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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】放熱シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20231226BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20231226BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231226BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
H05K7/20 F
C08L101/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021555989
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2020040294
(87)【国際公開番号】W WO2021095515
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019207038
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏
(72)【発明者】
【氏名】山内 志朗
(72)【発明者】
【氏名】春名 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小松 花乃絵
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/051721(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/131486(WO,A1)
【文献】特開2017-160440(JP,A)
【文献】特開2018-159083(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190233(WO,A1)
【文献】特開2009-274929(JP,A)
【文献】特開2012-031401(JP,A)
【文献】特開2008-013759(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031280(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
H01L23/29
H01L23/34 - 23/36
H01L23/373- 23/427
H01L23/44
H01L23/467- 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ粒子およびシリコーン樹脂を含む放熱シートであって、
前記放熱シート中の前記アルミナ粒子の含有割合が70体積%以上であり、
前記アルミナ粒子は、粒度分布において、粒径30~60μm、2~12μm、および0.1~1μmにそれぞれピークを有し、
前記粒度分布において、前記アルミナ粒子中の、粒径30~60μmのアルミナ粒子の割合が9~60体積%、粒径2~12μmのアルミナ粒子の割合が35~90体積%、粒径0.1~1μmのアルミナ粒子の割合が1~20体積%であり、
厚さが2.3mm以下である放熱シート。
【請求項2】
前記粒度分布において、30~60μmにピークを有するアルミナ粒子、2~12μmにピークを有するアルミナ粒子、および0.1~1μmにピークを有するアルミナ粒子は球状粒子である、請求項1に記載の放熱シート。
【請求項3】
熱伝導率が3.5W/mK以上5.0W/mK未満である、請求項1又は2に記載の放熱シート。
【請求項4】
熱拡散率が1.6×10-62/s超である、請求項1~3のいずれか1項に記載の放熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクスの進展に伴い、パワーデバイス等の電子機器内において発熱する部品が多く使用されてきている。電子回路を制御するにあたり、これらの発熱部品からの熱を放散させて、系全体を冷却することが重要である。放熱シートは、例えば、発熱部品と放熱フィンや金属板との間に設置され、圧着により隙間のないように発熱部品と密着し、熱伝導性を発揮して発熱部品から発生した熱を放熱フィン等に伝えて、系全体の抜熱をすることができる。
【0003】
