(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両クリープ制御
(51)【国際特許分類】
B60W 20/11 20160101AFI20231226BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20231226BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20231226BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20231226BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20231226BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20231226BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
B60W20/11
B60K6/442 ZHV
B60K6/52
B60W10/08 900
B60L15/20 S
B60L50/16
B60L9/18 P
(21)【出願番号】P 2022542296
(86)(22)【出願日】2021-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2021050321
(87)【国際公開番号】W WO2021140235
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-09-06
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513208973
【氏名又は名称】ジャガー・ランド・ローバー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JAGUAR LAND ROVER LIMITED
【住所又は居所原語表記】Abbey Road,Whitley,Coventry,Warwickshire CV3 4LF GB
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロドルフォ・オリヴェイラ・ジャクー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ハンコック
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ・ジャン・ブリス・ロケ
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-241325(JP,A)
【文献】特開2010-143418(JP,A)
【文献】特開平10-075505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0025244(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0111928(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0099673(US,A1)
【文献】特開平06-078416(JP,A)
【文献】特開2016-060443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両クリープを提供するために車両の動きを制御するための制御システムであって、前記車両はエンジンと電気牽引モーターとを備え、前記制御システムは1つ又は複数のコントローラを備え、前記制御システムは、
前記エンジンと車両ホイールの第1セットとの間のトルク経路が切断されている間、前記電気牽引モーターを制御して、前記車両を自動的に動かすために車両ホイールの第2セットに牽引トルクを提供し、電気車両クリープを提供するように構成されており、電気車両クリープを提供するための前記トルクは、前記エンジンと前記車両ホイールの第1セットとの間の前記トルク経路が接続されたときに前記エンジンによって提供されるであろうエンジンクリープトルクの数学的モデルに依存して制御さ
れ、
前記数学的モデルは、
シミュレートされたエンジンアイドル速度変数に依存し、
前記シミュレートされたエンジンアイドル速度変数と車両速度変数との間の差、及び前記シミュレートされたエンジンアイドル速度変数と車両速度変数との間の比率の一方に依存し、
前記差又は前記比率に依存するシミュレートされたトルクコンバータ特性に依存する、
制御システム。
【請求項2】
前記1つ又は複数のコントローラは、
情報を受信するための電気入力を有する少なくとも1つの電子プロセッサと、
前記少なくとも1つの電子プロセッサに電気的に結合され、その中に格納された命令を有している少なくとも1つの電子メモリデバイスと、
を集合的に備え、
前記少なくとも1つの電子プロセッサは、前記少なくとも1つのメモリデバイスにアクセスし、その上で前記命令を実行して、前記制御システムに、前記情報に応じて前記電気牽引モーターを制御させるように構成されている、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記エンジンが非アクティブ状態にある間に、前記電気牽引モーターを制御して前記電気車両クリープを提供するように構成されている、請求項1又は2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記数学的モデルは、車両速度に依存する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記数学的モデルは、周囲温度、動作温度、周囲圧力、湿度又はエンジンアクセサリーの負荷の少なくとも1つに依存する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記数学的モデルは、トルクコンバータ流体に関連する動作温度、及び異なる前進ギア及び/又は異なる後進ギアで車両クリープを提供するように動作可能なオートマチックトランスミッションのシミュレートされたギア比の一方又は両方に依存する、請求項1から
5までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項7】
前記車両を自動的に動かすことは、前記電気牽引モーターの前記牽引トルクを制御して、車両速度と、前記数学的モデルによって決定される車両クリープ速度目標との間の差を低減させることを備える、請求項1から
6までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項8】
前記車両クリープ速度目標は、少なくとも、シミュレートされたエンジンアイドル速度、シミュレートされたオートマチックトランスミッション比、デファレンシャル比、及びホイールサイズの関数である、請求項
7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記数学的モデルは、前記モデル化されたエンジンクリープトルクに基づいて、前記電気牽引モーターの前記牽引トルクを制限して、外部環境が前記車両を減速できるように構成されている、請求項
7又は
8に記載の制御システム。
【請求項10】
外部環境が前記車両を減速できるように前記牽引トルクを制御することは、前記数学的モデルによって決定されるトルク制限
値に前記電気牽引モーターの前記牽引トルクを飽和させることを備え、前記トルク制限
値は、前記車両が平地にあるときに前記車両速度を前記車両クリープ速度目標に到達させることができるように構成されているとともに、前記車両が上り坂にあるときに前記車両速度が前記車両クリープ速度目標に到達できないか又は前記車両クリープ速度目標を維持できないように構成されている、請求項
9に記載の制御システム。
【請求項11】
前記トルク制限
値は、少なくとも、
(i)前記車両クリープ速度目標、
(ii)車両速度、
(iii)シミュレートされたオートマチックトランスミッション比、並びに
