(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】スピナレットを使用したセルロースアセテートトウを製造する方法
(51)【国際特許分類】
D01F 2/28 20060101AFI20231226BHJP
D01D 4/04 20060101ALI20231226BHJP
A24D 3/02 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
D01F2/28 Z
D01D4/04 Z
A24D3/02
(21)【出願番号】P 2022115235
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2017109863の分割
【原出願日】2017-06-02
【審査請求日】2022-08-18
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】オースティン・ピー・バンクス
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エム・バンドレン
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特許第5100442(JP,B2)
【文献】特開2011-122955(JP,A)
【文献】特許第5841671(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/194007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
D01F 2/00 - 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアセテートトウ・フィラメントの断面の均一性を改善する方法であって、
セルロースアセテートドープを複数のスピナレットを通過させて紡糸し、フィラメントを形成し、
該フィラメントを束ねてトウを形成し、
該トウをクリンプし、
該トウを乾燥させ、
該トウから複数のフィルターロッドを形成し、
トウの重量(g数/100ロッド)により該ロッドのイールドを測定し、そして
該複数のスピナレットのうちの少なくとも1つから沈着及び/又は閉塞を除去して、イールドを目標イールドから±20mmH
2O以内に維持すること、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、該断面が、Y字状、R字状、X字状、K字状、C字状、O字状、I字状、円形、鋸歯状、楕円、多角形、及びドッグボーン形状からなる群から選択される方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、該複数のスピナレットのうちの少なくとも1つから沈着及び/又は閉塞を除去することが、
a)該スピナレットをアセトン中に浸漬してアセテートを取り除き、
b)該スピナレットを苛性洗浄液及び酸洗浄液で洗浄して有機及び無機の沈着物を取り除き、そして
c)該スピナレットを水又はアセトンで洗浄して残渣を取り除くこと、
を含む方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、浸漬ステップにおけるアセトンの温度が、20~55℃である方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法であって、該スピナレットが、5~60分間浸漬される方法。
【請求項6】
請求項3に記載の方法であって、該酸洗浄液における酸の温度が、20~60℃である方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法であって、該スピナレットが、酸洗浄液中で5~90分間洗浄される方法。
【請求項8】
請求項3に記載の方法であって、該苛性溶液の温度が、20~70℃である方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法であって、該スピナレットが、該苛性溶液中で5~180分間洗浄される方法。
【請求項10】
請求項3に記載の方法であって、90%を上回る沈着及び/又は閉塞が、該スピナレットから除去される方法。
【請求項11】
請求項3に記載の方法であって、該スピナレットを、沈着及び/又は閉塞の除去について目視検査することを更に含む方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、該目視検査が顕微鏡による方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、該目視検査でライトプロジェクターを用いる方法。
【請求項14】
請求項3に記載の方法であって、ステップa)、b)、及び/又はc)の後に、溶媒に基づくジェットクリーニングステップを更に含む方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
該セルロースアセテートドープが、セルロースアセテートを溶媒に溶解して、
該セルロースアセテートドープを形成することによって形成され、
該
フィラメントが、10,000~100,000の総デニール、及び1~15の1フィラメント当たりのデニールを
有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
[0001]本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2016年6月2日に出願した米国仮特許出願第62/344,479号の優先権を主張するものである。
【0002】
[0002]本発明は、スピナレットを使用したセルロースアセテートトウを製造する方法に一般的に関する。特に、本発明は、セルロースアセテートドープを少なくとも1つのスピナレットを通過させて紡糸することにより、デニール、1フィラメント当たりのデニール、ロッド間の変動係数、及び/又はイールドが制御されたセルロースアセテートトウを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]セルロースアセテートファイバーは、タバコフィルターの製造で一般的に使用される。ファイバーを形成するためには、セルロースアセテートを溶媒に溶解してセルロースアセテートドープを形成する。ドープは、次にフィラメントを形成するためにスピナレットを通じて紡糸され得るが、該フィラメントは、次に束ねられてトウを形成する。トウは、フィルターロッド及び最終的にタバコフィルターを形成するために、典型的には、ベールにされ、解ベールされ、次にいくつかの下流処理ステップに供される。タバコフィルターの製造全体を通じて、フィルターにおけるトウファイバー重量に対するフィルターロッド圧力降下について、定義されたイールドを維持する要件が存在する。1フィラメント当たりのデニール(9000メートル当たりのグラム表示での質量として定義されるファイバーの線質量密度の測定単位)、及び総デニール(糸のデニール)を含む、非常に多くのパラメーターがこの定義されたイールドに影響を及ぼす。また、フィラメントの断面も、ロッドの圧力降下に影響を及ぼす可能性がある。したがって、1フィラメント当たりのデニール、総デニール、及びフィラメントの断面が均一であることが望ましい。
【0004】
[0004]米国特許公開第2005/0126582号は、クリンプされたエンドレスセルロースアセテートフィラメントから製造されるフィルタートウについて開示し、それにより、フィラメントは、少なくとも600本のフィラメントからなる同一のフィラメントタイターを有する少なくとも2つの連結したファイバーの束を形成する。フィラメントタイターは、束毎に少なくとも1dtex異なる。更に、米国特許公開第2005/0126582号は、クリンプ比が40%を超えるフィルタートウについて開示するが、前記フィラメントは、単位フィラメント長さ当たり少なくとも22個のクリンプターンを含む。
【0005】
[0005]中国特許出願第104651959号は、ジアセテートファイバートウを生成するためのスピナレットプレートについて開示する。スピナレットプレートは、スピナレットプレート本体を含む。サイズが同一の複数の正三角形スピナレット孔が、スピナレットプレート本体内に形成される。すべてのスピナレット孔の重心は、同一平面内の複数の同心円の円周上に配置される。各円周上の2つの隣接したスピナレット孔それぞれについて、その重心間の距離は、スピナレット孔の円周距離として識別され、同一円周上にあるスピナレット孔の円周距離は等しく、また2つの隣接した円周の間の距離は、内側から外側に向かって漸増する。スピナレット孔のサイズ及び分布距離は、製造を必要とするジアセテートファイバートウのサイズに基づき決定される。スピナレットプレートは、構造が単純であり、またレイアウト上合理的であり、押し出されるジアセテートファイバートウは、「Y字」状に近く、また排煙のフィルター処理性能が向上する。
【0006】
[0006]その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許公開第2014/0026911号は、トリアークフィラメントを製造するのに利用可能であるトリアーク孔を有するスピナレットについて開示する。いくつかの事例では、トリアーク孔は、3つの突起を備えたY字形を有し、各突起は、アークの末端から隣接するアークの連結ポイントに向かって漸減するアークを、突起の端部に有するが、トリアークフィラメントは、中央部分が膨らんだ又は湾曲した先端を備えた、一般的にY字形の断面を有する。更に、トリアークフィラメントは、フィルター、粒子状添加剤を含むフィルター、及び喫煙具フィルターを含む、但しこれらに限定されない複数の用途で有用であり得る。
【0007】
[0007]米国特許第5,415,697号は、溶媒紡糸セルロースファイバーの製造において、ドープをクリーニングし、使用されるスピナレットプレートのジェット孔からドープを閉塞解除する方法及び装置について開示する。該方法は、スピナレットプレートをドープ用の溶媒中にソーキングするステップ、ジェット孔を通じて溶媒を第1の方向でフラッシュするステップ、ジェット孔を通じて溶媒を逆方向にフラッシュするステップを含む。溶媒は、超音波ウォーターバス中で洗い落とされる。スピナレットプレートは、次に水蒸気クリーニングされ、そして次にセルロースの残滓をスピナレットプレートから除去するクリーニング剤中で超音波クリーニングされる。
