(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ポリウレタン弾性繊維及びその巻糸体、ギャザー部材、並びに衛生材料
(51)【国際特許分類】
D01F 6/70 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
D01F6/70 B
(21)【出願番号】P 2022542843
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029432
(87)【国際公開番号】W WO2022034868
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2020136367
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-307409(JP,A)
【文献】特表2002-531636(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/70
D01F 6/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィラメントである、ウレタン結合とウレア結合とを含むポリウレタン弾性繊維であって、該ウレタン結合に対する該ウレア結合の比率が0.05%以上5%以下であることを特徴とする、ポリウレタン弾性繊維。
【請求項2】
多分散度(Mw/Mn)が1.2以上4.0以下である、請求項1に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項3】
単糸繊度が5dtex以上40dtex以下である、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項4】
フィラメント数が15以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項5】
熱可塑性である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項6】
アロファネート結合を含む架橋を有しない、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタン弾性繊維を含む巻糸体において、該巻糸体上のポリウレタン弾性繊維の伸長率が0.05%以上10%以下である、ポリウレタン弾性繊維の巻糸体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタン弾性繊維を含む、ギャザー部材。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタン弾性繊維を含む、衛生材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン弾性繊維及びその巻糸体、ギャザー部材、並びに衛生材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン弾性繊維は、高伸度で優れた弾性特性を有する。しかしながら、ポリウレタン重合体は柔軟かつ粘着性のある素材であるために、糸を使用した製品の製造工程において、巻糸体からの解舒時やガイド、ローラーでの摩擦抵抗による糸切れや生産ばらつき等の問題が発生しやすく、特に長期の保管後の使用でそれらの問題が非常に顕著である。
それらの問題を解決するために、シリコーンオイル等の処理剤を糸に付与する方法が知られている。
以下の特許文献1では、経日的な解舒性の悪化を解決するために、ポリウレタン弾性繊維へ特定の平滑剤と解舒性向上剤からなる処理剤を付与する手法が報告されている。
また、以下の特許文献2では、高温保管後の解舒性を改善するためにジアルキルスルホコハク酸塩のような特定成分を特定量混合した弾性繊維用処理剤の使用が提案されている。
しかしながら、特許文献1又は2に記載の方法で製造されるポリウレタン弾性繊維を不織布に挟み込みギャザー部材を製造すると、ポリウレタン弾性繊維の表面の処理剤の付着量が不安定であるため、十分な接着性を得ることができず、製品中で糸がスリップインしてしまうという問題がある。
【0003】
他方、以下の特許文献3では、十分な接着性を得るために、ポリウレタンの融点を制御することで、熱融着性の改良されたポリウレタン弾性繊維も提案されているが、特許文献3に記載の方法で製造されるポリウレタン弾性繊維を不織布に挟み込みギャザー部材を製造すると、ポリウレタン弾性繊維の融点が低いため、解舒性が悪く、また、耐熱性が低いため、ホットメルトの塗布工程の熱で糸切れしてしまうという問題がある。
以上のように、解舒性と耐熱性、接着性はトレードオフの関係にあり、ギャザー製造工程において、耐熱性、接着性、解舒性の問題を十分に解決したポリウレタン弾性繊維はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-211131号公報
【文献】国際公開第2015/125753号
【文献】国際公開第2004/053218号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、接着性、解舒性を兼ね備えた、ギャザー部材に適したポリウレタン弾性繊維及びその巻糸体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、ポリウレタン弾性繊維を構成するウレタン結合とウレア結合の比率を特定の値に制御することで前記課題を解決できることを予想外に発見し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち本発明は以下の通りのものである。
【0007】
本発明は以下のとおりである。
[1]マルチフィラメントである、ウレタン結合とウレア結合とを含むポリウレタン弾性繊維であって、該ウレタン結合に対する該ウレア結合の比率が0.05%以上5%以下であることを特徴とする、ポリウレタン弾性繊維。
[2]多分散度(Mw/Mn)が1.2以上4.0以下である、前記[1]に記載のポリウレタン弾性繊維。
[3]単糸繊度が5dtex以上40dtex以下である、前記[1]又は[2]に記載のポリウレタン弾性繊維。