(iv)スリップ比の関数として容量係数
、トルク比及
びトルクコンバータ効率
の少なくとも1つをエミュレートするトルクコンバータ伝達関数
の関数である、請求項
10に記載の制御システム。
【請求項12】
前記トルク制限
値は、以下の式に従って定義される:
トルク制限
値=(車両クリープ速度目標/車両速度)^2*トルクコンバータ伝達関数*オートマチックトランスミッション比
請求項
11に記載の制御システム。
【請求項13】
電気車両クリープ中にエンジンを第1モードから第2モードに移行する必要があることを示す信号を受信し、ここで、前記第1モードでは、前記エンジンが非アクティブ状態にあり、前記トルク経路が切断され、前記電気牽引モーターが電気車両クリープを提供し、前記第2モードでは、前記エンジンがアクティブ状態にあり、前記トルク経路が接続され、前記エンジンが少なくとも部分的に車両クリープを提供し、
前記信号の受信に応じて、前記トルク経路の接続と前記エンジンのアクティブ化とを引き起こす、
ように構成された、請求項1から
12までのいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項14】
前記第1モードは電気車両モードであり、前記第2モードはハイブリッド電気車両モードであり、前記ハイブリッド電気車両モードでは、前記電気牽引モーターは、前記車両ホイールの第2セットに牽引トルクを提供するように動作可能であり、前記制御システムは、車両速度の低下に応答して牽引トルクを増加させ、エンジン速度がエンジンアイドル速度目標を下回るように、前記電気牽引モーターを制御するように構成されている、請求項
13に記載の制御システム。
【請求項15】
請求項1から
14までのいずれか1項に記載の前記制御システム、前記エンジン、及び前記電気牽引モーターを備える、車両。
【請求項16】
車両のエンジン及び電気牽引モーターを制御する方法であって、前記方法は、
前記エンジンと車両ホイールの第1セットとの間のトルク経路が切断されている間、前記電気牽引モーターを制御して、前記車両を自動的に動かすために車両ホイールの第2セットに牽引トルクを提供し、電気車両クリープを提供することを備え、前記電気車両クリープを提供するための前記トルクは、前記エンジンと前記車両ホイールの第1セットとの間の前記トルク経路が接続されているときに前記エンジンによって提供されるであろうエンジンクリープトルクの数学的モデルに依存して制御さ
れ、
前記数学的モデルは、
シミュレートされたエンジンアイドル速度変数に依存し、
前記シミュレートされたエンジンアイドル速度変数と車両速度変数との間の差、及び前記シミュレートされたエンジンアイドル速度変数と車両速度変数との間の比率の一方に依存し、
前記差又は前記比率に依存するシミュレートされたトルクコンバータ特性に依存する、
方法。
【請求項17】
実行されたとき、請求項
16に記載の方法を実行するように構成されたコンピュータソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車両の制御システム及び方法に関する。特に、しかし排他的にではなく、それは、車両クリープを提供するために車両の動きを制御するためのハイブリッド車両の制御システム及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
異なる車両のパワートレインは、異なる特性を有する。車両クリープ現象は、内燃機関(エンジン)等の原動機(トルク源)と車両ホイールとの間のトルク経路にトルクコンバータを備えた車両で発生する。車両クリープは、トルク経路が接続されている間、エンジンがアイドル状態であるとしても、車両に移動を生じさせる。
【0003】
車両クリープは、トルクコンバータの設計により発生する。トルクコンバータは、エンジンに接続されたインペラ、車両ホイールに接続されたタービン、及びそれらの間のステーターを含む。タービン及びインペラは、流体継手により共に結合されている。車両が平地にある状態でエンジンをアイドリングしている間、インペラとタービンとの間のスリップをなくすためのロックアップクラッチが通常開いている。従って、インペラはエンジンのアイドル速度で回転し、タービンはより遅い速度で回転するか、又はまったく回転しない。流体継手は、エンジン速度に依存するインペラの回転を引き起こし、引きずりトルクをタービンに加える。インペラがタービンよりも速く回転しているとき、ステーターはタービンに作用するトルクを増やす(multiply)(増加(increase))させる。車両がブレーキをかけられておらず、平地にある場合、タービントルクは一般に、インペラ速度に近づく(但し到達しない)速度までタービンを回転させるのに十分であり、前方へのクリープを車両に引き起こす(通常は時速2~5キロメートル)。
【0004】
クリープ速度は、インペラの速度(エンジンアイドル速度)と、例えば傾斜又は摩擦ブレーキ等のタービン回転に対する抵抗とに依存する。例えば、上り坂に達すると、クリープ速度(車両クリープ中の車両速度)が停止まで下がる場合がある。クリープ速度は、個々のトルクコンバータの幾何学的特性及び流体特性にも依存する。流体の特性は、動作によって異なる場合があり、温度、圧力等を含む。
【0005】
電気車両又はハイブリッド電気車両のパワートレインでは、少なくともある程度の牽引出力トルク(ここでは「トルク」)を与え、エンジンの使用を削減又は排除し、従って燃料消費量及び排出量を削減するために、1つ又は複数の電気牽引モーターが使用される。電気運転中は車両クリープ現象が発生しない場合がある。例えば、電気牽引モーターと車両ホイールとの間のトルク経路は、トルクコンバータを必要としない場合がある。車両が一定のクリープ速度又は一定のトルクで前進することを保証するために疑似的なクリープ機能が追加され得るが、このようなクリープ機能はトルクコンバータの挙動を正確に再現しない。これは、車両がエンジン又は電動牽引モーターのどちらで駆動されているかによって、車両クリープ挙動が変動することを意味する。この変動は、クリープ速度に近い速度及び勾配での車両の挙動を予測するドライバーの能力を低下させる場合がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来技術に関連する1つ又は複数の不利な点に対処し、制御がより容易な車両を提供することである。
【0007】
本発明の態様及び実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載されているように、制御システム、車両、方法、及びコンピュータソフトウェアを提供する。
【0008】
本発明の一態様によれば、車両の動きを制御して車両クリープを提供するための制御システムが提供され、車両はエンジンと電気牽引モーターとを備え、制御システムは1つ又は複数のコントローラを備え、制御システムは、エンジンと車両ホイールの第1セットとの間のトルク経路が切断されている間、電気牽引モーターを制御して、車両を自動的に動かすために車両ホイールの第2セットに牽引トルクを提供し、電気車両クリープを提供するように構成されており、電気車両クリープは、エンジンと車両ホイールの第1セットとの間のトルク経路が接続されたときにエンジンによって提供されるであろうエンジンクリープトルクの数学的モデルによって制御される。
【0009】
数学的モデルは、本明細書では、車両クリープ機能(関数)、又は疑似的な車両クリープ機能(関数)とも呼ばれる。
【0010】
利点は、ハイブリッド車の動作モードに関係なく、車両の落ち着きを改善し、その車両の挙動を維持することである。これは、エンジン駆動と電気駆動の両方の状況で車両クリープ機能が利用可能であり、従ってドライバーが一貫した車両の挙動を体験するためである。電気駆動用の疑似的な車両クリープ機能は、トルクコンバータの挙動を少なくとも部分的に再現する。これは、トルクが制御されて、必要に応じて外部環境(上り坂等)が車両を自動的に減速できるようにするためである。同様に、疑似的な車両クリープ機能はトルクを制御して、必要に応じて下り坂が車両の速度を自動的に上げることができるようにする。上り坂と下り坂の意味は、選択された運転方向に関連していることに注意されるべきである。
