(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】量子計算チップのためのワイヤボンド・クロストーク減少
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20231226BHJP
H10N 60/81 20230101ALI20231226BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20231226BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L21/60 301A
H10N60/81
H01L27/04 H
(21)【出願番号】P 2021507764
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2019071755
(87)【国際公開番号】W WO2020043489
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-01-25
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、ドンビン
(72)【発明者】
【氏名】ブリンク、マーカス
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09836699(US,B1)
【文献】特開2010-010492(JP,A)
【文献】特開平02-056942(JP,A)
【文献】特開2005-277392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0227284(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0161804(US,A1)
【文献】S.BLANVILLAIN ET AL.,Suppressing on-chip electromagnetic crosstalk for spin qubit devices,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,米国,AMERICAN INSTITUTE OF PHYSICS,2012年09月20日,vol.112, no.6,pp.64315-1~64315-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H10N 60/81
H01L 21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子計算チップにおけるクロストークを減少させるためのワイヤボンドの構成であって、
量子計算回路の複数の導体は隣接し、前記複数の導体は、第1の導体及び第2の導体を含み、
前記量子計算回路の前記第1の導体を外部回路の第1の導体と連結する第1のワイヤボンドと、
前記量子計算回路の前記第2の導体を前記外部回路の第2の導体と連結する第2のワイヤボンドと、を備え、
前記第1のワイヤボンドの第1部分と前記第2のワイヤボンドのうち前記第1部分と対応する第2部分とが、前記第1の導体の長さ方向に第1の垂直距離だけ分離され、
前記第1部分と前記第2部分とが第1の横方向距離だけ分離され、
前記第1の垂直距離と前記第1の横方向距離とは直交する、
構成。
【請求項2】
前記第2のワイヤボンドの向きが、前記第1のワイヤボンドの向きから角度が付けられている、請求項1に記載の構成。
【請求項3】
前記第2のワイヤボンドの前記向きが、前記第1のワイヤボンドの前記向きに略直交する、請求項2に記載の構成。
【請求項4】
前記第2のワイヤボンドの前記向きが、前記第1のワイヤボンドの前記向きに略平行である、請求項2に記載の構成。
【請求項5】
前記複数の導体は第3の導体をさらに含み、
前記量子計算回路の第3の導体を前記外部回路の第3の導体と連結する第3のワイヤボンドであって、前記第2のワイヤボンドと前記第3のワイヤボンドとが、第2の垂直距離だけ分離される、前記第3のワイヤボンドをさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の構成。
【請求項6】
前記第1の垂直距離と前記第2の垂直距離とが等しい、請求項5に記載の構成。
【請求項7】
前記第3のワイヤボンドの向きが、前記第2のワイヤボンドの向きから角度が付けられている、請求項5に記載の構成。
【請求項8】
前記第3のワイヤボンドの前記向きが、前記第1のワイヤボンドの向きと実質的に類似している、請求項
7に記載の構成。
【請求項9】
前記複数の導体は第4の導体をさらに含み、
前記量子計算回路の第4の導体を前記外部回路の第4の導体と連結する第4のワイヤボンドであって、前記第3のワイヤボンドと前記第4のワイヤボンドとが、第3の垂直距離だけ分離される、前記第4のワイヤボンドをさらに備える、請求項5に記載の構成。
【請求項10】
