(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】二重特異性抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20231226BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231226BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20231226BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231226BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231226BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231226BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/13 ZNA
C12N15/85 Z
C07K19/00
C07K16/28
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2021525317
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2019108057
(87)【国際公開番号】W WO2020088164
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】201811294887.4
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511182437
【氏名又は名称】山▲東▼新▲時▼代▲薬▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG NEW TIME PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1,North Outer Ring Road,Feixian Country,Shandong 273400,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李強
(72)【発明者】
【氏名】賈世香
(72)【発明者】
【氏名】趙麗麗
(72)【発明者】
【氏名】張貴民
(72)【発明者】
【氏名】劉忠
(72)【発明者】
【氏名】馬心魯
(72)【発明者】
【氏名】厳源
(72)【発明者】
【氏名】李振宇
(72)【発明者】
【氏名】胡興霞
(72)【発明者】
【氏名】張玉華
(72)【発明者】
【氏名】李斌
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186301(JP,A)
【文献】国際公開第2017/106684(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/138170(WO,A1)
【文献】特表2009-511521(JP,A)
【文献】特表2014-520088(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106317226(CN,A)
【文献】特表2016-537966(JP,A)
【文献】国際公開第2017/172981(WO,A2)
【文献】Cancer Science,2015年,Vol.106, No.5,p.512-521, supporting information p.1-3
【文献】Cancer Cell,2017年,Vol.31,p.396-410
【文献】mAbs,2012年,Vol.4, No.2,p.267-273
【文献】Leukemia,2017年,Vol.31,p.1743-1751
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の同じポリペプチド鎖を共有結合で結合して四価ホモ二量体を形成する二重特異性抗体であって、
各ポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:20に示され、
各ポリペプチド鎖が、腫瘍抗原BCMAと特異的に結合する第一の一本鎖Fv
(抗-BCMA ScFv)、リンカーペプチドL2、エフェクター細胞抗原CD3と特異的に結合する第二の一本鎖Fv
(抗-CD3 scFv)、及びFc断片
によって順に直列接続して構成され、
前記
抗-BCMA scFvと前記
抗-CD3 scFvの内部のVHとVLとの間は、それぞれ(GGGGS)
3
によって接続され、
抗-BCMA scFvのVHとVLアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:7とSEQ ID NO:8に示され、
抗CD3-scFvのVHとVLアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:17とSEQ ID NO:18に示され、
前記リンカーペプチドL2は、可撓性ペプチドと剛性ペプチドからなり、可撓性ペプチドは、いずれもG
2
(GGGGS)
3
であり、剛性ペプチドは、SSSSKAPPPSである、二重特異性抗体。
【請求項2】
前記Fc断片は、CDC、ADCC及びADCPエフェクター機能を有しない、ことを特徴とする、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
前記
抗-CD3 scFvは、ヒト又はカニクイザル又はアカゲザルのCD3と特異的に結合することができる、ことを特徴とする、請求項
1に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
前記二重特異性抗体は、ヒトBCMAとCD3に結合
することを特徴とする、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
請求項
1に記載の二重特異性抗体をコードする、ことを特徴とする、DNA分子。
【請求項6】
SEQ ID NO:21に示すようなヌクレオシド配列を有する、ことを特徴とする、請求項
5に記載のDNA分子。
【請求項7】
請求項
5に記載のDNA分子又は請求項
6に記載のDNA分子を含む、ことを特徴とする、発現ベクター。
【請求項8】
宿主細胞であって、請求項
7に記載の発現ベクターが導入されており、前記宿主細胞は、原核細胞又は酵母又は哺乳動物細胞である、ことを特徴とする、宿主細胞。
【請求項9】
前記宿主細胞は、哺乳動物細胞である、ことを特徴とする、請求項
8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
前記哺乳動物細胞は、CHO細胞又はNS0細胞である、ことを特徴とする、請求項
9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の二重特異性抗体及び薬用賦形剤及び/又はベクター及び/又は希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項12】
(a)二重特異性抗体の融合遺伝子を取得し、二重特異性抗体の発現ベクターを構築するステップと、
(b)遺伝子工学方法によって上記発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトするステップと、
(c)前記二重特異性抗体の生成が許可される条件下で上記宿主細胞を培養するステップと、
(d)生成され
る抗体を分離、精製するステップと、を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を調製する方法。
【請求項13】
形質細胞障害、BCMA発現に関する他のB細胞障害又は自己免疫性疾患を治療又は改善するための医薬であって、請求項1~
4のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を含み、前記形質細胞障害は、多発性骨髄腫、形質細胞腫、形質細胞白血病、マクログロブリン血症、アミロイドーシス、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、孤立性骨形質細胞腫、髓外形質細胞腫、骨硬化性骨髄腫、重鎖病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン病又は鬱滞性多発性骨髄腫を含
む、医薬。
【請求項14】
形質細胞障害を治療又は改善するための医薬であって、請求項1~4のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を含み、前記形質細胞障害は、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、孤立性骨形質細胞腫、髓外形質細胞腫、又は鬱滞性多発性骨髄腫を含む、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学分野に関し、さらに具体的には、T細胞を媒介して殺傷させる抗CD3二重特異性抗体、及びこのような抗体の用途、特に、それが癌症治療における用途に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫は、二番目によく見られる血液システム悪性腫瘍であり、その骨髓内のモノクローナル形質細胞の制御されない増殖は、モノクローナル免疫グロブリンと免疫阻害の過剰生成、及び骨溶解と終末器官損傷を引き起こす。現在では、二つの単クローン性抗体の臨床使用が承認されており、過去十年間、多発性骨髄腫治療方案は、患者の生存率を著しく向上させた。それにもかかわらず、従来の治療方案は、特に、現在の治療法に対して耐性を有する再発/難治性の患者に対して、現在の治療ニーズを満たしていない。
【0003】
B細胞成熟抗原(BCMA)は、高度形質細胞特異性抗原であり、B細胞の成熟と形質細胞への分化を調節する方面で、増殖誘導配位子(APRIL)に関与することによって重要な役割を果たしている。BCMA発現は、B細胞系譜に限られ且つ主に形質細胞と形質芽細胞に存在し、且つ一定の程度で記憶B細胞に存在するが、外周とナイーブB細胞には実質的に存在せず、他の正常組織細胞での発現が見られない。BCMAは、多発性骨髄腫細胞にも発現し且つ白血病とリンパ腫に関与する。そのファミリーメンバーのTACI(膜貫通活性化剤とシクロフィリン受容体配位子相互作用物)とBAFF-R(B細胞活性化因子受容体)と共に、BCMAは、体液免疫、B細胞発育及びインビボ定常状態の異なる方面を調節する。BCMAの発現は、B-細胞分化作用のより後期に現れ且つ骨髓における形質芽細胞と形質細胞の長期生存に有利である。マウス内のBCMA遺伝子の標的欠失のため、骨髓内の長寿形質細胞の数量が著しく減少し、BCMAがその生存に対して重要性を有することが示めされる。BCMA過発現、又は多発性骨髄腫細胞におけるBCMAのAPRILへの刺激によって、キー免疫チェックポイント分子を直接上昇させることができ、これは、骨髄微小環境の免疫阻害に役立つ可能性がある。
【0004】
細胞免疫プロセスにおいて、Tリンパ球は、重要な役割を果たしている。T細胞によって媒介される細胞免疫は、主にT細胞受容体(T cell receptor、TCR)によって細胞表面の主要組織相容性複合体(MHC)によって提示される抗原ペプチドを特異的に認識し、さらにT細胞の細胞内信号をアクティブ化し、該標的細胞に対して特異的な殺傷を行う。これは、インビボ病変の細胞を適時に除去し、腫瘍の発生を予防するのに重要な役割を果たしている。多数の癌細胞表面のMHCの発現が低下し、ひいては欠失するため、腫瘍細胞は、免疫殺傷を逃れることができ、それにより腫瘍が発生する。
【0005】
T細胞結合二重特異性抗体(T cell-engaging bispecific antibodies、TCBs)は、アクティブ化される細胞毒性T細胞を腫瘍にリダイレクトする非常に効果的な方式を代表する。CD3は、T細胞受容体の一部として、成熟T細胞に発現し、TCR認識抗原によって生成された活性化信号を形質導入することができる。TCBsは、同時に表面腫瘍抗原とT細胞受容体のCD3εサブユニットと結合し、T細胞と腫瘍細胞との間に一つの物理的接続を提供し、それにより静止のT細胞を効果的にアクティブ化して腫瘍細胞を殺傷させ、腫瘍治療の效果を達成することができる(Smits N C、Sentman C L、Journal of Clinical Oncology、2016:JCO649970.)。T細胞二重特異性バイパスTCR抗原認識とT細胞活性化の共刺激要求のため、それらは、腫瘍特異性免疫への需要を解消し、且つ腫瘍微小環境内にT細胞が直面する多くの障害を克服した。
【0006】
近年、二つの異なる半抗体を正確に組み立てるという問題を解決するために、科学者たちは、複数の構造の二重特異性抗体を設計して開発した。全体的に纏めると二種類あり、一種類の二重特異性抗体は、Fc領域を含まず、BiTE、DART、TrandAbs、bi-Nanobody等を含む。この種類の構造の二重抗体の利点は、分子量が小さく、原核細胞内に発現でき、正確に組み立てるという問題を考慮する必要がないことである。欠点は、抗体Fc段がなく、分子量が比較的に低いため、その半減期が比較的に短く、且つこのような形式の二重抗体が極めて重合しやすく、安定性が低く、且つ発現量が低いため、臨床応用が一定の制限を受けることである。別の種類の二重特異性抗体は、Fcドメインを保留し、例えばTriomabs、kih IgG、Cross-mab、orthoFab IgG、DVD IgG、IgG scFv、scFv2-Fc等の配置である。この種類の二重抗体は、IgG様構造を形成し、分子構造が比較的に大きく、且つFcRnによって媒介されるエンドサイトーシスと再循環プロセスは、それにさらに長い半減期を備えさせ、またFcによって媒介される一部又は全部のエフェクター機能を保留しており、例えば抗体依存細胞媒介細胞毒性(ADCC)、補体依存細胞毒性(CDC)及び抗体依存細胞貪食(ADCP)である。しかしながら、このような二重抗体は、ミスマッチ生成物の生成を完全に根絶することができず、任意のミスマッチ分子の残留画分は、いずれも生成物から分離しにくく、且つこのような方法は、二つの抗体配列に対して大量の突然変異等の遺伝子工学改造を行うことができ、簡単、通用の目的を達成することができない。
【0007】
このため、本発明は、製品の半減期、安定性、安全性及び生産可能性の面で、改善性能を有するBCMA二重特異性分子を開発することを目的とする。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、インビボで腫瘍細胞を著しく阻害し又は殺傷することができ、低発現BCMAの正常細胞に対する非特異的殺傷作用が著しく低減し、またエフェクター細胞の過剰活性化による毒副作用の制御性が増加し、且つその物理化学特性とインビボ安定性がいずれも著しく向上する標的免疫エフェクター細胞抗原CD3と腫瘍抗原BCMAの四価ホモ二量体型二重特異性抗体分子を提供することである。
