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特許7410147シールドガス流を流出するためのガスノズル及びガスノズルを備えたトーチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】シールドガス流を流出するためのガスノズル及びガスノズルを備えたトーチ
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/29 20060101AFI20231226BHJP
   B23K 9/16 20060101ALI20231226BHJP
   B23K 9/32 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B23K9/29 L
B23K9/16 Z
B23K9/32 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021531273
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2019086455
(87)【国際公開番号】W WO2020144046
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】102019100581.7
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516126791
【氏名又は名称】アレクサンダー ビンツェル シュヴァイステヒニーク ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
【氏名又は名称原語表記】ALEXANDER BINZEL SCHWEISSTECHNIK GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ、サッシャ
(72)【発明者】
【氏名】ノル、アンドレアス
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0319103(US,A1)
【文献】特開2006-136938(JP,A)
【文献】実開昭54-176736(JP,U)
【文献】実開昭60-190474(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/29
B23K 9/16
B23K 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分散部分(3)を備えたガスノズル(1)のガス放出部(2)からシールドガス流を放出するためのガスノズル(1)であって、
該ガスノズル(1)は、少なくとも該ガス分散部分(3)の部分領域において、シールドガス流のための流動空間(16)を形成するよう二重壁状に構成されていること
前記ガス分散部分(3)と該ガスノズル(1)は一体的に構成されていること
を特徴とするガスノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分(3)は、該ガスノズル(1)に固定されたガス分散器(4)によって構成されていること
を特徴とするガスノズル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分(3)は周囲に少なくとも1つのガス流出開口(8)又は互いに対しほぼ等間隔をなして配置された複数のガス流出開口(8)を有し、そのため、前記ガス放出部(2)は該ガス流出開口(8)と流体連通状態にあること
を特徴とするガスノズル。
【請求項4】
請求項1~の何れかに記載のガスノズルにおいて、
該ガスノズル(1)とこれに引き続くガス分散部分面(6)によって規定される該ガスノズル(1)の内径(5)は、ガス流の上流側へ一定であるか又は円錐状に推移するよう形成されていること
を特徴とするガスノズル。
【請求項5】
請求項に記載のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器(4)は、金属材料、又は銅若しくは銅合金、又はCuCrZr若しくはCuDHP、から又は耐衝撃性ガラスセラミックスから形成されていること
を特徴とするガスノズル。
【請求項6】
請求項又はに記載のガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分(3)ないし前記ガス分散器(4)は、少なくとも部分的に、実質的に面一に該ガスノズル(1)に結合していること
を特徴とするガスノズル。
【請求項7】
請求項又は又はに記載のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器(4)は、該ガスノズル(1)に形状結合的に及び/又は力結合的に及び/又は材料結合的に結合されていること
を特徴とするガスノズル。
【請求項8】
請求項又は請求項の何れかに記載のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器(4)は、該ガスノズル(1)に分離可能に結合されている、又は螺合又は圧入されていること
を特徴とするガスノズル。
【請求項9】
請求項又は請求項の何れかに記載のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器(4)は、該ガスノズル(1)に固定的に結合されている、又は接着、ろう付け又は該ガスノズル(1)へ圧入されていること
を特徴とするガスノズル。
【請求項10】
少なくとも1つのワークピースをアーク接合するための、又はアーク溶接若しくはアークろう付けするための、トーチネック(10)であって、
該トーチネック(10)に配された電極又はワイヤであって、当該電極又は当該ワイヤとワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤと、
ガス放出部(2)からシールドガス流を放出するための請求項1~の何れかに記載のガスノズル(1)と
を備えた、トーチネック。
【請求項11】
請求項10に記載のトーチネック(10)において、
減圧のための焼結材料からなるリング状フィルタ(12)が設けられていること、
該リング状フィルタ(12)は、ガスノズル(1)内の、部分領域において二重壁状に構成されたガス分散部分(3)の内部の下流側に配置されていること
を特徴とするトーチネック。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のトーチネック(10)において、
電気絶縁部材(15)は、電流コンタクトノズル(11)と電気的に接続されている該トーチネック(10)のインナーパイプ(13)を、該インナーパイプ(13)から離隔されている該トーチネック(10)のアウターパイプ(14)に対して電気的に絶縁すること
を特徴とするトーチネック。
【請求項13】
請求項12に記載のトーチネック(10)において、
前記ガス放出部(2)から見て前記電気絶縁部材(15)の前方に配置された、溶接スパッタから保護するためのスパッタシールド(9)が設けられていること
を特徴とするトーチネック。
【請求項14】
請求項1013の何れかに記載のトーチネック(10)を備えたトーチ。
【請求項15】
少なくとも1つのワークピースをアーク接合するための、又はアーク溶接若しくはアークろう付けするための、方法であって、
該方法は、電極又はワイヤとワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤと、請求項1~の何れかに記載のガスノズル(1)から流出するシールドガス流を使用すること、
シールドガス流の流動方向は、該ガスノズル(1)の内部におけるシールドガス流の流動時間ないし流動距離が延長されるよう、ガス分散部分(3)によって少なくとも一回変更されること、
シールドガス流は、該ガスノズル(1)のガス放出部(2)において該電極又は該ワイヤを実質的に包囲すること
