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特許7410261半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/38 20100101AFI20231226BHJP
【FI】
H01L33/38
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022196624
(22)【出願日】2022-12-08
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 紀隆
(72)【発明者】
【氏名】稲津 哲彦
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6839320(JP,B1)
【文献】特開2022-033861(JP,A)
【文献】特開2021-039183(JP,A)
【文献】国際公開第2014/122709(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0027649(US,A1)
【文献】特開2014-220539(JP,A)
【文献】特開2014-207327(JP,A)
【文献】特開2012-204397(JP,A)
【文献】特開2021-180241(JP,A)
【文献】特開2020-140980(JP,A)
【文献】特開2019-047026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体層と、
前記n型半導体層の第1上面上に設けられる活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記n型半導体層の前記第1上面とは異なる第2上面と接触する、または、前記p型半導体層の上面と接触するコンタクト電極と、
前記n型半導体層、前記活性層、前記p型半導体層および前記コンタクト電極を被覆し、誘電体材料から構成される保護層と、
前記保護層上に設けられるパッド電極と、を備え、
前記コンタクト電極は、前記コンタクト電極の縁に向けて前記コンタクト電極の厚みが小さくなるように前記コンタクト電極の上面が傾斜する第1傾斜部を備え、
前記コンタクト電極の縁が延びる方向および前記コンタクト電極の厚み方向と直交する所定方向における前記第1傾斜部の幅は、前記コンタクト電極の前記第1傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、半導体発光素子。
【請求項2】
前記コンタクト電極の前記第1傾斜部とは異なる部分の厚みは、0.1μm以上1μm以下である、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記所定方向における前記第1傾斜部の幅は、5μm以上10μm以下である、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記コンタクト電極上に設けられ、前記保護層によって被覆され、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含む電流拡散層をさらに備え、
前記電流拡散層は、前記電流拡散層の縁に向けて前記電流拡散層の上面の高さが小さくなるように傾斜する第2傾斜部を備え、
前記所定方向における前記第2傾斜部の幅は、前記電流拡散層の前記第2傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記コンタクト電極の前記第1傾斜部とは異なる部分の厚みと、前記電流拡散層の前記第2傾斜部とは異なる部分の厚みとの合計は、0.2μm以上2μm以下である、請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第2傾斜部は、前記第1傾斜部の上に重なる重畳部分と、前記第1傾斜部の上に重ならない非重畳部分とを含み、
前記所定方向における前記第2傾斜部の前記非重畳部分の幅は、前記所定方向における前記第1傾斜部の幅の半分以上である、請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記非重畳部分は、前記コンタクト電極の上に重ならない、請求項6に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記非重畳部分は、前記コンタクト電極の前記第1傾斜部とは異なる部分の上に重なる、請求項6に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記コンタクト電極は、前記n型半導体層の前記第2上面と接触するn側コンタクト電極を備え、
前記n側コンタクト電極は、前記活性層に近づくにつれて前記n側コンタクト電極の厚みが小さくなるように前記n側コンタクト電極の上面が傾斜する第1内側傾斜部と、前記活性層から離れるにつれて前記n側コンタクト電極の厚みが小さくなるように前記n側コンタクト電極の上面が傾斜する第1外側傾斜部とを備え、
前記所定方向における前記第1内側傾斜部および前記第1外側傾斜部のそれぞれの幅は、前記n側コンタクト電極の前記第1内側傾斜部および前記第1外側傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記n側コンタクト電極上に設けられ、前記保護層によって被覆され、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含むn側電流拡散層をさらに備え、
前記n側電流拡散層は、前記活性層に近づくにつれて前記n側電流拡散層の高さが小さくなるように前記n側電流拡散層の上面が傾斜する第2内側傾斜部と、前記活性層から離れるにつれて前記n側電流拡散層の高さが小さくなるように前記n側電流拡散層の上面が傾斜する第2外側傾斜部とを備え、
前記所定方向における前記第2内側傾斜部および前記第2外側傾斜部のそれぞれの幅は、前記n側電流拡散層の前記第2内側傾斜部および前記第2外側傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、請求項9に記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記コンタクト電極は、前記p型半導体層の前記上面と接触するp側コンタクト電極を備え、
前記p側コンタクト電極は、前記p側コンタクト電極の縁に近づくにつれて前記p側コンタクト電極の厚みが小さくなるように前記p側コンタクト電極の上面が傾斜する第1p側傾斜部を備え、
前記所定方向における前記第1p側傾斜部の幅は、前記p側コンタクト電極の前記第1p側傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記p側コンタクト電極上に設けられ、前記保護層によって被覆され、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含むp側電流拡散層をさらに備え、
前記p側電流拡散層は、前記p側電流拡散層の縁に近づくにつれて前記p側電流拡散層の高さが小さくなるように前記p側電流拡散層の上面が傾斜する第2p側傾斜部を備え、
前記所定方向における前記第2p側傾斜部の幅は、前記p側電流拡散層の前記第2p側傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、請求項11に記載の半導体発光素子。
【請求項13】
n型半導体層上に活性層を形成する工程と、
前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、
前記p型半導体層および前記活性層のそれぞれの一部を除去して、前記n型半導体層の上面を露出させる工程と、
前記n型半導体層の前記上面と接触するn側コンタクト電極を形成する工程と、
前記p型半導体層の上面と接触するp側コンタクト電極を形成する工程と、
前記n型半導体層、前記活性層、前記p型半導体層、前記n側コンタクト電極および前記p側コンタクト電極を被覆する誘電体材料から構成される保護層を形成する工程と、
前記保護層を部分的に除去してn側開口およびp側開口を形成する工程と、
前記n側開口を塞ぐようにして前記保護層上に重なるn側パッド電極を形成する工程と、
前記p側開口を塞ぐようにして前記保護層上に重なるp側パッド電極を形成する工程と、を備え、
前記n側コンタクト電極を形成する工程および前記p側コンタクト電極を形成する工程の少なくとも一方は、
アンダーカット形状の第1開口を有する第1レジストを形成する工程と、
前記第1レジストをマスクとして、前記第1開口内に電極層を堆積させる工程と、
前記第1レジストを剥離して除去する工程と、を備え、
前記第1レジストの前記第1開口の縁が延びる方向および前記第1レジストの厚み方向と直交する所定方向における前記第1レジストの前記アンダーカット形状の幅は、5μm以上10μm以下であり、前記第1レジストの前記アンダーカット形状の高さは、1μm以下である、半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記電極層を堆積させる工程は、前記第1レジストの前記第1開口を通過するスパッタ粒子を堆積させることを備える、請求項13に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記n側コンタクト電極上に、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含むn側電流拡散層を形成する工程と、
前記p側コンタクト電極上に、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含むp側電流拡散層を形成する工程と、をさらに備え、
前記保護層は、前記n側電流拡散層および前記p側電流拡散層をさらに被覆するように形成され、
前記n側電流拡散層を形成する工程および前記p側電流拡散層を形成する工程の少なくとも一方は、
アンダーカット形状の第2開口を有する第2レジストを形成する工程と、
前記第2レジストをマスクとして、前記第2開口内に前記積層構造を堆積させる工程と、
前記第2レジストを剥離して除去する工程と、を備え、
前記第2レジストの前記第2開口の縁が延びる方向および前記第2レジストの厚み方向と直交する所定方向における前記第2レジストの前記アンダーカット形状の幅は、5μm以上10μm以下であり、前記第2レジストの前記アンダーカット形状の高さは、1μm以下である、請求項13または14に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記積層構造を堆積させる工程は、前記第2レジストの前記第2開口を通過するスパッタ粒子を堆積させることを備える、請求項15に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、基板上に積層されるn型半導体層、活性層およびp型半導体層を有し、n型半導体層上にn側電極が設けられ、p型半導体層上にp側電極が設けられる。半導体発光素子の表面には、SiOなどの誘電体材料から構成される保護層が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-171141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体発光素子の電極を被覆する誘電体保護層は、電極の縁を被覆する部分において膜厚が減少することがある。この場合、膜厚が減少する部分において誘電体保護層による被覆性が低下し、半導体発光素子の信頼性に影響が生じうる。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、半導体発光素子の信頼性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の半導体発光素子は、n型半導体層と、n型半導体層の第1上面上に設けられる活性層と、活性層上に設けられるp型半導体層と、n型半導体層の第1上面とは異なる第2上面と接触する、または、p型半導体層の上面と接触するコンタクト電極と、n型半導体層、活性層、p型半導体層およびコンタクト電極を被覆し、誘電体材料から構成される保護層と、保護層上に設けられるパッド電極と、を備える。コンタクト電極は、コンタクト電極の縁に向けてコンタクト電極の厚みが小さくなるようにコンタクト電極の上面が傾斜する第1傾斜部を備える。コンタクト電極の縁が延びる方向およびコンタクト電極の厚み方向と直交する所定方向における第1傾斜部の幅は、コンタクト電極の第1傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である。
【0007】