【0011】
制御システムは、トルク経路が切断され、エンジンが非アクティブ状態にある間、牽引トルクを提供するように電気牽引モーターを制御するように構成され得る。利点は、効率的な電気のみの運転状況で電気車両クリープが利用できることである。その車両挙動を維持する電気車両クリープの更なる利点は、たとえ車両が斜面にある場合であっても、トルク経路が再接続され、エンジンがアクティブ状態になり、少なくとも部分的に自然な車両クリープを提供するときに、車両速度が変化しないことである。
【0012】
数学的モデルは車両速度に依存してよい。車両を自動的に動かすことは、電気牽引モーターの牽引トルクを制御して、車両速度と数学的モデルによって決定された車両クリープ速度目標との間の差を低減することを含んでいてよい。
【0013】
数学的モデルは、モデル化されたエンジンクリープトルクに基づいて、電気牽引モーターの牽引トルクを制限し、外部環境が車両を減速できるように構成されてよい。外部環境が車両を減速できるように牽引トルクを制御することは、数学的モデルによって決定されるトルク制限に電気牽引モーターの牽引トルクを飽和させることを含んでいてよく、トルク制限は、車両が平地にあるときに車両速度を車両クリープ速度目標に到達させることができるように構成されているとともに、車両が上り坂にあるときに車両速度が車両クリープ速度目標に到達できないか又は車両クリープ速度目標を維持できないように構成され、又は上り坂によって車両速度がゼロに保持されるように構成され(トルク制限のバランスを取るために必要とされる正確な勾配で起こる)、又はトルク制限が克服できるよりも上り坂が急な場合に車両速度が負になるように構成される。利点は、電気車両クリープが、車両が上り坂で自動的に減速、停止、又は後方に走行することを可能にすることによって、トルクコンバータの挙動をより良く再現することである。上記のシナリオは、前進ギアにあるときに車両が後方に走行することを妨げる他のオーバーライド車両システムのために、実際には発生しない場合があることに注意されるべきである。同様のシナリオは後進時にも発生するであろう。この場合、後方への運転中に車両が上昇するのが「上り坂」である。
【0014】
数学的モデルは、周囲温度、動作温度、周囲圧力、湿度又はエンジンアクセサリーの負荷の少なくとも1つに依存してよい。例えば、数学的モデルは、トルクコンバータ流体に関連する動作温度に依存してよい。利点は、電気駆動車両クリープが、エンジンのアイドル速度及び/又はトルクコンバータの流体特性に影響を与える感知された変数に基づいてクリープを調整することにより、トルクコンバータの挙動をより良く再現することである。
【0015】
数学的モデルは、シミュレートされたエンジンアイドル速度変数に依存してよい。利点は、エンジンアイドル速度が条件によって変動する場合があるため、エンジン及びトルクコンバータの挙動をより良く再現することである。
【0016】
数学的モデルは、シミュレートされたエンジンアイドル速度変数と車両速度変数との間の差、及びシミュレートされたエンジンアイドル速度変数と車両速度変数との間の比率の一方に依存してよい。数学的モデルは、その差又はその比率に依存するシミュレートされたトルクコンバータ特性に依存してよい。利点は、トルクコンバータの容量とトルク増加はこの比率に依存するため、トルクコンバータの挙動をより良く再現することである。
【0017】
数学的モデルは、トルクコンバータ流体に関連する動作温度、及び異なる前進ギア及び/又は異なる後進ギアで車両クリープを提供するように動作可能なオートマチックトランスミッションのシミュレートされたギア比の一方又は両方に依存してよい。利点は、エンジン駆動の車両クリープの挙動をより良く再現することである。
【0018】
車両クリープ速度目標は、少なくとも、シミュレートされたエンジンアイドル速度、シミュレートされたオートマチックトランスミッション比、デファレンシャル比、及びホイールサイズの関数であってよい。トルク制限は、少なくとも、車両クリープ速度目標、車両速度、シミュレートされたオートマチックトランスミッション比、並びにスリップ比の関数として容量係数及び/又はトルク比及び/又はトルクコンバータ効率をエミュレートするトルクコンバータ伝達関数の関数であってよい。例えば、トルク制限は、以下の式に従って定義されてよい:
トルク制限=(車両クリープ速度目標/車両速度)^2*トルクコンバータ伝達関数*オートマチックトランスミッション比。
【0019】
制御システムは、電気車両クリープ中にエンジンを第1モードから第2モードに移行する必要があることを示す信号を受信し、ここで、第1モードでは、エンジンは非アクティブ状態にあり、トルク経路は切断され、電気牽引モーターが電気車両クリープを提供し、第2モードでは、エンジンがアクティブ状態にあり、トルク経路が接続され、エンジンが少なくとも部分的に車両クリープを提供し、信号の受信に応じて、トルク経路の接続とエンジンのアクティブ化とを引き起す、ように構成されてよい。第1モードは電気車両モードであってよく、第2モードはハイブリッド電気車両モード又はエンジンのみの車両モードであってよい。利点は、エンジン駆動状況(第2モード)、電気駆動状況(第1モード)、及びモード移行中に車両クリープがスムーズに継続する場合があることである。
【0020】
ハイブリッド電気車両モードでは、電気牽引モーターは、車両ホイールの第2セットに牽引トルクを提供するように動作可能であってよい。利点は、エンジンがホイールの第1セットを駆動し、電気牽引モーターがホイールの第2セットを駆動するため、トラクションを向上させるための4輪駆動車両クリープである。制御システムは、車両速度の低下に応答して牽引トルクを増加させ、エンジン速度がエンジンアイドル速度目標を下回るように、電気牽引モーターを制御するように構成されてよい。利点は、必要な場合にのみ電動牽引モーターがアシストすることである。
【0021】
一例では、車両ホイールの第1セットは前輪であり、車両ホイールの第2セットは後輪である。別の例では、車両ホイールの第1セットは後輪であり、車両ホイールの第2セットは前輪である。
【0022】
本発明の別の態様によれば、制御システム、エンジン及び電気牽引モーターを備える、車両が提供される。車両は、エンジンと車両ホイールの第1セットとの間のトルク経路に流体継手トルクコンバータを備えていてよい。
【0023】
本発明の別の態様によれば、車両のエンジン及び電気牽引モーターを制御する方法が提供され、この方法は、エンジンと車両ホイールの第1セットとの間のトルク経路が切断されている間、電気牽引モーターを制御して、車両を自動的に動かすために車両ホイールの第2セットに牽引トルクを提供し、電気車両クリープを提供することを備え、電気車両クリープは、エンジンと車両ホイールの第1セットとの間のトルク経路が接続されているときにエンジンによって提供されるであろうエンジンクリープトルクの数学的モデルによって制御される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、実行されたとき、本明細書に記載の方法のいずれか1つ又は複数を実行するように構成されたコンピュータソフトウェアが提供される。
【0025】
本発明の更なる態様によれば、プロセッサによって実行されたとき、本明細書に記載の方法のいずれか1つ又は複数の実行を引き起こすコンピュータ可読命令を備える非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。
【0026】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載の方法のうちのいずれか1つ又は複数を実行するように構成された制御システムが提供される。
【0027】
