(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】吸水性シートおよびそれを含む吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20231226BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/53 100
(21)【出願番号】P 2021561588
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2020044517
(87)【国際公開番号】W WO2021107159
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019215887
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019215888
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平内 達史
(72)【発明者】
【氏名】藤川 遼亮
(72)【発明者】
【氏名】▲より▼元 貞巖
(72)【発明者】
【氏名】北野 貴洋
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181237(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130591(WO,A1)
【文献】特開2001-198155(JP,A)
【文献】実開昭54-043095(JP,U)
【文献】国際公開第2019/198821(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/155591(WO,A1)
【文献】特開2001-105520(JP,A)
【文献】特表2017-530753(JP,A)
【文献】特開2019-000592(JP,A)
【文献】特開2019-042005(JP,A)
【文献】特開2019-170625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
B01J 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材と、
第2の基材と、
前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、
を有する、吸水性シートであって、
前記吸水層が粒子状吸水剤を含み、
前記第1の基材の表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、
前記第2の基材の厚み(mm)に対する、前記第1の基材の厚み(mm)の比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満であり、
前記第1の基材の前記吸水層側の面が起毛されており、
前記起毛されている面の起毛面積測定試験における起毛面積率が5%以上30%以下であ
り、
前記吸水性シートが、接着剤を含み、
前記接着剤の使用量が、前記粒子状吸水剤の質量に対して、0.05~2.0倍であり、
前記第1の基材は、接着剤によって前記粒子状吸水剤を担持しない、吸水性シート。
【請求項2】
前記第1の基材の嵩密度が、0.1g/cm
3以下である、請求項1に記載の吸水性シート。
【請求項3】
前記第1の基材が、エアスルー不織布である、請求項1または2に記載の吸水性シート。
【請求項4】
少なくとも、前記第1の基材の表面に配置させるラッピングシートを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項5】
前記第1の基材が、前記粒子状吸水剤を含み、
前記第1の基材中の前記粒子状吸水剤の含有割合が、前記吸水性シート全体に含有される前記粒子状吸水剤に対して、5%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項6】
前記第2の基材の液拡散面積が、6000mm
2以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項7】
前記第2の基材の液拡散面積が、7000mm
2以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項8】
前記第2の基材が、スパンレース不織布である、請求項1~7のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項9】
前記第1の基材の厚みは、0.7mm以上5mm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項10】
前記第2の基材の厚みは、0.05以上0.9mm以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項11】
前記第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率が40質量%以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項12】
前記粒子状吸水剤のCRCが、30g/g以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項13】
前記粒子状吸水剤のCRCが、33g/g以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項14】
前記粒子状吸水剤のCRCが、35g/g以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項15】
前記粒子状吸水剤のAAPが25g/g以上である、請求項1~14のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項16】
前記粒子状吸水剤の表面張力が、60mN/m以上である、請求項1~15のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項17】
前記第1の基材の目付量は、10~60g/m
2である、請求項1~
16のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項18】
前記吸水層において、前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、
前記第1の基材は、伸び率が10%以上である、請求項1~
17のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項19】
前記間隙における前記第1の基材の前記吸液面から前記第2の基材の前記吸水層側の表面までの厚み(La)に対する、前記粒子状吸水剤が含まれる領域における前記第1の基材の前記吸液面から前記第2の基材の前記吸水層側の表面までの厚み(Lb)の比(Lb/La)が、1.05以下である、請求項
18に記載の吸水性シート。
【請求項20】
前記粒子状吸水剤が含まれる領域および前記間隙は、前記第1の基材の前記吸液面における一の方向に沿って伸びた形状を有し、並列して配置されている、請求項
18または
19に記載の吸水性シート。
【請求項21】
前記粒子状吸水剤の含有量が、200g/m
2以上である、請求項1~
20のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項22】
前記吸水性シートが、第2の基材上に接着剤を含み、
前記第2の基材上の接着剤がホットメルト接着剤である、請求項1~
21のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項23】
前記粒子状吸水剤のGPRが、20g/min以上である、請求項1~
22のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項24】
請求項1~
23のいずれか1項に記載の吸水性シートを液体透過性シートと、液体不透過性シートとで挟持することによりなり、前記液体透過性シートが、前記第1の基材側に位置し、前記液体不透過性シートが、前記第2の基材側に位置している、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性シートおよびそれを含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツ、生理用ナプキンや成人向け失禁用製品等の衛生材料、農園芸用の土壌保水剤、工業用の止水剤等、様々な用途に利用されている。
【0003】
これら吸収性物品は一般に紙オムツ製造工場にて吸水性樹脂と繊維材料を混合して吸収性物品ごとに個々に型取りした吸収体として製造されており、目的に応じて種々の形状の吸収体(例えば、平面に見て砂時計型、キツネ型、楕円型等)に加工されている。これら吸収体の製造方法は個々に型取りするため任意の形に加工でき、吸収性物品ごとに繊維や吸水性樹脂の量も調整し易いため、現在の紙オムツの主流となっている。
【0004】
しかし、近年、紙オムツの製造で、2枚のシート間に吸水性樹脂を固定化した長尺の吸水性シートを衛生材料の製造工程で裁断した吸収体(吸水性シートと呼称、通常は幅10cm前後で長さ数10cmの長方形に裁断)を用いた紙オムツが製造されるようになってきた。紙オムツメーカーは、長尺の連続吸水性シートを購入または製造することで、紙オムツの製造工程を簡便化でき、さらにパルプを用いないことで紙オムツを薄型化することができる。吸水性シートは上下のシート(特に不織布シート)間に吸水性樹脂粒子をサンドイッチおよび固定化する構成をとり、通常長尺連続シートを製造した後に長尺連続シートを裁断して幅10cm前後で長さ数10cmの長方形とし、紙オムツに組み込む(例えば、国際公開第2010/143635号)。
【0005】
従来の衛生材料(紙オムツ)と違って、吸水性シートによる紙オムツはその歴史が浅いこともあり、吸水性シートに適した吸水性樹脂の開発やパラメーターの提案は殆ど行われていないのが実情であり、従来の紙オムツ向けの吸水性樹脂が吸水性シートにもそのまま使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、薄型であることが主流の吸水性シートならではの構造上、吸収された液体が、吸水性シートに圧力が加わることにより吸収される液の導入方向に放出される、いわゆる「逆戻り」が生じやすいことを知見した。「逆戻り」はRe-wetとも呼ばれる。そして、逆戻りの発生は、断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があって液の導入量が多くなると、その問題が顕著であることを見出した。逆戻りが生じた場合、吸水性シートと接している肌はその逆戻りした液と接するため、湿気の高い状態に晒される。そのため、使用者は不快感を生じるだけでなく、吸水性シートと接している肌にかぶれも生じやすくなる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があっても、逆戻りによる吸水性シートからの液放出を有意に低減することができる、新規な吸水性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を積み重ねた。その結果、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層が粒子状吸水剤を含み、前記第1の基材の表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第2の基材の厚み(mm)に対する、前記第1の基材の厚み(mm)の比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満である、吸水性シートにより、上記課題が解決することを見出した。
【0009】
また、本発明の他の形態に係る吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層が粒子状吸水剤を含み、前記第1の基材上には吸水層が配置されておらず、前記第2の基材の厚み(mm)に対する、前記第1の基材の厚み(mm)の比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満である。
【0010】
さらに、本発明の他の形態に係る吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層が粒子状吸水剤を含み、前記第1の基材上には吸水層が配置されておらず、前記第1の基材の厚みは、0.7mm以上5mm以下であって、前記第2の基材の厚み(mm)に対する、前記第1の基材の厚み(mm)の比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満である。
【0011】
本発明のさらに他の形態に係る吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、前記第1の基材の表面に配置させるラッピングシートと、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層が粒子状吸水剤を含み、前記ラッピングシートの表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第2の基材の厚みに対する、前記第1の基材の厚みの比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図5】不織布に対する粒子状吸水剤の透過率を測定する方法を説明する模式図である。
【
図6】特定戻り量の評価に用いたサンプルを示した平面図および右側面図であり、実施例で作製した吸水性シートを液体不透過性シートで包む様子を示した図である。
【
図7】特定戻り量の評価に用いた液注入筒の平面図および正面図である。
【
図8】特定戻り量評価において本願の実施例で用いた吸水性シートの上に液注入筒を置いた様子を示した正面図である。
【
図9】特定戻り量評価において漏斗を使用して液注入筒から塩化ナトリウム水溶液を吸水性シートに投入している様子を示した正面図である。
【
図10】面方向の漏れ量の評価に用いた装置を示す概略図である。
【
図11】不織布の起毛面積率を測定する方法を説明する模式図である。
【
図12】加圧特定戻り量の評価に用いた液注入筒の平面図および正面図である。
【
図13】加圧特定戻り量評価において本願の実施例で用いた吸水性シートの上に液注入筒を置いた様子を示した正面図である。
【
図14】加圧特定戻り量評価において漏斗を使用して液注入筒から塩化ナトリウム水溶液を吸水性シートに投入している様子を示した正面図である。
【
図15】実施例で作製した吸水性シートにおける粒子状吸水剤と間隙との形態を説明するための吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図16】実施例で作製した吸水性シートにおける粒子状吸水剤と間隙との形態を説明するための吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図17】不織布の伸び率を測定する方法を説明する模式図である。
【
図18】本発明の第1の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図19】本発明の第2の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図20】実施例で作製した吸水性シートにおける粒子状吸水剤と間隙との形態を説明するための吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図21】実施例で作製した吸水性シートにおける粒子状吸水剤と間隙との形態を説明するための吸水性シートの断面を表す模式図である。
【
図22】不織布の伸び率を測定する方法を説明する模式図である。
【
図23】不織布に対する粒子状吸水剤の透過率を測定する方法を説明する模式図である。
【
図24】特定戻り量の評価に用いたサンプルを示した平面図および右側面図であり、実施例で作製した吸水性シートを液体不透過性シートで包む様子を示した図である。
【
図25】特定戻り量の評価に用いた液注入筒の平面図および正面図である。
【
図26】特定戻り量評価において本願の実施例で用いた吸水性シートの上に液注入筒を置いた様子を示した正面図である。
【
図27】特定戻り量評価において漏斗を使用して液注入筒から塩化ナトリウム水溶液を吸水性シートに投入している様子を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0014】
[第1の発明]
第1の発明について説明する。第1の発明の吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層が粒子状吸水剤を含み、前記第1の基材の表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第2の基材の厚み(mm)に対する、前記第1の基材の厚み(mm)の比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満である。
【0015】
〔1.用語の定義〕
[1-1.吸水性シート]
本発明における「吸水性シート」とは、長尺の2枚以上の基材間に吸水性樹脂(粒子状吸水剤)が担持された構造物をいう。上記吸水性シートは、基材同士の接着、および/または、基材と粒子状吸水剤との接着に、接着剤を用いていてもよく、ホットメルト接着剤を用いていてもよい。上記吸水性シートは、粒子状吸水剤に加えて、他の成分(繊維成分、抗菌剤、消臭剤など)を含んでいてもよい。粒子状吸水剤などを挟持する2枚の基材以外にも、他のシートを含んでいる吸水性シートがある。本実施形態に対して、本願の発明課題の解決を阻害しない場合に限り、粒子状吸水剤などを挟持する2枚の基材以外にも、他のシートを含んでいる吸水性シートがあってもよい。粒子状吸水剤などを2枚の基材で挟持した吸水性シートが好ましい実施形態である。
【0016】
通常、吸水性シートは、連続シート状、または、当該連続シートを巻き取ったロール状である。上記吸水性シートを使用する際には、連続シートを適当な形状(長方形など)に裁断した後に、吸収性物品(紙オムツ、生理用ナプキン、失禁者用パッドなど)に組み込んで使用する。紙オムツ(使い捨てオムツ)、生理用ナプキン、失禁者用パッドなどの吸収性物品は、身体から排泄される尿や経血などの体液を吸収・保持する吸収体と、身体に接する側に配された柔軟な液透過性の表面シートと、身体と接する側と反対側に配された液不透過性の裏面シートとを有している。吸水性シートは、前記の吸収体として使用できる。従来の紙オムツは、紙オムツ一枚ごとに、個々に型取りされた、おしりにフィットするような形状をした吸収性物品である。したがって、このような吸収体は、本発明の吸水性シートとは技術の性質を異にする。
【0017】
[1-2.吸水性樹脂]
本明細書において「吸水性樹脂」とは、ERT441.2-02により規定される水膨潤性(CRC)が5g/g以上であり、およびERT470.2-02により規定される水可溶成分(Ext)が50質量%以下である高分子ゲル化剤をいう。
【0018】
吸水性樹脂は、好ましくは、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体である。上記吸水性樹脂の形状は、シート状、繊維状、フィルム状、粒子状、ゲル状などである。本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、粒子状の吸水性樹脂を用いる。
【0019】
本明細書において「吸水性樹脂」とは、全量(100質量%)が当該吸水性樹脂のみである態様に限定されない。上述のCRCおよびExtを満足するならば、添加剤などを含んでいる吸水性樹脂組成物であってもよい。また、本明細書において「吸水性樹脂」とは、吸水性樹脂の製造工程における中間体をも包含する概念である。例えば、重合後の含水ゲル状架橋重合体、乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末なども、「吸水性樹脂」と表記する場合がある。
【0020】
このように、本明細書においては、吸水性樹脂そのものに加えて、吸水性樹脂組成物および中間体をも総称して「吸水性樹脂」と表記する場合がある。
【0021】
[1-3.吸水剤、粒子状吸水剤]
本明細書において「吸水剤」とは、吸水性樹脂を主成分として含む、水性液(液)を吸収するための吸収ゲル化剤を意味する。ここで、上記水性液(液)とは水のみならず、水を含む液体であれば特に限定されない。本発明の一実施形態に係る吸水性シートが吸収する水性液は、尿、経血、汗、その他の体液である。
【0022】
本明細書において「粒子状吸水剤」とは、粒子状(粉末状)の吸水剤を意味する(吸水剤中に吸水性樹脂を主成分として含むため、粒子状の吸水性樹脂に相当する)。「粒子状吸水剤」の概念には、一粒の粒子状吸水剤と、複数個の粒子状吸水剤の集合体との、いずれもが包含される。本明細書において「粒子状」とは、粒子の形態を有することを意味する。ここで、「粒子」とは、物質の比較的小さな分割体を指し、数Å~数mmの大きさを有している(「粒子」、マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会 編『マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版』、日刊工業新聞社、1996年、1929頁を参照)。本発明において、吸水剤の形態は粒子状吸水剤に制限されない。本明細書では、本発明を、粒子状吸水剤を例に説明するが、「粒子状吸水剤」は「吸水剤」として読み替えることができる。なお、本明細書では、「粒子状吸水剤」を単に「吸水剤」と表記することがある。
【0023】
本発明の吸水性シートにおいて、前記粒子状吸水剤の重量平均粒子径が、200~600μmである。ここで、粒子状吸水剤の重量平均粒子径が200μm未満であると取り扱い性が低下する虞がある。また、粒子状吸水剤の重量平均粒子径が600μmを超えると吸水性シートの風合いが低下する虞がある。本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、前記粒子状吸水剤の重量平均粒子径が、好ましくは250~500μmであり、より好ましくは300~450μmである。また、本発明の吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤全体の95質量%以上が850μm以下の粒子径であることが好ましく、粒子状吸水剤全体の98質量%以上が850μm以下の粒子径であることがより好ましく、粒子状吸水剤全体の実質的に100質量%が850μm以下の粒子径であることがさらに好ましい。なお、本願の実施例では、粒子状吸水剤全体の実質的に100質量%が850μm以下の粒子径である。ここで、本明細書中、重量平均粒子径の測定方法は、ERT420.2-02に規定される「PSD」の測定方法に従って得られたPSDに基づいて米国特許第7638570号に記載された「(3)Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」と同様の方法で算出する。
【0024】
粒子状吸水剤は、重合体としての吸水性樹脂(もしくは、粒子状の吸水性樹脂、吸水性樹脂粒子とも言う)を主成分として含む。上記粒子状吸水剤は、重合体としての吸水性樹脂を、60~100質量%、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%含む。上記粒子状吸水剤の残部は、水、添加剤(無機微粒子、多価金属カチオンなど)などを任意に含んでもよい。なお、本願の実施例で使用した粒子状吸水剤には、吸水性樹脂が80~100質量%含まれている。
【0025】
すなわち、粒子状吸水剤中の吸水性樹脂の上限は、例えば、100質量%、99質量%、97質量%、95質量%、90質量%である。そして、好ましくは、吸水性樹脂以外に0~10質量%の成分、特に水、添加剤(無機微粒子、多価金属カチオン)などをさらに含む。
【0026】
なお、粒子状吸水剤の好ましい含水率は、0.2~30質量%である。上記に説明した通り、水や添加剤などの成分が吸水性樹脂と一体化している、および/または、混合している状態の吸水性樹脂組成物も、「粒子状吸水剤」に包含される。
【0027】
粒子状吸水剤の主成分となる吸水性樹脂の例としては、ポリアクリル酸(塩)系樹脂、ポリスルホン酸(塩)系樹脂、無水マレイン酸(塩)系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリアスパラギン酸(塩)系樹脂、ポリグルタミン酸(塩)系樹脂、ポリアルギン酸(塩)系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられる。このうち、好ましくは、ポリアクリル酸(塩)系樹脂が吸水性樹脂として使用される。
【0028】
[1-4.ポリアクリル酸(塩)]
本明細書において「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸および/またはその塩を指す。上記ポリアクリル酸(塩)は、主成分として、アクリル酸および/またはその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)の繰り返し単位を含み、任意成分としてグラフト成分をさらに含む、重合体である。上記ポリアクリル酸(塩)は、アクリル酸(塩)の重合、ポリアクリルアミドやポリアクリニトリルなどの加水分解、などによって得られる。好ましくは、上記ポリアクリル酸(塩)は、アクリル酸(塩)の重合によって得られる。
【0029】
ここで、「主成分として含む」とは、ポリアクリル酸(塩)を重合する際のアクリル酸(塩)の使用量が、重合に用いられる単量体(ただし、内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50~100モル%、好ましくは70~100モル%、より好ましくは90~100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%であることをいう。
【0030】
[1-5.EDANAおよびERT]
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。「ERT」は、EDANAが制定している、欧州標準(実質的な世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本明細書では、特に断りのない限り、2002年版のERTに準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0031】
[1-6.その他]
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。
【0032】
本明細書において、特に注釈のない限り、質量の単位である「t(トン)」は「メートルトン(Metric ton)」を意味する。「ppm」は、「質量ppm」を意味する。「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」、「質量ppm」と「重量ppm」は、それぞれ同じ意味として扱う。
【0033】
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸および/またはその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0034】
本明細書においては、体積の単位「リットル」を「l」または「L」と表記する場合がある。「質量%」を「wt%」と表記することがある。微量成分の測定を行う場合において、検出限界以下をN.D.(Non Detected)と表記する。
【0035】
〔2.吸水性シート〕
本発明の吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層が粒子状吸水剤を含み、前記第1の基材の表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第2の基材の厚み(mm)に対する前記第1の基材の厚み(mm)の比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満である。
【0036】
かかる構成によって、断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があって液の導入量が多くなっても、逆戻りによる吸水性シートからの液放出を有意に低減することができる。本発明の吸水性シートは、液を直接的に吸収する吸液面を形成する第1の基材の厚み(mm)が、第2の基材の厚み(mm)に対して1.5以上14未満である。すなわち、第1の基材は第2の基材よりも有意に厚い。この第2の基材よりも有意に厚い第1の基材の表面に、液を直接的に吸収する吸液面が形成される。ここで、本明細書中、「直接的」とは、他の基材等を浸透してきた液を順次吸収する形態を含まない。なお、本明細書中、第1の基材の表面に後述のラッピングシートが配置された場合も、第1の基材の表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成する形態に包含される。
【0037】
本発明の別の形態において、第1の基材の表面が直接的に吸収する吸液面であるため、第1の基材上には吸水層が配置されていない。よって、本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層が粒子状吸水剤を含み、前記第1の基材上には吸水層が配置されておらず、前記第2の基材の厚みに対する、前記第1の基材の厚みの比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満である。本形態において、吸水層に含有されていた粒子状吸水剤の一部が第1の基材を透過して第1の基材上に移動して一部露出しても、それは吸水層が配置されているとはみなさない。なお、当該移動の要因は、例えば、吸水性シートが最終製品となり、輸送や運搬がなされて生じた振動などが想定される。前記第1の基材上に粒子状吸水剤を意図的に散布または配置したような場合は、本形態の範疇ではない。
【0038】
本発明者らは、従来の吸水性シート(例えば、薄型の吸水性シートとするために、第1の基材と第2の基材との厚みが同じ吸水性シート)においては、本願の実施例における特定条件での逆戻り量の測定(本明細書中、「特定戻り量評価」とも称する)において、逆戻り量が顕著に多いことを見出した。つまり、断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があると、通常の構成であれば、液量が設定の吸収量以上となって過剰な「戻り」が発生してしまう。これに対し、本発明では、液導入側の第1の基材を第2の基材に比べて有意に厚くすることにより、第1の基材の吸液面と、吸水層との距離を長くすることができ、これにより、吸液面より導入された液を、吸液面上に滞留することなく(さらには、導入した液を局所的に滞ることなく)、吸水機能を担う下層の吸水層に液を効率的に送り込むことができる。具体的には、第1の基材中を液が通過する際において液の面方向の拡散性が高く、拡散された液(例えば、尿)を、吸水層の表面全体に広く隈なく移行する(マイグレートする)からと考えられる。すなわち、吸収された液が吸水層に到達する際には、液は面方向に拡散されており、ゆえに、液が多量に吸水層に導入されても、吸水層は局所でなく面方向に広がった液を吸収することになる。よって、吸水層において十分に液を吸収および保持することができる。従来の吸収体に含有していた親水性パルプの液拡散性機能を、前記の第1の基材に付与しているとも考えられる。そして、いったん液が吸水層に吸液されると、第1の基材が有意に厚いために、吸水層で吸収した液が逆戻りして第1の基材の吸液面まで逆戻りすることを有意に低減することができ、これにより逆戻りした液が肌まで上がる(肌に接する)ことを抑制することできる。一方、第2の基材を第1の基材に比べて有意に厚くしても本発明の所期の効果を得ることができない。その理由は不明であり、換言すれば、当業者にとっても予期せぬ効果といえる。
【0039】
吸水性シートでは、吸水層における吸水機能は主に吸水剤が担うこととなる。特に、吸水層にパルプが存在する従来の吸収性物品と構成が異なる吸水性シートでは、吸水剤の役割が一層重要となる。特に、本発明においては、第1の基材が有意に厚いために、吸水剤にいったん導入された液が第1の基材の吸液面まで戻りにくい。ここで、逆戻りのほかに、面方向の漏れ(横漏れ)があり、横漏れとは、吸水層に到達後、瞬時に吸収しきれなかった液体が、吸水性シートから面方向に漏れ出る現象である。本発明では、粒子状吸水剤がシート(層)状に形成されている利点を生かして、吸水層の面方向の液拡散を最大限に利用することで、第1の基材への逆戻りを抑制しつつ、かつ、吸水性シートからの面方向の漏れ(横漏れ)を抑制する構成となっている。具体的には、本発明においては、第1の基材が第2の基材に比べて有意に厚いため、第1の基材中を液が通過する際において液の面方向の拡散性が高く、拡散された液(例えば、尿)を、吸収速度が有意に高い、言わばタンクのような機能を果たす粒子状吸水剤が面方向に広く隈なく吸収する。すなわち、吸収された液が吸水層に到達する際には、液は面方向に拡散されており、ゆえに、液が多量に吸水層に導入されても、吸水層は局所でなく面方向に広がった液を吸収することになる。よって、吸水層において十分に液を吸収および保持することができ、吸水性シートからの面方向の漏れが有意に低い。そして吸水層が吸収できなかった液が逆戻りしようとしても第1の基材が第2の基材に比べて有意に厚いので、液が肌まで上がることを抑制できる。そのため、「特定戻り量評価」を優れたものとすることができるとともに、面方向の漏れを抑制することができる。ここで、一般条件での逆戻り量を抑制しようと設計された吸水性シートや吸収性物品が、本願の「特定戻り量評価」において必ずしも優れた結果にならないことを付言しておく。また、本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、例えば、走ることを覚え始めの、膀胱がまだまだ小さな乳児が昼間等の活動的に動き回っている時間帯に使用する吸収性物品(例えば、オムツ)として好適であるが、無論使用形態がこれに限定されるわけではない。また、本明細書中に記載したメカニズム等が本願の請求の範囲の技術的範囲を限定することはない。
【0040】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0041】
まず、
図1~4に基づいて、吸水性シートの構成を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る吸水性シート10の、断面を表す模式図である。また、
図2~
図4は、本発明の他の実施形態に係る吸水性シート10の、断面を表す模式図である。
【0042】
図1において、矢印は、吸収される液が導入される方向を示している。第1の基材11は、吸水層12に対して吸収される液(吸液される液)が導入される側に位置する。すなわち、第1の基材11は、液体の排出側(例えば紙オムツでは肌側)に配置される。これにより、第1の基材11は、液を直接的に吸収する吸液面を形成する。第1の基材11と第2の基材13との間に吸水層12が配置される。
【0043】
図1において、吸水層12には、粒子状吸水剤14が含まれる。
図1の形態においては、吸水層12は、第1の基材11および第2の基材13の間に粒子状吸水剤14が存在している状態を示す。吸水層12は、第1の基材11に接触している(もしくは、固着している)粒子状吸水剤14および第2の基材13に接触している(もしくは、固着している)粒子状吸水剤14を含む。一部の粒子状吸水剤14は、各基材11,13に接触していなくてもよい(もしくは、固着していなくてもよい。各基材11,13から脱離していてもよい)。したがって、吸水「層」とは、シートのような連続体だけを指すのではなく、第1の基材11および第2の基材13間に一定の厚さをもって存在するものであればいずれの形態であってもよい。各基材11,13に粒子状吸水剤14を固着させる場合、例えば、接着剤を使用すればよい。接着剤を用いて吸水性シートを製造する方法については、〔3.〕にて詳述する。
【0044】
第1の基材11内には、粒子状吸水剤14が存在してもよい。第1の基材11内の粒子状吸水剤14としては、例えば、第1の基材11に接触した(もしくは、固着させた)粒子状吸水剤14や、第2の基材13に接触した(もしくは、固着させた)粒子状吸水剤14が脱離して、第1の基材11内に捕捉された粒子状吸水剤14であってもよい。第1の基材内に粒子状吸水剤14が存在する場合、第1の基材11中の粒子状吸水剤14の含有割合は、吸水性シート10全体に含まれる粒子状吸水剤14に対して、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、さらにより好ましくは30%以上である。なお、上限は特に制限されないが、好ましい順に、90%以下、70%以下、50%以下である。なお、本明細書中、吸水性シート10全体に含まれる粒子状吸水剤14に対する第1の基材11中の粒子状吸水14剤の含有割合は、後述の実施例の方法により算出される。
【0045】
吸水性シート10は、ラッピングシート16を有する。ラッピングシート16は、第1の基材11と第2の基材13との間で粒子状吸水剤14が担持された構造物である吸水性シート10の形状を保持する目的、第1の基材11と第2の基材13との間で担持された粒子状吸水剤14が、吸収体(吸水性シート10)からこぼれ落ちない(脱落しない)ようにする目的、粒子状吸水剤14が第1の基材11を透過し、第1の基材11の外部表面(液を直接的に吸収する吸液面)に移行した場合、粒子状吸水剤14が皮膚に直接接触しないようにする目的がある。ラッピングシート16を有しない場合、例えば、基材11,13同士を接着することで封止(シーリング)する方法、第1の基材11の表面処理により、第1の基材11の外部表面(液を直接的に吸収する吸液面)への移行を抑制する方法等がある。本願の効果を維持しつつ吸水性シート10から粒子状吸水剤14が脱落しない方法として、ラッピングシート16を有することが好ましい。
【0046】
ラッピングシート16は、第1の基材11の上に配置され、吸水層12と第2の基材13との全体を包み込むように折り重ねられている。よって、ラッピングシート16は、第1の基材11、吸水層12および第2の基材13の全体を覆っている。かような構成とすることで、粒子状吸水剤14の吸水性シート10からの脱落を抑制することができる。なお、ラッピングシート16は、第1の基材11、吸水層12および第2の基材13の全体を覆う必要はない。例えば、ラッピングシート16は、第1の基材11の上に配置され、吸水層12の側面と第2の基材13の側面とを包み込むように折り曲げられ、第2の基材13の吸液される面(すなわち、吸水層12が設けられた面)と反対側の面に折り重ねられていてもよい。すなわち、ラッピングシート16は、第2の基材13の吸水層12が設けられた面と反対側の面において、ラッピングシート16の一端と、ラッピングシート16の他端とが重なっている。この場合、ラッピングシート16は、第1の基材11の吸液面と側面と、吸水層12の側面と、第2の基材13の側面とを覆い、第2の基材13の吸水層12が設けられた面と反対側の面の全体または一部を覆っている。
【0047】
ここで、ラッピングシート16は、第2の基材13の吸水層12が設けられた面と反対側の面において、ラッピングシート16の一端と、ラッピングシート16の他端とが離れていてもよい。例えば、
図2では、ラッピングシート16は、第1の基材11の上に配置され、吸水層12の側面と第2の基材13の側面とを包み込むように折り曲げられ、第2の基材13の液を直接的に吸収する吸液面(すなわち、吸水層12が設けられた面)と反対側の面において、ラッピングシート16の一端と、ラッピングシート16の他端とが離れて配置されている。この場合、ラッピングシート16は、第1の基材11の吸液面と側面と、吸水層12の側面と、第2の基材13の側面とを覆い、第2の基材13の吸水層12が設けられた面と反対側の面の一部を覆っている。
【0048】
本発明に係る吸水性シート10においてラッピングシート16は必須の構成ではないが、本発明に係る吸水性シート10にラッピングシート16がかような構成で備えられることにより、粒子状吸水剤14の吸水性シート10からの脱落を抑制することができる。
【0049】