前記第3の垂直距離が、前記第1の垂直距離および前記第2の垂直距離の合計と等しい、請求項9に記載の構成。
【請求項11】
前記第3の垂直距離が、前記第1の垂直距離と等しい、請求項9に記載の構成。
【請求項12】
前記第3の垂直距離が、前記第2の垂直距離と等しい、請求項9に記載の構成。
【請求項13】
前記第4のワイヤボンドの向きが、前記第3のワイヤボンドの向きから角度が付けられている、請求項9に記載の構成。
【請求項14】
前記第4のワイヤボンドの向きが、前記第2のワイヤボンドの向きに略平行である、請求項9に記載の構成。
【請求項15】
前記第2の導体が、前記外部回路の前記第1の導体の隣接導体である、請求項1ないし14のいずれかに記載の構成。
【請求項16】
前記第3の導体が、前記外部回路の前記第2の導体の隣接導体である、請求項5ないし
14のいずれかに記載の構成。
【請求項17】
前記第4の導体が、前記外部回路の前記第3の導体の隣接導体である、請求項9ないし
14のいずれかに記載の構成。
【請求項18】
方法であって、
量子計算回路の複数の導体は隣接し、前記複数の導体は、第1の導体及び第2の導体を含み、
前記量子計算回路の前記第1の導体を外部回路の第1の導体と連結するように第1のワイヤボンドを構成することと、
前記量子計算回路の前記第2の導体を前記外部回路の第2の導体と連結するように第2のワイヤボンドを構成し、
前記第1のワイヤボンドの第1部分と前記第2のワイヤボンドのうち前記第1部分と対応する第2部分とが、前記第1の導体の長さ方向に第1の垂直距離だけ分離され、
前記第1部分と前記第2部分とが第1の横方向距離だけ分離され、
前記第1の垂直距離と前記第1の横方向距離とは直交する、
方法。
【請求項19】
前記複数の導体は第3の導体をさらに含み、
前記量子計算回路の第3の導体を前記外部回路の第3の導体と連結するように第3のワイヤボンドを構成することであって、前記第2のワイヤボンドと前記第3のワイヤボンドとが、第2の垂直距離だけ分離される、前記第3のワイヤボンドを構成することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の導体は第4の導体をさらに含み、
前記量子計算回路の第4の導体を前記外部回路の第4の導体と連結するように第4のワイヤボンドを構成することであって、前記第3のワイヤボンドと前記第4のワイヤボンドとが、第3の垂直距離だけ分離される、前記第4のワイヤボンドを構成することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第3の垂直距離が、前記第1の垂直距離および前記第2の垂直距離の合計と等しい、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第3の垂直距離が、前記第1の垂直距離と等しい、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の導体が、前記外部回路の前記第1の導体の隣接導体である、請求項18ないし22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第3の導体が、前記外部回路の前記第2の導体の隣接導体である、請求項19ないし
22のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記第4の導体が、前記外部回路の前記第3の導体の隣接導体である、請求項20ないし
22のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、超伝導量子計算チップ上のワイヤボンドのためのデバイス、製造方法、および製造システムに関する。より詳細には、本発明は、量子計算チップのためのワイヤボンド・クロストーク減少のためのデバイス、方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
以下、単語または語句中の「Q」という接頭語は、使用される場所が明示的に区別されない限り、量子計算の文脈におけるその単語または語句の参照を示している。
【0003】
分子および素粒子は、物質界がより基礎的レベルでどのように動作するかを探究する物理学の一分野である量子力学の法則に従う。このレベルでは、粒子が奇妙な挙動を示し、同時に1つより多くの状態をとり、非常に遠くの他の粒子と相互作用する。量子計算は、プロセス情報に対するこれらの量子現象を利用する。
【0004】
我々が今日使用するコンピュータは、古典的なコンピュータ(本明細書では「従来の」コンピュータまたは従来のノード、即ち「CN」とも呼ばれる)として知られる。従来のコンピュータは、フォン・ノイマン式アーキテクチャというものにおいて、半導体材料および技術を用いて製造される従来のプロセッサ、半導体メモリ、ならびに磁気またはソリッドステート記憶デバイスを使用する。特に、従来のコンピュータにおけるプロセッサは、バイナリ・プロセッサであり、即ち、1および0で表されるバイナリ・データに対して動作する。
