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特許7410133ユーザ機器パラメータ決定のための方法および装置、および記録媒体および基地局
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  • 特許-ユーザ機器パラメータ決定のための方法および装置、および記録媒体および基地局 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ユーザ機器パラメータ決定のための方法および装置、および記録媒体および基地局
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20231226BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20231226BHJP
【FI】
H04W56/00 130
H04W84/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021510777
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2019096463
(87)【国際公開番号】W WO2020042808
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-04-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】201811012648.5
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520122781
【氏名又は名称】スプレッドトラム コミュニケーションズ(シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】グ,シャンシン
【合議体】
【審判長】中木 努
【審判官】本郷 彰
【審判官】齋藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0241464(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0271723(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0151143(US,A1)
【文献】特表2018-512786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
3GPP TSG SA WG1-4
3GPP TSG CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ機器(UE)パラメータ決定方法であって、
基地局によって、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを決定するステップと、
前記基地局によって、前記最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいてネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報を決定するステップであって、前記最小ラウンド・トリップ・タイムは、前記ネットワーク側アップリンク無線フレームを前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差である、ステップと、
前記基地局によって、前記ネットワーク側アップリンク無線フレームと前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定するステップであって、前記UEパラメータは、タイミング・アドバンス(TA)とK2との少なくとも1つを含む、ステップと、
を含み、前記最小ラウンド・トリップ・タイムは各UEに対して透明である、UEパラメータ決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のUEパラメータ決定方法であって、前記基地局によって、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを決定する前記ステップは、
前記基地局によって、前記セル内の各UEと前記衛星との間の前記最小ラウンド・トリップ・タイムを、前記衛星の高度に基づいて決定するステップ
を含む、UEパラメータ決定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のUEパラメータ決定方法であって、前記最小ラウンド・トリップ・タイムは、タイム・スロットにより計数され、タイム・スロットについて切り下げることにより得られるか、または、前記最小ラウンド・トリップ・タイムは、サブフレームにより計数され、サブフレームについて切り下げることにより得られる、UEパラメータ決定方法。
【請求項4】
請求項1に記載のUEパラメータ決定方法であって、前記UEパラメータはTAであり、前記基地局によって、前記ネットワーク側アップリンク無線フレームと前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定する前記ステップは、
前記基地局によって、各UEからアップリンク信号を受信するステップと、
前記基地局によって、前記アップリンク信号と、前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームと、前記ネットワーク側アップリンク無線フレームとに基づいて各UEのTAを計算するステップと
を含む、UEパラメータ決定方法。
【請求項5】