よって、本発明の一実施形態に係る吸水性シート10は、少なくとも、第1の基材11の表面に配置させるラッピングシート16を有することが好ましい。なお、本明細書中、上述のように、ラッピングシート16を有している場合でも、第1の基材11が液を直接的に吸収する吸液面を形成するものとするが、例えば、ラッピングシート16を有する吸水性シート10においては、ラッピングシート16が液を直接的に吸収する吸液面を形成するとした場合には、以下のように換言できる;第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、前記第1の基材の表面に配置させるラッピングシートと、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層が粒子状吸水剤を含み、前記ラッピングシートの表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第2の基材の厚みに対する、前記第1の基材の厚みの比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満である。
【0050】
ラッピングシート16を各基材11,13に固着させる方法としては、例えば、接着剤を使用すればよい。
【0051】
本発明において、第1の基材11と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、直接または接着剤を介して接することが好ましく、および/または、第2の基材13と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、直接または接着剤を介して接することが好ましい。このように、本発明の吸水性シートは、実質的に、第1の基材と;第2の基材と;第1の基材および第2の基材に挟まれている粒子状吸水剤と;粒子状吸水剤を第1の基材および第2の基材の少なくとも一方に固着する接着剤と;必要に応じこれらの一部または全部を包み込むラッピングシートと;のみからなる、シンプルな構成である(粒子状吸水剤に含まれうる本明細書で説明する添加剤等を含むことは排除されない)。より好ましい形態としては、第1の基材と;第2の基材と;第1の基材、第2の基材に挟まれている粒子状吸水剤と;粒子状吸水剤と第2の基材との間で粒子状吸水剤を第2の基材に固着する接着剤と;これらの全部を包み込むラッピングシートと;のみからなる、シンプルな構成である。すなわち、本発明の吸水性シートは、シンプルな構成であるにもかかわらず、特定戻り量が効果的に低減できるものである。
【0052】
本発明において、第2の基材の厚み(mm)に対する第1の基材の厚み(mm)の比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))は、1.5以上14未満である。第2の基材の厚み(mm)に対する第1の基材の厚み(mm)の比が1.5未満の場合、第1の基材の吸液面と、吸水層および第2の基材との距離が十分に確保されず、いったん吸水層および第2の基材へと達した液が逆戻りするおそれがある。また、第2の基材の厚み(mm)に対する第1の基材の厚み(mm)の比が14以上の場合、第1の基材の吸液面と、吸水層とが離れていることにより、第1の基材の吸液面から吸収された液が吸水層に到達する前に、面方向の漏れが発生するおそれがある。
【0053】
第2の基材の厚み(mm)に対する第1の基材の厚み(mm)の比の下限は、好ましくは1.7以上であり、より好ましくは2.5以上であり、さらに好ましくは3.2以上であり、さらにより好ましくは3.4以上であり、特に好ましくは3.5以上であり、最も好ましくは3.6以上である。第2の基材の厚み(mm)に対する第1の基材の厚み(mm)の比の上限は、好ましくは12以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは9以下であり、さらにより好ましくは8以下である。第2の基材の厚み(mm)に対する第1の基材の厚み(mm)の比がかような範囲であることにより、逆戻りが有意に低減できる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、第2の基材の厚み(mm)に対する第1の基材の厚み(mm)の比は、1.5以上14未満である。また、本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、第2の基材の厚み(mm)に対する第1の基材の厚み(mm)の比は、1.7以上14未満であるのが好ましく、3以上12以下であるのがより好ましく、3.4以上10以下であるのがさらに好ましい。
【0055】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、第1の基材が低密度で嵩高い形態となりうるが、従来型の吸収性物品に用いられる吸収体よりも、薄型化が可能である。上記吸水性シートを、紙オムツに使用する場合、その厚さは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、さらにより好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下、最も好ましくは4mm以下である。一方、厚さの下限は、吸水性シートの強度および粒子状吸水剤の直径を鑑みると、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、よりさらに好ましくは0.5mm以上である。本願の実施例で使用した吸水性シートの厚みは、2~5mmであった。
【0056】
なお、本願における第1の基材、第2の基材、ラッピングシート、吸水性シートの厚みは、ダイヤルシックネスゲージ 大型タイプ(厚み測定器)(株式会社 尾崎製作所製、型番:J-B、測定子:アンビル上下φ50mm)を用いて測定した。測定点数は、測定対象のシートにおいて、異なる箇所を5点とし、各箇所について2回測定し、測定値は合計5点の平均値とした。厚み測定時は、測定対象のシートに圧力が出来るだけかからないよう、ハンドルからゆっくりと手を離し、厚みを測定した。具体的な手順としては、測定対象のシートの測定箇所に皺や歪みが生じないよう、厚みが一定の板の上に平らに貼り付け、その板を厚み測定器の下部測定子の上にセットする。次に、厚み測定器の上部測定子を測定対象のシートから2~3mmの高さ位置まで近づけた後、ハンドルからゆっくりと手を離し、測定対象のシートと板を合わせた厚みを測定する。測定対象のシートの厚みは、式:T1=T2-T0(T0:板の厚み(mm)、T1:測定対象のシートの厚み(mm)、T2:測定対象のシートおよび板の厚み(mm))によって定まる。
【0057】
ここで、吸水性シートに含有される粒子状吸水剤の含有量は、好ましくは50~400g/m2であり、より好ましくは100~350g/m2であり、さらに好ましくは125~250g/m2である。
【0058】
第1の基材の吸水層側の面(粒子状吸水剤が配置される面)において、粒子状吸水剤が含まれる領域の比率(以下、「粒子状吸水剤14の存在領域の比率」とも称する)は、面積で75%を超えることが好ましく、80%を超えることがより好ましく、90%を超えることがさらにより好ましい。また、第1の基材の吸水層側の面における粒子状吸水剤が含まれる領域の比率の上限としては、特に制限されないが、実用上、面積で99.5%以下である。このような範囲で粒子状吸水剤が設けられることで、粒子状吸水剤がバランスよく配置され、戻り量の低減効果が一層発揮される。なお、第1の基材の吸水層側の面における粒子状吸水剤が含まれる領域の比率は、第2の基材の吸水層側の面(粒子状吸水剤が配置される面)における粒子状吸水剤が含まれる領域の比率と同様である。
【0059】
ここで、第1の基材の吸水層側の面における粒子状吸水剤が含まれる領域の比率は、吸水性シートの製造時に粒子状吸水剤の散布領域を調整することにより制御することができる。
【0060】
また、作製した吸水性シートの断面をX線CT装置(inspeXio SMX-100CT)により撮影、解析することにより、第1の基材の吸水層側の面における粒子状吸水剤が含まれる領域の比率を算出することができる。具体的には、吸水性シートの断面を撮影し、第1の基材または第2の基材と吸水層との界面を、粒子状吸水剤が存在する領域と、粒子状吸水剤が存在しない領域とに分類し、それぞれの領域を合計し、その比を算出することにより粒子状吸水剤が含まれる領域の比率を算出することができる。なお、吸水性シートの短手方向の断面を3枚以上撮影し、粒子状吸水剤が含まれる領域の比率を算出し、それぞれの断面から得られた粒子状吸水剤が含まれる領域の比率を平均した値を「粒子状吸水剤が含まれる領域の比率」とする。
【0061】
吸水性シートにさらに通液性、拡散性、柔軟性などを付与するために、吸水性シートの表面(第1の基材の表面または後述のラッピングシートの表面)に適宜エンボス加工を施してもよい。エンボス加工を施す領域は、吸水性シート表面の全面でもよく、一部でもよい。連続したエンボス加工領域を、吸水性シートの長手方向に設けることにより、液を長手方向に容易に拡散させることができる。例えば、エンボス加工領域を、長手方向に連続して設けることにより、当該領域が、大量の液を流すための通路(液体搬送通路)の役割を果たす。なお、エンボス加工領域は直線状に設けても、曲線状に設けても、波型に設けてもよい。
【0062】
また、粒子状吸水剤は吸水性シートの全面に散布されていてもよく、一部に粒子状吸水剤の非存在領域が設けられていてもよい。すなわち、第1の基材と第2の基材との間の吸水層において、粒子状吸水剤が吸水層の全面に散布されていてもよく、吸水層の一部に粒子状吸水剤の非存在領域が設けられていてもよい。
【0063】
ここで、第1の基材と第2の基材との間の吸水層において、吸水層の一部に粒子状吸水剤の非存在領域が設けられている形態について説明する。吸水層の一部に粒子状吸水剤の非存在領域が設けられている形態としては、第1の基材と第2の基材との間の吸水層において、粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置されている状態である。吸水層の一部に粒子状吸水剤の非存在領域を設ける場合、粒子状吸水剤の非存在領域は、吸水性シートの長手方向に、チャネル状(筋状)に設けることが好ましい。このように、粒子状吸水剤の不存在領域を、長手方向に連続して設けることにより、当該領域が、大量の液を流すための通路(液体搬送通路)の役割を果たす。粒子状吸水剤の不存在領域は直線状に設けても、曲線状に設けても、波型に設けてもよい。
【0064】
吸水層の一部に粒子状吸水剤の非存在領域が設けられている場合、第1の基材は、伸縮性を有するのが好ましく、第1の基材の伸び率が10%以上であるのがより好ましい。一実施形態では、本発明の吸水性シートは、第1の基材と第2の基材との間の吸水層において、粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、第1の基材の伸び率が10%以上である。例えば、粒子状吸水剤が第1の基材または第2の基材の全面に散布されるのではなく、粒子状吸水剤は、第1の基材または第2の基材の一部に粒子状吸水剤の非存在領域が設けられて散布される。これにより、粒子状吸水剤は、実質的に粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置される。
【0065】
従来の吸水性シートの構成では、吸液した吸水性樹脂粒子が膨潤することによって、吸水性樹脂粒子の上下シートに対する固定が弱まり、吸水性樹脂粒子がシート内で移動してしまう場合がある。そうすると、シート内で吸水性樹脂粒子の偏りが生じ、吸水性シートの形状が崩れる。この場合、吸水性シートの液吸収性に偏りが生じることになり、漏れの原因となる。場合によっては、吸水性樹脂粒子がシート内から外部へ脱落してしまうこともある。
【0066】
本発明の吸水性シートの一実施形態において、第1の基材の伸び率が10%以上であり、吸水層の一部に粒子状吸水剤の非存在領域が設けられている場合、特定戻り量が効果的に低減できるだけでなく、液吸収後であってもシート形状が保持される(シートの保形性が高い)。
【0067】
以下では、
図3に基づいて、第1の基材と第2の基材との間の吸水層において、粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、第1の基材の伸び率が10%以上である形態について説明する。
図3は、本発明の他の実施形態に係る吸水性シート10の、断面を表す模式図である。
図3には、吸水性シート10の3つの形態((a)~(c))が示されている。
図3(a)~(c)において、矢印は、吸収される液が導入される方向を示している。第1の基材11は、吸水層12に対して吸収される液(吸液される液)が導入される側に位置する。すなわち、第1の基材11は、液体の排出側(例えば紙オムツでは肌側)に配置される。第1の基材11と第2の基材13との間に吸水層12が配置される。
【0068】
図3(a)~(c)において、吸水層12に粒子状吸水剤14が含まれる。
図3(a)~(c)の形態においては、吸水層12は、第1の基材11および第2の基材13の間に粒子状吸水剤14が存在している状態を示す。一部の粒子状吸水剤14は各基材11,13から脱離していてもよい。粒子状吸水剤14(粒子状吸水剤14が含まれる領域)は、実質的に粒子状吸水剤14を含まない間隙15を隔てて配置されている。したがって、吸水「層」とは、シートのような連続体だけを指すのではなく、第1の基材11および第2の基材13間に一定の厚さと長さとをもって存在するものであればいずれの形態であってもよい。例えば、吸水層12は、第1の基材11と第2の基材13との間に、一定の厚さと長さとを有して断続的に存在していてもよい。基材11、及び/又は、13に粒子状吸水剤14を固着させる場合、例えば、接着剤を使用すればよい。接着剤を用いて吸水性シートを製造する方法については、〔3.〕にて詳述する。
【0069】
ここで、
図3(a)では、間隙15が、第1の基材11と第2の基材13との間に形成されているが、本発明における間隙15としては、
図3(b)および
図3(c)の形態も含まれる。
図3(b)では、第1の基材11と第2の基材13とが接することにより粒子状吸水剤14が含まれる領域が隔たれている。第1の基材と第2の基材が接触しているが、通液路が維持されているので間隙とみなす。また、吸水層12に第1の基材11(場合によっては第1の基材11と第2の基材13と)が入り込むことにより、吸水層12が隔てられるため、当該形態において吸水層12は断続的に存在する。
図3(c)では、第1の基材11の端部と第2の基材13の端部とを重ね合わすことにより、吸水性シート10の端部が第1の基材11と第2の基材13とにより閉じられている。この場合においても、吸水層12の端部において第1の基材11(場合によっては第1の基材11と第2の基材13と)が入り込むことにより、吸水層12の端部において、吸水層12が存在しない状態となる。
【0070】
第1の基材11内には、粒子状吸水剤14が存在してもよい。第1の基材11内の粒子状吸水剤14としては、例えば、第1の基材11に接触した(もしくは、固着させた)粒子状吸水剤14や、第2の基材13に接触した(もしくは、固着させた)粒子状吸水剤14が脱離して、第1の基材11内に捕捉された粒子状吸水剤14であってもよい。第1の基材11内に粒子状吸水剤14が存在する場合、第1の基材11中の粒子状吸水剤14の含有割合は、吸水性シート10全体に含まれる粒子状吸水剤14に対して、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、さらにより好ましくは30%以上である。なお、上限は特に制限されないが、好ましい順に、90%以下、70%以下、50%以下である。なお、本明細書中、吸水性シート10全体に含まれる粒子状吸水剤14に対する第1の基材11中の粒子状吸水剤14の含有割合は、後述の実施例の方法により算出される。
【0071】
間隙15の領域には粒子状吸水剤14を散布、配置しないため、間隙15の領域は、実質的に粒子状吸水剤14を含有しない。この間隙15の領域に粒子状吸水剤14以外の添加剤等を含有してもよい。例えば、間隙15は、第1の基材11と第2の基材13とが直接または接着剤を介して接することにより形成されていてもよい。第1の基材11は伸縮性を有するため、第2の基材13上に粒子状吸水剤14が含まれる領域が存在する場合、第1の基材11は粒子状吸水剤14が含まれる領域に追随して伸縮する。よって、第1の基材11は、粒子状吸水剤14が含まれる領域上で粒子状吸水剤14が含まれる領域を覆うような形状となり、間隙15上では、粒子状吸水剤14が含まれる領域の上側面に沿った後、第2の基材13に向けて沈み込む形状となる。
【0072】
本発明の吸水性シートにおいて、間隙15における第1の基材11の吸液面から第2の基材13の吸水層12側の表面までの厚み(La)に対する、粒子状吸水剤14が含まれる領域における第1の基材11の吸液面から第2の基材13の吸水層12側の表面までの厚み(Lb)の比(Lb/La)が、1.05以下であるのが好ましい。第1の基材11は伸縮性を有するため、第1の基材11が粒子状吸水剤14と接する部分において、粒子状吸水剤14が含まれる領域の形状(すなわち、第1の基材と接する粒子状吸水剤14において第1の基材11と接する側の粒子状吸水剤14の形状)に追随した形状となる(すなわち、追随して伸縮する)。よって、第1の基材11は粒子状吸水剤14(粒子状吸水剤14が含まれる領域)と密着することができ、これにより、第1の基材11は粒子状吸水剤14(粒子状吸水剤14が含まれる領域)と一体化された状態となっている。この場合、Laの厚みとLbの厚みとの差が小さく、よって、Lb/Laが1.05以下となる。この場合、粒子状吸水剤14が含まれる領域の形状の保形性が高い。よって、粒子状吸水剤14が膨潤した後であっても間隙15の維持性が高く、逆戻りをより低減することができる。なお、Lb/Laは、通常1以上となる。
【0073】
吸水性シート10において、第2の基材13上の一部に粒子状吸水剤14の非存在領域が設けられることにより、間隙15が形成される。間隙15(すなわち、粒子状吸水剤14の非存在領域)は、第1の基材11の吸液面における一の方向に沿って連続して設けられることにより、通液路としての機能がより発揮できる。間隙15が連続して設けられる形状としては、例えば、直線状、曲線状、または波型であってもよいが、これらの間隙15が直線状で並列して設けられるのが好ましい。よって、吸水性シート10において、粒子状吸水剤14が含まれる領域および間隙15は、第1の基材11の吸液面における一の方向(液が吸液される方向と垂直の面方向)に沿って伸びた形状を有し、並列して配置されているのが好ましい。すなわち、粒子状吸水剤14が含まれる領域が、筋状(縞状)に並んだ状態とされる。これにより、間隙15も縞状に形成されるため、粒子状吸水剤14が膨潤した場合にも間隙15が維持しやすく、結果として逆戻りをさらに低減できる。ここで、「一の方向」とは、厚み方向を除く、第1の基材11の吸液面における面方向に平行ないずれかの方向、すなわち、第1の基材11の吸液面における長手方向、短手方向、またはこれらの方向に対して傾斜した方向のいずれでもよい。間隙15の役割と、粒子状吸水剤14の役割とのバランスの観点から、吸水性シート10において、粒子状吸水剤14が含まれる領域および間隙15は、第1の基材11の吸液面における長手方向に沿って伸びた形状を有し、並列して配置されているのが好ましい。
【0074】
第1の基材11の吸水層12側の面(粒子状吸水剤14が配置される面)において、粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率は、面積で90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらにより好ましい。また、第1の基材11の吸水層12側の面における粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率は、面積で10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。このような範囲で粒子状吸水剤14が設けられることで、間隙15の役割と、粒子状吸水剤14の役割とのバランスが適当となり、戻り量の低減効果が一層発揮される。なお、第1の基材11の吸水層12側の面における粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率は、第2の基材13の吸水層12側の面(粒子状吸水剤14が配置される面)における粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率と同様である。
【0075】
吸水性シート10は、ラッピングシート16を有する。ラッピングシート16は、第1の基材11と第2の基材13の間で粒子状吸水剤14が担持された構造物である吸水性シート10の形状を保持する目的、第1の基材11と第2の基材13との間で担持された粒子状吸水剤14が、吸収体(吸水性シート10)からこぼれ落ちない(脱落しない)ようにする目的、粒子状吸水剤14が第1の基材11を透過し、第1の基材11の外部表面(液が直接接触する面)に移行した場合、粒子状吸水剤14が皮膚に直接接触しないようにする目的がある。ラッピングシート16を有しない場合、例えば、各基材11,13同士を接着することで封止(シーリング)する方法、第1の基材11の表面処理により、第1の基材11の外部表面への移行を抑制する方法等がある。本願の効果を維持しつつ吸水性シート10から粒子状吸水剤14が脱落しない方法として、ラッピングシート16を有することが好ましい。ラッピングシート16の構成は、
図1および
図2で述べたため省略する。
【0076】
よって、本発明の吸水性シート10は、少なくとも、第1の基材11の表面(すなわち、第1の基材11の吸液面上)に配置させるラッピングシート16を有することが好ましい。なお、本明細書中、上述のように、ラッピングシート16を有している場合でも、第1の基材11が液を直接的に吸収する吸液面を形成するものとするが、例えば、ラッピングシート16を有する吸水性シートにおいては、ラッピングシート16が液を直接的に吸収する吸液面を形成するとした場合には、以下のように換言できる;第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、前記第1の基材の表面に配置させるラッピングシートと、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層は、粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記ラッピングシートの表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第2の基材の厚みに対する、前記第1の基材の厚みの比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満であり、前記第1の基材は、伸び率が10%以上である。
【0077】
本発明の吸水性シート10は、第1の基材11と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、直接または接着剤を介して接することが好ましく、および/または、第2の基材13と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、直接または接着剤を介して接することが好ましい。このように、本発明の吸水性シートは、実質的に、第1の基材と;第2の基材と;第1の基材、第2の基材に挟まれている粒子状吸水剤と;粒子状吸水剤を第1の基材および第2の基材の少なくとも一方に固着する接着剤と;必要に応じこれらの一部または全部を包み込むラッピングシートと;のみからなる、シンプルな構成である(粒子状吸水剤に含まれうる本明細書で説明する添加剤等を含むことは排除されない)。より好ましい形態としては、第1の基材と;第2の基材と;第1の基材、第2の基材に挟まれている粒子状吸水剤と;粒子状吸水剤と第2の基材との間で粒子状吸水剤を第2の基材に固着する接着剤と;これらの全部を包み込むラッピングシートと;のみからなる、シンプルな構成である。すなわち、本発明の吸水性シートは、シンプルな構成であるにもかかわらず、特定戻り量が効果的に低減できるものである。
【0078】
本発明において、第1の基材の伸び率は、10%以上であり、好ましくは15%以上であり、より好ましくは17%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、さらにより好ましくは22%以上である。第1の基材の伸び率の上限は、特に制限されないが、60%以下であるのが好ましい。第1の基材の伸び率がかような範囲であることにより、第1の基材が粒子状吸水剤の形状に追随しやすくなり、結果として吸水性シートの保形性がさらに高まり、逆戻り量をさらに低減できる。第1の基材の伸び率は、後述の実施例に記載の方法で測定された値を採用する。本明細書中、「不織布(第1の基材)の伸び率」としては、最も伸張する方向で伸び率を測定した際の数値とする。また、第1の基材の伸び率は、嵩密度、目付量、材質、網目構造、製造工程条件などによって制御可能である。
【0079】
なお、本発明において、第1の基材の伸びる方向は、厚み方向を除く、第1の基材の面方向に平行ないずれかの一方向が伸びればよく、特に制限されない。例えば、長方形の吸水性シートであれば、シート平面の長辺方向、短辺方向、対角線方向など、あらゆる角度の方向からいずれか一方向が、上記範囲の伸び率で伸びればよい。正方形、楕円形、円形の吸水性シートであった場合でも同様である。好ましくは、あらゆる方向(等方的)から伸びることができる基材である。
【0080】
本発明において、吸水性シート10にさらに通液性、拡散性、柔軟性などを付与するために、第1の基材11の表面に起毛加工を施してもよい。すなわち、本発明の一実施形態において、第1の基材11は、液を直接的に吸収する吸液面と反対側の面、すなわち、吸水層12が設けられた面(吸水層12側の面)が起毛されている。本明細書中、「起毛」とは、表面の繊維が毛羽だった状態を意味する。
【0081】
本発明の吸水性シートの一実施形態において、第1の基材の吸水層側の面が起毛されている場合、特定戻り量が効果的に低減できるだけでなく、吸水性シートがいったん液を吸水した後において、吸水性シートからの粒子状吸水剤の脱落を効果的に抑制することができる。
【0082】
ここで、第1の基材11の吸水層12側の面が起毛されている形態について説明する。
図4には、吸水層12側の面が起毛された第1の基材11を有する吸水性シートが示されている。
図4に示すように、第1の基材11は、吸水層12側の面において、吸水層12に向けて繊維が起毛している。第1の基材11の起毛した繊維の一部は、粒子状吸水剤14を超え、接着剤の塗布された第2の基材13と接触して接着する。このため、粒子状吸水剤14が吸水して膨潤した後も、第1の基材11と第2の基材13とは、第1の基材11の起毛した繊維を介して接着し続けることができ、これにより、第1の基材11と第2の基材13と間の粒子状吸水剤14を保持することができる。よって、第1の基材11と第2の基材13とが接着されることにより、吸水性シート10が吸水した後も粒子状吸水剤14が保持され、ゲル脱落率が低減できる。
【0083】
一実施形態において、第1の基材11の吸水層12側の面は起毛され、第1の基材は、接着剤によって粒子状吸水剤14を担持しない。すなわち、第1の基材11と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、直接接する。この場合、粒子状吸水剤14は、第2の基材13と接着剤により固着される。よって、一実施形態において、第1の基材11と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、直接接することが好ましく、かつ、第2の基材13と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、接着剤を介して接することが好ましい。
【0084】
第1の基材11の吸水層12側の面は起毛され、第1の基材は、接着剤によって粒子状吸水剤14を担持しないことが好ましい理由としては、詳細は不明だが、実施例において、特定戻り量によりその効果が証明されている。すなわち、第1の基材11の吸水層12側の起毛された面には接着剤を塗布せず、第1の基材が接着剤によって粒子状吸水剤14を担持しない形態は、第1の基材11の吸水層12側の起毛された面に接着剤を塗布し、第1の基材が接着剤によって粒子状吸水剤14を担持した形態と比べて、特定戻り量が少なくなるので好ましい。
【0085】
ここで、第2の基材13の吸水層12側の面に塗布される接着剤、すなわち、第2の基材13上の接着剤は、ホットメルト接着剤が好ましい。接着剤がホットメルト接着剤であることにより、第1の基材11の起毛した繊維と第2の基材13との接着が良好となり、吸水性シート10が吸水した後も第1の基材11と第2の基材13とが接着し続け、第1の基材11と第2の基材13との間の粒子状吸水剤14が保持される。
【0086】
吸水性シート10は、ラッピングシート16を有する。本発明に係る吸水性シート10においてラッピングシート16は必須の構成ではないが、吸水性シート10において、吸水層12側の面が起毛された第1の基材11と、ラッピングシート16とが備えられることにより、粒子状吸水剤14の吸水性シート10からの脱落を効果的に抑制することができる。ラッピングシート16の構成は、上述したため省略する。
【0087】
よって、本発明の吸水性シート10は、少なくとも、第1の基材11の表面(すなわち、第1の基材11の吸液面上)に配置させるラッピングシート16を有することが好ましい。なお、本明細書中、上述のように、ラッピングシート16を有している場合でも、第1の基材11が液を直接的に吸収する吸液面を形成するものとするが、例えば、ラッピングシート16を有する吸水性シートにおいては、ラッピングシート16が液を直接的に吸収する吸液面を形成するとした場合には、以下のように換言できる;第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、前記第1の基材の表面に配置させるラッピングシートと、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層は、粒子状吸水剤を含み、前記ラッピングシートの表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第2の基材の厚みに対する、前記第1の基材の厚みの比(第1の基材の厚み(mm)/第2の基材の厚み(mm))が、1.5以上14未満であり、第1の基材11は、吸水層12が設けられた面(吸水層12側の面)が起毛されている。
【0088】
本発明の吸水性シート10は、第1の基材11と、吸水層12における粒子状吸水剤14とが、直接または接着剤を介して接することが好ましく、直接接するのがより好ましい。および/または、第2の基材13と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、直接または接着剤を介して接することが好ましく、接着剤を介して接することがより好ましい。このように、本発明の吸水性シートは、実質的に、第1の基材と;第2の基材と;第1の基材、第2の基材に挟まれている粒子状吸水剤と;粒子状吸水剤を第1の基材および第2の基材の少なくとも一方に固着する接着剤と;必要に応じこれらの一部または全部を包み込むラッピングシートと;のみからなる、シンプルな構成である(粒子状吸水剤に含まれうる本明細書で説明する添加剤等を含むことは排除されない)。より好ましい形態としては、第1の基材と;第2の基材と;第1の基材、第2の基材に挟まれている粒子状吸水剤と;粒子状吸水剤と第2の基材との間で粒子状吸水剤を第2の基材に固着する接着剤と;これらの全部を包み込むラッピングシートと;のみからなる、シンプルな構成である。すなわち、本発明の吸水性シートは、シンプルな構成であるにもかかわらず、特定戻り量が効果的に低減できるものである。
【0089】
吸水層12側の面が起毛された第1の基材11を有する吸水性シート10においては、効果的に粒子状吸水剤14の吸水性シート10からの脱落を抑制することができるため、吸水性シート10に含有される粒子状吸水剤14の含有量を200g/m2とすることができる。よって、吸水層12側の面が起毛された第1の基材11を有する吸水性シート10においては、吸水性シート10に含有される粒子状吸水剤14の含有量は、好ましくは200g/m2以上であり、230g/m2以上、250g/m2以上、270g/m2以上、280g/m2以上、300g/m2以上の順に好ましい。この場合の吸水性シート10に含有される粒子状吸水剤14の含有量の上限は、特に制限されないが、吸水剤14の保持の観点から、好ましくは360g/m2以下、より好ましくは350g/m2以下、さらに好ましくは325g/m2以下である。
【0090】
また、吸水層12側の面が起毛された第1の基材11を有する吸水性シート10においては、効果的に粒子状吸水剤14の吸水性シート10からの脱落を抑制することができるため、接着剤(好ましくはホットメルト接着剤)の量を低減することができる。よって、吸水層12側の面が起毛された第1の基材11を有する吸水性シート10において、第2の基材13上に散布される接着剤の含有量は、好ましくは1~50g/m2であり、より好ましくは5~50g/m2であり、さらにより好ましくは10~45g/m2であり、特に好ましくは15~30g/m2であり、最も好ましくは15~25g/m2である。
【0091】
一実施形態において、粒子状吸水剤と接着剤との質量比は、好ましくは80:20~99:1であり、より好ましくは85:15~98:2であり、さらに好ましくは90:10~98:2であり、特に好ましくは91:9~97:3であり、最も好ましくは92:8~96:4である。第1の基材の吸水層側の面が起毛されていることにより、第1の基材の起毛した繊維と粒子状吸水剤とが絡まり、粒子状吸水剤が第1の基材に保持されるため、粒子状吸水剤に対する接着剤の量を減らすことができる。これにより、特定戻り量の低減効果がさらに発揮される。
【0092】
吸水性シートにおいて、第1の基材の吸水層側の面が起毛されている場合、起毛されている面の起毛面積測定試験における起毛面積率は、5%以上であるのが好ましい。第1の基材の起毛されている面の起毛面積率は、5%以上、7%以上、10%以上の順に好ましい。第1の基材の起毛されている面の起毛面積率の上限は、特に制限されないが、粒子状吸水剤の膨潤規制の観点から、好ましくは30%以下、より好ましくは28%以下、さらに好ましくは25%以下である。本明細書中、起毛面積測定試験における起毛面積率は、後述の実施例に記載の方法により算出される。
【0093】
本発明の吸水性シートの一実施形態において、第1の基材の吸水層側の面が起毛されている場合、特定戻り量が効果的に低減できるだけでなく、吸水性シートからの粒子状吸水剤の脱落を効果的に抑制することができる。例えば、本発明の実施例において算出される粒子状吸水剤の脱落率が、10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましく、3質量%以下であるのがさらに好ましい。かような効果は、第1の基材の吸水層側の面が起毛されていることにより効果的に発現される。
【0094】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0095】
以下、吸水性シートを構成する各部材について詳細に説明する。
【0096】
[2-1.第1の基材]
第1の基材は、吸液される液が導入される側に位置する、透水性シートである。なお、吸液される液とは水に限らず、尿、血液、汗、糞、廃液、湿気、蒸気、氷、水と有機溶媒および/または無機溶媒との混合物、雨水、地下水等であってもよく、水を含んでいれば特に制限されるものではない。好ましくは、尿、経血、汗、その他の体液を挙げることができる。
【0097】
第1の基材が、透水性シートであり、かつ、吸液される側に位置することで、本発明の効果である吸水性シートの性能(逆戻り量、面方向の漏れなど)を充分に発揮することができる。透水性シートにおける透水性は、透水係数(JIS A1218:2009)が1×10-5cm/sec以上であることが好ましい。該透水係数は、より好ましくは1×10-4cm/sec以上、さらにより好ましくは1×10-3cm/sec以上、特に好ましくは1×10-2cm/sec以上、最も好ましくは1×10-1cm/sec以上である。本願の実施例で使用した第1の基材の透水係数は、1×10-5cm/sec以上であった。
【0098】
本発明において、第1の基材は、嵩密度が0.1g/cm3以下であるのが好ましく、0.08g/cm3以下であるのがより好ましく、0.05g/cm3以下であるのがさらに好ましい。第1の基材の嵩密度は、好ましくは0.001g/cm3以上であり、より好ましくは0.005g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.01g/cm3以上である。本明細書中、嵩密度とは、単位体積に対する質量であり、基材を高圧圧縮した場合(空隙を無くした場合)における密度ではなく、空隙の体積も含めた基材の体積より求めた密度である。第1の基材の嵩密度が0.1g/cm3以下であるとは、第1の基材が軽いことを意味する。嵩高いとは、低い嵩密度で有意に厚いことを意味する。本発明では、第1の基材が嵩高いことにより、第1の基材の吸液面に接した吸収される液が、速やかに下層である吸水層および第2の基材へと流れ込み、第1の基材の吸液面に留まる液が低減できる。さらに、吸収された液が吸水層に到達する際には、液は面方向に拡散されており、ゆえに、液が多量に吸水層に導入されても、吸水層は局所でなく面方向に広がった液を吸収することになる。すなわち、嵩高い第1の基材は、吸水力が低く、通液力が高く、液拡散性が高い。これにより、吸水性シートにおける逆戻り量を低減することができる。第1の基材の吸液面の湿度が抑制でき、肌への不快感が低減できる。第1の基材の嵩密度は、好ましくは0.1g/cm3以下である。なお、本明細書中、嵩密度は、後述の実施例で算出される値である。
【0099】
本発明において、第1の基材は、目付量が3~80g/m2であるのが好ましく、5~70g/m2であるのがより好ましく10~60g/m2であるのがさらに好ましい。第1の基材の目付量がかような範囲であることにより、逆戻り量をさらに低減でき、また、第1の基材中に粒子状吸水剤を取り込みやすくなり、結果として吸水性シートの保形性がさらに高まる。
【0100】
第1の基材の厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは1.0mm以上、さらにより好ましくは1.2mm以上、特に好ましくは1.3mm以上、最も好ましくは1.4mm以上である。第1の基材の厚みの上限は、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは4mm以下、さらにより好ましくは3mm以下、特に好ましくは2.5mm以下、最も好ましくは2mm以下である。第1の基材の厚みがかような範囲であることにより、第1の基材の吸液面と、吸水層および第2の基材との距離が十分に確保でき、いったん吸水層および第2の基材へと達した液が逆戻りするのを有意に低減でき、かつ面方向の漏れを低減することができる。
【0101】
第1の基材の厚み、嵩密度、目付量は、第1の基材を構成する材料、第1の基材の製法などによって制御することができ、これらのバランスで第1の基材の厚みや嵩密度が定まる。
【0102】
第1の基材は、粒子状吸水剤の透過率(第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率)が、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは、好ましい順に、60質量%以上、70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。なお、透過率の上限は、特に制限されないが、好ましくは97質量%以下である。第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率がかような範囲であることにより、第1の基材の吸水層と接する側において、粒子状吸水剤が第1の基材内に入り込みやすくなる。これにより、第1の基材中に含まれる水分を粒子状吸水剤が吸収することが可能となり、逆戻りがさらに低減される。なお、本明細書中、第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率は、第1の基材を透過する粒子状吸水剤の比率であり、第1の基材上に存在する粒状吸水剤が、後述する所定の条件でふるわれた場合における、第1の基材を通過した粒子状吸水剤の重量により求められ、具体的には後述の実施例に記載の方法で算出される値である。ここで、第1の基材の透過率は、第1の基材が不織布の場合は、第1の基材を構成する部材の性質、その表面状態、網目構造の複雑さ、繊維径、繊維間の融着状態、目付、厚み等を適宜調整することにより、所望の範囲に調整することができる。例えば、第1の基材が、後述のようにエアスルー不織布を用いるのであればエアスルー不織布の熱処理条件や繊維径及び密度を変更することによって透過率を調整することができる。
【0103】
一実施形態において、第1の基材は、吸水層側の面が起毛されている。
