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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】装着ヘッドメンテナンス装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022556868
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039448
(87)【国際公開番号】W WO2022085087
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松良 優香里
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 正隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大樹
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/180861(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179300(WO,A1)
【文献】特許第6122870(JP,B2)
【文献】特開平11-330799(JP,A)
【文献】特開2019-185214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着ノズル、および前記吸着ノズルを動作させる機構部を有する装着ヘッドを着脱可能に取り付けるヘッド取り付け部と、
取り付けられた前記装着ヘッドの機種情報に基づいて前記装着ヘッドの装置構成に関する構成情報を認識する第一認識動作、および、前記装着ヘッドの個体情報に基づいて前記装着ヘッドの性能に関する性能情報を認識する第二認識動作の少なくとも一方を行う認識部と、
前記構成情報および前記性能情報の少なくとも一方に基づいて、前記装着ヘッドに実施するメンテナンスの対象箇所および実施内容を決定する決定部と、
を備え
前記メンテナンスの前記対象箇所および前記実施内容は、前記装着ヘッドの性能試験、前記装着ヘッドに形成されて前記吸着ノズルに連通するエア通路の洗浄、前記装着ヘッドに設けられて前記吸着ノズルを撮像するカメラ装置の清掃、および前記装着ヘッドの前記機構部へのグリスの補給、の少なくとも一つを含み、
前記装着ヘッドに直接的に前記メンテナンスを実施する実施本体部と、前記実施本体部を移動させる駆動部と、前記機種情報および前記個体情報の少なくとも一方情報に基づいて前記駆動部を制御することにより前記実施本体部の位置を前記装着ヘッドに適合させる位置制御部とを有して、前記メンテナンスの少なくとも一つを実施するメンテナンス部をさらに備える、
装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項2】
吸着ノズル、および前記吸着ノズルを動作させる機構部を有する装着ヘッドを着脱可能に取り付けるヘッド取り付け部と、
取り付けられた前記装着ヘッドの機種情報に基づいて前記装着ヘッドの装置構成に関する構成情報を認識する第一認識動作、および、前記装着ヘッドの個体情報に基づいて前記装着ヘッドの性能に関する性能情報を認識する第二認識動作の少なくとも一方を行う認識部と、
前記構成情報および前記性能情報の少なくとも一方に基づいて、前記装着ヘッドに実施するメンテナンスの対象箇所および実施内容を決定する決定部と、
を備え
前記メンテナンスの前記対象箇所および前記実施内容は、前記装着ヘッドの性能試験、前記装着ヘッドに形成されて前記吸着ノズルに連通するエア通路の洗浄、前記装着ヘッドに設けられて前記吸着ノズルを撮像するカメラ装置の清掃、および前記装着ヘッドの前記機構部へのグリスの補給、の少なくとも一つを含み、
前記カメラ装置の清掃を実施するカメラ清掃装置を含んで構成され、前記メンテナンスの少なくとも一つを実施するメンテナンス部と、
前記カメラ清掃装置が清掃を実施した後、前記カメラ装置の撮像動作で得られる画像データに基づいて、清掃を実施した前記メンテナンスの良否を判定する清掃判定部と、をさらに備える
装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項3】
前記メンテナンス部は、前記カメラ装置の清掃を実施するカメラ清掃装置を含む、請求項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項4】
前記カメラ装置は、カメラ本体、前記吸着ノズルを照明する光源、および前記吸着ノズルと前記カメラ本体とを光学的に結ぶ光路を形成する光路形成部を有し、
前記カメラ清掃装置は、前記光源および前記光路形成部の少なくとも一方に付着した塵埃を除去する、
請求項2または3に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項5】
前記カメラ清掃装置は、前記塵埃を吹き飛ばすエアを噴射するエア噴射機構、および飛散する前記塵埃を吸引する塵埃吸引機構を有する、請求項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項6】
前記決定部は、実施する前記メンテナンスとして前記装着ヘッドの前記性能試験を決定し、前記メンテナンス部が前記性能試験を実施して得られる現有性能の試験結果に基づいて、実施する前記メンテナンスのその他の前記対象箇所および前記実施内容を決定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項7】
前記メンテナンス部は、前記機構部に前記グリスを補給する機構給油装置を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項8】
前記機構部は、前記吸着ノズルの軸周りの自転を駆動するギヤ機構を含み、
前記機構給油装置は、前記ギヤ機構の給油箇所を清掃する清掃部、および清掃された前記給油箇所に前記グリスを補給する給油部を有する、
請求項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項9】
前記機構給油装置は、
前記機種情報および前記個体情報の少なくとも一方情報に基づいて、前記グリスの種類が前記機構部に適合しているか否かを判定するグリス種判定部、または、
前記機種情報および前記個体情報の少なくとも一方情報に基づいて、前記機構部に適合する前記グリスの種類を自動選択するグリス種選択部を有する、
請求項7または8に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項10】
前記機構給油装置が前記グリスの補給を実施した後、前記装着ヘッドの前記性能試験を実施して得られる現有性能の試験結果に基づいて、前記グリスを補給した前記メンテナンスの良否を判定する給油判定部をさらに備える、請求項7~9のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項11】
前記構成情報は、前記装着ヘッドを構成する構成要素に推奨される前記メンテナンスの前記実施内容を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項12】
前記性能情報は、前記装着ヘッドの現有性能情報および稼働履歴情報の少なくとも一方を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項13】
前記ヘッド取り付け部は、前記装着ヘッドに設けられて前記機種情報および前記個体情報の少なくとも一方を記憶するヘッド内記憶部と、前記認識部とを通信接続する通信接続部を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【請求項14】