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドガス流を流出するためのガスノズル、ガスノズルを備えたトーチネック、トーチ(バーナー)、及び少なくとも1つのワークピースの熱的接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱的アーク接合法は、複数のワークピースを溶融し、これらを結合するために、エネルギを使用する。金属(薄)板製造(分野)においては、標準的に、“MIG”、“MAG”及び“WIG”溶接が使用される。
【0003】
シールドガス支援(使用)型消耗(溶融)電極式アーク溶接法(MSG)において、“MIG”は“Metall-Inertgas”の略語であり、“MAG”は“Metall-Aktivgas”の略語である。シールドガス支援(使用)型非消耗(非溶融)電極式アーク溶接法(WSG)において、“WIG”は“Wolfram-Inertgas”の略語である。本発明に応じた溶接装置は機械操作式溶接トーチとして構成可能である。
【0004】
MAG溶接は、活性ガスを用いる金属・シールドガス溶接法(Metall-Schutzgasschweiss-Prozess:MSG)であり、この方法では、連続的に供給され溶融されるワイヤ電極とワークピース(母材ないし溶接対象)との間にアークが発生する。溶融する電極は溶接シームの形成のために溶加材を供給する。MAG溶接は、溶接に適する殆ど全てのワークピースにおいて、簡単かつ経済的に使用可能である。この場合、要求(条件)及びワークピースに応じて、種々異なるシールドガスが使用される。
【0005】
MSG溶接の場合、供給される活性ガスが、電極、アーク及び溶融浴を大気に対して保護する。これは極めて多様な条件下で高い溶融率による良好な溶接結果を確保(保証)する。ワークピースに依存して、アルゴン/CO、アルゴン/Oからなる混合ガス又は純アルゴン又は純COがシールドガスとして使用される。要求に応じて、種々異なるワイヤ電極が使用される。MAG溶接は、安定的で(robust)、経済的でかつ広範囲に使用可能な溶接法であり、手作業法(手溶接)、機械化法及び自動化法にも適する。
【0006】
MAG溶接は、非合金ないし低合金スチールの溶接に適する。高合金スチール及びニッケル基合金は原理的にはMAG法によっても溶接可能である。尤も、シールドガス中のO又はCOの割合は小さい。溶接シーム及び適切な溶接結果に対する要求に応じ、標準法又はパルス法のような種々異なるアーク形式及び溶接法が使用される。
【0007】
アーク溶接装置は、溶接金属の溶融のために、ワークピースと消耗式又は非消耗式溶接電極との間にアークを生成する。溶接金属及び溶接部位はシールドガス流によって周囲の空気の大気ガス、主としてN、O、H、に対して遮蔽(保護)される。
【0008】
この場合、溶接電極は、アーク溶接機に結合されている溶接トーチのトーチボディに設けられている。トーチボディは、通常、内部に位置し溶接電流を案内する一群の部材(複数)を含むが、これらの部材は、溶接電流をアーク溶接機内の溶接電流源からトーチヘッドの先端へ向かって溶接電極へと導き、そして、そこから、ワークピースへのアークを生成する。
【0009】
シールドガス流は、溶接電極、アーク、溶接浴及びワークピースの熱流入ゾーンの周囲を流れ、その際、これらの領域へは溶接トーチのトーチヘッドを介して供給される。ガスノズルはシールドガス流をトーチヘッドの前端部へ導くが、そこで、シールドガス流はトーチヘッドから溶接電極の周りでほぼリング状に流出する。ガスノズルへのガスの案内は、従来技術では、一般的に、小さい導電率を有する材料(ポリマ又は酸化物セラミックス)からなる部材を介して行われるが、該部材は同時に絶縁物として機能し得る。
【0010】
溶接のために生成されるアークは、溶接プロセス中、溶接されるべきワークピースと、場合によっては供給される溶接金属を加熱し、そのため、これらは溶融される。アークエネルギ入力、高エネルギの熱放射及び対流によって、溶接トーチのトーチヘッドへの著しい熱入力(入熱)が生じる。入力された熱の一部は、トーチヘッドを通して案内されるシールドガス流によってないしは周囲空気における受動的(自然)冷却及びチューブパッケージ(Schlauchpaket)への熱伝導によって再び排出されることができる。
【0011】
しかしながら、トーチヘッドのある程度の溶接電流の印加以降、熱入力は、使用される部材を熱による材料損傷から保護するためにトーチヘッドのいわゆる能動的冷却が必要になるほど、大きくなる。このため、トーチヘッドは、当該トーチヘッドを貫流し、その際に溶接プロセスから生じる不所望の熱を輸送して排出する冷却剤によって能動的に冷却される。この場合、冷却剤としては、例えば凍結防止目的でエタノール又はプロパノールが添加された脱イオン水を使用することができる。
【0012】
溶接の他にも、金属(薄)板部材(同士)を結合するために、ろう付けも考慮される。この場合、溶接の場合とは異なり、ワークピースではなく、溶加材のみが溶融される。ろう付けの際に2つのエッジが溶加材としてのろうによって互いに結合されることがその理由である。ろう材料及び(金属(薄)板)部材材料の溶融温度は互いに大きく異なっているため、処理の際には、ろうのみが溶融する。ろう付けのためには、WIGトーチ、プラズマトーチ及びMIGトーチの他に、LASERも適する。
【0013】
アークろう付けプロセスは、金属シールドガスろう付けプロセス(MSG-L)とタングステンシールドガスろう付けプロセス(WSG-L)とに区分することができる。この場合、溶加材としては、その溶融範囲(温度)がベース材料(母材)の溶融範囲(温度)よりも低いワイヤ状の銅系材料が主に使用される。MSGアークろう付けの原理は、装置技術上、ワイヤ状溶加材を用いるMSG溶接と殆ど同じである。WIGろう付けの場合、ワイヤ状溶加材は手作業で又は機械化式に横方向からアーク中へ送られる。その際、溶加材は、無電流的に冷線として又は電流印加されて熱線として供給されることができる。熱線を用いることにより、より高い溶融率が達成されるが、アークは付加的な磁界によって影響を受ける。
【0014】
一般的に、アークろう付けは表面被膜(処理)ないし無被膜薄板に使用される。なぜなら、とりわけ溶接と比べてろう付けの溶融温度はより低いため、部材のより低い熱負荷が達成され、コーティングの損傷はより小さくなるからである。アークろう付けの場合、母材の溶融は実質的に生じない。
【0015】
アークろう付けプロセスは、一般的に、最大で凡そ3mmまでの厚み範囲にある非合金ないし低合金スチールからなる無被膜薄板及び金属被膜薄板に使用される。
【0016】
アークろう付けのために、通常は、DIN ISO 14175に従うアルゴンI1又はCO、O若しくはHの混合物を含むAr混合ガスを使用することができる。WIGろう付けの場合は、市場で入手可能なWIGトーチを使用することができる。
【0017】
EP2407267B1及びEP2407268B1からは、シールドガス案内部と、トーチ連結ボディと、一端部においてトーチ連結ボディに連結するトーチネックと、トーチネックの他端に配されるトーチヘッドを有する溶接トーチが知られており、該トーチネックは、インナーパイプと、アウターパイプと、インナーパイプとアウターパイプの間に配される絶縁チューブを有する。
【0018】
この種の溶接トーチは、従来技術においてとりわけミグ溶接(MIG)に使用される。例えば、そのような溶接トーチは刊行物DE102004008609A1に記載されている。この溶接トーチでは、溶接電流は、コンタクトノズルを介して、インナーパイプ内にある溶接ワイヤへ供給される。この場合、トーチの外側の部分は、溶接電流がトーチハウジングを通って流れることを阻止するために、インナーパイプから電気的に絶縁されている。溶接プロセスにおいては、溶接ワイヤの加熱が行われ、熱は部分的に溶接トーチへ導かれる。
【0019】
