(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/375 20220101AFI20231227BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20231227BHJP
F24H 15/156 20220101ALI20231227BHJP
F24H 15/20 20220101ALI20231227BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20231227BHJP
H02J 9/00 20060101ALI20231227BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
F24H15/375
F24H4/02 F
F24H15/156
F24H15/20
H02J7/34 G
H02J9/00 150
H02J9/06 120
(21)【出願番号】P 2019227489
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内倉 政治
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009218(JP,A)
【文献】特開2015-208146(JP,A)
【文献】特開2013-179749(JP,A)
【文献】特開2018-162922(JP,A)
【文献】特開2012-244655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/375
F24H 4/02
F24H 15/156
F24H 15/20
H02J 7/34
H02J 9/00
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯のために水を加熱するヒートポンプと、外部交流電力を入力して前記ヒートポンプを動作させるヒートポンプ駆動部とを備え、電力系統から供給される系統電力と蓄電池に接続されたインバータの出力電力とが切り替えられて前記外部交流電力として入力される給湯装置であって、
前記外部交流電力の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部で継続的に検出される電圧
の歪み度を算出し、この歪み度に基づいて前記外部交流電力が前記系統電力であるか前記インバータの出力電力であるかの判定を行う判定部と、
を備え、
前記ヒートポンプ駆動部は、
前記判定部により前記外部交流電力が前記系統電力であると判定されると、前記ヒートポンプを通常モードで動作させ、前記外部交流電力が前記インバータの出力電力であると判定されると、前記ヒートポンプを前記通常モードよりも消費電力の小さい制限モードで動作させるよう構成され
、
前記外部交流電力の入力開始後、所定時間内において、前記ヒートポンプ駆動部が前記ヒートポンプを前記制限モードよりも大きな消費電力で動作させる判定モードを有し、
前記判定部は、
前記判定モードの期間内に前記判定を行うよう構成された、
給湯装置。
【請求項2】
燃焼式の給湯機をさらに備えた、請求項
1に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプを備えた給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システム等の自家発電システムを設置するユーザが増加している。特許文献1には、自家発電システム(例えば太陽光発電システム)を商用電力系統と連系し、家庭内の電気機器(例えば給湯器)へ電力供給する構成が記載されている。また、自家発電システムでは、商用電力系統の停電時に、自家発電システムで発電した電力を電気機器へ供給することができる。
【0003】