[4]フィラメント数が15以上である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[5]熱可塑性である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[6]アロファネート結合を含む架橋を有しない、前記[1]~[5]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維を含む巻糸体において、該巻糸体上のポリウレタン弾性繊維の伸長率が0.05%以上10%以下である、ポリウレタン弾性繊維の巻糸体。
[8]前記[1]~[6]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維を含む、ギャザー部材。
[9]前記[1]~[6]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維を含む、衛生材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様であるポリウレタン弾性繊維及びその巻糸体は、上記構成を有することによって、耐熱性、接着性、解舒性を兼ね備えた、ギャザー部材に適したポリウレタン弾性繊維及びその巻糸体である。また、本発明の別の態様であるギャザー部材及び衛生材料は、糸の抜けが少なく、製品不良が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について、詳細に説明する。本発明は以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
[ポリウレタン弾性繊維]
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、マルチフィラメントである、ウレタン結合とウレア結合とを含むポリウレタン弾性繊維であって、該ウレタン結合に対する該ウレア結合の比率が0.05%以上5%以下であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維である。
【0012】
本実施形態において、ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンとしては、例えば、ジイソシアネート、ポリマーポリオール、ジオール、及びジアミン等から重合される構造を有するものであれば、特に限定されるものではないが、熱可塑性であることが好ましい。また、その重合方法も特に限定されるものではない。ポリウレタンとしては、例えば、ジイソシアネート、ポリマーポリオール、及び活性水素化合物からなる鎖延長剤としての低分子量ジアミン等から重合されるポリウレタン(以下、「ポリウレタンウレア」ともいう。)であってもよく、また、ジイソシアネート、ポリマーポリオール、及び活性水素化合物からなる鎖延長剤としての低分子量ジオール等から重合されるポリウレタン(以下、「ポリウレタンウレタン」ともいう。)であってもよい。本発明の所望の効果を妨げない範囲で3官能性以上のグリコールやイソシアネートを用いてもよい。尚、本明細書中、「熱可塑性」とは、分解温度以下で加熱することにより溶融することができ、溶融状態にある間に塑性流動を示し、冷却により固化するという可逆的性質を有することを意味する。一般に熱可塑性のポリウレタン樹脂は、230℃以上で分解が始まる。
【0013】
ポリマーポリオールとしては、以下に限定されないが、ポリエーテル系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリカーボネートジオール等のポリマージオールが挙げられる。耐加水分解性の観点から、ポリマーポリオールとしては、ポリエーテル系ポリオールであることが好ましく、ポリエーテル系ジオールであることが更に好ましい。
【0014】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフラン(THF)とネオペンチルグリコールからなる共重合ジオール、THFと3-メチルテトラヒドロフランからなる共重合体ジオールが挙げられる。これらのポリエーテル系ポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリマージオールの数平均分子量は1000以上8000以下のものが好ましい。この範囲のポリマージオールを使用することにより、伸度、伸縮回復性、耐熱性に優れた弾性繊維を容易に得ることができる。光脆化性の観点から、ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフラン(THF)とネオペンチルグリコールの共重合体である共重合ジオール、及びこれらをブレンドしたポリオールであることが好ましい。
【0015】
ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及び脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、以下に限定されないが、例えばジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」ともいう。)、トリレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネート、及び脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(以下、「H12MDI」ともいう。)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン2,6-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート、オクタヒドロ1,5-ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネートは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に、弾性繊維の伸縮回復性の観点から、ジイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートであることが好ましく、MDIであることがさらに好ましい。
