(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】メタノールを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C25B 3/07 20210101AFI20231226BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20231226BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20231226BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20231226BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20231226BHJP
C07C 31/04 20060101ALI20231226BHJP
C07C 29/151 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C25B3/07
C25B3/26
C25B15/08 302
C25B15/021
C25B1/04
C07C31/04
C07C29/151
(21)【出願番号】P 2021514106
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2019072965
(87)【国際公開番号】W WO2020052979
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-23
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】シェルネホフ・エーミル・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ピーダスン・ラース・ストーム
(72)【発明者】
【氏名】フルトクヴィスト・ミケール
(72)【発明者】
【氏名】エスケスン・セーアン・グランボー
(72)【発明者】
【氏名】イェンスン・ルイーセ・ヴィスィング
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-156379(JP,A)
【文献】特開2007-239038(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103252105(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 3/07
C25B 3/26
C25B 15/08
C25B 15/021
C25B 1/04
C07C 31/04
C07C 29/151
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a
)二酸化炭素からなる第1のプロセス流を提供するステップ;
b)電気分解ユニットで水を電気分解することにより、水素からなる第2のプロセス流を提供するステップ;
c)H
2とCO
2のモル比が2.5~3.5のメタノール合成ガスが得られる量で第1および第2のプロセス流を混合するステップ;
d)少なくとも1つのメタノール反応器中において、メタノール合成ガスを原料メタノールに触媒変換するステップ;
e)蒸留ユニットで原料メタノールを精製し;および、ステッ
プb)の電気分解ユニットで発生した廃熱との間接的な熱交換によって循環する熱伝達媒体に廃熱を伝達することによって、かつ、原料メタノールの蒸留に使用される蒸気との加熱された熱伝達媒体の間接的な熱交換によって、前記廃熱を回収するステップであって、前記加熱された熱伝達媒体が、蒸気との間接的な熱交換の上流で圧縮されるステップ、
を含むメタノール生成物を製造するための方法。
【請求項2】
前記熱伝達媒体が、廃熱との間接的な熱交換時に生じる圧力において電気分解からの廃熱よりも低い沸点を有し、かつ、蒸気との間接的な熱交換時に生じる圧力において蒸気との間接的な熱交換時の温度よりも高い沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸留ユニットが、直列に稼働される2つ以上の蒸留塔を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気分解ユニットで電気分解される水の少なくとも一部が、メタノール蒸留ユニットから取り出された蒸留水であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、二酸化炭素と水素からなる合成ガスからメタノールを製造することに関する。具体的には、本発明は、水を電気分解して水素を製造し、オフガスまたは排ガスから二酸化炭素を回収することで、以下の反応によりメタノールを触媒的に製造する。
CO2+3H2→CH3OH+H2O
【背景技術】
【0002】
MeOH製造における水素は、通常、水蒸気改質によって生成される合成ガスから供給される。また、水を電気分解して水素を発生させ、発生した水素を炭素原料と混合し、合成触媒を用いてメタノールを製造することも可能である。
【0003】