また、最近では、家庭用蓄電池を設置するユーザも増加してきている。家庭用蓄電池は、蓄電池と、この蓄電池の直流電力を交流電力に変換して出力するインバータとを含む蓄電池ユニットである。このような蓄電池ユニットを設置しておくことで、ヒートポンプを備えた給湯装置を、商用電力系統の停電時に、蓄電池からの電力供給によって動作させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、普及帯の蓄電池ユニット(家庭用蓄電池)の蓄電容量は数kWh程度であるため、従来のヒートポンプを備えた給湯装置を通常運転させると、蓄電池の電力を短時間で消費してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、蓄電池ユニットと給湯装置とを通信可能に構成し、蓄電池ユニットから給湯装置へ蓄電池が使用されていること(蓄電池から電力が供給されていること)を通知し、この通知があると、給湯装置では、消費電力を抑制したセーブ運転を行うことの提案もされている。しかし、この場合、通信を行うための構成を備える必要があり、製造コスト面や施工面等で不利であるという問題がある。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、蓄電池の電力が使用されているときに、その使用されていることの情報を外部から取得しなくても、消費電力の抑制運転を行うことができる給湯装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る給湯装置は、給湯のために水を加熱するヒートポンプと、外部交流電力を入力して前記ヒートポンプを動作させるヒートポンプ駆動部とを備え、電力系統から供給される系統電力と蓄電池に接続されたインバータの出力電力とが切り替えられて前記外部交流電力として入力される給湯装置であって、前記外部交流電力の電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部で継続的に検出される電圧に基づいて、前記外部交流電力が前記系統電力であるか前記インバータの出力電力であるかの判定を行う判定部と、を備え、前記ヒートポンプ駆動部は、前記判定部により前記外部交流電力が前記系統電力であると判定されると、前記ヒートポンプを通常モードで動作させ、前記外部交流電力が前記インバータの出力電力であると判定されると、前記ヒートポンプを前記通常モードよりも消費電力の小さい制限モードで動作させるよう構成されている。
【0009】
この構成によれば、上述の電圧検出部及び判定部を備え、判定部により外部交流電力がインバータの出力電力であると判定されると、ヒートポンプ駆動部がヒートポンプを通常モードよりも消費電力の小さい制限モードで動作させるよう構成されているので、蓄電池の電力が使用されているときに、その使用されていることの情報を外部から取得しなくても、消費電力の抑制運転を行うことができる。
【0010】
前記判定部は、前記電圧検出部で検出される電圧の歪み度を算出し、この歪み度に基づいて前記外部交流電力が前記系統電力であるか前記インバータの出力電力であるかの判定を行うよう構成されていてもよい。
【0011】
前記外部交流電力の入力開始後、所定時間内において、前記ヒートポンプ駆動部が前記ヒートポンプを前記制限モードよりも大きな消費電力で動作させる判定モードを有し、前記判定部は、前記判定モードの期間内に前記判定を行うよう構成されていてもよい。
【0012】
前記判定部は、前記電圧検出部で検出される電圧にPWM制御される前記インバータのキャリア周波数の電圧成分が含まれているか否かによって、前記外部交流電力が前記インバータの出力電力であるか前記系統電力であるかの判定を行うよう構成されていてもよい。
【0013】
上記給湯装置は、燃焼式の給湯機をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上に説明した構成を有し、蓄電池の電力が使用されているときに、その使用されていることの情報を外部から取得しなくても、消費電力の抑制運転を行うことができる給湯装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施形態の一例である給湯装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、蓄電池ユニットの出力切替装置で系統電力が選択されている場合の給湯装置に入力される外部交流電力の入力電圧及び入力電流の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、蓄電池ユニットの出力切替装置でインバータの出力電力が選択されている場合の給湯装置に入力される外部交流電力の入力電圧及び入力電流の一例を示す図である。