本明細書に記載の1つ又は複数のコントローラは、本明細書に記載の情報を受信するための電気入力を有する少なくとも1つの電子プロセッサと、少なくとも1つの電子プロセッサに電気的に結合され、その中に格納された命令を有している少なくとも1つの電子メモリデバイスと、を集合的に備えていてよく、少なくとも1つの電子プロセッサは、少なくとも1つのメモリデバイスにアクセスし、その上で命令を実行して、制御システムに、情報に応じてエンジン及び/又は電気牽引モーターを制御させるように構成されている。
【0028】
本出願の範囲内で、先の段落、特許請求の範囲及び/又は以下の説明並びに図面に記載されている様々な態様、実施形態、実施例及び代替案、特にそれらの個々の特徴事項は、独立して又は任意の組み合わせで取り得ることが明示的に意図されている。すなわち、すべての実施形態及び/又は任意の実施形態の特徴事項は、そのような特徴事項が非互換でない限り、任意の方法及び/又は組み合わせで組み合わせることができる。出願人は、最初に提出した請求項を変更する権利、又はそれに応じて新しい請求項を提出する権利を留保する。これには、当初その方法で請求されていなくても、他の請求項に従属するように、及び/又は他の請求項の任意の特徴事項を組み込むように、最初に提出した任意の請求項を補正する権利が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
次に、本発明の1つ又は複数の実施形態を、例としてのみ、添付の図面を参照して説明する。
【0030】
【
図3B】
図3Bは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体の一例を示す。
【
図4】
図4は、2つのモードを切り替えるための状態図の一例を示す。
【
図5A】
図5Aは、速度軸及び時間軸を有するグラフの一例を示す。
【
図5B】
図5Bは、トルク軸及び時間軸を有するグラフの一例を示す。
【
図6A】
図6Aは、トルク制限軸及びエンジン速度軸を有するグラフの一例を示す。
【
図6B】
図6Bは、トルク制限軸及び車両速度軸を有するグラフの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の実施形態が実装され得る車両10の一例を示している。必ずしもすべてではないがいくつかの例では、車両10は乗用車両であり、乗用車又は自動車とも呼ばれる。他の例では、本発明の実施形態は、産業用車両等の他の用途に関して実装され得る。
【0032】
車両10は、他の推進モードの中でも電気のみの推進モードを有するハイブリッド電気車両(HEV)であり得る。HEVは、パラレルHEVとして動作するように構成され得る。パラレルHEVは、エンジンと少なくとも1つの車両ホイールとの間のトルク経路、及び電気牽引モーターと少なくとも1つの車両ホイールとの間のトルク経路を備える。トルク経路は、クラッチ等のトルク経路コネクタによって切断可能であり得る。パラレルHEVはシリーズHEVとは異なる。これは、シリーズHEVでは、エンジンの目的が電気エネルギーを生成することであり、エンジンと車両ホイールとの間にトルク経路がないためである。
【0033】
図2は、パラレルHEV10のシステム20を示している。システム20は、少なくとも部分的に、HEVのパワートレインを定義する。
【0034】
システム20は、制御システム208を備える。制御システム208は、1つ又は複数のコントローラを備える。制御システム208は、ハイブリッドパワートレイン制御モジュール、エンジン制御ユニット、トランスミッション制御ユニット、牽引バッテリー管理システム、及び/又は同様のものの1つ又は複数を備えていてよい。
【0035】
システム20は、エンジン202を備える。エンジン202は、燃焼機関である。図示のエンジン202は、内燃機関である。図示のエンジン202は、3つの燃焼室を備えるが、他の例では、異なる数の燃焼室が設けられていてよい。
【0036】
エンジン202は、制御システム208がエンジン202の出力トルクを制御できるように、制御システム208に動作可能に結合されている。エンジン202の出力トルクは、エンジン202のタイプに応じて、空燃比、スパークタイミング、ポペットバルブリフト、ポペットバルブタイミング、スロットル開度、燃料圧力、ターボチャージャーブースト圧力及び/又は同様のもののうちの1つ又は複数を制御することによって制御され得る。
【0037】
システム20は、エンジン202を始動するための任意選択のピニオンスターター206を備える。
【0038】
システム20は、エンジン202から出力トルクを受け取るための車両トランスミッション配置204を備える。車両トランスミッション配置204は、オートマチック車両トランスミッション又はセミオートマチック車両トランスミッションを備えていてよい。車両トランスミッション配置204は、エンジン202とギアトレインとの間に流体継手トルクコンバータ217を備える。
【0039】
システム20は、ギアトレインからの出力トルクを受け取るためのデファレンシャル(図示せず)を備えていてよい。デファレンシャルは、トランスアクスルとして車両トランスミッション配置204に統合されるか又は別個に設けられていてよい。
【0040】
エンジン202は、トルク経路220を介して車両ホイールの第1セット(FL,FR)に機械的に接続されているか又は接続可能である。トルク経路220は、エンジン202の出力から車両トランスミッション配置204に延び、次に車軸/駆動シャフトに延び、その次に車両ホイールの第1セット(FL,FR)に延びる。車両オーバーラン及び/又は摩擦ブレーキの状況では、トルクは、車両ホイールの第1セット(FL,FR)からエンジン202に流れる場合がある。車両ホイールの第1セット(FL,FR)に向かうトルクの流れは正のトルクであり、車両ホイールの第1セット(FL,FR)からのトルクの流れは負のトルクである。
【0041】
図示された車両ホイールの第1セット(FL,FR)は前輪を備え、車軸は前横方向車軸である。従って、システム20は、エンジン202による前輪駆動用に構成される。別の例では、車両ホイールの第1セット(FL,FR)は後輪を備える。図示された車両ホイールの第1セット(FL,FR)は一対の車両ホイールであるが、他の例では異なる数の車両ホイールが設けられ得る。
【0042】
図示のシステム20では、ハイブリッド車両の構成要素のためのスペースを作るために、長手方向(中央)の駆動シャフトが設けられていない。従って、エンジン202は、後輪の第2セット(図では後輪RL,RR)に接続可能ではない。エンジン202は、スペースを節約するために横置きに取り付けられ得る。代替的な例では、エンジン202は、前輪及び後輪を駆動するように構成され得る。
【0043】
クラッチ等のトルク経路コネクタ218は、車両トランスミッション配置204のベルハウジングの内側及び/又は外側に設けられている。クラッチ218は、エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220を接続及び切断するように構成されている。システム20は、ユーザーの介入なしにクラッチ218を自動的に作動させるように構成され得る。
【0044】
システム20は、第1電気牽引モーター216を備えている。第1電気牽引モーター216は、交流誘導モーター、又は永久磁石モーター、又は別のタイプのモーターであり得る。第1電気牽引モーター216は、クラッチ218のエンジン側に配置されている。
【0045】
第1電気牽引モーター216は、ベルト又はチェーンを介してエンジン202に機械的に結合され得る。例えば、第1電気牽引モーター216は、ベルト一体型スタータージェネレーターであり得る。この図では、第1電気牽引モーター216は、エンジン202の車両トランスミッション端の反対側の、エンジン202のアクセサリー駆動端に配置されている。代替的な例では、第1電気牽引モーター216は、エンジン202の車両トランスミッション端に配置された、クランクシャフト一体型モータージェネレーターである。
【0046】