【0009】
具体的には、本発明の第一の方面は、二重特異性抗体を開示する。前記二重特異性抗体分子は、二本の同じポリペプチド鎖を共有結合で結合して四価ホモ二量体を形成し、各のポリペプチド鎖は、N端からC端まで、腫瘍抗原BCMAと特異的に結合する第一の一本鎖Fvと、エフェクター細胞抗原CD3と特異的に結合する第二の一本鎖Fvと、Fc断片とを順に含み、第一と第二の一本鎖Fvがリンカーペプチドによって接続され、第二の一本鎖FvがFc断片に直接接続されるか、またはリンカーペプチドによって接続され、且つ前記Fc断片は、CDC、ADCC及びADCP等のエフェクター機能を有しない。
【0010】
そのうち、前記第一の一本鎖Fvは、VHドメインとVLドメインを含み、且つリンカーペプチドL1によって接続され、且つ前記リンカーペプチドL1のアミノ酸配列は、(GGGGX)nであり、Xは、Ser又はAlaを含み、nは、1~5の自然数であり、Xは、好ましくはSerであり、nは、好ましくは3である。
【0011】
本発明の一つの好ましい実施例では、前記リンカーペプチドL1のアミノ酸配列は、(GGGGS)3であり、他の好ましい実施例方案では、前記リンカーペプチドL1のアミノ酸配列は、(GGGGS)1又は(GGGGS)2又は(GGGGS)4又は(GGGGS)5又は(GGGGA)1又は(GGGGA)2又は(GGGGA)3又は(GGGGA)4又は(GGGGA)5をさらに含む。
【0012】
好ましくは、前記第一の一本鎖Fvは、
(1)SEQ ID NO:1、2及び3にそれぞれ示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は上記配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%の類似性を有する配列又は一つ又はより多くのアミノ酸置換(例えば保存的置換))を有する配列を含むVHドメイン、及び
(2)SEQ ID NO:4、5及び6にそれぞれ示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は上記配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%の類似性を有する配列又は一つ又はより多くのアミノ酸置換(例えば保存的置換))を有する配列を含むVLドメイン、を含む。
【0013】
更に好ましくは、前記第一の一本鎖Fvは、
(1)アミノ酸配列がSEQ ID NO:7に示すVHドメイン、又は上記配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%の類似性を有し又は一つ又はより多くのアミノ酸置換(例えば保存的置換))を有する配列、及び
(2)アミノ酸配列がSEQ ID NO:8に示すVLドメイン、又は上記配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%の類似性を有し又は一つ又はより多くのアミノ酸置換(例えば保存的置換))を有する配列を含む。そのうち、本発明の前記第一の一本鎖Fvと第二の一本鎖Fvとを接続するリンカーペプチドL2は、可撓性ペプチドと剛性ペプチドからなる。
【0014】
さらに、前記可撓性ペプチドは、2つ以上のアミノ酸を含み、且つ好ましくは、Gly(G)、Ser(S)、Ala(A)及びThr(T)から選択される。更に好ましくは、前記可撓性ペプチドは、G残基とS残基を含む。最も好ましくは、前記可撓性ペプチドのアミノ酸の構成構造の一般式は、GxSy(GGGGS)zであり、式中、x、y及びzは、0以上の整数であり、且つx+y+z≧1である。例えば、一つの好ましい実施例では、前記可撓性ペプチドのアミノ酸配列は、G2(GGGGS)3である。
【0015】
さらに、前記剛性ペプチドは、天然ヒト絨毛ゴナドトロピンβのサブユニットカルボキシ末端の第118~145位のアミノ酸からなる全長配列(SEQ ID NO:9に示すように)又はそのトランケーション断片(以下では、CTPと総称される)に由来する。好ましくは、CTP1剛性ペプチドは、SEQ ID NO:9 N端の10個のアミノ酸、すなわちSSSSKAPPPSを含み、又はCTP2剛性ペプチドは、SEQ ID NO:9 C端の14個のアミノ酸、すなわちSRLPGPSDTPILPQを含み、CTP3剛性ペプチドは、SEQ ID NO:9 N端の16個のアミノ酸、すなわちSSSSKAPPPSLPSPSRを含み、CTP4剛性ペプチドは、28個のアミノ酸を含み且つヒト絨毛ゴナドトロピンβのサブユニットの第118位から開始し、第145位で終止し、すなわちSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQである。
【0016】
本発明の一つの好ましい実施例では、前記剛性ペプチドは、SSSSKAPPPSであり、すなわちCTP1剛性ペプチドである。他の好ましい実施方案では、剛性ペプチド配列は、CTP2(SRLPGPSDTPILPQ)、CTP3(SSSSKAPPPSLPSPSR)、CTP4(SSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ)をさらに含む。
【0017】
本発明の一つの好ましい実施例では、前記リンカーペプチドL2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10に示され、その可撓性ペプチドのアミノ酸構成は、G2(GGGGS)3であり、その剛性ペプチドのアミノ酸構成は、SSSSKAPPPSであり、すなわちCTP1剛性ペプチドである。
【0018】
そのうち、二重特異性抗体の第二の一本鎖Fvは、CD3と特異的に結合し、インビトFACS結合分析測定内に50nMよりも大きく、又は100nMよりも大きく、又は300nMよりも大きく、又は500nMよりも大きいEC50値でエフェクター細胞と結合し、更に好ましくは、前記二重特異性抗体の第二の一本鎖Fvは、ヒトCD3と結合できるだけでなく、さらにカニクイザル又はアカゲザルのCD3と特異的に結合することができる。本発明の一つの好ましい実施例では、前記二重特異性抗体は、132.3nMのEC50値でエフェクター細胞と特異的に結合する。
【0019】
好ましくは、前記第二の一本鎖Fvは、
(1)SEQ ID NO:11、12及び13にそれぞれ示すHCDR1、HCDR2及びHCDR3、又は上記配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%の類似性を有する配列し又は一つ又はより多くのアミノ酸置換(例えば保存的置換))を有する配列を含むVHドメイン、及び
(2)SEQ ID NO:14、15及び16にそれぞれ示すLCDR1、LCDR2及びLCDR3、又は上記配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%の類似性を有する配列又は一つ又はより多くのアミノ酸置換(例えば保存的置換))を有する配列を含むVLドメイン、を含む。
【0020】
更に好ましくは、前記第二の一本鎖Fvは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:17に示すVHドメイン、又は上記配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%の類似性を有し又は一つ又はより多くのアミノ酸置換(例えば保存的置換))を有する配列、及び
アミノ酸配列がSEQ ID NO:18に示すVLドメイン、又は上記配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%の類似性を有し又は一つ又はより多くのアミノ酸置換(例えば保存的置換))を有する配列、を含む。
【0021】
好ましくは、前記第二の一本鎖FvのVHドメインとVLドメインは、リンカーペプチドL3によって接続され、前記VH、L3及びVLは、VH-L3-VL又はVL-L3-VHの順序で配列され、且つ前記リンカーペプチドL3のアミノ酸配列は、(GGGGX)nであり、Xは、Ser又はAlaから選択され、nは、1~5の自然数であり、Xは、好ましくはSerであり、nは、好ましくは3である。
【0022】
本発明の一つの好ましい実施例では、前記リンカーペプチドL3のアミノ酸配列は、(GGGGS)3であり、他の好ましい実施例方案では、前記リンカーペプチドL3のアミノ酸配列は、(GGGGS)1又は(GGGGS)2又は(GGGGS)4又は(GGGGS)5又は(GGGGA)1又は(GGGGA)2又は(GGGGA)3又は(GGGGA)4又は(GGGGA)5をさらに含む。
【0023】
そのうち、本発明の前記Fc断片は、第二の一本鎖Fvに直接又はリンカーペプチドL4によって接続され、且つ前記リンカーペプチドL4は、1~20個のアミノ酸を含み、且つ好ましくは、Gly(G)、Ser(S)、Ala(A)及びThr(T)のうちの複数のアミノ酸から選択され、より好ましくは、前記リンカーペプチドL4は、Gly(G)とSer(S)から選択され、更に好ましくは、前記リンカーペプチドL4構成は、(GGGGS)nであり、n=1、2、3又は4である。本発明の一つの好ましい実施例では、前記Fc断片は、第二の一本鎖Fvに直接接続される。他の好ましい実施例では、前記Fc断片は、リンカーペプチドL4によって第二の一本鎖Fvに接続され、リンカーペプチドL4アミノ酸配列は、(GGGGS)1又は(GGGGS)2又は(GGGGS)3又は(GGGGS)4を含む。
【0024】
本発明の前記Fc断片は、ヒト免疫グロブリン重鎖定常領域に由来するヒンジ領域、CH2及びCH3ドメインを含み、例えば、いくつかの実施方案では、本発明の前記Fc断片は、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD及びIgEから選択される重鎖定常領域、特に例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4から選択される重鎖定常領域、更に特にヒトIgG1又はIgG4から選択される重鎖定常領域に由来し、且つ、前記Fc断片は、その由来する天然配列と比べて、一つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失又は付加(例えば、多くとも20個、多くとも15個、多くとも10個、又は多くとも5個の置換、欠失又は付加)を有する。
【0025】
前記Fc断片のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:19に示され、それは、その由来する天然配列と比べて、EU番号付けシステムに基づいて決定されるL234A/L235A/N297A/P331S/T250Q/M428Lという6個のアミノ酸の置換を有し、且つEU番号付けシステムに基づいて決定されるK447を欠失又は削除した。EU番号付けシステムは、http://www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.htm.
【0026】
いくつかの好ましい実施方案では、前記Fc断片が変更され、例えば突然変異され、それによって本発明の前記二重特異性抗体分子の性質を修飾する(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、エフェクター細胞機能又は補体機能のうちの一つ又はより多くの特性を変更する)。
【0027】
例えば、本発明によって提供される二重特異性抗体は、変更されるエフェクター機能(例えば低減又は解消)を有するアミノ酸の置換、欠失又は付加のFc変異体を含む。抗体のFc領域は、例えばADCC、ADCP、CDC等の複数の重要なエフェクター機能を媒介する。抗体のFc領域におけるアミノ酸残基を置換することによって、エフェクター配位子(例えばFcγR又は補体C1q)に対する抗体の親和性を変更し、それによりエフェクター機能を変更する方法は、本分野の既知のものである(例えば、EP 388、151A1、US 564、8260、US 562、4821、Natsume Aら、Cancer Res.、68:3863-3872、2008、Idusogie EEら、J.Immunol.、166:2571-2575、2001、Lazar GAら、PNAS、103:4005-4010、2006、Shields RLら、JBC、276:6591-6604、2001、Stavenhagen JBら、Cancer Res.、67:8882-8890、2007、Stavenhagen JBら、Advan.Enzyme.Regul.、48:152-164、2008、Alegre MLら、J.Immunol.、148:3461-3468、1992、及びKaneko Eら、Biodrugs、25:1-11、2011を参照する)。本発明のいくつかの好ましい実施例では、抗体定常領域上のアミノ酸L235(EU番号)に対して修飾を行ってFc受容体相互作用を変更し、例えばL235E又はL235Aである。別の好ましい実施例では、抗体定常領域上のアミノ酸234と235に対して同時に修飾を行い、例えばL234AとL235A(L234A/L235A)(EU番号)である。
【0028】
例えば、本発明によって提供される二重特異性抗体は、延長される循環半減期を有するアミノ酸の置換、欠失又は付加のFc変異体を含んでもよい。研究により、M252Y/S254T/T256E、M428L/N434S又はT250Q/M428Lは、いずれも霊長類動物における抗体の半減期を延長することができることが分かった。新生児受容体(FcRn)との結合親和性が補強されるFc変異体に含まれるより多くの突然変異部位は、中国発明特許CN 201280066663.2、US 2005/0014934A1、WO 97/43316、US 5,869,046、US 5,747,03、WO 96/32478を参照してもよい。本発明のいくつかの好ましい実施例では、抗体定常領域上のアミノ酸M428(EU番号)に対して修飾を行ってFcRn受容体の結合親和性を補強し、例えばM428Lである。別の好ましい実施例では、抗体定常領域上のアミノ酸250と428(EU番号)に対して同時に修飾を行い、例えばT250QとM428L(T250Q/M428L)である。
【0029】
例えば、本発明によって提供される二重特異性抗体は、低減又は解消できるFcグリコシル化を有するアミノ酸の置換、欠失又は付加のFc変異体を含んでもよい。例えば、Fc変異体は、アミノ酸部位297(EU番号)に正常に存在するN-結合グリカンが低減するグリコシル化を含む。N297位グリコシル化は、IgGの活性に大きな影響を与え、該部位グリコシル化が除去される場合、IgG分子CH2の上半分のコンフォメーションに影響を与え、それによりFcγRsに対する結合能力を喪失し、抗体に相関する生物活性に影響を与える。本発明のいくつかの好ましい実施例では、ヒトIgG定常領域上のアミノ酸N297(EU番号)に対して修飾を行って抗体のグリコシル化を避け、例えばN297Aである。
【0030】
