(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】シリンジ上に装着されたカニューレの状態の検査のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/82 20060101AFI20231226BHJP
A61M 5/50 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
G01N27/82
A61M5/50
(21)【出願番号】P 2021507750
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2019071144
(87)【国際公開番号】W WO2020035355
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-06-20
(32)【優先日】2018-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】513032334
【氏名又は名称】ヴィルコ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・カール
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・シュティルニマン
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-537208(JP,A)
【文献】特開2011-068478(JP,A)
【文献】特開2005-098804(JP,A)
【文献】特表2014-529477(JP,A)
【文献】特表2014-531283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0307972(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/00 - A61M 9/00
A61M 31/00
A61M 39/00 - A61M 39/28
G01N 27/72 - G01N 27/9093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジ(1)上に装着され、カニューレ保護キャップ(3)内に位置するカニューレ(2)の状態の検査のための方法であって、
前記方法は、
前記カニューレ(2)の近傍における磁場分布を測定するステップ
;
前記カニューレ保護キャップ内に位置する、装着された基準カニューレを有する基準シリンジと比較して、磁場分布の変化を判定するステップであって、基準カニューレはまっすぐである、ステップ;及び、
前記変化に基づいて、前記シリンジ(1)に装着された前記カニューレ(2)の状態を判定するステップ、を含
み、
誘導センサ、フラックスゲート磁力計、ホールセンサ、及び、磁気抵抗センサの少なくとも1つを含む1つまたは複数の磁場センサ(4
1
・・・4
5
、4
A
)が、前記磁場分布を測定するのに使用され、
前記磁場分布を測定するため、前記カニューレ(2)は、前記1つまたは複数の磁場センサ(4
1
・・・4
5
、4
A
)に対して動かされ、前記シリンジ(1)は、その長手方向軸(a)を中心として回転され、かつ/またはその長手方向軸(a)に沿って動かされ、あるいは、前記1つまたは複数の磁場センサ(4
1
・・・4
5
、4
A
)は、前記シリンジ(1)の前記長手方向軸(a)に平行に動かされる、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の磁場センサ(4
1・・・4
5、4
A)は、前記磁場分布を、1、2、または3次元で測定するために、1軸、2軸、または3軸磁場センサ(4
1・・・4
5、4
A)として設計される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
磁場は、少なくとも部分的には、地球の磁場によって、1つまたは複数の永久磁石を含む構成体によって、あるいは、1つまたは複数の電磁石を含む構成体によって生成され、前記構成体は、1つまたは複数の鉄心をも含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