【0008】
[0008]米国特許第5,011,541号は、汚染されたスピナレット部品のクリーニングについて開示する。汚染されたスピナレット組み立て部品は、汚染部分に高圧ジェット水流を叩きつけることによりクリーニングされる。ウォータージェットクリーニング処理は、スパンデックスフィラメントの乾式紡糸で使用したときに汚染したスピナレットをクリーニングするのに特に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許公開第2005/0126582号
【文献】中国特許出願第104651959号
【文献】米国特許公開第2014/0026911号
【文献】米国特許第5,415,697号
【文献】米国特許第5,011,541号
【文献】米国特許第2,740,775号
【文献】米国特許公開第2013/0096297号
【文献】米国特許公開第2013/0192613号
【文献】米国特許第7,585,442号
【文献】米国特許第7,610,852号
【文献】米国特許公開第2012/0302416号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0009]スピナレットのクリーニングに対する別の必要性が認識されているのと同様に、フィラメント及びトウの均一性が望まれることはすでに認識されているが、スピナレットの沈着及び閉塞により影響を受けるフィラメントの均一性に対処する方法の必要性が存在する。特に、方法は、スピナレット(複数可)を通過させてフィラメントを形成する中に、フィラメントの均一性を向上させるステップを含むのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0010]1つの実施形態では、本発明は、複数のセルロースアセテートフィルターロッドにおけるロッド間の変動係数を低減する方法であって、セルロースアセテートドープを少なくとも2つのスピナレットを通過させて紡糸し、フィラメントを形成し、該フィラメン
トを束ねてトウを形成し、該トウをクリンプし、該トウを乾燥させ、該トウから複数のフィルターロッドを形成し、該ロッド間の変動係数を測定し、該少なくとも2つのスピナレット、該フィラメントの総デニール、又は1フィラメント当たりのデニール、のうちの少なくとも1つを調整して、該ロッド間の変動係数を5未満に低減させることを含む方法に向けられている。いくつかの態様では、スピナレットの数が減少させる一方、その他の態様では、スピナレットの数を増加させる。いくつかの態様では、フィラメントの総デニールを減少させ、及び1フィラメント当たりのデニールを増加させる一方、その他の態様では、フィラメントの総デニールを増加させ、及び1フィラメント当たりのデニールを減少させる。該方法は、ロッド間の変動係数が5以上のとき、少なくとも2つのスピナレットのうちの少なくとも1つを方法から除去するステップと、少なくとも1つのスピナレットをクリーニングするステップとを更に含み得る。
【0012】
[0011]別の態様では、本発明は、セルロースアセテートトウ・フィラメントの断面の均一性を改善する方法であって、セルロースアセテートドープを複数のスピナレットを通過させて紡糸し、フィラメントを形成し、該フィラメントを束ねてトウを形成し、該トウをクリンプし、該トウを乾燥させ、該トウから複数のフィルターロッドを形成し、トウの重量(g数/100ロッド)によりロッドのイールドを測定し、そして、該複数のスピナレットのうちの少なくとも1つから沈着及び閉塞を除去して、ロッドのイールドを目標とするロッドのイールドから±20mmH2O以内に維持することを含む方法に向けられている。断面は、Y字状、R字状、X字状、K字状、C字状、O字状、I字状、円形、鋸歯状、楕円、多角形、及びドッグボーン形状からなる群から選択され得る。
【0013】
[0012]なおも別の実施形態では、本発明は、セルロースアセテートトウ・スピナレットから沈着及び/又は閉塞を除去する方法であって、a)該スピナレットをアセトン中に浸漬してアセテートを取り除き、b)該スピナレットを苛性洗浄液及び酸洗浄液中で洗浄して有機及び無機の沈着物を取り除き、c)該スピナレットを水又はアセトンで洗浄して残渣を取り除くことを含む方法に向けられている。浸漬ステップにおけるアセトンの温度は、20~55℃の範囲であり得るが、またスピナレットは、5~60分間浸漬され得る。酸洗浄液における酸の温度は、20~60℃の範囲であり得るが、またスピナレットは、酸洗浄液中で5~90分間洗浄され得る。苛性溶液の温度は、20~70℃の範囲であり得るが、またスピナレットは、苛性溶液内で5~180分間洗浄され得る。いくつかの態様では、90%を上回る沈着及び/又は閉塞が、スピナレットから除去される。該方法は、クリーニング後に、スピナレットを沈着及び/又は閉塞について目視検査するステップを更に含み得る。目視検査は、顕微鏡下及び/又はライトプロジェクターにより実施され得る。該方法は、溶媒に基づくジェットクリーニングステップを更に含み得る。ジェットクリーニングステップは、ステップa)、b)、及び/又はc)の後に実施され得る。
【0014】
[0013]なおも別の実施形態では、本発明は、セルロースアセテートトウ・ベールを製造する方法であって、セルロースアセテートを溶媒に溶解して、セルロースアセテートドープを形成し、該セルロースアセテートドープを少なくとも1つのスピナレットを通過させて紡糸し、10,000~100,000の総デニール、及び1~15の1フィラメント当たりのデニールを有するフィラメントを形成し、該フィラメントを束ねてトウを形成し、該トウをクリンプし、該トウを乾燥させ、そして、該トウをベールにパッケージングすることを含む方法であり、総デニールが3%未満だけ変動し、1フィラメント当たりのデニールが10%未満だけ変動し、そして、デニールインデックスが2.5:1未満である方法に向けられている。
【0015】
[0014]本発明は、添付の非限定的な図を参照すればよりよい理解が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】[0015]
図1Aは、本発明の実施形態に基づく代表的なスピナレットを示す図である。
【
図1B】[0016]
図1Bは、部分的に閉塞及び/又は沈着した、本発明の実施形態に基づくスピナレットを示すグラフである。
【
図2】[0017]本発明の実施形態に基づき、目標イールドラインと比較したときのロッドのイールドを示すグラフである。
【
図3】[0018]本発明の実施形態に基づき、時間が経過したときの総デニール及び1フィラメント当たりのデニールの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
I.緒言
[0019]本発明は、セルロースアセテートドープから形成されたフィラメントの均一性を改善することに関する。この均一性は、フィラメントの断面を均一にすること、及び/又は1フィラメント当たりのデニールに対する総デニールの所定の比を有することにより定量化され得る。本明細書で説明したように、フィラメントが均一であれば、その結果、最終製品、例えばタバコフィルター等が改善する。例えば、フィラメントが均一であれば、その結果、タバコフィルターにおけるロッド間の変動係数は低減する。フィラメントの形成に用いられる1つ又は複数のスピナレットをモニタリング及び維持すれば、フィラメントの形成中に、この均一性を実現することが可能となる。
【0018】
[0020]したがって、いくつかの態様では、本発明は、複数のセルロースアセテートフィルターロッドにおけるロッド間の変動係数を低減することに関する。その方法は、セルロースアセテートドープを少なくとも1つのスピナレットを通過させて紡糸し、フィラメントを形成し、該フィラメントを束ねてトウを形成し、該トウをクリンプし、該トウを乾燥させ、該トウから複数のフィルターロッドを形成し、該フィルターロッドのロッド間の変動係数を測定し、そして、スピナレットの数、該フィラメントの総デニール、及び/又は1フィラメント当たりのデニール、のうちの少なくとも1つを調整して、該ロッド間の変動を5未満に低減することを含み得る。
【0019】
[0021]更なる態様では、本発明は、セルロースアセテートトウ・フィラメントの断面の均一性を改善する方法に向けられている。該方法は、セルロースアセテートドープを少なくとも1つのスピナレットを通過させて紡糸し、フィラメントを形成し、該フィラメントを束ねてトウを形成し、該トウをクリンプし、該トウを乾燥させ、該トウからフィルターロッドを形成し、トウの重量(g数/100ロッド)によりロッドのイールドを測定し、そして、該複数のスピナレットのうちの少なくとも1つから沈着及び/又は閉塞を除去して、ロッドのイールドを目標ロッドイールドから±20mmH2O以内に維持することを含む。
【0020】
[0022]また、本発明は、セルロースアセテートトウ・スピナレットから沈着及び/又は閉塞を除去する方法に向けられている。該方法は、スピナレットを、アセトンに浸漬してアセテートを取り除き、該スピナレットを、酸洗浄液中で洗浄して無機の沈着物を取り除き、該スピナレットを苛性溶液内で洗浄して有機物質を取り除き、そして、該スピナレットを水又はアセトンで洗浄して残渣を取り除くことを含む。
【0021】
[0023]本発明は、セルロースアセテートトウ・ベールを製造する方法を更に含む。該方法は、セルロースアセテートを溶媒に溶解して、セルロースアセテートドープを形成し、該セルロースアセテートドープを少なくとも1つのスピナレットを通過させて紡糸し、10,000~100,000の総デニール、及び1~10の1フィラメント当たりのデニールを有するフィラメントを形成し、該フィラメントを束ねてトウを形成し、該トウをクリンプし、該トウを乾燥させ、そして、該トウをベールにパッケージングすることを含み、その場合、総デニールがベール全体で3%未満だけ変動し、1フィラメント当たりのデニールがベール全体で10%未満だけ変動し、そして、総デニールの変動の、1フィラメント当たりのデニールの変動に対する比として定義されるデニールインデックスが2.5:1未満である。
