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  • 特許-窒素酸化物吸蔵触媒 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】窒素酸化物吸蔵触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/57 20240101AFI20231226BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20231226BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231226BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231226BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20231226BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231226BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20231226BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20231226BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B01J35/04 301L
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/24 E
F01N3/28 301P
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/24 C
F01N3/08 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021503171
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019072422
(87)【国際公開番号】W WO2020043578
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】18191226.2
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンケ・ヴェルツ
(72)【発明者】
【氏名】リュディガー・ホイアー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン・ベッツ
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-536756(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0305612(US,A1)
【文献】特開2013-146693(JP,A)
【文献】特開2015-086848(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86 - 53/90
B01D 53/94 - 53/96
F01N 3/10 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端面aと第2の端面bとの間に延在する長さLの担体基材と、異なる組成の触媒活性物質区画A、B及びCと、を含む排気後処理システムの窒素酸化物吸蔵触媒であって、
-物質区画Aは、パラジウム又は重量比がPd:Pt>1のパラジウム及び白金と、酸化セリウムとを含み、
-物質区画Bは、白金若しくは重量比がPt:Pd>1の白金及びパラジウム、酸化セリウム、及び/又はセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含み、
-物質区画Cは、白金又は重量比がPt:Pd>1の白金及びパラジウムと、担体酸化物とを含み、
式中、
-物質区画Bは、物質区画Aの上に配置され、
-物質区画Cは、物質区画Bの上に配置され、前記担体基材の前記第2の端面bから開始して前記長さLの20~60%の長さにわたって延在する、排気後処理システムの窒素酸化物吸蔵触媒。
【請求項2】
前記物質区画Aがパラジウムを含み、白金を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記物質区画Aが、パラジウム及び白金をPd:Ptの重量比20:1~1.1:1で含むことを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
物質区画Aがアルカリ土類酸化物を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記アルカリ土類酸化物が、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、及び酸化バリウムであることを特徴とする、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
物質区画Bが白金を含み、パラジウムを含まないことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
