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特許7410363冷却装置、及び冷却装置を用いたセンサ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】冷却装置、及び冷却装置を用いたセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/10 20060101AFI20231227BHJP
   F25D 15/00 20060101ALI20231227BHJP
   F25B 9/00 20060101ALI20231227BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20231227BHJP
   F16L 59/153 20060101ALI20231227BHJP
   G01R 33/035 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F25D3/10 A
F25D15/00
F25B9/00 Z
F16L59/065
F16L59/153
G01R33/035
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019236420
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105476
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-07-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】520258389
【氏名又は名称】超電導センサテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】波頭 経裕
(72)【発明者】
【氏名】田辺 圭一
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031986(JP,A)
【文献】特開2001-345208(JP,A)
【文献】特開平06-109821(JP,A)
【文献】特開平05-079600(JP,A)
【文献】特開平06-188465(JP,A)
【文献】特開2019-207191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 3/10
F25D 15/00
F25B 9/00
F16L 59/065
F16L 59/153
G01R 33/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導センサ素子と、
液体の冷媒と、
前記超電導センサ素子と前記冷媒とを収容する第1容器と、
前記第1容器で蒸発した前記冷媒を再液化する冷凍機を有し、再液化した前記冷媒を収容し、前記第1容器と接しない第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器とを接続するチューブと、
を備え
前記第1容器は、第1冷凍機を更に有し、
前記第2容器は、第2の超電導センサ素子を更に有し、
前記第1冷凍機と前記冷凍機とを交互に駆動するよう制御する制御部を更に備える
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記第2容器は、前記冷凍機のノイズの前記超電導センサ素子への影響を低減できる距離を離して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第1容器は、第1の液面検出器を更に有し、
前記第1の液面検出器が前記冷媒の液面の低下を検出したとき、前記制御部は、前記冷凍機の駆動を停止し、前記第1冷凍機を駆動することを特徴とする請求項に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第1容器は、前記冷媒を吸収する吸収材を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1容器は、前記冷媒を収容する第1耐熱容器を内部に有し、
前記第2容器は、再液化された前記冷媒を収容する第2耐熱容器を内部に有する、