前記メンテナンス部が実施する前記メンテナンスの前記対象箇所、前記実施内容、実施結果、および終了時期の少なくとも一項目を通知する通知部をさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の装着ヘッドメンテナンス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、吸着ノズルを有して部品装着機に着脱可能に装備される装着ヘッドのメンテンナンスを実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、回路基板を量産する技術が普及している。対基板作業を実施する対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。多くの部品装着機は、吸着ノズルおよびエア通路を有する装着ヘッドを着脱可能に装備する。吸着ノズルが部品を吸着するときにエア通路は負圧とされるが、この負圧によって塵埃が混入する場合がある。混入する塵埃への対策として、例えば特許文献1に開示された装置により、装着ヘッドのメンテンナンスが実施される。
【0003】
特許文献1の装着ヘッド洗浄装置は、装着ヘッド内の負圧エア通路にエアあるいはオイルミストを供給して洗浄を行う。この装着ヘッド洗浄装置は、装着ヘッドを装着する個所に、部品装着機と共通のヘッドクランプ装置を備える。これによれば、装着ヘッド内を自動で洗浄することが可能となり、洗浄作業を簡単に、かつ短時間で行うことができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/153598号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の装置において、装着ヘッドの洗浄を自動化できる点は好ましい。しかしながら、装着ヘッドに必要とされるメンテンナンスは、エア通路の洗浄に限定されない。詳述すると、一部の装着ヘッドは、吸着ノズルを側方から撮像するカメラ装置を備えるが、経時使用による撮像性能の低下が懸念される。例えば、照明用の光源や光学系の部材に塵埃が付着すると、撮像画像の一部がぼけたり明度が低下したりするため、塵埃の除去が必要となる。また、多くの装着ヘッドは、吸着ノズルを回転駆動する機構部やその他の機構部を備える。これらの機構部については、定期的にグリスを補給するなどのメンテナンスが推奨されている。上記したカメラ装置や機構部のメンテナンスは、作業者によって実施されており、多くの人件費を要していた。
【0006】
また、実施すべきメンテンナンスの対象箇所および実施内容は、装着ヘッドの装置構成の違いや、装着ヘッドの性能の低下度合いなどに依存して変化する。従来、メンテンナンスの実施は、作業者の判断によって決定されていた。このため、メンテンナンスの実施品質を均質化することが難しかった。さらに、メンテナンスが遅れて生産に支障が生じる懸念や、不急のメンテナンスにより無駄な人件費が発生する懸念などもあった。
【0007】
本明細書では、装着ヘッドに実施するメンテナンスの対象箇所および実施内容を適正に決定することができる装着ヘッドメンテナンス装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、吸着ノズル、および前記吸着ノズルを動作させる機構部を有する装着ヘッドを着脱可能に取り付けるヘッド取り付け部と、取り付けられた前記装着ヘッドの機種情報に基づいて前記装着ヘッドの装置構成に関する構成情報を認識する第一認識動作、および、前記装着ヘッドの個体情報に基づいて前記装着ヘッドの性能に関する性能情報を認識する第二認識動作の少なくとも一方を行う認識部と、前記構成情報および前記性能情報の少なくとも一方に基づいて、前記装着ヘッドに実施するメンテナンスの対象箇所および実施内容を決定する決定部と、を備える装着ヘッドメンテナンス装置を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示する装着ヘッドメンテナンス装置において、決定部は、装着ヘッドの構成情報および性能情報の少なくとも一方に基づいて、装着ヘッドに実施するメンテナンスの対象箇所および実施内容を決定する。これによれば、決定部は、装着ヘッドを構成する構成要素の組み合わせや、構成要素に推奨されるメンテナンスの実施内容、装着ヘッドの性能の低下状況などに基づいて、メンテナンスの対象箇所および実施内容を適正に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】装着ヘッドを着脱可能に装備する部品装着機の全体構成を示す斜視図である。
図2】装着ヘッドおよび吸着ノズルの構成を模式的に示す側面断面図である。
図3】カメラ装置を有する装着ヘッドを下から見上げた平面図である。
図4】カメラ装置のカメラ本体および光路形成部の側面図である。
図5】第1実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置の外形を示す斜視図である。
図6】装着ヘッドメンテナンス装置の内部の斜視図である。
図7】装着ヘッドメンテナンス装置のヘッド取り付け部に装着ヘッドを取り付けた状態を示す側面図である。
図8】装着ヘッドメンテナンス装置の主要部の拡大斜視図である。
図9】装着ヘッドメンテナンス装置の制御に関する構成を示すブロック図である。
図10】装着ヘッドメンテナンス装置の動作を説明する動作フローの図である。
図11】カメラ清掃装置の動作状況を表す部分拡大正面図である。
図12】第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置の主要部の拡大斜視図である。
図13】第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置の制御に関する構成を示すブロック図である。
図14】第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置の動作を説明する動作フローの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.部品装着機9の全体構成
まず、装着ヘッド8を着脱可能に装備する部品装着機9の全体構成について、図1を参考にして説明する。図1の左上から右下に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、左下(前側)から右上(後側)に向かう方向がY軸方向、鉛直方向がZ軸方向である。部品装着機9は、部品の装着作業を繰り返して実施する。部品装着機9は、基板搬送装置92、部品供給装置93、部品移載装置94、部品カメラ95、および図略の制御装置などで構成される。
【0012】
基板搬送装置92は、第1ガイドレール921および第2ガイドレール922、一対のコンベアベルト、ならびにクランプ装置923などで構成される。第1ガイドレール921および第2ガイドレール922は、基台91の上部中央を横断してX軸方向に延在し、かつ互いに離隔して平行に配置される。第1ガイドレール921および第2ガイドレール922に沿い、一対のコンベアベルトが設けられる。一対のコンベアベルトは、コンベア搬送面に基板Kを戴置した状態で輪転して、基台91の中央に設定された装着実施位置に基板Kを搬入および搬出する。また、コンベアベルトの下方にクランプ装置923が設けられる。クランプ装置923は、基板Kを複数の押し上げピンで押し上げて水平姿勢でクランプし、装着実施位置に位置決めする。
【0013】
部品供給装置93は、部品装着機9の前部に着脱可能に装備される。部品供給装置93は、デバイスパレット935上に複数のフィーダ装置931が列設されて構成される。フィーダ装置931は、本体932と、本体932の後側に設けられた供給リール933と、本体932の前端上部に設けられた部品取り出し部934とを備える。供給リール933には、多数の部品が所定ピッチで封入されたキャリアテープが巻回保持される。このキャリアテープが所定ピッチで送り出されると、部品は、封入状態を解除されて部品取り出し部934に順次送り込まれる。
【0014】