本発明の別の態様は、半導体発光素子の製造方法である。この方法は、n型半導体層上に活性層を形成する工程と、活性層上にp型半導体層を形成する工程と、p型半導体層および活性層のそれぞれの一部を除去して、n型半導体層の上面を露出させる工程と、n型半導体層の上面と接触するn側コンタクト電極を形成する工程と、p型半導体層の上面と接触するp側コンタクト電極を形成する工程と、n型半導体層、活性層、p型半導体層、n側コンタクト電極およびp側コンタクト電極を被覆する誘電体材料から構成される保護層を形成する工程と、保護層を部分的に除去してn側開口およびp側開口を形成する工程と、n側開口を塞ぐようにして保護層上に重なるn側パッド電極を形成する工程と、p側開口を塞ぐようにして保護層上に重なるp側パッド電極を形成する工程と、を備える。n側コンタクト電極を形成する工程およびp側コンタクト電極を形成する工程の少なくとも一方は、アンダーカット形状の第1開口を有する第1レジストを形成する工程と、第1レジストをマスクとして、第1開口内に電極層を堆積させる工程と、第1レジストを剥離して除去する工程と、を備える。第1レジストの第1開口の縁が延びる方向および第1レジストの厚み方向と直交する所定方向における第1レジストのアンダーカット形状の幅は、5μm以上10μm以下であり、第1レジストのアンダーカット形状の高さは、1μm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体発光素子の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
図2】第1実施形態に係るコンタクト電極および電流拡散層の傾斜構造を概略的に示す断面図である。
図3】第1実施形態に係るコンタクト電極の形成工程を概略的に示す断面図である。
図4】第1実施形態に係る電流拡散層の形成工程を概略的に示す断面図である。
図5】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図6】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図7】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図8】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図9】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図10】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図11】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図12】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図13】第1実施形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図14】第2実施形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
図15】第2実施形態に係るコンタクト電極および電流拡散層の傾斜構造を概略的に示す断面図である。
図16】第2実施形態に係る電流拡散層の形成工程を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0011】
本実施形態に係る半導体発光素子は、中心波長λが約360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成され、いわゆるDUV-LED(Deep UltraViolet-Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料が用いられる。本実施形態では、特に、中心波長λが約240nm~320nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0012】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、少なくとも窒化アルミニウム(AlN)および窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In1-x-yAlGaN(0<x+y≦1、0<x<1、0<y<1)の組成で表すことができ、AlGaNまたはInAlGaNを含む。本明細書の「AlGaN系半導体材料」は、例えば、AlNおよびGaNのそれぞれのモル分率が1%以上であり、好ましくは5%以上、10%以上または20%以上である。
【0013】
また、AlNを含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、GaNやInGaNが含まれる。同様に、GaNを含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、AlNやInAlNが含まれる。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、基板20と、ベース層22と、n型半導体層24と、活性層26と、p型半導体層28と、p側コンタクト電極30と、n側コンタクト電極32と、p側電流拡散層34と、n側電流拡散層36と、第1保護層38と、第2保護層40と、p側パッド電極42と、n側パッド電極44とを備える。
【0015】
図1において、矢印Aで示される方向を「上下方向」または「厚み方向」ということがある。また、基板20から見て、基板20から離れる方向を上側、基板20に向かう方向を下側ということがある。また、図1において、矢印Bで示される方向を「横方向」または「幅方向」ということがある。矢印Bで示される方向は、例えば、矢印Aで示される厚み方向に直交する方向であって、半導体発光素子10の各構成要素の縁が延びる方向に直交する方向である。
【0016】
基板20は、第1主面20aと、第1主面20aとは反対側の第2主面20bとを有する。第1主面20aは、ベース層22からp型半導体層28までの各層を成長させるための結晶成長面である。基板20は、半導体発光素子10が発する深紫外光に対して透光性を有する材料から構成され、例えば、サファイア(Al)から構成される。第1主面20aには、深さおよびピッチがサブミクロン(1μm以下)である微細な凹凸パターンが形成される。このような基板20は、パターン化サファイア基板(PSS;Patterned Sapphire Substrate)とも呼ばれる。第2主面20bは、活性層26が発する深紫外光を外部に取り出すための光取り出し面である。基板20は、AlNから構成されてもよいし、AlGaNから構成されてもよい。基板20は、第1主面20aがパターン化されていない平坦面によって構成される通常の基板であってもよい。
【0017】
ベース層22は、基板20の第1主面20aの上に設けられる。ベース層22は、n型半導体層24を形成するための下地層(テンプレート層)である。ベース層22は、例えば、アンドープのAlN層であり、具体的には高温成長させたAlN(HT-AlN;High Temperature-AlN)層である。ベース層22は、AlN層上に形成されるアンドープのAlGaN層をさらに含んでもよい。基板20がAlN基板またはAlGaN基板である場合、ベース層22は、アンドープのAlGaN層のみから構成されてもよい。つまり、ベース層22は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含む。
【0018】
n型半導体層24は、ベース層22の上面22aに設けられる。n型半導体層24は、n型のAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、n型の不純物としてSiがドープされる。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択され、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように構成される。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光の波長よりも大きいバンドギャップを有し、例えば、バンドギャップが4.3eV以上となるように構成される。n型半導体層24は、AlNのモル分率が80%以下、つまり、バンドギャップが5.5eV以下となるように構成されることが好ましく、AlNのモル分率が70%以下(つまり、バンドギャップが5.2eV以下)となるように構成されることがより望ましい。n型半導体層24は、1μm以上3μm以下の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。
【0019】
n型半導体層24は、不純物であるSiの濃度が1×1018/cm以上5×1019/cm以下となるように構成される。n型半導体層24は、Si濃度が5×1018/cm以上3×1019/cm以下となるように構成されることが好ましく、7×1018/cm以上2×1019/cm以下となるように構成されることがより好ましい。ある実施例において、n型半導体層24のSi濃度は、1×1019/cm前後であり、具体的には8×1018/cm以上1.5×1019/cm以下の範囲である。
【0020】
n型半導体層24は、第1上面24aと、第2上面24bと、側面24cとを有する。第1上面24aは、活性層26が形成される部分であり、第2上面24bは、活性層26が形成されない部分である。側面24cは、第1上面24aに対して第1角度θ1で傾斜している。第1角度θ1は、40度より大きく(つまり40度を含まない)、70度以下である。
【0021】
活性層26は、n型半導体層24の第1上面24aに設けられる。活性層26は、AlGaN系半導体材料から構成され、n型半導体層24とp型半導体層28の間に挟まれてダブルへテロ構造を形成する。活性層26は、波長355nm以下の深紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成され、例えば、波長320nm以下の深紫外光を出力できるようにAlN組成比が選択される。
【0022】
活性層26は、例えば、単層または多層の量子井戸構造を有し、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される障壁層と、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される井戸層とを含む。活性層26は、例えば、n型半導体層24と接触する第1障壁層と、第1障壁層上に設けられる第1井戸層とを含む。第1井戸層とp型半導体層28の間に、障壁層および井戸層の一以上のペアが追加的に設けられてもよい。障壁層および井戸層のそれぞれは、1nm以上20nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上10nm以下の厚さを有する。活性層26は、第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)を有する。第2角度θ2は、第1角度θ1よりも小さく、40度以下である。
【0023】
活性層26とp型半導体層28の間には、電子ブロック層がさらに設けられてもよい。電子ブロック層は、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上となるように構成される。電子ブロック層は、AlNのモル分率が80%以上となるように構成されてもよく、GaNを含有しないAlN系半導体材料から構成されてもよい。電子ブロック層は、1nm以上10nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上5nm以下の厚さを有する。電子ブロック層は、第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)を有する。
【0024】
p型半導体層28は、活性層26の上に形成される。p型半導体層28は、p型のAlGaN系半導体材料層またはp型のGaN系半導体材料層であり、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされるAlGaN層またはGaN層である。p型半導体層28は、例えば、20nm以上400nm以下の厚さを有する。p型半導体層28は、第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)を有する。
【0025】
p型半導体層28は、複数層によって構成されてもよい。p型半導体層28は、例えば、p型クラッド層とp型コンタクト層を有してもよい。p型クラッド層は、p型コンタクト層と比較してAlN比率の高いp型AlGaN層であり、活性層26と接触するように設けられる。p型コンタクト層は、p型クラッド層と比較してAlN比率の低いp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p型クラッド層の上に設けられ、p側コンタクト電極30と接触するように設けられる。p型クラッド層は、p型第1クラッド層と、p側第2クラッド層とを有してもよい。
【0026】
