(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-25
(45)【発行日】2024-01-09
(54)【発明の名称】変形爪矯正具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/11 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
A61F5/11
(21)【出願番号】P 2023532046
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2022026171
(87)【国際公開番号】W WO2023277121
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2021109975
(32)【優先日】2021-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591206108
【氏名又は名称】マルホ発條工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000113908
【氏名又は名称】マルホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】根来 浩輝
(72)【発明者】
【氏名】人見 泰行
(72)【発明者】
【氏名】山田 源太
(72)【発明者】
【氏名】井村 隆行
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016007820(DE,A1)
【文献】米国特許第2405547(US,A)
【文献】国際公開第2007/018371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形爪を矯正するための変形爪矯正具であって、
弧状に屈曲した線材から形成され前記変形爪矯正具が前記変形爪に装着された状態で少なくとも弧状部分が前記変形爪の先端部の裏側に係止される一対の係止部と、
線材を波形に屈曲することにより形成される波形バネを有し、延在方向における両端部それぞれが前記一対の係止部に連続する本体部と、を備え、
前記一対の係止部と、前記本体部における前記一対の係止部それぞれに連続する両端部よりも中央部側で前記一対の係止部の一部と対向する対向部位と、は、前記本体部の延在方向に直交する方向側と前記本体部の延在方向における前記一対の係止部の内側とから、前記一対の係止部と前記対向部位との間に挿入された前記変形爪の先端部を挟持する、
変形爪矯正具。
【請求項2】
前記波形バネは、1つの第1仮想平面内において波形に屈曲した第1線材から形成され、
前記一対の係止部は、同一の第2仮想平面内において弧状に屈曲した第2線材から形成され、
前記第2仮想平面は、前記第1仮想平面と直交する方向において前記第1仮想平面から予め設定された距離だけ離間している、
請求項1に記載の変形爪矯正具。
【請求項3】
前記一対の係止部それぞれの中心は、前記本体部の波形バネの幅方向における中央を通り且つ前記一対の係止部の並び方向に延在する仮想軸よりも前記仮想軸と直交し且つ前記第1仮想平面に平行な同一方向側へずれている、
請求項2に記載の変形爪矯正具。
【請求項4】
前記第1線材および前記第2線材は、NiTi合金、ステンレス鋼、Co合金および樹脂から選択される材料から形成されている、
請求項2または3に記載の変形爪矯正具。
【請求項5】
前記一対の係止部と前記本体部とは、連続一体に形成されている、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の変形爪矯正具。
【請求項6】
前記一対の係止部は、前記本体部の波形バネの幅方向における前記本体部の外側に配置されている、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の変形爪矯正具。
【請求項7】
前記本体部は、前記波形バネと前記一対の係止部とを連結する線状の連結部を有し、
前記波形バネの前記一対の係止部の並び方向における両端部に位置する前記対向部位は、それぞれ、前記連結部と交差している、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の変形爪矯正具。
【請求項8】
前記波形バネは、
前記一対の係止部の並び方向における中央部に位置する第1サブバネと、
前記並び方向における前記第1サブバネの両側に位置する第2サブバネと、を有し、