【0005】
量子プロセッサ(qプロセッサ)は、計算タスクを実行するために量子ビット・デバイス(本明細書では簡潔に「キュービット」、複数の「キュービット」と呼ばれる)の変わった性質を使用する。量子力学が動作する特定の領域では、問題の粒子が、「オン」状態、「オフ」状態、ならびに同時に「オン」および「オフ」両方の状態などの、複数の状態で存在し得る。半導体プロセッサを用いた古典的な計算が、単なるオンおよびオフ状態(バイナリ・コードの1および0に相当する)を用いることに限定される場合、量子プロセッサは、データ計算において使用可能である出力信号に対して物質のこれらの量子状態を利用する。
【0006】
従来のコンピュータは、ビットにおいて情報を符号化する。各ビットは、1または0の値をとり得る。これらの1および0は、コンピュータ機能を最終的に駆動するオン/オフ・スイッチとして機能する。一方、量子コンピュータは、キュービットに基づき、これは、量子物理学の2つの重要な原理、重ね合わせおよびもつれにより、古典的なビットとは異なる。重ね合わせは、各キュービットが、1および0の両方を同時に表し得ることを意味する。もつれは、重ね合わせにおけるキュービットが非古典的なやり方で互いに相互に関連付けられ得ること、即ち、1つの状態(それが1もしくは0またはその両方のいずれにせよ)が別の状態に依存し得ること、およびそれらが個々に扱われるときよりもそれらがもつれているときに、2つのキュービットについて確認され得る情報がより多く存在することを意味する。
【0007】
これら2つの原理を用いて、キュービットは、より高度な情報のプロセッサとして動作して、従来のコンピュータを用いて処理しにくい難問を量子コンピュータが解決することができるように、量子コンピュータが機能することを可能にする。IBM(R)は、超伝導キュービットを用いた量子プロセッサの操作性の構築および実証に成功した(IBMは、米国および他の国々におけるインターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーションの登録商標である)。
【0008】
超伝導キュービットは、ジョセフソン接合を含む。ジョセフソン接合は、2つの超伝導金属層を薄い非超伝導物質によって分離することによって形成される。超伝導層内の金属が、例えば特定の極低温度(cryogenic temperature)まで金属の温度を低下させることによって超伝導にされるとき、電子のペアが、1つの超伝導層から非超伝導層を通って他の超伝導層までトンネルし得る。キュービットにおいて、ジョセフソン接合は、分散性非線形インダクタとして機能し、非線形マイクロ波発振器を形成する1つまたは複数の容量デバイスと並列で電気的に連結される。発振器は、キュービット回路におけるインダクタンスおよびキャパシタンスの値によって判断される共振/遷移周波数を有する。「キュービット」という用語に対する任意の参照は、使用される場所が明示的に区別されない限り、ジョセフソン接合を使用する超伝導キュービット回路への参照である。
【0009】
キュービットによって処理される情報は、マイクロ波周波数の範囲においてマイクロ波信号/光子の形態で搬送または送信される。情報は、単一光子で搬送または送信される。マイクロ波信号は、その中に符号化された量子情報を解読するためにキャプチャされ、処理され、分析される。読み出し回路は、キュービットの量子状態をキャプチャし、読み出し、測定するためにキュービットと連結される回路である。読み出し回路の出力は、計算を実行するためにqプロセッサによって使用可能な情報である。
【0010】
超伝導キュービットは、2つの量子状態、|0>および|1>を有する。これらの2つの状態は、原子の2つのエネルギー状態、例えば、超伝導人工原子(超伝導キュービット)の基底状態(|g>)および第1の励起状態(|e>)であり得る。他の例は、核スピンまたは電子スピンのスピンアップおよびスピンダウン、結晶欠陥の2つの位置、および量子ドットの2つの状態を含む。システムが量子性質のものであるため、2つの状態の任意の組み合わせが可能であり、有効である。
【0011】
キュービットを用いた量子計算が信頼できるためには、量子回路、例えばキュービットそれ自体、キュービットに関連付けられた読み出し回路、および量子プロセッサの他の部分は、何らかの意味のあるやり方でエネルギーを注入すること、もしくは消散させることなどによって、意図せずキュービットの状態を変えてはならず、またはキュービットの|0>状態と|1>状態との間の相対位相に影響を及ぼしてはならない。量子情報で動作する任意の回路に対するこの動作制約は、そのような回路において使用される半導体および超伝導構造を製造する際に特別な考慮を必要とする。
【0012】
