(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/48 20060101AFI20231226BHJP
B23Q 1/01 20060101ALI20231226BHJP
B23Q 1/72 20060101ALI20231226BHJP
B23Q 3/157 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B23Q1/48 F
B23Q1/01 T
B23Q1/01 W
B23Q1/72 B
B23Q3/157 C
(21)【出願番号】P 2021509472
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020013171
(87)【国際公開番号】W WO2020196567
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019058663
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020007125
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一史
(72)【発明者】
【氏名】松丸 盛一
(72)【発明者】
【氏名】藤生 卓
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1589550(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0084102(US,A1)
【文献】特開平10-058210(JP,A)
【文献】特開2001-025932(JP,A)
【文献】特開2009-023076(JP,A)
【文献】特開2000-308936(JP,A)
【文献】特開2015-120222(JP,A)
【文献】特開2018-034266(JP,A)
【文献】特開2015-178169(JP,A)
【文献】特表2017-505720(JP,A)
【文献】特開2014-056537(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111902(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/01、48、72
B23Q 3/06、157
B23Q 17/00
B23B 31/117
A61C 13/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z軸方向に沿う第1面、及び、Y軸方向に沿う第2面を有する第1フレームを備えた加工装置であって、
前記第1フレームの前記第1面側に設けられた、X軸移動機構及びZ軸移動機構と、
前記第1フレームの前記第2面側に設けられた、Y軸移動機構と、
前記第1フレームの前記第2面側から前記第1フレームを支持する第2フレームと、
前記Y軸移動機構によって移動する、A軸回転機構、B軸回転機構、及び、加工対象物を支持する支持機構と、を備え、
前記第1フレームのZ軸方向における下方であって、前記第2フレームによって形成された空間内に前記Y軸移動機構を設け、
前記第1フレームは、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及びZ軸移動機構を支持し、
前記Y軸移動機構は、前記支持機構をY軸方向に案内する案内軸を有し、
Y軸方向において、前記第2フレームが前記第1フレームを支持する一方端から前記一方端とは反対側の他方端までの長さは、前記案内軸よりも長いことを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記Y軸移動機構の案内面は、前記A軸回転機構の回転中心軸、及び、前記B軸回転機構の回転中心軸よりも、Z軸方向の上方に位置し、
X軸方向において、加工対象物を基準に、前記A軸回転機構のモータ側とは反対側に配置され、複数の工具を保持する工具マガジンと、
X軸方向において、前記A軸回転機構のモータと前記工具マガジンとの間に配置され、工具の長さを検知する工具長センサと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
Z軸方向に沿う第1面、及び、Y軸方向に沿う第2面を有する第1フレームを備えた加工装置であって、
前記第1フレームの前記第1面側に設けられた、X軸移動機構及びZ軸移動機構と、
前記第1フレームの前記第2面側に設けられた、Y軸移動機構と、
前記第1フレームの前記第2面側から前記第1フレームを支持する第2フレームと、
前記Y軸移動機構によって移動する、A軸回転機構、B軸回転機構、及び、加工対象物を支持する支持機構と、を備え、
前記第1フレームのZ軸方向における下方であって、前記第2フレームによって形成された空間内に前記Y軸移動機構を設け、
前記第1フレームは、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及びZ軸移動機構を支持し、
前記A軸回転機構は、前記支持機構を、A軸を中心として回転可能であり、
前記支持機構は、
前記A軸に沿った平面が通る位置において前記加工対象物を保持する保持部であって、前記A軸の延長線が前記加工対象物の前記平面に直交する方向の中心を通るように前記加工対象物を保持する保持部と、
前記平面に直交する方向に関して前記保持部により前記加工対象物を保持した位置よりも片側で、且つ、前記A軸と偏心した位置で前記A軸回転機構と連結され、前記保持部を介して前記加工対象物を支持する支持部と、を有
し、
前記支持機構は、前記保持部の前記平面が通る周囲の一部を押圧する押圧部を有することを特徴とする加工装置。
【請求項4】
前記押圧部の押圧方向は、前記平面に沿った方向よりも前記片側を向くように前記平面に対して傾斜していることを特徴とする請求項
3に記載の加工装置。
【請求項5】
前記保持部は、前記支持部に対して前記平面と直交する方向に着脱可能であり、前記加工対象物を保持する本体部と、前記本体部から前記平面に直交する方向に突出した突出部と、前記突出部から前記平面と平行な方向に突出した第1突起とを有し、
前記支持部は、前記突出部が挿入可能な開口部と、前記開口部の内周面から前記平面と平行な方向に突出した第2突起と、前記第2突起から外れた位置で前記突出部が前記開口部に挿入される際に前記第1突起が前記第2突起よりも前記突出部の挿入方向下流側に進入可能とする進入部と、を有し、
前記保持部と前記支持部との何れかに設けられ、前記第1突起が前記進入部を通った状態で前記保持部と前記支持部とを相対回転させ、前記第1突起と前記第2突起とが前記挿入方向に重なった状態で前記第1突起と前記第2突起との間に位置し、前記第1突起と前記第2突起とを互いに離間する方向に付勢する付勢部を有することを特徴とする請求項3
または4に記載の加工装置。
【請求項6】
Z軸方向に沿う第1面、及び、Y軸方向に沿う第2面を有する第1フレームを備えた加工装置であって、
前記第1フレームの前記第1面側に設けられた、X軸移動機構及びZ軸移動機構と、
前記第1フレームの前記第2面側に設けられた、Y軸移動機構と、
前記第1フレームの前記第2面側から前記第1フレームを支持する第2フレームと、
前記Y軸移動機構によって移動する、A軸回転機構、B軸回転機構、及び、加工対象物を支持する支持機構と、を備え、
前記第1フレームのZ軸方向における下方であって、前記第2フレームによって形成された空間内に前記Y軸移動機構を設け、
前記第1フレームは、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及びZ軸移動機構を支持し、
前記Z軸移動機構は、加工具をZ軸方向に移動可能であり、
複数の加工具を保持可能な工具保持部を備え、
前記工具保持部は、
複数の加工具を第1列に沿って配置可能で、それぞれ所定方向に複数の加工具を着脱可能な複数の第1工具配置部と、
前記第1列と略平行で前記第1列に隣接した第2列に沿って複数の加工具を配置可能で、それぞれ所定方向に複数の加工具を着脱可能であり、且つ、前記第1列及び前記第2列に沿った方向に関して、前記第1列に配置された加工具の中心と前記第2列に配置された加工具の中心とがずれるように複数の加工具が配置される複数の第2工具配置部と、
前記第2列の前記第1列と反対側から、前記第2列に沿った方向に関して前記第2工具配置部から外れた位置を通るように配置され、それぞれ前記第1工具配置部への加工具の着脱動作に連動して揺動する複数の第1揺動部と、
前記第1揺動部よりも長さが短く、前記第2列の前記第1列と反対側から前記第2工具配置部に向けて配置され、それぞれ前記第2工具配置部への加工具の着脱動作に連動して揺動する複数の第2揺動部と、
前記第2列の前記第1列と反対側に配置され、前記第1揺動部の揺動動作により前記第1工具配置部への加工具の着脱を検知する第1検知部と、
