(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】太陽電池および光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0236 20060101AFI20231226BHJP
H01L 31/074 20120101ALI20231226BHJP
【FI】
H01L31/04 280
H01L31/06 440
(21)【出願番号】P 2022164202
(22)【出願日】2022-10-12
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】202211098196.3
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】512083920
【氏名又は名称】晶科能源股分有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】毛傑
(72)【発明者】
【氏名】ワウ ショウ
(72)【発明者】
【氏名】鄭霈霆
(72)【発明者】
【氏名】楊潔
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン シン ウ
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-112379(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113964241(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114823951(CN,A)
【文献】特開2014-192370(JP,A)
【文献】特開2022-058069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する前面および裏面を有し、前面が金属パターン領域を備える基板と、
前記金属パターン領域に位置する第1ピラミッド構造と、
前記基板の裏面に設けられたプラットフォーム突起構造であって、ここで、前記第1ピラミッド構造の高さ寸法が前記プラットフォーム突起構造の高さ寸法より大きく、かつ、前記第1ピラミッド構造のボトム一次元寸法が前記プラットフォーム突起構造のボトム一次元寸法より小さいプラットフォーム突起構造と、
前記基板の前面部分に位置し、かつ前記基板から離れる方向に設置された第1トンネル層および第1ドーピング導電層であって、
前記第1トンネル層および前記第1ドーピング導電層が前記金属パターン領域のみに形成され、前記第1ドーピング導電層のドーピング元素タイプは前記基板のドーピング元素タイプと同じである第1トンネル層および第1ドーピング導電層と、
前記基板の裏面に位置し、かつ前記基板から離れる方向に設置された第2トンネル層および第2ドーピング導電層であって、前記第2ドーピング導電層のドーピング元素タイプは前記第1ドーピング導電層のドーピング元素タイプと異なる第2トンネル層および第2ドーピング導電層と、を含む、
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第1ピラミッド構造のボトム一次元寸法は0.7μm~3μmであり、前記第1ピラミッド構造のトップからボトムまでの高さ寸法は0.5μm~3.2μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1ピラミッド構造の斜辺と前記第1ピラミッド構造のボトムとの夾角は30°~70°である、
ことを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1ピラミッド構造の斜辺の長さは1.2μm~2.5μmである、
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記プラットフォーム突起構造のボトム一次元寸法は6μm~10μmであり、前記プラットフォーム突起構造のトップからボトムまでの高さ寸法は0.2μm~0.4μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記プラットフォーム突起構造の斜辺と前記プラットフォーム突起構造のボトムとの夾角は10°~50°である、
ことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記プラットフォーム突起構造の斜辺の長さは0.3μm~2.3μmである、
ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
さらに前記金属パターン領域に位置する第2ピラミッド構造を含み、前記第1ピラミッド構造の前記金属パターン領域における基板の前面部分に占める面積割合は前記第2ピラミッド構造の前記金属パターン領域における基板の前面部分に占める面積割合より大きく、前記第2ピラミッド構造の斜辺と前記第2ピラミッド構造のボトムとの夾角は40°~70°である、
ことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第2ピラミッド構造のボトム一次元寸法は1μm以下であり、前記第2ピラミッド構造のトップからボトムまでの高さ寸法は1.2μm以下である、
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記基板の前面はさらに非金属パターン領域を含み、前記太陽電池は、前記非金属パターン領域に位置する第3ピラミッド構造と第4ピラミッド構造を備え、前記第3ピラミッド構造のボトム寸法は前記第4ピラミッド構造のボトム寸法より大きく、前記第3ピラミッド構造の非金属パターン領域における基板の前面部分に占める面積割合は、前記第1ピラミッド構造の金属パターン領域における基板の前面部分に占める面積割合より小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第3ピラミッド構造の斜辺と前記第3ピラミッド構造のボトムとの夾角は35°~65°であり、前記第4ピラミッド構造の斜辺と前記第4ピラミッド構造のボトムとの夾角は40°~65°である、
ことを特徴とする請求項10に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第3ピラミッド構造の斜辺の長さは1.2μm~2.5μmであり、前記第4ピラミッド構造の斜辺の長さは0.5μm~1.2μmである、
ことを特徴とする請求項11に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記非金属パターン領域における基板の前面部分の反射率は0.8%~2%であり、前記基板の裏面の反射率は14%~15%である、
ことを特徴とする請求項12に記載の太陽電池。
【請求項14】
さらに第1パッシベーション層を含み、前記第1パッシベーション層の第1部分は前記第1ドーピング導電層の前記基板から離れた表面に位置し、前記第1パッシベーション層の第2部分は前記非金属パターン領域が向かう前面に位置する、