前記第2サブバネの振幅は、前記第1サブバネの振幅と異なる、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の変形爪矯正具。
【請求項9】
前記本体部は、前記波形バネと前記一対の係止部とを連結する線状の連結部を有し、
前記連結部は、弧状に屈曲した線状であり前記波形バネに連続する第1屈曲部を有し、
前記第1屈曲部は、前記一対の係止部の並び方向における前記波形バネの中央部の前記波形バネの幅方向における一方側の端縁よりも他方側に位置する、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の変形爪矯正具。
【請求項10】
前記本体部は、前記波形バネと前記一対の係止部とを連結する線状の連結部を有し、
前記連結部は、前記一対の係止部の並び方向に直交する面内において鉤状に屈曲した線状であり前記一対の係止部に連続する第2屈曲部を有する、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の変形爪矯正具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き爪や陥入爪等の変形爪を矯正するための変形爪矯正具に関する。
【背景技術】
【0002】
巻き爪とは、爪の両側縁が内側に湾曲した状態で、皮膚の挟み込みや皮膚への刺激による炎症や疼痛を伴うこともある。陥入爪とは、爪の先端や側縁が爪周囲の皮膚に入り込み慢性の炎症を起こした状態で、足指の変形爪が悪化すると歩行に支障をきたすこともある。
【0003】
特に、巻き爪に取り付けられて巻き爪を正常な状態に矯正するための矯正具として、線材を波状に成形してなるバネ性を有するバネ主体部と、バネ主体部の両端に設けられそれぞれ爪の側縁部へ掛止される一対の引っかけ部と、を備えるバネ状巻き爪矯正具が提案されている(例えば特許文献1参照)。ここで、一対の引っかけ部は、それぞれ、線材の先端部をバネ主体部側に向けて鉤状に湾曲させてなる。そして、バネ状巻き爪矯正具は、爪の左右側縁部の一方に一方の引っかけ部を引っかけるとともに爪先側に他方の引っかけ部を引っかけた後、バネ主体部を引き延ばしながら他方の引っかけ部を爪の左右側縁部の他方に移動させることにより爪に装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたバネ状巻き爪矯正具の場合、巻き爪に装着する際、一対の引っかけ部のいずれか一方の先端部を、爪の側縁外方から爪の先端部側縁近傍の裏側の微少なスペースに挿入して係止させる。このためバネ状巻き爪矯正具を巻き爪に装着させるにはある程度の熟練を要するため、バネ状巻き爪矯正具の爪への装着に手間を要する虞がある。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、変形爪の矯正力を高めつつ、変形爪に容易に装着することができる変形爪矯正具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る変形爪矯正具は、
変形爪を矯正するための変形爪矯正具であって、
弧状に屈曲した線材から形成され前記変形爪矯正具が前記変形爪に装着された状態で少なくとも弧状部分が前記変形爪の先端部の裏側に係止される一対の係止部と、
線材を波形に屈曲することにより形成される波形バネを有し、延在方向における両端部それぞれが前記一対の係止部に連続する本体部と、を備え、
前記一対の係止部と、前記本体部における前記一対の係止部それぞれに連続する両端部よりも中央部側で前記一対の係止部の一部と対向する対向部位と、は、前記本体部の延在方向に直交する方向側と前記本体部の延在方向における前記一対の係止部の内側とから、前記一対の係止部と前記対向部位との間に挿入された前記変形爪の先端部を挟持する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る変形爪矯正具は、一対の係止部と、本体部における一対の係止部それぞれに連続する両端部よりも中央部側で一対の係止部の一部と対向する対向部位と、が、本体部の延在方向に直交する方向側と本体部の延在方向における一対の係止部の内側とから、一対の係止部と対向部位との間に挿入された変形爪の先端部を挟持する。これにより、まず、変形爪の先端部を、本体部の延在方向に直交する方向側から、一対の係止部と対向部位との間に挿入することにより、変形爪矯正具に変形爪を挟持させた後、変形爪の先端部が一対の係止部と対向部位とで挟持された状態を維持しつつ、一対の係止部それぞれを変形爪の先端部の側縁まで、変形爪の先端縁に沿って摺動させて一対の係止部と対向部位とにより変形爪の先端部をその幅方向における両側縁で挟持した状態とすることができる。