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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】金属帯材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 13/22 20060101AFI20231226BHJP
   B21B 1/02 20060101ALI20231226BHJP
   B21B 15/00 20060101ALI20231226BHJP
   B22D 11/126 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B21B13/22
B21B1/02 D
B21B15/00 A
B21B15/00 Z
B22D11/126 Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022112869
(22)【出願日】2022-07-14
(65)【公開番号】P2023016725
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】10 2021 207 943.1
(32)【優先日】2021-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ・ノルマン・イェプゼン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーアヒム・オーレルト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・クリンケンベルク
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-211504(JP,A)
【文献】国際公開第2019/224305(WO,A1)
【文献】特表2001-525254(JP,A)
【文献】特表2019-535525(JP,A)
【文献】特開2014-028404(JP,A)
【文献】特表2009-508691(JP,A)
【文献】米国特許第05924184(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102069092(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯材を製造する方法であって、
圧延ライン(1)において、幾つかの圧延スタンド(2)を用いて、帯材をスラブ(3)から圧延し、その際、個々の部分スラブ(3a、3b)から圧延されるべきスラブ(3)を繋ぎ合わせ、鋳造機(5、6)で製造された個々の部分スラブ(3a、3b)の繋ぎ合わせを、スラブ接合装置(4)において行う、方法において、
スラブ接合装置(4)は、摩擦溶接装置として構成されていて、摩擦溶接装置を用いて2つの部分スラブ(3a、3b)を相互に接合し、
スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して少なくとも630mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給し、スラブ(3)は、少なくとも855℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反し、その際、圧延ラインに供給されるスラブ体積流量は、鋳造機から離反するスラブ体積流量に依存しないことを特徴とする、方法。
【請求項2】
スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して少なくとも690mm×m/分又は少なくとも710mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スラブ(3)が、少なくとも860℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
圧延ライン(1)において、圧延を、連続プロセスで行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
部分スラブ(3a、3b)を、少なくとも2つの鋳造機(5、6)で連続鋳造することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
部分スラブ(3a、3b)を、鋳造機(5、6)の下流でかつスラブ接合装置(4)の上流で、炉(7、8)又はトンネル炉を通してガイドし、加温することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
部分スラブ(3a、3b)を炉(7、8)内で1000℃から1250℃の温度へ加温することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
スラブ(3)は、軟鋼からなり、スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して630mm×m/分から860mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給し、スラブ(3)は、少なくとも860℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
