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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】接着性多軸不織布及びタイルユニット
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/04 20120101AFI20231227BHJP
   D04H 3/004 20120101ALI20231227BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
D04H3/04
D04H3/004
E04F13/08 102F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020114439
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012541
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤野 能富
(72)【発明者】
【氏名】引野 俊一
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-181954(JP,A)
【文献】特開2006-045970(JP,A)
【文献】特開2000-096802(JP,A)
【文献】特開2007-056582(JP,A)
【文献】国際公開第2021/241630(WO,A1)
【文献】特開2000-328423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H、E04F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多軸不織布と、
前記多軸不織布の一方の面にドット状に設けられた接着樹脂部とを含む、接着性多軸不織布であって、
前記多軸不織布は、並列された複数の第1のマルチフィラメント糸条と、
当該第1のマルチフィラメント糸条と交差する複数の交差マルチフィラメント糸条とを含み、
前記複数の第1のマルチフィラメント糸条と、前記複数の交差マルチフィラメント糸条とは、少なくともこれらの交点において、交点固定樹脂により固定されており、
前記多軸不織布の平均糸条厚さTが、50~500μmの範囲にあり、
前記接着樹脂部の平均ドット径Dが、100~1500μmの範囲にあり、
前記接着樹脂部の平均ドット高さHが、5~600μmの範囲にあり、
前記接着樹脂部の交点接触率Cが、3.0~90.0%の範囲にあり、
前記T、D、H及びCが下記式(1)を満たすことを特徴とする、接着性多軸不織布。
0.65≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦30.30
・・・(1)
【請求項2】
請求項1記載の接着性多軸不織布において、前記Tが、50~500μmの範囲にあり、
前記Dが、100~1500μmの範囲にあり、
前記Hが、50~550μmの範囲にあり、
前記Cが、5.0~55.0%の範囲にあり、
前記T、D、H及びCが下記式(2)を満たすことを特徴とする、接着性多軸不織布。
0.80≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦21.90
・・・(2)
【請求項3】
請求項1記載の接着性多軸不織布において、前記Tが、50~350μmの範囲にあり、
前記Dが、100~750μmの範囲にあり、
前記Hが、50~350μmの範囲にあり、
前記Cが、5.0~35.0%の範囲にあり、
前記T、D、H及びCが下記式(3)を満たすことを特徴とする、接着性多軸不織布。
0.80≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦10.70
・・・(3)
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項記載の接着性多軸不織布において、前記マルチフィラメント糸条が、ガラス繊維糸であることを特徴とする、多軸不織布。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項記載の接着性多軸不織布において、
前記複数の交差マルチフィラメント糸条が、前記第1のマルチフィラメント糸条と斜交する複数の第1の斜交マルチフィラメント糸条と、
前記第1の斜交マルチフィラメント糸条と反対方向から前記第1のマルチフィラメント糸条に斜交する複数の第2の斜交マルチフィラメント糸条とからなることを特徴とする、接着性多軸不織布。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項記載の接着性多軸不織布において、前記複数の交差マルチフィラメント糸条が、前記第1のマルチフィラメント糸条と直交する複数の直交マルチフィラメント糸条からなることを特徴とする、接着性多軸不織布。
【請求項7】
請求項1~請求項4のいずれか1項記載の接着性多軸不織布において、
前記複数の交差マルチフィラメント糸条が、前記第1のマルチフィラメント糸条と直交する複数の直交マルチフィラメント糸条と、
前記第1のマルチフィラメント糸条と斜交する複数の第1の斜交マルチフィラメント糸条と、
前記第1の斜交マルチフィラメント糸条と反対方向から前記第1のマルチフィラメント糸条に斜交する複数の第2の斜交マルチフィラメント糸条とからなることを特徴とする、接着性多軸不織布。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の接着性多軸不織布と、複数枚のタイルとを含むことを特徴とする、タイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性多軸不織布及びタイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
基布(主に織物)に、接着樹脂をドット状に付着させた、接着芯地が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ガラス繊維糸を、経糸、緯糸、斜交糸としてこれらを積層し、これらの交点をバインダー樹脂で固定した多軸不織布に、接着剤を塗布したものを用いて、タイルをユニット化することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-214764号公報
【文献】特開2006-045971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、多軸不織布に、予めドット状に接着樹脂を付着させておけば、接着剤を塗布する工程を省略して、多軸不織布を用いてタイルユニットを構成可能なことを見出した。
【0006】