磁気干渉場を抑制するために、磁気シールドが使用される、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カニューレ(2)の測定された磁場分布と、所望の状態を有する、カニューレ保護キャップ内に位置する、装着された基準カニューレを備えた基準シリンジの測定された磁場分布とを比較するステップと、前記比較に基づいて、前記シリンジ(1)上に装着された前記カニューレ(2)の前記状態を判定するステップと、を含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリンジ(1)上に装着された前記カニューレ(2)の前記状態の前記判定は、前記基準カニューレの前記測定された磁場の振幅および/または位相位置と、前記カニューレ(2)の前記測定された磁場の振幅および/または位相位置との比較に基づく、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記磁場分布の測定された時間経過を、時間領域から周波数領域に変換するステップを含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カニューレ(2)の前記状態は、まっすぐである、曲がっている、ねじれている、圧縮されている、破損/切断されている、前記シリンジの長手方向軸(a)に対して同軸である、前記シリンジの長手方向軸(a)に対して斜めである、前記シリンジの長手方向軸(a)に対して偏心的である、のうちの少なくとも1つである、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
カニューレ保護キャップ(3)内に位置する、シリンジ(1)上に装着されたカニューレ(2)の状態の検査のための装置であって、前記装置は、
前記カニューレ(2)の近傍における磁場分布を測定するための、誘導センサ、フラックスゲート磁力計、ホールセンサ、及び、磁気抵抗センサの少なくとも1つを含む1つまたは複数の磁場センサ(4
1・・・4
5、4
A)
;
前記カニューレ(2)の測定された磁場分布と、カニューレ保護キャップ内に位置する、装着されたまっすぐな基準カニューレを有する基準シリンジの測定された磁場分布とを比較するため、かつ、前記比較に基づいて、前記シリンジ(1)上に装着された前記カニューレ(2)の前記状態を判定するための、コンパレータユニット;及び
前記シリンジ(1)をその長手方向軸(a)を中心として回転させるため、および/または前記シリンジ(1)をその長手方向軸(a)に沿って動かすため、あるいは、前記1つまたは複数の磁場センサ(4
1
・・・4
5
、4
A
)を前記シリンジ(1)の前記長手方向軸(a)に平行に動かすための手段(6);
を含む、装置。
【請求項10】
前記1つまたは複数の磁場センサ(4
1・・・4
5、4
A)は、前記磁場分布を、1、2、または3次元で測定するために、1軸、2軸、または3軸磁場センサ(4
1・・・4
5、4
A)として設計される、請求項
9に記載の装置。
【請求項11】
磁場を生成するための、1つまたは複数の永久磁石を有する構成体、および/あるいは、1つまたは複数の電磁石を有する構成体をさらに含み、前記構成体は、1つまたは複数の鉄心をも含む、請求項
9または10に記載の装置。
【請求項12】
磁気干渉場を抑制するための磁気シールドをさらに含む、請求項
9から
11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記コンパレータユニットは、前記基準カニューレの前記測定された磁場の振幅および/または位相位置と、前記カニューレ(2)の前記測定された磁場の振幅および/または位相位置との比較を行い、そこから、前記シリンジ(1)上に装着された前記カニューレ(2)の前記状態を判定するように設計される、請求項
9に記載の装置。
【請求項14】
前記磁場分布の測定された時間経過の、時間領域から周波数領域への変換を行うためのユニットをさらに含む、請求項
9から
13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
まっすぐである、曲がっている、ねじれている、圧縮されている、破損/切断されている、前記シリンジの長手方向軸(a)に対して同軸である、前記シリンジの長手方向軸(a)に対して斜めである、前記シリンジの長手方向軸(a)に対して偏心的である、のうちの少なくとも1つとして、前記カニューレ(2)の前記状態を示すように設計された、出力信号を提供するための、出力をさらに含む、請求項
9から