このため、一対の係止部を比較的容易に変形爪の先端部の裏側に係止させることができるので、変形爪矯正具を変形爪に容易に装着することができる。また、一対の係止部と対向部位とにより変形爪の先端部をその幅方向における両側縁で挟持した状態とすることができるので、変形爪の矯正力も高めることができる。また、一対の係止部は、それぞれ、変形爪矯正具が変形爪に装着された状態で少なくとも弧状部分が変形爪の先端部の裏側に係止される。これにより、一対の係止部のいずれか一方を変形爪の先端縁に沿って摺動させる際に係止部が変形爪の裏側に位置する指先に弧状部分が当接するので、係止部の一部が指先に引っ掛かってしまうことを抑制できる。この点でも変形爪矯正具を変形爪に容易に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の実施の形態に係る変形爪矯正具の平面図である。
【
図1B】実施の形態に係る変形爪矯正具の側面図である。
【
図2A】実施の形態に係る変形爪矯正具を変形爪に装着した状態を示す側面図である。
【
図2B】実施の形態に係る変形爪矯正具を変形爪に装着した状態を示す平面図である。
【
図3】実施の形態に係る変形爪矯正具の変形爪への装着方法を説明するための図である。
【
図5A】変形例に係る変形爪矯正具の平面図である。
【
図5B】変形例に係る変形爪矯正具の側面図である。
【
図5C】変形例に係る変形爪矯正具を
図5Bとは異なる方向から見た側面図である。
【
図10A】変形例に係る変形爪矯正具の平面図である。
【
図10B】変形例に係る変形爪矯正具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る変形爪矯正具について、図を参照しながら説明する。本実施の形態に係る変形爪矯正具は、いわゆる巻き爪や陥入爪等の変形爪を矯正するためのものである。この変形爪矯正具は、弧状に屈曲した線材から形成され変形爪矯正具が変形爪に装着された状態で少なくとも弧状部分が変形爪の先端部の裏側に係止される一対の係止部と、線材を波形に屈曲することにより形成される波形バネを有し、延在方向における両端部それぞれが一対の係止部に連続する本体部と、を備える。そして、一対の係止部と、本体部における一対の係止部それぞれに連続する両端部よりも中央部側で一対の係止部の一部と対向する対向部位と、が、一対の係止部の並び方向に直交する方向側と一対の係止部の並び方向における一対の係止部の内側とから、一対の係止部と対向部位との間に挿入された前記変形爪の先端部を挟持する。
【0011】
本実施の形態に係る変形爪矯正具1は、
図1Aおよび
図1Bに示すように、弧状に屈曲した線材から形成された一対の係止部11と、線材から形成されその延在方向における両端部それぞれが一対の係止部11に連続する本体部12と、を備える。一対の係止部11と本体部12とは、一本の線材を屈曲させることにより作製することができる。線材としては、例えばNiTi合金、ステンレス鋼(例えばSUS304)およびCo合金から選択される材料から形成された線材を採用することができる。或いは、線材として、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)のような樹脂から形成された線材を採用してもよい。また、線材の直径は、例えば0.35mm以上且つ0.45mm以下とすることができる。なお、線材は、断面円形のものに限定されるものではなく、断面矩形状のいわゆる角線或いはその他の断面形状を有するものであってもよい。
【0012】
本体部12は、
図1Bに示す1つの第1仮想平面VPL1内において線材を波形に屈曲することにより形成された波形バネ12aを有する。なお、波形バネ12aの波数は、特に限定されるものでなく、例えば1以上且つ9以下に設定される。また、
図1Aに示す波形バネ12aの波数は、例えば3以上且つ9以下に設定することができる。ここで、波数は、波形バネ12aのY軸方向におけるいずれか一方に位置する屈曲部分の数に相当する。また、波形バネ12aの振幅L2は、例えば2.4mm以上且つ11.0mm以下に設定することができ、6.0mm以上且つ8.0mm以下に設定されるのが好ましい。
【0013】
一対の係止部11は、
図1Bに示す同一の第2仮想平面VPL2内において線材を弧状に屈曲することにより形成されている。そして、この第2仮想平面VPL2は、前述の第1仮想平面VPL1と平行であり、第1仮想平面VPL1と直交する方向において第1仮想平面VPL1から予め設定された距離L3だけ離間している。つまり、一対の係止部11は、Z軸方向において、波形バネ12aから予め設定された距離L3だけ離間している。この距離L3は、例えば一般的な変形爪Nの厚さに基づいて設定され、例えば0.8mm程度に設定される。また、
