(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】サーマルストリッピング尿素プラント及びプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 273/04 20060101AFI20231226BHJP
C07C 275/00 20060101ALI20231226BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20231226BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C07C273/04
C07C275/00
B01D19/00 F
B01D3/14 A
(21)【出願番号】P 2022576856
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 NL2021050395
(87)【国際公開番号】W WO2021261999
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-13
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512061836
【氏名又は名称】スタミカーボン・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルムス・ヒューベルテュス・ヘールツ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0116743(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0322000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルストリッピング型の尿素製造プラント(UPP)で実行される尿素製造プロセスであって、前記プラントが、高圧(HP)合成セクション(HPS)と、第1及び第2の中圧(MP)回収セクション(MPR1、MPR2)と、を備え、
前記HP合成セクションが、HP反応帯(HPR)と、前記サーマルストリッピング型(HPSt)のHPストリッパーと、HPカルバメート凝縮器(HPCC)と、分離器(HPLS)と、を備え、前記HPストリッパー(HPSt)が、前記第1のMP回収セクション(MPR1)に接続されたストリッピングされた尿素溶液のための出口と、前記HPカルバメート凝縮器(HPCC)に接続された気体のための出口と、を有し、
前記
尿素製造プロセスが、
-前記反応帯(HPR)からの反応混合物(1)を、前記分離器(HPLS)内で高圧下で、第1の流れ(S1)及び第2の流れ(S2)に分離する
プロセスであって、前記第1の流れ及び前記第2の流れが、両方とも、尿素を含有する液相を含有する、分離する
プロセスと、
-前記第1の流れ(S1)を、少なくとも部分的に前記HPストリッパー(HPSt)に供給する
プロセスと、
-前記第2の流れ(S2)を、少なくとも部分的に前記第2の中圧回収セクション(MPR2)に供給する
プロセスと、を含み、
前記第1の流れ(S1)が、前記第2の流れ(S2)よりも低い重量密度を有し、前記第1の流れが、前記第2の流れ(S2)よりも高いアンモニア濃度を有するアンモニアに富む第1の流れ(S1)であ
り、高圧(HP)は、少なくとも100baraであり、中圧(MP)は、10bara~60baraである、尿素製造プロセス。
【請求項2】
前記
尿素製造プロセスが、
-前記分離器(HPLS)内で前記第2の流れ(S2)を脱気する
プロセスと、
-前記脱気された第2の流れのN/C比を測定する
プロセスと、
-前記脱気された第2の流れを前記HPストリッパー(HPSt)を迂回する前記第2のMP回収セクション(MPR2)に供給する
プロセスと、を含
み、前記N/C比は、NH
3
対CO
2
のモル比である、請求項1に記載の尿素製造プロセス。
【請求項3】
前記第1のMP回収セクション(MPR1)が、第1のMP分解器(MPD1)と、第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC1)と、中圧分離カラム(MPSC)と、アンモニア凝縮器(AC)と、を備え、前記ストリッピングされた尿素溶液(2)が、前記第1のMP分解器(MPD)内で分解に供されて、MP尿素溶液(7)及び気体流れ(18)がもたらされ、前記気体流れ(18)が、前記第1のMPカルバメート凝縮器内で凝縮に供され、前記第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC1)からの流れ(19)が、前記中圧分離カラム(MPSC)内で分離されて、MPカルバメート溶液(8)及びアンモニア含有気体流れ(21)がもたらされ、前記アンモニア含有気体流れ(21)が、前記アンモニア凝縮器(AC)内で凝縮に供されて、アンモニア凝縮物流れ(22)がもたらされる、請求項1又は2に記載の尿素製造プロセス。
【請求項4】
サーマルストリッピング型の尿素製造プラント(UPP)で実行される尿素製造プロセスであって、前記プラントが、高圧(HP)合成セクション(HPS)と、第1及び第2の中圧(MP)回収セクション(MPR1、MPR2)と、を備え、
前記HP合成セクションが、HP反応帯(HPR)と、前記サーマルストリッピング型(HPSt)のHPストリッパーと、HPカルバメート凝縮器(HPCC)と、分離器(HPLS)と、を備え、前記HPストリッパー(HPSt)が、前記第1のMP回収セクション(MPR1)に接続されたストリッピングされた尿素溶液のための出口と、前記HPカルバメート凝縮器(HPCC)に接続された気体のための出口と、を有し、
前記
尿素製造プロセスが、
-前記反応帯(HPR)からの反応混合物(1)を、前記分離器(HPLS)内で高圧下で、第1の流れ(S1)及び第2の流れ(S2)に分離する
プロセスであって、前記第1の流れ及び前記第2の流れが、両方とも、尿素を含有する液相を含有する、分離する
プロセスと、
-前記第1の流れ(S1)を、少なくとも部分的に前記HPストリッパー(HPSt)に供給する
プロセスと、
-前記第2の流れ(S2)を、少なくとも部分的に前記第2の中圧回収セクション(MPR2)に供給する
プロセスと、を含み、
前記第1のMP回収セクション(MPR1)が、第1のMP分解器(MPD1)と、第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC1)と、中圧分離カラム(MPSC)と、アンモニア凝縮器(AC)と、を備え、前記ストリッピングされた尿素溶液(2)が、前記第1のMP分解器(MPD)内で分解に供されて、MP尿素溶液(7)及び気体流れ(18)がもたらされ、前記気体流れ(18)が、前記第1のMPカルバメート凝縮器内で凝縮に供され、前記第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC1)からの流れ(19)が、前記中圧分離カラム(MPSC)内で分離されて、MPカルバメート溶液(8)及びアンモニア含有気体流れ(21)がもたらされ、前記アンモニア含有気体流れ(21)が、前記アンモニア凝縮器(AC)内で凝縮に供されて、アンモニア凝縮物流れ(22)がもたらされ、
前記第2の流れ(S2)が、前記第2のMP回収セクション(MPR2)に含まれるMP断熱フラッシングユニット(MPF)内で高圧から中圧に膨張させられ、それによって気体流れ(11)及びフラッシングされたMP尿素溶液(12)を得て、
前記気体流れ(11)が、前記第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC1)に供給され
、高圧(HP)は、少なくとも100baraであり、中圧(MP)は、10bara~60baraである、尿素製造プロセス。
【請求項5】
前記第2のMP回収セクション(MPR2)が、第2のMP分解器(MPD2)と、第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)と、を備え、フラッシングされた前記MP尿素溶液(12)が、前記第2のMP分解器で分解に供されて、処理された尿素溶液(13)及び気体流れ(14)がもたらされ、前記気体流れ(14)が、前記第2のMPカルバメート凝縮器内で凝縮に供されて、カルバメート溶液(15)がもたらされ、前記カルバメート溶液(15)が、前記高圧合成セクション(HPS)に再循環される、請求項4に記載の尿素製造プロセス。
【請求項6】
前記第2のMP回収セクション(MPR2)が、MP CO2ストリッパー(MPS)を更に備え、前記第2のMP分解器(MPD2)からの前記尿素溶液(13)が、前記MP CO2ストリッパー(MPS)内のMP CO2供給物でストリッピングされて、更に処理された尿素溶液(16)及び気体流れ(17)がもたらされ、前記気体流れ(17)が凝縮に供されて、前記第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)内にカルバメート溶液がもたらされる、請求項5に記載の尿素製造プロセス。
【請求項7】
反応帯(HPR)、サーマルストリッパー(HPSt)、及びカルバメート凝縮器(HPCC)を備える高圧合成セクション(HPS)を備えた尿素プラントであって、前記プラントが、前記サーマルストリッパーのストリッピングされた尿素溶液のための出口に接続された入口を有する第1の中圧回収セクション(MPR1)を更に備え、
前記高圧セクションが、高圧反応混合物(1)を前記反応帯から第1の流れ(S1)及び第2の流れ(S2)に分離するように構成された高圧分離器(HPLS)を備え、前記第1の流れ及び前記第2の流れが、両方とも、尿素を含有する液相を含有し、前記第1の流れが、前記第2の流れよりも低い重量密度を有し、
前記高圧分離器が、前記サーマルストリッパーの入口に接続された前記第1の流れのための第1の出口と、第2の中圧回収セクション(MPR2)に接続された前記第2の流れのための第2の出口と、を有し、前記プラントが、前記高圧分離器から前記第2の中圧回収セクションまでの前記第2の流れのためのフローライン内のN/C比を測定するためのN/C計器を備え
、高圧(HP)は、少なくとも100baraであり、中圧(MP)は、10bara~60baraであり、前記N/C比は、NH
3
対CO
2
のモル比である、尿素プラント。
【請求項8】
反応帯(HPR)、サーマルストリッパー(HPSt)、及びカルバメート凝縮器(HPCC)を備える高圧合成セクション(HPS)を備えた尿素プラントであって、前記プラントが、前記サーマルストリッパーのストリッピングされた尿素溶液のための出口に接続された入口を有する第1の中圧回収セクション(MPR1)を更に備え、