14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ上に装着されたカニューレ(または注射針)の状態の検査のための、特に、その欠陥の検出のための方法、およびそのような方法を実行するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用シリンジの製造中、不透明な保護キャップ(針シールド)がかぶせられると、下にあるカニューレまたは針は、曲がるかもしくは圧縮されるか、保護キャップを貫通するか、または破損することさえあり得る。このようにして、針は、ユーザにとって危険なものになるだけでなく、その無菌性も失い得る。今日では、種々の方法が、このような損傷を検出するのに使用される。例えば、伝統的な画像処理が、保護キャップの位置を検出するのに使用される。しかしながら、この方法は、比較的高い割合の良好なシリンジを分類する(高い「本人拒否率」)。恐らく、現在最も信頼性の高い方法は、各シリンジのX線検査、および撮影したX線画像の自動分析に基づくものである。しかしながら、このテクノロジーは、やや複雑であり、例えば、X線領域が外部から遮蔽されなければならず、これは非常にコストがかかる。さらに、製品は、X線放射によってストレスを受け得る。あるいは、高電圧試験がある。このプロセスでは、高電圧下の電極が、保護キャップにより端部に接して保持される。カニューレが保護キャップを貫通すると、これは、高電圧試験で検出され得る。しかしながら、無傷の保護キャップの下にある、曲がるか、圧縮されるか、または破損した針は、確実に検出することができない。
【0003】
したがって、シリンジ上に装着された針の欠陥の、単純で(したがって、費用対効果が高く)確実な検出を可能にする手段が必要とされている。1分当たり約600個のシリンジなど、試験品目のスループットが高い検査機器で使用されるためには、この手段は、個々の試験品目を、高い信頼性で非常に迅速に検査することもできなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、シリンジ上に装着されたカニューレの状態の迅速かつ確実で安価な検査のための、特に、その欠陥の検出のための方法を提供することである。本発明によると、この目的は、請求項1に記載の検査方法によって実現される。
【0005】
また、本発明の目的は、シリンジ上に装着されたカニューレの状態の迅速かつ確実で安価な検査のための、特にその欠陥の検出のための、対応する装置を提案することである。本発明によると、この目的は、請求項11に記載の検査装置によって解決される。
【0006】
本発明による特定の実施形態が、従属請求項において提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
カニューレ保護キャップ内に位置する、シリンジ上に装着されたカニューレの状態を検査するための、特に、その特定の欠陥を検出するための本発明による方法は、カニューレの近傍における、磁場、特に磁場分布を測定するステップを含む。
【0008】
この方法の一実施形態の変形例では、1つまたは複数の磁場センサ、特に誘導センサ、フラックスゲート磁力計、ホールセンサ、磁気抵抗センサ、例えば、AMR(異方性磁気抵抗)、CMR(超巨大磁気抵抗)、GMR(巨大磁気抵抗)、またはTMR(トンネル磁気抵抗)センサが、磁場、特に磁場分布の測定に使用される。
【0009】
この方法のさらなる実施形態の変形例では、1つまたは複数の磁場センサは、磁場、特に磁場分布を、1、2、または3次元で測定するために、1軸、2軸、または3軸磁場センサとして設計される。
【0010】
この方法の別の実施形態の変形例では、磁場、特に磁場分布を測定するため、カニューレは、1つまたは複数の磁場センサに対して動かされ、特に、シリンジをその長手方向軸を中心として回転させ、かつ/またはこれをその長手方向軸に沿って動かすか、あるいは、1つまたは複数の磁場センサをシリンジの長手方向軸に平行に動かす。
【0011】
この方法の別の実施形態の変形例では、1つまたは複数のモータ、例えばサーボモータまたはステッパモータが使用されて、シリンジを回転させ、かつ/または長手方向に動かし、1つまたは複数のモータの回転周波数がシリンジの回転周波数の倍数または分数となるように、歯車が使用される。これにより、1つまたは複数のモータにより生成される磁場が、カニューレの近傍で測定される磁場、または測定される磁場分布に干渉するのを防ぐ。
【0012】
