(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】はんだ印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 15/08 20060101AFI20231226BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B41F15/08 303E
H05K3/34 505C
(21)【出願番号】P 2022531110
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2020023380
(87)【国際公開番号】W WO2021255782
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深草 祥史
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/212541(WO,A1)
【文献】特開2012-240225(JP,A)
【文献】特開2017-164948(JP,A)
【文献】特開平10-309794(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101791898(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00 - 15/46
H05K 3/32 - 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク、および前記マスクの上面を
前後方向に移動するスキージを用いてペースト状はんだを基板に印刷するはんだ印刷機であって、
ベッドと、
前記ベッドに固定して設けられ、前記マスクを保持する
左右一対のマスクフレームと、
前記ベッドに固定して設けられ、かつ前記マスクフレームと別体に形成され、前記スキージを駆動する駆動機構を支持する
左右一対のスキージフレームと、を備え
、
左右一対の前記スキージフレームの各々は、前記スキージの移動方向に延在する前記駆動機構の両端をそれぞれ前記ベッドに固定する前後一対の固定部を有する門型形状をもち、
左右一対の前記マスクフレームの各々は、前記スキージフレームに並んで配置されるとともに、前記マスクを位置補正可能に保持する位置補正機構を前記スキージフレームの門型形状の内側に支持する、
はんだ印刷機。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記スキージを支持して左右方向に延びる移動体と、前記移動体の前後方向の移動を案内する左右一対のガイド部と、を有し、
左右一対の前記スキージフレームの各々は、前記ガイド部を支持する、
請求項1に記載のはんだ印刷機。
【請求項3】
前記マスクフレームおよび前記スキージフレームは、前記スキージの移動方向の剛性が前記ベッドの剛性よりも低い、請求項1
または2に記載のはんだ印刷機。
【請求項4】
前記位置補正機構は、前記マスクの水平方向の位置および水平面内での回転角を補正し、
前記スキージは、前記基板の搬送方向に対して常に一定の角度方向に移動する、
請求項
1~3のいずれか一項に記載のはんだ印刷機。
【請求項5】
前記スキージは、前記基板の搬送方向に対して常に直交方向に移動する、請求項
4に記載のはんだ印刷機。
【請求項6】
前記ベッドに固定して設けられ、かつ前記マスクフレームおよび前記スキージフレームと別体に形成され、機内を保護するカバーを開閉可能に支持するカバーフレームをさらに備える、請求項1~
5のいずれか一項に記載のはんだ印刷機。
【請求項7】
マスク、および前記マスクの上面を
前後方向に移動するスキージを用いてペースト状はんだを基板に印刷するはんだ印刷機であって、
ベッドと、
前記ベッドに固定して設けられ、前記マスクを保持する
左右一対のマスクフレームと、
前記ベッドに固定して設けられ、かつ前記マスクフレームと別体に形成され、前記スキージを駆動する駆動機構を支持する
左右一対のスキージフレームと、
