(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】有機EL表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 59/124 20230101AFI20231226BHJP
H10K 71/60 20230101ALI20231226BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20231226BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20231226BHJP
H10K 59/123 20230101ALI20231226BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231226BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H10K59/124
H10K71/60
H10K59/35
H10K59/38
H10K59/123
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/00 338
(21)【出願番号】P 2022142515
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2021128133の分割
【原出願日】2018-03-28
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】512225287
【氏名又は名称】堺ディスプレイプロダクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 克彦
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/035556(WO,A1)
【文献】特開2009-181836(JP,A)
【文献】特開2009-238725(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0001492(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0075438(US,A1)
【文献】特開2015-230404(JP,A)
【文献】特開2004-303644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 59/124
H10K 71/60
H10K 59/35
H10K 59/38
H10K 59/123
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタを含む駆動回路が形成された表面を有する基板と、
前記駆動回路を覆うことによって前記基板の前記表面を平坦化する平坦化膜と、
前記平坦化膜に形成され、前記薄膜トランジスタに達するコンタクト孔内に埋め込まれた導体層と、
前記平坦化膜の表面上に形成され、前記導体層と接続する第1電極、前記第1電極の上に形成された有機発光層、及び前記有機発光層の上に形成された第2電極を有する有機発光素子と、
を備え、
前記平坦化膜は、第1無機絶縁膜、及び、前記第1無機絶縁膜の上に形成された有機絶縁膜を含み、
前記有機絶縁膜における前記第1無機絶縁膜と反対の表面は、算術平均粗さRaで
20nm以上、50nm以下の表面粗さを有しており、
前記有機発光素子の前記第1電極及び前記有機発光層の表面が前記平坦化膜の表面形状及び表面粗さとほぼ同じ表面形状及び表面粗さになるように前記第1電極及び前記有機発光層が形成されることによって、前記有機発光層の厚さが、R、G、Bの各サブ画素内それぞれにおいてほぼ均一になっている、
有機EL表示装置。
【請求項2】
前記薄膜トランジスタは低温ポリシリコン層を有しており、
前記有機発光素子が前記第2電極側から光を取り出すトップエミッション型の発光素子である、請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
基板の上に、薄膜トランジスタを含む駆動回路を形成する工程と、
前記駆動回路の表面に第1無機絶縁膜
を形成する工程と、
前記第1無機絶縁膜の上に有機絶縁膜を形成する工程と、
前記有機絶縁膜の表面を算術平均粗さRaで20nm以上、50nm以下の表面
粗さに研磨する工程と、
前記有機絶縁膜及び前記第1無機絶縁膜に、前記薄膜トランジスタに達するコンタクト孔を形成する工程と、
前記コンタクト孔の内部に金属を埋め込むと共に、前記有機絶縁膜の表面で、かつ、前記コンタクト孔の形成されていない所定の領域に、前記コンタクト孔の内部に埋め込まれた前記金属と連続して物理的蒸着によって前記有機絶縁膜の表面形状及び表面粗さとほぼ同じ表面形状及び表面粗さを有し、R、G、Bの各サブ画素においてそれぞれの前記各サブ画素内における厚さがほぼ均一の第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上に前記第1電極の表面形状及び表面粗さとほぼ同じ表面形状及び表面粗さを有する有機発光層を真空蒸着法で形成することによって、前記有機発光層の厚さを前記各サブ画素のそれぞれにおいてほぼ均一にする工程と、
前記有機発光層の上に第2電極を形成することによって、前記第1電極及び前記有機発光層と共に有機発光素子を形成する工程と、を含む、有機EL表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記薄膜トランジスタは低温ポリシリコン層を有しており、