【0016】
活性水素化合物からなる鎖延長剤鎖伸長剤としては、低分子量ジアミン、及び低分子量ジオールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。尚、鎖伸長剤としては、エタノールアミンのように、水酸基とアミノ基の両方を分子中に有するものであってもよい。
【0017】
活性水素化合物からなる鎖延長剤鎖伸長剤としての低分子量ジアミンとしては、以下に限定されないが、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、2,2-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノ-2,2-ジメチルブタン、2,4-ジアミノ-1-メチルシクロヘキサン、1,3-ペンタンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)ホスフィンオキシド、ヘキサメチレンジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、ヘキサヒドロメタフェニレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0018】
活性水素化合物からなる鎖延長剤低分子量ジオールとしては、以下に限定されないが、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、1-メチル-1,2-エタンジオール等が挙げられる。これら低分子量ジオールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。弾性繊維の伸縮回復性の観点から、低分子量ジオールとしては、炭素数2~6のジオールであることが好ましく、1,4-ブタンジオールであることがより好ましい。
【0019】
ポリウレタンの重合は、公知のポリウレタン化反応の技術を用いることができ、ワンショット法、プレポリマー法どちらのプロセスで製造されてもよい。プレポリマー法の場合、窒素パージ下、温水ジャケット、及び攪拌機を有する反応タンクにポリマーポリオールとジイソシアネートを、モル比で好ましくは1.0:1.8~3.0、より好ましくは、1.0:2.0~2.5で添加し、プレポリマー反応を好ましくは40℃以上100℃以下、より好ましくは、50℃以上80℃以下で行い、両末端イソシアネート基プレポリマーを得る。次いで、この両末端イソシアネート基プレポリマーに対し、活性水素化合物をイソシアネート末端基の官能基数に凡そ等しい当量で添加し、鎖延長反応を行う。当量比としては、イソシアネート末端基に対し、0.95以上1.1以下が好ましく、より好ましくは0.99以上1.05以下である。その後、固相重合を行い、所定分子量のポリウレタンを得ることができる。鎖延長反応と固相重合の方法としては、プレポリマーの入ったバッチ反応容器に活性水素化合物を好ましくは40℃以上100℃以下で、そのまま添加した後、払い出して固相重合を好ましくは60℃以上200℃以下で、より好ましくは70℃以上150℃以下で行い、ペレタイズしチップ状のポリマーを得てもよい。プレポリマーと活性水素化合物とを均一に混合した後、円筒状パイプ形態や二軸押出機を用いて重合ゾーンのシリンダー温度を好ましくは160℃以上240℃以下とし、連続又は半連続的にポリマーを得た後、固相重合を好ましくは60℃以上220℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下で行ってもよい。
【0020】
また、ポリウレタン弾性繊維は、本発明の所望の効果を失わない程度であれば、ポリウレタン以外のポリマーや、添加剤、例えば、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、ガス変色防止剤、染料、活性剤、艶消剤、滑剤等を含有するものであってもよい。
【0021】
本実施形態において、解舒性、工程性等の観点から、ポリウレタン弾性繊維に油剤等の処理剤を塗布してもよい。処理剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルシリコーンなどのシリコーン系オイル、鉱物油系オイル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。処理剤の塗布方法は、特に限定されず、例えば、オイリングローラー等により塗布する方法が挙げられる。
【0022】
紡糸の方式については、所望の物性が得られる限り、特に制限されるものではないが、溶融紡糸法であることが好ましい。溶融紡糸法としては、例えば、ポリウレタン弾性チップを押出機に投入し、加熱され、溶融紡糸する方法の他に、ポリウレタン弾性チップを溶融した後、ポリイソシアネート化合物を混合して紡糸する方法、両末端イソシアネート基プレポリマーに対し、両末端イソシアネート基プレポリマーと活性水素化合物との反応物を添加し、チップ化を経由せず連続的に紡糸する方法が挙げられる。
【0023】
押出機に投入されたポリウレタンは、計量ポンプによって、計量され、紡糸ヘッドに導入される。必要に応じて、紡糸ヘッド内で金網やガラスビーズ等を用いたろ過により、異物を除去した後、口金から、吐出され、冷風チャンバーで空冷され、処理剤が付与された後、ゴデットロールを経由して巻き取られる。
【0024】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維において、ウレタン結合に対するウレア結合の比率を制御する方法は、特に限定されないが、例えば、押出機内でポリウレタンのウレタン結合を熱分解させ、生成したイソシアネート基を適度に水と反応させることで、ウレア結合に変換する方法が挙げられる。具体的な方法としては、押出機内に投入するポリウレタン樹脂に一定の水分を含ませる方法や、口金から吐出された糸条のポリウレタンに高温のスチームを噴射する方法や、巻き取りの際にゴデッドロールの間で高温のスチームを噴射する方法、水分を含んだ処理剤を高温下で糸条に付与する方法などが挙げられる。