そのタイプに応じ、溶接プロセスにおいていずれにせよ使用される溶接ガスは、これは大抵は不活性シールドガスであるが、インナーパイプの冷却のために可能な限り効果的に(効率的に)使用可能である。インナーパイプの効果的な冷却は、ガスがインナーパイプの外周に沿ってフラットなチャンネル(流路)で流動する場合に達成可能である。インナーパイプの外側にガス流チャンネルを形成するために、従来技術では、ジャケットパイプ(Mantelrohr)がインナーパイプ上に使用される。この場合、インナーパイプとジャケットパイプの組合体は絶縁チューブによって外側のハウジングパイプから絶縁される。
【0020】
そのタイプに応じ、シールドガスの供給は、まず、典型的にはトーチ連結ボディ内の孔の形で構成されているシールドガス供給部を介して行われる。シールドガスの供給はインナーパイプに関し非対称的に行われるため、シールドガスはインナーパイプの周囲で可及的に一様に分散されることが望まれる。この目的のために、例えばEP2407267B1においては、トーチ連結ボディの内部かつインナーパイプの周囲に外側リング状チャンネルを形成し、これによって、シールドガスをインナーパイプの周りで分散可能にすることが提案されている。そのため、シールドガスは、トーチ連結ボディの孔から出発し、外側リング状チャンネル及びラジアル(半径方向)ガスチャンネルを介して、インナーパイプと絶縁チューブとの間の中間空間へ、場合によっては更に絶縁チューブとアウターパイプとの間の中間空間へと流れる。
【0021】
EP0074106A1からは、自動溶接装置のための連続溶融電極を用いた溶接のための水冷式シールドガス溶接トーチが知られている。互いに対し電気的に絶縁されている2つの外側プロフィルパイプの同軸的配置(それらの溝(複数)がチャンネル(複数)として構成されている)によって、空気噴出による周期的なクリーニングが達成されるものとされている。これらのチャンネルはガスノズルホルダのガスノズルを有するトーチヘッドからトーチボディへと延伸している。内側シールドガスチャンネルは、同時に、ガスノズルの周期的クリーニング中に噴出空気をガスノズル内へ供給するために役立つものとされている。外側水チャンネルは、ガスノズルホルダが直接的に冷却されるよう、ガスノズルホルダにまで延伸している。トーチボディと結合部分の特別な構造によって、シールドガス又は噴出及び冷却水のための圧縮空気は、同軸配置されたプロフィルパイプ(複数)へ供給される。
【0022】
EP2487003A1からは、アーク溶接装置の溶接銃が知られている。該溶接銃は、溶接端に、通過チャンネルを包囲する壁部によってスリーブ状に構成されたガスノズルと、ガスノズル内に配されガス流出開口(複数)を有するガス分散(分配)器とを有する。ガスノズルは、連結端の内部の壁部の内周側に結合構造体を有する。このガスノズルでは、更に、壁部の内周側に、ガス射出端の方向に見て結合構造体の後方に、周りに延在する一続きの突出部が形成されており、該突出部は当該突出部の周辺と比べて通過チャンネルの横断面をより小さくしている。更に、ガス分散器は、ガス射出端の方向に見てガス流出開口(複数)の手前に、対応する後方突出部(Ruecksprung)を有する。
【0023】
この場合(EP2487003A1)の欠点は、ガス分散器がリング状溝によって保護及び保持されている一方で、リング状溝と固定的に結合していないことである。このため、非螺合状態にあるガス分散器の脱落防止は形成されていない。なぜなら、ガスノズルはこのトーチにワイヤ案内部及びガス分散器と共に外嵌されるからである。かくして、ガス分散器は脱落防止的態様でガスノズルに結合されておらず、トーチの他の部分に結合されている。
【0024】
EP2487003A1に記載されたガスノズルの自動クリーニングは同様に不可能である。というのは、ガスノズルは専らリング状溝によって保持されるが、固定的に結合されていないからである。従って、ガスノズルは螺合状態であってもひねりに対して保護されていない。
【0025】
JP1985072679Aからは、アーク溶接のための方法が知られている。シールドガスは、インナーパイプに配されたガスノズルから中心部を流れる。トーチボディに外嵌可能なガス分散器は電気絶縁性材料で製造されている。
【0026】
JP11982152386Uからは、溶融電極(消耗電極)を用いるアーク溶接のためのトーチが知られており、シールドガスは中心部においてトーチネック内へ導かれ、ガス分散器の孔(複数)を介して半径方向に射出する。ガス分散器は電気絶縁性材料で製造されている。
【0027】
DE60224140T2からは、金属シールドガス溶接に使用するための溶接トーチが知られている。溶接トーチは、ネック部分と、該ネック部分の第1端部に配されるディフューザを有する。コンタクトチップ(Kontaktspitze)はディフューザから延伸する。連結手段はネック部分の第2端部に設けられており、ネック部分を電流ケーブル装置連結するために役立つ。ネック部分は、導電体と、長手方向に延伸する通路を有する。ガスは、溶接部が溶接トーチの使用により製造される場合、大気汚染物質に対し溶接部を保護するために役立つ。ガスは、電流ケーブル装置から通路に沿って流れ、ディフューザの開口(複数)を介して溶接トーチから流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】EP2407267B1
【文献】EP2407268B1
【文献】DE102004008609A1
【文献】EP0074106A1
【文献】EP2487003A1
【文献】JP1985072679A
【文献】JP11982152386U
【文献】DE60224140T2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
これらのタイプの溶接トーチの場合、とりわけMSG溶接トーチの場合、前端部において、とりわけ、ワイヤ電極と電流ノズル(Stromduese)内の溶接電位とのコンタクト及び溶接金属(Schweissgut)に対する、とりわけワークピースに対するシールドガス流の整流化(Gleichrichtung)及び層流化(Laminarisierung)が行われる。更に、流体冷却システムでは、プロセス熱の一部は冷却回路(循環回路)へと伝達される。
【0030】
従って、摩耗部分(Verschleissteile)、例えば電流コンタクト(電極)ノズルを適切に冷却するためには、流体冷却における熱源からの距離、即ち冷却回路のための溶接プロセスは、可及的に短くなるよう構成される必要がある。シールドガス流の整流化及び層流化のためには、シールドガス案内部における、とりわけ摩耗部分の内部における、適切な幾何学的構造による十分な滞留時間が必要である。更に、MSG溶接トーチのアウターパイプとインナーパイプは、互いに対し電気的に絶縁されている必要がある。
【0031】
溶接プロセスを実行する場合、摩耗部分には、プロセスパラメータに応じて程度の差はあるがスパッタ(飛散溶融金属)が付着する。このスパッタは、MSG溶接トーチの場合、自動化案内システムにおいては一般的に、刃具(フライス:Fraeser)を有する動力駆動式クリーニング装置によって除去される。この機械的負荷に対し、摩耗部分は、とりわけガスノズル又は電流コンタクトノズル及び絶縁部材は、耐性でなければならない。
【0032】
既知のトーチネックの場合、とりわけ本出願人の製品シリーズ“ABIROB(登録商法)W500”の場合、シールドガスはインナーパイプの中心部において(zentral)案内されることができる。シールドガスが付加ワイヤ(Zusatzdraht)と一緒にインナーパイプの内部を案内されることができるそのような構造は、セントラル(中心部)ガス供給と称される。従って、インナーパイプは一重壁に構成可能である。ノズルアダプタ(Duesenstock)の孔(複数)を介して、シールドガス流は半径方向にスパッタシールド内へ流入し、ガスノズルの方向に流出する。この場合、スパッタシールドは、ガス分散に加えて、電気的絶縁も行うように構成されている。
【0033】
スパッタシールドは、例えば刃具を用いて、電流及びガスノズルをクリーニングする場合、損傷されないよう、該刃具に対し十分な距離を有する。