を備えるはんだ印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、マスクおよびスキージを用いてペースト状はんだを基板に印刷するはんだ印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。さらに、対基板作業を実施するはんだ印刷機、部品装着機、リフロー機、および基板検査機などを並べて配置し、対基板作業ラインを構成することが一般的になっている。はんだ印刷機は、マスクおよびスキージを用いてペースト状はんだを基板に印刷する。はんだ印刷機の印刷品質を良好に保つためには、基板に対するマスクの位置を安定化させることが重要である。この種のはんだ印刷機に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の印刷装置は、マスクを昇降させて基板に対する位置決めを行うマスク昇降機構部と、マスクの昇降動作とは独立するように設置されたフレーム構造体と、フレーム構造体に移動可能に設けられて印刷負荷ユニットを含む印刷機構部とを備える。これによれば、マスクが上下方向に傾斜する事態が抑制され、マスクの高さ位置精度が影響を受けることを抑制できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の印刷装置は、マスクが上下方向に傾斜する事態を抑制できる点で好ましいが、マスクの水平方向の位置安定化に難がある。詳述すると、印刷機構部の印刷負荷ユニットは、水平位置決め機構によって駆動され、マスク昇降機構部と共に水平方向へ移動する。具体的には、水平方向に移動するフレーム構造体が矩形の枠形状に形成され、枠形状の内側にマスク昇降機構部が配置され、枠形状を構成する天板部の上に印刷機構部が配置されている。このため、印刷負荷ユニットの動作に伴う振動の影響は、フレーム構造体を経由してマスク昇降機構部に伝わる。その結果、基板に対するマスクの版合せ精度が低下したり、はんだの印刷品質が低下したりする。
【0006】
それゆえ、本明細書は、スキージの動作に伴う振動がマスクの位置に及ぼす影響を抑制して、版合せ精度および印刷品質を良好に保つことができるはんだ印刷機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、マスク、および前記マスクの上面を移動するスキージを用いてペースト状はんだを基板に印刷するはんだ印刷機であって、ベッドと、前記ベッドに固定して設けられ、前記マスクを保持するマスクフレームと、前記ベッドに固定して設けられ、かつ前記マスクフレームと別体に形成され、前記スキージを駆動する駆動機構を支持するスキージフレームと、を備えるはんだ印刷機を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示するはんだ印刷機では、ベッド、マスクフレーム、およびスキージフレームの三者は、別々の部材で構成される。このため、スキージが動作するときに発生する振動は、スキージフレーム、ベッド、およびマスクフレームの順番に伝わり、大幅に減衰してマスクに到達する。したがって、スキージの動作に伴う振動がマスクの位置に及ぼす影響は大幅に抑制され、版合せ精度および印刷品質が良好に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】はんだ印刷機のマスクフレームを示す右側面図である。
【
図3】はんだ印刷機のスキージフレームを示す右側面図である。
【
図4】はんだ印刷機のカバーフレームを示す右側面図である。
【
図5】実施形態のはんだ印刷機における基板、マスク、およびスキージの位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図6】従来技術のはんだ印刷機における基板、マスク、およびスキージの位置関係を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態のはんだ印刷機1の全体構成
実施形態のはんだ印刷機1の全体構成について、
図1を参考にして説明する。はんだ印刷機1は、マスク6およびスキージ7を用いてペースト状はんだを基板Kに印刷する。
図1において、基板Kは、便宜的に破線のハッチングで示されている。はんだ印刷機1は、マスク6およびスキージ7以外に、ベッド2、基板搬送装置3、クランプ機構4、昇降機構5、およびカバー8などで構成される。
図1の左上の矢印に示されるように、はんだ印刷機1の前後左右を定める。前後方向は、スキージ7の移動方向となり、左から右に向かう方向は、基板Kの搬送方向となる。
【0011】
ベッド2は、基台やベースとも呼ばれる部位であり、床面に固定される不動体と見做すことができる。ベッド2は、後述する各種の装置や機構などが組み付けられる。ベッド2は、頑丈に形成されており、高い剛性を有する。ベッド2は、後述するように複数の部材で構成される。