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記チューブの一端は前記第1耐熱容器と連通し、前記チューブの他端は前記第2耐熱容器と連通していることを特徴とする請求項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記チューブは真空断熱構造を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項8】
超電導センサ素子と、
液体の冷媒と、
前記超電導センサ素子と前記冷媒とを収容する第1容器と、
前記第1容器で蒸発した前記冷媒を再液化する冷凍機を有し、再液化した前記冷媒を収容し、前記第1容器と接しない第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器を接続するチューブと、
前記第1容器と前記第2容器とを固定する台座と、
制御回路を有する第3容器と
を備え
前記第1容器は、第1冷凍機を更に有し、
前記第2容器は、第2の超電導センサ素子を更に有し、
前記制御回路は、前記第1冷凍機と前記冷凍機とを交互に駆動することを特徴とするセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、及び冷却装置を用いたセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底での資源探査、生産モニタリング、地磁気観測などに、比較的高温で動作するSQUID(Superconducting Quantum Interference Device:超電導量子干渉素子)の使用が検討されている。SQUIDを適切な動作温度に保つために、極低温の冷媒中にSQUIDを浸漬して冷却する。高温超電導SQUIDの場合は、沸点が77Kの液体窒素が冷媒として用いられる。ニオブ系等の金属超電導体を用いたSQUIDの冷却には、液体ヘリウムや液体水素が用いられる。低温環境を維持するために、冷媒とSQUIDを収容する断熱容器に冷凍機が接続されている。SQUIDを用いた磁気センシングでは、低ノイズかつ高感度の計測が求められ、冷凍機で直接SQUIDを冷却することは、振動ノイズ、磁気的ノイズ等の観点から望ましくないからである。
【0003】
断熱容器内でSQUIDを冷却する場合、内圧が高くなると温度が上昇し、液体の冷媒が気化する。液体窒素の場合、気化すると体積は700倍にもなり危険である。冷却型の磁気センサを水中に投入するシステムでは、断熱容器内で蒸発した冷媒ガスを、リリースチューブを用いて地上に排出している。
【0004】
液化天然ガスタンクで発生したボイルオフガスを再液化して回収するシステム(たとえば、特許文献1参照)や、低温液化ガスの蒸発ガス再液化装置(たとえば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-106498号公報
【文献】特開2015-124919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SQUIDを海底磁力計(OBM:Ocean Bottom Magnetometer)に用いることが検討されている。水深が数十メートル程度の場所で、水上からケーブル接続により磁気センシングを行う場合は、蒸発した冷媒ガスをリリースチューブで地上に排出する方法が考えられる。しかし、水深100メートル以上の海底で計測とデータ取得を行い、測定終了後に自動浮上するシステムでは、潮流の影響によりノイズが増大するため、リリースチューブによる冷媒ガスの排出は困難である。
【0007】
本発明は、ノイズの影響を抑制しながら、断熱容器内で超電導センサ素子を一定期間、一定温度に冷却する構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様では、冷却装置は、超電導センサ素子と、液体の冷媒と、超電導センサ素子と冷媒とを収容する第1容器と、第1容器で蒸発した冷媒を再液化する冷凍機を有し、再液化した冷媒を収容し、第1容器と接しない第2容器と、前記第1容器と第2容器とを接続するチューブと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
ノイズの影響を抑制しながら、断熱容器内で超電導センサ素子を一定期間、一定温度に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の冷却装置の原理説明図である。
図2】第1実施形態の冷却装置を用いたセンサ装置の模式図である。
図3】センサ装置の制御ユニットの模式図である。
図4】第1実施形態の冷却装置の変形例である。