【0104】
「基材を構成する材料」
第1の基材を構成する材料としては、例えば、紙(衛生用紙、例えばティッシュペーパー、トイレットペーパーおよびタオル用紙)、ネット、不織布、織布、フィルム等が挙げられる。中でも、透水性の観点から、少なくとも第1の基材は、好ましくは不織布が使用される。
【0105】
使用される不織布としては特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性および吸水性シートとした際の強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、レーヨン繊維、その他の合成繊維からなる不織布や、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維等が混合されて製造された不織布等が挙げられる。
【0106】
第1の基材として用いられうる不織布の材質としては、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、パルプ繊維およびこれらが混合された繊維などが好ましく、ポリオレフィン繊維であることがより好ましい。これらの繊維は親水化処理が施されていてもよい。
【0107】
また、第1の基材として用いられうる不織布は、特に限定されるものではなく、エアスルー法;エアレイド法;スパンボンド法;スパンレース法など、いずれの方法により得られたものであってもよいが、エアスルー法またはエアレイド法で得られたものであることが好ましく、エアスルー法で得られたもの(エアスルー不織布)であることが好ましい。
【0108】
なお、エアスルー法は、PE/PPやPE/PETなどの熱融着可能な複合繊維に熱風を吹きつけて、熱融着を行うとともに、繊維の間に含まれる空気の量を増やし、嵩を高くし、密度を低くする加工のことをいう。また、エアレイド法は、空気の流れに乗せて均一分散させ、金網上に吸い取らせて不織布を作る方法であり、パルプ繊維の分散に空気を利用しているため、嵩を高くし、密度を低くすることができる。第1の基材がエアスルー不織布であることにより、吸収される液が第1の基材の吸液面に接した後、速やかに第1の基材の中へ導入されやすい。すなわち、第1の基材をエアスルー不織布にすることにより、吸水力が低く、通液力の高い第1の基材とすることができ、吸水性シートにおける逆戻り量を有意に低減することができる。
【0109】
[2-2.第2の基材]
第2の基材が、透水性シートであり、かつ、吸液される側の反対側に位置することで、本発明の効果である吸水性シートの性能(逆戻り量、面方向の漏れなど)を充分に発揮することができる。透水性シートにおける透水性は、透水係数(JIS A1218:2009)が1×10-5cm/sec以上であることが好ましい。該透水係数は、より好ましくは1×10-4cm/sec以上、さらにより好ましくは1×10-3cm/sec以上、特に好ましくは1×10-2cm/sec以上、最も好ましくは1×10-1cm/sec以上である。
【0110】
また、第2の基材の厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.08mm以上、さらにより好ましくは0.1mm以上、特に好ましくは0.2mm以上、最も好ましくは0.3mm以上である。第2の基材の厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.9mm以下、より好ましくは0.8mm以下、さらにより好ましくは0.7mm以下、特に好ましくは0.6mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。
【0111】
ここで、本発明の一実施形態によれば、第1の基材の厚みは0.7mm以上5mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.05mm以上0.9mm以下である。第1の基材と第2の基材との厚みを上記範囲に調整することによって、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。また、本発明の一形態によれば、好ましくは第1の基材の厚みは1.0mm以上4mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.08mm以上0.8mm以下であり、より好ましくは第1の基材の厚みは1.2mm以上3mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.1mm以上0.7mm以下であり、さらにより好ましくは第1の基材の厚みは1.3mm以上2.5mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.2mm以上0.6mm以下であり、特に好ましくは第1の基材の厚みは1.4mm以上2mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.3mm以上0.5mm以下である。
【0112】
本発明において、第2の基材の嵩密度は、1g/cm3以下であるのが好ましく、0.5g/cm3以下であるのがより好ましく、0.3g/cm3以下であるのがさらに好ましい。第2の基材の嵩密度は、好ましくは0.05g/cm3以上であり、より好ましくは0.07g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.08g/cm3以上である。第2の基材の嵩密度がかような範囲であることにより、第2の基材へ導入された液を保持しやすく、逆戻りが低減できる。
【0113】
本発明において、第2の基材は、目付量が5~100g/m2であるのが好ましく、10~70g/m2であるのがより好ましく、15~65g/m2であるのがさらに好ましくい。
【0114】
第2の基材の厚み、嵩密度、目付量は、第2の基材を構成する材料、第2の基材の製法などによって制御することができ、これらのバランスで第2の基材の厚みや嵩密度が定まる。
【0115】
なお、第1の基材、第2の基材およびラッピングシート(例えば、不織布)の空隙率は、以下の式で測定できる。基材(または、ラッピングシート)に用いられる目付量A(g/m2)、基材(または、ラッピングシート)の厚みB(mm)、基材(または、ラッピングシート)に用いられる素材(例えば、ポレオレフィン)の密度C(g/cm3)
基材(または、シート)の空隙率(%)=100-{(A/10000)/(B/10)}/C*100
【0116】
第2の基材は、液拡散面積が1000mm2以上であるのが好ましく、3000mm2以上であるのがより好ましく、6000mm2以上であるのがさらに好ましく、特に7000mm2以上であることが好ましい。また、第2の基材の液拡散面積の上限は特にないが、例えば10,000mm2以下であるのが好ましい。第2の基材の液拡散面積が上記範囲である場合、吸収された液が第2の基材に達した場合に、第2の基材においてその液を面方向に十分に拡散できる。これにより、吸水層を通過した液が多量に第2の基材に導入されても、第2の基材は局所でなく面方向に広がりながら液を吸収することになる。よって、第2の基材において十分に液を吸収および保持することができ、吸水性シートにおける逆戻り量を有意に低減することができ、かつ面方向の漏れを有意に低減することができる。
【0117】
ここで、液拡散面積は、液が基材(例えば、不織布)に接触する際、および/または、液が基材中を、基材の面方向に対して垂直な方向で通過する際に拡散する面方向における面積を意味し、後述の実施例に記載の方法で算出される値である。基材の液拡散面積が大きいほど、その基材が面方向への液の拡散性が高いことを示す。
【0118】
「基材を構成する材料」
第2の基材を構成する材料は、好ましくは不織布が使用される。不織布の材質としては、第1の基材と同様のものが適用でき、例えば、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、パルプ繊維およびこれらが混合された繊維などが好ましく、ポリオレフィン繊維であることがより好ましい。
【0119】
また、第2の基材として用いられうる不織布は、特に限定されるものではなく、エアスルー法;エアレイド法;スパンボンド法;スパンレース法など、いずれの方法により得られたものであってもよいが、エアレイド法で得られたもの(エアレイド不織布)またはスパンレース法で得られたもの(スパンレース不織布)であることが好ましい。なお、スパンレース法は、繊維を高圧水流により攻絡させる方法で、接着剤を使用しない方法である。第2の基材がエアレイド不織布やスパンレース不織布であることにより、吸水性シートにおける逆戻り量を有意に低減することができ、かつ面方向の漏れを有意に低減することができる。
【0120】
[2-3.吸水層]
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおける吸水層は、粒子状吸水剤を有する。本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいては、吸水層の中に不織布等の他の基材が存在しないことが好ましい。
【0121】
(粒子状吸水剤)
吸水層は、粒子状吸水剤を含む。なお、別途記載のない限り、吸水剤が複数種類の粒子状吸水剤の混合物である場合は、以下の記載は、当該混合物の物性に関する説明である。すなわち、粒子状吸水剤の物性は、吸水層に含まれるすべての粒子状吸水剤を混合した場合の物性である。また、粒子状吸水剤の物性は、吸水性シートから、綿状パルプなどが混じらないように粒子状吸水剤のみを取り出して物性を測定してもよい。
【0122】
「表面張力」
表面張力とは、固体や液体の表面積を増加させるのに必要な仕事(自由エネルギー)を単位面積当たりで表したものである。本願でいう表面張力は、粒子状吸水剤を0.90質量%塩化ナトリウム水溶液中に分散させた際の、水溶液の表面張力をいう。なお、吸水剤の表面張力は、以下の手順により測定する。即ち、十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を、表面張力計(KRUSS社製のK11自動表面張力計)を用いて測定する。次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、および粒子状吸水剤0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌する。4分後、攪拌を止め、含水した粒子状吸水剤が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定する。なお、本発明では白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、かつ、ガスバーナーで加熱洗浄して使用する。
【0123】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤の表面張力が、以下順に、60mN/m以上、65mN/m以上、66mN/m以上、67mN/m以上、69mN/m以上、70mN/m以上、71mN/m以上が好ましく、最も好ましくは72mN/m以上である。粒子状吸水剤の吸水性シートへの適用では従来の紙オムツよりも表面張力の影響が表れやすく、表面張力が上記の条件を満たすことにより、吸水性シートにおける逆戻り量を低減することができ、かつ面方向の漏れを低減することができる。
【0124】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤の表面張力の上限には特に制限はないが、現実的には73mN/m以下である。
【0125】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤のCRC(無加圧下吸水倍率)は、以下順に、30g/g以上、32g/g以上、33g/g以上、34g/g以上が好ましく、最も好ましくは35g/g以上である。粒子状吸水剤のCRCが上記の条件を満たすことにより、吸水性シートにおける逆戻り量を低減することができる。なお、粒子状吸水剤のCRCとは、ERT441.2-02により規定されるCentrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、粒子状吸水剤の無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、粒子状吸水剤0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。
【0126】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤のAAP(加圧下吸水倍率)は、吸水性シートの性能向上(戻り量が少なくなる)の観点から、以下順に、好ましくは25g/g以上、さらに好ましくは28g/g以上、特に好ましくは30g/g以上、最も好ましくは33g/g以上である。なお、粒子状吸水剤のAAPとは、ERT442.2-02により規定されるAbsorption Against Pressureの略称であり、粒子状吸水剤の加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、粒子状吸水剤0.9gを大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm2、0.3psi)荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。また、ERT442.2-02には、Absorption Under Pressure(AUP)と表記されているが、実質的に同一内容である。
【0127】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤のDRC5min(浸漬保持容量5分値)は、吸水性シートの性能向上(特定戻り量が少なくなる)の観点から、以下順に、好ましくは25~50g/g、さらに好ましくは30~45g/g、特に好ましくは30~40g/gである。なお、粒子状吸水剤のDRC5minとは、5分間での無加圧下での吸水倍率を意味し、DRC5minの値が大きいほど吸収速度が速いことを示している。なお、吸水剤のDRC5minについての詳細な説明は、米国特許出願公開第2019/0111411号明細書の段落「0151」~「0152」、段落「0328」及び段落「0484」~段落「0487」(
図1を含む)の記載が参照により本明細書に援用される。
【0128】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤のGPRは、後述する加圧特定戻り量評価における吸水時間の短縮、すなわち吸水速度の向上効果に優れるため、好ましくは20g/min以上、より好ましくは50g/min以上、さらに好ましくは70以上、さらにより好ましくは100g/min以上、特に好ましくは150/min以上である。すなわち、粒子状吸水剤のGPRが20g/min以上であると、加圧特定戻り量評価において吸水時間が短縮でき、よって吸水速度が向上する。これにより、使用者の不快感を減少させることができる。かような効果は、第1の基材の吸水層側の面が起毛されていることにより効果的に発現される。粒子状吸水剤のGPRの上限は特にないが、1000g/min以下が好ましい。なお、粒子状吸水剤のGPRとは、Gel Permeation Rate(ゲル透過速度)の略称であり、粒子状吸水剤を荷重下で膨潤させたときの、膨潤ゲルの粒子間を通過する液の流速(単位;g/min)のことをいう。なお、GPRの測定方法についての詳細な説明は、国際公開第2019/074094号明細書の段落「0237」~「0239」(
図5を含む)の記載が参照により本明細書に援用される。
【0129】
「粒子形状」
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて粒子状吸水剤は、その粒子形状に制限はなく、例えば、球状の粒子状吸水剤(及びその造粒物)であってもよい。好ましい実施形態としては、粒子状吸水剤は、不定形破砕状であることが好ましい。ここで、不定形破砕状とは、形状が一定でない破砕状の粒子である。逆相懸濁重合や気相重合で得られた球状粒子に比べて不定形破砕状では基材へ固定を容易にすることができるからである。本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤は、好ましくは水溶液重合における粉砕物である。一方、粉砕工程を経ない場合、代表的には逆相懸濁重合や重合モノマーを噴霧し重合するような液滴重合等によって得られる球状の粒子または球状粒子の造粒物は、不定形破砕状ではない。本発明の実施形態において、粒子状吸水剤の形状が不定形破砕状であると、平均真円度の高いもの(例えば、球形のもの)と比べて吸水性シートの形状保持がなされやすい。本発明の実施形態において、粒子状吸水剤の平均真円度は、0.70以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましく、0.55以下であることがさらに好ましい。
【0130】
平均真円度の算出方法は以下のとおりである。ランダムに100個以上の粒子状吸水剤を選択し、各粒子状吸水剤を電子顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VE-9800)(倍率50倍)で撮影して粒子状吸水剤の画像を取得し、付属の画像解析ソフトを用いて粒子ごとに周囲長および面積を算出した。以下の式:
【0131】
【0132】
で各粒子の真円度を求め、得られた値の平均値を平均真円度として算出する。
【0133】
「粒子径」
本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤(もしくは、粒子状の吸水性樹脂、吸水性樹脂粒子)の粒子径は、ERT420.2-02に規定される「PSD」の測定方法に従って得られた重量平均粒子径であり、150~600μmであってよい。
【0134】
粒子状吸水剤の製造方法は、所望の物性を有する吸水剤の製造方法であれば、特に限定されず、例えば、実施例に記載の公報等を参酌して適宜製造することができる。
【0135】
〔2-4.ラッピングシート〕
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、少なくとも、第1の基材の表面に配置させるラッピングシートを有することが好ましい。ラッピングシートは、第1の基材の表面に配置されていればよいが、ラッピングシートが、第1の基材の側面と、吸水層の側面とを覆うように配置されるのがより好ましく、第1の基材の側面と、吸水層の側面と、第2の基材の側面とを覆い、第2の基材の吸収される液が導入される側とは反対側の面の一部または全体を覆うのがさらに好ましい。
【0136】
本発明の好ましい実施形態としては、吸水性シートは、ラッピングシートを備え、ラッピングシートは、透水性シートであり、かつ、少なくとも、第1の基材の表面(吸液される側)に位置する。
【0137】
また、ラッピングシートの厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.001mm以上、より好ましくは0.005mm以上、さらにより好ましくは0.01mm以上、特に好ましくは0.1mm以上、最も好ましくは0.2mm以上である。ラッピングシートの厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.9mm未満、より好ましくは0.8mm以下、さらにより好ましくは0.7mm以下、特に好ましくは0.6mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。
【0138】
本発明において、ラッピングシートの嵩密度は、1g/cm3以下であるのが好ましく、0.5g/cm3以下であるのがより好ましく、0.3g/cm3以下であるのがさらに好ましい。ラッピングシートの嵩密度は、好ましくは0.1g/cm3以上であり、より好ましくは0.12g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.13g/cm3以上である。
【0139】
本発明において、ラッピングシートは、目付量が5~100g/m2であるのが好ましく、5~70g/m2であるのがより好ましく、10~65g/m2であるのがさらに好ましい。
【0140】
ラッピングシートの厚み、嵩密度、目付量は、ラッピングシートを構成する材料、ラッピングシートの製法などによって制御することができ、これらのバランスでラッピングシートの厚みや嵩密度が定まる。
【0141】
「ラッピングシートを構成する材料」
ラッピングシートを構成する材料は、上述したラッピングシートを設ける目的を達成できるのであれば特に制限されないが、例えば、紙(衛生用紙、例えばティッシュペーパー、トイレットペーパーおよびタオル用紙)、ネット、不織布、織布、フィルム等が挙げられる。
【0142】
使用される不織布としては特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性および吸水性シートとした際の強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、レーヨン繊維、その他の合成繊維からなる不織布や、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維等が混合されて製造された不織布等が挙げられる。
【0143】
ラッピングシートとして用いられうる不織布の材質としては、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、パルプ繊維およびこれらが混合された繊維などが好ましく、ポリオレフィン繊維であることがより好ましい。これらの繊維は親水化処理が施されていてもよい。
【0144】
ラッピングシートとして用いられうる不織布は、特に限定されるものではなく、エアスルー法;エアレイド法;スパンボンド法;スパンレース法など、いずれの方法により得られたものであってもよいが、スパンボンド法で得られたもの(スパンボンド不織布)であることが好ましい。紙オムツ等の吸収性物品を履いた幼児が座っている場面のように、吸水性シートに加重がかかっている状態でも(加圧している状態でも)、吸水性シートに吸収された尿水が、シートからにじみ出ないように(いわゆる逆戻りしないように)撥水性を有するラッピングシートが好ましく、例えば、スパンボンド不織布が好ましい。なお、スパンボンド不織布の製造法は、原料樹脂を溶融・紡糸させ得られる連続した長い繊維を直接集積してフリースを形成する方法である。原料樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸などが挙げられる。
【0145】
本発明の一形態によれば、第1の基材の製法と、第2の基材の製法と、ラッピングシートの製法とが異なる。このように吸水性シートを構成する各部材の製法を適切に変更することによって、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。本発明の一形態によれば、第1の基材が、エアスルー不織布であり、第2の基材が、エアレイド不織布、スパンレース不織布であり、ラッピングシートが、スパンボンド不織布であり、互いに異なる不織布である。かかる形態によって、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。
【0146】
〔3.吸水性シートの製造方法〕
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの製造方法は、(1)第1の基材に粒子状吸水剤を散布する工程、および、(2)第2の基材に粒子状吸水剤を散布する工程、の少なくとも1つを含む。より具体的な製造方法の一例として、下記(a)~(d)の製造方法が挙げられる。
【0147】
なお、第1の基材が起毛された面を有する場合、(a)~(d)の製造方法の前に、第1の基材の片面を起毛させておけばよい。
【0148】
第1の基材の吸水側の面を起毛させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができ、例えば、針、あざみの実(チーゼル)、ブラシ(刷毛)を用いた方法が挙げられる。工業的には、針布やあざみの実を巻いたローラーを回転させて、その上に布を走らせて生地の表面のスパン糸から繊維を引っ掻きだす方法により第1の基材を起毛させることができる。
【0149】
例えば、ブラシを用いる方法としては、水平な面に不織布60cmを静置し、その巻き取り長さ方向の両端に対し、それぞれ不織布の幅より大きい10kgの錘を乗せ、不織布を固定する。不織布の巻き取り長さ方向の端から10cmの点に対し、垂直にブラシを差し込む。ブラシは長辺が不織布の幅方向になるように、そのブラシの毛先(毛の先端)が水平な面に接するまで差し込み、その後、ブラシを巻き取り長さ方向に対して、40cm水平に移動させる。ブラシと錘とを不織布から取り外し、ブラシを移動させた面の不織布を切り取ることにより、起毛した不織布を得ることができる。
【0150】
起毛した不織布を得る場合の条件としては、例えば、下記の条件が好ましい。
・刷毛
商品名:25mm×0.1m シールブラシ(PBT/青)、メーカー:エスコ
毛丈:25mm、毛の径:0.2mm
ブラシ長さ:100mm、ブラシの幅:5mm、材質:PBT
・ブラシの移動スピード:16m/min=0.27m/s。
【0151】
(a)第1の基材の上に、粒子状吸水剤を均一に散布する。第2の基材の上に、接着剤を均一に散布する。第1の基材の粒子状吸水剤が散布されている面と、第2の基材の接着剤が散布されている面とが対合するように重ねて、圧着する。圧着は、接着剤の溶融温度付近における加熱圧着が好ましい。
【0152】
(b)第2の基材の上に、接着剤を均一に散布した後、粒子状吸水剤を均一に散布する。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、加熱圧着する。
【0153】
(c)第2の基材の上に、粒子状吸水剤および、好ましくは接着剤を散布し、加熱炉を通過させて、粒子状吸水剤が散逸しない程度に固着させる。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、加熱圧着する。
【0154】
(d)第2の基材の上に、接着剤を溶融塗布した後、粒子状吸水剤を均一に散布して層を形成させる。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、ロールプレスなどを用いて圧着する。
【0155】
これらの方法のなかでは、接着剤を均一に塗布する観点から、(d)の方法が好ましい。なお、(a)~(d)の方法を併用して、吸水性シートを製造することもできる。
【0156】
吸水層において、粒子状吸水剤の非存在領域を設ける場合、上記(a)~(d)の方法において粒子状吸水剤を筋状に散布すればよい。具体的には、基材(例えば、第1の基材)上に筋状に散布した接着剤の上に粒子状吸水剤を散布して、その基材の粒子状吸水剤が散布されている面に他の基材を重ねて、加熱圧着もよいし、粒子状吸水剤が筋状に散布された基材(例えば、第1の基材)と対向する基材(例えば、第2の基材)に、接着剤を筋状に散布し、その粒子状吸水剤が散布されている面と、接着剤が散布されている面とが対合するように2つの基材を重ねて、加熱圧着してもよい。すなわち、下記(a’)~(d’)の製造方法が挙げられる。
【0157】
(a’)第1の基材の上に、粒子状吸水剤を筋状に散布する。第2の基材の上に、接着剤を均一に散布する。第1の基材の粒子状吸水剤が散布されている面と、第2の基材の接着剤が散布されている面とが対合するように重ねて、圧着する。圧着は、接着剤の溶融温度付近における加熱圧着が好ましい。
【0158】
(b’)第2の基材の上に、接着剤を筋状に散布した後、粒子状吸水剤を均一に散布する。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、加熱圧着する。
【0159】
(c’)第2の基材の上に、粒子状吸水剤を筋状に散布し、および、好ましくは接着剤を均一に散布し、加熱炉を通過させて、粒子状吸水剤が散逸しない程度に固着させる。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、加熱圧着する。
【0160】
(d’)第2の基材の上に、接着剤を溶融塗布した後、粒子状吸水剤を筋状に散布して層を形成させる。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、ロールプレスなどを用いて圧着する。
【0161】
ここで、本発明において、粒子状吸水剤を筋状に散布する方法としては、特に制限されないが、例えば、型紙を用いることにより筋状に散布することができる。具体的には、吸水性シートと同じサイズで、一定の幅および長さで並んだ縞状のパターンで繰りぬかれたプレートを型紙として用いる。この型紙を、粒子状吸水剤を散布したい基材上に載せ、繰りぬかれた穴の部分に対して、粒子状吸水剤を散布する。粒子状吸水剤を散布後、型紙を取りはずすと、基材上には粒子状吸水剤が筋状に散布された状態となる。
【0162】
また、スクリーン印刷等により接着剤を基材上に縞状に塗布し、当該基材上に粒子状吸水剤を散布した後、基材上の接着剤と接触していない粒子状吸水剤を払い落とすことにより、基材上に粒子状吸水剤を筋状に散布することもできる。
【0163】
また、
図1~
図4のように吸水性シートがラッピングシートを備えている形態においては、(3)第1の基材と吸水層と第2の基材とを、第1の基材上に配置させたラッピングシートにより覆う工程を含む。例えば、上記(a)または(b)の工程を経て得られた第1の基材と吸水層と第2の基材とが圧着されたシートを、第1の基材を下にして、ラッピングシートの上に載せ、上面である第2の基材(吸水層が圧着されていない側の面)に接着剤を散布し、第1の基材からはみ出したラッピングシートの余った部分を折り曲げて、第2の基材の接着剤面とラッピングシートが接触するように包み、上下が逆になるようひっくり返した後、加圧圧着することで、ラッピングシートを備えた吸水性シートを得ることができる。
【0164】
以上に説明した以外の工程として、吸水性シートの触感を改善し、液体吸収性能を向上させる目的で、吸水性シートにエンボス加工を施してもよい。エンボス加工は、第1の基材および第2の基材を圧着する際に同時に施してもよいし、シート製造後に施してもよい。また、ラッピングシートにエンボス加工を施してもよい。
【0165】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの製造方法においては、添加剤(消臭剤、繊維、抗菌剤、ゲル安定剤など)を適宜配合してもよい。添加剤の配合量は、粒子状吸水剤の質量に対して好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは1~10質量%である。上記製造方法においては、予め添加剤を混合した粒子状吸水剤を用いてもよいし、製造工程の途中で添加剤を添加してもよい。
【0166】
製造される吸水性シートの寸法は、適宜設計されうる。通常は、横幅が3~10m、長さが数10m~数1000m(連続シートまたはロールの状態において)である。製造された吸水性シートは、目的(使用される吸収体の大きさ)に応じて裁断して用いられる。
【0167】
上記に例示した以外にも、吸水性シートの製造方法は、例えば以下の特許文献に開示されている:国際公開第2012/174026号、国際公開第2013/078109号、国際公開第2015/041784号、国際公開第2011/117187号、国際公開第2012/001117号、国際公開第2012/024445号、国際公開第2010/004894号、国際公開第2010/004895号、国際公開第2010/076857号、国際公開第2010/082373号、国際公開第2010/113754号、国際公開第2010/143635号、国際公開第2011/043256号、国際公開第2011/086841号、国際公開第2011/086842号、国際公開第2011/086843号、国際公開第2011/086844号、国際公開第2011/117997号、国際公開第2011/118409号、国際公開第2011/136087号、国際公開第2012/043546号、国際公開第2013/099634号、国際公開第2013/099635号、特開2010-115406号、特開2002-345883号、特開平6-315501号、特開平6-190003号、特開平6-190002号、特開平6-190001号、特開平2-252558号、特開平2-252560号、特開平2-252561号。これらの文献に開示されている吸水性シートの製造方法も、適宜参照される。
【0168】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、基材同士、または基材と粒子状吸水剤とを固着させる方法としては、(i)圧着によってもよく、(ii)水、水溶性高分子、溶媒に溶解または分散した各種バインダーによってもよく、(iii)基材自体の材質の融点で基材同士をヒートシールさせてもよく、(iv)接着剤を使用して固着させてもよい。基材同士、または基材と粒子状吸水剤は、好ましくは、(iv)接着剤を使用して固着される。
【0169】
使用される接着剤は溶液型でもよいが、溶媒除去の手間や残存する溶媒の問題、生産性の問題から、高い生産性と残存溶媒の問題がないホットメルト接着剤が好ましい。本発明でホットメルト接着剤は、予め基材または粒子状吸水剤の表面に含有されていてもよく、別途、ホットメルト接着剤を吸水性シートの製造工程で使用してもよい。ホットメルト接着剤の形態や融点は適宜選択でき、粒子状でもよく、繊維状でよく、ネット状でもよく、フィルム状でもよく、また、加熱によって溶融させた液状でもよい。接着剤を均一に塗布する観点から、溶融したホットメルト接着剤を散布するのが好ましい。
【0170】
好ましい実施形態において、第1の基材の吸水層側の面が起毛されている場合、ホットメルト接着剤は、第2の基材に散布される。粒子状吸水剤が散布された第1の基材と、ホットメルト接着剤が散布された第2の基材とが、粒子状吸水剤が散布された面と、ホットメルト接着剤が散布された面とが対合するように重ね合わせ、加圧圧着することにより吸水性シートを製造することができる。
【0171】
本発明に使用するホットメルト接着剤としては、適宜選択できるが、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体接着剤、スチレン系エラストマー接着剤、ポリオレフィン系接着剤およびポリエステル系接着剤等から選ばれる1種以上が適宜使用できる。
【0172】
具体的に、ポリオレフィン系接着剤として、ポリエチレン、ポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンが挙げられ、スチレン系エラストマー接着剤としてはスチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等のスチレンブロック共重合体が挙げられ、共重合ポリオレフィン等、ポリエステル系接着剤としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、共重合ポリエステル等が挙げられ、エチレン-酢酸ビニル共重合体接着剤として、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)接着剤;エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等が挙げられる。
【0173】
ホットメルト接着剤の市販品としては、例えば、JaourMelt3889U(JAOUR HOT MELT ADHESIVE社製、主成分:スチレンブロック共重合体、炭化水素樹脂、白色鉱油)、モレスコメルトTN-640Z(株式会社MORESCO社製)、モレスコメルトTN-781Z(株式会社MORESCO社製)、モレスコメルトTN-262Z(株式会社MORESCO社製)等が挙げられる。
【0174】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートおよび/またはその製造方法において、吸水性シートが、接着剤を含むことが好ましく、当該接着剤は、ホットメルト接着剤であることが好ましく、接着剤(例えばホットメルト接着剤)の使用量(含有量)は、粒子状吸水剤の質量に対して、3.0倍以下であることが好ましく、0.01~2.5倍であることがより好ましく、0.05~2.0倍であることがさらに好ましい。接着剤(特にホットメルトメルト接着剤)の含有量が多すぎると、コスト面や吸水性シートの質量面(紙オムツの質量増)で不利となるだけでなく、粒子状吸水剤が膨潤規制を受けて吸水性シートの吸水能を低下させる可能性もある。
【0175】
〔4.吸収性物品〕
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、〔2〕で説明されている吸水性シートを、液体透過性シートおよび液体不透過性シートによって挟持した構造を有している。ここで、液体透過性シートは、第1の基材側に位置し、液体不透過性シートが、第2の基材側に位置している。すなわち、本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、本発明の吸水性シートを液体透過性シートと、液体不透過性シートとで挟持することによりなり、液体透過性シートが、第1の基材側に位置し、液体不透過性シートが、前記第2の基材側に位置している。吸収性物品の具体例としては、紙オムツ、失禁パッド、生理用ナプキン、ペットシート、食品用ドリップシート、電力ケーブルの止水剤などが挙げられる。
【0176】
液体透過性シートおよび液体不透過性シートとしては、吸収性物品の技術分野で公知のものを、特に制限なく用いることができる。また、吸収性物品は、公知の方法によって製造することができる。
【実施例】
【0177】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40~50%RHの条件下で行われた。
【0178】
[実施例A]
<製造例>
[製造例1]
以下の特許に記載の製造例、実施例、比較例を参考に、内部架橋剤量によって、CRCを適宜調整することで、ポリアクリル酸(塩)系樹脂の粒子状吸水剤(1)~(3)を得た。得られた粒子状吸水剤の物性を表1に示した。
【0179】
国際公開第2014/034897号
国際公開第2017/170605号
国際公開第2016/204302号
国際公開第2014/054656号
国際公開第2015/152299号
国際公開第2018/062539号
国際公開第2012/043821号。
【0180】
〔アクリル酸の製造例〕
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm、p-メトキシフェノール200ppm)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)などの除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm、フルフラール1ppm以下、プロトアネモニン1ppm以下)を得て、さらに蒸留後にp-メトキシフェノールを50ppm添加した。
【0181】
〔アクリル酸ナトリウム水溶液の製法〕
上記アクリル酸1390gを米国特許5210298号の実施例9に従い、48%苛性ソーダを用いて20~40℃で中和して、濃度37%で100%中和のアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。
【0182】
<粒子状吸水剤(1)>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度36.0質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.11gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.66gおよびL-アスコルビン酸の1質量%水溶液35.28gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約2~4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(1-1)を得た。
【0183】
得られた吸水性樹脂(1-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、プロピレングリコール1.0質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液4.03質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度100℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(1-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(1-2)100質量部に、水3.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(1-3)を得た。吸水性樹脂(1-3)にAerosil90G(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(1)とした。