部品移載装置94は、一対のY軸レール941、Y軸移動台942、Y軸モータ943、X軸移動台944、X軸モータ945、および装着ヘッド8などで構成される。一対のY軸レール941は、基台91の後側から前側の部品供給装置93の上方にかけて配置される。Y軸移動台942は、一対のY軸レール941に装架されている。Y軸移動台942は、Y軸モータ943からボールねじ機構を介して駆動され、Y軸方向に移動する。X軸移動台944は、Y軸移動台942に装架されている。X軸移動台944は、X軸モータ945からボールねじ機構を介して駆動され、X軸方向に移動する。装着ヘッド8は、X軸移動台944の前側のクランプ機構に着脱可能に装備される。
【0015】
装着ヘッド8は、ロータリツール81を下側に有する。ロータリツール81は、R軸モータ82によって回転駆動される。図1には省略されているが、ロータリツール81の下側に、複数の吸着ノズル83が環状に配置される。マークカメラ949は、X軸移動台944の下側に設けられ、ロータリツール81に並んで配置される。マークカメラ949は、位置決めされた基板Kに付設された位置マークを撮像して、基板Kの正確な装着実施位置を検出する。
【0016】
部品カメラ95は、基板搬送装置92と部品供給装置93との間の基台91の上面に、上向きに設けられている。部品カメラ95は、装着ヘッド8の複数本の吸着ノズル83が部品取り出し部934で部品を吸着して基板Kに移動する途中の状態を撮影する。これにより、部品カメラ95は、複数本の吸着ノズル83にそれぞれ保持された部品を一括して撮像できる。取得された画像データの画像処理によって、部品の有無や正誤が確認されるとともに、吸着姿勢が取得される。
【0017】
制御装置は、基板Kの種類ごとのジョブデータを保持して、装着作業を制御する。ジョブデータは、装着作業の詳細な手順や方法などを記述したデータである。制御装置は、基板搬送装置92、部品供給装置93、部品移載装置94、および部品カメラ95に各種の指令を送信する。また、制御装置は、これらの装置から動作状況に関する情報を受信する。制御装置は、単一のコンピュータ装置で構成されてもよく、複数のコンピュータ装置に機能分散されて構成されてもよい。
【0018】
2.吸着ノズル83および装着ヘッド8の構成
次に、吸着ノズル83および装着ヘッド8の詳細な構成について、図2図4を参考にして説明する。図2に示されるように、ロータリツール81の中心から離れた円周上に等間隔で、複数のノズル保持部811が設けられる。ノズル保持部811は、上下方向に延在する円柱状の内部空間によって形成される。ノズル保持部811は、吸着ノズル83を着脱可能に、かつ回転動作可能および昇降動作可能に保持する。
【0019】
吸着ノズル83は、ノズル本体部831、ノズル先端部837、および付勢ばね83Aなどで構成される。ノズル本体部831は、上下方向に長いシリンジ形状を有し、ノズル保持部811の内部に挿入されて取り付けられる。ノズル本体部831の外周面と、ノズル保持部811の内周面との間は、気密構造とされている。ノズル本体部831は、軸方向流路832、径方向流路833、外周流路834、および先端保持空間835を有する。軸方向流路832は、ノズル本体部831の中心に形成されて、上下方向に延在する。径方向流路833は、径方向に形成されて、軸方向流路832の上部からノズル本体部831の外周面に連通する。
【0020】
外周流路834は、ノズル本体部831の外周の一部分が縮径されて形成される。外周流路834は、径方向流路833に連通しつつ、ノズル本体部831の外周において上下方向および周方向に拡がっている。先端保持空間835は、軸方向流路832の下側に連通して形成される。先端保持空間835は、軸方向流路832よりも大径の空間であり、下方に開口している。ノズル本体部831は、先端保持空間835の内側面から外周面に開口する昇降規制窓836をもつ。
【0021】
ノズル先端部837は、先端保持空間835の内部に、気密を確保しつつ昇降可能に設けられる。ノズル先端部837は、円筒状の部材で形成され、その外径が先端保持空間835の内径に略等しい。ノズル先端部837は、下方に進むにつれて徐々に縮径されつつ下方に開口する開口部838を下側に有する。吸着する部品の様々な大きさに対応するために、開口部838の開口面積が相違する複数種類の吸着ノズル83が用いられる。
【0022】
ノズル先端部837の途中高さに、エアの流れを妨げない支持板839が設けられる。支持板839は、水平方向に配置され、その端部が昇降規制窓836に係入している。支持板839とノズル本体部831の間に、付勢ばね83Aが設けられる。付勢ばね83Aは、ノズル本体部831を基準にして、ノズル先端部837を下方に付勢する。したがって、通常時に、ノズル先端部837は、支持板839が昇降規制窓836の下面に接する高さに維持される。
【0023】
ここで、装着ヘッド8の前側および後側の2箇所に、吸着ノズル83が昇降動作するノズル動作位置が設定されている。ノズル動作位置の上方には、Z軸モータ84が設けられる。ロータリツール81の回転によってノズル動作位置にセットされた吸着ノズル83は、Z軸モータ84に駆動されて、ノズル保持部811の中を昇降する。
【0024】
さらに、吸着ノズル83の上部には、Q軸ギヤ機構85が設けられる。Q軸ギヤ機構85は、吸着ノズル83の軸周りの自転を駆動する。Q軸ギヤ機構85は、複数のシリンジギヤ851およびQ軸駆動ギヤ852で構成される。シリンジギヤ851は、吸着ノズル83の各々の上部に配置される。シリンジギヤ851は、吸着ノズル83と共に回転する。また、吸着ノズル83が昇降しても、シリンジギヤ851の高さは変わらない。
【0025】
Q軸駆動ギヤ852は、ロータリツール81に回転可能に支持される。Q軸駆動ギヤ852は、シリンジギヤ851よりも歯数が多い大径に形成され、全部のシリンジギヤ851に噛合する。Q軸駆動ギヤ852は、Q軸モータ86によって回転駆動され、シリンジギヤ851に回転を伝達する。これにより、吸着ノズル83は、ノズル保持部811の中で自転する。Q軸ギヤ機構85は、定期的にグリスを補給する給油メンテナンスを実施することが好ましい対象箇所である。なお、装着ヘッド8の側板は、装着ヘッド8の側面の半ばから上を覆い、下部を覆っていない。したがって、給油メンテナンスは、Q軸ギヤ機構85の側方から実施することができる。
【0026】
一方、ロータリツール81には、吸着ノズル83ごとにエア通路812およびメカバルブ813が設けられる。エア通路812は、X軸移動台944と、複数の吸着ノズル83の外周流路834を連通する。エア通路812は、X軸移動台944から選択的に供給される負圧または正圧のエアを吸着ノズル83に供給する。外周流路834が上下方向および周方向に拡がっているので、吸着ノズル83が昇降しまた自転しても、エア通路812と外周流路834の連通が維持される。
【0027】
メカバルブ813は、エア通路812の開閉をメカニカルに行う。メカバルブ813は、エア通路812を遮断しつつ上下方向に延在し、昇降可能に設けられる。メカバルブ813は、昇降駆動される係合部814を上部に有し、エア通路812を連通させる開口部815を下方寄りに有する。メカバルブ813は、図略の摩擦力保持機構を備えており、重力や振動などの影響が抑制される。これにより、メカバルブ813は、図2に示されるように、通常時に安定して下側に位置し、エア通路812を閉止する。
【0028】
メカバルブ813は、ステッピングモータ87によって係合部814が引き上げられる。これにより、メカバルブ813の全体が上昇して、開口部815がエア通路812に重なり、エア通路812は開操作される。なお、メカバルブ813は、ノズル動作位置にある場合に開閉操作が可能となり、ノズル動作位置以外では常に閉じた状態となる。エア通路812は、負圧によって混入する塵埃を除去する洗浄メンテナンスを実施することが好ましい対象箇所である。塵埃は、部品装着機9の機外から侵入するとは限らず、部品供給装置93が使用する紙製のキャリアテープなどからも発生し得る。
【0029】
また、図3および図4に示されるように、装着ヘッド8の下側に、カメラ装置88が設けられる。カメラ装置88は、ノズル動作位置にある2本の吸着ノズル83Zを撮像対象とせず、その両隣に位置する4本の吸着ノズル83Yを撮像対象とする。カメラ装置88は、4本の吸着ノズル83Yを側方から同時に撮像して、一つの画像データを取得する。カメラ装置88は、吸着ノズル83Yが部品を吸着しているか否かを確認し、さらには部品の吸着姿勢を確認する目的で設けられる。カメラ装置88は、カメラ本体89、光源8A、背景部材8B、および光路形成部8Cなどで構成される。