請求項1に記載のUEパラメータ決定方法であって、UEパラメータはK2であり、前記基地局によって、前記ネットワーク側アップリンク無線フレームと前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定する前記ステップは、
各UEについてアップリンク・スケジューリングを行うときに、前記基地局によって、前記ネットワーク側アップリンク無線フレームと前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのK2を計算するステップ
を含む、UEパラメータ決定方法。
【請求項6】
基地局に搭載されるユーザ機器(UE)パラメータ決定装置であって、
セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを決定するように構成された第1決定回路と、
前記最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいてネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報を決定するように構成された第2決定回路であって、前記最小ラウンド・トリップ・タイムは、前記ネットワーク側アップリンク無線フレームを前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差である、第2決定回路と、
前記ネットワーク側アップリンク無線フレームと前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定するように構成された第3決定回路であって、前記UEパラメータはタイミング・アドバンス(TA)とK2との少なくとも1つを含む、第3決定回路と、
を含み、前記最小ラウンド・トリップ・タイムは各UEに対して透明である、UEパラメータ決定装置。
【請求項7】
請求項6に記載のUEパラメータ決定装置であって、前記第1決定回路は、
前記セル内の各UEと前記衛星との間の前記最小ラウンド・トリップ・タイムを、前記衛星の高度に基づいて決定するように構成された決定サブ回路
を含む、UEパラメータ決定装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載のUEパラメータ決定装置であって、前記最小ラウンド・トリップ・タイムは、タイム・スロットにより計数され、タイム・スロットについて切り下げることにより得られるか、または、前記最小ラウンド・トリップ・タイムは、サブフレームにより計数され、サブフレームについて切り下げることにより得られる、UEパラメータ決定装置。
【請求項9】
請求項6に記載のUEパラメータ決定装置であって、UEパラメータはTAであり、前記第3決定回路は、
各UEからアップリンク信号を受信するように構成された受信サブ回路と、
前記アップリンク信号と、前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームと、前記ネットワーク側アップリンク無線フレームとに基づいて各UEの前記TAを計算するように構成された第1計算サブ回路と
を含む、UEパラメータ決定装置。
【請求項10】
請求項6に記載のUEパラメータ決定装置であって、UEパラメータはK2であり、前記第3決定回路は、
各UEについてアップリンク・スケジューリングを行うときに、前記ネットワーク側アップリンク無線フレームと前記ネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEの前記K2を計算するように構成された第2計算サブ回路
を含む、UEパラメータ決定装置。
【請求項11】
コンピュータ命令が格納された記録媒体であって、前記コンピュータ命令が実行されると、請求項1ないし5の何れかに記載の前記ユーザ機器(UE)パラメータ決定方法が行われる、記録媒体。
【請求項12】
メモリとプロセッサとを含む基地局であって、前記メモリにはコンピュータ命令が記憶され、前記プロセッサが前記コンピュータ命令を実行したときに、請求項1ないし5の何れかに記載の前記ユーザ機器(UE)パラメータ決定方法が行われる、基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月31日に出願され、名称が「ユーザ機器パラメータ決定のための方法および装置、および記録媒体および基地局」である中国特許出願第201811012648.5の優先権の利益を主張するものであり、この参照によりその開示全体がここに組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、一般に、ワイヤレス通信技術の分野と関連し、より具体的には、ユーザ機器(UE)のパラメータの決定のための方法および装置、および記録媒体および基地局と関連する。
【背景技術】
【0003】
Third Generation Partnership Project(3GPP)は、第5世代移動通信(5G)New Radio(NR)における非地上系ネットワーク(NTN)について研究している。5G NTN通信の研究範囲は、主に、宇宙用ビークルである対地静止軌道衛星(GEO)、中軌道衛星(MEO)、低軌道衛星(LEO)、および空中用ビークルである高高度プラットフォーム(HAPS)を含む。NTN通信の主な特徴は、そのラウンド・トリップ・タイム(RTT)が相対的に長いことであり、これは、一般に、数ミリ秒(略すとms)から数百ミリ秒の範囲である。様々なNTNの配備のシナリオにおける片道遅延が表1に示されている。RTTは片道遅延の2倍である。更に、表1はまた、半径10キロメートル(略すとkm)の地上ネットワークのセルラ通信の関連するパラメータを示す。
【0004】
【表1】
【0005】