【0184】
<粒子状吸水剤(2)>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度36.0質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)5.01gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液29.07gおよびL-アスコルビン酸の1質量%水溶液35.78gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約2~4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(2-1)を得た。
【0185】
得られた吸水性樹脂(2-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、プロピレングリコール1.0質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液4.03質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度100℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(2-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(2-2)100質量部に、水3.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(2-3)を得た。吸水性樹脂(2-3)にAerosil90G(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(2)とした。
【0186】
<粒子状吸水剤(3)>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38.0質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)3.77gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液30.68gおよびL-アスコルビン酸の1質量%水溶液37.76gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約2~4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(3-1)を得た。
【0187】
得られた吸水性樹脂(3-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液3.83質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度195℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(3-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(3-2)100質量部に、水1.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(3-3)を得た。吸水性樹脂(3-3)にAerosil200(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(3)とした。
【0188】
[市販品紙オムツからの吸水性樹脂の取出し]
<粒子状吸水剤(4)>
市販の紙オムツ(ムーニーエアフィット(Lサイズ、Lot No.201512163072)、ユニ・チャーム製、2016年5月に購入)から、吸水性樹脂を取り出した。取出しの際には、綿状パルプなどが混じらないように、吸水性樹脂のみを取り出した。取出された吸水性樹脂は、球状粒子を造粒した粒子形状であった。この吸水性樹脂を、粒子状吸水剤(4)とした。
【0189】
〔粒子状吸水剤の物性の測定方法〕
<重量平均粒子径>
本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤(もしくは、粒子状の吸水性樹脂、吸水性樹脂粒子)の粒子径は、ERT420.2-02に規定される「PSD」の測定方法に従って得られた重量平均粒子径である。各粒子状吸水剤の重量平均粒子径は表1に示す。
【0190】
<CRC(無加圧下吸水倍率)(ERT441.2-02)>
粒子状吸水剤0.2g(吸水前重量)を不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で水切りした後の粒子状吸水剤の吸水後重量を測定する。吸水倍率(単位;g/g)は、「(粒子状吸水剤の吸水後重量-粒子状吸水剤の吸水前重量)/(粒子状吸水剤の吸水前重量)×100」により求められる。各粒子状吸水剤のCRCは表1に示す。
【0191】
<表面張力>
本発明において、表面張力は、粒子状吸水剤を0.90質量%塩化ナトリウム水溶液中に分散させた際の、水溶液の表面張力を意味する。
【0192】
十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を、表面張力計(KRUSS社製のK11自動表面張力計)を用いて測定する。なお、本発明では、白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、かつ、ガスバーナーで加熱洗浄して使用する。
【0193】
次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、および粒子状吸水剤0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌する。4分後、攪拌を止め、含水した粒子状吸水剤が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定する。ここで、粒子状吸水剤の表面張力(単位:mN/m)は、生理食塩水に粒子状吸水剤を分散させた際の上澄み液の表面張力により求められる。各粒子状吸水剤の表面張力は表1に示す。
【0194】
〔実施例〕
[実施例1]
縦10cm、横40cmの不織布E(パルプ繊維を主成分とする。厚み0.4mm。エアレイド法で作成されたもの。第2の基材に相当する。目付量:47g/m2)に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.5~0.7g均一散布(散布量:12.5~17.5g/m2)した後、接着剤散布面に、粒子状吸水剤(1)を9.0g(散布量:225g/m2)均一に散布した。
【0195】
次に、縦10cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み1.4mmのエアスルー不織布A(第1の基材に相当する。目付量:41g/m2)を、不織布Eの粒子状吸水剤が散布された面に載せ、加圧圧着して、中間体シートXを得た。
【0196】
次に、縦24cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み0.1mmのスパンボンド不織布(ラッピングシートに相当、目付量:13g/m2、嵩密度0.13g/cm3)を敷いたところに、中間体シートXの不織布A側がスパンボンド不織布に面して接触するように載せた。
【0197】
次に、上記の中間体シートXの不織布E側の面(上面)に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を0.1~0.2g均一に散布した後、スパンボンド不織布の余った部分を折り曲げて、上記の中間体シートXの不織布E(中間体シートXの不織布E側の面)とスパンボンド不織布が接触するように包み、上下が逆になるようひっくり返した後、加圧圧着して、吸水性シート(1)を得た。
【0198】
[実施例2]
縦24cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み0.1mmのスパンボンド不織布(ラッピングシートに相当)を敷いておき、その上に、縦10cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み1.4mmのエアスルー不織布A(第1の基材に相当)を載せ、不織布Aの表面に、粒子状吸水剤(1)を、9.0g(散布量:225g/m2)均一に散布した。
【0199】
次に、縦10cm、横40cmに切断した不織布E(パルプ繊維を主成分とする。厚み0.4mm。エアレイド法で作成されたもの。第2の基材に相当する。目付量:47g/m2)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.5~0.7g均一に散布した(散布量:12.5~17.5g/m2)。その後、不織布Aの粒子状吸水剤を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着した後、さらに不織布Eに、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を0.1~0.2g均一に散布して(散布量:2.5~5.0g/m2)、中間体シートYを得た。
【0200】
次に、最下層に位置しているスパンボンド不織布の余った部分を折り曲げて、上記の中間体シートYの不織布E(中間体シートYの不織布E側の面)とスパンボンド不織布が接触するように包み、上下が逆になるようひっくり返した後、加圧圧着して、吸水性シート(2)を得た。
【0201】
[実施例3]
粒子状吸水剤(1)の代わりに、粒子状吸水剤(2)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(3)を得た。
【0202】
[実施例4]
粒子状吸水剤(1)の代わりに、粒子状吸水剤(3)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(4)を得た。
【0203】
[実施例5]
粒子状吸水剤(1)の代わりに、粒子状吸水剤(4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(5)を得た。
【0204】
[実施例6]
エアスルー不織布Aの代わりに、厚み2.0mmのエアスルー不織布B(目付量:43g/m2)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(6)を得た。
【0205】
[実施例7]
エアスルー不織布Aの代わりに、厚み1.5mmのエアスルー不織布C(目付量:37g/m2)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(7)を得た。
【0206】
[実施例8]
エアスルー不織布Aの代わりに、厚み1.5mmのエアスルー不織布D(目付量:45g/m2)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(8)を得た。
【0207】
[実施例9]
不織布Eの代わりに、スパンレース不織布F(PET樹脂とパルプとから構成されており、厚み0.4mm、目付量45g/m2)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(9)を得た。
【0208】
[実施例10]
不織布Aの代わりに、厚み0.7mmのエアスルー不織布G(目付量:20g/m2)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(10)を得た。
【0209】
[比較例1]
縦10cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み1.4mmのエアスルー不織布Aを載せ、不織布Aの表面に、粒子状吸水剤(1)を、4.5g(散布量:112.5g/m2)均一に散布した。
【0210】
次に、縦10cm、横40cmに切断した不織布E(パルプ繊維を主成分とする。厚み0.4mm。エアレイド法で作成されたもの。第2の基材に相当する。目付量:47g/m2)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.5~0.7g均一に散布した(散布量:12.5~17.5g/m2)。その後、不織布Aの粒子状吸水剤を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着した。
【0211】
次に、粒子状吸水剤(1)と面していない側の不織布Aの表面に、粒子状吸水剤(1)を4.5g(散布量:112.5g/m2)均一に散布した。
【0212】
次に、縦10cm、横40cmに切断した不織布E(上記で用いた不織布Eと同様のもの(厚み0.4mm)。第1の基材に相当)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.5~0.7g均一に散布した(散布量:12.5~17.5g/m2)。その後、不織布Aの粒子状吸水剤を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着して、中間体シートZを得た。
【0213】
最後に、中間体シートZの不織布E(1回目に粒子状吸水剤を散布した不織布側)に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を0.1~0.2g均一に散布(散布量:2.5~5.0g/m2)した後、縦24cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み0.1mmのスパンボンド不織布で包み、加圧圧着することで、吸水性シート(11)を得た。
【0214】
なお、比較例1において第1の基材に相当する不織布Eの粒子状吸水剤の透過率は0.3質量%であり、粒子状吸水剤の含有割合は0%であった。また、比較例1で得られた吸水性シートにおいて、「第1の基材の厚み/第2の基材の厚み」は1であった。
【0215】
[比較例2]
縦24cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み0.1mmのスパンボンド不織布(ラッピングシートに相当)を敷いておき、その上に、縦10cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み1.4mmのエアスルー不織布A(第1の基材に相当)を載せ、不織布Aの表面に、粒子状吸水剤(1)を、9.0g(散布量:225g/m2)均一に散布した。
【0216】
次に、縦10cm、横40cmに切断した厚み1.4mmのエアスルー不織布A(第2の基材に相当する。以下、この不織布Aを便宜上、「不織布A2」と称する)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.5~0.7g均一に散布した(散布量:12.5~17.5g/m2)。その後、この不織布A2の接着剤を散布した面と、不織布Aの粒子状吸水剤を散布した面とが対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着した後、さらに不織布A2に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を0.1~0.2g均一に散布して(散布量:2.5~5.0g/m2)、中間体シートZ2を得た。
【0217】
次に、最下層に位置しているスパンボンド不織布の余った部分を折り曲げて、上記の中間体シートZ2とスパンボンド不織布が接触するように包み、上下が逆になるようひっくり返した後、加圧圧着して、吸水性シート(12)を得た。
【0218】
[比較例3]
縦24cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み0.1mmのスパンボンド不織布(ラッピングシートに相当)を敷いておき、その上に、縦10cm、横40cmに切断した、オレフィンを主成分とする、厚み1.4mmのエアスルー不織布A(第1の基材に相当)を載せ、不織布Aの表面に、粒子状吸水剤(1)を、9.0g(散布量:225g/m2)均一に散布した。
【0219】
次に、最下層に位置しているスパンボンド不織布の余った部分を折り曲げて、粒子状吸水剤(1)を撒いた不織布表面とスパンボンド不織布が接触するように包み、上下が逆になるようひっくり返した後、加圧圧着して、吸水性シート(13)を得た。なお、粒子状吸水剤(1)を撒いた不織布表面に接触するスパンボンド不織布の部分のみ、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.5~0.7g均一に散布してから包んだ。
【0220】
[比較例4]
エアスルー不織布Aの代わりに、スパンレース不織布F(PET樹脂とパルプから構成されており、厚み0.4mm、目付量45g/m2であった)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(14)を得た。
【0221】
なお、比較例4において第1の基材に相当する不織布Fの粒子状吸水剤の透過率は1質量%であり、粒子状吸水剤の含有割合は0%であった。また、比較例4で得られた吸水性シートにおいて、「第1の基材の厚み/第2の基材の厚み」は1であった。
【0222】
なお、本実施例で使用した不織布A~Gは、いずれも透水性シートであった。
【0223】
〔不織布の物性の測定方法〕
実施例1~10および比較例1~4で用いた不織布A~Fの厚み、嵩密度、液拡散面積、不織布に対する粒子状吸水剤の透過率は、以下の方法に従って測定した。
【0224】
<不織布の厚み測定>
ダイヤルシックネスゲージ 大型タイプ(厚み測定器)(株式会社 尾崎製作所製、型番:J-B、測定子:アンビル上下φ50mm)を用いて測定した。測定点数は、異なる箇所を5回とし、測定値は5点の平均値とした。厚み測定時は、不織布に圧力が出来るだけかからないよう、ハンドルからゆっくりと手を離し、厚みを測定した。
【0225】
<不織布の嵩密度の計算方法>
縦を10cm以上、横を40cm以上のサイズに切り取った不織布の重量を測定した。不織布の縦と横の長さ、および<厚み測定>より測り取った厚みをそれぞれ掛けて不織布の体積を計算し、不織布の重量を不織布の体積で割って嵩密度を計算した。
【0226】
<不織布の液拡散面積の測定方法>
目開きが2mm、線形が0.9mmの網を用いた直径30cmの篩を平面上に置き、10cm四方に切り取った不織布(第2の基材)を置いた。1mlのシリンジに口径0.50mmの注射針を装着して、青色1号試薬を20ppm含む生理食塩水1.00gを量りとり、篩上の不織布の中央にシリンジの生理食塩水を垂直に注入した。この時、篩の網と平面は十分に離れており、不織布と網を通過した生理食塩水は網に接しないようにした。不織布が生理食塩水を吸水して液の拡散が完了すると、生理食塩水が拡散している面積を測定した。
【0227】
<不織布に対する粒子状吸水剤の透過率>
目開き850μmのメッシュ32を有するJIS標準篩(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm;JIS Z8801-1(2000))、またはJIS標準篩に相当する篩31の中に、直径80mmに切断した不織布(第1の基材11)を
図5に示すように設置し、周囲をテープ33でとめた(少なくとも直径75mm以上は粒子が透過可能な面積を確保する)。不織布(第1の基材11)は後述の方法により、吸水性シートから取り出したものを使用してもよい。篩31の中の不織布(第1の基材11)上(
図5の矢印の方向)から、粒子状吸水剤14(重量平均粒子径:367μm、粒度分布:850μm~600μmが6.1% 600μm~500μmが14.5% 500μm~300μmが50% 300μm~150μmが27.6% 150μm~45μmが1.9% 45μm以下0.1%)10.0gを投入し、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES-65型ふるい振盪機;回転数230rpm、衝撃数130rpm)を用いて、室温(20~25℃)、相対湿度50%RHの条件下で5分間振盪した。振盪後、不織布(第1の基材11)と上記JIS標準篩に相当する篩31のメッシュ32を通過した粒子状吸水剤14(すなわち、篩31のメッシュ32より下部分31aに存在する粒子状吸水剤14)の質量(W(g))を測定し、下記式(i)にしたがって、粒子状吸水剤の透過率を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を算出した。表1では、粒子状吸水剤の透過率(質量%)を「透過率(質量%)」と示す。
【0228】
【0229】
<吸水性シートからの粒子状吸水剤の取出し方法>
吸水性シートから上方不織布、および下方の不織布を剥がすことで粒子状吸水剤(中間シートを含む場合は中間シートと粒子状吸水剤と)を取り出した。上方および下方の不織布や中間シートに貼着した粒子状吸水剤も全て取り出した。上方および下方の不織布を剥がす際には、吸水性シートを冷却し、不織布や粒子状吸水剤を貼着している接着剤(ホットメルト接着剤やスプレー糊)の接着性を十分に弱めた後に剥がした。この手順を踏むことで、不織布の繊維や構造厚みを変化させることなく取り出すことができ、正確に透過率を測定することが可能になる。吸水性シートの冷却方法は-10℃以下の恒温槽に一定時間入れる、冷却スプレーを吹きかける、液体窒素をかける等、種々手段が考えられるが、不織布の繊維や構造、厚みを変化させることなく、かつ吸水性シートに含まれる粒子状吸水剤が吸湿しない条件で行うのであれば、特に限定されない。
【0230】
また、取出した粒子状吸水剤が吸湿している場合、例えば乾燥することで、含水率を10質量%以下、好ましくは5±2質量%に調整して、上記透過率や本願で規定する諸物性を測定すればよい。含水率を調整するための乾燥条件としては、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の分解や変性が生じない条件ならば特に限定されないが、好ましくは減圧乾燥が良い。
【0231】
<上方不織布(第1の基材に相当)中における粒子状吸水剤の含有割合の測定>
上方不織布を縦10mm、横10mmの正方形に切り取ったもの(厚みはそのまま)を、株式会社島津製作所製マイクロフォーカスX線CTシステム inspeXio SMX-100CTにより測定を行った。測定条件を以下に記す。
【0232】
[X線CTによる撮影]
画像横サイズ(pixel):512
画像縦サイズ(pixel):512
X線管電圧(kV):50
X線管電流(μA):40
インチサイズ(inch):4.0
X線フィルタ:なし
SDD(X線源の焦点とX線検出器の距離)(mm):700
SRD(X線源の焦点と測定試料の回転中心の距離)(mm):550
走査モード 1:CBCT
走査モード 2:ノーマル走査
走査角度:フル走査
ビュー数:2400
アベレージ数:5
スムージング:YZ
スライス厚(mm):0.166
BHCデータ:なし
精細モード:あり
FOV XY(最大撮影領域 XY)(mm):50.3
FOV Z(最大撮影領域 Z)(mm):40.0。
【0233】
次に、X線CTの撮影データを、三谷商事株式会社製解析ソフト Win ROOFを用いて、以下のような手順で解析を行った。
【0234】
(1)Win ROOFを開き、X線CTにて保存した解析したい画像(Jpeg)を選択する。
【0235】
(2)画面上から2値処理、自動2値化、モード法、しきい値(適宜調整する)、実行という流れでクリック(選択)する。
【0236】
(3)多角形ROIを選択し、第1の基材(上方不織布)中の粒子状吸水剤を囲み、粒子状吸水剤面積を計算させる。
【0237】
(4)(3)と同様にして、吸水性シート中における粒子状吸水剤の総面積を計算する。
【0238】
計算結果から、第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合(%)を下式により計算した。
【0239】
第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合(%)=第1の基材中の粒子状吸水剤面積(I)/粒子状吸水剤総面積(II)×100
すなわち、第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合は、粒子状吸水剤の総面積に対する面積%で表される。なお、吸収される液が導入される側の第1の基材の面上には、粒子状吸水剤は、存在しても数%未満であるため、存在していないとみなすことができる。
【0240】
〔吸水性シートの評価方法〕
<逆戻り量(特定戻り量評価)>
図6に示されるように縦10cm、横40cmに作製した吸水性シート10を、縦14cm、横40cmの液体不透過性シート21で上部に開口部ができるように包んだ。液不透過性シート21で包んだ吸水性シート10を平面に置き、その上に液注入筒41(
図7)を
図8に示されるように吸水性シート10の中央に置いた。この状態で、流速7ml/秒で液投入が可能な漏斗42を使用して液注入筒41へ23℃の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液80gを投入した(
図9)。なお、この場合、液不透過性シート21から露出した吸水性シート10に対して、液が投入されている。液を投入してから10分後、予め重量を測定した濾紙43(型式No.2、ADVANTEC製;直径110mmの円形のもの)20枚を、吸水性シート10の中央に載せ、直径100mmの円形の錘44(1200g)をさらに載せて、1分間保持した。1分後、錘44を除去し、濾紙43の重量増分から逆戻り量1回目(g)を測定した。錘44を除去してから1分後、同様の操作(液を投入→投入10分後、濾紙43および錘44(1200g)を載せて、1分間保持→1分後保持→錘を除去、逆戻り量の測定)を繰り返し、逆戻り量2回目(g)、逆戻り量3回目(g)を測定した。測定した逆戻り量の1回目から3回目までの合計を表1に示した。
【0241】
<漏れ量(斜め評価)>
漏れ量は、
図10に示す装置を使用して測定した。
【0242】
概略としては、市販の実験設備用の架台60とパイプ61とを用いて、アクリル板63を傾斜させて固定した後、板上に固定した吸水性シートに鉛直上方から漏斗で生理食塩水を投入し、漏れ量を計量する機構である。以下に詳細な仕様を示す。
【0243】
アクリル板63は傾斜面方向の長さが400mmで、架台60によって水平に対して成す角20°になるよう固定した。アクリル板63は幅200mm、厚さ3mmであった。アクリル板63の表面は滑らかなので、板に液体が滞留したり吸収されたりすることはなかった。架台60を用いて、漏斗64を傾斜アクリル板63の鉛直上方に固定した。漏斗64は7mL/秒で液が投入されるものを使用した。
【0244】
アクリル板63の下部には、金属製トレイ65を設置されており、漏れとして流れ落ちる試験液をすべて受けとめ、その質量を0.1gの精度で記録した。
【0245】
このような装置を用いた傾斜における漏れ試験は以下の手順で行った。
図10に示すように、長さ100mm・幅100mmのサイズに切断した吸水性シート10の裏面をアクリル板63上に貼り付けた。
【0246】
吸水性シートの上端から1.5cm下方向の箇所に目印をつけ、漏斗の投入口を、目印から鉛直上方距離15±2mmになるように固定した。
【0247】
滴下漏斗64に生理食塩水20mLを一度に投入した。試験液が吸水性シート66に吸収されずに傾斜したアクリル板63を流れ、金属製トレイ65に入った液量を測定し、面方向の1回目漏れ量(mL)とし、10分後、同様に生理食塩水20mLを投入して、2回目漏れ量を計測した後、さらに10分後、同様に生理食塩水20mLを投入して、3回目の漏れ量を計測した。表の漏れ量は1回目から3回目の漏れ量を合計した値である。
【0248】
表1に、実施例1~10および比較例1~4の吸水性シートの構成および評価結果を表示す。
【0249】
【0250】
以上の結果より、実施例1~10の吸水性シートは、比較例1~4の吸水性シートと比較して、逆戻り量が顕著に少なく、また、吸水性シートからの漏れも顕著に低下したものであった。
【0251】
一方、複層構成である比較例1、第1の基材と第2の基材との厚み比が1である比較例2および比較例4では、逆戻り量が著しく増加した。
【0252】
[実施例11]
縦24cm、横40cmに切断した、ポリオレフィン繊維を主成分とする、厚み0.1mmのスパンボンド不織布(ラッピングシートに相当)を敷いておき、その中央に、縦10cm、横40cmに切断した、ポリオレフィン繊維を主成分とする、厚み1.4mmの起毛処理したエアスルー不織布A(第1の基材に相当)を載せ、不織布Aの起毛処理した表面に、粒子状吸水剤(2)を、9.0g(散布量:225g/m2)均一に散布した。なお、不織布Aの起毛処理は後述する方法に従って行った。
【0253】
次に、縦10cm、横40cmに切断した不織布E(パルプ繊維を主成分とする。厚み0.4mm。エアレイド法で作成されたもの。第2の基材に相当する。目付量:47g/m2)の表面に、135℃に加熱して液状にしたホットメルト接着剤(JaourMelt3889U、JAOUR HOT MELT ADHESIVE社製、主成分:スチレンブロック共重合体、炭化水素樹脂、白色鉱油)を、0.8g均一に散布した(散布量:20.0g/m2)。その後、不織布Aの粒子状吸水剤を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着し、中間体シートYを得た。
【0254】
上記中間体シートYの不織布Eの表面に、135℃に加熱して液状にしたホットメルト接着剤(JaourMelt3889U、JAOUR HOT MELT ADHESIVE社製、主成分:スチレンブロック共重合体、炭化水素樹脂、白色鉱油)0.3gを散布した(散布量:7.5g/m2)。次に、上記スパンボンド不織布の余った部分を折り曲げて、上記中間体シートYの不織布Eの表面と上記スパンボンド不織布が接触するように包み、上下が逆になるようひっくり返した後、加圧圧着して、吸水性シート(21)を得た。
【0255】
[実施例12]
粒子状吸水剤の散布量を12.0g(散布量:300g/m2)にした以外は、実施例11と同様にして、吸水性シート(22)を得た。
【0256】
[実施例13]
起毛処理した不織布Aを使用する代わりに、起毛処理していない不織布Aを使用した以外は、実施例12と同様にして、吸水性シート(23)を得た。
【0257】
[実施例14]
不織布Eに対して散布する接着剤をスチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)0.8g(散布量:20.0g/m2)にした以外は、実施例11と同様にして、吸水性シート(24)を得た。
【0258】
[実施例15]
下記の製造方法により得られた粒子状吸水剤(5)を使用した以外は、実施例12と同様にして、吸水性シート(25)を得た。
【0259】
<粒子状吸水剤(5)>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)5.03gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液30.68g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液37.76gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約2~4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径380μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(5-1)を得た。
【0260】
得られた吸水性樹脂(5-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液3.83質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度210℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(5-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(5-2)100質量部に、水1.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(5-3)を得た。吸水性樹脂(5-3)にAerosil200(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(5)とした。
【0261】
[実施例16]
下記の製造方法により得られた粒子状吸水剤(6)を使用した以外は、実施例12と同様にして、吸水性シート(26)を得た。
【0262】
<粒子状吸水剤(6)>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度36.0質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.11gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.66gおよびL-アスコルビン酸の1質量%水溶液35.28gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。
【0263】
重合を開始して40分後、150μm以下の吸水性樹脂微粉末を181.5g添加したうえで、ニーダーのブレードを高速回転(130rpm)で10分間ゲル解砕してから含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1~2mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(6-1)を得た。
【0264】
得られた吸水性樹脂(6-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、プロピレングリコール1.0質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液4.03質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度100℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(6-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(6-2)100質量部に、水3.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(6-3)を得た。吸水性樹脂(6-3)にAerosil90G(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(6)とした。
【0265】
[実施例17]
下記の製造方法により得られた粒子状吸水剤(7)を使用した以外は、実施例12と同様にして、吸水性シート(27)を得た。
【0266】
<粒子状吸水剤(7)>
容量2リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸351.7g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.860g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対して0.034モル%)、1.0重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)水溶液2.15g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液149.0g、および脱イオン水(イオン交換水)336.2gを投入し混合させて、単量体水溶液(a’)を作製した。
【0267】
次に、上記単量体水溶液(a’)を攪拌しながら冷却した。液温が40.0℃となった時点で、40℃に調温した48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液144.8gを加え、混合することで単量体水溶液(a)を作製した。このとき、該単量体水溶液(a)の温度は、作製直後の2段目の中和熱によって78.2℃まで上昇した。48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めた直後は、析出物が観察されたが、次第に溶解し透明な均一溶液となった。
【0268】
次に、攪拌状態の上記単量体水溶液(a)に4.0重量%の過硫酸ナトリウム水溶液15.49gを加えた後、直ちにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注いだ。なお、2段目の中和開始からバット型容器に単量体水溶液(a)を注ぎ込むまでの時間は55秒間とし、該バット型容器はホットプレート(NEO HOTPLATE HI-1000/株式会社井内盛栄堂社)を用いて、表面温度が40℃となるまで加熱した。
【0269】
上記単量体水溶液(a)がバット型容器に注がれてから60秒経過後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行した後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮した。重合反応の開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(7-1)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行った。
【0270】
上記重合反応で得られた含水ゲル(7-1)を短冊状に切断し、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(7-2)を得た。なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径11.0mm、孔数40個、開孔率 62.5%、厚み10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであった。
【0271】
上記ゲル粉砕は、上記スクリュー押出機のスクリュー軸の回転数を130rpmとした状態で、上記短冊状の含水ゲル(7-1)と水蒸気とをそれぞれ別の供給口から同時に供給することで行われた。なお、該含水ゲル(7-1)の供給量は毎分4640g、水蒸気の供給量は毎分83gであった。
【0272】
この粒子状含水ゲル(7-2)を50メッシュの金網上に広げ、190℃で30分間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミル(WML型ロール粉砕機/有限会社井ノ口技研社)を用いて粉砕し、さらに目開き850μm、600μm、500μm、300μm、150μmを有するJIS篩で篩い分けた後調合することにより、重量平均粒子径(D50)305μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の前駆体吸水性樹脂(A)を得た。前駆体吸水性樹脂(A)の遠心分離機保持容量(CRC)は48.4(g/g)であった。
【0273】
前駆体吸水性樹脂(A)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、プロピレングリコール1.5重量部および脱イオン水3.5重量部からなる表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂(1)のCRCが約35[g/g]となるように加熱処理を行った。その後冷却を行い、吸水性樹脂100重量部に対して、脱イオン水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム(DTPA・3Na)0.05重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き850μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:レオロシールQS-20、株式会社トクヤマ製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mLのマヨネーズ瓶に二酸化ケイ素と共に入れ、ターブラ・シェーカー・ミキサーT2F型(株式会社シンマルエンタープライゼス製)の振動によって60分間混合し、吸水性樹脂粒子(7)を得た。
【0274】
[実施例18]