【0030】
カメラ本体89は、装着ヘッド8の下側のロータリツール81よりも前側に配置される。カメラ本体89は、下向きで撮像動作を行い、4本の吸着ノズル83Yが写る画像を取得する。光源8Aは、カメラ本体89が撮像動作を行う際に、吸着ノズル83Yを照明する。光源8Aは、例えば複数のLEDランプで構成され、吸着ノズル83Yの各々に近接して4セットが設けられる。
【0031】
背景部材8Bは、円柱状に形成され、ロータリツール81の下側の中央に配置される。背景部材8Bは、円筒状の外周面で紫外線を吸収して可視光を放射する。背景部材8Bは、画像内で吸着ノズル83Yの背景となる。これにより、吸着ノズル83Yの画像が背景部材8Bから際立つので、後の画像処理の精度が向上する。
【0032】
光路形成部8Cは、4本の吸着ノズル83Yとカメラ本体89とを光学的に結ぶ光路を形成する。光路形成部8Cは、3個の対物ミラー8C1、8C2、8C3の4セット、2個のサイドプリズム8C4、2個の第一サイドミラー8C5、2個の第二サイドミラー8C6、中央プリズム8C7、および中央ミラー8C8で構成される。6種類のミラー(8C1、8C2、8C3、8C5、8C6、8C8)は、吸着ノズル83Yの画像を反射する。サイドプリズム8C4および中央プリズム8C7は、左右両側から入射する二つの吸着ノズル83Yの画像を90°だけ屈折させつつ反射させて、二つの画像の光路を平行させる。
【0033】
カメラ本体89に近い側の吸着ノズル83Yの画像は、図3および図4に一点鎖線で示される光路8D1を経由して、カメラ本体89に入射する。カメラ本体89から離れた側の吸着ノズル83Yの画像は、破線で示される光路8D2を経由して、カメラ本体89に入射する。光路8D1および光路8D2は、吸着ノズル83Yを始点とし、それぞれ3個の対物ミラー8C1、8C2、8C3で順番に反射され、サイドプリズム8C4に入射する。サイドプリズム8C4で平行になった光路8D1および光路8D2は、第一サイドミラー8C5、第二サイドミラー8C6、中央プリズム8C7、および中央ミラー8C8で順番に反射され、終点のカメラ本体89に達する。なお、図3の下側半分に例示された光路8D1および光路8D2は、上側半分にも同様に存在する。
【0034】
光源8Aおよび光路形成部8Cでは、静電気が発生したりして塵埃が付着することがある。これにより、カメラ装置88の撮像性能が低下する。したがって、光源8Aおよび光路形成部8Cは、塵埃などを除去する清掃メンテナンスを実施することが好ましい対象箇所である。なお、装着ヘッド8の機種に依存して、光源8Aおよび光路形成部8Cの配置位置は、多少変化する。また、カメラ装置88を備えない装着ヘッド8もある。
【0035】
カメラ装置88は、自身の撮像性能の良否を判定する撮像性能試験の機能を有する。具体的に、カメラ装置88は、試験的に撮像を行って画像データを取得する。カメラ装置88は、次に、画像データに画像処理を施して、撮像性能の良否を判定する。例えば、画像データの全領域における平均輝度が所定値以下である場合や、局所的な暗所がある場合に、カメラ装置88の現有の撮像性能が不良と判定される。この場合、カメラ装置88の清掃メンテナンスを実施することが好ましい。なお、画像データの画像処理は、カメラ装置88と別体のデータ処理部などが担当してもよい。
【0036】
3.第1実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1の構成
次に、第1実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1の構成について、図5図9を参考にして説明する。装着ヘッドメンテナンス装置1は、装着ヘッド8のメンテナンスの対象箇所および実施内容として、次の1)~3)を実施する。
1)装着ヘッド8の性能試験
2)エア通路812の洗浄
3)カメラ装置88の清掃
【0037】
図5に示されるように、装着ヘッドメンテナンス装置1は、箱形状のフレーム11を用いて形成される。フレーム11の下側には複数のキャスタ12が設けられており、装着ヘッドメンテナンス装置1は、移動が可能である。フレーム11の前面の上部に、扉13が設けられる。扉13は、透明な樹脂で形成され、フレーム11内が目視されるようになっている。装着ヘッド8は、扉13が開けられてフレーム11内に持ち込まれる。扉13の上側に、操作部14および表示部15が設けられる。操作部14および表示部15は、マンマシンインターフェース部の役割を果たす。
【0038】
図6には、装着ヘッドメンテナンス装置1からフレーム11を取り外した状態の概ね上半分が示されている。フレーム11の内部の略中間高さに、架台16が水平に架け渡される。架台16の後部に支柱17が立てて設けられる。装着ヘッドメンテナンス装置1は、ヘッド取り付け部2、エア通路洗浄装置3、カメラ清掃装置4、および装置制御部7(図9参照)などで構成される。
【0039】
ヘッド取り付け部2は、支柱17の上部に設けられる。ヘッド取り付け部2は、前側の上下にクランプ機構21を有し、前側上部から前方に延びた先に電気接続部22を有する。クランプ機構21は、X軸移動台944に設けられたクランプ機構と同一の構成を有する。したがって、装着ヘッド8は、X軸移動台944への取り付け作業と同じ要領でヘッド取り付け部2に取り付けられる。図6および図7において、既に装着ヘッド8が取り付けられている。
【0040】
装着ヘッド8が取り付けられるとき、電気接続部22に対して、装着ヘッド8の上面のコネクタ8Gが嵌合される。これにより、図9に示されるように、装着ヘッド8内のヘッド制御部8Hと、装置制御部7との間が通信接続される。つまり、電気接続部22およびコネクタ8Gは、ヘッド内記憶部8Jと認識部71とを通信接続する通信接続部の役割を果たす。また、装着ヘッド8がヘッド取り付け部2に取り付けられた状態で、図7に示されるように、装着ヘッド8内のエア通路812は、エア通路洗浄装置3に連通される。
【0041】
エア通路洗浄装置3は、エア通路812を洗浄するメンテナンスを実施するメンテナンス部の一形態である。図7に示されるように、エア通路洗浄装置3は、圧力源31、エアセンサ32、および外部エア通路33で構成され、さらに、後述する塵埃吸引機構54を利用する。圧力源31は、支柱17の内部空間に配置されている。外部エア通路33は、エア通路812と圧力源31を連通する。エアセンサ32は、外部エア通路33の途中に設けられる。なお、エア通路洗浄装置3の一部が、架台16の下側に配置されてもよい。
【0042】
エア通路812の洗浄メンテナンスでは、ノズル保持部811から吸着ノズル83が取り外され、メカバルブ813は開かれる。そして、圧力源31は、正圧のエアを外部エア通路33からエア通路812に送り込む。これにより、エア通路812内の塵埃は、ノズル保持部811から外へ排出される。排出されて飛散する塵埃は、塵埃吸引機構54に吸引されて捕捉される。
【0043】
また、エア通路洗浄装置3は、装着ヘッド8の性能試験の一項目である吸着性能試験を実施する機能を有する。吸着性能試験は、例えば、メカバルブ813の開閉状態の切り換え、圧力源31の正圧および負圧の切り換えや圧力値の変更、ならびに吸着ノズル83の取り換えなどが組み合わされて実施される。このとき、エアセンサ32は、流れるエアの流量および圧力の少なくとも一方を検出する。そして、検出された流量や圧力に基づいて、吸着性能の良否が判定される。エア通路812の洗浄メンテナンスや吸着性能試験は、複数の吸着ノズル83の各々に対し、繰り返して実施される。
【0044】
なお、吸着性能試験では、装着ヘッド8に内蔵されたエアセンサが利用されてもよい。また、エア通路洗浄装置3は、吸着性能試験を実施するために、吸着ノズル83に代えてノズル保持部811に連通する試験機材を用いてもよい。試験機材は、作業者によって着脱され、または、後述する実施本体部5に装備される。試験機材の構成およびこれを用いた試験方法の詳細は、例えば、特許文献1に開示されている。試験機材を用いることにより、吸着性能試験の試験精度が向上する。