図5】第2実施形態の冷却装置の原理説明図である。
図6】第2実施形態の冷却装置を用いたセンサ装置の模式図である。
図7】第2実施形態の冷却装置の変形例である。
図8図7の冷却装置の冷凍機切り換えユニットの動作のフローチャートである。
図9】その他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態では、100メートル以上の深さの海底で、磁気センシングによる海底探査を行う場合を想定するが、実施形態の冷却装置は、水深100メートル未満の水中や、地上での地磁気観測、フィールド探査、生体磁気観測などにも適用可能である。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の冷却装置100の原理説明図である。冷却装置100は、冷却ユニット10、減圧ユニット20、及び、冷却ユニット10と減圧ユニット20をつなぐチューブ18を有する。
【0013】
冷却ユニット10は、超電導磁気センサであるセンサ素子15の冷却に用いられる。センサ素子15は、SQUIDに、検出コイル、入力コイル、帰還コイル等を組み合わせた微小なデバイスである。冷却ユニット10の断熱容器12に液体冷媒13が満たされて、センサ素子15を低温環境に維持する。SQUIDが液体窒素の沸点(77K)よりも高い温度で動作する場合、液体冷媒13は液体窒素である。SQUIDが、液体窒素の沸点よりも低い低温で動作する場合は、液体冷媒は液体ヘリウム、液体水素等である。
【0014】
センサ素子15は、断熱容器12の内部で、サファイア、ガラスエポキシ等のロッドの下端部あるいは断熱容器12の底部に固定されて液体冷媒13に浸漬されている。図1では、図面の簡単化のため、断熱容器12の底部にセンサ素子15が設置された場合を記述している。
【0015】
断熱容器12は、外部からの熱の流入をできるだけ遮断できることが望ましく、たとえば、断熱真空ガラスの容器である。断熱容器12を含む冷却ユニット10の全体が、耐圧容器11の中に収容され、密閉されている。外側の耐圧容器11と、内側の断熱容器12の間は真空となっている。
【0016】
断熱容器12の上端の開口部は、図示を省略するが、断熱材で封止されている。断熱容器12内で液体冷媒13に浸漬されているセンサ素子15は、配線16によって、冷却ユニット10の外部の制御ユニット40に接続されている。センサ素子15の動作は、制御ユニット40によって制御される。
【0017】
液体冷媒13は、使用開始時には断熱容器12の上端まで充填されるが、時間の経過とともに、内圧上昇による温度の上昇、外部から漏れ入る熱などによって蒸発する。気化した冷媒は、チューブ18を通って、減圧ユニット20に排気される。チューブ18は、たとえば、海底での使用に耐え得る耐圧チューブである。
【0018】
上述のように、冷媒が液体窒素の場合、気化した窒素の体積は、液体窒素の体積の700倍になる。減圧ユニット20は、窒素ガスを液相に戻して、冷却ユニット10の内圧の上昇を抑制する。減圧ユニット20の動作は、冷媒ガスの冷却と圧縮であるが、冷却ユニット10内の圧力の上昇を抑えるという意味で、「減圧ユニット」と呼ぶ。
【0019】
減圧ユニット20は、全体が耐圧容器21に収容され、密閉されている。減圧ユニット20は、耐圧容器21の内側に配置される断熱容器22と、冷凍機25を有する。冷凍機25から断熱容器22の内部に、冷却ヘッド27が伸びている。チューブ18で送られてくる冷媒ガスは、減圧ユニット20で冷却及び圧縮されることで、再液化して液体冷媒23となる。
【0020】
冷却ユニット10と減圧ユニット20をセットで用いることで、冷却ユニット10の断熱容器12内の圧力上昇を防ぐことができる。冷却ユニット10で計測が行われている間中、減圧ユニット20の冷凍機25は運転されている。冷却ユニット10と、冷凍機25を備える減圧ユニット20が空間的に分離されているので、冷却ユニット10による計測は、冷凍機25の振動や磁気ノイズにはほとんど影響されない。
【0021】
冷却ユニット10の内部の液体冷媒13が、センサ素子15を冷却できないレベルまで減少すると、減圧ユニット20で再液化された液体冷媒を、冷却ユニット10に充填してもよい。
【0022】
図2は、図1の冷却装置100を用いたセンサ装置1の模式図である。図2のセンサ装置1は、100メートル以上の深さでのOBMに適した構成を有する。センサ装置1は、計測完了後に自動浮上できるように、ブイ43を有する。
【0023】