上記放熱シートは、例えば、熱伝導性の無機フィラーと樹脂で構成されている。無機フィラーとしては、安価な水酸化アルミニウムや酸化アルミニウム(アルミナ)、より高い熱伝導を期待した炭化珪素や窒化硼素、窒化アルミニウムなどが用いられている。また、樹脂としては、例えばアクリル樹脂やウレタン樹脂が用いられる。
【0004】
上記放熱シートとしては、例えば特許文献1~3に開示のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-277405号公報
【文献】特開2007-277406号公報
【文献】特開2009-274929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、スマートフォン等の小型の携帯用電子機器が高性能化してきており、また、これに伴い上記携帯用電子機器内の部品が発する熱量も高くなってきている。従って、携帯用電子機器などの小型の電子機器に使用できる放熱シートが求められている。
【0007】
また、上記携帯用電子機器はさらなる薄型化が求められており、これに伴って放熱シートにも薄膜化が求められている。しかしながら、特許文献1~3に開示の放熱シートを薄型化しようとした場合、成膜性が悪く、シートの形態で得られない、あるいは得られたとしてももろくて割れやすいといった問題があった。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、薄くても成膜性良く得られる放熱シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、放熱シートを構成する成分として樹脂とアルミナを用い、上記アルミナとして、粒度分布において、三種の特定の粒径範囲内にそれぞれピークを有し、且つ上記三種の特定の粒径範囲内のアルミナをそれぞれ特定の割合とすることで、薄い放熱シートが成膜性良く得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、アルミナ粒子および樹脂を含む放熱シートであって、
上記放熱シート中の上記アルミナ粒子の含有割合が70体積%以上であり、
上記アルミナ粒子は、粒度分布において、粒径30~60μm、2~12μm、および0.1~1μmにそれぞれピークを有し、
上記粒度分布において、上記アルミナ粒子中の、粒径30~60μmのアルミナ粒子の割合が9~60体積%、粒径2~12μmのアルミナ粒子の割合が30~90体積%、粒径0.1~1μmのアルミナ粒子の割合が1~20体積%である、放熱シートを提供する。
【0011】
上記粒度分布において、30~60μmにピークを有するアルミナ粒子、2~12μmにピークを有するアルミナ粒子、および0.1~1μmにピークを有するアルミナ粒子は球状粒子であることが好ましい。
【0012】
上記放熱シートは、熱伝導率が3.5W/mK以上5.0W/mK未満であることが好ましい。
【0013】
上記放熱シートは、熱拡散率が1.6×10-62/s超であることが好ましい。
【0014】
上記放熱シートは、厚さが2.3mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の放熱シートは、厚いシートはもちろん、薄くても成膜性良く得ることができる。このため、本発明の放熱シートは、スマートフォン等の小型の携帯用電子機器に好ましく適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の放熱シートは、アルミナ粒子および樹脂を少なくとも含む。上記アルミナ粒子は、粒度分布において、粒径30~60μm、粒径2~12μm、および粒径0.1~1μmにそれぞれピークを有する。なお、本明細書において、粒度分布において、粒径30~60μmのアルミナ粒子を「第1アルミナ粒子」、粒径2~12μmのアルミナ粒子を「第2アルミナ粒子」、粒径0.1~1μmのアルミナ粒子を「第3アルミナ粒子」とそれぞれ称する場合がある。
【0017】
第1アルミナ粒子は、第1~第3アルミナ粒子のうち最大である大径粒子であり、主に熱伝導性を発揮する。第1アルミナ粒子におけるピーク粒径は、粒径30~60μmの範囲内にあり、好ましくは40~50μmの範囲内にあり、さらに好ましくは42~48μmの範囲内にある。大径粒子として上記粒径のアルミナ粒子を用いることにより、薄い放熱シートを作製した場合において、アルミナ粒子の脱落や放熱シートの割れが起こりにくくなる。
【0018】
第1アルミナ粒子は、球状粒子であることが好ましい。第1アルミナ粒子が球状粒子であると、第1アルミナ粒子が放熱シートのマトリックスである樹脂(特に、シリコーン樹脂)への分散性が良好であり、薄い放熱シートを作製する場合であっても成膜性により優れる。なお、本明細書において、球状粒子とは、粒子の円形度(相当円の周囲長/粒子投影像の周囲長)の平均値が0.8以上の粒子をいうものとする。