第1電気牽引モーター216は、正のトルクを加えるように構成されるとともに、エンジン202のクランクシャフトに負のトルクを加えるように構成され、例えば、エンジン202の出力トルクを高める、停止中又は惰行中にエンジン202を非アクティブ化(停止)する、エンジン202をアクティブ化(始動)する、及び回生モードでの回生ブレーキ等の機能を提供する。ハイブリッド電気車両モードでは、エンジン202及び第1電気牽引モーター216は両方とも、出力トルクを高めるために正のトルクを同時に供給するように動作可能である。第1電気牽引モーター216は、持続的な電気のみの駆動ができなくてもよい。
【0047】
しかしながら、エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220が切断されたとき、第1電気牽引モーター216と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220も切断される。
【0048】
図2は、電気のみの駆動を備える少なくとも電気車両モードを可能にするように構成された第2電気牽引モーター212を示している。必ずしもすべてではないがいくつかの例では、第2電気牽引モーター212の公称最大トルクは、第1電気牽引モーター216の公称最大トルクよりも大きい。
【0049】
エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220がクラッチ218によって切断された場合であっても、第2電気牽引モーター212が少なくとも1つの車両ホイールに接続されているので、車両10は電気車両モードで駆動され得る。
【0050】
図示の第2電気牽引モーター212は、図示の車両ホイールの第2セット(RL,RR)にトルクを提供するように構成されている。車両ホイールの第2セット(RL,RR)は、車両ホイールの第1セット(FL,FR)とは異なる車両ホイールを備える。図示された車両ホイールの第2セット(RL,RR)は後輪を備え、第2電気牽引モーター212は後部横軸を介して後輪RL,RRにトルクを提供するように動作可能である。従って、車両10は、電気車両モードで駆動される後輪である。代替的な例では、車両ホイールの第2セットは、車両ホイールの第1セットのうちの少なくとも1つの車両ホイールを備える。
【0051】
制御システム208は、寄生的なポンピングエネルギー損失を低減するために、電気車両モードにおいて、エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220を切断するように構成され得る。例えば、クラッチ218が開かれ得る。
図2の例では、これは、第1電気牽引モーター216も車両ホイールの第1セット(FL,FR)から切り離されるだろうことを意味する。
【0052】
第2電気牽引モーター212の別の恩恵は、中央の駆動シャフトがないにもかかわらず4輪駆動動作を可能にするために、第2電気牽引モーター212もハイブリッド電気車両モードで動作可能に構成されることができることである。
【0053】
電気牽引モーター用の電力を貯蔵するために、システム20は、牽引バッテリー200を備える。牽引バッテリー200は、電気牽引モーター等の電力ユーザーによって必要とされる公称電圧を提供する。電気牽引モーターが異なる電圧で動作する場合、電圧を変換するためにDC-DCコンバーター(図示せず)等が設けられ得る。
【0054】
牽引バッテリー200は、高電圧バッテリーであり得る。高電圧牽引バッテリーは、数十ボルトの公称電圧を提供するマイルドなHEVの牽引バッテリーとは対照的に、数百ボルトの公称電圧を提供する。牽引バッテリー200は、持続的な距離の電気のみの駆動をサポートするための電圧及び容量を有していてよい。牽引バッテリー200は、範囲を最大化するために、数キロワット時の容量を有していてよい。容量は、数十キロワット時であってもよいし、100キロワット時を超えていてもよい。
【0055】
牽引バッテリー200は1つの実体として示されているが、牽引バッテリー200の機能は、車両10上の異なる場所にある複数の小さな牽引バッテリーを使用して実装され得る。
【0056】
いくつかの例では、第1電気牽引モーター216及び第2電気牽引モーター212は、同じ牽引バッテリー200から電気エネルギーを受け取るように構成され得る。第1(マイルドな)電気牽引モーター216を大容量バッテリー(数十から数百キロワット時)とペアにすることによって、第1電気牽引モーター216は、短いバーストではなく、持続的な期間にわたって、本明細書に記載の方法の機能性を提供することができる場合がある。別の例では、電気牽引モーター212,216は、異なる牽引バッテリーとペアにされ得る。
【0057】
最後に、図示のシステム20は、インバータを含む。電気牽引モーターのそれぞれに1つずつ、2つのインバータ210,214が示されている。他の例では、1つのインバータ又は3つ以上のインバータが設けられ得る。
【0058】
代替的な実施形態では、車両10は、
図2に示されている以外のものであり得る。
【0059】
図3Aは、制御システム208がどのように実装され得るかを示している。
図3Aの制御システム208は、コントローラ300を示す。他の例では、制御システム208は、車両10にオンボード及び/又はオフボードする複数のコントローラを備えていてよい。
【0060】
図3Aのコントローラ300は、少なくとも1つの電子プロセッサ302と、電子プロセッサ302に電気的に結合され、その中に格納された命令306(例えばコンピュータプログラム)を有する少なくとも1つの電子メモリデバイス304とを含み、少なくとも1つの電子メモリデバイス304及び命令306は、少なくとも1つの電子プロセッサ302と共に、本明細書に記載の方法のいずれか1つ又は複数の実行を引き起こすように構成されている。
【0061】
図3Bは、命令306(コンピュータソフトウェア)を備える非一時的なコンピュータ可読記憶媒体308を示している。
【0062】
制御システム208は、設定値に向かって変数(トルク)を操作するためのコントローラ出力を提供するように構成されていてよい。設定値の例は、少なくとも1つのトルク目標である。少なくとも1つのトルク目標は、通常、運転者のトルク要求(例えばアクセルペダル踏み込み(accelerator pedal depression)、APD)、自律運転トルク要求、又はクルーズコントロールトルク要求等のトルク要求に基づいていてよい。少なくとも1つのトルク目標は、通常、トルク要求に比例していてよい。トルク目標は、エンジンの出力トルクを制御するためのエンジントルク目標を含んでいてよい。トルク目標は、電気牽引モーターの出力トルクを制御するための電気牽引モータートルク目標を含んでいてよい。
【0063】
別の設定値の例は、速度目標である。速度目標は、エンジンアイドル速度目標、車両速度目標、又は電気牽引モーター速度目標等のエンジン速度目標を含んでいてよい。エンジン及び/又は電気牽引モーターからのトルクは、アイドリング、車両クリープ、クルーズコントロール、又はその他のシナリオで使用される速度目標に速度を一致させるように制御され得る。
【0064】
図2のパワートレイン等のシステム20は、複数のモードで動作され得る。1つのモードでは、エンジン202が非アクティブ化され、エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220が切断される。別のモードでは、エンジン202が再びアクティブ化され、トルク経路220が再接続される。
【0065】
図4に、動作モードの状態図を示す。状態図は、第1モード400及び第2モード402を示している。
【0066】
第1モード400では、エンジン202は非アクティブ状態にあり、車両ホイールの第1セット(FL,FR)とエンジン202と第1電気牽引モーター216との間のトルク経路220が切断される。一例では、非アクティブ化と切断とを組み合わせた効果は、エンジン速度がゼロに向かって低下することである。非アクティブ化は、エンジン202が非ゼロのエンジン速度に対して正の出力トルクを生成しないか、又は不十分な正の出力トルクを生成することに関連している。燃料消費量を減らすために、燃料噴射を停止する場合がある。
【0067】
第2モード402では、エンジン202はアクティブ状態にあり、トルク経路220が接続されている。アクティブ状態では、エンジンの燃焼室で燃料が燃焼され、エンジン202がトルク経路220に正の出力トルクを提供することを引き起こす。