ことを特徴とする請求項13に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記第1パッシベーション層の第1部分は前記第1パッシベーション層の第2部分と面一ではない、
ことを特徴とする請求項14に記載の太陽電池。
【請求項16】
さらに第2パッシベーション層を含み、前記第2パッシベーション層は前記第2ドーピング導電層の前記基板から離れた表面に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項17】
さらに第1電極を含み、前記第1電極は前記金属パターン領域に設けられ、前記第1ドーピング導電層と電気的に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項18】
さらに拡散領域を含み、前記拡散領域は前記金属パターン領域が向かう前記基板に位置し、前記拡散領域のトップは前記第1トンネル層と接触し、前記拡散領域のドーピング元素濃度が前記基板のドーピング元素濃度より大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項19】
前記基板はN型シリコン基板である、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の太陽電池を接続してなるセルストリングと、
前記セルストリングの表面を覆うための封止層と、
前記封止層の前記セルストリングから離れた表面を覆うためのカバープレートと、を含む、
ことを特徴とする光起電力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、太陽電池の分野に関し、特に太陽電池および光起電力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は優れた光電変換能力を持っており、通常、太陽電池を製造する過程において、まず、基板にテクスチャを作成し、基板前面と基板裏面にテクスチャ構造を持たせる必要がある。テクスチャ構造は、基板の入射光に対する吸収、その後に基板に成長する膜層の均一性及び基板界面との接触性能に重要な影響をもたらし、太陽電池の光線変換性能にも影響を及ぼす。
【0003】
しかしながら、従来の太陽電池には、光電変換効率が低いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例には、少なくとも太陽電池の光電変換効率を向上させることに有利である太陽電池および光起電力モジュールが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施例には、太陽電池が提供され、当該太陽電池は、対向する前面および裏面を有し、前面が金属パターン領域を備える基板と、前記金属パターン領域に位置する第1ピラミッド構造と、前記基板の裏面に設けられたプラットフォーム突起構造であって、ここで、前記第1ピラミッド構造の高さ寸法が前記プラットフォーム突起構造の高さ寸法より大きく、かつ、前記第1ピラミッド構造のボトム一次元寸法が前記プラットフォーム突起構造のボトム一次元寸法より小さいプラットフォーム突起構造と、前記金属パターン領域における基板の前面部分に位置し、かつ前記基板から離れる方向に設置された第1トンネル層および第1ドーピング導電層であって、前記第1ドーピング導電層のドーピング元素タイプは前記基板のドーピング元素タイプと同じである第1トンネル層および第1ドーピング導電層と、前記基板の裏面に位置し、かつ前記基板から離れる方向に設置された第2トンネル層および第2ドーピング導電層であって、前記第2ドーピング導電層のドーピング元素タイプは前記第1ドーピング導電層のドーピング元素タイプと異なる第2トンネル層および第2ドーピング導電層と、を含む。
【0006】
また、前記第1ピラミッド構造のボトム一次元寸法は0.7μm~3μmであり、前記第1ピラミッド構造のトップからボトムまでの高さ寸法は0.5μm~3.2μmである。
【0007】
また、前記第1ピラミッド構造の斜辺と前記第1ピラミッド構造のボトムとの夾角は30°~70°である。
【0008】
また、前記第1ピラミッド構造の斜辺の長さは1.2μm~2.5μmである。
【0009】
また、前記プラットフォーム突起構造のボトム一次元寸法は6μm~10μmであり、前記プラットフォーム突起構造のトップからボトムまでの高さ寸法は0.2μm~0.4μmである。
【0010】
また、前記プラットフォーム突起構造の斜辺と前記プラットフォーム突起構造のボトムとの夾角は10°~50°である。
【0011】
また、前記プラットフォーム突起構造の斜辺の長さは0.3μm~2.3μmである。
【0012】
また、さらに前記金属パターン領域に位置する第2ピラミッド構造を含み、前記第1ピラミッド構造の前記金属パターン領域における基板の前面部分に占める面積割合は前記第2ピラミッド構造の前記金属パターン領域における基板の前面部分に占める面積割合より大きく、前記第2ピラミッド構造の斜辺と前記第2ピラミッド構造のボトムとの夾角は40°~70°である。
【0013】
また、前記第2ピラミッド構造のボトム一次元寸法は1μm以下であり、前記第2ピラミッド構造のトップからボトムまでの高さ寸法は1.2μm以下である。
【0014】
また、前記基板の前面はさらに非金属パターン領域を含み、前記太陽電池は、前記非金属パターン領域に位置する第3ピラミッド構造と第4ピラミッド構造を備え、前記第3ピラミッド構造のボトム寸法は前記第4ピラミッド構造のボトム寸法より大きく、前記第3ピラミッド構造の非金属パターン領域における基板の前面部分に占める面積割合は、前記第1ピラミッド構造の金属パターン領域における基板の前面部分に占める面積割合より小さい。
【0015】
また、前記第3ピラミッド構造の斜辺と前記第3ピラミッド構造のボトムとの夾角は35°~65°であり、前記第4ピラミッド構造の斜辺と前記第4ピラミッド構造のボトムとの夾角は40°~65°である。
【0016】
また、前記第3ピラミッド構造の斜辺の長さは1.2μm~2.5μmであり、前記第4ピラミッド構造の斜辺の長さは0.5μm~1.2μmである。
【0017】
また、前記非金属パターン領域における基板の前面部分の反射率は0.8%~2%であり、前記基板の裏面の反射率は14%~15%である。
【0018】
また、さらに第1パッシベーション層を含み、前記第1パッシベーション層の第1部分は前記第1ドーピング導電層の前記基板から離れた表面に位置し、前記第1パッシベーション層の第2部分は前記非金属パターン領域が向かう前面に位置する。
【0019】
また、前記第1パッシベーション層の第1部分は前記第1パッシベーション層の第2部分と面一ではない。
【0020】
また、さらに第2パッシベーション層を含み、前記第2パッシベーション層は前記第2ドーピング導電層の前記基板から離れた表面に位置する。
【0021】
また、さらに第1電極を含み、前記第1電極は前記金属パターン領域に設けられ、前記第1ドーピング導電層と電気的に接続される。
【0022】
また、さらに拡散領域を含み、前記拡散領域は前記金属パターン領域が向かう前記基板に位置し、前記拡散領域のトップは前記第1トンネル層と接触し、前記拡散領域のドーピング元素濃度が前記基板のドーピング元素濃度より大きい。
【0023】
また、前記基板はN型シリコン基板である。