外部回路とq回路との間の接続線またはワイヤボンド、例えば、q回路への入力配線もしくはq回路からの出力配線、またはその両方は、q回路と外部回路との間、およびその逆において信号を移送する。クロストークは、隣接信号線によって搬送される信号の周波数範囲における望ましくない干渉または不要な移送である。外部回路とq回路上の導電パッドとの間のワイヤボンド上の信号は、周辺のワイヤボンドに対してクロストークを発生させ得る。このクロストークは、マイクロ波周波数スペクトル内にあることがある。ワイヤボンド上の信号は、単一光子またはほんのわずかの光子によって搬送または送信される情報に対応し得る。よって、量子計算チップは、従来のコンピュータよりも大きなレベルの感度を必要とする。本明細書に説明される理由から、ワイヤボンドおよび信号がq回路を用いた量子計算に関係するとき、周辺のワイヤボンド間のクロストークは、望ましくない。したがって、量子計算チップにおいて周辺のワイヤボンド間のクロストークを減少または軽減あるいはその両方を行う必要がある。
【0013】
q回路において使用される導波菅構造は、マイクロ波信号を制限し、回路の異なる部分間のクロストークを最小化するように設計される。これは、例えば、2つのコプレーナ導波路を分離する十分に大きな接地面によって、実現され得る。オンチップ導波路は、導電パッドにおいて終わってもよく、外部回路は、導電パッドからワイヤボンドを用いて接続され得る。しかしながら、ワイヤボンドの位置において、異なる信号線間の追加の連結が可能であり、それが、より大きな(望ましくない)クロストークにつながることがある。
【0014】
例示的実施形態は、q回路がq回路上のクロストークを最小化させるように設計されるが、接地面または遮蔽あるいはその両方がワイヤボンド間においては難しいことを認識する。さらに、例示的実施形態は、キュービットの数がq回路上で増加するにつれて、キュービットがそこから外部回路に接続され得る導体の数も増加することを認識する。同じサイズのチップにおいて増加した数のキュービットを製造することによって、チップ上の導体密度が増加される。その結果、そのような導体からのワイヤボンドは、同一チップ上の他のワイヤボンドに物理的に近くなる。よって、ワイヤボンドはより密集することになり、密集することによって、ワイヤボンド間のクロストークが増加する結果となる。追加的に、例示的実施形態は、ワイヤボンド間隔に対して収容するq回路のサイズを増加させることが、大きなq回路サイズに起因する非効率性およびコスト増加をもたらす結果となることを認識する。
【0015】
したがって、当技術分野において前述した問題に対処する必要がある。
【発明の概要】
【0016】
第1の態様から見ると、本発明は、量子計算チップにおけるクロストークを減少させるためのワイヤボンドの構成であって、量子計算回路の第1の導体を外部回路の第1の導体と連結する第1のワイヤボンドと、量子計算回路の第2の導体を外部回路の第2の導体と連結する第2のワイヤボンドであって、第1のワイヤボンドと第2のワイヤボンドとが、第1の導体の長さ方向に第1の垂直距離だけ分離される、第2のワイヤボンドと、を備える、構成を提供する。
【0017】
さらなる態様から見ると、本発明は、方法であって、量子計算回路の第1の導体を外部回路の第1の導体と連結するように第1のワイヤボンドを構成することと、量子計算回路の第2の導体を外部回路の第2の導体と連結するように第2のワイヤボンドを構成することであって、第1のワイヤボンドと第2のワイヤボンドとが、第1の導体の長さ方向に第1の垂直距離だけ分離される、第2のワイヤボンドを構成することと、を含む、方法を提供する。
【0018】
例示的実施形態は、量子計算チップのためのワイヤボンド・クロストーク減少デバイス、ならびにそのための製造の方法およびシステムを提供する。実施形態は、量子計算チップにおけるクロストークを減少させるためのワイヤボンドの構成を、量子計算回路の第1の導体を外部回路の第1の導体と連結する第1のワイヤボンドを含むように構築する。実施形態は、構成において、量子計算回路の第2の導体を外部回路の第2の導体と連結する第2のワイヤボンドであって、第1のワイヤボンドと第2のワイヤボンドとが、第1の導体の長さ方向に第1の垂直距離だけ分離される、第2のワイヤボンドをさらに含む。
【0019】
一実施形態では、第2のワイヤボンドの向きが、第1のワイヤボンドの向きから角度が付けられている。
【0020】
別の実施形態では、第2のワイヤボンドの向きが、第1のワイヤボンドの向きに略直交する。
【0021】
別の実施形態では、第2のワイヤボンドの向きが、第1のワイヤボンドの向きに略平行である。
【0022】
別の実施形態では、構成が、量子計算回路の第3の導体を外部回路の第3の導体と連結する第3のワイヤボンドであって、第2のワイヤボンドと第3のワイヤボンドとが、第2の垂直距離だけ分離される、第3のワイヤボンドをさらに含む。
【0023】
別の実施形態では、第1の垂直距離と第2の垂直距離とが等しい。
【0024】
別の実施形態では、第3のワイヤボンドの向きが、第2のワイヤボンドの向きから角度が付けられている。
【0025】
別の実施形態では、第3のワイヤボンドの向きが、第1のワイヤボンドの向きと実質的に類似している。
【0026】