例えば、本発明によって提供される二重特異性抗体は、電荷異質性を解消するアミノ酸の置換、欠失又は付加のFc変異体を含んでもよい。エンジニアリング細胞発現プロセス中に発生する複数の翻訳後修飾は、いずれも単クローン性抗体の電荷異質性を引き起こし、IgG抗体C末端のリジンの不均一性は、そのうちの一個の主要な原因であり、重鎖C端のリジンKは、抗体の生産プロセス中に一定の比率の欠失が現れる可能性があり、それにより電荷異質性を引き起こし、それにより抗体の安定性、有效性、免疫原性又は薬代動力学に影響を与える。本発明のいくつかの好ましい実施例では、IgG抗体C末端のK447(EU番号)を除去又は欠失し、抗体の電荷異質性を解消し、発現生成物の均一性を向上させる。
【0031】
野生型ヒトIgG Fc領域が含まれる二重特異性抗体と比べて、本発明によって提供される二重特異性抗体に含まれるFc断片は、ヒトFcγRs(FcγRI、FcγRIIa又はFcγRIIIa)とC1qの少なくとも一つに対して低減する親和性が現れ、減少されるエフェクター細胞機能又は補体機能を有する。例えば、本発明の一つの好ましい実施例では、二重特異性抗体に含まれるFc断片は、ヒトIgG1に由来し、且つL234AとL235A置換(L234A/L235A)を有し、FcγRIに対して低減する結合能力が現れ、なお、本発明によって提供される二重特異性抗体に含まれる前記Fc断片は、他の一つ又は複数の特性(例えば、FcRn受容体との結合能力、抗体グリコシル化又は抗体電荷異質性等)を変更させるアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、本発明の一つの好ましい実施例では、前記Fc断片のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:19に示され、それは、その由来する天然配列と比べて、L234A/L235A/T250Q/N297A/P331S/M428Lのアミノ酸置換を有し、且つK447が欠失又は削除される。
【0032】
本発明の前記二重特異性抗体分子は、二本の同じポリペプチド鎖からFc断片ヒンジ領域の鎖間ジスフィルド結合によって四価ホモ二量体を形成し、各本のポリペプチド鎖は、N端からC端まで順に抗-BCMA scFv、リンカーペプチド、抗-CD3 scFv及びFc断片からなる。
本発明一つの好ましい実施例では、前記二重特異性抗体は、ヒトBCMAとCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、以下の通りである。
(1)SEQ ID NO:20に示される配列、
(2)SEQ ID NO:20に示される配列と比べて、一つ又は複数の置換、欠失又は付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5個の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は
(3)SEQ ID NO:20に示される配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列。
【0033】
いくつかの好ましい実施方案では、(2)に記載の置換は、保存置換である。
【0034】
本発明の第二の方面は、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子を提供する。
【0035】
本発明の好ましい実施例では、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:21に示すようなヌクレオシド配列である。
【0036】
本発明の第三の方面は、上記DNA分子を含むベクターを提供する。
【0037】
本発明の第四の方面は、上記ベクターを含む宿主細胞を提供する。前記宿主細胞は、原核細胞、酵母又は哺乳動物細胞を含み、好ましくは、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、例えばCHO細胞、NS0細胞又は他の哺乳動物細胞であり、さらに好ましくは、CHO細胞である。
【0038】
本発明の第五の方面は、医薬組成物を提供する。前記組成物は、上記二重特異性抗体及び薬用賦形剤及び/又はベクター及び/又は希釈剤を含む。
【0039】
本発明の第六の方面はさらに、本発明の前記二重特異性抗体を調製する方法を提供する。それは、
(a)二重特異性抗体の融合遺伝子を取得し、二重特異性抗体の発現ベクターを構築するステップと、
(b)遺伝子工学方法によって上記発現ベクターを宿主細胞内にトランスフェクトするステップと、
(c)前記二重特異性抗体の生成が許可される条件下で上記宿主細胞を培養するステップと、
(d)生成される前記抗体を分離、精製するステップと、を含む。
【0040】
そのうち、ステップ(a)における前記発現ベクターは、プラスミド、細菌及び病毒のうちの一つ又は複数から選択され、好ましくは、前記発現ベクターは、プラスミドであり、更に好ましくは、前記発現ベクターは、PCDNA3.1であり、
【0041】
そのうち、ステップ(b)は、遺伝子工学方法によって、構築されるベクターを宿主細胞内にトランスフェクトし、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母又は哺乳動物細胞を含み、好ましくは、前記宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、例えばCHO細胞、NS0細胞又は他の哺乳動物細胞であり、さらに好ましくは、CHO細胞である。
【0042】
そのうち、ステップ(d)は、タンパク質A親和性クロマトグラフィとイオン交換、疏水クロマトグラフィ又はモレキュラーシーブ方法を含む通常の免疫グロブリン精製方法によって、前記二重特異性抗体を分離し、精製する。
【0043】
本発明の第七の方面は、前記二重特異性抗体が形質細胞障害から選択され、BCMA発現に関する他のB細胞障害と自己免疫性疾患を治療し又は改善するための薬物における用途を提供する。そのうち、前記形質細胞障害は、多発性骨髄腫、形質細胞腫、形質細胞白血病、マクログロブリン血症、アミロイドーシス、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、孤立性骨形質細胞腫、髓外形質細胞腫、骨硬化性骨髄腫、重鎖病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン病及び鬱滞性多発性骨髄腫を含むが、これらに限定されない。
【0044】
本発明に開示される技術的解決手段は、以下の有益な技術的效果を取得した。
1、本発明によって提供される二重特異性抗体は、弱発現又は低発現BCMAの正常細胞と結合しにくく、非特異的殺傷を減少するが、過発現又は高発現BCMAの細胞に対する結合特異性が著しく低下せず、良好なインビボ殺傷效果を示している。これより、標的抗原が腫瘍細胞にしか発現せず、又は本発明の前記二重特異性抗体が過発現標的抗原の腫瘍細胞のみと特異的に結合している場合、免疫エフェクター細胞の制限性が標的細胞組織内にのみアクティブ化されることにより、前記二重特異性抗体による正常細胞への非特異的殺傷及び細胞因子の随伴放出が最小限に抑えられ、臨床治療におけるその毒副作用を低減させることができることが分かった。
2、本発明によって提供される二重特異性抗体によって選択される抗-CD3 scFvは、微弱な結合親和性(EC50値が50 nMよりも大きく、又は100nMよりも大きく、又は300nMよりも大きく、又は500nMよりも大きい)でエフェクター細胞と特異的に結合し、なお、抗-BCMA scFvとFcの間に埋め込まれており、且つそのN端に位置するリンカーペプチドL3に含まれるCTP剛性ペプチドとそのC端に位置するFc断片は、いずれも抗-CD3 scFvの抗原結合ドメインを部分的に「被覆」又は「遮蔽」し、このような立体効果は、それをより微弱な結合親和性(例えば1μMよりも大きい)でCD3と結合させ、これは、それがT細胞に対する活性化刺激能力を弱めるため、細胞因子の過度放出を制限するため、より高い安全性を有する。
3、本発明によって提供される二重特異性抗体は、二価抗-CD3 scFvを創造的に採用し、これは、前記二重特異性抗体が配置設計上で従来の技術で一般的に採用される異種ダイマー型(含まれる抗-CD3 scFvが一価である)の非対称構造を回避するため、重鎖間ミスマッチの問題も存在せず、下流精製ステップを簡略化し、且つ意外に、インビト細胞結合試験内に抗-CD3 scFvとT細胞との非特異的結合が観察されておらず、且つ細胞アクティブ化程度(IL-2等の細胞因子の放出)が安全、効果的な範囲内に制御され、すなわち本発明によって採用される二価抗-CD3 scFv構造は、T細胞の過剰活性化を非抗原依存的に誘導することを引き起こしておらず、二価抗-CD3ドメインを含む他の二重特異性抗体に対して、T細胞が制御不能に過剰アクティブ化されることは、一般的であるため、抗-CD3二重特異性抗体が設計される時に、一般的には二価抗-CD3構造の導入を避ける。
4、本発明によって提供される二重特異性抗体に含まれる修飾されるFc断片は、FcγR結合能力を有せず、FcγRによって媒介されるT細胞の全身的なアクティブ化を避けるため、免疫エフェクター細胞が標的細胞組織内のみに制限的にアクティブ化されることを許可する。
5、本発明によって提供される二重特異性抗体は、ホモ二量体型であり、重鎖及び軽鎖ミスマッチの問題が存在せず、下流生産プロセスが安定的で、精製ステップが簡単で効率的で、発現生成物が均一で、且つその物理化学特性とインビボ安定性がいずれも著しく向上する。
【0045】
【0046】
本発明において、特に説明されていない限り、本明細書で使用される科学t技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有する。本発明で使用される抗体又はその断片は、本分野の既知の通常技術、例えばアミノ酸欠失、挿入、置換、増加、及び/又は組み換え及び/又は他の修飾方法を単独で又は組み合わせて使用してさらに修飾することができる。抗体のアミノ酸配列に基づいてそのDNA配列内にこのような修飾を導入する方法は、当業者にとって周知のことであり、例えば、Sambrook、分子クローン:実験マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)N.Y.である。言及された修飾は、好ましくは核酸レベルで行われる。また、本発明をよりよく理解するために、以下では、関連用語の定義と解釈を提供する。
【0047】
「BCMA」は、B細胞成熟抗原であり、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバーに属し、成熟Bリンパ球内に優先的に発現し、且つ形質芽細胞(すなわち、形質細胞前駆体)及び形質細胞の表面に発現する。脾臓、リンパ節、胸腺、副腎及び肝臓内でいずれもBCMAのRNAを検出でき、複数のB細胞株が成熟した後、そのBCMA mRNAのレベルも増加する。BCMAは、白血病、リンパ腫(例えばホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、自己免疫性疾患(例えば全身性エリテマトーデス)等の複数の疾患に関係があり、このため、相関B細胞疾患に関する潜在的な標的とすることができる。BCMA標的点に対する適応症は、他の従来の技術内に発見された及び将来に発見される相関疾患又は病症をさらに含む。該用語は、BCMAの任意の変異体、アイソフォーム、及び種ホモログをさらに含み、それは、細胞-腫瘍細胞を含む-自然に発現され、又はBCMA遺伝子又はcDNAでトランスフェクトされる細胞によって発現される。
【0048】
CD3分子は、T細胞膜上の重要な分化抗原であり、成熟T細胞の特徴的なマーカーであり、6本のペプチド鎖からなり、非共有結合でT細胞抗原受容体(TCR)とTCR-CD3複合体を構成し、TCR-CD3複合体の細胞基質内の組み立てに関与するだけでなく、さらに各ポリペプチド鎖細胞基質領域の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(Immunoreceptor Tyrosine-based Activation Motif、ITAM)によって抗原刺激信号を伝達する。CD3分子の主要な機能は、TCR構造を安定化し、T細胞活性化信号を伝達し、TCRが抗原を特異的に認識し且つ結合した後、CD3が信号をT細胞基質内に形質導入し、T細胞活性化を誘導する第一の信号とすることに参与し、T細胞抗原認識と免疫応答生成プロセスにおいて極めて重要な役割を有することである。
【0049】
「CD3」とは、T細胞受容体複合体の一部として、三つの異なる鎖CD3ε、CD3δとCD3γからなるものである。CD3がT細胞上で例えば抗CD3抗体による固定化作用によって生成した集中(clustering)によってもたされるT細胞の活性化は、T細胞受容体によって媒介される活性化と類似しているが、TCRクローンの特異性に依存しない。ほとんどの抗CD3抗体は、CD3ε鎖を認識する。本発明のT細胞表面受容体CD3を特異的に認識する第二の機能ドメインは、CD3抗体を特異的に認識できる限り、具体的な制限を受けず、例えば、以下の特許に言及されたCD3抗体であるが、これらに限定されない。US7,994,289、US6,750,325、US6,706,265、US5,968,509、US8,076,459、US7,728,114、US20100183615。好ましくは、本発明で使用される抗ヒトCD3抗体は、カニクイザル及び/又はアカゲザルと交差反応性を有し、例えば、WO 2016130726、US 20050176028、WO 2007042261又はWO 2008119565であるが、これらに限定されない特許中に言及された抗ヒトCD3抗体である。該用語は、任意のCD3変異体、アイソフォーム、誘導体及び種ホモログをさらに含み、それは、細胞によって自然に発現され、又は前述の鎖をコードする遺伝子又はcDNAでトランスフェクトされる細胞に発現される。
【0050】
「抗体」という用語は、具体的には、単クローン性抗体、ポリクロナール抗体及び抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体とヒト化抗体を含む。「抗原結合断片」は、任意の既知の技術、例えば酵素溶解、ペプチド合成及び組み換え技術によって提供される断片を含む。いくつかの抗原結合断片は、親抗体分子の抗原結合特異性を保持する完全な抗体部分からなる。例えば、抗原結合断片は、既知の特定抗原と結合することが知られている抗体の少なくとも一つの可変領域(重鎖又は軽鎖可変領域)又は一つ又は複数のCDRを含んでもよい。適正な抗原結合断片の実例は、二重特異性抗体と一本鎖分子及びFab、F(ab’)2、Fc、FabcとFv分子、一本鎖(Sc)抗体、単独の抗体軽鎖、単独の抗体重鎖、抗体鎖又はCDRと他のタンパク質との間のキメラ融合物、タンパク質骨格、重鎖単体又はダイマー、軽鎖単体又はダイマー、一つの重鎖と一つの軽鎖からなるダイマー、VL、VH、CL及びCH1ドメインによるもの、又はWO2007059782に記載の一価抗体、ヒンジ領域上のジスフィルド結合によって接続される二つのFab断片を含む二価断片、基本的にVHとCH1ドメインからなるFd断片、基本的に抗体シングルアームのVLとVHドメインからなるFv断片、dAb断片(Wardら、Nature、1989、341:544-54)、基本的にVHドメインからなり、ドメイン抗体とも呼ばれるもの(Holtら、Trends Biotechnol.2003、21(11):484-90)、又はナノ体(Revetsら、Expert Opin Biol Ther.2005 Jan、5(1):111-24)、分離の相補性決定領域(CDR)等を含むが、これらに限定されない。すべての抗体アイソタイプは、抗原結合断片を生成するために用いることができる。また、抗原結合断片は、非抗体タンパク質フレームワークを含んでもよく、それは、ポリペプチド断片を既定の関心のある抗原(例えばタンパク質骨格)の親和性が付与される配向にうまく組み込むことができる。完全抗体の酵素的切断又は化学的切断によって、抗原結合断片を組換えて生成し又は生成することができる。「抗体又はその抗原結合断片」という用語は、既定の抗原結合断片が、フレーズに言及された抗体の一つ又は複数のアミノ酸断片に組み込まれていることを示すために用いることができる。