図1Aに示すように、一対の係止部11の中心C1は、本体部12の波形バネ12aの幅方向、即ち、Y軸方向における中央を通り且つ一対の係止部11の並び方向、即ち、X軸方向に延在する仮想軸JS1よりも仮想軸JS1と直交し且つ第1仮想平面VPL1に平行な同一方向側、即ち、+Y方向側へずれている。これにより、変形爪矯正具1を変形爪Nに装着した状態で、波形バネ12aが、変形爪Nの先端部よりも基端部側に配置される。
【0014】
また、一対の係止部11は、
図2Bに示すように、変形爪矯正具1が変形爪Nに装着された状態で、弧状部分11aが変形爪Nの先端部NTの裏側、即ち、先端部NTの-Z方向側に係止される。また、波形バネ12aは、X軸方向における長さがその自然長よりも長くなるように伸張された状態となっている。そして、
図2Aに示すように、一対の係止部11と本体部12における一対の係止部11それぞれに連続する両端部よりもその延在方向における中央部側において一対の係止部11の一部と対向する対向部位12bとが、変形爪Nの先端部NTを挟持する。ここで、伸張された波形バネ12aの復元力も、係止部11を変形爪Nの先端部NTをX軸方向において挟持する方向に作用する。また、本体部12は変形爪Nに沿って湾曲しており、変形爪Nにおける係止部11が係止された部分には、本体部12の復元力が変形爪Nを矯正する方向へ作用する。
【0015】
ここで、変形爪矯正具1を変形爪Nに装着する方法について説明する。まず、
図3の矢印AR1に示すように、変形爪矯正具1の係止部11を変形爪Nの先端部側の外方から変形爪Nの先端部NTの裏側、即ち、先端部NTの-Z方向側に差し込む。このとき、一対の係止部11と、本体部12における一対の係止部11それぞれに連続する両端部よりも中央部側で一対の係止部11の一部と対向する対向部位12bと、が、-Y方向側から一対の係止部11と対向部位12bとの間に挿入された変形爪Nの先端部NTを挟持する。次に、
図2Bの矢印AR2に示すように、変形爪Nの先端部NTが一対の係止部11と対向部位12bとで挟持された状態を維持しつつ、係止部11を変形爪Nの先端縁NEに沿って変形爪Nの先端部NTの幅方向における両側縁へ摺動させる。これにより、一対の係止部11と対向部位12bとにより変形爪Nの先端部NTをその幅方向における両側縁で挟持した状態で変形爪矯正具1が変形爪Nに装着される。
【0016】
ここで、
図4に示すような変形爪Nについて、変形爪Nの先端部NTのX軸方向における両端部間の距離W2の変形爪Nの先端部NTの厚さ方向における一方の側面に沿った両端部間の距離W1に対する比率を狭小化率と定義する。また、変形爪矯正具1の一方の係止部11を保持した状態で、他方の係止部11の前述の第2仮想平面VPL2と直交する方向へ変位させるときに他方の係止部11に加わる荷重を曲げ荷重と定義する。この場合、変形爪矯正具1を変形爪Nに装着することにより、変形爪Nの狭小化率を50%から70%に改善しようとした場合、変形爪矯正具1が狭小化率50%乃至70%である変形爪Nに装着された状態で前述の曲げ荷重が1N程度となるようにすることが効果的に変形爪Nを矯正する観点から好ましい。そして、変形爪矯正具1の波形バネ12aの波数を、3以上且つ9以下、波形バネ12aの振幅を6.0mm以上且つ8.0mm以下とすれば、変形爪矯正具1が狭小化率50%乃至70%である変形爪Nに装着された状態で前述の曲げ荷重を1N程度とすることができる。従って、波形バネ12aの波数は3以上且つ9以下に設定され、波形バネ12aの振幅L2は、6.0mm以上且つ8.0mm以下に設定されるのが好ましい。
【0017】
以上説明したように、本実施の形態の変形爪矯正具1によれば、一対の係止部11と、本体部12における一対の係止部11それぞれに連続する両端部よりも中央部側で一対の係止部11の一部と対向する対向部位12bと、が、-Y方向側とX軸方向における一対の係止部11の内側から一対の係止部11と対向部位12bとの間に挿入された変形爪Nの先端部NTを挟持する。これにより、まず、変形爪Nの先端部NTを、変形爪矯正具1の-Y方向側から、一対の係止部11と対向部位12bとの間に挿入することにより、変形爪矯正具1に変形爪Nを挟持させた後、変形爪Nの先端部NTが一対の係止部11と対向部位12bとで挟持された状態を維持しつつ、一対の係止部11それぞれを変形爪Nの先端部NTの側縁まで、変形爪Nの先端縁に沿って摺動させて一対の係止部11と対向部位12bとにより変形爪Nの先端部NTをその幅方向における両側縁で挟持した状態とすることができる。このため、一対の係止部11を比較的容易に変形爪Nの先端部NTの裏側に係止させることができるので、変形爪矯正具1を変形爪Nに容易に装着することができる。また、一対の係止部11と対向部位12bとにより変形爪Nの先端部NTをその幅方向における両側縁で挟持した状態とすることができるので、変形爪Nの矯正力も高めることができる。また、一対の係止部11は、それぞれ、変形爪矯正具1が変形爪Nに装着された状態でその弧状部分11aが変形爪Nの先端部NTの裏側に係止される。これにより、一対の係止部11のいずれか一方を変形爪Nの先端縁NEに沿って摺動させる際、変形爪Nの裏側に位置する指先FEに係止部11の弧状部分11aが当接するので、係止部11の一部が指先FEに引っ掛かってしまうことを抑制できる。従って、変形爪矯正具1を変形爪Nに容易に装着することができる。