p型第1クラッド層は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択される。p型第1クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように構成される。p型第1クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率と同程度、または、n型半導体層24のAlN比率よりも大きい。p型クラッド層のAlN比率は、70%以上または80%以上であってもよい。p型第1クラッド層は、10nm以上100nm以下の厚さを有し、例えば、15nm以上70nm以下の厚さを有する。
【0027】
p型第2クラッド層は、p型第1クラッド層上に設けられる。p型第2クラッド層は、AlN比率が中程度のp型AlGaN層であり、p型第1クラッド層よりもAlN比率が低く、p型コンタクト層よりもAlN比率が高い。p型第2クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように形成される。p型第2クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率の±10%程度となるように形成される。p型第2クラッド層は、5nm以上250nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上150nm以下の厚さを有する。なお、p型第2クラッド層が設けられなくてもよく、p型クラッド層がp型第1クラッド層のみで構成されてもよい。
【0028】
p型コンタクト層は、相対的に低AlN比率のp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p側コンタクト電極30と良好なオーミック接触を得るためにAlN比率が20%以下となるよう構成され、好ましくは、AlN比率が10%以下、5%以下または0%となるように形成される。つまり、p型コンタクト層は、実質的にAlNを含まないp型GaN系半導体材料で形成されうる。その結果、p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光を吸収しうる。p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光の吸収量を小さくするために薄く形成されることが好ましい。p型コンタクト層は、5nm以上30nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上20nm以下の厚さを有する。
【0029】
p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aに設けられる。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28(例えば、p型コンタクト層)と接触する。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28(例えば、p型コンタクト層)とオーミック接触可能な材料で構成される。p側コンタクト電極30は、例えば、p型半導体層28の上面28aと接触するRh層を含む。p側コンタクト電極30は、例えばRh層のみからなる。p側コンタクト電極30に含まれるRh層の厚さは、50nm以上200nm以下であり、例えば70nm以上150nm以下である。この場合、p側コンタクト電極30の厚みt1は、0.1μm以上0.2μm以下であってもよい。
【0030】
p側コンタクト電極30は、第1Rh層、Ti層、第2Rh層、TiN層を順に積層させたRh/Ti/Rh/TiNの積層構造を有してもよい。p側コンタクト電極30の第1Rh層は、p型半導体層28の上面28aと接触する。p側コンタクト電極30の第1Rh層の厚さは、50nm以上200nm以下であり、例えば70nm以上150nm以下である。p側コンタクト電極30のTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。p側コンタクト電極30の第2Rh層の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。p側コンタクト電極30のTiN層は、導電性を有するTiNから構成される。p側コンタクト電極30TiN層の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。この場合、p側コンタクト電極30の厚みt1は、0.1μm以上0.4μm以下であってもよい。
【0031】
p側コンタクト電極30は、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電性酸化物(TCO)から構成されてもよい。p側コンタクト電極30は、Ni/Auの積層構造を有してもよい。これらの場合、p側コンタクト電極30の厚みt1は、0.1μm以上0.3μm以下であってもよい。
【0032】
p側コンタクト電極30は、第1p側傾斜部30bと、第1p側基部30cとを備える。第1p側傾斜部30bおよび第1p側基部30cは、同一の材料で構成される。p側コンタクト電極30が積層構造を有する場合、第1p側傾斜部30bおよび第1p側基部30cは、同一の積層構造を有することができる。
【0033】
第1p側傾斜部30bは、p側コンタクト電極30の縁を形成する部分であり、p側コンタクト電極30の縁に向けて厚みt1が小さくなるように上面30aが傾斜する部分である。第1p側傾斜部30bの厚みは、第1p側基部30cの厚みt1の90%以下である。第1p側傾斜部30bの幅は、第1p側基部30cの厚みt1の10倍以上となるように構成される。第1p側傾斜部30bの幅は、例えば、5μm以上10μm以下である。ここで、第1p側傾斜部30bの幅は、例えば、矢印Bで示される所定方向における幅であり、矢印Aで示される厚み方向に直交し、p側コンタクト電極30の縁が延びる方向(例えば、図1の紙面を貫通する方向)に直交する方向の幅である。これにより、第1p側傾斜部30bは、上面30aの傾斜が緩やかとなるように形成される。
【0034】
第1p側基部30cは、p側コンタクト電極30の中央部であり、厚みt1が実質的に一定となるように上面30aが平坦となる部分である。ここで、厚みt1が実質的に一定とは、厚みt1の変化が±5%以内となることをいう。第1p側基部30cは、第1p側傾斜部30bとは異なる部分である。第1p側基部30cの厚みt1は、例えば、0.1μm以上1μm以下である。
【0035】
n側コンタクト電極32は、n型半導体層24の第2上面24bに設けられる。n側コンタクト電極32は、例えば、第1Ti層、Al層、第2Ti層、TiN層を順に積層させたTi/Al/Ti/TiNの積層構造を有する。n側コンタクト電極32の第1Ti層は、n型半導体層24の第2上面24bと接触する。n側コンタクト電極32の第1Ti層の厚さは、1nm以上10nm以下であり、好ましくは5nm以下または2nm以下である。n側コンタクト電極32のAl層は、第1Ti層上に設けられ、第1Ti層と接触する。n側コンタクト電極32のAl層の厚さは、200nm以上であり、例えば300nm以上1000nm以下である。n側コンタクト電極32の第2Ti層は、Al層上に設けられ、Al層と接触する。n側コンタクト電極32の第2Ti層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側コンタクト電極32のTiN層は、第2Ti層上に設けられ、第2Ti層と接触する。n側コンタクト電極32のTiN層は、導電性を有するTiNから構成される。n側コンタクト電極32のTiN層の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。n側コンタクト電極32の厚みt2は、0.2μm以上1μm以下である。
【0036】
n側コンタクト電極32は、第1内側傾斜部32bと、第1n側基部32cと、第1外側傾斜部32dとを備える。第1内側傾斜部32bと、第1n側基部32cと、第1外側傾斜部32dとは、同一の材料で構成される。n側コンタクト電極32が積層構造を有する場合、第1内側傾斜部32bと、第1n側基部32cと、第2外側傾斜部30dとは、同一の積層構造を有することができる。
【0037】
第1内側傾斜部32bは、n側コンタクト電極32の縁を形成する部分であり、活性層26に近づくにつれて厚みt2が小さくなるように上面32aが傾斜する部分である。第1外側傾斜部32dは、n側コンタクト電極32の縁を形成する部分であり、活性層26から離れるにつれて厚みt2が小さくなるように上面32aが傾斜する部分である。第1内側傾斜部32bおよび第1外側傾斜部32dのそれぞれの厚みは、第1n側基部32cの厚みt2の90%以下である。第1内側傾斜部32bおよび第1外側傾斜部32dのそれぞれの幅は、第1n側基部32cの厚みt2の10倍以上となるように構成される。第1内側傾斜部32bおよび第1外側傾斜部32dのそれぞれの幅は、例えば、5μm以上10μm以下である。ここで、第1内側傾斜部32bおよび第1外側傾斜部32dのそれぞれの幅は、例えば、矢印Bで示される所定方向における幅であり、矢印Aで示される厚み方向に直交し、n側コンタクト電極32の縁が延びる方向(例えば、図1の紙面を貫通する方向)に直交する方向の幅である。
【0038】
第1n側基部32cは、n側コンタクト電極32の中央部であり、厚みt2が実質的に一定となるように上面32aが平坦となる部分である。ここで、厚みt2が実質的に一定とは、厚みt2の変化が±5%以内となることをいう。第1n側基部32cは、第1内側傾斜部32bおよび第1外側傾斜部32dとは異なる部分である。第1n側基部32cの厚みt2は、例えば、0.1μm以上1μm以下であり、好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上である。
【0039】
p側電流拡散層34は、p側コンタクト電極30の全体を被覆するように設けられる。p側電流拡散層34は、第1TiN層、金属層および第2TiN層を順に積層させた構造を有する。p側電流拡散層34は、第1TiN層の下に設けられる追加の金属層をさらに有してもよい。p側電流拡散層34は、例えば、Ti層、第1TiN層、Ti層、Rh層、第2TiN層を順に積層させたTi/TiN/Ti/Rh/TiNの積層構造を有する。p側電流拡散層34は、第2TiN層の上に設けられる追加の金属層をさらに有してもよい。p側電流拡散層34は、Ti/TiN/Ti/Rh/TiN/Ti/Auの積層構造を有してもよい。
【0040】
p側電流拡散層34の第1TiN層および第2TiN層は、導電性を有するTiNから構成される。p側電流拡散層34の第1TiN層および第2TiN層のそれぞれ厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、50nm以上150nm以下である。p側電流拡散層34の第1TiN層および第2TiN層の間に設けられるTi層およびRh層のそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、20nm以上150nm以下である。p側電流拡散層34は、第1TiN層と第2TiN層の間において、交互に積層される複数のTi層および複数のRh層を有してもよい。p側電流拡散層34の第1TiN層の下に設けられるTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。p側電流拡散層34の第2TiN層の上に設けられるTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。p側電流拡散層34のAu層の厚さは、100nm以上500nm以下であり、例えば、150nm以上300nm以下である。p側電流拡散層34の厚みt3は、例えば、0.2μm以上1μm以下である。
【0041】
p側電流拡散層34は、第2p側傾斜部34bと、第2p側基部34cとを備える。第2p側傾斜部34bおよび第2p側基部34cは、同一の材料で構成される。p側電流拡散層34が積層構造を有する場合、第2p側傾斜部34bおよび第2p側基部34cは、同一の積層構造を有することができる。
【0042】
第2p側傾斜部34bは、p側電流拡散層34の縁を形成する部分であり、p側電流拡散層34の縁に向けて上面34aの高さh1が小さくなるように上面34aが傾斜する部分である。ここで、p側電流拡散層34の上面34aの高さh1とは、例えば、p型半導体層28の上面28aからの厚み方向の距離であり、p側コンタクト電極30の厚みt1とp側電流拡散層34の厚みt3の合計に相当する。第2p側傾斜部34bの上面34aの高さは、第2p側基部34cの上面34aの高さh1の90%以下である。第2p側傾斜部34bの幅は、第2p側基部34cの上面34aの高さh1の10倍以上となるように構成される。第2p側傾斜部34bの幅は、例えば、5μm以上20μm以下である。ここで、第2p側傾斜部34bの幅は、例えば、矢印Bで示される所定方向における幅であり、矢印Aで示される厚み方向に直交し、p側電流拡散層34の縁が延びる方向(図1の紙面を貫通する方向)に直交する方向の幅である。これにより、第2p側傾斜部34bは、上面34aの傾斜が緩やかとなるように形成される。第2p側傾斜部34bは、第1p側傾斜部30bと重なる重畳部分と、第1p側傾斜部30bと重ならない非重畳部分とを含む。第2p側傾斜部34bの非重畳部分は、p型半導体層28の上面28aと接する。