【0034】
更なる既知のトーチネックの場合、とりわけ本出願人の製品シリーズ“ABIROB(登録商法)W600”の場合、シールドガスは、インナーパイプ内を非中心部において(中心外でないし偏心的に:dezentral)案内される。ディセントラル(非中心部ないし中心外)ガス案内の場合、シールドガスはインナーパイプの二重壁内で案内される。換言すれば、インナーパイプは、この場合、多重パイプ(Verbundrohr)ないしは組み合わされたパイプ・イン・パイプ結合体であり、(1つの)パイプは、両パイプ壁の間に中間空間(複数)が形成可能であるよう、輪郭(外形)が形成される。孔(複数)を介して、シールドガス流は半径方向へ流出する。そして、ガス分散器を介して、シールドガスはガスノズル内へ到達する。ガス分散器は、フェノール成形材料から構成され、電気絶縁体として機能するが、ガス分散器によって、シールドガスが分散されると共に、夫々のパイプ端部におけるアウターパイプとインナーパイプの間の絶縁も実現される。この理由から、ガス孔(複数)は、電流及びガスノズルをクリーニングする場合、刃具によって一緒にクリーニングされることができない。ガス分散器は、刃具の回転軸の周りで回転可能に支承(軸受支持)される。かくして、クリーニングプロセス中における溶解したスパッタによる機械的負荷は最小化されるが、刃具を用いた最適なクリーニングは実現することはできない。換言すれば、この構造によっては、(圧縮空気駆動型)刃具の使用は可能ではない。この場合、代替的に、従来技術により、絶縁を保証するスパッタシールドが提供されるが、これによっては、ガス分散器による層状のガス案内のプラスの効果は実現されることができない。
【0035】
本出願人の製品シリーズ“ABIROB(登録商法)TWIN600W”のような更なる既知のトーチネックの場合、シールドガスはインナーパイプ内を非中心部において案内される。インナーパイプの孔(複数)を介して、シールドガス流は半径方向へ流出する。ガス分散器を介して、シールドガスは軸方向にスパッタシールドへ向かって流れ、樹脂スパッタシールドから半径方向にガスノズル内へ再び導かれる。ガス分散器はフェノール成形材料から構成され、スパッタシールドはグラスファイバシリコンから構成される。ガス分散器とスパッタシールドは回転可能に支承(軸受支持)されている。従って、スパッタシールドのガス孔(複数)は、刃具によって電流及びガスノズルをクリーニングする場合、一緒にクリーニングされることができない。
【0036】
従って、上記から結論されることは、流れの層流化に対する構造上の要求とプロセス熱伝達の最大化に対する構造上の要求は正反対であることである。更に、既知のトーチの場合、摩耗部分を損傷することなく、例えば刃具を用いた、クリーニングを自動化することは可能ではないという欠点がある。更に、既知のトーチの場合、ガスノズルとガス分散器は1つの構造群ではなく、別々の部材であり、これらは喪失防止可能に互いに結合(verbunden)されていないため、とりわけ交換の際に容易に喪失し得るという欠点がある。
【0037】
上記の欠点を出発点とし、本発明の課題は、層状に流れるシールドガス流のためのガス案内が非中心部において即ち(相互結合式:Verbund)インナーパイプの内部のチャンネル(複数)によって案内される場合にも、とりわけ刃具を用いた、トーチの自動化クリーニングを可能にする、改善されたガスノズル及び改善されたトーチネックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記の課題は、請求項1に記載のシールドガス流を放出するためのガスノズル、請求項10に記載の少なくとも1つのワークピースを熱的に接合するための、とりわけアーク接合するための、好ましくはアーク溶接又はアークろう付けするための、トーチネック、請求項14に記載のそのようなトーチネックを備えたトーチ、及び請求項15に記載の少なくとも1つのワークピースを熱的に接合するための方法、によって解決される。
詳しくは、本発明の第1の視点により、ガス分散部分を備えたガスノズルのガス放出部からシールドガス流を放出するためのガスノズルが提供される。該ガスノズルは、少なくとも該ガス分散部分の部分領域において、シールドガス流のための流動空間を形成するよう二重壁状に構成されている
前記ガス分散部分と該ガスノズルは一体的に構成されている(形態1)。
更に、本発明の第2の視点により、
少なくとも1つのワークピースをアーク接合するための、又はアーク溶接若しくはアークろう付けするための、トーチネックが提供される。該トーチネックは、
該トーチネックに配された電極又はワイヤであって、当該電極又は当該ワイヤとワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤと、
ガス放出部からシールドガス流を放出するための本発明のガスノズルと
を備える(形態10)。
更に、本発明の第3の視点により、本発明のトーチネックを備えたトーチが提供される(形態14)。
更に、本発明の第4の視点により、少なくとも1つのワークピースをアーク接合するための、又はアーク溶接若しくはアークろう付けするための、方法が提供される。
該方法は、電極又はワイヤとワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤと、本発明のガスノズルから流出するシールドガス流を使用すること、
シールドガス流の流動方向は、該ガスノズルの内部におけるシールドガス流の流動時間ないし流動距離が延長されるよう、ガス分散部分によって少なくとも一回変更されること、
シールドガス流は、該ガスノズルのガス放出部において該電極又は該ワイヤを実質的に包囲すること
を特徴とする(形態15)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記本発明の第1の視点参照
形態)形態1のガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分は、該ガスノズルに固定されたガス分散器によって構成されていることが好ましい。
(形態)形態1又は2のガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分は周囲に少なくとも1つのガス流出開口又は互いに対しほぼ等間隔をなして配置された複数のガス流出開口を有し、そのため、前記ガス放出部は該ガス流出開口と流体連通状態にあることが好ましい。
(形態)形態1~の何れかのガスノズルにおいて、
該ガスノズルとこれに引き続くガス分散部分面によって規定される該ガスノズルの内径は、ガス流の上流側へ一定であるか又は円錐状に推移するよう形成されていることが好ましい。
(形態)形態のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器は、金属材料、又は銅若しくは銅合金、又はCuCrZr若しくはCuDHP、から又は耐衝撃性ガラスセラミックスから形成されていることが好ましい。
(形態)形態又はのガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分ないし前記ガス分散器は、少なくとも部分的に、実質的に面一に該ガスノズルに結合していることが好ましい。
(形態)形態又は又はのガスノズルにおいて、
前記ガス分散器は、該ガスノズルに形状結合的に及び/又は力結合的に及び/又は材料結合的に結合されていることが好ましい。
(形態)形態又は形態の何れかのガスノズルにおいて、
前記ガス分散器は、該ガスノズルに分離可能に結合されている、又は螺合又は圧入されていることが好ましい。
(形態)形態又は形態の何れかに記載のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器は、該ガスノズルに固定的に結合されている、又は接着、ろう付け又は該ガスノズルへ圧入されていることが好ましい。
(形態10)上記本発明の第2の視点参照。
(形態11)形態10のトーチネックにおいて、
