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特許7410179太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材、太陽電池封止材の製造方法および太陽電池モジュール
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  • 特許-太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材、太陽電池封止材の製造方法および太陽電池モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材、太陽電池封止材の製造方法および太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20231226BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20231226BHJP
   C08K 5/3475 20060101ALI20231226BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20231226BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L31/04 560
C08L23/08
C08K5/3475
C08K5/29
B32B27/32 101
B32B27/32 103
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021565510
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2020045805
(87)【国際公開番号】W WO2021125004
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019226268
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】永山 敬
(72)【発明者】
【氏名】久木田 佳那
(72)【発明者】
【氏名】礒川 素朗
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057217(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/059009(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/138986(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池封止材を形成するために用いられる樹脂組成物であって、
エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種のエチレン・極性モノマー共重合体(A1)と、
エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)(ただし、前記エチレン・極性モノマー共重合体(A1)を除く)と、
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)と、
金属不活性化剤(C)と、
を含み、
前記エチレン・極性モノマー共重合体(A1)および前記エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の少なくとも一部はシランカップリング剤で変性されている太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度が910kg/m以下である太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有量が、前記太陽電池封止材用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、80質量%以上である太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
前記金属不活性化剤(C)がヒドラジン骨格を有する化合物およびトリアゾール骨格を有する化合物から選択される少なくとも一種を含む太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
前記金属不活性化剤(C)の含有量が、前記太陽電池封止材用樹脂組成物に含まれる樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、0.05質量部以上である太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
前記エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)はエチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・酢酸ビニル共重合体、およびエチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・(メタ)アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種を含む太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
前記エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)において、前記エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、エチレン由来の構成単位が70質量%以上95質量%以下である太陽電池封止材用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物により構成された層を含む太陽電池封止材。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物により構成された層と、
エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーから選択される少なくとも一種のエチレン系共重合体を含む樹脂組成物により構成された層と、
が積層された太陽電池封止材。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物をシート状に押し出しする工程を含む太陽電池封止材の製造方法。
【請求項11】
太陽電池素子と、
前記太陽電池素子を封止する請求項またはに記載の太陽電池封止材により構成された封止樹脂層と、
を備える太陽電池モジュール。
【請求項12】
請求項11に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記封止樹脂層に隣接して設けられた金属材を備え、
当該封止樹脂層を構成する請求項1乃至のいずれか一項に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物により構成された層と、当該金属材の少なくとも一部とが接する太陽電池モジュール。
【請求項13】
請求項12に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記金属材は、銅、錫、鉛、鉄、ビスマス、アルミニウムおよび銀から選択される少なくとも一種の金属を含む太陽電池モジュール。
【請求項14】
請求項12または13に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記金属材は銅を含む太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材、太陽電池封止材の製造方法および太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギーとして太陽光発電の普及が進んでいる。太陽光発電は、シリコンセル等の半導体(太陽電池素子)を用いて太陽光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。太陽電池素子の長期信頼を図るため、太陽電池素子を封止材で挟み、太陽電池素子を保護するとともに、太陽電池素子への異物の混入や水分等の侵入を防いでいる。