【0012】
基板搬送装置3は、ベッド2の概ね中間高さに配置される。基板搬送装置3は、基板Kを印刷実施位置の真下まで搬入するとともに、印刷済みの基板Kを搬出する。基板搬送装置3は、一対のガイドレール31、一対のコンベアベルト、およびベルト駆動部などで構成される。一対のガイドレール31は、互いに離隔しつつ平行して、左右方向に延在する。ガイドレール31の左右方向の中央辺りに印刷実施位置が設定されている。一対のコンベアベルトは、一対のガイドレール31の向かい合う内側の上部にそれぞれ配置される。一対のコンベアベルトは、コンベア搬送面に基板Kを載置した状態で輪転して、基板Kを搬送する。ベルト駆動部は、コンベアベルトの輪転を駆動する。
【0013】
クランプ機構4は、基板Kをクランプして位置決めする。クランプ機構4は、一対のクランクプレート、バックアップテーブル、複数のバックアップピン、クランプ用モータ、および昇降用モータなどで構成される。一対のクランクプレートは、一対のガイドレール31の上方に配置され、一方が移動可能とされる。なお、クランププレートのみが移動してもよいし、クランププレートおよびガイドレール31がともに移動してもよい。クランクプレートは、基板Kの上面を押さえる鍔部を有してもよい。
【0014】
バックアップテーブルは、一対のガイドレール31の間に配置される。複数のバックアップピンは、バックアップテーブルの上面に立てて配置され、基板Kの下面の押し上げを可能とする。クランプ用モータは、一対のクランププレートの離間距離を狭めて、その間に水平方向に基板Kをクランプする。昇降用モータは、バックアップテーブルおよびバックアップピンを上昇駆動し、クランププレートの鍔部とバックアップピンの間に垂直方向に基板Kをクランプする。
【0015】
昇降機構5は、基板搬送装置3およびクランプ機構4と一緒に基板Kを上昇させて、印刷実施位置の高さに位置決めする。昇降機構5は、昇降台および昇降用モータなどで構成される。昇降台は、基板搬送装置3およびクランプ機構4を支持する。昇降用モータは、ベッド2に固定されており、ボールねじ送り機構を介して昇降台を昇降駆動する。昇降台の上昇により、基板Kの上面がマスク6の下面に接する。なお、本願出願人は、クランプ機構4および昇降機構5の詳細な構成例を国際公開第2017/145280号に開示している。
【0016】
マスク6は、基板Kの上面に形成されたランド(電極)にクリーム状はんだを印刷するときの版型である。したがって、マスク6は、基板Kの種類ごとに相違する。マスク6は、基板Kよりも一回り大きな矩形シートの形状をもち、ランドの配置に対応する印刷孔をもつ。マスク6は、矩形枠状のマスク枠61に保持され、水平方向に延在する。
【0017】
マスク枠61は、複数種類のマスク6を交換可能に保持する。マスク枠61は、基板搬送装置3およびクランプ機構4の上側に配置される。マスク枠61は、位置補正機構62によって、水平二方向の位置および水平面内での回転角が補正される。これにより、基板Kを基準とするマスク6の位置合わせ(版合せ)が行われる。位置補正機構62は、左右一対のマスクフレーム6Aによって支持される。マスクフレーム6Aは、ベッド2に固定して設けられる。
【0018】
スキージ7は、概ね前後対称形状の一対で構成され、マスク6の上側に配置される。一対のスキージ7は、スキージヘッド71の下側に昇降可能に支持される。スキージヘッド71の移動方向に応じて、一方のスキージ7が下降する。下降したスキージ7は、マスク6の上面を移動することによりクリーム状はんだを移動させ、印刷動作を行う。スキージヘッド71は、駆動機構72によって前後方向に駆動される。
【0019】
駆動機構72は、移動体73、左右一対のガイド部74、ねじ軸75、駆動モータ76、およびボールナット77などで構成される。移動体73は、左右方向に延びる細長い部材である。移動体73の概ね中央に、スキージヘッド71が固定されている。移動体73は、左右方向にそれぞれ張り出す棒形状の一対の支持部材78を前面側にもつ。一対の支持部材78の張り出した先端下部は、それぞれガイド部74に移動可能に装架される。
【0020】
左右一対のガイド部74は、前後方向に延在する。左右一対のガイド部74は、移動体73の前後方向の移動を案内する。左側のガイド部74の上方に離隔しつつ平行して、ねじ軸75が配置される。ねじ軸75の後方に、駆動モータ76が固定配置される。駆動モータ76は、ねじ軸75を軸周りに回転駆動する。
【0021】