前記第2列の前記第1列と反対側に配置され、前記第2揺動部の揺動動作により前記第2工具配置部への加工具の着脱を検知する第2検知部と、を有することを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物を加工可能な加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置として、加工具が取り付けられた主軸を回転させて加工対象物(ワーク)に切削加工などをする装置が従来から知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の構成の場合、ワークは装置を構成する枠体の側面に支持されつつ、移動及び回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成の場合、ワークが装置を構成する枠体の側面に支持されつつ、移動及び回転するため、ワークを支持するための剛性を確保しにくい。ワークや主軸を支持する部分の剛性が不足すると、加工安定性が低下する可能性がある。加工安定性が低下すると、ワークの加工精度を十分に確保できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の加工装置は、Z軸方向に沿う第1面、及び、Y軸方向に沿う第2面を有する第1フレームを備えた加工装置であって、前記第1フレームの前記第1面側に設けられた、X軸移動機構及びZ軸移動機構と、前記第1フレームの前記第2面側に設けられた、Y軸移動機構と、前記第1フレームの前記第2面側から前記第1フレームを支持する第2フレームと、前記Y軸移動機構によって移動する、A軸回転機構、B軸回転機構、及び、加工対象物を支持する支持機構と、を備え、前記第1フレームのZ軸方向における下方であって、前記第2フレームによって形成された空間内に前記Y軸移動機構を設け、前記第1フレームは、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及びZ軸移動機構を支持し、前記Y軸移動機構は、前記支持機構をY軸方向に案内する案内軸を有し、Y軸方向において、前記第2フレームが前記第1フレームを支持する一方端から前記一方端とは反対側の他方端までの長さは、前記案内軸よりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加工対象物の加工精度を確保し易い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】第1の実施形態に係る加工装置を一部を切断して示す側面図。
【
図5A】第1の実施形態に係る加工装置を、架台の一部を切断して示す側面図。
【
図5B】第1の実施形態に係る加工装置を、
図5Aの状態よりも支持機構をY軸方向に移動させた状態で、架台の一部を切断して示す側面図。
【
図6】第1の実施形態に係る加工装置の正面図でワークをb軸回りで傾斜させた図。
【
図7】第1の実施形態に係る電装ユニットの概略断面図。
【
図8】第1の実施形態の別の第1例に係る加工装置の斜視図。
【
図9】第1の実施形態の別の第2例に係る加工装置の一部を示す正面図。
【
図10】第1の実施形態の別の第2例に係る加工装置の一部を示す斜視図。
【
図11】第1の実施形態の別の第2例に係る支持機構及び第1回転機構の断面図。
【
図12】第1の実施形態の別の第2例に係る支持機構の平面図。
【
図14】第1の実施形態に係る第1回転機構、支持機構及び工具マガジンの斜視図。
【
図15】第1の実施形態に係る第1回転機構、支持機構及び工具マガジンの平面図。
【
図18A】第2の実施形態に係る支持部を含む第1回転機構の平面図。
【
図18B】第2の実施形態に係る支持部を含む第1回転機構の斜視図。
【
図19A】第2の実施形態において保持部を支持部に挿入する前の状態を示す斜視図。
【
図19B】第2の実施形態において保持部を支持部に挿入した時の状態を示す斜視図。
【
図20A】第2の実施形態において保持部を支持部に装着した状態を示す斜視図。
【
図20B】第2の実施形態において保持部を支持部に装着した状態を示す断面図。
【
図21A】第2の実施形態において保持部を着脱すべく、保持部の回転止めをする構成を示す平面図。
【
図21B】第2の実施形態において保持部を着脱すべく、保持部の回転止めをする構成を示す斜視図。
【
図22A】
図21Aの状態から支持機構をb軸を中心に回転させた状態を示す平面図。
【
図22B】
図21Bの状態から支持機構をb軸を中心に回転させた状態を示す斜視図。
【
図23】第3の実施形態に係る加工装置の外観斜視図。
【
図24A】第3の実施形態に係る工具のクランプ前を示す断面図。
【
図24B】第3の実施形態に係る工具のクランプ後を示す断面図。
【
図25】第3の実施形態に係る加工装置における制御ブロック図。
【
図26】第3の実施形態に係る加工装置における制御フローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、
図1ないし
図16を用いて説明する。まず、本実施形態の加工装置100の全体構成について、
図1ないし
図6を用いて説明する。
【0009】
[加工装置]
加工装置100は、移動機構支持部材としてのフレーム1と、それぞれフレーム1に支持された第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30と、加工対象物としてのワークWを支持する支持機構40と、支持機構40を回転可能な第1回転機構(回転機構)50及び第2回転機構(別の回転機構)60と、工具マガジン70と、電装ユニット80とを備える。
【0010】
第1フレームとしてのフレーム1は、内部に空洞(空間)を有する第2フレームとしての架台2上に載置されており、
図4に示すように、第1部分3と、第1部分3の端部から直角に折り曲げられた第2部分4とから構成される。本実施形態では、第1部分3は、鉛直方向に沿って配置されており、第2部分4は、水平方向に沿って配置されている。また、第1部分3の第2部分4が折り曲げられた側と反対側の面(
図4の左面)を第1の面3a、第2部分4の第1部分3とは反対側の面(
図4の下面)を第2の面4aとする。第1の面3aと第2の面4aとは互いに直交する。第1の面3aがZ軸方向に沿う第1面、第2の面4aがY軸方向に沿う第2面に相当する。架台2は、フレーム1の第2の面4a側からフレーム1を支持する。
【0011】
Z軸移動機構としての第1移動機構10は、第2移動機構20を介してフレーム1の第1部分3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向(鉛直方向、第1方向)に主軸11を移動可能である。主軸11には、加工具12が工具ホルダを介して着脱自在に取り付けられている。主軸11は、モータ13により回転駆動される。第1移動機構10は、
図4に示すように、モータ14と、Z軸方向に配置された案内軸15とを有し、モータ14の駆動により主軸11を案内軸15に沿ってZ軸方向に往復移動(昇降)させる。主軸11は、Z軸支持部材16を介して案内軸15に移動可能に支持されている。例えば、案内軸15はボールねじであり、Z軸支持部材16はモータ14の駆動により回転する案内軸15(ボールねじ)に沿って移動する部材である。案内軸15やZ軸支持部材16は、カバー17により覆われている。
【0012】
X軸移動機構としての第2移動機構20は、フレーム1の第1部分3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向に直交するX軸方向(水平方向、第2方向)に第1移動機構10と共に主軸11を移動可能である。第2移動機構20は、モータ21と、X軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータ21の駆動により第1移動機構10を案内軸に沿ってX軸方向に往復移動させる。第2移動機構20についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。
【0013】
Y軸移動機構としての第3移動機構30は、フレーム1の第2部分4の第2の面4aに支持されており、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(水平方向、第3方向)に支持機構40を移動可能である。第3移動機構30は、モータ32(
図5A、
図5B)と、Y軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータの駆動により支持機構40を案内軸に沿ってY軸方向に往復移動させる。第3移動機構30についても、第1移動機構10と同様に、例えば、案内軸としてボールねじを用いても良い。第3移動機構30は、
図5A、
図5Bに示すように、フレーム1のZ軸方向における下方であって、架台2によって形成された空間内に設けられている。また、第3移動機構30の案内面は、後述する第1回転機構50の回転中心軸(a軸)、及び、第2回転機構60の回転中心軸(b軸)よりも、Z軸方向の上方に位置する。
【0014】
また、第3移動機構30は、第2回転機構60を支持する支持板部31を備えており、
図5A、
図5Bに示すように、支持板部31が案内軸に沿ってY軸方向に往復移動する。
図1及び
図3に示すように、架台2のY軸方向の支持機構40側は開口しており、支持板部31及び支持板部31に支持された第2回転機構60がY軸方向に移動しても架台2と干渉することを防いでいる。そして、第3移動機構30は、詳しくは後述するように、第2回転機構60及び第1回転機構50と共に支持機構40をY軸方向に移動可能である。
【0015】
支持機構40は、例えば、歯科用補綴物など加工具12により切削加工される加工対象物としてのワークWを支持する。このような支持機構40は、ワークWを保持する保持部41と、両端部が第1回転機構50の回転部51、52にそれぞれ連結され、保持部41を介してワークWを支持する支持部42とを有する。保持部41と支持部42は別体であり、詳しくは後述するが、保持部41が支持部42に対して固定されている。但し、保持部41と支持部42とを一体としても良い。
【0016】
A軸回転機構としての第1回転機構50は、支持機構40をZ軸方向に直交する回転軸としてのa軸(
図2~4、6参照)を中心として回転可能である。本実施形態では、a軸は、X軸方向と平行としている。このような第1回転機構50は、回転部51、52を回転自在に支持する支持フレーム53と、回転部51を回転駆動するモータ54(
図11)とを有する。支持フレーム53は、支持機構40の周囲を囲むように略コの字型に形成され、モータ54及び回転部51を支持する第1支持部53aと、回転部52を支持する第2支持部53bと、第1支持部53aと第2支持部53bとを連結する連結部53cとから構成される。