【0003】
太陽電池素子は、通常、光起電力により得られる電荷を収集するための金属電極を持ち、また、通常、高い電気出力を得るために複数の太陽電池用セルを金属配線で接続することによって構成されている。そして、経時劣化により金属電極あるいは金属配線付近において太陽電池封止材に黄変が生じる場合があることが知られている。
【0004】
この太陽電池封止材の黄変により、太陽電池素子の受光量が減少する。そのため、太陽電池封止材の黄変は、太陽電池モジュールの発電効率を低下させる原因となっており、黄変を効果的に防止することができる太陽電池封止材が所望されている。
【0005】
このような太陽電池封止材の黄変を抑制する技術としては、例えば、特許文献1(特開2014-107323号公報)および特許文献2(特開2018-174202号公報)に記載のものが挙げられる。
【0006】
特許文献1には、エチレン系共重合体、顔料及び金属不活性化剤を含む太陽電池用封止膜であって、上記金属不活性化剤が、トリアゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物及びヒドラジン化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有していることを特徴とする太陽電池用封止膜が開示されている。特許文献1には、このような太陽電池用封止膜により、黄変の発生を抑制できると記載されている。
【0007】
特許文献2には、エチレン-極性モノマー共重合体、架橋剤、紫外線吸収剤、カルボジイミド化合物を含む太陽電池用封止材であって、上記架橋剤が特定構造を有し、上記紫外線吸収剤が、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であり、上記カルボジイミド化合物が、特定構造を有する環状カルボジイミド化合物である太陽電池用封止材が開示されている。特許文献2には、このような太陽電池用封止材は、高温高湿環境下及び紫外線に長期間暴露される環境下においても、酸捕捉機能を長期に亘り維持することができ、黄変が抑制され、透明性が高く、架橋効率に優れると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-107323号公報
【文献】特開2018-174202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
太陽電池封止材の黄変抑制に対する要求は、さらに高くなっている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐黄変性が向上した太陽電池封止材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種のエチレン・極性モノマー共重合体と、エポキシ基含有エチレン系共重合体と、エチレン・α-オレフィン共重合体と、金属不活性化剤と、を組み合わせることで、得られる太陽電池封止材の耐黄変性を向上できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、以下に示す太陽電池封止材用樹脂組成物、太陽電池封止材、太陽電池封止材の製造方法および太陽電池モジュールが提供される。
【0013】
[1]
太陽電池封止材を形成するために用いられる樹脂組成物であって、
エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種のエチレン・極性モノマー共重合体(A1)と、
エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)(ただし、上記エチレン・極性モノマー共重合体(A1)を除く)と、
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)と、
金属不活性化剤(C)と、
を含む太陽電池封止材用樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記エチレン・極性モノマー共重合体(A1)および上記エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の少なくとも一部はシランカップリング剤で変性されている太陽電池封止材用樹脂組成物。
[3]
上記[1]または[2]に記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の密度が910kg/m以下である太陽電池封止材用樹脂組成物。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有量が、上記太陽電池封止材用樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、80質量%以上である太陽電池封止材用樹脂組成物。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記金属不活性化剤(C)がヒドラジン骨格を有する化合物およびトリアゾール骨格を有する化合物から選択される少なくとも一種を含む太陽電池封止材用樹脂組成物。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記金属不活性化剤(C)の含有量が、上記太陽電池封止材用樹脂組成物に含まれる樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、0.05質量部以上である太陽電池封止材用樹脂組成物。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)はエチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・酢酸ビニル共重合体、およびエチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・(メタ)アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種を含む太陽電池封止材用樹脂組成物。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物において、
上記エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)において、上記エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、エチレン由来の構成単位が70質量%以上95質量%以下である太陽電池封止材用樹脂組成物。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物により構成された層を含む太陽電池封止材。
[10]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物により構成された層と、
エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーから選択される少なくとも一種のエチレン系共重合体を含む樹脂組成物により構成された層と、
が積層された太陽電池封止材。
[11]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物をシート状に押し出しする工程を含む太陽電池封止材の製造方法。
[12]
太陽電池素子と、
上記太陽電池素子を封止する上記[9]または[10]に記載の太陽電池封止材により構成された封止樹脂層と、
を備える太陽電池モジュール。
[13]
上記[12]に記載の太陽電池モジュールにおいて、
前記封止樹脂層に隣接して設けられた金属材を備え、
当該封止樹脂層を構成する上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の太陽電池封止材用樹脂組成物により構成された層と、当該金属材の少なくとも一部とが接する太陽電池モジュール。
[14]
上記[13]に記載の太陽電池モジュールにおいて、
上記金属材は、銅、錫、鉛、鉄、ビスマス、アルミニウムおよび銀から選択される少なくとも一種の金属を含む太陽電池モジュール。
[15]
上記[13]または[14]に記載の太陽電池モジュールにおいて、