さらに、移動体73の左側の支持部材78の先端上部に、ボールナット77が設けられる。ボールナット77は、ねじ軸75に螺合して、ボールねじ送り機構を構成する。駆動モータ76がねじ軸75を回転駆動すると、ボールナット77は、ねじ軸75に対して進退する。これにより、移動体73およびスキージヘッド71は前後方向に移動する。駆動機構72は、左右一対のスキージフレーム7Aによって支持される。スキージフレーム7Aは、ベッド2に固定して設けられる。
【0022】
カバー8は、はんだ印刷機1の機内を保護するとともに、作業者の安全を確保するために設けられる。カバー8は、上面部81および前面部82が連なって形成され、側面視でL字形状となっている。上面部81は、はんだ印刷機1の上面の前寄りの半分程度を覆う。前面部82は、はんだ印刷機1の前面の上部寄りの一部分を覆う。上面部81の後縁には、二つの蝶番83が左右に離隔して設けられる。カバー8は、蝶番83を中心とする回動動作によって開閉し、作業者によって開閉操作される。
【0023】
はんだ印刷機1の機内を視認できるように、上面部81および前面部82の一部分は、透明な樹脂やガラスで形成される。カバー8が開いた状態で基板搬送装置3やスキージ7などの可動部が動作すると、安全性が低下する。この対策として、図略の安全装置が設けられ、カバー8が開いた状態での可動部の動作が規制される。カバー8は、その蝶番83がカバーフレーム8Aによって支持される。カバーフレーム8Aは、ベッド2に固定して設けられる。
【0024】
2.ベッド2および三種類のフレームの詳細構造
次に、ベッド2および三種類のフレームの詳細な構造について、
図1に加え
図2~
図4を参考にして説明する。本実施形態において、マスクフレーム6A、スキージフレーム7A、およびカバーフレーム8Aは、互いに異なる部材で構成される。さらに、これら三種類のフレームは、ベッド2と別体に形成される。
【0025】
ベッド2は、ベッド本体21、4個の内側支柱22、および4個の外側支柱23を含んで構成される。ベッド本体21は、概ね直方体の箱形状または枠形状に形成されており、ベッド2の下部を構成する。ベッド本体21は、型鋼や鋼板などを用いて頑丈に形成される。したがって、ベッド2は、高い剛性を有し、かつ振動しにくい。
【0026】
内側支柱22は、ベッド本体21の上面の四隅にそれぞれ起立して配置される。内側支柱22は、型鋼や厚い鋼板の組み合わせで形成される。
図2および
図3に示されるように、内側支柱22は、底部221、垂直部222、および頂部223からなる。底部221は、概ね矩形板状に形成されて水平に配置される。底部221は、ボルトを用いてベッド本体21の上面に固定される。垂直部222は、底部221に固定され、垂直上方に延在する。頂部223は、垂直部222の上面に固定され、概ね矩形板状に形成されて水平に配置される。頂部223の上面に、マスクフレーム6Aおよびスキージフレーム7Aが固定取り付けされる。
【0027】
外側支柱23は、ベッド本体21の四隅から上方に延在する。外側支柱23は、平面視で略L字形状に形成され、屈折箇所に若干の丸みが付けられている。外側支柱23は、固定ねじによってベッド本体21の隣り合う二つの側面に固定される。外側支柱23は、内側支柱22の外側に位置するとともに、内側支柱22よりも上方まで延在する。
図4に示されるように、外側支柱23の上部寄りに、カバーフレーム8Aが固定取り付けされる。
【0028】
マスクフレーム6Aは、前後方向に延在する板材を主材にして形成される。マスクフレーム6Aは、直接的に位置補正機構62を支持し、間接的にマスク枠61およびマスク6を支持する。
図2に示されるように、マスクフレーム6Aは、その上縁6Bが側面視で山型形状に形成され、中央に切り欠き窓6Cが形成される。左右一対のマスクフレーム6Aの各々は、向かい合う内側に位置補正機構62を支持している。マスクフレーム6Aの各々は、前後の内側支柱22の頂部223に架け渡されて固定される。マスクフレーム6Aは、少なくとも前後方向(スキージ7の移動方向)の剛性がベッド2の剛性よりも低い。
【0029】
スキージフレーム7Aは、前後方向に延在する部材を主材にして形成される。スキージフレーム7Aは、スキージ7を駆動する駆動機構72を支持する。詳述すると、左右一対のスキージフレーム7Aは、その上面にそれぞれガイド部74を支持する。
図1および
図3に示されるように、左側のスキージフレーム7Aの上面の前端に前金具7Eが設けられ、上面の後端寄りに後金具7Fが設けられる。前金具7Eおよび後金具7Fは、ねじ軸75の両端を回転可能に支持する。さらに、後金具7Fは、その後側に駆動モータ76を支持する。