前記高圧セクションが、高圧反応混合物(1)を前記反応帯から第1の流れ(S1)及び第2の流れ(S2)に分離するように構成された高圧分離器(HPLS)を備え、前記第1の流れ及び前記第2の流れが、両方とも、尿素を含有する液相を含有し、
前記高圧分離器が、前記サーマルストリッパーの入口に接続された前記第1の流れのための第1の出口と、第2の中圧回収セクション(MPR2)に接続された前記第2の流れのための第2の出口と、を有し、
前記第1の中圧(MP)回収セクション(MPR1)が、第1のMP分解器(MPD1)と、第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC1)と、中圧分離カラム(MPSC)と、アンモニア凝縮器(AC)と、を備え、
前記第1のMP分解器(MPD)が、前記ストリッピングされた尿素溶液(2)を分解に供して、MP尿素溶液(7)及び気体流れ(18)がもたらされるように構成され、
前記第1のMPカルバメート凝縮器が、前記気体流れ(18)を凝縮に供するように構成され、
前記中圧分離カラム(MPSC)が、前記第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC1)からの流れ(19)を、MPカルバメート溶液(8)及びアンモニア含有気体流れ(21)に分離するように構成され、
前記アンモニア凝縮器(AC)が、前記アンモニア含有気体流れ(21)を凝縮に供して、アンモニア凝縮物流れ(22)がもたらされるように構成され、
前記第2のMP回収セクション(MPR2)が、
-前記第2の流れを前記第2のMP回収セクション内で高圧から中圧まで膨張させ、それによって気体流れ(11)及びフラッシングされたMP尿素溶液(12)を得るように構成されたMP断熱フラッシングユニット(MPF)と、
-前記フラッシングされたMP尿素溶液(12)を分解に供して、処理された尿素溶液(13)及び気体流れ(14)がもたらされるように構成された第2のMP分解器(MPD2)と、
-前記気体流れ(14)を凝縮に供して、カルバメート溶液(15)がもたらされるように構成された、第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)と、
-前記MP断熱フラッシングユニット(MPF)から前記第1の中圧(MP)回収セクション(MPR1)への前記気体流れ(11)のための気体フローラインと、を備え
、高圧(HP)は、少なくとも100baraであり、中圧(MP)は、10bara~60baraである、尿素プラント。
【請求項9】
前記第2のMP回収セクション(MPR2)が、
-前記第2のMP分解器(MPD2)からの前記尿素溶液(13)を、MP CO2供給物でのストリッピングに供して、更に処理された尿素溶液(16)及び気体流れ(17)、並びに前記第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)の入口への前記気体流れ(17)のフロー接続がもたらされるように構成されたMP CO2ストリッパー(MPS)、を備える、請求項8に記載の尿素プラント。
【請求項10】
サーマルストリッピング型の既存の尿素プラントを改変する方法であって、前記既存のプラントが、反応帯、サーマルストリッパー、及びカルバメート凝縮器を備える高圧合成セクションを備え、前記既存のプラントが、前記サーマルストリッパーのストリッピングされた尿素溶液のための出口に接続された入口を有する第1の中圧回収セクションを更に備え、
前記方法が、
-前記反応帯からの高圧反応混合物を第1の流れ及び第2の流れに分離するように構成された高圧分離器を前記高圧合成セクションに追加する
ステップであって、前記第1の流れ及び前記第2の流れが、両方とも、尿素を含有する液相を含有し、前記第1の流れ(S1)が、前記第2の流れ(S2)よりも低い重量密度を有する、追加する
ステップと、
-第2の中圧(MP)回収セクションを追加する
ステップと、を含み、
前記高圧分離器が、前記サーマルストリッパーの入口に接続された前記第1の流れのための第1の出口と、前記第2の中圧回収セクションに接続された前記第2の流れのための第2の出口と、を有
し、高圧(HP)は、少なくとも100baraであり、中圧(MP)は、10bara~60baraである、方法。
【請求項11】
前記高圧分離器が、底部及び頂部と、前記底部における狭い開口部と、前記頂部における広い開口部と、を有する漏斗を備え、前記狭い開口部が、前記第2の流れの前記分離器の前記第2の出口に接続され、N/C
比を決定するための測定装置が、前記高圧分離器から前記第2の中圧回収セクションへの前記第2の流れのためのフローライン内に設けられて
おり、前記N/C比は、NH
3
対CO
2
のモル比である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記高圧合成セクションの反応器容積を増加させるステップを更に伴う、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
サーマルストリッピング型の既存の尿素プラントを改変する方法であって、前記既存のプラントが、反応帯、サーマルストリッパー、及びカルバメート凝縮器を備える高圧合成セクションを備え、前記既存のプラントが、前記サーマルストリッパーのストリッピングされた尿素溶液のための出口に接続された入口を有する第1の中圧回収セクションを更に備え、
前記方法が、
-前記反応帯からの高圧反応混合物を第1の流れ及び第2の流れに分離するように構成された高圧分離器を前記高圧合成セクションに追加する
ステップであって、前記第1の流れ及び前記第2の流れが、両方とも、尿素を含有する液相を含有する、追加する
ステップと、
-第2の中圧(MP)回収セクションを追加する
ステップと、を含み、
前記高圧分離器が、前記サーマルストリッパーの入口に接続された前記第1の流れのための第1の出口と、前記第2の中圧回収セクションに接続された前記第2の流れのための第2の出口と、を有し、前記方法が、前記第2のMP回収セクションの一部として、前記既存のプラントに、以下のユニット、
-前記第2の流れを、前記第2のMP回収セクション内で高圧から中圧まで膨張させ、それによって気体流れ(11)及びフラッシングされたMP尿素溶液(12)を得るように構成されたMP断熱フラッシングユニット(MPF)と、
-前記フラッシングされたMP尿素溶液(12)を分解に供して、処理された尿素溶液(13)及び気体流れ(14)がもたらされるように構成された第2のMP分解器(MPD2)と、
-前記気体流れ(14)を凝縮に供して、カルバメート溶液(15)がもたらされるように構成された、第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)と、
-前記MP断熱フラッシングユニット(MPF)から前記第1の中圧(MP)回収セクション(MPR1)への前記気体流れ(11)のための気体フローラインと、
-を追加する
ステップを伴
い、高圧(HP)は、少なくとも100baraであり、中圧(MP)は、10bara~60baraである、方法。
【請求項14】
前記第2のMP分解器(MPD2)からの前記尿素溶液(13)を、MP CO2供給物でのストリッピングに供して、更に処理された尿素溶液(16)及び気体流れ(17)、並びに前記第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)の入口への前記気体流れ(17)のためのフロー接続と、がもたらされるように構成されたMP CO2ストリッパー(MPS)をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記高圧合成セクションの反応器容積を増加させるステップを更に伴う、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記高圧分離器を備える追加の反応器を追加することによって、前記反応器容積が増加する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素の製造に関し、具体的には、サーマルストリッピング型(自己ストリッピングとしても知られる)の高圧ストリッパーを使用した尿素プラント及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、高圧反応帯におけるNH3及びCO2供給物からの尿素の製造に関する。反応帯からの合成流れは、尿素、水、カルバミン酸アンモニウム、アンモニア(部分的には気相中)、及び不活性気体を含有する。合成流れは、尿素プラント及びプロセスにおいて尿素生成物に精製される必要がある。
【0003】
不活性気体は、NH3供給物及びCO2供給物から発生し、例えば、不活性気体はH2を含む。いくつかの実施形態におけるNH3供給物は、いくつかのCH4を含有する。多数の既存の尿素プラントでは、CO2供給物に不動態化空気が追加され、この空気は「不活性気体」にも含まれる。不動態化空気中の酸素は、尿素プラントの高圧(HP)機器部品の腐食を防ぐために使用される。
【0004】
尿素製造プラントは、「総合再循環型」のものであることが多い。このようなプラントでは、尿素、水、アンモニア、及びカルバミン酸アンモニウムを含有する高圧反応帯からの尿素合成流は膨張させられ、カルバミン酸の分解に供されて、精製された尿素溶液、並びにNH3及びCO2を含有する気体流れがもたらされる。この気体流れは凝縮に供されて、カルバミン酸溶液を形成し、この溶液はポンプで高圧反応帯に戻される。この再循環されたカルバミン酸溶液は、カルバミン酸アンモニウムの固化を避けるための水を含有する。水は尿素形成反応における副産物であるため、水の再循環は望ましくなく、カルバミン酸再循環流れの水含有量を最小化することが望ましい。概して、低圧及び中圧セクションからHP反応帯に導入される特定の水量を最小化することが望ましい。
【0005】
ストリッピング型の尿素プロセスは、総合再循環設計に基づいており、高圧ストリッパーを使用している。本発明は、概して、ストリッピング型の尿素製造プロセスに関する。ストリッピング型尿素製造プロセスでは、反応器からの合成流れは、少なくとも部分的に、例えば、完全に、ストリッパー内で高圧でストリッピングに供され、カルバミン酸アンモニウムをNH3及びCO2を含有する気体流に分解する。ストリッパーは、例えば、反応器と実質的に同じ圧力で動作する。ストリッパーから出る当該気体流れは、高圧カルバメート凝縮器(HPCC)内で凝縮される。尿素プラントにおける高圧ストリッピングは、概して、尿素合成溶液を加熱し、液体を逆電流フローで気体流と接触させることを伴い、気体流れは、ストリッピング効果を提供するために、液体よりも低いNH3及び/又はCO2の部分蒸気圧を有する。
【0006】