【0045】
カメラ清掃装置4は、カメラ装置88を清掃するメンテナンスを実施するメンテナンス部の一形態である。カメラ清掃装置4は、実施本体部5、駆動部6、ならびに装置制御部7内の位置制御部73および清掃判定部74などで構成される。駆動部6は、実施本体部5を水平二方向に駆動する。図8に示されるように、駆動部6は、一対の前後方向レール61、前後移動体62、前後駆動部63、一対の左右方向レール64、左右移動体65、および左右駆動部66で構成される。
【0046】
一対の前後方向レール61は、架台16の上面に設けられ、前後方向に延在し、左右に離隔して配置される。前後移動体62は、一対の前後方向レール61に移動可能に装架される。前後移動体62は、底板621、後板622、および係合部623で構成される。底板621は、矩形板状であり、前後方向レール61の上に接して配置される。後板622は、底板621の後部に起立して設けられる。係合部623は、底板621の右側に設けられる。前後駆動部63は、前後移動体62を前後方向に駆動する。前後駆動部63は、側板631、前後駆動モータ632、駆動スプロケット633、従動スプロケット634、および駆動ベルト635で構成される。
【0047】
側板631は、架台16の上面の右寄りに設けられ、前後方向に延在する。前後駆動モータ632は、側板631の後部に設けられる。駆動スプロケット633は、前後駆動モータ632の出力軸に取り付けられる。従動スプロケット634は、側板631の前部に回動可能に設けられる。駆動ベルト635は、駆動スプロケット633と従動スプロケット634の間に架け渡される。駆動ベルト635の一箇所に、前後移動体62の係合部623が係合される。位置制御部73によって前後駆動モータ632が回転制御されると、駆動スプロケット633が回転し、駆動ベルト635が輪転して係合部623を前後方向に駆動する。これにより、前後移動体62は、左右移動体65および実施本体部5と一緒に前後方向に移動する。
【0048】
一対の左右方向レール64は、前後移動体62の底板621の上面に設けられ、左右方向に延在し、前後に離隔して配置される。左右移動体65は、一対の左右方向レール64に移動可能に装架される。左右移動体65は、矩形板状であり、左右方向レール64の上に接して配置される。左右移動体65は、右側の後寄りに起立する係合部651をもつ。左右駆動部66は、左右移動体65を左右方向に駆動する。左右駆動部66は、前後移動体62の後板622に設けられる。左右駆動部66は、左右駆動モータ662、駆動スプロケット663、従動スプロケット664、および駆動ベルト665で構成される。
【0049】
左右駆動モータ662は、後板622の右寄りに設けけられる。駆動スプロケット663は、左右駆動モータ662の出力軸に取り付けられる。従動スプロケット664は、後板622の左寄りに回動可能に設けられる。駆動ベルト665は、駆動スプロケット663と従動スプロケット664の間に架け渡される。駆動ベルト665の一箇所に、左右移動体65の係合部651が係合される。位置制御部73により左右駆動モータ662が回転制御されると、駆動スプロケット663が回転し、駆動ベルト665が輪転して係合部651を左右方向に駆動する。これにより、左右移動体65は、実施本体部5と一緒に左右方向に移動する。
【0050】
実施本体部5は、左右移動体65に設けられている。したがって、実施本体部5は、前後駆動モータ632によって前後方向に駆動され、左右駆動モータ662によって左右方向に駆動される。また、水平二方向に移動する実施本体部5に対して、符号略の可撓性ケーブルから電源が供給される。
【0051】
実施本体部5は、装着ヘッド8に直接的にメンテナンスを実施する部位である。実施本体部5は、後板51、本体52、エア噴射機構53、および塵埃吸引機構54などで構成される。後板51は、左右移動体65の後部に起立して設けられる。本体52は、概ね箱形状であり、後板51の上部に固定される。
【0052】
エア噴射機構53は、一対の噴射口531および吐出ポンプ532で構成される。一対の噴射口531は、本体52の上部に設けられる。一対の噴射口531は、離隔して向かい合うとともに、水平方向よりもやや斜め上方を向いて配置される。吐出ポンプ532は、本体52の内部に設けられている。吐出ポンプ532は、図略のチューブを経由して一対の噴射口531に正圧のエアを供給する。これにより、噴射口531は、カメラ装置88の光源8Aや光路形成部8Cに向かってエアを噴射し、付着した塵埃を吹き飛ばす。
【0053】
塵埃吸引機構54は、回収容器541および吸引ポンプ542で構成される。回収容器541は、上方に開口する円筒状に形成されている。回収容器541は、本体52の上部に設けられ、一対の噴射口531に近接して配置される。吸引ポンプ542は、本体52の内部に設けられ、図略のチューブを経由して回収容器541内のエアを吸引する。したがって、エア噴射機構53により吹き飛ばされて飛散する塵埃は、エアとともに回収容器541へと吸引される。
【0054】
吸引されて捕捉された塵埃は、本体52の内部に蓄積される。本体52の下部521は、着脱金具522を用いて着脱されるようになっている。作業者は、下部521を取り外して、蓄積された塵埃を取り出すことができる。さらに、下部521の取り外しにより、吐出ポンプ532および吸引ポンプ542の点検ができるようになっている。
【0055】
4.装着ヘッドメンテナンス装置1の制御に関する構成
次に、装着ヘッドメンテナンス装置1の制御に関する構成について説明する。図9に示されるように、装着ヘッドメンテナンス装置1は、装置制御部7を備える。装置制御部7は、図5に示される操作部14および表示部15に接続されている。装置制御部7は、エア通路洗浄装置3の圧力源31を制御するとともに、エアセンサ32の検出信号を取得する。さらに、装置制御部7は、駆動部6の前後駆動モータ632および左右駆動モータ662を制御する。さらに、装置制御部7は、実施本体部5の吐出ポンプ532および吸引ポンプ542を制御する。
【0056】
また、前述したように、装着ヘッド8がヘッド取り付け部2に取り付けられるとき、ヘッド制御部8Hと装置制御部7との間が通信接続される。ヘッド制御部8Hは、R軸モータ82、Z軸モータ84、Q軸モータ86、およびステッピングモータ87を制御する。また、ヘッド制御部8Hは、機種情報および個体情報の少なくとも一方情報をヘッド内記憶部8Jに記憶する。機種情報は、装着ヘッド8の機種を特定する情報であり、例えば、型式情報と主要な仕様情報の組み合わせで表される。個体情報は、装着ヘッド8の個体を特定する情報であり、例えば、個体識別コードで表される。
【0057】
さらに、装置制御部7は、上位のホスト管理装置7Xに通信接続される。ホスト管理装置7Xは、データベース7Yを用いて複数の装着ヘッド8の使用等を管理する。データベース7Yは、装着ヘッド8の機種情報に対応付けられる機種別詳細情報を記憶する。機種別詳細情報は、装着ヘッド8の構成要素に関する構成情報、および、構成要素の各々に推奨されるメンテナンスの実施内容に関する情報を含む。
【0058】
また、データベース7Yは、装着ヘッド8の個体情報に対応付けられる個体別詳細情報を記憶する。個体別詳細情報は、装着ヘッド8の性能に関する情報を含み、具体的には、性能情報および稼働履歴情報を含む。性能情報は、過去に実施された性能試験の試験結果などの情報である。最も新しい性能情報は、現有性能情報に相当する。稼働履歴情報は、過去に使用した吸着ノズル83の使用回数、装着作業の実施回数、装着作業に成功した装着成功率、稼働延べ時間、過去のメンテナンスの実施時期および実施内容などの情報を含む。
【0059】