現在、タイミング・アドバンス(TA)を、各ユーザ機器(UE)に対する特定TA部と、全てのUEに適用可能な固定TA部とに分割することが提案されている。全てのUEに適用可能な固定TA部は、システム情報を通じてUEへ送信することができる。また、アップリンク(UL)グラント指示情報を持つアップリンク・リソースが位置するスロットから、ULグラントのリソースが位置するスロットまでの時間(略してK2)に関して、似た解決法が適用され得る。しかし、TAやK2の固定部を付加するために通信プロトコルを変更する必要があるという点で、欠点がある。地上ネットワークのUEに関して、NTN通信をサポートするためには、更に、関連するソフトウェアおよびハードウェアを実装(例えば、変数やアプリケーションを増加する、関連する変数の値の範囲がオーバーフローするか否かを確認するなど)する必要があり、これは、更に、関連するソフトウェアおよびハードウェアの管理ブランチのメンテナンスを必要とし、したがって、ソフトウェアおよびハードウェアのメンテナンス費用を増加させ得る。
【0006】
したがって、NTN通信を実現するためには、UEパラメータ(例えば、TAおよび/またはK2)の決定方法について更に研究する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、プロトコルの変更およびソフトウェアおよびハードウェアのメンテナンス費用を最小にするように、TAおよび/またはK2などのようなUEパラメータを決定するための解決法を提供する。
【0008】
本開示の実施形態では、UEパラメータ決定方法が提供され、方法は、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを決定することと、最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいてネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報を決定することとを含み、最小ラウンド・トリップ・タイムは、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差であり、かつ方法は、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定することを含み、UEパラメータは、TAとK2との少なくとも1つを含む。
【0009】
オプションとして、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを決定することは、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを、衛星の高度に基づいて決定することを含む。
【0010】
オプションとして、最小ラウンド・トリップ・タイムは、タイム・スロットにより計数され、タイム・スロットについて切り下げすることにより得られるか、または、最小ラウンド・トリップ・タイムは、サブフレームにより計数され、サブフレームについて切り下げすることにより得られる。
【0011】
オプションとして、最小ラウンド・トリップ・タイムは各UEに対して透明である。
【0012】
オプションとして、UEパラメータはTAであり、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定することは、各UEからアップリンク信号を受信することと、アップリンク信号と、ネットワーク側ダウンリンク無線フレームと、ネットワーク側アップリンク無線フレームとに基づいて各UEのTAを計算することとを含む。
【0013】
オプションとして、UEパラメータはK2であり、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定することは、各UEについてアップリンク・スケジューリングを行うときに、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのK2を計算することを含む。
【0014】
本開示の実施形態では、UEパラメータ決定装置が提供され、この装置は、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを決定するように構成された第1決定回路と、最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいてネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報を決定するように構成された第2決定回路とを含み、最小ラウンド・トリップ・タイムは、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差であり、かつ装置は、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定するように構成された第3決定回路を含み、UEパラメータは、TAとK2との少なくとも1つを含む。
【0015】
オプションとして、第1決定回路は、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを、衛星の高度に基づいて決定するように構成された決定サブ回路を含む。
【0016】
オプションとして、最小ラウンド・トリップ・タイムは、タイム・スロットにより計数され、タイム・スロットについて切り下げすることにより得られるか、または、最小ラウンド・トリップ・タイムは、サブフレームにより計数され、サブフレームについて切り下げすることにより得られる。
【0017】
オプションとして、最小ラウンド・トリップ・タイムは各UEに対して透明である。
【0018】
オプションとして、UEパラメータはTAであり、第3決定回路は、各UEからアップリンク信号を受信するように構成された受信サブ回路と、アップリンク信号と、ネットワーク側ダウンリンク無線フレームと、ネットワーク側アップリンク無線フレームとに基づいて各UEのTAを計算するように構成された第1計算サブ回路とを含む。
【0019】