ストリッピング型の尿素プロセスでは、HPストリッパー及びHPカルバメート凝縮器は、典型的には、各々、数千のチューブを含有するチューブ束を有するシェルアンドチューブ熱交換器である。HP反応器は、多くの場合、トレイを備えた縦型容器である。ストリッパーは、典型的には、チューブ内に尿素溶液を有し、ストリップ気体が流れ出す落下膜シェルアンドチューブの熱交換器である。HPカルバメート凝縮器は、典型的には、横型又は縦型のチューブ束を備えたシェルアンドチューブ熱交換器であり、直線状又はU字形チューブを備え、チューブ内に冷却液又はプロセス媒体(プロセス流体)を備える。
【0007】
CO2ストリッピング型のプラントでは、ストリップ気体はCO2供給物であり、反応器内のN/C比は約3.0であり、ストリッピングされた尿素溶液のN/C比は比較的低い。CO2ストリッピング型のプラントでは、HP反応器は、典型的には、HPスクラバーに送られる不活性気体およびHPストリッパーに送られる尿素合成溶液のための別個の出口を有する。
【0008】
本発明は、サーマルストリッピング型(「自己ストリッピング」型としても知られる)の尿素プロセスを対象とする。
【0009】
サーマルストリッピング型のプラントでは、尿素反応器は3.0を上回る比較的高いN/C比で動作し、「Snamprogetti」設計のプラントでは、3.2~3.6、例えば、3.2~3.4のN/C比で動作することが多い。反応器は、例えば、150bar~160barで動作する。
【0010】
したがって、サーマルストリッパーに供給される尿素合成流れは、NH3が比較的豊富であり、ストリップ気体は、HPサーマルストリッパーの下流部分で液体を加熱(又は再沸騰)することによって提供され、NH3が豊富な気体流れを形成し、これは、入ってくる尿素合成流れと逆電流接触し、それによってストリッピング効果をもたらす。サーマルストリッパーは、ストリップ気体としてCO2供給物を受容しない。サーマルストリッパーは、いくつかの実施形態では、任意選択的に、底部でいくらかの不動態化空気を受容し得る。
【0011】
サーマルストリッパーからストリッピングされた尿素溶液は、比較的高いN/C比を有し、MP分解器、MPカルバメート凝縮器、及び別個のMPアンモニア凝縮器を備える中圧(MP)回収セクションに供給される。MP分解器は、LP回収セクションに送られる尿素溶液、並びにCO2及び比較的多量のNH3を含有する気体流れをもたらす。気体流れは、MPカルバメート凝縮器内で凝縮に供され、カルバメート溶液及び残りのNH3気体がもたらされる。MP凝縮器からの残りのNH3気体は、MPアンモニア凝縮器内で凝縮に供される。凝縮アンモニア及びカルバメート溶液は、典型的に、異なる温度を有する2つの異なる液体流れとして、異なるポンプを使用して、MPセクションからHPセクションに別個にポンプで戻される。
【0012】
サーマルストリッピング型の尿素プロセスの例は、非特許文献1の
図25に示されている「Snamprogetti」尿素プロセスである。その図の例示的なプロセスでは、高圧(HP)反応器は1つの出口を有し、反応器からの尿素合成流れ全体は、サーマルストリッピング型を有するHPストリッパーに供給される。不活性気体は、HPCCを通過し、それによって、不活性気体に含まれる酸素は、HPCCの腐食保護を提供し、不活性気体は、HPカルバメート分離器内のHP凝縮物から分離され、それらがアンモニア凝縮器の下流に配置されたアンモニアスクラバーから排気されるMP回収セクションに気体流れとして供給される。このようにして、排気された不活性気体は、サーマルストリッパー中の尿素溶液の比較的高いN/C比にもかかわらず、NH
3をあまり含有しない。MP回収セクションは、典型的に、「Snamprogetti」設計において18barで動作する。
【0013】
有利には、高圧ストリッパー及び高圧凝縮器がプラント容量と比較して比較的小さい大規模尿素プラントが望まれている。これは、ストリッパー及び凝縮器(典型的には、シェルアンドチューブ熱交換器)が非常に重く、かさばり、新しく建設されたプラント(「草の根プラント」)の場合など、プラントの建設のために輸送が困難になるという欠点を回避する。更に、HPストリッパー及び凝縮器を改変することなく、又はHPストリッパー又は凝縮器を追加する必要を伴わずに、サーマルストリッピング型の既存の尿素プラントの容量を増加させたい(いわゆる「改造」)という要望がある。
【0014】
特許文献1は、高価な高圧機器の改造又は交換を伴わずに既存設備の容量を拡大することが限られた範囲でしか可能でないという事実には、HPストリッピングステップ及びHP凝縮ステップが大きく関係していることに言及している。特許文献1は、尿素合成溶液の一部を合成ゾーンから1MPa~4MPaの圧力で動作する中圧処理ゾーンに移送し、他の部分をHPストリッパーに送るようにプラントを改変することによって、プラントの容量を増加させることを提案している。特許文献1は、CO
2型のHPストリッパーの設計を示しているが、サーマルストリッピングの使用も可能であることに言及している。しかしながら、その実施形態の詳細は示されておらず、特許文献1の
図2及び
図4では、CO
2ストリッパーが使用され、不活性気体流れ「RG」が、反応器の頂部からスクラバーに送られる。これは、N/C比が高いことに起因して、熱HPストリッパーの場合には望ましくない。
【0015】
比較的大きな容量及び低い水再循環を有するような、改良された尿素プロセス及びサーマルストリッピング型のプラント、並びに対応する改造方法に対する要望が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許出願公開第2004/0116743号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】Ullmann’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry,Chapter Urea,2010
【発明の概要】
【0018】
本発明は、第1の態様において、サーマルストリッピング型の尿素製造プラントで実行される尿素製造プロセスに関し、プラントは、高圧(HP)合成セクションと、第1及び第2の中圧(MP)回収セクションと、を備え、HP合成セクションが、HP反応帯と、サーマルストリッピング型のHPストリッパーと、HPカルバメート凝縮器と、を備え、HPストリッパーが、第1のMP回収セクションに接続されてストリッピングされた尿素溶液のための出口と、HPカルバメート凝縮器に接続された気体のための出口と、を有し、HP合成セクションは、分離器を更に備え、プロセスは、反応帯からの反応混合物を、当該分離器内で高圧下で、第1の流れ、例えば、アンモニアに富む第1の流れ、及び第2の流れに分離することであって、第1の流れ及び第2の流れが、両方とも、尿素を含有する液相を含有し、第1の流れ(例えば、アンモニアに富む第1の流れ)は、好ましくは、第2の流れよりも低い重量密度を有し、第1の流れ(例えば、アンモニアに富む第1の流れ)は、第2の流れよりも高いアンモニア濃度を有する、分離することと、第1の流れ(例えば、アンモニアに富む第1の流れ)を、少なくとも部分的に(例えば、完全に)をストリッパーに供給することと、第2の流れを、少なくとも部分的に(例えば、完全に)第2の中圧回収セクションに供給することと、を含む。好ましくは、第1の流れは、第2の流れよりも低い重量密度を有し、第1の流れは、第2の流れよりも高いアンモニア濃度を有するアンモニアに富む第1の流れであり、かつ/又は好ましくは、第2の流れは、第2のMP回収セクションに含まれるMP断熱フラッシングユニット内で高圧から中圧に膨張させられ、それによって気体流れ及びフラッシングされたMP尿素溶液を得る。
【0019】
本発明はまた、好ましくは、本明細書に記載の本発明の尿素製造プロセスに好適な尿素プラントに関し、プラントは、反応帯、サーマルストリッパー、及びカルバメート凝縮器を備える高圧合成セクションを備え、プラントは、当該サーマルストリッパーのストリッピングされた尿素溶液のための出口に接続された入口を有する第1の中圧回収セクションを更に備え、高圧セクションは、反応帯からの高圧反応混合物を第1の流れ及び第2の流れに分離するように構成された高圧分離器を備え、第1の流れ及び第2の流れは、両方とも、尿素を含有する液相を含有し、第1の流れは、好ましくは、第2の流れよりも低い重量密度を有し、高圧分離器は、当該サーマルストリッパーの入口に接続された第1の流れのための第1の出口と、第2の中圧回収セクションに接続された第2の流れのための第2の出口と、を有する。
【0020】
本発明はまた、サーマルストリッピング型の既存の尿素プラントを、好ましくは、本明細書に記載の発明のプラントに改変する方法に関し、既存のプラントは、反応帯、サーマルストリッパー、及びカルバメート凝縮器を備える高圧合成セクションを備え、既存のプラントは、当該サーマルストリッパーのストリッピングされた尿素溶液のための出口に接続された入口を有する第1の中圧回収セクションを更に備え、方法は、反応帯からの高圧反応混合物を第1の流れ及び第2の流れに分離するように構成された高圧分離器を高圧合成セクションに追加することであって、第1の流れ及び第2の流れが、両方とも、尿素を含有する液相を含有し、第1の流れが、好ましくは、第2の流れよりも低い重量密度を有する、追加することと、第2の中圧(MP)回収セクションを追加することと、を含み、高圧分離器が、当該サーマルストリッパーの入口に接続された第1の流れのための第1の出口と、第2の中圧回収セクションに接続された第2の流れのための第2の出口と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による例示的なプロセススキームを概略的に示す。
【
図2】本発明において使用される第2の中圧回収セクションの例示的なプロセススキームを概略的に示す。
【
図3】本発明で使用される例示的な高圧分離器を概略的に示す。
【
図4】本発明の実施形態において使用される例示的な高圧分離器を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図に示される任意の実施形態は、例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0023】
本発明の実施形態は、高圧分離器内の反応帯から尿素合成流れを、両方とも液相を含有し、かつ両方とも尿素を含有する第1の流れと第2の流れとに分離し、第1の流れが第2の流れよりもアンモニアに富むことが好ましいという判断的洞察に広く基づくものである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、高圧分離器からのアンモニアに富む第1の流体流れは、高圧分離器からの第2の流体流れよりも高いアンモニア濃度を有し、アンモニア濃度は、2つの相流体流れについて気体及び液体の両方に一緒に基づいている。