さらに、装置制御部7は、装着ヘッドメンテナンス装置1の動作を制御する六つの制御機能部、すなわち、認識部71、決定部72、位置制御部73、清掃判定部74、通知部75、および機構性能試験部76を備える。認識部71は、ヘッド取り付け部2に取り付けられた装着ヘッド8の機種情報および個体情報の少なくとも一方を取得する。さらに、認識部71は、機種情報に基づいて装着ヘッド83の装置構成に関する構成情報を認識する第一認識動作、および、個体情報に基づいて装着ヘッド83の性能に関する性能情報を認識する第二認識動作の少なくとも一方を行う。本第1実施形態において、認識部71は、第一認識動作および第二認識動作の両方を行う。
【0060】
決定部72は、構成情報および性能情報の少なくとも一方に基づいて、装着ヘッド8に実施するメンテナンスの対象箇所および実施内容を決定する。また、決定部72は、実施するメンテナンスとして装着ヘッド8の性能試験を決定し、性能試験を実施して得られる現有性能の試験結果に基づいて、実施するメンテナンスのその他の対象箇所および実施内容を決定してもよい。
【0061】
位置制御部73は、機種情報および個体情報の少なくとも一方情報に基づいて、駆動部6を制御することにより、実施本体部5の位置を装着ヘッド8に適合させる。清掃判定部74は、カメラ清掃装置4が清掃を実施した後、カメラ装置88の撮像動作で得られる画像データに基づいて、清掃を実施したメンテナンスの良否を判定する。通知部75は、メンテナンス部(エア通路洗浄装置3、カメラ清掃装置4)が実施するメンテナンスの対象箇所、実施内容、実施結果、および終了時期の少なくとも一項目を通知する。
【0062】
機構性能試験部76は、装着ヘッド8のQ軸ギヤ機構85を始めとする機構部の機構性能試験を実施する機能を有する。具体的に、機構性能試験部76は、ヘッド制御部8Hに指令を発して、R軸モータ82、Z軸モータ84、Q軸モータ86、およびステッピングモータ87を試験的に動作させ、流れる電流を測定する。さらに、機構性能試験部76は、電流の大きさをトルク値に換算して判定トルク値と比較したり、電流波形の変歪を検定したりして、良否を判定する。上述した各制御機能部の機能については、次の動作の説明の中でも述べる。
【0063】
5.装着ヘッドメンテナンス装置1の動作
次に、装着ヘッドメンテナンス装置1の動作について、図10の動作フローを参考にして説明する。図10の動作フローは、主に装置制御部7によって進められ、一部が作業者、ヘッド制御部8H、およびホスト管理装置7Xによって行われる。図10のステップS1で、装着ヘッド8のメンテナンスの必要性が発生する。メンテナンスの必要性は、装着ヘッド8の動作異常、装着ヘッド8の性能低下、および作業者からの要請のいずれかで発生する。
【0064】
装着ヘッド8の動作異常は、例えば、カメラ装置88や機構部等の不具合により発生し、装着作業の継続が困難となる。装着ヘッド8の性能低下では、例えば、吸着ノズル83の装着成功率が低下するなど装着作業を継続することはできても、作業品質が低下する。作業者からの要請は、例えば、定期的に行うメンテナンスの実施推奨時期が到来したときに発生する。
【0065】
次のステップS2で、作業者は、メンテナンスの対象となる装着ヘッド8をヘッド取り付け部2に取り付ける。次のステップS3で、認識部71は、ヘッド内記憶部8Jに記憶されている機種情報および個体情報をヘッド制御部8Hから取得し、認識する。さらに、認識部71は、取得した機種情報および個体情報をホスト管理装置7Xに照会して、機種別詳細情報および個体別詳細情報を取得し、認識する。
【0066】
次のステップS4で、決定部72は、装着ヘッド8の性能試験を実施して、現有性能の試験結果を取得する。本第1実施形態では、吸着性能試験、撮像性能試験、および機構性能試験が実施される。次のステップS5で、決定部72は、ステップS3で取得した各種の情報、およびステップS4で取得した現有性能の試験結果に基づいて、メンテナンスの要否を判定する。なお、作業者が操作部14から特定のメンテナンスを要求した場合、決定部72は、この要求を受け入れてメンテナンスが必要と判定する。
【0067】
メンテナンスが必要でない場合のステップS6で、通知部75は、メンテナンスが不要であることを表示部15に表示して、作業者に通知する。メンテナンスが必要である場合のステップS7で、決定部72は、メンテナンスの対象箇所および実施内容を決定する。例えば、個体別詳細情報に含まれる稼働履歴情報で装着ヘッド8の装着成功率が低下していた場合、エア通路812およびカメラ装置88が原因箇所の候補に挙げられる。したがって、決定部72は、エア通路812の洗浄、およびカメラ装置88の清掃を実施すると決定する。
【0068】
また、機種別詳細情報に含まれる構成情報により、装着ヘッド8がカメラ装置88を備えない構成であると判明した場合、決定部72は、カメラ装置88の清掃を無条件で除外する。さらに、機種別詳細情報で、Q軸ギヤ機構85へのグリスの補給(給油)が1ケ月間隔と推奨されている場合を想定する。この場合、決定部72は、個体別詳細情報に含まれる前回の給油の実施日を調査し、1ケ月以上経過していれば給油を実施すると決定し、1ケ月未満の経過であれば給油を不要とする。また、カメラ装置88による撮像性能試験が不良であったとき、決定部72は、カメラ装置88の清掃を実施すると決定する。決定部72は、上記した以外にも様々な決定ロジックを用いることができる。
【0069】
なお、装着ヘッドメンテナンス装置1は、グリスを補給する給油メンテナンスの機能を有さない。したがって、決定部72が給油を実施すると決定したとき、通知部75は、給油メンテナンスが必要であることを表示部15に表示して、作業者に実施を依頼する。以降では、カメラ装置88の清掃を実施する場合を例にして説明を続ける。
【0070】
ステップS8で、装置制御部7は、カメラ装置88の清掃を実施する。詳述すると、まず、位置制御部73は、装着ヘッド8の機種情報に基づいて、目標とする光源8Aおよび光路形成部8Cの正確な位置を取得する。位置制御部73は、次に、前後駆動モータ632および左右駆動モータ662を制御して、実施本体部5の位置を装着ヘッド8に適合させる。すると、図11に示されるように、一対の噴射口531は、光源8Aおよび光路形成部8Cに対向して位置する。なお、図11において、エア通路812を洗浄するために既に吸着ノズル83が取り外されており、カメラ装置88の清掃にも好適な状態となっている。
【0071】
次に、装置制御部7は、吐出ポンプ532を動作させて、正圧のエアを噴射口531に供給する。これにより、矢印M1に示されるように、噴射口531は、光源8Aや光路形成部8Cに向かってエアを噴射し、付着した塵埃を吹き飛ばす。さらに、装置制御部7は、吐出ポンプ532と同時に吸引ポンプ542を動作させる。したがって、吹き飛ばされて飛散する塵埃は、破線矢印M2に示されるように、近辺のエアとともに回収容器541へと吸引される。
【0072】
次のステップS9で、清掃判定部74は、カメラ装置88を駆動して撮像性能試験を実施し、ステップS8で実施した清掃メンテナンスの良否を判定する。撮像性能が良好でない場合、動作フローの実行はステップS8に戻される。2回目のステップS8で、装置制御部7は、2回目のカメラ装置88の清掃を実施する。1回目または2回目以降のステップS9で、撮像性能が良好である場合、動作フローの実行は、ステップS10に進められる。
【0073】
なお、ステップS8で清掃を繰り返す上限回数が設定されている。上限回数までの清掃の後にステップS9で不良と判定された場合、通知部75は、撮像性能を良好にできなかった旨を表示部15に表示する。この後、動作フローの実行は、ステップS10に進められる。
【0074】
ステップS6またはステップS9から合流するステップS10で、通知部75は、メンテナンスの対象箇所、実施内容、実施結果、および終了時期の少なくとも一項目を通知する。具体的に、通知部75は、カメラ清掃装置4を用いてカメラ装置88を清掃したこと、清掃の繰り返し数、最終的に得られた現有の撮像性能、および終了時刻などを表示部15に表示して、作業者に通知する。
【0075】