【0019】
第1アルミナ粒子は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤で表面処理されていると、第1アルミナ粒子が放熱シートのマトリックスである樹脂(特に、シリコーン樹脂)への分散性が良好であり、薄い放熱シートを作製する場合であっても成膜性により優れる。上記シランカップリング剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0020】
上記シランカップリング剤としては、例えば、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシ基以外の官能基を有するシランカップリング剤(官能基含有シランカップリング剤);n-デシルトリメトキシシラン等のアルコキシ基以外の官能基を有しないシランカップリング剤(官能基非含有シランカップリング剤)などが挙げられる。中でも、アルミナ粒子との濡れ性が良好であり、放熱シートのバルク強度の向上と柔軟性の向上が見込まれる観点から、官能基非含有シランカップリング剤が好ましく、より好ましくはアルコキシ基以外の末端がアルキル基であるシランカップリング剤(末端アルキル基含有シランカップリング剤)、特に好ましくはn-デシルトリメトキシシランである。
【0021】
本発明の放熱シート中に含まれる第1アルミナ粒子の含有割合は、アルミナ粒子の総量100体積%に対して、9~60体積%であり、好ましくは25~55体積%、より好ましくは35~55体積%、さらに好ましくは45~55体積%である。上記含有割合が9体積%以上であることにより、熱伝導性が優れる。上記含有割合が60体積%以下であることにより、薄い放熱シートを作製した場合において、アルミナ粒子の脱落や放熱シートの割れが起こりにくくなる。
【0022】
第2アルミナ粒子は、第1~第3アルミナ粒子のうち2番目に大きい中径粒子であり、放熱シート中において第1アルミナ粒子の粒子間を充填し、第1アルミナ粒子同士の熱伝導性を向上させる。第2アルミナ粒子におけるピーク粒径は、粒径2~12μmの範囲内にあり、好ましくは3~8μmの範囲内にある。中径粒子として上記粒径のアルミナ粒子を用いることにより、大径粒子間の隙間の充填率が高く、熱伝導性に優れる。
【0023】
第2アルミナ粒子は、球状粒子であることが好ましい。第2アルミナ粒子が球状粒子であると、第2アルミナ粒子が放熱シートのマトリックスである樹脂(特に、シリコーン樹脂)への分散性が良好であり、薄い放熱シートを作製する場合であっても成膜性により優れる。
【0024】
第2アルミナ粒子は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤で表面処理されていると、第2アルミナ粒子が放熱シートのマトリックスである樹脂(特に、シリコーン樹脂)への分散性が良好であり、薄い放熱シートを作製する場合であっても成膜性により優れる。上記シランカップリング剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0025】
上記シランカップリング剤としては、上述の第1アルミナ樹脂の表面処理に使用され得るシランカップリング剤として例示および説明されたものが挙げられる。中でも、アルミナ粒子との濡れ性が良好であり、放熱シートのバルク強度の向上と柔軟性の向上が見込まれる観点から、官能基非含有シランカップリング剤が好ましく、より好ましくはアルコキシ基以外の末端がアルキル基であるシランカップリング剤(末端アルキル基含有シランカップリング剤)、特に好ましくはn-デシルトリメトキシシランである。n-デシルトリメトキシシランが好ましい。
【0026】
本発明の放熱シート中に含まれる第2アルミナ粒子の含有割合は、アルミナ粒子の総量100体積%に対して、30~90体積%であり、好ましくは35~75体積%、より好ましくは40~60体積%、さらに好ましくは40~55体積%である。上記含有割合であることにより、大径粒子間の隙間の充填率が高く、熱伝導性に優れる。
【0027】
第3アルミナ粒子は、第1~第3アルミナ粒子のうち最小である小径粒子であり、放熱シート中において第1および第2アルミナ粒子の粒子間を充填し、放熱シート中のアルミナ粒子の充填率を高くし、熱伝導性を向上させる。第3アルミナ粒子におけるピーク粒径は、粒径0.1~1μmの範囲内にあり、好ましくは0.1~0.5μmの範囲内にあり、より好ましくは0.1~0.4μmの範囲内にある。小径粒子として上記粒径のアルミナ粒子を用いることにより、大径、中径粒子間の隙間の充填率が高く、熱伝導性に優れる。