【
図4】
図4(A)の上段の波形図は、外部交流電力が系統電力である場合に判定部のハイパスフィルタから出力される電圧波形の一例を示す図であり、
図4(A)の下段の波形図は、外部交流電力がインバータの出力電力である場合に判定部のハイパスフィルタから出力される電圧波形の一例を示す図であり、
図4(B)の上段及び下段の波形図は、それぞれ
図4(A)の上段及び下段の波形図のある期間の部分を横軸方向に拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0017】
(実施形態)
図1は、本実施形態の一例である給湯装置の概略構成を示す図である。この給湯装置1は、ヒートポンプユニット2と、貯湯ユニット3Aとを備え、貯湯ユニット3Aに燃焼式給湯機4を内蔵したハイブリッド給湯装置である。給湯装置1には、外部の蓄電池ユニット9から外部交流電力ACが供給される。
【0018】
蓄電池ユニット9は、蓄電池91、インバータ92及び出力切替装置93を備えている。出力切替装置93は、商用電力系統のように安定した電力系統8から入力される電圧を検出し、電力系統8から入力される電圧が検出される通常時には、電力系統8の電力を外部交流電力ACとして出力する。一方、電力系統8から入力される電圧が検出されない停電時には、インバータ92をPWM(パルス幅変調)制御により動作させて、蓄電池91からの直流電力を電力系統8と同じ周波数の交流電力に変換して外部交流電力ACとして給湯装置1へ出力する。このように、蓄電池ユニット9は、通常時には電力系統8からの電力(系統電力)を給湯装置1へ出力し、停電時にはインバータ92の出力電力を給湯装置1へ出力するよう構成されている。なお、蓄電池ユニット9の出力切替装置93は、出力する外部交流電力ACを系統電力とインバータ92の出力電力との間で切り替える際には、いずれの電力も出力(接続)されない期間が存在するように構成されている。
【0019】
貯湯ユニット3Aは、湯水を貯留する貯湯タンク3、例えば瞬間式ガス給湯機などからなる燃焼式給湯機4、及び制御装置5等を有している。
【0020】
貯湯タンク3には、その下部に上水が供給される入水通路が接続されるとともに、その上部には給湯するための給湯通路が接続されている。また、給湯通路には、給湯通路の湯水を燃焼式給湯機4で適宜加熱可能なように、燃焼式給湯機4との間に通路が設けられている。また、貯湯タンク3の下部にはヒートポンプ21の凝縮熱交換器27へ貯湯タンク3の湯水を供給する通路が接続されるとともに、凝縮熱交換器27で加熱された湯水を貯湯タンク3の上部へ供給する通路が設けられている。なお、貯湯ユニット3A内に設けられる湯水の通路等には適宜、電磁弁、ポンプ及び各種センサ等が設けられるが、各通路等を含めてこれらの構成は周知の構成を用いることができ、詳細は省略する。また、給湯通路は、外部の給湯栓に接続されるだけでなく、風呂の浴槽へ接続されて湯張り可能に構成されていてもよい。また、風呂の追い焚き用の熱交換器等が設けられて風呂の追い焚きが可能に構成されていてもよい。また、暖房用の熱交換器等が設けられて暖房端末(例えば浴室乾燥機、床暖房用温水マット等)に接続されていてもよい。
【0021】
この給湯装置1では、貯湯タンク3の下部から低温の湯水をヒートポンプ21に供給し、ヒートポンプ21によって加熱された湯水が貯湯タンク3の上部に送られて貯留される。また、外部の給湯栓等が開栓されると、給湯温度が設定温度となるように貯湯タンク3の上部から出湯される湯水と入水される上水とが混合されて給湯される。また、高温給湯時など、貯湯タンク3の蓄熱量の不足時には燃焼式給湯機4で補助加熱した上で給湯するよう構成されている。このように、燃焼式給湯機4は補助的に使用され、燃焼式給湯機4を備えていない構成とすることも可能である。
【0022】
制御装置5は、電源部と、この電源部から供給される電力によって動作する制御部とを備えている。制御部は、CPUおよびメモリ等を備え、例えば、マイクロコントローラ等で構成されている。制御部では、リモコン(図示せず)等からの操作信号、及び、温度センサ等の各種センサ(図示せず)からの信号を入力し、CPUがメモリに記憶された制御プログラムを実行することで給湯装置1全体の制御を行うようになっている。電源部には、蓄電池ユニット9から外部交流電力ACが入力される。電源部は、外部交流電力ACを貯湯ユニット3Aの内部の各部(制御装置5の制御部、燃焼式給湯機4の内部機器や図示しないポンプ等)で使用される電力に変換して各部へ供給する。