スラブ(3)は、構造用鋼からなり、スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して690mm×m/分から950mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給し、スラブ(3)は、少なくとも860℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
スラブ(3)は、炭素鋼からなり、スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して710mm×m/分から970mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給し、スラブ(3)は、少なくとも860℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つの鋳造機(5、6)によって提供される部分スラブ(3a、3b)を、圧延ライン(1)に供給される体積流量よりも小さい総積算体積流量で提供し、その際、少なくとも2つの鋳造機(5、6)とスラブ接続装置(4)の間に位置する、部分スラブ(3a、3b)のバッファを用いることによって、圧延を少なくとも15分の期間にわたって継続的に実行することを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
期間は、少なくとも30分又は少なくとも45分であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
部分スラブ(3a、3b)のバッファは、少なくとも1つの炉(7、8)内に位置することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
部分スラブ(3a、3b)の提供を、制御システムによって指示することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯材を製造する方法であって、圧延ラインにおいて、幾つかの圧延スタンドを用いて、帯材をスラブから圧延し、その際、個々の部分スラブから圧延されるべきスラブを繋ぎ合わせ、個々の部分スラブの繋ぎ合わせを、スラブ接合装置において行う、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、国際公開第2017/140886号において、鋳造圧延設備において、鋼帯材を、1つ又は複数の鋳造機において、圧延ラインの上流で相互に接合されるスラブが製造されることによって、セミエンドレス圧延運転又はエンドレス圧延運転で製造することが知られている。これについては、前掲の文献において、スラブ接合装置が記載されている。このスラブ接合装置によって、相前後して配置された2つのスラブを相互に接合できる。ここでは、これは、接合されるべき2つのスラブが互いに対して振動し、その際に相互に押し付けられる摩擦溶接工程によって行われる。
【0003】
ここで及びこれ以降スラブについて述べるときには、スラブとは、原則的に、連続的に作動する圧延プロセスで圧延できるように、適切に相互に接合される粗圧延帯材とも解される。
【0004】
多くの用途では、相変態の開始を上回る高い最終圧延温度(つまり圧延ラインから帯材が退出するときの温度)の達成が、特に重要である。特に連続鋳造圧延(ESP法)などの一般的な方法手順では、そのような高温を達成できないときがあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/140886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の基礎をなす課題は、冒頭で述べた形態の方法を改良して、一方では均一性、再現性及び安定性の向上などの既知の利点を有するエンドレス圧延プロセスを可能にし、他方ではバッチモードで薄い帯材を圧延するときと、組み合わされたエンドレス鋳造圧延プロセスで各々の帯材を圧延するときに達成できる最終圧延温度よりも高い最終圧延温度が得られるので、所望される固有の製品特性を確実にかつ再現可能に調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決手段は、本発明によれば、スラブは、スラブの幅に関して少なくとも630mm×m/分の体積流量で圧延ラインに供給され、スラブは、少なくとも855℃の温度で圧延ラインから離反することを特徴とする。
【0008】
好ましくは、スラブは、スラブの幅に関して少なくとも690mm×m/分、好ましくは少なくとも710mm×m/分の体積流量で圧延ラインに供給される。
【0009】
したがって、体積流量は、圧延速度(m/分)とスラブの厚さ(mm)との積から算出される。したがって、求められた値は、スラブの幅に関連する体積流量を生成し、これに材料の密度を乗算すると、圧延ラインを通る対応する質量流量が得られる。
【0010】
スラブは、好適には、少なくとも860℃の温度で圧延ラインから離反する。
【0011】
圧延ラインにおいて、圧延は、好適には連続プロセスで行われる。
【0012】
特に好適なプロセスは、部分スラブが少なくとも2つの鋳造機で連続鋳造されることを想定している。この場合、部分スラブは、好適には、鋳造機の下流でかつスラブ接合装置の上流で、炉を通して、特にトンネル炉を通してガイドされ、加温される。その際、部分スラブは、炉内で、好適には1000℃から1250℃の温度へ加温される。炉内の温度を適切に選択することによって、スラブが圧延ラインに導入される質量流量と相俟って、帯材の最終温度に(圧延ラインの終端でに影響を及ぼせる。