別の実施形態では、構成が、量子計算回路の第4の導体を外部回路の第4の導体と連結する第4のワイヤボンドであって、第3のワイヤボンドと第4のワイヤボンドとが、第3の垂直距離だけ分離される、第4のワイヤボンドをさらに含む。
【0027】
別の実施形態では、第3の垂直距離が、第1の垂直距離および第2の垂直距離の合計と等しい。
【0028】
別の実施形態では、第3の垂直距離が、第1の垂直距離と等しい。
【0029】
別の実施形態では、第3の垂直距離が、第2の垂直距離と等しい。
【0030】
別の実施形態では、第4のワイヤボンドの向きが、第3のワイヤボンドの向きから角度が付けられている。
【0031】
別の実施形態では、第4のワイヤボンドの向きが、第2のワイヤボンドの向きに略平行である。
【0032】
実施形態は、ワイヤボンドの構成を作り上げるための方法を含む。
【0033】
実施形態は、ワイヤボンドの構成を構築するため、または組み立てるためのシステムを含む。
【0034】
本発明に特有であると信じられる新規な特性が、添付の特許請求の範囲において述べられている。しかしながら、発明自体は、使用の好適なモード、さらなる目的、およびその利点と同様に、添付図面と併せて読まれるときに、以下の例示的な実施形態の詳細な説明に対する参照によって最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】例示的実施形態による、q回路のための例としてのワイヤボンド間隔の概略図を示す。
【
図2】例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。
【
図3】別の例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。
【
図4】別の例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。
【
図5】例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。
【
図6】例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。
【
図7】例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明を説明するために使用される例示的実施形態は、概して、量子計算チップのためのワイヤボンド間のクロストークの上述した問題に対処し、解決する。例示的実施形態は、q回路サイズを維持しつつ、ワイヤボンド分離距離を増加させることをもたらし、それが上述した必要性または問題に対処する。
【0037】
周波数に関して発生すると本明細書に説明される動作は、その周波数の信号に関して発生すると解釈されるべきである。「信号」に対する全ての参照は、使用される場所が明示的に区別されない限り、マイクロ波周波数信号に対する参照である。
【0038】
実施形態は、q回路のための増加したワイヤボンド分離距離のための構成を提供する。別の実施形態は、方法がソフトウェア・アプリケーションとして実施され得るように、増加したワイヤボンド分離構成のための製造方法を提供する。製造方法の実施形態を実施するアプリケーションは、リソグラフィ・システムまたは回路アセンブリ・システムなどの、既存の半導体製造システムと併せて動作するように構成され得る。
【0039】
説明を明確にするために、かつそれに対していかなる限定も示唆することなく、例示的実施形態は、いくつかの例としての構成を用いて説明される。本開示から、当業者は、説明される目的を達成するための説明される構成の多くの改変、適合、および修正に想到することが可能であり、同上のものが、例示的実施形態の範囲内で考慮される。
【0040】
さらに、例としてのレジスタ、インダクタ、コンデンサ、導波管、および他の回路コンポーネントの簡略図が、図面および例示的実施形態において用いられる。実際の製造または回路において、図示され、もしくは本明細書に説明される追加の構造もしくはコンポーネント、または図示されるものとは異なるが本明細書に説明されるのと類似の機能のための構造もしくはコンポーネントが、例示的な実施形態の範囲から逸脱することなく存在し得る。
【0041】
さらに、例示的実施形態が、特定の実際の、または仮想のコンポーネントに関して単に例として説明される。様々な例示的実施形態によって説明されるステップは、q回路内で説明される機能を提供することを目的とし得る、または別の目的のために再利用し得る、多様なコンポーネントを用いて回路を製造するために適合され得る。このような適合は、例示的実施形態の範囲内で考慮される。
【0042】
例示的実施形態は、単に例として、ある種類の材料、電気特性、ステップ、数値、周波数、回路、コンポーネント、およびアプリケーションに関して説明される。これらのおよび他の類似の人工物のいかなる特定の明示も、本発明に対する限定であるように意図されない。これらのおよび他の類似の人工物のいかなる適当な明示も、例示的実施形態の範囲内で選択され得る。