オプションとして、UEパラメータはK2であり、第3決定回路は、各UEについてアップリンク・スケジューリングを行うときに、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのK2を計算するように構成された第2計算サブ回路を含む。
【0020】
本開示の実施形態では、コンピュータ命令が格納された記録媒体が提供され、コンピュータ命令が実行されると、前記UEパラメータ決定方法が行われる。
【0021】
本開示の実施形態では、メモリとプロセッサとを含む基地局が提供され、メモリにはコンピュータ命令が記憶され、プロセッサがコンピュータ命令を実行したときに、前記UEパラメータ決定方法が行われる。
【0022】
本開示の実施形態は、下記の利点を提供し得る。
【0023】
本開示の実施形態では、UEパラメータ決定方法が提供され、方法は、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを決定することと、最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいてネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報を決定することとを含み、最小ラウンド・トリップ・タイムは、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差であり、かつ方法は、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定することを含み、UEパラメータは、TAとK2との少なくとも1つを含む。本開示の実施形態により、最小ラウンド・トリップ・タイムを、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差として捉えることができるので、ネットワーク側アップリンク無線フレームを得るようにし、ネットワーク側アップリンク無線フレームに基づいてTAおよび/またはK2の値を決定するようにする。更に、UEは、ネットワーク側アップリンク無線フレームおよびネットワーク側ダウンリンク無線フレームに基づいてデータの送信および受信を行うことができる。NTNにおける非常に長いラウンド・トリップ・タイムはネットワークを介して調節されて、地上ネットワークUEのソフトウェアおよびハードウェアの変更を最小にとどめるようにし、それにより、UEのソフトウェアおよびハードウェアの追加のメンテナンス費用を効果的に避けることができ、NTN通信がサポートされる。
【0024】
更に、最小ラウンド・トリップ・タイムは各UEに対して透明である。本開示の実施形態により、UEは最小ラウンド・トリップ・タイムを知る必要がなくなり、NTN UEのTAおよびK2は、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとのタイミング差を導入することにより、比較的小さくすることができ、これにより、関連するプロトコルの変更を最小にとどめることができ、UEのメンテナンス費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、既存の技術におけるUEパラメータ決定方法のシナリオの図である。
図2図2は、実施形態に従ったUEパラメータ決定方法のフロー・チャートである。
図3図3は、実施形態に従ったUEパラメータ決定方法のシナリオの図である。
図4図4は、実施形態に従ったUEパラメータ決定装置の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
背景において説明したように、既存の技術では、TAは、各UEに対する特定TA部と、全UEに適用可能な固定TA部とに分割され、固定TA部はシステム情報を介して送信される。また、同様に、ULグラント指示のアップリンク・リソースが位置するスロットから、ULグラントが受信されたときのスロットまでの時間(略してK2)に関して、似た解決法が適用され得る。しかし、既存のTAおよびK2の決定方法は、TAおよびK2の値を、地上ネットワークで現在定められているTAおよびK2の範囲を大幅に超えたものとすることになる。
【0027】
例えば、15kHzのサブキャリア間隔の場合には、図1に示すように、ネットワーク基地局(例えば、gNodeB(gNB))のフレームのスロット0から、UEがそのフレームを受信する時までの片道伝送遅延は、5msより長く、gNBとUEとの間のRTTは、11msより長い。
【0028】
アップリンク・タイミング同期を達成するために、gNBは、UEのためにTAをコンフィギュレーションし、それにより、UEは望んだタイム・スロットでアップリンク送信を完了することができる。RTTを考慮し、UEは、11msより長い時間の前にアップリンク・データ送信を行い(即ち、TAは約11msの補償を行い)、それにより、UEのアップリンク信号がネットワーク基地局へ到達したときに、UEのアップリンク信号をネットワーク基地局側のアップリンク・フレームと整合させることができる。更に、フレーム1のタイム・スロット0でUEにより受信されたULグラントは、フレーム2のタイム・スロット4でUEがデータを送信できることを示し、K2の値は14タイム・スロットとすべきである。
【0029】
既存の技術的解決法では、gNBとUEとの間の最小RTTは、固定TA部として用いられ、システム情報を介してブロードキャストすることができ、特定TA部は、gNBによりタイミング・アドバンス・コマンド(Timing Advance Command)を介して各UEへ通知され得る。同じプロセスがK2に対して適用される。同様に、他のサブキャリアの間隔も類推することができるが、ここでは繰り返して説明しない。既存の技術的解決法はプロトコルの変更を必要とする、ということを理解することができる。更に、UEに関して、NTN通信をサポートするためには、関連するソフトウェアおよびハードウェアのアップデートをインプリメントすることや、関連する変数を維持することが更に必要とされ、それはソフトウェアおよびハードウェアのメンテナンス費用を増加させる。