II.セルロースアセテートフレークの調製
[0024]セルロースアセテートフレークは、本明細書に記載するように、ドープを形成するために溶媒に溶解されるが、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第2,740,775号、及び米国特許公開第2013/0096297号で開示される方法を含む、公知の方法により調製され得る。一般的に、アセチル化セルロースは、好適な酸性触媒の存在下でセルロースをアセチル化剤と共に反応させることにより調製される。アシル化剤には、カルボン酸無水物(又は単に無水物)とカルボン酸ハロゲン化合物、特にカルボン酸塩化物(又は単に酸塩化物)の両方が含まれ得る。好適な酸塩化物として、例えば塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル等の酸塩化物を挙げることができる。好適な無水物として、例えば無水酢酸、無水プロピオン、無水酪酸、無水安息香酸等の無水物を挙げることができる。これらの無水物又はその他のアシル化剤の混合物も、異なるアシル基をセルロースに導入するために利用可能である。混合された無水物、例えば酢酸プロピオン酸無水物、酢酸酪酸無水物等も、いくつかの実施形態において、この目的で利用可能である。
【0022】
[0025]ほとんどの場合、いくつかの更なるヒドロキシル基置換(例えば、硫酸エステル)を伴う高DS値を有する誘導体化セルロースを生成するために、場合によっては、セルロースはアセチル化剤を用いて徹底的にアセチル化される。セルロースの徹底的アセチル化とは、セルロース内のできる限り多くのヒドロキシル基がアセチル化反応を受けるように、徹底的に実施されるアセチル化反応を意味する。セルロースアセテートがタバコフィルターで用いられるように意図されるとき、置換度は、3.0未満、好ましくは2.2~2.8又は2.4~2.6である。
【0023】
[0026]セルロースのアセチル化を促進する好適な酸性触媒は、硫酸又は硫酸と少なくとも1種のその他の酸との混合物を多くの場合含む。硫酸を含有しないその他の酸性触媒も、アセチル化反応を促進するのに同様に利用可能である。硫酸の場合、セルロース内の少なくとも一部のヒドロキシル基が、アセチル化反応中に硫酸エステルとして最初に機能化され得る。一般的に、このような硫酸エステルのほとんどは、アセチル置換の量を低減するのに用いられる制御された部分的加水分解中に開裂する。その他の酸性触媒の場合、それ自身がセルロースのヒドロキシル基と反応する可能性は一般的にかなり低い。
【0024】
[0027]アセチル化セルロースの極めて望ましい特性の1つとして、その意図された最終用途に応じて、例えばフィルム、フレーク、ファイバー(例えば、ファイバートウ)、変形不能な固体等を含む、いくつかの異なる形態に容易に処理可能であることが挙げられる。ほとんどの場合、制御された部分的加水分解から得られるアセチル化セルロースは、フレーク状の材料として析出する。
III.セルロースアセテートドープの形成
[0028]セルロースアセテートドープは、本明細書に記載する、一般的にフレーク状のセルロースアセテートを溶媒に溶解してドープ溶液を形成することにより形成される。溶媒は、水、アセトン、メチルエチルケトン、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、氷酢酸、超臨界二酸化炭素、上記のポリマーを溶解する能力を有する任意の好適な溶媒、及びその組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの態様では、溶媒は、アセトンと最大5重量%の水との組み合わせである。顔料、例えば二酸化チタン等も、ドープに添加され得る。ドープは、20~30重量%のセルロースアセテート、及び70~80重量%の溶媒を含み得る。顔料は、添加される場合、0.1~5重量%存在し得る。
【0025】
[0029]ドープは、混合を強化するために、例えば45~70℃の温度に加熱され得る。混合は、周囲圧力又は高圧力の下で実施され得る。高圧力は、混合が窒素ブランケットの下で生ずる際に利用可能である。混合時間は、3~10時間の範囲であり得る。セルロースアセテートが溶媒に溶解したら、ドープは次にフィラメントを形成するために紡糸される前にフィルター処理及び脱気される。脱気プロセスは、周囲圧力又は高圧力の下で実施され得る。高圧力は、窒素ブランケットに起因して利用可能である。フィルターのサイズは変化し得るが、下流の装置及び製品仕様書に応じて選択される。
IV.セルロースアセテートフィラメント及びトウの形成
[0030]セルロースアセテートからフィラメントを形成するために、上記のようにドープが形成される。ドープは、1つ又は複数のキャビネットを備え、各キャビネットはスピナレットを備えるスピナー内で紡糸され得る。スピナレットは、溶媒がフィラメントから蒸発する速度に影響を及ぼす孔を備える。孔の形状及び紡糸パラメーターは、選択されたサイズ、断面形状、強度、及び加工適性を有するフィラメントが形成されるように選択され得る。一般的に、孔は、直径25~75マイクロメートルのフィラメントの形成を可能にする。孔に関する様々なデザインが、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許公開第2013/0192613号に開示されている。
【0026】
[0031]スピナレットは、最高100℃の温度で作動するキャビネット内にあり得るが、溶媒を蒸発させるために、高温の蒸気により熱が供給され得る。90%を超える溶媒が紡糸工程中に蒸発し、セルロースアセテートの固体フィラメントが残る。フィラメントは、一般的に、1フィラメント当たり1~15デニールの範囲、例えば1フィラメント当たり1~12デニールであり、並びにY字状、R字状、X字状、K字状、C字状、O字状、I字状、円形、鋸歯状、楕円、多角形、及びドッグボーン形状を含む、但しこれらに限定されない断面形状を有し得る。紡糸工程中に温度を修正すること、並びにスピナー内のキャビネットの数を修正することにより、フィラメントの強度は調整可能である。例えば、フィラメントがスピナレットを最初に通過する際に、フィラメントは、容易に損傷を受ける又は破壊される可能性がある。但し、フィラメントがスピナレットから更に移動すると、フィラメントは硬化し、フィラメント強度が増し、より強くより多量の気流を継続させて、溶媒を蒸発させることが可能となる。スピナーを通過する空気の流れは、並流であっても、向流であってもよい。
【0027】
[0032]フィラメントがスピナレットを通過すると、定速ロール上に供給され、そこで更に引き伸ばされ得る。更なる紡糸技法も、湿式紡糸及び溶融紡糸を含め、本明細書に記載する乾式紡糸代わりに利用可能である。任意選択的に、潤滑剤又は仕上げ剤が、フィラメントに添加され得る。代表的な潤滑剤又は仕上げ剤として、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,585,442号で開示されているような鉱物油、乳化剤、及び水が挙げられ、但し潤滑剤又は仕上げ剤は、これらの成分に限定されない。潤滑剤又は仕上げ剤は、スプレーイング又はワイピングにより適用され得る。一般的に、潤滑剤又は仕上げ剤は、フィラメントをトウに形成する前に、フィラメントに添加される。
【0028】
[0033]フィラメントは、次にローラー上で束ねられ、トウを形成する。一般的に、トウは、10,000~100,000の範囲の総デニールであり得、8cm未満の幅を有し得る(水平方向端部から水平方向端部までを測定した場合)。いくつかの態様で、トウが束ねられると、クリンピング前又はその際中に、トウは可塑化され得る。可塑剤は、一般的に液状でトウに噴霧されるが、その他の可塑剤適用方法も利用可能である。セルロースアセテートのバインダー又は硬化剤として作用する可塑剤が選択される。非常に多くの種類の可塑剤が、2~40重量%の量で利用可能である。用いられる可塑剤の量は、可塑剤そのもの、並びに可塑化されるトウの所望の硬度に依存する。
【0029】
[0034]いくつかの好ましい実施形態では、可塑剤は水であるが、非常に多くのその他の可塑剤も利用され得る。本明細書に記載する可塑化されたセルロースアセテートと共に利用するのに好適な可塑剤として、いくつかの実施形態では、以下が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0030】
【0031】
【0032】