【0024】
それに応じて、本願の実施例では、光起電力モジュールがさらに提供され、当該光起電力モジュールは、上記のいずれか1項に記載の太陽電池を複数接続してなるセルストリングと、セルストリングの表面を覆うための封止層と、封止層のセルストリングから離れた表面を覆うためのカバープレートと、を含む。
【発明の効果】
【0025】
本願の実施例に係る技術案は、少なくとも以下の利点を有する。
【0026】
本願の実施例に係る太陽電池の技術案では、基板前面の金属パターン領域が第1ピラミッド構造を有し、裏面がプラットフォーム突起構造を有し、第1ピラミッド構造の高さがプラットフォーム突起構造の高さより大きく、第1ピラミッド構造のボトム寸法が第2ピラミッド構造のボトム寸法より小さいように設定することで、前面の粗さが裏面の粗さより大きくなり、前面の入射光に対する反射率が裏面の入射光に対する反射率より小さくなる。前面の入射光に対する吸収を強める一方、第1ドーピング導電層の入射光に対する寄生吸収を低減するために、金属パターン領域のみに第1トンネル層及び第1ドーピング導電層を形成し、これに基づいて、金属パターン領域における基板の前面部分の粗さを大きくすることで、第1トンネル層および第1ドーピング導電層と基板前面との接触面積を増やし、基板中のキャリアに大きなトンネル経路を提供し、キャリア移動度を下げることなく、基板の入射光に対する利用率を高めることができる。
【0027】
また、第2ドーピング導電層は基板とPN接合を形成するため、裏面の粗さを小さくし、裏面において第2トンネル層及び第2ドーピング導電層に大きい平坦性を持たせるように設定し、第2トンネル層と基板裏面との接触界面に良好な形態をもたらし、基板裏面の欠陥準位密度を減らし、PN接合による光生成キャリアの基板裏面での再結合の確率を下げ、光生成キャリアの基板への移動度を向上させ、キャリア濃度の向上に寄与し、太陽電池の光電変換性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
一つ又は複数の実施例は、対応する添付の図面における図で例示的に説明され、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではなく、特に断りのない限り、添付の図面における図は比例上の制限を形成しない。
【
図1】
図1は、本願の一実施例によって提供される太陽電池の断面構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本願の一実施例によって提供される太陽電池における金属パターン領域が向かう基板の前面の上面視構成SEM図である。
【
図3】
図3は、本願の一実施例によって提供される太陽電池における金属パターン領域が向かう基板の前面の側面視構成SEM図である。
【
図4】
図4は、入射光が本願の一実施例によって提供される太陽電池に反射した経路図である。
【
図6】
図6は、本願の一実施例によって提供される太陽電池における基板の裏面の上面視構成SEM図である。
【
図7】
図7は、本願の一実施例によって提供される太陽電池における基板の裏面の側面視構成SEM図である。
【
図9】
図9は、本願の一実施例によって提供される別の太陽電池の断面構成を示す図である。
【
図10】
図7は、本願の別の実施例によって提供される光起電力モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
背景技術から分かるように、従来の太陽電池には光電変換効率が低いという問題がある。
【0030】
分析によると、従来の太陽電池の光電変換効率が低い原因の1つとしては、現在、基板の前面では通常拡散プロセスを用いて一部の基板をエミッタに変換し、エミッタにおけるドーピング元素は基板におけるドーピング元素と異なっており、拡散していない基板部分とPN接合を形成することが分かる。ただし、このような構造は、基板前面の金属パターン領域のキャリア再結合が大きすぎて、太陽電池の開放電圧と変換効率に影響を及ぼす。もう1つとしては、従来の太陽電池において、基板前面及び基板裏面のテクスチャ構造は入射光及び基板表面に成長されたフィルムの品質に大きな影響をもたらし、入射光の利用率の大きさ及びフィルムの性能の良し悪しは太陽電池の光電変換性能に重要な役割を果たしている。
【0031】
本願の実施例では、太陽電池が提供され、基板前面の金属パターン領域が第1ピラミッド構造を有し、裏面がプラットフォーム突起構造を有し、第1ピラミッド構造の高さがプラットフォーム突起構造の高さより大きく、第1ピラミッド構造のボトム寸法が第2ピラミッド構造のボトム寸法より小さいように設定することで、前面の粗さが裏面の粗さより大きくなり、前面の入射光に対する反射率が裏面の入射光に対する反射率より小さくなる。前面の入射光に対する吸収を強める一方、第1ドーピング導電層の入射光に対する寄生吸収を低減するために、金属パターン領域のみに第1トンネル層及び第1ドーピング導電層を形成し、これに基づいて、金属パターン領域における基板の前面部分の粗さを大きくすることで、第1トンネル層および第1ドーピング導電層と基板前面との接触面積を増やし、基板中のキャリアに大きなトンネル経路を提供し、キャリア移動度を下げることなく、基板の入射光に対する利用率を高めることができる。また、第2ドーピング導電層は基板とPN接合を形成するため、裏面の粗さを小さくし、裏面において第2トンネル層及び第2ドーピング導電層に大きい平坦性を持たせるように設定し、第2トンネル層と基板裏面との接触界面に良好な形態をもたらし、基板裏面の欠陥準位密度を減らし、PN接合による光生成キャリアの基板裏面での再結合の確率を下げ、光生成キャリアの基板への移動度を向上させ、キャリア濃度の向上に寄与し、太陽電池の光電変換性能を改善することができる。
【0032】
以下、本願の各実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、当業者は理解できるが、読者に本願をよりよく理解させるために、本願の各実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部及び以下の各実施例に基づく種々の変更や修正がなくても、本願が保護を要求している技術案を実現することができる。
【0033】
図1は、本願の一実施例によって提供される太陽電池の断面構成を示す図である。
【0034】
図1に示すように、太陽電池は、対向する前面および裏面を有し、前面が金属パターン領域を備える基板と、金属パターン領域に位置する第1ピラミッド構造11と、基板100の裏面に設けられたプラットフォーム突起構造13であって、ここで、第1ピラミッド構造11の高さ寸法がプラットフォーム突起構造13の高さ寸法より大きく、かつ、第1ピラミッド構造11のボトム一次元寸法がプラットフォーム突起構造13のボトム一次元寸法より小さいプラットフォーム突起構造13と、金属パターン領域における基板100の前面部分に位置し、かつ基板100から離れる方向に設置された第1トンネル層110および第1ドーピング導電層120であって、第1ドーピング導電層120のドーピング元素タイプは基板100のドーピング元素タイプと同じである第1トンネル層110および第1ドーピング導電層120と、基板100の裏面に位置し、かつ基板100から離れる方向に設置された第2トンネル層130および第2ドーピング導電層140であって、第2ドーピング導電層140のドーピング元素タイプは第1ドーピング導電層120のドーピング元素タイプと異なる第2トンネル層130および第2ドーピング導電層140と、を含む。