物質区画Bが、白金及びパラジウムをPt:Pdの重量比20:1~1.1:1で含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
物質区画Cが白金を含み、パラジウムを含まないことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
物質区画Cが、白金及びパラジウムをPt:Pdの重量比20:1~1.1:1で含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
物質区画A及び物質区画Bの両方が、前記担体基材の長さL全体にわたって、前記端面aと前記bとの間に延在することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項11】
前記物質区画Aが、前記担体基材上に直接位置し、物質区画Bが物質区画A上に直接位置し、物質区画Cが物質区画B上に直接位置することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項12】
排気後処理システムの窒素酸化物吸蔵触媒装置であって、
a)第1の端面aと第2の端面bとの間に延在する長さLの担体基材と、異なる組成の触媒活性物質区画A、物質区画B及び物質区画Cと、を含む触媒であって、
-物質区画Aは、パラジウム又は重量比がPd:Pt>1のパラジウム及び白金と、酸化セリウムとを含み、
-物質区画Bは、白金若しくは重量比がPt:Pd>1の白金及びパラジウム、酸化セリウム、及び/又はセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含み、
-物質区画Cは、白金又は重量比がPt:Pd>1の白金及びパラジウムと、担体酸化物とを含み、
式中、
-物質区画Bは、物質区画Aの上に配置され、
-物質区画Cは、物質区画Bの上に配置され、前記担体基材の前記第2の端面bから開始して前記長さLの20~60%の長さにわたって延在する触媒と、
b)SCR触媒と、を含む、排気後処理システムの窒素酸化物吸蔵触媒装置。
【請求項13】
前記SCR触媒が、構造型BEA、AEI、CHA、KFI、ERI、LEV、MER、又はDDRに属するゼオライトであり、コバルト、鉄、銅、又はそれらの金属の2つ若しくは3つの混合物と交換されることを特徴とする、請求項12に記載の触媒装置。
【請求項14】
前記SCR触媒の第1の部分がウォールフローフィルタ上のコーティングとして存在し、第2の部分がフロースルー基材上のコーティングとして存在し、前記ウォールフローフィルタが、請求項1~11のいずれか1項に記載の触媒に隣接していることを特徴とする、請求項12又は13に記載の触媒装置。
【請求項15】
前記SCR触媒に続いて、アンモニアブロッキング触媒を含むことを特徴とする、請求項12~14のいずれか1項に記載の触媒装置。
【請求項16】
リーン-バーンエンジンを使用して運転される自動車からの排気ガスの浄化方法であって、前記排気ガスが、請求項12~15のいずれか1項に記載の触媒装置を通して行われることを特徴とし、前記排気ガスが、最初に請求項1~11のいずれか1項に記載の触媒を通過し、次いでSCR触媒を通過し、次いでアンモニアブロッキング触媒を通過するように誘導される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関からの排気ガスを処理する窒素酸化物吸蔵触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等のリーン-バーン内燃機関で運転される自動車の排気ガスは、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NO)に加えて、シリンダーの燃焼室内における燃料の不完全燃焼に起因する成分も含有する。上記成分は、その大部分もガス状である残留炭化水素(HC)に加えて、粒子状排出物を含み、排出物は「ディーゼルすす」又は「すす粒子」とも称される。これらは、主に炭素質粒子状物質及び付着性液相からの複合アグロメレートであり、通常は主に長鎖炭化水素凝集物からなる。固体成分に付着する液相は「可溶性有機成分SOF」又は「揮発性有機成分VOF」とも呼ばれる。
【0003】
このような排気ガスを浄化するためには、特定の成分を、できる限り完全に無害な化合物へと変換しなければならず、これは、好適な触媒を使用することによってのみ実現可能である。
【0004】
すす粒子は、粒子フィルタの支援により排気ガスから極めて効果的に除去することができる。セラミック材料で作製したウォールフローフィルタは、特に成功することが立証されている。これらのウォールフローフィルタは、多孔性壁によって形成された多数の並列チャネルで構成されている。フィルタの第1の側部で閉じられ、かつフィルタの第2の側部で開く第2のチャネルと一緒に、フィルタの第1の側部で開き、かつフィルタの第2の側部で閉じる第1のチャネルが形成されるように、チャネルは、フィルタの一端で交互に閉じられる。例えば、第1のチャネルに流れ込む排気ガスは、第2のチャネルを介してだけ再度フィルタを出ることができ、また、この目的のためには、第1及び第2のチャネル間の多孔性壁を通って流れなければならない。排気ガスが壁を通過するときに、粒子が保持される。
【0005】