【0025】
いくつかの実施形態では、第2の流れは、第1の流れよりも低い、より高い、又は同じNH3濃度を有し得る。
【0026】
好ましくは、フラッシングステップ及び/又はN/C測定は、第2の流れに使用される。
【0027】
好ましくは、このプロセスは、第2の流れのN/C比を決定することを伴う。N/C比を決定することは、有利には、特に、第2の流れが脱気された液体からなる好ましい実施形態において単純である。二相気体/液体流体の流れの代わりに、脱気された第2の流れが液体からなるこれらの実施形態において非常に有利には、それに応じてN/C比は都合よく測定され得る。
【0028】
非常に好ましい実施形態では、第2の流れは、断熱フラッシングに供され、形成されたフラッシュ蒸気は、アンモニア凝縮器に直接的又は間接的に供給され、HP合成セクションに再循環されるアンモニア凝縮物を形成する。それによって、有利には、アンモニア凝縮物の本質的に水を含まない再循環が達成されると同時に、第2のMP回収セクションからのカルバメート再循環流れの低い水含有量が得られる。
【0029】
好ましくは、フラッシュ蒸気は、第1のMP回収セクションに、特に第1のMP回収セクションのアンモニア凝縮器に直接又は間接的に供給され、アンモニアポンプを使用して合成セクションに再循環されるアンモニア凝縮物として凝縮する。それによって、有利には、第1のMP回収セクションの設備が使用される。
【0030】
第1の流れは、好ましくは、蒸気及び液体の両方を含み、好ましくは二相流体である。第2の流れは、好ましくは、本質的に液体からなる。好ましくは、分離は、第2の流れを脱気することを伴う。第1の流れ(二相流体の場合、気体と液体との両方を含む総流れ)は、第2の流れよりも高いアンモニア濃度を有する。このような分離は、例えば、重量密度分離に基づいて、高圧で行うことができる。
【0031】
アンモニアに富む第1の流れは、好ましくは、第2の流れよりも低い重量密度を有する。これは、流れ全体の重量密度(二相流体流れの場合は、気体と液体とが一緒に)、並びに分離ステップ及び/又は分離器内での密度を指す。流れの密度は、分離ステップの下流で増加又は減少し得る。
【0032】
好ましい実施形態では、分離器は、漏斗を備え、漏斗の狭い開口部において、好ましくは第2の流れのための、及び代替的に第1の流れのための下向きの液体出口を有する。好ましくは、分離器は、底部及び頂部と、底部における狭い開口部と、頂部における広い開口部と、を有する漏斗を備え、狭い開口部は、分離器の第2の流れのための出口に接続される。好ましくは、広い開口部の表面積は、漏斗の狭い開口部の表面積の少なくとも2倍又は少なくとも4倍である。ここで、頂部及び底部は重力を指す。更に、漏斗は、好ましくは、縦型尿素反応器の頂部に配置される。尿素反応器は、底部において、HPカルバメート凝縮器から液体を受容するために、HPカルバメート凝縮器の出口に直接又は間接的に接続された入口を有する。
【0033】
漏斗構造は、例えば、広い開口部と狭い開口部とを有する円錐形の先細りになっている。好ましくは、漏斗は、動作において、尿素溶液を含む反応混合相において完全に浸漬されている。反応混合物は、漏斗内で比較的ゆっくりと下向きに流れ、脱気された尿素溶液となり、好ましくは第2の流れ又は代替的に第1の流れとして取り出される。広い漏斗(広い開口部)は、漏斗内の液体の低い下向きの速度につながり、液体が脱気することを可能にする。漏斗出口(狭い開口部)は、例えば、ダウンカマーに接続されている。
【0034】
好ましくは、このプロセスは、HP分離器内の第2の流れを脱気することを伴う。好ましくは、プロセスは、第2のMP回収セクションが脱気され、かつストリッピングされていない尿素合成溶液を受容するように、脱気された第2の流れを第2のMP回収セクションに、好ましくは、サーマルストリッパーの迂回で供給することを伴う。好ましくは、このプロセスは、脱気された第2の流れのN/C比を決定することを伴う。
【0035】
別の実施形態では、第1の流れは、HP分離器内で脱気され、脱気された第1の流れは、サーマルストリッパーに供給される。好ましくは、この実施形態では、プロセスは、第1の流れのN/C比を決定することを伴う。
【0036】
好ましくは、第1及び第2の流れは、分離の直後にすでに異なる組成を有する。好ましくは、第1及び第2の流れは、圧力を低下させるための任意の膨張ステップの前に、高圧で異なる組成を有する。好ましくは、第1及び第2の流れは、分離器の出口において異なる組成を有し、分離器の出口において、反応器の動作圧力と同じであるか、又は反応器の当該動作圧力よりも10bar未満低い圧力を有する。
【0037】
本開示のかかる実施形態は、ストリッパーに送られた合成溶液の第1の部分とMPセクションに送られた第2の部分とが同一の組成(HPからMPへの第2の部分の膨張前に)を有する、特許文献1から根本的に逸脱している。
【0038】
他のあまり好ましくない実施形態では、第1及び第2の流れは、例えば、N/C計器が使用されていない場合、特許文献1と同じ組成を有する。
【0039】
HP分離ステップからの2つの流れは、少なくとも部分的に、例えば、完全に、本発明において異なる処理に供され、特に、流れは、少なくとも部分的に、例えば、完全に、異なるユニットに供給される。2つの流れの処理は、各流れの特定の組成に適合させることができる。
【0040】
第1の流れは、少なくとも部分的に、例えば、完全に、例えば、少なくとも90重量%の液相のためのものであり、サーマルストリッピング型のHPストリッパーに送られる。サーマルストリッパーからのストリッピングされた尿素溶液は、少なくとも部分的に、例えば、完全に、例えば、少なくとも90重量%が、第1のMP回収セクションに送られる。
【0041】
第1のMP回収セクションは、好ましくは、MP分解器と、MPカルバメート凝縮器と、MPアンモニア凝縮器と、を備え、好ましくは、MPカルバメート分離カラムと、MPアンモニア受容部と、をも備える。第1のMP回収セクションは、好ましくは、凝縮されたアンモニア流れ及び第1のカルバメート溶液のために、これらの流れをHPセクションに別々に再循環するための別個の再循環フロー接続を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1の流れは部分流れに分離することができ、これらの部分流れのうちの1つ以上は、少なくとも部分的に、例えば、完全に、サーマルストリッパーに供給される。例えば、第1の流れが二相流体である場合、第1の流れは、例えば、気体/液体分離に供され、液体流れは、例えば、ストリッパーに供給され、気体流れは、例えば、高圧カルバメート凝縮器に供給される。そのような実施形態では、第1の流れの一部のみがサーマルストリッパーに供給される。
【0043】
典型的には、第1の流れは、HP分離ステップの下流で気体/液体分離に供され、液体は、サーマルストリッパーのチューブバンドルのチューブ入口上に分配される。この気体/液体分離は、例えば、サーマルストリッパーの上部チャンバー内で実行される。気体/液体分離は、HP分離器とストリッパーとの間に配置された追加の分離容器内で実行することもでき、液体はサーマルストリッパーに供給され、気体はHPCCに供給される。
【0044】
不活性気体及びNH3を含む気体/液体分離からの気体は、好ましくは、例えば、サーマルストリッパーのチューブバンドル内のストリッピング処理によって放出される気体流れと混合されて、HPCCに送られる。このようにして、不活性気体に含まれる酸素は、反応器及びHPCCの両方における腐食防止に寄与する。
【0045】
好ましくは、第1の流れは、完全に又は実質的に完全に(例えば、液相の少なくとも95重量%)サーマルストリッパーに送られる。
【0046】
第2の流れは、好ましくは、HPストリッパーを迂回し、少なくとも部分的に、例えば、完全に、第2のMP回収セクションに送られ、好ましくは、第2の流れは、完全に又は実質的に完全に(例えば、少なくとも95重量%)、第2のMP回収セクションに送られる。有利には、HPストリッパー及びHPカルバメート凝縮器の容量は、したがって、尿素プラントの容量と比較して小さくなり得る。
【0047】
好ましくは、第2のMP回収セクションは、高圧分離器によって提供される第2の流れの少なくとも95重量%又は少なくとも99重量%を受容する。第2のMP回収セクションは、好ましくは、当該第2の流れと同様に、HP反応器から非ストリッピング尿素溶液を受容する。
【0048】
好ましくは、第2のMP回収セクションは、HP合成セクションで生成された尿素の5重量%~50重量%、より好ましくは、15重量%~30重量%を受容する。
【0049】
第2のMP回収セクションは、第2のMP分解器と、第2のMPカルバメート凝縮器と、好ましくは、MP断熱フラッシュユニットと、を備える。第2のMP回収セクションは、有利には、第1のMP回収セクションとは独立して動作する。これにより、各セクションで最適なプロセス条件を使用することができる。
【0050】
好ましいMP断熱フラッシュユニットは、第2の流れ、好ましくは脱気された第2の流れの少なくとも一部、好ましくは全部を受容し、フラッシュ蒸気のための第1の出口及びフラッシングされた尿素溶液のための第2の出口を有する。MPフラッシュユニットは、好ましくは能動的に加熱されていないという点で、好ましくは断熱性である。これは、吸熱カルバメート分解反応が、フラッシュ蒸気が比較的低いCO2含有量を有するように、ほとんど進行しない、又は限られた程度にしか進行しないという利点を有する。更に、断熱フラッシュは、低い水蒸発、及び有利にはフラッシュ蒸気の低い水含有量を提供する。好ましくは、フラッシュ蒸気は少なくとも90重量%のNH3を含むか、又は本質的に純粋なNH3である。尿素溶液のN/C比は、第2のMP回収セクションからのカルバメート中の水再循環をより少なくし、尿素変換を向上させるために有利にフラッシングすることによって減少する。MP断熱フラッシュユニットは、好ましくは、第2のMP分解器よりも高い圧力、好ましくは、少なくとも1.0bar高い、又は例えば、少なくとも5bar高い、又は例えば、少なくとも10bar高い、典型的には30bar高い、また好ましくは、第1のMP回収セクションよりも少なくとも1.0bar若しくは少なくとも2bar高い圧力でも動作する。したがって、フラッシングされた尿素溶液は、好ましくは、MP断熱フラッシュユニットと第2のMP分解器との間の圧力を少なくとも1.0bar、少なくとも5bar、又は例えば、少なくとも10bar低下させる。
【0051】