【0043】
第2p側基部34cは、p側電流拡散層34の中央部であり、p側電流拡散層34の上面34aの高さh1が実質的に一定となるように上面34aが平坦となる部分である。p側電流拡散層34の上面34aの高さh1が実質的に一定とは、高さh1の変化が±5%以内となることをいう。第2p側基部34cは、第2p側傾斜部34bとは異なる部分である。第2p側基部34cの厚みt3は、例えば、0.1μm以上1μm以下である。第2p側基部34cの上面34aの高さh1は、例えば、0.2μm以上2μm以下である。第2p側基部34cは、第1p側基部30cと重なる。第2p側基部34cは、第1p側傾斜部30bと重ならない。
【0044】
n側電流拡散層36は、n側コンタクト電極32の全体を被覆するように設けられる。n側電流拡散層36は、p側電流拡散層34と同様、第1TiN層、金属層および第2TiN層を順に積層させた構造を有する。n側電流拡散層36は、第1TiN層の下に設けられる追加の金属層をさらに有してもよい。n側電流拡散層36は、例えば、Ti層、第1TiN層、Ti層、Rh層、第2TiN層を順に積層させたTi/TiN/Ti/Rh/TiNの積層構造を有する。n側電流拡散層36は、第2TiN層の上に設けられる追加の金属層をさらに有してもよい。n側電流拡散層36は、Ti/TiN/Ti/Rh/TiN/Ti/Auの積層構造を有してもよい。
【0045】
n側電流拡散層36の第1TiN層および第2TiN層は、導電性を有するTiNから構成される。n側電流拡散層36の第1TiN層および第2TiN層のそれぞれ厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、50nm以上150nm以下である。n側電流拡散層36の第1TiN層および第2TiN層の間に設けられるTi層およびRh層のそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、20nm以上150nm以下である。n側電流拡散層36は、第1TiN層と第2TiN層の間において、交互に積層される複数のTi層および複数のRh層を有してもよい。n側電流拡散層36の第1TiN層の下に設けられるTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側電流拡散層36の第2TiN層の上に設けられるTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側電流拡散層36のAu層の厚さは、100nm以上500nm以下であり、例えば、150nm以上300nm以下である。n側電流拡散層36の厚みt3は、例えば、0.2μm以上1μm以下である。
【0046】
n側電流拡散層36は、第2内側傾斜部36bと、第2n側基部36cと、第2外側傾斜部36dとを備える。第2内側傾斜部36bと、第2n側基部36cと、第2外側傾斜部36dとは、同一の材料で構成される。n側電流拡散層36が積層構造を有する場合、第2内側傾斜部36bと、第2n側基部36cと、第2外側傾斜部36dとは、同一の積層構造を有することができる。
【0047】
第2内側傾斜部36bは、n側電流拡散層36の縁を形成する部分であり、活性層26に近づくにつれて上面36aの高さh2が小さくなるように上面36aが傾斜する部分である。第2外側傾斜部36dは、n側電流拡散層36の縁を形成する部分であり、活性層26から離れるにつれて上面36aの高さh2が小さくなるように上面36aが傾斜する部分である。第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dのそれぞれの幅は、第2n側基部36cの高さh2の10倍以上となるように構成される。ここで、n側電流拡散層36の上面36aの高さh2とは、n型半導体層24の第2上面24bからの厚み方向の距離であり、n側コンタクト電極32の厚みt2とn側電流拡散層36の厚みt4の合計に相当する。第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dのそれぞれの上面36aの高さは、第2n側基部36cの上面36aの高さh2の90%以下である。第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dのそれぞれの幅は、例えば、5μm以上20μm以下である。ここで、第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dのそれぞれの幅は、例えば、矢印Bで示される方向における幅であり、矢印Aで示される厚み方向に直交し、n側電流拡散層36の縁が延びる方向(例えば、図1の紙面を貫通する方向)に直交する方向の幅である。これにより、第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dは、上面36aの傾斜が緩やかとなるように形成される。第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dのそれぞれは、第1内側傾斜部32bまたは第1外側傾斜部32dと重なる重畳部分と、第1内側傾斜部32bまたは第1外側傾斜部32dと重ならない非重畳部分とを含む。第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dのそれぞれの非重畳部分は、n型半導体層24の第2上面24bと接する。
【0048】
第2n側基部36cは、n側電流拡散層36の中央部であり、n側電流拡散層36の上面36aの高さh2が実質的に一定となるように上面36aが平坦となる部分である。n側電流拡散層36の上面36aの高さh2が実質的に一定とは、高さh2の変化が±5%以内となることをいう。第2n側基部36cは、第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dとは異なる部分である。第2n側基部36cの上面36aの高さh2は、例えば、0.2μm以上2μm以下である。第2n側基部36cの厚みt4は、例えば、0.1μm以上1μm以下である。第2n側基部36cは、第1n側基部32cと重なる。第2n側基部36cは、第1内側傾斜部32bおよび第1外側傾斜部32dと重ならない。
【0049】
第1保護層38は、素子上部の全体を被覆するように設けられる。第1保護層38は、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28、p側コンタクト電極30、n側コンタクト電極32、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36を被覆する。第1保護層38は、p側電流拡散層34の上に設けられる第1p側パッド開口38pと、n側電流拡散層36の上に設けられる第1n側パッド開口38nとを有する。第1保護層38は、第1p側パッド開口38pと異なる箇所においてp側電流拡散層34を被覆し、第1n側パッド開口38nとは異なる箇所においてn側電流拡散層36を被覆する。第1保護層38は、n型半導体層24の外周においてベース層22と接触する。第1保護層38は、ベース層22の上面22aに接触し、n型半導体層24の第2上面24bおよび側面24cに接触し、活性層26の側面に接触し、p型半導体層28の上面28aおよび側面に接触し、p側電流拡散層34に接触し、n側電流拡散層36に接触する。
【0050】
第1p側パッド開口38pは、p側電流拡散層34の第2p側基部34cと重なる位置に設けられる。第1p側パッド開口38pは、例えば、p側電流拡散層34の第2p側傾斜部34bとは重ならない位置に設けられる。第1n側パッド開口38nは、n側電流拡散層36の第2n側基部36cと重なる位置に設けられる。第1n側パッド開口38nは、例えば、n側電流拡散層36の第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dと重ならない位置に設けられる。
【0051】
第1保護層38は、酸化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)などの酸化物誘電体材料から構成される。第1保護層38は、好ましくはSiOから構成される。第1保護層38の厚さは、300nm以上1500nm以下であり、例えば600nm以上1000nm以下である。
【0052】
第2保護層40は、素子上部の全体を被覆するように設けられ、第1保護層38の表面全体を被覆するように設けられる。第2保護層40は、p側電流拡散層34の上に設けられる第2p側パッド開口40pと、n側電流拡散層36の上に設けられる第2n側パッド開口40nとを有する。第2保護層40は、第2p側パッド開口40pおよび第2n側パッド開口40nとは異なる箇所において第1保護層38を被覆する。第2保護層40は、第1p側パッド開口38pおよび第1n側パッド開口38nのそれぞれの内側にも設けられる。第2保護層40は、第1p側パッド開口38pを規定する第1保護層38の内周面38aを被覆し、第1n側パッド開口38nを規定する第1保護層38の内周面38bを被覆する。第2保護層40は、第1保護層38の外周においてベース層22と接触する。第2保護層40は、ベース層22の上面22aに接触し、第1保護層38の内周面38a,38bに接触し、p側電流拡散層34に接触し、n側電流拡散層36に接触する。
【0053】
第2p側パッド開口40pは、p側電流拡散層34の第2p側基部34cと重なる位置に設けられる。第2p側パッド開口40pは、例えば、p側電流拡散層34の第2p側傾斜部34bとは重ならない位置に設けられる。第2n側パッド開口40nは、n側電流拡散層36の第2n側基部36cと重なる位置に設けられる。第1n側パッド開口38nは、例えば、n側電流拡散層36の第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dとは重ならない位置に設けられる。
【0054】
第2保護層40は、耐湿性に優れた誘電体材料である窒化シリコン(SiN)から構成される。第2保護層40の厚さは、50nm以上500nm以下であり、例えば100nm以上400nm以下である。
【0055】
p側パッド電極42およびn側パッド電極44は、半導体発光素子10をサブマウント基板などに実装する際に接合される部分である。p側パッド電極42およびn側パッド電極44は、例えば、Ni/Au、Ti/AuまたはTi/Pt/Auの積層構造を含む。p側パッド電極42およびn側パッド電極44のそれぞれの厚さは、100nm以上であり、例えば200nm以上1000nm以下である。
【0056】
p側パッド電極42は、p側電流拡散層34の上に設けられ、第2p側パッド開口40pにおいてp側電流拡散層34と接触する。p側パッド電極42は、p側電流拡散層34を介してp側コンタクト電極30と電気的に接続される。p側パッド電極42は、第2p側パッド開口40pを塞ぐように設けられ、第2p側パッド開口40pの外側において第2保護層40の上に重なる。p側パッド電極42は、第1p側パッド開口38pの外側において第1保護層38の上に重なってもよい。p側パッド電極42は、p側電流拡散層34の第2p側基部34cと接触する。p側パッド電極42は、p側電流拡散層34の第2p側傾斜部34bと接触しない。p側パッド電極42は、p側電流拡散層34の第2p側傾斜部34bの上に重なってもよい。
【0057】
n側パッド電極44は、n側電流拡散層36の上に設けられ、第2n側パッド開口40nにおいてn側電流拡散層36と接触する。n側パッド電極44は、n側電流拡散層36を介してn側コンタクト電極32と電気的に接続される。n側パッド電極44は、第2n側パッド開口40nを塞ぐように設けられ、第2n側パッド開口40nの外側において第2保護層40の上に重なる。n側パッド電極44は、第1n側パッド開口38nの外側において第1保護層38の上に重なってもよい。n側パッド電極44は、n側電流拡散層36の第2n側基部36cと接触する。n側パッド電極44は、n側電流拡散層36の第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dと接触しない。n側パッド電極44は、n側電流拡散層36の第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dの上に重なってもよい。
【0058】
図2は、第1実施形態に係るコンタクト電極52および電流拡散層54の傾斜構造を概略的に示す断面図である。図2は、半導体層50の上にコンタクト電極52、電流拡散層54、第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60が積層された構造を示す。
【0059】