式1(式中、R1は、H、C1~C4のアルキル、アリール、又はC1~C4のアルキルアリールである);式2(式中、R2は、H、C1~C4のアルキル、アリール、又はC1~C4のアルキルアリールであり、R3は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、アシル、又はC1~C4のアルキルアシルである);式3(式中、R4とR6は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドであり、R5は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、アシル、又はC1~C4のアルキルアシルである);式4(式中、R7は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、アミン、又はC1~C4のアルキルアミンであり、R8とR9は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式5(式中、R10、R11、及びR12は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式6(式中、R13は、H、C1~C4のアルキル、アリール、又はC1~C4のアルキルアリールであり、R14とR16は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドであり、R15は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、アシル、又はC1~C4のアルキルアシルである);式7(式中、R17は、H又はC1~C4のアルキルであり、R18、R19、R20は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式8(式中、R21は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドであり、R22は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、又はC1~C4のアルキルアミンである);式9(式中、R23とR24は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式10(式中、R25、R26、R27、及びR28は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式11(式中、R29、R30、及びR31は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式12(式中、R32は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリールであり、R33は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、又はC1~C4のアルキルアミンであり、R34、R35、及びR36は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式12(式中、R37、R38、R39、及びR40は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);式14(式中、R41は、H、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、又はC1~C4のアルコキシであり、R42とR43は、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである);独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するトリアジン(1,2,3、1,2,4、又は1,3,5);独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するトリアゾール(1,2,3又は1,2,4);独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環状式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するピロール;独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するピペリジン;独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、OH、C1~C4のアルコキシ、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドである環式炭素又は環式窒素のそれぞれに由来するR置換基を有するピペラジン;R44とR46が、独立にH、C1~C4のアルキル、アリール、C1~C4のアルキルアリール、COOH、C1~C4のアルキルカルボキシレート、アシル、C1~C4のアルキルアシル、アミン、C1~C4のアルキルアミン、アミド、又はC1~C4のアルキルアミドであり、及びR45が、C1~C10のアルキルであるR44HN-R45-NHR46;並びにその組み合わせ。本明細書で用いる場合、「アルキル」とは、直鎖状又は分岐状(例えば、t-ブチル)及び飽和又は不飽和であり得るCとHを有する置換基を意味する。本明細書で用いる場合、「アリール」とは、フェニル、ナフチル、及びヘテロ原子を含む芳香環を含み得る芳香環を意味する。
【0033】
[0035]本明細書に記載する可塑化されたセルロースアセテートで利用するのに適する可塑剤の例として、いくつかの実施形態では、トリアセチン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルシトレート、アセチルトリメチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、トリブチル-o-アセチルシトレート、ジブチルフタレート、ジアリールフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジ-2-メトキシエチルフタレート、ジオクチルフタレート(及び異性体)、ジブチルタルタレート、エチル-o-ベンゾイルベンゾエート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、n-エチルトルエンスルホンアミド、o-クレシル-p-トルエンスルホネート、芳香族ジオール、置換された芳香族ジオール、芳香族エーテル、トリプロピオニン、トリベンゾイン、ポリカプロラクトン、グリセリン、グリセリンエステル、ジアセチン、グリセロールトリベンゾエート、グリセロールアセテートベンゾエート、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールジエステル、ジ-2-エチルヘキシルポリエチレングリコールエステル、グリセロールエステル、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコルジグリシジルエーテル、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリジノン(pyrollidinone)、プロピレンカーボネート、C1~C20のジカルボン酸エステル、ジメチルアジペート(及びその他のジアルキルエステル)、ジブチルマレート、ジオクチルマレート、レゾルシノールモノアセテート、カテコール、カテコールエステル、フェノール、エポキシ化大豆油、ひまし油、アマニ油、エポキシ化アマニ油、その他の植物油、その他の種子油、ポリエチレングリコールに基づく二官能性グリシジルエーテル、アルキルラクトン(例えば、γ-バレロラクトン)、アルキルホスフェートエステル、アリールホスフェートエステル、リン脂質、芳香物質(本明細書に記載するいくつか、例えばオイゲノール、シンナミルアルコール、樟脳、メトキシヒドロキシアセトフェノン(アセトバニロン)、バニリン、及びエチルバニリンを含む)、2-フェノキシエタノール、グリコールエーテル、グリコールエステル、グリコールエステルエーテル、ポリグリコールエーテル、ポリグリコールエステル、エチレングリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、エチレングリコールエステル(例えば、エチレングリコール二酢酸エステル)、プロピレングリコールエステル、ポリプロピレングリコールエステル、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、ナプロキセン、イミダゾール、トリエタノールアミン、安息香酸、ベンジルベンゾエート、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、プロピル-4-ヒドロキシベンゾエート、メチル-4-ヒドロキシベンゾエート、エチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ベンジル-4-ヒドロキシベンゾエート、グリセリルトリベンゾエート、ネオペンチルジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリメチロールエタントリベンゾエート、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール(hydroxyanisol)、ソルビトール、キシリトール、エチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、トリアジン、トリアゾール、ピロール等、その任意の誘導体、及び任意のこれらの組み合わせが挙げられるが、但しこれらに限定されない。
【0034】
[0036]本明細書に記載する可塑化されたセルロースアセテートで利用するのに適する更なる可塑剤の例として、いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤を挙げることができ、これにはポリソルベート(例えば、SigmaAldrich社から入手可能なTWEEN(登録商標)20又はTWEEN(登録商標)80)、ソルビタンエステル(例えば、SigmaAldrich社から入手可能なSPAN(登録商標)製品)、ポリエトキシル化芳香族炭化水素(例えば、SigmaAldrich社から入手可能なTOR
ITON(登録商標)製品)、ポリエトキシル化脂肪酸、ポリエトキシル化脂肪族アルコール(例えば、SigmaAldrich社から入手可能なBRIJ(登録商標)製品)、フッ素系界面活性剤、グルコシド、及び炭化水素のテール(例えば、C6~C22アルキル基)及びヒドロキシル基及びエステル基を含む親水性ヘッド基を有するその他の非イオン性界面活性剤、並びにその組み合わせが含まれるが、但しこれらに限定されない。いくつかの非イオン性界面活性剤は、単独で又は小分子可塑剤と組み合わせて、セルロースアセテートを可塑化することが発見された。従来型の可塑剤は小分子なので、これは意外である。対照的に、長い炭化水素テール基及びおそらくは大型のヘッド基を有する非イオン性界面活性剤は嵩高い。例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートは、トリアセチン等の従来型のセルロースアセテート可塑剤よりも有意に大型であるが、セルロースアセテートを可塑化することが認められた。
【0035】