粒子フィルタに、触媒活性コーティングを提供できることは既知である。例えば、欧州特許第1820561(A1)号は、フィルタ処理されたすす粒子の燃焼を促進する触媒層を有するディーゼル粒子フィルタのコーティングを記載している。
【0006】
酸素の存在下で、排気ガスから窒素酸化物を除去するための既知の方法は、好適な触媒上でのアンモニアによる選択的接触還元(SCR法)である。本方法では、排気ガスから除去されるべき窒素酸化物が、アンモニアを使用して窒素及び水に変換される。
【0007】
式(I)によるいわゆるstandard SCR反応
NH+NO+1/4O → N+3/2HO (I)
及び式(II)によるいわゆるfast SCR反応
NH+1/2NO+1/2NO → N+3/2HO (II)
は、SCR反応に必須の反応経路として特定された。
【0008】
リーンバーン内燃機関からの排気ガスは、通常、窒素酸化物の総割合の約10%のみの量でNOを含むため、fast SCR反応を利用するために、例えば上流の酸化触媒を用いて、その割合を増加させることが有利である。
【0009】
SCR触媒として、例えば、鉄交換、特に銅交換されたゼオライトを使用することができる。例えば、国際公開第2008/106519(A1)号、同第2008/118434(A1)号、及び同第2008/132452(A2)号を参照されたい。
【0010】
窒素酸化物をアンモニアで変換するためのSCR触媒は、いかなる貴金属も含まず、特に白金及びパラジウムを含まない。このような金属の存在下では、酸素を用いてアンモニアを窒素酸化物へと酸化することが好ましく、SCR反応(窒素酸化物によるアンモニアの変換)がそれに次いで好ましい。文献で、白金交換又はパラジウム交換ゼオライトを「SCR触媒」と呼ぶことがある場合、これはNHSCR反応を指すのではなく、炭化水素による窒素酸化物の還元を指す。しかしながら、後者の変換はあまり選択的ではなく、したがって「SCR反応」の代わりに「HC-DeNOx反応」と呼ばれる。
【0011】
還元剤として使用されるアンモニアは、尿素、カルバミン酸アンモニウム、又はギ酸アンモニウムなどのアンモニア前駆体化合物を計量して排気管内に入れ、その後の加水分解よって利用可能とすることができる。
【0012】
SCR触媒は、約180~200℃の排気ガス温度よりも高温でしか作用しないという欠点があり、したがって、エンジンのコールドスタート段階で形成される窒素酸化物を変換しない。
【0013】
窒素酸化物を取り除くためには、SCR触媒に加えて、「リーンNOxトラップ」又は「LNT」という用語が一般的な、窒素酸化物吸蔵触媒が公知である。これらの浄化作用は、エンジンのリーン運転段階において、吸蔵触媒の吸蔵材料によって窒素酸化物が主に硝酸塩の形態で吸蔵され、これらの酸化物は後続のエンジンのリッチ運転段階で再び分解され、このようにして放出された窒素酸化物は、吸蔵触媒内の還元性排気ガス成分によって、窒素、二酸化炭素、及び水に変換される、という事実に基づく。この運転原理は、例えばSAE文書SAE950809に記載されている。
【0014】
吸蔵材料としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルカリ金属、希土類金属の酸化物、炭酸塩、若しくは水酸化物、又はそれらの混合物が特に考慮される。これらの化合物は、そのアルカリ性という特性の結果として、排気ガスの酸性窒素酸化物と共に硝酸塩を形成し、そうすることで窒素酸化物を吸蔵することができる。吸蔵材料は、排気ガスとの大きな相互作用表面をもたらすために、好適な担体物質上に、可能な限り最も高度に分散した形態で堆積される。通例では、窒素酸化物吸蔵触媒は、触媒活性成分として、白金、パラジウム、及び/又はロジウムなどの貴金属も含有する。これらの触媒の課題は、一方ではリーン条件下において、NOをNOに酸化し、またCO及びHCをCOへと酸化し、他方では窒素酸化物吸蔵触媒が再生されるリッチ運転段階中、放出されるNOを窒素へと還元することである。
【0015】
現代の窒素酸化物吸蔵触媒は、例えば、欧州特許第0885650(A2)号、米国特許出願公開第2009/320457号、国際公開第第2012/029050(A1)号、及び同第2016/020351(A1)号に記載されている。
【0016】
窒素酸化物がエンジンのリーン-バーン運転段階で窒素酸化物吸蔵触媒によって吸蔵され、その後のリッチ運転段階で再び放出されるというSAE Technical Paper 950809に記載の技法は、活性窒素酸化物吸蔵とも呼ばれる。
【0017】
更に、受動的窒素酸化物吸蔵として知られる方法も記載されている。これにより、窒素酸化物は、第1の温度範囲で吸蔵され、第2の温度範囲で再び放出され、その第2の温度範囲は、第1の温度範囲より高い温度である。受動的窒素酸化物吸蔵触媒は、この方法を実施するために使用され、その触媒は、(「受動的NOx吸着剤」を短縮して)PNAとも呼ばれる。
【0018】
受動的窒素酸化物吸蔵触媒を、SCR触媒の作動準備が整うと直ちに、SCR触媒がまだ作動温度に達していない特に200℃未満の温度で窒素酸化物を吸蔵し、そして再び放出するために使用することができる。したがって、200℃未満でエンジンから放出された窒素酸化物の中間吸蔵及び200℃超でのそれらの一斉放出(concerted release)を介して、排気ガス後処理システムにおける全窒素酸化物の変換率を向上させることができる。