この方法のさらなる実施形態の変形例では、磁場は、少なくとも部分的には、地球の磁場によって、1つまたは複数の永久磁石を含む構成体(arrangement)によって、あるいは、1つまたは複数の電磁石を含む構成体、例えばヘルムホルツコイルによって生成され、この構成体は、特に1つまたは複数の鉄心をも含む。
【0013】
この方法の別の実施形態の変形例では、磁気干渉場を抑制するために、磁気シールドが使用される。
【0014】
さらなる実施形態の変形例では、この方法は、カニューレの測定された磁場、特に測定された磁場分布と、目標の状態を有する、カニューレ保護キャップ内に位置する、取り付けられた/装着された基準カニューレを有する基準シリンジの測定された磁場、特に測定された磁場分布とを比較するステップと、その比較に基づいて、シリンジ上に装着されたカニューレの状態を判定するステップと、を含む。
【0015】
この方法のさらなる実施形態の変形例では、シリンジ上に装着されたカニューレの状態の判定は、基準カニューレの測定された磁場の振幅および/または位相位置と、カニューレの測定された磁場の振幅および/または位相位置との比較に基づく。
【0016】
この方法のさらなる実施形態の変形例では、シリンジ上に装着されたカニューレの状態の判定は、例えば互いにオフセットして配置された2つの磁場センサで測定された、2つの異なる場所における測定された磁場の振幅および/または位相位置の比較に基づく。
【0017】
さらなる実施形態の変形例では、この方法は、磁場、特に磁場分布の測定された時間経過を、時間領域から周波数領域に変換するステップを含む。
【0018】
さらなる実施形態の変形例では、この方法は、シリンジの回転周波数で、また特にシリンジの回転周波数の2倍で、例えば離散的フーリエ変換(DFT)によって、磁場、特に磁場分布の周波数成分を判定するステップを含む。
【0019】
この方法のさらなる実施形態の変形例では、カニューレの状態は、まっすぐである、曲がっている、ねじれている、圧縮されている、破損/切断されている、シリンジの長手方向軸に対して同軸である、シリンジの長手方向軸に対して斜めである、シリンジの長手方向軸に対して偏心的である、のうちの少なくとも1つである。
【0020】
本発明の別の態様によると、カニューレ保護キャップ内に位置する、シリンジ上に装着されたカニューレの状態の検査のための装置は、カニューレの近傍における磁場、特に磁場分布を測定するための、1つまたは複数の磁場センサ、特に誘導センサ、フラックスゲート磁力計、ホールセンサ、磁気抵抗センサ、例えば、AMR(異方性磁気抵抗)、CMR(超巨大磁気抵抗)、GMR(巨大磁気抵抗)、またはTMR(トンネル磁気抵抗)センサを含む。
【0021】
この装置のさらなる実施形態の変形例では、1つまたは複数の磁場センサは、磁場、特に磁場分布を、1、2、または3次元で測定するために、1軸、2軸、または3軸磁場センサとして設計される。
【0022】
さらなる実施形態の変形例では、この装置は、カニューレを1つまたは複数の磁場センサに対して動かすため、特に、シリンジをその長手方向軸を中心として回転させるため、および/またはシリンジをその長手方向軸に沿って動かすため、あるいは、1つまたは複数の磁場センサをシリンジの長手方向軸に平行に動かすための手段をさらに含む。
【0023】
別の実施形態の変形例では、この装置は、シリンジを回転させ、かつ/または長手方向に動かすための、1つまたは複数のモータ、例えばサーボモータまたはステッパモータをさらに含み、1つまたは複数のモータの回転周波数がシリンジの回転周波数の倍数または分数となるように、歯車が使用される。
【0024】
さらなる実施形態の変形例では、この装置は、磁場を生成するための、1つまたは複数の永久磁石を有する構成体、および/あるいは、1つまたは複数の電磁石を有する構成体、例えばヘルムホルツコイルをさらに含み、この構成体は、特に1つまたは複数の鉄心をも含む。
【0025】
別の実施形態の変形例では、この装置は、磁気干渉場を抑制するための磁気シールドをさらに含む。
【0026】
さらなる実施形態の変形例では、この装置は、カニューレの測定された磁場、特に測定された磁場分布と、目標の状態を有する、カニューレ保護キャップ内に位置する、取り付けられた/装着された基準カニューレを有する基準シリンジの測定された磁場、特に測定された磁場分布とを比較するため、およびその比較に基づいて、シリンジ上に装着されたカニューレの状態を判定するための、コンパレータユニットをさらに含む。
【0027】