縦24cm、横40cmに切断した、ポリオレフィン繊維を主成分とする、厚み0.1mmのスパンボンド不織布(ラッピングシートに相当)を敷いておき、その中央に、縦10cm、横40cmに切断した、ポリオレフィン繊維を主成分とする、厚み1.4mmの起毛処理したエアスルー不織布A(第1の基材に相当)を載せ、不織布Aの起毛処理した表面に、135℃に加熱して液状にしたホットメルト接着剤(JaourMelt3889U、JAOUR HOT MELT ADHESIVE社製、主成分:スチレンブロック共重合体、炭化水素樹脂、白色鉱油)を、0.8g均一に散布(散布量:20.0g/m2)し、その後、不織布Aの起毛し接着剤の付着した表面に粒子状吸水剤(2)を、12.0g(散布量:300g/m2)均一に散布した。
【0275】
次に、縦10cm、横40cmに切断した不織布E(パルプ繊維を主成分とする。厚み0.4mm。エアレイド法で作成されたもの。第2の基材に相当する。目付量:47g/m2)と不織布Aの接着剤及び粒子状吸水剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着し、中間体シートYを得た。
【0276】
上記中間体シートYの不織布Eの表面に、135℃に加熱して液状にしたホットメルト接着剤(JaourMelt3889U、JAOUR HOT MELT ADHESIVE社製、主成分:スチレンブロック共重合体、炭化水素樹脂、白色鉱油)0.3gを均一に散布した(散布量:7.5g/m2)。次に、上記スパンボンド不織布の余った部分を折り曲げて、上記中間体シートYの不織布Eの表面と上記スパンボンド不織布が接触するように包み、上下が逆になるようひっくり返した後、加圧圧着して、吸水性シート(28)を得た。
【0277】
<起毛処理>
水平で平滑な面を有する机に不織布を静置し、不織布の長軸方向の両端に10kgの錘を乗せ、不織布を固定する。不織布の長軸に対して垂直にブラシ(長さ:100mm、毛丈:25mm、ブラシの材質:ポリブチレンテレフタレート樹脂、ブラシ径:0.2mm)を上方から構え、不織布表面に向かって鉛直下向きに降ろし、そのままブラシの先端で不織布を押し込みながら、机の面に接するまで差し込む。その後、ブラシを不織布の長軸方向に対して荷重をかけずに所望の長さまで水平に移動させる。ブラシと錘を取り外し、ブラシを移動させた部分の不織布を切り取って、起毛した不織布を得る。
【0278】
<起毛面積率測定方法>
起毛処理を施した不織布を20cm×10cmのサイズに切り取り、その不織布の下側に、幅3cmの平滑なプラスチックプレートを、不織布の長軸に対して垂直に差し込む(
図11(a)参照)。次に、不織布を鉛直上向きに10cm程度掬い上げ、プラスチックプレートを水平に保つ。ぶら下がった不織布の長軸の両端を、重量が70g、挟み口が10cm以上あるクリップで下方から挟む(
図11(b)参照)。不織布の短軸に垂直な方向から、プラスチックプレート上に引き伸ばされた不織布上面の写真を撮影する(
図11(b)の矢印の方向から撮影)。
【0279】
撮影した写真を画像解析ソフトWinRoof(ver.6.1)に取り込み、タブの「画像処理」より「モノクロ画像処理」する。その後、
図11(c)のように長方形ROIによって、起毛している範囲(不織布表面から5mm上の範囲)を選択し、タブ「2値処理」から「自動2値化」を選択し、起毛した繊維だけを選択できるようにしきい値を調整する。タブ「計測」から「総面積・個数」の「面積率」を選択して実行し、不織布の起毛面積率を算出した。
【0280】
<加圧特定戻り量評価>
図6に示されるように縦10cm、横40cmに作製した吸水性シート10を、縦14cm、横40cmの液体不透過性シート21で上部に開口部ができるように包んだ。液不透過性シート21で包んだ吸水性シート10を平面に置き、その上に液投入筒45(内径26mm、外径30mm、長さ150mm、重さ34gのプラスチック筒に対し、内径30mm、外径60mm、長さ62mm、重さ1030gの錘を取り付けたもの、
図12)を
図13に示されるように吸水性シート10の中央に置いた。この状態で、流速7ml/秒で液投入が可能な漏斗42を使用して液注入筒45へ、23℃の0.9重量%塩化ナトリウム及び0.002重量%食用青色1号(東京化成工業株式会社)を含む水溶液80gを投入した(
図14)。水溶液を投入した瞬間から、液投入筒45内の水溶液が吸水性シート10に全て吸水されるまでの時間を計測した。なお、この場合、液不透過性シート21から露出した吸水性シート10に対して、液が投入されている。液を投入してから10分後、予め重量を測定した濾紙43(型式No.2、ADVANTEC製;直径110mmの円形のもの)20枚を、吸水性シート10の中央に載せ、直径100mmの円形の錘44(1200g)をさらに載せて、1分間保持した。1分後、錘44を除去し、濾紙43の重量増分から逆戻り量1回目(g)を測定した。錘44を除去してから1分後、同様の操作(液を投入→液の吸水時間を計測→投入10分後、濾紙43および錘44(1200g)を載せて、1分間保持→1分後保持→錘を除去、逆戻り量の測定)を繰り返し、逆戻り量2回目(g)、逆戻り量3回目(g)を測定した。測定した吸水時間および逆戻り量の1回目から3回目までの合計を表1に示した。
【0281】
<粒子状吸水剤の脱落率>
粒子状吸水剤の脱落率を以下のように算出した。40cm×10cmの吸水性シートに対し、重量を測定後、第2の基材側の面と測面全体、および第1の基材側の面のうち外周から内側に向かって1cmまでの面をビニールシートで覆ってテープで固定した。ビニールシートで覆った吸水性シートの表面に生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)300mlを均等に注いだ。生理食塩水の注水より10分後、吸水性シートを覆っていたビニールシートを外し、吸水性シートをビニール袋(大倉工業株式会社製、OK袋No.18、53cm×38cm)に入れた。電磁式ふるい振とう機 (Retsch製、AS200)の2本の支え棒それぞれにムッフ(ASS ONE、ムッフ ツメ付き 360°回転式)を取り付け、それぞれのムッフで1本のSUSパイプ(直径13mm、内径10mm、長さ290mm)を地面と平行に固定し、SUSパイプに取り付けた大型クリップ(挟み口150mm)でビニール袋ごと吸水性シートを挟み、振動幅3mmで1分間振動させた。電磁式ふるい振とう機の大型クリップからビニール袋ごと吸水性シートを取り外し、吸水性シートからビニール袋内に脱落した粒子状吸水剤の重量を測定した。以下の式より、粒子状吸水剤の脱落率を測定した。なお、下記式において、生理食塩水の重量は、300gとする。
粒子状吸水剤の脱落率(%)
=脱落した粒子状吸水剤(g)/(吸水性シートの重量(g)+生理食塩水の重量(g))×100。
【0282】
表2に、実施例11~18の吸水性シートの構成および評価結果を示す。
【0283】
【0284】
[実施例B]
なお、以下の実施例においては、吸水層(粒子状吸水剤を含む領域)の上に第1の基材を積層した積層体が第2の基材の上に1層のみ積層される単層形態と、吸水層(粒子状吸水剤を含む領域)の上に第1の基材を積層した積層体が第2の基材の上に2層積層される二層形態と、が開示されている。単層形態および二層形態のどちらにおいても、「上方不織布」と称する場合は、液を直接的に吸収する吸液面を有する第1の基材を意味し、「下方不織布」と称する場合は、第2の基材を意味する。二層形態における液を直接的に吸収する吸液面を有する第1の基材以外の基材は、中間基材であり、ここでは「中間不織布」と称する。
【0285】
<製造例>
[製造例1]
以下の特許に記載の製造例、実施例、比較例を参考に、内部架橋剤量によって、CRCを適宜調整することで、ポリアクリル酸(塩)系樹脂の粒子状吸水剤(1)、(2)を得た。得られた粒子状吸水剤の物性を表3に示した。
【0286】
国際公開第2014/034897号
国際公開第2017/170605号
国際公開第2016/204302号
国際公開第2014/054656号
国際公開第2015/152299号
国際公開第2018/062539号
国際公開第2012/043821号。
【0287】
〔アクリル酸の製造例〕
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm、p-メトキシフェノール200ppm)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)などの除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm、フルフラール1ppm以下、プロトアネモニン1ppm以下)を得て、さらに蒸留後にp-メトキシフェノールを50ppm添加した。
【0288】
〔アクリル酸ナトリウム水溶液の製法〕
上記アクリル酸1390gを米国特許5210298号の実施例9に従い、48%苛性ソーダを用いて20~40℃で中和して、濃度37%で100%中和のアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。
【0289】
<粒子状吸水剤(1)>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度35.5質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.00gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.66g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液35.28gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後に150μm以下の吸水性樹脂微粉末を181.5g添加したうえで、ニーダーのブレードを高速回転(130rpm)で10分間ゲル解砕してから含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1~2mmの粒子に細分化されていた。
【0290】
この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(1-1)を得た。得られた吸水性樹脂(1-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、プロピレングリコール1.0質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液4.03質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度100℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(1-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(1-2)100質量部に、水3.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(1-3)を得た。吸水性樹脂(1-3)にAerosil90G(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(1)とした。
【0291】
〔粒子状吸水剤の物性の測定方法〕
<重量平均粒子径>
本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤(もしくは、粒子状の吸水性樹脂、吸水性樹脂粒子)の粒子径は、ERT420.2-02に規定される「PSD」の測定方法に従って得られた重量平均粒子径である。各粒子状吸水剤の重量平均粒子径は表3に示す。
【0292】
<CRC(無加圧下吸水倍率)(ERT441.2-02)>
粒子状吸水剤0.2g(吸水前重量)を不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で水切りした後の粒子状吸水剤の吸水後重量を測定する。吸水倍率(単位;g/g)は、「(粒子状吸水剤の吸水後重量-粒子状吸水剤の吸水前重量)/(粒子状吸水剤の吸水前重量)×100」により求められる。各粒子状吸水剤のCRCは表4、表6に示す。
【0293】
<表面張力>
本発明において、表面張力は、粒子状吸水剤を0.90質量%塩化ナトリウム水溶液中に分散させた際の、水溶液の表面張力を意味する。
【0294】
十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を、表面張力計(KRUSS社製のK11自動表面張力計)を用いて測定する。なお、本発明では、白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、かつ、ガスバーナーで加熱洗浄して使用する。
【0295】
次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、および粒子状吸水剤0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌する。4分後、攪拌を止め、含水した粒子状吸水剤が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定する。ここで、粒子状吸水剤の表面張力(単位:mN/m)は、生理食塩水に粒子状吸水剤を分散させた際の上澄み液の表面張力により求められる。各粒子状吸水剤の表面張力は表4、表6に示す。
【0296】
〔実施例〕
<型紙の準備>
粒子状吸水剤を不織布上に筋状に散布するため、型紙1~6を準備した。型紙1~6は、縦14cm、横44cmの紙に、長手方向に沿って直線状に、粒子状吸水剤の存在領域と、粒子状吸水剤の非存在領域とが形成されるように、粒子状吸水剤の存在領域となる部分に穴を開けた。なお、型紙1~6において、その外周2cmは枠とし、紙を切断しないものとする(すなわち、型紙は、枠を除く領域において、短手方向に端から順に、粒子状吸水剤の存在領域の部分を繰りぬいて穴とする)。型紙1~6により形成される形状(S-1)~(S-6)を
図15(a)~
図15(c)、
図16(a)~
図16(c)に基づいて説明する。
図15(a)~
図15(c)、
図16(a)~
図16(c)は、単層形態の吸水性シートを短手方向に沿って切断した断面模式図である。なお、形状(S-1)~(S-6)は、吸水性シートの短手方向中央部に対して左右対称となるように、粒子状吸水剤14が含まれる領域と、間隙15とが形成されている。よって、下記で示す「粒子状吸水剤14」と「間隙15」との領域比は、短手方向に沿って左右どちらからでもよい。
【0297】
図15(a)は、型紙1により形成される(S-1)形状である。(S-1)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:15mm、間隙15:25mm、粒子状吸水剤14:20mm、間隙15:25mm、粒子状吸水剤14:15mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0298】
図15(b)は、型紙2により形成される(S-2)形状である。(S-2)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:20mm、間隙15:20mm、粒子状吸水剤14:20mm、間隙15:20mm、粒子状吸水剤14:20mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0299】
図15(c)は、型紙3により形成される(S-3)形状である。(S-3)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:35mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:35mm、粒子状吸水剤14:10mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0300】
図16(a)は、型紙4により形成される(S-4)形状である。(S-4)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:25mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:30mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:25mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0301】
図16(b)は、型紙5により形成される(S-5)形状である。(S-5)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:17.5mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:17.5mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:17.5mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:17.5mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0302】
図16(c)は、型紙6により形成される(S-6)形状である。(S-6)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0303】
[例1]
縦10cm、横40cmに切断した不織布A(エアスルー法で作製されたもの。オレフィンを主成分とし、厚み1.4mm。中間不織布に相当する)に、型紙1(
図15(a)参照)を載せた。型紙1には3つの長方形の穴があり、その穴から型紙1の下の不織布Aが最大限に見えるように位置を調整した。型紙1の全ての穴の総合面積に対するそれぞれの穴の面積比を計算し、粒子状吸水剤(1)4.5g(散布量:112.5g/m
2)をそれぞれの穴の面積比で分けて測りとり、それぞれの穴から見える不織布Aに対して均一に散布した。型紙の上に粒子状吸水剤(1)の一部が散布された場合、粒子状吸水剤(1)を散布している不織布Aに向かって型紙1を傾けて、粒子状吸水剤を型紙1の穴に落とした。その後、型紙1を不織布Aから取り外した。
【0304】
前記の不織布Aとは別に、縦10cm、横40cmに切断した不織布A(上記不織布Aと同じものである(厚み1.4mm)。以下、不織布A2と称する。第1の基材(上方不織布)に相当する)に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)0.7~0.9gを均一に散布(散布量:17.5~21.5g/m)した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布A2の接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着した。
【0305】
粒子状吸水剤(1)と面していない側の不織布Aの表面に、型紙1(
図15(a)参照)を載せた。型紙1の3つの長方形の穴から、型紙1の下の不織布Aが最大限に見えるように位置を調整した。型紙1の全ての穴の総合面積に対するそれぞれの穴の面積比を計算し、粒子状吸水剤(1)4.5gをそれぞれの穴の面積比で分けて測りとり、それぞれの穴から見える不織布Aに対して均一に散布した。型紙の上に粒子状吸水剤(1)の一部が散布された場合、粒子状吸水剤(1)を散布している不織布Aに向かって型紙1を傾けて、粒子状吸水剤を型紙1の穴に落とした。その後、型紙1を不織布Aから取り外した。
【0306】
縦10cm、横40cmの不織布E(エアレイド法で作成されたもの。パルプ繊維を主成分とする。厚み0.4mm。目付量:47g/m2。第2の基材(下方不織布)に相当する。)に、前記の接着剤0.7~0.9gを均一に散布した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着して中間体シートXを得た。
【0307】
最後に、中間体シートXを縦24cm、横40cmに切断した不織布F(スパンボンド法で作製したもの。オレフィンを主成分とし、厚み0.1mm。目付量:13g/m2。嵩密度:0.15g/cm3。ラッピングシートに相当)で包み、吸水性シート(1)を得た。
【0308】
[実施例2]
縦24cm、横40cmに切断した不織布F(ラッピングシートに相当)を敷いておき、その上に、縦10cm、横40cmに切断した不織布A(第1の基材に相当)を載せ、不織布Aの表面に、型紙1(
図15(a)参照)を載せた。型紙1の3つの長方形の穴から、型紙1の下の不織布Aが最大限に見えるように位置を調整した。型紙1の全ての穴の総合面積に対するそれぞれの穴の面積比を計算し、粒子状吸水剤(1)9.0g(散布量:225g/m
2)をそれぞれの穴の面積比で分けて測りとり、それぞれの穴から見える不織布Aに対して均一に散布した。型紙の上に粒子状吸水剤(1)の一部が散布された場合、粒子状吸水剤(1)を散布している不織布Aに向かって型紙1を傾けて、粒子状吸水剤を型紙1の穴に落とした。その後、型紙1を不織布Aから取り外した。
【0309】
縦10cm、横40cmの不織布E(第2の基材に相当)に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を0.7~0.9g均一に散布(散布量:17.5~21.5g/m)した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着して中間体シートYを得た。
【0310】
最後に、中間体シートYを前記の不織布Fで包み、加圧圧着することで、吸水性シート(2)を得た。
【0311】
[実施例3]
エアスルー不織布Aの代わりに、厚み0.7mmのエアスルー不織布Gを用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(3)を得た。
【0312】
[実施例4]
型紙1の代わりに、型紙2(
図15(b)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(4)を得た。
【0313】
[実施例5]
型紙1の代わりに、型紙3(
図15(c)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(5)を得た。
【0314】
[実施例6]
型紙1の代わりに、型紙4(
図16(a)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(6)を得た。
【0315】
[実施例7]
型紙1の代わりに、型紙5(
図16(b)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(7)を得た。
【0316】
[実施例8]
型紙1の代わりに、型紙6(
図16(c)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(8)を得た。
【0317】
[実施例9]
不織布Aの代わりに、不織布B(エアスルー法で作製されたもの。オレフィンを主成分とし、厚み2.0mm。)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(9)を得た。
【0318】
[実施例10]
不織布Aの代わりに、不織布C(エアスルー法で作製されたもの。オレフィンを主成分とし、厚み1.5mm。)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(10)を得た。
【0319】
[比較例1]
縦10cm、横40cmに切断した不織布Aに、粒子状吸水剤(1)4.5gを均一に散布した。
【0320】
縦10cm、横40cmの不織布E(第1の基材に相当する。)に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)0.7~0.9gを均一に散布(散布量:17.5~21.5g/m)した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着した。
【0321】
粒子状吸水剤(1)と面していない側の不織布Aの表面に、粒子状吸水剤(1)4.5gを均一に散布した。
【0322】
前記の不織布Eとは別に、縦10cm、横40cmの不織布E(以下、不織布E2と称する。第2の基材に相当する。)に、前記の接着剤0.7~0.9gを均一に散布した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布E2の接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着して中間体シートZを得た。最後に、中間体シートZを不織布Fで包み、加圧圧着することで、吸水性シート(11)を得た。
【0323】
[比較例2]
型紙1を用いずに、粒子状吸水剤(1)を不織布Aに均一に全面に散布した点を除いては、実施例1と同様にして、吸水性シート(12)を得た。
【0324】
[比較例3]
不織布A2の代わりに不織布Eを用いた点を除いては、実施例1と同様にして、吸水性シート(13)を得た。中間不織布については、不織布Aを用いている。
【0325】
[比較例4]
不織布Aの代わりに不織布Eを用いた点を除いては、実施例2と同様にして、吸水性シート(14)を得た。
【0326】
なお、本実施例で使用した不織布A~C、Gは、いずれも透水性シートであった。
【0327】
〔不織布の物性の測定方法〕
例1、実施例2~10および比較例1~4で用いた不織布A~C、EおよびGの伸び率、厚み、嵩密度、液拡散面積、不織布に対する粒子状吸水剤の透過率は、以下の方法に従って測定した。
【0328】
[伸び率の測定方法]
伸び率測定用の不織布を長辺が100mm、短辺が30mmの長方形に切り取った。このとき、長辺は不織布ロールの幅方向であり、短辺は不織布ロールの巻き取り長さ方向とする。なお、本実施例で吸水性シートに用いられる縦(短辺)100mm、横(長辺)400mmのサイズの不織布は、縦(短辺)を不織布ロールの幅方向とし、横(長辺)を不織布ロールの巻き取り長さ方向としている。
図17(a)のように、切り取った伸び率測定用の不織布の両端から5mmの位置に対し、それぞれ短辺と並行になるように目安線を引いた。目安線に重なるように、それぞれダブルクリップで挟んだ(
図17(b))。ダブルクリップは、爪の長さが30mm以上のものを用いた。一方のダブルクリップには錘を取りつけ、錘を取り付けたダブルクリップと錘を足した重さは110gとした。室温雰囲気下で、錘のついていないダブルクリップを持ち、もう一方のダブルクリップについた錘が空中に浮くように持ち上げ、不織布がダブルクリップと錘の重さで伸びた状態を20秒維持した。その直後、空中に浮かせたまま不織布の長辺方向の長さを測定した(
図17(c))。空中に浮かした後の長辺の長さと空中に浮かせる前の長辺の長さ100mmより、空中に浮かした後の長さがどの程度伸びているか、次の式を使用して比率を求め、伸び率とした。
【0329】
【0330】
<不織布の厚み測定>
ダイヤルシックネスゲージ 大型タイプ(厚み測定器)(株式会社 尾崎製作所製、型番:J-B、測定子:アンビル上下φ50mm)を用いて測定した。測定点数は、異なる箇所を5回とし、測定値は5点の平均値とした。厚み測定時は、不織布に圧力が出来るだけかからないよう、ハンドルからゆっくりと手を離し、厚みを測定した。
【0331】
<不織布の嵩密度の計算方法>
縦を10cm以上、横を40cm以上のサイズに切り取った不織布の重量を測定した。不織布の縦と横の長さ、および<厚み測定>より測り取った厚みをそれぞれ掛けて不織布の体積を計算し、不織布の重量を不織布の体積で割って嵩密度を計算した。
【0332】
<不織布の液拡散面積の測定方法>
目開きが2mm、線形が0.9mmの網を用いた直径30cmの篩を平面上に置き、10cm四方に切り取った不織布(第2の基材)を置いた。1mlのシリンジに口径0.50mmの注射針を装着して、青色1号試薬を20ppm含む生理食塩水1.00gを量りとり、篩上の不織布の中央にシリンジの生理食塩水を垂直に注入した。この時、篩の網と平面は十分に離れており、不織布と網を通過した生理食塩水は網に接しないようにした。不織布が生理食塩水を吸水して液の拡散が完了すると、生理食塩水が拡散している面積を測定した。
【0333】
<不織布に対する粒子状吸水剤の透過率>
目開き850μmのメッシュ32を有するJIS標準篩(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm;JIS Z8801-1(2000))、またはJIS標準篩に相当する篩31の中に、直径80mmに切断した不織布(第1の基材11)を
図5に示すように設置し、周囲をテープ33でとめた(少なくとも直径75mm以上は粒子が透過可能な面積を確保する)。不織布(第1の基材11)は後述の方法により、吸水性シートから取り出したものを使用してもよい。篩31の中の不織布(第1の基材11)上(
図5の矢印の方向)から、粒子状吸水剤14(重量平均粒子径:367μm、粒度分布:850μm~600μmが6.1% 600μm~500μmが14.5% 500μm~300μmが50% 300μm~150μmが27.6% 150μm~45μmが1.9% 45μm以下0.1%)10.0gを投入し、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES-65型ふるい振盪機;回転数230rpm、衝撃数130rpm)を用いて、室温(20~25℃)、相対湿度50%RHの条件下で5分間振盪した。振盪後、不織布(第1の基材11)と上記JIS標準篩に相当する篩31のメッシュ32を通過した粒子状吸水剤14(すなわち、篩31のメッシュ32より下部分31aに存在する粒子状吸水剤14)の質量(W(g))を測定し、下記式(i)にしたがって、粒子状吸水剤14の透過率を算出した。なお、測定は2回行い、その平均値を算出した。
【0334】
【0335】
なお、上記透過率の測定に用いた粒子状吸水剤は、重量平均粒子径300~450μm、粒度分布850μm~150μmである粒子状吸水剤を90重量%以上含んでなる粒子状吸水剤である。よって、本実施例で算出された第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率は、第1の基材に対する特定の粒子状吸水剤の透過率にも相当する。
【0336】
<吸水性シートからの粒子状吸水剤の取出し方法>
吸水性シートから上方不織布、および下方の不織布を剥がすことで粒子状吸水剤(中間不織布を含む場合は中間不織布と粒子状吸水剤と)を取り出した。上方および下方の不織布や中間不織布に貼着した粒子状吸水剤も全て取り出した。上方および下方の不織布を剥がす際には、吸水性シートを冷却し、不織布や粒子状吸水剤を貼着している接着剤(ホットメルト接着剤やスプレー糊)の接着性を十分に弱めた後に剥がした。この手順を踏むことで、不織布の繊維や構造厚みを変化させることなく取り出すことができ、正確に透過率を測定することが可能になる。吸水性シートの冷却方法は-10℃以下の恒温槽に一定時間入れる、冷却スプレーを吹きかける、液体窒素をかける等、種々手段が考えられるが、不織布の繊維や構造、厚みを変化させることなく、かつ吸水性シートに含まれる粒子状吸水剤が吸湿しない条件で行うのであれば、特に限定されない。
【0337】
また、取出した粒子状吸水剤が吸湿している場合、例えば乾燥することで、含水率を10質量%以下、好ましくは5±2質量%に調整して、上記透過率や本願で規定する諸物性を測定すればよい。含水率を調整するための乾燥条件としては、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の分解や変性が生じない条件ならば特に限定されないが、好ましくは減圧乾燥が良い。
【0338】
<上方不織布中における粒子状吸水剤の含有割合の測定>
上方不織布を縦10mm、横10mmの正方形に切り取ったもの(厚みはそのまま)を、株式会社島津製作所製マイクロフォーカスX線CTシステム inspeXio SMX-100CTにより測定を行った。測定条件を以下に記す。
【0339】
[X線CTによる撮影]
画像横サイズ(pixel):512
画像縦サイズ(pixel):512
X線管電圧(kV):50
X線管電流(μA):40
インチサイズ(inch):4.0
X線フィルタ:なし
SDD(X線源の焦点とX線検出器の距離)(mm):700
SRD(X線源の焦点と測定試料の回転中心の距離)(mm):550
走査モード 1:CBCT
走査モード 2:ノーマル走査
走査角度:フル走査
ビュー数:2400
アベレージ数:5
スムージング:YZ
スライス厚(mm):0.166
BHCデータ:なし
精細モード:あり
FOV XY(最大撮影領域 XY)(mm):50.3
FOV Z(最大撮影領域 Z)(mm):40.0。
【0340】
次に、X線CTの撮影データを、三谷商事株式会社製解析ソフト Win ROOFを用いて、以下のような手順で解析を行った。
【0341】
(1)Win ROOFを開き、X線CTにて保存した解析したい画像(Jpeg)を選択する。
【0342】
(2)画面上から2値処理、自動2値化、モード法、しきい値(適宜調整する)、実行という流れでクリック(選択)する。
【0343】
(3)多角形ROIを選択し、第1の基材(上方不織布)中の粒子状吸水剤を囲み、粒子状吸水剤面積を計算させる。
【0344】
(4)(3)と同様にして、吸水性シート中における粒子状吸水剤の総面積を計算する。
【0345】
計算結果から、第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合(%)を下式により計算した。
【0346】
第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合(%)=第1の基材中の粒子状吸水剤面積(I)/粒子状吸水剤総面積(II)×100
すなわち、第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合は、粒子状吸水剤の総面積に対する面積%で表される。なお、第1の基材の液を直接的に吸収する吸液面(上方不織布の吸収する液が導入される側の面)上には、粒子状吸水剤は、存在しても数%未満であるため、存在していないとみなすことができる。なお、下記の実施例においては、第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合が、吸水性シート全体に含有される粒子状吸水剤に対して、5%以上であった。
【0347】
〔吸水性シートの評価方法〕
<逆戻り量(特定戻り量評価)>
図6に示されるように縦10cm、横40cmに作製した吸水性シート10を、縦14cm、横40cmの液体不透過性シート21で上部に開口部ができるように包んだ。液不透過性シート21で包んだ吸水性シート10を平面に置き、その上に液注入筒41(
図7)を
図8に示されるように吸水性シート10の中央に置いた。この状態で、流速7ml/秒で液投入が可能な漏斗42を使用して液注入筒41へ23℃の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液80gを投入した(
図9)。なお、この場合、シート22において、液不透過性シート21から露出した吸水性シート10に対して、液が投入されている。液を投入してから10分後、予め重量を測定した濾紙43(型式No.2、ADVANTEC製;直径110mmの円形のもの)20枚を、シート22の中央、すなわち、吸水性シート10の中央に載せ、直径100mmの円形の錘44(1200g)をさらに載せて、1分間保持した。1分後、錘44を除去し、濾紙43の重量増分から逆戻り量1回目(g)を測定した。錘44を除去してから1分後、同様の操作(液を投入→投入10分後、濾紙43および錘44(1200g)を載せて、1分間保持→1分後保持→錘を除去、逆戻り量の測定)を繰り返し、逆戻り量2回目(g)、逆戻り量3回目(g)を測定した。測定した逆戻り量の1回目から3回目までの合計を表4、表6に示した。
【0348】
<厚み比(Lb/La)の算出方法>
Laは、間隙における上方不織布の吸液面(第1の基材の吸液面)から下方不織布(第2の基材)の吸水層側の表面までの厚みであり、Lbは、粒子状吸水剤が含まれる領域における上方不織布の吸液面(第1の基材の吸液面)から下方不織布(第2の基材)の吸水層側の表面までの厚みである。
【0349】
[X線CTによる吸水性シートの厚み測定]
X線CT による吸水性シートの撮影は、縦350mmで横100mmで厚み3mmのプラスチック板に、長さ180mmに切り取った吸水性シートの両端をガムテープで固定し、X線装置(島津製作所製、inspeXio SMX-100CT)内部プレート上に前記プラスチック板を厚み方向と垂直に設置し、下記条件で吸水性シートの中央を測定することにより撮影した。
【0350】
使用装置:inspeXio SMX-100CT(島津製作所製)
X線管電圧(kV) :80
X線管電流(μA) :40
インチサイズ(inch) :4.0
X線フィルタ :なし
SOD(mm) :700
SRD(mm) :550
ビュー数 :2400
アベレージ数 :5×1
スライス厚(mm) :0.166
CT モード1 :CBCT
CT モード2 :ノーマル操作
走査角度 :フル走査
BHC データ :なし
センターアジャスト:あり
精細モード :あり
FOV( XY)(mm) :50.3
FOV (Z)(mm) :20.0
ボクセルサイズ(mm/voxel):0.098
撮影して得られた立体映像を長さ方向に203分割した断面図を取得し、50枚目、100枚目、150枚目の画像から、吸水性シートの厚みを測り取った。厚みを測り取るとき、上層不織布下の間隙における上方不織布の吸液面から下方不織布の吸水層側の表面までの厚みをLaとし、上層不織布下の粒子状吸水剤が含まれる領域における上方不織布の吸液面から下方不織布の吸水層側の表面までの厚みをLbとした。
【0351】
<保形性の評価>
吸水性シートに対し、<逆戻り量>を評価した後、吸水性シートの中央を幅方向に切断し、粒子状吸水剤が含まれない領域(すなわち、間隙)を目視で確認した。この時、間隙に存在するものを確認し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
〇:粒子状吸水剤が含まれる領域が、間隙により隔てられている
(すなわち、間隙にはいかなる部材も存在しない、または、間隙には吸水層を矜持する基材(すなわち、単層形態の場合は、上層不織布および下方不織布;二層形態の場合は、上方不織布、中間不織布および下方不織布)が主に存在する)
×:間隙の存在割合が少なく、並列する粒子状吸水剤が含まれる領域同士が、つながっている(間隙により隔てられていない)
(すなわち、間隙とされていた領域に粒子状吸水剤が入り込んだり、吸水層を矜持する基材の存在割合が少なくなっている)。
【0352】
下記表3~表6に、実施例1~10および比較例1~4で製造した吸水性シートの構成と、各吸水性シートで用いた基材の物性の評価結果、吸水性シートの評価結果を示す。なお、表3~表6中、SAPとは、粒子状吸水剤を意味する。また、表3および表5におけるSAP配置領域(%)とは、上方不織布の面方向において、粒子状吸水剤が配置された基材の全面積に対する粒子状吸水剤が含まれる領域の面積割合であり、SAP非配置領域(%)とは、上方不織布の面方向において、粒子状吸水剤が配置された基材の全面積に対する粒子状吸水剤が含まれない領域(すなわち、間隙)の面積割合を意味する。ここで、粒子状吸水剤が配置された基材とは、粒子状吸水剤を散布した基材を意味する。なお、本実施例では、上方不織布、中間不織布および下方不織布は同じサイズである。
【0353】
【0354】
【0355】
【0356】
【0357】
以上の結果より、実施例2~10の吸水性シートは、比較例1~4の吸水性シートと比較して、保形性が高く、かつ、逆戻り量が顕著に少なかった。すなわち、単層形態および二層形態の吸水性シートにおいて、伸縮性を有する上方不織布を用いて、吸水層において間隙を設けることにより、逆戻り量を低減でき、保形性が高いことが確認できた。
【0358】
また、本実施形態においては、二層形態は単層形態に比べて、逆戻り量が多くなる傾向にある。これは、二層形態の上層不織布に対する粒子状吸水剤の量(すなわち、上方不織布と中間不織布との間に位置する粒子状吸水剤の量)が、単層形態の上層不織布に対する粒子状吸水剤の量(すなわち、上方不織布と下方不織布との間に位置する粒子状吸水剤の量)よりも少ないことも要因のひとつでありうる。そのため、単層形態と二層形態との逆戻り量の低減効果の差は一概に比較することは難しいと考える。
【0359】
なお、本出願は、2019年11月28日に出願された日本特許出願第2019-215887号および2019年11月28日に出願された日本特許出願第2019-215888号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
[符号の説明]
10 吸水性シート
11 第1の基材、
12 吸水層、
13 第2の基材、
14 粒子状吸水剤、
15 間隙、
16 ラッピングシート、