【0035】
本願の実施例では、金属パターン領域が向かう基板100の前面のテクスチャ構造(ピラミッド構造)の寸法と形状を異ならせることによって、基板100の前面の粗さは裏面の粗さより大きいようにし、基板100の前面の入射光に対する反射率を基板100の裏面の入射光に対する反射率より小さくし、基板100の前面の入射光に対する吸収利用率を高めることができる。
【0036】
一方、第1ドーピング導電層120の入射光に対する寄生吸収を低減するために、金属パターン領域のみに第1トンネル層110及び第1ドーピング導電層120を形成し、これに基づいて、金属パターン領域が向かう基板100の前面の粗さを大きくすることで、金属パターン領域が向かう基板100の前面のテクスチャ構造の比表面積が大きくなり、このように、第1トンネル層110及び第1ドーピング導電層120と基板100との前面の接触面積が大きくなる。理解できるように、第1トンネル層110および第1ドーピング導電層120はパッシベーション効果を果たし、具体的に基板100の表面の界面欠陥準位密度を下げることができ、基板100中のキャリアが第1トンネル層110を介して基板100間の接触界面を第1ドーピング導電層120にトンネルし、キャリアの選択的な輸送を実現できる。このことから、第1トンネル層110と基板100との間の接触面積を増やすと、基板100中のキャリアの第1ドーピング導電層120へのトンネル経路を大きくすることができ、キャリアの輸送効率を向上させ、第1ドーピング導電層120中のキャリア濃度を高め、短絡電流および開放電圧を増やし、キャリア移動度を大幅に下げずに、基板100の入射光に対する利用率を高めることができることが分かる。
【0037】
また、第2ドーピング導電層140と基板100とはPN接合を形成しているため、PN接合は光生成キャリアを生成するために使われ、生成した光生成キャリアは基板100に輸送され、さらに基板100を介して第1ドーピング導電層120に輸送される。このゆえに、裏面の粗さを小さくすることで、裏面に設置された第2トンネル層130及び第2ドーピング導電層140に比較的高い平坦性を持たせ、第2トンネル層130と基板100の裏面との接触界面が良好な形態を持つようにする。こうして、基板100の裏面の欠陥準位密度を低減し、PN接合による光生成キャリアの基板100の裏面での再結合の確率を低減し、光生成キャリアの基板100中への移動度を向上させ、キャリア濃度の向上に有利で、太陽電池の光電変換性能を改善することができる。
【0038】
基板100は入射光を受光して光生成キャリアを生成するために用いられ、いくつかの実施例では、基板100はシリコン基板であってもよく、シリコン基板の材料は単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンまたは微結晶シリコンの少なくとも1種であってもよい。いくつかの実施例では、基板100の材料は炭化珪素、有機材料または多成分化合物であってもよい。多成分化合物は、ペロブスカイト、ガリウム砒素、テルル化カドミウム、セレン化銅インジウムなどを含むが、これらに限定されない。
【0039】
いくつかの実施例では、基板100内にドーピング元素を備え、ドーピング元素のタイプはN型またはP型であり、N型元素はリン(P)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)またはヒ素(As)などのV族元素であってもよく、P型元素はホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)またはインジウム(In)などのIII族元素であってもよい。例えば、基板100がP型基板100の場合、その内部のドーピング元素のタイプはP型である。いくつかの実施例では、基板100がN型基板100の場合、その内部のドーピング元素のタイプはN型である。
【0040】
具体的には、いくつかの実施例では、基板100はN型シリコン基板であってもよい。これに基づいて、第1ドーピング導電層120はN型ドーピング導電層で、第2ドーピング導電層140はP型ドーピング導電層であるようにすることができる。P型の第2ドーピング導電層140とN型の基板100とはPN接合を形成して、バック接合を形成する。
【0041】
他のいくつかの実施例では、基板100はP型シリコン基板で、第1ドーピング導電層120はP型ドーピング導電層で、第2ドーピング導電層140はN型ドーピング導電層であってもよい。
【0042】
基板100の前面と裏面はいずれも入射光を受光したり、光を反射したりするために用いられることができる。基板100の前面の第1トンネル層110と第1ドーピング導電層120は基板100の前面のパッシベーションコンタクト構造を構成するために使われ、基板100の裏面の第2トンネル層130と第2ドーピング導電層140は基板100の裏面のパッシベーションコンタクト構造を構成するために使われ、基板100の前面と裏面にパッシベーションコンタクト構造を設けることにより、太陽電池は両面TOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contact、トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト)電池として形成されている。これによって、基板100の前面および裏面に位置するパッシベーションコンタクト構造は、基板100の前面および裏面の両方に対してキャリア再結合を低減する役割を果たすことができ、基板100のいずれか一方の表面のみにパッシベーションコンタクト構造を形成することに比べて、太陽電池のキャリア損失を大幅に低減し、太陽電池の開放電圧および短絡電流を高めることができる。本願の実施例では、金属パターン領域が向かう基板100の前面にのみ第1トンネル層110と第1ドーピング導電層120を設けることにより、第1ドーピング導電層120の入射光に対する寄生吸収を低減し、非金属パターン領域の入射光に対する吸収利用率を高めることができる。
【0043】
パッシベーションコンタクト構造を形成することにより、キャリアの基板100表面での再結合を低減し、太陽電池の開放電圧を増やし、太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
【0044】
第1トンネル層110と第2トンネル層130は基板100表面の界面パッシベーションを実現するために使われ、化学的パッシベーション効果を発揮する。具体的には基板100表面のダングリングボンドを飽和させることにより、基板100表面の界面欠陥準位密度を低下させ、基板100表面の再結合中心を減少させる。第1トンネル層110と第2トンネル層130の存在により、多数キャリアが基板100の界面をトンネル通過して基板100の中に到着し、キャリアの選択的輸送を実現できる。具体的には、多数キャリアは第1トンネル層110と基板100の接触界面及び第2トンネル層130と基板100の接触界面を通過して基板100にトンネルする。