この装置のさらなる実施形態の変形例では、コンパレータユニットは、基準カニューレの測定された磁場の振幅および/または位相位置と、カニューレの測定された磁場の振幅および/または位相位置との比較を行い、そこから、シリンジ上に装着されたカニューレの状態を判定するように設計される。
【0028】
さらなる実施形態の変形例では、この装置は、磁場、特に磁場分布の測定された時間経過の、時間領域から周波数領域への変換を行うためのユニットをさらに含む。
【0029】
さらなる実施形態の変形例では、この装置は、まっすぐである、曲がっている、ねじれている、圧縮されている、破損/切断されている、シリンジの長手方向軸に対して同軸である、シリンジの長手方向軸に対して斜めである、シリンジの長手方向軸に対して偏心的である、のうちの少なくとも1つとして、カニューレの状態を示すように構成された、特に出力信号を提供するための、出力をさらに含む。
【0030】
この装置のさらなる実施形態の変形例では、いくつかの磁場センサは、軸に沿って上下に垂直に配置され、特に等距離に離間され、この軸は、検査されるシリンジの長手方向軸に対して横方向に平行に配置される。
【0031】
別の実施形態の変形例では、この装置は、コイル軸が水平方向に磁場を生成するように水平に配置された、2つの同軸に配置されたコイルからなるヘルムホルツコイルを含み、検査されるシリンジは、これらの2つのコイル間に配置される。
【0032】
前述した実施形態の変形例の組み合わせが可能であり、これにより本発明のさらに具体的な実施形態が導かれることに注意されたい。
【0033】
本発明の非限定的な例示的実施形態が、図面を参照して以下でさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】保護キャップが所定の位置にあり、その下に曲がったカニューレがある、シリンジの(先行技術による)X線画像を示す。
【
図2】湾曲したスチール注射針の近傍における地球の磁場(64°の傾斜)の力線の推移の例を示す。
【
図3】本発明による装置の実施形態の変形例の概略側面図を示す。
【
図4】ヘルムホルツコイルを備えた本発明による装置のさらなる実施形態の変形例の概略側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面中、同じ参照符号は同じ要素を表す。
【0036】
単回使用のインスリンシリンジなどの医療用シリンジの組み立てプロセスでは、カニューレまたは注射針が、シリンジ上に装着されるか、またはシリンジに取り付けられ、例えば、所定の位置に接着され、その後、保護キャップが、カニューレ上に装着されるか、またはカニューレに取り付けられる。カニューレは、保護キャップの材料を貫通しなければならない。
【0037】
したがって、このプロセスは、いくらかの力で行われ、それによって、カニューレは、曲げられ、ねじれ、圧縮され得るか、または、破損するか、もしくは折れ得る。これらの欠陥は複数のリスクをもたらし、例えば、使用中の損傷のリスクがあり、かつ/または、無菌性がもはや確保されない。
【0038】
図1は、先行技術のプロセスにおいて記録されているような、装着された/取り付けられた光学的に不透明な保護キャップ3を備え、その下に曲がったカニューレ2が位置する、シリンジ1のX線画像を示す。
【0039】
本発明は、強磁性材料がそれらの周囲の外部磁場に影響を及ぼす効果を利用する。よって、強磁性材料は、それ自体に磁場を引き込むのに役立つ。外部磁場の力線は、強磁性体の表面上で終了し、その内側に延びる。よって、スチール注射針の存在は、磁力線の進路の局所的な変化を引き起こす。無傷の、すなわち、まっすぐな針は、例えばねじれを有する針とは異なる磁力線の変化を引き起こす。
【0040】
図2は、曲がった注射針またはカニューレ2の近傍における、地球の磁場の力線の推移Fの一例を概略的に示す。緯度に応じて、地球の磁場は、地球の方向にさまざまに傾斜する。例えば、
図2に示す地球の磁場は、47度の緯度に対応して下方に64°の傾斜を有する。磁力線Fは、スチール注射針2によって集束され、さらに外側の力線は、注射針2に向かって偏向される。力線のこの変形は、注射針2がまっすぐな場合と比較して、カニューレ2の近傍における、磁場、特に磁場分布を測定することによって、検出され得る。そうすると、例えば、測定セクションS上、またはそれに沿った、1つまたは複数の点における磁場の測定に基づいて、カニューレ2の状態、すなわち、カニューレ2がねじれなどの特定の欠陥を有するかどうかを推測することが可能である。
【0041】
