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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】車両のステアリングホイール装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20231226BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231226BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20231226BHJP
   B60R 21/203 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B62D1/04
F16F15/02 C
F16F15/08 F
B60R21/203
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022545566
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027859
(87)【国際公開番号】W WO2022044668
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2020144815
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】田中 要
(72)【発明者】
【氏名】本間 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】安部 和宏
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/162315(WO,A1)
【文献】特開2010-069934(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003777(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/142655(WO,A1)
【文献】特開2018-024410(JP,A)
【文献】特開2017-052433(JP,A)
【文献】特開2015-096375(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016106280(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
F16F 15/02
F16F 15/08
B60R 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵中心を取り囲んで配列され、該ステアリングホイールに係合される係合要素でエアバッグモジュールを取り付けるようにした車両のステアリングホイール装置であって、
上記係合要素は、上記エアバッグモジュール側に設けられ、上記ステアリングホイール側に形成された被係合部に係脱自在に係合する係合部を有し、
上記係合要素は少なくとも、上記ステアリングホイールの中立位置を基準として、上記操舵中心よりも下方側に位置される第1係合要素及び該操舵中心よりも上方側に位置される第2係合要素を含み、
上記第1係合要素は、上記エアバッグモジュールに取り付けられ、上記係合部を有する第1ピンと、該エアバッグモジュールをダンパマスとして上記ステアリングホイールの振動を減衰する弾性部材と、該弾性部材を保持し、該第1ピンと摺動可能に接触する第1ブッシュとを含む振動減衰パーツであり、
上記第2係合要素は、上記エアバッグモジュールに取り付けられ、上記係合部を有する第2ピンと、ヤング率が上記弾性部材よりも大きな素材で形成され、該第2ピンと摺動可能に接触する第2ブッシュとを含むものであることを特徴とする車両のステアリングホイール装置。
【請求項2】
前記第2係合要素の前記第2ピンと前記第2ブッシュとの間には隙間があることを特徴とする請求項1に記載の車両のステアリングホイール装置。
【請求項3】
前記第1係合要素の前記第1ピンと前記第1ブッシュとの間には隙間があることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のステアリングホイール装置。
【請求項4】