[0037]いくつかの実施形態では、可塑剤は生物由来であり得る。例えば、生物由来のトリアセチン、ジアセチン、トリプロピオニン、グリセリルエステルは、バイオディーゼルの副生成物であるグリセロールから生成され得る。生物由来であり得る可塑剤のその他の例として、バニリン、アセトバニロン、γ-バレロラクトン、オイゲノール、エポキシ化ダイズ油、ひまし油、アマニ油、エポキシ化アマニ油、及びジカルボキシルエステル(例えば、ジメチルアジペート、ジブチルマレート)を挙げることができるが、但しこれらに限定されない。いくつかの事例では、芳香性の可塑剤が天然物から抽出可能であり、したがって、生物由来の可塑剤である。
【0036】
[0038]いくつかの実施形態では、可塑剤は、半揮発性~揮発性可塑剤であり得る。いくつかの好ましい半揮発性~揮発性可塑剤の例として、グリセロールエステル、(例えば、トリアセチン、ジアセチン、モノアセチン)、エチレングリコールジアセテート、アルキルラクトン(例えば、γ-バレロラクトン)、ジブチルマレート、ジオクチルマレート、ジブチルタルタレート、オイゲノール、トリブチルホスフェート、トリブチル-o-アセチルシトレート、及びレゾルシノールモノアセテートを挙げることができるが、但しこれらに限定されない。
【0037】
[0039]いくつかの態様では、2種以上の可塑剤が利用可能である。更に、熱可塑性のポリマーが、トウと共に含まれ得る。熱可塑性のポリマーとして、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、ポリアルファオレフィン、ポリエステル、エチレンビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール(「PVOH」)、ポリエチレンイミン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエーテルアミドコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー、ブチルゴム、ポリイソブチレン、イソブチレン-イソプレンコポリマー、アクリル類、ニトリル、及びその組み合わせが挙げられる。
【0038】
[0040]いくつかの態様では、可塑剤が、クリンパーの前、例えばクリンパーに進入する前少なくとも0.5メートル、例えば少なくとも1メートル前においてトウに添加される。非常に多くのクリンパーが当技術分野において公知であるが、それらは一般的にトウをクリンパー内に引き込んで作動し、その場合、ある種の溝又は表面テクスチャーを有するローラーがクリンプをトウに誘導する。その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,585,442号に記載されるように、クリンパーは、ベースフレーム及びベースフレームに関連して移動するトップフレームを有するスタッファーボックスクリンパーであり得る。クリンパーは、ニップローラー、ニップローラーの側辺上のチークプレート、ドクターブレード、フラッパー、及び蒸気インジェクターを備える。
【0039】
[0041]トウは、一対のニップローラーによりクリンパーを介して引っ張られるが、ニップローラーは、トウがニップを通過する際に、それにしわを付ける又はそれを曲げるので、「クリンプ誘導」ローラーと呼ばれる場合もあり、したがってトウにおけるクリンプの場所に影響を及ぼす。一対のニップローラーのうち、一方のニップローラーは平滑であり得るが、他方のニップローラーには、溝が設けられる場合がある。溝は、表面性状、例えば溝、凹部、又はその他の種類のテクスチャー等を含む任意の種類であり得る。溝は、好ましくは正弦曲線の形態であるが、長方形、三角形、又は半円の切欠き、溝、又は畝であってもよく、それらの溝の間には、ローラーの表面を横断して軸の方向(すなわち、水平から水平の方向)に延在する平らな面がある場合と無い場合がある。これらの溝は、2.5cm(1インチ)当たり10~100本の範囲の溝、好ましくは2.5cm(1インチ)当たり25~75本の溝、最も好ましくは2.5cm(1インチ)当たり50本の溝であり得る。溝の深度(ピークからトラフ)は、12.5ミクロン~150ミクロン(0.5ミル~5.0ミル)、好ましくは25~50ミクロン(1~2ミル)の範囲であり得る。
【0040】
[0042]各ニップローラーは、スチール/合金結合型チタンカーバイド、タングステンカーバイド、HIP処理された若しくはHIP処理されないMgO安定化ジルコニア、又はHIP処理された若しくはHIP処理されないイットリア安定化ジルコニアを含む、但しこれらに限定されない金属材料又はセラミック材料からなり得る。いくつかの実施形態では、上側ニップローラーは平滑である一方、下側ニップローラーには溝が設けられている。トウはニップローラーを離脱し、スタッファーボックスに進入する。いくつかの態様では、トウの端部は、ニップローラーとニップローラーの側部上に位置するチークプレートとの間で生じるフィラメントの損傷を最低限に抑えるために、スタッファーボックスに進入する前に潤滑化され得る。このチークプレートは、ニップローラーの間にトウを維持するガイドとして機能し得る。ドクターブレードは、ニップローラーに隣接して位置し、トウをスタッファーボックスに誘導し且つトウがローラーに張り付くのを防ぐ働きをする。
【0041】
[0043]スタッファーボックスは、スタッファーボックスの各片側内に、ニップローラーに隣接して配置する蒸気インジェクターを備え得る。スタッファーボックスのチャンネル内でトウのクリンプを固定し、軽く結合させるために、蒸気インジェクターが、蒸気、一般的に温度が約100℃の低圧乾燥蒸気をスタッファーボックスに注入する。
【0042】
[0044]クリンプの形状は、最終ベールの加工適性において役割を演ずる可能性がある。クリンプ形状の例として水平方向、実質的に水平方向、垂直方向、実質的に垂直方向、水平方向と垂直方向の間のある角度、ランダム、又は任意のこれらの組み合わせを挙げることができるが、但しこれらに限定されない。留意すべき点として、用語「水平方向」及び「垂直方向」とは、一般的全体的なクリンプの向きを意味し、前記形状から+/-約30度ずれる場合もあることが挙げられる。
【0043】
[0045]クリンプの形状は、後続する処理ステップにおける最終ベールの加工適性にとっても重要となり得、例えば、凝集力を増強する更なるステップが講じられないとすれば、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプの形状の方が、垂直方向及び/又は実質的に垂直方向のクリンプ形状よりも良好なフィラメント凝集力を実現し得る。水平方向のクリンプを達成するために、3つの処理パラメーター、例えばクリンピング前のトウの水分含有量、クリンピング中のトウの厚さ、及びクリンピング中のフラップ力に対するニップ力の比のうちの少なくとも1つが操作され得る。
【0044】
[0046]水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状を達成するために、総水分
の重量パーセントが低めである、例えば5~25%等のフィラメントを含むトウについてクリンピングを実施するのが望ましいと考えられる。いくつかの実施形態では、低めの水分重量パーセントは、クリンピング前にトウを乾燥させること、高めの固体濃度若しくは水分含有量が低めの仕上げエマルジョンを適用すること、上質仕上げ剤を適用した後に分離制御用の水を添加すること、あらゆる他の水分寄与性トウ添加を低減又は除去すること、スピニングセルを離脱するファイバーの水分含有量が低下するように、スピニング条件を変更すること(温度を上げる、スピードを落とす、加熱キャビネット内の気流を高める、ドープ濃度を変更する)、又はこれらを任意に組み合わせることにより達成され得る。
【0045】
[0047]更に、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状は、細めのトウをクリンピングすること、すなわちクリンパーニップローラー幅2.5cm(1インチ)当たり総デニールを低減することにより達成され得る。いくつかの実施形態では、クリンパーニップローラー幅2.5cm(1インチ)当たりの総デニールは、約60,000以下、約50,000以下、又は約40,000以下であり得る。適するクリンパーニップローラー幅2.5cm(1インチ)当たりのデニールは、下限の約5,000、10,000、15,000、又は20,000から上限の60,000、50,000、40,000、35,000、又は30,000の範囲であり得るが、クリンパーニップローラー幅2.5cm(1インチ)当たりの総デニールは、下限値のいずれかから上限値のいずれかまでの範囲であり得、その間のあらゆるサブセットを含み得る。
【0046】
[0048]更に、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状は、フラップ力に対するニップ力の比、すなわち負荷するフラップ力に対する負荷するニップ力の比を低下させてクリンピングすることにより達成され得る。いくつかの実施形態では、フラップ力に対するニップ力の比は、約100:1以下、約50:1以下、又は約25:1以下であり得る。適するフラップ力に対するニップ力の比は、下限の約3:1、5:1、又は10:1から上限の約100:1、50:1、又は25:1の範囲であり得、その場合、ニップ対フラップ比は、下限のいずれかから上限のいずれかまでの範囲であり得、その間のあらゆるサブセットを含み得る。
【0047】
[0049]留意すべき点として、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状を達成する上記方法のうちの少なくとも2つが、任意の組み合わせで利用可能であることが挙げられる。併用して用いる場合、併用すると相乗的効果が生じ得るので、上記パラメーターの限界値は拡張され得ることにも留意すべきである。非限定的な実施例として、水分約27%w/wのトウは、フラップ力に対するニップ力の比約15:1でクリンパーニップロール幅2.5cm(1インチ)当たりの総デニール約25,000でクリンピングされると、水平方向及び/又は実質的に水平方向のクリンプ形状が生ずる可能性がある。
【0048】