【0043】
本開示における例は、説明を明確にするためだけに使用され、例示的実施形態に限定されない。本明細書に列挙されるいかなる利点も、単なる例であり、例示的実施形態に対する限定であるように意図されない。追加の利点または異なる利点は、特定の例示的実施形態によって実現され得る。さらに、特定の例示的実施形態は、上記に列挙された利点のうちのいくつかを有してもよく、全てを有してもよく、またはいずれも有さなくてもよい。
【0044】
図1を参照すると、この図は、例示的実施形態による、q回路のための例としてのワイヤボンド間隔の概略図を示す。構成100は、2つ以上のワイヤボンド102、104のセットを含む。ワイヤボンド102、104は、外部回路をq回路106に接続する。例えば、ワイヤボンド102は、導電パッド103Bを介して導体103Aに連結し、ワイヤボンド104は、導電パッド105Bを介して導体105Aに連結する。導体103A、導体105A、パッド103B、およびパッド105Bは、基板107上に製造される。ワイヤボンド102の一部は、示される例において図示されるように、横方向距離Δxおよび垂直距離Δyだけ、ワイヤボンド104の対応する部分から分離される。
【0045】
図2を参照すると、この図は、例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。構成200は、2つ以上のワイヤボンド202、204、206、208...のセットを含む。例えば、ワイヤボンド202および204は、導体の長さ方向に、垂直方向の千鳥状(staggered manner)に配置される。千鳥状にすることによって、ワイヤボンド202および204の対応する部分が横方向距離および垂直距離だけ互いに分離される。したがって、ワイヤボンド202および204の対応する部分が、従来技術における互いからの横方向の分離のみを有する場合に、千鳥状の配置によって、横方向距離よりも大きな対角線距離がワイヤボンド202および204の同一の対応する部分を分離する。隣接ワイヤボンドの分離は、横方向距離および垂直距離の両方において発生する。
【0046】
図3を参照すると、この図は、例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。この図中の例としての構成300は、2つ以上のワイヤボンド302、304、306、308...のセットを含む。隣接ワイヤボンド302、304の分離は、第1の垂直距離303Aおよび第1の横方向距離303Bにおいて発生する。隣接ワイヤボンド304、306の分離は、第2の垂直距離305Aおよび第2の横方向距離305Bにおいて発生する。隣接ワイヤボンド306、308の分離は、第3の垂直距離307Aおよび第3の横方向距離307Bにおいて発生する。
【0047】
ワイヤボンドは、例示的実施形態の範囲内の多様な配列において配列され得る。一実施形態において、第1の横方向距離303Bは、第2の横方向距離305Bと等しいか、または異なる。別の実施形態において、第1の垂直距離303Aは、第2の垂直距離305Aと等しいか、または異なる。別の実施形態において、第3の垂直距離307Aは、第1の垂直距離303Aおよび第2の垂直距離305Aの合計と等しいか、または異なる。別の実施形態において、第3の垂直距離307Aは、第1の垂直距離303Aと等しいか、または異なる。
【0048】
これらの距離の例は、限定であるように意図されない。本開示から、当業者は、ワイヤボンド間の千鳥状の分離距離を構成する多くの他の方法に想到することが可能であり、同上のものが、例示的実施形態の範囲内で考慮される。
【0049】
図4を参照すると、この図は、例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。構成400は、ワイヤボンド402、404、および外部回路406を含む。ワイヤボンド404の向きは、ワイヤボンド402の向きとは異なる。ワイヤボンド402は、第1の方向において外部回路406に面し、外部回路406に向かって延びる。ワイヤボンド404は、第2の方向において外部回路406に面し、外部回路406に向かって延びる。1つの配列において、第2の方向は、実質的に第1の方向の反対方向である。例えば、第2の方向は、第1の方向から180度±10度である。
【0050】
ワイヤボンドは、例示的実施形態の範囲内の多様な他の配列で配列され得る。一実施形態において、隣接ワイヤボンドの1つの配列が、隣接ワイヤボンドの異なる向きに加えて、垂直分離距離を含む。
【0051】
図5を参照すると、この図は、例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。構成500は、ワイヤボンド502、504、および外部回路506を含む。ワイヤボンド504の向きは、ワイヤボンド502の向きとは異なる。1つの配列では、ワイヤボンド504の向きは、ワイヤボンド502の向きに略直交する。例えば、ワイヤボンド504の向きは、ワイヤボンド502の向きから90度±10度である。