上記金属材は銅を含む太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐黄変性が向上した太陽電池封止材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る実施形態の太陽電池モジュールの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、数値範囲の「X~Y」は特に断りがなければ、X以上Y以下を表す。また、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを意味する。
【0017】
1.太陽電池封止材用樹脂組成物
本実施形態に係る太陽電池封止材用樹脂組成物(以下、樹脂組成物(P)とも呼ぶ。)は、太陽電池封止材を形成するために用いられる樹脂組成物であって、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種のエチレン・極性モノマー共重合体(A1)と、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)(ただし、前記エチレン・極性モノマー共重合体(A1)を除く)と、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)と、金属不活性化剤(C)と、を含む。
【0018】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)は、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)と、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)と、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)と、金属不活性化剤(C)と、を含むことで、得られる太陽電池封止材の耐黄変性を良好にすることができる。
【0019】
この理由は明らかではないが、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)と金属不活性化剤(C)の官能基(例えば、フェニル基のヒドロキシ基等)が相互作用あるいは反応することにより、金属不活性化剤(C)に金属イオンがより配位しやすくなるため、金属イオンによる樹脂の劣化の促進が抑制されるためと推測される。
以上の理由から、本実施形態に係る太陽電池封止材用樹脂組成物を用いることにより、耐黄変性が向上した太陽電池封止材を得ることができる、と考えられる。
【0020】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)において、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計含有量は、樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。エチレン・極性モノマー共重合体(A1)、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の合計含有量が上記範囲内であると、得られる太陽電池封止材の透明性、層間接着性、絶縁性、剛性、耐水性、柔軟性、機械的特性、耐熱性、取扱い性、加工性、および得られる太陽電池モジュールのPID耐性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0021】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物(P)を構成する各成分について説明する。
【0022】
<エチレン・極性モノマー共重合体(A1)>
本実施形態に係るエチレン・極性モノマー共重合体(A1)は、エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される一種または二種以上を含む。
【0023】
エチレン・ビニルエステル共重合体としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0024】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルの少なくとも一種とを共重合した重合体である。
具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸のアルキルエステルと、からなる共重合体を例示することができる。
【0025】
不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸のアルキルエステルにおけるアルキル部位としては、炭素数1~12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2-エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。本実施形態では、アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は、1~8が好ましい。
【0026】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル等から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステルは一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、および(メタ)アクリル酸n-ブチル等から選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
【0027】
本実施形態において、好ましいエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。その中でも(メタ)アクリル酸エステルとして一種類の化合物からなる共重合体が好ましい。このような共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体等が挙げられる。
【0028】
エチレン・極性モノマー共重合体(A1)は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましい。
なお、本実施形態においてはエチレン・極性モノマー共重合体(A1)は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
エチレン・極性モノマー共重合体(A1)中の極性モノマーの含有量は、好ましくは5質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以上45質量%以下であり、特に好ましくは8質量%以上30質量%以下である。
極性モノマーが酢酸ビニルの場合、極性モノマーの含有量は、例えば、JIS K7192:1999に準拠して測定することができる。また、極性モノマーが不飽和カルボン酸エステルの場合は、極性モノマーの含有量は、例えば、不飽和カルボン酸エステルに帰属する赤外吸収スペクトル(IR)により測定される。例えば、不飽和カルボン酸エステルがアクリル酸エチル(EA)の場合、EAに帰属する860cm-1の吸光度から求める。ただし、検量線は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)によりEA濃度を求め、IRの860cm-1の吸光度との相関によって求める。
【0030】
本実施形態において、加工安定性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分以上300g/10分以下であることが好ましく、0.2g/10分以上200g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上180g/10分以下であることがさらに好ましく、1.0g/10分以上30g/10分以下であることが特に好ましい。
エチレン・極性モノマー共重合体(A1)のMFRは、異なるMFRを有するエチレン・極性モノマー共重合体(A1)を複数ブレンドして調整してもよい。
【0031】
本実施形態に係るエチレン・極性モノマー共重合体(A1)におけるエチレン・極性モノマー共重合体の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温、高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。また、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)におけるエチレン・極性モノマー共重合体は市販されているものを用いてもよい。