【0030】
本開示の実施形態では、UEパラメータ決定方法が提供され、方法は、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを決定することと、最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいてネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報を決定することとを含み、最小ラウンド・トリップ・タイムは、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差であり、かつ方法は、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定することを含み、UEパラメータは、TAとK2との少なくとも1つを含む。
【0031】
本開示の実施形態により、最小ラウンド・トリップ・タイムを、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差として捉えることができるので、ネットワーク側アップリンク無線フレームを得るようにし、ネットワーク側アップリンク無線フレームに基づいてTAおよび/またはK2の値を決定するようにする。更に、UEは、ネットワーク側アップリンク無線フレームおよびネットワーク側ダウンリンク無線フレームに基づいてデータの送信および受信を行うことができる。NTNにおける非常に長いラウンド・トリップ・タイムはネットワークを介して調節されて、地上ネットワークUEのソフトウェアおよびハードウェアの変更を最小にとどめるようにし、それにより、UEのソフトウェアおよびハードウェアの追加のメンテナンス費用を効果的に避けることができ、NTN通信がサポートされる。
【0032】
本開示の目的、特徴、および利点を明確にするために、本開示の実施形態を、添付の図面と関連させて詳細に説明する。
【0033】
図2は、実施形態に従ったUEパラメータ決定方法のフロー・チャートである。
【0034】
ネットワーク側の基地局のタイミング同期を保証するために、ネットワークは、各UEのアップリンク・タイミングを調節することにより、様々な伝送遅延のバランスをとることができ、それにより、各UEのアップリンク信号は基地局へ同期して到達することができる。例えば、基地局から近いUEと比べて、基地局から遠いUEの送信時間は長いので、基地局から遠いUEはアップリンク・データを先に送信する必要がある。先に送信する際のタイミングは、基地局により計算され、UEへ通知される。具体的には、基地局は、各UEに関してTAをコンフィギュレーションし、それをUEへ送信することができ、UEは、そのTAに基づいてアップリンク・データの送信のタイミングを調節し、それにより基地局側でのタイミング同期を実現する。NTN通信では、基地局とUEとの間のRTTが、地上ネットワーク通信での基地局とUEとの間のRTTよりもかなり長いので、TAおよび/またはK2の値の範囲は、現在定めている値の範囲を大きく超える。
【0035】
従って、本開示の実施形態は、S101、S102、およびS103を含むUEパラメータ決定方法を提供する。
【0036】
S101において、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムが決定される。
【0037】
S102において、最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいて、ネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報が決定され、最小ラウンド・トリップ・タイムは、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差である。
【0038】
S103において、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータが決定され、UEパラメータはTAとK2との少なくとも1つを含む。具体的には、各UEのUEパラメータは、ネットワーク側アップリンク無線フレームのタイミングおよびネットワーク側ダウンリンク無線フレームのタイミングに基づいて決定することができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、S101において、NTN基地局は、セル内の各UEと衛星との間のラウンド・トリップ・タイムを決定することができ、基地局とUEとの間の最小ラウンド・トリップ・タイムを得るようにすることができる。
【0040】
幾つか実施形態では、NTN基地局は、衛星の高度に基づいて、セル内の各UEと衛星との間のラウンド・トリップ・タイムを決定することができる。例えば、各UEと衛星との間のラウンド・トリップ・タイムを比較して、最小ラウンド・トリップ・タイムを求める。好適には、NTN基地局は、特定のUEが衛星に最も近い地上平面位置にあると仮定し、その特定のUEと衛星との間のラウンド・トリップ・タイムを最小ラウンド・トリップ・タイムに決定することができる。
【0041】
S102において、NTN基地局は、最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいて、ネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報を決定することができる。当業者には理解できるように、地上ネットワークに関しては、ネットワークは、ネットワーク側ダウンリンク無線フレームとネットワーク側アップリンク無線フレームとを区別せず、単に、ネットワーク側無線フレームを、データの送信および受信のための基準として用いる。