【0052】
ワイヤボンド502および504は、少数の非限定的な例を与えるために、互いに対して30度、45度、60度、または135度などの他の適当な角度に向けられていてもよい。そのような角度が付けられた向きは、ワイヤボンド502および504の対応する部分の間に垂直距離をさらに含んでも含まなくてもよい。
【0053】
図6を参照すると、この図は、例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。構成600は、ワイヤボンド602、604、606、608...を含む。隣接ワイヤボンド602、604の分離は、第1の横方向距離および第1の垂直距離において発生する。ワイヤボンド604の向きは、ワイヤボンド602の向きとは異なる。一実施形態では、ワイヤボンド604は、ワイヤボンド602の向きに略直交する。別の実施形態では、ワイヤボンド604は、例えば10~170度の間の任意の角度で、ワイヤボンド602に対して別の適当な角度に向けられている。
【0054】
隣接ワイヤボンド604、606の分離は、第2の横方向距離および第2の垂直距離において発生する。ワイヤボンド606の向きは、ワイヤボンド604の向きとは異なる。一実施形態では、ワイヤボンド606は、ワイヤボンド604の向きに略直交する。別の実施形態では、ワイヤボンド606は、例えば10~170度の間の任意の角度で、ワイヤボンド604に対して別の適当な角度に向けられている。隣接ワイヤボンド606、608の分離は、第3の横方向距離および第3の垂直距離において発生する。一実施形態では、第3の垂直距離は、第1の垂直距離および第2の垂直距離の合計と等しい。ワイヤボンドは、例示的実施形態の範囲内の多様な他の配列で配列され得る。例えば、配列のパターンは、
図6に示されるように繰り返す。
【0055】
図7を参照すると、この図は、例示的実施形態による、q回路と外部回路との間のワイヤボンドの例としてのセットを示す。構成700は、ワイヤボンド702、704、706、708、710...を含む。隣接ワイヤボンド702、704の分離は、第1の横方向距離および第1の垂直距離において発生する。ワイヤボンド704の向きは、ワイヤボンド702の向きとは異なる。一実施形態では、ワイヤボンド704は、ワイヤボンド702の向きに略直交する。別の実施形態では、ワイヤボンド704は、例えば10~170度の間の任意の角度で、ワイヤボンド702に対して別の適当な角度に向けられている。隣接ワイヤボンド704、706の分離は、第2の横方向距離および第2の垂直距離において発生する。ワイヤボンド706の向きは、ワイヤボンド704の向きとは異なる。一実施形態では、ワイヤボンド706は、ワイヤボンド704の向きに略直交する。別の実施形態では、ワイヤボンド706は、例えば10~170度の間の任意の角度で、ワイヤボンド704に対して別の適当な角度に向けられている。別の実施形態では、ワイヤボンド706の向きは、ワイヤボンド702に実質的に類似する。
【0056】
隣接ワイヤボンド708、706の分離は、第3の横方向距離および第3の垂直距離において発生する。ワイヤボンド708の向きは、ワイヤボンド706の向きとは異なる。一実施形態では、ワイヤボンド708は、ワイヤボンド706の向きに略直交する。別の実施形態では、ワイヤボンド708は、例えば10~170度の間の任意の角度で、ワイヤボンド706に対して別の適当な角度に向けられている。
【0057】
隣接ワイヤボンド710、708の分離は、第4の横方向距離および第4の垂直距離において発生する。ワイヤボンド710の向きは、ワイヤボンド708の向きとは異なる。一実施形態では、ワイヤボンド710は、ワイヤボンド708の向きに略直交する。別の実施形態では、ワイヤボンド710は、例えば10~170度の間の任意の角度で、ワイヤボンド708に対して別の適当な角度に向けられている。ワイヤボンドは、例示的実施形態の範囲内の多様な他の配列で配列され得る。一実施形態では、隣接ワイヤボンドの第1のペア間の横方向距離は、隣接ワイヤボンドの第2のペア間の横方向距離と等しいか、または異なる。別の実施形態では、隣接ワイヤボンドの第1のペア間の垂直距離は、隣接ワイヤボンドの第2のペア間の垂直距離と等しいか、または異なる。
【0058】
別の実施形態では、隣接ワイヤボンド間の分離の垂直距離を判断する方法は、隣接ワイヤボンド間の所定の横方向距離および隣接ワイヤボンド間の所定の最小分離距離に基づいて計算される。例えば、所定の横方向距離の選択は、qチップのサイズおよび所望の数のキュービットに基づく。いくつかの実施形態では、ワイヤボンドの所定の最小分離距離は、異なる信号線間のクロストークを最小化するように設定される。一実施形態では、所定の最小分離距離の選択は、qチップのサイズおよび所望の数のキュービットに基づく。
【0059】
隣接ワイヤボンド間の分離の垂直距離は、所定の横方向距離および所定の最小分離距離から計算される。例えば、
図1における横方向距離Δxは、所定の横方向距離であってもよい。