冷却装置100の冷却ユニット10と減圧ユニット20は、台座41と台座42によって、互いに離れた位置に固定されている。冷却ユニット10と減圧ユニット20を海底で安定して支持できるように、台座41、及び42は、十分な剛性と強度を有する材料で形成されている。台座41、及び42は、例えば、繊維強化プラスチックで形成されているグレーチングである。チューブ18は、互いに離れて位置する冷却ユニット10と減圧ユニット20を、安定して接続する。
【0024】
台座41と台座42の間に、制御ユニット40、制御ユニット40のためのバッテリー31、及び、減圧ユニット20のためのバッテリー32が配置されている。制御ユニット40、バッテリー31、及び32は、それぞれ耐圧容器内に収容されている。
【0025】
冷却ユニット10は、ケーブル35で制御ユニット40に接続されている。ケーブル35の内部には、センサ素子15を駆動する電気信号が供給される駆動線と、センサ素子15から計測データを受信するデータ受信線が配置されている。減圧ユニット20は、バッテリー32から供給される電力で、冷凍機25を駆動する。
【0026】
容器内に液体の冷媒を保持する冷却ユニット10と減圧ユニット20は、台座41、42に対して縦置きで配置される。バッテリー31、32、及び制御ユニット40は、台座41と台座42の間に水平に配置される。台座41、及び42の一辺の長さは80cm~100cm、センサ装置1の高さは、ブイ43を入れた全体でも100cm以下である。ブイ43のない状態では、センサ装置1の高さは、40cm~50cmである。海底での磁気計測のために、センサ装置1の全体がコンパクトかつ重心が下方にある安定した構成になっている。
【0027】
センサ装置1の海中への投入時と海底での計測中は、台座41の底面側に、数十キロの錘がつけられている。計測が完了すると、錘は切り離され、センサ装置1はブイ43によって自動的に浮上する。海上に浮上したセンサ装置1は、アンテナ44から無線ビーコン信号を送信して、センサ装置1の位置を知らせる。
【0028】
錘の切り離しは、海上からの音響信号に基づいて行われてもよいし、バッテリー31または32の残量が一定レベル未満になったときに、制御ユニット40が切り離し信号を出力してもよい。前者の場合は、台座41と台座42の間に音響機構が配置されていてもよい。
【0029】
センサ装置1では、コンパクトな構成の中で、冷却ユニット10と減圧ユニット20を最大限に離れた位置に配置することで、冷却ユニット10の内圧上昇を防ぎ、かつ、振動及びノイズの影響を低減する。内圧上昇にともなう温度の上昇で、冷媒の蒸発が進むが、減圧ユニット20での再液化も促進される。相変化に伴う潜熱を考慮して冷凍機25の出力を設定することで、過冷却を防ぐことができ、特別な冷凍機制御なしに冷却温度をほぼ一定に保つことができる。
【0030】
図3は、センサ装置1の制御ユニット40の模式図である。制御ユニット40は、信号受信回路401と、SQUID制御回路402と、データロガー405を有する。信号受信回路401とSQUID制御回路402は、FLL(Flux-Locked Loop)回路で実現されてもよい。SQUID制御回路402は、センサ素子15のSQUIDに微弱なバイアス電流を印加する。信号受信回路401は、センサ素子15で検出された磁場変化に対応する電気信号を受信する。磁束変化とSQUIDの出力電圧の関係は線形でないため、FLLはセンサ素子15に負帰還を行って、センサ素子15で検知された磁場変化に比例した電流信号を取得する。
【0031】
信号受信回路401とSQUID制御回路402は、データロガー405に接続されている。データロガー405は、プロセッサ403とメモリ404を有する。信号受信回路401からデータロガー405に入力された信号は、プロセッサ403によって所定のレートでサンプリングされて、メモリ404に記録される。
【0032】
図4は、第1実施形態の変形例として、冷却装置100Aを示す。冷却装置100Aでは、減圧ユニット20Aの耐圧容器21として、内壁にパーマロイなどの磁気シールド28が設けられたチタン製またはステンレス製の容器を使用する。
【0033】
人工的に発生させた磁場による応答を計測するTEM(Transient Electro-Magnetic:時間領域電磁探査)法では、100Hz以上の周波数の計測も行われるので、センサを内包する冷却ユニットに金属製の耐圧容器を用いることは難しい。しかし、TEM法による計測に影響を与えない誘導電流の範囲であれば、チタン、ステンレス等の金属容器を減圧ユニット20Aとして使用することも可能である。また、地磁気測定のように100Hz以下の低周波の計測を行う場合は、チタン、ステンレス等の金属容器を冷却ユニット10Aとして使用することも可能である。