MP断熱フラッシュユニットは、好ましくは、少なくとも20bar(絶対)の圧力、例えば、20bar~60bar(絶対)、例えば、25bar~40bar、例えば、25bar~35bar、又は例えば、30bar~40barの範囲の圧力で動作する。MP断熱フラッシュステップの圧力は、有利には、カルバメート流れを再循環させる組成を調節するために使用することができる。
【0052】
MPフラッシュユニットの出口における尿素溶液は、例えば、15mol%~25mol%のNH3(遊離及びカルバメートとしての両方)、並びに5mol%~15mol%のCO2(遊離及びカルバメートとしての両方)を、例えば、20bar~30barの圧力で含む。
【0053】
一例では、MPフラッシュユニットの出口としての尿素溶液、例えば、25bar及び133℃での、23mol%のNH3(遊離及びカルバメートとしての両方)、10mol%のCO2(遊離及びカルバメートとしての両方)、19mol%の尿素、及び32mol%の水。
【0054】
フラッシュ蒸気は、好ましくは、凝縮に供されて液体凝縮物を形成し、これは、好ましくは、ポンプを使用して、典型的には、HPセクションに再循環される。いくつかの実施形態では、専用のアンモニア凝縮器が使用される。非常に好ましい実施形態では、断熱フラッシュからの蒸気は、第1のMP回収セクションのMPカルバメート凝縮器に供給される。このMPカルバメート凝縮器は、第1のMP回収セクションのアンモニア凝縮器への気体フローに接続された気体出口を有している。このようにして、断熱フラッシュからの蒸気中に含有される過剰のNH3は、有利には、比較的純粋な液体NH3として、第1のMP回収セクションのアンモニア凝縮器内で凝縮される。フラッシングにより、例えば、3.0~3.4の範囲でN/C比で動作する反応器を有する実施形態では、第2の流れの高いN/C比は、有利には、第2のMP回収セクションからの高品質のカルバメート再循環溶液と結合され得る。更に、プロセスは、比較的高いN/C比を有するストリッピングされた尿素溶液を処理するように適合されたHPサーマルストリッパーの下流の第1のMP回収セクション、及びアンモニア凝縮器からHP合成セクションへの本質的に無水アンモニア再循環から利益を得る。
【0055】
したがって、好ましい実施形態では、反応器(第2の流れ)から尿素合成流れの一部を受容し、フラッシュ蒸気を第1のMP回収セクションのMPカルバメート凝縮器に供給するMP断熱フラッシュユニットが使用される。この実施形態では、また他の実施形態では、例えば、第2の流れは、第1の流れと同じ、より高い、又はより低い重量密度を有し得、第2の流れは、第1の流れより高い、同じ、又はより低いNH3濃度を有し得る。
【0056】
MP断熱フラッシュユニットは、好ましくは、蒸気輸送を可能にするために、第1のMP分解器及び第1のMPカルバメート凝縮器よりも高い圧力、好ましくは少なくとも1.0bar高い圧力で動作する。
【0057】
既存の尿素プラントの改変(改造)の場合、既存の第1のMP回収セクションのカルバメート凝縮器及びアンモニア凝縮器は、通常、断熱フラッシュから蒸気を受容するための余裕を有する。断熱フラッシュの圧力は、フラッシングされた気体の量を調節するために使用することができる。
【0058】
第2のMP分解器は、好ましくはフラッシュされた尿素溶液のための入口、又は第2の流れ(好ましい断熱フラッシュが使用されない場合)のための入口と、蒸気のための出口と、尿素溶液のための出口と、を有する。第2のMP分解器は、典型的には、熱交換器を備え、好ましくは、シェルアンドチューブ交換器を備え、好ましくは、蒸気を加熱流体として使用する。第2のMP分解器は、例えば、頂部に整流器を有する縦型直管シェルアンドチューブ管熱交換器を備える。整流器は、入ってくる下向きに落ちる液体と上向きに移動する気体との間の接触を可能にするパッキンを備える。気体出口は、好ましくは、頂部にある。液体入口は、好ましくは、整流器の頂部にある。第2のMP分解器は、例えば、15bar~25barで動作させられる。
【0059】
第1及び第2のMP分解器は、異なる圧力で有利に動作することができる。第2のMP分解器は、例えば、第1のMP分解器よりも高い圧力、例えば、少なくとも1.0bar、又は少なくとも5.0bar高い、例えば、5bar~15bar高い圧力で動作させられる。これは、第2のMPカルバメート凝縮器における比較的高い凝縮温度に寄与し得る。
【0060】
第2のMP分解器からの蒸気は、カルバメート溶液の出口を有する第2のMPカルバメート凝縮器に供給される。第2のMPカルバメート凝縮器は、1つ以上のユニットとして提供され得る。例えば、この凝縮器は、2つのシェルアンドチューブ熱交換器として提供される。第2のMPCCは、例えば、水蒸発のために加熱する必要がある尿素溶液に対する間接熱交換のための第1の熱交換器と、冷却水に対する第2の熱交換器と、を備える。第2のMP分解器及び第2のMPカルバメート凝縮器は、好ましくは、実質的に同じ圧力で動作させられる。より高い凝縮温度は、そのような実施形態では、第1の熱交換器に対して所望される。
【0061】
カルバメート溶液は、直接的又は間接的に、HP合成セクション、例えば、サーマルストリッピングプラントのHPCC、特に、そのようなHPCCのプロセス媒体側、例えば、ケトル型HPCCのチューブ側に再循環される。この再循環は、典型的には、HPカルバメートポンプを使用してカルバメート溶液を圧送することを伴う。
【0062】
一実施形態では、第2のMPカルバメート凝縮器で形成されたカルバメート溶液は、第1の回収セクションのカルバメートポンプを使用して、HPセクションに圧送される。例えば、第2のMPカルバメート凝縮器に形成されたカルバメート溶液は、MP分離カラムに供給され、MP分離カラムのカルバメート溶液のための出口は、第1の回収セクションのHPカルバメートポンプの入口に直接又は間接的に接続される(液体流動のために)。この例示的な実施形態は、第2のMPカルバメート凝縮器内で形成されたカルバメート溶液が次いでアンモニアで飽和するため、あまり好ましくない。
【0063】
より好ましくは、第2のMPカルバメート凝縮器で形成されたカルバメート溶液は、専用のポンプを使用してHP合成セクションに圧送され、このポンプは、第1のMPカルバメート凝縮器からHP合成セクションにカルバメート溶液を輸送するために使用されるポンプとは別個である。好ましくは、第2のMPカルバメート凝縮器内で形成されたカルバメート溶液は、MP分離カラムを流れない。これは、カルバメート溶液が、追加のポンプによって圧送される流れの体積が比較的小さくなるように、当該分離カラム中のNH3を取り込まないという利点を提供する。したがって、アンモニアポンプによって圧送される第1のMP回収セクションに供給されるNH3供給物の部分は比較的大きく、これは、HPセクションに再循環される特定の量の水を減少させるのに有利である。
【0064】
第2のMP回収セクションは、更に、好ましくは、CO2供給物気体流れのための入口を備え、その結果、MP CO2供給物は、第2のMPカルバメート凝縮器に直接的又は間接的に供給され、そこでそれは、カルバメート溶液を形成するために、アンモニア(例えば、第2の流れから、例えば、第2のMP分解器から生じる)との凝縮に供される。
【0065】
有利には、このようにして、CO2供給物の一部は、中圧で供給され、カルバメート溶液として高圧に圧送され得る。したがって、改造の場合、既存のHP CO2圧縮記(通常、HP合成セクションにHP CO2気体供給物を提供するために既存の尿素プラントに存在する)を改変する必要はない。草の根プラントの場合、HP CO2圧縮器は比較的小さいことがある。HP CO2圧縮器は、通常、カルバメートポンプ及びMP CO2圧縮器と比較して大きな資本支出を生じる。いくつかの実施形態では、プラントは、CO2供給物を中圧、特に第2のMPカルバメート凝縮器の動作圧力を上回る圧力に圧縮するためのMP CO2圧縮器を備える。いくつかの実施形態では、MP CO2供給物は、多段HP CO2圧縮器の中間段から得られる。
【0066】
通常、CO2は、アンモニアプラントから(特に、合成気体プラントから)低圧(例えば、1bar~5barの絶対値)でバッテリーリミットで利用可能である。MP CO2供給物は、例えば、MP CO2圧縮器を使用するか、HP CO2圧縮器の中間段からCO2供給物を抽出することによって、MPに圧縮される。いくつかの実施形態では、不動態化酸素は、MP CO2供給物に追加されず、かつ/又は水素コンバータユニットのための酸素は、MP CO2供給物に追加されない。これは、有利には、第2のMPカルバメート凝縮器内の不活性物含有量を低下させることができ、第2のMPCCが、加熱する必要がある尿素溶液に対して間接的に熱交換するための第1の熱交換器を備える実施形態において特に有利である。
【0067】
好ましい実施形態では、MP CO2供給物は、第2のMP回収セクションに含まれるMP CO2ストリッパーに供給される。このMPストリッパーでは、好ましくは、MP分解器からの尿素溶液をストリッピング(CO2気体フローとの逆電流接触)に供して、蒸気流及びMPストリッピング溶液がもたらされる。MP CO2ストリッパー内のストリッピングは、好ましくは断熱的である。MP CO2ストリッパーは、例えば、気体及び液体の逆電流接触に適合された充填床を備える。
【0068】
MP CO2ストリッパーの液体出口の尿素溶液は、典型的に、MP CO2ストリッパーの液体入口の尿素溶液よりも低いN/C比を有する。それによって、出口の尿素溶液は、下流のLP回収セクションでの処理により適している。
【0069】
MP CO2ストリッパーからの蒸気流れは、第2のMPカルバメート凝縮器に送られる。
【0070】
第2のMPカルバメート凝縮器に、任意選択的に、MP CO2ストリッパーを通してMP CO2供給物を供給することは、第2のMPカルバメート凝縮器内に形成されるカルバメート溶液が、比較的低いN/C比を有し、したがって、一定量のカルバメートに対して、より低い体積を有するという利点を提供する。より低い体積は、MPカルバメート溶液を圧送するのに有利である。断熱フラッシュは、第2のMPカルバメート凝縮器中に十分なNH3を有するように調節され得る。
【0071】
第1の流れは、例えば、反応器出口及びHP分離器の出口において、3.3~3.6の範囲のN/C比を有する。
【0072】
HPサーマルストリッパーの出口にある尿素溶液は、例えば、23重量%~25重量%のNH3(遊離及びカルバメートとしての両方)及び6重量%~7重量%のCO2(遊離及びカルバメートとしての両方)を含有する。
【0073】
第1のMPカルバメート凝縮器からのカルバメート溶液は、例えば、3~4、又は3.50~4.50のN/C比を有する。
【0074】