【0017】
第1支持部53aに支持された回転部51と、第2支持部53bに支持された回転部52は、a軸方向に互いに対向するように、且つ、a軸を回転軸として回転可能に配置されている。そして、支持機構40のa軸方向両端部が、それぞれ回転部51、52に支持されている。これにより、第1回転機構50は、
図4に示すように、支持機構40を、a軸を中心としてα°回転可能に支持する。
【0018】
第1回転機構50は、少なくとも180°回転可能であり、支持機構40に支持されたワークWの表裏を反転可能である。本実施形態では、第1回転機構50は、支持機構40をa軸を中心として360°回転させることができる。なお、詳しくは後述するように、a軸の延長線が支持機構40に支持されたワークWの厚さ方向の中心を通るため、回転中心軸であるa軸から表面までの距離とa軸から裏面までの距離は同じである。したがって、ワークWの表裏が反転しても、ワークWの厚さ方向の中心と加工具12との位置関係は変わらない。
【0019】
B軸回転機構としての第2回転機構60は、支持機構40をZ軸方向及びa軸に直交する別の回転軸としてのb軸(
図4、5参照)を中心として回転可能である。本実施形態では、b軸は、Y軸方向と平行としている。このような第2回転機構60は、第1回転機構50の支持フレーム53が取り付けられる回転部61(
図11)と、回転部61を回転駆動するモータ62(
図4)とを有する。回転部61は、支持フレーム53の連結部53cが取り付けられ、モータ62に回転駆動されることにより支持フレーム53を、b軸を中心として回転可能である。したがって、第2回転機構60は、
図6に示すように、第1回転機構50と共に支持機構40を、b軸を中心としてβ°回転可能に支持する。
【0020】
b軸は、第1回転機構50の回転部51と回転部52の間のX軸方向中央部を通り、延長線が支持機構40に支持されたワークWのX軸方向の中心を通る。また、a軸とb軸とは、
図4及び
図6に示すように、互いに直交するように交わる。このため、a軸は、b軸を中心として回転可能であり、例えば、
図6に示すように、a1軸からa2軸まで揺動する。
【0021】
工具保持部としての工具マガジン70は、複数の加工具を保持可能であり、第1回転機構50に隣接して配置され、
図2に示すように、支持部材71に支持されている。支持部材71は、第3移動機構30の支持板部31に支持されている。このため、工具マガジン70は、第3移動機構30により支持機構40などと共にY軸方向に移動可能である。但し、
図4に示すように、支持機構40がa軸を中心に回転しても、工具マガジン70は回転せず、
図6に示すように、支持機構40がb軸を中心に回転しても、工具マガジン70は回転しない。即ち、工具マガジン70は、支持機構40がa軸及びb軸を中心に回転しても所定の姿勢を維持するように、支持部材71に支持されている。
【0022】
工具マガジン70には、それぞれ工具ホルダ12aと一体に形成された複数種類の加工具が保持された状態でY軸方向に沿って複数列並べて配置されている。そして、主軸11に取り付ける加工具を交換可能としている。なお、工具ホルダ12aは、主軸11に保持される部分で、加工具と一体に形成されていても良いし、別体に形成されていても良い。なお、本実施形態では、加工具12をチャック付の工具ホルダ12aに取り付けた上で、主軸11の工具保持用のチャック部が工具ホルダ12aを介して保持する2重チャックの構成となっている。但し、主軸11に直接、加工具を取り付けても良い。加工具の交換は、作業者が行っても良いし、加工装置100により自動で行っても良い。
【0023】
加工具の交換を自動で行う場合には、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の加工具が入っていない空きスペースを主軸11の下方に移動させる。そして、第1移動機構10により主軸11を下降させ、主軸11に設けられたチャックなどの着脱装置を動作させることで、主軸11に取り付けられている加工具12を外して工具マガジン70の空きスペースに配置する。次いで、第1移動機構10により主軸11を上昇させると共に、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の交換したい加工具12が配置されている位置を主軸11の下方に移動させる。そして、再度、第1移動機構10により主軸11を下降させ、着脱装置を動作させることで、主軸11に交換したい加工具12を装着する。なお、加工具12は、例えば、ドリルやエンドミルである。
【0024】
電装ユニット80は、フレーム1の内側に取り付けられている。即ち、電装ユニット80は、第1部分3の第1の面3aの反対側で、第2部分4の第2の面4aの反対側に配置されている。このようにL字型に形成されたフレーム1の、各移動機構や回転機構が配置されていない内側に電装ユニット80を配置することで、スペースを有効に利用でき、装置の小型化を図れる。
【0025】
このような電装ユニット80は、加工装置100を制御するもので、
図7に示すように、枠体81に制御基板83、各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zが支持されている。制御基板83は、主軸や各軸のモータの駆動を制御する。各制御部84a、84b、84c、84x、84y、84zは、例えば、それぞれ対応するモータのロータリーエンコーダの信号からモータに出力するパルスを演算し、それぞれ対応するモータの回転を適切に制御するものである。
【0026】
即ち、制御部84aは、第1回転機構50のモータ54を制御して、支持機構40をa軸を中心に回転させる。制御部84bは、第2回転機構60のモータ62を制御して、支持機構40をb軸を中心に傾斜させ、支持機構40の姿勢を決定する。また、制御部84xは、第2移動機構20のモータ21を制御して主軸11をX軸方向に移動させ、主軸11のX軸方向の位置を決定する。制御部84yは、第3移動機構30のモータを制御して支持機構40をY軸方向に移動させ、支持機構40のY軸方向の位置を決定する。制御部84zは、第1移動機構10のモータ14を制御して主軸11をZ軸方向に移動させ、主軸11のZ軸方向の位置を決定する。これにより、主軸11と支持機構40のX軸、Y軸、Z軸の相対位置が決定される。
【0027】
制御部84cは、主軸11を回転駆動するモータ13を制御する。制御部84cは、主軸11に取り付けられた加工具12を高速で回転させるため、他の制御部84a、84b、84x、84y、84zよりも大型、高重量になり易い。そこで、本実施形態では、電装ユニット80の枠体81は、制御部の設置スペースを上下に仕切る仕切り部82を有し、仕切り部82の下方に大型で高重量の制御部84cを設け、仕切り部82の上方に小型で軽量の84a、84b、84x、84y、84zを設けるようにしている。このように重量物を下方に配置することで装置の安定性を図れると共に、小型の制御部を仕切り部82の上方にまとめて配置することでスペースを有効活用して装置の小型化を図れる。
【0028】
また、制御基板83は、配線等を行い易くするため枠体81の側面に設けるようにしている。但し、これら電装ユニット80の各部の配置は、どのような順番に入れ変えても良い。
【0029】
なお、上述の説明では、各移動機構や回転機構、電装ユニットを支持する移動機構支持部材をL字型のフレーム1としたが、
図8に示すように、箱型のフレーム1Aとしても良い。フレーム1Aも、フレーム1と同様に、第1移動機構10及び第2移動機構20を支持する第1の面3aと、第3移動機構30を支持する第2の面4aとを有する。また、電装ユニット80は、箱型のフレーム1A内に配置される。
【0030】
このような加工装置100によりワークWを加工する場合には、加工具12が取り付けられた主軸11を回転させつつ、第1移動機構10により主軸11を昇降させることで、ワークWの加工面(上面)を加工具12により切削する。この際、第2移動機構20により主軸11をX軸方向に、第3移動機構30によりワークWを支持した支持機構40をY軸方向に移動させつつ、第1移動機構10により主軸11を昇降させることで、ワークWの加工面の任意の位置を切削加工可能である。また、第2回転機構60によりワークWを、b軸を中心として傾斜させた状態でも切削加工可能であり、更に、第1回転機構50によりワークWの表裏を反転して切削加工可能である。
【0031】
また、本実施形態の加工装置100は、コンピュータ制御により自動加工を行うNC加工装置である。具体的には、パーソナルコンピュータなどの外部端末を用いてCAD/CAMシステムにより加工データを作成し、このデータに基づいて数値制御によりワークWの加工を行う。このために、加工装置100には、加工装置100に指令を行うパーソナルコンピュータなどの外部端末が接続される。なお、加工装置100自体に、数値制御が可能なCPUやメモリを搭載したコンピュータが設けられていても良い。
【0032】
例えば、加工装置100により歯科用補綴物の作成を行う場合、3次元計測器で計測した歯科用補綴物のデータをCAD/CAMシステムに転送し、CAD/CAMシステムにより加工データを作成する。そして、この加工データに基づいて、加工装置100を制御してワークWを加工具12により切削加工することで、歯科用補綴物を作成する。
【0033】
このようにワークを加工する加工装置では、主軸やワークを移動させる移動機構やワークを回転させる回転機構を支持する移動機構支持部材の剛性を十分に確保することが好ましい。特に、主軸を高回転で回転させて切削を行う場合、移動機構支持部材の剛性を十分に確保することが望まれる。例えば、特許文献1に記載された構成の場合、ワークは装置を構成する枠体の側面に支持されつつ、移動及び回転する。このため、ワークを支持するための剛性を確保しにくい。ワークや主軸を支持する部分の剛性が不足すると、加工安定性が低下する可能性がある。