21 液体不透過シート、
31 篩、
31a 篩のメッシュより下部分、
32 メッシュ、
33 テープ、
41 液注入筒、
42 漏斗、
60 架台、
61 パイプ、
63 アクリル板、
64 漏斗、
65 金属製トレイ。
【0360】
[第2の発明]
続いて、第2の発明の説明を行う。第2の発明の吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層は、粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記第1の基材の表面は、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第1の基材は、伸び率が10%以上である。
[書類名]明細書
[発明の名称]吸水性シートおよびそれを含む吸収性物品
[技術分野]
本発明は、吸水性シートおよびそれを含む吸収性物品に関する。
【0361】
[背景技術]
吸水性樹脂(SAP/Super Absorbent polymer)は、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤であり、紙オムツ、生理用ナプキンや成人向け失禁用製品等の衛生材料、農園芸用の土壌保水剤、工業用の止水剤等、様々な用途に利用されている。
【0362】
これら吸収性物品は一般に紙オムツ製造工場にて吸水性樹脂と繊維材料を混合して吸収性物品ごとに個々に型取りした吸収体として製造されており、目的に応じて種々の形状の吸収体(例えば、平面に見て砂時計型、キツネ型、楕円型等)に加工されている。これら吸収体の製造方法は個々に型取りするため任意の形に加工でき、吸収性物品ごとに繊維や吸水性樹脂の量も調整し易いため、現在の紙オムツの主流となっている。
【0363】
しかし、近年、紙オムツの製造で、2枚のシート間に吸水性樹脂を固定化した長尺の吸水性シートを衛生材料の製造工程で裁断した吸収体(吸水性シートと呼称、通常は幅10cm前後で長さ数10cmの長方形に裁断)を用いた紙オムツが製造されるようになってきた。紙オムツメーカーは、長尺の連続吸水性シートを購入または製造することで、紙オムツの製造工程を簡便化でき、さらにパルプを用いないことで紙オムツを薄型化することができる。吸水性シートは上下のシート(特に不織布シート)間に吸水性樹脂粒子をサンドイッチおよび固定化する構成をとり、通常長尺連続シートを製造した後に長尺連続シートを裁断して幅10cm前後で長さ数10cmの長方形とし、紙オムツに組み込む(例えば、国際公開第2010/143635号)。
【0364】
従来の衛生材料(紙オムツ)と違って、吸水性シートによる紙オムツはその歴史が浅いこともあり、吸水性シートに適した吸水性樹脂の開発やパラメーターの提案は殆ど行われていないのが実情であり、従来の紙オムツ向けの吸水性樹脂が吸水性シートにもそのまま使用されている。
【0365】
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明者らは、薄型であることが主流の吸水性シートならではの構造上、吸収された液体が、吸水性シートに圧力が加わることにより吸収される液の導入方向に放出される、いわゆる「逆戻り」が生じやすいことを知見した。「逆戻り」はRe-wetとも呼ばれる。そして、逆戻り量の発生は、断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があって液の導入量が多くなると、その問題が顕著であることを見出した。逆戻りが生じた場合、吸水性シートと接している肌はその逆戻りした液と接するため、湿気の高い状態に晒される。そのため、使用者は不快感を生じるだけでなく、吸水性シートと接している肌にかぶれも生じやすくなる。
【0366】
また、このような従来の吸水性シートの構成では、吸液した吸水性樹脂粒子が膨潤することによって、吸水性樹脂粒子の上下シートに対する固定が弱まり、吸水性樹脂粒子がシート内で移動してしまう場合がある。そうすると、シート内で吸水性樹脂粒子の偏りが生じ、吸水性シートの形状が崩れる。この場合、吸水性シートの液吸収性に偏りが生じることになり、漏れの原因となる。場合によっては、吸水性樹脂粒子がシート内から外部へ脱落してしまうこともある。
【0367】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があっても、逆戻りによる吸水性シートからの液放出を有意に低減することができ、かつ、液吸収後であってもシート形状が保持される(シートの保形性が高い)新規な吸水性シートを提供することを目的とする。
【0368】
[課題を解決するための手段]
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を積み重ねた。その結果、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層は、粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記第1の基材の表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第1の基材は、伸び率が10%以上である、吸水性シートにより、上記課題が解決することを見出した。
【0369】
また、本発明の他の形態に係る吸水性シートは、前記吸水性シートにおいて、前記吸水層の上に前記第1の基材を積層した積層体のみが、前記第2の基材の上に、積層されてなる。
【0370】
さらに、本発明の他の形態に係る吸水性シートは、前記吸水性シートにおいて、前記吸水層の上に前記第1の基材を積層した積層体と、前記吸水層の上に中間基材を積層した構成体と、が、前記第2の基材の上に、積層されてなる。
【0371】
[図面の簡単な説明]
[
図18]本発明の第1の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
【0372】
[
図19]本発明の第2の実施形態に係る吸水性シートの断面を表す模式図である。
【0373】
[
図20]実施例で作製した吸水性シートにおける粒子状吸水剤と間隙との形態を説明するための吸水性シートの断面を表す模式図である。
【0374】
[
図21]実施例で作製した吸水性シートにおける粒子状吸水剤と間隙との形態を説明するための吸水性シートの断面を表す模式図である。
【0375】
[
図22]不織布の伸び率を測定する方法を説明する模式図である。
【0376】
[
図23]不織布に対する粒子状吸水剤の透過率を測定する方法を説明する模式図である。
【0377】
[
図24]逆戻り量の評価に用いたサンプルを示した平面図および右側面図であり、実施例で作製した吸水性シートを液体不透過性シートで包む様子を示した図である。
【0378】
[
図25]逆戻り量の評価に用いた液注入筒の平面図および正面図である。
【0379】
[
図26]本願の実施例で用いた吸水性シートの上に液注入筒を置いた様子を示した正面図である。
【0380】
[
図27]漏斗を使用して液注入筒から塩化ナトリウム水溶液を吸水性シートに投入している様子を示した正面図である。
【0381】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」等)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0382】
〔1.用語の定義〕
第1の発明における[1-1.吸水性シート]、[1-2.吸水性樹脂]、[1-3.吸水剤、粒子状吸水剤]、[1-4.ポリアクリル酸(塩)]、[1-5.EDANAおよびERT]、[1-6.その他]の定義は、第2の発明においても同様に適用される。そのため、ここでは省略するが、これらの定義は、参照により第2の発明に組みこまれる。
【0383】
〔2.吸水性シート〕
本発明の吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層は、粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記第1の基材の表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第1の基材は、伸び率が10%以上である。
【0384】
かかる構成によって、断続的に複数回(特に、3回以上)の液の導入があって液の導入量が多くなっても、逆戻りによる吸水性シートからの液放出を有意に低減することができ、かつ、吸液後の保形性が高い。本発明の吸水性シートは、液を直接的に吸収する吸液面を形成する第1の基材の伸び率が、10%以上である。すなわち、第1の基材は伸縮性を有する。この伸縮性を有する第1の基材の表面に、液を直接的に吸収する吸液面が形成される。ここで、本明細書中、「吸液面」とは、その基材において液を吸収する側の面、すなわち、液が導入される側の表面を意味する。また、本明細書中、「直接的」とは、他の基材等を浸透してきた液を順次吸収する形態を含まない。なお、本明細書中、第1の基材の表面に後述のラッピングシートが配置された場合も、第1の基材の表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成する形態に包含される。
【0385】
本発明の第1の形態において、第1の基材の表面が液を直接的に吸収する吸液面であるため、第1の基材上には吸水層が配置されていない。よって、本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層は、粒子状吸水剤を含み、前記第1の基材上には吸水層が配置されておらず、前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記第1の基材は、伸び率が10%以上である。本形態において、吸水層に含有されていた粒子状吸水剤の一部が第1の基材を透過して第1の基材上に移動して一部露出しても、それは吸水層が配置されているとはみなさない。なお、当該移動の要因は、例えば、吸水性シートが最終製品となり、輸送や運搬がなされて生じた振動などが想定される。前記第1の基材上に粒子状吸水剤を意図的に散布または配置したような場合は、本形態の範疇ではない。
【0386】
本発明者らは、従来の吸水性シート(例えば、中国特許出願公開第105380752号公報に記載の吸水性シートのように、第1の基材と第2の基材との間に位置する吸水層においてガイド溝(間隙に相当)を設けた吸水性シート)においては、本願の実施例における特定条件での逆戻り量の測定(本明細書中、「特定戻り量評価」とも称する)において、逆戻り量が低減できても保形性が悪いことを見出した。
【0387】
ここで、粒子状吸水剤が含まれる領域の間に存在する間隙は、液の導入があった場合に、第1の基材から吸水層へと液が導入される際の通液路として機能することができる。すなわち、通液路が存在することにより、吸液面より導入された液を、吸液面上に滞留することなく(さらには、導入した液が局所的に滞ることなく)、吸水機能を担う下層の吸水層に液を効率的に送り込むことができる。具体的には、第1の基材中を通過した液(例えば、尿)が、吸水層の表面全体と間隙とに導入される。間隙に導入された液は、粒子状吸水剤が含まれる領域に対し、通液を妨げる粒子状吸水剤がなく、粒子状吸水剤による吸収も緩やかであるため、拡散しやすくなる。液が拡散した結果、液を導入した部位の粒子状吸水剤の液吸収量が多く、液導入部から離れた部位の粒子状吸水剤の液吸収量が少なくなるといった、液の吸収量に偏りが生まれることを防止する。このため、粒子状吸水剤が飽和膨潤した部位が発生する、つまり、液を吸収できない部位が発生して逆戻り量が増加するといった作用を防止することができる。よって、結果として、逆戻り量が低減できるものと考えられる。
【0388】
しかしながら、例えば、粒子状吸水剤が液を吸収して膨潤した場合、粒子状吸水剤が含まれる領域はその体積が増加するため、間隙とされていた領域まで膨潤した粒子状吸水剤が侵入し、間隙が減少してしまう。この場合、断続的に複数回の液の導入があると、間隙の減少に応じて徐々に液の吸収能力が低下することが考えられる。そして、吸水層から液が放出される場合は、間隙の減少に伴い、間隙を液が通過しにくくなり、粒子状吸水剤が部分的に飽和膨潤しやすくなるため、第1の基材の吸液面まで逆戻りする量が徐々に増加していくことになる。これにより、逆戻りした液が肌まで上がる(肌に接する)ことになり、不快感を生じることになる。
【0389】
また、従来の吸水層に間隙を有する吸水性シート(例えば、中国特許出願公開第105380752号公報に記載の吸水性シート)の構成では、この粒子状吸水剤の膨潤により、第1の基材および/または第2の基材に対する粒子状吸水剤の固定が弱まり、粒子状吸水剤が吸水層内で移動してしまう場合がある。そうすると、吸水層内で粒子状吸水剤の偏りが生じ、吸水性シートの形状が崩れる(保形性が低下する)。
【0390】
これに対し、本発明の吸水性シートは、第1の基材が伸縮性を有することにより、この粒子状吸水剤が含まれる領域の体積の増加を緩衝することができると考えられる。すなわち、粒子状吸水剤が膨潤した場合、その膨潤に応じて第1の基材が伸びることにより、間隙の減少を抑制でき、よって、間隙の形状を維持することができる。これにより、断続的に複数回の液の導入があっても、液の拡散能力が低下することなく、逆戻り量を低減できる。また、第1の基材が伸縮することにより粒子状吸水剤の膨潤を緩衝するため、第1の基材および/または第2の基材に対する粒子状吸水剤の固定が弱まることがない。具体的には、粒子状吸水剤と接する第1の基材は、粒子状吸水剤が膨潤することにより、膨潤した粒子状吸水剤に追随した形状に伸びる。これにより、第1の基材と粒子状吸水剤とが絡みあうことになり、粒子状吸水剤は第1の基材と第2の基材との間により強く保持される。よって、本発明の吸水性シートは、粒子状吸水剤が吸水層内の粒子状吸水剤が含まれる領域から移動することを抑制することができ、吸水性シートの形状を維持することができるため、保形性が高い。なお、本発明の実施形態においては、吸水層の上に第1の基材を積層した積層体と、吸水層の上に中間基材を積層した構成体と、が、第2の基材の上に、(吸水層を第2の基材の側に位置させて)積層されてなる複層形態(二層形態)の吸水性シートと、吸水層の上に第1の基材を積層した積層体が、第2の基材の上に1層のみ積層されてなる単層形態の吸水性シートでは、単層形態の吸水性シートの方が逆戻りの低減効果が大きい。その理由は不明であり、換言すれば、当業者にとっても予期せぬ効果といえる。
【0391】
吸水性シートでは、吸水層における吸水機能は主に吸水剤(粒子状吸水剤)が担うこととなる。特に、吸水層にパルプが存在する従来の吸収性物品と構成が異なる吸水性シートでは、吸水剤の役割が一層重要となる。特に、本発明においては、第1の基材が伸縮性を有するために、吸水層において粒子状吸水剤が含まれる領域との間に設けられた間隙の形状を維持することができ、吸水剤にいったん導入された液が第1の基材の吸液面まで戻りにくい。よって、吸水性シートの形状が維持できる(すなわち、保形性が高い)とともに、「特定戻り量評価」を優れたものとすることができる。ここで、一般条件での逆戻り量を抑制しようと設計された吸水性シートや吸収性物品が、本願の「特定戻り量評価」において必ずしも優れた結果にならないことを付言しておく。また、本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、例えば、走ることを覚え始めの、膀胱がまだまだ小さな乳児が昼間等の活動的に動き回っている時間帯に使用する吸収性物品(例えば、オムツ)として好適であるが、無論使用形態がこれに限定されるわけではない。また、本明細書中に記載したメカニズム等が本願の請求の範囲の技術的範囲を限定することはない。
【0392】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0393】
本発明の第1の実施形態に係る吸水性シートは、吸水層の上に第1の基材を積層した積層体のみが、第2の基材の上に、積層されてなる。すなわち、第1の実施形態においては、吸水層が第1の基材および第2の基材に挟持された構造となっている。第1の実施形態について、
図18に基づいて説明する。
【0394】
図18は、本発明の第1の実施形態に係る吸水性シート10の、断面を表す模式図である。
図18には、吸水性シート10の3つの形態((a)~(c))が示されている。
図18(a)~(c)において、矢印は、吸収される液が導入される方向を示している。第1の基材11は、吸水層12に対して吸収される液(吸液される液)が導入される側に位置する。すなわち、第1の基材は、液体の排出側(例えば紙オムツでは肌側)に配置される。第1の基材11と第2の基材13との間に吸水層12が配置される。すなわち、吸水層12の上に第1の基材11を積層した積層体18が、第2の基材13上に積層されている。
【0395】
図18(a)~(c)において、吸水層12に粒子状吸水剤14が含まれる。
図18(a)~(c)の形態においては、吸水層12は、第1の基材11および第2の基材13の間に粒子状吸水剤14が存在している状態を示す。一部の粒子状吸水剤14は各基材11,13から脱離していてもよい。粒子状吸水剤14(粒子状吸水剤14が含まれる領域)は、実質的に粒子状吸水剤14を含まない間隙15を隔てて配置されている。したがって、吸水「層」とは、シートのような連続体だけを指すのではなく、第1の基材11および第2の基材13間に一定の厚さと長さとをもって存在するものであればいずれの形態であってもよい。例えば、吸水層12は、第1の基材11と第2の基材13との間に、一定の厚さと長さとを有して断続的に存在していてもよい。基材11、及び/又は、13に粒子状吸水剤14を固着させる場合、例えば、接着剤を使用すればよい。接着剤を用いて吸水性シートを製造する方法については、〔3.〕にて詳述する。
【0396】
ここで、
図18(a)では、間隙15が、第1の基材11と第2の基材13との間に形成されているが、本発明における間隙15としては、
図18(b)および
図18(c)の形態も含まれる。
図18(b)では、第1の基材11と第2の基材13とが接することにより粒子状吸水剤14が含まれる領域が隔たれている。第1の基材と第2の基材が接触しているが、通液路が維持されているので間隙とみなす。また、吸水層12に第1の基材11(場合によっては第1の基材11と第2の基材13と)が入り込むことにより、吸水層12が隔てられるため、当該形態において吸水層12は断続的に存在する。
図18(c)では、第1の基材11の端部と第2の基材13の端部とを重ね合わすことにより、吸水性シート10の端部が第1の基材11と第2の基材13とにより閉じられている。この場合においても、吸水層12の端部において第1の基材11(場合によっては第1の基材11と第2の基材13と)が入り込むことにより、吸水層12の端部において、吸水層12が存在しない状態となる。なお、吸水層12および間隙15の形態は、後述の第2の実施形態においても同様に適用される。
【0397】
第1の基材11内には、粒子状吸水剤14が存在してもよい。第1の基材11内の粒子状吸水剤14としては、例えば、第1の基材11に接触した(もしくは、固着させた)粒子状吸水剤14や、第2の基材13に接触した(もしくは、固着させた)粒子状吸水剤14が脱離して、第1の基材11内に捕捉された粒子状吸水剤14であってもよい。第1の基材11内に粒子状吸水剤14が存在する場合、第1の基材11中の粒子状吸水剤14の含有割合は、吸水性シート10全体に含まれる粒子状吸水剤14に対して、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、さらにより好ましくは30%以上である。なお、上限は特に制限されないが、好ましい順に、90%以下、70%以下、50%以下である。なお、本明細書中、吸水性シート10全体に含まれる粒子状吸水剤14に対する第1の基材11中の粒子状吸水剤14の含有割合は、後述の実施例の方法により算出される。
【0398】
間隙15の領域に粒子状吸水剤14を散布、配置しないため、間隙15の領域は、実質的に粒子状吸水剤14を含有しない。この間隙15の領域に粒子状吸水剤14以外の添加剤等を含有してもよい。例えば、間隙15は、第1の基材11と第2の基材13とが直接または接着剤を介して接することにより形成されていてもよい。第1の基材11は伸縮性を有するため、第2の基材13上に粒子状吸水剤14が含まれる領域が存在する場合、第1の基材11は粒子状吸水剤14が含まれる領域に追随して伸縮する。よって、第1の基材11は、粒子状吸水剤14が含まれる領域上で粒子状吸水剤14が含まれる領域を覆うような形状となり、間隙15上では、粒子状吸水剤14が含まれる領域の上側面に沿った後、第2の基材13に向けて沈み込む形状となる。
【0399】
本発明の第1の実施形態に係る吸水性シートにおいて、間隙15における第1の基材11の吸液面から第2の基材13の吸水層側の表面までの厚み(La)に対する、粒子状吸水剤14が含まれる領域における第1の基材11の吸液面から第2の基材の吸水層12側の表面までの厚み(Lb)の比(Lb/La)が、1.05以下であるのが好ましい。第1の基材11は伸縮性を有するため、第1の基材11が粒子状吸水剤14と接する部分において、粒子状吸水剤14が含まれる領域の形状(すなわち、第1の基材と接する粒子状吸水剤14において第1の基材11と接する側の粒子状吸水剤14の形状)に追随した形状となる(すなわち、追随して伸縮する)。よって、第1の基材11は粒子状吸水剤14(粒子状吸水剤14が含まれる領域)と密着することができ、これにより、第1の基材11は粒子状吸水剤14(粒子状吸水剤14が含まれる領域)と一体化された状態となっている。この場合、Laの厚みとLbの厚みとの差が小さく、よって、Lb/Laが1.05以下となる。この場合、粒子状吸水剤14が含まれる領域の形状の保形性が高い。よって、粒子状吸水剤14が膨潤した後であっても間隙15の維持性が高く、逆戻りをより低減することができる。なお、Lb/Laは、通常1以上となる。
【0400】
吸水性シート10において、第2の基材13上の一部に粒子状吸水剤14の非存在領域が設けられることにより、間隙15が形成される。間隙15(すなわち、粒子状吸水剤14の非存在領域)は、第1の基材11の吸液面における一の方向に沿って連続して設けられることにより、通液路としての機能がより発揮できる。間隙15が連続して設けられる形状としては、例えば、直線状、曲線状、または波型であってもよいが、これらの間隙15が直線状で並列して設けられるのが好ましい。よって、吸水性シート10において、粒子状吸水剤14が含まれる領域および間隙15は、第1の基材11の吸液面における一の方向(液が吸液される方向と垂直の面方向)に沿って伸びた形状を有し、並列して配置されているのが好ましい。すなわち、粒子状吸水剤14が含まれる領域が、筋状(縞状)に並んだ状態とされる。これにより、間隙15も縞状に形成されるため、粒子状吸水剤14が膨潤した場合にも間隙15が維持しやすく、結果として逆戻りをさらに低減できる。ここで、「一の方向」とは、厚み方向を除く、第1の基材11の吸液面における面方向に平行ないずれかの方向、すなわち、第1の基材11の吸液面における長手方向、短手方向、またはこれらの方向に対して傾斜した方向のいずれでもよい。間隙15の役割と、粒子状吸水剤14の役割とのバランスの観点から、吸水性シート10において、粒子状吸水剤14が含まれる領域および間隙15は、第1の基材11の吸液面における長手方向に沿って伸びた形状を有し、並列して配置されているのが好ましい。
【0401】
第1の基材11の吸水層12側の面(粒子状吸水剤14が配置される面)において、粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率(以下、「粒子状吸水剤14の存在領域の比率」とも称する)は、面積で90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらにより好ましい。また、第1の基材11の吸水層12側の面における粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率は、面積で10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。このような範囲で粒子状吸水剤14が設けられることで、間隙15の役割と、粒子状吸水剤14の役割とのバランスが適当となり、戻り量の低減効果が一層発揮される。なお、第1の基材11の吸水層12側の面における粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率は、第2の基材13の吸水層12側の面(粒子状吸水剤14が配置される面)における粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率と同様である。
【0402】
ここで、第1の基材11の吸水層12側の面における粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率は、吸水性シート10の製造時に粒子状吸水剤14の散布領域を調整することにより制御することができる。
【0403】
また、例えば、作製した吸水性シート10を裁断した断面をX線CT装置(inspeXio SMX-100CT)により撮影、解析することにより、第1の基材11の吸水層12側の面における粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率を算出することができる。具体的には、吸水性シート10の断面を撮影し、第1の基材11または第2の基材13と吸水層12との界面を、粒子状吸水剤14が存在する領域と、粒子状吸水剤14が存在しない領域とに分類し、それぞれの領域を合計し、その比を算出することにより粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率を算出することができる。なお、吸水性シート10の短尺方向の断面を3枚以上撮影し、粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率を算出し、それぞれの断面から得られた粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率を平均した値を「粒子状吸水剤14が含まれる領域の比率」とする。
【0404】
吸水性シート10に含有される粒子状吸水剤14の含有量は、好ましくは200~360g/m2であり、より好ましくは250~350g/m2であり、さらに好ましくは300~325g/m2である。
【0405】
吸水性シート10は、ラッピングシート16を有する。ラッピングシート16は、第1の基材11と第2の基材13の間で粒子状吸水剤14が担持された構造物である吸水性シート10の形状を保持する目的、第1の基材11と第2の基材13との間で担持された粒子状吸水剤14が、吸収体(吸水性シート10)からこぼれ落ちない(脱落しない)ようにする目的、粒子状吸水剤14が第1の基材11を透過し、第1の基材11の外部表面(液が直接接触する面)に移行した場合、粒子状吸水剤14が皮膚に直接接触しないようにする目的がある。ラッピングシート16を有しない場合、例えば、各基材11,13同士を接着することで封止(シーリング)する方法、第1の基材11の表面処理により、第1の基材11の外部表面への移行を抑制する方法等がある。本願の効果を維持しつつ吸水性シート10から粒子状吸水剤14が脱落しない方法として、ラッピングシート16を有することが好ましい。
【0406】
ラッピングシート16は、第1の基材11の上に配置され、吸水層12と第2の基材13との全体を包み込むように折り重ねられている。よって、ラッピングシート16は、第1の基材11、吸水層12および第2の基材13の全体を覆っている。かような構成とすることで、粒子状吸水剤14の吸水性シート10からの脱落を抑制することができる。なお、ラッピングシート16は、第1の基材11、吸水層12および第2の基材13の全体を覆う必要はない。例えば、ラッピングシート16は、第1の基材11の上に配置され、吸水層12の側面と第2の基材13の側面とを包み込むように折り曲げられ、第2の基材13の吸液される面(すなわち、吸水層12が設けられた面)と反対側の面に折り重ねられていてもよい。すなわち、ラッピングシート16は、第2の基材13の吸水層12が設けられた面と反対側の面において、ラッピングシート16の一端と、ラッピングシート16の他端とが重なっている。この場合、ラッピングシート16は、第1の基材11と、吸水層12と、第2の基材13の側面とを覆い、第2の基材13の吸水層12が設けられた面と反対側の面の全体または一部を覆っている。例えば、ラッピングシート16は、第1の基材11の上に配置され、吸水層12の側面と第2の基材13の側面とを包み込むように折り曲げられ、第2の基材13の吸収される面(すなわち、吸水層12が設けられた面)と反対側の面において、ラッピングシート16の一端と、ラッピングシート16の他端とが離れて配置されていてもよい。この場合、ラッピングシート16は、第1の基材11の吸液面と側面と、吸水層12の側面と、第2の基材13の側面とを覆い、第2の基材13の吸水層12が設けられた面と反対側の面の一部を覆っている。本発明に係る吸水性シートにおいてラッピングシート16は必須の構成ではないが、本発明に係る吸水性シート10にラッピングシート16がかような構成で備えられることにより、粒子状吸水剤14の吸水性シート10からの脱落を抑制することができる。
【0407】
よって、本発明の第1の実施形態に係る吸水性シート10は、少なくとも、第1の基材11の表面(すなわち、第1の基材11の吸液面上)に配置させるラッピングシート16を有することが好ましい。なお、本明細書中、上述のように、ラッピングシート16を有している場合でも、第1の基材11が液を直接的に吸収する吸液面を形成するものとするが、例えば、ラッピングシート16を有する吸水性シート10においては、ラッピングシート16が液を直接的に吸収する吸液面を形成するとした場合には、以下のように換言できる;第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と、前記第2の基材との間に位置する吸水層と、前記第1の基材の表面に配置させるラッピングシートと、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層は、粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記ラッピングシートの表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第1の基材は、伸び率が10%以上である。
【0408】
ラッピングシート16を各基材11,13に固着させる方法としては、例えば、接着剤を使用すればよい。
【0409】
本発明の第1の実施形態に係る吸水性シート10は、第1の基材11と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、直接または接着剤を介して接することが好ましく、および/または、第2の基材13と、吸水層12における粒子状吸水剤14とは、直接または接着剤を介して接することが好ましい。このように、本発明の吸水性シートは、実質的に、第1の基材と;第2の基材と;第1の基材、第2の基材に挟まれている粒子状吸水剤と;粒子状吸水剤を第1の基材および第2の基材の少なくとも一方に固着する接着剤と;必要に応じこれらの一部または全部を包み込むラッピングシートと;のみからなる、シンプルな構成である(粒子状吸水剤に含まれうる本明細書で説明する添加剤等を含むことは排除されない)。より好ましい形態としては、第1の基材と;第2の基材と;第1の基材、第2の基材に挟まれている粒子状吸水剤と;粒子状吸水剤と第2の基材との間で粒子状吸水剤を第2の基材に固着する接着剤と;これらの全部を包み込むラッピングシートと;のみからなる、シンプルな構成である。すなわち、本発明の吸水性シートは、シンプルな構成であるにもかかわらず、特定戻り量が効果的に低減できるものである。
【0410】
本発明の第2の実施形態に係る吸水性シートは、吸水層Aの上に第1の基材を積層した積層体と、吸水層Bの上に中間基材を積層した構成体と、が、(吸水層を第2の基材の側に位置させて)、第2の基材の上に、積層されてなる。以下、第2の実施形態について
図19に基づいて説明するが、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成が適用できる要件については省略する。
図19は、本発明の第2の実施形態に係る吸水性シート20の、断面を表す模式図である。
【0411】
図19に示すように、吸水性シート20は、吸収される液が導入される方向(
図19中、矢印の方向)から順に、第1の基材11aと、吸水層12a(吸水層A)と、中間基材11bと、吸水層12b(吸水層B)と、が第2の基材13の上に積層されてなる。すなわち、吸水性シート20は、第2の基材13上に、吸水層12aの上に第1の基材11aを積層した積層体18aと、吸水層12bの上に中間基材11bを積層した構成体18bと、が、第2の基材13の上に、吸水層12a,12bを第2の基材13の側に位置させて積層されてなる。以下では、積層体18aにおける粒子状吸水剤14を粒子状吸水剤14a、間隙15を間隙15aと称し、構成体18bにおける粒子状吸水剤14を粒子状吸水剤14b、間隙15を間隙15bと称する。なお、第2の実施形態における第1の基材11aは、第1の実施形態における第1の基材11と同様であるため、第1の基材11として略する場合もある。また、第2の実施形態における粒子状吸水剤14aと、間隙15aとについても、単に粒子状吸水剤14と、間隙15と称する場合がある。
【0412】
吸水層12a,12bは、第1の実施形態と同様に、粒子状吸水剤14a,14bからそれぞれ構成される。具体的には、吸水層12aは、第1の基材11aに固着している粒子状吸水剤14aおよび中間基材11bに固着している粒子状吸水剤14aから構成され、吸水層12bは、中間基材11bに固着している粒子状吸水剤14bおよび第2の基材13に固着している粒子状吸水剤14bから構成される。吸水層12a,12bにおいて、粒子状吸水剤14a,14bが含まれる領域は、それぞれ間隙15a,15bにより隔てられて配置されている。
【0413】
吸水性シート20において、中間基材11b上および第2の基材13上の一部に設けられる間隙15a,15b(粒子状吸水剤14の非存在領域)は、第1の実施形態に係る吸水性シート10と同様の形態であるのが好ましい。すなわち、粒子状吸水剤14a,14bが含まれる領域および間隙15a,15bは、第1の基材の吸液面における一の方向に沿って伸びた形状を有し、並列して配置されているのが好ましい。
【0414】
なお、
図19では、積層体18aにおける粒子状吸水剤14aが含まれる領域と、構成体18bにおける粒子状吸水剤14bが含まれる領域とが、第1の基材11aの面方向において重なるように(すなわち、第1の基材11aの吸液面に対する垂直方向において同じ位置に)、同じ厚みと幅とで配置されているが、この位置関係、厚みおよび幅の関係はこれに制限されない。例えば、積層体18aにおける粒子状吸水剤14aが含まれる領域と、構成体18bにおける粒子状吸水剤14bが含まれる領域とが、面方向において重ならないようにずらして配置してもよい。また、積層体18aにおける粒子状吸水剤14aが含まれる領域が、構成体18bにおける粒子状吸水剤14bが含まれる領域に比較して、幅広または幅狭にしたり、厚くまたは薄くしてもよい。
【0415】
第1の基材11a、中間基材11b内には、粒子状吸水剤14a,14bが存在してもよい。例えば、第1の基材11aには、粒子状吸水剤14aが存在しうるが、中間基材11bにおいては、中間基材11bの吸液面側の面には粒子状吸水剤14aが、中間基材11bの第2の基材13側の面には粒子状吸水剤14bが存在しうる。
【0416】
本発明の第2の実施形態に係る吸水性シート20においては、下記の要件について、第1の実施形態の第の1基材11、吸水層12、粒子状吸水剤14、間隙15が、液が導入される側に配置される積層体18aの第1の基材11a、吸水層12b、粒子状吸水剤14a、間隙15aにそれぞれ読み替えられる;
(1)第1の基材11中の粒子状吸水剤14の含有割合
(2)間隙15における第1の基材11の吸液面から第2の基材13の吸水層12側の表面までの厚み(La)に対する、粒子状吸水剤14が含まれる領域における第1の基材11の吸液面から第2の基材13の吸水層12側の表面までの厚み(Lb)の比(Lb/La)。
【0417】
なお、二層形態の(2)において、積層体18aと構成体18bとの粒子状吸水剤14a,14bが含まれる領域と、間隙15a,15bとが、第1の基材11aの面方向において重ならずに形成されている場合がある。この場合、Laの基準となる「間隙15における」の間隙15とは、第1の基材11aの吸液面に近い(すなわち、積層体11aにおける)間隙15aであり、Lbの基準となる「粒子状吸水剤14が含まれる領域における」の粒子状吸水剤14が含まれる領域とは、第1の基材11aの吸液面に近い(すなわち、積層体11aにおける)粒子状吸水剤14aが含まれる領域である。
【0418】
すなわち、本発明の第2の実施形態に係る吸水性シート20において、第1の基材11a内に粒子状吸水剤14が存在する場合、第1の基材11a中の粒子状吸水剤14の含有割合は、吸水性シート20全体に含まれる粒子状吸水剤14に対して、好ましくは5%以上であるのが好ましい。
【0419】
また、本発明の第2の実施形態に係る吸水性シート20において、間隙15aにおける第1の基材11aの吸液面から第2の基材13の吸水層12b側の表面までの厚み(La)に対する、粒子状吸水剤14aが含まれる領域における第1の基材11aの吸液面から第2の基材13の吸水層12b側の表面までの厚み(Lb)の比(Lb/La)が、1.05以下であるであるのが好ましい。吸水性シート20において、第1の基材11a中の粒子状吸水剤14aの含有割合およびLb/Laは、第1の実施形態に係る吸水性シート10の好ましい範囲が同様に適用できる。
【0420】
吸水性シート20は、ラッピングシート16を有する。ラッピングシート16は、第1の基材11aの上に配置され、積層体18aと構成体18bと第2の基材13との全体を包み込むように折り重ねられている。よって、本発明の第2の実施形態に係る吸水性シート20は、少なくとも、第1の基材11aの表面(すなわち、第1の基材の吸液面)に配置させるラッピングシート16を有することが好ましい。
【0421】
なお、本明細書中、以下のように換言できる;第1の基材と、中間基材と、第2の基材と、吸水層と、ラッピングシートと、を有する、吸水性シートであって、前記吸水層の上に前記第1の基材を積層した積層体と、前記吸水層の上に前記中間基材を積層した構成体とが、第2の基材の上に、前記吸水層を前記第2の基材の側に位置させて積層されており、前記ラッピングシートは、前記第1の基材の表面に配置され、前記吸水層は、粒子状吸水剤を含み、前記粒子状吸水剤が含まれる領域が、実質的に前記粒子状吸水剤を含まない間隙を隔てて配置され、前記ラッピングシートの表面が、液を直接的に吸収する吸液面を形成し、前記第1の基材は、伸び率が10%以上である。
【0422】
本発明の第2の実施形態に係る吸水性シート20は、第1の基材11aと、吸水層12aにおける粒子状吸水剤14aとは、直接または接着剤を介して接することが好ましく、中間基材11bと、吸水層12aにおける粒子状吸水剤14aとは、直接または接着剤を介して接することが好ましく、中間基材11bと、吸水層12bにおける粒子状吸水剤14bとは、直接または接着剤を介して接することが好ましく、および/または、第2の基材13と、吸水層12bにおける粒子状吸水剤14bとは、直接または接着剤を介して接することが好ましい。
【0423】
第2の実施形態に係る吸水性シート20において、第1の基材11aの吸水層12a側の面(粒子状吸水剤14aが配置される面)における粒子状吸水剤14aが含まれる領域の比率、および中間基材11bの吸水層12b側(粒子状吸水剤14bが配置される面)における粒子状吸水剤14bが含まれる領域の比率は、面積で90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらにより好ましい。また、第1の基材11aの吸水層12a側の面における粒子状吸水剤14aが含まれる領域の比率、および中間基材11bの吸水層12b側における粒子状吸水剤14bが含まれる領域の比率は、面積で10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。このような範囲で粒子状吸水剤14a,14bが設けられることで、間隙15a,15bの役割と、粒子状吸水剤14a,14bの役割とのバランスが適当となり、戻り量の低減効果が一層発揮される。なお、第1の基材11aの吸水層12a側の面における粒子状吸水剤14aが含まれる領域の比率は、中間基材11bの吸水層12a側の面(粒子状吸水剤14aが配置される面)における粒子状吸水剤14aが含まれる領域の比率と同様であり、中間基材11bの吸水層12bにおける粒子状吸水剤14bが含まれる領域の比率は、第2の基材13の吸水層12b(粒子状吸水剤14bが配置される面)における粒子状吸水剤14bが含まれる領域の比率と同様である。