なお、通知部75は、ブザーや表示灯、作業者が携帯する通信端末への電子メール送信などの手段により、メンテナンスが終了したことを通知してもよい。また、通知部75は、随時、ステップS3からステップS9までの進捗状況を表示部15に表示するようにしてもよい。これらの通知により、作業者は、他の作業と並行して装着ヘッド8のメンテナンスを効率的に行える。この後、作業者は、ヘッド取り付け部2から装着ヘッド8を取り外す。これで、1個の装着ヘッド8に対するメンテナンスが終了する。
【0076】
第1実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1において、決定部72は、装着ヘッド8の構成情報および性能情報の少なくとも一方に基づいて、装着ヘッド8に実施するメンテナンスの対象箇所および実施内容を決定する。これによれば、決定部72は、装着ヘッド8を構成する構成要素の組み合わせや、構成要素に推奨されるメンテナンスの実施内容、装着ヘッド8の性能の低下状況などに基づいて、メンテナンスの対象箇所および実施内容を適正に決定することができる。
【0077】
さらに、メンテナンスの要否や実施内容などが客観的に決定されるとともに、メンテナンスが自動で実施されるので、メンテナンスの実施品質が均質化される。加えて、エア通路812の洗浄作業やカメラ装置88の清掃作業が自動で実施されるので、省力化が実現される。
【0078】
6.第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1Aの構成
次に、第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1Aの構成について、図12を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1Aは、装着ヘッド8のメンテナンスの対象箇所および実施内容として、次の1)、2)、4)を実施する。
1)装着ヘッド8の性能試験
2)エア通路812の洗浄
4)Q軸ギヤ機構85へのグリスの補給(給油)
【0079】
第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1Aの外観は、図5に示される第1実施形態の外観と同じである。装着ヘッドメンテナンス装置1Aは、架台16の上面に、カメラ清掃装置4に代えて機構給油装置4Aを備える。機構給油装置4Aは、機構部(Q軸ギヤ機構85)にグリスを補給するメンテナンスを実施するメンテナンス部の一形態である。機構給油装置4Aは、実施本体部5Aおよび駆動部6Aを備える。
【0080】
駆動部6Aは、実施本体部5Aを水平二方向だけでなく上下方向にも駆動する。駆動部6Aは、水平二方向の駆動を行う第1実施形態と同じ構成(ただし寸法諸元は相違する)を有する。すなわち、駆動部6Aは、一対の前後方向レール61、前後移動体62、前後駆動部63、一対の左右方向レール64、左右移動体65、および左右駆動部66を有する。
【0081】
駆動部6Aは、さらに、一対の昇降レール67、昇降移動体68、および昇降駆動部を有する。一対の昇降レール67は、起立した左右移動体65の側面に設けられ、上下方向に延在し、前後に離隔して配置される。前側の昇降レール67は短く、後側の昇降レール(図12では見えない)は長い。昇降移動体68は、一対の昇降レール67に係合して、昇降可能かつ脱落不能に設けられる。昇降移動体68は、後側の昇降レールに係合する部分が縦長で、前側の昇降レール67に係合する部分が短く、概ねL字形状の板材で形成される。
【0082】
昇降駆動部は、前後駆動部63や左右駆動部66と同様の構成が上下方向に配置されて構成される。すなわち、昇降駆動部は、昇降駆動モータ692、駆動スプロケット、従動スプロケット、および駆動ベルトで構成される。図12において、昇降駆動モータ692が示されている。一方、駆動スプロケット、従動スプロケット、および駆動ベルトは、昇降移動体68に隠れて見えない。昇降移動体68は、その一箇所が駆動ベルトに係合されて、昇降駆動される。
【0083】
実施本体部5Aは、昇降移動体68の上部の後側(図12では右側)に設けられている。したがって、実施本体部5Aは、前後駆動部63、左右駆動部66、および昇降駆動部によって三方向に駆動される。また、三方向に移動する実施本体部5Aに対して、可撓性ケーブル699から電源が供給される。
【0084】
実施本体部5Aは、装着ヘッド8に直接的にメンテナンスを実施する部位である。実施本体部5Aは、取り付け座55、清掃部56、給油部57、およびグリスセンサ58を有する。取り付け座55は、傾斜した上面をもつ板形状に形成されている。取り付け座55は、2組のビスおよびナットによって、昇降移動体68の上部の後側に固定される。
【0085】
取り付け座55の上面の前側に清掃部56が傾斜して配置される。清掃部56は、伸長可能および軸周りに回動可能な棒状の清掃部材561を有する。清掃部材561は、給油箇所の清掃に適したブラシまたは拭き取り材をその先端にもつ。
【0086】
取り付け座55の上面の後側に給油部57が傾斜して配置される。給油部57は、グリスを収納したグリス容器571を交換可能に保持する。グリス容器571は、透明な樹脂を用いて圧縮変形可能なシリンジ形状に形成されており、先端に給油口をもつ。装着ヘッド8の機種に依存して使用するグリスの種類が相違するため、グリス容器571は、グリス種ごとにそれぞれ用意される。給油部57は、グリス容器571を圧縮変形させる給油駆動部572を有する。給油駆動部572の動作により、グリス容器571は、圧縮されて、給油口からグリスを吐出する。これにより、機構給油装置4Aは、グリスの補給を実施することができる。
【0087】
さらに、グリス容器571に近接して、グリスセンサ58が設けられる。グリスセンサ58は、透明なグリス容器571を透かして見たグリスの色の違い、および濃さ(透明度)の違いの少なくとも一方を検出する。これによりグリスの種類の判別が可能となる。
【0088】
7.第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1Aの制御の構成および動作
次に、第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1Aの制御の構成について、図13を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態において、装置制御部7Aは、駆動部6Aの前後駆動モータ632、左右駆動モータ662、および昇降駆動モータ692を制御する。さらに、装置制御部7Aは、実施本体部5Aの清掃部材561および給油駆動部572を制御するとともに、グリスセンサ58の検出信号を取得する。また、装置制御部7Aは、機構給油装置4Aを構成するグリス種判定部77および給油判定部78を備え、清掃判定部74を備えない。
【0089】
グリス種判定部77は、機種情報および個体情報の少なくとも一方情報に基づいて、グリスの種類が機構部(Q軸ギヤ機構85)に適合しているか否かを判定する。給油判定部78は、機構給油装置4Aがグリスの補給を実施した後、装着ヘッド8の機構性能試験を実施して得られる現有性能の試験結果に基づいて、グリスを補給したメンテナンスの良否を判定する。
【0090】
次に、装着ヘッドメンテナンス装置1Aの動作について、図14の動作フローを参考にして説明する。図14の動作フローは、主に装置制御部7Aによって進められ、一部が作業者、ヘッド制御部8H、およびホスト管理装置7Xによって行われる。図14のステップS1~ステップS6までの動作は、概ね第1実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0091】
メンテナンスが必要である場合のステップS7で、決定部72は、メンテナンスの対象箇所および実施内容を決定する。ここで、装着ヘッドメンテナンス装置1Aは、カメラ装置88を清掃する清掃メンテナンスの機能を有さない。したがって、決定部72がカメラ装置88の清掃を実施すると決定したとき、通知部75は、清掃メンテナンスが必要であることを表示部15に表示して、作業者に実施を依頼する。以降では、Q軸ギヤ機構85へのグリスの補給を実施する場合を例にして説明を続ける。
【0092】