【0032】
エチレン・極性モノマー共重合体(A1)の少なくとも一部はシランカップリング剤により変性されていることが好ましい。これにより、得られる太陽電池封止材の接着性をより一層良好なものとすることができる。
【0033】
ここで、本実施形態に係るエチレン・極性モノマー共重合体(A1)における上記シランカップリング剤は重合性基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤およびエポキシ基を有するシランカップリング剤からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
シランカップリング剤は、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)100質量部に対し、通常5質量部以下、好ましくは0.02~4質量部の量で含有させることができる。シランカップリング剤が上記範囲で含まれていると、得られる太陽電池封止材の接着性をより一層良好なものとすることができる。
ここで、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)へのシランカップリング剤の変性は、例えば、後述するエポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)へのシランカップリング剤の変性と同様の方法を挙げることができる。
また、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)へのシランカップリング剤の変性と、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)へのシランカップリング剤の変性とを同時におこなってもよい。
【0034】
ここで、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)へのシランカップリング剤の変性と、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)へのシランカップリング剤の変性とを同時におこなう場合、変性に使用する重合開始剤はエチレン・極性モノマー共重合体(A1)およびエポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の合計100質量部に対し、例えば0.1~5質量部、好ましくは0.2~3質量部の量で含有させることができる。
シランカップリング剤は、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)およびエポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の合計100質量部に対し、例えば5質量部以下、好ましくは0.02~3質量部の量で含有させることができる。シランカップリング剤が上記範囲で含まれていると、得られる太陽電池封止材の接着性をより一層良好なものとすることができる。
シランカップリング剤の含有量は、樹脂組成物(P)中の樹脂成分全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。ここで、シランカップリング剤の上記含有量は、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)およびエポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)にグラフトされているシランカップリング剤も含む。
【0035】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)中のエチレン・極性モノマー共重合体(A1)の含有量は、樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましく、3質量%以上7質量%以下が特に好ましい。エチレン・極性モノマー共重合体(A1)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる太陽電池封止材の透明性、接着性、防湿性、絶縁性、柔軟性、耐熱性および加工性の性能バランスをより一層良好なものとすることができる。
【0036】
<エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)>
エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)としては、例えば、グリシジル基含有エチレン系共重合体が挙げられる。
グリシジル基含有エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・酢酸ビニル共重合体、およびエチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0037】
エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)は、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等の重合性基とエポキシ基を有するモノマーをエチレンと共重合することにより得られる。また、エチレン系共重合体にエポキシ基を有するモノマーをグラフト重合させてエポキシ基を導入してもよい。
エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)中のエポキシ基を含有するモノマーに由来の構成単位の含有割合は、好ましくは2質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上15質量%以下である。
エポキシ基を含有するモノマーに由来の構成単位の含有割合が上記下限値以上であると、得られる太陽電池封止材の太陽電池モジュールの層間接着性がより良好になり、太陽電池封止材の透明性と柔軟性もより良好になる。また上記上限値以下であると、太陽電池封止材の加工性が向上する。
なお、「(メタ)アクリル酸グリシジル」とは、メタクリル酸グリシジルおよびアクリル酸グリシジルの一方または両方を表す。
【0038】
エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)における「エチレン系共重合体」とは、エチレンに由来する構成単位が主成分であることをいう。さらに、ここでの「主成分」とは、全構成単位の中で「エチレン由来の構成単位」の含有量が最も多いことをいう。例えば、エチレンと(メタ)アクリル酸グリシジルと酢酸ビニルとの各々に由来する構成単位からなる共重合体の場合には、エチレン由来の構成単位の比率が、(メタ)アクリル酸グリシジル由来の構成単位や酢酸ビニル由来の構成単位よりも大きいことをいう。
エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)において、前記エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、エチレン由来の構成単位は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。このとき、エポキシ基含有エチレン系共重合体は、エチレンおよびエポキシ基を有するモノマー以外の他のモノマー単位をさらに含むことができる。
他のモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エタクリル酸エステル、クロトン酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、無水マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、無水イタコン酸エステル等の不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。エステル基としては炭素数1~12のアルキルエステル基を挙げることができ、より具体的には、メチルエステル、エチルエステル、n-プロピルエステル、イソプロピルエステル、n-ブチルエステル、イソブチルエステル、セカンダリーブチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル等のアルキルエステル基を例示することができる。