【0013】
特別な使用状況において、方法の、以下の好適な実施形態が得られる。
【0014】
スラブが、軟鋼からなる場合には、スラブは、スラブの幅に関して630mm×m/分から860mm×m/分の体積流量で圧延ラインに供給され、その際、スラブは、少なくとも860℃の温度で圧延ラインから離反する。
【0015】
スラブが構造用鋼からなる場合には、スラブは、スラブの幅に関して690mm×m/分から950mm×m/分の体積流量で圧延ラインに供給され、その際、スラブは、少なくとも860℃の温度で圧延ラインから離反する。
【0016】
スラブが炭素鋼からなる場合には、スラブは、スラブの幅に関して710mm×m/分から970mm×m/分の体積流量で圧延ラインに供給され、その際、スラブは、少なくとも860℃の温度で圧延ラインから離反する。
【0017】
提案される方法の特に好適な形態は、少なくとも2つの鋳造機から提供される部分スラブを、圧延ラインに供給される体積流量よりも小さい総積算体積流量で提供し、その際、少なくとも2つの鋳造機とスラブ接続装置の間に(かつ特に炉内に)位置する、部分スラブのバッファを用いることによって、圧延を少なくとも15分の期間にわたって継続的に実行することを特徴とする。この場合、期間は、好ましくはさらに少なくとも30分、特に好適には少なくとも45分である。
【0018】
したがって、この方法手順で、圧延の開始前に、圧延ラインにおいて、鋳造機の適切な運転によって、部分スラブのバッファがもたらされるので、この場合、全ての鋳造機から到来する体積流量の合計よりも大きな、スラブ材料の体積流量で圧延を行える。
【0019】
この場合、部分スラブのバッファは、好適には、少なくとも1つの炉(トンネル炉)内に位置する。
【0020】
そのためのロジスティクスは、好適には、電子制御される。したがって、部分スラブの提供が、好ましくはプロセスモデルが数値シミュレーションされるプロセスモデルから決定にかかわる情報が供給される制御システムによって指示されることが想定されている。
【0021】
圧延ラインと圧延方向でこれに後続するコイラとの間に、少なくとも1つの切断装置、特にせん断装置が配置されてよく、この場合、少なくとも1つの切断装置によって、圧延された帯材の、不良品である又は所定の仕様を満たさない材料を含む部分が切り落とされる。前述の切断装置(せん断装置)によって、コイラの上流で切断を行え、不良品を最小限にできる又は仕様を満たさない材料を除去できる。
【0022】
したがって、本提案によれば、エンドレス圧延法が可能となり、エンドレス圧延法では、スラブ接合装置が使用され、その際、提案された手順によって、仕上がった帯材で均一の製品特性を得ることができる。
【0023】
この場合、一方では既知の利点(均一性、再現性及び安定性の向上など)を有するエンドレス圧延プロセスを保証することが可能になり、他方では測定及びこれに続く演算、開ループ制御又は閉ループ制御によって、プロセス外乱に反応することが可能になるので、的確なプロセス変更によって、進行するプロセスステップの間の差分にもかかわらず、所望される特定の製品特性を確実にかつ再現可能に調整する又はそれ以上にすることができる。
【0024】
提案されたプロセスの有利な形態として、圧延ラインに供給されるスラブ体積流量が、鋳造機から離反する体積流量に依存せずに、所定の期間にわたって選択される運転方式が考えられる。この場合、体積流量の適切な値又は最適な値を決定でき、これは、特に(演算)モデルの使用によって行える。
【0025】
スラブ接合装置として、前掲の国際公開第2017/140886号に記載されているように、特に摩擦溶接装置が使用される。
【0026】
したがって、従来慣用の熱間帯材ライン又は鋳造圧延設備におけるスラブ接合装置によって、粗圧延帯材又は薄スラブを接合し、これに続いて一緒に圧延可能である。
【0027】
極めて有利には、提案された方法を使用すると、十分に高い最終圧延温度を維持できるので、帯材の製品特性を改善できる。
【0028】
図面には、本発明の一実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】金属帯を製造する設備を模式的に示し、2つのトンネル炉の下流にスラブ接合装置が配置されていて、その下流に圧延ラインが配置されている。
図2】スラブ接合装置内に位置し、スラブ接合装置内で相互に接合される2つの部分スラブを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1には、鋼帯材を生産できる設備が模式的に示されている。
【0031】
まず、2つの鋳造機及びにおいて、所定の長さを有する(部分)スラブ3a又は3b(図2参照)が製造される。スラブは、それぞれトンネル炉7又は8に至り、トンネル炉7、8内で、スラブは、所定の温度に保たれる。圧延方向Rで下流に、幾つかの圧延スタンド2を有する圧延ライン1が設置されている。トンネル炉7、8の端部と圧延ライン2との間に、スラブ接合装置4が位置する。スラブ接合装置4は、トンネル炉7、8から到来する(部分)スラブ3a、3bを相互に接合し、(部分)スラブ3a、3bを圧延ライン1に導くために用いられるので、圧延ラインにおいて連続圧延プロセスを行える。連続圧延プロセスは、一般的に、プロセス安定性と製造されるべき帯材の品質とに関して有利である。
