(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】外壁の塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/32 20060101AFI20231227BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20231227BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20231227BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20231227BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20231227BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20231227BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B05D1/32 B
B05D7/00 L
B05D5/06 104H
B05D1/02 Z
E04F13/02 K
E04F13/07 G
E04F13/08 Y
(21)【出願番号】P 2019160989
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝彦
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-274754(JP,A)
【文献】特開2018-115484(JP,A)
【文献】特開昭62-211452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
E04F13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁材が並設され、隣り合う壁材の間に
シーリング材またはパテ材が充填されていない目地部が設けられた外壁の塗装方法であって、
前記目地部および前記目地部の両側の壁材の縁部を覆うように目地テープを貼付し、
前記目地テープおよび前記目地テープの両側の壁材の上に、玉吹き塗膜を形成する、外壁の塗装方法
(ただし、目地の個所に、より広幅の目地材を貼着し、吹付材を吹付け、吹付材が乾燥後この目地材を除去する場合を除く)。
【請求項2】
前記壁材がモルタル、コンクリート、窯業系素材、プラスチック、金属、木材から選ばれる、請求項1に記載の外壁の塗装方法。
【請求項3】
前記玉吹き塗膜を形成した後、または前記玉吹き塗膜を形成する前に、前記目地テープおよび前記目地テープの両側の壁材の上に、他の塗膜を形成する、請求項1
または2に記載の外壁の塗装方法。
【請求項4】
前記目地テープおよび前記玉吹き塗膜の色調が、前記壁材の色調と、Lab色空間においてΔaが±3以内かつΔbが±3以内の関係にある、請求項1~3のいずれか1項に記載の外壁の塗装方法。
【請求項5】
前記目地テープの厚さが5~500μmであり、
前記玉吹き塗膜が、前記玉吹き塗膜の被塗装面を基準とした高さが0.5mm以上の領域を複数有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の外壁の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁面は、外壁ボード等の壁材が複数併設され、その外側が塗装等により加飾されていることが多い。このような外壁面においては、隣り合う壁材同士の間隔が地震や寒暖差により変化する。この間隔の変化に対応するため、壁材同士が突き合された目地部にシーリング材を充填する方法がとられている。
【0003】
目地部にシーリング材を充填する場合、充填後に経時的にシーリング材が収縮し、目地部に凹みが生じることがある。
特許文献1では、目地部に生じる凹みを目立ちにくくするため、目地部にシーリング材を充填し、養生した後、シーリング材よりも体積収縮率が小さいパテ材を充填し、塗装を行う方法が提案されている。
しかし、特許文献1の方法は、手間や時間がかかり、屋外での作業に難がある。
【0004】
一方、特許文献2には、パテ材やシーリング材を充填した目地部の上に目地処理テープを貼り付けた後、目地処理テープの厚さより厚い塗膜を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-162664号公報
【文献】特開2003-268949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の方法では、塗膜を形成する面の、目地処理テープの幅方向の両縁の位置に、目地処理テープの厚さによる段差が生じる。この段差は、目地処理テープの厚さより厚い塗膜を形成した後でも認識され、外観を損なう。
塗膜を形成する前に段差をパテ材等で埋めれば、段差を目立ちにくくすることができるが、この作業は、特許文献1の方法と同様に、手間や時間がかかる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、壁材間の目地部に貼付された目地テープを簡便に目立ちにくくすることができる外壁の塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕複数の壁材が並設され、隣り合う壁材の間に目地部が設けられた外壁の塗装方法であって、