これらの中でも酢酸ビニルおよび(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0039】
具体的には、エチレンに由来の構成単位と、(メタ)アクリル酸グリシジルに由来の構成単位とを含有する共重合体のほか、この2つの構成単位のほかに、さらに酢酸ビニルに由来の構成単位および(メタ)アクリル酸エステルに由来の構成単位の少なくとも一方を含有する共重合体が挙げられる。
【0040】
酢酸ビニル等のビニルエステルに由来の構成単位および(メタ)アクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルに由来の構成単位の含有割合の上限値は30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。これにより、太陽電池封止材の透湿度が低下して防湿性をより一層良好なものとすることができる。
酢酸ビニル等のビニルエステルに由来の構成単位および(メタ)アクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルに由来の構成単位の含有割合の下限値は、特に制限はないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上が望ましい。さらには、酢酸ビニル等のビニルエステルに由来の構成単位または(メタ)アクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルに由来の構成単位の含有割合は、0.1~30質量%の範囲が好ましく、さらに0.5~20質量%の範囲が好ましく、特に1~20質量%の範囲が好ましい。
【0041】
エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)は、一種を単独でまたは共重合比等の異なる二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)中のエポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の含有量は、樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましく、3質量%以上7質量%以下が特に好ましい。エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる太陽電池封止材の透明性、接着性、防湿性、絶縁性、柔軟性、耐熱性および加工性の性能バランスをより一層良好なものとすることができる。
【0043】
エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の少なくとも一部はシランカップリング剤により変性されていることが好ましい。これにより、得られる太陽電池封止材の接着性をより一層良好なものとすることができる。
【0044】
ここで、本実施形態に係る樹脂組成物(P)において、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)における上記シランカップリング剤は重合性基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤およびエポキシ基を有するシランカップリング剤からなる群から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
ここで、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)へのシランカップリング剤の変性は、例えば、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)と、アミノ基またはエポキシ基を有するシランカップリング剤とを加熱下(例えば、100℃~200℃)で反応させる方法(変性方法1)や、重合開始剤を用いて、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)に、重合性基を有するシランカップリング剤をグラフト重合させる方法(変性方法2)等がある。
変性方法1では、シランカップリング剤中のアミノ基またはエポキシ基と、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)中のグリシジル基と、が反応することにより、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の側鎖にシランカップリング剤が導入される。
変性方法2では、例えば、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)と、重合性基を有するシランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の融点以上、かつラジカル重合開始剤の分解温度以上の温度で溶融混練することにより製造することができる。なお、これらの反応は溶液中でも行なうこともできる。
【0045】
重合開始剤としては通常用いられるものを用いることができるが、有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては重合開始剤として使用可能な公知の有機過酸化物を用いることができ、具体的には、ジアシルパーオキサイド化合物、アルキルパーオキシエステル化合物、パーオキシジカーボネート化合物、パーオキシカーボネート化合物、パーオキシケタール化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物等が挙げられる。
中でも、ジアルキルパーオキサイド化合物が好ましく、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3がより好ましい。
【0046】
重合性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等が挙げられる。
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
本実施形態において、加工安定性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分以上50g/10分以下であることが好ましく、0.5g/10分以上30g/10分以下であることがより好ましく、1g/10分以上20g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0048】
変性に使用する重合開始剤はエポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)100質量部に対し、通常0.1~5質量部、好ましくは0.5~3質量部の量で含有させることができる。
シランカップリング剤は、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)100質量部に対し、通常5質量部以下、好ましくは0.02~4質量部の量で含有させることができる。シランカップリング剤が上記範囲で含まれていると、得られる太陽電池封止材の接着性をより一層良好なものとすることができる。
【0049】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)において、樹脂組成物(P)中のエポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の含有量に対するエチレン・極性モノマー共重合体(A1)の含有量の質量比が0.1以上10以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがより好ましい。これにより、得られる太陽電池封止材の接着性や柔軟性、機械的特性、耐熱性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0050】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(B)>