図1に示されるように、横方向距離Δxおよび垂直距離Δyは、直角を形成する。ΔxとΔyとの間の直角の斜辺は、隣接ワイヤボンド間の最小分離距離である。隣接ワイヤボンド間の垂直距離は、所定の横方向距離、最小分離距離、ならびにワイヤボンドの配列の向きおよび構成に基づいて計算され得る。例えば、ピタゴラスの定理は、所定の横方向距離および隣接ワイヤボンド間の最小分離距離に基づいて、
図1に示される配列における隣接ワイヤボンド間の垂直距離を計算するために使用され得る。
【0060】
本発明の多様な実施形態は、関連する図面を参照して本明細書において説明される。代替的実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく考案され得る。ワイヤボンドの数を様々な実施形態に示される数よりも大きく拡張する代替的実施形態が、本発明の範囲内において考えられる。様々な接続および位置関係(例えば、上、下、隣接など)が、以下の説明および図面内の要素間において述べられているが、当業者は、向きが変更されても説明される機能性が維持されるときに、本明細書に説明される位置関係の多くが向きに独立していることを認識するであろう。これらの接続または位置関係あるいはその両方が、特段の指定がない限り、直接または間接であってもよく、本発明は、この点に関して限定であるように意図されない。その結果、要素の連結は、直接連結または間接連結のいずれかを指してもよく、要素間の位置関係は、直接または間接の位置関係であってもよい。間接的な位置関係の例として、レイヤ「B」上にレイヤ「A」を形成することに対する本説明における参照は、レイヤ「A」およびレイヤ「B」の関連特性および機能性が中間層によって実質的に変更されない限り、1つまたは複数の中間層(例えばレイヤ「C」)がレイヤ「A」およびレイヤ「B」の間にある状況を含む。
【0061】
以下の定義および略称は、特許請求の範囲および明細書の解釈のために使用されるものとする。本明細書において使用される、「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「包含する」、もしくは「包含している」という用語、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的包含を含むように意図される。例えば、要素のリストを含む合成物、混合物、プロセス、方法、製品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されず、明示的に列挙されない他の要素、またはそのような合成物、混合物、プロセス、方法、製品、もしくは装置に固有の他の要素を含み得る。
【0062】
追加的に、「例示的」という用語は、「例、事例、または例示として機能すること」を意味するように、本明細書において使用される。本明細書において説明されるいかなる実施形態または設計も、必ずしも他の実施形態または設計よりも好適または有利であると解釈されるべきではない。「少なくとも1つの」および「1つまたは複数の」という用語は、1以上の任意の整数、即ち、1、2、3、4などを含むように理解される。「複数の」という用語は、2以上の任意の整数、即ち、2、3、4、5などを含むように理解される。「接続」という用語は、間接「接続」および直接「接続」を含み得る。
【0063】
「一実施形態」、「実施形態」、「例示的実施形態」などへの明細書中の参照は、説明される実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、あらゆる実施形態が当該特定の特徴、構造、または特性を含んでも含まなくてもよいことを示している。さらに、そのような語句は、必ずしも同一の実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、ある実施形態に関連して説明されるとき、それは、明示的に説明されるか否かに関わらず、他の実施形態に関連するそのような特徴、構造、または特性に影響を及ぼす当業者の知識の範囲内にあると考えられる。
【0064】
「約」、「実質的に」、「おおよそ」という用語およびそれらの変形は、本出願の出願時点に入手可能な機器に基づく特定の数量の測定値に関連する誤差の程度を含むように意図される。例えば、「約」は、所与の値の±8%もしくは5%、または2%の範囲を含み得る。
【0065】
本発明の多様な実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、網羅的であるように、または開示される実施形態に限定されるように意図されない。多くの修正および変形が、説明される実施形態の範囲から逸脱することなく当業者に明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実用的な適用、もしくは市場で発見される技術を超える技術的改善を最もよく説明するため、または他の当業者が本明細書で説明された実施形態を理解することを可能にするために、選択された。