引き出される。そして、図7における白色矢印に示すようにコネクタ付き電線2aのコネクタ32が、後付けされる電子部品5に向けて近づけられて、電子部品5と接続される。その後、コネクタ32と接続された電子部品5は、上方から、収容部13に収容される。このように、フレーム6にロアカバー7を組み付けて電線引出孔8にコネクタ付き電線2aの電線31を挿通させた状態のまま(即ち、ロアカバー7を取り外すことなく)、フレーム6の上端開口から、電子部品5を収容部13に収容させるとともにコネクタ付き電線2aを電子部品5に接続する作業を行うことができる。電子部品5とコネクタ付き電線2aのコネクタ32との接続作業、及び、電子部品5の収容部13への収容作業が完了すると、フレーム6にアッパカバーが再び組み付けられる。
【0046】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る電気接続箱1及びワイヤハーネス3によれば、電気接続箱1のフレーム6が有する電線保持部14が、電子部品5に接続されることになるコネクタ付き電線2aの電線31を径方向に挟んで保持可能に構成されたスリット状の溝15を有する。電線保持部14は、電線保持部14の溝入口部15aと溝最奥部15bとの間に幅狭部15cを有し、幅狭部15cにおける溝幅D2がコネクタ付き電線2aの電線31の電線径D1よりも小さく、溝入口部15aにおける溝幅D3が電線径D1以上である、ように構成される。そこで、後付け用のコネクタ付き電線2aを電気接続箱1に仮保持させる際、コネクタ付き電線2aの電線31を電線保持部14の溝入口部15aから溝最奥部15bに向けて押し込むことで、電線保持部14の幅狭部15cを電線31で押し広げながら通過させ、電線31を幅狭部15cと溝最奥部15bとの間に保持させることができる。ここで、幅狭部15cと溝最奥部15bとの間における溝幅D4はコネクタ付き電線2aのコネクタ32が通過不能な大きさであるため、コネクタ32を、電線保持部14のスリット周縁に載せ置いた状態で保持させることができる。
【0047】
よって、上述した従来の例のようにコネクタ付き電線を引き出して保持する必要がない分、無駄な電線31の余長を低減することができる。更に、電線保持部14のスリット間にコネクタ付き電線2aの電線31を押し込む作業は、後付け用ではない他のコネクタ付き電線2を保持部12に組み付ける側(下方)から行うことができる。その結果、コネクタ付き電線2aを仮保持する作業の作業性を向上できる。したがって、本実施形態に係る電気接続箱1及びワイヤハーネス3は、後付け用のコネクタ付き電線2aの仮保持性能に優れている。
【0048】
更に、電線保持部14が、後付け用の電子部品5を収容する収容部13に隣接するように配置される。これにより、後付け用の電子部品5を収容部13に収容する際、電子部品5にコネクタ付き電線2aを接続する作業が容易になる。よって、電子部品5を後付けする作業の作業性を向上できる。
【0049】
更に、フレーム6にロアカバー7を組み付けて電線引出孔8に電線31を挿通させた状態のまま(即ち、ロアカバー7を取り外すことなく)、フレーム6の上端開口から、後付け用の電子部品5を収容部13に収容させとともにコネクタ付き電線2aを電子部品5に接続する作業を行うことができる。よって、電子部品5を後付けする作業の作業性を向上できる。
【0050】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0051】
上記実施形態では、電線保持部14は、収容部13に隣接するように配置されている。これに対し、電線保持部14は、収容部13から離れた位置に配置されていてもよい。
【0052】
ここで、上述した本発明に係る電気接続箱1及びワイヤハーネス3の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
【0053】
[1]
電子部品(5)を収容することになる収容部(13)を内部に有する本体(6)を備える電気接続箱(1)であって、
前記本体(6)は、
前記電子部品(5)に接続されることになるコネクタ(32)から延びる電線(31)を径方向に挟んで保持可能に構成されたスリット状の溝(15)を有する電線保持部(14)を、前記内部に有し、
前記電線保持部(14)は、
当該電線保持部(14)の溝入口部(15a)と溝最奥部(15b)との間に幅狭部(15c)を有し、前記幅狭部(15c)における溝幅(D2)が前記溝入口部(15a)における溝幅(D3)よりも狭い、ように構成される、
電気接続箱(1)。
【0054】
上記[1]の構成の電気接続箱によれば、電気接続箱の本体が有する電線保持部が、電子部品に接続されることになるコネクタから延びる電線(例えば、上述した後付け用のコネクタ付き電線)を径方向に挟んで保持可能に構成されたスリット状の溝を有する。この電線保持部は、電線保持部の溝入口部と溝最奥部との間に幅狭部を有し、幅狭部における溝幅が溝入口部における溝幅よりも狭い、ように構成される。そこで、例えば、後付け用のコネクタ付き電線を電気接続箱に仮保持する場合、コネクタから延びる電線を電線保持部の溝入口部から溝最奥部に向けて押し込むことで、電線保持部の幅狭部を電線で押し広げながら通過させ、電線を幅狭部と溝最奥部との間に仮保持できる。このとき、コネクタは、例えば、電線保持部のスリット周縁に載せ置いた状態で仮保持できる。よって、電線を電線保持部で仮保持すれば、電線が意図せず電線保持部から分離することが幅狭部で抑制される。更に、上述した従来の例のように後付け用のコネクタ付き電線を収容部から引き出す必要がない分、無駄な電線の余長を低減することができる。加えて、電線保持部のスリット間に電線を押し込む作業は、後付け用ではない通常のコネクタ付き電線を収容部に組み付ける側(例えば、上述した収容部の下方)から行うことができる。よって、仮保持作業の作業性を向上できる。以上のように、本構成の電気接続箱は、従来の電気接続箱に比べ、後付け用のコネクタ付き電線の仮保持性能に優れている。