前記目地部および前記目地部の両側の壁材の縁部を覆うように目地テープを貼付し、
前記目地テープおよび前記目地テープの両側の壁材の上に、玉吹き塗膜を形成する、外壁の塗装方法。
〔2〕前記玉吹き塗膜を形成した後、または前記玉吹き塗膜を形成する前に、前記目地テープおよび前記目地テープの両側の壁材の上に、他の塗膜を形成する、前記〔1〕の外壁の塗装方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外壁の塗装方法によれば、壁材間の目地部に貼付された目地テープを簡便に目立ちにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る塗装方法によって塗装された外壁の目地部およびその近傍を模式的に示す断面図である。
【
図2】実施形態に係る塗装方法によって塗装された外壁の目地部およびその近傍を模式的に示す正面図である。
【
図3】他の実施形態に係る外壁の塗装方法によって塗装された外壁の目地部およびその近傍を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を用い、実施形態を示して本発明を説明する。なお、
図1~3における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0012】
図1は、実施形態に係る塗装方法によって塗装された外壁の目地部およびその近傍を示す断面図であり、
図2は、その正面図である。
本実施形態に係る塗装方法は、複数の壁材11が並設され、隣り合う壁材11の間に目地部13が設けられた外壁を塗装する方法である。本実施形態では、目地部13にシーリング材やパテ材は充填されていない。
壁材11の材質としては、特に限定されず、例えばモルタル、コンクリート、窯業系素材、プラスチック、金属、木材が挙げられる。壁材11の表面は平滑でもよく、凹凸を有していてもよい。壁材11の表面に塗膜が設けられていてもよい。
【0013】
本実施形態に係る塗装方法は、
目地部13および目地部13の両側の壁材11の縁部を覆うように目地テープ20を貼付する工程(工程(a))と、
目地テープ20および目地テープ20の両側の壁材11の上に、玉吹き塗膜30を形成する工程(工程(b))と、
工程(b)の後、目地テープ20および目地テープ20の両側の壁材11の上(玉吹き塗膜30の上)に、他の塗膜40を形成する工程(工程(c))と、
を有する。
【0014】
<工程(a)>
目地テープ20としては、特に限定されず、公知の目地テープを使用できる。
目地テープ20としては、樹脂フィルム、不織布、織布、編物、樹脂製メッシュ、樹脂製ネット、樹脂製パンチングシート、スポンジ等が挙げられる。
目地テープ20の材質としては、セルロース、ナイロン、ビニロン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、レーヨン等が挙げられる。
【0015】
目地テープ20の厚さは、5~500μmが好ましく、10~200μmがより好ましい。目地テープ20の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、目地テープ20の強度が十分高く、地震や寒暖差による壁材11間の間隔の変化に十分に追随できる。目地テープ20の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、壁材11に貼付した目地テープ20をより目立ちにくくすることができる。
【0016】
目地テープ20の貼付方法としては、例えば、接着剤を用いる方法が挙げられる。この場合、壁材11と目地テープ20との間には接着層(図示略)が介在する。
接着剤を用いる場合、目地テープ20の一方の表面に接着剤を塗布し、接着剤の塗布面を壁材11側に向けて目地テープ20を貼付してもよいし、目地部13の両側の壁材11の縁部に接着剤を塗布し、その上に目地テープ20を貼付してもよい。
接着剤を目地テープ20に塗布する場合、接着剤は、目地テープ20の一方の表面の全面に塗布されてもよいし、部分的(例えば幅方向の両縁部のみ)に塗布されてもよい。
接着剤としては、目地テープ20と壁材11とを接着可能なものであればよい。接着剤としては、例えばアクリル系接着剤が挙げられる。
【0017】
<工程(b)>
玉吹き塗膜30は、玉吹き塗装により形成された塗膜である。
玉吹き塗装では、スプレーガンにて塗料を塊状にして被塗装面に衝突させるようにして塗布することにより、被塗装面上に複数の島状の凸部31を形成する。塗料を塗布した後、必要に応じて、形成された島状の凸部の頂部を、ローラー等で平坦化してもよい。
したがって、玉吹き塗膜30の表面は凹凸面となっている。玉吹き塗膜30内に、壁材11が露出した部分が存在していてもよい。
玉吹き塗膜30は、典型的には、樹脂および着色顔料を含む。
【0018】