減圧のための焼結材料からなるリング状フィルタが設けられていること、
該リング状フィルタは、ガスノズル内の、部分領域において二重壁状に構成されたガス分散部分の内部の下流側に配置されていることが好ましい。
(形態12)形態10又は11のトーチネックにおいて、
電気絶縁部材は、電流コンタクトノズルと電気的に接続されている該トーチネックのインナーパイプを、該インナーパイプから離隔されている該トーチネックのアウターパイプに対して電気的に絶縁することが好ましい。
(形態13)形態12のトーチネックにおいて、
前記ガス放出部から見て前記電気絶縁部材の前方に配置された、溶接スパッタから保護するためのスパッタシールドが設けられていることが好ましい。
(形態14)上記本発明の第3の視点参照。
(形態15)上記本発明の第4の視点参照。
【0040】
本発明に応じ、[ガスノズルの]ガス放出部からシールドガス流を放出するためのガスノズルはガス分散部分を備え、該ガスノズルは、少なくとも該ガス分散部分の部分領域において、シールドガス流のための流動空間を形成するよう二重壁状に構成されている。
【0041】
このようにして、構造群の内部に、即ちガスノズルとガス分散部分の間に、追加的に(付加的に)画成(形成)される流動空間ないし中空空間が形成され、ないしは、この流動空間への又はこの流動空間から外への移行部(複数)が形成される。シールドガス流のための流動チャンネルは、二重壁状のガス分散部分におけるシールドガス流の方向反転案内(Umlenkung)によって延長されており、そのため、トーチヘッドの前端部に所望の層状流動が形成され、ガスノズルが既知のシステムのものと比べて短縮化されても、プロセス熱の伝達は最大化される。
【0042】
ガスノズルは、流体冷却部を熱源(溶接プロセス)の可及的近くに配置するために、即ち熱源から冷却回路までの距離が可及的に短くなるよう、既知のノズルと比べて短縮されている。
【0043】
ディセントラルガス分散の場合、ガスノズルにおけるシールドガス流の分散及び層流化は最早インナーパイプないしノズルアダプタ(Duesenstock)を介して実現されることはできない。更に、別個のガス分散部の孔(複数)は、刃具を用いて機械的にクリーニングされることはできない。このようにして、短縮されたガスノズルの場合であっても、トーチヘッドの前端部における層状流動が形成されることができる。構造群の内部に即ちガスノズルとガス分散部分の間に追加的に形成された流動空間を有するガスノズルの本発明に応じた構成のために、プロセス熱源から冷却回路への距離が最小でも、シールドガス流を層流化すること、同時に、組込型(一体型)ガス分散器のガス孔(複数)を刃具によって自動化クリーニングすることが可能にされる。換言すれば、トーチは刃具を用いた自動化クリーニングに対し非感受性(unempfindlich)である。
【0044】
本発明の第1の有利な発展形態に応じ、ガス分散部分とガスノズルは一体的に(モノリシックに)構成されている。例えば、ガス分散部分を備えたガスノズルは、3Dプリント技術を用いて格別に簡単かつ効率的方法で製造可能である。
【0045】
代替的に、ガス分散部分は、ガスノズルに固定されたガス分散器によって構成されることが考えられる。このようにして、ガスノズルとガス分散器は1つの構造群(構造体ないし構造ユニット)を構成する。更に、ガス分散部分がガスノズルに喪失(離脱)防止的に結合されることによって、喪失(離脱)防止が実現される。とりわけガスノズルが交換されるとき即ちトーチに螺合されていない状態においても、ガス分散器はガスノズルに喪失防止的態様で保持される。
【0046】
本発明の更なる有利な一形態により、ガス分散部分は周囲に(周側に:umfangseitig)少なくとも1つのガス流出開口、とりわけ互いに対しほぼ等間隔をなして配置された複数のガス流出開口を有し、そのため、ガス放出部は1つ以上のガス流出開口と流体連通状態にあるよう構成されている。これらのガス流出開口によって、該開口の放射状の(周方向の)分散配置状態に応じて、シールドガスは周にわたって一様に分散されて流出する。従って、開口(複数)を介して流出するガスはガスノズル内で方向変換されかつ反転するよう案内(umgeleitet)され、そのため、ガス放出の方向において、層流化の観点から改善されたシールドガスのガス流が生成される。
【0047】
この理由から、刃具を用いたクリーニングに対し非感受性の、ガスノズルに取り付けられた(付着形成された)付加部材にガス流出開口を設けることは、有利である。同時に、ガスノズルと付加部材からなる構造群は、シールドガスのための流動チャンネルの延長(部)を形成するが、そこでは、トーチネックの前端部において所望の層状流動が既に形成可能である。
【0048】
本発明の有利な一発展形態では、ガスノズルとこれに引き続くガス分散部分面によって規定される該ガスノズルの内径は、ガス流の上流側へ(向かって)一定であるか又は円錐状に推移するよう即ち狭窄するよう、形成されている。このようにして、とりわけ機械的に案内される刃具は問題なく(ガス放出部から)ガスノズル内に導入され、ガス流出開口にまで移動されることができ、そのため、ガスノズル及びガス流出開口の簡単なクリーニングが実現される。
【0049】
本発明の更なる有利な一変形形態によれば、ガス分散器は、金属材料、とりわけ銅又は銅合金、から又はセラミックスから製造されている。この場合、ガス流出開口は通常のセラミック又はポリマ材料の場合刃具による自動化クリーニングは可能ではないため、金属材料が格別に有利である。現代の機械加工可能なガラスセラミックスも使用可能であるが、一般的に極めて高価でありかつプレス加工も煩雑である。
【0050】
この理由から、ガス孔(複数)の自動化クリーニングを、とりわけディセントラル(非中心部ないし中心外)案内型のガス分散の場合であっても、可能にするために、ガスノズルの少なくともガス分散部分は金属材料から製造されることが好ましい。更に、金属材料の場合、刃具処理の際に、耐衝撃性が大きいため、損傷の可能性は極めて低い。刃具クリーニング時の研磨力に抵抗するために、材料の大きな硬度が必要になる。本発明の意義において、耐衝撃性、高硬度かつ温度抵抗性の非金属材料の使用も考えられる。
【0051】
本発明の一発展形態では、ガス分散部分は、少なくとも部分的に、実質的に面一に(なるよう)該ガスノズルに結合している(付着形成されている)。このようにして、とりわけ機械的に案内される刃具は問題なくガスノズル内へ導入され、ガス流出開口にまで運ばれることができ、そのため、適切なクリーニングが可能になる。内部の部材、とりわけ電流コンタクトノズル及びそのホルダはそのために変更される必要はない。
【0052】
本発明の更なる有利な一形態によれば、ガス分散器は、ガスノズルに形状結合的に(formschluessig)及び/又は力結合的に(kraftschluessig)及び/又は材料結合的に(ないし一体的に:stoffschluessig)結合されている。
【0053】
力結合的ないし摩擦結合的結合とは、この結合が、結合要素(複数)がそれらの結合表面同士を互いに押し付け合うことによって力(複数)を伝達することに起因することと理解されるものである。これらの面間には、結合部に作用する外力よりも大きい摩擦抵抗が生じる。力結合的結合の場合、力とトルクは摩擦力を介して伝達される。
【0054】
形状結合的結合は、結合されるべき部材(ワークピース)又は結合要素の外形形状が力伝達を可能にし、それによって結合(Zusammenhalt)を形成することによって、形成される。形状結合的結合は、少なくとも2つの結合相手部材(対応部材)の(輪郭ないし表面形状間の)嵌め合い(蟻継等)によって形成される。そのため、結合相手部材同士は、力伝達が遮断されてもされなくても分離されることはできない。換言すれば、形状結合的結合では、一方の結合相手部材は他方の結合相手部材(の運動)を妨害している。形状結合では、部材(複数)はそれらのぴったり適合する(嵌り合う)(表面)形状によって互いに結合されている。
【0055】