一方、本発明者らは、織物と異なり、多軸不織布においては、特に多軸不織布を構成する糸条の交点においては、バインダー樹脂が糸条に既に含浸していることに起因して、接着樹脂の裏抜けが発生し易いという不都合を見出した。また、プレス機を用いて多軸不織布と複数枚のタイルとからタイルユニットを構成する際に、裏抜けした接着樹脂の影響で、多軸不織布がプレス機に意図せずに付着してしまい、作業効率が悪化しうることを見出した。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、別途接着剤を塗布することなくタイルを接着可能であり、かつ、接着樹脂の裏抜けが防止された、接着性多軸不織布を提供することを目的とする。また、本発明は、当該接着性多軸不織布を含むタイルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の接着性多軸不織布は、多軸不織布と、前記多軸不織布の一方の面にドット状に設けられた接着樹脂部とを含み、前記多軸不織布は、並列された複数の第1のマルチフィラメント糸条と、当該第1のマルチフィラメント糸条と交差する複数の交差マルチフィラメント糸条とを含む、接着性多軸不織布であって、前記複数の第1のマルチフィラメント糸条と、前記複数の交差マルチフィラメント糸条とは、少なくともこれらの交点において、交点固定樹脂により固定されており、前記多軸不織布の平均糸条厚さTが、50~500μmの範囲にあり、前記接着樹脂部の平均ドット径Dが、100~1500μmの範囲にあり、前記接着樹脂部の平均ドット高さHが、5~600μmの範囲にあり、前記接着樹脂部の交点接触率Cが、3.0~90.0%の範囲にあり、前記T、D、H及びCが下記式(1)を満たすことを特徴とする。
0.65≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦30.30
・・・(1)
【0009】
本発明の接着性多軸不織布は、前記T、D、H及びCが上述した範囲内にあり、かつ、上記式(1)を満たすことで、優れた接着性を備えるとともに、接着樹脂の裏抜けが防止される。本発明の接着性多軸不織布において、上記式(1)の値が0.65未満であると、十分な接着性を備えなくなる。一方、本発明の接着性多軸不織布において、上記式(1)の値が30.30超であると、接着樹脂の裏抜けを十分に防止できない。
【0010】
なお、前記接着樹脂部の交点接触率は、以下の方法で算出することができる。まず、本発明の接着性多軸不織布の前記接着樹脂部が設けられた面を、マイクロスコープ(キーエンス株式会社製、型式名:VHX-600)を用いて、倍率20倍で観察する。次いで、視野内に存在するドット状接着樹脂の全数を計測する。次いで、視野内に存在するドット状接着樹脂のうち、多軸不織布を構成する2以上のマルチフィラメント糸条が交差する交点とわずかでも接触する、ドット状接着樹脂の数を計測する。次いで、(前記交点とわずかでも接触するドット状接着樹脂の数)/(ドット状接着樹脂の全数)×100、の値を算出する。それぞれ重複しない、異なる少なくとも5ヶ所の観察点で、この値を算出し、その平均をとることで、接着樹脂部の交点接触率を算出する。
【0011】
また、本発明の接着性多軸不織布は、前記Tが、50~500μmの範囲にあり、前記Dが、100~1500μmの範囲にあり、前記Hが、50~550μmの範囲にあり、前記Cが、5.0~55.0%の範囲にあり、前記T、D、H及びCが下記式(2)を満たすことが好ましい。
0.80≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦21.90
・・・(2)
【0012】
本発明の接着性多軸不織布は、前記Tが、50~500μmの範囲にあり、前記Dが、100~1500μmの範囲にあり、前記Hが、50~550μmの範囲にあり、前記Cが、5.0~55.0%の範囲にあり、かつ、前記T、D、H及びCが上記式(2)を満たすことで、優れた接着性を備えるとともに、接着樹脂の裏抜けがより確実に防止される。
【0013】
また、本発明の接着性多軸不織布は、前記Tが、50~350μmの範囲にあり、前記Dが、100~750μmの範囲にあり、前記Hが、50~350μmの範囲にあり、前記Cが、5.0~35.0%の範囲にあり、前記T、D、H及びCが下記式(3)を満たすことが好ましい。
0.80≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦10.70
・・・(3)
【0014】
本発明の接着性多軸不織布は、前記Tが、50~350μmの範囲にあり、前記Dが、100~750μmの範囲にあり、前記Hが、50~350μmの範囲にあり、前記Cが、5.0~35.0%の範囲にあり、かつ、前記T、D、H及びCが上記式(3)を満たすことで、優れた接着性を備えるとともに、接着樹脂の裏抜けがより確実に防止され、かつ、より品質安定的な製造が可能となる。
【0015】
また、本発明の接着性多軸不織布は、前記マルチフィラメント糸条が、ガラス繊維糸であることが好ましい。
【0016】
本発明の接着性多軸不織布は、前記マルチフィラメント糸条が、ガラス繊維糸であることで、優れた機械的強度、及び、汎用性を備える。また、前記マルチフィラメント糸条が、ガラス繊維糸であることは、本発明の接着性多軸不織布を含むタイルユニットにおいて、タイルユニット取扱い時の剛性の向上、タイルユニット製造時の耐熱性や寸法安定性の向上、及び、タイルユニット施工時の耐候性の向上に寄与する。
【0017】
また、本発明の接着性多軸不織布は、前記複数の交差マルチフィラメント糸条が、前記第1のマルチフィラメント糸条と斜交する複数の第1の斜交マルチフィラメント糸条と、前記第1の斜交マルチフィラメント糸条と反対方向から前記第1のマルチフィラメント糸条に斜交する複数の第2の斜交マルチフィラメント糸条とからなることが好ましい。
【0018】
本発明の接着性多軸不織布は、前記第1のマルチフィラメント糸条と、前記第1の斜交マルチフィラメント糸条と、前記第2の斜交マルチフィラメント糸条とで構成される接着性三軸不織布であることで、斜交マルチフィラメント糸条に起因して、ねじれや変形の発生が抑制され、また、生産性に優れる。
【0019】
また、本発明の接着性多軸不織布は、前記複数の交差マルチフィラメント糸条が、前記第1のマルチフィラメント糸条と直交する複数の直交マルチフィラメント糸条からなることが好ましい。
【0020】
本発明の接着性多軸不織布は、前記第1のマルチフィラメント糸条と、前記直交マルチフィラメント糸条とで構成される接着性二軸不織布であることで、特に優れた生産性を備える。
【0021】
また、本発明の接着性多軸不織布は、前記複数の交差マルチフィラメント糸条が、前記第1のマルチフィラメント糸条と直交する複数の直交マルチフィラメント糸条と、前記第1のマルチフィラメント糸条と斜交する複数の第1の斜交マルチフィラメント糸条と、前記第1の斜交マルチフィラメント糸条と反対方向から前記第1のマルチフィラメント糸条に斜交する複数の第2の斜交マルチフィラメント糸条とからなることが好ましい。
【0022】
本発明の接着性多軸不織布は、前記第1のマルチフィラメント糸条と、前記直交マルチフィラメント糸条と、前記第1の斜交マルチフィラメント糸条と、前記第2の斜交マルチフィラメント糸条とで構成される接着性四軸不織布であることで、斜交マルチフィラメント糸条に起因して、ねじれや変形の発生が抑制され、また、直交マルチフィラメント糸条に起因して、前記第1のマルチフィラメント糸条の長手方向と直交する方向の剛性が向上する。
【0023】
本発明のタイルユニットは、上述した本発明の接着性多軸不織布と、複数枚のタイルとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の接着性多軸不織布の一態様(接着性三軸不織布)を説明するための模式図。
図2】本発明の接着性多軸不織布の別の態様(接着性二軸不織布)を説明するための模式図。
図3】本発明の接着性多軸不織布のさらに別の態様(接着性四軸不織布)を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0026】