【0051】
「超可変領域」又は「CDR領域」又は「相補性決定領域」という用語は、抗原結合を担当する抗体アミノ酸残基であり、非連続的なアミノ酸配列である。CDR領域配列は、IMGT、Kabat、ChothiaとAbM方法で定義されてもよく、又は当分野でよく知られている任意のCDR領域の配列によって決定される方法によって同定される可変領域内のアミノ酸残基である。例えば、超可変領域は、以下のアミノ酸残基を含む。配列対比によって画定される「相補性決定領域」又は「CDR」に由来するアミノ酸残基であり、例えば、軽鎖可変ドメインの24-34(L1)、50-56(L2)と89-97(L3)位の残基と重鎖可変ドメインの31-35(H1)、50-65(H2)と95-102(H3)位の残基、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest(免疫目的物のタンパク質配列)、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.を参照する。及び/又は構造に基づいて画定される「超可変ループ」(HVL)に由来する残基であり、例えば、軽鎖可変ドメインの26-32(L1)、50-52(L2)と91-96(L3)位の残基と重鎖可変ドメインの26-32(H1)、53-55(H2)と96-101(H3)位の残基、ChothiaとLeskl、J.Mol.Biol.、196:901-917、1987を参照する。「フレームワーク」残基又は「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。いくつかの実施方案では、本発明の抗体又はその抗原結合断片に含まれるCDRは、好ましくはKabat、Chothia又はIMGT番号付けシステムによって決定される。当業者は、配列自体を超える任意の実験データに依存することなく、各種のシステムを任意の可変ドメイン配列に明示的に付与することができる。例えば、既定抗体のKabat残基の番号付けシステム方式は、抗体配列と各種の「標準」番号配列との相同性領域を対比することによって決定することができる。本明細書によって提供される配列の番号に基づき、配列リストにおける任意の可変領域配列の番号付けシステム方式が完全に当業者の通常技術の範囲内にあることを決定する。
【0052】
「一本鎖Fv抗体」(又は「scFv抗体」)という用語は、抗体のVHとVLドメインを含む抗体断片であり、リンカー(linker)によって接続される重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)の組み換えタンパク質であり、リンかーは、これらの二つのドメインを架橋して抗原結合部位を形成させ、リンカー配列は、一般的には可撓性ペプチドからなり、例えば、G2(GGGGS)3であるがそれに限られない。scFvの大きさは、一般的には一つの完全な抗体の1/6である。一本鎖抗体は、好ましくは一つのヌクレオシド鎖によってコードされる一本のアミノ酸鎖配列である。scFv総説に対して、Pluckthun (1994)The Pharmacology of Monoclonal Antibodies(単クローン性抗体薬理学)、第113巻、RosenburgとMoore編集長、Springer-Verlag、New York、第269-315ページを参照してもよい。国際特許出願公開番号WO 88/01649と米国特許第4,946,778号及び第5,260,203号を参照してもよい。
【0053】
「Fab断片」という用語は、一本の軽鎖と一本の重鎖のCH1及び可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスフィルド結合を形成することができない。「Fab抗体」の大きさは、完全な抗体の1/3であり、それは、一つの抗原結合部位のみを含む。
【0054】
「Fab’断片」という用語は、一本の軽鎖と一本の重鎖のVHドメインとCH1ドメイン及びCH1とCH2ドメインとの間の定常領域部分を含む。
【0055】
「F(ab’)2断片」という用語は、二本の軽鎖と二本の重鎖のVHドメインとCH1ドメイン及びCH1とCH2ドメインとの間の定常領域部分を含み、それによって二本の重鎖の間に鎖間ジスフィルド結合を形成する。このため、F(ab′)2断片は、二本の重鎖間のジスフィルド結合によって一緒に保持される二個のFab′断片からなる。
【0056】
「Fc」領域という用語は、抗体重鎖定常領域断片であり、それは、少なくともヒンジ領域、CH2及びCH3ドメインを含む。
【0057】
「Fv領域」という用語は、重鎖と軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが、定常領域が欠けており、は、完全な抗原認識と結合部位を含む最小断片である。
【0058】
「Fd断片」という用語は、一本の重鎖のCH1及び可変領域からなり、Fab断片の軽鎖を除去した後に残った重鎖部分である。
【0059】
「ジスフィルド結合安定性タンパク(dsFv)」という用語は、VHとVL領域に一つのシステイン突然変異点をそれぞれ導入し、それによりVHとVLとの間にジスフィルド結合を形成して構造安定性を実現する。
【0060】
「リンカーペプチド」という用語は、二つのポリペプチドを接続するペプチドであり、そのうち、前記リンカーペプチドは、二つの免疫グロブリン可変領域又は一つの可変領域であってもよい。リンカーペプチドの長さは、0-30個のアミノ酸又は0-40個のアミノ酸であってもよい。いくつかの実施方案では、リンカーペプチドは、0-25、0-20又は0-18個のアミノ酸長であってもよい。いくつかの実施方案では、リンカーペプチドは、14、13、12、11、10、9、8、7、6又は5個のアミノ酸長以下のペプチドであってもよい。他の実施方案では、リンカーペプチドは、0-25、5-15、10-20、15-20、20-30又は30-40個のアミノ酸長であってもよい。他の実施方案では、リンカーペプチドは、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個のアミノ酸長であってもよい。リンカーペプチドは、当業者が既知のものである。リンカーペプチドの調製は、本分野の任意の方法を採用してもよい。例えば、リンカーペプチドは、合成由来のものであってもよい。
【0061】
「重鎖定常領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。重鎖定常領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部ヒンジ領域、中間ヒンジ領域、及び/又は下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はその変異体又は断片のうちの少なくとも一つを含む。例えば、本出願で使用される抗原結合ポリペプチドは、CH1ドメインを有するポリペプチド鎖、CH1ドメイン、少なくとも一部のヒンジドメイン及びCH2ドメインを有するポリペプチド、CH1ドメインとCH3ドメインを有するポリペプチド鎖、CH1ドメイン、少なくとも一部のヒンジドメイン及びCH3ドメインを有するポリペプチド鎖、又はCH1ドメイン、少なくとも一部のヒンジ構造、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを有するポリペプチド鎖を含んでもよい。別の実施例では、本出願のポリペプチドは、CH3ドメインを有するポリペプチド鎖を含む。また、本出願で使用される抗体は、少なくとも一部のCH2ドメイン(例えば、全て又は一部のCH2ドメイン)が欠ける可能性がある。前述したように、当業者が理解すべきことは、重鎖定常領域は、変更される可能性があり、それによってそれらは、アミノ酸配列で、自然に存在する免疫グロブリン分子と異なる。
【0062】
「軽鎖定常領域」という用語は、抗体軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記軽鎖定常領域は、定常kappaドメインと定常lambdaドメインのうちの少なくとも一つを含む。
【0063】
「VHドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のアミノ基末端可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖の第一の(ほとんどがアミノ基末端)定常領域を含む。CH1ドメインは、VHドメインに近接し且つ免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ基末端である。
【0064】
「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに接続する重鎖分子の部分を含む。該ヒンジ領域は、約25個の残基を含み且つ可撓性のものであり、それにより二つのN-末端抗原結合領域を独立して移動させる。ヒンジ領域は、上部、中部、及び下部ヒンジドメインという三つの異なるドメインに分けられてもよい(Roux KHら、J.Immunol.、161:4083、1998)。
【0065】
「ジスフィルド結合」という用語は、二つの硫原子の間に形成される共有結合を含む。アミノ酸システインは、チオール基を含み、該チオール基は、第二のチオール基とジスフィルド結合又は架橋を形成することができる。ほとんどの自然に存在するIgG分子では、CH1とCK領域は、ジスフィルド結合によって接続され且つ二つの重鎖は、二つのジスフィルド結合によって接続され、Kabat番号付けシステムの使用に対応する239と242箇所(位置226又は229、EU番号付けシステム)において接続される。
【0066】
「結合」は、抗原上の特定表位とそれに対応する抗体との間の親和性相互作用を定義し、一般的には「特異性認識」と理解されてもよい。「特異性認識」の意味は、本発明の二重特異性抗体が標的抗原以外の任意のポリペプチドと交差反応せず、又は基本的に交差反応しないこと、特異性の程度が免疫学技術によって判断されてもよく、免疫ブロット、免疫親和性クロマトグラフィ、フローサイトメトリ等を含むが、これらに限定されないことである。本発明において、特異性認識は、好ましくはフローサイトメトリによって決定され、具体的な場合に特異性認識の標準は、当業者がそれが把握している本分野の常識によって判断されてもよい。
【0067】
「二重特異性抗体」という用語は、本発明の二重特異性抗体であり、例えば抗Her2抗体又はその抗原結合断片は、誘導化し又は別の機能性分子、例えば別のペプチド又はタンパク質(例えばTAA、細胞因子及び細胞表面受容体)に接続して少なくとも二つの異なる結合部位又は標的分子と結合する二重特異性分子を生成する。本発明の二重特異性分子を作成するために、本発明の抗体を一つ又は複数の他の結合分子、例えば別の抗体、抗体断片、ペプチド又は結合模擬物に機能的に接続し(例えば化学カップリング、遺伝子融合、非共价結合又は他の方式によって)、それにより二重特異性分子を生成することができる。例えば、「二重特異性抗体」は、得られる抗体が二個の異なる抗原を認識するように、二つの可変ドメイン又はscFv単位を含むことである。本分野の既知の二重特異性抗体の多くの異なる形式と用途(Chames Pら、Curr.Opin.Drug Disc.Dev.、12:.276、2009、Spiess Cら、Mol.Immunol.、67:95-106、2015)。
【0068】
「hCG-βカルボキシ末端ペプチド(CTP)」という用語は、ヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)のβ-サブユニットカルボキシ末端に由来する一セグメントの短ペプチドである。生殖に相関する四種類のポリペプチド類ホルモン卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び絨毛ゴナドトロピン(hCG)は、同じα-サブユニットとそれぞれ特異的なβ-サブユニットを含む。他の三種類のホルモンと比べて、hCGのインビボ半減期が明らかに延長しており、それは、主にそのβ-サブユニット上に特有のカルボキシ末端ペプチド(CTP)に由来する。CTPは、37個のアミノ酸残基を含み、それは、4つのO-グリコシル化部位を有し、糖側鎖末端は、シアル酸残基である。マイナス帯電で、高度にシアリル化するCTPは、腎臓のそれに対する除去作用に抵抗し、それによりタンパクのインビボの半減期を延長することができる(Fares FAら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4304-4308、1992)。
【0069】
「グリコシル化」という用語は、オリゴ糖(接続される2つ以上の単糖、例えば接続される2個から約12個の単糖を含む炭水化合物)が付着して糖タンパク質を形成することを意味する。オリゴ糖側鎖は、一般的にはN-又はO-接続によって糖タンパクの骨格に接続される。本明細書に開示される抗体のオリゴ糖は、一般的には、N-接続のオリゴ糖として、Fc領域のCH2ドメインに接続される。「N-接続のグリコシル化」は、炭水化合物類の部分が糖タンパク質鎖のアスパラギン残基に接続されることである。例えば、当業者は、マウスIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3及びヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgDのCH2ドメインにおける、残基297にN-接続のグリコシル化に役立つ各単一部位を認識することができる。
【0070】
ホモ抗体は、他方で、本発明の抗体に含まれる重鎖と軽鎖可変領域に含まれるアミノ酸配列は、本明細書に記載の好ましい抗体のアミノ酸配列と相同性であり、且つその中に記載の抗体は、本発明に記載の、例えばHer2×CD3二重特異性抗体の所望の機能的特性を保持している。
【0071】
