(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】歩行者保護用エアバッグ装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/36 20110101AFI20231226BHJP
【FI】
B60R21/36 320
B60R21/36 351
B60R21/36 352
(21)【出願番号】P 2022558980
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2021037748
(87)【国際公開番号】W WO2022091770
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2020179225
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】塙 晃史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤志
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151203(JP,A)
【文献】特開2014-196064(JP,A)
【文献】特開2007-216938(JP,A)
【文献】特開2015-044508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0010045(US,A1)
【文献】特開2015-168389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張ガスを供給するインフレータと、前記膨張ガスによって膨張・展開することで車両に衝突した歩行者を保護するエアバッグとを備えた歩行者保護用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、ウィンドシールドの下縁近傍において車両の幅方向に延びるセンターチャンバと、当該センターチャンバの左右両端部から少なくともAピラーに沿って上方に延びるサイドチャンバとを含み、
前記インフレータから供給されたガスが前記センターチャンバから前記サイドチャンバに流れるように構成され、
前記エアバッグの収容状態において、前記サイドチャンバが前記センターチャンバ側に折り返されて重ね合わされる折返し部が形成され、
前記折返し部の近傍に、前記センターチャンバと前記サイドチャンバとを仕切るための左右一対の仕切りパネルが設けられ、
前記一対の仕切りパネルの各々には、前記サイドチャンバから前記センターチャンバへのガスの逆流を阻止する逆止弁が設けられ
、
前記エアバッグは、当該エアバッグの内部において前記センターチャンバの長手方向に沿って延び、展開時のエアバッグの厚みを規制可能な横テザーと、前記横テザーと概ね直交する方向に延びる縦テザーと、を更に備えたことを特徴とする歩行者保護用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記一対の仕切りパネルは、前記横テザーの左右両端近傍に各々配置されることを特徴とする請求項
1に記載の歩行者保護用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記縦テザーは、前記センターチャンバ及び前記サイドチャンバの内部に複数も受けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行者保護用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記インフレータは複数設けられ、当該複数のインフレータは前記センターチャンバ内において左右方向に一列に並ぶように配置、収容されることを特徴とする請求項
1,2又は3に記載の歩行者保護用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記折返し部で前記サイドチャンバを折り返した時に、左右一対の前記サイドチャンバの端部同士が重なるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
4の何れか1項に記載の歩行者保護用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグは、前記センターチャンバに相当する部分をロール状にした後に、前記折返し部付近で左右両側の前記サイドチャンバを中心側に向かって折り返すように構成されていることを特徴とする請求項1乃至
5の何れか1項に記載の歩行者保護用エアバッグ装置。
【請求項7】
請求項1に記載の歩行者保護用エアバッグ装置の製造方法であって、
ウィンドシールドの下縁近傍において車両の幅方向に延びるセンターチャンバと、当該センターチャンバの左右両端部から少なくともAピラーに沿って上方に延びるサイドチャンバとを含み、前記インフレータから供給されたガスが前記センターチャンバから前記サイドチャンバに流れるように構成されたエアバッグを準備する工程と、
前記エアバッグの前記サイドチャンバと前記センターチャンバとの間に折返し部を設定する工程と、
前記折返し部の近傍に、前記センターチャンバと前記サイドチャンバとを仕切るための左右一対の仕切りパネルを設ける工程と、
前記折返し部で前記サイドチャンバを前記センターチャンバ側に折り返して重ね合わせる工程と、を含むことを特徴とする歩行者保護用エアバッグ装置の製造方法。