【0042】
NTN通信では、基地局は、ネットワーク側についてのネットワーク側ダウンリンク無線フレームおよびネットワーク側アップリンク無線フレームを決定することができる。ネットワーク側ダウンリンク無線フレームとネットワーク側アップリンク無線フレームとのフレーム情報は異なり得る。ネットワーク側アップリンク無線フレームは、ネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れる。
【0043】
具体的には、NTN基地局のアップリンクのタイミングとダウンリンクのタイミングとは異なり、ネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報は、最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいて決定することができる。フレーム情報は、フレーム番号、タイム・スロット番号、サブフレーム番号のインデックス情報、無線フレームに含まれるタイム・スロットの数などの、1以上の情報を含むことができる。当業者には理解できるように、実際の応用では、NTN基地局において、ネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報は、特定の応用における変更に応じて変更され得るが、ここでは、これについて詳細に説明しない。
【0044】
幾つかの実施形態では、ネットワーク側アップリンク無線フレームがネットワーク側ダウンリンク無線フレームに遅れるタイミング差は、最小ラウンド・トリップ・タイムであり得る。ネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報が決定された後、最小ラウンド・トリップ・タイムが遅延され、ネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報を得るようにする。
【0045】
幾つかの実施形態では、ネットワーク側に関して、ネットワーク側のアップリンク無線フレームとダウンリンク無線フレームとは異なるタイミングを有する。特定の時点について、無線フレームのタイム・スロットを例とすると、その時点でのネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム番号は、ネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム番号とは異なり得るものであり、また、ネットワーク側ダウンリンク無線フレームにおけるタイム・スロット番号も、ネットワーク側アップリンク無線フレームにおけるタイム・スロット番号と異なり得る。
【0046】
ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとのフレーム番号およびタイム・スロット番号は異なり得る。図3に示すように、15kHzを例とすると、各フレームは、タイム・スロット0からタイム・スロット9までの10のタイム・スロットを含む。gNBは、フレーム1のタイム・スロット0でULグラントを送信して、UEがフレーム1のタイム・スロット3でアップリンク送信を行うように命令し、ここにおいて、K2は、3タイム・スロットであり、ネットワーク側ダウンリンク無線フレームとネットワーク側アップリンク無線フレームとに基づいて決定される。ネットワーク側アップリンク無線フレームのタイミングは、ネットワーク側ダウンリンク無線フレームのタイミングより遅れ、遅れ時間は、最小ラウンド・トリップ・タイムであり得るか、またはタイム・スロットについて切り下げした結果であり得る。
【0047】
代替的には、特定の時点について、無線フレームのサブフレームを例とすると、その時点でのネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとのフレーム番号は異なり得るものであり、また、ネットワーク側ダウンリンク無線フレームにおけるサブフレーム番号も、ネットワーク側アップリンク無線フレームにおけるサブフレーム番号と異なり得る。
【0048】
更に、最小RTTは、タイム・スロットで計数することができる。一般に、各タイム・スロットの期間は1msである。当業者には理解できるように、最小RTTは、タイム・スロットについて切り下げすることにより得られ、ネットワーク側アップリンク無線フレームが決定される。代替的には、最小RTTは、サブフレームで計数することができる。当業者には理解できるように、最小RTTは、サブフレームについて切り下げすることにより得られ、ネットワーク側アップリンク無線フレームが決定される。
【0049】
更に、NTN基地局は、既存の計算方法に基づいて、小さいタイム・スロットまたはサブフレームを用いてTA値を決定することができ、そのTA値をUEへ通知することができる。簡潔にするために、ここでは特定の計算プロセスについて説明しない。
【0050】
更に、S103において、NTN基地局のアップリンクとダウンリンクとのタイミング差は、NTN UEに対して透明である。即ち、UEは、NTN基地局のアップリンクとダウンリンクとのタイミングに差が存在することを、知る必要がない。
【0051】
具体的には、NTN基地局は、TAを計算するために、ULにより送信されたアップリンク信号、ネットワーク側アップリンク無線フレーム、およびネットワーク側ダウンリンク無線フレームを用いる。幾つかの実施形態では、NTN基地局は、UEがランダム・アクセスを行うときに、受信したランダム・アクセス・プリアンブル(random access preamble)を測定することにより、TAの値を決定することができる。UEのTAを決定するとき、NTN基地局は、ネットワーク側アップリンク無線フレームに基づいてそれを計算する、即ち、NTN基地局がTAを計算するとき、最小ラウンド・トリップ・タイム(即ち、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差)が演繹される。一般に、タイミング差を演繹した後、NTN基地局は、測定したランダム・アクセス・プリアンブルに基づいてTAを計算することができる。このように、計算されたTA値は比較的小さく、従って、既存のプロトコルの変更を最小限にする。