図1に示されるように、本実施形態の接着性多軸不織布1は一つの態様において、並列された複数の第1のマルチフィラメント糸条2と、当該第1のマルチフィラメント糸条2と斜交する複数の第1の斜交マルチフィラメント糸条3と、前記第1の斜交マルチフィラメント糸条3と反対方向から前記第1のマルチフィラメント糸条1に斜交する複数の第2の斜交マルチフィラメント糸条4と、これらのマルチフィラメント糸条上にドット状に設けられた接着樹脂部5とから構成される。ここで、第1の斜交マルチフィラメント糸条3及び第2の斜交マルチフィラメント糸条4は、前記第1のマルチフィラメント糸条2に交差する交差マルチフィラメント糸条に相当する。また、接着樹脂部5には、2以上のマルチフィラメント糸条が交差する交点と接触する、第1のドット状接着樹脂51と、前記交点と接触しない、第2のドット状接着樹脂52とが含まれる。
【0027】
図2に示されるように、本実施形態の多軸不織布1は別の態様において、並列された複数の第1のマルチフィラメント糸条2と、当該第1のマルチフィラメント糸条2と直交する複数の直交マルチフィラメント糸条6と、これらのマルチフィラメント糸条上にドット状に設けられた接着樹脂部5とから構成される。ここで、直交マルチフィラメント糸条6は、前記第1のマルチフィラメント糸条2に交差する交差マルチフィラメント糸条に相当する。また、接着樹脂部5には、2本のマルチフィラメント糸条が交差する交点と接触する、第1のドット状接着樹脂51と、前記交点と接触しない、第2のドット状接着樹脂52とが含まれる。
【0028】
図3に示されるように、本実施形態の多軸不織布1はさらに別の態様において、並列された複数の第1のマルチフィラメント糸条2と、当該第1のマルチフィラメント糸条2と直交する複数の直交マルチフィラメント糸条6と、当該第1のマルチフィラメント糸条2と斜交する複数の第1の斜交マルチフィラメント糸条3と、前記第1の斜交マルチフィラメント糸条3と反対方向から前記第1のマルチフィラメント糸条1に斜交する複数の第2の斜交マルチフィラメント糸条4と、これらのマルチフィラメント糸条上にドット状に設けられた接着樹脂部5とから構成される。ここで、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、第2の斜交マルチフィラメント糸条4及び直交マルチフィラメント糸条6は、前記第1のマルチフィラメント糸条2に交差する交差マルチフィラメント糸条に相当する。また、接着樹脂部5には、2本のマルチフィラメント糸条が交差する交点と接触する、第1のドット状接着樹脂51と、前記交点と接触しない、第2のドット状接着樹脂52とが含まれる。
【0029】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1のマルチフィラメント糸条2としては、例えば、ガラス繊維糸、炭素繊維糸、アラミド繊維糸、ビニロン繊維糸を使用することができる。機械的強度及び汎用性に優れ、また、多軸不織布を含むタイルユニットにおいて、タイルユニット取扱い時の剛性の向上、タイルユニット製造時の耐熱性や寸法安定性の向上、及び、タイルユニット施工時の耐候性の向上に寄与することから、前記第1のマルチフィラメント糸条2としては、ガラス繊維糸が好ましい。
【0030】
前記第1のマルチフィラメント糸条2として使用可能なガラス繊維糸としては、Eガラス繊維組成を備える糸、高強度ガラス繊維組成を備える糸、耐アルカリガラス繊維組成を備える糸を挙げることができる。前記Eガラス繊維組成は、ガラス繊維の全量に対して、SiOを52~56質量%、Bを5~10質量%、Alを12~16質量%、CaOとMgOとを合計20~25質量%、NaOとKOとLiOとを合計0~1質量%含む。また、前記高強度ガラス繊維組成は、ガラス繊維の全量に対して、SiOを57~70質量%、Alを18~30質量%、CaOを0~13質量%、MgOを5~15質量%、NaOとKOとLiOとを合計0~1質量%、TiOを0~1質量%、Bを0~2質量%含む。また、前記耐アルカリガラス繊維組成は、ガラス繊維の全量に対して、SiOを54~65質量%、Alを0~2質量%、CaOとMgOとSrOとBaOとZnOとを合計0~10質量%、NaOを10~17質量%、KOを0~8質量%、LiOを0~5質量%、TiOを0~7質量%、ZrOを12~25質量%含む。汎用性に優れることから、前記第1のマルチフィラメント糸条2としては、Eガラス繊維組成を備える糸が好ましい。
【0031】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1のマルチフィラメント糸条2は、複数の同一種の又はそれぞれ異なる種類のマルチフィラメント糸条からなる糸条であってもよい。前記第1のマルチフィラメント糸条2が、複数のマルチフィラメント糸条からなる場合、その形態は、合糸であってもよく、合撚糸であってもよい。
【0032】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1のマルチフィラメント糸条2を構成するフィラメントのフィラメント径は、例えば、3~30μmであり、好ましくは、4~24μmであり、より好ましくは、5~18μmである。
【0033】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1のマルチフィラメント糸条2におけるフィラメント集束本数は、例えば、50~6000本であり、好ましくは、100~5000本であり、より好ましくは、200~4000本であり、400~2000本であり、さらに好ましくは、500~1200本である。
【0034】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1のマルチフィラメント糸条2の重量は、例えば、1~10000tex(g/1000m)であり、好ましくは、3~5800texであり、より好ましくは、10~2500texであり、さらに好ましくは、30~1000texであり、特に好ましくは、50~800texであり、最も好ましくは、100~500texである。
【0035】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1のマルチフィラメント糸条2の撚り数は、例えば、0~500T/mであり、好ましくは、0~300T/mであり、より好ましくは、0~200T/mであり、さらに好ましくは、0~150T/mであり、特に好ましくは、0~100T/mであり、最も好ましくは、0~50T/mである。なお、前記第1のマルチフィラメント糸条2が合撚糸である場合に、第1のマルチフィラメント糸条2の撚り数は、合撚の際に付与される撚り数を意味する。
【0036】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1のマルチフィラメント糸条2の糸幅は、例えば、1.0~4.0mmであり、好ましくは、1.5~3.5mmであり、より好ましくは、1.8~3.2mmである。
【0037】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、複数の前記第1のマルチフィラメント糸条2は、例えば、2.0~25.0本/25mmで並列され、好ましくは、2.2~10.0本/25mmで並列され、より好ましくは、2.5~6.0本/25mmで並列される。
【0038】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、隣り合う前記第1のマルチフィラメント糸条2の糸間隔は、例えば、1.0~20.0mmであり、好ましくは、2.0~15.0mmであり、より好ましくは、3.0~8.0mmである。
【0039】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1の斜交マルチフィラメント糸条3は、前記第1のマルチフィラメント糸条2と同じ特徴をもつマルチフィラメント糸条を使用することができる。前記第1の斜交マルチフィラメント糸条3は、前記第1のマルチフィラメント糸条2と同一の糸条であってもよく、異なる糸条であってもよい。