半導体層50は、上述のn型半導体層24またはp型半導体層28に対応する。第1保護層56および第2保護層58は、上述の第1保護層38および第2保護層40にそれぞれ対応する。半導体層50がp型半導体層28である場合、コンタクト電極52はp側コンタクト電極30であり、電流拡散層54はp側電流拡散層34であり、パッド電極60はp側パッド電極42である。半導体層50がn型半導体層24である場合、コンタクト電極52はn側コンタクト電極32であり、電流拡散層54はn側電流拡散層36であり、パッド電極60はn側パッド電極44である。
【0060】
コンタクト電極52は、第1傾斜部52bと、第1基部52cとを備える。第1傾斜部52bは、上述の第1p側傾斜部30b、第1内側傾斜部32bまたは第1外側傾斜部32dに対応する。第1傾斜部52bは、コンタクト電極52の縁に向けて厚みt5が小さくなる部分である。第1傾斜部52bは、例えば、第1傾斜部52bの厚みが第1基部52cの厚みt5の90%以下となる部分である。矢印Bで示される所定方向における第1傾斜部52bの幅w1は、第1基部52cの厚みt5の10倍以上である。矢印Bで示される所定方向における第1傾斜部52bの幅w1は、例えば、5μm以上10μm以下である。第1基部52cは、上述の第1p側基部30cまたは第1n側基部32cに対応する。第1基部52cは、コンタクト電極52の厚みt5が実質的に一定となるように上面52aが平坦となる部分である。第1基部52cの厚みt5は、例えば、0.1μm以上1μm以下である。
【0061】
電流拡散層54は、第2傾斜部54bと、第2基部54cとを備える。第2傾斜部54bは、上述の第2p側傾斜部34b、第2内側傾斜部36bまたは第2外側傾斜部36dに対応する。第2傾斜部54bは、電流拡散層54の縁に向けて上面54aの高さh3が小さくなる部分である。第2傾斜部54bは、例えば、第2傾斜部54bの上面54aの高さが第2基部54cの上面54aの高さh3の90%以下となる部分である。矢印Bで示される所定方向における第2傾斜部54bの幅w2は、第2基部54cの上面54aの高さh3の10倍以上である。第2基部54cの上面54aの高さh3は、半導体層50の上面50aからの高さであり、第1基部52cの厚みt5と第2基部54cの厚みt6の合計に相当する。矢印Bで示される所定方向における第2傾斜部54bの幅w2は、例えば、5μm以上20μm以下である。第2基部54cは、上述の第2p側基部34cまたは第2n側基部36cに対応する。第2基部54cは、電流拡散層54の上面54aの高さh3が実質的に一定となるように上面54aが平坦となる部分である。第2基部54cの上面54aの高さh3は、例えば、0.2μm以上2μm以下である。第2基部54cの厚みt6は、例えば、0.1μm以上1μm以下である。
【0062】
第2傾斜部54bは、非重畳部分54eと、重畳部分54fとを含む。非重畳部分54eは、第2傾斜部54bのうち第1傾斜部52bと重ならない部分である。図2の例において、非重畳部分54eは、コンタクト電極52と重ならない部分であり、コンタクト電極52の縁よりも外側に設けられる。非重畳部分54eの厚みt6、電流拡散層54の縁に向けて小さくなるように構成される。重畳部分54fは、第2傾斜部54bのうち第1傾斜部52bの上に重なる部分である。図2の例において、重畳部分54fは、コンタクト電極52と重なる部分であり、コンタクト電極52の縁よりも内側に設けられる。重畳部分54fは、電流拡散層54の厚みt6が変化する第1重畳部分54gと、電流拡散層54の厚みt6が実質的に一定となる第2重畳部分54hとを含む。第1重畳部分54gの厚みt6は、電流拡散層54の縁に向けて、つまり、第2重畳部分54hから非重畳部分54eに向けて、小さくなるように構成される。
【0063】
矢印Bで示される所定方向における非重畳部分54eの幅w3は、第1傾斜部52bの幅w1の半分以上であり、好ましくは60%以上である。非重畳部分54eの幅w3は、例えば、2μm以上10μm以下である。矢印Bで示される所定方向における第1重畳部分54gの幅w4は、第1傾斜部52bの幅w1の半分未満であり、好ましくは40%以下である。第1重畳部分54gの幅w4は、例えば、1μm以上5μm以下である。矢印Bで示される所定方向における第2重畳部分54hの幅w3は、第1傾斜部52bの幅w1の半分以上であり、好ましくは60%以上である。第2重畳部分54hの幅w3は、例えば、2μm以上10μm以下である。
【0064】
第1保護層56は、第2基部54cと重なる位置に設けられる第1パッド開口56cを有する。第1パッド開口56cは、上述の第1n側パッド開口38nまたは第1p側パッド開口38pに対応する。第2保護層58は、第2基部54cと重なる位置に設けられる第2パッド開口58cを有する。第2パッド開口58cは、上述の第2n側パッド開口40nまたは第2p側パッド開口40pに対応する。第2保護層58は、第1パッド開口56cを規定する第1保護層56の内周面56aを被覆する。パッド電極60は、第1パッド開口56cおよび第2パッド開口58cにおいて電流拡散層54の上面54aと接触する。
【0065】
図2の構成において、電流拡散層54の上面54aの傾斜は、第1重畳部分54gの位置で大きくなりやすい。なぜなら、第1重畳部分54gの上面54aの傾斜は、厚みt5が変化する第1傾斜部52bによる傾斜の寄与と、厚みt6が変化する第1重畳部分54gによる傾斜の寄与との合計に相当するためである。図2の構成において、第1重畳部分54gの幅w4を相対的に小さくすることにより、上面54aの傾斜が大きくなりやすい第1重畳部分54gの幅w4を相対的に小さくできる。その結果、電流拡散層54の上面54aの上に積層される第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60の傾斜を小さくすることができ、第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60の厚みを均一化することができる。これにより、第1保護層56および第2保護層58の厚みが局所的に小さくなることで被覆性が低下することを防止できる。また、パッド電極60の厚みが局所的に小さくなることで導電性が低下することを防止できる。その結果、半導体発光素子10の信頼性を向上できる。
【0066】
また、第1傾斜部52bの幅w1を第1基部52cの厚みt5の10倍以上とすることにより、第1傾斜部52bの上面52aの傾斜を小さくできる。同様に、第2傾斜部54bの幅w2を第2基部54cの上面54aの高さh3の10倍以上とすることにより、第2傾斜部54bの上面54aの傾斜を小さくできる。その結果、電流拡散層54の上面54aの上に積層される第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60の傾斜を小さくすることができ、第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60の厚みを均一化することができる。これにより、第1保護層56および第2保護層58の厚みが局所的に小さくなることで被覆性が低下することを防止できる。また、パッド電極60の厚みが局所的に小さくなることで導電性が低下することを防止できる。その結果、半導体発光素子10の信頼性を向上できる。
【0067】
図3は、第1実施形態に係るコンタクト電極52の形成工程を概略的に示す断面図である。まず、半導体層50の上面50aに第1レジスト62を形成する。第1レジスト62は、リソグラフィ技術を用いて形成できる。第1レジスト62は、コンタクト電極52の形成領域に位置する第1開口62aを有し、第1開口62aを除く領域に形成される。第1レジスト62の第1開口62aは、いわゆるアンダーカット形状を有する。第1レジスト62は、第1開口62aに向けて突出する庇部62bを有する。半導体層50の上面50aと庇部62bの間には、アンダーカット形状の隙間62cが設けられる。アンダーカット形状の隙間62cの高さh6は、0.1μm以上1μm以下である。矢印Bで示される所定方向におけるアンダーカット形状の隙間62cの幅w6は、5μm以上10μm以下である。
【0068】
次に、第1レジスト62の上から電極層64を堆積させ、第1開口62a内にコンタクト電極52を形成する。電極層64は、例えば、スパッタリング法を用いて堆積させることができる。スパッタリング法を用いることにより、半導体層50の上面50aに対して(例えば±10度以上の)角度分布を有するスパッタリング粒子を入射させることができる。その結果、アンダーカット形状の隙間62cの奥側にスパッタリング粒子を効果的に到達させることができ、コンタクト電極52の第1傾斜部52bの幅w1を大きくすることができる。コンタクト電極52の第1傾斜部52bは、第1レジスト62(庇部62b)と重なる領域C1および第1レジスト62とは重ならない領域C2にわたって形成される。コンタクト電極52の形成後、第1レジスト62は、除去される。
【0069】
図4は、第1実施形態に係る電流拡散層54の形成工程を概略的に示す断面図である。まず、半導体層50の上面50aに第2レジスト66を形成する。第2レジスト66は、リソグラフィ技術を用いて形成できる。第2レジスト66は、電流拡散層54の形成領域に位置する第2開口66aを有し、第2開口66aを除く領域に形成される。第2レジスト66の第2開口66aは、いわゆるアンダーカット形状を有する。第2レジスト66は、第2開口66aに向けて突出する庇部66bを有する。半導体層50の上面50aと庇部66bの間には、アンダーカット形状の隙間66cが設けられる。アンダーカット形状の隙間66cの高さh7は、0.1μm以上1μm以下である。矢印Bで示される所定方向におけるアンダーカット形状の隙間66cの幅w7は、5μm以上10μm以下である。第2レジスト66は、例えば、コンタクト電極52と重ならない位置に形成される。
【0070】
次に、第2レジスト66の上から積層構造68を堆積させ、第2開口66a内に電流拡散層54を形成する。積層構造68は、例えば、Ti/TiN/Ti/Rh/TiNを順に積層させた構造を有する。積層構造68は、例えば、スパッタリング法を用いて堆積させることができる。スパッタリング法を用いることにより、半導体層50の上面50aに対して(例えば±10度以上の)角度分布を有するスパッタリング粒子を入射させることができる。その結果、アンダーカット形状の隙間66cの奥側にスパッタリング粒子を効果的に到達させることができ、電流拡散層54の第2傾斜部54bの幅w2を大きくすることができる。電流拡散層54の第2傾斜部54bは、第2レジスト66(庇部66b)と重なる領域C3および第2レジスト66とは重ならない領域C4にわたって形成される。第2傾斜部54bの非重畳部分54eは、例えば、第2レジスト66(庇部66b)と重なる領域C3に形成される。第2傾斜部54bの第1重畳部分54gおよび第2重畳部分54hは、例えば、第2レジスト66と重ならない領域C4に形成される。電流拡散層54の形成後、第2レジスト66は、除去される。
【0071】
つづいて、第1実施形態に係る半導体発光素子10の製造方法について説明する。図5図13は、第1実施形態に係る半導体発光素子10の製造工程を概略的に示す。まず、図5において、基板20の第1主面20aの上にベース層22、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28を順に形成する。
【0072】
基板20は、例えばパターン化サファイア基板である。ベース層22は、例えばHT-AlN層と、アンドープのAlGaN層とを含む。n型半導体層24、活性層26およびp型半導体層28は、AlGaN系半導体材料、AlN系半導体材料またはGaN系半導体材料から構成される半導体層であり、有機金属化学気相成長(MOVPE;Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法や、分子線エピタキシ(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。
【0073】
つづいて、図5に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体層28の上面28aにマスク70を形成する。マスク70を形成した状態において、マスク70と重ならない領域にあるp型半導体層28および活性層26をドライエッチングなどにより除去し、n型半導体層24の第2上面24bを露出させる。このエッチング工程により、n型半導体層24の第2上面24bが形成される。その後、マスク70が除去される。
【0074】
次に、図6に示すように、p型半導体層28の上面28aに位置する第1p側開口72aを有する第1p側レジスト72を形成する。第1p側レジスト72は、第1p側開口72aとは異なる領域に形成される。第1p側レジスト72は、図3の第1レジスト62と同様に形成できる。第1p側レジスト72は、第1p側開口72aに向けて突出する庇部72bを有し、p型半導体層28の上面28aと庇部72bの間にアンダーカット形状の隙間72cが設けられる。つづいて、第1p側レジスト72の上から電極層を堆積させることにより、第1p側開口72a内のp型半導体層28の上面28aにp側コンタクト電極30を形成する。p側コンタクト電極30を形成するための電極層は、スパッタリング法を用いて形成できる。アンダーカット形状の第1p側開口72aを有する第1p側レジスト72を用いることにより、第1p側傾斜部30bを備えるp側コンタクト電極30を形成できる。p側コンタクト電極30の形成後、第1p側レジスト72が除去される。