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)としては、該共重合体を構成する全構成単位(単量体単位)の含有量を100モル%としたとき、α-オレフィンに由来する構成単位の含有割合が、5モル%以上であることが好ましい。より好ましくは10モル%以上である。上記α-オレフィン由来の構成単位の含有割合が上記範囲内であると、得られる太陽電池封止材の透明性、耐ブリード性がより一層良好となる。上限については、50モル%未満、好ましくは40モル%以下、特に好ましくは30モル%以下である。
【0051】
上記α-オレフィンとしては、炭素数3~20のα-オレフィンが好ましい。炭素数3~20の具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ナノデセン、1-エイコセン等の直鎖状のα-オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等の分岐状のα-オレフィン等が挙げられ、これらは一種単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせてもよい。
【0052】
中でも、上記α-オレフィンの炭素数は、汎用性(コストや量産性あるいは入手のしやすさ)の点で、3~10が好ましく、さらには3~8がより好ましい。
【0053】
エチレン・α-オレフィン共重合体としては、好ましくは、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体であり、いずれのエチレン・α-オレフィン共重合体も、エチレン由来の構成単位含有量が50モル%以上である。
上記エチレン・α-オレフィン共重合体は、一種単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0054】
エチレン・α-オレフィン共重合体は、例えば、メタロセン系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等で製造できる。
【0055】
JIS K7112:1999に準拠して測定される、エチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、好ましくは850kg/m以上であり、より好ましくは860kg/m以上であり、特に好ましくは870kg/m以上ある。エチレン・α-オレフィン共重合体の密度が上記下限値以上であることにより、耐熱性がより一層良好となる。
JIS K7112:1999に準拠して測定される、エチレン・α-オレフィン共重合体の密度は、好ましくは910kg/m以下である。エチレン・α-オレフィン共重合体の密度が上記上限値以下であることにより、太陽電池封止材の接着性、柔軟性および透明性のバランスがより一層良好となる。
【0056】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)中のエチレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有量は、樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、80質量%以上であることが好ましく、84質量%以上がより好ましく、86質量%以上がさらに好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有量の上限は特に限定されないが、例えば、98質量%以下が好ましく、96質量%以下がより好ましく、94質量%以下がさらに好ましい。
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)の含有量が上記範囲内であることにより、得られる太陽電池封止材の透明性、接着性、防湿性、絶縁性、柔軟性、耐熱性および加工性の性能バランスをより一層良好なものとすることができる。
【0057】
<金属不活性化剤(C)>
本実施形態に係る金属不活性化剤(C)は、熱可塑性樹脂の金属害を抑制する化合物として周知のものを用いることができる。金属不活性化剤は、二種以上を併用してもよい。
【0058】
本実施形態に係る金属不活性化剤(C)としては、例えば、ヒドラジン骨格を有する化合物、トリアゾール骨格を有する化合物等が挙げられる。
ヒドラジン骨格を有する化合物としては、例えば、デカメチレンジカルボキシル-ジサリチロイルヒドラジド、2’,3-ビス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジド、イソフタル酸ビス(2-フェノキシプロピオニル-ヒドラジド)が挙げられる。
トリアゾール骨格を有する化合物としては、例えば、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾールが挙げられる。
ヒドラジン骨格を有する化合物及びトリアゾール骨格を有する化合物以外にも、2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ-(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチル・ジフェニルメタン、トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三-ブチルフェニル)ブタン、2-メルカプトベンズイミダゾールとフェノール縮合物との混合物などを挙げることができる。
ヒドラジン骨格を有する化合物としては、デカメチレンジカルボキシル-ジサリチロイルヒドラジドが、ADEKA製のアデカスタブCDA-6Sという製品名で、2’,3-ビス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]プロピオノヒドラジドが、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)(現BASFジャパン(株))製のIRGANOX MD1024(イルガノクスMD1024)という製品名で、それぞれ上市されている。
トリアゾール骨格を有する化合物としては、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾールが、ADEKA製のアデカスタブCDA-1およびCDA-1Mという製品名で上市されている。
【0059】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)中の金属不活性化剤(C)の含有量は、樹脂組成物(P)に含まれる樹脂成分の合計量を100質量部としたとき、0.05質量部以上であることが好ましく、0.10質量部以上であることがより好ましい。金属不活性化剤(C)の含有量が上記下限値以上であると、太陽電池封止材の耐黄変性をより一層向上させることができる。金属不活性化剤(C)の含有量の上限は特に限定されないが、例えば、5.0質量部以下であり、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
【0060】
<その他の成分>
本実施形態に係る樹脂組成物(P)には、本発明の目的を損なわない範囲内において、エチレン・極性モノマー共重合体(A1)、エポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B)および金属不活性化剤(C)以外の成分を含有させることができる。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、波長変換剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、耐光安定剤、発泡剤、潤滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、触媒失活剤、熱線吸収剤、熱線反射剤、放熱剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機充填剤、有機充填剤、耐衝撃性改良剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、粘着付与剤、加工助剤、離型剤、加水分解防止剤、耐熱安定剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤、光拡散剤、抗菌剤、防黴剤、分散剤、およびその他の樹脂等を挙げることができる。その他の成分は一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