【0028】
第3アルミナ粒子は、球状粒子であることが好ましい。第3アルミナ粒子が球状粒子であると、第3アルミナ粒子が放熱シートのマトリックスである樹脂(特に、シリコーン樹脂)への分散性が良好であり、薄い放熱シートを作製する場合であっても成膜性により優れる。
【0029】
第3アルミナ粒子は、シランカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。シランカップリング剤で表面処理されていると、第3アルミナ粒子が放熱シートのマトリックスである樹脂(特に、シリコーン樹脂)への分散性が良好であり、薄い放熱シートを作製する場合であっても成膜性により優れる。上記シランカップリング剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0030】
上記シランカップリング剤としては、上述の第1アルミナ樹脂の表面処理に使用され得るシランカップリング剤として例示および説明されたものが挙げられる。中でも、アルミナ粒子との濡れ性が良好であり、放熱シートのバルク強度の向上と柔軟性の向上が見込まれる観点から、官能基非含有シランカップリング剤が好ましく、より好ましくはアルコキシ基以外の末端がアルキル基であるシランカップリング剤(末端アルキル基含有シランカップリング剤)、特に好ましくはn-デシルトリメトキシシランである。
【0031】
本発明の放熱シート中に含まれる第3アルミナ粒子の含有割合は、アルミナ粒子の総量100体積%に対して。1~20体積%であり、好ましくは2~10体積%、より好ましくは3~8体積%、さらに好ましくは4~6体積%である。上記含有割合が1体積%以上であることにより、放熱シート中のアルミナ粒子の充填率が高くなり、熱伝導性に優れる。上記含有割合が20体積%を超えると、放熱シート表面が粉っぽくなったり、2つの剥離シートに挟まれた形態で放熱シートを製造した後に剥離シートを剥がした際に放熱シートが割れる場合がある。
【0032】
本発明の放熱シート中のアルミナ粒子の含有割合(総量)は、本発明の放熱シート100体積%に対して、70体積%以上であり、好ましくは75体積%以上である。上記含有割合が70体積%以上であることにより、放熱シート中のアルミナ粒子の充填率が高く、熱伝導性に優れる。上記含有割合は、90体積%以下が好ましく、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは80体積%以下である。上記含有割合が90体積%以下であると、放熱シートがもろくなりにくく、薄い放熱シートを作製する際の成膜性に優れる。
【0033】
上記樹脂は、放熱シートのマトリックスを形成する成分である。上記樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、イミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、シリコーン樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキッド系樹脂などが挙げられる。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物の重合体などを用いることができる。上記樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、上記熱硬化性樹脂とは、加熱することで硬化し得る樹脂、および、加熱により硬化した樹脂の両方を含む概念である。
【0034】
上記樹脂としては、中でも、熱伝導性に優れる観点から、シリコーン樹脂が好ましい。また、マトリックス樹脂としてシリコーン樹脂を用いた場合、薄い放熱シートを作製する場合であっても成膜性に優れる。上記シリコーン樹脂としては、公知乃至慣用の放熱シートに用いられるシリコーン樹脂を使用することができる。上記シリコーン樹脂としては、溶剤を使用せずにアルミナ粒子を良好に分散させることができる観点から、2液硬化型のシリコーン樹脂であることが好ましい。上記シリコーン樹脂は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0035】
上記樹脂の含有割合は、特に限定されないが、本発明の放熱シート100体積に対して、10体積%以上が好ましく、より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上である。上記含有割合が10体積%以上であると、放熱シートがもろくなりにくく、薄い放熱シートを作製する際の成膜性に優れる。上記含有割合は、30体積%以下が好ましく、より好ましくは25体積%以下である。上記含有割合が30体積%以下であると、放熱シート中のアルミナ粒子の充填率を高くすることができ、熱伝導性により優れる。特に、シリコーン樹脂の含有割合が上記範囲内であることが好ましい。