前記有機発光素子が前記第2電極側から光を取り出すトップエミッション型の発光素子に形成される、請求項3に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大形のテレビジョン、携帯機器などで、有機EL表示装置が採用される傾向にある。有機EL表示装置は、絶縁基板の上に、各画素の領域にスイッチング素子、駆動素子などの能動素子としての薄膜トランジスタ(以下、TFTともいう)を用いた駆動回路が形成され、その上に各画素の有機発光素子がTFTと接続するように形成されることによって構成されている。有機EL表示装置としては、発光素子の正面を表示面とするトップエミッション型と、絶縁基板の裏面を表示面とするボトムエミッション型とがあり、トップエミッション型では、有機発光素子の表示領域によらず、その下方に前述の駆動回路が形成される。一方、ボトムエミッション型では、表示領域の周縁部に駆動回路が形成される。そのため、駆動回路を形成するスペースが少ない携帯機器などの小型の有機EL表示装置では、トップエミッション型、すなわち、表示領域のほぼ全面の下方にTFTなどの駆動回路が形成されるような構成が多用される。一方、ボトムエミッション型では、画素間のスペースに多少余裕のある大形のテレビジョンなどに適している。
【0003】
TFTなどによって駆動回路が形成されるとその表面が凸凹になる。その上に有機発光素子が形成されるので、駆動回路の上を、樹脂材料などで被覆することによって平坦化膜を形成している。そうすることによって、表面の平坦化が行われている。この平坦化膜は、従来、TFTが形成された後に、バリア層とする第1無機絶縁膜が形成され、前述の有機発光素子とTFTとを接続するコンタクト孔をフォトリソグラフィ工程によって形成し、その上に感光性の有機絶縁膜を成膜して、フォトリソグラフィ工程と、ウェット現像によるコンタクト孔の形成によって得られていた。このように有機絶縁膜を形成することによって、TFTなどの形成による表面の凸凹が平坦化されている。
【0004】
特許文献1には、アクティブマトリクス型表示装置のピクセルごとのスイッチング素子などに好適な、小さな専有面積と優れたトランジスタ特性とを両立したTFT及びその製造方法が開示されている。これは、同一構成のTFTをCMP処理によって表面の凹凸を20nm以下とされた層間絶縁膜を介して、垂直に複数層のTFTを一体的に形成するものである。すなわち、微細なTFTを形成する際に、浅い焦点深度に対応するために層間絶縁膜の表面の平坦度を20nm以下にするもので、TFTの上に有機発光素子を形成するための平坦化ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、有機EL表示装置を視認する場合、画素によって、色ムラが生じたり、輝度ムラが発生したりして視認特性が低下する場合がある。本発明者は、この色ムラ又は輝度ムラが生じる原因について鋭意検討を重ねて調べた結果、有機発光層の表面の平坦性の欠如に起因していることを見出した。すなわち、有機発光素子は、前述のように、駆動回路が形成されたTFTなどの上に、表面を平坦にする平坦化膜の上に形成される。この有機絶縁膜の表面は、一応平坦になっており、従来は、これで問題はないと考えられていた。しかし、本発明者が鋭意検討を重ねて調べた結果、有機絶縁膜表面は、非感光性の樹脂を用いても、算術平均粗さのRaで、100~300nm程度であり、従来一般的に用いられている感光性樹脂では、これよりもさらに凹凸が生じていることが分り、この表面に有機発光素子の電極及び有機発光層を形成すると、有機発光層の表面も同程度の表面粗さになっていた。有機発光層の表面に凸凹が生じると、微視的に見た光の進む向きは区々になる。そのため、正面から表示画面を見ると、斜め方向に進む光は視認され難くなり、色ムラ及び/又は輝度ムラになることを見出した。
【0007】
表示装置の表示画面で、たとえ、不点灯領域、常時点灯領域又は輝線といった明確な表示上の欠陥が無くても、前述したような輝度ムラ及び/又は色ムラに起因する表示ムラが生じると、表示品位が低下するという問題がある。
【0008】
さらに、有機発光層の表面に反射率の大きい層を設けてマイクロキャビティにすることによって発光出力を高めることも行われるが、有機発光層の表面に凹凸があると、反射層にも凹凸が形成され、乱反射して完全な共振器とすることができず、出力の増大を得ることができなくなるという問題もある。
【0009】
一方、微細なTFTを製造するための平坦性を必要とするものではないので、前述の特許文献1に記載されているような表面平坦度が20nm以下という厳しい平坦度でなくても、有機発光層で発光する光が、ほぼ正面を中心に発光する程度に平坦になっていればよい。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、有機EL表示装置の色ムラ及び/又は輝度ムラを抑制することで表示品位を向上させた有機EL表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態の有機EL表示装置は、薄膜トランジスタを含む駆動回路が形成された表面を有する基板と、前記駆動回路を覆うことによって前記基板の前記表面を平坦化する平坦化膜と、前記平坦化膜の表面上に形成され、前記駆動回路と接続された第1電極、前記第1電極の上に形成された有機発光層、及び前記有機発光層の上に形成された第2電極を有する有機発光素子と、を備え、前記平坦化膜は、前記駆動回路の上に積層された第1無機絶縁膜及び有機絶縁膜を含んでおり、前記有機絶縁膜の表面が、算術平面粗さRaで50nm以下に形成されている。
【0012】
本発明の他の実施形態の有機EL表示装置の製造方法は、基板の上に、薄膜トランジスタを含む駆動回路を形成する工程と、前記駆動回路の表面に第1無機絶縁膜及び有機絶縁膜を形成する工程と、前記有機絶縁膜の表面をCMP研磨する工程と、前記有機絶縁膜及び前記第1無機絶縁膜に、前記TFTに達するコンタクト孔を形成する工程と、前記コンタクト孔の内部に金属を埋め込むと共に、所定の領域に第1電極を形成する工程と、前記第1電極の上に有機発光層を形成する工程と、前記有機発光層の上に第2電極を形成する工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、TFTを含む駆動回路の凸凹の表面に有機絶縁膜が形成され、その表面がCMPによって研磨されることで、その表面が算術平均粗さRaで50nm以下の平坦度になるように平坦化されている。その結果、微視的に斜め方向に進む光が大幅に抑制され、色ムラ及び/又は輝度ムラの発生を抑制し、有機EL表示装置の表示品位を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の有機EL表示装置の断面図である。