【0040】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1の斜交マルチフィラメント糸条3は、前記第1のマルチフィラメント糸条2と斜交しており、前記第1の斜交マルチフィラメント糸条3と前記第1のマルチフィラメント糸条2とがなす角度は、例えば、40~70°であり、好ましくは、43~65°である。
【0041】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、複数の前記第1の斜交マルチフィラメント糸条3は、例えば、1.4~14.0本/25mmで並列され、好ましくは、2.1~10.5本/25mmで並列され、より好ましくは、2.8~7.0本/25mmで並列される。
【0042】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、隣り合う前記第1の斜交マルチフィラメント糸条3の糸間隔は、例えば、1.5~20.0mmであり、好ましくは、2.0~15.0mmであり、より好ましくは、3.0~9.5mmである。
【0043】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第2の斜交マルチフィラメント糸条4は、前記第1のマルチフィラメント糸条2と同じ特徴をもつマルチフィラメント糸条を使用することができる。前記第2の斜交マルチフィラメント糸条4は、前記第1のマルチフィラメント糸条2と同一の糸条であってもよく、異なる糸条であってもよい。
【0044】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第2の斜交マルチフィラメント糸条4は、前記第1の斜交マルチフィラメント糸3と反対方向から前記第1のマルチフィラメント糸条2と斜交しており、前記第2の斜交マルチフィラメント糸条4と前記第1のマルチフィラメント糸条2とがなす角度は、例えば、40~70°であり、好ましくは、43~65°である。
【0045】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、複数の前記第2の斜交マルチフィラメント糸条4は、例えば、例えば、1.4~14.0本/25mmで並列され、好ましくは、2.1~10.5本/25mmで並列され、より好ましくは、2.8~7.0本/25mmで並列される。
【0046】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、隣り合う前記第2の斜交マルチフィラメント糸条4の糸間隔は、例えば、1.5~20.0mmであり、好ましくは、2.0~15.0mmであり、より好ましくは、3.0~9.5mmである。
【0047】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記直交マルチフィラメント糸条6は、前記第1のマルチフィラメント糸条2と同じ特徴をもつマルチフィラメント糸条を使用することができる。前記直交マルチフィラメント糸条6は、前記第1のマルチフィラメント糸条2と同一の糸条であってもよく、異なる糸条であってもよい。
【0048】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、直交マルチフィラメント糸条6は、例えば、2.0~25.0本/25mmで並列され、好ましくは、2.2~10.0本/25mmで並列され、より好ましくは、2.5~6.0本/25mmで並列される。
【0049】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、隣り合う前記直交マルチフィラメント糸条6の糸間隔は、例えば、1.5~20.0mmであり、好ましくは、2.0~15.0mmであり、より好ましくは、3.0~9.5mmである。
【0050】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記第1のマルチフィラメント糸条2、及び、前記交差マルチフィラメント糸条(すなわち、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、第2の斜交マルチフィラメント糸条4、及び、直交マルチフィラメント糸条6)は、少なくともこれらの交点において、交点固定樹脂により固定されている。また、前記第1のマルチフィラメント糸条2、及び、前記交差マルチフィラメント糸条(すなわち、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、第2の斜交マルチフィラメント糸条4、及び、直交マルチフィラメント糸条6)は、交点固定樹脂により被覆されていてもよい。
【0051】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記交点固定樹脂としては、熱硬化性アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂、及び、ポリアミド、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を例示することができる。
【0052】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、多軸不織布の平均糸条厚さTは、50~500μmの範囲にある。前記平均糸条厚さTが、50μm未満であると、本実施形態の接着性多軸不織布1は十分な機械的強度、及び、剛性を備えない。一方、前記平均糸条厚さTが、600μm超であると、本実施形態の接着性多軸不織布1を含むタイルユニットを壁面に接着施工する際の施工性が悪化するおそれがある。
【0053】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、多軸不織布の平均糸条厚さTは、50~350μmの範囲にあることが好ましく、70~300μmの範囲にあることがより好ましい。
【0054】
例えば、図1に示される本実施形態の接着性三軸不織布1において、多軸不織布の平均糸条厚さTは、以下の方法で算出することができる。まず、3本以上の第1のマルチフィラメント糸条2について、各糸条中の他の糸条と交差しておらず、第1及び第2のドット状接着樹脂51、52が付着していない3ヶ所の糸条の厚さを、マイクロメーターを用いて測定し、その平均をとることで、第1のマルチフィラメント糸条2の平均厚さを算出する。次いで、3本以上の第1の斜交マルチフィラメント糸条3について、各糸条中の他の糸条と交差していない3ヶ所の糸条の厚さを、マイクロメーターを用いて測定し、その平均をとることで、第1の斜交マルチフィラメント糸条3の平均厚さを算出する。次いで、3本以上の第2の斜交マルチフィラメント糸条4について、各糸条中の他の糸条と交差していない3ヶ所の糸条の厚さを、マイクロメーターを用いて測定し、その平均をとることで、第2の斜交マルチフィラメント糸条4の平均厚さを算出する。次いで、第1のマルチフィラメント糸条2の平均厚さ、第1の斜交マルチフィラメント糸条3の平均厚さ、及び、第2の斜交マルチフィラメント糸条4の平均厚さの平均をとることで、本実施形態の接着性三軸不織布1の平均糸条厚さTを算出する。
【0055】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、接着樹脂部5は、多軸不織布の一方の面にドット状に設けられる。より具体的には、前記接着樹脂部5は、多軸不織布を構成する前記第1のマルチフィラメント糸条2上、又は、前記交差マルチフィラメント糸条(すなわち、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、第2の斜交マルチフィラメント糸条4上、及び、直交マルチフィラメント糸条6)上に、付着された複数の第1及び第2のドット状接着樹脂51、52から構成される。