前記隙間は、0.05mm以上0.3mm以下の範囲であることを特徴とする請求項2または3に記載の車両のステアリングホイール装置。
【請求項5】
前記第2係合要素は、前記第2ピンと前記第2ブッシュとを含むものに代えて、前記エアバッグモジュールに一端が接合され、他端に、前記被係合部と係合する前記係合部を有する板バネ部材であることを特徴とする請求項1に記載の車両のステアリングホイール装置。
【請求項6】
前記係合部には、インシュレータが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の車両のステアリングホイール装置。
【請求項7】
前記ステアリングホイールと前記エアバッグモジュールとの間には、該エアバッグモジュールを該ステアリングホイールに弾性支持させる第2弾性部材が設けられることを特徴とする請求項1~6いずれかの項に記載の車両のステアリングホイール装置。
【請求項8】
前記第2弾性部材は、コイルスプリングであることを特徴とする請求項7に記載の車両のステアリングホイール装置。
【請求項9】
前記第1係合要素は、前記ステアリングホイールの中立位置を基準として、前記操舵中心を通る上下方向軸線上に配設され、
前記第2係合要素は、上記ステアリングホイールの中立位置を基準として、上記操舵中心を通る上下方向軸線と該上下方向軸線に直交する左右方向軸線との間の領域に、当該上下方向軸線に関して線対称な位置に配設されることを特徴とする請求項1~8いずれかの項に記載の車両のステアリングホイール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールに生じる低周波数の煽る態様の振動を効果的に制振することが可能で、構造が簡易な車両のステアリングホイール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグモジュールを、ステアリングホイールの操舵中心を取り囲んで配列した係合機構を介して、ステアリングホイールに係合して取り付けるようにした車両のステアリングホイール装置として、特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1の「ステアリングホイール」では、ピンホルダ(スライダ)はスナップピン(支持部材)の外側に前後方向へスライド可能に配置され、コイルばね(付勢部材)により後方へ付勢される。コンタクトホルダ(キャップ部材)はピンホルダの後端部から後方へ離間した状態で、スナップピン及びピンホルダを後方から覆う。コンタクトホルダ内には、接点端子(可動側接点部)とピンホルダの一部を覆ったダンパホルダとが取付けられる。弾性部材はピンホルダ及びダンパホルダの間に介装される。ダンパホルダの内周部に伝達部が設けられ、ピンホルダの外周部で、伝達部の直前には、ダンパホルダの前方への動きが伝達部を通じて伝達される被伝達部(受け部)が設けられている。
【0004】
特許文献1では、ダイナミックダンパを構成する弾性部材が備えられている。特許文献1では、エアバッグモジュールをステアリングホイールに取り付けるホーンスイッチ機構を、ステアリングホイールの操舵中心を取り囲んで3個、配列している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-197185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステアリングホイールに発生する振動態様は、(1)30~50Hzの低周波数帯におけるエンジン起因による上下振動と、(2)70~90Hzの高周波数帯におけるステアリングの変形共振である。
【0007】
低周波数帯の振動モードは、特許文献1に示されているようなダイナミックダンパにより、相当減衰することが可能である。
【0008】
しかしながら、3箇所に配列されるダイナミックダンパは、少なくとも弾性部材、ピンホルダ、ダンパホルダの3部品以上で構成されるため、構造が複雑でかつコストも嵩むという課題があった。