【0424】
なお、吸水性シート20において、第1の基材11または第2の基材13における粒子状吸水剤14a,14bの存在領域の比率は、吸水性シート10と同様にして算出することができる。
【0425】
ここで、吸水性シート20に含有される粒子状吸水剤14の含有量は、好ましくは200~360g/m2であり、より好ましくは210~350g/m2であり、さらに好ましくは225~325g/m2である。吸水性シート20においては、吸水層12a,12bに存在する粒子状吸水剤14a,12bの合計が上記範囲となるように調整すればよく、好ましくは、吸水層12a,12bに存在する粒子状吸水剤14a,12bの量が、2:1~1:2であるのが好ましく、1.5:1~1:1.5であるのがより好ましい。
【0426】
本発明の第1および第2の実施形態に係る吸水性シート10,20において、一実施形態によれば、第1の基材11が嵩高い形態(低い嵩密度で有意に厚い形態)となりうるが、従来型の吸収性物品に用いられる吸収体よりも、薄型化が可能である。上記吸水性シート10,20を、紙オムツに使用する場合、その厚さは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、さらにより好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下、最も好ましくは4mm以下である。一方、厚さの下限は、吸水性シート10,20の強度および粒子状吸水剤14の直径を鑑みると、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上、よりさらに好ましくは0.5mm以上である。本願の実施例で使用した吸水性シート10,20の厚みは、2~5mmであった。
【0427】
なお、本願における第1の基材11、中間基材11b、第2の基材13、ラッピングシート16、吸水性シート10,20の厚みは、ダイヤルシックネスゲージ 大型タイプ(厚み測定器)(株式会社 尾崎製作所製、型番:J-B、測定子:アンビル上下φ50mm)を用いて測定した。測定点数は、測定対象のシートにおいて、異なる箇所を5点とし、各箇所について2回測定し、測定値は合計5点の平均値とした。厚み測定時は、測定対象のシートに圧力が出来るだけかからないよう、ハンドルからゆっくりと手を離し、厚みを測定した。具体的な手順としては、測定対象のシートの測定箇所に皺や歪みが生じないよう、厚みが一定の板の上に平らに貼り付け、その板を厚み測定器の下部測定子の上にセットする。次に、厚み測定器の上部測定子を測定対象のシートから2~3mmの高さ位置まで近づけた後、ハンドルからゆっくりと手を離し、測定対象のシートと板を合わせた厚みを測定する。測定対象のシートの厚みは、式:T1=T2-T0(T0:板の厚み(mm)、T1:測定対象のシートの厚み(mm)、T2:測定対象のシートおよび板の厚み(mm))によって定まる。
【0428】
吸水性シート10,20にさらに通液性、拡散性、柔軟性などを付与するために、吸水性シート10,20の表面(第1の基材11の液を直接的に吸収する吸液面またはラッピングシート16の表面)に適宜エンボス加工を施してもよい。エンボス加工を施す領域は、吸水性シート10,20表面の全面でもよく、一部でもよい。連続したエンボス加工領域を、吸水性シート10,20の長手方向に設けることにより、液を長手方向に容易に拡散させることができる。吸水性シート10,20においては、吸水層12において、粒子状吸水剤14が存在しない間隙15を有している。このように、間隙15に加えて、エンボス加工領域を、長手方向に連続して設けることにより、当該領域が、大量の液を流すための通液路(液体搬送通路)の役割を果たす。エンボス加工領域は直線状に設けても、曲線状に設けても、波型に設けてもよい。
【0429】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0430】
以下、吸水性シートを構成する各部材について詳細に説明する。
【0431】
[2-1.第1の基材]
第1の基材は、吸液される液が導入される側に位置する、透水性シートである。なお、吸液される液とは水に限らず、尿、血液、汗、糞、廃液、湿気、蒸気、氷、水と有機溶媒および/または無機溶媒との混合物、雨水、地下水等であってもよく、水を含んでいれば特に制限されるものではない。好ましくは、尿、経血、汗、その他の体液を挙げることができる。
【0432】
第1の基材が、透水性シートであり、かつ、吸液される側に位置することで、本発明の効果である吸水性シートの性能(逆戻り量、面方向の漏れなど)を充分に発揮することができる。透水性シートにおける透水性は、透水係数(JIS A1218:2009)が1×10-5cm/sec以上であることが好ましい。該透水係数は、より好ましくは1×10-4cm/sec以上、さらにより好ましくは1×10-3cm/sec以上、特に好ましくは1×10-2cm/sec以上、最も好ましくは1×10-1cm/sec以上である。本願の実施例で使用した第1の基材の透水係数は、1×10-5cm/sec以上であった。
【0433】
本発明において、第1の基材の伸び率は、10%以上であり、好ましくは15%以上であり、より好ましくは17%で以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、さらにより好ましくは22%以上である。第1の基材の伸び率の上限は、特に制限されないが、60%以下であるのが好ましい。第1の基材の伸び率がかような範囲であることにより、第1の基材が粒子状吸水剤の形状に追随しやすくなり、結果として吸水性シートの保形性がさらに高まり、逆戻り量をさらに低減できる。第1の基材の伸び率は、後述の実施例に記載の方法で測定された値を採用する。本明細書中、「不織布(第1の基材)の伸び率」としては、最も伸張する方向で伸び率を測定した際の数値とする。また、第1の基材の伸び率は、嵩密度、目付量、材質、網目構造、製造工程条件などによって制御可能である。
【0434】
なお、本発明において、第1の基材の伸びる方向は、厚み方向を除く、第1の基材の面方向に平行ないずれかの一方向が伸びればよく、特に制限されない。例えば、長方形の吸水性シートであれば、シート平面の長辺方向、短辺方向、対角線方向など、あらゆる角度の方向からいずれか一方向が、上記範囲の伸び率で伸びればよい。正方形、楕円形、円形の吸水性シートであった場合でも同様である。好ましくは、あらゆる方向(等方的)から伸びることができる基材である。
【0435】
本発明において、第1の基材は、目付量が3~80g/m2であるのが好ましく、5~70g/m2であるのがより好ましく10~60g/m2であるのがさらに好ましい。第1の基材の目付量がかような範囲であることにより、第1の基材中に粒子状吸水剤を取り込みやすくなり、結果として吸水性シートの保形性がさらに高まり、逆戻り量をさらに低減できる。
【0436】
本発明において、第1の基材は、嵩密度が0.1g/cm3以下であるのが好ましく、0.08g/cm3以下であるのがより好ましく、0.05g/cm3以下であるのがさらに好ましい。第1の基材の嵩密度は、好ましくは0.001g/cm3以上であり、より好ましくは0.005g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.01g/cm3以上である。本明細書中、嵩密度とは、単位体積に対する質量であり、基材を高圧圧縮した場合(空隙を無くした場合)における密度ではなく、空隙の体積も含めた基材の体積より求めた密度である。第1の基材の嵩密度が0.1g/cm3以下であるとは、第1の基材が軽いことを意味する。嵩高いとは、低い嵩密度で有意に厚いことを意味する。本発明では、第1の基材が嵩高いことにより、第1の基材中に粒子状吸水剤を取り込みやすくなり、結果として吸水性シートの保形性がさらに高まり、逆戻り量をさらに低減できる。また、本発明においては、第1の基材が嵩高いことにより、下記の効果も期待できる。すなわち、第1の基材が嵩高いため、第1の基材の吸液面に接した吸収される液が、速やかに下層である吸水層および第2の基材へと流れ込み、第1の基材の吸液面に留まる液が低減できる。さらに、吸収された液が吸水層に到達する際には、液は面方向に拡散されており、ゆえに、液が多量に吸水層に導入されても、吸水層は局所でなく面方向に広がった液を吸収することになる。すなわち、嵩高い第1の基材は、吸水力が低く、通液力が高く、液拡散性が高い。これにより、吸水性シートにおける逆戻り量を低減することができる。第1の基材の吸液面の湿度が抑制でき、肌への不快感が低減できる。第1の基材の嵩密度は、好ましくは0.1g/cm3以下である。なお、本明細書中、嵩密度は、後述の実施例で算出される値である。
【0437】
第1の基材の厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.4mm以上、さらにより好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは0.6mm以上、最も好ましくは0.7mm以上である。第1の基材の厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下、さらにより好ましくは3mm以下、特に好ましくは2.5mm以下、最も好ましくは2mm以下である。第1の基材の厚みがかような範囲であることにより、第1の基材の吸液面と、吸水層および第2の基材との距離が十分に確保でき、いったん吸水層および第2の基材へと達した液が逆戻りするのを有意に低減できる。
【0438】
第1の基材の厚みや嵩密度は、第1の基材を構成する材料、第1の基材の製法などによって制御することができ、これらのバランスで第1の基材の厚みや嵩密度が定まる。
【0439】
第1の基材は、粒子状吸水剤の透過率(第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率)が好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは、好ましい順に、60質量%以上、70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%、最も好ましくは90質量%以上である。なお、透過率の上限は、特に制限されないが、好ましくは99質量%以下である。第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率がかような範囲であることにより、第1の基材の吸水層と接する側において、粒子状吸水剤が第1の基材内に入り込みやすくなる。これにより、第1の基材中に含まれる水分を粒子状吸水剤が吸収することが可能となり、逆戻りがさらに低減される。なお、本明細書中、第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率は、第1の基材を透過する粒子状吸水剤の比率であり、
図23のとおり、第1の基材上に存在する粒状吸水剤が、後述する所定の条件でふるわれた場合における、第1の基材を通過した粒子状吸水剤の重量により求められ、具体的には後述の実施例に記載の方法で算出される値である。また、透過率に用いられる粒子状吸水剤は、第2の実施形態のように吸水層が複数存在する場合には、各吸水層に含まれる粒子状吸水剤全体を用いる。ここで、第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率は、第1の基材が不織布の場合は、第1の基材を構成する部材の性質、その表面状態、網目構造の複雑さ、繊維径、繊維間の融着状態、目付、厚み等を適宜調整することにより、所望の範囲に調整することができる。例えば、第1の基材が、後述のようにエアスルー不織布を用いるのであればエアスルー不織布の熱処理条件や繊維径及び密度を変更することによって透過率を調整することができる。
【0440】
「基材を構成する材料」
第1の基材を構成する材料としては、例えば、紙(衛生用紙、例えばティッシュペーパー、トイレットペーパーおよびタオル用紙)、ネット、不織布、織布、フィルム等が挙げられる。中でも、透水性の観点から、少なくとも第1の基材は、好ましくは不織布が使用される。
【0441】
使用される不織布としては特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性および吸水性シートとした際の強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、レーヨン繊維、その他の合成繊維からなる不織布や、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維等が混合されて製造された不織布等が挙げられる。
【0442】
第1の基材として用いられうる不織布の材質としては、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、パルプ繊維およびこれらが混合された繊維などが好ましく、ポリオレフィン繊維であることがより好ましい。これらの繊維は親水化処理が施されていてもよい。
【0443】
また、第1の基材として用いられうる不織布は、特に限定されるものではなく、エアスルー法;エアレイド法;スパンボンド法;スパンレース法など、いずれの方法により得られたものであってもよいが、エアスルー法またはエアレイド法で得られたものであることが好ましく、エアスルー法で得られたもの(エアスルー不織布)であることが好ましい。
【0444】
なお、エアスルー法は、PE/PPやPE/PETなどの熱融着可能な複合繊維に熱風を吹きつけて、熱融着を行うとともに、繊維の間に含まれる空気の量を増やし、嵩を高くし、密度を低くする加工のことをいう。また、エアレイド法は、空気の流れに乗せて均一分散させ、金網上に吸い取らせて不織布を作る方法であり、パルプ繊維の分散に空気を利用しているため、嵩を高くし、密度を低くすることができる。第1の基材がエアスルー不織布であることにより、吸収される液が第1の基材の吸液面に接した後、速やかに第1の基材の中へ導入されやすい。すなわち、第1の基材をエアスルー不織布にすることにより、吸水力が低く、通液力の高い第1の基材とすることができ、吸水性シートにおける逆戻り量を有意に低減することができる。
【0445】
[2-1-1.中間基材]
中間基材は第1の基材と第2の基材との間に配置される任意の基材であり、透水性シートである。
【0446】
中間基材の透水係数の好適な範囲は第1の基材の欄に記載したものと同様である。本願の実施例で使用した中間基材(中間不織布)の透水係数は、1×10-5cm/sec以上であった。
【0447】
中間基材の伸び率は、好ましい順に10%以上、15%以上、17%以上、20%以上、22%以上である。中間基材の伸び率の上限は、特に制限されないが、60%以下であるのが好ましい。中間基材の伸び率がかような範囲であることにより、中間基材が粒子状吸水剤の形状に追随しやすくなり、結果として吸水性シートの保形性がさらに高まり、逆戻り量をさらに低減できる。
【0448】
また、中間基材の目付量、嵩密度、厚み、粒子状吸水剤の透過率、特定の粒子状吸水剤の透過率に関する好適な範囲は、第1の基材の欄に記載のものと同様である。
【0449】
さらに、中間基材を構成する材料についても、上記第1の基材の欄に記載のものと同様である。
【0450】
[2-2.第2の基材]
第2の基材が、透水性シートであり、かつ、吸液される側の反対側に位置することで、本発明の効果である吸水性シートの性能(逆戻り量、面方向の漏れなど)を充分に発揮することができる。透水性シートにおける透水性は、透水係数(JIS A1218:2009)が1×10-5cm/sec以上であることが好ましい。該透水係数は、より好ましくは1×10-4cm/sec以上、さらにより好ましくは1×10-3cm/sec以上、特に好ましくは1×10-2cm/sec以上、最も好ましくは1×10-1cm/sec以上である。
【0451】
また、第2の基材の厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.08mm以上、さらにより好ましくは0.1mm以上、特に好ましくは0.2mm以上、最も好ましくは0.3mm以上である。第2の基材の厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.9mm未満、より好ましくは0.8mm以下、さらにより好ましくは0.7mm以下、特に好ましくは0.6mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。
【0452】
ここで、本発明の一形態によれば、第1の基材の厚みは0.3mm以上5mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.05mm以上0.9mm未満である。第1の基材と第2の基材との厚みを上記範囲に調整することによって、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。また、本発明の一形態によれば、好ましくは第1の基材の厚みは0.4mm以上4mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.08mm以上0.8mm以下であり、より好ましくは第1の基材の厚みは0.5mm以上3mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.1mm以上0.7mm以下であり、さらにより好ましくは第1の基材の厚みは0.6mm以上2.5mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.2mm以上0.6mm以下であり、特に好ましくは第1の基材の厚みは0.7mm以上2mm以下であり、かつ第2の基材の厚みは0.3mm以上0.5mm以下である。
【0453】
本発明において、第2の基材の嵩密度は、1g/cm3以下であるのが好ましく、0.5g/cm3以下であるのがより好ましく、0.3g/cm3以下であるのがさらに好ましい。第2の基材の嵩密度は、好ましくは0.05g/cm3以上であり、より好ましくは0.07g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.08g/cm3以上である。第2の基材の嵩密度がかような範囲であることにより、第2の基材へ導入された液を保持しやすく、逆戻りが低減できる。
【0454】
本発明において、第2の基材は、目付量が5~100g/m2であるのが好ましく、10~70g/m2であるのがより好ましく、15~65g/m2であるのがさらに好ましくい。
【0455】
第2の基材の厚み、嵩密度、目付量は、第2の基材を構成する材料、第2の基材の製法などによって制御することができ、これらのバランスで第2の基材の厚みや嵩密度が定まる。
【0456】
なお、第1の基材、第2の基材およびラッピングシート(例えば、不織布)の空隙率は、以下の式で測定できる。基材(または、ラッピングシート)に用いられる目付量A(g/m2)、基材(または、ラッピングシート)の厚みB(mm)、基材(または、ラッピングシート)に用いられる素材(例えば、ポレオレフィン)の密度C(g/cm3)
基材(または、シート)の空隙率(%)=100-{(A/10000)/(B/10)}/C*100
【0457】
第2の基材は、液拡散面積が1000mm2以上であるのが好ましく、3000mm2以上であるのがより好ましく、6000mm2以上であるのがさらに好ましく、特に7000mm2以上であることが好ましい。また、第2の基材の液拡散面積の上限は特にないが、例えば10,000mm2以下であるのが好ましい。第2の基材の液拡散面積が上記範囲である場合、吸収された液が第2の基材に達した場合に、第2の基材においてその液を面方向に十分に拡散できる。これにより、吸水層を通過した液が多量に第2の基材に導入されても、第2の基材は局所でなく面方向に広がりながら液を吸収することになる。よって、第2の基材において十分に液を吸収および保持することができ、吸水性シートにおける逆戻り量を有意に低減することができる。
【0458】
ここで、液拡散面積は、液が基材(例えば、不織布)に接触する際、および/または、液が基材中を、基材の面方向に対して垂直な方向で通過する際に拡散する面方向における面積を意味し、後述の実施例に記載の方法で算出される値である。基材の液拡散面積が大きいほど、その基材が面方向への液の拡散性が高いことを示す。
【0459】
「基材を構成する材料」
第2の基材を構成する材料は、好ましくは不織布が使用される。不織布の材質としては、第1の基材と同様のものが適用でき、例えば、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、パルプ繊維およびこれらが混合された繊維などが好ましく、ポリオレフィン繊維であることがより好ましい。
【0460】
また、第2の基材として用いられうる不織布は、特に限定されるものではなく、エアスルー法;エアレイド法;スパンボンド法;スパンレース法など、いずれの方法により得られたものであってもよいが、エアレイド法で得られたもの(エアレイド不織布)またはスパンレース法で得られたもの(スパンレース不織布)であることが好ましい。なお、スパンレース法は、繊維を高圧水流により攻絡させる方法で、接着剤を使用しない方法である。第2の基材がエアレイド不織布やスパンレース不織布であることにより、吸水性シートにおける逆戻り量を有意に低減することができ、かつ面方向の漏れを有意に低減することができる。
【0461】
[2-3.吸水層]
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおける吸水層は、粒子状吸水剤を有する。本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいては、吸水層の中に不織布等の他の基材が存在しないことが好ましい。なお、第2の実施形態のように吸水層が複数存在する場合には、吸水層が同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0462】
(粒子状吸水剤)
吸水層は、粒子状吸水剤を含む。なお、別途記載のない限り、吸水剤が複数種類の粒子状吸水剤の混合物である場合は、以下の記載は、当該混合物の物性に関する説明である。すなわち、粒子状吸水剤の物性は、吸水層に含まれるすべての粒子状吸水剤を混合した場合の物性である。また、粒子状吸水剤の物性は、吸水性シートから、綿状パルプなどが混じらないように粒子状吸水剤のみを取り出して物性を測定してもよい。
【0463】
「表面張力」
表面張力とは、固体や液体の表面積を増加させるのに必要な仕事(自由エネルギー)を単位面積当たりで表したものである。本願でいう表面張力は、粒子状吸水剤を0.90質量%塩化ナトリウム水溶液中に分散させた際の、水溶液の表面張力をいう。なお、吸水剤の表面張力は、以下の手順により測定する。即ち、十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を、表面張力計(KRUSS社製のK11自動表面張力計)を用いて測定する。次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、および粒子状吸水剤0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌する。4分後、攪拌を止め、含水した粒子状吸水剤が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定する。なお、本発明では白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、かつ、ガスバーナーで加熱洗浄して使用する。
【0464】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤の表面張力が、以下順に、60mN/m以上、65mN/m以上、66mN/m以上、67mN/m以上、69mN/m以上、70mN/m以上、71mN/m以上が好ましく、最も好ましくは72mN/m以上である。粒子状吸水剤の吸水性シートへの適用では従来の紙オムツよりも表面張力の影響が表れやすく、表面張力が上記の条件を満たすことにより、吸水性シートにおける逆戻り量を低減することができる。
【0465】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤の表面張力の上限には特に制限はないが、現実的には73mN/m以下である。
【0466】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、粒子状吸水剤のCRC(無加圧下吸水倍率)は、以下順に、30g/g以上、32g/g以上、33g/g以上、34g/g以上が好ましく、最も好ましくは35g/g以上である。粒子状吸水剤のCRCが上記の条件を満たすことにより、吸水性シートにおける逆戻り量を低減することができる。なお、粒子状吸水剤のCRCとは、ERT441.2-02により規定されるCentrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、粒子状吸水剤の無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。具体的には、粒子状吸水剤0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。
【0467】
「粒子形状」
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて粒子状吸水剤は、その粒子形状に制限はなく、例えば、球状の粒子状吸水剤(及びその造粒物)であってもよい。好ましい実施形態としては、粒子状吸水剤は、不定形破砕状であることが好ましい。ここで、不定形破砕状とは、形状が一定でない破砕状の粒子である。逆相懸濁重合や気相重合で得られた球状粒子に比べて不定形破砕状では基材へ固定を容易にすることができるからである。本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤は、好ましくは水溶液重合における粉砕物である。一方、粉砕工程を経ない場合、代表的には逆相懸濁重合や重合モノマーを噴霧し重合するような液滴重合等によって得られる球状の粒子または球状粒子の造粒物は、不定形破砕状ではない。本発明の実施形態において、粒子状吸水剤の形状が不定形破砕状であると、平均真円度の高いもの(例えば、球形のもの)と比べて吸水性シートの形状保持がなされやすい。本発明の実施形態において、粒子状吸水剤の平均真円度は、0.70以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましく、0.55以下であることがさらに好ましい。
【0468】
平均真円度の算出方法は以下のとおりである。ランダムに100個以上の粒子状吸水剤を選択し、各粒子状吸水剤を電子顕微鏡(株式会社キーエンス社製 VE-9800)(倍率50倍)で撮影して粒子状吸水剤の画像を取得し、付属の画像解析ソフトを用いて粒子ごとに周囲長および面積を算出した。以下の式:
【0469】
【0470】
で各粒子の真円度を求め、得られた値の平均値を平均真円度として算出する。
【0471】
「粒子径」
本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤(もしくは、粒子状の吸水性樹脂、吸水性樹脂粒子)の粒子径は、ERT420.2-02に規定される「PSD」の測定方法に従って得られた重量平均粒子径であり、150~600μmであってよい。本発明において、重量平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法で算出される値である。
【0472】
粒子状吸水剤の製造方法は、所望の物性を有する吸水剤の製造方法であれば、特に限定されず、例えば、実施例に記載の公報等を参酌して適宜製造することができる。
【0473】
〔2-4.ラッピングシート〕
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、少なくとも、第1の基材の表面に配置させるラッピングシートを有することが好ましい。ラッピングシートは、第1の基材の表面に配置されていればよいが、ラッピングシートが、第1の基材の側面と、吸水層の側面とを覆うように配置されるのがより好ましく、第1の基材の側面と、吸水層の側面と、第2の基材の側面とを覆い、第2の基材の吸収される液が導入される側とは反対側の面の一部または全体を覆うのがさらに好ましい。
【0474】
本発明の好ましい実施形態としては、吸水性シートは、ラッピングシートを備え、ラッピングシートは、透水性シートであり、かつ、少なくとも、第1の基材の表面(吸液される側)に位置する。
【0475】
また、ラッピングシートの厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.001mm以上、より好ましくは0.005mm以上、さらにより好ましくは0.01mm以上、特に好ましくは0.1mm以上、最も好ましくは0.2mm以上である。ラッピングシートの厚みは、例えば40%RH~50%RHにおいて、好ましくは0.9mm未満、より好ましくは0.8mm以下、さらにより好ましくは0.7mm以下、特に好ましくは0.6mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。
【0476】
本発明において、ラッピングシートの嵩密度は、1g/cm3以下であるのが好ましく、0.5g/cm3以下であるのがより好ましく、0.3g/cm3以下であるのがさらに好ましい。ラッピングシートの嵩密度は、好ましくは0.1g/cm3以上であり、より好ましくは0.12g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.13g/cm3以上である。
【0477】
本発明において、ラッピングシートは、目付量が5~100g/m2であるのが好ましく、5~70g/m2であるのがより好ましく、10~65g/m2であるのがさらに好ましくい。
【0478】
ラッピングシートの厚み、嵩密度、目付量は、ラッピングシートを構成する材料、ラッピングシートの製法などによって制御することができ、これらのバランスでラッピングシートの厚みや嵩密度が定まる。
【0479】
「ラッピングシートを構成する材料」
ラッピングシートを構成する材料は、上述したラッピングシートを設ける目的を達成できるのであれば特に制限されないが、例えば、紙(衛生用紙、例えばティッシュペーパー、トイレットペーパーおよびタオル用紙)、ネット、不織布、織布、フィルム等が挙げられる。
【0480】
使用される不織布としては特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性および吸水性シートとした際の強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、レーヨン繊維、その他の合成繊維からなる不織布や、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維等が混合されて製造された不織布等が挙げられる。
【0481】
ラッピングシートとして用いられうる不織布の材質としては、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、パルプ繊維およびこれらが混合された繊維などが好ましく、ポリオレフィン繊維であることがより好ましい。これらの繊維は親水化処理が施されていてもよい。
【0482】
ラッピングシートとして用いられうる不織布は、特に限定されるものではなく、エアスルー法;エアレイド法;スパンボンド法;スパンレース法など、いずれの方法により得られたものであってもよいが、スパンボンド法で得られたもの(スパンボンド不織布)であることが好ましい。紙オムツ等の吸収性物品を履いた幼児が座っている場面のように、吸水性シートに加重がかかっている状態でも(加圧している状態でも)、吸水性シートに吸収された尿水が、シートからにじみ出ないように(いわゆる逆戻りしないように)撥水性を有するラッピングシートが好ましく、例えば、スパンボンド不織布が好ましい。なお、スパンボンド不織布の製造法は、原料樹脂を溶融・紡糸させ得られる連続した長い繊維を直接集積してフリースを形成する方法である。原料樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸などが挙げられる。
【0483】
本発明の一形態によれば、第1の基材の製法と、第2の基材の製法と、ラッピングシートの製法とが異なる。このように吸水性シートを構成する各部材の製法を適切に変更することによって、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。本発明の一形態によれば、第1の基材が、エアスルー不織布であり、第2の基材が、エアレイド不織布、スパンレース不織布であり、ラッピングシートが、スパンボンド不織布であり、互いに異なる不織布である。かかる形態によって、本発明の所期の効果を効率的に奏することができる。
【0484】
〔3.吸水性シートの製造方法〕
本発明の第1および第2の実施形態に係る吸水性シートの製造方法は、(1)第1の基材に粒子状吸水剤を散布する工程、および、(2)第2の基材に粒子状吸水剤を散布する工程、の少なくとも1つを含む。より具体的な製造方法の一例として、第1の実施形態に係る吸水性シートについては、下記(a)~(d)の製造方法が挙げられる。第2の実施形態に係る吸水性シートについては、下記(e)~(h)の製造方法が挙げられる。
【0485】
(a)第1の基材の上に、粒子状吸水剤を筋状に散布する。第2の基材の上に、接着剤を均一に散布する。第1の基材の粒子状吸水剤が散布されている面と、第2の基材の接着剤が散布されている面とが対合するように重ねて、圧着する。圧着は、接着剤の溶融温度付近における加熱圧着が好ましい。
【0486】
(b)第2の基材の上に、接着剤を筋状に散布した後、粒子状吸水剤を均一に散布する。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、加熱圧着する。
【0487】
(c)第2の基材の上に、粒子状吸水剤を筋状に散布し、および、好ましくは接着剤を均一に散布し、加熱炉を通過させて、粒子状吸水剤が散逸しない程度に固着させる。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、加熱圧着する。
【0488】
(d)第2の基材の上に、接着剤を溶融塗布した後、粒子状吸水剤を筋状に散布して層を形成させる。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、ロールプレスなどを用いて圧着する。
【0489】
(e)第1の基材(または中間基材)の上に、粒子状吸水剤を筋状に散布する。中間基材(または第1の基材)の上に、接着剤を均一に散布する。第1の基材(または中間基材)の粒子状吸水剤が散布されている面と、中間基材(または第1の基材)の接着剤が散布されている面とが対合するように重ねて、圧着して第1の基材と中間基材との接合体を得る。第1の基材と中間基材との接合体の中間基材上に、粒子状吸水剤を筋状に散布する。第2の基材の上に、接着剤を均一に散布する。第1の基材と中間基材との接合体の粒子状吸水剤が散布されている面と、第2の基材の接着剤が散布されている面とが対合するように重ねて、圧着する。圧着は、接着剤の溶融温度付近における加熱圧着が好ましい。
【0490】
(f)第2の基材の上に、接着剤を均一に散布した後、粒子状吸水剤を筋状に散布する。中間基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、加熱圧着して中間基材および第2の基材の接合体を得る。中間基材および第2の基材の接合体の中間基材の上に、粒子状吸水剤を筋状に散布する。第1の基材の上に、接着剤を均一に散布する。中間基材および第2の基材の接合体の粒子状吸水剤が散布されている面と、第1の基材の接着剤が散布されている面とが対合するように重ねて、圧着する。
【0491】
(g)第2の基材の上に、粒子状吸水剤を筋状に散布し、および、好ましくは接着剤を均一に散布し、加熱炉を通過させて、粒子状吸水剤が散逸しない程度に固着させる。第1の基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、加熱圧着して中間基材および第2の基材の接合体を得る。中間基材および第2の基材の接合体の中間基材の上に、粒子状吸水剤を筋状に散布し、および、好ましくは接着剤を均一に散布し、加熱炉を通過させて、粒子状吸水剤が散逸しない程度に固着させる。第1の基材を、中間基材および第2の基材の接合体の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、加熱圧着する。
【0492】
(h)第2の基材の上に、接着剤を溶融塗布した後、粒子状吸水剤を筋状に散布して層を形成させる。中間基材を、第2の基材の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、ロールプレスなどを用いて圧着して中間基材および第2の基材の接合体を得る。中間基材および第2の基材の接合体の第1の基材の上に、接着剤を溶融塗布した後、粒子状吸水剤を筋状に散布して層を形成させる。第1の基材を、中間基材および第2の基材の接合体の粒子状吸水剤が散布されている面に重ねて、ロールプレスなどを用いて圧着する。
【0493】
これらの方法のなかでは、製造方法の簡便さと製造効率の高さの観点から、第1の実施形態では(a)および(b)の方法が好ましく、第2の実施形態では(e)および(f)の方法が好ましい。なお、第1の実施形態においては(a)~(d)、第2の実施形態においては(e)~(h)の方法を併用して、吸水性シートを製造することもできる。
【0494】
ここで、本発明において、粒子状吸水剤を筋状に散布する方法としては、特に制限されないが、例えば、型紙を用いることにより筋状に散布することができる。具体的には、吸水性シートと同じサイズで、一定の幅および長さで並んだ縞状のパターンで繰りぬかれたプレートを型紙として用いる。この型紙を、粒子状吸水剤を散布したい基材上に載せ、繰りぬかれた穴の部分に対して、粒子状吸水剤を散布する。粒子状吸水剤を散布後、型紙を取りはずすと、基材上には粒子状吸水剤が筋状に散布された状態となる。
【0495】
また、スクリーン印刷等により接着剤を基材上に縞状に塗布し、当該基材上に粒子状吸水剤を散布した後、基材上の接着剤と接触していない粒子状吸水剤を払い落とすことにより、基材上に粒子状吸水剤を筋状に散布することもできる。
【0496】
また、
図18、
図19のように吸水性シートがラッピングシートを備えている形態においては、(3)第1の基材と吸水層と第2の基材と、または第1の基材と吸水層と中間基材と吸水層と第2の基材とを、第1の基材上に配置させたラッピングシートにより覆う工程を含む。例えば、上記(a)もしくは(b)または(e)もしくは(f)の工程を経て得られた第1の基材と吸水層と第2の基材とが圧着されたシート、または第1の基材と吸水層と中間基材と吸水層と第2の基材とが圧着されたシートを、第1の基材を下にして、ラッピングシートの上に載せ、上面である第2の基材(吸水層が圧着されていない側の面)に接着剤を散布し、第1の基材からはみ出したラッピングシートの余った部分を折り曲げて、第2の基材の接着剤面とラッピングシートが接触するように包み、上下が逆になるようひっくり返した後、加圧圧着することで、ラッピングシートを備えた吸水性シートを得ることができる。
【0497】
以上に説明した以外の工程として、吸水性シートの触感を改善し、液体吸収性能を向上させる目的で、吸水性シートにエンボス加工を施してもよい。エンボス加工は、第1の基材および第2の基材を圧着する際に同時に施してもよいし、シート製造後に施してもよい。また、ラッピングシートにエンボス加工を施してもよい。
【0498】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの製造方法においては、添加剤(消臭剤、繊維、抗菌剤、ゲル安定剤など)を適宜配合してもよい。添加剤の配合量は、粒子状吸水剤の質量に対して好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは1~10質量%である。上記製造方法においては、予め添加剤を混合した粒子状吸水剤を用いてもよいし、製造工程の途中で添加剤を添加してもよい。
【0499】
製造される吸水性シートの寸法は、適宜設計されうる。通常は、横幅が3~10m、長さが数10m~数1000m(連続シートまたはロールの状態において)である。製造された吸水性シートは、目的(使用される吸収体の大きさ)に応じて裁断して用いられる。
【0500】