【0056】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記接着樹脂部5は、通常、多軸不織布のいずれか一方の面、すなわち多軸不織布に表面及び裏面を設定した場合に、表面又は裏面のいずれかの面に設けられる。
【0057】
前記第1及び第2のドット状接着樹脂51、52は、多軸不織布及びタイルに接着性を有する単層接着樹脂であってもよいし、多軸不織布に接着性を有し、多軸不織布を構成するマルチフィラメント糸条に付着する下層接着樹脂と、タイルに接着性を有し、前記下層接着樹脂の表面に付着する上層接着樹脂の二層から構成されていてもよい。接着性多軸不織布の生産性の観点からは、前記第1及び第2のドット状接着樹脂51、52は、単層接着樹脂であることが好ましい。一方、品質安定性の観点からは、前記第1及び第2のドット状接着樹脂51、52は、下層接着樹脂と上層接着樹脂から構成されることが好ましい。
【0058】
前記単層接着樹脂又は前記上層接着樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との混合物であり、好ましくは、熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、融点が70~150℃の熱可塑性樹脂であり、さらに好ましくは、融点が75~105℃の熱可塑性樹脂であり、最も好ましくは、融点が80~95℃の熱可塑性樹脂である。なお、熱可塑性樹脂の融点は、JIS K 7121:2012に準拠して測定することができる。
【0059】
前記単層接着樹脂又は前記上層接着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、変性エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂等を例示することができる。
【0060】
前記下層接着樹脂としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂等を例示することができる。
【0061】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記接着樹脂部5の平均ドット径Dは、100~1500μmの範囲にある。前記平均ドット径Dが100μm未満であると、本実施形態の接着性多軸不織布1は十分な接着性を備えなくなる。一方、前記平均ドット径が1500μm超であると、本実施形態の接着性多軸不織布1は柔軟性が損なわれ、取り扱い性が悪化する。
【0062】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記接着樹脂部5の平均ドット径Dは、100~750μmの範囲にあることが好ましく、150~550μmの範囲にあることがより好ましい。
【0063】
前記接着樹脂部5の平均ドット径Dは、以下の方法で算出することができる。まず、本実施形態の接着性多軸不織布1を裁ちばさみを用いて、100mm×150mmのサイズに切断する。次いで、切断された接着性多軸不織布1を、マイクロスコープ(キーエンス株式会社製、型式名:VHX-600)の架台に載せ、マイクロスコープを用いて、倍率100倍で接着樹脂部5が設けられた面を観察する。次いで、50個以上の第1及び第2のドット状接着樹脂51、52について、それぞれの直径をマイクロスコープに内蔵の計算ソフトを用いて計測する。次いで、計測された直径の平均値を求めることで、平均ドット径Dを算出する。なお、前記第1及び第2のドット状接着樹脂51、52が、下層接着樹脂と上層接着樹脂とで構成される場合には、下層接着樹脂のドット径を測定し、平均ドット径Dを算出する。
【0064】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記接着樹脂部5の平均ドット高さHは、5~600μmの範囲にある。前記平均ドット高さHが5μm未満であると、本実施形態の接着性多軸不織布1は十分な接着性を備えなくなる。一方、前記平均ドット高さが600μm超であると、本実施形態の接着性多軸不織布1において、接着樹脂の裏抜けが発生し易くなる。
【0065】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記接着樹脂部5の平均ドット高さHは、50~550μmの範囲にあることが好ましく、50~350μmの範囲にあることがより好ましく、70~230μmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0066】
前記接着樹脂部5の平均ドット高さHは、以下の方法で算出することができる。まず、いずれか1本の第1のマルチフィラメント糸条2に沿って、裁ちばさみを用いて、本実施形態の接着性多軸不織布1を切断する。次いで、当該いずれか1本の第1のマルチフィラメント糸条2から20~30mm離れた位置にある別の第1のマルチフィラメント糸条2に沿って、裁ちばさみを用いて、本実施形態の接着性多軸不織布1を切断する。次いで、幅20~30mmの本実施形態の接着性多軸不織布1を、裁ちばさみを用いて、長さ50mmに切断して、測定用サンプルを得る。次いで、測定用サンプルを、マイクロスコープ(キーエンス株式会社製、型式名:VHX-600)の架台に載せ、マイクロスコープを用いて、倍率100倍で切断面を観察する。次いで、切断による頂点の欠損が生じていない、任意の10個以上の第1及び第2のドット状接着樹脂51,52について、それぞれの高さをマイクロスコープに内蔵の計算ソフトを用いて計測し、平均をとることで、糸条の平均ドット高さを算出する。次いで、他の交差マルチフィラメント糸条(例えば、本実施形態の接着性多軸不織布1が、図1に示される接着性三軸不織布1の場合には、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、及び、第2の斜交マルチフィラメント糸条4)について、第1のマルチフィラメント糸条2と同様にして、糸条の平均ドット高さを算出する。次いで、各糸条の平均ドット高さの平均をとることで、平均ドット高さHを算出する。なお、前記第1及び第2のドット状接着樹脂51、52が、下層接着樹脂と上層接着樹脂とで構成される場合には、下層接着樹脂と上層接着樹脂との合計の高さを測定し、平均ドット高さを算出する。
【0067】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、上述した方法で算出される、前記接着樹脂部5の交点接触率Cは、3.0~90.0%の範囲にある。前記交点接触率Cが3.0%未満であると、本実施形態の接着性多軸不織布1は十分な接着性を備えなくなる。一方、前記交点接触率が90.0%超であると、本実施形態の接着性多軸不織布1において、接着樹脂の裏抜けが発生し易くなる。
【0068】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記接着樹脂部5の交点接触率Cは、5.0~55.0%の範囲にあることが好ましく、5.0~35.0μmの範囲にあることがより好ましく、6.0~27.0%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0069】