電気分解で水素を製造するには大量の電力が必要であり、効率が悪いために電力の一部が廃熱として失われる。この熱は通常、冷却媒体によって取り除かれ、失われる。電気分解を行うプラントの全体的な効率を上げるためには、この廃熱を利用する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気分解の廃熱を利用する際に問題となるのは、製造ユニットの熱伝達に利用するためには、熱媒体中の熱が比較的低い温度で回収されるため、熱を増加させる必要があることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
我々は、循環する熱伝達媒体と間接的な熱交換器を備えた加熱ループ中において、コンプレッサーを備えたヒートポンプを配置すると、低温の熱を熱伝達媒体中で増加させることができ、低質熱が必要とされる方法において有用であることを見出した。
【0006】
本発明の方法では、循環する熱伝達媒体を備えたループ内にヒートポンプを設置し、水の電気分解による廃熱を、蒸気を使用するメタノールの蒸留に利用する。これにより、生成される蒸気への要求を下げることができる。
【0007】
したがって、本発明は、
a)本質的に二酸化炭素からなる第1のプロセス流を提供するステップ;
b)電気分解ユニットで水を電気分解することにより、水素からなる第2のプロセス流を提供するステップ;
c)H2とCO2のモル比が2.5~3.5のメタノール合成ガスが得られる量で第1および第2のプロセス流を混合するステップ;
d)少なくとも1つのメタノール反応器中において、メタノール合成ガスを原料メタノールに触媒変換するステップ;
e)蒸留ユニットで原料メタノールを精製し;および、ステップ(b)の電気分解ユニットで発生した廃熱との間接的な熱交換によって循環する熱伝達媒体に廃熱を伝達することによって、かつ、原料メタノールの蒸留に使用される蒸気との加熱された熱伝達媒体の間接的な熱交換によって、前記廃熱を回収するステップであって、前記加熱された熱伝達媒体が、蒸気との間接的な熱交換の上流で圧縮されるステップ、
を含むメタノール生成物を製造するための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の必須の特徴は、循環する熱伝達媒体とコンプレッサー、熱交換器、フラッシュ蒸発装置を有する加熱ループである。
【0009】
これにより、コンプレッサーを作動させるのに必要な電力が、利用される熱による電力よりも少なくなるため、方法における全体的なエネルギー消費が削減される。
【0010】
適切な熱伝達媒体は、フラッシュ蒸発の下流で所定の圧力において電気分解ユニットから伝達される廃熱の温度よりも低い沸点を有し、かつ、コンプレッサーの排出側の圧力においてメタノール蒸留ユニットの熱交換器の加熱面よりも高い沸点を有する。
【0011】
本発明によるプロセスを作動させるとき、熱伝達媒体は、そのガス状の状態で、予備加圧され、コンプレッサーによってループを介して循環させられる。コンプレッサーの排出側では、高温および高圧の気化した熱伝達媒体が、メタノール蒸留ユニットで使用される蒸気との熱交換により熱交換器で冷却され、加圧された液体に凝縮される。凝縮された熱伝達媒体は、膨張弁などの減圧装置を介してフラッシュ蒸発される。その後、低圧の液体熱媒体は間接熱交換器である蒸発器に入り、蒸発した熱伝達媒体が熱を吸収する。その後、熱伝達媒体はコンプレッサーに戻り、このサイクルが繰り返される。
【0012】
水の電気分解からの廃熱を原料メタノールの精製に移すこと以外に、他の製造ステップは、当技術分野で従来から知られているものである。
【0013】
本発明の一実施形態では、蒸留ユニットは、直列に作動される2つ以上の蒸留塔からなる。
【0014】
さらに一実施形態では、電気分解ユニットで電気分解される水の少なくとも一部は、メタノール蒸留ユニットから取り出された蒸留水である。
本発明は以下の項目を含む。
[項目1]
a)本質的に二酸化炭素からなる第1のプロセス流を提供するステップ;
b)電気分解ユニットで水を電気分解することにより、水素からなる第2のプロセス流を提供するステップ;
c)H
2
とCO
2
のモル比が2.5~3.5のメタノール合成ガスが得られる量で第1および第2のプロセス流を混合するステップ;
d)少なくとも1つのメタノール反応器中において、メタノール合成ガスを原料メタノールに触媒変換するステップ;
e)蒸留ユニットで原料メタノールを精製し;および、ステップ(b)の電気分解ユニットで発生した廃熱との間接的な熱交換によって循環する熱伝達媒体に廃熱を伝達することによって、かつ、原料メタノールの蒸留に使用される蒸気との加熱された熱伝達媒体の間接的な熱交換によって、前記廃熱を回収するステップであって、前記加熱された熱伝達媒体が、蒸気との間接的な熱交換の上流で圧縮されるステップ、
を含むメタノール生成物を製造するための方法。
[項目2]
前記熱伝達媒体が、廃熱との間接的な熱交換時に生じる圧力において電気分解からの廃熱よりも低い沸点を有し、かつ、蒸気との間接的な熱交換時に生じる圧力において蒸気との間接的な熱交換時の温度よりも高い沸点を有する、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記蒸留ユニットが、直列に稼働される2つ以上の蒸留塔を含むことを特徴とする、項目1または2に記載の方法。
[項目4]
前記電気分解ユニットで電気分解される水の少なくとも一部が、メタノール蒸留ユニットから取り出された蒸留水であることを特徴とする、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。