【0075】
次に、図7に示すように、n型半導体層24の第2上面24bに位置する第1n側開口74aを有する第1n側レジスト74を形成する。第1n側レジスト74は、第1n側開口74aとは異なる領域に形成される。第1n側レジスト74は、図3の第1レジスト62と同様に形成できる。第1n側レジスト74は、第1n側開口74aに向けて突出する庇部74bを有し、n型半導体層24の第2上面24bと庇部74bの間にアンダーカット形状の隙間74cが設けられる。つづいて、第1n側レジスト74の上から電極層を堆積させることにより、第1n側開口74a内のn型半導体層24の第2上面24bにn側コンタクト電極32が形成される。n側コンタクト電極32を形成するための電極層は、スパッタリング法を用いて形成できる。アンダーカット形状の第1n側開口74aを有する第1n側レジスト74を用いることにより、第1内側傾斜部32bおよび第1外側傾斜部32dを備えるn側コンタクト電極32を形成できる。n側コンタクト電極32の形成後、第1n側レジスト74が除去される。
【0076】
なお、図6および図7の工程は、順序を入れ替えてもよい。つまり、図7に示されるn側コンタクト電極32の形成工程の後に、図6に示されるp側コンタクト電極30の形成工程を実行してもよい。
【0077】
次に、図8に示すように、p型半導体層28の上面28aに位置する第2p側開口76pを有し、n型半導体層24の第2上面24bに位置する第2n側開口76nを有する第2レジスト76を形成する。第2レジスト76は、第2p側開口76pおよび第2n側開口76nとは異なる領域に形成される。第2レジスト76は、図4の第2レジスト66と同様に形成される。第2レジスト76は、第2p側開口76pまたは第2n側開口76nに向けて突出する庇部76bを有する。p型半導体層28の上面28aと庇部74bの間、および、n型半導体層24の第2上面24bと庇部74bの間には、アンダーカット形状の隙間76cが設けられる。第2レジスト76は、p側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32のそれぞれと庇部76bが重ならないように形成される。
【0078】
つづいて、第2レジスト76の上から積層構造を堆積させることにより、第2p側開口76p内のp側コンタクト電極30の上にp側電流拡散層34を形成し、第2n側開口76n内のn側コンタクト電極32の上にn側電流拡散層36を形成する。p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36を形成するための積層構造は、スパッタリング法を用いて形成できる。アンダーカット形状の第2p側開口76pを有する第2レジスト76を用いることにより、第2p側傾斜部34bを備えるp側電流拡散層34を形成できる。また、アンダーカット形状の第2n側開口76nを有する第2レジスト76を用いることにより、第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dを備えるn側電流拡散層36を形成できる。p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36の形成後、第2レジスト76が除去される。
【0079】
なお、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36は、別々に形成されてもよい。例えば、第2p側開口76pのみを有する第2p側レジストを用いてp側電流拡散層34を形成し、第2n側開口76nのみを有する第2n側レジストを用いてn側電流拡散層36を形成してもよい。この場合、p側電流拡散層34を形成した後にn側電流拡散層36を形成してもよいし、n側電流拡散層36を形成した後にp側電流拡散層34を形成してもよい。
【0080】
次に、図9に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28、p側電流拡散層34およびn側電流拡散層36の上にマスク78を形成する。マスク78を形成した状態において、マスク78と重ならない領域にあるn型半導体層24の外周部をドライエッチングなどにより除去し、ベース層22の上面22aを露出させる。このエッチング工程により、n型半導体層24の側面24cが形成される。その後、マスク78が除去される。
【0081】
次に、図10に示すように、素子上部の全体を被覆するように第1保護層38を形成する。第1保護層38は、例えば、SiOから構成されることができ、プラズマ励起化学気相成長(PECVD;Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成できる。第1保護層38は、ベース層22の上面22aと、n型半導体層24の第2上面24bおよび側面24cと、活性層26の側面と、p型半導体層28の上面28aおよび側面と、p側電流拡散層34と、n側電流拡散層36と接触し、これらを被覆するように形成される。
【0082】
次に、図11に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第1保護層38の上にマスク80を形成し、マスク80と重ならない領域にある第1保護層38をドライエッチングなどにより除去する。p側電流拡散層34上の第1保護層38を除去することにより、p側電流拡散層34の上面34aが露出する第1p側パッド開口38pが形成される。n側電流拡散層36上の第1保護層38を除去することにより、n側電流拡散層36の上面36aが露出する第1n側パッド開口38nが形成される。また、第1保護層38の外周部を除去することにより、ベース層22の上面22aが露出する。その後、マスク80が除去される。
【0083】
次に、図12に示すように、素子上部の全体を被覆するように第2保護層40を形成する。第2保護層40は、例えば、SiNから構成されることができ、PECVD法を用いて形成できる。第2保護層40は、ベース層22の上面22aと、第1保護層38と接触し、これらを被覆するように形成される。第2保護層40は、第1p側パッド開口38pにおいて、第1p側パッド開口38pを規定する第1保護層38の内周面38aと、p側電流拡散層34の上面34aとに接触し、これらを被覆する。第2保護層40は、第1n側パッド開口38nにおいて、第1n側パッド開口38nを規定する第1保護層38の内周面38bと、n側電流拡散層36の上面36aとに接触し、これらを被覆する。
【0084】
次に、図13に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第2保護層40の上にマスク82を形成し、マスク82と重ならない領域にある第2保護層40をドライエッチングなどにより除去する。p側電流拡散層34上の第2保護層40を除去することにより、p側電流拡散層34の上面34aが露出する第2p側パッド開口40pが形成される。n側電流拡散層36上の第2保護層40を除去することにより、n側電流拡散層36の上面36aが露出する第2n側パッド開口40nが形成される。また、第2保護層40の外周部を除去することにより、ベース層22の上面22aが露出する。その後、マスク82が除去される。
【0085】
次に、図1に示すように、第2p側パッド開口40pにおいてp側電流拡散層34と接続するp側パッド電極42を形成し、第2n側パッド開口40nにおいてn側電流拡散層36と接続するn側パッド電極44を形成する。p側パッド電極42は、第2p側パッド開口40pの外側において第2保護層40の上に重なるように形成される。n側パッド電極44は、第2n側パッド開口40nの外側において第2保護層40の上に重なるように形成される。p側パッド電極42およびn側パッド電極44は、同時に形成できるが、別々に形成されてもよい。
【0086】
以上の工程により、図1に示す半導体発光素子10ができあがる。
【0087】
本実施形態によれば、SiOから構成される第1保護層38と、SiNから構成される第2保護層40とを組み合わせることにより、半導体発光素子10の耐湿性を向上させることができる。また、第1p側パッド開口38pおよび第1n側パッド開口38nを規定する第1保護層38の内周面38c,38dを第2保護層40によって被覆することにより、半導体発光素子10の耐湿性をさらに向上できる。
【0088】
本実施形態によれば、p側コンタクト電極30の縁に第1p側傾斜部30bが設けられるため、p側コンタクト電極30を被覆するp側電流拡散層34、第1保護層38、第2保護層40およびp側パッド電極42の上面の傾斜を緩やかにできる。同様に、n側コンタクト電極32の縁に第1内側傾斜部32bおよび第1外側傾斜部32dが設けられるため、n側コンタクト電極32を被覆するn側電流拡散層36、第1保護層38、第2保護層40およびn側パッド電極44の上面の傾斜を緩やかにできる。その結果、第1保護層38および第2保護層40の膜厚を均一化することができ、封止性を向上できる。また、p側パッド電極42およびn側パッド電極44の膜厚を均一化することができ、導電性の低下を抑制できる。
【0089】
本実施形態によれば、p側電流拡散層34の縁に第2p側傾斜部34bが設けられるため、p側電流拡散層34を被覆する第1保護層38、第2保護層40およびp側パッド電極42の上面の傾斜を緩やかにできる。同様に、n側電流拡散層36の縁に第2内側傾斜部36bおよび第2外側傾斜部36dが設けられるため、n側電流拡散層36を被覆する第1保護層38、第2保護層40およびp側パッド電極42の上面の傾斜を緩やかにできる。その結果、第1保護層38および第2保護層40の膜厚を均一化することができ、封止性を向上できる。また、p側パッド電極42およびn側パッド電極44の膜厚を均一化することができ、導電性の低下を抑制できる。
【0090】
本実施形態に係る半導体発光素子10は、耐湿性に優れるため、パッケージ内に封止することなく使用できる。半導体発光素子10は、第2保護層40が外部環境に露出した状態のまま通電使用でき、例えば、チップオンサブマウント(CoS;Chip on Submount)の形態で使用できる。
【0091】
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態に係る半導体発光素子10Aの構成を概略的に示す断面図である。第2実施形態では、p側電流拡散層84の形成範囲がp側コンタクト電極30の形成範囲よりも狭く、n側電流拡散層86の形成範囲がn側コンタクト電極32の形成範囲よりも狭い点で、上述の第1実施形態と相違する。以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明し、共通点について適宜説明を省略する。
【0092】
半導体発光素子10Aは、基板20と、ベース層22と、n型半導体層24と、活性層26と、p型半導体層28と、p側コンタクト電極30と、n側コンタクト電極32と、p側電流拡散層84と、n側電流拡散層86と、第1保護層38と、第2保護層40と、p側パッド電極42と、n側パッド電極44とを備える。
【0093】
p側電流拡散層84は、第1実施形態に係るp側電流拡散層34と同様に構成されるが、p側電流拡散層84の形成範囲がp側コンタクト電極30の形成範囲より狭い点で、上述の第1実施形態と相違する。p側電流拡散層84は、p側コンタクト電極30の上面30aに設けられ、p型半導体層28の上面28aとは接触しない。p側電流拡散層84は、第2p側傾斜部84bと、第2p側基部84cとを備える。第2p側傾斜部84bおよび第2p側基部84cは、同一の材料で構成される。p側電流拡散層84は、第1実施形態に係るp側電流拡散層34と同様の積層構造を有することができる。第2p側傾斜部84bおよび第2p側基部84cは、同一の積層構造を有することができる。
【0094】
第2p側傾斜部84bは、第1p側傾斜部30bと重なる重畳部分と、第1p側傾斜部30bとは重ならない非重畳部分とを含む。第2p側傾斜部84bの非重畳部分は、第1p側基部30cと重なり、第1p側傾斜部30bとは重ならない。第2p側基部84cは、第1p側基部30cと重なり、第1p側傾斜部30bとは重ならない。
【0095】
n側電流拡散層86は、第1実施形態に係るn側電流拡散層36と同様に構成されるが、n側電流拡散層86の形成範囲がn側コンタクト電極32の形成範囲より狭い点で、上述の第1実施形態と相違する。n側電流拡散層86は、n側コンタクト電極32の上面32aに設けられ、n型半導体層24の第2上面24bとは接触しない。n側電流拡散層86は、第2内側傾斜部86bと、第2n側基部86cと、第2外側傾斜部86dとを備える。第2内側傾斜部86b、第2n側基部86cおよび第2外側傾斜部86dは、同一の材料で構成される。n側電流拡散層86は、第1実施形態に係るn86と同様の積層構造を有することができる。第2内側傾斜部86b、第2n側基部86cおよび第2外側傾斜部86dは、同一の積層構造を有することができる。