なお、上述した交点接触率の算出方法において、前記第1及び第2のドット状接着樹脂51、52が、下層接着樹脂と上層接着樹脂とで構成される場合には、下層接着樹脂が多軸不織布を構成する2以上のマルチフィラメント糸条が交差する交点とわずかでも接触するものを、2以上のマルチフィラメント糸条が交差する交点と接触する、第1のドット状接着樹脂51とみなす。
【0070】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記接着樹脂部5の単位面積当たりの質量、すなわち、単位面積当たりの複数の前記第1及び第2のドット状接着樹脂51、52の合計質量は、例えば、2~40g/mの範囲にあり、好ましくは、3~30g/mの範囲にあり、より好ましくは、5~20g/mの範囲にあり、さらに好ましくは、7~15g/mの範囲にある。
【0071】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、複数の前記第1及び第2のドット状接着樹脂51、52の個数は、例えば、3~100個/25.4mmの範囲にあり、好ましくは、12~50個/25.4mmの範囲にある。なお、前記第1及び第2のドット状接着樹脂51、52が、下層接着樹脂と上層接着樹脂とで構成される場合には、第1及び第2のドット状接着樹脂51、52の個数は、下層接着樹脂の個数を意味する。ここで、1つの下層接着樹脂の上に複数の上層接着樹脂が設けられていてもよい。
【0072】
本実施形態の接着性多軸不織布1は、例えば、特開2005-163220号公報に記載の製造装置を適宜設計変更することで製造可能な多軸不織布の一方の面に、所定の回転軸回りに回転する円筒状のスクリーンを用いてドット状に前記単層接着樹脂を付着させることで製造することができる。
【0073】
ここで、前記スクリーンの周面には、前記単層接着樹脂を通過させるための貫通孔がドットの個数に対応して複数形成されている。スクリーン内には、前記単層接着樹脂を供給するスキージが設けられている。スキージから供給された前記単層接着樹脂は、スクリーンの貫通孔を通過して押し出され、多軸不織布の一方の面に付着する。スクリーンとバックロールとの間に挟まれて、搬送されている多軸不織布に対して、前記単層接着樹脂が転写される。
【0074】
また、単層接着樹脂と同様の方法で前記下層接着樹脂を多軸不織布に付着させた後、前記下層接着樹脂が転写された多軸不織布の一方の面に上層接着樹脂粉末を散布し、前記下層接着樹脂部表面の前記上層接着樹脂を付着させることでも、本実施形態の接着性多軸不織布1を製造することができる。
【0075】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記多軸不織布の平均糸条厚さTが、50~500μmの範囲にあり、前記接着樹脂部の平均ドット径Dが、100~1500μmの範囲にあり、前記接着樹脂部の平均ドット高さHが、5~600μmの範囲にあり、前記接着樹脂部の交点接触率Cが、3.0~90.0%の範囲にあり、かつ、前記T、D、H及びCが、下記式(1)を満たす。
0.65≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦30.30
・・・(1)
【0076】
前記T、D、H及びCが上記式(1)を満たすことで、本実施形態の接着性多軸不織布1は、優れた接着性を備えるとともに、接着樹脂の裏抜けが防止される。
【0077】
ここで、前記Tが低い値である程、接着性が向上するが、樹脂の裏抜けが発生し易くなる傾向にある。前記Dが高い値である程、接着性が向上するが、樹脂の裏抜けが発生し易くなる傾向にある。前記Hが高い値である程、接着性が向上するが、樹脂の裏抜けが発生し易くなる傾向にある。前記Cが高い値である程、接着性が向上するが、樹脂の裏抜けが発生し易くなる傾向にある。前記式(1)は、このような傾向を有するT、D、H及びCを用いることで、接着性と裏抜け発生を防止することの均衡を表現している。
【0078】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記Tが、50~500μmの範囲にあり、前記Dが、100~1500μmの範囲にあり、前記Hが、50~550μmの範囲にあり、前記Cが、5.0~55.0%の範囲にあり、かつ、前記T、D、H及びCが下記式(2)を満たすことが好ましい。
0.80≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦21.90
・・・(2)
【0079】
前記Tが、50~500μmの範囲にあり、前記Dが、100~1500μmの範囲にあり、前記Hが、50~550μmの範囲にあり、前記Cが、5.0~55.0%の範囲にあり、かつ、前記T、D、H及びCが上記式(2)を満たすことで、本実施形態の接着性多軸不織布1は、優れた接着性を備えるとともに、接着樹脂の裏抜けがより確実に防止される。
【0080】
本実施形態の接着性多軸不織布1において、前記Tが、50~350μmの範囲にあり、前記Dが、100~750μmの範囲にあり、前記Hが、50~350μmの範囲にあり、前記Cが、5.0~35.0%の範囲にあり、かつ、前記T、D、H及びCが下記式(3)を満たすことが好ましい。
0.80≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦10.70
・・・(3)
【0081】
前記Tが、50~350μmの範囲にあり、前記Dが、100~750μmの範囲にあり、前記Hが、50~350μmの範囲にあり、前記Cが、5.0~35.0%の範囲にあり、かつ、前記T、D、H及びCが上記式(3)を満たすことで、本実施形態の接着性多軸不織布1は、優れた接着性を備えるとともに、接着樹脂の裏抜けがより確実に防止され、かつ、より品質安定的な製造が可能となる。
【0082】
本実施形態の接着性多軸不織布1の単位面積当たりの重量は、例えば、50~250g/mであり、好ましくは、60~200g/mであり、より好ましくは、70~150g/mである。
【0083】
本実施形態の接着性多軸不織布1の厚さは、例えば、100~700μmであり、好ましくは、200~550μmであり、より好ましくは、300~450μmである。
【0084】
本実施形態の接着性多軸不織布1の質量に対する、交点固定樹脂及び接着樹脂部の合計質量の割合は、例えば、1~40質量%であり、好ましくは、3~30質量%であり、より好ましくは、5~20質量%である。本実施形態の多軸不織布1の質量に対する、交点固定樹脂及び接着樹脂部の合計質量の割合は、接着性多軸不織布1を構成するマルチフィラメント糸条が無機繊維糸である場合、JIS R 3420:2013に準拠した、強熱減量として測定することができる。
【0085】
本実施形態の接着性多軸不織布1は、タイルユニット用に好適に用いることができるが、それ以外にも、不織布用補強材、フィルム用補強材、及び、アルミ箔用補強材等に好適に用いることができる。
【0086】
本実施形態のタイルユニットは、本実施形態の接着性多軸不織布1と、複数枚のタイルとを含む。前記複数のタイルは、本実施形態の接着性多軸不織布1の接着樹脂部5により、本実施形態の多軸不織布1上に固定されている。
【0087】
本実施形態のタイルユニットに用いられる複数枚のタイルは、特に限定されず、建築物外壁用タイルや、建築物内装用タイル用いることができる。タイルの枚数は、例えば、5~100枚である。
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0089】