【請求項8】
前記エアバッグは、前記センターチャンバに相当する部分をロール状にした後に、前記折返し部付近で左右両側の前記サイドチャンバを中心側に向かって折り返すことを特徴とする請求項7に記載の歩行者保護用エアバッグ装置の製造方法。
【請求項9】
前記一対のサイドチャンバの端部同士が重なるように、当該サイドチャンバを折り返すことを特徴とする請求項8に記載の歩行者保護用エアバッグ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に衝突した歩行者及びサイクリストを保護する歩行者保護用エアバッグ装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故発生時に乗員を保護するために、1つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグとしては、例えば、自動車のステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、更には、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネルとの間で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。また、車両に衝突した歩行者やサイクリスト(自転車に乗っている人)を保護する歩行者保護用エアバッグがある。
【0003】
歩行者保護用エアバッグ装置は、車両のボンネットとフロントガラスとの境界部付近で横方向(車両幅方向)に延びるセンターチャンバと、Aピラーを覆うようにセンターチャンバの左右端部から上方に向かって展開するサイドチャンバとを備えたものがある。このような構造のエアバッグ装置は、エアバッグの形状が概ねU字状になるため、エアバッグが展開した時にサイドチャンバが左右に揺動して(バタついて)しまう場合がある。すなわち、エアバッグの展開挙動が安定せずに、速やか且つ的確に歩行者(又はサイクリスト)を保護することが困難となっていた。
【0004】
そこで、例えば特許文献1のように、センターチャンバとサイドチャンバとをストラップで連結したものが提案されている。しかしながら、当該車両と衝突した歩行者やサイクリストの頚部にストラップが引っ掛かってしまう恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、安全な手法でエアバッグの展開挙動を安定させることが可能な歩行者保護用エアバッグ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、膨張ガスを供給するインフレータと、前記膨張ガスによって膨張・展開することで車両に衝突した歩行者を保護するエアバッグとを備えた歩行者保護用エアバッグ装置であって、前記エアバッグは、ウィンドシールドの下縁近傍において車両の幅方向に延びるセンターチャンバと、当該センターチャンバの左右両端部から少なくともAピラーに沿って上方に延びるサイドチャンバとを含む。前記インフレータから供給されたガスが前記センターチャンバから前記サイドチャンバに流れるように構成される。前記エアバッグの収容状態において、前記サイドチャンバが前記センターチャンバ側に折り返されて重ね合わされる折返し部が形成される。前記折返し部の近傍に、前記センターチャンバと前記サイドチャンバとを仕切るための左右一対の仕切りパネルが設けられる。そして、前記一対の仕切りパネルの各々には、前記サイドチャンバから前記センターチャンバへのガスの逆流を阻止する逆止弁が設けられる。
【0008】
ここで、本発明の保護対象とするのは、「歩行者」のみならず、自転車に乗っている人(サイクリスト)を含むものである。
また、「ウィンドシールド」は、フロントガラスと言うこともある。「サイドチャンバが少なくともAピラーに沿って上方に延びる」とあるが、サイドチャンバがAピラーを覆う領域だけでなく、センターチャンバとの連結部付近では車両幅方向に延びる部分を含むことができる。
【0009】
本発明においては、センターチャンバとサイドチャンバとの折返し部付近に逆止弁を有する仕切りパネルを設けると共に、当該折返し部付近でサイドチャンバをセンターチャンバ側(中心方向)に向かって折り畳む構成であるため、エアバッグが展開を開始すると、最初にセンターチャンバが前後方向(縦方向)に膨張・展開することになる。このとき、サイドチャンバは折り畳まれた状態を維持している。その後、センターチャンバからの膨張ガスが仕切りパネルの逆止弁からサイドチャンバ側に流入して、折り畳まれた部分が解かれて、サイドチャンバが展開することになる。なお、サイドチャンバに流入したガスは逆止弁の作用によりセンターチャンバ側に逆流することはない。以上のように、本発明においては、最初にセンターチャンバによって安定した基礎が構築され、その後にサイドチャンバが展開するため、エアバッグ(特にサイドチャンバ)の展開挙動が安定することになる。
【0010】
前記インフレータは、前記センターチャンバ内の左右中心付近に配置、収容することができる。あるいは、前記インフレータを複数設け、当該複数のインフレータを前記センターチャンバ内において左右方向に一列に並ぶように配置、収容することができる。
【0011】
前記折返し部で前記サイドチャンバを折り返した時に、左右一対の前記サイドチャンバの端部同士が重なるように構成することができる。
【0012】