【0036】
本発明の放熱シートの厚さは、例えば0.2~10mm、好ましくは0.3~5mmである。なお、本発明の放熱シートは、薄くても成膜性よく作製することができ、小型の携帯電子機器への使用に適するため、好ましくは2.3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下、さらに好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である。
【0037】
本発明の放熱シートは、熱伝導率が3.5W/mK以上であることが好ましく、より好ましくは3.6W/mK以上である。上記熱伝導率が3.5W/mK以上であると、放熱性により優れる。上記熱伝導率は、例えば5.0W/mK未満である。
【0038】
本発明の放熱シートは、熱拡散率が1.6×10-62/s超であることが好ましく、より好ましくは1.65×10-62/s以上、さらに好ましくは1.7×10-62/s以上である。上記熱拡散率が1.6×10-62/s超であると、放熱性により優れる。
【0039】
本発明の放熱シートは、基材(基材層)を伴わない形態、いわゆる「基材レス」であってもよいし、基材の少なくとも片面側に設けられた放熱シートであってもよい。特に、本発明の放熱シートは、成膜性良く製造することができるため、薄い放熱シートであっても基材を伴わない形態として得ることができる。なお、上記「基材(基材層)」には、放熱シートの使用時に剥離される剥離シートは含まれない。
【0040】
本発明の放熱シートの成膜方法は、特に限定されず、公知乃至慣用のフィルムの成膜方法や成形体の成形方法を採用することができる。中でも、連続的に成膜でき生産性に優れる観点から、ロールtoロールで成膜することが好ましい。
【0041】
本発明の放熱シートは、例えば、上記樹脂および上記アルミナ粒子を含む樹脂組成物を、基材や剥離シートの離型処理面に塗工して樹脂組成物層を形成し、その後加熱により硬化させて成膜して製造することができる。加熱は、上記樹脂組成物層上にさらに剥離シートの離型処理面を貼り合わせた状態で行ってもよい。
【0042】
上記樹脂組成物は、上記樹脂および上記アルミナ粒子を含む。上記三種のアルミナ粒子は、事前に混合してから上記樹脂と混合してもよく、上記三種のアルミナ粒子と上記樹脂を同時に混合してもよい。上記樹脂組成物は、有機溶剤を含まないペースト状であることが好ましい。
【0043】
上記樹脂組成物のシート作製の方法は、特に限定されず、離型剤が塗布されたセパレーターフィルム間に材料を入れ、ロールラミネーターでラミネートするサンドイッチ法、熱プレス成型機、押し出し機などの公知の塗工方法を採用することができる。
【0044】
本発明の放熱シートは、粒径30~60μmにピークを有する第1アルミナ粒子と、粒径2~12μmにピークを有する第2アルミナ粒子と、粒径0.1~1μmにピークを有する第3アルミナ粒子の特定の三種のアルミナ粒子を、それぞれ特定の含有割合で組み合わせて用い、上記樹脂のマトリックスに70体積%以上の割合で配合することで、アルミナ粒子の充填率が高く優れた熱伝導性を有しつつ、それでいて、優れた成膜性で得られ、特に薄い厚さであっても優れた成膜性で得られる。
【実施例
【0045】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0046】
実施例1
ピーク粒径が45μmである球状アルミナ粒子55体積%と、ピーク粒径が5μmである球状アルミナ粒子40体積%と、ピーク粒径が0.2μmである球状アルミナ粒子5体積%とを混合したアルミナ粒子組成物1を作製した。なお、上記の三種のアルミナ粒子は、事前に、アルミナ粒子100質量部に対してシランカップリング剤(商品名「Z-6210」、東レ・ダウコーニング株式会社製、n-デシルトリメトキシシラン)1質量部を、溶媒中で撹拌混合することで、シランカップリング剤により表面処理を行ったものである。上記アルミナ粒子組成物1を77体積%(アルミナ粒子の総充填量77体積%)となるように、シリコーン樹脂(商品名「TSE-3062」、Momentive社製)の1剤および2剤の混合物に混合して樹脂ペーストを作製した。続いて、2枚の剥離シートの離型処理面の間に上記樹脂ペーストを配置し、ロールラミネーターを用いてラミネートし[剥離シート/樹脂ペースト層/剥離シート]の積層体を作製した。そして、上記積層体を70℃で30分間加熱することで樹脂ペースト層を熱硬化させ、[剥離シート/放熱シート/剥離シート]の積層体として、実施例1の放熱シートを作製した。なお、実施例1の放熱シートは、厚さ0.36mm(Type1)、厚さ0.73mm(Type2)、および厚さ1.99mm(Type3)の三種を作製した。