【0068】
いくつかの例では、第1モード400は上記の電気車両モードであり、第2モード402はハイブリッド電気車両モードである。
【0069】
状態図は、第1モード400から第2モード402に移行するための第1移行条件404を示している。状態図は、第2モード402から第1モード400に移行するための第2移行条件406を示している。
【0070】
第1移行条件404は、手動によるユーザーの選択、しきい値を下回っている牽引バッテリーの充電状態、しきい値を超えて上昇するトルク要求(キックダウン機能等)、しきい値を下回っている気温(例えば氷点下の天気)、ドライビングダイナミクスモードの変更、地形応答モードの変更、及び/又は同様のものの少なくとも1つを必要としてよい。
【0071】
第2移行条件406は、手動によるユーザーの選択、しきい値を超えている牽引バッテリーの充電状態、しきい値を下回っているトルク要求、しきい値を超えている気温、ドライビングダイナミクスモードの変更、地形応答モードの変更、及び/又は同様のものの少なくとも1つを必要としてよい。
【0072】
ドライビングダイナミクスモードは、サスペンション設定、スロットルレスポンス設定、ギアシフトポイント設定、又はステアリング加重設定の1つ又は複数を構成するモードを指す。地形応答モードは、デファレンシャルロック設定、トラクションコントロール設定の1つ又は複数を構成するモードを指す。ドライビングダイナミクスモードと地形応答モードとの間に重複がある場合があってよい。設定は、事前に決定されていても、構成可能にされていてもよい。
【0073】
手動によるユーザーの選択は、ヒューマン・マシン・インターフェース入力デバイスの使用を備えていてよい。入力デバイスは、エンジン始動ボタンを備えていてよい。入力デバイスは、ドライビングダイナミクスモード選択器を備えていてよい。入力デバイスは、地形応答モード選択器を備えていてよい。いくつかの例では、地形応答モード及び/又はドライビングダイナミクスモードは、自動的に変更可能であってよい。
【0074】
いくつかの例では、第1モード400は滑走モードであり、第2モード402は非滑走モードである。滑走は、燃料消費及びポンプ損失を低減するための、車両10が停止せずに移動している間のエンジン202の非アクティブ化及び切断を指す。第1移行条件404は、しきい値を超えるトルク要求を必要としてよい。第2移行条件406は、例えば、車両10が移動している間、しきい値を超える時間の間のしきい値を下回るトルク要求を必要としてよい。滑走モード移行は、車両10がブレーキをかけられていない間に実行されることが可能である。滑走モード移行は、例えば時速30キロメートルを超える等の意味のある速度で車両10が巡航している間に実行されることが可能である。
【0075】
必ずしもすべてではないがいくつかの例では、車両10は、上記の地形応答モード等の地形依存モードを備える。第1モード400は地形依存モードであり、第2モード402は別の地形依存モードである。いくつかの地形応答モード(例えばオフロード関連の地形応答モード)は、エンジン202が接続されるとともにアクティブ化されることを必要とする。
【0076】
本発明の一態様によれば、制御システム208は、以下を備える方法700(
図7)を実行することによって、車両クリープ挙動(
図5A~
図6B)を改善するように構成されている:
エンジン202と車両ホイールの第1セットとの間のトルク経路220が切断されている間(ブロック701)、第2電気牽引モーター212を制御して、車両10を自動的に動かすために車両ホイールの第2セットに牽引トルクを提供し、電気車両クリープを提供すること、ここで、電気車両クリープは、エンジン202と車両ホイールの第1セットとの間のトルク経路が接続されているときにエンジン202によって提供されるであろうエンジンクリープトルクの数学的モデルによって制御される。
【0077】
ブロック701は、トルク経路220が切断されていることを決定することを備えていてよい。必ずしもすべてではないがいくつかの例では、ブロック701は、電気車両クリープを提供するための電気車両クリープ条件(開始条件)が充足されていることを決定することを備える。例えば、電気車両クリープ条件の充足は、トルク経路220が切断されることを必要とする場合がある(特定のモード)。充足は、車両速度及び/又はトルク要求に依存する場合があり、その結果、電気車両クリープは、車両がゆっくりと移動している場合、及び/又はトルク要求がしきい値を下回っている/存在しない場合にのみ提供される。ブロック702は、電気車両クリープ条件の充足に応答して実行される。ブロック702は、例えばモード変更及び/又はトルク要求の増加及び/又は車両速度の増加等の終了条件に応答して終了されてよい。
【0078】
図5Aから
図5Bは、上記の方法の実施の一例に従って制御された車両速度及びトルクのグラフを示す。
図5A及び
図5Bにおいてマークされた時間t0及びt1の間、車両10は平地を走行している。マークされた時間t1から、車両10は上り坂を登り始める。
【0079】
以下の
図5Aから
図5Bの説明では、車両10は電気車両モードにある。従って、エンジン202は非アクティブ状態にあり、エンジンのトルク経路220は切断されている。
【0080】
図5Aは、x軸の時間に対して、実線曲線502として、方法に従って制御された操作変数(車両速度)の大きさをy軸に示している。
図5Aはまた、破線500を使用して設定値(車両クリープ速度目標)の大きさを示している。
【0081】
図5Bは、x軸の時間に対して、実線曲線512として、車両速度と設定値との間の差に基づいて決定されたトルク要求の大きさをy軸に示している。電気車両モードでは、トルク要求は、第2電気牽引モーター212によって提供される牽引トルクを決定してよい。
図5Bはまた、x軸の時間に対して、破線510として、トルク制限の大きさをy軸に示している。トルク要求がトルク制限を超えそうであろうとき、第2電気牽引モーター212に提供される最終的なトルク要求はトルク制限に飽和される。トルク制限は、車両クリープ中に、適切な場合に車両10を自動的に減速させることが可能である。
【0082】
時間t0から、制御システム208は、車両クリープ機能を実施する。車両クリープ機能は、電気車両クリープを提供する。車両クリープ機能は、エンジン202と車両ホイールの第1セット(FL,FR)との間のトルク経路220が接続されているときにエンジンによって提供されるであろうエンジンクリープトルクの数学的モデルを備える。従って、電気車両クリープは、エンジン202が車両ホイールに接続された場合に予想される挙動をほぼ再現する。制御システム208は、APD及び/又は車両速度等の変数に基づいて車両クリープ機能をアクティブにするかどうかを決定するように構成されてよい。
【0083】
一実施形態では、制御システム208は、車両クリープ条件が充足された場合にのみ車両クリープ機能をアクティブにするように構成されてよい。車両クリープ状態の充足は、少なくとも、ゼロAPD等のしきい値を下回るAPDを必要としてよい。車両クリープ条件の充足は、車両ホイールとエンジン/電気牽引モーターとの間の少なくとも1つのトルク経路が接続されることを必要としてよい。車両クリープ条件の充足は、クラッチ218が閉じられることを必要としてよい。車両クリープ条件の充足は、しきい値を下回る車両速度を必要としてよい。車両クリープ条件の充足は、ユーザーが車両クリープ機能を有効にしたか否かに異存してよい。
【0084】
アクティブな場合、車両クリープ機能は設定値を決定する(例えば、
図5Aの車両クリープ速度目標500)。設定値は一定又は可変であってよい。設定値は、さまざまな要因に基づいて計算されてよい。例えば、設定値は、シミュレートされたエンジンアイドル速度に基づいてよい。
【0085】