【0034】
耐圧容器21の内側に配置される断熱容器22は、たとえば、パイレックスガラスデュワである。パイレックスガラスに替えて、ガラスエポキシ、ファイバ強化プラスチック(FRP)などを用いてもよい。冷凍機25は、スターリング冷凍機、パルスチューブ冷凍機等である。
【0035】
冷却ユニット10の耐圧容器11は、炭素繊維強化ブラスチック(CFRP;Carbon Fiber Reinforced plastic)製である。耐圧容器11の内側で液体冷媒を保持する断熱容器12は、パイレックスガラスデュワである。パイレックスガラスに替えて、ガラスエポキシ、FRP等の容器を用いてもよい。
【0036】
減圧ユニット20Aに磁気シールド付きの金属容器を用いることで、振動ノイズ、磁気ノイズ等の影響を低減することができる。
【0037】
第1実施形態の冷却装置100または100Aは、冷却ユニット10内の液体冷媒が蒸発により所定レベル未満に減少しても、減圧ユニット20内で再液化された液体冷媒を、冷却ユニット10に補充することで、繰り返し、何度でも使用することができる。
【0038】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の冷却装置200の原理説明図である。第2実施形態では、冷却機能と減圧機能を備える一対の冷却及び減圧ユニット(以下、「冷却/減圧ユニット」とする)を用い、計測と冷却を交互に行う。
【0039】
冷却装置200は、第1の冷却/減圧ユニット50-1と、第2の冷却/減圧ユニット50-2と、これらの間をつなぐチューブ58を有する。第1の冷却/減圧ユニット50-1と、第2の冷却/減圧ユニット50-2は、それぞれ、制御ユニット60に接続されている。
【0040】
第1の冷却/減圧ユニット50-1は、耐圧容器511に収容されている。耐圧容器511の内側に、液体冷媒53を密閉する断熱容器521が配置され、液体冷媒53にセンサ素子15-1が浸漬されている。断熱容器521は、たとえば、パイレックス(登録商標)断熱容器である。
【0041】
耐圧容器511の内部で、断熱容器521の上方に、冷凍機552-1が配置されている。冷凍機552-1から断熱容器521の中に冷却ヘッド571が伸びている。チューブ58は、冷却ヘッド571の内部を通って、断熱容器521に連通している。冷凍機552-1は、パーマロイ等の磁気シールド581でシールドされていてもよい。
【0042】
第2の冷却/減圧ユニット50-2は、第1の冷却/減圧ユニット50-1と同じ構成である。第2の冷却/減圧ユニット50-2は、耐圧容器512に収容されている。耐圧容器512の内側に、液体冷媒53を密閉する断熱容器522が配置され、液体冷媒53にセンサ素子15-2が浸漬されている。断熱容器522は、たとえば、パイレックス断熱容器である。
【0043】
耐圧容器512の内部で、断熱容器522の上方に、冷凍機552-2が配置されている。冷凍機552-2から断熱容器522の中に冷却ヘッド572が伸びている。チューブ58は、冷却ヘッド572の内部を通って、断熱容器522に連通している。冷凍機552-2は、パーマロイ等の磁気シールド582でシールドされていてもよい。
【0044】
第1の冷却/減圧ユニット50-1が、冷却器(計測器)として機能するとき、第2の冷却/減圧ユニット50-2は、減圧器(再液化器)として機能する。第1の冷却/減圧ユニット50-1が、減圧器(再液化器)として機能するとき、第2の冷却/減圧ユニット50-2は、冷却器(計測器)として機能する。
【0045】
第1の冷却/減圧ユニット50-1でセンサ素子15-1がセンシングを行うとき、制御ユニット60からセンサ素子15-1にバイアス電流が印加される。このとき、冷凍機552-1はオフになっているので、冷凍機552-1からの振動の影響はない。また、冷凍機552-2は隔離設置されており、さらに磁気シールド582でシールドされているので、センサ素子15-1に対する磁気ノイズの影響を低減できる。冷凍機552-2とセンサ素子15-1との距離は、例えば、50cmである。
【0046】