【0034】
これに対して本実施形態の場合、各移動機構や各回転機構を支持するフレーム1やフレーム1Aを、第1の面3aと、第1の面3aと直交する第2の面4aとを有する構成としている。そして、第1の面3aに第1移動機構10及び第2移動機構20を支持し、第2の面4aに第3移動機構30を支持し、更に、第3移動機構30を介して第1回転機構50及び第2回転機構60を第2の面4aに支持している。このようにL字型の部分を有するフレーム1、1Aに各移動機構や各回転機構を支持する構成は、側板に移動機構や回転機構を支持する構成に比べて支持剛性が高い。このため、本実施形態のように構成することで、ワークの加工安定性を確保して、ワークの加工精度を高めることができる。また、高速回転する主軸を有する加工装置に適用しても、十分な剛性を確保できる。
【0035】
[支持機構]
次に、本実施形態のワークWの支持機構40Aについて、
図9ないし
図13を用いてより詳しく説明する。
図9ないし
図13に示す支持機構40Aは、上述の
図1ないし
図8に示した支持機構40に対して、押圧部43a、43b、43cを有する点が異なる。即ち、
図9ないし
図13に示す支持機構40Aも、ワークWを保持する保持部41と、第1回転機構50の回転部51、52に連結され、保持部41を介してワークWを支持する支持部42とを備える。そして、保持部41を押圧部43a、43b、43cにより押圧することで、保持部41を支持部42に対して固定している。
【0036】
なお、
図1ないし
図8に示した支持機構40は、例えば、ビスなどの固定部材により保持部41を支持部42に固定しても良いし、後述する第2の実施形態の構成により固定しても良い。但し、
図1ないし
図8に示した支持機構40についても、保持部41により保持されるワークWの厚さ方向の中心と、支持部42が回転部51、52に連結される位置との関係は、次述する場合と同じである。
【0037】
図9及び
図10に示すように、支持機構40Aは、ワークWを保持する保持部41を挟持するように配置された押圧装置44と、受け装置45とを有する。押圧装置44と受け装置45は、a軸上に配置されており、押圧装置44が第1回転機構50の回転部52側に、受け装置45が回転部51側にそれぞれ配置されている。押圧装置44は、後述する
図13に示すように、押圧部43a、43b、43cを有し、保持部41を受け装置45側及び支持部42に向かう側に押圧している。受け装置45は、保持部41と接触して、押圧装置44により保持部41に付与された押圧力を受けるようになっている。また、押圧装置44と受け装置45は、支持部42上に固定されている。
【0038】
図11は、第1回転機構50及び支持機構40Aをa軸上で切断した断面斜視図で、支持機構40Aを支持部42側から見た図である。
図11に示すように、ワークWは、円板状の部材であり、外周部に全周に亙って突部W1が設けられている。保持部41は、本体部41aと、抑え板部41bとを有する。本体部41aには、ワークWの突部W1が進入可能な凹部41cが形成されている。ワークWは、突部W1が本体部41aの凹部41cと抑え板部41bとで挟持されることにより、保持部41に保持される。抑え板部41bは、ワークWを本体部41aとの間で挟持した状態で、本体部41aに、例えば、ビス41d(
図12など参照)により固定される。
【0039】
支持部42は、ワークWの外径よりも大きく、保持部41の外接円の外径よりも小さい貫通孔42aが形成されている。これにより、第1回転機構50でワークWが反転されて、ワークWの裏面を加工する際に、貫通孔42aを介して加工具12がワークWに接触可能となる。即ち、ワークWの裏面を貫通孔42aを介して切削加工可能である。また、支持部42の貫通孔42aの外側部分に保持部41が載置可能である。
【0040】
図12は、支持機構40Aを保持部41側から見た平面図である。
図12において、a軸を通るB-B断面図を
図13Bに、a軸からワークWの中心O周りに反時計方向に所定角度ずれたA-A断面図を
図13Aに、a軸からワークWの中心O周りに時計方向に所定角度ずれたC-C断面図を
図13Cに、それぞれ示す。A-A断面とC-C断面のa軸のずれ角度は同じである。ワークWの中心Oは、円板状のワークWを平面視した場合の中心である。
【0041】
ここで、
図13Bに示すように、第1回転機構50の回転軸であるa軸に沿った平面を平面Pとする。また、平面Pに直交する方向をワークWの厚さ方向とする。また、ワークWの厚さ方向の中心を中心Qとする。この場合に、保持部41は、平面Pが通る位置においてワークWを保持する。また、保持部41は、a軸の延長線がワークWの厚さ方向の中心Qを通るようにワークWを保持する。
【0042】
一方、保持部41を支持する支持部42は、ワークWの厚さ方向に関して保持部41によりワークWを保持した位置よりも片側(
図13Bの下側)で、且つ、a軸と偏心した位置である連結位置cで第1回転機構50と連結されている。このために、支持部42のa軸方向の両端部には、連結部42b、42cが設けられている。連結部42b、42cは、
図11に示すように、回転部51の連結突部51a、回転部52の連結突部52aとそれぞれ連結される。
【0043】
回転部51の連結突部51a及び回転部52の連結突部52aは、それぞれa軸から偏心した位置からa軸に沿って突出形成されている。一方、支持部42に形成された連結部42b、42cは、連結突部51a、52aがそれぞれ進入可能な切り欠き形状を有する。そして、連結部42b、42cに連結突部51a、52aがそれぞれ進入した状態で、連結部42b、42cと連結突部51a、52aとが固定される。連結突部51a、52aのa軸からの偏心量は同じであり、連結部42b、42cの切り欠き量も同じである。このため、
図13Bに示すように、連結突部51a、52aと連結部42b、42cとは連結位置cで連結され、連結位置cは、a軸と偏した位置となる。
【0044】
本実施形態の場合、a軸がワークWの厚さ方向の中心Qを通るようにワークWが保持部41に保持されている。このため、支持部42と回転部51、52との連結位置cがa軸から偏心していても、回転部51、52がa軸を中心に回転することで、支持機構40Aと共にワークWを、a軸を中心に回転可能である。
【0045】
押圧装置44は、
図13A~Cに示すように、保持部41の周囲の複数箇所(本実施形態では3箇所)に、それぞれ押圧部43a、43b、43cを有する。押圧部43a、43b、43cは、保持部41の平面Pが通る周囲の一部を押圧する。具体的には、a軸を通る位置に配置された押圧部43bは、
図13Bに示すように、a軸と略平行な方向に保持部41を押圧する。押圧部43bは、不図示のバネにより保持部41を受け装置45に向けて押圧する。このために、押圧装置44には、押圧部43bをa軸方向と略平行な方向に沿って移動自在に案内する案内孔44bを有する。
【0046】
押圧部43bの先端には突部43b1が設けられ、突部43b1が保持部41の外周面に設けられた凹部41eと係合することで、保持部41の平面Pに直交する軸を中心とした回転方向の位置決めを行う。なお、突部43b1は、押圧部43bの先端に回転自在に設けられた球でも良いし、押圧部43bの先端を半球状に丸めたものであっても良い。
【0047】
保持部41を支持部42に装着する際には、支持部42に設けられた押圧装置44と受け装置45との間に保持部41を挿入する。この際、保持部41の凹部41eと押圧部43bの突部43b1との回転方向の位相をずらしておく。そして、保持部41を支持部42に対して相対回転させることで、凹部41eと突部43b1の位相を合わせ、互いに係合させる。これにより、保持部41の支持部42に対する回転方向の位置決めが行われる。
【0048】
一方、押圧部43bの回転方向両側に配置された押圧部43a、43cは、
図13A、Cに示すように、平面Pに対して傾斜した方向に保持部41を押圧する。押圧部43a、43cは、それぞれ不図示のバネにより保持部41を
支持部42に向けて押圧する。ここで、押圧部43a、43cの押圧方向は、平面Pに沿った方向よりも片側(支持部42側)を向くように平面Pに対して傾斜している。即ち、押圧部43a、43cの押圧方向の力の分力の一部は、保持部41を支持部42に向けて押し付ける方向に作用する。このために、押圧装置44には、押圧部43a、43cを、それぞれ平面Pに対して傾斜した方向に沿って移動自在に案内する案内孔44a、44cを有する。
【0049】
押圧部43a、43cの先端にも、突部43a1、43c1が設けられている。一方、保持部41には、これら突部43a1、43c1と係合する傾斜面41f、41gが設けられている。傾斜面41f、41gは、押圧部43a、43cの押圧方向に略直交する面であり、押圧部43a、43cの押圧力により保持部41が支持部42に向けて効果的に押されるようになっている。なお、突部43a1、43c1は、押圧部43a、43cの先端に回転自在に設けられた球でも良いし、押圧部43a、43cの先端を半球状に丸めたものであっても良い。また、押圧部43a、43b、43cは、それぞれ同じ部材としても良い。
【0050】
このように押圧部43a、43cにより保持部41が支持部42に向けて押し付けられることで、保持部41が支持部42に対して固定される。また、押圧部43bにより保持部41の支持部42に対する回転方向の位置決めがなされる。
【0051】
上述のように、本実施形態では、保持部41を支持する支持部42は、ワークWの厚さ方向に関して保持部41によりワークWを保持した位置よりも片側(
図13Bの下側)で、且つ、a軸と偏心した位置である連結位置cで第1回転機構50と連結されている。このため、ワークWを加工する際に、ワークWへの加工負荷に対して十分な剛性を確保し易い。即ち、本実施形態の場合、ワークWの保持位置と支持機構40Aと第1回転機構50との連結位置をずらすことで、ワークWの加工負荷に対して十分な剛性を確保できる。