前記エアバッグは、前記センターチャンバに相当する部分をロール状にした後に、前記折返し部付近で左右両側の前記サイドチャンバを中心側に向かって折り畳むように構成することができる。
【0013】
前記エアバッグは、当該エアバッグの内部において前記センターチャンバの長手方向に沿って延び、展開時のエアバッグの厚みを規制可能な横テザーを備え、前記一対の前記仕切りパネルは、前記横テザーの左右両端近傍に各々配置されるように構成することができる。
【0014】
上記のように横テザーの存在により、センターチャンバの左右幅方向(横方向)の展開形状が安定し、その結果、センターチャンバに続いて展開するサイドチャンバの展開挙動が安定することになる。
【0015】
本発明の他の態様は、膨張ガスを供給するインフレータと、前記膨張ガスによって膨張・展開することで車両に衝突した歩行者を保護するエアバッグとを備えた歩行者保護用エアバッグ装置の製造方法である。前記エアバッグは、 ウィンドシールドの下縁近傍において車両の幅方向に延びるセンターチャンバと、当該センターチャンバの左右両端部から少なくともAピラーに沿って上方に延びるサイドチャンバとを含み、前記インフレータから供給されたガスが前記センターチャンバから前記サイドチャンバに流れるように構成される。そして、本発明に係る方法は、前記エアバッグの前記サイドチャンバと前記センターチャンバとの間に折返し部を設定する工程と、前記折返し部の近傍に、前記センターチャンバと前記サイドチャンバとを仕切るための左右一対の仕切りパネルを設ける工程と、前記折返し部で前記サイドチャンバを前記センターチャンバ側に折り返して重ね合わせる工程と、を含む。
【0016】
なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向(車両の進行方向)を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を「右方向」、乗員の左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」又は「左右幅方向」と言う。更に、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の頭部方向を「上方」、乗員の腰部方向を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明に係る歩行者保護用エアバッグ装置の作動時(展開時)の状態を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る歩行者保護用エアバッグ装置の構造を示す平面図である。
【
図3】
図3(A)は
図2のA-A方向の断面図、
図3(B)は同図(A)のB-B方向の断面図である。
【
図4】
図4(A)、(B)は、本発明に係る歩行者保護用エアバッグ装置の製造方法(エアバッグの圧縮方法)を示す平面図である。
【
図5】
図5(A)、(B)は、本発明に係る歩行者保護用エアバッグ装置の製造方法(エアバッグの圧縮方法)を示す平面図である。
【
図6】
図6(A)、(B)は、本発明に係る歩行者保護用エアバッグの展開挙動を示す説明図(平面図)である。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施例に係る歩行者保護用エアバッグ装置を示すものであり、(A)がエアバッグを広げた状態を示す平面図、(B)がエアバッグを圧縮した後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係るサイドエアバッグ装置について、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る歩行者保護用エアバッグ装置1の作動時(展開時)の状態を示す説明図である。
図2は、本発明に係る歩行者保護用エアバッグ装置1の構造を示す平面図である。
図3(A)は
図2のA-A方向の断面図、
図3(B)は同図(A)のB-B方向の断面図である。
【0019】
本発明に係る歩行者保護用エアバッグ装置1は、膨張ガスを供給するインフレータ20(
図2)と、膨張ガスによって膨張・展開することで車両に衝突した歩行者を保護するエアバッグ10とを備えている。エアバッグ10は、ウィンドシールド4の下縁近傍において車両の幅方向に延びるセンターチャンバ12Cと、当該センターチャンバ12Cの左右両端部から少なくともAピラーに沿って上方に延びるサイドチャンバ12R,12Lとを含む。そして、インフレータ20から供給されたガスがセンターチャンバ12Cからサイドチャンバ12R,12Lに流れるように構成されている。
【0020】
後に詳細に説明するが、サイドチャンバ12R,12Lは、センターチャンバ12Cとの折返し部16R,16L付近で当該センターチャンバ12C側(中心側)に折り返されて重ね合わされるように構成される。そして、センターチャンバ12Cとサイドチャンバ12R,12Lとの折返し部16L,16R付近には、センターチャンバ12Cとサイドチャンバ12R,12Lとを仕切るための左右一対の仕切りパネル26R,26Lが設けられ、仕切りパネル26R,26Lには、サイドチャンバ12R,12Lからセンターチャンバ12Cへのガスの逆流を阻止する逆止弁(30,32)が設けられている。
【0021】