第2の冷却/減圧ユニット50-2で、冷凍機552-2はONになっており、第1の冷却/減圧ユニット50-1から、チューブ58によって導入された気体の冷媒は、再液化される。冷凍機552-2が動作していても、冷凍機552-1とセンサ素子15-1は隔離設置されているため、冷凍機552-2の振動の影響は無視できる。センサ素子15-2は、動作していてもよいし、動作していなくてもよい。センサ素子15-2を動作させないときは、制御ユニット60はセンサ素子15-2にバイアス電流を供給しない。
【0047】
第1の冷却/減圧ユニット50-1と、第2の冷却/減圧ユニット50-2のいずれか一方が、液体冷媒で満たされているときは、他方は、ほぼ空となる。冷却ユニットの役割と減圧ユニットの役割を交互に実施させることで、連続的な計測が可能である。
【0048】
冷凍機552-1と552-1が交互に切り替えられるならば、センサ素子15-1とセンサ素子15-2は、必ずしも交互駆動されなくてもよい。センサ素子15-1からの信号と、センサ素子15-2から信号の両方が制御ユニット60で収集されるが、冷凍機552の切り替えのタイミングで、一方のセンサ素子15からのデータだけを用いればよい。冷凍機552が動作している側のセンサ素子15のデータは、ノイズの混入が多いことが予想されるので、破棄されてもよい。
【0049】
図5の冷却装置200は、潜水艦の内部など、長時間運用が可能であり、電源を外部供給できる環境で有用となる。この場合、冷凍機552-1及び552-2のノイズを遮断する磁気シールド581、582は、冷凍機552-1及び552-2の周囲にだけ配置される。
【0050】
図6は、図5の冷却装置200を用いたセンサ装置2の模式図である。センサ装置2はたとえば、100メートル未満の深さでのOBMなど、バッテリー充電用のケーブルで海上と接続され得る場合には、半永久的に動作を継続することができる。バッテリー充電用のケーブルで接続される場合は、ブイ43は省略されてもよい。
【0051】
バッテリーの寿命(72時間程度)の範囲で計測が完了する場合は、100メートル以上の深さでのOBMにも適している。計測完了後は、ブイ43により自動浮上する。
【0052】
第1の冷却/減圧ユニット50-1と、第2の冷却/減圧ユニット50-2は、台座41、及び、台座42によって、互いに離れた位置で縦置きに固定されている。制御ユニット60と、第1の冷却/減圧ユニット50-1のためのバッテリー31と、第2の冷却/減圧ユニット50-2のためのバッテリー32は、台座41と台座42間に水平に配置される。
【0053】
制御ユニット60は、ケーブル33-1でバッテリー31に接続され、ケーブル59-1で第1の冷却/減圧ユニット50-1に接続されている。また、制御ユニット60は、ケーブル33-2でバッテリー32に接続され、ケーブル59-2で第2の冷却/減圧ユニット50-2に接続されている。
【0054】
制御ユニット60は、ケーブル59-1及び59-2を介して、冷凍機の切り替え信号を、第1の冷却/減圧ユニット50-1と、第2の冷却/減圧ユニット50-2に供給する。センサ素子15-1と15-2を駆動する駆動信号またはバイアス電流は、交互に供給されてもよいし、双方に継続的に供給されてもよい。
【0055】
センサ装置2も、全体がコンパクト、かつ下方に重心のある安定した構成である。第1の冷却/減圧ユニット50-1と、第2の冷却/減圧ユニット50-2を最大限に離れた位置に配置して交互駆動することで、冷却側での容器内の内圧上昇を防ぎ、かつ振動及び磁気ノイズの影響を低減することができる。
【0056】
図7は、第2実施形態の変形例として、冷却装置200Aを示す。第1の冷却/減圧ユニット50-1の断熱容器521に、液面センサ201を配置し、第2の冷却/減圧ユニット50-2の断熱容器522に、液面センサ202を配置する。
【0057】
液面センサ201、及び202は、制御ユニット60Aの冷凍機切り換えユニット620に接続されている。液面センサ201が液体冷媒53の液面の低下を検出すると、冷凍機切り換えユニット620は、第1の冷却/減圧ユニット50-1の役割を、冷却側から減圧側に切り替えて、冷凍機552-1をオンにする。第2の冷却/減圧ユニット50-2の冷凍機552-2をオフにして、センサ素子15-2からの計測データを取得する。
【0058】
液面センサ201、202は、たとえば、Pt-Co温度センサである。液面センサ201、202が液体冷媒53の中にあるときは、検知される温度は低い。液面センサ201、202が液体冷媒53の外に出ると、検知される温度が上昇する。この温度変化により、第1の冷却/減圧ユニット50-1と、第2の冷却/減圧ユニット50-2を自動的に切り替えることができる。