【0096】
第2内側傾斜部86bおよび第2外側傾斜部86dのそれぞれは、第1内側傾斜部32bまたは第1外側傾斜部32dと重なる重畳部分と、第1内側傾斜部32bまたは第1外側傾斜部32dとは重ならない非重畳部分とを含む。第2内側傾斜部86bおよび第2外側傾斜部86dのそれぞれの非重畳部分は、第2n側基部36cと重なる。第2n側基部86cは、第1n側基部32cと重なり、第1内側傾斜部32bおよび第1外側傾斜部32dとは重ならない。
【0097】
図15は、第2実施形態に係るコンタクト電極52および電流拡散層88の傾斜構造を概略的に示す断面図である。図15は、図2と同様の構造を示し、半導体層50の上にコンタクト電極52、電流拡散層88、第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60が積層された構造を示す。図15の構成は、電流拡散層88がコンタクト電極52の縁よりも内側に配置される点で図2の構成と相違する。
【0098】
電流拡散層88は、第2傾斜部88bと、第2基部88cとを備える。第2傾斜部88bは、上述の第2p側傾斜部84b、第2内側傾斜部86bまたは第2外側傾斜部86dに対応する。第2傾斜部88bは、電流拡散層88の縁に向けて上面88aの高さh10が小さくなる部分である。第2傾斜部88bの上面88aの高さは、第2基部88cの上面88aの高さh3の90%以下である。矢印Bで示される所定方向における第2傾斜部88bの幅w10は、第2基部88cの上面88aの高さh10の10倍以上である。第2基部88cの上面88aの高さh10は、半導体層50の上面50aからの高さであり、第1基部52cの厚みt5と第2基部88cの厚みt8の合計に相当する。第2傾斜部88bの幅w10は、例えば、5μm以上20μm以下である。第2基部88cは、上述の第2p側基部34cまたは第2n側基部36cに対応する。第2基部88cは、電流拡散層88の上面88aの高さh10が実質的に一定となるように上面88aが平坦となる部分である。第2基部88cの上面88aの高さh10は、例えば、0.2μm以上2μm以下である。第2基部88cの厚みt8は、例えば、0.1μm以上1μm以下である。
【0099】
第2傾斜部88bは、非重畳部分88eと、重畳部分88fとを含む。非重畳部分88eは、第2傾斜部88bのうち第1傾斜部52bと重ならない部分である。図15の例において、非重畳部分88eは、第1基部52cと重なる部分である。重畳部分88fは、第2傾斜部88bのうち第1傾斜部52bの上に重なる部分である。図15の例において、非重畳部分88eおよび重畳部分88fはいずれも、電流拡散層88の縁に向けて電流拡散層88の厚みt8が変化するよう構成される。つまり、非重畳部分88eおよび重畳部分88fは、電流拡散層88の縁に向けて、電流拡散層88の厚みt8が小さくなるように構成される。
【0100】
矢印Bで示される所定方向における非重畳部分88eの幅w8は、第1傾斜部52bの幅w1の半分以上であり、好ましくは60%以上である。非重畳部分88eの幅w8は、例えば、2μm以上10μm以下である。矢印Bで示される所定方向における重畳部分88fの幅w9は、第1傾斜部52bの幅w1の半分未満であり、好ましくは40%以下である。重畳部分88fの幅w9は、例えば、1μm以上5μm以下である。
【0101】
図15の構成において、電流拡散層88の上面88aの傾斜は、重畳部分88fの位置で大きくなりやすい。なぜなら、重畳部分88fの上面88aの傾斜は、厚みt5が変化する第1傾斜部52bによる傾斜の寄与と、厚みt8が変化する重畳部分88gによる傾斜の寄与との合計に相当するためである。図15の構成において、重畳部分88fの幅w9を相対的に小さくすることにより、上面88aの傾斜が大きくなりやすい重畳部分88fの幅w9を相対的に小さくできる。その結果、電流拡散層88の上面88aの上に積層される第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60の傾斜を小さくすることができ、第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60の厚みを均一化することができる。これにより、第1保護層56および第2保護層58の厚みが局所的に小さくなることで被覆性が低下することを防止できる。また、パッド電極60の厚みが局所的に小さくなることで導電性が低下することを防止できる。その結果、半導体発光素子10の信頼性を向上できる。
【0102】
また、第1傾斜部52bの幅w1を第1基部52cの厚みt5の10倍以上とすることにより、第1傾斜部52bの上面52aの傾斜を小さくすることができる。同様に、第2傾斜部88bの幅w10を第2基部88cの上面88aの高さh10の10倍以上とすることにより、第2傾斜部88bの上面88aの傾斜を小さくすることができる。その結果、電流拡散層88の上面88aの上に積層される第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60の傾斜を小さくすることができ、第1保護層56、第2保護層58およびパッド電極60の厚みを均一化することができる。これにより、第1保護層56および第2保護層58の厚みが局所的に小さくなることで被覆性が低下することを防止できる。また、パッド電極60の厚みが局所的に小さくなることで導電性が低下することを防止できる。その結果、半導体発光素子10の信頼性を向上できる。
【0103】
図16は、第2実施形態に係る電流拡散層88の形成工程を概略的に示す断面図である。図16は、図3のコンタクト電極52の形成工程後の工程を示す。まず、コンタクト電極52が形成された半導体層50の上に第2レジスト90を形成する。第2レジスト90は、リソグラフィ技術を用いて形成できる。第2レジスト90は、電流拡散層88の形成領域に位置する第2開口90aを有し、第2開口90aを除く領域に形成される。第2レジスト90の第2開口90aは、いわゆるアンダーカット形状を有する。第2レジスト90は、第2開口90aに向けて突出する庇部90bを有し、コンタクト電極52の上面52aと庇部90bの間にアンダーカット形状の隙間90cが設けられる。アンダーカット形状の隙間90cの高さh10は、0.1μm以上1μm以下である。矢印Bで示される所定方向におけるアンダーカット形状の隙間90cの幅w11は、5μm以上10μm以下である。第2レジスト90の庇部90bは、コンタクト電極52と重なる位置に形成される。第2レジスト90の庇部90bは、例えば、コンタクト電極52の第1基部52cと重なる位置に形成される。
【0104】
次に、第2レジスト90の上から積層構造92を堆積させ、第2開口90a内に電流拡散層88を形成する。積層構造92は、例えば、Ti/TiN/Ti/Rh/TiNを順に積層させた構造を有する。積層構造92は、例えば、スパッタリング法を用いて堆積させることができる。スパッタリング法を用いることにより、半導体層50の上面50aに対して(例えば±10度以上の)角度分布を有するスパッタリング粒子を入射させることができる。その結果、アンダーカット形状の隙間90cの奥側にスパッタリング粒子を効果的に到達させることができ、電流拡散層88の第2傾斜部88bの幅w10を大きくすることができる。電流拡散層88の第2傾斜部88bは、第2レジスト90(庇部90b)と重なる領域C5および第2レジスト90とは重ならない領域C6にわたって形成される。第2傾斜部88bの非重畳部分88eは、第2レジスト90(庇部90b)と重ならない領域C6に形成される。第2傾斜部88bの非重畳部分88eは、第2レジスト90(庇部90b)と重なる領域C5に形成されてもよい。第2傾斜部88bの重畳部分88fは、例えば、第2レジスト90と重なる領域C5に形成される。電流拡散層88の形成後、第2レジスト90は、除去される。
【0105】
つづいて、第2実施形態に係る半導体発光素子10Aの製造方法について説明する。第2実施形態に係る半導体発光素子10Aは、図5図13に示す第1実施形態と同様の工程で形成することができる。
【0106】
第2実施形態では、図8に示すp側電流拡散層34およびn側電流拡散層36を形成する工程において、図16に示す第2レジスト90と同様の第2レジストを用いる。つまり、第2レジストの庇部がp側コンタクト電極30およびn側コンタクト電極32のそれぞれと重なるように形成される第2レジストを用いることにより、p側電流拡散層84およびn側電流拡散層86を形成することができる。
【0107】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0108】
さらに別の実施の形態では、第1実施形態に係るp側電流拡散層34と、第2実施形態に係るn側電流拡散層86とを組み合わせてもよい。つまり、半導体発光素子は、p側コンタクト電極30の形成範囲よりも広い範囲に形成されるp側電流拡散層34と、n側コンタクト電極32の形成範囲よりも狭い範囲に形成されるn側電流拡散層86とを備えてもよい。
【0109】
さらに別の実施の形態では、第2実施形態に係るp側電流拡散層84と、第1実施形態に係るn側電流拡散層36とを組み合わせてもよい。つまり、半導体発光素子は、p側コンタクト電極30の形成範囲よりも狭い範囲に形成されるp側電流拡散層84と、n側コンタクト電極32の形成範囲よりも広い範囲に形成されるn側電流拡散層36とを備えてもよい。
【0110】
以上、本発明を実施形態にもとづいて説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0111】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0112】
本発明の第1の態様は、n型半導体層と、前記n型半導体層の第1上面上に設けられる活性層と、前記活性層上に設けられるp型半導体層と、前記n型半導体層の前記第1上面とは異なる第2上面と接触する、または、前記p型半導体層の上面と接触するコンタクト電極と、前記n型半導体層、前記活性層、前記p型半導体層および前記コンタクト電極を被覆し、誘電体材料から構成される保護層と、前記保護層上に設けられるパッド電極と、を備え、前記コンタクト電極は、前記コンタクト電極の縁に向けて前記コンタクト電極の厚みが小さくなるように前記コンタクト電極の上面が傾斜する第1傾斜部を備え、前記コンタクト電極の縁が延びる方向および前記コンタクト電極の厚み方向と直交する所定方向における前記第1傾斜部の幅は、前記コンタクト電極の前記第1傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、半導体発光素子である。第1の態様によれば、コンタクト電極の縁に第1傾斜部が設けられ、第1傾斜部の幅がコンタクト電極の厚みの10倍以上であるため、第1傾斜部の上面の傾斜を緩やかにできる。そのため、第1傾斜部を被覆する保護層の膜厚を均一化し、保護層による封止性を高めることができる。その結果、半導体発光素子の信頼性を向上できる。
【0113】
本発明の第2の態様は、前記コンタクト電極の前記第1傾斜部とは異なる部分の厚みは、0.1μm以上1μm以下である、第1の態様に記載の半導体発光素子である。第2の態様によれば、コンタクト電極の厚みを0.1μm以上にすることにより、第1傾斜部とは異なる部分において好適なコンタクト抵抗を実現できる。また、コンタクト電極の厚みを1μm以下にすることにより、第1傾斜部の幅が過度に大きくなることを防ぎ、第1傾斜部とは異なる部分の幅が小さくなることを防ぐことができる。これにより、第1傾斜部とは異なる部分において好適なコンタクト抵抗を実現できる。
【0114】
本発明の第3の態様は、前記所定方向における前記第1傾斜部の幅は、5μm以上10μm以下である、第1または第2の態様に記載の半導体発光素子である。第3の態様によれば、第1傾斜部の幅を5μm以上とすることにより、第1傾斜部の上面の傾斜を緩やかにできる。また、第1傾斜部の幅を10μm以下とすることにより、第1傾斜部とは異なる部分の幅が小さくなることを防ぐことができる。
【0115】
本発明の第4の態様は、前記コンタクト電極上に設けられ、前記保護層によって被覆され、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含む電流拡散層をさらに備え、前記電流拡散層は、前記電流拡散層の縁に向けて前記電流拡散層の上面の高さが小さくなるように傾斜する第2傾斜部を備え、前記所定方向における前記第2傾斜部の幅は、前記電流拡散層の前記第2傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、第1から第3のいずれか一つの態様に記載の半導体発光素子である。第4の態様によれば、電流拡散層の縁に第2傾斜部が設けられ、第2傾斜部の幅が電流拡散層の厚みの10倍以上であるため、第2傾斜部の上面の傾斜を緩やかにできる。そのため、第2傾斜部を被覆する保護層の膜厚を均一化し、保護層による封止性を高めることができる。その結果、半導体発光素子の信頼性を向上できる。