保存修飾を有する抗体は、「保存修飾」という用語は、アミノ酸修飾が該アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に著しく影響せず又は変更しないことを意味する。このような保存修飾は、アミノ酸の置換、付加及び欠失を含む。修飾は、本分野の既知の標準技術、例えば定点突然変異誘発とPCR媒介の利点によって、本発明の抗体内に導入することができる。保存アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置換されることを意味する。本分野では、類似する側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーについて、詳しく説明されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。従って、同一の側鎖ファミリーに由来の他のアミノ酸残基で本発明の抗体のCDR領域における一つ又は複数のアミノ酸残基を置換することができる。
【0072】
新生児受容体(FcRn)との結合親和性が変更するFc変異体は、ここで使用される「FcRn」は、IgG抗体Fc領域に結合する少なくとも一部がFcRn遺伝子によってコードされるタンパクである。FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、サルを含むが、これらに限定されない任意の生物に由来することができる。機能性FcRnタンパクは、重鎖と軽鎖とよく呼ばれる二本のポリペプチドを含み、軽鎖は、β-2-ミクログロブリンであり、重鎖は、FcRn遺伝子によってコードされる。
【0073】
本発明は、FcRnへの結合が調節された抗体(調節は、結合の増加及び低減を含む)に関する。例えば、ある場合に、増加する結合は、細胞が抗体を再循環させ、且つそれによって、例えば治療抗体の半減期を延長する。ある場合、FcRn結合を低減させることは、必要にかなうものであり、例えば放射線マーカーを含む診断抗体又は治療抗体として使用される。また、FcRnへの結合が増加を示すとともに、他のFc受容体、例えばFcγRsへの結合が変更される抗体は、本発明に用いることができる。
【0074】
本出願は、FcRnへの結合力を調節するアミノ酸修飾を含む抗体に関する。特別な意味を有するのは、比較的に低いpHで、FcRnへの結合親和性が増加を示し、より高いpHで、結合が、基本的に変更される、Fc領域を最小限に含む抗体又はその機能的変異体を示さない。
【0075】
新生児受容体(FcRn)との結合親和性が補強されるFc変異体は、IgGの血漿半減期がFcRnとの結合に依存し、一般的にはpH6.0で結合し、pH7.4(血漿pH)で解離する。両者の結合部位への検討により、IgG上のFcRnと結合する部位をpH6.0で結合能が増加するように改造する。FcRn結合に重要なヒトFcγドメインのいくつかの残基の突然変異は、血清半減期を増加させることができることが証明された。T250、M252、S254、T256、V308、E380、M428及びN434(EU番号)における突然変異は、FcRn結合親和性を増加させ又は低減させることができることが報告されている(Roopenian DCら、Nat.Rev.Immunol.、7:715-725、2007)。韓国特許番号KR10-1027427は、増加するFcRn結合親和性を有するトラスツズマブ(ハーセプチン、Genentech)変異体を開示し、且つこれらの変異体は、257C、257M、257L、257N、257Y、279Q、279Y、308F及び308Yから選択される一つ又は複数のアミノ酸修飾を含む。韓国特許公開番号KR 2010-0099179は、ベバシズマブ(アバスチン、Genentech)変異体を提供し、且つこれらの変異体は、N434S、M252Y/M428L、M252Y/N434S及びM428L/N434Sに含まれるアミノ酸修飾によって増加するインビボ半減期を示す。なお、HintonらもT250QとM428L2の変異体がそれぞれFcRnとの結合を3と7倍増加させることを発見した。同時に2つの部位を突然変異する場合、結合が28倍増加する。アカゲザルのインビボで、M428L又はT250QM/428L突然変異体は、血漿半減期が2倍増加することを示す(Hinton PRら、J.Immunol.、176:346-356、2006)。より多くの、新生児受容体(FcRn)との結合親和性が補強されるFc変異体に含まれる突然変異部位は、中国発明特許CN 201280066663.2を参照してもよい。なお、研究により、五種類のヒト化抗体のFcセグメントに対してT250Q/M428L突然変異を行うことは、FcとFcRnとの相互作用を改善するだけでなく、さらにその後のインビボ薬物動態学試験において、皮下注射投薬により、Fc突然変異抗体が野生型抗体と比べて薬物動態学パラメータが改善され、例えばインビボ暴露量の増加、除去率の低減、皮下生体利用性の向上が発見された(Datta-Mannan Aら、MAbs.Taylor&Francis、4:267-273、2012)。
【0076】
本発明の抗体とFcRnとの親和性の補強を引き起こすことができる他の突然変異点は、226、227、230、233、239、241、243、246、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、290、291、292、294、298、299、301、302、303、305、307、309、311、315、317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、382、383、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、433、438、439、440、443、444、445、446のアミノ酸修飾を含むが、これらに限定されず、そのうち、Fc領域においてアミノ酸の番号は、KabatにおけるEUインデックスの番号である。
【0077】
FcRnとの結合親和性が補強されるFc変異体は、他のすべての公知のアミノ酸修飾部位及びまだ発見されていないアミノ酸修飾部位をさらに含む。
【0078】
選択可能な実施形態では、IgG変異体を最適化してそれに増加し又は低減するFcRn親和性、及び増加し又は低減するヒトFcγRを備えさせ、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa及びそれらの対立遺伝子変異を含むFcγRIIIb親和性を含むが、これらに限定されない。
【0079】
優先的に、IgG変異体のFc配位子特異性は、その治療的応用を決定する。所定IgG変異体が治療するための目的は、標的抗原のエピトープ又は形式、及び治療対象の疾患又は適応症に依存する。ほとんどの標的と適応症にとって、補強されるFcRn結合は、より好ましく、補強されるFcRn結合は、血清半減期の延長を引き起こすことができるためである。比較的に長い血清半減期は、治療時に比較的に低い頻度と剤量で投薬することを許可する。反復投薬を必要とする適応症を反応させるために該治療剤を適用する場合、このような特性は、特に好ましい。いくつかの標的と適応症にとって、変異体Fcが増加する除去又は低減する血清半減期を有することが必要な場合、例えば、Fcポリペプチドがイメージング剤又は放射線治療剤として使用される場合、低減するFcRn親和性は、特に好ましい。
【0080】
半減期を延長するFc変更は、本明細書に記載の「半減期を延長するFc変更」とは、同じFcポリペプチドを含むが、変更された類似するFcタンパク質を含まない半減期と比べて、Fcポリペプチド鎖において、変更されたFcポリペプチド鎖のタンパク質を含むインビボ半減期を延長する変更である。前記変更は、二重特異性抗体の一部とするFcポリペプチド鎖に含まれてもよい。変更T250Q、M252Y、S254T及びT256E(第250位のスレオニンがグルタミンに変更され、第252位のメチオニンがチロシンに変更され、第254位のセリンがスレオニンに変更され、第256位のスレオニンがグルタミン酸に変更され、EU番号に基づいて番号を付ける)は、半減期を延長するFc変更であり、且つ連合し、単独し又は任意に組み合わせて使用することができる。これらの変更及び他のいくつかの変更は、米国特許第7,083,784号に詳細に記述されている。米国特許第7,083,784号は、このような変更を引用の方式で本明細書に組み込む。
【0081】
同様に、M428LとN434Sは、半減期を延長するFc変更であり、且つ連合し、単独し又は任意に組み合わせて使用することができる。これらの変更及び他のいくつかの変更は、米国特許出願公開第2010/0234575号と米国特許第7,670,600号に詳細に記述されている。米国特許出願公開第2010/0234575号と米国特許第7,670,600号に記述されているこのような変更される部分は、引用の方式で本明細書に組み込まれる。
【0082】
なお、本明細書の意味で、250、251、252、259、307、308、332、378、380、428、430、434、436の部位のうちの一つでの任意の置換は、半減期を延長するFc変更であると考えられてもよい。これらの変更におけるそれぞれ又はこれらの変更の組み合わせは、本明細書に記載の二重特異性抗体の半減期を延長するために用いることができる。半減期を延長するために用いることができる他の変更は、2012年12月17日に提出された国際出願PCT/US2012/070146(公開番号:WO 2013/096221)に詳細に記述されている。この出願に記述されている上記変更される部分は、引用の形式で本明細書に組み込まれる。
【0083】
半減期を延長するFc変更は、公知の技術及び将来に発見される可能性のある部位及びその修飾をさらに含む。
【0084】
Fcは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ及びサルを含むが、これらに限定されない任意の生物に由来することができる。
【0085】
二重特異性抗体をコードする核酸、本明細書に記述されている治療剤と抗体又は抗体断片を使用し、当業者は、機能的に等価な核酸(例えば、配列が異なるり、コードが同じエフェクター部分又は抗体配列の核酸)を含む複数のクローンを容易に構築することができる。このため、本発明は、二重特異性抗体と、抗体、抗体断片と抱合体及びそれらの融合タンパク質をコードする核酸と、核酸変異体と、誘導体と、種ホモログとを提供する。
【0086】
本分野では、VH、VL、ヒンジ、CH1、CH2、CH3、及びCH4領域を含む免疫グロブリン領域をコードする核酸配列の多くが既知されている。例えば、Kabatら.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、Public Health Service N.I.H.、Bethesda、MD、1991を参照する。本明細書で提供される教示に基づき、当業者は、本発明の二重特異性抗体をコードする核酸配列を構築するために、前記核酸配列及び/又は本分野の既知の他の核酸配列を結合することができる。本発明の二重特異性抗体をコードする例示的なヌクレオチドは、SEQ ID NO:21を含む。
【0087】
なお、本明細書と他の場所で提供されるアミノ酸配列及び本分野の常識に基づき、当業者は、本発明の二重特異性抗体をコードする核酸配列を決定することができる。従来の特定のアミノ酸配列をコードするクローンDNA断片を製造する方法に加えて、現在では、DNA 2.0(Menlo Park、CA、USA)とBlue Heron(Bothell、WA、USA)などのような会社は、一般的には化学合成を採用して任意の所望の順序で配列される遺伝子サイズのDNAを製造し、それにより前記DNAを製造するプロセスを簡略化する。
【0088】
二重特異性抗体を調製する方法は、本分野の任意の既知の方法を採用して本発明の二重特異性抗体を調製することができる。二重特異性抗体を初期に構築する方法は、化学架橋法又はヘテロ接合ハイブリドーマ又は四価体腫瘍法を有する(例えば、Staerz UDら、Nature、314:628-31、1985、Milstein Cら、Nature、305:537-540、1983、Karpovsky Bら、J.Exp.Med.、160:1686-1701、1984)。化学カップリング法は、2つの異なる単クローン性抗体を化学カップリングの方式で接続し、二重特異性単クローン性抗体を調製する。例えば、二種類の異なる単クローン性抗体の化学的結合であり、又は例えば、二つのFab断片のような二つの抗体断片の化学的結合である。ヘテロ接合-ハイブリドーマ法は、細胞ハイブリッド法又は三元ハイブリドーマの方式によって二重特異性単クローン性抗体を生成し、これらの細胞ハイブリドーマ又は三元ハイブリドーマは、確立されたハイブリドーマによって融合され、又は確立されたハイブリドーマと、マウスから得られたリンパ球とを融合させて得られる。これらの技術は、BiAbの製造に用いられるが、抗原結合部位を含む異なる組み合わせの混合集団の生成、タンパク質発現方面の困難さ、ターゲットBiAbの精製の必要性、低収率、製造費用の高さなどのような様々な発生する問題は、このような複合体の使用を困難にしている。
【0089】
最近の方法は、遺伝子工学によって改造された構築物を利用し、それは、不必要な副生成物を除去するために完全に精製することなく、単一のBiAbの均質な生成物を生成することができる。このような構築物は、タンデムscFv、二抗体、タンデム二抗体、二可変ドメイン抗体及びCh1/Ckドメイン又はDNLTMのようなプリミティブを使用するヘテロ二量体を含む(Chames&Baty、Curr.Opin.Drug.Discov.Devel.、12:276-83、2009、Chames&Baty、mAbs、1:539-47)。関連する精製技術は、公知である。
【0090】
さらに単一リンパ球抗体方法を使用して、特異性抗体を生成するために選択される単一リンパ球から生成される免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングして発現させることにより、抗体を生成することができ、例えばBabcook Jら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.93:7843-7848、1996、WO 92/02551、WO 2004/051268とWO 2004/106377に記載の方法である。
【0091】
例えば、宿主を免疫するための、又はパニングするための、例えばファージディスプレイ(又は酵母細胞又は細菌細胞の表面での発現)のための抗体を生成するための抗原ポリペプチドは、本分野でよく知られている方法によって、発現系を含む遺伝工学で改造された宿主細胞から調製されてもよく、又は天然生物由来から回収されてもよい。例えば、二重特異性抗体の一本又は二本のポリペプチド鎖をコードする核酸は、複数の既知の方法(例えば、転化、トランスフェクト、エレクトロポレーション、核酸で被覆される微粒子による衝撃など)によって培養される宿主細胞に導入することができる。いくつかの実施方案では、二重特異性抗体をコードする核酸は、宿主細胞に導入される前に、宿主細胞内での発現に適するベクターに挿入されてもよい。典型的な前記ベクターは、挿入される核酸をRNAとタンパク質レベルで発現することを可能にする配列エレメントを含んでもよい。