【
図2A】
図1の第2無機絶縁膜のない実施例1の有機EL表示装置の製造工程を示すフローチャートである。
【
図2B】
図2Aの工程をさらに詳細に説明するフローチャートである。
【
図3A】
図1の第2無機絶縁膜のない実施例1の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3B】
図1の第2無機絶縁膜のない実施例1の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3C】
図1の第2無機絶縁膜のない実施例1の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3D】
図1の第2無機絶縁膜のない実施例1の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3E】
図1の第2無機絶縁膜のない実施例1の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3F】
図1の第2無機絶縁膜のない実施例1の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図3G】
図1の第2無機絶縁膜のない実施例1の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図4A】
図1の有機EL表示装置の実施例2の製造工程を示す断面図である。
【
図4B】
図1の有機EL表示装置の実施例2の製造工程を示す断面図である。
【
図4C】
図1の有機EL表示装置の実施例2の製造工程を示す断面図である。
【
図4D】
図1の有機EL表示装置の実施例2の製造工程を示す断面図である。
【
図4E】
図1の有機EL表示装置の実施例2の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら本発明の一実施形態である有機EL表示装置が説明される。
図1に一実施形態の有機EL表示装置の一画素(厳密には、一画素中の赤、緑、青のサブ画素であるが、本明細書では、これらのサブ画素も含めて一画素ということもある)分の概略の断面図が示されている。
【0016】
本発明の一実施形態の有機EL表示装置は、
図1にその断面の説明図が示されるように、TFT20を含む駆動回路が形成された表面を有する基板10と、駆動回路を覆うことによって基板10の表面を平坦化する平坦化膜30と、平坦化膜30の表面上に形成され、駆動回路と接続された第1電極41、第1電極41の上に形成された有機発光層43、及び有機発光層43の上に形成された第2電極44を有する有機発光素子40と、を備えている。そして、平坦化膜30は、駆動回路の上に積層された第1無機絶縁膜31及び有機絶縁膜32を含んでおり、有機絶縁膜32の表面が、算術平面粗さRaで50nm以下に形成されている。さらに、有機発光層43がコンタクト孔30aの直上を避けて形成されている。
【0017】
すなわち、本実施形態の有機EL表示装置では、駆動回路が形成されることによって、基板10の表面が凸凹にされたのを無機絶縁膜31と有機絶縁膜32との積層による平坦化膜30を形成し、さらにその表面がCMP研磨されることによって、算術平面粗さRaで50nm以下の平坦度に形成されていることに一つの特徴がある。なお、この有機絶縁膜32の表面にさらに第2無機絶縁膜33を形成することによって平坦化膜30とすることができ、
図1に示される例では、この第2無機絶縁膜33も形成されている。さらには、本実施形態の有機EL表示装置では、駆動回路と第1電極41とを接続するコンタクト孔30aの直上ではない領域に有機発光層43が形成されていることにもう一つの特徴がある。
【0018】
前述したように、本発明者は、有機EL表示装置の色ムラ及び/又は輝度ムラが生じる原因について鋭意検討を重ねて調べた結果、有機発光素子40の有機発光層43の面に凹凸があり、微視的には、有機発光層43の表面が完全な平坦ではなく、微視的にみると傾いている部分があり、傾いていると、有機発光層43の表面の法線方向が表示面の法線方向に対して傾くことになる。そうすると、表示面と垂直方向から視認する場合、発光した光が斜め方向に進む画素の光は認識し難くなり、輝度の低下又は混色の色が変化することになる。すなわち、発光する光は、その法線方向に最も輝度が大きく法線方向から傾くにつれてその輝度は低下する。スマートフォンなどの小型の表示装置では、このサブ画素の大きさは、一辺が数十μm程度と非常に小さい。そのため、僅かな凹凸があっても有機発光層43の表面に凸凹のあるサブ画素では、正面に対する発光が非常に弱くなる。
【0019】
従来は、このような色ムラ及び/又は輝度ムラの対策としては、表示パネルの外縁にTFTを作り込んでおいて、製品になった後の検査で色ムラ及び/又は輝度ムラがある画素の輝度を回路によって調整することが行われている。そのため、駆動回路が複雑になるという問題もある。
【0020】
本実施形態では、前述したように、色ムラ及び/又は輝度ムラの原因を突き止めたため、その有機発光層43の表面の平坦度を向上させるため、その下地となる平坦化膜30の表面を50nm以下にすると共に、コンタクト孔30aの直上を避けて、有機発光層43を形成することで、殆ど色ムラ及び/又は輝度ムラが発生しないことを見出した。表面粗さは、小さいほど好ましいが、前述した特許文献1に示されるように、20nm以下という平坦度にする必要はなく、算術平均粗さRaで20nm以上であっても、色ムラ又は輝度ムラが殆ど現れないことを見出した。すなわち、表面粗さは小さいほど好ましいので下限は設定されないが、表面粗さを小さくするには、研磨作業が大変になるので、20nm以上で、50nm以下の表面粗さにすることが好ましい。