【0009】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、ステアリングホイールに生じる低周波数の煽る態様の振動を効果的に制振することが可能で、構造が簡易な車両のステアリングホイール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる車両のステアリングホイール装置は、ステアリングホイールの操舵中心を取り囲んで配列され、該ステアリングホイールに係合される係合要素でエアバッグモジュールを取り付けるようにした車両のステアリングホイール装置であって、上記係合要素は、上記エアバッグモジュール側に設けられ、上記ステアリングホイール側に形成された被係合部に係脱自在に係合する係合部を有し、上記係合要素は少なくとも、上記ステアリングホイールの中立位置を基準として、上記操舵中心よりも下方側に位置される第1係合要素及び該操舵中心よりも上方側に位置される第2係合要素を含み、上記第1係合要素は、上記エアバッグモジュールに取り付けられ、上記係合部を有する第1ピンと、該エアバッグモジュールをダンパマスとして上記ステアリングホイールの振動を減衰する弾性部材と、該弾性部材を保持し、該第1ピンと摺動可能に接触する第1ブッシュとを含む振動減衰パーツであり、上記第2係合要素は、上記エアバッグモジュールに取り付けられ、上記係合部を有する第2ピンと、ヤング率が上記弾性部材よりも大きな素材で形成され、該第2ピンと摺動可能に接触する第2ブッシュとを含むものであることを特徴とする。
【0011】
前記第2係合要素の前記第2ピンと前記第2ブッシュとの間には隙間があることが望ましい。前記第1係合要素の前記第1ピンと前記第1ブッシュとの間には隙間があることが望ましい。前記隙間は、0.05mm以上0.3mm以下の範囲であることが好ましい。
【0012】
前記第2係合要素は、前記第2ピンと前記第2ブッシュとを含むものに代えて、前記エアバッグモジュールに一端が接合され、他端に、前記被係合部と係合する前記係合部を有する板バネ部材であることが望ましい。前記係合部には、インシュレータが設けられていることが好ましい。
【0013】
前記ステアリングホイールと前記エアバッグモジュールとの間には、該エアバッグモジュールを該ステアリングホイールに弾性支持させる第2弾性部材が設けられることが望ましい。前記第2弾性部材は、コイルスプリングであることが好ましい。
【0014】
前記第1係合要素は、前記ステアリングホイールの中立位置を基準として、前記操舵中心を通る上下方向軸線上に配設され、前記第2係合要素は、上記ステアリングホイールの中立位置を基準として、上記操舵中心を通る上下方向軸線と該上下方向軸線に直交する左右方向軸線との間の領域に、当該上下方向軸線に関して線対称な位置に配設されることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる車両のステアリングホイール装置にあっては、構造が簡易で、ステアリングホイールに生じる低周波数の煽る態様の振動を効果的に制振することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る車両のステアリングホイール装置の好適な一実施形態を示す、ホーンカバーで覆ったエアバッグモジュールが取り付けられるステアリングホイールの説明図である。
図2図1に示したステアリングホイールの要部拡大図である。
図3図1に示した車両のステアリングホイール装置の第1係合要素の分解斜視図である。
図4図3に示した第1係合要素の係合状態を示す斜視図である。
図5図1に示した車両のステアリングホイール装置の第2係合要素の分解斜視図である。
図6図1に示した車両のステアリングホイール装置のエアバッグモジュールへの第1及び第2係合要素の取り付けを説明する分解斜視図である。
図7図3及び図5に示した第1及び第2係合要素を説明する説明図であって、(A)は第2係合要素の断面図、(B)は第1係合要素の断面図である。
図8図1に示した車両のステアリングホイール装置の振動低減作用を説明する説明図である。
図9図1に示した車両のステアリングホイール装置の段差変化量を説明する説明図である。
図10図1に示した車両のステアリングホイール装置の場合と、すべてを振動減衰パーツとした場合とで、段差変化量を比較した表を示す図である。
図11】本発明に係る車両のステアリングホイール装置の変形例におけるステアリングホイールの説明図である。
図12図11に示した変形例のエアバッグモジュールへの第1及び第2係合要素の取り付けを説明する分解斜視図である。