【0018】
また、本実施の形態の変形爪矯正具1は、前述のように、変形爪Nの先端縁NE側の外方から一対の係止部11を変形爪Nの先端部NTの裏側に挿入した後、一対の係止部11それぞれを変形爪Nの先端部NTの幅方向における両側へ摺動させることにより、変形爪矯正具1が変形爪Nに装着される。これにより、変形爪矯正具1の変形爪Nへの装着を比較的容易に行うことができるとともに、変形爪Nに変形爪矯正具1の本体部12の復元力を効率的に伝達させることができる。
【0019】
また、本実施の形態に係る変形爪矯正具1では、一対の係止部11が、Z軸方向において本体部12における一対の係止部11それぞれに連続する両端部よりもその延在方向における中央部側の対向部位12bから予め設定された距離だけ離間している。これにより、変形爪Nの先端部NTを、一対の係止部11と、Z軸方向において本体部12における一対の係止部11それぞれに連続する両端部よりもその延在方向における中央部側の対向部位12bと、の間に嵌入させて挟持させることができる。従って、変形爪矯正具1を変形爪Nの先端部NTに堅固に固定することができる。
【0020】
更に、本実施の形態に係る変形爪矯正具1の一対の係止部11それぞれの中心C1が、本体部12の波形バネ12aの幅方向における中央を通る仮想軸JS1よりも+Y方向側へずれている。これにより、変形爪矯正具1の一対の係止部11を変形爪Nの先端部NTに係止させた状態で、本体部12の波形バネ12aを変形爪Nの先端縁NEよりも基端部側に配置することができる。従って、一対の係止部11を変形爪Nの先端部NTよりも基端部側に係止させることなく、波形バネ12aが変形爪Nの先端縁NEからはみ出さないようにして変形爪矯正具1を変形爪Nに装着することができる。それ故、利用者に対して装着時の不快感を与えることなく且つ波形バネ12aの一部が変形爪Nの先端縁NEからはみ出していることに起因した変形爪矯正具1の変形爪Nからの脱落を防止できる。
【0021】
また、本実施の形態に係る一対の係止部11と本体部12とは、NiTi合金、ステンレス鋼およびCo合金から選択される材料から形成された1つの線材から連続一体に形成されている。これにより、1本の線材を屈曲させる工程を行うだけで変形爪矯正具1を作製することができるので、変形爪矯正具1に必要な部品点数を削減することができ、その分、変形爪矯正具1のコストを低減できる。また、例えば部品同士を溶接する工程のように人が手作業で行うことが多い工程を省略することができるので、機械による加工が行い易いという利点がある。
【0022】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば
図5A乃至
図5Cに示す変形爪矯正具2のように、本体部22の形状が、実施の形態で説明した変形爪矯正具1の本体部12の形状とは異なるものであってもよい。本変形例に係る変形爪矯正具2は、一対の係止部21と、波形バネ22aを有し延在方向における両端部それぞれが一対の係止部21に連続する本体部22と、を備える。ここで、一対の係止部21は、実施の形態と同様に、弧状に屈曲した線材から形成され変形爪矯正具2が変形爪に装着された状態で少なくとも弧状部分21aが変形爪の先端部の裏側に係止される。そして、一対の係止部21と、本体部22における一対の係止部21それぞれに連続する両端部よりもその延在方向における中央部側の部位22bと、が、変形爪矯正具2が変形爪に装着された状態で、変形爪の先端部を挟持する。
【0023】
また、例えば
図6に示す変形爪矯具3のように、係止部31が、本体部22側に向かって突出する突出部31bを有するものであってもよい。なお、
図6において、前述の変形例と同様の構成については
図5Cと同一の符号を付している。この突出部31bは、例えば係止部31を形成する線材の先端部を本体部22に向かう方向へ屈曲させることにより形成される。本構成によれば、変形爪矯正具3が変形爪に装着された状態で、突出部31bの先端部が変形爪の先端部の裏側に圧接されるので、変形爪矯正具3の変形爪からの脱落が抑制される。