[実施例1]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、及び、第2の斜交マルチフィラメント糸条4がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂が熱硬化性アクリル樹脂であり、単位面積当たりの質量が87g/mである、多軸不織布(三軸不織布)の一方の面に、30個/25.4mmの貫通孔がランダムに配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が12.2g/mとなるように、ドット状に付着させ、実施例1の接着性多軸不織布1(接着性三軸不織布)を得た。実施例1の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表1に示す。
【0090】
[実施例2]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、及び、直交マルチフィラメント糸条6がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂がポリアミドであり、単位面積当たりの質量が85g/mである、多軸不織布(二軸不織布)の一方の面に、15個/25.4mmの貫通孔がランダムに配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が10.0g/mとなるように、ドット状に付着させ、実施例2の接着性多軸不織布1(接着性二軸不織布)を得た。実施例2の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表1に示す。
【0091】
[実施例3]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、第2の斜交マルチフィラメント糸条4、及び、直交マルチフィラメント糸条6がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂がポリアミドであり、単位面積当たりの質量が183g/mである、多軸不織布(四軸不織布)の一方の面に、40個/25.4mmの貫通孔がランダムに配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が12.2g/mとなるように、ドット状に付着させ、実施例3の接着性多軸不織布1(接着性四軸不織布)を得た。実施例3の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表1に示す。
【0092】
[実施例4]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、及び、第2の斜交マルチフィラメント糸条4がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂が熱硬化性アクリル樹脂であり、単位面積当たりの質量が100g/mである、多軸不織布(三軸不織布)の一方の面に、40個/25.4mmの貫通孔が60°千鳥に配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が28.0g/mとなるように、ドット状に付着させ、実施例4の接着性多軸不織布1(接着性三軸不織布)を得た。実施例4の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表1に示す。
【0093】
[実施例5]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、第2の斜交マルチフィラメント糸条4、及び、直交マルチフィラメント糸条6がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂がポリアミドであり、単位面積当たりの質量が183g/mである、多軸不織布(四軸不織布)の一方の面に、40個/25.4mmの貫通孔が並列に配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が30.0g/mとなるように、ドット状に付着させ、実施例5の接着性多軸不織布1(接着性四軸不織布)を得た。実施例5の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表1に示す。
【0094】
[実施例6]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、及び、第2の斜交マルチフィラメント糸条4がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂が熱硬化性アクリル樹脂であり、単位面積当たりの質量が100g/mである、多軸不織布(三軸不織布)の一方の面に、15個/25.4mmの貫通孔がランダムに配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が13.0g/mとなるように、ドット状に付着させ、実施例6の接着性多軸不織布1(接着性三軸不織布)を得た。実施例6の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表1に示す。
【0095】
[比較例1]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、及び、第2の斜交マルチフィラメント糸条4がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂が熱硬化性アクリル樹脂であり、単位面積当たりの質量が87g/mである、多軸不織布(三軸不織布)の一方の面に、40個/25.4mmの貫通孔がランダムに配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が6.0g/mとなるように、ドット状に付着させ、比較例1の接着性多軸不織布1(接着性三軸不織布)を得た。比較例1の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表2に示す。
【0096】
[比較例2]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、及び、第2の斜交マルチフィラメント糸条4がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂が熱硬化性アクリル樹脂であり、単位面積当たりの質量が87g/mである、多軸不織布(三軸不織布)の一方の面に、20個/25.4mmの貫通孔がランダムに配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が15.0g/mとなるように、ドット状に付着させ、比較例2の接着性多軸不織布1(接着性三軸不織布)を得た。比較例2の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表2に示す。
【0097】
[比較例3]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、及び、第2の斜交マルチフィラメント糸条4がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂が熱硬化性アクリル樹脂であり、単位面積当たりの質量が87g/mである、多軸不織布(三軸不織布)の一方の面に、65個/25.4mmの貫通孔が60°千鳥に配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が25.0g/mとなるように、ドット状に付着させ、比較例3の接着性多軸不織布1(接着性三軸不織布)を得た。比較例3の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表2に示す。