2.太陽電池封止材
本実施形態に係る太陽電池封止材は、本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される層を含む。
本実施形態に係る太陽電池封止材は、単層構成であってもよいし、2層以上の多層構成であってもよい。
より具体的には、本実施形態に係る太陽電池封止材は、1層の本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される層からなる単層構成の膜であってもよいし、2層以上の本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される層からなる多層構成の膜であってもよいし、少なくとも1層の本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される層と少なくとも1層の本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される層以外の他の層とを有する多層構成の膜であってもよい。
本実施形態に係る太陽電池封止材により構成される層を封止樹脂層とも呼ぶ。封止樹脂層は単層構成であってもよいし、2層以上の多層構成であってもよい。
【0062】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される層以外の他の層としては、例えば、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーから選択される少なくとも一種のエチレン系共重合体を含む樹脂組成物により構成された層が挙げられる。エチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・α-オレフィン共重合体としては、例えば、前述したエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・α-オレフィン共重合体を用いることができる。
【0063】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーは、エチレンと、不飽和カルボン酸の少なくとも一種とを共重合した重合体に対し、カルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和した樹脂である。エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレンと不飽和カルボン酸とを含む共重合体や、エチレンと不飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸エステルとを含む共重合体等を例示することができる。エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを構成する不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。本実施形態において、特に好ましいエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを構成する金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、銀イオン、銅イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、バリウムイオン、ベリリウムイオン、ストロンチウムイオン、錫イオン、鉛イオン、鉄イオン、コバルトイオンおよびニッケルイオンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0064】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される層以外の他の層としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーにより構成された樹脂シートが好ましい。これらの層は、例えば、太陽電池封止材として、公知のものを用いることができる。
【0065】
本実施形態に係る太陽電池封止材が多層構成である場合、本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成される層は金属材に接する側に用いられる。これにより、太陽電池封止材の耐黄変性をより一層効果的に抑制することができる。
【0066】
本実施形態に係る太陽電池封止材の厚みは、例えば、0.001mm以上10mm以下、好ましくは0.01mm以上5mm以下、より好ましくは0.05mm以上2mm以下である。
太陽電池封止材の厚みが上記下限値以上であると、太陽電池封止材の機械的強度や絶縁性をより良好にすることができる。また、太陽電池封止材の厚みが上記上限値以下であると、得られる太陽電池封止材の透明性をより良好にすることができる。
また、本実施形態に係る太陽電池封止材が樹脂組成物(P)により構成された層と、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーから選択される少なくとも一種のエチレン系共重合体を含む樹脂組成物により構成された層と、が積層された積層構造の場合、樹脂組成物(P)により構成された層の厚みは、例えば、10μm以上900μm以下である。
【0067】
本実施形態に係る太陽電池封止材の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
本実施形態に係る太陽電池封止材の製造方法としては、例えば、プレス成形法、押出成形法、Tダイ成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。これらの中でも押出成形法が好ましい。すなわち、本実施形態に係る太陽電池封止材は、例えば、本実施形態に係る樹脂組成物(P)をシート状に押し出しする工程を含む製造方法により得ることができる。
【0068】
3.太陽電池モジュール
図1は、本発明に係る実施形態の太陽電池モジュール1の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、例えば、太陽電池素子3と、太陽電池素子3を封止する本実施形態に係る太陽電池封止材により構成された封止樹脂層5と、を備える。本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、必要に応じて、さらに太陽光が入射する基板2、保護材4等を備えていてもよい。なお、太陽光が入射する基板2を、単に基板2と称することもある。
本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、例えば、太陽電池素子3を封止樹脂層5で挟み、さらにこれらを基板2と保護材4とで挟んで積層体を作製する。次いで、積層体を加熱・加圧して、各部材間を接着することで作製できる。
【0069】
このような太陽電池モジュール1としては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば、基板/封止材/太陽電池素子/封止材/保護材の順に積層して太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のもの;ガラス等の基板の表面上に予め形成された太陽電池素子を、基板/太陽電池素子/封止材/保護材の順に積層した構成するもの;基板の内周面上に形成された太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系シート上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材と保護材を形成させるような構成のもの;等を挙げることができる。
なお、保護材4は、太陽光が入射する基板2を太陽電池モジュール1の上部としたとき、太陽電池モジュール1の基板2側とは反対側、すなわち下部に備えられるため、下部保護材や裏面保護材と称することもある。
【0070】
太陽電池素子3としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、およびアモルファスシリコン等のシリコン系;ガリウム-砒素、銅-インジウム-セレン、銅-インジウム-ガリウム-セレン、およびカドミウム-テルル等のIII-V族やII-VI族化合物半導体系;アモルファスシリコンと単結晶シリコンのヘテロ接合タイプ等の各種太陽電池素子を用いることができる。