【0021】
具体的には、従来の方法では、この平坦化膜は、無機バリア膜を形成してからドライエッチングによってコンタクト孔を形成し、その上に有機絶縁膜(感光性樹脂)を成膜してウェットエッチングによってコンタクト孔の形成が行われていた。すなわち、前述したように、有機絶縁膜は液状の樹脂を塗布して形成されるため、表面は平坦になり、問題ないと考えられていた。しかし、この有機絶縁膜の表面の平坦度は、非感光性樹脂を用いても、算術平均粗さRaで100~300nm程度あり、感光性樹脂ではこれよりもさらに大きくなり、本発明者は、この程度の平坦化では十分でないことを突き止めた。この場合、感光性樹脂が用いられると、混入される光重合開始剤の影響によって、さらに表面粗さが大きくなる。そして、前述したように、有機絶縁膜32の表面をCMP研磨することによって、表面粗さを算術平均粗さRaで20nm以上、50nm以下にすることによって、色ムラ及び/又は輝度ムラの発生を殆ど抑制し得ることを見出した。すなわち、前述の特許文献1に記載されているような20nm以下の平坦度にする必要はないが、50nm程度以下にする必要がある。
【0022】
(有機EL表示装置の構造)
次に、
図1に示される有機EL表示装置及びその製造方法について具体的に説明がされる。
【0023】
基板10は、基板面を表示面として表示画像を視認するボトムエミッション型の場合には、有機発光層43で発光した光を透過させる必要があり、透光性の材料で、絶縁性の基板が用いられる。具体的には、ガラス基板又は、ポリイミドなどの樹脂フィルムが用いられる。樹脂フィルムが用いられることによって、有機EL表示装置を可撓性にすることができ、曲面などに貼り付けることも可能になる。
【0024】
基板10がガラス基板の場合は必要ないが、基板10がポリイミドのような樹脂フィルムの場合には、表面が結晶性でなく、半導体層を直接形成し難いため、ベースコート層11が形成される。ベースコート層11としては、例えばプラズマCVD法によってSiO2を500nm厚/SiNxを50nm厚/SiO2を250nm厚程度の積層体が形成される。
【0025】
ベースコート層11の上にTFT20を含む駆動回路が形成されている。
図1では、陰極配線27のみが示されているが、その他のゲート配線及び信号配線なども同様に形成されている。そして、その上にTFT20が形成されている。
図1では、発光素子40を駆動するTFT20のみが示されているが、その他のスイッチングTFTなど、他のTFTも同様に形成されている。この駆動回路は、有機EL表示装置が基板10と反対面を表示面とするトップエミッション型の場合は、有機発光素子40の発光領域の下方の全面に亘って形成され得る。しかし、基板10側を表示面とするボトムエミッション型では、有機発光素子40の発光領域の下方にTFTなどを形成することはできない。そのため、TFTなどは発光領域と平面的に重なる部分の周囲に形成される必要がある。この場合、周囲のTFT又は配線が形成される領域と発光領域の下のTFTなどが形成されない領域との境界部に傾斜面ができるため、発光領域の周縁部で凹凸ができ、表示品位を低下させる原因になる。従って、ボトムエミッション型でも、同様の平坦度が求められる。なお、キャパシタも各画素に形成されるが、広い面積で厚さは薄く発光領域の下に形成されても殆ど微細な凸凹の原因にはならない。
【0026】
TFT20は、ソース21s、チャネル21c、及びドレイン21dを有する半導体層21と、ゲート絶縁膜22とゲート電極23と層間絶縁膜24とソース電極25とドレイン電極26とで形成されている。ゲート絶縁膜22は、50nm厚程度のSiO
2などからなり、ゲート電極23は、250nm厚程度のMoなどの成膜後のパターニングなどによって形成されている。その上には300nm厚程度のSiO
2膜と300nm厚程度のSiN
x膜からなる層間絶縁膜24が形成され、ソース21s及びドレイン21dと接続するようにソース電極25及びドレイン電極26が形成されることによってTFT20を含む駆動回路が形成されている。なお、層間絶縁膜24が形成される前に、ソース21s及びドレイン21dの電極接続部には、ボロンがドーピングされてp
+化され、アニールによって活性化されている。さらに具体的な構造に関しては、後述される製造方法の具体例で説明される。なお、
図1に示される例では、ゲート電極23が半導体層21の基板10と反対側に形成されるトップゲートの構造であるが、基板10上にゲート電極23が形成されるボトムゲートの構造でも同様である。
【0027】
このTFT20を含む駆動回路の表面にバリア層としての200nm厚程度のSiNxなどからなる第1無機絶縁膜31と、例えばポリイミド又はアクリル樹脂からなる有機絶縁膜32を2μm程度成膜して表面がCMP研磨されることによって、表面粗さが算術平均粗さRaで50nm以下にされている。この有機絶縁膜は、光重合開始剤を混入した感光性の有機絶縁膜でもよい。感光性の有機絶縁膜であれば、第1無機絶縁膜31の形成後に有機絶縁膜32が形成され、フォトリソグラフィ工程による露光と現像でコンタクト孔30aが形成される。この場合、コンタクト孔30aが形成された後にCMP研磨がなされてもよい。有機絶縁膜32をCMP研磨する際に、コンタクト孔30a内にCMPの研磨剤入り込んでも、コンタクト孔の大きさは、研磨剤の粒径より遥かに大きい(例えば50倍程度)ので、洗浄で除去することができ、特に問題は生じない。有機絶縁膜32が非感光性の場合には、第1無機絶縁膜31と一括してコンタクト孔30aが形成される。この際、有機EL表示装置の陰極(第2電極)を陰極配線27と接続するための第2コンタクト45を形成するためのコンタクト孔30bも同時に平坦化膜30に形成されている。
【0028】
図1に示される例では、この有機絶縁膜32の上に例えばSiN