【0019】
酸化セリウム上に担持されたパラジウムは、受動窒素酸化物吸蔵触媒として記載されており(例えば、国際公開第2008/047170(A1)号及び同第2014/184568(A1)号を参照)、これを同第2012/071421(A2)号及び同第2012/156883(A1)号に記載の粒子フィルタ上にコーティングすることもできる。
【0020】
国際公開第2012/0290050(A1)号は、リーン-バーンガソリンエンジンの排気ガスを浄化するための触媒を開示しており、特に、NOの酸化に関して改善された活性を有することが意図されており、SCR触媒と合わせて使用することもできる。これらの触媒は3つの層を備え、いずれも、白金及びパラジウムを白金過剰、又は白金のみを含有し、いずれも担体基材の全長にわたってコーティングされている。
【0021】
同様の触媒もまた、米国特許第2011/305612号に開示されているが、1つの層は炭化水素トラップとして形成されている。触媒は、改善された炭化水素変換を伴うNOx吸蔵触媒と呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
現代及び将来のディーゼルエンジンは、より効率的になりつつあり、排気ガス温度も低下させる。並行して、窒素酸化物の変換に対する法律はますます厳しくなっている。これにより、SCR触媒のみでは、もはや窒素酸化物制限への準拠に十分ではなくなっているということが生じている。
【0023】
将来の排気後処理システムは、広い操作ウインドウで窒素酸化物を変換しなければならない。それらは、コールドスタート段階及び低温(例えば、都心部での走行の場合)及び高温(例えば、加速段階の間及び高速走行中)の両方で窒素酸化物を吸蔵又は変換しなければならない。原則として、現在、既に技術水準となっている受動窒素酸化物吸着剤は、これらのタスクに対処することができる。しかしながら、窒素酸化物の温度依存性吸蔵及び放出に関する最適化の必要性が依然として存在する。加えて、このような触媒はまた、炭化水素及び一酸化炭素を反応させることも意図される。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、第1の端面aと第2の端面bとの間に延在する長さLの担体基材と、異なる組成の触媒活性物質区画A、B及びCと、を含む触媒であって、
-物質区画Aは、パラジウム又は重量比がPd:Pt>1のパラジウム及び白金と、酸化セリウムとを含み、
-物質区画Bは、白金若しくは重量比がPt:Pd>1の白金及びパラジウム、酸化セリウム、及び/又はセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含み、
-物質区画Cは、白金又は重量比がPt:Pd>1の白金及びパラジウムと、担体酸化物とを含み、
式中、
-物質区画Bは、物質区画Aの上に配置され、
-物質区画Cは、物質区画Bの上に配置され、担体基材の第2の端面bから開始して長さLの20~60%の長さにわたって延在する、触媒に関する。
【0025】
本発明の一実施形態では、物質区画Aはパラジウムを含み、白金を含まない。
他の実施形態では、物質区画Aはパラジウムに加えて白金を含有し、Pd:Ptの重量比は1超、例えば、20:1~1.1:1である。物質区画A内のPd:Ptの重量比の例は、20:1、12:1、10:1、7:1、6:1、4:1、3:1、2:1及び1.5:1である。好ましくは、物質区画A内のPd:Ptの重量比は、2:1~10:1.である。
【0026】
本発明の実施形態では、物質区画Aは、それぞれの場合で担体基材の体積に基づいて、パラジウム又はパラジウム及び白金をパラジウム1.1~2.0g/l及びの白金0.1~0.9g/lの量で含む。
【0027】
物質区画Aに含有される酸化セリウムは、特にジルコニウムを含有せず、ランタン又はネオジム等の他の希土類元素を含有しない。したがって、これは純粋な酸化セリウムとして知られているものである。
【0028】
物質区画Aでは、酸化セリウムは、好ましくはパラジウム又はパラジウム及び白金の担体としてはたらく。
【0029】
本発明の実施形態では、物質区画Aはアルカリ土類酸化物を含み、好適なアルカリ土類酸化物は、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、及び酸化バリウムである。好ましくは、物質区画Aは酸化マグネシウムを含む。
【0030】
物質区画Aは、好ましくは、それぞれの場合で担体基材の体積に基づいて、50~150g/l、特に好ましくは80~120g/lの量のアルカリ土類酸化物を含む。
【0031】
本発明の実施形態では、物質区画Aは、それぞれの場合で担体基板の体積に基づいて、特に1~10g/l、好ましくは4~6g/lの量で二酸化チタンを含む。
【0032】
本発明の一実施形態では、物質区画Bは白金を含み、パラジウムを含まない。
【0033】
他の実施形態では、物質区画Bは、白金だけでなくパラジウムも含有し、Pt:Pdの重量比は1超、例えば、20:1~1.1:1である。物質区画B内のPt:Pdの重量比の例は、20:1、12:1、10:1、7:1、6:1、4:1、3:1、2:1及び1.5:1である。好ましくは、物質区画B内のPt:Pdの重量比は、2:1~10:1である。
【0034】