【0052】
ここで、特許文献1には、加工対象物を挟み込むことで保持する保持部を有し、保持部を介して加工対象物を回転させる回転機構を備えた構成が記載されている。特許文献1に記載の構成の場合、保持部が加工対象物を保持した位置、回転機構に保持部を介して加工対象物を支持する位置、及び、加工対象物を回転させる回転中心が略同一軸上にあると考えられる。このように加工対象物を保持した位置と加工対象物を回転機構に支持する位置とが略同一軸上である場合、加工対象物を支持する構成として加工時の加工対象物への負荷に対して十分な剛性を確保しにくい。このため、加工対象物の加工精度を十分に確保できない可能性がある。
【0053】
具体的に説明する。ワークWの加工時には、ワークWから保持部41を介して支持部42に力が伝わる。そして、支持部42と第1回転機構50との連結部にこの力が作用することになる。この際、仮に、保持部41によりワークWを保持した位置と、ワークWを第1回転機構50に支持する位置、即ち、支持部42と回転部51、52との連結部とが同一直線状にあった場合、この連結部からワークWまでを一体の「真直はり」として捉えることができる。このため、ワークWに加工負荷により荷重がかかった場合に曲げが生じ易く、加工精度が低下する虞がある。
【0054】
これに対して本実施形態の場合、保持部41によりワークWを保持した位置と、支持部42と第1回転機構50との連結位置cとの位置がずれている。このため、連結位置から支持部42及び保持部41を介してワークWまでが、一体のクランク形状の部材として捉えることができる。このため、ワークWに加工負荷により荷重がかかった場合の曲げに対する強度を強くできる。この結果、加工時のワークWへの負荷に対して十分な剛性を確保でき、ワークWの加工精度を十分に確保し易い。
【0055】
また、第1回転機構50の回転軸であるa軸は、ワークWの厚さ方向の中心Qを通り、且つ、支持部42と第1回転機構50との連結位置cは、a軸と偏心している。このため、ワークWをa軸を中心に回転させて、表面と裏面とを入れ替えるように反転させても、ワークWの厚さ方向の中心Qと加工具12の位置関係が変わらない。このため、反転により加工具12とワークWとの位置関係を新たに補正せずに加工を行うことができる。即ち、本実施形態では、ワークWを反転して加工可能な構成において、ワークWの反転に伴う加工性の低下を防止しつつ、ワークWの表面の加工時の加工負荷に対する剛性確保を図れる。
【0056】
また、本実施形態では、保持部41の片側に支持部42を配置して、保持部41を支持部42により支持している。このため、ワークWの表面(
図13A、B、Cの上面)を加工する際に、ワークWに作用する負荷を支持部42により十分に支持できる。一方、ワークWの裏面の加工負荷に対しては、以下のような構成で支持強度を確保するようにしている。
【0057】
即ち、本実施形態では、上述のように、保持部41が押圧部43a、43cにより押圧されることで、保持部41が支持部42に押し付けられているため、保持部41が支持部42に対して離れる方向に対する強度を十分に確保できる。したがって、支持機構40Aを反転させて、支持部42側からワークWの裏面を加工した場合でも、ワークWを介して保持部41に伝わる負荷を押圧部43a、43cに十分に支持できる。即ち、ワークWの裏面の加工時には、ワークWを介して保持部41に支持部42から離れる方向に力が作用するが、保持部41が押圧部43a、43cの押圧力により支持部42に押し付けられているため、加工時の負荷に対して十分なワークWの保持強度を確保できる。この結果、ワークWの裏面の加工を安定して行うことができ、ワークWの加工精度を十分に確保できる。
【0058】
[工具マガジン]
次に、本実施形態の工具保持部としての工具マガジン70について、
図14ないし
図16を用いて説明する。上述したように、工具マガジン70は、複数の加工具を保持可能であり、第1回転機構50に隣接して配置され、
図2に示したように、支持部材71に支持されている。このような工具マガジン70は、複数列(本実施形態では2列)に、それぞれ複数の加工具12を配置可能である。加工具12は、工具ホルダ12aと一体に形成されている。
【0059】
具体的に説明する。工具マガジン70は、
図14及び
図15に示すように、複数の第1工具配置部72aと、複数の第2工具配置部73aとを有する。第1工具配置部72a及び第2工具配置部73aは、それぞれ所定方向(本実施形態ではZ軸方向)に複数の加工具12を着脱可能に形成されている。また、複数の第1工具配置部72aは、複数の加工具12を第1列72に沿って配置可能である。更に、複数の第2工具配置部73aは、第1列72と略平行で第1列72に隣接した第2列73に沿って複数の加工具12を配置可能である。本実施形態では、第1列72及び第2列73は、Y軸方向の沿った列であり、互いにX軸方向に隣接している。但し、第1列72及び第2列73は、X軸方向の沿った列とし、互いにY軸方向に隣接するようにしても良い。
【0060】
特に本実施形態では、複数の第1工具配置部72aと複数の第2工具配置部73aは、第1列72及び第2列73に沿った方向に関して、第1列72に配置された加工具12の中心と第2列73に配置された加工具12の中心とがずれるように、それぞれ複数の加工具12が配置されるように形成されている。言い換えれば、複数の第1工具配置部72aと複数の第2工具配置部73aとは、第1列72及び第2列73に沿った方向(Y軸方向)に互いにずれて配置されている。そして、隣り合う1対の第1工具配置部72aの間に1個の第2工具配置部73aの一部が進入するように、又は、隣り合う1対の第2工具配置部73aの間に1個の第1工具配置部72aの一部が進入するように、それぞれ第1工具配置部72a及び第2工具配置部73aを配置している。更に言えば、複数の第1工具配置部72aと複数の第2工具配置部73aは、千鳥状に配置されている。
【0061】
このように複数の第1工具配置部72aと複数の第2工具配置部73aとを千鳥状に配置することで、複数の第1工具配置部72aと複数の第2工具配置部73aとを互いに近づけて配置でき、X軸方向の小型化を図れる。なお、本実施形態では、第1列72を第1回転機構50側に、第2列73を第1回転機構50から離れた側にそれぞれ配列している。
【0062】
また、本実施形態では、複数の第1工具配置部72a、複数の第2工具配置部73aのそれぞれへの加工具12の着脱を検知可能としている。この点について、
図16A、Bを用いて説明する。
図16Aは、第1列72に配置された第1工具配置部72aにおける加工具12の着脱検知構成を示している。
【0063】
本実施形態では、第1工具配置部72aにおける加工具12の着脱を検知すべく、複数の第1揺動部としての第1アーム部74と、第1検知部75とを有する。第1アーム部74は、揺動軸74aを中心に揺動可能である。第1検知部75は、本実施形態では、発光部と受光部とを有するフォトインタラプタであり、第1アーム部74の基端部が発光部と受光部との間を通過可能となっている。
【0064】
複数の第1アーム部74は、第2列73の第1列72と反対側から、第2列73に沿った方向に関して第2工具配置部73aから外れた位置を通るように配置されている。そして、複数の第1アーム部74は、それぞれ第1工具配置部72aへの加工具12の着脱動作に連動して揺動する。第1検知部75は、第2列73の第1列72と反対側に配置され、第1アーム部74の揺動動作により第1工具配置部72aへの加工具12の着脱を検知する。
【0065】
即ち、第1アーム部74は、先端部が第1工具配置部72aに装着された加工具12の一部と係合自在であり、加工具12が第1工具配置部72aに装着されると、
図16Aに示す位置に揺動し、基端部が第1検知部75の発光部と受光部との間に位置し、発光部の光を遮る。一方、加工具12が第1工具配置部72aから抜け出ると、第1アーム部74は、揺動軸74aを中心に先端部が上昇するように揺動し、基端部が第1検知部75の発光部と受光部との間から抜け出て、受光部が発光部の光を受光する。制御基板83(
図7)は、第1検知部75の検知結果から加工具12の第1工具配置部72aに着脱を認識する。
【0066】
図16Bは、第2列73に配置された第2工具配置部73aにおける加工具12の着脱検知構成を示している。本実施形態では、第2工具配置部73aにおける加工具12の着脱を検知すべく、複数の第2揺動部としての第2アーム部76と、第2検知部77とを有する。第2アーム部76は、第1アーム部74よりも長さが短く、揺動軸76aを中心に揺動可能である。第2検知部77は、第1検知部75と同様のフォトインタラプタであり、第2アーム部76の基端部が発光部と受光部との間を通過可能となっている。
【0067】
複数の第2アーム部76は、第2列73の第1列72と反対側から第2工具配置部73aに向けて配置されている。そして、複数の第2アーム部76は、それぞれ第2工具配置部73aへの加工具12の着脱動作に連動して揺動する。第2検知部77は、第2列73の第1列72と反対側に配置され、第2アーム部76の揺動動作により第2工具配置部73aへの加工具12の着脱を検知する。
【0068】
即ち、第2アーム部76は、先端部が第2工具配置部73aに装着された加工具12の一部と係合自在であり、加工具12が第2工具配置部73aに装着されると、
図16Bに示す位置に揺動し、基端部が第2検知部77の発光部と受光部との間に位置し、発光部の光を遮る。一方、加工具12が第2工具配置部73aから抜け出ると、第2アーム部76は、揺動軸76aを中心に先端部が上昇するように揺動し、基端部が第2検知部77の発光部と受光部との間から抜け出て、受光部が発光部の光を受光する。制御基板83(