【0030】
スキージフレーム7Aの各々は、前後両端から下方に延びる固定部7Bを有し、側面視で門型形状に形成されている。固定部7Bは、駆動機構72の両端をそれぞれベッド2に固定する部位である。スキージフレーム7Aの固定部7Bを除いた下縁7Cは、位置補正機構62よりも高い位置に配置される。
【0031】
左右一対のスキージフレーム7Aは、左右一対のマスクフレーム6Aの内側に並んで配置される。スキージフレーム7Aの各々は、前後の内側支柱22の頂部223に架け渡され、固定部7Bの下端が頂部223に固定される。さらに、スキージフレーム7Aの後部は、添え板7Dを用いて内側支柱22に固定される。スキージフレーム7Aは、少なくとも前後方向(スキージ7の移動方向)の剛性がベッド2の剛性よりも低い。
【0032】
ここで、マスクフレーム6Aは、スキージフレーム7Aの門型形状の内側に位置補正機構62を保持する。あるいは、左右一対のマスクフレーム6Aは、スキージフレーム7Aの門型形状の内側を通り抜けた中央位置に位置補正機構62を保持する。このような入れ子構造を採用することにより、はんだ印刷機1の左右方向の幅寸法をコンパクト化することができる。ただし、製造工程に制約が生じ、ベッド2に対して先にマスクフレーム6Aが組み付けられ、後からスキージフレーム7Aが組み付けられる。
【0033】
カバーフレーム8Aは、カバー8を開閉可能に支持する。カバーフレーム8Aは、左右一対のサイドフレーム8B、横ステー8C、および縦ステー8D、ならびに一つの天井フレーム8Eで構成される。サイドフレーム8Bは、前後方向に延在する細長い板材で形成される。サイドフレーム8Bの各々は、前後の外側支柱23の頂部に架け渡され、水平配置で固定される。
【0034】
カバーフレーム8Aの剛性を高める目的で、横ステー8Cおよび縦ステー8Dが追加で設けられる。横ステー8Cは、サイドフレーム8Bの下方位置に、サイドフレーム8Bと平行して配置される。横ステー8Cは、前後の外側支柱23に固定される。縦ステー8Dは、上下方向に延在し、サイドフレーム8Bと横ステー8Cの概ね中央位置同士を機械的に結合する。
【0035】
天井フレーム8Eは、左右のサイドフレーム8Bの後寄りの半分程度の範囲に架け渡されて固定される。天井フレーム8Eは、水平配置される板材によって形成され、または、軽量化のために格子形状の部材によって形成される。天井フレーム8Eの前縁に、カバー8の蝶番83が結合される。カバーフレーム8Aの剛性は、ベッド2の剛性よりも低い。
【0036】
3.実施形態のはんだ印刷機1の作用および効果
次に、実施形態のはんだ印刷機1の作用および効果について説明する。駆動機構72に駆動されてスキージ7が印刷動作を行うとき、スキージフレーム7Aに振動が発生する。この振動は、スキージ7の移動に伴う反力などに起因するため、主に前後方向の振動成分をもつ。スキージフレーム7Aの前後方向の振動は、ベッド2およびマスクフレーム6Aの順番に伝わり、マスク6に到達する。ここで、ベッド2は、少なくとも前後方向の剛性が高く、したがって振動を伝えにくい。このため、前後方向の振動は、大幅に減衰してマスク6に到達し、あるいは、殆どマスク6にまで到達しない。
【0037】
したがって、スキージ7の印刷動作の途中に、マスク6の位置が基板Kに対して微妙に変化する版合せの精度低下が発生しない。また、ペースト状はんだの抜け性を始めとする印刷品質が低下しない。仮に、版合せの精度低下が発生していると、印刷動作の終了時に基板Kを下降させたときに、ペースト状はんだがマスク6の印刷孔からきれいに抜けない場合(抜け性の低下)が生じる。この場合、印刷されたペースト状はんだの周囲が滲んだり、ペースト状はんだの位置がランドの中央から外れたりして印刷品質が低下する。
【0038】
実施形態のはんだ印刷機1では、ベッド2、マスクフレーム6A、およびスキージフレーム7Aの三者は、別々の部材で構成される。このため、スキージ7が動作するときに発生する振動は、スキージフレーム7A、ベッド2、およびマスクフレーム6Aの順番に伝わり、大幅に減衰してマスク6に到達する。したがって、スキージ7の動作に伴う振動がマスク6の位置に及ぼす影響は大幅に抑制され、版合せ精度および印刷品質が良好に保たれる。
【0039】