【0052】
当業者には理解できるように、NTNネットワークに関して、K2を決定するステップは、TAを決定するステップと同様である。UEについてのULスケジューリングを行うとき、NTN基地局は、最小ラウンド・トリップ・タイムを控除することができる。具体的には、NTN基地局は、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差を演繹した後に、K2の値を計算することができるが、ここでは特定の計算プロセスについて説明しない。
【0053】
その後、NTN基地局は、計算の結果(即ち、決定したTA)を、タイミング・アドバンス・コマンド(Timing Advance Command)を介してUEへ送信することができる。一般に、NTN基地局は、計算の結果を、ランダム・アクセス・レスポンス(random access response)のタイミング・アドバンス・コマンドを介してUEへ送信することができる。
【0054】
上記から、本開示の実施形態により提供される技術的解決法を用いると、UE側のプロトコルを変更せずに、UEに関して、NTNネットワークのUEパラメータであるTAおよび/またはK2を決定することができる。更に、UL側の関連するプロトコルの変更を最小限にすることができ、これは、UEのメンテナンス費用を低減する。
【0055】
図4は、実施形態に従ったUEパラメータ決定装置の構造図である。UEパラメータ決定装置4は、図2および図3に示すUEパラメータ決定方法の技術的解決法をインプリメントするために用いることができ、ネットワーク側、例えば、NTN基地局(例えば、5G gNB)に適用されることができる。
【0056】
具体的には、UEパラメータ決定装置4は、第1決定回路41、第2決定回路42、および第3決定回路43を含むことができる。
【0057】
第1決定回路41は、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを決定するように構成され、第2決定回路42は、最小ラウンド・トリップ・タイムとネットワーク側ダウンリンク無線フレームのフレーム情報とに基づいてネットワーク側アップリンク無線フレームのフレーム情報を決定するように構成され、最小ラウンド・トリップ・タイムは、ネットワーク側アップリンク無線フレームをネットワーク側ダウンリンク無線フレームより遅れさせるタイミング差であり、第3決定回路43は、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのUEパラメータを決定するように構成され、UEパラメータはTAとK2との少なくとも1つを含む。
【0058】
幾つかの実施形態では、第1決定回路41は決定サブ回路411を含む。
【0059】
決定サブ回路411は、セル内の各UEと衛星との間の最小ラウンド・トリップ・タイムを、衛星の高度に基づいて決定するように構成される。
【0060】
幾つかの実施形態では、最小ラウンド・トリップ・タイムは、タイム・スロットにより計数され、タイム・スロットについて切り下げすることにより得られるか、または、最小ラウンド・トリップ・タイムは、サブフレームにより計数され、サブフレームについて切り下げすることにより得られる。
【0061】
幾つかの実施形態では、最小ラウンド・トリップ・タイムは各UEに対して透明である。
【0062】
幾つかの実施形態では、UEパラメータはTAであり、第3決定回路43は、受信サブ回路431と第1計算サブ回路432とを含む。
【0063】
受信サブ回路431は、各UEからアップリンク信号を受信するように構成され、第1計算サブ回路432は、アップリンク信号と、ネットワーク側ダウンリンク無線フレームと、ネットワーク側アップリンク無線フレームとに基づいて各UEのTAを計算するように構成される。
【0064】
代替的に、UEパラメータはK2であり、第3決定回路43は、第2計算サブ回路433を含む。第2計算サブ回路433は、各UEについてアップリンク・スケジューリングを行うときに、ネットワーク側アップリンク無線フレームとネットワーク側ダウンリンク無線フレームとに基づいて各UEのK2を計算するように構成される。
【0065】
UEパラメータ決定装置4の動作原理および動作モードの更なる詳細は、図2および図3の上記の説明で見つけることができるので、ここでは説明しない。
【0066】
本開示の実施形態では、コンピュータ命令が格納された記録媒体が提供され、コンピュータ命令が実行されると、図2および図3に示した前記UEパラメータ決定方法が行われる。幾つかの実施形態では、記録媒体は、不揮発性または非一時的メモリなどのような、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、リード・オンリ・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、磁気ディスク、または光ディスクを含むことができる。
【0067】
本開示の実施形態では、メモリとプロセッサとを含む基地局が提供され、メモリにはコンピュータ命令が記憶され、プロセッサがコンピュータ命令を実行したときに、図2および図3に示した前記UEパラメータ決定方法が行われる。幾つかの実施形態では、基地局は衛星基地局とすることができる。
【0068】
上記では、本開示について好適な実施形態を参照して説明したが、本開示を単に例を用いて示したものであり、限定を示すものではないことを、理解すべきである。当業者は、本開示の精神および範囲を逸脱せずに、実施形態を変更および改造することができる。
図1
図2
図3
図4