図7)は、第2検知部77の検知結果から加工具12の第2工具配置部73aに着脱を認識する。
【0069】
本実施形態では、第1検知部75及び第2検知部77は、それぞれ対応する第1アーム部74及び第2アーム部76の数分配置されている。また、第1検知部75及び第2検知部77は、第2列73の第1列72と反対側に、第2列73と略平行に1列に配置されている。但し、第1検知部75及び第2検知部77は、一列に配置されていなくても良く、例えば、千鳥状に配置されていても良い。
【0070】
このように本実施形態では、複数の第1工具配置部72aと複数の第2工具配置部73aとを千鳥状に配置し、複数の第1工具配置部72aへの加工具12の着脱を検知するための第1アーム部74を、複数の第2工具配置部73aの間を通して配置している。このため、第1検知部75及び第2検知部77を第1列72及び第2列73の片側にまとめて配置でき、各検知部への配線を行い易くしている。また、第1検知部75及び第2検知部77を一列に並べて配置することができ、装置の小型化を図れる。
【0071】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について、
図17ないし
図22を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、保持部41を支持部42に対して押圧部43a、43b、43cにより固定する構成について説明した。これに対して本実施形態では、保持部41Aを支持部42Aに対して相対回転させることで、容易に着脱可能とした構成としている。また、本実施形態では、加工対象部として複数のブロック200を有するワーク201を用いているが、このようなワーク201は、第1の実施形態で用いても良いし、第1の実施形態のワークWを本実施形態に用いていても良い。その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、同様の構成については、同じ符号を付して図示及び説明を省略又は簡略にし、以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0072】
まず、ワーク201について、
図17A、Bを用いて説明する。歯科の分野において、歯科用補綴物として単冠用のブロックを切削加工する加工装置が提供されており、複数個の単冠用ブロックを専用の治具にて固定し、連続して加工を行うことができる加工装置がある。ワーク201は、このような複数の単冠用のブロック200を治具202に固定したものをワーク201とする。治具202を含めたワーク201は、略円板状に形成されており、外周形状は第1の実施形態のワークWと同じである。また、複数のブロック200を有するワーク201は、治具に対してブロック200の着脱を行うために、装置から容易に着脱できることが好ましい。そこで、本実施形態では、ワーク201を保持する保持部41Aを支持部42Aに対して着脱を容易な構成としている。
【0073】
ワーク201は、
図17A、Bに示すように、保持部41Aに保持される。そして、後述するように、保持部41Aが支持部42Aに装着されることで、ワーク201を支持する支持機構40Bを構成する(
図20参照)。保持部41Aは、支持部42Aに対して平面Pと直交する方向に着脱可能であり、本体部410と、突出部411と、第1突起412とを有する。本体部410は、ワーク201を保持する。本体部410によりワーク201を保持する構成は、第1の実施形態と同様である。
【0074】
突出部411は、
図17Bに示すように、本体部410の裏面から平面P(
図13B)に直交する方向に突出した部分である。本体部410の裏面は、保持部41Aが支持部42Aに支持される側の面である。このような突出部411は、内側にワーク201の裏面が露出するように円筒状に形成されている。第1突起412は、突出部411の外周面から平面Pと平行な方向(円筒状の突出部411の径方向外側)に突出するように形成されている。このような第1突起412は、突出部411の外周面に互いに間隔をあけて複数箇所(本実施形態では3箇所)に設けられている。
【0075】
支持部42Aは、
図18A、Bに示すように、開口部420と、第2突起421と、進入部422と、付勢部としての板バネ423とを有する。開口部420は、保持部41Aの突出部411が挿入可能な内径を有するように円筒状の孔である。開口部420は貫通しており、保持部41Aが装着された状態で、開口部420及び突出部411の内側を通じて、ワーク201の裏面を加工具により加工可能となっている。
【0076】
第2突起421は、開口部420の内周面から平面Pと平行な方向(円筒状の開口部420の径方向内側)に突出するように形成されている。このような第2突起421は、開口部420の内周面に互いに間隔をあけて複数箇所(本実施形態では3箇所)に設けられている。また、第1突起412と第2突起421は、互いに同数としている。また、第2突起421は、突出部411を開口部420に装着した状態で、突出部411への挿入方向に関して第1突起412の下流に位置する。
【0077】
進入部422は、開口部420の内周面のうち、第2突起421が形成されていない部分である。このような進入部422は、第2突起421から外れた位置で突出部411が開口部420に挿入される際に第1突起412が第2突起421よりも突出部411の挿入方向下流側に進入可能とする。本実施形態では、進入部422は、第1突起412と同数であり、且つ、第1突起412と周方向の位相が同じとなるように形成されている。また、それぞれの進入部422の周方向の長さは、それぞれの第1突起412の周方向の長さよりも長くしている。これにより、突出部411が開口部420に進入する際に、第1突起412が第2突起421と干渉せずに、進入部422を通る。
【0078】
板バネ423は、
図18Bに示すように、第2突起421の下側(突出部411の挿入方向下流側)に設けられている。そして、
図20Bに示すように、第1突起412と第2突起421とが突出部411の挿入方向に重なった状態で第1突起412と第2突起421との間に位置し、第1突起412と第2突起421とを互いに離間する方向に付勢する。なお、板バネ423は、周方向中央部分の所定範囲が両端部よりも下側に位置し、この所定範囲から両端部にかけて上側に傾斜するように形成しても良い。これにより、後述するように、保持部41Aを支持部42Aに対して相対回転させることで第1突起412が第2突起421の下側に進入する際に、板バネ423の両端側に案内されて板バネ423の所定範囲に円滑に案内される。
【0079】
また、支持部42Aは、開口部420の内周面の第2突起421及び板バネ423の下側(突出部411の挿入方向下流側)に突き当て部424を設けている。突き当て部424は、開口部420の内周面から径方向内側に突出するように全周に亙って形成されている。保持部41Aを支持部42Aに装着した状態では、突出部411の挿入方向先端が突き当て部424に突き当たる。即ち、
図20Bに示すように、板バネ423により第1突起412と第2突起421とが互いに離間する方向に付勢されることで、第1突起412が形成された突出部411が挿入方向下流に更に押されて突き当て部424に突き当たる。この結果、第1突起412と突き当て部424との摩擦力が増大し、保持部41Aが支持部42Aに固定される。
【0080】
なお、保持部41Aの支持部42Aへの装着時に、保持部41Aの本体部410の挿入方向側の面(下面)の一部と、支持部42Aの開口部420の周囲部分の一部とを当接させるようにしても良い。この場合でも、板バネ423により第1突起412と第2突起421とが互いに離間する方向に付勢されることで、本体部410の下面の一部と開口部420の周囲部分の一部とが当接した部分の摩擦力が増大し、保持部41Aが支持部42Aに固定される。
【0081】
保持部41Aの支持部42Aに対する装着動作について、
図19A、Bを用いて説明する。
図19Aに示すように、保持部41Aを支持部42Aに装着する際には、保持部41Aを支持部42Aに対して平面Pと直交する方向に移動させる。この際、保持部41Aの第1突起412と支持部42Aの進入部422との位相が合うように、保持部41Aを支持部42Aに回転方向に所定角度回転させた移動させる。そして、
図19Bに示すように、保持部41Aの突出部411を支持部42Aの開口部420に挿入する。この際、第1突起412が第2突起421の挿入方向下流側に位置するまで、突出部411を開口部420に挿入する。
【0082】
次いで、
図19Bの状態から保持部41Aを支持部42Aに対して相対回転させる。即ち、第1突起412が進入部422を通った状態で保持部41Aと支持部42Aとを相対回転させ、
図20Aの状態とする。
図20Aは、保持部41Aの支持部42Aに対する装着動作が終了した状態である。この状態で、第1突起412が第2突起421及び板バネ423の挿入方向下流側に進入し、上述したように、第1突起412と第2突起421とが板バネ423により互いに離れる方向に付勢される。この結果、保持部41Aが支持部42Aに対して装着固定される。
【0083】
一方、保持部41Aを支持部42Aから取り外す場合には、保持部41Aを支持部42Aに対して装着時とは逆方向に相対回転させ、第1突起412と進入部422との位相を合わせる。そして、この状態で、保持部41Aを挿入方向と反対方向に移動させて、突出部411を開口部420から抜き出すことで、保持部41Aの支持部42Aに対する取り外し動作が完了する。
【0084】
なお、上述の説明では、板バネ423は、支持部42Aに設けたが、保持部41Aに設けても良い。この場合、第1突起412の挿入方向上流側に板バネ423を設けることが好ましい。これにより、板バネ423が第1突起412と第2突起421との間に位置した状態で、これらを互いに離間する方向に付勢する。即ち、板バネ423は、保持部41Aと支持部42Aとの何れかに設けられていれば良い。