本発明の実施形態では、物質区画Bは白金を含むか、又はそれぞれの場合で担体基材の体積に基づいて、白金0.5~1.3g/l、好ましくは0.7~1.0g/lと、パラジウム0.05~0.13g/l、好ましくは0.07~0.1g/lの量で白金及びパラジウムを含む。
【0035】
物質区画Bが酸化セリウムを含む場合には、特にジルコニウムを含有せず、ランタン又はネオジム等の他の希土類元素を含有しない。したがって、これは純粋な酸化セリウムとして知られているものである。
【0036】
物質区画Bは、酸化セリウムに加えて、又は酸化セリウムに代えて、セリウム/ジルコニウム混合酸化物を含有してもよい。
【0037】
本出願の文脈において用語「セリウム/ジルコニウム混合酸化物」は、酸化セリウムと酸化ジルコニウムとの物理的混合物を除く。むしろ、均一な結晶格子を有し、個々の金属酸化物がもはや区別できない「固溶体」を表すか、又は均一な結晶格子を有さず、個々の金属酸化物の相を区別することができる酸化セリウム及び酸化ジルコニウムのアグロメレートを表す。
【0038】
物質区画Bに含有されるセリウム/ジルコニウム混合酸化物中の酸化セリウム及び酸化ジルコニウムの質量比は、特に1未満である。例えば、CeO:ZrOの質量比は、20:80~45:55、好ましくは40:60である。
【0039】
別の実施形態では、物質区画Bに含有されるセリウム/ジルコニウム混合酸化物中の酸化セリウム及び酸化ジルコニウムの質量比は、特に1超である。例えば、CeO:ZrOの質量比は、80:20~55:45、好ましくは60:40である。
【0040】
物質区画Bでは、酸化セリウム及び/又はセリウム/ジルコニウム混合酸化物は、好ましくは、白金又は白金及びパラジウムの担体としてはたらく。
【0041】
本発明の一実施形態では、物質区画Cは白金を含み、パラジウムを含まない。
【0042】
他の実施形態では、物質区画Cは、白金だけでなくパラジウムも含有し、Pt:Pdの重量比は1超、例えば、20:1~1.1:1である。物質区画B内のPt:Pdの重量比の例は、20:1、12:1、10:1、7:1、6:1、4:1、3:1、2:1及び1.5:1である。好ましくは、物質区画B内のPt:Pdの重量比は、2:1~10:1である。
【0043】
本発明の実施形態では、物質区画Cは、白金を含むか、又はそれぞれの場合で担体基材の体積に基づいて、白金0.5~1.5g/l、好ましくは0.9~1.2g/l及びパラジウム0.05~0.15g/l、好ましくは0.09~0.12g/lの量で白金及びパラジウムを含む。
【0044】
物質区画Cでは、白金又は白金及びパラジウムは、担体酸化物上に担持される。
【0045】
この目的について当業者によく知られている全ての材料が、担体材料とみなされることとなる。担体材料は、BET表面積が30~250m/g、好ましくは100~200m/g(DIN66132に従って求めた)であり、特に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、及びこれらの材料のうちの少なくとも2つの混合物又は混合酸化物である。
【0046】
酸化アルミニウム、マグネシウム/アルミニウム混合酸化物、及びアルミニウム/ケイ素混合酸化物が好ましい。酸化アルミニウムを使用する場合、特に好ましくは、例えば、1~6重量%、特に4重量%の酸化ランタンによって安定化されている。
【0047】
本発明の実施形態では、物質区画Cは酸化セリウムを含有せず、また酸化セリウム/ジルコニウム混合酸化物を含有しない。
【0048】
本発明による触媒の担体基材は、特に、多孔性壁によって分離された長さLのチャネルが端面aとbとの間で平行に延在するフロースルー基材である。長さLのチャネルは、担体基材の両端部で開口している。
【0049】
フロースルー基材は、当業者に公知であり市販されている。それらは、例えば、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、又はコージェライトからなる。
【0050】
あるいは、不活性材料の波形シートで作製された担体基材を使用することもできる。好適な不活性材料は、例えば、50~250μmの平均繊維直径及び2~30mmの平均繊維長を有する繊維状材料である。好ましくは、繊維状材料は耐熱性であり、二酸化ケイ素、特にガラス繊維からなる。
【0051】
このような担体基材の製造では、例えば、上記繊維材料のシートは既知の方法で波形にされ、個々の波形シートは、本体を通って延びるチャネルを有する円筒状のモノリシック構造体の形態にされる。好ましくは、横方向の波形構造を有するモノリシック構造体は、いくつかの波形シートを、層間で異なる向きの波形を有する平行な層として積み重ねることによって形成される。一実施形態では、非波形、すなわち平坦なシートを、波形シートの間に配置することができる。
【0052】
波形シートから作製された基材は、本発明による触媒で直接コーティングすることができるが、最初に、不活性材料、例えば二酸化チタンでコーティングし、次いでそれを終えてはじめて触媒材料でコーティングすることが好ましい。
【0053】
本発明の実施形態では、物質区画A及び物質区画Bはいずれも、支持体の全長Lに沿って端面aとbとの間に延在する。特に、物質区画Aは支持体上に直接位置し、物質区画Bは物質区画A上に直接位置する。
【0054】
物質区画Cは、好ましくは、長さLの35~50%の長さにわたって担体基材の第2の端面bから開始して延在することが好ましい。物質区画Cは、特に、物質区画B上に直接位置する。