【0025】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維において、ウレタン結合に対するウレア結合の比率を0.05%以上5%以下にすることによって、耐熱性、接着性、解舒性を向上できる理由については未だ明らかではないが、発明者は以下のように推定している。前記ウレタン結合に対する該ウレア結合の比率を0.05%以上5%以下にすることによって、糸表面は、ウレア結合がウレタン結合中に微細に分散された状態となり、ウレタン結合による良好な接着性と、ウレア結合による良好な耐熱性、解舒性を兼ね備えた性能が発揮される。尚、前記ウレタン結合に対するウレア結合の比率は、ポリウレタン弾性繊維を主として構成する重合体におけるウレタン結合に対するウレア結合の比率であり、例えば、ポリウレタン弾性繊維が含有する添加剤等に含まれるウレタン結合やウレア結合は、前記比率の算出に考慮しない。
【0026】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維において、該ウレタン結合に対する該ウレア結合の比率は、好ましくは0.05%以上3%以下であり、より好ましくは0.1%以上2%以下である。
【0027】
得られるポリウレタン弾性繊維の重量平均分子量(Mw)は、GPCによって、ポリスチレン標準にして測定されるとき、好ましくは10万以上80万以下であり、より好ましくは10万以上50万以下であり、更に好ましくは12万以上30万以下である。
【0028】
得られるポリウレタン弾性繊維の数平均分子量(Mn)は、GPCによって、ポリスチレン標準にして測定されるとき、好ましくは5万以上40万以下あり、より好ましくは5万以上25万以下であり、更に好ましくは6万以上15万以下である。
【0029】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維において、該ウレタン結合に対する該ウレア結合の比率が0.05%以上5%以下であり、かつ、得られるポリウレタン弾性繊維の多分散度(Mw/Mn)が、GPCによって、ポリスチレン標準にして測定されるとき、1.2以上4.0以下であれば、耐熱性、接着性、解舒性を向上させる効果が一層高くなるため好ましい。前記分散度(Mw/Mn)は、より好ましくは1.2以上3.0以下であり、更に好ましくは1.2以上2.5以下であり、最も好ましくは1.5以上2.5以下である。このように多分散度を小さくすることによって、耐熱性、接着性、解舒性を向上できる理由については未だ明らかではないが、発明者は以下のように推定している。ウレタン結合に対するウレア結合の比率が0.05%以上5%以下であり、かつ、多分散度をより小さくすることによって、糸表面のウレア結合が、ウレタン結合の中により微細に分散された状態となる。ポリウレタン弾性繊維の多分散度(Mw/Mn)を制御する方法は特に限定されないが、多分散度(Mw/Mn)が制御されたポリマーポリオールを用いる方法や、固相重合の温度を低温で行なう方法が好適に用いられる。
【0030】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、イソシアネート基が反応してウレタン結合が架橋されたアロファネート結合を有しないことが好ましい。アロファネート結合を含む架橋を有しないことで、熱安定性が低いアロファネート結合が分解して生成したイソシアネート基により単糸間のウレタン基が架橋して解舒性が悪化することを防ぐ効果がある。尚、イソシアネート基が反応して形成される架橋として、アロファネート結合の他に、イソシアネート基がウレア結合と反応して形成されるビュレット結合も例示されるが、本実施形態のポリウレタン弾性繊維はウレア結合の量が少ないため、形成可能なビュレット結合の量も極めて少なく、ビュレット結合による影響は無視してもよい。
【0031】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維を含む巻糸体において、解舒性と接着性を向上させる観点から、該巻糸体上のポリウレタン弾性繊維の伸長率が0.05%以上10%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05%以上5%以下であり、更に好ましくは0.1%以上5%以下である。伸長率を0.05%以上10%以下にすることによって解舒性を向上できる理由については未だ明らかではないが、発明者は以下のように推定している。ポリウレタン弾性繊維巻糸体が適度に伸長された状態に保たれることで、糸表面のウレア結合が、ウレタン結合の中により微細に分散された状態が保たれ、解舒性が向上する。伸長率を制御するポリウレタン弾性繊維の製造方法は特に限定されないが、例えば、1つ目のゴデローラーと最終の巻き取り速度の比(=最終巻き取り速度÷1つ目のゴデローラー速度)を調整して紙管に巻き取る方法が好適に用いられる。
【0032】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維において、解舒性と接着性を向上させる観点から、単糸繊度が5dtex以上40dtex以下であることが好ましく、より好ましくは5dtex以上30dtex以下である。単糸繊度を40dtex以下にすることによって、解舒性を向上できる。また、単糸繊度を40dtex以下にすることによって、糸の表面積を増やせるため、ホットメルトの塗布面積を増やすことができ、接着性を向上できる。単糸繊度を制御するポリウレタン弾性繊維の製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリウレタンの吐出量と、吐出させるノズルのホール数を調整する方法が好適に用いられる。
【0033】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維において、解舒性と接着性を向上させる観点から、フィラメント数が15以上であることが好ましく、より好ましくは20以上である。単糸数を15以上にすることによって、糸表面に存在するウレア結合の量が増えるため、解舒性と接着性を向上させることができる。フィラメント数を制御するポリウレタン弾性繊維の製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリウレタンを吐出させるノズルのホール数を調整する方法が好適に用いられる。