【0032】
図2には、どのようにして圧延方向Rで前方に位置する部分スラブ3aの、後方に位置する端部が、圧延方向Rで後方に位置する部分スラブ3bの、前方に位置する端部に、スラブ接合装置4によって接合されるのか描画されている。そのために、接合されるべき端部に予め所定のステップが施されることについては、詳細には描画されていない。
【0033】
したがって、従来慣用の熱間帯材ライン又は鋳造圧延設備において、スラブ接合装置4を使用して、粗圧延帯材又は特に薄スラブを接合し、これに続いて一緒に圧延できる。
【0034】
一般的に、スラブ接合装置を使用するとき、以下の3つの生産モードが考えられる。
【0035】
まず、バッチモードで運転できる(単一スラブ圧延、1つ又は複数の鋳造機から到来する単一のスラブ)。
【0036】
さらに、セミエンドレスモードで運転できる(複数のスラブ圧延、1つ又は複数の鋳造機から到来する複数のスラブ)。
【0037】
最後に、エンドレス圧延モードで運転できる(2つ以上の鋳造機から到来する溶接されたスラブ)。
【0038】
存在するストランドの合計速度と圧延速度との比に関係なく、溶接されたスラブを圧延するときは、エンドレス圧延モードと述べられている。溶接された帯材又はスラブの数に応じて、エンドレスシーケンスの長さだけが変化する。これが長いほど、合計鋳造速度と圧延速度との商の値がより「1」に近づく。
【0039】
ここでは、質量流量条件を用いることができる。
【0040】
【数1】
ここで、
ENDLOS:エンドレス圧延時の1つのシーケンスで可能なスラブの数
MAX:トンネル炉におけるスラブの最大数(エンドレス圧延シーケンスの開始)
MIN:トンネル炉におけるスラブの最小数(エンドレス圧延シーケンスの終了)
:鋳造機の数
:鋳造速度
:圧延速度。
【0041】
したがって、エンドレス鋳造圧延構想と区別して、エンドレス圧延では、鋳造と圧延とのプロセス段階の間に固定の連結部が存在しない。したがって、それを越えるエンドレスプロセス(エンドレスプロセスでは圧延された帯材と鋳造機のスラブとが接合されている)が存在しなくても、エンドレス圧延を実施できる。
【0042】
したがって、鋳造圧延設備全体の観点からは、2つの運転モードしか、つまりバッチモード及びセミエンドレスモードだけしか使用されない。
【0043】
ただし、CSP設備から知られているようなセミエンドレスモードとは異なり、エンドレス圧延では、スラブの溶接後に、生産量の減少が生じない。というのも、両方の鋳造ストランドが、高い又は不変の高い鋳造速度で運転できるからである。
【0044】
相変態の開始を上回る高い最終圧延温度(圧延ライン1から退出するとき)は、通常、固有の生産特性を達成するための前提条件である。
【0045】
さらに、相変態を上回る高い最終圧延温度は、多くの場合、後続のプロセスステップにおける簡単な加工性だけでなく固有の製品特性を達成するのにも必要な前提条件である。そのための例は、熱間帯材のスキンパスの際の材料特性及び熱間帯材の亜鉛めっきの際の材料特性である。
【0046】
同様に、最終圧延温度が高いと、これに続く加工ステップにおいてプロセス安定性がより高くなり、そしてその後の製品品質がより高くなる。というのも、高温の範囲での不可避の温度変動(つまり変態温度に対する十分に大きな間隔)が圧延された帯材の特性にそれほど強く影響を及ぼさないからである。成形輪郭及び平坦度などの材料特性値は、熱間圧延では、相変態の範囲における低い最終圧延温度での材料特性値よりも強く変動し、変動は、冷却及び巻上げなどの後続の方法ステップで増大し得、最終的に、冷間圧延で、プロセスが不安定になり、所望されない特性変動及び特性の悪化につながる。特に散発的で非対称な作用は、制御システム及び調整要素によってもはや排除又は補償できない。このことは、調整要素が既にその臨界範囲で運転されるとより顕著である。焼きなまし及び亜鉛めっきのときの状況に同じことがいえる。
【0047】
最後に、熱間圧延時の一定のプロセス条件と、これによる熱間圧延後の一定の特性とによって、原則的に、これに続く加工ステップにおけるプロセス安定性が向上し、その後の製品品質がより高くなる。このことは、特にジオメトリ、表面品質及び材料特性に該当する。
【0048】
スラブ接合装置4を用いるエンドレス圧延では、バッチモードでの従来慣用の圧延のときと同様に高い最終圧延温度を達成でき、さらに比較的薄い帯材を圧延するとき、より高い最終圧延温度を達成できる。というのも、より高い圧延速度を適用できるからである。必要に応じて、同様に、エンドレス鋳造圧延設備のときよりも高い最終圧延温度を達成できる。帯材の付加的な誘導ヒータは、不要である。
【0049】
達成される圧延温度が十分に高く、特に相変態温度を上回ることと、その結果としてプロセス安定性と製品品質とを保証できることについては、とりわけ圧延ライン1を通る質量流量又は体積流量が関係する。
【0050】
体積流量又は体積流については、ときには、質量流量又は質量流との用語を用いることもある(要するに通常スラブの幅に関する時間あたりのスラブの体積に材料の密度を乗算しない)。質量流量は、ここで提案された、複数の鋳造機を用いるエンドレス圧延の方法では、通常、単一の鋳造ストランドしか用いないエンドレス鋳造圧延プロセスのときよりも高い。
【0051】