例示的な実施形態では、第2のMP回収セクションからのカルバメート溶液と混合する前の、分離カラムの底部から得られる液体は、50mol%~60mol%、例えば、56mol%、NH3(遊離及びカルバメートとしての両方)、10mol%~20mol%、例えば、14mol%、CO2(遊離及びカルバメートとしての両方)、並びに25mol%~35mol%、例えば、29mol%、H2Oを含有する。N/C比が高いため、高い水含有量が必要である。
【0075】
好ましくは、第2のMPカルバメート凝縮器からのカルバメート溶液は、2.10~2.50、例えば、2.20~2.40のN/C比を有する。
【0076】
例えば、第2のMPカルバメート凝縮器からのカルバメート溶液は、50mol%~60mol%、例えば、55mol%のNH3(遊離及びカルバメートとしての両方)、20mol%~25mol%、例えば、22mol%のCO2(遊離及びカルバメートとしての両方)、並びに20mol%~25mol%、例えば、23mol%のH2Oを含有する。溶液は17bar~18barの圧力を有する。
【0077】
好ましくは、HPセクションによって(すなわち、HPカルバメートポンプの出口において)受容される、第1のMP回収セクションからのカルバメート溶液は、23重量%~27重量%の水含有量を有し、HPセクションによって受容される第2のMP回収セクションからのカルバメート溶液は、18重量%~22重量%、例えば、20重量%の水含有量を有する。
【0078】
好ましくは、第1のMPカルバメート凝縮器からのカルバメート溶液は、23重量%~27重量%、例えば、25重量%の水含有量を有し、第2のMPカルバメート凝縮器からのカルバメート溶液は、18重量%~22重量%、例えば、20重量%の水含有量を有する。
【0079】
したがって、第2のMPカルバメート凝縮器からのカルバメート溶液は、特に高圧分離ステップ及び/又は好ましいMP断熱フラッシュにより、本発明の設計でより良い品質を有する。
【0080】
第1のMP回収セクション及び第2のMP回収セクションからの精製された尿素溶液は、両方とも、尿素プラントのLP回収セクションに、例えば、2つの別個のLP回収セクションに、又は同じLP回収セクションに送られる。1つ以上のLP回収セクションは、典型的には、LP分解器及びLPカルバメート凝縮器を備える。LPカルバメート凝縮器からのLPカルバメート溶液は、例えば、第1及び/又は第2のMPカルバメート凝縮器に供給される。
【0081】
図1は、本発明による例示的なプロセススキームを概略的に示し、本発明を限定せず、特許請求の範囲を限定しない。以下の説明では、
図1に示される参照番号は、単に便宜のために、かつ本発明をいかなる方法でも限定することなく使用される。
【0082】
本発明の尿素製造プロセスは、概して、サーマルストリッピング型尿素製造プラント(UPP)で実施される。プラントは、高圧(HP)合成セクション(HPS)と、第1及び第2の中圧(MP)回収セクション(MPR1、MPR2)と、を備える。第1及び第2のMP回収セクションは、HP合成セクションから尿素を含む流れを受容し、MP尿素溶液を生成し、MP尿素溶液は、典型的には、LP回収セクションで更に処理されて、LP尿素溶液をもたらし、LP尿素溶液は、例えば、蒸発セクションで更に凝縮されて、尿素溶融物を形成する。尿素溶融物は、多くの場合、固体尿素生成物が形成される仕上げセクション、例えば、造粒機又はプリリングタワーに送られる。蒸発セクションは、水の除去のために使用され、得られる水蒸気は凝縮され、凝縮物は、典型的には、加水分解器と脱離器とを備える廃水処理セクション(WWT)で処理される。WWTは、典型的には、比較的高いエネルギー消費量を有する。
【0083】
尿素溶融物及び尿素溶液の他の使用も可能である。
【0084】
HP合成セクションは、HP反応帯(HPR)と、サーマルストリッピング型(HPSt)HPストリッパーと、HPカルバメート凝縮器(HPCC)と、を備える。
【0085】
HP反応帯(HPR)は、例えば、1つ以上のHP尿素反応器によって提供される。2つ以上のHP尿素反応器を使用する場合、これらは、例えば、並列又は直列に配置される。1つ以上のHP反応器は、典型的には、トレイを備えた縦型発泡カラムである。本発明では、反応器は、例えば、180℃~200℃、例えば、185℃~195℃、及び/又は少なくとも140bar、例えば、140bar~160bar又は150bar~160barの圧力で動作させられる。反応器は、例えば、3.00~3.40の範囲、例えば、3.1~3.2の範囲のN/C比で動作させられる。
【0086】
尿素製造プロセスは、例えば、新鮮なCO2供給物に基づいて少なくとも0.010体積%の量で、例えば、新鮮なCO2供給物に対して少なくとも0.10体積%及び典型的には1.0体積%未満の量で空気を導入することによって、不動態化目的のために酸素(O2)をHP反応帯(HPR)に供給することを伴う。不動態化空気又は酸素は、例えば、CO2供給物の一部として供給される。不動態化空気又は酸素は、例えば、HP尿素反応器に直接供給される。
【0087】
HPストリッパー(HPSt)は、第1のMP回収セクション(MPR1)に接続されたストリッピングされた尿素溶液(2)のための出口と、HPカルバメート凝縮器(HPCC)に接続された気体(3)のための出口と、を有する。HPストリッパー(HPSt)は、典型的には、チューブ内でストリッピングされる尿素溶液を備えた落下膜型の縦型シェルアンドチューブ熱交換器であり、頂部にはHPカルバメート凝縮器(HPCC)に接続された混合気体流れのための出口を備え、底部にはストリッピングされた尿素溶液のための出口を備える。HPストリッパーは、好ましくは、サーマルストリッパーとして構成される。ストリッパーのチューブは、限定されないが、例えば、バイメタルチューブであるか、又は例えば、Ti及び/若しくはZrを含むか、又は例えば、二重フェリチック-オーステナイト系ステンレス鋼、例えばWO2017/014632に記載されているような二重ステンレス鋼などの好適なステンレス鋼で作製される。
【0088】
本発明のプロセスにおいて、サーマルストリッパーは、例えば、200℃~210℃で動作し、これらの温度は、尿素溶液出口温度を示す。
【0089】
HPカルバメート凝縮器(HPCC)は、好ましくは、シェルアンドチューブ熱交換器であり、より好ましくは、横型U字形チューブ束を有する熱交換器である。例えば、HPCCはプロセス側で液体を連続相として動作させるように構成されている。HPカルバメート凝縮器は、好ましくは、チューブ内で凝縮される気体を受容するための入口と、シェル内で冷却流体を受容するための入口と、を有する、横型U字形チューブ束を備えたケトル型である。縦型U字形チューブ束、又は横型U字形チューブ束、並びにシェル内で凝縮される気体を受容するための入口、及びチューブ内の冷却流体を受容するための入口などを備える他のタイプのHPカルバメート凝縮器も可能である。
【0090】
好ましくは、HPCCは、ケトル型凝縮器のチューブ内などのプロセス側の第1のMP回収セクションから中圧カルバメート溶液を追加的に受容する。
【0091】
いくつかの実施形態では、HPCCからのHPプロセス流体流れ(4)は、カルバメート溶液及び不活性物を含有し、高圧で動作させられ、液体流れ(5)及び気体流れ(6)がもたらされるように気体/液体を分離するように構成されたカルバメート分離器(CSp)に供給される。液体カルバメート流れ(5)は、典型的にはアンモニア駆動エジェクタ(Ej)を使用して反応器に供給される。カルバメート分離器(CSp)からの気体(6)は、不活性物及びアンモニアを含有し、好ましくは、第1のMP回収セクション、例えば、MP分解器の底部に供給される。第1のMP回収セクション(MPR1)に気体(6)を供給することは、MPフラッシュユニット(MPF)が脱気尿素溶液を受容する実施形態において特に有利である。
【0092】
本発明では、HP合成セクションは、分離器(HPLS)、特に高圧分離器、より具体的には、高圧液体分離器を更に備える。分離器は、高圧で動作させられる。分離器は、例えば、専用ユニットであるか、又は反応器容器内に配置されている。2つ以上の反応器が直列に使用される場合、分離器は、好ましくは、最も下流の反応器に配置される。専用ユニットとして提供される分離器は、好ましくは、反応器の下流に配置される。分離器は、好ましくは、反応帯の下流部に配置される。分離器は、好ましくは、反応混合物を受容し、変換(尿素形成)は、HP合成セクションで達成された全変換に対して、すでに少なくとも90%完了している。分離器の入口における反応混合物は、例えば、少なくとも30重量%の尿素、例えば、30重量%~35重量%の尿素を含む。好ましくは、HP分離器内での分離の前に反応帯の反応混合物からNH3及び/又は気体成分が除去されない。
【0093】
本発明の尿素製造プロセスは、反応帯(HPR)からの反応混合物を、当該分離器(HPLS)において高圧で、第1の流れ、例えば、アンモニアに富む第1の流れ(S1)、及び第2の流れ(S2)に分離することを伴う。第1の流れと第2の流れとは両方とも液相を含有し、この液相は尿素を含有する。アンモニアに富む第1の流れ(S1)は、好ましくは、分離時の第2の流れ(S2)よりも低い重量密度を有する。分離は、例えば、重量密度分離に基づくことができる。第1の流れ(S1)は、例えば、2つの流れ(二相流体流れの場合、気体及び液体を含む)の総体積に基づいて、第2の流れ(S2)よりも高いアンモニア濃度を有する。特に、第2の流れは、任意選択的に、反応混合物の気体留分気体成分が第1の流れに終わるように、気体を実質的に含まず、これらの気体成分は、アンモニアを豊富に含むことができる。したがって、第1の流れ(S1)は、不活性物を含み、特に第1の流れ(S1)は、第2の流れ(S2)よりも高い不活性成分の含有量(重量%)を有する。尿素プラント中の不活性成分は、H2及びO2を含む。例えば、第1の流れ(S1)は、第2の流れ(S2)よりも高いH2含有量(重量%)、及び第2の流れ(S2)よりも高いO2含有量を有する。第1の流れ(S1)に含まれる不活性成分は、HPストリッパー(HPSt)を通過し、HPカルバメート凝縮器(HPCC)を通過し、それによって、当該HPユニットの不働態化に寄与し、当該ユニットにおける腐食を防ぐ。
【0094】
このプロセスでは、アンモニアに富む第1の流れ(S1)は、少なくとも部分的に、例えば、完全に、サーマルストリッピング型のHPストリッパーに供給される。第2の流れ(S2)は、第2のMP回収セクション(MPR2)などに、少なくとも部分的に、例えば、完全に供給される。
【0095】
好ましい実施形態では、HP分離器は、反応帯の下流端に配置される。これは、第1の流れ及び第2の流れの液相が実質的に同一の組成を有するという利点を提供し、特に、第1の流れを少なくとも部分的にサーマルストリッパーに輸送し、第2の流れを第2のMP回収セクションに輸送するためのフロー接続(パイプ)において実質的に同一の組成を有することができる。