【0116】
本発明の第5の態様は、前記コンタクト電極の前記第1傾斜部とは異なる部分の厚みと、前記電流拡散層の前記第2傾斜部とは異なる部分の厚みとの合計は、0.2μm以上2μm以下である、第4の態様に記載の半導体発光素子である。第5の態様によれば、コンタクト電極と電流拡散層の厚みの合計を0.2μm以上にすることにより、第1傾斜部および第2傾斜部とは異なる部分において好適なコンタクト抵抗および電流拡散機能を実現できる。また、コンタクト電極と電流拡散層の厚みの合計を2μm以下にすることにより、第2傾斜部の幅が過度に大きくなることを防ぎ、第2傾斜部とは異なる部分の幅が小さくなることを防ぐことができる。これにより、第2傾斜部とは異なる部分において好適な電流拡散機能を実現できる。
【0117】
本発明の第6の態様は、前記第2傾斜部は、前記第1傾斜部の上に重なる重畳部分と、前記第1傾斜部の上に重ならない非重畳部分とを含み、前記所定方向における前記第2傾斜部の前記非重畳部分の幅は、前記所定方向における前記第1傾斜部の幅の半分以上である、第4または第5の態様に記載の半導体発光素子である。第6の態様によれば、第2傾斜部の非重畳部分の幅を大きくすることにより、電流拡散層の上面において傾斜が大きくなりやすい重畳部分の幅を小さくすることができる。これにより、第2傾斜部を被覆する保護層の膜厚を均一化し、保護層による封止性を高めることができる。
【0118】
本発明の第7の態様は、前記非重畳部分は、前記コンタクト電極の上に重ならない、第6の態様に記載の半導体発光素子である。第7の態様によれば、コンタクト電極の形成範囲の外側に電流拡散層が設けられるため、コンタクト電極の全体を電流拡散層によって被覆することができる。その結果、コンタクト電極を電流拡散層によって保護するとともに、より好適な電流拡散機能を実現できる。
【0119】
本発明の第8の態様は、前記非重畳部分は、前記コンタクト電極の前記第1傾斜部とは異なる部分の上に重なる、第6の態様に記載の半導体発光素子である。第8の態様によれば、電流拡散層の形成範囲の外側にコンタクト電極が設けられるため、コンタクト電極の面積を最大化することができる。その結果、より好適なコンタクト抵抗および電流拡散機能を実現できる。
【0120】
本発明の第9の態様は、前記コンタクト電極は、前記n型半導体層の前記第2上面と接触するn側コンタクト電極を備え、前記n側コンタクト電極は、前記活性層に近づくにつれて前記n側コンタクト電極の厚みが小さくなるように前記n側コンタクト電極の上面が傾斜する第1内側傾斜部と、前記活性層から離れるにつれて前記n側コンタクト電極の厚みが小さくなるように前記n側コンタクト電極の上面が傾斜する第1外側傾斜部とを備え、前記所定方向における前記第1内側傾斜部および前記第1外側傾斜部のそれぞれの幅は、前記n側コンタクト電極の前記第1内側傾斜部および前記第1外側傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、第1から第8のいずれか一つの態様に記載の半導体発光素子である。第9の態様によれば、第1内側傾斜部および第1外側傾斜部のそれぞれの幅がn側コンタクト電極の厚みの10倍以上であるため、第1内側傾斜部および第1外側傾斜部のそれぞれの上面の傾斜を緩やかにできる。これにより、第1内側傾斜部および第1外側傾斜部を被覆する保護層の膜厚を均一化し、保護層による封止性を高めることができる。その結果、半導体発光素子の信頼性を向上できる。
【0121】
本発明の第10の態様は、前記n側コンタクト電極上に設けられ、前記保護層によって被覆され、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含むn側電流拡散層をさらに備え、前記n側電流拡散層は、前記活性層に近づくにつれて前記n側電流拡散層の高さが小さくなるように前記n側電流拡散層の上面が傾斜する第2内側傾斜部と、前記活性層から離れるにつれて前記n側電流拡散層の高さが小さくなるように前記n側電流拡散層の上面が傾斜する第2外側傾斜部とを備え、前記所定方向における前記第2内側傾斜部および前記第2外側傾斜部のそれぞれの幅は、前記n側電流拡散層の前記第2内側傾斜部および前記第2外側傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、第9の態様に記載の半導体発光素子である。第10の態様によれば、第2内側傾斜部および第2外側傾斜部のそれぞれの幅がn側電流拡散層の厚みの10倍以上であるため、第2内側傾斜部および第2外側傾斜部のそれぞれの上面の傾斜を緩やかにできる。これにより、第2内側傾斜部と第2外側傾斜部を被覆する保護層の膜厚を均一化し、保護層による封止性を高めることができる。
【0122】
本発明の第11の態様は、前記コンタクト電極は、前記p型半導体層の前記上面と接触するp側コンタクト電極を備え、前記p側コンタクト電極は、前記p側コンタクト電極の縁に近づくにつれて前記p側コンタクト電極の厚みが小さくなるように前記p側コンタクト電極の上面が傾斜する第1p側傾斜部を備え、前記所定方向における前記第1p側傾斜部の幅は、前記p側コンタクト電極の前記第1p側傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、第1から第10のいずれか一つの態様に記載の半導体発光素子である。第11の態様によれば、第1p側傾斜部の幅がp側コンタクト電極の厚みの10倍以上であるため、第1p側傾斜部の上面の傾斜を緩やかにできる。これにより、第1p側傾斜部を被覆する保護層の膜厚を均一化し、保護層による封止性を高めることができる。
【0123】
本発明の第12の態様は、前記p側コンタクト電極上に設けられ、前記保護層によって被覆され、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含むp側電流拡散層をさらに備え、前記p側電流拡散層は、前記p側電流拡散層の縁に近づくにつれて前記p側電流拡散層の高さが小さくなるように前記p側電流拡散層の上面が傾斜する第2p側傾斜部を備え、前記所定方向における前記第2p側傾斜部の幅は、前記p側電流拡散層の前記第2p側傾斜部とは異なる部分の厚みの10倍以上である、第11の態様に記載の半導体発光素子である。第12の態様によれば、第2p側傾斜部の幅がp側電流拡散層の厚みの10倍以上であるため、第2p側傾斜部の上面の傾斜を緩やかにできる。これにより、第2p側傾斜部を被覆する保護層の膜厚を均一化し、保護層による封止性を高めることができる。
【0124】
本発明の第13の態様は、n型半導体層上に活性層を形成する工程と、前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、前記p型半導体層および前記活性層のそれぞれの一部を除去して、前記n型半導体層の上面を露出させる工程と、前記n型半導体層の前記上面と接触するn側コンタクト電極を形成する工程と、前記p型半導体層の上面と接触するp側コンタクト電極を形成する工程と、前記n型半導体層、前記活性層、前記p型半導体層、前記n側コンタクト電極および前記p側コンタクト電極を被覆する誘電体材料から構成される保護層を形成する工程と、前記保護層を部分的に除去してn側開口およびp側開口を形成する工程と、前記n側開口を塞ぐようにして前記保護層上に重なるn側パッド電極を形成する工程と、前記p側開口を塞ぐようにして前記保護層上に重なるp側パッド電極を形成する工程と、を備え、前記n側コンタクト電極を形成する工程および前記p側コンタクト電極を形成する工程の少なくとも一方は、アンダーカット形状の第1開口を有する第1レジストを形成する工程と、前記第1レジストをマスクとして、前記第1開口内に電極層を堆積させる工程と、前記第1レジストを剥離して除去する工程と、を備え、前記第1レジストの前記第1開口の縁が延びる方向および前記第1レジストの厚み方向と直交する所定方向における前記第1レジストの前記アンダーカット形状の幅は、5μm以上10μm以下であり、前記第1レジストの前記アンダーカット形状の高さは、1μm以下である、半導体発光素子の製造方法である。第13の態様によれば、第1レジストのアンダーカット形状の幅を5μm以上10μm以下とし、第1レジストのアンダーカット形状の高さを1μm以下とすることにより、第1開口内に形成される電極層の上面の傾斜を緩やかにできる。これにより、電極層を被覆する保護層の膜厚を均一化し、保護層による封止性を高めることができる。
【0125】
本発明の第14の態様は、前記電極層を堆積させる工程は、前記第1レジストの前記第1開口を通過するスパッタ粒子を堆積させることを備える、第13の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第14の態様によれば、スパッタ粒子を用いて電極層を堆積させることにより、アンダーカット形状の開口の奥側にスパッタ粒子を到達させることができ、第1開口内に形成される電極層の上面の傾斜を緩やかにできる。
【0126】
本発明の第15の態様は、前記n側コンタクト電極上に、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含むn側電流拡散層を形成する工程と、前記p側コンタクト電極上に、TiN層、金属層およびTiN層が順に積層される積層構造を含むp側電流拡散層を形成する工程と、をさらに備え、前記保護層は、前記n側電流拡散層および前記p側電流拡散層をさらに被覆するように形成され、前記n側電流拡散層を形成する工程および前記p側電流拡散層を形成する工程の少なくとも一方は、アンダーカット形状の第2開口を有する第2レジストを形成する工程と、前記第2レジストをマスクとして、前記第2開口内に前記積層構造を堆積させる工程と、前記第2レジストを剥離して除去する工程と、を備え、前記第2レジストの前記第2開口の縁が延びる方向および前記第2レジストの厚み方向と直交する所定方向における前記第2レジストの前記アンダーカット形状の幅は、5μm以上10μm以下であり、前記第2レジストの前記アンダーカット形状の高さは、1μm以下である、第13または第14の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第15の態様によれば、第2レジストのアンダーカット形状の幅を5μm以上10μm以下とし、第2レジストのアンダーカット形状の高さを1μm以下とすることにより、第2開口内に形成される電流拡散層の上面の傾斜を緩やかにできる。これにより、電流拡散層を被覆する保護層の膜厚を均一化し、保護層による封止性を高めることができる。
【0127】
本発明の第16の態様は、前記積層構造を堆積させる工程は、前記第2レジストの前記第2開口を通過するスパッタ粒子を堆積させることを備える、第15の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第16の態様によれば、スパッタ粒子を用いて電流拡散層を堆積させることにより、アンダーカット形状の開口の奥側にスパッタ粒子を到達させることができ、第2開口内に形成される電流拡散層の上面の傾斜を緩やかにできる。
【符号の説明】
【0128】
10…半導体発光素子、24…n型半導体層、24a…第1上面、24b…第2上面、26…活性層、28…p型半導体層、28a…上面、30…p側コンタクト電極、30a…上面、30b…第1p側傾斜部、30c…第1p側基部、32…n側コンタクト電極、32a…上面、32b…第1内側傾斜部、32c…第1n側基部、32d…第1外側傾斜部、34…p側電流拡散層、34a…上面、34b…第2p側傾斜部、34c…第2p側基部、36…n側電流拡散層、36a…上面、36b…第2内側傾斜部、36c…第2n側基部、36d…第2外側傾斜部、38…第1保護層、40…第2保護層、42…p側パッド電極、44…n側パッド電極、50…半導体層、52…コンタクト電極、52a…上面、52b…第1傾斜部、52c…第1基部、54…電流拡散層、54a…上面、54b…第2傾斜部、54c…第2基部、54e…非重畳部分、54f…重畳部分、54g…第1重畳部分、54h…第2重畳部分、58…第2保護層、60…パッド電極、62…第1レジスト、62a…第1開口、66…第2レジスト、66a…第2開口。
【要約】
【課題】半導体発光素子の信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体発光素子は、半導体層50の上面50aと接触するコンタクト電極52と、コンタクト電極52を被覆する保護層56,58と、保護層56,58上に設けられるパッド電極60と、を備える。コンタクト電極52は、コンタクト電極52の縁に向けてコンタクト電極52の厚みt5が小さくなるようにコンタクト電極52の上面52aが傾斜する第1傾斜部52bを備える。コンタクト電極52の縁が延びる方向およびコンタクト電極52の厚み方向と直交する所定方向における第1傾斜部52bの幅w3は、コンタクト電極52の第1傾斜部52bとは異なる部分の厚みの10倍以上である。
【選択図】図2
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