【0024】
実施の形態では、一対の係止部11それぞれに対応する第2仮想平面VPL2と波形バネ12aに対応する第1仮想平面VPL1とは、平行である例について説明した。但し、これに限らず、例えば
図7に示す変形爪矯正具4のように、一対の係止部41それぞれに対応する第2仮想平面VPL42が、第1仮想平面VPL1に対して傾いているものであってもよい。即ち、一対の係止部41の中心軸J41が、第1仮想平面VPL1の法線方向、即ち、Z軸方向に対して傾斜しているものであってもよい。
【0025】
実施の形態では、Y軸方向において、係止部11が本体部12の内側に配置される例について説明したが、Y軸方向における係止部と本体部との位置関係はこれに限定されない。例えば
図8に示す変形爪矯正具5のように、一対の係止部51と、波形バネ52aを有し延在方向における両端部それぞれが一対の係止部51に連続する本体部52と、を備え、一対の係止部51が、Y軸方向における本体部52の外側、即ち、本体部52の+Y方向側に配置された形状を有するものであってもよい。ここで、一対の係止部51のうち
図8における左側に位置する一方の係止部51は、+Z方向から見て時計回りに巻回されており、
図8における右側に位置する他方の係止部51は、+Z方向から見て反時計回りに巻回されている。また、本体部52における係止部51にZ軸方向で対向する対向部位52a1と係止部51とが、連結部52cを介して連結されている。連結部52cは、線状であり一端部が係止部51に連続する連結部本体521cと、連結部本体521cの波形バネ52a側で波形バネ52aに連続する屈曲部52dと、を有する。一対の係止部51は、実施の形態と同様に、弧状に屈曲した線材から形成され変形爪矯正具5が変形爪に装着された状態で少なくとも弧状部分51aが変形爪の先端部の裏側に係止される。そして、一対の係止部51と本体部52の対向部位52a1とが、変形爪矯正具5が変形爪に装着された状態で、変形爪の先端部を挟持する。また、本体部52の対向部位52a1は、それぞれ、連結部52cと交差し、Z軸方向において重なっている。ここで、対向部位52a1は、連結部52cの-Z方向側に位置している。また、屈曲部52dは、Z軸方向に直交する面内において-Y方向側に凸となるように弧状に屈曲している第1屈曲部である。
【0026】
波形バネ52aの振幅L52は、例えば2.4mm以上且つ11.0mm以下に設定することができ、6.0mm以上且つ8.0mm以下に設定されるのが好ましい。そして、係止部51と本体部52における対向部位52a1および連結部分52cとを含む部分のY軸方向における長さL51は、波形バネ52aの振幅52の1.3倍以上1,5倍以下に設定することができる。例えば波形バネ52aの振幅L52を7.5mmに設定した場合、前述の長さL51を10mmに設定することができる。また、変形爪矯正具5のX軸方向の長さL53は、例えば12mm以上14mm以下に設定することができる。更に、屈曲部52dの曲率半径は、1mm以上1.5mm以下に設定することができる。なお、波形バネ52aの波数は、
図8に示す2周期半に相当する数に限定されるものではなく、2周期半以上、例えば3周期半、4周期半に相当する数であってもよい。この場合、変形爪矯正具5のX軸方向の長さL53は、例えば、波形バネ52a波数に応じて、14mmよりも長く設定することができる。
【0027】
本構成によれば、波形バネ52aのX軸方向における両端部の対向部位52a1が、それぞれ、連結部52cと交差し、Z軸方向において重なっており、連結部52cの-Z方向側に位置し、連結部52cが、その波形バネ52a側において波形バネ52aに連続し-Y方向に凸となるように弧状に屈曲した屈曲部52dを有する。これにより、本体部52における波形バネ52aと一対の係止部51との間の距離を長くすることができ、X軸方向に沿って一対の係止部51を互いに離れる方向へ離間させ易くなるので、その分、変形爪矯正具5を変形爪に装着し易くなるという利点もある。また、一対の係止部51が、本体部52の+Y方向側に配置された形状を有することにより、一対の係止部51が変形爪の先端部に装着された状態で、本体部51が実施の形態に比べて変形爪の基端部側に配置される。これにより、変形爪の基端部側まで変形爪矯正具5の矯正力を作用させることができるので、その分、変形爪を効果的に矯正できる。
【0028】
実施の形態では、波形バネ12aの振幅L2が一定である例について説明したが、波形バネが、その中心軸方向における中央部に位置する第1サブバネと、第1サブバネの両側に位置する第2サブバネと、を有し、第1サブバネの振幅と第2サブバネの振幅とが異なるものであってもよい。例えば