【0045】
本願の実施例では、基板100の前面の金属パターン領域に第1ピラミッド構造11を持たせ、裏面にプラットフォーム突起構造13を持たせることにより、前面の粗さが裏面の粗さより大きいようにする。第1トンネル層110中のキャリア移動度を低下せずに、基板100の入射光に対する利用率を向上させることを実現する。裏面の粗さを小さくすることによって、裏面に設置された第2トンネル層130および第2ドーピング導電層140に比較的大きい平坦性を持たせ、PN接合による光生成キャリアの基板100裏面での再結合の確率を低減し、光生成キャリアの基板100への移動度を高める。つまり、前面のテクスチャ構造を基板100前面のフィルム構造とマッチングさせ、基板100裏面のテクスチャ構造を基板100裏面のフィルム構造とマッチングさせることにより、太陽電池の光電変換性能を全体的に向上させる。
【0046】
金属パターン領域が向かう基板100の前面において、第1ピラミッド構造11、第2ピラミッド構造12の数は複数であり、異なる第1ピラミッド構造11間、異なる第2ピラミッド構造12間にはわずかな寸法差があるが、各第1ピラミッド構造11、各第2ピラミッド構造12の全体寸法はほぼ近い。なお、本願の実施例における第1ピラミッド構造11、第2ピラミッド構造12の寸法は、サンプリング区間内の平均寸法であることに注意すべきである。
【0047】
いくつかの実施例では、第1ピラミッド構造11のボトム一次元寸法は0.7μm~3μmであり、例えば、0.7μm~0.9μm、0.9μm~1μm、1μm~1.2μm、1.2μm~1.4μm、1.4μm~1.5μm、1.5μm~1.7μm、1.7μm~1.9μm、1.9μm~2μm、2μm~2.3μm、2.3μm~2.5μm、2.5μm~2.8μmまたは2.8μm~3μmであってもよく、第1ピラミッド構造11のトップからボトムまでの高さ寸法は0.5μm~3.2μmであり、例えば、0.5μm~0.7μm、0.7μm~0.8μm、0.8μm~1μm、1μm~1.2μm、1.2μm~1.5μm、1.5μm~1.7μm、1.7μm~1.9μm、1.9μm~2μm、2μm~2.2μm、2.2μm~2.4μm、2.4μm~2.6μm、2.6μm~2.9μmまたは2.9μm~3.2μmであってもよい。この範囲内において、金属パターン領域が向かう基板100の前面の粗さを増やすだけでなく、第1ピラミッド構造11の占める面積割合を変化させないまま、第1ピラミッド構造11の数を減らし、異なる第1ピラミッド構造11間のわずかな寸法差による寸法不均一の問題を軽減することができる。
【0048】
図5に示すように、いくつかの実施例では、第1ピラミッド構造11の斜辺と第1ピラミッド構造11のボトムとの夾角θ
1は30°~70°であり、例えば、30°~35°、35°~40°、40°~45°、45°~50°、50°~55°、55°~60°、60°~65°または65°~70°であってもよい。この範囲内において、第1ピラミッド構造11の斜辺の傾斜程度がボトムよりも小さいため、第1ピラミッド構造11が位置する基板100の前面は比較的大きい粗さを持つことを確保することができ、第1ピラミッド構造11の表面に成長する第1トンネル層110と第1ドーピング導電層120の均一性が高くなり、第1トンネル層110と基板100前面との間の接触界面の平坦性を高め、基板100の界面準位欠陥を減らし、キャリア移動度を高めるのに有利である。
【0049】
理解できるように、第1ピラミッド構造11の斜辺の長さが大きいほど、第1ピラミッド構造11の側面積が大きくなり、これによって、第1ピラミッド構造11と第1トンネル層110との接触面積が大きくなる。これに基づいて、いくつかの実施例では、第1ピラミッド構造11の斜辺の長さを1.2μm~2.5μmとし、例えば、1.2μm~1.5μm、1.5μm~1.7μm、1.7μm~1.9μm、1.9μm~2.1μm、2.1μm~2.3μm、2.3μm~2.4μmまたは2.4μm~2.5μmであってもよい。この範囲内において、第1ピラミッド構造11が位置する基板100の前面は大きな粗さを持つことを確保しながら、第1トンネル層110と基板100の前面の接触面積を増やし、さらにキャリアのトンネル経路を拡大し、キャリア移動度を高めることができる。
【0050】
図1、
図2、
図3および
図5に示すように、いくつかの実施例では、金属パターン領域はさらに第2ピラミッド構造12を含み、第1ピラミッド構造11の基板100の前面に占める面積割合は第2ピラミッド構造12の基板100の前面に占める面積割合より大きく、第2ピラミッド構造12の斜辺と第2ピラミッド構造12のボトムとの夾角θ
2は40°~70°であり、例えば、40°~45°、45°~50°、50°~55°、55°~60°、60°~65°または65°~70°であってもよい。第2ピラミッド構造12の寸法を小さくして、金属パターン領域において、第2ピラミッド構造12が位置する基板100の前面の粗さは小さくなり、当該部分の基板100の前面に成長する第1ドーピング導電層120の表面粗さが小さくなり、当該部分の第1ドーピング導電層120の表面は入射光に対して強い反射効果を持ち、第1ドーピング導電層120の入射光に対する寄生吸収を低減するのに有利である。つまり、金属パターン領域が向かう基板100の前面に第1ピラミッド構造11と第2ピラミッド構造12の両方を設けることによって、キャリア移動度を向上させながら、第1ドーピング導電層120の入射光に対する寄生吸収を下げることができる。
【0051】
いくつかの実施例では、第2ピラミッド構造12のボトム一次元寸法は1μm以下であり、第2ピラミッド構造12のトップからボトムまでの高さ寸法は1.2μm以下である。この範囲内において、第2ピラミッド構造12が位置する基板100の前面は小さい粗さを保つことができ、第2ピラミッド構造12が向かう第1ドーピング導電層120の上面は小さい粗さを持つことができ、第1ドーピング導電層120の入射光に対する寄生吸収を低減するのに有利である。
【0052】
図1に示すように、いくつかの実施例では、基板100の前面はさらに非金属パターン領域を含み、非金属パターン領域は第3ピラミッド構造14と第4ピラミッド構造15を備え、第3ピラミッド構造14のボトム寸法は第4ピラミッド構造15のボトム寸法より大きく、第3ピラミッド構造14が非金属パターン領域の向かう基板100の前面に占める面積割合は、第1ピラミッド構造11が金属パターン領域の向かう基板100の前面に占める面積割合より小さい。非金属パターン領域において、寸法の大きい第3ピラミッド構造14の占める面積割合が小さいように設定すると、単位面積当たりの第3ピラミッド構造14と第4ピラミッド構造15の数がより多くなり、入射光に対する拡散反射効果を強め、入射光に対する反射率を減らすことができる。また、非金属パターン領域が向かう基板100の表面に第1ドーピング導電層120が設けられていないため、第1ドーピング導電層120の入射光に対する寄生吸収を避け、非金属パターン領域の入射光に対する吸収を大幅に増やすことができる。これにより、キャリア移動度を高めながら、基板100の入射光に対する利用率を増やすことができる。