【0096】
好ましくは、このプロセスは、第2の流れのN/C比を決定することを伴う。
【0097】
好ましくは、このプロセスは、HP分離器から脱気流れのN/C比を決定することを伴う。
【0098】
N/C比を決定することは、有利には、特に、第2の流れが脱気された液体からなる好ましい実施形態において単純である。脱気された第2の流れが二相気体/液体流体の流れの代わりに、液体からなるこれらの実施形態において非常に有利には、それに応じてN/C比は都合よく測定され得る。このようにして、非常に有利には、第1の流れに含まれる液相のN/C比も、それが第2の流れの測定されたN/C比と実質的に同じであるように決定され得る。これは、反応器及びサーマルストリッパーなどの合成セクション、並びにプラントの起動時などの第1のMP回収セクションの動作をより良く制御するために使用することができる。尿素形成反応は反応器内の液相でのみ起こるため、液相中のN/C比に関する情報が有用である。
【0099】
好ましくは、プラントは、脱気された流れのフローライン内に、好ましくは、脱気された第2の流れのMP回収セクションへのフローライン内に、N/C計器を備える。好ましくは、HP脱気液体流れの小さな部分が抜き取られ、N/C計器に供給される。
【0100】
液体尿素反応器流出物の連続的なN/C計器は、当該技術分野において既知であり、例えば、液体密度とN/C比との間の関係(相関関係)、例えば、固定温度及び圧力を使用する。N/C計器は、例えば、コリオリ密度測定、ヌクレオニック密度計、又は例えば、液体密度を測定するための振動素子技術を使用して、液体密度を測定することに基づいている。他の方法も使用することができる。サーマルストリッパーに供給される第1の流れのN/C比に関する情報は、特に本発明のプロセスで有用であり、第1及び第2の回収セクション、例えば、好ましい断熱フラッシュの動作は、尿素収率を最適化するためのより高い柔軟性を提供する。
【0101】
N/C比を測定することによって、合成セクションへのNH3供給及び/又はCO2供給は、好ましくは、NH3再循環流量を調節することによって、最適な収率を得るように調節することができる。好ましくは、このプロセスは、測定されたN/C比に応じて、HP合成セクション、特にNH3再循環流れ流量へのNH3供給及び/又はCO2供給を調節することを伴う。
【0102】
N/C計器の設置は、特に2つのMP回収セクションが、典型的に、異なるN/C比でカルバメート溶液を生成するため、低いエネルギー消費および低いアンモニア放出で安定したプラント動作を保証する。
【0103】
第1のMP回収セクション(MPR1)は、概して、例えば、55重量%~65重量%の尿素、例えば、60重量%~65重量%の尿素、カルバメート再循環流れ(8)、及び別個の液体アンモニア再循環流れ(9)、並びに不活性物(10)を含む気体流れを含むMP尿素溶液(7)を生成する。
【0104】
好ましくは、第1のMP回収セクション(MPR1)は、第1のMP分解器(MPD-1)、第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC-1)、及びアンモニア凝縮器(AC)、並びに好ましくは、MP分離カラム(MPSC)及びアンモニア受容部(AR)を備える。
【0105】
図2は、例示的な第1のMP回収セクション(MPR1)を概略的に示す。第1のMP分解器(MPD-1)は、膨張したストリッピングされた尿素溶液(2)を受容し、加熱を使用して、ストリッピングされた尿素溶液に含有されるカルバメートを分解するとともに、NH
3を除去する。例えば、分解器は、頂部における溶液入口(2)、頂部における気体出口(18)、パッキン、及びシェルアンドチューブ熱交換部、並びに底部における溶液出口(7)、及び任意選択的に、好ましくは底部における、HPカルバメート分離器(CSp)から気体を受容するための入口(6)を備える。
【0106】
第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC-1)は、MP分解器(MPD-1)から気体(18)を受容するための入口を有し、典型的には、当該気体に含まれるCO2及びNH3を、LP回収セクションからいくらかのカルバメート溶液も受容した後に、カルバメート溶液に少なくとも部分的に凝縮するように構成される。LPカルバメート溶液の比較的高い水含有量は、MP凝縮物の結晶化を避けるために使用され得る。第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC-1)中に形成されるMPカルバメート溶液(8)は、概して、ポンプを使用してカルバメート再循環溶液としてHP合成セクションに直接又は間接的に供給される。
【0107】
第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC-1)はまた、非常に好ましくは、断熱フラッシュから気体流れ(11)を受容する。このようにして、過剰のNH3など、MPCC-1で凝縮されていないその気体流れ(11)の成分は、有利には、分離カラム(MPSC)で精製され、アンモニア凝縮器(AC)、例えば、MPアンモニア凝縮器中の比較的純粋な液体アンモニアとして凝縮され得る。アンモニア凝縮器(AC)からのアンモニア凝縮物(22)は、(ほとんど)カルバメートを含有しない。したがって、アンモニア凝縮物(22)は、低い水含有量を有し得る。アンモニア凝縮物(22)は、好ましくは実質的に純粋なアンモニアである。
【0108】
凝縮は、1つ以上の熱交換ユニットを使用し、かつ加熱する必要がある冷却水及び/又は尿素溶液などの冷却流体として使用して実行することができる。第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC-1)は、例えば、加熱される尿素溶液に対する間接的な熱交換のためのMP凝縮器/予蒸発器として、任意選択的に、第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC-1)からの非凝縮気体の少なくとも一部を凝縮するための更なる下流MP凝縮器とともに提供される。下流MP凝縮器は、例えば、冷却水で動作する。MP凝縮器/予蒸発器は、例えば、シェル内で凝縮される気体及びチューブ内で加熱される尿素溶液を備えたシェルアンドチューブ熱交換器である。加熱される尿素溶液は、例えば、プラント及びプロセスのLP回収セクションに由来する。
【0109】
好ましくは、MP凝縮物(19)は、非凝縮気体とともにアンモニア-カルバメート分離カラム(MPSC)に供給され、非凝縮気体は、例えば、気体からCO2を除去するために、カラム内の比較的冷たい液体NH3供給物で還流させられる。例えば、カラム(MPSC)は、蒸留カラムとして使用される。
【0110】
好ましい実施形態では、MP凝縮物(19)がカラムの底部に供給され、加熱され、供給液NH3がカラムの頂部に供給される。好ましくは、カラムはトレイを備える。好ましくは、更に、水性流れは、カラムの頂部のすぐ下に供給される。有利には、分離カラムの頂部からの気体流れ(21)は、NH3及び不活性物のみを含有する。この気体流れ(21)は、好ましくはアンモニア凝縮器(AC)に供給される。アンモニア-カルバメート分離カラム(MPSC)の底部生成物は、MPカルバメート溶液(8)であり、比較的多くのNH3及び水を含有する。
【0111】
第1のMPカルバメート凝縮器(MPCC-1)からの非凝縮気体流れは、より純粋なアンモニア気体への精製後に、好ましくは、(第1の)アンモニア凝縮器(AC)に供給され、これは、冷却水を冷却流体として使用する熱交換器である。アンモニア凝縮器は、好ましくは、20℃~50℃の範囲の温度で動作させられる。
【0112】
凝縮アンモニア(9)は、好ましくは、不活性気体成分(10)がアンモニア受容部(AR)内で液体から分離された後に、HP合成セクションに再循環させられ、液体NH3供給物も受容される。アンモニア受容部(AR)からの液体アンモニアは、部分的に、HPセクションに圧送され(9)、部分的に、MP分離カラム(MPSC)で使用される(23)。
【0113】
気体流れ(10)は、例えば、スクラバー(図示せず)に供給され、そこで水性流れ、例えば、蒸気凝縮物で除去され、そこから液体は、例えば、アンモニア-カルバメート分離カラム(MPSC)にこれを供給することによって、典型的には、HP合成セクションに再循環される。
【0114】
WWTセクションは、例えば、加水分解器と、脱離器と、を備える。特に、MPフラッシングユニットが脱気尿素溶液を受容する実施形態では、気体流れ(10)中の不活性物の量は比較的低くなり得、それに応じて、WWTセクションのエネルギー消費は比較的低くなり得る。
【0115】
第2のMP回収セクション(MPR2)は、第2のMP分解器(MPD2)と、第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)と、を備える。第2のMP回収セクションの例を
図1に示す。
【0116】
好ましくは、このプロセスは、好ましくは脱気された第2の流れ(S2)を、第2のMP回収セクション内で、上述したような好ましいMP断熱フラッシングステップ(MPF)内で高圧から中圧に膨張させて、気体流れ(11)(フラッシュ蒸気)及びフラッシングされたMP尿素溶液(12)がもたらされることを伴う。好ましくは、MPフラッシュは、25bar~40barの範囲の圧力で実行される。好ましくは、第2のMP分解器は、MPフラッシュユニットよりもわずかに低い圧力、例えば、1bar低い圧力で動作する。好ましくは、プラントは、MP断熱フラッシュユニットと第2のMP分解器との間の膨張弁を備える。
【0117】
好ましくは、フラッシングされたMP尿素溶液(12)を、当該第2のMP分解器(MPD2)中のカルバミン酸アンモニウムの分解に供して、処理された尿素溶液(13)及び気体流れ(14)がもたらされる。第2のMP分解器(MPD2)は、典型的には、蒸気との間接的な熱交換のための熱交換器である。気体流れ(14)を、第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)内で凝縮させて、気体流れ(20)に、HPセクション(HPS)に再循環されるカルバメート溶液(15)がもたらされる。任意の非凝縮気体(20)は、例えば、LP回収セクションに含まれるLPカルバメート凝縮器に供給され得る。特に、非凝縮気体(20)の利点は、LP回収セクション内で凝縮及び除去されて、HP合成セクションに直接又は間接的に再循環される低い水含有量のLPカルバメート流れがもたらされることができるように、低い不活性物含有量を有する。第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)からのカルバメート溶液(15)は、例えば、MPCC-2がMPCC-1よりも高い圧力で動作する場合、好ましくは専用のカルバメートポンプを使用して、HPカルバメート凝縮器に圧送される。