エンジンアイドル速度をシミュレートすることにより、第2電気牽引モーター212は、トルク経路220が接続された場合にエンジン202及びトルクコンバータ217によって達成されるであろうクリープ速度に一致させることができる。エンジン202が非アクティブ状態にあり、エンジンアイドル速度を測定できないので、エンジンアイドル速度がシミュレートされる。
【0086】
シミュレートされたエンジンアイドル速度は、エンジン制御ユニットから取得されてよく、エンジン202がアクティブ化されてアイドリングしている場合にエンジン制御ユニットによって必要とされる設定値エンジンアイドル速度に対応してよい。換言すると、エンジン制御ユニットは、エンジン202がアクティブでなくても、エンジンアイドル速度設定値を計算し続けてよい。
【0087】
シミュレートされたエンジンアイドル速度変数は、例えばアイドリング範囲500rpmから1000rpm内で、操作上エンジンアイドル速度を変化させるであろう測定可能な変数に基づいて変化してよい。そのような測定可能な変数は、例えば、車両10の外側の周囲温度、高度(車両10の外側の周囲温度及び/又は周囲圧力)、動作温度(例えばエンジンオイル温度及び/又はエンジンクーラント温度及び/又は牽引バッテリー温度)、エンジン状態、及び空調負荷、パワーステアリング負荷等のエンジンアクセサリー負荷を含む。従って、本方法の電気車両クリープは、上記の変数の少なくとも1つの測定に依存してよい。
【0088】
図5Aの設定値500は、平地でアイドリングエンジン202及びトルクコンバータ217によって達成可能であろう車両クリープ速度と同一であろう車両クリープ速度を必要としてよい。これは、車両10が平地で電気車両モードからハイブリッド電気車両モード又はエンジンのみのモードに移行する場合に、車両速度が突然変化しないことを確実にするためである。
【0089】
設定値はまた、車両ホイールの第1セットへのエンジントルク経路220におけるギア減速に依存して計算されてよい。
【0090】
以下の式(1)は、設定値がどのように計算されるかを示している:
(1)車両クリープ速度目標(設定値)=シミュレートされたエンジンアイドル速度変数*オートマチックトランスミッション比*デファレンシャル比*ホイールサイズ
【0091】
シミュレートされたエンジンアイドル速度変数は上記で定義されている。オートマチックトランスミッション比は、車両クリープがエンジン駆動の場合に、車両クリープに使用可能な複数の前進ギア(又は後進ギア)のどれにオートマチック車両トランスミッションが係合されるかに対応する、シミュレートされたギア比である。デファレンシャル比は、オートマチック車両トランスミッション出力を車両ホイールの第1セットに結合するデファレンシャルの比である。ホイールサイズは、タイヤを含む車両ホイールの第1セットの円周である。
【0092】
設定値が知られると、制御システム208は、比例積分微分(PID)法等の制御アルゴリズムを実施して、車両クリープ速度目標を達成するために、第2電気牽引モーター212から必要とされるトルクを決定してよい。
【0093】
図5A及び
図5Bに示されるように、設定値500の実施により、設定値500に向かって車両速度502を増加するようにトルク要求512が調整される。
【0094】
上記のテクニックは、平地での運転を含むいくつかのシナリオにおいてトルクコンバータクリープ挙動を正確に再現する。しかしながら、トルクコンバータ217の挙動を完全に再現するために、車両10がブレーキをかけられたとき又は上り坂の勾配に入ったとき等、車両の動きに対する抵抗が増加したときに車両10を自動的に減速する更なる手段を提供することが有利であろう。さらに、トルクコンバータは、スリップに依存するトルク増加等の複雑な非線形特性を有しており、これも再現する必要がある。
【0095】
図5Bは、トルクコンバータのような挙動を実施するように構成された可変トルク制限510を示している。時間t0~t1の間、車両速度502が車両クリープ速度目標500に到達することを可能にするように、トルク制限はトルク要求よりも高い。しかしながら、時間t1の後、車両10は上り坂にあり、トルク制限は、もはや、車両速度502が車両クリープ速度目標500に到達することを可能にするために十分に高くない。これにより、車両速度502は、車両クリープ速度設定値500に到達できないか又は車両クリープ速度設定値500で維持されることができない。
【0096】
時間t1で、車両速度502は、上り坂のために減少し始める。図示のトルク制限510は、トルクコンバータの可変トルク増加特性を再現するために、車両速度502の減少に依存して増加するが、その増加は、車両速度が車両クリープ速度目標500に到達するか又は車両クリープ速度目標500に留まるためには十分ではない。上記と同様に、車両速度が上がる場合にトルク制限が低下する場合がある。図示されていないが、例えば車両速度がゼロの場合に、電気牽引モーター212が車両の摩擦ブレーキと争うことを防ぐために、要求されたトルクが低減されてよい。
【0097】
計算されたトルク制限は、タービン速度(車両速度)とインペラ速度(シミュレートされたエンジンアイドル速度変数)に依存する。トルク制限は、インペラ速度(シミュレートされたエンジンアイドル速度変数)とタービン速度(車両速度)との間の差/比率に依存する場合がある。従って、この比率は、速度比としても表される、インペラとタービンとの相対的なスリップ率である。速度比が1の場合、スリップはない。速度比が0の場合、100%のスリップがある。スリップ率が100%スリップに向かって増加するとき、トルク制限が増加してよい。トルク制限の増加率は、スリップ率に関して線形又は非線形であってよい。
【0098】
トルク制限は、上記のスリップ率に依存する特性を含む、1つ又は複数のシミュレートされたトルクコンバータ特性に依存してよい。特性は、例えば、容量係数(Nm/rpm2)、及び/又はトルク比(増加比)、及び/又は効率を含む。特性はスリップ率によって変わる。式(2)は、トルク制限を決定するための関数の一例を示している:
(2)トルク制限=(車両クリープ速度目標/車両速度)^2*トルクコンバータ伝達関数*オートマチックトランスミッション比
【0099】
トルクコンバータ伝達関数は、供給されたトルクコンバータに関する製造情報に基づいていてよい。トルクコンバータ伝達関数は、シミュレートされたスリップ率に基づいて、上記のトルクコンバータ特性の1つ又は複数をエミュレートするための非線形関数を備えていてよい。
【0100】
伝達関数において考慮される場合、容量係数は、スリップ率が低い(速度比が1に向かう)場合に低くなる場合がある。容量係数は、スリップ率が高い(速度比が0に向かう)場合に高くなる場合がある。
【0101】
伝達関数において考慮される場合、トルク比は、スリップ率が高い(速度比が0に向かう)ときに高くなる(>1)場合がある。トルク比は、スリップ率が低い(速度比が1に向かう)ときに低くなる(約1)場合がある。
【0102】
伝達関数において考慮される場合、効率は、スリップ率が低い(速度比が1に向かう)ときに高くなる(>80%)場合がある。エミュレートされた効率は、スリップ率が高い(速度比が0に向かう)ときに低くなる場合がある。
【0103】
オートマチックトランスミッション比は、式(1)において定義されているとおりである。
【0104】
さらなる精度のために、トルクコンバータ流体(例えばオイル)の動作温度等の流体測定値が受け取られて、トルクコンバータ容量パラメーター及び/又はトルクコンバータ増加比パラメーターを修正するために使用されてよい。この修正は、ヒートソーク挙動をシミュレートする。
【0105】
図6Aは、スリップ率が一定に保たれている間に、シミュレートされたエンジンアイドル速度変数に対してトルク制限がどのように変化し得るかを示している。シミュレートされたエンジンアイドル速度変数が増加すると、トルク制限が増加する。シミュレートされたエンジンアイドル速度変数が増加すると、トルク制限の増加率が増加する。
【0106】