【0053】
いくつかの実施例では、第3ピラミッド構造14が非金属パターン領域の向かう基板100の前面に占める面積割合は50%~70%であり、例えば、50%~55%、55%~60%、60%~65%または65%~70%であってもよく、第1ピラミッド構造11が金属パターン領域の向かう基板100の前面に占める面積割合は80%~90%であり、例えば、80%~82%、82%~83%、83%~85%、85%~87%、87%~89%または89%~90%であってもよく。この範囲内において、金属パターン領域が向かう基板100の前面と第1トンネル層110との間の接触界面は良好な形態を持つと同時に、非金属パターン領域が向かう基板100の前面の拡散反射効果を強め、入射光の利用率を高めることができる。
【0054】
金属パターン領域が向かう基板100の前面において、第3ピラミッド構造14、第4ピラミッド構造15の数は複数であり、異なる第3ピラミッド構造14間、異なる第4ピラミッド構造15間にはわずかな寸法差があるが、各第3ピラミッド構造14、各第4ピラミッド構造15の全体寸法はほぼ近い。なお、本願の実施例における第3ピラミッド構造14、第4ピラミッド構造15の寸法は、サンプリング区間内の平均寸法であることに注意すべきである。
【0055】
図4に示すように、いくつかの実施例では、基板100の前面及び基板100の裏面はいずれも受光面である場合、入射光が基板100の前面または基板100の裏面のいずれかに照射すると、一部の入射光が基板100の表面に反射される。具体的には、入射光が基板100の片方の表面に照射したときに、反射された一部の入射光は、太陽電池の外面に被覆されたパッケージ構造や周辺環境によって基板100の他方の表面に回折され、再吸収・利用される。例えば、基板100の裏面の粗さが低いため、基板100の裏面の入射光に対する反射率が高くなり、このため、基板100の裏面に照射した入射光は基板100の前面まで回折されやすくなり、これらの入射光が基板100の前面によって再吸収・利用される。
【0056】
つまり、基板100の前面に照射した入射光は、隣接する第3ピラミッド構造14間、第3ピラミッド構造14と第4ピラミッド構造15との間および隣接する第4ピラミッド構造15間での多重反射を経て基板100に入射する。入射光の反射回数が多いほど、外部に出射する入射光は少なくなり、即ち基板100に入射する入射光が多くなる。入射光の隣接する第3ピラミッド構造14間、第3ピラミッド構造14と第4ピラミッド構造15との間および隣接する第4ピラミッド構造15間での反射回数と反射角度は、第3ピラミッド構造14および第4ピラミッド構造15の斜辺とボトムとの角度にかかわっている。
【0057】
図5に示すように、上記の考えに基づいて、いくつかの実施例では、第3ピラミッド構造14の斜辺と第3ピラミッド構造14のボトムとの夾角θ
3を35°~65°とし、例えば、40°~45°、45°~50°、50°~55°、55°~60°または60°~65°であってもよく、第4ピラミッド構造15の斜辺と第4ピラミッド構造15のボトムとの夾角θ
4は40°~65°であり、例えば、40°~45°、45°~50°、50°~55°、55°~60°または60°~65°であってもよい。この夾角範囲において、非金属パターン領域の基板100の前面に照射した入射光及び基板100の裏面から再度基板100の前面に回折された入射光は、隣接する第3ピラミッド構造14間、第3ピラミッド構造14と第4ピラミッド構造15との間または隣接する第4ピラミッド構造15間での反射回数が多くなり、外部に出射される入射光の量を減らすことができる。また、非金属パターン領域において、寸法の大きい第3ピラミッド構造14の占める面積割合が大きいため、単位面積あたりの第3ピラミッド構造14と第4ピラミッド構造15の総数が金属パターン領域より多くなり、非金属パターン領域の拡散反射効果を強め、入射光の利用率を高めることができる。
【0058】
理解できるように、第3ピラミッド構造14および第4ピラミッド構造15の斜辺の長さが大きいほど、入射光の第3ピラミッド構造14側面および第4ピラミッド構造15側面での反射ルートが長くなり、反射回数をさらに増やし、入射光が外部に出射する確率を下げることができる。これに基づいて、いくつかの実施例では、第3ピラミッド構造14の斜辺の長さを1.2μm~2.5μmとし、例えば、1.2μm~1.5μm、1.5μm~1.7μm、1.7μm~1.9μm、1.9μm~2.1μm、2.1μm~2.3μm、2.3μm~2.4μmまたは2.4μm~2.5μmであってもよく、第4ピラミッド構造15の斜辺の長さを0.5μm~1.2μmとし、例えば、0.5μm~0.6μm、0.6μm~0.7μm、0.7μm~0.8μm、0.8μm~0.9μm、0.9μm~1μm、1μm~1.1μmまたは1.1μm~1.2μmであってもよい。この範囲内において、入射光は第3ピラミッド構造14と第4ピラミッド構造15との間、隣接する第3ピラミッド構造14間および隣接する第4ピラミッド構造15間での反射回数が増えるようになり、非金属パターン領域における基板100の前面の入射光に対する吸収利用率をさらに高めることができる。
【0059】
いくつかの実施例では、プラットフォーム突起構造13のボトム一次元寸法は6μm~10μmであり、例えば、6μm~6.5μm、6.5μm~7μm、7μm~8μm、8μm~8.5μm、8.5μm~9μmまたは9μm~10μmであってもよく、プラットフォーム突起構造13のトップからボトムまでの高さ寸法は0.2μm~0.4μmであり、例えば、0.2μm~0.25μm、0.25μm~0.3μm、0.3μm~0.34μm、0.34μm~0.38μmまたは0.38μm~0.4μmであってもよい。具体的には、
図6~
図7に示すように、プラットフォーム突起構造13はピラミッド構造の基礎部分、すなわちピラミッド構造から最上部を除いて残った構造である。この範囲内において、プラットフォーム突起構造13のトップからボトムまでの高さ寸法が大きくなり、プラットフォーム突起構造13が位置する基板100の裏面は一定の粗さを保ち、基板100の裏面に形成する第2トンネル層130および第2ドーピング導電層140は良好な平坦性と均一性を確保するとともに、基板100の裏面の入射光に対する反射率が大きすぎることなく、基板100の裏面の入射光に対する利用率が小さすぎることもなく、太陽電池の開放電圧と短絡電流を高めるのに有利である。また、プラットフォーム突起構造13のボトム寸法は基板100の前面の第1ピラミッド構造11より大きく、かつプラットフォーム突起構造13の高さは第1ピラミッド構造11の高さより小さいため、基板100の裏面の粗さは基板100の前面の粗さより小さくなる。そして、この範囲内において、プラットフォーム突起構造13の高さ寸法はプラットフォーム突起構造13のボトム一次元寸法よりはるかに小さい。これにより、基板100の裏面の形態は基板100の前面に比べてほぼ平坦になり、基板100の裏面に形成される第2トンネル層130及び第2ドーピング導電層140は比較的よい厚さ均一性を持ち、第2トンネル層130と基板100との裏面の接触面は良好で平坦な形態を有している。したがって、基板100の裏面の欠陥準位密度を低減し、第2ドーピング導電層140と基板100からなるPN接合による光生成キャリア移動度を向上させ、基板100中のキャリア濃度を向上させ、開放電圧および短絡電流を高め、太陽電池の光電変換効率を上げることができる。