図2に示すように、センターチャンバ12C及びサイドチャンバ12R,12Lの内部には、前後方向に延びる複数の縦テザー24が設けられており、展開したエアバッグ10の厚みを規制可能になっている。縦テザー24は、エアバッグ10を成形する表裏2枚のパネルの間を連結するように縫製されており、その途中に膨張ガスが通るための開口(図示せず)が形成されている。なお、符号28は表裏2枚のパネルを直接連結する縫製部である。
【0022】
センターチャンバ12Cの内部には、また、センターチャンバ12Cの長手方向(左右方向)に沿って延び、展開時のエアバッグ10の厚みを規制可能な横テザー22を備えている。横テザー22も、縦テザー24と同様に、エアバッグ10を成形する表裏2枚のパネルの間を連結するように縫製されており、その途中に膨張ガスが通るための開口(図示せず)が形成されている。横テザー22をインフレータ20に比較的近い位置に配置することにより、インフレータ20から放出されたガスが左右方向に速やかに流れ、センターチャンバ12Cの左右幅方向が早めに決まることになり、エアバッグ10の展開挙動の安定に寄与することになる。
【0023】
図2に示すように、左右一対の仕切りパネル26R,26Lは、横テザー22の左右両端近傍に各々配置される。
【0024】
インフレータ20は、シリンダ状のインフレータであり、センターチャンバ12C内の左右幅方向の中心付近に収容される。
【0025】
図3(A),(B)は、仕切りパネル26L周辺の構造を示す。なお、仕切りパネル26Rも同様の構造であるため、仕切りパネル26Lのみについて説明する。また、仕切りパネル26Lを他の構成と明確に区別するためにハッチングを入れて示している。仕切りパネル26Lの中心付近には、ガスが通過するための開口30が形成され、その開口30をサイドパネル12側から覆うように柔軟な膜(メンブレン)32が設けられている。これら開口30と膜32によって逆止弁が構成される。
【0026】
(エアバッグ装置の製造方法)
図4(A)、(B)及び
図5(A)、(B)は、本発明に係る歩行者保護用エアバッグ装置1の製造工程(エアバッグ10の圧縮工程)を示す平面図である。本発明におけるエアバッグ10を
図2の状態から折り畳んで圧縮する際には、まず、
図4(A)に示すように、エアバッグ10の前側の部分を縦方向(前後方向)に折り畳む。
【0027】
次に、
図4(B)に示すように、エアバッグ10の前側の部分を後方に向かって縦方向(前後方向)にロールする。
【0028】
次に、
図5(A)に示すように、更に、エアバッグ10をロールすると共に、サイドチャンバ12R,12Lの上端部を下方(前方)に向かって折り畳む。
【0029】
その後、
図5(B)に示すように、仕切りパネル26R,26Lに対応する箇所を折返し部(16L,16R)にして、サイドチャンバ12R,12Lに対応する部分をセンターチャンバ2C側(中心側)に向かって折り返すことで、最終的な収容状態となる。
【0030】
(本発明の作用効果:エアバッグの展開挙動)
図6(A)、(B)は、本発明に係る歩行者保護用エアバッグの展開挙動を示す説明図(平面図)である。エアバッグ10が展開を開始すると、
図6(A)に示すように、最初にセンターチャンバ12Cの部分のみが膨張・展開する。本発明においては、センターチャンバ12Cとサイドチャンバ12R,12Lとの折返し部16L,16R付近に逆止弁(30,32)を有する仕切りパネル26R,26Lを設けると共に、当該折返し部付近でサイドチャンバ12R,12Lをセンターチャンバ12C側(中心方向)に向かって折り返す構成であるため、エアバッグ10が展開を開始すると、最初にセンターチャンバ12Cが前後方向(縦方向)に膨張・展開することになる。このとき、サイドチャンバ12R,12Lは折り畳まれた状態を維持している。
【0031】
その後、センターチャンバ12Cからの膨張ガスが仕切りパネル26R,26Lの逆止弁(30,32)からサイドチャンバ12R,12L側に流入し、
図6(B)に示すように、折り畳まれた部分が解かれて、サイドチャンバ12R,12Lが展開することになる。なお、サイドチャンバ12R,12Lに流入したガスは逆止弁(30,32)の作用によりセンターチャンバ12C側に逆流することはない。
【0032】
以上のように、本発明においては、最初にセンターチャンバ12Cによって安定した基礎が構築され、その後にサイドチャンバ12R,12Lが展開する構造となっているため、エアバッグ10(特に、サイドチャンバ12R,12L)の展開挙動が安定することになる。
【0033】
また、横テザー22の存在により、センターチャンバ12Cの左右幅方向(横方向)の展開形状が安定し、その結果、センターチャンバ12Cに続いて展開するサイドチャンバ12R,12Lの展開挙動が安定することになる。
【0034】
(本発明の他の実施例例)
図7は、本発明の他の実施例に係る歩行者保護用エアバッグ装置101を示すものであり、(A)がエアバッグ110を広げた状態を示す平面図、(B)がエアバッグ110を圧縮した後の状態を示す断面図である。なお、上述した実施例と同一又は同様の構成要素については同一の参照符号を付し、重複した説明は省略する。
【0035】
本実施例に係るエアバッグ装置101においては、エアバッグ110のセンターチャンバ102Cの内部に2本のインフレータ120a,120bを収容している。2本のインフレータ120a,120bは、センターチャンバ102C内において左右方向に一列に並ぶように配置、収容される。
【0036】
以上、本発明について実施例を参照して説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更可能なものである。