【0023】
ヒートポンプユニット2は、ヒートポンプ21、ヒートポンプ駆動部22、ヒートポンプ制御部23、電圧検出部24及び判定部25を備えている。ヒートポンプ制御部23及び判定部25は、マイクロコントローラ等で構成されていてもよいし、一部が電気回路等で構成されていてもよい。
【0024】
ヒートポンプ21は、圧縮機26、凝縮熱交換器27、膨張弁28及び蒸発熱交換器29を備え、これらを冷媒配管により接続した周知の構成である。このヒートポンプ21では、冷媒配管に封入された冷媒を圧縮機26で圧縮して昇温し、貯湯タンク3との間で流通する湯水を凝縮熱交換器27において高温の冷媒との熱交換により加熱する。この熱交換後の冷媒は、膨張弁28で膨張して外気より低温になり、蒸発熱交換器29で外気から吸熱した後、再び圧縮機26に導入される。蒸発熱交換器29は、送風機29aを備えている。
【0025】
ヒートポンプ制御部23は、制御装置5に通信可能に接続され、制御装置5からの運転オン、オフの指令等に基づいてヒートポンプ駆動部22を制御する。
【0026】
ヒートポンプ駆動部22には、蓄電池ユニット9から外部交流電力ACが入力される。ヒートポンプ駆動部22は、ヒートポンプ制御部23からの指令に基づいてヒートポンプ21を制御するために、外部交流電力ACを圧縮機26、膨張弁28、送風機29aの各々で使用される電力に変換して各々へ供給する。このようにヒートポンプ駆動部22は、電力変換部を備えており、この電力変換部には、コンデンサインプット型整流回路を含んでいる。ヒートポンプ駆動部22に入力されるヒートポンプ制御部23からの指令には、後述の動作モード(通常モード、制限モード等)を指定する指令等がある。
【0027】
電圧検出部24は、蓄電池ユニット9から入力される外部交流電力ACの電圧を検出し、判定部25へ出力する。そして、判定部25は、電圧検出部24で継続的に検出される電圧に基づいて、外部交流電力ACが系統電力(電力系統8からの電力)であるかインバータ92の出力電力であるかの判定を行い、その判定結果をヒートポンプ制御部23へ出力する。
【0028】
ヒートポンプ制御部23では、判定部25の判定結果が、外部交流電力ACが系統電力である場合には、ヒートポンプ21を通常モードで動作させるようにヒートポンプ駆動部22に指令を出力する。一方、判定部25の判定結果が、外部交流電力ACがインバータ92の出力電力である場合には、ヒートポンプ21を制限モードで動作させるようにヒートポンプ駆動部22に指令を出力する。ヒートポンプ駆動部22は、ヒートポンプ制御部23から指令されたモードに従ってヒートポンプ21を動作させる。制限モードは、通常モードよりも消費電力(出力)の小さいモードであり、具体的には、ヒートポンプ駆動部22は、例えば、圧縮機26を通常モードよりも消費電力が小さくなるように動作させる。すなわち、制限モードでは、通常モードに比べて、圧縮機26のモータの回転数(回転速度)を遅くする。さらに、送風機29aを通常モードよりも消費電力が小さくなるように動作させるようにしてもよい。
【0029】
次に、判定部25の具体的な構成例について説明する。
【0030】
〔第1構成例〕
まず、第1構成例について説明する。
図2は、蓄電池ユニット9の出力切替装置93で系統電力が選択されている場合の給湯装置1に入力される外部交流電力ACの入力電圧V1及び入力電流I1の一例を示す図である。一方、
図3は、出力切替装置93でインバータ92の出力電力が選択されている場合の給湯装置1に入力される外部交流電力ACの入力電圧V2及び入力電流I2の一例を示す図である。
【0031】
図2に示すように、系統電力が選択されている場合には品質のよい(歪みの小さい)入力電圧V1が給湯装置1へ入力される。一方、
図3に示すように、インバータ92の出力電力が選択されている場合には入力電圧V2の歪みが大きくなる。これは、ヒートポンプ駆動部22にコンデンサインプット型整流回路が内蔵されているので、間欠的に流れる電流I2が大きくなるところで歪みが大きくなる。
【0032】