図9に示す変形爪矯正具6のように、一対の係止部61と、波形バネ62aを有し延在方向における両端部それぞれが一対の係止部61に連続する本体部62と、を備え、波形バネ62aが、X軸方向における中央部に位置する第1サブバネ621aと、第1サブバネ621aのX軸方向における両側に位置する第2サブバネ622aと、を有するものであってもよい。ここで、第2サブバネ622aの振幅L61が、第1サブバネ621aの振幅L62に比べて長い。また、第1サブバネ621aの幅方向、即ち、Y軸方向における中央を通り且つX軸方向に延在する仮想軸JS61は、第2サブバネ622aのY軸方向における中央を通り且つX軸方向に延在する仮想軸JS62よりも-Y方向側へずれている。また、一対の係止部61のうち
図9における左側に位置する一方の係止部61は、+Z方向から見て時計回りに巻回されており、
図9における右側に位置する他方の係止部61は、+Z方向から見て反時計回りに巻回されている。また、第2サブバネ622aにおける係止部61にZ軸方向で対向する対向部位62a1と係止部61とが、連結部62cを介して連結されている。連結部62cは、線状であり一端部が係止部61に連続する連結部本体621cと、連結部本体621cにおける第2サブバネ622a側で第2サブバネ622aに連続する屈曲部62dと、を有する。
【0029】
一対の係止部61は、実施の形態と同様に、弧状に屈曲した線材から形成され変形爪矯正具6が変形爪に装着された状態で少なくとも弧状部分61aが変形爪の先端部の裏側に係止される。そして、一対の係止部61と前述の第2サブバネ622aの対向部位62a1とが、変形爪矯正具6が変形爪Nに装着された状態で、変形爪の先端部を挟持する。また、第2サブバネ622aの対向部位62a1は、それぞれ、連結部62cと交差し、Z軸方向において重なっている。ここで、対向部位62a1は、連結部62cの-Z方向側に位置している。また、係止部61と連結部62cとを含む部分のY軸方向における長さは、第2サブバネ622aの振幅L61と等しくなっている。また、屈曲部62dは、Z軸方向に直交する面内において-Y方向側に凸となるように弧状に屈曲している第1屈曲部である。
【0030】
第1サブバネ621aの振幅L62は、例えば2.4mm以上且つ11.0mm以下に設定することができ、6.0mm以上且つ8.0mm以下に設定されるのが好ましい。そして、第2サブバネ622aの振幅L61は、第1サブバネ621aの振幅L62の1.3倍以上1,5倍以下に設定することができる。例えば第1サブバネ621aの振幅L62を7.5mmに設定した場合、第2サブバネ622aの振幅L61を10mmに設定すればよい。また、変形爪矯正具6のX軸方向の長さL63は、例えば12mm以上14mm以下に設定することができる。更に、屈曲部62dの曲率半径は、1mm以上1.5mm以下に設定することができる。なお、第1サブバネ621aの波数は、
図9に示す1周期に相当する数に限定されるものではなく、1周期以上、例えば2周期、3周期に相当する数であってもよい。この場合、変形爪矯正具6のX軸方向の長さL63は、例えば、第1サブバネ621aの波数に応じて、14mmよりも長く設定することができる。
【0031】
本構成によれば、第2サブバネ622aの振幅L61が、第1サブバネ621aの振幅L62に比べて長い。これにより、変形爪矯正具6を変形爪に装着した状態で波形バネ62aが変形爪の表面からの浮き上がることを抑制できる。従って、利用者が、変形爪矯正具6を変形爪に装着した状態で使用している最中に、波形バネ62aの一部を利用者が着用する衣類等に引っ掛けてしまうことを抑制できる。
【0032】
また、例えば
図10Aに示す変形爪矯正具7のように、一対の係止部71と、波形バネ72aを有し延在方向における両端部それぞれが一対の係止部71に連続する本体部72と、を備え、波形バネ72aが、X軸方向における中央部に位置する第1サブバネ721aと、第1サブバネ721aのX軸方向における両側に位置する第2サブバネ722aと、を有するものであってもよい。ここで、一対の係止部71のうち
図10Aにおける左側に位置する一方の係止部71は、+Z方向から見て反時計回りに巻回されており、
図10Aにおける右側に位置する他方の係止部71は、+Z方向から見て時計回りに巻回されている。また、第2サブバネ722aにおける係止部71にZ軸方向で対向する対向部位72a1と係止部71とが、連結部72cを介して連結されている。連結部72cは、線状の連結部本体721cと、連結部本体721cにおける係止部71側で連結部本体721cに連続する屈曲部722cと、連結部本体721cにおける第2サブバネ722a側で第2サブバネ722aに連続する屈曲部72dと、を有する。屈曲部72dは、Z軸方向に直交する面内において-Y方向側に凸となるように弧状に屈曲しており、第1サブバネ721aの-Y方向側の端縁よりも+Y方向側に位置する第1屈曲部である。屈曲部722cは、