玉吹き塗膜30は、壁材11上に、玉吹き塗膜30の被塗装面(本実施形態では壁材11の表面)を基準とした高さが0.5mm以上の領域を複数有することが好ましい。高さ0.5mm以上の領域を複数有していれば、目地テープ20の段差がより目立ちにくくなる。
平面視において、玉吹き塗膜30全体の面積に対する高さ0.5mm以上の領域の合計の面積の割合は、50~95%が好ましく、60~80%がより好ましい。
【0019】
高さ0.5mm以上の領域は、被塗装面を基準とした高さが1mm以上の領域を含むことが好ましい。高さ1mm以上の領域を含んでいれば、目地テープ20の段差がより目立ちにくくなる。
平面視において、玉吹き塗膜30全体の面積に対する高さ1mm以上の領域の合計の面積の割合は、60~90%が好ましく、60~80%がより好ましい。
【0020】
玉吹き塗膜30全体の面積は、玉吹き塗装を施した部分の面積である。
高さ0.5mm以上の領域および高さ1mm以上の領域それぞれの面積は、玉吹き塗膜30の表面を光学顕微鏡、CCDマイクロスコープにより観察し、その画像を画像解析ソフトにより解析することにより求められる。
高さ0.5mm以上の領域および高さ1mm以上の領域それぞれの面積は、玉吹き塗装の塗装条件(塗料の塗布回数、塗布量等)により調整できる。例えば、塗布量を多くすれば、各領域の面積が大きくなる傾向がある。
【0021】
玉吹き塗膜30は、塗装対象の外壁の全面に形成してもよく、一部に形成してもよい。外壁の一部に玉吹き塗膜30を形成する場合、少なくとも、目地テープ20の上と、目地テープ20の両縁近傍の壁材11の上に形成する。
他の塗膜40を形成した後の外観をより均質にできる点で、塗装対象の外壁の全面に玉吹き塗膜30を形成することが好ましい。
【0022】
玉吹き塗膜30を形成する塗料(以下、「塗料A」ともいう。)としては、玉吹き塗装が可能なものであればよい。
塗料Aとしては、アクリル系塗料、アクリルシリコーン系塗料等が挙げられる。
塗料Aとしては、意匠(目地を目立ちにくくする)の観点から、塗膜形成時に体積収縮しにくいものが好ましい。
塗料Aとしては、体積収縮の点から、高加熱残分(例えば60~90質量%)であるものが好ましい。加熱残分は、塗料の総質量に対する、塗料を105℃で180分間加熱した後の残分の質量の割合(不揮発分)である。
【0023】
<工程(c)>
他の塗膜40は、玉吹き塗膜30に該当しない塗膜である。他の塗膜40は、典型的には、樹脂および着色顔料を含む白色ないし有色の塗膜であり、外壁の彩色のために、塗装対象の外壁の全面に設けられる。
本実施形態では、他の塗膜40は、玉吹き塗膜30を覆うように形成されており、その表面は、玉吹き塗膜30の表面形状に沿った凹凸面となっている。
【0024】
他の塗膜40を形成する塗料(以下、「塗料B」ともいう。)としては、形成される塗膜が玉吹き塗膜30、目地テープ20および壁材11に付着するものであればよく、外壁に彩色しようとする色調等を考慮して、公知の塗料のなかから適宜選択できる。
塗料Bとしては、耐久性の観点から、アクリル系塗料、アクリルシリコーン系塗料が好ましい。
【0025】
塗料Bの塗装方法としては、表面が平滑な塗膜を形成できる方法であればよく、スプレー、ローラー塗装、刷毛塗り等の公知の方法を用いることができる。
塗料Bの塗装量は、例えば、単位面積当たりの他の塗膜40の質量が300~2000g/m2、さらには500~1500g/m2になる量とすることができる。
【0026】
<作用効果>
以上説明した塗装方法にあっては、外壁の目地部13および目地部13の両側の壁材11の縁部を覆うように目地テープ20を貼付した後、目地テープ20および目地テープ20の両側の壁材11の上に玉吹き塗膜30を形成する簡単な操作で、目地テープ20の両側の縁部の段差を目立ちにくくすることができる。
【0027】
以上、本発明について、実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、工程(b)の後に工程(c)を行う例を示したが、工程(c)を行わなくてもよい。工程(c)を行わない場合は、目地テープ20および玉吹き塗膜30の色調を、壁材11の色調と同系統とする。
「同系統」とは、Lab色空間において、Δaが±3以内かつΔbが±3以内の関係にある色を示す。
工程(a)の後、工程(b)の前に工程(c)を行ってもよい。この場合、
図3に示すように、他の塗膜40の上に玉吹き塗膜30が形成される。他の塗膜40の表面が玉吹き塗膜30の被塗装面となるので、玉吹き塗膜30の色調は、他の塗膜40の色調と同系統とする。
なお、
図3においては、他の塗膜40の表面が、被塗装面に追従した(目地テープ20に対応する部分が突出した)凹凸面となっている例を示したが、他の塗膜40を目地テープ20の厚さよりも厚い膜厚で形成して、他の塗膜40の表面を平滑面としてもよい。ここで「平滑面」とは、外壁の主面に沿った形状であることを示す。外壁の主面は、複数の壁材11それぞれの主面と、目地テープ20の壁材11側の表面(目地部13の両側の壁材11の主面の縁同士を結んだ平面)で構成される面である。
玉吹き塗膜30が他の塗膜40で覆われている方が、玉吹き塗膜30が劣化しにくいことから、工程(b)の後に工程(c)を行うことが好ましい。
【符号の説明】
【0028】
11 壁材
13 目地部
20 目地テープ
30 玉吹き塗膜
31 凸部
40 他の塗膜