【0055】
物質区画A、B、及びCは、特にコーティングの形態で担体基材上に存在する。
【0056】
本発明による触媒は、例えば、物質区画A、B、及びCに対応する成分をそれぞれ含有する水性コーティング懸濁液A、B、及びCを調製し、次いで、例えば、通例の浸漬コーティング方法又はポンプ及び真空コーティング方法によって、当業者によく知られている方法で担体基材上にコーティングすることで調製され得る。
【0057】
この方法によれば、最初に物質区画A、次いで物質区画B、及び最後に物質区画Cが生成される。各コーティング工程の後、乾燥及び任意に焼成を行うことができる。
【0058】
本発明による触媒は、低温、特に160℃未満で窒素酸化物を吸蔵する。これらの温度では、後続のSCR又はSDPF触媒はまだ活性ではなく、尿素は依然として計量され得ない。160℃を超える温度で、すなわち、後続のSCR又はSDPF触媒が既に活性である場合、本発明による触媒は、吸蔵された窒素酸化物を放出する(いわゆる熱再生)。したがって、NOx吸蔵触媒の場合のようにリッチ操作へのエンジンの短時間の切り替えが不要であり、付随する燃料消費の増加が回避される。
【0059】
本発明による触媒はまた、前述の反応式(II)による急速SCR反応が、後続のSCR又はSDPF触媒上で進行することができるように、排気ガス中に含まれる一酸化窒素を二酸化窒素に変換する。
【0060】
本発明による触媒はまた、排気ガス及び一酸化炭素に含有される炭化水素を酸化的に変換することが可能であり、非常に良好なライトオフ特性によって区別される。したがって、本発明による触媒は、ディーゼル酸化触媒の機能も有し、そのように使用することができる。
既知の触媒と比較して、本発明による触媒は、非常に良好に脱硫することができ、HC/COライトオフに関してより安定である。
【0061】
したがって、SCR触媒と共に、本発明による触媒は、コールドスタート温度を含む排気ガスの全温度範囲にわたって、窒素酸化物を効果的に変換することを可能にする。
【0062】
したがって、本発明はまた、
a)第1の端面aと第2の端面bとの間に延在する長さLの担体基材と、異なる組成の触媒活性物質区画A、B及びCを含む触媒であって、
-物質区画Aは、パラジウム又は重量比がPd:Pt>1のパラジウム及び白金と、酸化セリウムとを含み、
-物質区画Bは、白金若しくは重量比がPt:Pd>1の白金及びパラジウム、酸化セリウム、及び/又はセリウム/ジルコニウム混合酸化物を含み、
-物質区画Cは、白金又は重量比がPt:Pd>1の白金及びパラジウムと、担体酸化物とを含み、
式中、
-物質区画Bは、物質区画Aの上に配置され、
-物質区画Cは、物質区画Bの上に配置され、担体基材の第2の端面bから開始して長さLの20~60%の長さにわたって延在する、触媒と、
b)200℃超の温度で窒素酸化物の選択的触媒還元を触媒するSCR触媒と、を含む触媒装置に関する。
【0063】
本発明による触媒装置では、SCR触媒は、原則として、窒素酸化物とアンモニアとのSCR反応において活性な全ての触媒から、特に、自動車の排気ガス触媒反応分野において当業者には従来のものであることが知られている触媒から、選択することができる。これは、混合酸化物型の触媒、並びにゼオライトに基づく触媒を含む。混合酸化物型の触媒は特に、V、WO、及びTiOに基づくVWT触媒であり、ゼオライトに基づく触媒としては、特に遷移金属交換ゼオライトが挙げられる。
【0064】
本発明の実施形態では、8個の四面体原子の最大環サイズを有する小孔ゼオライト及び遷移金属を含有するSCR触媒が使用される。そのようなSCR触媒は、例えば、国際公開第2008/106519(A1)号、同第2008/118434(A1)号、及び同第2008/132452(A2)号に記載されている。
【0065】
更に、大孔及び中孔のゼオライトも使用することができ、BEA構造型のものは特に考慮され得る。したがって、鉄-BEA及び銅-BEAが対象である。
【0066】
特に好ましいゼオライトは、BEA、AEI、CHA、KFI、ERI、LEV、MER、又はDDR構造型に属し、特に好ましくはコバルト、鉄、銅、又はこれらの金属の2つ若しくは3つの混合物と交換される。
【0067】
「ゼオライト」という用語は、モレキュラーシーブも含み、それは時に「ゼオライト様」化合物とも呼ばれる。モレキュラーシーブが前述の構造型のうちの1つに属する場合、それらは好ましい。例としては、用語「SAPO」で知られているシリカアルミニウムホスフェートゼオライト、及び用語「AIPO」で知られているリン酸アルミニウムゼオライトが挙げられる。
【0068】
これらも、コバルト、鉄、銅、又はそれらの金属の2つ若しくは3つの混合物と交換される場合には、特に好ましい。
【0069】
好ましいゼオライトはまた、2~100、特に5~50のSAR(シリカ対アルミナ比)値を有するものである。
【0070】
ゼオライト又はモレキュラーシーブは、特に、金属酸化物として、すなわち、鉄交換ゼオライトの場合はFeとして、及び銅交換ゼオライトの場合はCuOとして計算される1~10重量%、特に2~5重量%の量で遷移金属を含有する。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、SCR触媒として、銅、鉄又は銅及び鉄と交換されたベータ型(BEA)、チャバザイト型(CHA)、AEI型、AFX型、又はレビン型(LEV)のゼオライト又はモレキュラーシーブを含有する。対応するゼオライト又はモレキュラーシーブは、例えば、ZSM-5、ベータ、SSZ-13、SSZ-62、Nu-3、ZK-20、LZ-132、SAPO-34、SAPO-35、AlPO-34及びAlPO-35との名称で知られており、例えば、米国特許第6,709,644号及び同第8,617,474号を参照されたい。