【0034】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維を含むギャザー部材、及び衛生材料も、本発明の一態様である。衛生材料の具体例としては、使い捨て紙おむつや生理用品に代表される吸収性物品や、マスク、包帯等が挙げられる。紙おむつにおいては、ウエスト部や脚回り部に、不織布にホットメルトを介して弾性繊維が接着したギャザー部材が用いられるが、本実施形態のギャザー部材は、こうした部位に好適に用いられる。本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、耐熱性、接着性、解舒性が良好であるため、加工工程において高い収率でギャザー部材及び衛生材料を製造することができる。
【実施例】
【0035】
以下の実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は、実施例により限定されるものではない。
まず、以下の実施例で使用した評価方法について説明する。
【0036】
<測定方法及び評価方法>
<ポリウレタン弾性繊維の分子量及び多分散度(Mw/Mn)の測定>
LiBrを0.02mol/L含有するジメチルアセトアミド溶液にて、固形分濃度が0.25重量%になるようにポリウレタン弾性繊維を溶解し、測定サンプルとする。
作製したサンプルをShodex社製GPC-101にて、以下に示す条件で測定する。尚、ポリウレタン弾性繊維の分子量とは、Shodex社製のポリスチレン標準サンプル(SM-105)を全サンプル測定し、ピークトップ分子量から求めた検量線から算出された数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)のことを指す。また、分子量の多分散度は、重量平均分子量を数平均分子量で除した(Mw/Mn)のことを指す。
[GPC測定条件]
カラム:(サンプル側)→KD-G→KD-806M→KD-806M→KD-802.5→KD-801×3→RI-71S(検出器)(以上は全てShodex社製)
カラムオーブン温度:60℃
流量:1.0ml/min
溶離液:LiBrを0.02mol/Lの濃度で含有するジメチルアセトアミド溶液
【0037】
<NMR測定(ウレタン結合に対するウレア結合の比率)>
ポリウレタン弾性繊維を石油エーテルで洗浄して油剤を除去し、その後、クロロホルムを溶媒としてソックスレー抽出を5時間行い、有機化合物系添加剤を除去する。クロロホルムを-0.1MPaの真空下で80℃5時間乾燥除去し、ポリウレタン弾性繊維と内部標準のジメチルスルホキシドを所定量測り取って下記条件でNMRを測定し、前記ウレタン結合とウレア結合の特定と含有量の算出を行い、ウレア結合の含有量をウレタン結合の含有量で除することでウレタン結合に対するウレア結合の比率を算出した。前記ウレタン結合とウレア結合の含有量の算出は、内部標準であるジメチルスルホキシドとの水素シグナルの積分値より算出できる。例えば、ウレタン結合の含有量を算出する場合、ウレタン結合の水素の積分値とジメチルスルホキシドのメチル基の水素の積分値を比較して算出できる。また、ウレア結合の含有量を算出する場合、ウレア結合の水素の積分値とジメチルスルホキシドのメチル基の水素の積分値を比較して算出できる。一般的に、芳香族ウレタン結合の水素シグナルは9.2~9.8ppm、芳香族ウレア結合の水素シグナルは8.4~9.0ppm、脂肪族ウレタン結合の水素シグナルは6.7~7.3ppm、脂肪族ウレア結合の水素シグナルは6.0~6.7ppmに観測されることが多いが、この限りではない。
[NMR測定条件]
測定装置:JEOL社製 ECS400
測定核:1H
共鳴周波数:400MHz
積算回数:256回
測定温度:室温
溶媒:重水素化ジメチルホルムアミド
測定濃度:1.5重量%
化学シフト基準:ジメチルホルムアミド(8.0233ppm)
【0038】
<アロファネート結合を含む架橋の有無の判定方法>
下記DMAc溶解試験で溶解し、かつ、下記NMR測定でアロファネート結合が確認できないポリウレタン弾性繊維を、本明細書中の用語「アロファネート結合を含む架橋を有しない」ものと判定した。下記DMAc溶解試験で溶解しない、又は、下記DMAc溶解試験で溶解するが下記NMR測定でアロファネート結合が確認できた、ポリウレタン弾性繊維を、「アロファネート結合を含む架橋を有するものと判定した。
<DMAc溶解試験>
ポリウレタン弾性繊維を0.2g精秤し、10gのDMAcに浸漬し、20℃で48時間攪拌をする。攪拌後、径1mm以上の塊状ポリマーが目視で確認できない場合、DMAcに溶解したと判定した。
<NMR測定(アロファネート結合の定性)>
-0.1MPaの真空下で80℃5時間乾燥したポリウレタン弾性繊維と内部標準のジメチルスルホキシドを所定量測り取って下記条件でNMRを測定した。この測定によって、ウレタン結合に対するアロファネート結合の比率を確認した。前記ウレタン結合に対するアロファネート結合の比率は、それぞれの水素の積分値を比較して算出でき、この比率が0.05%未満である場合に、アロファネート基が含まれていないと定義する。一般的に、アロファネート結合の水素シグナルは10.5~11.0ppmに観測されることが多いが、この限りではない。
[NMR測定条件]
測定装置:JEOL社製 ECS400
測定核:1H
共鳴周波数:400MHz
積算回数:256回
測定温度:室温
溶媒:重水素化ジメチルホルムアミド
測定濃度:1.5重量%
化学シフト基準:ジメチルホルムアミド(8.0233ppm)
【0039】
<巻糸体上のポリウレタン弾性繊維伸長率(%)>
巻糸体上のポリウレタン弾性繊維の伸長率(%)は、以下の手順で測定及び計算した。
・ポリウレタン弾性繊維巻糸体からポリウレタン弾性繊維を弛緩状態の長さ(以下、単に「リラックス長」ともいう。)で0.5m解舒してサンプルとし、そのサンプル重量(g)を測定した。以下の計算式から、ポリウレタン弾性繊維の弛緩状態における繊度(リラックス繊度A(dtex))を計算した。測定は4回行い、その平均値をとった。尚、「弛緩状態」とは、糸をチーズから解舒した後、無荷重で2時間以上放置した状態のことをいう。
リラックス繊度A(dtex)=サンプル重量(g)×10000/リラックス長(m)