xなどからなる400nm厚程度の第2無機絶縁膜33が形成されている。この第2無機絶縁膜33が形成されることによって、コンタクト孔30aを形成するエッチングの際に、エッチャントによる有機絶縁膜の腐食を防止することができるので好ましい。また、無機絶縁膜は、その下地の平坦性をそのまま維持するので、研磨をする必要もない。この第2無機絶縁膜33の形成後に、3層を一括してエッチングすることによってコンタクト孔30aが形成されている。
【0029】
そして、例えばITOとAg又はAPCなどの金属とITOがスパッタリングなどによって成膜されることによって、コンタクト孔30a内にAgなどの金属が埋め込まれると共に、有機絶縁膜32又は第2無機絶縁膜33(第2無機絶縁膜33が形成される場合)、すなわち平坦化膜30の表面に同じAg又はAPCなどの金属とITOの導電層が形成された後にパターニングによって、表面と最下層がITO膜で、その間にAg又はAPCがサンドイッチされたITO/Ag又はAPC/ITOの積層膜などにより第1電極(陽極)41が形成される。この第1電極41は、コンタクト孔30aの内部に埋め込まれた導体層と連続して形成されるが、コンタクト孔30aの上の凹みが生じやすい場所を避けて、表面が平坦にされた平坦化膜30の表面に位置するようにパターニングして形成されている。これによって第1電極41の表面も平坦化膜30の表面と同程度の平坦度にされ、その上の有機発光層43の表面も同程度の平坦になる。
【0030】
第1電極(陽極)41は、有機発光層43との関係で、仕事関数が5eV程度のものが好ましく、トップエミッション型の場合、上記材料が用いられる。ITO膜は10nm程度の厚さに形成され、Ag又はAPCは100nm程度の厚さに形成される。ボトムエミッション型の場合には、ITO膜が300nm~1μm程度の厚さに形成される。その第1電極41の周縁部に各画素を区画すると共に、陽極と陰極の絶縁を図るための絶縁材料からなる絶縁バンク42が形成されており、その絶縁バンク42によって囲まれる第1電極41の上に有機発光層43が積層されている。
【0031】
有機発光層43は、絶縁バンク42に囲われて露出する第1電極41の上に積層される。この有機発光層43は、
図1などでは一層で示されているが、種々の材料が積層されて複数層で形成される。また、この有機発光層43は水分に弱く全面に形成してからパターニングをすることができないため、蒸着マスクを用いて、蒸発又は昇華させた有機材料を選択的に必要な部分のみに蒸着することによって形成される。又は印刷によって有機発光層43が形成されてもよい。
【0032】
具体的には、例えば第1電極(陽極電極)41に接する層として、正孔の注入性を向上させるイオン化エネルギーの整合性の良い材料からなる正孔注入層が設けられる場合がある。この正孔注入層上に、正孔の安定な輸送を向上させると共に、発光層への電子の閉じ込め(エネルギー障壁)が可能な正孔輸送層が、例えばアミン系材料により形成される。さらに、その上に発光波長に応じて選択される発光層が、例えば赤色、緑色に対してはAlq3に赤色又は緑色の有機物蛍光材料がドーピングされて形成される。また、青色系の材料としては、DSA系の有機材料が用いられる。一方、図示しないカラーフィルタで着色される場合には、発光層は全てドーピングすることなく同じ材料で形成され得る。発光層の上には、さらに電子の注入性を向上させると共に、電子を安定に輸送する電子輸送層が、Alq3などにより形成される。これらの各層がそれぞれ数十nm程度ずつ積層されることにより有機発光層43の積層膜が形成されている。なお、この有機発光層43と第2電極44との間にLiFやLiqなどの電子の注入性を向上させる電子注入層が設けられることもある。これは有機層ではないが、本明細書では、有機層によって発光させるものとして、有機発光層43内に含めている。
【0033】
前述したように、有機発光層43の積層膜のうち、発光層は、R、G、Bの各色に応じた材料の有機材料が堆積されないで、カラーフィルタによってカラーの表示装置にされてもよい。すなわち、発光層が同じ有機材料で形成され、図示しないカラーフィルタにより発光色が特定されてもよい。また、正孔輸送層、電子輸送層などは、発光性能を重視すれば、発光層に適した材料で別々に堆積されることが好ましい。しかし、材料コストの面を勘案して、R、G、Bの2色又は3色に共通して同じ材料で積層される場合もある。
【0034】
LiF層などの電子注入層などを含む全ての有機発光層43の積層膜が形成された後に、その表面に第2電極44が形成されている。具体的には、第2電極(例えば陰極)44が有機発光層43の上に形成される。この第2電極(陰極)44は、全画素に亘って、共通で連続して形成されている。この陰極44は、平坦化膜30に形成された第2コンタクト45及びTFT20の絶縁膜22、24に形成された第1コンタクト28を介して、陰極配線27に接続されている。第2電極44は透光性の材料、例えば、薄膜のMg-Ag共晶膜により形成され、水分で腐食しやすいので、その表面に設けられる被覆層46によって被覆されている。陰極材料は仕事関数の小さい材料が好ましく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属などが用いられ得る。Mgは仕事関数が3.6eVと小さいので好ましいが、活性で安定しないので、仕事関数が4.25eVのAgが10質量%程度の割合で共蒸着されている。Alも仕事関数は4.25eV程度と小さく、下地にLiFが用いられることによって陰極材料として十分に使用し得る。そのため、ボトムエミッション型では、この第2電極44にAlを厚く形成し得る。
【0035】
被覆層(TFE:Thin Film Encapsulation)46は、例えばSiNx、SiO2などの無機絶縁膜からなり、一層、又は二層以上の積層膜によって形成され得る。例えば一層の厚さが0.1μmから0.5μm程度で、好ましくは二層程度の積層膜で形成される。この被覆層46は、異なる材料で多層に形成されるのが好ましい。被覆層46は、複数層で形成されることによって、ピンホールなどができても、複数層でピンホールが完全に一致することは殆ど無く、外気から完全に遮断する。前述のように、この被覆層46は、有機発光層43及び第2電極44を完全に被覆するように形成される。なお、二層の無機絶縁膜の間に有機絶縁材料を備えていてもよい。