[0050]クリンプが形成されたら、トウは、残留する水及び/又はアセトンを乾燥及び除去する乾燥機に誘導される。乾燥したトウは、次にトウの層を形成するためにカンに供給される。乾燥したトウは、一連のローラーにより、例えばあるパターンでカン内にトウを横置きにし、層にし、又は整列させてカン内に配置され得る。留意すべき点として、カンは、任意の形状、好ましくは四角形又は長方形、及び任意の材料であり得る容器を一般的に指すのに使用され得ることが挙げられる。用語「パターン」とは、任意のデザインを意味し、配置している間に変化する場合もあれば、しない場合もある。いくつかの実施形態では、パターンは、約1.6サイクル/m~約19.7サイクル/m(約0.5サイクル/ft~約6サイクル/ft)の周期性を有する実質的にジグザグ形であり得る。いくつかの実施形態では、配置ステップは、約10m/m~約40m/mのパドリングインデックスを用いて、トウをパドリングするステップを含み得る。用語「パドリング」とは、トウを配置したときに、その直線距離よりもトウの実際の長さが長くなるように、トウをその上に少なくとも部分的に横置きに配置することを意味する。用語「パドリングインデッ
クス」とは、トウを配置したときに、トウの長さがその直線距離の何倍に相当するかを意味する。
【0049】
[0051]トウの層は、次にベールプレスに移動し、そこでベールは圧縮され、出荷用に包装される。カンはプレスウォール内にセットされ、次にプラテンにより圧縮される。代表的なトウベールの圧縮及びベールプレス設計は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,610,852号に開示されている。一般的に、ベールプレスは、包装ステップまで維持される実質的に平らな面を有するトウに形成が可能となるように選択された2つの形状化されたプラテンを備える。そのような実質的に平らな面は、保存及び出荷中にベールを積み重ねることができるので有利である。更に、トウが絡まった状態となる可能性がより低く、解ベールがより効率的に実現可能であるので、ベール上の平らな面は、本明細書に記載する解ベールプロセスにおいて有利である。
【0050】
[0052]いくつかの実施形態では、包装ステップは、ラッピング材料、真空ポート(真空解除及び/又は真空吸引用)、緊締要素、又は任意のそれらの組み合わせ等の少なくとも1つの構成要素を含み得る。適するラッピング材料として、空気透過性材料、空気不透過性材料、フィルム(例えば、ポリマー性フィルム、ポリエチレンフィルム、プラスチックラップ)、熱収縮性フィルム、ダンボール、木材、織物材料(すなわち、ファブリックを形成するように相互に織り交ざった2セットの糸から構成されるファブリック)、非織物材料(すなわち、機械的手段又は化学的手段により共に保持される、ランダムなウェブ又はマット状のテキスタイルファイバーのアセンブリ、例えば融合した熱可塑性のファイバー)、フォイル材料(例えば、金属材料)等、又は任意のこれらの組み合わせが挙げられるが、但しこれらに限定されない。適する緊締要素として、VELCRO(登録商標)、ピン、フック、ストラップ(例えば織物、非織物、ファブリック、及び/又は金属)、接着剤、テープ、溶融結合剤等、又は任意のこれらの組み合わせを挙げることができるが、但しこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、包装(そのあらゆる構成要素を含む)の少なくとも一部分は、再利用可能であり得る。
【0051】
[0053]いくつかの実施形態では、ベールは、高さが約76cm(30インチ)~約152cm(60インチ)、長さが約117cm(46インチ)~約142cm(56インチ)、及び幅が約89cm(35インチ)~約114cm(45インチ)の範囲の寸法を有し得る。いくつかの実施形態では、ベールは、重さ408kg(900ポンド)~953kg(2100ポンド)の範囲である。いくつかの実施形態では、ベールは、約300kg/m3(18.8lb/ft3)よりも大きい密度を有し得る。
V.最終製品に対するトウの製造
[0054]トウベールは、最終製品、例えばタバコフィルター等を形成するために更なる処理にかけられてもよい。ベールされたら、トウは、一般的に、解ベールされてブルームされ、そしてタバコフィルターに形成される。解ベールとは、トウがパッケージングされていたベールからトウを取り出すことを意味する。トウベールがどのようにクリンプ、圧縮、及びパッケージングされるかその様式、並びに下流の製造ニーズに応じて、トウの解ベールは、異なるスピードで実施され得る。トウは、トウベールから取り戻し、そしてローラーによってガイド上に引き出すことにより解ベールされ得る。トウは、次に解放又は「ブルーム」され、ロッドに形成され、その次にプラグラップと呼ばれるペーパーでラップされる。フィルターロッドは、次に所定の長さに切断され、そしてタバコと連結する。
【0052】
[0055]ブルーミングプロセス中に、トウは、ニューマチックバンディングジェットを含む機械的手段を使用することにより解放され、またローラーを使用したテンション又はセミテンション技法の下で伸ばされ得る。いくつかの態様では、機械的手段の代わりに、空気がフィラメントを分離するのに利用可能である。機械的手段が使用される場合、ブルーミングプロセスは、クリンプの一部分を除去する可能性がある。したがって、クリンピン
グが、トウ上に識別マーキングを付与するのに用いられる場合には、マーキングは、たとえクリンプの一部が除去されたとしても、なおも読み取り可能であるように適用されなければならない。
【0053】
[0056]ブルーミングプロセスは、可塑剤をトウに添加すること、及び可塑化されたトウを硬化させることを含み得る。可塑剤の添加は、ファイバー間結合が形成可能となるようにファイバーの柔軟化を可能にするが、それは次に所望の硬度及び一貫性が得られるようにフィルターを硬化させる。いくつかの態様では、可塑剤は、ブルームされたトウの1つの側面にのみ適用されるが、但しトウを貫通すべきである。その他の態様では、可塑剤は、トウの各側面に適用され得る。可塑剤は、セクションIVに開示する可塑剤を含む、当技術分野で使用される任意の可塑剤であり得る。
【0054】
[0057]トウが開放されると、トウは、ロッドを形成する装置に連続的に供給される。1つのそのような装置は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許公開第2012/0302416号に開示されているが、非常に多くのタバコロッド製造用の装置が、当技術分野において公知である。ロッド製造装置の製造業者として、Molins PLC社、並びにHauni-Werke Korber & Co.KG社が挙げられる。トウは、円筒形のロッドに形成され、プラグラップでラップされる。プラグラップは、接着剤によりロッドと接着し得るが、またロッドは、次にタバコの喫煙可能なロッドに連結する。
VI.スピナレットの観察とクリーニング
[0058]本明細書に記載するように、スピナレット孔は、沈着及び/又は閉塞により、部分的又は完全に閉塞状態になり得る。一般的に、プロセスの稼働長さが長いほど、より多くの沈着及び/又は閉塞が生ずる。セルロースアセテートドープにおける様々な構成要素が、スピナレットに沈着する可能性があり、時間の経過と共に、スピナレット孔を部分的又は完全に閉塞させる。この沈着及び/又は閉塞は、いくつかの理由によって引き起こされ得る。例えば、大型の粒子がフィルター処理後に残る場合には、そのような粒子は、スピナレット孔の閉塞を開始し得る。セルロースアセテートが完全に溶解してドープにならない場合には、セルロースアセテートは、スピナレット上に沈着物を形成するおそれがあり、孔を少なくとも部分的に閉塞させる。沈着及び/又は閉塞の理由を問わず、かつて均一であったスピナレット孔のサイズに差異が生ずるようになる。
図1Aに示す通り、清浄な(及び任意に新品、未使用の)スピナレットは、均一なサイズの孔を有する。
図1Bに示す通り、時間経過及び使用により、いくつかの孔は部分的に閉塞する。セルロースアセテートドープが、部分的に閉塞した孔を通過してフィラメントに紡糸されると、フィラメントの断面及び1フィラメント当たりのデニールは孔間で異なる。
【0055】
[0059]スピナレットは、すべてを一度に又は部分的にクリーニングされ得る。例えば、20個のスピナレットがドープを紡糸するのに使用される場合には、沈着及び/又は閉塞の兆候が認められたら、5個のスピナレットが、除去及びクリーニングされ得る。これらのスピナレットは、次に新しいスピナレットに置き換え可能である、又はその他のプロセスパラメーターが、スピナレットの減少を埋め合わせるために調整可能である。理想的とは言えないが、イールドが、本明細書に記載する目標からはるかに大きく変化する場合には、すべてのスピナレットをクリーニングするために、全プロセスがシャットダウンされ得る。
【0056】
[0060]プロセスの連続稼働中に蓄積する沈着及び/又は閉塞の1つの兆候は、クリーニング後のスピナレットの観察により判明し得る。観察は、例えば肉眼、顕微鏡下、又はライトプロジェクター等による目視検査であり得る。ライトプロジェクターが使用される場合、パターンの均一性が検分され得る。付加的又は代替的に、スピナレットが沈着及び/又は閉塞を有すると疑われる場合、トウ及び/又はトウから作製されたロッドの下流測定
及び試験が、それを示すのに利用可能である。
【0057】
[0061]スピナレットが、介入レベルにまで高まった(例えば、下流製品に対して影響を及ぼすことから)沈着及び/又は閉塞を有する場合、特別なクリーニングプロセスが利用可能である。最初に、スピナレットは、スピナレットからアセテートを取り除くためにアセトンバス中に浸漬され得る。アセトンは、20~55℃、例えば25~55℃の温度であり得るが、また5~60分間浸漬され得る。
【0058】
[0062]アセトンバスで処理した後、アセトンの蒸発が可能となるようにスピナレットは空気乾燥され得る。
[0063]次に、スピナレットは、有機の沈着物を取り除くために、苛性溶液中で洗浄され得る。苛性溶液は、OAKITE(登録商標)等の市販の苛性クリーナー、アルカリ性の塩、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、又はその他の公知の苛性クリーニング剤であり得る。有機の沈着物は、有機の塩及び脂肪酸であり得る。苛性溶液洗浄は、20~70℃、例えば60~70℃の温度で一般的に実施される。スピナレットは、苛性溶液内で5~180分間洗浄され得る。