【0060】
理解できるように、入射光が基板100の裏面で反射されて基板100の前面に回折される過程で、入射光のルートと基板100の裏面のプラットフォーム突起構造13との夾角および基板100の前面の隣接する第3ピラミッド構造14間の夾角、隣接する第4ピラミッド構造15間の夾角および第3ピラミッド構造14と第4ピラミッド構造15との間の夾角は密接にかかわっている。このゆえに、基板100の裏面で反射された入射光は基板100の前面まで回折される確率が高くなるように、プラットフォーム突起構造13間の夾角を制御する必要がある。これに基づいて、
図8に示すように、いくつかの実施例では、プラットフォーム突起構造13の斜辺とプラットフォーム突起構造13のボトムとの夾角θ
5を10°~50°とし、例えば、10°~15°、15°~20°、20°~25°、25°~30°、30°~35°、35°~40°、40°~45°、45°~50°であってもよい。この範囲内において、基板100の裏面の隣接する2つのプラットフォーム突起構造13の斜辺間の夾角を基板100の前面の隣接する第3ピラミッド構造14間の夾角、隣接する第4ピラミッド構造15間の夾角または第3ピラミッド構造14と第4ピラミッド構造15の間の夾角とマッチングさせ、基板100の裏面で反射された入射光は基板100の前面まで回折される確率が高くなり、基板100の前面まで回折された入射光が第3ピラミッド構造14の斜面または第4ピラミッド構造15の斜面への入射角度は適切な範囲内にあるようにし、基板100の前面まで回折された入射光の反射率を低減し、基板100の入射光に対する再利用率を高めることができる。
【0061】
いくつかの実施例では、プラットフォーム突起構造13の斜辺の長さは0.3μm~2.3μmであり、例えば、0.3μm~0.5μm、0.5μm~0.8μm、0.8μm~1μm、1μm~1.2μm、1.2μm~1.5μm、1.5μm~1.8μm、1.8μm~2μm、2μm~2.1μmまたは2.1μm~2.3μmであってもよい。この範囲内において、プラットフォーム突起構造13の高さ寸法を変化させないまま、プラットフォーム突起構造13の表面積を増やすことができるため、第2トンネル層130と基板100の裏面との接触面積を増やし、キャリアのトンネル経路を拡大し、キャリア移動度をさらに高めるのに有利である。
【0062】
いくつかの実施例では、非金属パターン領域が向かう基板100の前面の反射率は0.8%~2%であり、例えば、0.8%~0.9%、0.9%~1%、1%~1.2%、1.2%~1.4%、1.4%~1.6%、1.6%~1.8%または1.8%~2%であってもよく、基板100の裏面の反射率は14%~15%であり、例えば、14%~14.1%、14.1%~14.2%、14.2%~14.4%、14.4%~14.6%、14.6%~14.8%または14.8%~15%であってもよい。基板100の前面の非金属パターン領域のテクスチャ構造は第3ピラミッド構造14及び第4ピラミッド構造15であるため、非金属パターン領域が向かう基板100の前面の反射率は基板100の裏面の反射率よりはるかに小さく、非金属パターン領域の基板100の入射光に対する利用率を上げ、キャリアの数を増やし、短絡電流及び開放電圧を高め、太陽電池の光電変換性能を強めるのに有利である。実際の応用において、基板100の裏面に照射する入射光は基板100の前面に照射する入射光より少ないため、基板100の裏面の反射率を高く設定することで、基板100の裏面の平坦性を高めることができ、基板100裏面に形成される第2トンネル層130および第2ドーピング導電層140の均一性および平坦性の向上に有利であり、キャリア移動度を高めるのに有利である。また、基板100の裏面の反射率が高くても、本願の実施例におけるプラットフォーム突起構造13の斜辺とボトムとの夾角の設定、基板100の前面における第3ピラミッド構造14の斜辺とボトムとの夾角の設定、及び第4ピラミッド構造15の斜辺とボトムとの夾角の設定に基づいて、基板100の裏面で反射された入射光は再び基板100の前面まで回折される確率が高くなり、反射率の低い基板100の前面で利用され、キャリア移動度の向上を実現すると同時に、入射光に対する利用率を増やすことができる。
【0063】
いくつかの実施例では、さらに第1パッシベーション層150を含み、第1パッシベーション層150の第1部分は第1ドーピング導電層120の基板100から離れた表面に位置し、第1パッシベーション層150の第2部分は非金属パターン領域が向かう前面に位置する。第1パッシベーション層150は基板100の前面に対して良好なパッシベーション効果を発揮することができ、例えば基板100の前面のダングリングボンドに対して良好な化学的パッシベーションを行い、基板100の前面の欠陥準位密度を低減し、基板100の前面のキャリア再結合を良好に抑制することができる。第1部分の第1パッシベーション層150は直接基板100の前面と接触し、第1部分の第1パッシベーション層150と基板100の間に第1トンネル層110および第1ドーピング導電層120がなく、このように、入射光に対する第1ドーピング導電層120の寄生吸収を減らすことができる。
【0064】
いくつかの実施例では、第1パッシベーション層150の第1部分は第1パッシベーション層150の第2部分と面一ではない。具体的には、第1パッシベーション層150の第1部分の上面は第1パッシベーション層150の第2部分の上面より低くてもよい。これによって、基板100の前面に位置する第1部分の厚さが厚すぎないようにし、第1部分の厚さが大きいことによって基板100の前面に応力損傷が生じ、基板100の前面に界面準位欠陥が多く発生してキャリア再結合中心が多く生じるという問題を防ぐことができる。
【0065】
いくつかの実施例では、第1パッシベーション層150は単層構造であってもよく、他のいくつかの実施例では、第1パッシベーション層150は多層構造であってもよい。いくつかの実施例では、第1パッシベーション層150の材料は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、または酸窒化シリコンのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0066】
いくつかの実施例では、さらに第2パッシベーション層160を含み、第2パッシベーション層160は第2ドーピング導電層140の基板100から離れた表面に位置する。第2パッシベーション層160は基板100の裏面に対して良好なパッシベーション効果を発揮し、基板100裏面の欠陥準位密度を低減し、基板100の裏面のキャリア再結合を良好に抑制するために使われる。基板100の裏面のプラットフォーム突起構造13の凹凸程度が小さいため、基板100の裏面に成長して得られる第2パッシベーション層160は高い平坦性を有し、第2パッシベーション層160のパッシベーション性能を高めることができる。
【0067】