【0036】
(有機EL表示装置の製造方法)
実施例1
次に、
図1に示される有機EL表示装置の第2無機絶縁膜33のない有機EL表示装置の製造方法が、
図2A~2Bのフローチャート及び
図3A~3Gの製造工程の図を参照しながら説明される。
【0037】
まず、
図3Aに示されるように、基板10の上に、TFT20を含む駆動回路が形成される(
図2AのS1)。具体的には、
図2Bにフローチャートが示されるように、基板10の上にベースコート層11が形成される(S11)。ベースコート層11は、例えばプラズマCVD法によって、SiO
2層を500nm程度の厚さに形成し、その上にSiN
x層を50nm程度の厚さに形成することによって下層を積層し、さらにその上層としてSiO
2層を250nm程度の厚さに積層することによって形成される。
【0038】
その後、ベースコート層11の上に、例えば減圧プラズマCVD法によってアモルファスシリコン(a-Si)層からなる半導体層21が形成される(S12)。その後、例えば窒素雰囲気下、450℃程度で45分間程度のアニール処理行うことによって、ポリシリコン化(LTPS:Low Temperature Poly Silicon)が行われる(S13)。
【0039】
次に、フォトリソグラフィ工程によって、レジストマスクが形成され、ドライエッチングなどによって半導体層21がパターニングされ、TFT20となる部分の半導体層21と陰極配線27などの配線が形成される(S14)。その後にゲート絶縁膜22が成膜される(S15)。ゲート絶縁膜22は、プラズマCVD法によって、SiO2を50nm程度成膜することで形成される。
【0040】
その後、例えばスパッタ法によって、モリブデン(Mo)などの金属膜が250nm程度の厚さに成膜され、フォトリソグラフィ工程によって、レジストマスクの形成後にドライエッチングがなされることによって、パターニングされることでゲート電極23が形成される(S16)。
【0041】
その後、半導体層21にソース21s、ドレイン21dが形成される。具体的には、例えばボロン(B+)をドーピングした後、400℃程度で1時間程度のアニール処理をすることによって活性化することで、ソース21s、ドレイン21dの低抵抗化が図られて形成される(S17)。ゲート電極23がマスクになるので、チャネル21cにはボロンイオンは打ち込まれず、ソース21s、ドレイン21dのみに打ち込まれて低抵抗化される。
【0042】
その後、全面に層間絶縁膜24が形成され、ソース21s、ドレイン21dの一部を露出させるコンタクト孔24aが形成される(S18)。層間絶縁膜24は、例えば減圧プラズマCVD法によって、主にSiO2からなる300nm程度の厚さの下層と、主にSiNxからなる300nm程度の厚さの上層との積層膜によって形成される。コンタクト孔24aは、レジスト膜の形成とフォトリソグラフィ工程によってマスクを形成し、ウェットエッチングを行うことで形成される。
【0043】
その後、金属を成膜することで、コンタクト孔24a内に金属が埋め込まれると共に、層間絶縁膜24の表面にソース電極25及びドレイン電極26の金属膜が形成される(S19)。ソース電極25及びドレイン電極26の形成は、例えばスパッタリングなどによって、Ti膜を300nm程度と、Al膜を300nm程度積層し、その上にTiを100nm程度積層することによって形成される。層間絶縁膜24の上に形成された金属膜を前述と同様のフォトリソグラフィ工程とウェットエッチングによってパターニングすることによって、半導体層21のソース21s、ドレイン21dにそれぞれ接続されたソース電極25及びドレイン電極26が形成される。なお、このソース電極25及びドレイン電極26の形成と同じ工程で全く同様の方法によって、陰極配線27に接続される第1コンタクト28が形成される。
【0044】
以上の工程によって、トップゲート型で、トップコンタクト型のLTPSを用いたTFT20を含む駆動回路、すなわちバックプレーンと呼ばれる部分が形成される。しかし、TFT20はこの構造に限定されず、トップゲートでボトムコンタクト構造、ボトムゲートでトップコンタクト構造、又はボトムゲートでボトムコンタクト構造などの他の構造でも用いられ得る。
【0045】
その後、
図3Bに示されるように、駆動回路の表面に第1無機絶縁膜31と有機絶縁膜32とが形成される(
図2Aに戻りS2)。第1無機絶縁膜31は、例えばプラズマCVD法によって、SiN
xを200nm程度の厚さに形成される。これは、有機絶縁膜32の成分がTFT20の方に侵入するのを防止するバリア層として機能する。また、有機絶縁膜32は、TFT20などの形成によって表面に凹凸のある部分に埋め込むもので、液状の樹脂を塗布することで有機絶縁膜32の表面が平坦化しやすい。塗布法としては、スリットコートやスピンコートなどの方法があるが、両方を合せたスリット・アンド・スピンコート法であってもよい。この有機絶縁膜32は2μm程度の厚さになるように形成され、例えばポリイミド樹脂又はや、アクリル樹脂が用いられ得る。これらの樹脂に光重合開始剤を混入させた感光性樹脂でもよい。しかし、光重合開始剤を含まない非感光性樹脂であれば、純度が高く、しかも表面平滑性が高いので好ましい。特に、アクリル樹脂が好ましい。
【0046】
次に、
図3Cに示されるように、この有機絶縁膜32の表面がCMP研磨される(S3)。有機絶縁膜32は、液状の樹脂を塗布して乾燥させるため、表面が平坦になりやすく、前述したように、この表面は、算術平均の表面粗さRaで100~300nm程度に形成されている。しかし、前述したように、この有機絶縁膜32の塗布だけの平坦度では、色ムラ及び/又は輝度ムラが現れ、発光特性を十分に満足し得ないことを本発明者は見出した。そのため、CMP研磨によって、その表面の平坦度を算術平均粗さRaで50nm以下になるように研磨している。この平坦度は小さいほど好ましいが、特許文献1に示されるような20nm以下という非常に平坦性を要求されるものではない。50nm程度以下であれば、色ムラ及び/又は輝度ムラが問題になるほどには現れなかった。このCMP研磨は、例えばセリア(CeO