スラブ3が、スラブ1の幅に関して少なくとも630mm×m/分の体積流量で圧延ライン1に供給されることが重要である。この場合、スラブ3は、少なくとも855℃の温度Tで圧延ライン1から離反するべきである。
【0052】
このプロセスは、体積流量条件又は質量流量条件
MFENDLOS=i*V*d*b
に基づく。
ここで
MFENDLOS:エンドレス鋳造圧延又はエンドレス圧延での1つのシーケンスにおける体積流量(質量流量)
:鋳造機5、6の数
:鋳造速度(単位:m/分)
d:スラブ厚(単位:mm)
b:スラブ幅(単位:mm)
場合によってはここでも通常1mの標準幅。
【0053】
同一の又は規格化されたスラブ幅の場合、体積流量(質量流量)の観察は、鋳造速度とスラブ厚との値に減らされ、付加的に、同一の鋳造速度が仮定され(実際には、鋳造速度は、比較的大きなスラブ厚に基づいて、エンドレス鋳造圧延のとき、通常、エンドレス圧延のときよりも低い)、したがって、エンドレス鋳造圧延のときの体積流量(質量流量)とエンドレス圧延のときの体積流量(質量流量)とは、スラブ厚に基づいて比較可能である。エンドレス鋳造圧延についての典型的な値は、90mmから110mmであり、エンドレス圧延については65mmから75mmである。
【0054】
この場合、2つの鋳造機では、エンドレス圧延のとき、方法に起因して1つの鋳造ストランドから行わなければならないエンドレス鋳造圧延に対して約1/3だけより高い質量流量が生じる。
【0055】
さらに、提案された方法手順では、鋳造と圧延とのプロセスを意図的に分離して、次いで、圧延速度を、要求に、つまり固有の製品特性に対応するように適合させる又はこれを高めることによって、エンドレス鋳造圧延のときに鋳造速度によって決定される最終圧延温度を高めることが可能である。
【0056】
この場合、エンドレス圧延は、圧延速度が鋳造機の鋳造速度の合計より高くても可能である。エンドレス圧延は、例えば特定の寸法の圧延及び総じて高強度鋼種の圧延を行うときに合理的又は必要であり得る。この場合、各々のエンドレスシーケンスをそれぞれ適切な数の対応する帯材で構成できるように、この目的に適した一連の生産のインテリジェント制御(つまり材料、厚さ、幅、生産計画及び炉ロジスティクスなど)をそのためのカスタムモデルを用いて使用しなければならない。圧延速度、低下量、圧延力などのプロセス条件と最終製品特性との関係について、その中にアルゴリズムの形態で含まれる知識は、鋳造圧延の不連続的な全体プロセスにおけるエンドレス圧延の範囲での仕様に応じた製品を製造するための前提条件である。
【0057】
以下、2つの表で、本発明による方法手順の結果(第1の表)及び背景技術による方法手順の結果(第2の表)が表されている。表は、選択された3つの重要な鋼種群の代表例について、そしてエンドレス法の分野では一般的な最終厚について、製品特性を調整するために目標とされる最終圧延温度が、エンドレス圧延の方法では達成されるが、これに対してエンドレス鋳造圧延の方法では達成されないことを示している。その原因は、鋳造機のそれぞれ異なる能力と、特にエンドレス鋳造圧延の完全連続プロセスに対してエンドレス圧延の半分の不連続プロセスとに基づく、それぞれ異なる体積流量(質量流量)である。
【0058】
以下の表は、一般的な最終厚を用いて本発明によるエンドレス圧延の方法を使用するとき、選択された鋼群について1mのスラブ幅に関する最終圧延温度(目標及び実際)及び体積流量(質量流量)を示している。
【0059】
【表1】
【0060】
一方、以下の表は、一般的な最終厚を用いて既知のエンドレス鋳造圧延を使用するとき、選択された鋼群について1mのスラブ幅に関する最終圧延温度(目標及び実際)及び体積流量(質量流量)を示している。
【0061】
【表2】
【0062】
既知の手順のときの体積流量は極めて小さく、最終圧延温度が有利な高い値に達しないことも看取される。
【0063】
コイラの上流における切断手段(せん断装置)は、圧延ライン1においてエンドレス圧延の下流で、仕上がった帯材を個々の部分に分け、そこで再び不連続プロセスを導入する。切断手段は、溶接プロセスの結果として要求される特性からの最大の差分を有する帯材の領域が、コイルの、後で除去されて使用されない部分に、すなわち通常は外側の巻条に位置するように、使用され得る。さらに、その都度の要件を満たさない、又は後続プロセスにおいて合理的に使用できない材料は、切断手段によって除去でき、また更に上流に配置されたせん断装置によっても除去できる。
【0064】
鋳造と圧延とは、本構想では固く連結されていないので、要求される製品特性を達成するために必要であれば、圧延速度を増加又は低下してよい。エンドレス圧延は、圧延速度が合計鋳造速度より高い又は低いときにも可能である。
【0065】
専門用語について、用いられているスラブという用語について、さらに、次のことに留意すべきである。この用語は、ここでは一般的な理解でよい。
【0066】
「スラブ」という用語は、粗圧延スタンドの上流の材料について用いられることが多く、その下流では、この材料は、粗圧延帯材である。この場合、仕上圧延ライン内で及び仕上圧延ラインの下流では、帯材と称される。CSP設備において、薄スラブから帯材が形成される。本発明の場合、主に、仕上圧延ラインの上流の材料を意味している。もちろん、本発明によれば、本来の意味でスラブと述べてもよい。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下を含む。
1.