図13図11に示した変形例の第2係合要素を説明する説明図であって、(A)は全体斜視図、(B)はインシュレータに隆起部を備えた場合の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる車両のステアリングホイール装置の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、ホーンカバーで覆ったエアバッグモジュールが取り付けられるステアリングホイールを示した、本実施形態に係る車両のステアリングホイール装置の説明図である。図2は、図1に示したステアリングホイールの要部拡大図である。
【0019】
これら図では、ステアリングホイールが舵角ゼロの中立位置を基準として、上下左右の各方向を示している。その他、運転者側から見た側を表側とし、その反対側を裏側として説明する。
【0020】
ステアリングホイール1は、車両の運転席に設置されている。ステアリングホイール1のボス部2は、不図示のステアリングコラムの内部を通っているステアリングシャフトと連結されている。ステアリングシャフトは、運転者の操作力をステアリングギア等へ伝達する。
【0021】
ステアリングホイール1の中央には、緊急時にフロントエアバッグとして機能するエアバッグモジュール3が取り付けられている。
【0022】
エアバッグモジュール3は、通常時は、ホーンを鳴動させる際に運転者が押圧操作するホーンスイッチとして機能する。
【0023】
図1に示すように、エアバッグモジュール3の運転者側は、意匠面として機能する樹脂製のホーンカバー5で覆われている。ホーンカバー5の裏側に、エアバッグクッション4が設けられる。
【0024】
エアバッグモジュール3は、追って詳述するけれども、金属製ハウジング6に、エアバッグクッション4とインフレータ7を備えて構成される。エアバッグクッション4は、折り畳み状態で設けられる。インフレータ7は、エアバッグクッション4にインフレータガスを供給する。
【0025】
緊急時に、車両のセンサから信号が送られると、インフレータ7からエアバッグクッション4へインフレータガスが供給される。インフレータガスが供給されたエアバッグクッション4は、ホーンカバー5を開裂して、車室空間へと展開膨張する。展開膨張したエアバッグクッション4は、運転者を拘束し、保護する。
【0026】
ステアリングホイール1はおおまかに、中央芯金部8と、円形のリム部9と、中央芯金部8とリム部9をつなぐスポーク部10と含んで構成されている。中央芯金部8には、ボス部2が形成される。リム部9は、運転者によって把持される。
【0027】
本実施形態に係る車両のステアリングホイール装置では、エアバッグモジュール3は、ステアリングホイール1に係合される第1係合要素11及び第2係合要素31によって、ステアリングホイール1に取り付けられる。第1係合要素11及び第2係合要素31は、ステアリングホイール1の操舵中心Cを取り囲んで配列される。
【0028】
これら係合要素11,31は、ステアリングホイール1とエアバッグモジュール3のうち、エアバッグモジュール3側に設けられる。係合要素11,31は、ステアリングホイール1側に形成された被係合部25に係脱自在に係合する係合部12a,32aを有する。被係合部25は、具体的には、ステアリングホイール1の中央芯金部8に備えられ、挿通孔8aにセットスプリング24を配した構造部分である(図4参照)。
【0029】
図2に示すように、第1係合要素11は、舵角ゼロのステアリングホイール1の中立位置Cを基準として、操舵中心Cよりも下方側に位置される。第2係合要素31は、同一の中立位置Cを基準として、操舵中心Cよりも上方側に位置される。
【0030】
係合要素11,31は、エアバッグモジュール3側に設けられ、ステアリングホイール1に係合される。これら係合要素11,31のうち、少なくともいずれかの第1係合要素11は、ステアリングホイール1の振動を減衰する振動減衰パーツとして機能する。エアバッグモジュール3は、振動減衰のためのダンパマスとなる。
【0031】
すなわち、第1係合要素11は、ステアリングホイール1とエアバッグモジュール3との間に配設され、これにより、ステアリングシャフトからステアリングホイール1に伝達される振動を減衰する。
【0032】
第1及び第2係合要素11,31の構造については、図3図7にて詳述する。
【0033】
エアバッグモジュール3は、ステアリングホイール1側に対し、振動減衰パーツである第1係合要素11のダンパマスとなる。第1及び第2係合要素11,31は、ステアリングホイール1の中央芯金部8とエアバッグモジュール3との間に設けられる。
【0034】