・送り出しロールによってポリウレタン弾性繊維巻糸体からポリウレタン弾性繊維を、伸長率を維持した状態で50m送り出して解舒した。解舒された糸の重量(g)を測定した。以下の計算式から、ポリウレタン弾性繊維の伸長状態における繊度(プリント繊度B(dtex))を計算した。
プリント繊度B(dtex)=解舒された糸の総重量(g)×10000/50(m)
・以下の計算式:
伸長率(%)=(A/B-1)×100
から、巻糸体上のポリウレタン弾性繊維の伸長率(%)を計算した。
【0040】
<解舒性の評価方法>
紙管からの巻厚が1cmになるまで剥ぎ取り、弾性繊維の巻糸体を、
図1に示す装置にかけ、弾性繊維送り出しロール2を、速度50m/分、弾性繊維を3回巻きつけたプレドラフトロール3を、速度80m/分、巻き取りロール4を、速度85m/分の条件で走行させた。観察部位5での、弾性繊維の挙動を3分間目視観察し、以下の評価基準で、糸揺れを評価した。本評価において、糸揺れ幅が小さいほど、糸の使用時の摩擦抵抗が小さく糸切れ等が起こりにくい。
5:糸揺れ幅が0mm以上2mm未満
4:糸揺れ幅が2mm以上4mm未満
3:糸揺れ幅が4mm以上6mm未満
2:糸切れ幅が6mm以上又は糸切れ
1:糸切れ
尚、3分間の目視観察において、糸揺れ幅が上記評価基準の2基準の間を行き来する場合は、例えば「3~4」のように幅のある評価結果とした。
【0041】
<耐熱性の評価方法>
初期長7cmの試験糸を200%伸長して21cmとし、表面温度150℃の直径6cmの円筒状の熱体に押し当て(接触部分1cm)、切断されるまでの秒数を測定して、以下の5段階の評価基準で評価した:
5:切断されるまでの秒数が60秒以上であった。
4:切断されるまでの秒数が30秒以上60秒未満であった。
3:切断されるまでの秒数が10秒以上30秒未満であった。
2:切断されるまでの秒数が5秒以上10秒未満であった。
1:切断されるまでの秒数が5秒未満であった。
【0042】
<接着性の評価方法>
150℃で溶融したホットメルト接着剤(ヘンケルジャパン株式会社製765E)を、5本のポリウレタン弾性繊維を7mmの間隔をあけて平行に並べ、元の長さの2倍の長さになるように伸張し、Vスリットにて付着量が伸張された1本のポリウレタン弾性繊維あたり0.04g/mとなるよう連続的に塗工しながら、該ホットメルト接着剤が塗工されたポリウレタン弾性繊維を幅30cm、目付17g/m2の不織布(旭化成株式会社製エルタスガード(登録商標))2枚で連続的に挟み込み、その上から外径16cm幅40cmの1組のローラーにて、一方のローラーを0.5MPaのエア圧を供給したエアシリンダー(SMC株式会社製CQ2WB100-50DZ)にて押し込みながら連続的に圧着し、ギャザー部材を作製した。作製したギャザーを直ちに糸長方向に250mm~300mmの長さにカットし(この時のギャザー部材の長さを初期長とする)、糸長方向に初期長の2倍になるまで延伸させた状態でダンボール板に貼り付けた。次いで、貼り付けた試験体のポリウレタン弾性繊維の長さが200mmとなるような任意の2点に不織布の上から油性ペンで印をつける。こうすることで不織布越しにインクが浸み込みポリウレタン弾性繊維にインクで印をつけることができる。この印のところでポリウレタン弾性繊維とそこに接着している不織布ごとカットし、40℃で5時間放置した。5時間後、ポリウレタン弾性繊維の印をつけた2点間の長さを測定し、保持率を以下の式:
接着性保持率=100×(5時間後の計測長さmm)/200mm
により算出した。保持率が高いほど製品の製造時や着用時にてポリウレタン弾性繊維のスリップインが少ない。測定は同一サンプルあたり10回測定し、80%未満となる本数を用いて以下の評価基準に基づきスリップインの発生率とした:
5:接着性保持率を10回測定した際、80%未満となる本数が0本
4:接着性保持率を10回測定した際、80%未満となる本数が1本
3:接着性保持率を10回測定した際、80%未満となる本数が2本
2:接着性保持率を10回測定した際、80%未満となる本数が3本
1:接着性保持率を10回測定した際、80%未満となる本数が4本以上。
【0043】
<加工時における糸切れの耐性(総合評価)>
ポリウレタン弾性繊維を加工工程で使用した際の糸切れの頻度を以下の5段階の評価基準で評価した。
5:解舒性、耐熱性、接着性が全て評価5で、加工工程で糸切れが起こらない。
4:解舒性、耐熱性、接着性のいずれかに評価4があるが、評価3、2、1は見られない。加工工程で糸切れが起こらない。
3:解舒性、耐熱性、接着性のいずれかに評価3はあるが、評価2、1は見られない。加工工程で糸切れがほとんど起こらない。
2:解舒性、耐熱性、接着性のいずれかに評価2はあるが、評価1は見られない。加工工程で糸切れが稀に起こる。
1:解舒性、耐熱性、接着性のいずれかに評価1があり、加工工程で連続生産ができないほど糸切れが頻発する。
【0044】
[実施例1]
数平均分子量1800、GPCにおける多分散度(Mw/Mn)が1.2のポリテトラメチレンエーテルジオール2400gと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート750.75gとを、乾燥窒素雰囲気下、60℃で3時間、攪拌下で反応させて、末端イソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。このポリウレタンプレポリマーに、1,4-ブタンジオール150.95gを添加して、15分撹拌し、粘度2000ポイズ(30℃)のポリウレタンを得た。
その後、テフロン(登録商標)トレイに払い出し、このポリウレタンをトレイに入れたまま、110℃の熱風オーブン中で19時間アニーリングしてポリウレタン樹脂を得た。このポリウレタン樹脂は、GPCにおける重量平均分子量が20万、多分散度(Mw/Mn)が2.0で、ウレア結合は見られなかった。
【0045】