金属帯材を製造する方法であって、
圧延ライン(1)において、幾つかの圧延スタンド(2)を用いて、帯材をスラブ(3)から圧延し、その際、個々の部分スラブ(3a、3b)から圧延されるべきスラブ(3)を繋ぎ合わせ、個々の部分スラブ(3a、3b)の繋ぎ合わせを、スラブ接合装置(4)において行う、方法において、
スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して少なくとも630mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給し、スラブ(3)は、少なくとも855℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反することを特徴とする、方法。
2.
スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して少なくとも690mm×m/分、好ましくは少なくとも710mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給することを特徴とする、上記1に記載の方法。
3.
スラブ(3)が、少なくとも860℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反することを特徴とする、上記1又は2に記載の方法。
4.
圧延ライン(1)において、圧延を、連続プロセスで行うことを特徴とする、上記1から3のいずれか一つに記載の方法。
5.
部分スラブ(3a、3b)を、少なくとも2つの鋳造機(5、6)で連続鋳造することを特徴とする、上記1から4のいずれか一つに記載の方法。
6.
部分スラブ(3a、3b)を、鋳造機(5、6)の下流でかつスラブ接合装置(4)の上流で、炉(7、8)を通して、特にトンネル炉を通してガイドし、加温することを特徴とする、上記5に記載の方法。
7.
部分スラブ(3a、3b)を炉(7、8)内で1000℃から1250℃の温度へ加温することを特徴とする、上記6に記載の方法。
8.
スラブ(3)は、軟鋼からなり、スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して630mm×m/分から860mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給し、スラブ(3)は、少なくとも860℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反することを特徴とする、上記1から7のいずれか一つに記載の方法。
9.
スラブ(3)は、構造用鋼からなり、スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して690mm×m/分から950mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給し、スラブ(3)は、少なくとも860℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反することを特徴とする、上記1から7のいずれか一つに記載の方法。
10.
スラブ(3)は、炭素鋼からなり、スラブ(3)を、スラブ(3)の幅に関して710mm×m/分から970mm×m/分の体積流量で圧延ライン(1)に供給し、スラブ(3)は、少なくとも860℃の温度(T)で圧延ライン(1)から離反することを特徴とする、上記1から7のいずれか一つに記載の方法。
11.
少なくとも2つの鋳造機(5、6)によって提供される部分スラブ(3a、3b)を、圧延ライン(1)に供給される体積流量よりも小さい総積算体積流量で提供し、その際、少なくとも2つの鋳造機(5、6)とスラブ接続装置(4)の間に位置する、部分スラブ(3a、3b)のバッファを用いることによって、圧延を少なくとも15分の期間にわたって継続的に実行することを特徴とする、上記5から10のいずれか一つに記載の方法。
12.
期間は、少なくとも30分、好ましくは少なくとも45分であることを特徴とする、上記11に記載の方法。
13.
部分スラブ(3a、3b)のバッファは、少なくとも1つの炉(7、8)内に位置することを特徴とする、上記11又は12に記載の方法。
14.
部分スラブ(3a、3b)の提供を、好ましくはプロセスモデルが数値的にシミュレーションされる制御システムによって指示することを特徴とする、上記11から13のいずれか一つに記載の方法。
【符号の説明】
【0067】
1 圧延ライン
2 圧延スタンド
3 スラブ又は粗圧延帯材
3a 部分スラブ
3b 部分スラブ
4 スラブ接合装置
5 鋳造機
6 鋳造機
7 炉(トンネル炉)
8 炉(トンネル炉)
R 圧延方向
図1
図2