第1及び第2係合要素11,31は、ステアリングホイール1のボス部2周りに配設される。図示例では、第1係合要素11が1つ、第2係合要素31が2つ設けられる。これら係合要素は、互いに適宜間隔を隔てて配置されている。
【0035】
詳細には、図2に示すように、第1係合要素11は、舵角ゼロのステアリングホイール1の中立位置を基準として、操舵中心Cを通る上下方向軸線V上であって、かつボス部2の下側に1つ配設される。第2係合要素31は、舵角ゼロのステアリングホイール1の中立位置を基準として、操舵中心Cを通る上下方向軸線Vと上下方向軸線Vに直交する左右方向軸線Hとの間の領域に、当該上下方向軸線Vに関して線対称な位置に、1つずつ配設される。
【0036】
第2係合要素31は、ボス部2の左右方向両側(左右のスポーク部10側)それぞれに配設される。
【0037】
ハウジング6には、第1及び第2係合要素11,31が配設されるステアリングホイール1の中央芯金部8に面してインフレータ7が設けられる。
【0038】
まず、第1係合要素11について説明すると、図3及び図4(図では、中央芯金部8が一部だけ、部分的に描かれている)に示すように、第1係合要素11は、係合部12aとベースプレート部12bを両端部に有する真直な軸体状の第1ピン12と、第1ピン12を包囲してベースプレート部12bに重ねられるホルダプレート13と、第1ピン12を包囲してホルダプレート13に重ねられる環状の弾性部材14と、弾性部材14に重ねられるスプリングシート15aを有し、かつ、第1ピン12を包囲して設けられる筒状インシュレータ15と、弾性部材14を包囲して保持する中空筒状に形成され、かつ、第1ピン12が挿通され、ベースプレート部12bに重ねて設けられる第1ブッシュ18とから構成される。
【0039】
ホルダプレート13、弾性部材14及び筒状インシュレータ15は、第1ブッシュ18の内方にセットされる。
【0040】
第1ブッシュ18の内周は、第1ピン12に対し僅かな隙間D2を隔てて、第1ピン12と摺動可能に接触される(図7(B)参照)。これにより、ステアリングホイール1側及びエアバッグモジュール3側の間に生じる、第1ピン12に沿う動きが円滑に案内される。
【0041】
スプリングシート15aと中央芯金部8の間には、第2弾性部材である金属製のコイルスプリング17が設けられる。コイルスプリング17は、第1ピン12を包囲し、かつ、ステアリングホイール1に対して、エアバッグモジュール3を弾性支持する。
【0042】
弾性部材14は、エアバッグモジュール3をダンパマスとして、ステアリングホイール1の振動を減衰する。
【0043】
第1係合要素11の構成パーツは、弾性部材14を除き、合成樹脂成形品で形成される。
【0044】
第1ピン12は、係合部12aが中空筒状の第1ブッシュ18へ差し入れられ、かつ、ベースプレート部12bが第1ブッシュ18に対し係止され、これにより、第1ブッシュ18に設けられる。係合部12aの先端12cは、コーン状に形成される。
【0045】
ホルダプレート13は、第1ピン12の軸方向に、弾性部材14に密着するように設けられる。
【0046】
ベースプレート部12bと弾性部材14との間には、ホルダプレート13が重ねられる。ホルダプレート13は、第1ブッシュ18と第1ピン12との取付精度に拘わらず、弾性部材14に設定通りの減衰性能を発揮させる。
【0047】
第1係合要素11の第1ピン12は、ステアリングホイール1の中央芯金部8に対して係合される。第1ピン12の係合部12aは、中央芯金部8に貫通形成される挿通孔8aに挿通される。
【0048】
第1ピン12の係合部12aには、径を細めるように括れ部12dが形成される。括れ部12dの外径は、挿通孔8aの孔径よりも小さい。
【0049】
中央芯金部8には、エアバッグモジュール3側と反対側の裏面に、係止溝23が形成される。
【0050】
係止溝23には、棒状セットスプリング24が係止される。棒状セットスプリング24は、中央芯金部8に支持される。図示例では、棒状セットスプリング24として、中央芯金部8の裏面側に当接する屈曲部を有するオメガスプリングが用いられている。オメガスプリングであるので、係止溝23からの脱落が防止される。
【0051】
セットスプリング24は、挿通孔8aを横切るように配置され、かつ、挿通孔8aに差し込んで挿通される第1ピン12の係合部12aの括れ部12dに対し、弾性変形して係合される。これにより、係合部12a、すなわち第1係合要素11は、中央芯金部8、すなわちステアリングホイール1に取り付けられる。