図6Bは、シミュレートされたエンジンアイドル速度変数が一定に保たれている間に、速度(スリップ)比(x軸)に対してトルク制限(y軸)がどのように変化し得るかを示している。y軸は、トルクコンバータのトルク比に関連付けられている。x軸は、タービン速度とインペラ速度との間の比率に関連付けられている。トルク比はトルク増加を示す。スリップは、車両10が停止し、エンジン202がアイドリングしているときに最大になるであろう。スリップは、車両速度が増加すると減少するであろう。従って、トルク制限が車両速度の増加とともに減少し、車両速度の減少とともに上昇することがわかる。
【0107】
上記の機能は、速度コントローラの上記のトルク制限以外のテクニックを使用して実装され得ることが理解されよう。例えば、トルクコントローラによって上記のパラメーター/変数/関数が使用されて、トルク制限ではなくトルク要求又はトルク設定値を計算できる。しかしながら、説明した方法の利点は、速度コントローラがエンジンのアイドルベースの車両クリープにすでに使用されているため、電気モーターのクリープに速度コントローラを使用すると、より高い連続性が提供されることである。
【0108】
第1モードから第2モードへの移行時(トルク経路220を再接続し、エンジン202をアクティブ状態にするとき)に、車両10が坂にある間でさえ、車両クリープの車両速度が変化しないことを確保するためにトルクコンバータの特性を十分に再現するように、第2電気牽引モーター212について上記の方法が較正されてよい。従って、車両クリープは、車両10がどのモードにあるかに依存せず、車両10は、運転するのにより一貫性があり、モード移行中にジャークする傾向が少ないと感じさせる。
【0109】
上記の節では、第2電気牽引モーター212を使用する車両クリープを説明した。
図2の車両アーキテクチャは、以下で説明する追加の車両クリープ方法をサポートする。
【0110】
エンジン202が第2モードでアクティブであるとき、エンジン202は、車両クリープを提供することを少なくとも部分的に引き継ぐことができる。
【0111】
第2モードがハイブリッド電気車両モードである場合、第2電気牽引モーター212は、トルクを提供しないか、不連続トルクを提供するか、又は平地で車両クリープを維持するために必要とされるすべてのトルクよりも少ないトルクを提供してよい。
【0112】
第2モードがエンジンのみのモードである場合、第2電気牽引モーター212は、エンジン202が車両クリープを提供している間に、車両クリープに必要とされるトルクをまったく提供しなくてよい。
【0113】
図2の車両アーキテクチャによれば、ハイブリッド電気車両モードでは4輪駆動車両クリープが可能である。しかしながら、車両速度を制御しながら、車両ホイールの第1セットと第2セットとの間に特定のトルク配分を強要することは可能ではない。トルクコンバータ217は、インペラ速度とタービン速度との間に差があるときのみに、車両ホイールの第1セットにトルクを加えることができるので、第2電気牽引モーター212の車両クリープ速度目標制御(例えば
図5A)が以下の結果をもたらすシナリオが起こる可能性がある:
-タービン速度がインペラ速度よりも高い場合に、トルクコンバータ217によってトルク増加が提供されないか、又は
-速度設定値が低すぎる場合に、車両10を減速させようとするために電気機械によって負のトルクが提供される。
【0114】
4輪車両クリープにおける上記の問題を軽減するために、制御システムは、車両速度の低下に応答して牽引トルクを増加させ、エンジン速度がエンジンアイドル速度目標を下回るように、電気牽引モーターを制御するように構成される。エンジンアイドル速度目標に基づいてエンジントルクが制御され、低減された車両及び/又はエンジン速度目標(設定値)に基づいて第2電気牽引モータートルクが制御され得る。第2電気牽引モーター212は、現在の速度が低減された速度目標よりも大きい場合に、飽和機能によって負のトルクを提供しないようにされてよい。従って、例えば上り坂に車両速度が落ちる等により、エンジン速度がエンジンアイドル速度目標を下回ったときに正のトルクを提供することを除いて、第2電気牽引モーター212は使用されない。
【0115】
低減された速度目標がエンジンアイドル速度目標よりも低いことを確保する1つの方法は、所定の負のオフセットをエンジンアイドル速度目標に追加することである。従って、この方法は、エンジンアイドル速度目標が使用中に変化する場合であっても、一貫して機能するであろう。
【0116】
低減された速度目標とエンジンアイドル速度目標との間のオフセットは、車両/エンジン速度における小さな振動による影響を車両クリープ性能が受けないように十分に大きいが、車両/エンジン速度が低下したときに第2電気牽引モーター212からの寄与を確保して、4輪駆動クリープの車両10をアシストするために、十分に小さくてよい。
【0117】
別の実施では、4輪駆動車両クリープは、エンジンのアイドル速度目標ではなく、車両速度目標に基づいてよい。
【0118】
本開示の目的のために、本明細書に記載のコントローラ300は、1つ又は複数の電子プロセッサ302を有する制御ユニット又は計算装置をそれぞれ備えることができることを理解されたい。車両10及び/又はそのシステムは、単一の制御ユニット又は電子コントローラを備えていてよく、また代替的に、コントローラの異なる機能は、異なる制御ユニット又はコントローラで具体化されるか又はホストされてよい。実行されたとき、本明細書に記載の制御テクニック(記載された方法を含む)を前述のコントローラ又は制御ユニットに実施させる命令のセットが提供され得る。命令のセットは、1つ又は複数の電子プロセッサに埋め込まれ得るか、また代替的に、命令のセットは、1つ又は複数の電子プロセッサによって実行されるソフトウェアとして提供され得る。例えば、1つ又は複数の電子プロセッサで実行されるソフトウェアにおいて第1コントローラが実装されてよく、1つ又は複数の電子プロセッサ(任意選択で第1コントローラと同じ1つ又は複数のプロセッサ)で実行されるソフトウェアにおいて1つ又は複数の他のコントローラが実装されてもよい。しかしながら、他の配置も有用であり、従って、本開示は、特定の配置に限定されるように意図されないことが理解されよう。いずれにせよ、上記の命令のセットは、限定はされないが、磁気記憶媒体(例えばフロッピーディスク)、光記憶媒体(例えばCD-ROM)、光磁気記憶媒体、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、消去可能なプログラマブルメモリ(例えばEPROM及びEEPROM)、フラッシュメモリー、又はそのような情報/指示を格納するための電気的又は他のタイプの媒体を含む、機械又は電子プロセッサ/計算装置によって読み取り可能な形式で情報を格納するための任意のメカニズムを備え得るコンピュータ可読記憶媒体(例えば非一時的なコンピュータ可読記憶媒体)に埋め込まれてよい。
【0119】
本出願の範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更及び修正を行うことができることが理解されるであろう。
【0120】
「発明の態様」として説明されている各節は、追加の機能が必要とされない、現在又は将来の独立クレームに適した自己完結型のステートメントである。
【0121】
本発明の実施形態は様々な例を参照して先の段落で説明されてきたが、請求された発明の範囲から逸脱することなく、与えられた例への修正が行われ得ることが理解されるべきである。
【0122】
前述の説明で説明されている特徴事項は、明示的に説明されている組み合わせ以外の組み合わせで使用され得る。
【0123】
機能は特定の特徴事項を参照して説明されているが、それらの機能は、説明されているかどうかに関係なく、他の特徴事項によって実行されてよい。
【0124】
特徴事項は特定の実施形態を参照して説明されてきたが、それらの特徴事項は、説明されているかどうかにかかわらず、他の実施形態に存在してもよい。
【0125】
前述の明細書において、特に重要であると考えられる本発明のそれらの特徴事項に注意を引くように努めたが、出願人は、上で言及した及び/又は図面に示されている前述の特許性のある特徴事項又は特徴事項の組み合わせに関して、特に強調されているかどうかに拘わらず、保護を請求することを理解されるべきである。