1つまたは複数の磁場センサ、例えば、誘導センサ、フラックスゲート磁力計、ホールセンサ、磁気抵抗センサ、例えば、AMR(異方性磁気抵抗)、CMR(超巨大磁気抵抗)、GMR(巨大磁気抵抗)、もしくはTMR(トンネル磁気抵抗)センサは、磁場または磁場分布を測定するのに使用され得る。これらの磁場センサは、磁場または磁場分布を、1、2、または3次元で測定するために、1軸、2軸、または3軸磁場センサとして設計され得る。このプロセスでは、カニューレ2が、1つまたは複数の磁場センサに対して動かされ得、または、逆に、1つまたは複数の磁場センサが、カニューレ2に対して、例えば測定セクションSに沿って垂直に、動かされ得、それによって、磁場または磁場分布が、カニューレ2の全長にわたって判定され得る。
【0042】
図3は、本発明による注射針を検査するための装置の実施形態の変形例の概略側面図を示す。シリンジ1は、回転装置6上に配置された、シリンジホルダ5内にクランプされ、これによって、シリンジ1は、その長手方向軸aを中心として回転され得る。この回転の結果、カニューレ2は、カニューレ2の近傍において地球の磁場を周期的に変化させる。地球の磁場は、シリンジの長手方向軸aに平行に上下に垂直に配置された5つの磁場センサ4
1・・・4
5からなる、磁場センサ構成体4
Aを用いて、測定される。代わりに、単一の磁場センサが使用されてもよく、これは、測定セクションSに沿って上または下に動かされる。
【0043】
測定された磁場の時間経過は、次に、周波数領域へと変換される。これは、例えば離散的フーリエ変換によって、個々の周波数で実行され得る。シリンジ1の回転周波数およびその第2高調波(=2倍の回転周波数(double rotation frequency))がここでは特に関連がある。カニューレ2がねじれを有する場合、磁場は、1回転ごとに1回、磁場センサ構成体4Aの方向に、すなわちこれに近接して、カニューレ2を通って方向付けられ、それによって、磁場強度は、回転周波数において周期的に増減する。したがって、カニューレ2に沿った磁場の分布は、その回転周波数において、ねじれた先端部では、まっすぐなカニューレ2よりも大きな最大値を有する。また、ねじれにより、まっすぐなカニューレ2の状況と比べて、磁場の異なる位相位置がある。したがって、測定された磁場の振幅および/または位相位置に基づいて、特に無傷の、すなわちまっすぐな、基準カニューレ2の近傍における、先に測定された磁場と比較した場合に、カニューレ2の状態に関する結論を出すことが可能である。2つの離間した磁場センサ41・・・45(例えば、磁場センサ構成体4Aの2つの隣接する磁場センサ4iおよび4i-1)における磁場の位相の差は、位相位置としても使用され得る。
【0044】
測定中、磁気干渉場を避けるために注意を払う必要がある。例えば、電気サーボモータは、このような干渉場を生成し、これは、サーボモータの速度で変調される。測定に与える影響を最小限にするため、例えば、歯車が使用され得、それによって、シリンジ1は、サーボモータより何倍も速くまたは遅く回転する。例えば、サーボモータの速度がシリンジの回転の速度の3倍である(すなわち、歯車比が3:1である)場合、シリンジ1の回転周波数において測定される磁場は、シリンジ1の回転周波数の3倍でサーボモータによって生成される干渉場によりほとんど妨害されない。あるいは、磁気シールドが磁気干渉場を抑制するのに使用され得る。
【0045】
測定のために地球の磁場を使用する代わりに、1つまたは複数の永久磁石を備える構成体によって、あるいは、1つまたは複数の電磁石を備える構成体、例えばヘルムホルツコイルによって形成される磁場も使用され得、この構成体は、特に1つまたは複数の鉄心も有し得る。このようにして、例えば、強力な均一磁場が生成され得る。
【0046】
図4は、ヘルムホルツコイルを備えたこのような実施形態の変形例の側面図を概略的に示す。ヘルムホルツコイル対のそれぞれの1つのコイル7
1、7
2は、検査されるカニューレ2の左側および右側に配置される。均一な、水平に整列された磁場が、2つのコイル7
1、7
2間に形成され、これは、(
図3に見られるように)磁場センサ構成体4
Aにより測定され得る。
【符号の説明】
【0047】
1 シリンジ
2 カニューレ、針
3 カニューレ保護キャップ
41・・・45 磁場センサ
4A いくつかの磁場センサを備える磁場センサ構成体
5 シリンジホルダ
6 回転装置(オプションとして持ち上げ装置を備える)
71、72 ヘルムホルツコイル
a シリンジの長手方向軸
F 磁力線
S センサ線、測定セクション