材料結合的結合は、材料同士の一体化によって形成される、即ち、部材(複数)は、凝集(Kohaesion)(凝集力:Zusammenhangskraft)及び粘着(Adhaesion)(粘着力:Anhangskraft)によって互いに結合される。換言すれば、結合相手部材は原子間力又は分子間力によって一体化される。材料結合的結合は、同時に、分離可能な結合ではなく、例えばろう付け、溶接、接着又は加硫(Vulkanisieren)のように、結合手段(材)の破壊によってのみ分離可能である。
【0056】
本発明の更なる有利な一変形形態では、ガス分散器は、ガスノズルに分離可能に結合、とりわけ螺合又は圧入されている。代替的に、ガス分散器は、ガスノズルに固定的に結合、とりわけ接着、ろう付け又は該ガスノズルへ圧入されている。このようにして、溶接トーチへのガス分散器の形状結合的及び/又は力結合的結合が実現される。ところで、分離可能な結合とは、当該結合が、部材ないし結合要素が破壊されることなく、引き離し可能であることと理解されるものである。これに対し、分離不能な結合は、部材ないし結合要素が破壊されることによってのみ、引き離し可能である。
【0057】
更に、ガス分散器は、リング状に、回転対称的に又はスリット入りに構成可能である。有利には、8つの回転対称的流出開口が使用され、ガス分散器は当該ガス分散器の外周の刻み付表面を介してガスノズル内に圧入される。8つの孔を備える形態の利点は、それによって十分に、シールドガスのための「滞留面(Stauflaeche)」が形成され、同時に、安定的な接合プロセスのために必要な体積流を達成するためには、8つの流出開口で十分であることである。
【0058】
本発明の独自の技術的思想により、少なくとも1つのワークピースを熱的に接合するための、とりわけアーク接合するための、好ましくはアーク溶接又はアークろう付けするための、トーチネックが提供される。該トーチネックは、当該トーチネックに配された電極又はワイヤであって、当該電極又は当該ワイヤとワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤを備える。更に、該トーチネックは、ガス放出部からシールドガス流を放出するためのガスノズルを備える。このガスノズルは、上記のガスノズルとすることができる。
【0059】
上述のように、溶接トーチでは、とりわけ機械化トーチでは、溶接プロセス時に、ガスノズル及びガス流出開口に汚染が生じ得る。これらの汚染された部材は、刃具によってクリーニングされ、この方法で溶接スパッタが除去される。摩耗部分、とりわけガスノズル、電流コンタクトノズル又は絶縁部材は、従って、刃具処理時の機械的負荷に対し耐性でなければならない。
【0060】
従来技術では、これらのガス流出開口は、同時にトーチヘッドのインナーパイプとアウターパイプの間の電気的絶縁を形成するために役立つポリマ又はセラミック材料部分に形成されている。この場合の欠点は、クリーニングのための刃具は夫々のポリマ又はセラミック材料部分にまで到達しないことである。他方では、刃具による摩耗部分の損傷の危険はあまりにも過大であろう。
【0061】
本発明に応じたトーチネックの場合、これらの欠点は回避される。とりわけインナーパイプとアウターパイプを有するトーチの場合、電流及びプロセス熱伝達はインナーパイプを介してのみ案内されることができる。従って、シールドガス流をアウターパイプを介して又はアウターパイプとインナーパイプの間において導くことが好都合である。トーチ前端部における流動層流化のための時間を長くするために、ガスノズルの幾何学的形状(構造)に基づく追加的な横断面及び流動方向の変化が行われる。
【0062】
従って、ガス分散部分とガス流出開口(複数)を有するガスノズルの相応の幾何学的形状を備えるようトーチネックを構成することにより、この場合ガスノズルはシールドガス流のための流動空間を形成するために少なくともガス分散部分の部分領域において二重壁状に構成されているが、熱源からの距離が小さい場合であっても、適切な幾何学的形状によって、シールドガス流の整流化及び層流化のために十分な滞留時間が得られる。
【0063】
本発明の第1の好ましい実施形態に応じ、電気絶縁部材は、電流コンタクトノズルに電気的に接続(結合)されたトーチネックのインナーパイプを、該インナーパイプから離隔されたトーチネックのアウターパイプに対し電気的に絶縁する。
【0064】
既知のトーチでは、シールドガスを分散すると共に、夫々のパイプ端におけるアウターパイプとインナーパイプの間の絶縁も実現する絶縁されたガス分散器が使用される。この構造によっては、自動化クリーニングは、とりわけ圧縮空気駆動式刃具の使用によっては、可能ではない。この場合、代替措置として、従来技術はスパッタシールドを提供する。該スパッタシールドは、絶縁は保証するものの、それによって、ガス分散器による層状ガス案内のプラスの効果を実現することはできない。
【0065】
ディセントラルガス案内の場合、シールドガスはインナーパイプの二重壁内で案内される。このため、インナーパイプは本来的に多重パイプないしは組み合わされたパイプ・イン・パイプ結合体であるが、この場合、(1つの)パイプは、両方のパイプ壁の間に中間空間(複数)が形成されるよう、輪郭(外形)が形成されている。
【0066】
電気的絶縁は、インナーパイプとアウターパイプの間で、好ましくは両パイプの端部におけるカバー部材によって、行われる。この場合、トーチの外側にある部材(複数)は、トーチハウジングに溶接電流が流れることを阻止するために、インナーパイプから電気的に絶縁されている。溶接プロセスにおいて、溶接ワイヤの加熱が行われ、熱は部分的に溶接トーチへ導かれる。
【0067】
絶縁がガス案内から機能的に分離されているように、絶縁を行うことも可能である。インナーパイプとアウターパイプの間の電気的絶縁のための摩耗部分はより単純(簡素)に、従ってより好都合に構成されることができる。更に、摩耗部分の損傷のないクリーニング用刃具の使用が可能になる。
【0068】
スパッタ防護において絶縁と流動案内を分離することによって、絶縁(部材)は、例えばガスノズルホルダの形でのインナー及びアウターパイプの前方パイプ端の端部におけるカバー部材及びスペーサの形で、構造的に格段により単純にかつ壁が肉厚に構成されることができる。このことは、とりわけ、機械的負荷が突発した場合の、とりわけ溶接トーチとワークピースが衝突した場合の、衝突安全性(Crashsicherheit)即ちトーチネックの位置安定性が格段に改善可能であること、及び、絶縁されていないガス分散器ないしガス分散部分をガスノズルに組み込む(備える)ことが可能であることを意味する。
【0069】
本発明のトーチネックの更なる有利な一発展形態では、減圧のための焼結材料からなるリング状フィルタ(フィルターリング)が設けられており、該リング状フィルタは、ガスノズル内の、部分領域において二重壁状に構成されたガス分散部分の内部の下流側に配置されている。ガスノズルの短縮化によって、ノズル内におけるシールドガスの滞留時間は、シールドガスの層流化を保証するためには、最早十分でないことが起こり得る。この理由から、焼結材料からなるリング状フィルタが減圧のために設けられている。
【0070】
本発明の更なる有利な一形態では、溶接スパッタから保護するためのスパッタシールドが設けられている。シールドガスはガス分散器ないしガス分散部分を介して軸方向にスパッタシールドへ流れ、当該スパッタシールドから半径方向においてガスノズル内へ再び導かれる。スパッタシールドは、好ましくはガラス繊維充填PTFEのような温度安定性(耐熱性)絶縁体から構成され、刃具による電流ノズル及びガスノズルのクリーニングの際に、スパッタシールドが刃具によって損傷されないよう、刃具に対する十分な距離を有する。
【0071】
本発明の更なる独自の一技術的思想により、トーチは、トーチネック、とりわけ上記のトーチネックを備える。
【0072】