こうして得られたポリウレタン樹脂を、ホーライ社製粉砕機UG-280型にて、3mm程度の粉末に粉砕した。粉砕したチップを除湿乾燥機で110℃の温度条件下で水分率100ppmまで乾燥した後、ポリウレタン樹脂粉末をホッパーから投入し、押出機内で溶融させた。ヘッドに設置したギアポンプにより計量、加圧し、フィルターでろ過後、径0.23mm、60ホールのノズルから31g/分の速度で、吐出させた。吐出させた糸条を紡口直下に設置されたスチームリングを用いて、紡口面から1cm~5cmの範囲で200℃のスチームを流速0.1~0.2m/sで噴射し、その後、冷風発生装置で発生させた冷風を用いて糸条を冷却固化させた後、0.20MPaの圧縮空気による仮撚装置で集束した後、表面処理剤をポリウレタン弾性繊維に対して2.0質量%付与し、1つ目のゴデローラーと最終の巻き取り速度の比(=最終巻き取り速度÷1つ目のゴデローラー速度)が1.15になるように紙製の紙管に巻き取り、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維の巻糸体を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。尚、表面処理剤としては、ポリジメチルシロキサン67質量%、鉱物油30質量%、アミノ変性シリコーン3.0質量%からなる油剤を用いた。
【0046】
[実施例2]
紡口直下で噴射するスチームの温度を180℃にして溶融紡糸をした以外は、実施例1と同様の方法で620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.05%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0047】
[実施例3]
紡口直下で噴射するスチームの温度を190℃にして溶融紡糸をした以外は、実施例1と同様の方法で620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.1%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0048】
[実施例4]
紡口直下で噴射するスチームの範囲を紡口面から1cm~7cmにして溶融紡糸をした以外は、実施例1と同様の方法で620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は2.0%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0049】
[実施例49]
紡口直下で噴射するスチームの範囲を紡口面から1cm~10cmにして溶融紡糸をした以外は、実施例1と同様の方法で620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は3.0%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0050】
[実施例6]
紡口直下で噴射するスチームの範囲を紡口面から1cm~15cmにして溶融紡糸をした以外は、実施例1と同様の方法で620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は5.0%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0051】
[実施例7]
熱風オーブン中のアニーリング条件を80℃で24時間にしてポリウレタン樹脂を得た以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン弾性繊維を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は12万、多分散度(Mw/Mn)は1.2、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0052】
[実施例8]
熱風オーブン中のアニーリング条件を90℃で24時間にしてポリウレタン樹脂を得た以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は15万、多分散度(Mw/Mn)は1.5、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0053】
[実施例9]
熱風オーブン中のアニーリング条件を130℃で12時間にしてポリウレタン樹脂を得た以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は20万、多分散度(Mw/Mn)は2.5、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0054】
[実施例10]
熱風オーブン中のアニーリング条件を150℃で8時間にしてポリウレタン樹脂を得た以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は24万、多分散度(Mw/Mn)は3.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0055】
[実施例11]
数平均分子量2000、GPCにおける多分散度(Mw/Mn)が1.5のポリテトラメチレンエーテルジオールを用いて、熱風オーブン中のアニーリング条件を150℃で8時間にしてポリウレタン樹脂を得た以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は28万、多分散度(Mw/Mn)は4.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0056】
[実施例12]
数平均分子量2000、GPCにおける多分散度(Mw/Mn)が1.5のポリテトラメチレンエーテルジオールを用いて、熱風オーブン中のアニーリング条件を180℃で2時間にしてポリウレタン樹脂を得た以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は35万、多分散度(Mw/Mn)は5.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0057】
[実施例13]
紙管に巻き取る際の1つ目のゴデローラーと最終の巻き取り速度の比(=最終巻き取り速度÷1つ目のゴデローラー速度)を1.01にした以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は0.05%であった。
【0058】
[実施例14]
紙管に巻き取る際の1つ目のゴデローラーと最終の巻き取り速度の比(=最終巻き取り速度÷1つ目のゴデローラー速度)を1.03にした以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は0.1%であった。