ところで、従来構成において、マスクフレーム6A、スキージフレーム7A、およびカバーフレーム8Aの三者は、共通の部材で構成されていた。そして、カバー8の多数回の開閉操作のたびに、カバーフレーム8Aの振動がマスク6やスキージ7にまで伝わり、振動の影響が蓄積されて不具合に至るおそれがあった。不具合として、例えば、マスク6やスキージ7の取り付け位置の誤差が徐々に増加したり、取り付けに緩みが生じたりすることが皆無でなかった。
【0040】
これに対して、本実施形態では、カバー8の開閉操作で発生する振動は、カバーフレーム8Aからベッド2およびマスクフレーム6Aを経由してマスク6に到達し、または、ベッド2およびスキージフレーム7Aを経由してスキージ7に到達する。ここで、ベッド2は、剛性が高く、したがって振動を伝えにくい。このため、マスク6やスキージ7において、振動の影響が蓄積されることは発生し難く、不具合に至るおそれは低減される。
【0041】
4.実施形態における別の作用および効果
また、実施形態および従来技術を問わず、マスク枠(61、6X)に対してマスク6の四辺が傾いた状態(マスク6が水平面内で回転して角度誤差をもつ状態)で取り付けられる場合が生じ得る。この場合、実施形態では
図5に示される位置関係に調整され、従来技術では
図6に示される位置関係に調整される。なお、
図5および
図6は、模式的に誇張した説明図である。実際には、マスク6の周縁は、マスク枠(61、6X)から大きくはみ出さない。
【0042】
図5の実施形態において、基板Kは、搬送方向M1に搬入および搬出される。また、スキージフレーム7Aはベッド2に固定されているため、スキージ7は、基板Kの搬送方向M1に対して常に直交方向に移動する。一方、位置補正機構62は、基板Kに対してマスク6を版合せするために、マスク枠61を回転して補正する。この結果、基板Kに対して、マスク枠61は平行せず、マスク6が平行した位置状態に補正される。このとき、スキージ7は、基板Kと平行する方向M2に移動して、良好な印刷動作を行うことができる。
【0043】
一方、
図6の従来技術において、例えば特許文献1に開示されるように、フレーム構造体にマスク昇降機構部および印刷機構部が配置される。そして、基板の水平方向の位置および水平面内での回転角に対して、フレーム構造体の位置が補正される。つまり、マスク枠6Xおよびスキージ7Xが共通フレームに配置され、基板Kに対して共通フレームの位置が補正される。
【0044】
従来技術では、基板Kに対してマスク6を版合せするためにマスク枠6Xを回転すると、スキージ7Xも一緒に回転する。この結果、スキージ7Xは、基板Kと平行しない方向M3に移動することになって、良好な印刷動作を行うことができない。
図6の例では、基板Kの一部の領域がスキージ7Xの移動範囲から外れるため、良好な印刷動作が行われない。これに対して、本実施形態では、マスク6およびマスク枠61の回転角に関係なく、常にスキージ7を基板Kと平行する方向M2に移動させて、良好な印刷動作を行うことができる。
【0045】
5.実施形態の応用および変形
なお、実施形態において、ベッド2の少なくとも前後方向の剛性は、マスクフレーム6Aやスキージフレーム7Aよりも高い、とされている。一般的に、構造物の三方向の剛性は相互に関連しあうものである。したがって、ベッド2の三方向の剛性がマスクフレーム6Aやスキージフレーム7Aよりも高い構成としても差し支えなく、むしろその方が効果顕著であり、かつ構造的な設計も容易である。
【0046】
また、実施形態において、ベッド2に固定されたマスクフレーム6A上の位置補正機構62が、マスク枠61の位置および回転角を補正するが、別法を採用することができる。例えば、マスク枠61を支持するマスクフレーム6Aがベッド2に対して可動とされ、ベッド2に固定された位置補正機構62がマスクフレーム6Aの位置を補正してもよい。この構成でも、ベッド2、マスクフレーム6A、およびスキージフレーム7Aを別々の部材で構成することができ、実施形態と同様の効果が発生する。実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:はんだ印刷機 2:ベッド 21:ベッド本体 22:内側支柱 23:外側支柱 3:基板搬送装置 4:クランプ機構 5:昇降機構 6:マスク 61、6X:マスク枠 62:位置補正機構 6A:マスクフレーム 7、7X:スキージ 71:スキージヘッド 72:駆動機構 73:移動体 74:ガイド部 75:ねじ軸 76:駆動モータ 77:ボールナット 7A:スキージフレーム 7B:固定部 8:カバー 8A:カバーフレーム K:基板