本発明の更なる独自の一技術的思想により、少なくとも1つのワークピースを熱的に接合するための、とりわけアーク接合するための、好ましくはアーク溶接又はアークろう付けするための、方法であって、電極とワークピースとの間にアークを生成するための電極を使用する方法が提供される。シールドガスは、ガスノズルから、とりわけ上記の何れかのガスノズルから流出する。シールドガス流の流動方向は、ガスノズルの内部におけるシールドガス流の流動時間ないし流動距離が延長されるよう、ガス分散部分ないしガス分散器によって少なくとも一回変更され、シールドガス流は、ガスノズルのガス放出部において電極を実質的にリング状に包囲する。
【0073】
本発明の更なる目的、利点、特徴及び応用可能性は、図面を用いた実施例についての以下の説明から明らかになる。この場合、説明される及び/又は図示される全ての特徴はそれ自体で又は任意の有効な(意味のある)組み合わせで本発明の対象を、特許請求の範囲(各請求項)又は請求項の参照引用(Rueckbeziehung)におけるそれらの関係とは独立しても、本発明の対象を構成する。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】ガスノズルを備えた溶接トーチのトーチネックの一例の一部分。
図2】ガス分散部分を備えたガスノズルの一例の詳細図。
図3】ガス分散部分を備えたガスノズルの一例の詳細図。但し、ガス分散部分とガスノズルは一体的に構成されている。
図4図1のトーチネックの断面図。
図5図1のトーチネックの一部分と刃具の一例。
【実施例
【0075】
同一の又は同一機能の部材(構成要素)は、実施例を用いた図面の以下に説明される各図において、可読性の改善のために、(同じ)図面参照符号が付記されている。
【0076】
図1は、少なくとも1つのワークピースを熱的に接合するための、とりわけアーク接合するための、好ましくはアーク溶接又はアークろう付けするための、溶接トーチのノズル(チップ)アダプタ(Duesenstock)7を備えたトーチネック10の一例を示す。金属(薄)板製造(分野)においては、標準的に、“MIG”、“MAG”及び“WIG”溶接が使用される。
【0077】
図5は、追加的に刃具(Fraeser)18も示されている点において、図1と相違する。
【0078】
シールドガス支援(使用)型消耗電極式アーク溶接法(MSG)において、“MIG”は“Metall-Inertgas”の略語であり、“MAG”は“Metall-Aktivgas”の略語である。MAG溶接は、活性ガスを用いる金属・シールドガス溶接法(Metall-Schutzgasschweiss-Prozess:MSG)であり、この方法では、連続的に供給され溶融するワイヤ電極とワークピース(母材ないし溶接対象)との間にアークが発生する。溶融する電極は溶接シームの形成のための溶加材(Zusatzwerkstoff)を供給する。
【0079】
シールドガス支援(使用)型非消耗電極式アーク溶接法(WSG)において、“WIG”は“Wolfram-Inertgas”の略語である。本発明に応じた溶接装置は機械操作式溶接トーチとして構成可能である。
【0080】
アーク溶接装置は、溶接金属の溶融のために、ワークピースと消耗式又は非消耗式溶接電極との間にアークを生成する。溶接金属及び溶接部位はシールドガス流によって周囲の空気の大気ガス、主としてN、O、H、に対して遮蔽(保護)される。
【0081】
この場合、溶接電極は、アーク溶接機に結合されている溶接トーチのトーチボディに設けられている。トーチボディは、通常、内部に位置し溶接電流を案内する一群の部材(複数)を含むが、これらの部材は、溶接電流をアーク溶接機内の溶接電流源からトーチヘッドの先端へ向かって溶接電極へと導き、そして、そこから、ワークピースへのアークを生成する。
【0082】
シールドガス流は、溶接電極、アーク、溶接浴及びワークピースの熱流入ゾーンの周囲を流れ、その際、これらの領域へは溶接トーチのトーチヘッドを介して供給される。ガスノズル1はシールドガス流をトーチヘッドの前端部へ導くが、そこで、シールドガス流はトーチヘッドから溶接電極の周りでほぼリング状に流出する。
【0083】
図1及び図5に記載された溶接トーチのトーチボディのトーチネック10は、この実施例では、ガスノズル1を有する。このガスノズル1は、当該ガスノズル1の前端部に形成されたガス放出部2からシールドガス流を放出する。
【0084】
図1図3及び図5から更に分かるように、ガスノズル1は、少なくともガス分散部分3の部分領域において、シールドガス流のための流動空間を形成するために二重壁状に構成されている。従って、ガス分散部分3とガス流出開口(複数)8を有するガスノズル1の相応の幾何学的形状(構造)を有するトーチネック10の構造に基づき、熱源に対する距離が小さい場合であっても、シールドガス流の整流化及び層流化のための十分な滞留時間が保証される。
【0085】
図2及び図3に応じたガスノズル1の構成は、ガス分散部分3とガスノズル1が図3の場合には一体的に構成されているという点において互いに相違する。例えば、ガス分散部分3を備えたガスノズル1は、3Dプリント技術を用いて製造可能である。
【0086】
これに対し、図2は、ガス分散部分3はガスノズル1に設けられるガス分散器4によって構成されている。このようにして、ガスノズル1とガス分散器4は1つの構造群を形成する。
【0087】
ガスノズル1の図2及び図3に応じた両構成では、ガス分散部分3は、周囲側に(周方向に)互いに対しほぼ同じ間隔をなして配置された複数のガス流出開口8を有し、ガス放出部2とガス流出開口8は流体連通状態となるよう構成されている。
【0088】
シールドガス流は、これらのガス流出開口8を介して、その(全)周にわたる当該開口8の放射状の分散配置に応じて、一様に分散されて流出する。従って、ガス流出開口8を介して流出するシールドガス流は、ガスノズル1内において方向変換しかつ反転するよう案内(umgeleitet)されることによって、ガス放出の方向において、層流化の観点から改善されたシールドガスのガス流が生成される。
【0089】
ガスノズル1とガス分散器4ないしガス分散部分3からなる構造群は、トーチネックの前端部において所望の層状流れが既に形成可能な、シールドガス流のための流動チャンネルの延長(部)を形成する。
【0090】
図1図5から更に分かるように、ガスノズル1とこれに引き続くガス分散部分面6によって規定される該ガスノズル1の内径5は、シールドガス流の上流側へ(向かって)一定であるか又は円錐状に推移するよう即ち狭窄するよう、形成されている。溶接トーチの場合、とりわけ機械式(自動)トーチの場合、溶接プロセス時に、ガスノズル1及びガス流出開口8に汚染が生じ得る。これらの汚染された部材は、刃具18を用いて自動的にクリーニングされ、このようにして、溶接スパッタが除去される。従って、摩耗部分、とりわけガスノズル1、電流コンタクト(電極)ノズル11又はスパッタシールド9は、刃具処理(クリーニング)時の機械的負荷に対し耐性でなければならない。この種の刃具18の一例が図5に示されている。
【0091】
ガスノズル1の内径5の上記の構成によって、機械式に(自動的に)案内される刃具18は問題なくガスノズル1内に導入され、クリーニングされるべきガス流出開口8にまで移動されることができる。この理由から、ガスノズル1に配されるガス分散器4ないしガス分散部分3は刃具18を用いたクリーニングに対し非感受性(unempfindlich)であるといえる。
【0092】
図2に応じたガス分散器4を有するガスノズル1の複数部分構成の場合、ガス分散器4は少なくとも部分的に実質的に(内面が)面一になるようガスノズル1に嵌め込まれる。このようにして、ガスノズルの適切なクリーニングが可能になる。内部の部材、とりわけ電流コンタクトノズル11及びそのホルダは、そのために、変化される必要はない。このため、刃具18を用いた自動化クリーニングが容易に可能になる。
【0093】
図2に応じたガスノズル1の構成では、ガス分散器4はガスノズル1と形状結合的及び/又は力結合的及び/又は材料結合的に結合されている。ガス分散器4はガスノズル1と分離可能に結合されること、とりわけ螺合又は圧入されることがとりわけ可能である。代替的に、ガス分散器4はガスノズル1に固定的に結合されること、とりわけ接着、ろう付け又はガスノズル1に圧入されることが考えられる。