【0059】
[実施例15]
紙管に巻き取る際の1つ目のゴデローラーと最終の巻き取り速度の比(=最終巻き取り速度÷1つ目のゴデローラー速度)を1.10にした以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は1%であった。
【0060】
[実施例16]
紙管に巻き取る際の1つ目のゴデローラーと最終の巻き取り速度の比(=最終巻き取り速度÷1つ目のゴデローラー速度)を1.20にした以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は5%であった。
【0061】
[実施例17]
紙管に巻き取る際の1つ目のゴデローラーと最終の巻き取り速度の比(=最終巻き取り速度÷1つ目のゴデローラー速度)を1.30にした以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は10%であった。
【0062】
[実施例18]
紙管に巻き取る際の1つ目のゴデローラーと最終の巻き取り速度の比(=最終巻き取り速度÷1つ目のゴデローラー速度)を1.35にした以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は12%であった。
【0063】
[実施例19]
ポリウレタンを押出機内で溶融させた後、径0.23mm、30ホールのノズルから15.5g/分の速度で吐出させた以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、310dtex/30フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2%であった。
【0064】
[実施例20]
ポリウレタンを押出機内で溶融させた後、径0.23mm、90ホールのノズルから47g/分の速度で吐出させた以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、940dtex/90フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2%であった。
【0065】
[実施例21]
ポリウレタンを押出機内で溶融させた後、径0.23mm、120ホールのノズルから61g/分の速度で吐出させた以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、1220dtex/120フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2%であった。
【0066】
[実施例22]
ポリウレタンを押出機内で溶融させた後、径0.23mm、24ホールのノズルから吐出させた以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/24フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2%であった。
【0067】
[実施例23]
ポリウレタンを押出機内で溶融させた後、径0.23mm、16ホールのノズルから吐出させた以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/16フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合イソシアネート基を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2%であった。
【0068】
[実施例24]
ポリウレタンを押出機内で溶融させた後、径0.23mm、12ホールのノズルから吐出させた以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/12フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2%であった。
【0069】
[実施例25]
重合反応に使用した1,4-ブタンジオールの量を140.75gに変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリウレタン樹脂を製造し、620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.5%で、巻糸体における伸長率は2.0%であった。このポリウレタン弾性繊維は、DMAcに溶解したが、NMRにおいてウレタン結合に対して0.3%のアロファネート結合があった。
【0070】
[比較例1]
紡口直下で噴射するスチームの温度を170℃にして溶融紡糸をした以外は、実施例1と同様の方法で620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は0.03%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0071】
[比較例2]
紡口直下で噴射するスチームの範囲を紡口面から1cm~20cmにして溶融紡糸をした以外は、実施例1と同様の方法で620dtex/60フィラメントのポリウレタン弾性繊維を得た。このポリウレタン弾性繊維のGPCにおける重量平均分子量は18万、多分散度(Mw/Mn)は2.0、ウレタン結合に対するウレア結合の比率は6.0%で、アロファネート結合を含む架橋はなく、巻糸体における伸長率は2.0%であった。
【0072】
以上の各実施例及び比較例における、製造条件、得られたポリウレタン弾性繊維の各特性の測定結果等を、以下の表1~3に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係るポリウレタン弾性繊維は、インナー、ストッキング、コンプレッションウェア、及びおむつなどの製造に好適に利用可能であり、特に、ギャザー部材の製造工程において、耐熱性、接着性、解舒性が良く、糸切れの発生を低減することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 弾性繊維の巻糸体
2 送り出しロール
3 プレドラフトロール
4 巻き取りロール
5 観察部位
6 セラミックフックガイド
7 ベアリングフリーローラー