【0052】
実際の組立は、エアバッグモジュール3に取り付けた第1係合要素11の係合部12aを、中央芯金部8の挿通孔8aへ嵌め入れることで行われる。
【0053】
次に、第2係合要素31について説明する。図5に示すように、第2係合要素31は、第1ピン12と同一構成(図4参照)の第2ピン32と、第2ブッシュ33とから構成される。第2ピン32は、係合部32aを有する。第2ブッシュ33は、第2ピン32が挿通される中空筒状に形成され、かつ、ベースプレート部32bに重ねて設けられる。
【0054】
第2ブッシュ33の内周は、第2ピン32に対し僅かな隙間D1を隔てて、第2ピン32と摺動可能に接触される(図7(A)参照)。これにより、ステアリングホイール1側及びエアバッグモジュール3側の間に生じる、第2ピン32に沿う動きが円滑に案内される。
【0055】
第2ブッシュ33は、振動減衰パーツとして機能する第1係合要素11の弾性部材14よりもヤング率が大きな素材(弾性に乏しい素材)で形成される。第2ブッシュ33は例えば、PPやPOMなどの汎用樹脂で形成される。
【0056】
第2ブッシュ33に形成されたスプリングシート33aと中央芯金部8の間には、第2弾性部材である金属製のコイルスプリング17が設けられる。コイルスプリング17は、第2ピン32を包囲し、かつ、ステアリングホイール1に対して、エアバッグモジュール3を弾性支持する。
【0057】
第2ピン32は、係合部32aが中空筒状の第2ブッシュ33へ差し入れられ、かつ、ベースプレート部32bが第2ブッシュ33に対し係止され、これにより、第2ブッシュ33に設けられる。
【0058】
第2ピン32も、係合部32aの先端32cはコーン状に形成され、また、括れ部32dが形成される。
【0059】
第2係合要素31の係合部32aは、第1係合要素11の係合部12aと同様にして、ステアリングホイール1の中央芯金部8に係合される。
【0060】
次に、上記のようにしてステアリングホイール1の被係合部25に係合するこれら係合要素11,31のエアバッグモジュール3への組み付けについて、図6を参照して説明する。
【0061】
エアバッグモジュール3は、皿状に形成され、かつ、中央にインフレータ挿入用孔部6aが形成された金属製のハウジング6と、第1及び第2係合要素11,31に備えられる第1及び第2ブッシュ18,33と、ハウジング6から中央芯金部8に向けて挿入される金属製の第1及び第2ピン12,32と、中央芯金部8側からインフレータ挿入用孔部6aに挿入されるインフレータ7と、皿状のハウジング6内に収納される金属製のアタッチメントプレート16と、ボルト19aを有し、ホーンカバー5側からアタッチメントプレート16に重ね合わされる金属製のリテーナリング19と、エアバッグクッション4を収容する合成樹脂などの樹脂製のホーンカバー5とから構成される。
【0062】
ハウジング6には、インフレータ挿入用孔部6aの周りに、挿通孔8aと相対向させて、3つの貫通穴部6bが形成される。
【0063】
第1及び第2ブッシュ18,33は、各貫通穴部6bに装着され、これにより、当該貫通孔部6bでハウジング6に保持される。
【0064】
第1及び第2ピン12,32は、第1及び第2ブッシュ18,33にスライド可能に設けられる。インフレータ7は、外周フランジ7aがハウジング6に当接されて設けられる。
【0065】
アタッチメントプレート16は、ホーンカバー5側からハウジング6側に向けて、第1及び第2ピン12,32に面して設置される。
【0066】
アタッチメントプレート16は、第1及び第2ピン12,32のベースプレート部12b,32bをハウジング6との間に挟み込む。
【0067】
リテーナリング19は、アタッチメントプレート16、ハウジング6、並びにインフレータ7の外周フランジ7aを貫通したボルト19aがナット20と締結される。
【0068】
これにより、第1及び第2係合要素11,31をハウジング6の貫通穴部6bに保持した状態で、インフレータ7等をハウジング6に固定する。
【0069】
ホーンカバー5は、開口周縁部の複数の係止爪片5aでアタッチメントプレート16に係止される。
【0070】
コイルスプリング17は、エアバッグモジュール3側のハウジング6とステアリングホイール1側の中央芯金部8との間に設けられ、かつ、ハウジング6の貫通穴部6bから中央芯金部8側へ突出する第1及び第2ピン12,32を包囲する。