そこで、第1構成例の場合、判定部25は、外部交流電力ACの電圧の歪み度を算出し、この歪み度に基づいて、外部交流電力ACが系統電力であるかインバータ92の出力電力であるかを判定するようにしている。
【0033】
例えば、判定部25は、電圧検出部24で検出される外部交流電力ACの電圧に基づいて、外部交流電力ACの電圧波形、並びに、外部交流電力ACの電圧の実効値乃至平均値を導出し、外部交流電力ACの電圧波形に基づいて、外部交流電力ACの電圧の歪み度を演算により算出する。
【0034】
この歪み度の算出方法の一例は、例えば、検出される外部交流電力ACの電圧に対して実効値及び周期を同期させた正弦波波形を生成し、PLL制御などにより位相を正確に合わせる。次に、生成した正弦波波形を標本化して標本値の絶対値を積算することにより正弦波波形の所定周期分(例えば1周期分)の面積Aを求める。次に、外部交流電力ACの電圧波形も同様に標本化し、この外部電圧波形の標本値と、上記の正弦波波形の標本値との差分の絶対値を所定周期分積算して、正弦波波形に対する外部電圧波形の差分の積算値Bを求める。そして、(差分の積算値B÷正弦波波形の面積A×100)により、外部交流電力ACの電圧の歪み度(全高調波歪THD)を求める。なお、誤検出を防止するために、上記の正弦波波形の面積Aや差分の積算値Bは、直近の複数周期分(例えば4周期分)の移動平均として求めるようにしてもよい。
【0035】
さらに、判定部25では、上記のようにして求めた歪み度が所定の閾値を超えるか否かを判定し、超える場合には外部交流電力ACがインバータ92の出力電力であると判定し、超えない場合には外部交流電力ACが系統電力であると判定するようにしている。
【0036】
なお、ヒートポンプ制御部23及び制御装置5の制御部は、電力供給が無くなった後、電力供給が再開されると、再起動される。つまり、蓄電池ユニット9の出力切替装置93によって、外部交流電力ACが系統電力とインバータ92の出力電力との間で切り替えられるときには、一旦、外部交流電力ACは供給されない状態となり、外部交流電力ACが切り替えられるたびに、ヒートポンプ制御部23及び制御装置5の制御部は再起動される。
【0037】
また、外部交流電力ACがインバータ92の出力電力である場合には、消費電力が大きくなるほど外部交流電力ACの電圧波形の歪みが大きくなるので、消費電力が大きいときに判定部25での判定を行うようにした方が正確な判定が可能になる。
【0038】
そこで、第1構成例において次のようにしてもよい。ヒートポンプ21の動作モード(運転モード)として、前述の通常モードおよび制限モードに加え、判定モードを備える。そして、ヒートポンプ制御部23は、外部交流電力ACの入力が開始されるたびに(起動されるたびに)、判定モードの指令をヒートポンプ駆動部22へ出力する。ヒートポンプ駆動部22では、判定モードの指令を入力後、所定時間内(すなわち、外部交流電力ACの入力開始後、所定時間内)において、ヒートポンプ21を制限モードよりも大きな消費電力(出力)で動作させる(判定モードでの動作)。そして、判定部25では、判定モードの期間内(上記所定時間内)において、前述の判定を行うようにする。判定モードにおいて、ヒートポンプ21を制限モードよりも大きな消費電力で動作させるために、例えば、圧縮機26を最大出力またはそれに近い所定の出力で動作させるようにしてもよい。
【0039】
〔第2構成例〕
次に、第2構成例について説明する。インバータ92は、周知のように複数のスイッチング素子を用いて構成され、これらのスイッチング素子がPWM制御によってオンオフされることにより、蓄電池91の直流電力が交流電力に変換されて出力される。このインバータ92から出力される交流電力の周波数(すなわち、インバータ92の出力周波数)は、電力系統8の周波数と同じになるように構成されているが、インバータ92の出力電圧には、PWM制御に用いられるキャリア(搬送波)周波数の電圧成分が重畳される。
【0040】
そこで、第2構成例の場合、判定部25は、外部交流電力ACの電圧にキャリア周波数の電圧成分が含まれているか否かによって、外部交流電力ACがインバータ92の出力電力であるか系統電力であるかを判定するようにしている。
【0041】