【0055】
[2]
上記[1]に記載の電気接続箱(1)において、
前記収容部(13)は、
前記電子部品(5)を差し込むことになる貫通孔を有し、
前記電線保持部(14)は、
前記貫通孔の孔内に開口するように前記貫通孔の孔内面に前記溝入口部(15a)が設けられ、前記貫通孔の孔内から離れる向きに延びるように前記溝(15)が設けられる、ように構成される、
電気接続箱(1)。
【0056】
上記[2]の構成の電気接続箱によれば、電線保持部が、後付け用の電子部品を収容するときに電子部品を差し込むことになる貫通孔の周縁部に配置される。換言すると、電線保持部が、収容部に隣接するように配置される。これにより、後付け用の電子部品を収容部に収容する際、電子部品にコネクタ付き電線を接続する作業が容易になる。よって、電子部品を後付けする作業の作業性を向上できる。
【0057】
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の電気接続箱(1)において、
前記電気接続箱(1)は、
前記収容部(13)を環状に取り囲む外壁部(11)と、前記外壁部(11)の一方側の開口を塞ぐように前記外壁部(11)に組み付けられた蓋体(7)と、前記電線(31)を当該電気接続箱(1)の内外に挿通させることになる挿通孔(8)と、を更に有し、
前記蓋体(7)は、
前記挿通孔(8)の少なくとも一部を構成する、
電気接続箱(1)。
【0058】
上記[3]の構成の電気接続箱によれば、電気接続箱に蓋体(例えば、ロアカバー)を組み付けて挿通孔に電線を挿通させた状態のまま(即ち、この蓋体を取り外すことなく)、外壁部の他方側の開口から、後付け用の電子部品を収容部に収容させるとともにコネクタ付き電線を電子部品に接続する作業を行うことができる。よって、電子部品を後付けする作業の作業性を向上できる。
【0059】
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の電気接続箱(1)と、前記電子部品(5)に接続されることになるコネクタ付き電線(2a)と、を備えるワイヤハーネス(3)であって、
前記電線保持部(14)は、
前記幅狭部(15c)における溝幅(D2)が前記コネクタ付き電線(2a)の電線径(D1)よりも小さく、前記溝入口部(15a)における溝幅(D3)が前記電線径(D1)以上であり、且つ、前記幅狭部(15c)と前記溝最奥部(15b)との間における溝幅(D4)が前記コネクタ付き電線(2a)のコネクタ(32)が通過不能な大きさである、ように構成され、
前記コネクタ付き電線(2a)は、
前記電線保持部(14)の前記幅狭部(15c)と前記溝最奥部(15b)との間において、前記電線保持部に前記電線(31)が挟まれた状態にて、前記電線保持部(14)に保持される、
ワイヤハーネス(3)。
【0060】
上記[4]の構成のワイヤハーネスによれば、電気接続箱の本体が有する電線保持部が、電子部品に接続されることになるコネクタ付き電線を径方向に挟んで保持可能に構成されたスリット状の溝を有する。電線保持部は、電線保持部の溝入口部と溝最奥部との間に幅狭部を有し、幅狭部における溝幅がコネクタ付き電線の電線径よりも小さく、溝入口部における溝幅が電線径以上であるように構成される。そこで、後付け用のコネクタ付き電線を電気接続箱に仮保持する際、コネクタ付き電線を電線保持部の溝入口部から溝最奥部に向けて押し込むことで、電線保持部の幅狭部を電線部分で押し広げながら通過させ、電線を幅狭部と溝最奥部との間に仮保持できる。ここで、幅狭部と溝最奥部との間における溝幅はコネクタ付き電線のコネクタが通過不能な大きさであるため、コネクタを、電線保持部のスリット周縁に載せ置いた状態で仮保持できる。よって、コネクタ付き電線を電線保持部で仮保持すれば、この電線が意図せず電線保持部から分離することが幅狭部で抑制される。更に、上述した従来の例のように後付け用のコネクタ付き電線を収容部から引き出す必要がない分、無駄な電線の余長を低減することができる。加えて、電線保持部のスリット間にコネクタ付き電線を押し込む作業は、後付け用ではない通常のコネクタ付き電線を収容部に組み付ける側(例えば、上述した収容部の下方)から行うことができる。よって、仮保持作業の作業性を向上できる。したがって、本構成のワイヤハーネスは、従来のワイヤハーネスに比べ、後付け用のコネクタ付き電線の仮保持性能に優れている。
【符号の説明】
【0061】
1 電気接続箱
2a コネクタ付き電線
3 ワイヤハーネス
5 電子部品
6 フレーム(本体)
7 ロアカバー(蓋体)
8 電線引出孔(挿通孔)
11 側壁部(外壁部)
13 収容部
14 電線保持部
15 溝
15a 溝入口部
15b 溝最奥部
15c 幅狭部
31 電線
32 コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7