【0092】
前記ベクターは、本分野で公知であり、且つ多くは、商業的に入手可能である。前記核酸を含む宿主細胞は、細胞に該核酸を発現させることができる条件下で培養することができ、且つ得られるBiAbは、細胞集団又は培地から収集することができる。選択的に、BiAbは、インビボで生産されてもよく、例えば、植物の葉の中(例えばScheller Jら、Nature Biotechnol.、19:573-577、2001とそのうちに引用される参照文献を参照する)、鳥の卵の中(例えばZhu Lら、Nature Biotechnol.、23:1159-1169、2005とそのうちに引用される参照文献を参照する)、又は哺乳動物の乳の中(例えばLaible Gら、Reprod.Fertil.Dev.、25:315、2012を参照する)。
【0093】
使用可能な多種の宿主細胞は、例えば、原核細胞、真核細胞、細菌細胞(例えば大腸菌又はバシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus))、真菌細胞(例えば出芽酵母又はピキア酵母)、昆虫細胞(例えば草地ヨトウ細胞を含む鱗翅目昆虫細胞)又は哺乳動物細胞(例えば中国ハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、小ハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞、Hela細胞、ヒト肝細胞癌細胞又は293細胞など)を含む。
【0094】
二重特異性抗体は、二重特異性抗原の免疫原性製剤によって、適正な被験体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、又は他の哺乳動物であり、トランスジェニックとノックアウトされた上記他の哺乳動物を含む)を免疫することによって調製することができる。適正な免疫原性製剤は、例えば化学的に合成され又は組換え発現される二重特異性抗原であってもよい。前記製剤はアジュバント、例えばフロイント完全アジュバント又は不完全アジュバント又は類似する免疫刺激化合物をさらに含んでもよい。且つ、抗体を調製するために用いられる場合、特にインビボ免疫の方法で用いられる場合、本発明の二重特異性抗原は、単独で使用されてもよく、又は好ましくは、ベクタータンパク質とのコンジュゲートとして使用されてもよい。このような抗体応答を補強する方法は、本分野において公知である。必要な抗体に応じて、異なる動物宿主を用いてインビボ免疫を行うことができる。有用な内因性抗原を自己発現する宿主を用いてもよく、または有用な内因性抗原を欠損させた宿主を用いてもよい。
【0095】
二重特異性抗体は、以上に記載の方法を組み合わせることによって調製することができる。
【0096】
本発明の前記二重特異性抗体分子は、各標的についての単クローン性抗体(MAb)とすることができる。いくつかの実施方案では、抗体は、キメラ、ヒト化又は完全ヒトである。
【0097】
単クローン性抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler&Milstein、Nature、256:495-497、1975)、三源ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor Dら、Immunology Today、4:72、1983)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Cole SPCら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、pp77-96、Alan R Liss、Inc.、1985)のような本分野の既知の任意の方法によって調製することができる。
【0098】
本発明の二重特異性抗体又はその部分は、通常の免疫学的分析方法、例えば、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、放射免疫分析(RIA)又は組織免疫組織化学によって、これらの抗原のいずれか一つ又はすべてを(例えば、血清又は血漿のような生体サンプルの中で)検出するために用いることができる。本発明は、生体サンプルにおける抗原を検出する方法を提供し、該方法は、前記生体試料を、前記抗原を特異的に認識できる本発明の二重特異性抗体、又は抗原結合断片と接触させ、且つ抗原に結合する抗体又はその部分、又は非結合抗体又はその部分を検出することにより、前記生体サンプルにおける前記抗原を検出することを含む。前記抗体は、検出可能な物質で直接又は間接的に マークすることによって、結合又は非結合抗体を検出しやすい。適正な検出可能な物質は、複数の酵素、修復基、蛍光物質、発光物質及び放射性物質を含む。適正な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼを含み、適正な修復基複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含み、適正な蛍光物質の例は、7-ヒドロキシクマリン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアン酸塩、アルカリ性シャリジンB、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、スルファニルクロリド又はフィコエリシンを含み、発光物質の例は、3-アミノフタルイル環状ヒドラジンを含み、適正な放射性物質の例は、I125、I131、35S又は3Hを含む。
【0099】
医薬組成物は、本発明の二重特異性抗体、又は本出願の抗体をコードする核酸又はポリヌクレオチドは、医薬組成物又は無菌組成物の調製、例えば、二重特異性抗体と医薬的に許容可能なベクター、賦形剤又は安定剤との混合に応用することができる。医薬組成物は、一つ又は組み合わせの(例えば二つ又はより多く異なる)本発明の二重特異性抗体を含んでもよい。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合する相補的活性を有する抗体又は抗体断片(又は免疫抱合体)の組み合わせを含んでもよい。治療と診断剤の製剤は、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水性溶液又は懸濁液の形式で、薬学的に許容可能なベクター、賦形剤又は安定剤と混合することによって調製することができる。
【0100】
「薬学的に許容可能な」という用語は、分子本体、分子断片、又は組成物が動物又はヒトに適切に投与される時、それらは、不利な、アレルギー的な、又はその他の不良反応を生じないことを意味する。薬学的に許容可能なベクター又はその成分とすることができるいくつかの物質の具体的な例は、糖類(例えば乳糖)、デンプン、セルロース及びその誘導体、植物油、ゼラチン、多価アルコール(例えばプロピレングリコール)、アルギン酸等を含む。
【0101】
二重特異性抗体、又は本出願の抗体をコードする核酸又はポリヌクレオチドは、上記薬学的に許容可能なベクター又はその成分のいくつかの物質に接続されてもよく(免疫複合体として)又はそれらと分けて適用されてもよい。後者の場合、二重特異性抗体、又は本出願の抗体をコードする核酸又はポリヌクレオチドは、上記薬学的に受容可能なベクター又はその成分のいくつかの物質の前、後、又はそれらと併用して適用されてもよく、又は他の既知の療法(例えば抗がん療法、例えば放射線)と併用して適用されてもよい。
【0102】
本発明の組成物は、複数の形式であってもよい。それは、例えば、液体、半固体及び固体の剤量形式、例えば、液体溶液(例えば、注射可能と不融化の溶液)分散剤又は懸濁剤錠剤、丸剤、粉剤、リポソーム及び座剤を含む。好ましい方式は、適用方式と治療用途に依存する。典型的な好ましい組成物は、注入可能又は不融化の溶液であり、例えば、他の抗体でヒトに対して受動免疫を行うことに類似する組成物である。適用経路は、経口、直腸、経粘膜、経腸、胃腸外、筋肉内、皮下、皮内、髄内、鞘内、直接心室内、静脈内、腹膜内、鼻内、眼内、吸入、吹き込み、局部、皮膚、経皮又は動脈内を含む様々な形式を有してもよい。好ましい適用形式は、腸管外(例えば、静脈内、皮下、腹膜内、筋内)である。好ましい実施方案では、前記抗体は、静脉内注入又は注射によって適用される。別の好ましい実施方案では、前記抗体は、肌内又は皮下によって適用される。
【0103】
以上の組み合わせ方法、治療方法及び投与方法は、公知であり、将来に発展する可能性がある組み合わせ、治療及び適用方法をさらに含む。
【0104】
本発明の医薬組成物は、二種類の医薬の組み合わせであってもよく、市販されている類似機能と同じ製品又は治療効果を増加させる製品の組み合わせであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】、AP163精製サンプルのSEC-HPLC検出結果である。
【
図2】、AP163精製サンプルのSDS-PAGE電気泳動結果である。
【
図3】、二重特異性抗体がBCMA陽性細胞と結合する能力の測定である。
【
図4】、二重特異性抗体が異なるT細胞と結合する能力の測定である。
【
図5】、二重特異性抗体が同時に標的細胞とエフェクター細胞と結合する能力の測定である。
【
図6】、二重特異性抗体の媒介によるCD4+T細胞/CD8+T細胞のアクティブ化である。
【
図7】、二重特異性抗体活性化報告遺伝子細胞株Jurkat T細胞の能力測定である。
【
図8】、二重特異性抗体がT細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷させる能力の測定である。
【
図9】、異なるエフェクター対標的比で二重特異性抗体がT細胞を媒介してBCMA陽性細胞を殺傷させる能力の測定である。
【
図10】、NPGマウスの皮下でヒトCIK細胞とヒト骨髄腫細胞RPMI-8226移植腫瘍を共同接種するモデルにおける二重特異性抗体のインビボ腫瘍阻害効果である。注:矢印は、各回の投薬時間を表し、***は、有意差が存在することを表す。
【
図11】、NPGマウスの皮下でヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Daudi細胞移植腫瘍を共同接種するモデルにおける二重特異性抗体のインビボ腫瘍阻害効果である。注:矢印は、各回の投薬時間を表し、***は、有意差が存在することを表す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
以下の実施例によって本発明をさらに説明し、前記実施例は、更なる制限と解釈すべきではない。ここで、全出願において引用されたすべての添付図面とすべての参照文献、特許及び開示された特許出願の内容を参照として本明細書に明示的に取り込む。
【0107】
以下の各実施例では、実験用の材料は、購入でき、また従来の開示された技術を参照して調製でき、由来と規格が明示されていないものは、すべて市販で入手でき、詳細に記述されていない各種のプロセスと方法は、当分野に周知の通常の方法である。
【0108】
実施例1、二重特異性抗体分子発現ベクターの構築
二重特異性抗体AP163は、抗-BCMA scFv、リンカーペプチドL2、抗-CD3 scFv及びFc断片から順に直列接続して構成され、抗-BCMA scFvと抗-CD3 scFvの内部のVHとVLとの間は、それぞれリンカーペプチドL1とL3によって接続される。AP163に含まれるBCMAに対するscFvのVHとVLアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:7とSEQ ID NO:8に示す通りである。AP163に含まれる抗CD3-scFvのVHとVLアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:17とSEQ ID NO:18に示され、且つVHとVLとの間は、(GGGGS)3によって接続される。AP163に含まれるFc断片は、ヒトIgG1に由来し、且つ複数のアミノ酸の置換を有し、それぞれは、L234A、L235A、T250Q、N297A、P331S及びM428L(EU番号)であり、またFc断片C末端のK447(EU番号)を削除/欠失した。そのリンカーペプチド(L2)は、可撓性ペプチドと剛性ペプチドからなり、可撓性ペプチドは、いずれもG2(GGGGS)3であり、剛性ペプチドは、SSSSKAPPPSである。各scFvの内部のリンカーペプチドL1とL3の構成は、いずれも(GGGGS)3である。
通常の分子生物学的方法で上記二重特異性抗体のコード遺伝子を合成し、且つ得られる融合遺伝子のコードcDNAをそれぞれPCDNA3.1によって改造された後の真核発現プラスミドpCMAB2Mの対応する酵素切断部位の間に挿入する。プラスミドpCMAB2Mは、選択的マーカーをさらに含み、それにより細菌においてカナマイシン耐性を有することができ、哺乳動物細胞においてG418耐性を有することができる。また、宿主細胞がDHFR遺伝子発現欠損型である場合、pCMAB2M発現ベクターは、マウスのジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子を含み、それによりメトトレキサート(MTX)が存在する時に、目的遺伝子とDHFR遺伝子を共増幅することができる(米国特許US4,399,216を参照する)。
【0109】
実施例2、二重特異性抗体分子の発現
上記構築された発現プラスミドを哺乳動物宿主細胞系にトランスフェクトし、それによって二重特異性抗体を発現する。宿主細胞系は、DHFR酵素欠損型CHO-細胞(米国特許US 4,818,679を参照する)であり、本実施例では、宿主細胞は、CHO誘導細胞株DXB11を選択する。
一つの好ましいトランスフェクト方法は、エレクトロポレーションであり、リン酸カルシウム共沈降、脂質トランスフェクトを含む他の方法を使用してもよい。エレクトロポレーションにおいて、300Vの電界と1500 μFdの電気容量に設定されるGene Pulserエレクトロポレータ(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)で、キュベット内の5×107個の細胞に50μgの発現ベクタープラスミドDNAを加える。トランスフェクトした2日間の後、培地を0.6mg/mLのG418を含む生長培地に変更する。極限希釈でトランスフェクタントをサブクローニングし、且つELISA法で各細胞系の分泌率を測定する。二重特異性抗体を高レベルで発現する細胞株をスクリーニングする。
MTX医薬によって阻害されるDHFR遺伝子で共増幅を行い、その操作ステップは主に、漸増する濃度MTXを含む生長培地において、DHFR遺伝子でトランスフェクトされる融合タンパク遺伝子を共増幅することを含む。DHFR発現陽性のサブクローンを極限希釈し、段階的に加圧し且つ最大で6μMであるMTX培地において成長できるトランスフェクタントをスクリーニングし、その分泌率を測定し、外来タンパクを高発現する細胞系をスクリーニングする。分泌率が5(好ましくは約15である)μg/106を超える(即ち百万)個の細胞/24hの細胞系を、無血清培地を用いて適応懸濁培養を行う。細胞上清を收集し、且つ二重特異性抗体を分離精製する。