【0094】
図4に応じたトーチネック10の断面図から、更に図1及び図5からも分かるように、絶縁キャップ(Isolationskappe)15は、電流コンタクトノズル11に電気的に接続(結合)されたトーチネック10のインナーパイプ13を、該インナーパイプ13から離隔されたトーチネック10のアウターパイプ14に対し、好ましくは両パイプ13及び14の端部におけるカバーによって、電気的に絶縁する。トーチないしトーチネック10の外側の部材は、溶接電流がトーチハウジングを通って流れることを阻止するために、インナーパイプ13から電気的に絶縁される。
【0095】
今や(本発明に応じ)、ガスノズルホルダ17は、ガスノズル1のホルダとしての機能に加えて、シールドガス分散の機能も有する。従って、スパッタシールド9も絶縁キャップ15もシールドガス案内から機能的に分離されて構成されることができる。かくして、スパッタシールド9は、中実ないし無孔状に(vollwandig)、従ってスパッタシールドを貫通してシールドガスを案内する孔を有する伝統的な(従来の)構造の場合よりもより安定的に構成されることができる。これに対し、絶縁キャップ15は専らパイプの位置決め及び絶縁の課題を有し、他方、媒体流れ(漏れ)に対するシールを行う必要はない。
【0096】
シールドガス流は、インナーパイプ13[及びアウターパイプ14]の二重壁において案内される。電気絶縁部材15とシールドガスの流れ案内を分離することによって、電気絶縁部材は、例えばインナーパイプ13及びアウターパイプ14の前方パイプ端の端部におけるカバー部材及びスペーサの形で構成されることができる。
【0097】
図1図4及び図5から更に分かるように、溶接プロセスの際の溶接スパッタに対する防護のためのスパッタシールド9が設けられている。シールドガス流は、ガス分散器4ないしガス分散部分3を介して軸方向においてスパッタシールド9へと流れ、当該スパッタシールド9から半径方向においてガスノズル1内へ再び導かれる。スパッタシールド9は、好ましくはガラス繊維充填PTFEから構成され、刃具18による電流コンタクトノズル11及びガスノズル1のクリーニングの際に、スパッタシールド9が刃具18によって損傷されることのないよう、刃具18に対する十分な距離を取って配設される。
【0098】
今や(本発明に応じ)、スパッタシールド9は、溶接スパッタに対する防護のために設けられているだけではなく、電気絶縁部材15の機能をも有することによって、二重機能を果たす。このようにして、ただ1つの部材によって、即ちスパッタシールド9ないし電気絶縁部材15によって、二重機能が達成される。
【0099】
ガスノズル1を短くすることにより、ガスノズル1におけるシールドガス流の滞留時間が、シールドガスの層流化を保証する(確実に行う)ためには、最早十分でないことが起こり得る。この理由から、減圧のための焼結材料からなるリング状フィルタ12が設けられている。リング状フィルタ12は、ガスノズル1内の、部分領域において二重壁状に構成されたガス分散部分3の内部の下流側に配置されている。
【0100】
以下に本発明の可能な態様を付記する。
[付記1]ガス分散部分を備えたガスノズルのガス放出部からシールドガス流を放出するためのガスノズル。
該ガスノズルは、少なくとも該ガス分散部分の部分領域において、シールドガス流のための流動空間を形成するよう二重壁状に構成されている。
[付記2]上記のガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分と該ガスノズルは一体的に構成されている。
[付記3]上記のガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分は、該ガスノズルに固定されたガス分散器によって構成されている。
[付記4]上記のガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分は周囲に少なくとも1つのガス流出開口、とりわけ互いに対しほぼ等間隔をなして配置された複数のガス流出開口を有し、そのため、前記ガス放出部は該ガス流出開口と流体連通状態にある。
[付記5]上記のガスノズルにおいて、
該ガスノズルとこれに引き続くガス分散部分面によって規定される該ガスノズルの内径は、ガス流の上流側へ一定であるか又は円錐状に推移するよう形成されている。
[付記6]上記のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器は、金属材料、とりわけ銅又は銅合金(CuCrZr、CuDHP)、から又は耐衝撃性ガラスセラミックスから形成されている。
[付記7]上記のガスノズルにおいて、
前記ガス分散部分ないし前記ガス分散器は、少なくとも部分的に、実質的に面一に該ガスノズルに結合している。
[付記8]上記のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器は、該ガスノズルに形状結合的に及び/又は力結合的に及び/又は材料結合的に結合されている。
[付記9]上記のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器は、該ガスノズルに分離可能に結合されている、とりわけ螺合又は圧入されている。
[付記10]上記のガスノズルにおいて、
前記ガス分散器は、該ガスノズルに固定的に結合されている、とりわけ接着、ろう付け又は該ガスノズルへ圧入されている。
[付記11]少なくとも1つのワークピースを熱的に接合するための、とりわけアーク接合するための、好ましくはアーク溶接又はアークろう付けするための、トーチネック。
該トーチネックは、
該トーチネックに配された電極又はワイヤであって、当該電極又は当該ワイヤとワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤと、
ガス放出部からシールドガス流を放出するための、とりわけ上記の何れかの、ガスノズルと
を備える。
[付記12]上記のトーチネックにおいて、
減圧のための焼結材料からなるリング状フィルタが設けられている;
該リング状フィルタは、ガスノズル内の、部分領域において二重壁状に構成されたガス分散部分の内部の下流側に配置されている。
[付記13]上記のトーチネックにおいて、
電気絶縁部材は、電流コンタクトノズルと電気的に接続されている該トーチネックのインナーパイプを、該インナーパイプから離隔されている該トーチネックのアウターパイプに対して電気的に絶縁する。
[付記14]上記のトーチネックにおいて、
絶縁キャップの前方に配置された、溶接スパッタから保護するためのスパッタシールドが設けられている;
該スパッタシールドはとりわけガラス繊維充填PTFEからなる。
[付記15]上記の何れかのトーチネックを備えたトーチ。
[付記16]少なくとも1つのワークピースを熱的に接合するための、とりわけアーク接合するための、好ましくはアーク溶接又はアークろう付けするための、方法。
該方法は、電極又はワイヤとワークピースとの間にアークを生成するための電極又はワイヤと、とりわけ上記の何れかのガスノズルから流出するシールドガス流を使用する;
シールドガス流の流動方向は、該ガスノズルの内部におけるシールドガス流の流動時間ないし流動距離が延長されるよう、ガス分散部分によって少なくとも一回変更される;
シールドガス流は、該ガスノズルのガス放出部において該電極又は該ワイヤを実質的に包囲する。
【符号の説明】
【0101】
1 ガスノズル
2 ガス放出部
3 ガス分散部分
4 ガス分散器
5 内径
6 ガス分散部分面
7 ノズルアダプタ
8 ガス流出開口
9 スパッタシールド
10 トーチネック
11 電流コンタクトノズル
12 リング状フィルタ
13 インナーパイプ
14 アウターパイプ
15 絶縁キャップ
16 流動空間
17 ガスノズルホルダ
18 刃具
図1
図2
図3
図4
図5