【0059】
図8は、冷凍機切り換えユニット620の動作のフローチャートである。第1の冷却/減圧ユニット50-1と、第2の冷却/減圧ユニット50-2のいずれかを冷却側、すなわち計測側とする。この例では、第1の冷却/減圧ユニット50-1のSQUID1のセンシングデータを取得する(S11)。冷凍機1はオフにされ、第2の冷却/減圧ユニット50-2の冷凍機2がオンになっている。
【0060】
センシング中のユニット1で液面低下が検出されたか否かが判断される(S12)。液面の低下が検出されると(S12でYes)、冷凍機2をオフ、冷凍機1をオンにして、役割を切り替える(S13)。第2の冷却/減圧ユニット50-2のSQUID2のセンシングデータを取得する(S14)。
【0061】
センシング中のユニット2で液面低下が検出されたか否かが判断される(S15)。液面の低下が検出されると(S15でYes)、冷凍機1をオフ、冷凍機2をオンにして、役割を切り替える(S16)。その後、S11に戻って、第1の冷却/減圧ユニット50-1のSQUID1のセンシングデータを取得する。
【0062】
図8のフローは、冷却装置200Aが動作する間、ループで行われる。計測が終了して冷却装置200Aの動作が終了すると、図8のフローは終了する。
【0063】
<その他の変形例>
図9は、その他の変形例を示す。冷却装置300は、冷却ユニット10A、減圧ユニット20A、及び、冷却ユニット10Aと減圧ユニット20Aをつなぐチューブ18Cを有する。
【0064】
冷却ユニット10Aは、センサ素子15の冷却に用いられる。耐圧容器11の内側に配置される断熱容器12の内部に、液体冷媒13の動きを抑制する吸収材302が配置されている。
【0065】
吸収材302は、連続気泡の多孔質の材料である。冷却装置300をOBMに適用することを考えると、システムを海中に沈めるときに、潮流等によって、かなり揺れることが考えられる。断熱容器12内の吸収材302に液体冷媒13をしみこませておくことで、システムが大きく揺れても、液体冷媒が断熱容器12の外に漏洩することを防止できる。
【0066】
冷媒として液体窒素を用いる場合、吸収材302は、メラミンフォーム、ポリ塩化ビニル、特殊スポンジなどである。これらの材料は、液体窒素を吸収保持できるだけでなく、液体窒素によって硬化しない。
【0067】
海底に設置されたあとは、液体窒素は徐々に蒸発する。連続気泡なので、気化した窒素をチューブ18Cに逃がすことができる。
【0068】
減圧ユニット20Aは、ノイズ低減のためパーマロイ等の磁気シールド28が施された金属性の耐圧容器21に収容されている。
【0069】
上述したすべての実施例で、気化した冷媒を配送するチューブ18または58に、「トランスファーチューブ」として知られる真空断熱チューブを用いてもよい。一例として、内径が4mm、外径が8mmのステンレス製のトランスファーチューブを用いることができる。気化しているとはいえ、冷媒ガスも極めて低温である。トランスファーチューブを用いて、低温の冷媒ガスの流路への熱流入を極力抑えることで、減圧ユニットでの再液化がより効率化される。冷凍機の小型化、省電力化が実現する。
【0070】
実施形態の冷却装置とセンサ装置は、密閉空間でのSQUIDの冷却が必要な磁気計測に適用される。ノイズの影響を抑制しながら、断熱容器内でSQUIDを一定時間、一定温度に冷却して、高感度の磁気計測が可能になる。
【0071】
海底、潜水艦の内部、宇宙線の内部などでの磁気計測の他、地上での資源探査、地磁気観測、生産モニタリング等にも適用可能であり、磁気計測分野の発展に貢献することができる。
【符号の説明】
【0072】
1、2 センサ装置
10、10A 冷却ユニット(第1容器)
11、21、511、512 耐圧容器
12,22、521、522 断熱容器
13、23、53 冷媒
15、15-1、15-2 センサ素子
16 配線
18、58 チューブ
20 減圧ユニット(第2容器)
25,552-1、552-2 冷凍機
27,571、572 冷却ヘッド
28 磁気シールド
31、32 バッテリー
40、60,60A 制御ユニット(第3容器)
620 冷凍機切り換えユニット
41、42 台座
50-1 第1の冷却/減圧ユニット(第1容器)
50-2 第2の冷却/減圧ユニット(第2容器)
100、100A、200、200A 冷却装置
201、202 液面センサ
302 吸収材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9