2)系のスラリー又はヒュームドシリカ系スラリーを水とアルコールと共に供給しながら、有機絶縁膜32の表面を研磨することによってなされる。
【0047】
その後、
図3Dに示されるように、この平坦化膜30にTFT20に達するコンタクト孔30aが形成される(S4)。このコンタクト孔30aの形成は、前述したコンタクト孔24aなどと同様に、レジストマスクを形成して、ドライエッチングなどのエッチングによって行われる。なお、この平坦化膜30のように、無機絶縁膜と有機絶縁膜とが混在する層を纏めてエッチングをする場合には、両者のエッチングレートが異なるので、特にドライエッチングによってエッチングすることで、両者の界面に段差が生じ難いので好ましい。段差が生じると、コンタクト孔30a内に埋め込む金属が完全に埋め込まれず、ソース電極25などとの接触抵抗が増大するという問題を発生しやすい。
【0048】
その後、
図3Eに示されるように、コンタクト孔30aの内部に金属が埋め込まれると共に、所定の領域に有機発光素子40用の第1電極41が形成される(S5)。具体的には、例えばスパッタリングなどによって、ITO膜を10nm程度とAg膜又はAPC膜を100nm程度積層した下層と、10nm厚程度のITO膜からなる上層が成膜される。その結果、コンタクト孔30aの内部にITOと金属が埋め込まれると共に、平坦化膜30の表面にITOと金属膜とITO膜の積層膜が形成される。その後、そのITOと金属の積層膜をパターニングすることによって、第1電極41が形成される。
【0049】
その後、
図3Fに示されるように、第1電極41の上に有機発光層43が形成される(S6)。具体的には、第1電極41の周縁部に各画素を区画すると共に、陰極と陽極の接触を防止するための絶縁バンク42が形成される。絶縁バンク42は、SiO
2などの無機絶縁膜でもよいし、ポリイミド又はアクリル樹脂などの有機絶縁膜でもよい。全面に成膜され、第1電極41の所定の場所が露出するように形成される。絶縁バンク42の高さは、1μm程度に形成される。前述したように、有機発光層43は、各種の有機材料が積層されるが、有機材料の積層は、例えば真空蒸着によって行われ、その場合には、蒸着マスクの開口を通してR、G、Bなどの所望のサブ画素を開口した蒸着マスクを介して形成される。有機発光層43の表面には、電子の注入性を向上させるLiFなどの層が形成され得る。なお、蒸着によらないで、インクジェット法などによる印刷によっても形成され得る。第1電極41にAg又はAPCを用いるのは、有機発光層43で発光した光を反射させてトップエミッション型として使用するためである。
【0050】
その後、
図3Gに示されるように、有機発光層43の上に、第2電極(陰極)44が形成される(S7)。第2電極44は、薄膜のMg-Ag共晶膜を蒸着などによって全面に形成して陰極とされる。なお、この第2電極44は、第2コンタクト45上にも形成されることで第2コンタクト45、第1コンタクト28を介して陰極配線27に接続されている。このMg-Ag共晶膜は、MgとAgの融点が異なるので、別々のるつぼから蒸発させて成膜時に共晶化する。Mgが90質量%程度でAgが10質量%程度の割合で、10~20nm程度の厚さに形成される。
【0051】
この第2電極44の上には、第2電極44及び有機発光層43を水分又は酸素などから護る被覆層46が形成される。この被覆層46は、水分又は酸素に弱い第2電極44及び有機発光層43を保護するため、水分などを吸収し難い、SiO
2、SiN
xなどの無機絶縁膜がCVD法などによって形成される。しかも、この被覆層46は、その端部が第2無機絶縁膜33などの無機膜と密着するように形成される。無機膜同士の接合であれば、密着性良く接合されるが、有機膜とでは、完全な密着性のよい接合を得にくいからである。従って、
図1に示される第2無機絶縁膜33が無い場合には、有機絶縁膜32の一部を除去して、その下層の第1無機絶縁膜と接合させることが好ましい。そうすることによって、水分などの浸入を完全に防止し得る。
【0052】
実施例2
図2A~2B及び
図3A~3Gに示される実施例1の製造方法は、平坦化膜30が第1無機絶縁膜31と有機絶縁膜32によって形成されていた(
図1の構造の第2無機絶縁膜33が無い構造)。このような構造でも、有機絶縁膜32の表面が研磨されており、その表面に第1電極41が形成されている。そのため、平坦化膜30の表面は平坦になっていて問題はない。しかし、コンタクト孔30aを形成する際に、ウェットエッチングなどを行うと水分などが有機絶縁膜32に浸入しやすく、ドライエッチングで行っても、エッチングガスなどが浸入しやすいという問題がある。水分などが浸入すると、発光素子が形成されて動作しているときに、浸み出してくると有機発光層43又は第2電極44の材料を劣化させる恐れがある。そのため、第2無機絶縁膜33が有機絶縁膜32の表面に形成されることが好ましく、
図1にはその構造が示されている。その製造方法が
図4A~4Eを参照しながら説明される。
【0053】
前述の
図3Cに示される工程までは、実施例1と同様に行われる。すなわち、有機絶縁膜32の表面がCMP研磨によって、平坦化されている。その後、
図4Aに示されるように第2無機絶縁膜33が、第1無機絶縁膜31と同様に、SiN
xをプラズマCVDなどによって、200nm程度の厚さで形成される。この第2無機絶縁膜33は、前述の通りプラズマCVDなどの方法で、無機材料の堆積によって形成され、しかも非常に薄いため、有機絶縁膜32の研磨された表面の平坦度をそのまま維持する。従って、この第2無機絶縁膜33の表面も算術平均粗さRaで50nm以下の平坦度が得られる。すなわち、この第2実施例では、平坦化膜30が第1無機絶縁膜31と有機絶縁膜32と第2無機絶縁膜33とで構成されているが、その平坦化膜30の表面は、算術平均粗さRaで50nm以下の平坦面に形成されている。