ステップS7に続くステップS11で、グリスセンサ58は、グリスの種類を検出して、検出結果をグリス種判定部77に伝送する。次のステップS12で、グリス種判定部77は、グリスの種類が適合しているか否かを判定する。詳述すると、グリス種判定部77は、ステップS3で既に、機種別詳細情報に含まれるQ軸ギヤ機構85の構造、およびQ軸ギヤ機構85に適合するグリス種の情報を取得済みである。したがって、グリス種判定部77は、取得済みのグリス種の情報とグリスセンサ58の検出結果を比較して判定を行うことができる。
【0093】
グリス種が適合していない場合のステップS13で、グリス種判定部77は、グリス容器571の交換が必要であることを表示部15に表示して待機する。表示を見た作業者は、正しいグリス容器571に交換した後、操作部14にリスタート指令を入力する。リスタート指令を受け付けたグリス種判定部77は、動作フローの実行をステップS12に戻す。
【0094】
グリス種が適合している場合のステップS14で、清掃部56は、給油箇所を清掃する。詳述すると、給油箇所は、例えば、Q軸ギヤ機構85を構成するシリンジギヤ851に定められる。この場合、給油箇所の箇所数は、吸着ノズル83の本数に一致する。また、周方向に隣り合うシリンジギヤ851の間に所定の間隔があって、Q軸駆動ギヤ852へ直接的に給油できる場合もある。この場合、給油箇所の箇所数は、吸着ノズル83の本数よりも多くなる。
【0095】
給油箇所の清掃について詳述すると、まず、位置制御部73は、装着ヘッド8の機種別詳細情報に基づいて、目標とするシリンジギヤ851の正確な位置を取得する。位置制御部73は、次に、駆動部6Aを制御し、実施本体部5Aの位置を三方向に移動させて装着ヘッド8に適合させる。すると、清掃部56は、給油箇所となるシリンジギヤ851に対向して位置する。次に、清掃部56の清掃部材561は、伸長して先端のブラシまたは拭き取り材をシリンジギヤ851に押し当てるとともに、軸周りに回動して清掃を実施する。この後、清掃部材561が短縮されて、清掃が終了する。
【0096】
次のステップS15で、給油部57は、給油箇所にグリスを補給する。詳述すると、まず、位置制御部73は、駆動部6Aを制御して、実施本体部5Aの位置を再調整する。すると、給油部57は、清掃済みのシリンジギヤ851に対向して位置する。このとき、グリス容器571の先端の給油口は、シリンジギヤ851に接触し、または接近する。
【0097】
次に、給油部57の給油駆動部572の動作により、グリス容器571は、グリスを給油口からシリンジギヤ851に向けて吐出する。これにより、機構給油装置4Aは、シリンジギヤ851にグリスの補給を実施することができる。なお、Q軸駆動ギヤ852へ給油する場合には、清掃部56および給油部57の位置が若干変更制御される。
【0098】
次のステップS16で、装置制御部7Aは、ヘッド制御部8Hに指令を発して、ロータリツール81を所定角度だけ回転させる。所定角度の回転により、次の給油箇所が清掃部56および給油部57に対向配置される。次のステップS17で、ロータリツール81が1回転したか否かが判定される。1回転していない場合、未給油の給油箇所が残されており、動作フローの実行はステップS14に戻される。
【0099】
ステップS14~ステップS17で構成される繰り返しループは、給油箇所の箇所数に相当する回数だけ繰り返される。これにより、全ての給油箇所への給油メンテナンスが実施される。このとき、ロータリツール81がちょうど1回転するので、動作フローの実行がステップS18に進められる。
【0100】
ステップS18で、給油判定部78は、機構性能試験部76を起動して、装着ヘッド8の機構性能試験を実施する。このとき、Q軸ギヤ機構85に関連する試験については、事前に慣らし動作を行い、補給したグリスをQ軸ギヤ機構85の全体に行き渡らせる。給油判定部78は、機構性能試験で得られる現有性能の試験結果に基づいて、グリスを補給したメンテナンスの良否を判定する。ただし、給油判定部78は、不良と判定しても、再度の給油を行わない。その理由は、過剰なグリスの基板への落下などのおそれが生じることに因る。
【0101】
ステップS6またはステップS18から合流するステップS19で、通知部75は、メンテナンスの対象箇所、実施内容、実施結果、および終了時期の少なくとも一項目を通知する。具体的に、通知部75は、機構給油装置4Aを用いてQ軸ギヤ機構85にグリスを補給したこと、最終的に得られた機構性能、および終了時刻などを表示部15に表示する。この後、作業者は、ヘッド取り付け部2から装着ヘッド8を取り外す。これで、1個の装着ヘッド8に対するメンテナンスが終了する。
【0102】
第2実施形態の装着ヘッドメンテナンス装置1Aにおいて、第1実施形態と同様、決定部72は、メンテナンスの対象箇所および実施内容を適正に決定することができる。さらに、第1実施形態と同様、メンテナンスの実施品質が均質化される。加えて、Q軸ギヤ機構85へのグリスの補給が自動で実施されるので、省力化が実現される。
【0103】
8.実施形態の応用および変形
なお、第1実施形態の実施本体部5の本体52に、第2実施形態の清掃部56および給油部57を追加装備して装着ヘッドメンテナンス装置を構成することができる。この装着ヘッドメンテナンス装置は、3)カメラ装置88の清掃、および、4)Q軸ギヤ機構85へのグリスの補給の両方を実施することができる。また、第1実施形態のカメラ清掃装置4は、静電気を放電させつつ塵埃を拭き取る方式の装置であってもよい。さらに、第1実施形態において、駆動部6は、第2実施形態の昇降駆動部を有して、実施本体部5の高さ調整を可能としてもよい。
【0104】
また、第1および第2実施形態の動作フローにおいて、ステップS5の性能試験を省略することが可能である。この場合のステップS6で、決定部72は、ステップS3で取得した各種情報に基づいて、メンテナンスの対象箇所および実施内容を決定する。性能試験の試験結果が無くとも、決定部72は、装着ヘッド8の装置構成や推奨されるメンテナンスの情報、および稼働履歴情報などを参照して、メンテナンスの対象箇所および実施内容を適正に決定することができる。
【0105】
また、第2実施形態において、給油部57が複数種類のグリス容器571を保持するとともに、装置制御部7A内のグリス種判定部77に代えてグリス種選択部を有する構成を採用することができる。グリス種選択部は、機種情報および個体情報の少なくとも一方情報に基づいて、機構部に適合するグリスの種類を自動選択する。これによれば、ステップS13でグリス容器571を交換する手間が省略される。さらに、給油の対象箇所は、Q軸ギヤ機構85に限定されず、吸着ノズル83とノズル保持部811の間の摺動面や、R軸モータ82およびZ軸モータ84に連結された機構部などを含んでもよい。第1および第2実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0106】
1、1A:装着ヘッドメンテナンス装置 2:ヘッド取り付け部 21:クランプ機構 22:電気接続部 3:エア通路洗浄装置 31:圧力源 32:エアセンサ 33:外部エア通路 4:カメラ清掃装置 5、5A:実施本体部 52:本体 53:エア噴射機構 531:噴射口 532:吐出ポンプ 54:塵埃吸引機構 541:回収容器 542:吸引ポンプ 56:清掃部 57:給油部 571:グリス容器 58:グリスセンサ 6、6A:駆動部 61:前後方向レール 62:前後移動体 63:前後駆動部 64:左右方向レール 65:左右移動体 66:左右駆動部 67:昇降レール 68:昇降移動体 7、7A:装置制御部 71:認識部 72:決定部 73:位置制御部 74:清掃判定部 75:通知部 76:機構性能試験部 77:グリス種判定部 78:給油判定部 7X:ホスト管理装置 8:装着ヘッド 81:ロータリツール 83、83Y、83Z:吸着ノズル 85:Q軸ギヤ機構 851:シリンジギヤ 852:Q軸駆動ギヤ 88:カメラ装置 89:カメラ本体 8A:光源 8C:光路形成部 8G:コネクタ 8H:ヘッド制御部 8J:ヘッド内記憶部 9:部品装着機
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