【0110】
実施例3、二重特異性抗体の精製
三段階クロマトグラフィ法を採用して二重特異性抗体AP163を精製する。それぞれは、親和性クロマトグラフィ、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ及びアニオン交換クロマトグラフィ(本実施例で採用されるタンパク精製計は、米国GE社のAKTA pure 25Mである。本実施例で採用される試薬は、いずれも国薬集団化学試薬有限会社から購入され、純度は、いずれも分析レベルである)。
ステップ1、親和性クロマトグラフィ:GE社のMabSelect Sureアフィニティークロマトグラフィ媒体(MabSelect Sure、GE社から購入される)またはその他の市販のア親和性クロマトグラフィ媒体(例えば、ボグロン社のDiamond protein Aなど)を採用し、サンプルの捕獲、濃縮及び一部の汚染物の除去を行う。まず平衡buffer(20mM PB、140mM NaCl、pH7.4)を用いて、クロマトグラフィカラム3~5個のカラム体積(CV)を100~200cm/hの線形流速で平衡し、清澄した後の発酵液を100~200cm/hの線形流速でサンプリングし、積載量が20mg/ml以下であり、サンプリングが完了した後、平衡buffer(20mM PB、140mM NaCl、pH 7.4)を用いて、クロマトグラフィカラム3~5個のカラム体積(CV)を100~200cm/hの線形流速で平衡し、結合していない成分を洗浄し、除染buffer1(50mM NaAc-HAc、1M NaCl、pH5.0)を用いて、クロマトグラフィカラム3~5個のカラム体積を100~200cm/hの線形流速で洗浄し、一部の汚染物質を除去し、除染buffer2(50mM NaAc-HAc、pH5.0)を用いて、クロマトグラフィカラム3~5個のカラム体積(CV)を100~200cm/hの線形流速で平衡し、その後、溶出buffer(40mM NaAc-HAc、pH3.5)を用いて、ターゲット生成物を100cm/h以下の線形流速で溶出し、ターゲットピークを収集する。
ステップ2、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ:BIO-RAD社のCHT TypeIIまたは他の市販のヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ媒体(CHT TypeII、BIO-RAD社から購入される)を使用して中間精製を行い、重合体の含有量を低減させるために用いられる。ターゲットタンパクが重合した後、重合体と単体との間に、電荷特性及びカルシウムイオンキレートを含む性質上の差異が存在しており、我々は、電荷特性などの差異を用いて両者を分離する。まず、平衡buffer(20mM PB、pH 7.0)を用いて、クロマトグラフィカラム3~5個のカラム体積(CV)を100~200cm/hの線形流速で平衡し、ステップ1の親和性クロマトグラフィで分離して得られるターゲットタンパクをpH 7.0に調整した後、サンプリングし、積載量を<5mg/mlに制御し、サンプリングが完了した後、平衡buffer(20mM PB、pH7.0)を用いて、クロマトグラフィカラムを100~200cm/hの線形流速で3~5個のカラム体積(CV)を洗浄し、最後に、ターゲットタンパクの溶出を行い、溶出buffer(20mM PB、1M NaCL、pH7.0)を用いて、0~50%の勾配で溶出し、10個のカラム体積(CV)を100cm/h以下の線形流速で溶出し、溶出成分をセグメント化して採取し、SEC-HPLCを個別に検査に送る。単体パーセンテージが95%よりも大きい標的成分を組み合わせて次のクロマトグラフィを行う。
ステップ3、アニオン交換クロマトグラフィ:ボグロン社のQ-HPまたはその他の市販のアニオン交換クロマトグラフィ媒体(Q-HP、ボグロン社から購入される)(例えばGEのQHP、TOSOHのToyopearl GigaCap Q-650、天地人和のDEAE Beads 6FF、賽分科学技術のGenerik MC-Q、MerckのFractogel EMD TMAE、PallのQ Ceramic HyperD F)を用いて精密精製を行い、さらにHCP、DNAなどの汚染物質を除去する。まず、平衡buffer(20 mM PB、0.15M NaCL、pH 7.0)を用いて、クロマトグラフィカラム3~5個のカラム体積(CV)を100~200cm/hの線形流速で洗浄し、ステップ2のヒドロキシアパタイトクロマトグラフィで分離して得られるターゲットタンパクをサンプリングし、貫流を収集し、サンプリングが完了し、平衡buffer(20 mM PB、0.15M NaCL、pH 7.0)を用いて、クロマトグラフィカラムを100~200cm/hの線形流速で3~5個のカラム体積(CV)を洗浄し、貫流成分を収集し、それぞれサンプルを送ってタンパク含有量、SEC-HPLC及び電気泳動検出を行う。
サンプルのSEC-HPLC純度結果及びSDS-PAGE電気泳動結果は、それぞれ
図1と
図2に示され、そのうちSEC-HPLC結果は、三段階クロマトグラフィの後の二重特異性抗体のメインピーク純度が95%以上に達し、SDS-PAGE電気泳動バンド型が予想に合致し、非還元電気泳動(180KDa)が還元した後に鮮明な(90KDa)一本鎖バンドを得ることができることを示す。
【0111】
実施例4、Anti-BCMA×CD3二重特異性抗体のインビト生物学機能評価
(1)二重特異性抗体がBCMA陽性細胞とT細胞との結合活性
ヒト骨髄腫NCI-H929細胞、ヒトJurkat-LUC細胞、ヒトTリンパ球性白血病HUT-78細胞、ヒト骨髄腫MM.1S細胞、ヒト前骨髄性白血病HL60細胞、ヒトT細胞及びカニクイザルT細胞を培養し、細胞を遠心分離して収集して1%のDPBS(ダルベッコリン酸緩衝液)で再懸濁し、それぞれ細胞密度を2×10
6個/mlに調整し、96ウェルプレートに置き、ウェルあたり100μlである。測定対象の二重特異性抗体AP163に対して段階希釈を行い、ウェルあたり100μlであり、37℃で、5%のCO
2のインキュベータで1hインキュベートする。遠心分離し、ウェルあたり200μlの1%のDPBSを加えて2回洗浄した後に遠心分離して上清を除去し、ウェルあたり100μlの蛍光二抗(Alexa Fluor(R)647ヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体)を加え、37℃で、5%のCO
2のインキュベータで1hインキュベートする。遠心分離して上清を除去し、1%のDPBSでプレートを二回洗浄し、ウェルあたり100μlの1%のDPBSを加えて再懸濁し、フローサイトメトリで信号強度を検出する。さらに、平均蛍光強度をY軸として、抗体濃度をX軸として、GraphPad Prism 6ソフトウェアによって分析を行い、AP163とBCMA+細胞及びCD3+細胞との結合活性を計算する。
図3、
図4に示すように、細胞レベルで、AP163は、BCMA陽性の細胞と特異的に高度に結合し、且つ用量効果関係を有するとともに、AP163は、ヒトT細胞とカニクイザルT細胞といずれも特異的に高度に結合することができ、且つ用量効果関係を有する。
(2)二重特異性抗体とヒトサル種属CD3とBCMAタンパクとの結合能力及び交差反応性の測定
抗原を被覆するヒトとサルのCD3、BCMAをPBSでそれぞれ0.1μg/mlに希釈し、96ウェルプレートに加え、100μl/ウェルであり、2-8℃で一晩被覆する。プレートにおける液体を捨て、脱脂粉乳を含むPBSTを加えて室温で2h閉鎖した後、PBSTでプレートを2回洗浄する。測定対象の二重特異性抗体を4倍希釈して合計で12個の勾配があり、濃度ごとに2個の重複ウェルであり、100μl/ウェルを96ウェルプレートに加え、室温で2hインキュベートする。結合していない二重特異性抗体をPBSTで洗浄除去し、ビオチン化したヒトBCMAタンパク又はヒトCD3タンパクを0.1μg/mlに希釈し、HRP標識のストレプトアビジン(BD、商品番号554066)を1:1000で混合して96ウェルプレートに加え、100μl/ウェルであり、室温で1hインキュベートする。その後、96ウェルプレートをPBSTで洗浄し、TMBを加え、100μl/ウェルであり、室温で2-3min遮光して発色させ、続いて1M のHCLを加えて発色反応を終止する。マイクロプレートリーダでOD450nmの吸光値を検出する。サンプル濃度対数値を横座標として、吸光度値を縦座標として、四パラメータ非線形回帰、可変スロープ方程を行う。二重特異性抗体が抗原と結合するEC
50値を計算する。実験結果は、表1に示すように、二重特異性抗体がヒト源CD3とBCMAタンパク、カニクイザル源CD3とBCMAタンパクと結合するEC
50値の差異が非常に小さく、二重特異性抗体は、異なる種属抗原との結合能力が基本的に同じである。
(3)二重特異性抗体が同時に標的細胞とエフェクター細胞と結合する能力の測定
正常に培養されるヒト骨髄腫NCI-H929細胞は、標的細胞として、PKH26染色試薬で染色標識し、1640完全培地で細胞を再懸濁し、細胞密度を1×10
5個/mlに調整し、50μl/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに加える。二重特異性抗体を培地で段階希釈し、50μl/ウェルで加える。標的細胞数の5倍のエフェクター細胞(増幅培養するT細胞)を50μl/ウェルで加える。37℃で、5%のCO
2インキュベータで1hインキュベートし、測定対象のサンプルと細胞を十分に混合し、且つ架橋反応を発生させる。DPBSで96ウェルプレートを洗浄し、フローサイトメトリーで機器を扱って検出し、T細胞を捕捉すると、PKH26信号付きのT細胞は、ブリッジが発生する細胞であり、データを統計してブリッジ比率を計算する。
図5から見られるように、AP163は、腫瘍細胞と標的細胞に特異的にブリッジ反応を発生させることができ、且つ用量効果関係を有する。
(4)二重特異性抗体の媒介によるCD4
+T細胞/CD8
+T細胞のアクティブ化
健康な自発献血者3名を募集し、末梢血を採取し且つPBMCを抽出し、CD4
+T細胞分離キット及びCD8
+T細胞分離キットを利用し、PBMCにおけるCD4
+T細胞とCD8
+T細胞を選別して濃縮し、10%のFBSを含む1640完全培地で細胞を再懸濁し、細胞密度を1×10
6個/mlに調整し、50μl/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに加える。ヒト骨髄腫NCI-H929細胞を培養し、細胞密度を1×10
5個/mlに調整し、ウェルあたり50μlを加える。二重特異性抗体に対して段階希釈を行い、50μl/ウェルで96ウェルプレートに加え、37℃で、5%のCO
2のインキュベータで24hインキュベートする。遠心分離して上清液を取り、ELISA法顆粒酵素検出キットを採用して上清における顆粒酵素放出量を検出する。GraphPad Prism 6ソフトウェアによって分析を行い、二重特異性抗体がCD4
+T細胞/CD8
+T細胞を媒介してアクティブ化させるEC50を計算する。
図6と表2に示すように、AP163は、3名の健康なボランティアのCD4
+T細胞とCD8
+T細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷させる時に顆粒酵素を放出し、且つ用量効果関係を呈することができる。
(5)二重特異性抗体がT細胞を活性化する能力の評価
NFAT RE報告遺伝子を含むJurkat T細胞(BPS Bioscienceから購入される)は、二重特異性抗体とBCMA陽性細胞が同時に存在する場合、ルシフェラーゼ酵素を過発現することができ、ルシフェラーゼ酵素の活性を検出することによってJurkat T細胞の活性化程度を定量する。具体的には、H929細胞を遠心分離して再懸濁し、細胞密度を2×10
5個/mlに調整し、40μl/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに加える。NFAT-Jurkat細胞の細胞密度を2×10
6個/mlに調整、ウェルあたり40μlを加える。二重特異性抗体AP163を培地で50μg/mLに希釈し、10倍希釈した後、ウェルあたり20μlを加え、37℃で、5%CO
2のインキュベータで48hインキュベートする。プレートを洗浄した後、それぞれ100μl/ウェルのSteady-Glo(R)Luciferaseを加え、5min反応した後、マイクロプレートリーダで冷発光値を検出する。二重特異性抗体の濃度をX軸として、フルオレセイン強度をY軸として、GraphPad Prism 6ソフトウェアによって分析を行い、二重特異性抗体がT細胞を活性化するEC
50を計算する。
図7に示すように、AP163は、NFAT-Jurkat細胞を特異的に活性化することができ、EC
50値は、3.161ng/mlであり、且つその濃度は、信号強度に比例する。
(6)二重特異性抗体がT細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷させる能力
ヒト、カニクイザルのT細胞を培養し、細胞密度を1×10
6個/mlに調整し、50μl/ウェルでそれぞれ96ウェル細胞培養プレートに加える。正常に培養されるヒト骨髄腫NCI-H929細胞を標的細胞として、細胞密度を1×10
5個/mlに調整し、50μl/ウェルで加える。その後ウェルあたり50μlの段階希釈後の二重特異性抗体AP163を加え、37℃で、5%のCO
2のインキュベータで24hインキュベートする。ウェルあたり40μlのBright-Glo試薬を加え、室温で3min遮光して静置し、多機能マイクロプレートリーダを応用してRLU値を検出し、GraphPad Prism 6ソフトウェアによって分析を行い、二重特異性抗体がT細胞を媒介してH929細胞を殺傷させるEC
50値を計算する。
図8に示すように、AP163は、ヒトT細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷させるEC
50値は、0.239pMであり、カニクイザルT細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷させるEC
50値は、0.278pMである。AP163は、ヒトとカニクイザルのT細胞を特異的に媒介して腫瘍細胞を殺傷させることができ、BCMA高発現のH929細胞は、著しい殺傷作用を示し、且つ用量効果関係を呈する。
(7)二重特異性抗体による細胞因子放出の評価
二重特異性抗体が単独してまたは標的細胞に依存してT細胞を活性化して細胞因子の放出を引き起こす能力を評価する。
初代T細胞を培養し、細胞を遠心分離して収集して1%のPBSBで再懸濁し、それぞれ細胞密度を1×10
6個/mlに調整して96ウェルプレートに置き、90μl/ウェルである。CD3を認識する母本マブAB314(具体的にはWO2007042261特許文献を参照する)と二重特異性抗体AP163をそれぞれ培地で10000ng/mLに希釈し、10倍段階希釈した後、10μl/ウェルで96ウェルプレートに加え、37℃で、5%のCO