【0071】
第1及び第2係合要素11,31については、アタッチメントプレート16とハウジング6との間にベースプレート部12b,32bが納められた第1及び第2ピン12,32に対し、第1及び第2ブッシュ18,33がコイルスプリング17によって中央芯金部8から弾性付勢される。これにより、第1及び第2係合要素11,31は、エアバッグモジュール3に組み付けられる。
【0072】
エアバッグモジュール3に取り付けられた第1及び第2係合要素11,31は、係合部12a,32aがエアバッグモジュール3側からステアリングホイール1側へ向けて突出した状態となる。
【0073】
第1及び第2係合要素11,31の第1及び第2ピン12,32は、コイルスプリング17の弾性により、括れ部12d,32dが、挿通孔8a内でセットスプリング24に対し、スライド自在な状態で係合される。
【0074】
エアバッグモジュール3のホーンカバー5を押圧操作すると、コイルスプリング17が収縮する。これにより、エアバッグモジュール3が中央芯金部8へ接近し、図示しないホーン接点で導通してホーンが鳴動する。
【0075】
ホーンカバー5の押圧を解除すると、コイルスプリング17が伸長して復原する。これにより、ホーン接点の導通が断たれ、ホーンの鳴動が止まる。
【0076】
図7(A)に示したように、第2係合要素31の第2ピン32と第2ブッシュ33との間には、隙間D1が設けられる。
【0077】
本発明者の分析・検討によれば、隙間D1の寸法は、第2ブッシュ32の内周面全周に亘り、当該内周面と第2ピン32の外周面との間に、0.05mm以上かつ0.3mm以下で設定することが望ましい。
【0078】
この第2係合要素31の隙間D1により、図8に示したように、ステアリングホイール1に生じる低周波数の煽る態様の振動を、上記上下方向軸線Vに沿って第1係合要素11側へ向かう、転がり振動モードにすることができる。この転がり振動モードは、第1係合要素11によって効果的に制振できる。
【0079】
加えて、ステアリングホイール1側及びエアバッグモジュール3側両者の間に生じる、第2ピン32に沿う動きを、円滑に案内することができる。
【0080】
図7(B)に示したように、第1係合要素11の第1ピン12と第1ブッシュ18との間には隙間D2が設けられる。この隙間D2により、ステアリングホイール1側及びエアバッグモジュール3側両者の間に生じる、第1ピン12に沿う動きを円滑に案内することができる。
【0081】
この隙間D2の寸法も、第1ブッシュ18の内周面全周に亘り、当該内周面と第1ピン12の外周面との間に、0.05mm以上かつ0.3mm以下で設定することが望ましい。これにより、ステアリングホイール1側及びエアバッグモジュール3側の間に生じる、第1ピン12に沿うスムーズな動きを確保できる。
【0082】
本実施形態に係る車両のステアリングホイール装置にあっては、第1及び第2係合要素11,31の係合部12a,32aを、中央芯金部8に備えられる被係合部25に係合することで、ステアリングホイール1へのエアバッグモジュール3の取り付けを行うことができる。
【0083】
ステアリングホイール1の振動は、弾性部材14を備える第1係合要素11によって減衰することができる。
【0084】
エアバッグモジュール3をステアリングホイール1に係合によって取り付ける係合要素11,31のうち、第2係合要素31は、弾性部材14を備えることなく、かつ、部品数も少なく、従って構造が簡易でコスト削減できる安価な構成としている。他方、ステアリングホイール1に生じる低周波数の煽る態様の振動は、第1係合要素11によって十分かつ効果的に制振することができる。本実施形態によれば、第1係合要素11相当の部材をすべてに用いる場合に比して、振動減衰の確保とコスト削減の双方を達成することができる。
【0085】
第2係合要素1の第2ピン32と第2ブッシュ33との間に隙間D1を設けたことにより、第1係合要素11で減衰できる振動モードを作り出すことができ、ステアリングホイール1の振動を効果的に制振することができる。
【0086】
第2係合要素31は、金属製の第2ピン32と第2ブッシュ33で構成でき、第1係合要素11に比して構造が単純であり、かつ、第2ブッシュ33は汎用樹脂で成形でき、これにより、コストダウンを達成できる。
【0087】
ステアリングホイール1とエアバッグモジュール3との間に設けた第2弾性部材である伸縮自在なコイルスプリング17により、ホーン操作を確保することができる。