【0072】
本発明による触媒装置の一実施形態では、還元剤のための計量装置を、本発明による触媒とSCR触媒との間に置く。
【0073】
計量デバイスは、当業者が自由に選択することができ、好適なデバイスは、文献から取得することができる(例えば、T.Mayer,Feststoff-SCR-System auf Basis von Ammoniumcarbamat[Solid SCR System Based on Ammonium Carbamate],dissertation,TU Kaiserslautern,2005を参照)。アンモニアを、それ自体として又はアンモニアが周囲条件下で形成される化合物の形態で、計量デバイスを介して、排気ガス流に注入することができる。好適な化合物の例は、尿素又はギ酸アンモニウムの水溶液、及び固体カルバミン酸アンモニウムである。通例、還元剤又はその前駆体は、注入デバイスに接続される付随容器内で利用可能に保持される。
【0074】
SCR触媒は、好ましくは、フロースルー基材又はウォールフローフィルタであり得、例えば、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、又はコージェライトからなり得る、支持体上のコーティングの形態である。
【0075】
ウォールフローフィルタは、多孔性壁によって分離され、ウォールフローフィルタの第1の端部と第2の端部との間で平行に延在する長さLのチャネルを備える支持体であるが、フロースルー基材とは対照的に、第1の端部又は第2の端部のいずれかで交互に閉じられている。未コーティング状態において、ウォールフローフィルタは、例えば、30~80%、具体的には50~75%の多孔率を有する。未コーティング状態において、ウォールフローフィルタの平均細孔サイズは、例えば、5~30マイクロメートルである。
【0076】
概して、ウォールフローフィルタの細孔は、いわゆる開放細孔であり、すなわち、チャネルへの接続部を有する。更に、細孔は、一般的には、互いに相互接続される。これは、一方では、内側細孔表面の容易なコーティングを可能にし、他方では、ウォールフローフィルタの多孔性壁を通した排気ガスの容易な通過を可能にする。
【0077】
既に上述した波板の担体基材はまた、SCR触媒の支持体としても使用することができる。
【0078】
あるいは、支持体自体は、SCR触媒及びマトリックス成分からなり得て、すなわち、押出形態であり得る。押出支持体を製造するには、例えば、10~95重量%の不活性マトリックス成分及び5~90重量%の触媒活性材料からなる混合物を、それ自体既知の方法に従って押出加工する。この場合、他では触媒基材を製造するためにも使用される不活性材料の全てを、マトリックス成分として使用することができる。これらは、例えば、シリケート、酸化物、窒化物、又は炭化物であり、特に好ましくは、マグネシウムアルミニウムシリケートである。
【0079】
本発明による触媒装置の更なる実施形態では、SCR触媒の第1の部分は、ウォールフローフィルタ上のコーティングとして存在し、第2の部分は、フロースルー基材上のコーティングとして存在する。ウォールフローフィルタは、好ましくは、本発明による触媒に隣接する。
【0080】
ウォールフローフィルタ上及びフロースルー基板上のSCR触媒は、同じであっても異なっていてもよく、及び/又は同量若しくは異なる量で存在してもよい。
【0081】
必要に応じて、還元剤のための更なる計量装置を、フロースルー基板上のSCR触媒の上流に配置することができる。
【0082】
SCR触媒上での窒素酸化物の変換を改善するために、アンモニアを、それ自体に必要とされる量、すなわち化学量論量よりも約10~20%多い量でアンモニアを測定することが必要な場合がある。しかしながら、これは、具体的にはアンモニアスリップの増加の結果として、より高い二次放出の危険性を増加させる。アンモニアは低濃度であっても刺激臭を有し、商業車分野では法的に制限されているので、アンモニアスリップを最小限に抑えなければならない。この目的のため、通過するアンモニアを酸化するためにSCR触媒の下流で排気ガスの流れ方向に配置された、いわゆるアンモニアブロッキング触媒が知られている。様々な実施形態におけるアンモニアブロッキング触媒は、例えば、米国特許第5,120,695号、欧州特許第1399246(A1)号、及び同第0559021(A2)号に記載されている。
【0083】
一実施形態では、本発明による触媒装置は、したがって、SCR触媒に続いてアンモニアブロッキング触媒を含む。
【0084】
例えば、アンモニアブロッキング触媒は、SCR活性材料と、1つ以上の白金族金属、具体的には白金又は白金及びパラジウムとを含む。具体的には、上記の全てのSCR触媒は、SCR触媒活性材料として好適である。
【0085】