【0118】
好ましくは、プラントは、別個のポンプとして、アンモニアHPポンプと、第1のMP回収セクションのカルバメートポンプと、第2のMP回収セクションのカルバメートポンプと、を備え、これら3つの流れを別個にHPセクションに圧送する。これにより、特に、流れは、MP範囲内の異なる温度及び/又は異なる圧力を有することが可能となり、これは、再循環流れ(15)の水含有量を低下させることに有利に寄与する。
【0119】
他の可能性のある実施形態では、カルバメート溶液(15)は、MP分離カラム(MPSC)を迂回し、カルバメート溶液(8)をHPセクションに圧送するために、第1の回収セクション(MPR1)で使用されるカルバメートポンプに供給される。
【0120】
好ましくは、第2のMP回収セクション(MPR2)は、MP CO2ストリッパー(MPS)を更に備える。このストリッパーでは、好ましくは、第2のMP分解器(MPD2)からの尿素溶液(13)は、当該MP CO2ストリッパー(MPS)内のMP CO2供給物と逆電流フローでストリッピング/接触させられ、更なる処理された尿素溶液(16)及び気体流れ(17)がもたらされる。気体流れ(17)は凝縮に供されて、当該第2のMPカルバメート凝縮器(MPCC2)内のカルバメート溶液がもたらされる。それによって、カルバメート溶液(15)の所望の低N/C比が得られる。
【0121】
本発明はまた、好ましくは本発明のプロセスに適した尿素プラント(尿素製造プラント)に関する。尿素製造プロセスに関連して本明細書で考察されるプラント、ユニット、及び接続の選好及び詳細は、本発明のプラントにも適用される。プラントは、反応帯、サーマルストリッパー、及びカルバメート凝縮器を備える高圧合成セクションを備える。反応帯は、例えば、1つ以上の反応器、特に1つ以上の縦型反応器として提供される。縦型尿素反応器は、例えば、底部における1つ以上の入口と、反応器の上部における第1及び第2の流れの出口と、を備える。2つ以上の反応器の場合、並列に配置することもできるが、これらは直列に配置される。プラントは、サーマルストリッパーのストリッピングされた尿素溶液のための出口に接続された入口を有する第1の中圧回収セクションを更に備える。高圧合成セクションは、高圧反応混合物を反応帯から第1の流れ及び第2の流れに分離するように構成された高圧分離器を備える。分離器は、典型的には、第1の流れと第2の流れとの両方が尿素を含有する液相を含有し、第1の流れ(S1)は、任意選択的に、第2の流れ(S2)よりも低い重量密度を有するように構成される。更に、高圧分離器は、当該サーマルストリッパーの入口に接続された第1の流れのための第1の出口と、第2の中圧回収セクションに接続された第2の流れのための第2の出口と、を有する。第1及び第2の中圧回収セクションの詳細は、プロセスに関連して説明されているものと同じである。分離器は、例えば、漏斗設計を有し、漏斗の上部における広い開口部と、底部における狭い開口部と、を有し、狭い開口部は、第2の流れのための出口に接続されている。ここで、上部及び下部という用語は、重力に関して定義されるように使用される。分離器は、例えば、第1の縦型反応器の下流に直列に配置された第2の縦型反応器の上部に配置される。第2の反応器は例えば、第1の反応器の反応混合物のための出口に接続された入口を有する。第2の反応器は、例えば、第1の反応器よりも小さい容積を有する。
【0122】
尿素製造プロセスのために本明細書で論じられる第1及び第2の中圧回収セクションの詳細は、本発明のプラントにも同様に適用される。
【0123】
好ましい実施形態では、尿素プラントは、高圧分離器から中圧回収セクションへの第2の流れのフローライン内の流体、特に液体のN/C比を測定するためのN/C計器、より好ましくは連続N/C計器を備える。N/C計器は、例えば、コリオリ密度測定装置、ヌクレオニック密度計、及び液体密度を測定するための振動素子技術装置からなる群から選択される。プラントはまた、例えば、第2の流れのフローライン内の流量を測定するための流量計も備える。
【0124】
草の根プラントの場合、HPストリッパーは、第2のMP回収セクションによって、プラント容量に対して比較的小さくてもよい。
【0125】
本発明はまた、改造方法に関する。好ましくは、本方法は、サーマルストリッピング型の既存の尿素プラントを改変する方法に関する。好ましくは、改造は、プラントの容量を増加させるために使用され、好ましくは、例えば、追加の反応器を追加することによって、高圧合成セクションの反応器容積を増加させるステップを伴う。
【0126】
既存のプラントは、本明細書に記載の発明のプラントに改変される。本方法は、特に、フローラインによって接続された好ましい断熱フラッシュユニットを、追加されたHP分離器、MP分解器、MPカルバメート凝縮器、及び任意選択的にMPストリッパーの第2の流れのための出口に追加することによって、上記の第2のMP回収セクションを追加することによって、上記のHP分離器を追加するステップを伴う。第2のMP回収セクションに接続されたMP CO2供給入口もまた、好ましくはMP CO2ストリッパーを通して、MP CO2を直接又は間接的にMPカルバメート凝縮器に供給するために追加される。
【0127】
例示的な改造方法は、
図1に概略的に示されており、改造方法は、下線付きユニットを既存のプラントに追加することを含む(追加されるユニット:HPLS、MPF、MPD2、MPCC2、及びMPS)。
【0128】
好ましくは、第2の流れのフローラインにN/C計器が追加される。N/C計器は、例えば、改変されたプラントにおける追加のセクションの動作を調節するために使用され得る。
【0129】
好ましくは、本方法では、MP断熱フラッシングユニットから第1の中圧(MP)回収セクションまでの気体流れのフローラインも追加され、より好ましくは第1のMPカルバメート凝縮器に追加される。
【0130】
好ましい改造方法では、本方法は、既存の第1の尿素反応器の下流に追加の(第2の)尿素反応器を追加し、第1の反応器の頂部から反応混合物を受容することを含む。したがって、反応器は直列に配置される。好ましくは、出て行く第1の反応器は、サーマルストリッパーに接続された、気体と液体との両方に使用される1つの出口のみを有する。既存の第1の反応器は、例えば、頂部に位置する1つの出口のみを有する縦型反応器である。
【0131】
好ましくは、改造の一部として追加された高圧分離器は、当該追加の反応器の内部に配置される。第2/追加の尿素反応器は、好ましくは、上部にHP分離器を備える。したがって、第2の尿素反応器は、好ましくは、第1の流れのための出口及び第2の流れのための別個の出口を有する。直列に2つの縦型反応器を使用すると、より長い滞留時間、及びより高いカルバメートから尿素への変換が可能になる。第1の反応器の出口は、好ましくは頂部にあり、第2の反応器の底部において第2の反応器の入口に接続されている。第1及び第2の反応器は、好ましくは、地表面又はその近くに設置される。第2の反応器の底部は、好ましくは、第1の反応器の頂部の下に配置される。
【0132】
有利には、改造は、既存のプラントのHP合成セクション及び第1のMP回収セクションの広範囲な改変を必要としないが、改変されたプラントは、著しく増加した容量を有する可能性がある。
【0133】
本発明のプラント及び本発明の尿素製造プロセスは、草の根プラント及び既存のプラントの改造のために使用され得る。
【0134】
図3は、サーマルストリッピング型の既存のプラントの改造において追加された例示的な第2の下流縦型尿素反応器(R-2)を概略的に示す。一般に、本発明による改造方法の好ましい実施形態では、第2の反応器は、既存のプラントの縦型尿素反応器とサーマルストリッパーとの間に追加され、上流の第1の反応器の頂部出口から受容される反応混合物(24)のための入口を底部に有する。第2の反応器は、第1の流れ(S1)の出口を頂部に有する。本発明の尿素製造プロセスの好ましい実施形態では、追加された第2の反応器は完全に充填され、反応器内に液面(気体-液体界面)は存在しない。
【0135】
反応器は、漏斗設計を有する分離器を備える。分離器は、底部及び頂部を有する漏斗(F)を備え、狭い開口部を底部に有し、広い開口部を頂部に有する。底部開口部は、第2の流れ(S2)のための出口、特に、ダウンカマーに接続されている。漏斗は、例えば、頂部におけるリングと、円錐台形セグメントと、を備える。広い漏斗の使用は、第2の流れの脱気に寄与する低い液体速度を提供する。
【0136】
図4は、尿素反応器(R)内の例示的な高圧分離器(HPLS)を概略的に示しており、例えば、底部及び頂部を有する漏斗(F)として構築され、底部における狭い開口部を有し、頂部における広い開口部を有する。漏斗の底部開口部は、脱気された液体流れ(26)のための出口に接続され、この液体流れは、好ましくは、第2のMP回収セクションに供給される第2の流れ(S2)であるが、代替的に、サーマルストリッパーに供給される第1の流れ(S1)であることも可能である脱気された流れのためのフローラインは、MPに膨張するためのN/C計器(27)と、膨張弁(28)と、を備える。反応器はまた、気体/液体混合物のための出口(25)も頂部に有し、この混合物は、好ましくは、第1の流れとしてサーマルストリッパーに供給されるが、代替的に第2の流れとして第2のMP回収セクションに供給される。
【0137】
本明細書で使用されるとき、N/C比は、当該分野で慣用されているように、液体流れについては、特に理論的初期混合物に基づく反応帯におけるNH3対CO2のモル比を指す。気体の流れの場合、N/C比は、NH3対CO2のモル比を示す。
【0138】
本明細書で使用されるとき、高圧(HP)は、少なくとも100bara、例えば、110bara~160bara、特に140bara~160baraであり、中圧(MP)は、例えば、10bara~60bara、例えば、20bara~60baraであり、低圧(LP)は、例えば、4bara~10baraであり、これらの圧力範囲は、プロセス溶液に対するものであり、蒸気及び加熱流体に対しては必ずしも同じではない。略称の「bara」はbar絶対値を意味する。本明細書で使用される圧力は、特に断りのない限り、絶対圧力である。
【0139】
結論として、本発明は、サーマルストリッパーを使用した尿素製造プラント及びプロセスに関し、反応混合物は、2つの部分に分離され、第1の部分は、サーマルストリッパーに少なくとも部分的に、例えば、完全に供給され、第2の部分は、サーマルストリッパーを完全に迂回し、中圧回収セクションに供給される。第1及び第2の部分は、任意選択的に異なる組成を有する。