【0059】
[0064]次に、スピナレットは、無機の沈着物を取り除くために、酸洗浄液中で洗浄され得る。酸洗浄液は、硫酸及び/又は硝酸を含み得る。硝酸の濃度は、5~20%、例えば10~20%の範囲であり得、また硫酸の濃度は、40~90%、例えば55~80%であり得、残りは水である。無機の沈着物は、セルロースアセテートドープに添加される顔料を含み得る。更に、無機の沈着物は、ドープを形成するのに用いられる原材料、又はプロセス機器(例えば、配管、容器、ポンプ)に由来し得るが、また金属、シリカ等を含み得る。酸洗浄は、20~60℃、例えば40~60℃の温度で一般的に実施される。スピナレットは、酸内で5~90分間洗浄され得る。スピナレットは、次に熱水及び/又は熱アセトンによりリンスされ、次に空気乾燥され得る。いくつかの態様では、苛性バスは、酸洗浄の後であり得る。
【0060】
[0065]いくつかの態様では、スピナレットは、苛性洗浄液中での洗浄の前に、酸洗浄液中で洗浄され得る、すなわち酸洗浄と苛性洗浄の順序は変化し得る。
[0066]最終的に、スピナレットは、あらゆる残渣を取り除くために、水又はアセトンでリンスされ得る。リンスは、あらゆる目視可能な残渣が除去されるまで反復され得る。アセトンが使用される場合、リンスは、20~50℃、例えば25~50℃の温度で実施され得る。水によるリンスが使用される場合、リンスは室温、例えば20~30℃で実施され得る。スピナレットは、次に空気乾燥され得る。
【0061】
[0067]上記洗浄ステップのいずれも、沈着及び/又は閉塞が最初のクリーニング後に除去されない場合には反復され得る。更に、ソーキング時間及びリンス時間が延長される場合(例えば、室温でのオーバーナイトソーキングを可能にする)、低い温度も利用可能である。
【0062】
[0068]いくつかの態様では、有機及び無機の沈着物の除去の補助として、更なるジェットクリーニングステップが含まれ得る。ジェットクリーニングステップは、スピナレットをアセトン中に浸漬するステップの後、苛性洗浄の後、酸洗浄の後、及び/又は残渣を取り除くために水若しくはアセトンによりスピナレットを洗浄した後に含まれ得る。ジェットクリーニングステップが、水又はアセテート洗浄(リンスとも呼ばれる)の後になる場合には、スピナーは、水又はアセトンによる最終リンスにかけられてもよい。ジェットクリーニングステップは、溶媒に基づくジェット洗浄であり得る。いくつかの態様では、溶媒は、トルエン、シクロヘキサン、ジクロロベンゼン、又はその他の公知の溶媒であり得る。
【0063】
[0069]スピナレットにおいて上記クリーニングプロセスが実施された後、90%を上回る、例えば95%を上回る、97%を上回る、又は99%を上回る沈着及び/又は閉塞がスピナレット(スピナレット孔を含む)から除去される。除去される沈着及び/又は閉塞の割合(%)は、何らかの閉塞を有するスピナレット孔の割合(%)に基づく(そして、個々の孔内の閉塞の割合(%)ではない)。沈着及び/又は閉塞の除去は、例えば肉眼、顕微鏡下、及び/又はライトプロジェクターによる目視検査により定量化され得る。いくつかの態様では、目視検査を写真撮影するために、カメラも利用可能である。好ましくは、検査は、カメラとライトプロジェクターを併用して行われる。
【0064】
[0070]上記ステップのそれぞれにおいて、バスとして、静的ソークバス、不活性気体による気泡生成タンク(例えば、窒素で気泡生成した)、超音波バス、及び/又はその他の撹拌法が該当し得る。
VII.均一性の改善
[0071]本明細書に記載するように、本発明は、トウ製品の均一性を改善することに関する。そのような改善として、ロッド間の変動係数を低減すること、トウに形成されるフィラメントの断面の均一性を改善すること、及び、総デニールの変動の、1フィラメント当たりのデニールの変動に対する比を低減することが挙げられる。これらの改善それぞれは、最終的なトウ製品、例えばタバコフィルターの性能を強化する。
a.ロッド間の変動係数
[0072]特にタバコフィルターの場合、特定の種類のタバコからの喫煙経験は、均一であるべきである。この均一性の1つの指標として圧力降下が挙げられる。圧力降下は、吸引抵抗とも呼ばれ、喫煙者がフィルターを通じて煙を吸引するためにタバコに適用する必要がある吸引量を決定する。フィルターの圧力降下に加えてタバコ円筒の圧力降下が、消費者にとって許容される範囲内でなければならない。一般的に、圧力降下(タバコ全体の合計)は、水位計で約100mmである。フィルターロッド全体の圧力降下は、定義された体積気流量におけるフィルターロッド全体の静圧差の指標である。測定は、温度及び相対湿度が制御された(測定に対する温度及び相対湿度の影響を最低限に抑えるために制御された)ラボ内で実施され得る。測定は、ロッド重量、円周、及び定義された体積流量における圧力降下を測定する市販のフィルターロッド試験機器を使用して実施され得る。圧力降下は、目標とする円周に調整され、そして「変動係数」が計算される。目標により近づくように圧力降下を調整するために、又は変動係数を低減するために、プロセス調整が必要であるかどうかその要否を判断するために、統計的法則が使用される。
【0065】
[0073]本明細書に記載するように、ロッドに形成される均一なフィラメントは、非常に類似した圧力降下を有するはずであり、すなわちロッド間の変動は小さいはずであるので、トウのソース、例えば単一のベールからなるフィルターロッドのロッド間の変動係数は、1つ又は複数のスピナレットを通過させて紡糸したフィラメントの均一性を決定する手段として測定され得る。用語「変動係数」は、標準偏差をシリーズの平均値に対する割合(%)として表現することにより、2シリーズの分散を比較する手段である。変動係数は、以下のように定義され得る:
【0066】
【0067】
[0074]本発明に従ってトウがフィルターロッドに形成されると、フィルターロッドをサンプリングしてその圧力降下が測定され得る。変動係数が低いのが望ましいので、変動係数を調整できればそのような能力もやはり望ましい。本発明者らは、a)スピナレットの
数、b)フィラメントの総デニール、又はc)1フィラメント当たりのデニールのうちの少なくとも1つを調整することにより、ロッド間の変動係数は、5未満、例えば4未満、3未満、又は2未満に低減し得ることを発見した。ロッド間の変動係数は望ましくは0であるが、実際的には、許容されるロッド間の変動係数は、最終製品に依存し得る。例えば、いわゆる「super slim」タバコについて許容されるロッド間の変動係数は、通常のタバコについて許容されるロッド間の変動係数を上回る可能性がある。したがって、いくつかの態様では、変動係数が5以上、例えば4以上、又は3以上のときに、a)スピナレットの数、b)フィラメントの総デニール、又はc)1フィラメント当たりのデニールのうちの少なくとも1つを調整することの契機となり得る。
【0068】
[0075]トウの製造業者は、タバコフィルター製造業者や最終的なタバコ製造業者とは異なる当事者であり得るが、これらのいずれの当事者によっても、トウは試験用としてロッドに形成可能である。例えば、トウの製造業者は、1つの又はいくつかのベール内のトウをサンプリングしてそれからロッドに形成して、ロッド間の変動係数を決定することができる。
【0069】
[0076]本明細書に記載するように、セルロースアセテートドープは、スピナレットを通じて紡糸され、フィラメントを形成するが、フィラメントは次に束ねられ、そしてトウに形成される。1フィラメント当たりのデニールは、質量流量及びドローダウンにより決定される。フィラメント断面は、スピナレット孔の形状により決定されるので、またやはり、総デニールは、フィラメントにより決定されるので、スピナレット孔の形状は、最終的なロッド均一性の初期の、但し重要な部分である。スピナレットの数を調整する場合、いくつかの態様では、スピナレットの数を増加させる。このスピナレットの増加は、製造を増やし、変動係数を平均化し、総デニールを増加させるために実施され得る。その他の態様では、スピナレットの数を減少させ得る。このスピナレットの減少は、本明細書に記載するように、クリーニング及び/又は検査を目的として1つ又は複数のキャビネットがラインから取り外されたときに実施され得る。更なる態様では、フィラメントの総デニールを増加させる。例えば、最低圧力降下を高めるために、フィラメントの総デニールを増加させ得る。なおも更なる態様では、フィラメントの総デニールを増加させ、及び1フィラメントを減少させ、及び1フィラメント当たりのデニールを増加させる。例えば、最低圧力降下を低下させるために、1フィラメント当たりのデニールを増加させる一方、フィラメントの総デニールを減少させ得る。
【0070】
[0077]ロッド間の変動係数を低減させる上記調整に付加して、本発明の方法は、沈着及び/又は閉塞を取り除くために、スピナレットの少なくとも1つをクリーニングすることを含む。このクリーニングでは、望ましい、例えば2を上回る、3を上回る、4を上回る、又は5を上回るロッド間の変動係数よりも大きいロッド間の変動係数が契機となり得る。スピナレットは、本明細書に記載する方法に基づきクリーニングされ得るが、次に残留する目視可能な沈着及び/又は閉塞について漏れなくチェックされる。
b.フィラメント断面
[0078]フィラメントの断面及びその均一性も、最終的なトウ製品、例えばタバコフィルターに影響を及ぼす。本明細書で説明したように、トウのソースからなるロッド全体の圧力降下が均一であることは、トウベールの望ましい品質であり、またロッド間の変動係数が低いことは、圧力降下の均一性を反映する。但し、ほとんどのトウベールは重量に基づき販売されており、圧力降下の均一性は関係ない。ベールからなるロッドの均一性を評価するために、イールドが計算される。イールドは、圧力降下と重量との間の関連性を表す(重量で割った圧力降下)。イールドは、多くの場合グラフ上のラインにより表され、その場合、x軸は重量であり、またy軸は圧力降下である。イールドラインの最下端は、ロッドが凹みを形成するポイントとして定義され、またイールドラインの最上端は、過剰に多いトウのためにロッドが裂けるか機械ロールラップが生ずるポイントとして定義される。