この場合、判定部25では、電圧検出部24で検出される外部交流電力ACの電圧を入力し、系統電力の周波数の電圧成分を減衰させ、かつインバータ92のキャリア周波数の電圧成分を通過させて出力するフィルタを有している。このフィルタとしては、例えば、系統電力の周波数よりも高く、キャリア周波数よりも低い周波数をカットオフ周波数とするハイパスフィルタを用いることができる。例えば、系統電力の周波数を60Hzとし、キャリア周波数を16~17kHzとした場合に、カットオフ周波数が例えば1kHzのハイパスフィルタを用いることができる。
【0042】
図4(A)の上段の波形図は、外部交流電力ACが系統電力である場合の外部交流電力ACを電圧検出部24を介して判定部25のハイパスフィルタへ入力したときの同ハイパスフィルタから出力される電圧(V1f)波形の一例を示す図である。また、
図4(A)の下段の波形図は、外部交流電力ACがインバータ92の出力電力である場合の外部交流電力ACを電圧検出部24を介して判定部25のハイパスフィルタへ入力したときの同ハイパスフィルタから出力される電圧(V2f)波形の一例を示す図である。また、
図4(B)の上段及び下段の波形図は、それぞれ
図4(A)の上段及び下段の波形図のある期間C1の部分を横軸方向に拡大した図である。なお、
図4(A),
図4(B)のそれぞれの上段及び下段の波形図において、縦軸の電圧、横軸の時間は、それぞれ任意単位で示している。
図4(B)の下段の波形図に示すように、電圧V2fの周期Tcは、インバータ92のPWM制御のキャリア周波数に対応する周期である。
【0043】
図4(A),(B)の上段と下段の波形図を比較すればわかるように、ハイパスフィルタによって系統電力(系統電圧)の周波数の電圧成分を減衰させると、外部交流電力ACが系統電力の場合とインバータ92の出力電力の場合とを判別することが可能である。
【0044】
よって、判定部25では、判別するための閾値として、例えば
図4(B)に示されるような所定値Vtが予め設定されており、ハイパスフィルタの出力電圧が所定値Vtを超える状態が周期的に発生したときには、外部交流電力ACがインバータ92の出力電力であると判定し、これ以外は系統電力であると判定する。
【0045】
なお、上記では、判定部25におけるフィルタの一例として、ハイパスフィルタを用いたが、これに代えて、バンドパスフィルタを用いてもよい。このようにフィルタを用いることにより、インバータ92のキャリア周波数の電圧成分を容易に抽出することができるが、これに限らず、インバータ92のキャリア周波数の電圧成分を抽出可能な構成であればよい。
【0046】
また、前述のように、入力される外部交流電力ACが出力切替装置93によって切り替えられるたびにヒートポンプ制御部23等は再起動されるので、第2構成例においても、外部交流電力ACの入力が開始されるたびに(起動されるたびに)、その入力開始後、所定時間内において、判定部25が上述の判定を行うようにしてもよい。この第2構成例では、判定部25の判定前の初期モードとして、通常モードまたは制限モードのいずれかに設定されるものとする。
【0047】
本実施形態では、上述のように外部交流電力ACの電圧を検出する電圧検出部24及び第1,第2構成例のような判定部25を備え、判定部25により外部交流電力ACがインバータ92の出力電力であると判定されると、ヒートポンプ駆動部22がヒートポンプ21を通常モードよりも消費電力の小さい制限モードで動作させるよう構成されているので、蓄電池91の電力が使用されているときに、その使用されていることの情報を外部から取得しなくても、消費電力の抑制運転を行うことができる。これにより、停電時における蓄電池91の使用時間を長くすることが可能になる。
【0048】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、蓄電池の電力が使用されているときに、その使用されていることの情報を外部から取得しなくても、消費電力の抑制運転を行うことができる給湯装置等として有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 給湯装置
2 ヒートポンプユニット
21 ヒートポンプ
22 ヒートポンプ駆動部
23 ヒートポンプ制御部
24 電圧検出部
25 判定部
4 燃焼式給湯機
8 電力系統
9 蓄電池ユニット
91 蓄電池
92 インバータ
93 出力切替装置