【0085】
上述のような保持部41Aの支持部42Aに対する着脱動作は、手動で行っても良いが、本実施形態では自動で行うようにしている。なお、手動で行う場合、第1回転機構50により支持機構40Bを回転させて、保持部41Aを手で掴みやすい角度とすることが好ましい。例えば、保持部41Aの支持部42Aに対する回転中心がb軸に対して30°以上60°以下の範囲で、ワーク201の表面が上方に向くように支持機構40Bを傾けるようにしても良い。
【0086】
一方、着脱動作を自動で行う場合について、
図21及び
図22を用いて説明する。まず、保持部41Aを支持部42Aから取り外す場合、
図21A、Bに示すように、保持部41Aの一部に形成された治具用の穴413(
図17A、
図20A参照)に治具210を挿入する。この際、支持機構40Bを第1回転機構50により回転させて、ワーク201の表面が第2回転機構60と反対側に向くようにする。この場合に、保持部41Aの支持部42Aに対する回転中心がb軸上に位置させることが好ましい。
【0087】
この状態で、
図22A、Bに示すように、第2回転機構60により支持機構40Bを第1回転機構50と共にb軸を中心として回転させる。この時、保持部41Aは、治具210が穴413に挿入されることで回転が規制されている。即ち、保持部41Aは、治具210により回転止めされた状態である。このため、第2回転機構60により支持機構40Bがb軸回りに回転することで、保持部41Aと支持部42Aとが相対回転する。また、この時の回転角度を第1突起412と進入部422との位相が合う角度とする。これにより、保持部41Aを支持部42Aから取り外すことができる。
【0088】
一方、保持部41Aを支持部42Aに装着する際には、
図22A、Bに示すように、保持部41Aの突出部411を支持部42Aの開口部420に挿入する。また、治具210により保持部41Aの回転を規制しておく。そして、上述した場合と逆方向に第2回転機構60を回転させることで、
図21A、Bに示すような装着状態とできる。
【0089】
なお、上述の説明では、第2回転機構60の回転により保持部41Aと支持部42Aとを相対回転させる工程を自動化(半自動化)したが、着脱動作の全工程を自動化するようにしても良い。
【0090】
例えば、ロボットハンドにより保持部41Aを掴み、支持部42Aに向けて移動させ、保持部41Aの突出部411を支持部42Aの開口部420に挿入する。そして、ロボットハンドにより保持部41Aを掴んで保持部41Aの回転止めをした状態で、上述した場合と同様に第2回転機構60を回転させることで、保持部41Aと支持部42Aとを相対回転させる。取り外す場合には、ロボットハンドで保持部41Aを掴んで保持部41Aの回転止めをした状態で、第2回転機構60を装着時と反対方向に回転させる。そして、保持部41Aを掴んだロボットハンドを挿入方向と反対方向に移動させる。これにより、保持部41Aの支持部42Aへの着脱動作を自動で行える。
【0091】
このように第2回転機構60の回転を利用することで、保持部41Aと支持部42Aの着脱動作を自動化、又は、半自動化することができる。この結果、ワークの交換などの作業効率を上げることができる。なお、このような着脱動作を手動で行う場合にも、第2回転機構60の回転を利用するようにしても良い。
【0092】
<第3の実施形態>
第3の実施形態について、
図23ないし
図27を用いて説明する。本実施形態は、上述の第1、第2の実施形態で説明したような加工装置(工作機械)において、主軸に加工具(以下、「工具」或いは「切削工具」ともいう)をクランプ又はアンクランプする構成に関する。
【0093】
例えば、主軸から工具をアンクランプする場合には、エアや作動油などの流体を作動させてアンクランプさせる技術が知られている(特開2018-1323号公報参照)。
【0094】
また、特開2018-1323号公報に記載の油圧方式以外に、エア圧によって、アンクランプする場合もある。このような仕組みでは、主軸チャック内部のばねの力に抗い、主軸チャックを開くには、強いエア圧が必要となる。弱いエア圧で主軸チャックを開かせたい場合は、ばねの力を弱める必要があるが、加工中に切削工具をしっかり把持できないため、不要なトラブルの元になる。加工中は強いばねで主軸チャックを閉じて、切削工具をしっかり把持し、加工後には強いエア圧で主軸チャックを開き、切削工具を放すことが望ましい。その際にエア圧を大きくするために増圧弁を利用することがある。増圧弁は入力と出力とのエア圧力差が所定値以上の場合に動作し、エア圧力差が所定値よりも少ない場合には、動作しないことがある。
【0095】
本実施形態は、簡易な方法で、増圧弁の出力が安定し易い技術を提供するものである。即ち、本実施形態の加工装置は、エアコンプレッサに接続された増圧弁によって、加工具のチャックを開く加工装置である。特に、チャックが加工具を保持する前に、増圧弁を介して、チャックへエアを入力するようにしている。この構成によれば、簡易な方法で、増圧弁の出力を安定化させ、工具のクランプを行い易くし、安定した加工を行い易い加工装置を提供することできる。
【0096】
以下、本実施形態に係る加工装置100Aついて、
図23~
図25を用いて説明する。
図23は、本実施形態に係る加工装置100Aの外観斜視図であり、エアーを発生させる不図示のエアーコンプレッサに、増圧弁90が取り付けられて、増圧弁90によって、圧力が上昇したエアーによって、後述するチャックをアンクランプ状態にする。増圧弁90の後段にエア圧検知センサ91が設けられている。工具のチャックにどの程度の圧力がかかっているか測定するために、エア圧検知センサ91は、工作機械の内部に設けられてもよい。加工装置100Aは、
図23に示すように、外装カバー101内に加工装置本体を収容している。外装カバー101は、開閉ドア102を有しており、開閉ドア102を開けることで、ワークの交換が可能となっている。また、ワークの加工中には、開閉ドア102を閉めるようにしている。開閉ドア102の開閉は、不図示のセンサにより検知される。
【0097】
開閉ドア102には、透光性の窓103が設けられている。開閉ドア102は、窓103が設けられていない部分に、開閉ロッド104が接続され、開閉ロッド104に設けられた不図示のショックアブソーバー機構により、開き動作がゆっくりになるように構成されている。開閉ドア102が開閉を行い易くなるとともに、窓103に大きな衝撃が伝わりにくくし、窓103に設けられた透光性の部材が壊れにくくなっている。
【0098】
図24Aについて説明する。この図はツールクランプ前の状態であるので、ツールホルダ113と主軸110とは離れている。ツール114はツールホルダ113に装着されている。ここで、主軸110は、上記主軸11の1つの構造例である。
【0099】
この時の、主軸110とツールホルダ113のフランジ部分との距離はd1で表される。そして、ツールホルダ113にはプルスタッド112が備わっており、プルスタッド112をドローバー111で主軸110のスラスト方向に引っ張る。
【0100】
引っ張る際に、ドローバー111はプルスタッド112の出っ張り部にドローバー111の爪を引っかけて引っ張ることになる。ドローバー111の位置によって、工具はチャックされる。
【0101】
続いて、
図24Bについて説明する。この図はツールクランプ後の状態であるので、ツールホルダ113と主軸110とは接触している。そして、前述のように、ドローバー111はプルスタッド112の出っ張り部にドローバー111の爪を引っかけてある。
図24Bの状態から、エアを吹き出すとドローバー111が
図24Aの状態となり加工具を交換できる状態になる。
【0102】
図25に示すように、電装ユニット80は、演算手段であるCPU85、入出力ポート(I/O)86i、各モータの制御部84x、84y、84z、主軸の制御部84c、a軸の制御部84a、b軸の制御部84bなどを備える。CPU85は、入力されたデータや信号に基づいてメモリ86mを用いて各種の演算を行う。
【0103】
I/O86iは、加工装置本体のエアーブロー部87、集塵装置88、工具長センサ96に接続される。なお、エアーブロー部87は、主軸110に取り付けた工具にエアーを吹き付けて、工具を冷却すると共に工具に付着した切粉を除去するものである。また、工具から除去した切粉や加工後に支持機構40や第1回転機構50(ワーク保持装置)内に存在する切粉などの異物は、ワーク保持装置に設けた切粉吸引部89から吸引され、集塵装置88により集められる。また、工具長センサ96は、例えば、
図1に示すように、工具マガジン70の近傍(図示の例では第1回転機構50の支持フレーム53)に設けられ、タッチセンサ方式で工具の長さを検知してCPU85に信号を送る。例えば、主軸に工具をチャックした状態で主軸を工具長センサ96の上方に移動させ、更に主軸を下降させて工具の先端を工具長センサ96に接触させることで、工具の長さを検知する。
【0104】
CPU85に設けた各モータの制御部84x、84y、84zは、CPU85からの指令に基づいてX、Y、Zの各モータ21、32、14を駆動する。各モータ21、32、14には、それぞれエンコーダを設けている。エンコーダは、例えば、各モータ21、32、14の回転軸の回転回数や回転角度、回転方向を検知する。そして、各モータ21、32、14の駆動により各ステージX、Y、Zが実際に移動した量(実際の位置)を検知する。なお、ステージXは主軸110をX軸方向に、ステージYはワーク保持装置をY軸方向に、ステージZは主軸110をZ軸方向に、それぞれモータ21、32、14の駆動により移動させる部分に相当する。
【0105】
主軸の制御部84cは、主軸110を回転させるモータ13(