【0047】
実施例2
ピーク粒径が45μmである球状アルミナ粒子40体積%と、ピーク粒径が5μmである球状アルミナ粒子50体積%と、ピーク粒径が0.2μmである球状アルミナ粒子10体積%とを混合したアルミナ粒子組成物2を作製した。なお、上記の三種のアルミナ粒子は、実施例1と同様にして、事前にシランカップリング剤により表面処理を行ったものである。そして、アルミナ粒子組成物1に代えてアルミナ粒子組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の放熱シートを作製した。なお、実施例2の放熱シートは、厚さ0.45mm(Type1)、厚さ0.77mm(Type2)、および厚さ1.97mm(Type3)の三種を作製した。
【0048】
比較例1
ピーク粒径が70μmである球状アルミナ粒子70体積%と、ピーク粒径が9μmである非球状アルミナ粒子12体積%と、ピーク粒径が3μmである非球状アルミナ粒子18体積%とを混合したアルミナ粒子組成物3を作製した。なお、上記の三種のアルミナ粒子は、実施例1と同様にして、事前にシランカップリング剤により表面処理を行ったものである。そして、アルミナ粒子組成物1に代えてアルミナ粒子組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の放熱シートを作製した。なお、比較例1の放熱シートは、厚さ0.99mm(Type1)および厚さ2.32mm(Type2)の二種を作製した。
【0049】
比較例2
ピーク粒径が90μmである球状アルミナ粒子80体積%と、ピーク粒径が5μmである球状アルミナ粒子10体積%と、ピーク粒径が3μmである非球状アルミナ粒子10体積%とを混合したアルミナ粒子組成物4を作製した。なお、上記の三種のアルミナ粒子は、実施例1と同様にして、事前にシランカップリング剤により表面処理を行ったものである。そして、アルミナ粒子組成物1に代えてアルミナ粒子組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の放熱シートを作製した。なお、比較例2の放熱シートは、厚さ1.77mm(Type1)および厚さ2.50mm(Type2)の二種を作製した。
【0050】
(評価)
実施例および比較例で得られた各放熱シートについて以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。なお、全ての実施例において、全アルミナ粒子中の、粒度分布による、粒径30~60μmのアルミナ粒子の割合は9~60体積%の範囲内であり、粒径2~12μmのアルミナ粒子の割合は30~90体積%の範囲内であり、粒径0.1~1μmのアルミナ粒子の割合は1~20体積%の範囲内である。
【0051】
(1)外観
実施例および比較例で得られた[剥離シート/放熱シート/剥離シート]の積層体から、一方の剥離シートを剥離したときの放熱シートの外観について、下記基準で外観の評価を行った。
○(良好):アルミナ粒子の脱落、割れ、および剥離した剥離シートに貼り付きが発生しない。
×(不良):アルミナ粒子の脱落、割れ、または剥離した剥離シートに貼り付きが発生する。
【0052】
(2)熱拡散率
実施例および比較例で得られた各放熱シートを積層して厚さ1mm以上のバルク体を作製し、熱物性測定装置(商品名「LFA-502、京都電子工業株式会社製」)を用いてレーザーフラッシュ法にて測定を実施した。
【0053】
(3)熱伝導率
実施例および比較例で得られた各放熱シートについて、示差走査熱量計(商品名「X-DSC7000」型、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、DSC法によって25℃における比熱測定を実施した。また、各放熱シートについて、電子比重計(商品名「EW-300SG」、アルファーミラージュ株式会社製)を用いて、水中置換法にて比重測定を実施した。そして、上記で得られた熱拡散率、比熱、及び比重を用いた計算により、熱伝導率を算出した。
【0054】
【表1】
【0055】
本発明の放熱シートは(実施例)は、0.5mm以下の厚さであっても成膜性良く製造することができた。また、熱拡散率および熱伝導率も高く放熱性能に優れていた。一方、比較例1および2の放熱シートは、2mm以下の厚さのものを成膜性良く得ることができなかった。