本発明はまた、ディーゼルエンジン等のリーン-バーンエンジンを使用して運転される自動車から排気ガスを浄化するための方法にも関し、この方法は、排気ガスが、本発明による排気システムを通して行われ、本発明による触媒を最初に通過し、次いでSCR触媒を通過し、次いでアンモニアブロッキング触媒を通過するような方法で誘導されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1】触媒K1及びVK1のNO生成を、温度の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
実施例1
a)市販のフロースルー基材を、第1の工程で、通例のコーティング方法に従って、酸化セリウム、酸化マグネシウム、及びパラジウムを含むウォッシュコートでコーティングし、次いで乾燥させ、焼成する。充填量は、酸化セリウム100g/L、酸化マグネシウム10g/L、及びパラジウム2.17g/Lであった。
【0088】
b)a)に従って得られたコーティングされたフロースルー基材を、通例のコーティング方法に従って、酸化セリウム、白金、及びパラジウムを含有する更なるウォッシュコートでコーティングした。次いで、乾燥及び焼成を行った。ローディング量は、酸化セリウム100g/L、白金1.1g/L、及びパラジウム0.11g/L(Pt:Pd=10:1)であった。
【0089】
c)最後に、b)に従って得られた触媒を、最終コーティング工程において、再度、通例のコーティング方法に従って、その長さの50%にわたってのみ、フロースルー基材の一端から開始して延在する層でコーティングした。次いで、乾燥及び焼成を行った。ローディング量は、酸化アルミニウム140g/L、白金2.8g/L、及びパラジウム0.28g/L(Pt:Pd=10:1)であった。
【0090】
このようにして得た触媒を以下K1と称する。
【0091】
比較例1
実施例1の工程a)~c)を、工程c)において、酸化アルミニウム、白金、及びパラジウムを含有するウォッシュコートを、フロースルー基材の全長にわたってコーティングするという違いを伴って繰り返した。ローディング量は、酸化アルミニウム70g/L、白金1.4g/L、及びパラジウム0.14g/L(Pt:Pd=10:1)であった。したがって、最上層は、同じ量の酸化アルミニウム、白金、及びパラジウムを含有していたが、基材の全長にわたって分布した。
【0092】
このようにして得た触媒を以下VK1と称する。
【0093】
触媒K1とVK1との比較
【0094】
排気ガスの合成による試験反応器における比較実験では、触媒K1及びVK1のNO生成を、温度の関数として決定した。結果を図1に示す(この場合、破線はK1を示し、実線はVK1を示す)。したがって、K1は、改善されたNO形成によって区別される。
【0095】
実施例2
a)市販のフロースルー基材を、第1の工程で、通例のコーティング方法に従って、酸化セリウム、酸化マグネシウム、及びパラジウムを含むウォッシュコートでコーティングし、次いで乾燥させ、焼成する。充填量は、酸化セリウム100g/L、酸化マグネシウム10g/L、及びパラジウム2.17g/Lであった。
【0096】
b)a)に従って得られたコーティングされたフロースルー基材を、通例のコーティング方法に従って、CeO:ZrOの質量比80:20のセリウム/ジルコニウム混合酸化物、白金及びパラジウムを含む更なるウォッシュコートでコーティングした。次いで、乾燥及び焼成を行った。ローディング量は、セリウム/ジルコニウム混合酸化物100g/L、白金1.1g/L、及びパラジウム0.11g/L(Pt:Pd=10:1)であった。
【0097】
c)最後に、b)に従って得られた触媒を、最終コーティング工程において、再度、通例のコーティング方法に従って、その長さの50%にわたってのみ、フロースルー基材の一端から開始して延在する層でコーティングした。次いで、乾燥及び焼成を行った。ローディング量は、酸化アルミニウム140g/L、白金2.8g/L、及びパラジウム0.28g/L(Pt:Pd=10:1)であった。
【0098】
このようにして得た触媒を以下K2と称する。
【0099】
比較例2
a)市販のフロースルー基材を、第1の工程で、通例のコーティング方法に従って、酸化セリウム、酸化マグネシウム、白金及びパラジウムを含むウォッシュコートでコーティングし、次いで乾燥させ、焼成する。ローディング量は、酸化セリウム102.7g/L、酸化マグネシウム10.3g/L、白金1.6g/L及びパラジウム0.16g/L(Pt:Pd=10:1)であった。
【0100】
b)a)に従って得られたコーティングされたフロースルー基材を、通例のコーティング方法に従って、酸化アルミニウム、白金、及びパラジウムを含有する更なるウォッシュコートでコーティングした。次いで、乾燥及び焼成を行った。ローディング量は、酸化アルミニウム71.9g/L、白金2.11g/L、及びパラジウム0.11g/L(Pt:Pd=20:1)であった。
【0101】
このようにして得た触媒を以下ではVK2と称する。
【0102】
触媒K2とVK2との比較
【0103】
排気ガスを合成することによる試験反応器における比較実験では、触媒K2及びVK2のCOライトオフ(T50CO)を、リッチ活性化をせずに、及びリッチ活性化後に決定した。結果を下記表に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
K2とは対照的に、VK2は、許容可能なT50CO値を提供するためにリッチ活性化を必要とすることが示されている。
図1