いくつかの実施例では、第2パッシベーション層160は単層構造であってもよく、他のいくつかの実施例では、第2パッシベーション層160は多層構造であってもよい。いくつかの実施例では、第2パッシベーション層160の材料は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化シリコン、または酸窒化シリコンのうちの少なくとも1つであってもよい。
【0068】
いくつかの実施例では、さらに第1電極170を含み、第1電極170は金属パターン領域に設けられ、第1ドーピング導電層120と電気的に接続される。基板100の裏面に形成されるPN接合は入射光を受光して光生成キャリアを生成するために使われ、生成された光生成キャリアは基板100から第1ドーピング導電層120に輸送され、さらに第1電極170に輸送され、第1電極170は光生成キャリアの収集に使われる。第1ドーピング導電層120のドーピング元素のタイプは基板100のドーピング元素のタイプと同じであるため、第1電極170と第1ドーピング導電層120の間の金属接触再結合損失を減らし、さらに第1電極170と第1ドーピング導電層120の間のキャリア接触再結合を低減し、短絡電流および太陽電池の光電変換性能を高めることができる。
【0069】
図9に示すように、いくつかの実施例では、さらに拡散領域190を含み、拡散領域190は金属パターン領域が向かう基板100に位置し、拡散領域190のトップは第1トンネル層110と接触し、拡散領域190のドーピング元素濃度が基板100のドーピング元素濃度より大きい。拡散領域190はキャリア輸送経路とすることができ、金属パターン領域が向かう基板100にのみ拡散領域190を形成するため、基板100中のキャリアは拡散領域190を通じてドーピング導電層に容易に輸送され、つまり、拡散領域190はキャリア輸送経路として機能する。さらに、金属パターン領域が向かう基板100にのみ拡散領域190を設けるため、基板100中のキャリアが拡散領域190に集中して輸送され、さらに拡散領域190を介して第1ドーピング導電層120に輸送され、第1ドーピング導電層120中のキャリア濃度を大幅に高めることができる。なお、本願の実施例では、非金属パターン領域が向かう基板100に拡散領域190を設けず、これにより、非金属パターン領域が向かう基板100の前面のキャリア濃度が大きすぎないようにし、非金属パターン領域が向かう基板100の前面でキャリアがひどく再結合する問題を防ぐことができる。また、基板100中のキャリアが非金属パターン領域の向かう基板100の前面に輸送されることを防ぐことができ、さらに非金属パターン領域が向かう基板100の前面にキャリアが堆積することによって非金属パターン領域が向かう基板100の前面に「デッド層」が生じて、キャリアが再結合しすぎるという問題を避け、太陽電池の光電変換性能を全体的に高めることができる。
【0070】
いくつかの実施例では、さらに第2電極180を含み、第2電極180は基板100の裏面に位置し、第2電極180は第2パッシベーション層160を貫通して第2ドーピング導電層140と電気的と接触している。
【0071】
上記実施例で提供された太陽電池において、基板100の前面の金属パターン領域は第1ピラミッド構造11を備え、裏面はプラットフォーム突起構造13を備え、これにより、前面の粗さは裏面の粗さより大きい。このように、前面の入射光に対する吸収を強める一方、第1トンネル層110および第1ドーピング導電層120と基板100の前面との接触面積を増やすことができ、基板100中のキャリアに大きなトンネル経路を提供し、キャリア移動度を低下させずに、基板100の入射光に対する利用率を高めることができる。また、第2ドーピング導電層140と基板100とはPN接合を形成するため、裏面の粗さを小さくし、裏面において第2トンネル層130及び第2ドーピング導電層140に比較的大きな平坦性を持たせるように設定し、第2トンネル層130と基板100との接触界面に良好な形態を持たせ、基板100の裏面の欠陥準位密度を減らし、PN接合による光生成キャリアの基板100の裏面での再結合の確率を下げ、光生成キャリアの基板100への移動率を向上させ、キャリア濃度の向上に有利で、太陽電池の光電変換性能を改善することができる。
【0072】
それに応じて、
図10に示すように、本願の別の実施例では、光起電力モジュールがさらに提供され、当該光起電力モジュールは、前記実施例で提供する太陽電池101を複数接続してなるセルストリングと、セルストリングの表面を覆うための封止層102と、封止層102のセルストリングから離れた表面を覆うためのカバープレート103と、を含む。太陽電池101は、全体または複数の分割の形で電気的に接続されることで複数のセルストリングを形成し、複数のセルストリングは直列および/または並列の形で電気的に接続される。
【0073】
具体的には、いくつかの実施例では、複数のセルストリング間は導電テープ104を通じて電気的に接続されてもよい。封止層102は、太陽電池101の前面及び裏面を覆い、具体的には、封止層102は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム、ポリオレフィンエラストマー(POE)フィルムまたはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの有機封止フィルムであってもよい。いくつかの実施例では、カバープレート103はガラスカバーレート、プラスチックカバーレートなどの光透過機能を有するカバープレート103であってもよい。具体的には、カバープレート103の封止層102に向かう表面は凹凸表面であってもよく、入射光の利用率を高めることができる。
【0074】
本願は、好ましい実施例で上記のように開示されているが、特許請求の範囲を限定するものではなく、当業者であれば、本願の構想から逸脱することなく、若干の可能な変動および修正を加えることができるため、本願の保護範囲は、本願の請求項によって規定される範囲に従うべきである。
【0075】
当業者であれば、前記の各実施形態は本願を実現する具体的な実施例であるが、実用上では本願の精神と範囲を逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更が可能であることが理解できる。いずれの当業者は、本願の精神と範囲を逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことが可能であるため、本願の保護範囲は、請求項に限定された範囲を基準にすべきである。
【要約】 (修正有)
【課題】本願の実施例は、太陽電池の技術分野に関し、特に太陽電池および光起電力モジュールに関する。
【解決手段】太陽電池は、対向する前面および裏面を有し、前面が金属パターン領域を備える基板と、金属パターン領域に位置する第1ピラミッド構造11と、基板100の裏面に設けられたプラットフォーム突起構造13であって、第1ドーピング導電層120のドーピング元素タイプは基板100のドーピング元素タイプと同じである第1トンネル層110および第1ドーピング導電層120と、第2ドーピング導電層140のドーピング元素タイプは第1ドーピング導電層120のドーピング元素タイプと異なる第2トンネル層130および第2ドーピング導電層140と、を含む。
【選択図】
図1