上記に例示した以外にも、吸水性シートの製造方法は、例えば以下の特許文献に開示されている:国際公開第2012/174026号、国際公開第2013/078109号、国際公開第2015/041784号、国際公開第2011/117187号、国際公開第2012/001117号、国際公開第2012/024445号、国際公開第2010/004894号、国際公開第2010/004895号、国際公開第2010/076857号、国際公開第2010/082373号、国際公開第2010/113754号、国際公開第2010/143635号、国際公開第2011/043256号、国際公開第2011/086841号、国際公開第2011/086842号、国際公開第2011/086843号、国際公開第2011/086844号、国際公開第2011/117997号、国際公開第2011/118409号、国際公開第2011/136087号、国際公開第2012/043546号、国際公開第2013/099634号、国際公開第2013/099635号、特開2010-115406号、特開2002-345883号、特開平6-315501号、特開平6-190003号、特開平6-190002号、特開平6-190001号、特開平2-252558号、特開平2-252560号、特開平2-252561号。これらの文献に開示されている吸水性シートの製造方法も、適宜参照される。
【0501】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、基材同士、または基材と粒子状吸水剤とを固着させる方法としては、(i)圧着によってもよく、(ii)水、水溶性高分子、溶媒に溶解または分散した各種バインダーによってもよく、(iii)基材自体の材質の融点で基材同士をヒートシールさせてもよく、(iv)接着剤を使用して固着させてもよい。基材同士、または基材と粒子状吸水剤は、好ましくは、(iv)接着剤を使用して固着される。
【0502】
使用される接着剤は溶液型でもよいが、溶媒除去の手間や残存する溶媒の問題、生産性の問題から、高い生産性と残存溶媒の問題がないホットメルト接着剤が好ましい。本発明でホットメルト接着剤は、予め基材または粒子状吸水剤の表面に含有されていてもよく、別途、ホットメルト接着剤を吸水性シートの製造工程で使用してもよい。ホットメルト接着剤の形態や融点は適宜選択でき、粒子状でもよく、繊維状でよく、ネット状でもよく、フィルム状でもよく、また、加熱によって溶融させた液状でもよい。ホットメルト接着剤の溶融温度または軟化点は50~200℃、60~180℃が好ましい。粒子状の接着剤を使用する場合、その粒子径は上記粒子状吸水剤の平均粒子径の0.01~2倍、0.02~1倍、0.05~0.5倍程度の粒子状接着剤が使用される。
【0503】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの製造においてホットメルト接着剤を使用する場合には、基材(例えば不織布)の上に粒子状吸水剤とホットメルト接着剤との混合物とを均一に散布し、さらにもう1枚の基材を積層してから、ホットメルト接着剤の溶融温度付近で加熱圧着することにより、吸水性シートを製造することができる。
【0504】
本発明に使用するホットメルト接着剤としては、適宜選択できるが、好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体接着剤、スチレン系エラストマー接着剤、ポリオレフィン系接着剤およびポリエステル系接着剤等から選ばれる1種以上が適宜使用できる。
【0505】
具体的に、ポリオレフィン系接着剤として、ポリエチレン、ポリプロピレン、アタクチックポリプロピレンが挙げられ、スチレン系エラストマー接着剤としてはスチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等が挙げられ、共重合ポリオレフィン等、ポリエステル系接着剤としてポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、共重合ポリエステル等が挙げられ、エチレン-酢酸ビニル共重合体接着剤として、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)接着剤;エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(EBA)等が挙げられる。
【0506】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートおよび/またはその製造方法において、吸水性シートが、接着剤を含むことが好ましく、当該接着剤は、ホットメルト接着剤であることが好ましく、接着剤(例えばホットメルト接着剤)の使用量(含有量)は、粒子状吸水剤の質量に対して、3.0倍以下であることが好ましく、0.01~2.5倍であることがより好ましく、0.05~2.0倍であることがさらに好ましい。接着剤(特にホットメルトメルト接着剤)の含有量が多すぎると、コスト面や吸水性シートの質量面(紙オムツの質量増)で不利となるだけでなく、粒子状吸水剤が膨潤規定を受けて吸水性シートの吸水能を低下させる可能性もある。
【0507】
〔4.吸収性物品〕
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、〔2〕で説明されている吸水性シートを、液体透過性シートおよび液体不透過性シートによって挟持した構造を有している。ここで、液体透過性シートは、第1の基材側に位置し、液体不透過性シートが、第2の基材側に位置している。すなわち、本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、本発明の吸水性シートを液体透過性シートと、液体不透過性シートとで挟持することによりなり、液体透過性シートが、第1の基材側に位置し、液体不透過性シートが、前記第2の基材側に位置している。吸収性物品の具体例としては、紙オムツ、失禁パッド、生理用ナプキン、ペットシート、食品用ドリップシート、電力ケーブルの止水剤などが挙げられる。
【0508】
液体透過性シートおよび液体不透過性シートとしては、吸収性物品の技術分野で公知のものを、特に制限なく用いることができる。また、吸収性物品は、公知の方法によって製造することができる。
【0509】
[実施例]
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)/相対湿度40~50%RHの条件下で行われた。
【0510】
なお、以下の実施例においては、吸水層(粒子状吸水剤を含む領域)の上に第1の基材を積層した積層体が第2の基材の上に1層のみ積層される単層形態と、吸水層(粒子状吸水剤を含む領域)の上に第1の基材を積層した積層体が第2の基材の上に2層積層される二層形態と、が開示されている。単層形態および二層形態のどちらにおいても、「上方不織布」と称する場合は、液を直接的に吸収する吸液面を有する第1の基材を意味し、「下方不織布」と称する場合は、第2の基材を意味する。二層形態における液を直接的に吸収する吸液面を有する第1の基材以外の基材は、中間基材であり、ここでは「中間不織布」と称する。
【0511】
<製造例>
[製造例1]
以下の特許に記載の製造例、実施例、比較例を参考に、内部架橋剤量によって、CRCを適宜調整することで、ポリアクリル酸(塩)系樹脂の粒子状吸水剤(1)、(2)を得た。得られた粒子状吸水剤の物性を表7、表9に示した。
【0512】
国際公開第2014/034897号
国際公開第2017/170605号
国際公開第2016/204302号
国際公開第2014/054656号
国際公開第2015/152299号
国際公開第2018/062539号
国際公開第2012/043821号。
【0513】
〔アクリル酸の製造例〕
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm、p-メトキシフェノール200ppm)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)などの除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm、フルフラール1ppm以下、プロトアネモニン1ppm以下)を得て、さらに蒸留後にp-メトキシフェノールを50ppm添加した。
【0514】
〔アクリル酸ナトリウム水溶液の製法〕
上記アクリル酸1390gを米国特許5210298号の実施例9に従い、48%苛性ソーダを用いて20~40℃で中和して、濃度37%で100%中和のアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。
【0515】
<粒子状吸水剤(1)>
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度35.5質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.00gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.66g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液35.28gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合を開始して40分後に150μm以下の吸水性樹脂微粉末を181.5g添加したうえで、ニーダーのブレードを高速回転(130rpm)で10分間ゲル解砕してから含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1~2mmの粒子に細分化されていた。
【0516】
この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、175℃で65分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、平均粒子径350μmの不定形破砕状の吸水性樹脂(1-1)を得た。得られた吸水性樹脂(1-1)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、プロピレングリコール1.0質量部、水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液4.03質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いて、熱媒温度100℃で40分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(1-2)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(1-2)100質量部に、水3.0質量部を噴霧混合して、密閉容器内で60℃で1時間硬化させた後、目開き710μmのふるいを通過させて吸水性樹脂(1-3)を得た。吸水性樹脂(1-3)にAerosil90G(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.3質量部添加して混合することにより得た吸水性樹脂を粒子状吸水剤(1)とした。
【0517】
〔粒子状吸水剤の物性の測定方法〕
<重量平均粒子径>
本発明の一実施形態に係る粒子状吸水剤(もしくは、粒子状の吸水性樹脂、吸水性樹脂粒子)の粒子径は、ERT420.2-02に規定される「PSD」の測定方法に従って得られた重量平均粒子径である。各粒子状吸水剤の重量平均粒子径は表8、表10に示す。
【0518】
<CRC(無加圧下吸水倍率)(ERT441.2-02)>
粒子状吸水剤0.2g(吸水前重量)を不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で水切りした後の粒子状吸水剤の吸水後重量を測定する。吸水倍率(単位;g/g)は、「(粒子状吸水剤の吸水後重量-粒子状吸水剤の吸水前重量)/(粒子状吸水剤の吸水前重量)×100」により求められる。各粒子状吸水剤のCRCは表8、表10に示す。
【0519】
<表面張力>
本発明において、表面張力は、粒子状吸水剤を0.90質量%塩化ナトリウム水溶液中に分散させた際の、水溶液の表面張力を意味する。
【0520】
十分に洗浄された100mlのビーカーに20℃に調整された生理食塩水50mlを入れ、まず、生理食塩水の表面張力を、表面張力計(KRUSS社製のK11自動表面張力計)を用いて測定する。なお、本発明では、白金プレートを用いるプレート法を採用し、プレートは各測定前に十分脱イオン水にて洗浄し、かつ、ガスバーナーで加熱洗浄して使用する。
【0521】
次に、20℃に調整した表面張力測定後の生理食塩水を含んだビーカーに、十分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、および粒子状吸水剤0.5gを投入し、500rpmの条件で4分間攪拌する。4分後、攪拌を止め、含水した粒子状吸水剤が沈降した後に、上澄み液の表面張力を再度同様の操作を行い測定する。ここで、粒子状吸水剤の表面張力(単位:mN/m)は、生理食塩水に粒子状吸水剤を分散させた際の上澄み液の表面張力により求められる。各粒子状吸水剤の表面張力は表8、表10に示す。
【0522】
〔実施例〕
<型紙の準備>
粒子状吸水剤を不織布上に筋状に散布するため、型紙1~6を準備した。型紙1~6は、縦14cm、横44cmの紙に、長手方向に沿って直線状に、粒子状吸水剤の存在領域と、粒子状吸水剤の非存在領域とが形成されるように、粒子状吸水剤の存在領域となる部分に穴を開けた。なお、型紙1~6において、その外周2cmは枠とし、紙を切断しないものとする(すなわち、型紙は、枠を除く領域において、短手方向に端から順に、粒子状吸水剤の存在領域の部分を繰りぬいて穴とする)。型紙1~6により形成される形状(S-1)~(S-6)を
図20(a)~
図20(c)、
図21(a)~
図21(c)に基づいて説明する。
図20(a)~
図20(c)、
図21(a)~
図21(c)は、単層形態の吸水性シートを短手方向に沿って切断した断面模式図である。なお、形状(S-1)~(S-6)は、吸水性シートの短手方向中央部に対して左右対称となるように、粒子状吸水剤14が含まれる領域と、間隙15とが形成されている。よって、下記で示す「粒子状吸水剤14」と「間隙15」との領域比は、短手方向に沿って左右どちらからでもよい。
【0523】
図20(a)は、型紙1により形成される(S-1)形状である。(S-1)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:15mm、間隙15:25mm、粒子状吸水剤14:20mm、間隙15:25mm、粒子状吸水剤14:15mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0524】
図20(b)は、型紙2により形成される(S-2)形状である。(S-2)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:20mm、間隙15:20mm、粒子状吸水剤14:20mm、間隙15:20mm、粒子状吸水剤14:20mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0525】
図20(c)は、型紙3により形成される(S-3)形状である。(S-3)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:35mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:35mm、粒子状吸水剤14:10mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0526】
図21(a)は、型紙4により形成される(S-4)形状である。(S-4)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:25mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:30mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:25mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0527】
図21(b)は、型紙5により形成される(S-5)形状である。(S-5)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:17.5mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:17.5mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:17.5mm、間隙15:10mm、粒子状吸水剤14:17.5mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0528】
図21(c)は、型紙6により形成される(S-6)形状である。(S-6)形状は、第1の基材11と第2の基材13との間に、「粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm、間隙15:5mm、粒子状吸水剤14:10mm」が短手方向に沿って順に形成されている。
【0529】
[実施例1]
縦10cm、横40cmに切断した不織布A(エアスルー法で作製されたもの。オレフィンを主成分とし、厚み1.4mm。中間不織布に相当する)に、型紙1(
図20(a)参照)を載せた。型紙1には3つの長方形の穴があり、その穴から型紙1の下の不織布Aが最大限に見えるように位置を調整した。型紙1の全ての穴の総合面積に対するそれぞれの穴の面積比を計算し、粒子状吸水剤(1)4.5g(散布量:112.5g/m
2)をそれぞれの穴の面積比で分けて測りとり、それぞれの穴から見える不織布Aに対して均一に散布した。型紙の上に粒子状吸水剤(1)の一部が散布された場合、粒子状吸水剤(1)を散布している不織布Aに向かって型紙1を傾けて、粒子状吸水剤を型紙1の穴に落とした。その後、型紙1を不織布Aから取り外した。
【0530】
前記の不織布Aとは別に、縦10cm、横40cmに切断した不織布A(上記不織布Aと同じものである(厚み1.4mm)。以下、不織布A2と称する。第1の基材(上方不織布)に相当する)に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)0.7~0.9gを均一に散布(散布量:17.5~21.5g/m)した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布A2の接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着した。
【0531】
粒子状吸水剤(1)と面していない側の不織布Aの表面に、型紙1(
図20(a)参照)を載せた。型紙1の3つの長方形の穴から、型紙1の下の不織布Aが最大限に見えるように位置を調整した。型紙1の全ての穴の総合面積に対するそれぞれの穴の面積比を計算し、粒子状吸水剤(1)4.5gをそれぞれの穴の面積比で分けて測りとり、それぞれの穴から見える不織布Aに対して均一に散布した。型紙の上に粒子状吸水剤(1)の一部が散布された場合、粒子状吸水剤(1)を散布している不織布Aに向かって型紙1を傾けて、粒子状吸水剤を型紙1の穴に落とした。その後、型紙1を不織布Aから取り外した。
【0532】
縦10cm、横40cmの不織布E(エアレイド法で作成されたもの。パルプ繊維を主成分とする。厚み0.4mm。目付量:47g/m2。第2の基材(下方不織布)に相当する。)に、前記の接着剤0.7~0.9gを均一に散布した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着して中間体シートXを得た。
【0533】
最後に、中間体シートXを縦24cm、横40cmに切断した不織布F(スパンボンド法で作製したもの。オレフィンを主成分とし、厚み0.1mm。目付量:13g/m2。嵩密度:0.15g/cm3。ラッピングシートに相当)で包み、吸水性シート(1)を得た。
【0534】
[実施例2]
縦24cm、横40cmに切断した不織布F(ラッピングシートに相当)を敷いておき、その上に、縦10cm、横40cmに切断した不織布A(第1の基材に相当)を載せ、不織布Aの表面に、型紙1(
図20(a)参照)を載せた。型紙1の3つの長方形の穴から、型紙1の下の不織布Aが最大限に見えるように位置を調整した。型紙1の全ての穴の総合面積に対するそれぞれの穴の面積比を計算し、粒子状吸水剤(1)9.0g(散布量:225g/m
2)をそれぞれの穴の面積比で分けて測りとり、それぞれの穴から見える不織布Aに対して均一に散布した。型紙の上に粒子状吸水剤(1)の一部が散布された場合、粒子状吸水剤(1)を散布している不織布Aに向かって型紙1を傾けて、粒子状吸水剤を型紙1の穴に落とした。その後、型紙1を不織布Aから取り外した。
【0535】
縦10cm、横40cmの不織布E(第2の基材に相当)に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を0.7~0.9g均一に散布(散布量:17.5~21.5g/m)した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着して中間体シートYを得た。
【0536】
最後に、中間体シートYを前記の不織布Fで包み、加圧圧着することで、吸水性シート(2)を得た。
【0537】
[実施例3]
エアスルー不織布Aの代わりに、厚み0.7mmのエアスルー不織布Gを用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(3)を得た。
【0538】
[実施例4]
型紙1の代わりに、型紙2(
図20(b)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(4)を得た。
【0539】
[実施例5]
型紙1の代わりに、型紙3(
図20(c)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(5)を得た。
【0540】
[実施例6]
型紙1の代わりに、型紙4(
図21(a)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(6)を得た。
【0541】
[実施例7]
型紙1の代わりに、型紙5(
図21(b)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(7)を得た。
【0542】
[実施例8]
型紙1の代わりに、型紙6(
図21(c)参照)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(8)を得た。
【0543】
[実施例9]
不織布Aの代わりに、不織布B(エアスルー法で作製されたもの。オレフィンを主成分とし、厚み2.0mm。)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(9)を得た。
【0544】
[実施例10]
不織布Aの代わりに、不織布C(エアスルー法で作製されたもの。オレフィンを主成分とし、厚み1.5mm。)を用いた以外は、実施例2と同様にして、吸水性シート(10)を得た。
【0545】
[比較例1]
縦10cm、横40cmに切断した不織布Aに、粒子状吸水剤(1)4.5gを均一に散布した。
【0546】
縦10cm、横40cmの不織布E(第1の基材に相当する。)に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)0.7~0.9gを均一に散布(散布量:17.5~21.5g/m)した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布Eの接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着した。
【0547】
粒子状吸水剤(1)と面していない側の不織布Aの表面に、粒子状吸水剤(1)4.5gを均一に散布した。
【0548】
前記の不織布Eとは別に、縦10cm、横40cmの不織布E(以下、不織布E2と称する。第2の基材に相当する。)に、前記の接着剤0.7~0.9gを均一に散布した後、不織布Aの粒子状吸水剤(1)を散布した面と不織布E2の接着剤を散布した面が対合するように(接触するように)重ね、加圧圧着して中間体シートZを得た。最後に、中間体シートZを不織布Fで包み、加圧圧着することで、吸水性シート(11)を得た。
【0549】
[比較例2]
型紙1を用いずに、粒子状吸水剤(1)を不織布Aに均一に全面に散布した点を除いては、実施例1と同様にして、吸水性シート(12)を得た。
【0550】
[比較例3]
不織布A2の代わりに不織布Eを用いた点を除いては、実施例1と同様にして、吸水性シート(13)を得た。中間不織布については、不織布Aを用いている。
【0551】
[比較例4]
不織布Aの代わりに不織布Eを用いた点を除いては、実施例2と同様にして、吸水性シート(14)を得た。
【0552】
なお、本実施例で使用した不織布A~C、Gは、いずれも透水性シートであった。
【0553】
〔不織布の物性の測定方法〕
実施例1~10および比較例1~4で用いた不織布A~C、EおよびGの伸び率、厚み、嵩密度、液拡散面積、不織布に対する粒子状吸水剤の透過率は、以下の方法に従って測定した。
【0554】
[伸び率の測定方法]
伸び率測定用の不織布を長辺が100mm、短辺が30mmの長方形に切り取った。このとき、長辺は不織布ロールの幅方向であり、短辺は不織布ロールの巻き取り長さ方向とする。なお、本実施例で吸水性シートに用いられる縦(短辺)100mm、横(長辺)400mmのサイズの不織布は、縦(短辺)を不織布ロールの幅方向とし、横(長辺)を不織布ロールの巻き取り長さ方向としている。
図22(a)のように、切り取った伸び率測定用の不織布の両端から5mmの位置に対し、それぞれ短辺と並行になるように目安線を引いた。目安線に重なるように、それぞれダブルクリップで挟んだ(
図22(b))。ダブルクリップは、爪の長さが30mm以上のものを用いた。一方のダブルクリップには錘を取りつけ、錘を取り付けたダブルクリップと錘を足した重さは110gとした。室温雰囲気下で、錘のついていないダブルクリップを持ち、もう一方のダブルクリップについた錘が空中に浮くように持ち上げ、不織布がダブルクリップと錘の重さで伸びた状態を20秒維持した。その直後、空中に浮かせたまま不織布の長辺方向の長さを測定した(
図22(c))。空中に浮かした後の長辺の長さと空中に浮かせる前の長辺の長さ100mmより、空中に浮かした後の長さがどの程度伸びているか、次の式を使用して比率を求め、伸び率とした。
【0555】
【0556】
<不織布の厚み測定>
ダイヤルシックネスゲージ 大型タイプ(厚み測定器)(株式会社 尾崎製作所製、型番:J-B、測定子:アンビル上下φ50mm)を用いて測定した。測定点数は、異なる箇所を5回とし、測定値は5点の平均値とした。厚み測定時は、不織布に圧力が出来るだけかからないよう、ハンドルからゆっくりと手を離し、厚みを測定した。
【0557】
<不織布の嵩密度の計算方法>
縦を10cm以上、横を40cm以上のサイズに切り取った不織布の重量を測定した。不織布の縦と横の長さ、および<厚み測定>より測り取った厚みをそれぞれ掛けて不織布の体積を計算し、不織布の重量を不織布の体積で割って嵩密度を計算した。
【0558】
<不織布の液拡散面積の測定方法>
目開きが2mm、線形が0.9mmの網を用いた直径30cmの篩を平面上に置き、10cm四方に切り取った不織布(第2の基材)を置いた。1mlのシリンジに口径0.50mmの注射針を装着して、青色1号試薬を20ppm含む生理食塩水1.00gを量りとり、篩上の不織布の中央にシリンジの生理食塩水を垂直に注入した。この時、篩の網と平面は十分に離れており、不織布と網を通過した生理食塩水は網に接しないようにした。不織布が生理食塩水を吸水して液の拡散が完了すると、生理食塩水が拡散している面積を測定した。
【0559】
<不織布に対する粒子状吸水剤の透過率>
目開き850μmのメッシュ32を有するJIS標準篩(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm;JIS Z8801-1(2000))、またはJIS標準篩に相当する篩31の中に、直径80mmに切断した不織布(第1の基材11)を
図23に示すように設置し、周囲をテープ33でとめた(少なくとも直径75mm以上は粒子が透過可能な面積を確保する)。不織布(第1の基材11)は後述の方法により、吸水性シートから取り出したものを使用してもよい。篩31の中の不織布(第1の基材11)上(
図23の矢印の方向)から、粒子状吸水剤14(重量平均粒子径:367μm、粒度分布:850μm~600μmが6.1% 600μm~500μmが14.5% 500μm~300μmが50% 300μm~150μmが27.6% 150μm~45μmが1.9% 45μm以下0.1%)10.0gを投入し、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES-65型ふるい振盪機;回転数230rpm、衝撃数130rpm)を用いて、室温(20~25℃)、相対湿度50%RHの条件下で5分間振盪した。振盪後、不織布(第1の基材11)と上記JIS標準篩に相当する篩31のメッシュ32を通過した粒子状吸水剤14(すなわち、篩31のメッシュ32より下部分31aに存在する粒子状吸水剤14)の質量(W(g))を測定し、下記式(i)にしたがって、粒子状吸水剤14の透過率を算出した。なお、測定は2回行い、その平均値を算出した。
【0560】
【0561】
なお、上記透過率の測定に用いた粒子状吸水剤は、重量平均粒子径300~450μm、粒度分布850μm~150μmである粒子状吸水剤を90重量%以上含んでなる粒子状吸水剤である。よって、本実施例で算出された第1の基材に対する粒子状吸水剤の透過率は、第1の基材に対する特定の粒子状吸水剤の透過率にも相当する。
【0562】
〔吸水性シートの評価方法〕
<吸水性シートからの粒子状吸水剤の取出し方法>
吸水性シートから上方不織布、および下方の不織布を剥がすことで粒子状吸水剤(中間不織布を含む場合は中間不織布と粒子状吸水剤と)を取り出した。上方および下方の不織布や中間不織布に貼着した粒子状吸水剤も全て取り出した。上方および下方の不織布を剥がす際には、吸水性シートを冷却し、不織布や粒子状吸水剤を貼着している接着剤(ホットメルト接着剤やスプレー糊)の接着性を十分に弱めた後に剥がした。この手順を踏むことで、不織布の繊維や構造厚みを変化させることなく取り出すことができ、正確に透過率を測定することが可能になる。吸水性シートの冷却方法は-10℃以下の恒温槽に一定時間入れる、冷却スプレーを吹きかける、液体窒素をかける等、種々手段が考えられるが、不織布の繊維や構造、厚みを変化させることなく、かつ吸水性シートに含まれる粒子状吸水剤が吸湿しない条件で行うのであれば、特に限定されない。
【0563】
また、取出した粒子状吸水剤が吸湿している場合、例えば乾燥することで、含水率を10質量%以下、好ましくは5±2質量%に調整して、上記透過率や本願で規定する諸物性を測定すればよい。含水率を調整するための乾燥条件としては、吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の分解や変性が生じない条件ならば特に限定されないが、好ましくは減圧乾燥が良い。
【0564】
<上方不織布中における粒子状吸水剤の含有割合の測定>
上方不織布を縦10mm、横10mmの正方形に切り取ったもの(厚みはそのまま)を、株式会社島津製作所製マイクロフォーカスX線CTシステム inspeXio SMX-100CTにより測定を行った。測定条件を以下に記す。
【0565】
[X線CTによる撮影]
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X線管電圧(kV):50
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インチサイズ(inch):4.0
X線フィルタ:なし
SDD(X線源の焦点とX線検出器の距離)(mm):700
SRD(X線源の焦点と測定試料の回転中心の距離)(mm):550
走査モード 1:CBCT
走査モード 2:ノーマル走査
走査角度:フル走査
ビュー数:2400
アベレージ数:5
スムージング:YZ
スライス厚(mm):0.166
BHCデータ:なし
精細モード:あり
FOV XY(最大撮影領域 XY)(mm):50.3
FOV Z(最大撮影領域 Z)(mm):40.0。
【0566】
次に、X線CTの撮影データを、三谷商事株式会社製解析ソフト Win ROOFを用いて、以下のような手順で解析を行った。
【0567】
(1)Win ROOFを開き、X線CTにて保存した解析したい画像(Jpeg)を選択する。
【0568】
(2)画面上から2値処理、自動2値化、モード法、しきい値(適宜調整する)、実行という流れでクリック(選択)する。
【0569】
(3)多角形ROIを選択し、第1の基材(上方不織布)中の粒子状吸水剤を囲み、粒子状吸水剤面積を計算させる。
【0570】
(4)(3)と同様にして、吸水性シート中における粒子状吸水剤の総面積を計算する。
【0571】
計算結果から、第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合(%)を下式により計算した。
【0572】
第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合(%)=第1の基材中の粒子状吸水剤面積(I)/粒子状吸水剤総面積(II)×100
すなわち、第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合は、粒子状吸水剤の総面積に対する面積%で表される。なお、第1の基材の液を直接的に吸収する吸液面(上方不織布の吸収する液が導入される側の面)上には、粒子状吸水剤は、存在しても数%未満であるため、存在していないとみなすことができる。なお、下記の実施例においては、第1の基材中の粒子状吸水剤の含有割合が、吸水性シート全体に含有される粒子状吸水剤に対して、5%以上であった。
【0573】
〔吸水性シートの評価方法〕
<逆戻り量(特定戻り量評価)>
図24に示されるように縦10cm、横40cmに作製した吸水性シート10を、縦14cm、横40cmの液体不透過性シート21で上部に開口部ができるように包んだ。液不透過性シート21で包んだ吸水性シート10を平面に置き、その上に液注入筒41(
図25)を
図26に示されるように吸水性シート10の中央に置いた。この状態で、流速7ml/秒で液投入が可能な漏斗42を使用して液注入筒41へ23℃の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液80gを投入した(
図27)。なお、この場合、シート22において、液不透過性シート21から露出した吸水性シート10に対して、液が投入されている。液を投入してから10分後、予め重量を測定した濾紙43(型式No.2、ADVANTEC製;直径110mmの円形のもの)20枚を、シート22の中央、すなわち、吸水性シート10の中央に載せ、直径100mmの円形の錘44(1200g)をさらに載せて、1分間保持した。1分後、錘44を除去し、濾紙43の重量増分から逆戻り量1回目(g)を測定した。錘44を除去してから1分後、同様の操作(液を投入→投入10分後、濾紙43および錘44(1200g)を載せて、1分間保持→1分後保持→錘を除去、逆戻り量の測定)を繰り返し、逆戻り量2回目(g)、逆戻り量3回目(g)を測定した。測定した逆戻り量の1回目から3回目までの合計を表8、表10に示した。
【0574】
<厚み比(Lb/La)の算出方法>
Laは、間隙における上方不織布の吸液面(第1の基材の吸液面)から下方不織布(第2の基材)の吸水層側の表面までの厚みであり、Lbは、粒子状吸水剤が含まれる領域における上方不織布の吸液面(第1の基材の吸液面)から下方不織布(第2の基材)の吸水層側の表面までの厚みである。
【0575】
[X線CTによる吸水性シートの厚み測定]
X線CT による吸水性シートの撮影は、縦350mmで横100mmで厚み3mmのプラスチック板に、長さ180mmに切り取った吸水性シートの両端をガムテープで固定し、X線装置(島津製作所製、inspeXio SMX-100CT)内部プレート上に前記プラスチック板を厚み方向と垂直に設置し、下記条件で吸水性シートの中央を測定することにより撮影した。
【0576】
使用装置:inspeXio SMX-100CT(島津製作所製)
X線管電圧(kV) :80
X線管電流(μA) :40
インチサイズ(inch) :4.0
X線フィルタ :なし
SOD(mm) :700
SRD(mm) :550
ビュー数 :2400
アベレージ数 :5×1
スライス厚(mm) :0.166
CT モード1 :CBCT
CT モード2 :ノーマル操作
走査角度 :フル走査
BHC データ :なし
センターアジャスト:あり
精細モード :あり
FOV( XY)(mm) :50.3
FOV (Z)(mm) :20.0
ボクセルサイズ(mm/voxel):0.098
撮影して得られた立体映像を長さ方向に203分割した断面図を取得し、50枚目、100枚目、150枚目の画像から、吸水性シートの厚みを測り取った。厚みを測り取るとき、上層不織布下の間隙における上方不織布の吸液面から下方不織布の吸水層側の表面までの厚みをLaとし、上層不織布下の粒子状吸水剤が含まれる領域における上方不織布の吸液面から下方不織布の吸水層側の表面までの厚みをLbとした。
【0577】
<保形性の評価>
吸水性シートに対し、<逆戻り量>を評価した後、吸水性シートの中央を幅方向に切断し、粒子状吸水剤が含まれない領域(すなわち、間隙)を目視で確認した。この時、間隙に存在するものを確認し、以下の評価基準で評価した。
評価基準
〇:粒子状吸水剤が含まれる領域が、間隙により隔てられている
(すなわち、間隙にはいかなる部材も存在しない、または、間隙には吸水層を矜持する基材(すなわち、単層形態の場合は、上層不織布および下方不織布;二層形態の場合は、上方不織布、中間不織布および下方不織布)が主に存在する)
×:間隙の存在割合が少なく、並列する粒子状吸水剤が含まれる領域同士が、つながっている(間隙により隔てられていない)
(すなわち、間隙とされていた領域に粒子状吸水剤が入り込んだり、吸水層を矜持する基材の存在割合が少なくなっている)
【0578】
下記表7~表10に、実施例1~10および比較例1~4で製造した吸水性シートの構成と、各吸水性シートで用いた基材の物性の評価結果、吸水性シートの評価結果を示す。なお、表7~表10中、SAPとは、粒子状吸水剤を意味する。また、表7および表9におけるSAP配置領域(%)とは、上方不織布の面方向において、粒子状吸水剤が配置された基材の全面積に対する粒子状吸水剤が含まれる領域の面積割合であり、SAP非配置領域(%)とは、上方不織布の面方向において、粒子状吸水剤が配置された基材の全面積に対する粒子状吸水剤が含まれない領域(すなわち、間隙)の面積割合を意味する。ここで、粒子状吸水剤が配置された基材とは、粒子状吸水剤を散布した基材を意味する。なお、本実施例では、上方不織布、中間不織布および下方不織布は同じサイズである。
【0579】
【0580】
【0581】
【0582】
【0583】
以上の結果より、実施例1~10の吸水性シートは、比較例1~4の吸水性シートと比較して、保形性が高く、かつ、逆戻り量が顕著に少なかった。すなわち、単層形態および二層形態の吸水性シートにおいて、伸縮性を有する上方不織布を用いて、吸水層において間隙を設けることにより、逆戻り量を低減でき、保形性が高いことが確認できた。
【0584】
また、本実施形態においては、二層形態は単層形態に比べて、逆戻り量が多くなる傾向にある。これは、二層形態の上層不織布に対する粒子状吸水剤の量(すなわち、上方不織布と中間不織布との間に位置する粒子状吸水剤の量)が、単層形態の上層不織布に対する粒子状吸水剤の量(すなわち、上方不織布と下方不織布との間に位置する粒子状吸水剤の量)よりも少ないことも要因のひとつでありうる。そのため、単層形態と二層形態との逆戻り量の低減効果の差は一概に比較することは難しいと考える。
【0585】
なお、本出願は、2019年11月28日に出願された日本特許出願第2019-215887号および2019年11月28日に出願された日本特許出願第2019-215888号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。
【符号の説明】
【0586】
10 吸水性シート
11、11a 第1の基材、
11b 中間基材、
12、12a、12b 吸水層、
13 第2の基材、
14、14a、14b 粒子状吸水剤、
15、15a、15b 間隙
16 ラッピングシート、
18、18a 積層体、
18b 構成体、
20 吸水性シート、
21 液体不透過シート、
31 篩、
31a 篩のメッシュより下部分、
32 メッシュ、
33 テープ
41 液注入筒、
42 漏斗、
43 濾紙
44 錘、
45 液注入筒、
60 架台、
61 パイプ、
63 アクリル板、
64 漏斗、
65 金属製トレイ。