太陽電池モジュール1においては、複数の太陽電池素子3は、インターコネクタ6を介して電気的に直列に接続されている。
【0071】
本実施形態に係る太陽電池モジュール1は、通常、封止樹脂層5に隣接して設けられた金属材を備える。また、太陽電池モジュール1は、封止樹脂層5が2層以上の多層構成である場合、封止樹脂層5の層構成のうち、樹脂組成物(P)により構成された層が、金属材の少なくとも一部と接している。言い換えると、樹脂組成物(P)により構成された層は、封止樹脂層5の少なくとも一方の表面に位置し、封止樹脂層5の樹脂組成物(P)により構成された層側の面が、金属材の少なくとも一部、例えば、金属材の一方の面と接する。本実施形態に係る樹脂組成物(P)により構成された層は耐黄変性に優れるため、封止樹脂層5が金属材に接した場合であっても黄変を抑制することができる。
金属材として、例えば、バスバー電極、インターコネクタ、フィンガー電極等が例示できる。このような金属材は、通常、配線、電極などである。
バスバー電極、インターコネクタ及びフィンガー電極は、太陽電池素子同士を接合したり、発電した電気を集めたりするために、モジュールに使用されるものである。
【0072】
金属材は、例えば、銅、錫、鉛、鉄、ビスマス、アルミニウムおよび銀から選択される少なくとも一種の金属を含む。ここで、金属材が銅を含む場合、太陽電池封止材の黄変が生じやすいため、金属材が銅を含む太陽電池モジュールに対して、本実施形態に係る太陽電池封止材は特に有効である。
【0073】
本実施形態に係る太陽電池モジュール1を構成する基板2としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂等を例示することができる。
保護材4(下部保護材)としては、金属、各種無機材料、各種熱可塑性樹脂フィルム等の単体もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレススチール等の金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、およびポリオレフィン等の熱可塑性樹脂フィルムからなる1層もしくは多層のシートを例示することができる。本実施形態に係る太陽電池封止材は、これらの基板2または保護材4に対して良好な接着性を示す。
【0074】
太陽電池モジュール1の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、インターコネクタ6を用いて電気的に接続した複数の太陽電池素子3を太陽電池封止材で挟み、さらにこれら太陽電池封止材を基板2と保護材4とで挟んで積層体を作製する。次いで、積層体を加熱・加圧して、各部材間を接着することで、太陽電池モジュール1が得られる。
【0075】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0076】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
(1)評価方法
[耐黄変性評価]
実施例および比較例で得られた積層体を140℃にて144時間または288時間に亘って放置した。積層体の中心部を目視観察して下記基準に基づいて耐黄変性を評価した。
○:導線周囲にほとんど黄変は視認できなかった、または黄変が視認できる部分が導線から0.5mm以内であった。
△:導線周囲に黄変が僅かに視認できた、または黄変の視認できる部分が導線から0.5mmを超えて1mm以内であった。
×:導線周囲に黄変がすぐに視認できた、または黄変の視認できる範囲が導線から1mmを超えていた。
【0078】
(2)材料
太陽電池封止材の作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0079】
(2-1)シランカップリング剤により変性されたエチレン・極性モノマー共重合体(A1)およびエポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の混合物
エチレン・メタクリル酸グリシジル・酢酸ビニル共重合体(EGMAVA、住友化学(株)製、ボンドファースト7B、エチレン含有量:83質量%、メタクリル酸グリシジル含有量:12質量%、酢酸ビニル含有量:5質量%、MFR(190℃、2160g荷重):7g/10分):49質量部、エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量:19質量%、MFR(190℃、2160g荷重):47g/10分):49質量部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名「KBM503」):1.5質量部および2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(アルケマ吉富(株)製、商品名「ルペロックス101」):0.5質量部を予め混合し、溶融温度220℃にて40mmφ単軸押出機でグラフト重合させて、シランカップリング剤により変性されたエチレン・極性モノマー共重合体(A1)よびエポキシ基含有エチレン系共重合体(A2)の混合物を得た。
【0080】
(2-2)エチレン・α-オレフィン共重合体(B)
エチレン・α-オレフィン共重合体(B-1):エチレン・α-オレフィン共重合体(三井化学社製、タフマーA-4090S、MFR:3.6g/10分、密度:893kg/m
【0081】
(3)各種添加剤
フェノール系酸化防止剤1:Irganox1010、BASFジャパン社製
耐光安定剤1:Tinuvin770DF、BASFジャパン社製
金属不活性化剤1:デカメチレンジカルボキシル-ジサリチロイルヒドラジド(アデカスタブCDA-6S、ADEKA社製)
金属不活性化剤2:3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール(アデカスタブCDA-1、ADEKA社製)
【0082】
(4)第一層目のシート
PO:ポリオレフィン系封止材(厚み450μm、密度880kg/m
EVA:エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)系封止材(厚み600μm、密度950kg/m
【0083】
[実施例1~4および比較例3]
表1に示す配合割合で、各成分を175℃で溶融混練し、樹脂組成物をそれぞれ得た。次いで、得られた樹脂組成物をヒートプレス機によりプレス成形し、厚さ0.1mmのシート状の太陽電池封止材をそれぞれ作製した。
次いで、25mm×25mmに切り出したTPTバックシート(BEC-301、Hangzhou First PV MATERIAL社製)上に直径0.4mmの銅線を束ねて並べ、さらにその上に、上記で得られたシート状の太陽電池封止材(第二層目)、第一層目のシートおよびPET(ポリエチレンテレフタレート)シートの順に、表1に示す構成で重ね合わせて積層シートをそれぞれ製造した。次いで、得られた積層シートを真空下にて150℃に3分間に亘って加熱した後に150℃にて5分間に亘って加圧下にて加熱して積層体をそれぞれ作製した。
ここで、表1において、各種添加剤の配合量の単位(phr)は、樹脂成分の合計を100質量部としたときの質量部を示す。
【0084】
[比較例1および2]
25mm×25mmに切り出したTPTバックシート(BEC-301、Hangzhou First PV MATERIAL社製)上に直径0.4mmの銅線を束ねて並べ、さらにその上に、第一層目のシートおよびPET(ポリエチレンテレフタレート)シートの順に、表1に示す構成で重ね合わせて積層シートをそれぞれ製造した。次いで、得られた積層シートを真空下にて150℃に3分間に亘って加熱した後に150℃にて5分間に亘って加圧下にて加熱して積層体をそれぞれ作製した。
【0085】
得られた積層体について上記の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例1~4の積層体は比較例1~3の積層体に比べて耐黄変性に優れていた。
【0088】
この出願は、2019年12月16日に出願された日本出願特願2019-226268号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0089】
1 太陽電池モジュール
2 基板
3 太陽電池素子
4 保護材
5 封止樹脂層
6 インターコネクタ
図1