図2に示す通り、目標イールドラインが存在する。次に、目標イールドの上限及び下限が目標から約20mmH
2O以内に一般的に設定される。重量は、グラム数/100ロッドとして記録される。上限及び下限にあるロッドを試験用に製造して、トウが目標イールドラインに適合することを確認するために、トウの重量はロッドメーカー上で調整され得る。
図2のサンプルは、目標イールドラインにほぼ沿っており、上限及び下限以内である。圧力降下の変動係数についてロッドを試験するのに使用される上限及び下限において、同一の手順及び機器がロッドを試験するのに使用される。
【0071】
[0079]本明細書で説明したように、セルロースアセテートドープは、スピナレット孔を通じてフィラメントに紡糸されるので、フィラメントの断面は、スピナレット孔の形状により決定される。時間の経過と共に、スピナレットは沈着及び/又は閉塞に晒される。測定されたイールドが目標イールドラインの上限又は下限から外れたとき、次に沈着及び/又は閉塞を取り除くために1つ又は複数のスピナレットがクリーニングされる。スピナレット(複数可)をクリーニングした後、次に、イールドが目標イールドラインから設定された限界内に収まることを確認するために、イールドの再測定が実施され得る。
【0072】
[0080]本明細書に記載するように、スピナレットを追加する、スピナレットを除去する、1フィラメント当たりのデニールを調整する、及び総デニールを調整することにより、イールドも改善し得る、例えば改善の結果として、ロッドは目標イールドラインにより接近したイールドを有する。
c.デニールインデックス:総デニールの変動の、1フィラメント当たりのデニールの変動に対する比
[0081]サンプル、例えばベール中のトウの均一性を調べる別の方法は、デニールインデックスを計算することである。デニールインデックスは、総デニールの変動及び1フィラメント当たりのデニールの変動の比較である。本明細書に記載するように、ロッドの均一性は、1フィラメント当たりのデニール、総デニール、又は両方を調整することにより達成され得る。一方又は両方のパラメーターが調整される場合、パラメーター間の変動について、所定の比を維持して、均一な製品を生み出すのが望ましい。1フィラメント当たりのデニール及び総デニールは、最終的なトウ製品に応じて変化し得るものの、総デニールの変動は、3%未満、例えば2.5%未満、2%未満、又は1%未満であり得る。1フィラメント当たりのデニールの変動は、10%未満、例えば8%未満、5%未満、又は3%未満であり得る。総デニールの変動の、1フィラメント当たりのデニールの変動に対する比、即ち、デニールインデックスは、2.5:1未満、例えば2:1未満、1.5:1未満、1:1未満、又は0.6:1未満である。
【0073】
[0082]本発明は、下記の非限定的な実施例を参照すればよりよく理解される。
VIII.実施例
【実施例1】
【0074】
[0083]本明細書の記載に従い、セルロースアセテートドープを調製し、そしてスピナレットを通過させて紡糸した。時間の経過と共に、イールドは目標イールドから変動し、1フィラメント当たりのデニールが低減したので、より多くのスピナレットを追加して総デニールを維持した。
図3に示す通り、第1日目では、1フィラメント当たりのデニールは約2.85であったが、また総デニールは、32,600g/9000メートルであった。第14日目では、1フィラメント当たりのデニールは2.825まで低減し、そして総デニールは約33、300まで増加した。
図3の全体的な傾向から、1フィラメント当たりのデニールが低減したが(イールドが目標イールドから変動したことを示す)、スピナレットを追加すると、イールドが目標イールド値内に収まりつつ、総デニールは維持されることが明らかである。
【実施例2】
【0075】
[0084]本明細書の記載に従い、セルロースアセテートドープを調製し、そしてスピナレットを通過させて紡糸した。
図3を表形式で示す下記の表に示す通り、総デニール及び1フィラメント当たりのデニールはばらついた。イールドが目標イールドから外れて変動したら、1フィラメント当たりのデニールを低減させ、またスピナレットの数を増やして総デニールを維持し、そしてイールドを目標イールド値内に収めた。
【0076】
[0085]総デニールの変動、1フィラメント当たりのデニールの変動、及び、総デニールの変動の、1フィラメント当たりのデニールの変動に対する比を、初期の総デニール及び1フィラメント当たりのデニールの数値から得た変動に基づき計算した。測定を約6カ月間実施した。
【0077】
【0078】
[0086]本発明について詳細に記載してきたが、本発明の精神及び範囲内の修正は、当業者にとって自明である。本発明の態様、及び様々な実施形態の一部分、並びにこれまでに列挙した、及び/又は添付の特許請求の範囲内の様々な特性は、その全体又は部分を問わず、組み合わせ可能又は交換可能であると理解すべきである。様々な実施形態に関するこれまでの説明において、当業者が認識するように、別の実施形態を参照する実施形態は、その他の実施形態と適切に組み合わせ可能である。更に、当業者は、上記説明は例示目的に限定され、本発明に制限を設けるように意図するものではないと認識する。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
複数のセルロースアセテートフィルターロッドにおけるロッド間の変動係数を低減する方法であって、
セルロースアセテートドープを少なくとも2つのスピナレットを通過させて紡糸し、フィラメントを形成し、
該フィラメントを束ねてトウを形成し、
該トウをクリンプし、
該トウを乾燥させ、
該トウから複数のフィルターロッドを形成し、
該複数のロッド間の変動係数を測定し、
該少なくとも2つのスピナレット、該フィラメントの総デニール、又は1フィラメント当たりのデニールのうちの少なくとも1つを調整して、該ロッド間の変動係数を5未満に低減させること、
を含む方法。
[態様2]
態様1に記載の方法であって、スピナレットの数が減少される方法。
[態様3]
態様1に記載の方法であって、スピナレットの数が増加される方法。
[態様4]
態様1に記載の方法であって、該フィラメントの総デニールが減少され、及び1フィラメント当たりのデニールが増加される方法。
[態様5]
態様1に記載の方法であって、該フィラメントの総デニールが増加され、及び1フィラメント当たりのデニールが減少される方法。
[態様6]
態様1に記載の方法であって、
該ロッド間の変動係数が5以上のとき、該少なくとも2つのスピナレットのうちの少なくとも1つを該方法から外すこと、及び
該少なくとも1つのスピナレットをクリーニングして、目視可能な沈着及び/又は閉塞を取り除くこと、
を更に含む方法。
[態様7]
セルロースアセテートトウ・フィラメントの断面の均一性を改善する方法であって、
セルロースアセテートドープを複数のスピナレットを通過させて紡糸し、フィラメントを形成し、
該フィラメントを束ねてトウを形成し、
該トウをクリンプし、
該トウを乾燥させ、
該トウから複数のフィルターロッドを形成し、
トウの重量(g数/100ロッド)により該ロッドのイールドを測定し、そして
該複数のスピナレットのうちの少なくとも1つから沈着及び/又は閉塞を除去して、イールドを目標イールドから±20mmH
2
O以内に維持すること、
を含む方法。
[態様8]
態様7に記載の方法であって、該断面が、Y字状、R字状、X字状、K字状、C字状、O字状、I字状、円形、鋸歯状、楕円、多角形、及びドッグボーン形状からなる群から選択される方法。
[態様9]
セルロースアセテートトウ・スピナレットから沈着及び/又は閉塞を除去する方法であって、
a)該スピナレットをアセトン中に浸漬してアセテートを取り除き、
b)該スピナレットを苛性洗浄液及び酸洗浄液で洗浄して有機及び無機の沈着物を取り除き、そして
c)該スピナレットを水又はアセトンで洗浄して残渣を取り除くこと、
を含む方法。
[態様10]
態様9に記載の方法であって、浸漬ステップにおけるアセトンの温度が、20~55℃である方法。
[態様11]
態様9に記載の方法であって、該スピナレットが、5~60分間浸漬される方法。
[態様12]
態様9に記載の方法であって、該酸洗浄液における酸の温度が、20~60℃である方法。
[態様13]
態様9に記載の方法であって、該スピナレットが、酸洗浄液中で5~90分間洗浄される方法。
[態様14]
態様9に記載の方法であって、該苛性溶液の温度が、20~70℃である方法。
[態様15]
態様9に記載の方法であって、該スピナレットが、該苛性溶液中で5~180分間洗浄される方法。
[態様16]
態様9に記載の方法であって、90%を上回る沈着及び/又は閉塞が、該スピナレットから除去される方法。
[態様17]
態様9に記載の方法であって、該スピナレットを、沈着及び/又は閉塞の除去について目視検査することを更に含む方法。
[態様18]
態様17に記載の方法であって、該目視検査が顕微鏡による方法。
[態様19]
態様17に記載の方法であって、該目視検査でライトプロジェクターを用いる方法。
[態様20]
態様9に記載の方法であって、ステップa)、b)、及び/又はc)の後に、溶媒に基づくジェットクリーニングステップを更に含む方法。
[態様21]
セルロースアセテートトウ・ベールを製造する方法であって、
セルロースアセテートを溶媒に溶解して、セルロースアセテートドープを形成し、
該セルロースアセテートドープを少なくとも1つのスピナレットを通過させて紡糸し、10,000~100,000の総デニール、及び1~15の1フィラメント当たりのデニールを有するフィラメントを形成し、
該フィラメントを束ねて、トウを形成し、
該トウをクリンプし、
該トウを乾燥させ、そして
該トウをベールにパッケージングすること、
を含み、
該ベールからのトウの総デニールが3%未満だけ変動し、該ベールからのトウの1フィラメント当たりのデニールが10%未満だけ変動し、そして、デニールインデックスが2.5:1未満である方法。