【0054】
以下の工程は、前述の実施例1と同様であるが、
図4Bに示されるように、平坦化膜30にコンタクト孔30aが形成される。形成方法は、実施例1と同じであり、その説明は省略される。
【0055】
その後、
図4Cに示されるように、コンタクト孔30aの内部に金属を埋め込むと共に、平坦化膜30の表面に、有機発光素子40の第1電極41を形成する。この方法も前述した
図3Eの工程と同じであり、その説明は省略される。
【0056】
その後、
図4Dに示されるように、絶縁バンク42が形成された後、有機発光層43が、例えば真空蒸着などの方法によって形成される。この方法も前述した実施例1の
図3Fに示される工程と同じであり、その詳細な説明は省略される。
【0057】
その後、
図4Eに示されるように、全面に第2電極44が形成される。この工程も前述した実施例1の
図3Gに示される工程と同じであり、同様の方法で形成することができる。その後、この表面に被覆層46が形成されることによって、
図1に示される有機EL表示装置が得られる。
【0058】
(まとめ)
(1)本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置は、薄膜トランジスタを含む駆動回路が形成された表面を有する基板と、前記駆動回路を覆うことによって前記基板の前記表面を平坦化する平坦化膜と、前記平坦化膜の表面上に形成され、前記駆動回路と接続された第1電極、前記第1電極の上に形成された有機発光層、及び前記有機発光層の上に形成された第2電極を有する有機発光素子と、を備え、前記平坦化膜は、前記駆動回路の上に積層された第1無機絶縁膜及び有機絶縁膜を含んでおり、前記有機絶縁膜の表面が、算術平面粗さRaで50nm以下に形成されている。
【0059】
本実施形態によれば、平坦化膜の表面を有機絶縁膜で形成された表面のまま、有機発光素子の第1電極を形成するのではなく、有機絶縁膜の表面がCMP研磨によって、表面が算術平面粗さRaで50nm以下に形成され、さらに、有機発光層がコンタクト孔の直上を避けて形成されている。その結果、微視的な平面状態でも、凹凸が無く、小さなサブ画素の有機発光層の表面の法線方向が表示面の法線方向と一致する。その結果、小さなサブ画素の一部の光が斜め方向に進むという問題は無くなり、輝度ムラ、色ムラなどの表示品位を低下させる要因が無くなる。その結果、非常に表示品位の優れた有機EL表示装置が得られる。
【0060】
(2)前記有機絶縁膜が、アクリル樹脂、又はポリイミド樹脂であることが、耐熱性もあり、安定した絶縁膜になるので好ましい。
【0061】
(3)前記有機絶縁膜が非感光性樹脂であることが、表面を凸凹にしやすい光重合開始剤を含まないので、表面の平坦性が十分に得られやすく好ましい。
【0062】
(4)前記平坦化膜が、前記有機絶縁膜の上に第2無機絶縁膜が形成されることによって3層構造であることが、コンタクト孔の形成の際などにも、水分などが有機絶縁膜に侵入することを阻止しやすいので好ましい。
【0063】
(5)前記コンタクト孔が、前記3層構造に一括して形成されていることによって、有機絶縁膜がエッチング雰囲気に晒されることが無く、有機絶縁膜への水分などの侵入を抑制し得る点で好ましい。
【0064】
(6)前記有機発光素子は、前記薄膜トランジスタが前記有機発光層の投影領域には形成されないで、前記基板側から光を取り出すボトムエミッション型の発光素子、又は前記薄膜トランジスタが前記有機発光層の投影領域にも形成され、前記第2電極から光を取り出すトップエミッション型の発光素子でのいずれの構造にもすることができる。すなわち、いずれの構造にしても、平坦化膜の平坦性によって、輝度ムラ、色ムラなどの表示品位を低下させる要因が無くなり、非常に表示品位の優れた有機EL表示装置が得られる。
【0065】
(7)本発明の他の実施形態の有機EL表示装置の製造方法は、基板の上に、薄膜トランジスタを含む駆動回路を形成する工程と、前記駆動回路の表面に第1無機絶縁膜及び有機絶縁膜を形成する工程と、前記有機絶縁膜の表面をCMP研磨する工程と、前記有機絶縁膜及び前記第1無機絶縁膜に、前記TFTに達するコンタクト孔を形成する工程と、前記コンタクト孔の内部に金属を埋め込むと共に、所定の領域に第1電極を形成する工程と、前記第1電極の上に有機発光層を形成する工程と、前記有機発光層の上に第2電極を形成する工程と、含んでいる。
【0066】
本実施形態によれば、有機絶縁膜の表面をCMP研磨しているので、平坦化膜の表面が微視的に見ても平坦になっている。そのため、有機発光層の表面の法線方向が表示面の法線方向と異なり、色ムラ、輝度ムラの原因となることが抑制される。
【0067】
(8)前記有機絶縁膜の上に第2無機絶縁膜を形成し、前記第2無機絶縁膜、前記有機絶縁膜及び前記第1絶縁膜の3層を一括して前記コンタクト孔を形成することが、コンタクト孔の形成工程が簡単であるのみならず、有機絶縁膜が無機絶縁膜で保護されているので、水分などの侵入を抑制し得る点で好ましい。
【0068】
(9)前記平坦化の工程を、中性のセリア系研磨材、又はヒュームドシリカ系スラリーを水とアルコールと共に供給しながら研磨することによって、表面平坦度を算術平均粗さRaで20nm以上、50nm以下に研磨することが、有機絶縁膜を平坦に研磨することができるので好ましい。
【0069】
(10)前記コンタクト孔の形成を、ドライエッチングによって行うことが、エッチングレートの異なる無機絶縁膜と有機絶縁膜との界面にも段差が生じることなくエッチングできるので好ましい。無機絶縁膜と有機絶縁膜の境界面に段差ができると、コンタクト孔内にきれいに金属が埋め込まれず、接触抵抗の増大などを招きやすい。
【符号の説明】
【0070】
10 基板
20 TFT
21 半導体層
30 平坦化膜
31 第1無機絶縁膜
32 有機絶縁膜
33 第2無機絶縁膜
40 有機発光素子
41 第1電極(陽極)
43 有機発光層
44 第2電極(陰極)