【0088】
図9及び図10には、上記実施形態で説明した第1及び第2係合要素11,31を採用した場合と、すべてを振動減衰パーツとした場合とで、エアバッグモジュール3のステアリングホイール1への組み付け状態に生じる相違が示されている。
【0089】
エアバッグモジュール3をステアリングホイール1に取り付けると、図9に矢印で示したように、エアバッグモジュール3が自重によって下方へ下がる(図中、Gは重心)。
【0090】
すなわち、ステアリングホイール1に取り付けたエアバッグモジュール3が水平である状態から、実装時の搭載角にすると、エアバッグモジュール3の取り付けは、ステアリングホイール1周りのガーニッシュ45に対する隙間Kが増えるように変化する。
【0091】
この隙間Kの変化量は、図10に示したように段差変化量(SAG)という。第1係合要素11のように振動減衰パーツとして機能される部材は、複数部品の組み付けで構成され、かつ弾性部材14を含む。このため、3つをすべて振動減衰パーツとしたとき、部品相互間の隙間や弾性部材14の撓み変形の累積により、水平状態から搭載角にエアバッグモジュール3の姿勢を変えたとき、一例として、0.60mmの段差変化量が生じた。
【0092】
第2係合要素31を2つ備えた本実施形態では、第2係合要素31が第2ピン12を第2ブッシュ33に組み付けただけの構造である。第2係合要素31には、第1係合要素11のように弾性部材14の撓みが生じることはなく、かつ部品数も少ないため、0.25mmの段差変化量に小さく抑えることができた。これにより、ガーニッシュ45に対する隙間Kの大きさの変化が小さくなり、ステアリングホイール1周りの意匠性を向上することができる。
【0093】
図11から図13には、上記実施形態の変形例が示されている。この変形例では、上述した第2係合要素31として、第2ピン12及び第2ブッシュ33を備えることに代えて、金属製の板バネ部材40を用いている。
【0094】
板バネ部材40は、長さ方向一端がエアバッグモジュール3のハウジング6にリベット等で接合され、長さ方向他端に、被係合部41と係合する係合部42を有している。係合部42には、合成樹脂製のインシュレータ43が設けられる。
【0095】
板バネ部材40は、板幅方向が上下方向に向けられ、板厚方向が左右方向に向くように設けられる。
【0096】
中央芯金部8の被係合部41は、挿通孔8a等からなる上記構成に代えて、爪状のフック部で構成される。
【0097】
板バネ部材40の係合部42は、被係合部41が差し入れられて係脱自在に係合する穴部で構成される。
【0098】
係合部42のインシュレータ43は図13(A)に示すように、被係合部41と係合する際に、当該被係合部41に摺接して係合を案内する。
【0099】
インシュレータ43は、図13(B)に示すように、上下方向軸線Vの方向に沿って起伏する隆起部43aを形成すれば、被係合部41に対し板バネ部材40が転がるように揺動できる。これにより、第1係合要素11に向かう上記転がり振動モードが生じて、効果的に制振することができる。
【0100】
この変形例では、上記実施形態の中空筒状の第2ブッシュ33を有する第2係合要素31の大きさに比し、左右方向が板バネ部材40の板厚程度と薄くできる。このため、エアバッグモジュール3に要する左右方向の寸法を小さくすることができ、幅狭なデザインに好ましく適用することができる。
【0101】
この変形例では、コイルスプリング17は、ステアリングホイール1とエアバッグモジュール3との間に、板バネ部材40と並列的に設けられる。
【0102】
以上に述べた車両のステアリングホイール装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0103】
1 ステアリングホイール
3 エアバッグモジュール
11 第1係合要素
12 第1ピン
12a,32a,42 係合部
14 弾性部材
17 コイルスプリング
18 第1ブッシュ
25,41 被係合部
31 第2係合要素
32 第2ピン
33 第2ブッシュ
40 板バネ部材
43 インシュレータ
C 操舵中心
D1 第2係合要素の第2ピンと第2ブッシュとの間の隙間
D2 第1係合要素の第1ピンと第1ブッシュとの間の隙間
H 左右方向軸線
V 上下方向軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13