2のインキュベータで培養する。それぞれ24hと48hインキュベートする時に培養上清液を取り、LEGENDplex
TMヒトTh1/Th2キットで検出分析し、フローサイトメトリで信号強度を検出する。細胞因子濃度をY軸として、抗体濃度をX軸として、GraphPad Prism 6ソフトウェアによって分析を行い、AB314とAP163がT細胞を活性化することによる細胞因子放出の量を計算する。その結果、標的細胞が存在しない場合、AB314は、初代T細胞を24h活性化した後、細胞因子IL-4、IL-5及びTNF-αの放出を引き起こし、AP163は、初代T細胞を活性化し、24h、48hにはいずれも著しい細胞因子の放出がない。
ヒトT細胞を培養し、細胞を遠心分離して收集して10%のFBSの1640完全培地で再懸濁し、細胞密度を1×10
6個/mlに調整して96ウェルプレートに置き、50μl/ウェルである。ヒト骨髄腫NCI-H929の細胞密度を1×10
5個/mlに調整し、50μl/ウェルで加える。AP163を段階希釈した後、50μl/ウェルで96ウェルプレートに加え、37℃で、5%のCO
2のインキュベータでそれぞれ1、2、3、4、5、6、24h培養する。インキュベートが終了した後、ウェルあたり50μlの上清液を取り、8細胞因子検出キットを応用して上清における8細胞因子の放出量を検出する。実験結果は、AP163がT細胞を活性化してIL-5、IL-13、IL-2、IL-6、IL-10、IFN-γ、TNF-α、IL-4を放出し、且つ時間依存性を呈することができることを表明し、具体的には表3に示される。
(8)異なるエフェクター対標的比で二重特異性抗体がT細胞を媒介してBCMA陽性ヒト腫瘍細胞を殺傷させる
ヒトT細胞を培養し、細胞密度をそれぞれ2×10
7個/ml、1×10
7個/ml、1×10
6個/ml、1×10
5個/ml、1×10
4個/ml、1×10
3個/mlに調整し、ウェルあたり50μlで、96ウェルの細胞培養プレートに加える。ヒト骨髄腫NCI-H929細胞を標的細胞として、細胞密度を1×10
5個/mlに調整し、50μl/ウェルで加える。その後ウェルあたり50μlの段階希釈後のAP163を加え、37℃で、5%のCO
2インキュベータにおいて24hインキュベートする。ウェルあたり40μlのBright-Glo試薬を加え、室温で3min遮光して静置し、多機能マイクロプレートリーダを応用してRLU値を検出し、GraphPad Prism 6ソフトウェアによって分析を行い、二重特異性抗体がT細胞を媒介してH929細胞を殺傷させるEC
50値を計算する。
図9に示すように、エフェクター対標的比(E/T)が1/1よりも高い場合、AP163がT細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷させる効率は、100%殺傷に達することができ、E/Tが1/1よりも低い場合、EC
50値は、E/Tの減少につれて徐々に増大する。
(9)デキサメタゾン及びインドメタシンが、AP163がPBMCを媒介して腫瘍細胞を殺傷させることに対する影響作用を評価する
健康な自発献血者12名を募集し、末梢血を採取し且つPBMCを抽出し、10%のFBSを含む1640完全培地で細胞を再懸濁し、細胞密度を3×10
6個/mlに調整し、ウェルあたり50μlて96ウェル細胞培養プレートに加える。デキサメタゾンとインドメタシン希釈液を配合し、ウェルあたり50μlで96ウェルプレートに加え、それぞれPBMCを1hと14hインキュベートし、対照グループに等体積の緩衝液を加える。ヒト骨髄腫NCI-H929細胞の細胞密度1×10
5個/mlに調整し、ウェルあたり50μlである。その後ウェルあたり50μlの段階希釈されるAP163を加え、37℃で、5%のCO
2のインキュベータでそれぞれ4、8、12、24、48hインキュベートし、ウェルあたり40μlのBright-Glo試薬を加え、室温で3min遮光して静置し、多機能マイクロプレートリーダでRLU値を検出する。データを分析した結果、デキサメタゾン又はインドメタシンがPBMCインキュベートすることは、AP163がPBMCを媒介して腫瘍細胞を殺傷させることに対する影響が比較的に少ない。
【0112】
実施例5、Anti-BCMA×CD3二重特異性抗体のマウス移植瘤モデルにおける薬効学研究
(1)NPGマウスの皮下でヒトCIK細胞とヒト骨髄腫細胞NCI-H929移植腫瘍を共同接種するモデル
ヒト骨髄腫NCI-H929細胞とCIK細胞(ヒトPBMCによって10日目までアクティブ化誘導増幅する)を異なる比率で雌NPGマウスの右側の前脇肋部の皮下に共同接種する。接種してから1小時後、マウスの体重に基づいてランダムにグループ分けし、4匹ずつで、計4グループである。グループ分けする当日に投薬を開始し、すべてのグループの投薬経路は、いずれも腹腔注射であり、対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与し、AP163の投薬剤量は、0.2mg/kgである。週に2回投薬し、4週間連続投薬する。腫瘍体積及び体重を3日間ごとに1回測定し、マウスの体重と腫瘍体積を記録する。実験が終了した時、動物は、安楽死し、腫瘍を剥取して計量し、写真を撮り、相対腫瘍阻害率(TGI%)を計算する。
表4に示すように、実験が終了した時、エフェクター対標的比が1/1である対照グループの平均腫瘍体積は、1501±351mm
3であり、エフェクター対標的比が1/2である対照グループの平均腫瘍体積は、1555±244mm
3であり、エフェクター対標的比が1/1であるAP163試験グループの平均腫瘍体積は、99±38mm
3であり、TGI%は、93%であり、エフェクター対標的比が1/1であるAP163試験群の平均腫瘍体積は、481±215mm
3であり、TGI%は、70.2%である。上記結果は、AP163が明らかな腫瘍阻害作用を有するとともに、AP163が比較的に良い安全性を示し、実験動物に対して明らかな毒性作用を生じないことを表明する。
(2)NPGマウスの皮下でヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞移植腫瘍を共同接種するモデル
ヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞と培養増幅した後のCIK(Raji細胞とCIK細胞の比率が1:1である)、及びMatrigelを体積比1:1の比率で混合し、雌NPGマウスの右側の背部の皮下に共同接種する。接種してから1小時後、マウスの体重に基づいてランダムにグループ分けし、4匹ずつで、計4グループである。グループ分けする当日に投薬を開始し、対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与し、AP163の投薬剤量は、1mg/kg、0.1mg/kgと0.01mg/kgである。すべてのグループの投薬経路は、腹腔注射であり、週に2回投薬し、計3週間投薬する。腫瘍体積及び体重を3日間ごとに1回測定し、マウスの体重と腫瘍体積を記録する。実験が終了した時、動物は、安楽死し、腫瘍を剥取して計量し、写真を撮り、相対腫瘍阻害率(TGI%)を計算する。
結果は、表5に示され、実験が終了した時、対照グループの平均腫瘍体積は、1750±653mm
3であり、AP163が1mg/kg、0.1mg/kg、0.01mg/kgである試験グループの平均腫瘍体積は、いずれも0.00±0.00mm
3であり、いずれも溶媒対照グループの腫瘍体積と有意差があり(P<0.05)、3グループのTGIは、いずれも100%であり、供試二重特異性抗体AP163が極めて著しい腫瘍阻害作用を有することを表明する。
(3)NPGマウスの皮下でヒトCIK細胞とヒト骨髄腫細胞RPMI-8226移植腫瘍を共同接種するモデル
ヒト骨髄腫細胞RPMI-8226とCIKを雌NPGマウスの右側の背部の皮下に接種し、接種してから1時間後、マウスの体重に基づいてランダムにグループ分けし、当日に投薬を開始する。第1組は、7匹であり、残りの2組は、8匹ずつであり、計3組である。グループ分けする当日に投薬を開始し、対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与し、AP163の投薬剤量は、1mg/kgと0.1mg/kgである。すべてのグループの投薬経路は、いずれも腹腔注射であり、二日間ごとに1回投薬し、8回連続投薬し、最後に投薬してから18日間後に実験が終了する。腫瘍体積及び体重を週に2回測定し、マウスの体重と腫瘍体積を記録する。実験が終了した時、動物は、安楽死し、腫瘍を剥取して計量し、写真を撮り、相対腫瘍阻害率(TGI%)を計算する。
【0113】
図10に示すように、実験が終了した時(初回投薬してから32日間後)、各グループの動物の体重は、いずれも増加が現れ、異なるグループ別の動物の体重を比較すれば、有意差がない(P>0.05)。対照グループの平均腫瘍体積は、1647.79±247.90mm
3であり、AP163が1mg/kgである試験グループの平均腫瘍体積は、0.00±0.00mm
3であり、TGI%は、100%であり、AP163が0.1mg/kgである試験グループの平均腫瘍体積は、8.00±5.24mm
3であり、TGI%は、99.51%である。実験結果は、抗体AP163が極めて著しい腫瘍阻害作用を有することを表明する。本実験条件で、AP163は、各投薬濃度でいずれも腫瘍の生長を著しく阻害するとともに、AP163は、比較的に良い安全性を示し、実験動物に対して明らかな毒性作用を生じない。
(4)NPGマウスの皮下でヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Daudi細胞移植腫瘍を共同接種するモデル
ヒトBurkkit’sリンパ腫Daudi細胞と培養増殖した後のCIK(Daudi細胞の密度が5×10
6個/mlであり、CIK細胞の密度が1×10
6個/mlであり)、及びMatrigelを体積比1:1の比率で混合し、雌NPGマウスの右側の背部の皮下に共同接種する。接種して1h小時後、マウスの体重に基づいてランダムにグループ分けし、6匹ずつで、計4グループである。グループ分けする当日に投薬を開始し、対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与し、AP163の投薬剤量は、1mg/kg、0.2mg/kgと0.04mg/kgである。すべてのグループの投薬経路は、いずれも腹腔注射であり、二日間ごとに1回投薬し、計8回投薬し、最後に投薬してから10日間後に実験が終了する。腫瘍体積及び体重を週に2回測定し、マウスの体重と腫瘍体積を記録する。実験が終了した時、動物は、安楽死し、腫瘍を剥取して計量し、写真を撮り、相対腫瘍阻害率(TGI%)を計算する。
図11に示され、実験が終了した時(初回投薬してから25日間後)、各グループの動物の体重は、いずれも増加が現れ、異なるグループ別の動物の体重を比較すれば、有意差がない(P>0.05)。実験が終了した時、対照グループの平均腫瘍体積は、970.83±165.40mm
3であり、AP163が1mg/kg、0.2mg/kg及び0.04mg/kgである試験グループの平均腫瘍体積は、それぞれ171.99±32.60mm
3、190.82±53.60mm
3及び228.68±44.96mm
3であり、対応するTGI%は、それぞれ82.28%、80.34%及び76.44%であり、且つ対照グループと比べて、腫瘍阻害作用は、いずれも有意差があり(P<0.05)、AP163が各投薬濃度でいずれも腫瘍の生長を著しく阻害し、且つ比較的に良い安全性を示し、実験動物に対して明らかな毒性作用を生じないことを表明する。
【0114】
実施例6、Anti-BCMA×CD3二重特異性抗体の安全性評価試験
AP163を週に2回投薬し、静脈注入を繰り返してカニクイザルに2週間投与した後の毒性反応状況を評価し、後続の毒性試験のために適切な剤量範囲及び観察指標を決定する。6匹のカニクイザルで、3匹/性別で、3グループに分け、1匹/性別/グループで、それぞれ0.1、0.5及び2.5mg/kgのAP163を投与する(1、2又は3グループ)。注入速度は、30mL/kg/hであり、投薬容量は、10mL/kgである。すべての動物は、14日間(D14)の投薬期間が終了してからD15に安楽死を実施する。
試験期間に、動物の臨床症状、体重、食事量、体温、心電図、血圧、臨床病理指標(血球計数、凝固機能指標と血液生化学)、リンパ球亜群、細胞因子、薬物血漿濃度測定と毒物分析を周期的にモニタリングする。すべての動物に対して、いずれも肉眼解剖を行う。肉眼解剖では明らかな異常が見られず、組織病理学検査が行われない。その結果、本試験条件で、0.1、0.5及び2.5mg/kgのAP163を週に2回投薬し、静脈注入を繰り返してカニクイザルに2週間投与し、各動物では死亡や瀕死が見られず、各投薬グループの動物では1回目の投薬後にいずれも一過性のNeut、CD3-CD20+、TNF-α、IL-2とIL-6上昇及びLymph、CD3+、CD3-CD16+/CD56+低減が見られ、最大耐性用量(MTD)≧2.5mg/kgである。
【0115】
実施例7、Anti-BCMA×CD3二重特異性抗体の薬物動態学試験
試験は、計6匹のカニクイザル(3匹/性別)を用い、3グループに分け、1匹/性別/グループで、それぞれ0.1、0.5及び2.5mg/kgのAP163を投与する。動物の後肢の皮下静脈の非投薬部位から毒物血液サンプル(約1mL)を抗凝固剤のないチューブまで採取し、1~3グループ目の採血時点は、各グループの動物の最初と最後の投薬前、投薬終了直後(±1min)、投薬開始後1h、3h、6h、8h、24h、48h、72hである。
遠心分離チューブ(抗凝固しない)を使用する前に氷水浴で保存し、血液サンプルを採取した後に上記遠心分離チューブに移送し、2~8℃で、3000×gで10min遠心分離する。血清サンプルを分離した後に2部に個装し、-70℃以下に置いて保存する。血液サンプル採取から遠心分離完了まで2時間以内に完了する必要がある。
ELISA法を採用して血清におけるAP163濃度に対して検出分析を行い、WinNonlin 8.0ソフトウェアの非房室モデル法(NCA)を採用して投薬グループの動態学パラメータに対して計算を行い、各グループの薬物動態学パラメータの結果を表6に示す。結果は、0.1、0.5及び2.5mg/kgの剤量グループのAP163のインビボ半減期がそれぞれ7.08、8.95及び11.42時間であることを表明する。
【0116】
本発明の好ましい例を説明し且つ記述するが、理解すべきことは、当業者は、本明細書の教示に従って、本発明の範囲に反しない様々な変更を行うことができる。
【0117】
本発明で言及されているすべての文献は、いずれも本出願において参照として引用され、各文献が参照として単独して引用されるようである。なお、理解できることは、本発明の上記講義内容を読んだ後、当業者は、本発明に対して様々な修正または変更を行うことができ、これらの等価形式は、同様に本出願に添付された特許請求の範囲によって限定される範囲よりも後になる。
【配列表】