図1参照)を制御して、主軸(スピンドル)の回転速度を制御する。また、a、b軸の制御部84a、84bは、CPU85からの指令に基づいてa軸、b軸の各モータ54、62を駆動する。
【0106】
このようにCPU85により加工装置本体の各部を制御することにより、上述のように保持されたワークWに所定の加工を施す。
【0107】
図26に、本実施形態に係る加工装置における制御フローチャートを示す。各動作は、CPU85がメモリ86mにプログラムを読み込んで演算し実行する。エアコンプレッサに接続された増圧弁90によって、加工具のチャックを開く加工装置であって、チャック(ドローバー111)が加工具を保持する前に、増圧弁90を介して、チャックへエアを入力することで、増圧弁90を利用した場合にも、安定したアンクランプを実行できる。
【0108】
詳細には、S11~S22により、実行してもよい。増圧弁90を介したエアのエア圧を検知するエア圧検知センサ91を備え、エア圧検知センサ91により検知されるエア圧が所定のエア圧よりも小さい場合に、チャックへエアを入力することを特徴としてもよい。エア圧を検知するため、エアの過不足をより精度よく検知して処理を実行することができる。
【0109】
図26を参照しつつ、工具を掴む際に、増圧弁90の出力側のエア圧を安定させる手順を、具体的に説明する。主軸チャック開き処理が開始されると(開始)、CPU85は主軸チャック閉じ状態から開き状態への経過時間を計測するために、経過時間を格納している変数へ、計測の開始時刻を格納する(S11)。即ち、経過時間を初期化する。そして、CPU85は主軸に対し、チャック開き指示を出し(S12)、チャック開き指示を出してからの経過時間を計測する(S13)。経過時間の計測方法は、例えば、計測の開始時刻と現在の時刻との差を求める。
【0110】
次に、CPU85は、主軸チャックのエア圧が所定のエア圧に到達したか否かを、図示しないエア圧検知センサ91により確認する(S14)。S14で所定のエア圧に到達した場合は、増圧弁90の出力側のエア圧を安定させる手順は正常に終了となる(終了)。S14で所定のエア圧に到達しない場合、エア圧が上昇するまでは時間がかかることがあり、すぐにエラーと判断しない。そこで、エア圧が所定の圧力まで上昇するまで待つために、S13で計測した経過時間が、所定の時間を経過したかを確認する(S15)。
【0111】
S15で所定の時間が経過していない場合は、S13へ戻り、経過時間を再度計測する。S15で所定の時間が経過した場合は、所定のタイムアウト時間を超えたか否かを確認する(S16)。S16で所定のタイムアウト時間を超えた場合は、エラー処理(S17)を実行し、増圧弁90のエア圧を安定させる手順はエラーとして終了する(終了)。S16で所定のタイムアウト時間を超えない場合は、エア抜き動作が未実施か確認する(S18)。
【0112】
S18でエア抜き動作未実施の場合は、CPU85は、主軸チャック閉じ(S19)、所定の待ち時間待ち(S20)、チャック開き(S21)、所定の待ち時間待ち(S22)を行い、このS19からS22までを所定の回数繰り返す。これにより、増圧弁90の出力側のエアが少しずつ漏れ、増圧弁90の入力側と出力側の圧力差が少ない場合に、増圧弁90の出力側のエア圧を下げることができ、増圧弁90の入力側と出力側の圧力差が大きくなり、増圧弁90を再度起動させることができ、出力側のエア圧を所定のエア圧に到達させることができる。
【0113】
前記、チャック開閉処理後には、S13へ戻り、経過時間を再度計測する。S18でエア抜き動作実施済みの場合は、S13へ戻り、経過時間を再度計測する。
【0114】
図27に、工具を選択する際の制御フローチャートを示す。複数の加工具を交換して加工対象物を加工する加工装置であって、複数の加工具のうちから1つを選択して、使用する際に、複数の加工具の工具折れ検知、及び、使用時間に基づいて、使用する加工具を決定する。このように構成した加工装置は、工具をより加工に適した状態で利用することができる。
【0115】
詳細には、S101~S118のフローチャートによって使用する工具を決めてもよい。
図27では、5本のなかから一つを選べる制御としたが、複数の加工具の内から一つの加工具を選ぶのであれば、何本の加工具から選択してもよい。また、加工具のうち、工具が折れていない、かつ、最も使用時間が短い加工具を使用する加工具として決定することにより、加工対象物をより精度よく仕上げ易くなる。これらの選択等の各動作は、制御手段としてのCPU85がメモリ86mにプログラムを読み込んで演算し実行する。CPU85が制御手段として機能してもよい。また、外部のPC等からの指示を受けて各動作を実行してもよい。
【0116】
図27を参照しつつ、工具を選択する際の手順を、具体的に説明する。本実施形態では、工具選択において、マスタ工具1本に対し、予備の工具4本を用意している。
図27ではマスタ工具=T0、予備工具1=T1、予備工具2=T2、予備工具3=T3、予備工具4=T4としている。
【0117】
工具選択処理が開始されると(開始)、NCファイルで指定された工具番号として、Tコードの値を格納する(S101)。そして、Tコードの値はマスタ工具か否かを確認する(S102)。
【0118】
S102で、指定された工具番号がマスタ工具と一致する場合は、マスタ工具のグループ内の工具番号を取得する(S103)。これが前述の、T0、T1、T2、T3、T4に相当する。そして、合計5本ある工具から、使用可能な工具を順々に調査するため、繰り返し用変数iを初期化する(S104)。
【0119】
これ以降の処理で、選択可能な工具を調査する。まず、Tiが工具折れでないか否かを確認する(S105)。S105でTiが工具折れではない場合は、Tiの使用時間が許容時間未満(所定時間未満)か否かを確認する(S106)。S106でTiの使用時間が許容時間未満の場合は、Tiは工具マガジン(ATCマガジン)70(
図1など参照)に工具検出済み(格納済み)か否かを確認する(S107)。S107でTiが工具検出済みの場合は、使用すべき工具としてTiを選択し(S108)、工具選択処理は終了する(終了)。
【0120】
また、S105、S106、S107において、NOの場合には、以下の処理をそれぞれ実行する。S105でTiが工具折れの場合は、繰り返し用変数iに1を加算する(S109)。S106でTiの使用時間が許容時間以上の場合は、繰り返し用変数iに1を加算する(S109)。S107で工具が未検出の場合は、繰り返し用変数iに1を加算する(S109)。これらの処理の後、S110で、繰り返し用変数iが4以下の場合は、次の工具を調査するために、S105へ移動する。S110で、繰り返し用変数iが4よりも多い場合には、繰り返し用変数jを初期化する(S111)。
【0121】
これ以降は、S111より後の処理について、説明する。ここまで来た場合は、本来探していた、正常な状態の工具(工具折れておらず、使用時間が許容時間未満、ATCマガジンに格納済み)は発見できなかったことになる。そこで、次善の策として、使用時間は許容するとし、その他の条件(工具折れておらず、ATCマガジンに格納済み)を満たす工具を、T0、T1、T2、T3、T4から順々に探していく。
【0122】
まず、Tjは工具折れでないか否かを確認する(S112)。S112でTjが工具折れでない場合は、Tjが工具検出済み(格納済み)か否かを確認する(S113)。S113でTjが工具検出済みの場合は、使用すべき工具としてTjを選択し(S114)、終了する(終了)。
【0123】
S112でTjが工具折れの場合、またはS113でTjが工具未検出の場合は、繰り返し用変数jに1を加算する(S115)。S116で、繰り返し用変数jが4以下の場合は、次の工具を調査するために、S112へ移動する。S116で、繰り返し用変数jが4よりも多い場合には、使用可能な工具が発見できなかったので、エラー処理を実行し(S117)、工具選択処理はエラーとして終了する(終了)。
【0124】
また、S102で、指定された工具番号がマスタ工具と一致しない場合は、使用すべき工具として、Tコードの値を格納し(S118)、工具選択処理は終了する(終了)。
【0125】
なお、a軸、及び、b軸を中心に加工対象物を回転させる5軸加工機を小型化する場合には、下記特徴であってもよい。Y軸移動機構、及び、Z軸移動機構は、Y軸方向、及び、Z軸方向に向かって延びるフレームに沿って設けられ、Z軸方向において、a軸が傾いていない状態で、b軸の回転軸は、フレームのY軸方向に延びる部分よりも下方に配置される。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明に係る加工装置は、歯科用補綴物の加工を行う加工装置、その他、加工対象物に切削などの加工を施す加工装置に好適である。
【符号の説明】
【0127】
1・・・フレーム(第1フレーム)/2・・・架台(第2フレーム)/3a・・・第1の面(第1面)/4a・・・第2の面(第2面)/10・・・第1移動機構(Z軸移動機構)/11・・・主軸/12・・・加工具/20・・・第2移動機構(X軸移動機構)/30・・・第3移動機構(Y軸移動機構)/40、40A、40B・・・支持機構/41、41A・・・保持部/42、42A・・・支持部/43a、43b、43c・・・押圧部/50・・・第1回転機構(A軸回転機構)/60・・・第2回転機構(B軸回転機構)/70・・・工具マガジン(工具保持部)/72・・・第1列/72a・・・第1工具配置部/73・・・第2列/73a・・・第2工具配置部/74・・・第1アーム部(第1揺動部)/75・・・第1検知部/76・・・第2アーム部(第2揺動部)/77・・・第2検知部/85・・・CPU(制御手段)/100、100A・・・加工装置/201、W・・・ワーク(加工対象物)/410・・・本体部/411・・・突出部/412・・・第1突起/420・・・開口部/421・・・第2突起/422・・・進入部/423・・・板バネ(付勢部)/c・・・連結位置/P・・・平面