【0098】
[比較例4]
前述の方法で、第1のマルチフィラメント糸条2、第1の斜交マルチフィラメント糸条3、第2の斜交マルチフィラメント糸条4、及び、直交マルチフィラメント糸条6がいずれもガラス繊維糸であり、交点固定樹脂がポリアミドであり、単位面積当たりの質量が183g/mである、多軸不織布(四軸不織布)の一方の面に、65個/25.4mmの貫通孔が並列に配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が15.0g/mとなるように、ドット状に付着させ、比較例4の接着性多軸不織布1(接着性四軸不織布)を得た。比較例4の接着性多軸不織布1について、前述の方法で、多軸不織布の平均糸条厚さT、接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表2に示す。
【0099】
[参考例1]
経糸及び緯糸としてガラス繊維糸を用いた、単位面積当たりの質量が50g/mであるガラス繊維織物の一方の面に、40個/25.4mmの貫通孔が並列に配置されたスクリーンを用いて、融点が90℃のポリアミド樹脂を、単位面積当たりの質量が12.0g/mとなるように、ドット状に付着させ、参考例1の接着性織物を得た。参考例1の接着性織物において、織物の平均糸条厚さを、次のようにして算出した。まず、3本以上の経糸について、緯糸と交差しておらず、接着樹脂が付着していない3ヶ所の経糸の厚さを、マイクロメーターを用いて測定し、その平均をとることで、経糸の平均厚さを算出する。次いで、3本以上の緯糸について、経糸と交差していない3ヶ所の緯糸を、マイクロメーターを用いて測定し、その平均をとることで、緯糸の平均厚さを算出する。次いで、経糸の平均厚さ、及び、緯糸の平均厚さの平均をとることで、織物の平均糸条厚さTを算出する。また、接着性多軸不織布1と全く同様の方法で、接着性織物の接着樹脂部の平均ドット径D、接着樹脂部の平均ドット高さH、及び、接着樹脂部の交点接触率Cを算出し、(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2の値を計算した。結果を表2に示す。
【0100】
[接着性の評価]
実施例1~6及び比較例1~4の接着性多軸不織布1、並びに、参考例1の接着性織物の接着樹脂部5が設けられた面に、綿/ポリエステルブロード生地(日東紡績株式会社製、品番:T68)を積層し、プレス機(アサヒ繊維機械工業株式会社製、型式名:JR-900S)を用いて、130℃、3.0kgf/cm2、10秒間の条件でプレスして、積層物を得た。次いで、得られた積層物を。25.4mm幅に裁断して、試験用サンプルを得た。得られた試験用サンプルについて、万能試験機(株式会社島津製作所製、型式名:AG-I)を用いて、剥離速度100mm/分でT型剥離を行った際の接着力を測定した。測定された接着力が、300cN/25.4mm以上の場合に、「A」、50cN/25.4mm以上300cN/25.4mm未満の場合に「B」、50cN/25.4mm未満の場合に「C」と評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0101】
[樹脂の裏抜け防止に関する評価]
実施例1~6及び比較例1~4の接着性多軸不織布1、並びに、参考例1の接着性織物の両面に、綿ニット生地(飯田繊工株式会社製、品番:TX-10590)を積層し、プレス機(株式会社神戸電器工業所製、型式名:BP-V4812D)を用いて、150℃、0.3kgf/cm、30秒間の条件でプレスして、積層物を得た。次いで、得られた積層物を。25.4mm幅に裁断して、試験用サンプルを得た。得られた試験用サンプルについて、万能試験機(株式会社島津製作所製、型式名:AG-I)を用いて、剥離速度100mm/分でT型剥離を行った際の、接着樹脂部5が設けられてない面の接着力を測定した。測定された接着力が、30cN/25.4mm以下の場合に、「A」、30cN/25.4mm超50cN/25.4mm以下の場合に「B」、50cN/25.4mm超の場合に「C」と評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、接着樹脂部5が設けられてない面の接着力が高いということは、接着性多軸不織布1において裏抜けした接着樹脂が存在することを示唆している。
【0102】
[品質安定性の評価]
スクリーンの直後に位置するガイドロールを完全清掃後、実施例1~6の接着性多軸不織布1を100m製造した際に、ガイドロールに汚れが無い場合に「A」、汚れがある場合に「B」と評価した。なお、ガイドロールに汚れが付いた状態で、接着性多軸不織布1を製造した場合に、接着性多軸不織布1の背面に汚れが付着することで、外観の不良が生じ、また、接着性多軸不織布1を含むタイルユニットを壁面に接着施工する際に接着性が低下するおそれがある。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
表1及び表2に示されるように、多軸不織布の平均糸条厚さTが、50~500μmの範囲にあり、接着樹脂部の平均ドット径Dが、100~1500μmの範囲にあり、接着樹脂部の平均ドット高さHが、5~600μmの範囲にあり、接着樹脂部の交点接触率Cが、3.0~90.0%の範囲にあり、前記T、D、H及びCが下記式(1)を満たす、実施例1~6の接着性多軸不織布1は、優れた接着性を備えるとともに、接着樹脂の裏抜けが防止される。
0.65≦(D1/2×H1/2×(C/100))/T1/2≦30.30
・・・(1)
【0106】
一方、上記式(1)を満たさない、比較例1~4の接着性多軸不織布1は、十分な接着性を備えないか、接着樹脂の裏抜けを十分に防止することができない。
【0107】
また、参考例1の接着性織物に示されるように、多軸不織布ではなく、織物にドット状の接着樹脂部5が設けられた場合には、上記式(1)を満たさなくても、接着性織物が、優れた接着性を備えるとともに、接着樹脂の裏抜けが防止される。
【0108】
[実施例7]
実施例1の接着性多軸不織布1上に、表面温度が90℃のタイル8枚を配置し、0.5MPaで圧着した。タイルの圧着された接着性多軸不織布1を垂直に持ち上げても8枚のタイル全てが安定して固定されていた。
【0109】
[実施例8]
実施例6の接着性多軸不織布1上に、表面温度が100℃のタイル8枚を配置し、0.5MPaで圧着した。タイルの圧着された接着性多軸不織布1を垂直に持ち上げても8枚のタイル全てが安定して固定されていた。一方で、表面温度が90℃のタイル8枚を配置し、0.5MPaで圧着した場合には、タイルの圧着された接着性多軸不織布1を垂直に持ち上げた際に、一部のタイルが剥離した。
【0110】
[比較例5]
比較例1の接着性多軸不織布1上に、表面温度が100℃のタイル8枚を配置し、0.5MPaで圧着した。タイルの圧着された接着性多軸不織布1を垂直に持ち上げた際に、一部のタイルが剥離した。
【0111】
実施例7,8及び比較例5で示されるように、本実施形態の接着性多軸不織布1は、タイルユニットの基材として好適に用いることができる。実施例7に示されるように、前記接着性の評価が「A」である本実施形態の接着性多軸不織布1は、より低い温度でタイルを接着可能であり、タイルユニットの基材として特に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0112】
1…多軸不織布、2…第1のマルチフィラメント糸条、3…第1の斜交マルチフィラメント糸条、4…第2の斜交マルチフィラメント糸条、5…接着樹脂部、51…第1のドット状接着樹脂、52…第2のドット状接着樹脂、6…直交マルチフィラメント糸条。
図1
図2
図3