図10Bに示すように、X軸方向に直交する面内において+Y方向側に凸となるように鉤状に屈曲している第2屈曲部である。
図10Aに戻って、対向部位72a1は、第2サブバネ722aにおける第1サブバネ721a側とは反対側の端部に位置している。また、第1サブバネ721aの幅方向、即ち、Y軸方向における中央を通り且つX軸方向に延在する仮想軸JS71が、第2サブバネ722aのY軸方向における中央を通り且つX軸方向に延在する仮想軸JS72よりも-Y方向側へずれている。
【0033】
また、一対の係止部71は、実施の形態と同様に、弧状に屈曲した線材から形成され変形爪矯正具7が変形爪に装着された状態で少なくとも弧状部分71aが変形爪の先端部の裏側に係止される。そして、
図10Bに示すように、一対の係止部71と前述の第2サブバネ722aの対向部位72a1とが、変形爪矯正具7が変形爪Nに装着された状態で、変形爪の先端部を挟持する。更に、第2サブバネ722aの対向部位72a1は、
図10Aに示すように、それぞれ、前述の連結部72cと交差し、Z軸方向において重なっている。ここで、対向部位72a1は、連結部72cの-Z方向側に位置している。また、係止部71と連結部72cと屈曲部72dとを含む部分のY軸方向における長さは、第2サブバネ722aの振幅L71よりも長さL74だけ短くなっている。
【0034】
第1サブバネ721aの振幅L72は、例えば2.4mm以上且つ11.0mm以下に設定することができ、6.0mm以上且つ8.0mm以下に設定されるのが好ましい。そして、第2サブバネ722aの振幅L71は、第1サブバネ721aの振幅L72の1.3倍以上1,5倍以下に設定することができる。例えば第1サブバネ721aの振幅L72を6mmに設定した場合、第2サブバネ722aの振幅L71を8mmに設定すればよい。また、変形爪矯正具7のX軸方向の長さL73は、例えば12mm以上14mm以下に設定することができる。更に、屈曲部分72dの曲率半径は、1mm以上1.5mm以下に設定することができる。なお、第1サブバネ721aの波数は、
図10Aに示す1周期に相当する数に限定されるものではなく、1周期以上、例えば2周期、3周期に相当する数であってもよい。この場合、変形爪矯正具7のX軸方向の長さL73は、例えば、第1サブバネ721aの波数に応じて、14mmよりも長く設定することができる。
【0035】
本構成によれば、屈曲部72dが、第1サブバネ721aの-Y方向側の端縁よりも+Y方向側に位置する形状を有する。これにより、変形爪矯正具7を変形爪に装着した状態において波形バネ72aが変形爪の表面からの浮き上がるのを抑制できる。
【0036】
また、本構成によれば、連結部72cが、
図10Bに示すように、X軸方向に直交する面内において+Y方向側に凸となるように鉤状に屈曲している屈曲部722cを有する。これにより、変形爪矯正具7が変形爪Nに装着された状態で、屈曲部722cの屈曲部分の復元力により係止部71の爪Nへの装着力が増強されるという効果が得られる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態及び変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【0038】
本出願は、2021年7月1日に出願された日本国特許出願特願2021-109975号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2021-109975号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、変形爪を矯正するための変形爪矯正具として好適である。
【符号の説明】
【0040】
1,2,3,4,5,6,7:変形爪矯正具、11,21,31,41,51,61,71:係止部、11a,21a,51a,61a,71a:弧状部分、12,22,52,62,72:本体部、12a,22a,52a,62a,72a:波形バネ、12b,52a1,62a1,72a1:対向部位、22b:部位、31b:突出部、52c,62c,72c:連結部、52d,62d,72d,722c:屈曲部、521c,621c,721c:連結部本体、621a,721a:第1サブバネ、622a,722a:第2サブバネ、C1:中心、J41:中心軸、JS1,JS61,JS62,JS71,JS72:仮想軸、VPL1:第1仮想平面、VPL2,VPL42:第2仮想平面