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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】ガラス繊維強化樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   B29B 15/08 20060101AFI20231227BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20231227BHJP
   C03C 13/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B29B15/08
C08J5/04 CFD
C03C13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020572225
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004895
(87)【国際公開番号】W WO2020166518
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2019022877
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】関川 宗寿
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 遼
(72)【発明者】
【氏名】高泉 真央
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6927463(JP,B1)
【文献】特許第6790812(JP,B2)
【文献】特許第6468409(JP,B1)
【文献】特許第4269194(JP,B2)
【文献】特許第3954130(JP,B2)
【文献】特許第3954125(JP,B2)
【文献】特許第3269937(JP,B2)
【文献】特開2013-043942(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101696089(CN,A)
【文献】国際公開第2012/118163(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1903767(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104529174(CN,A)
【文献】特開2012-166998(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109721(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対し10~90質量%の範囲のガラス繊維と、90~10質量%の範囲の樹脂とを含有するガラス繊維強化樹脂成形品であって、
該ガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し52.0~59.5質量%の範囲のSiO2と、17.5~25.5質量%の範囲のB23と、9.0~14.0質量%の範囲のAl23と、0.5~6.0質量%の範囲のSrOと、1.0~5.0質量%の範囲のMgOと、1.9~5.0質量%の範囲のCaOとを含み、F2及びCl2を合計で0.1~2.5質量%の範囲で含む組成を備え、
該ガラス繊維は、1~10000μmの数平均繊維長を有することを特徴とするガラス繊維強化樹脂成形品。
【請求項2】
前記ガラス繊維が、100~450μmの数平均繊維長を有することを特徴とする、請求項1に記載のガラス繊維強化樹脂成形品。
【請求項3】
前記ガラス繊維は、3~25μmの数平均繊維長を有することを特徴とする、請求項1に記載のガラス繊維強化樹脂成形品。
【請求項4】
前記ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれる樹脂が、誘電率が5.0未満の熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス繊維強化樹脂成形品。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする、請求項4に記載のガラス繊維強化樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維強化樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維は、樹脂成形品の強度を向上させるために種々の用途で広く用いられており、該樹脂成形品は、スマートフォンやノートパソコン等の電子機器の筐体又は部品に用いられることが増えている。
【0003】
一般に、ガラスは交流電流に対してエネルギー吸収を行い熱として吸収するので、前記樹脂成形品を前記電子機器の筐体又は部品に用いると、該樹脂成形品が発熱するという問題がある。
【0004】
ここで、ガラスに吸収される誘電損失は、誘電率及び誘電正接が高いほど、また周波数が高い程、大きくなり、樹脂成形品の発熱が大きくなる。
【0006】
ガラス繊維強化樹脂成形体の誘電損失を低減するために、出願人は、ガラス繊維全量に対し52.0~57.0質量%の範囲のSiO2と、13.0~17.0質量%の範囲のAl23と、15.0~21.5質量%の範囲のB23と、2.0~6.0質量%の範囲のMgOと、2.0~6.0質量%の範囲のCaOと、1.0~4.0質量%の範囲のTiO2と、1.5質量%未満のF2とを含み、かつ、Li2O、Na2O及びK2Oの合計量が0.6質量%未満である組成を有するガラス繊維を用いた、誘電率及び誘電正接の低減した、ガラス繊維強化樹脂成形品について特許出願を行った(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2017/171101号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、電子機器において扱われるデータの大容量化・電子機器間のデータ通信の高速化が進んでおり、これらの動きに対応するために、電気信号の高周波化が進んでいる。
【0009】
上記式(1)において、周波数fが増大することから、誘電損失を低減するために、ガラス繊維強化樹脂成形品においては、周波数以外のパラメーター、とりわけ誘電率及び誘電正接、特に誘電正接を低減することが求められている。
【0010】
この動きの中で、特許文献1記載のガラス繊維強化樹脂成形品は、10GHz以上の高周波領域においては、誘電率及び誘電正接の低減が不十分となるという欠点がある。
【0011】
本発明は、かかる不都合を解消して、10GHz以上という高周波領域において、誘電率及び誘電正接を低減可能であり、特に誘電正接を大きく低減可能なガラス繊維強化樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対し10~90質量%の範囲のガラス繊維と、90~10質量%の範囲の樹脂とを含有するガラス繊維強化樹脂成形品であって、該ガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し52.0~59.5質量%の範囲のSiOと、17.5~25.5質量%の範囲のBと、9.0~14.0質量%の範囲のAlと、0.5~6.0質量%の範囲のSrOと、1.0~5.0質量%の範囲のMgOと、1.0~5.0質量%の範囲のCaOとを含み、F及びClを合計で0.1~2.5質量%の範囲で含む組成を備え、該ガラス繊維は、1~10000μmの数平均繊維長を有することを特徴とする。
【0013】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、前記組成及び数平均繊維長を備えるガラス繊維を前記の含有量で含有することで、10GHz以上の高周波領域において、低い誘電率及び低い誘電正接、特に低い誘電正接を有することができる。
【0014】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品において、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、100~450μmの範囲の数平均繊維長を備えることが好ましい。前記ガラス繊維が、この範囲の数平均繊長を備えることで、ガラス繊維強化樹脂成形品の優れた機械的強度、低い誘電率及び低い誘電正接、並びに、ガラス繊維強化樹脂成形品の高い製造効率を両立することができる。
【0015】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品において、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、3~25μmの範囲の数平均繊維長を備えることが好ましい。前記ガラス繊維が、この範囲の数平均繊長を備えることで、ガラス繊維強化樹脂成形品の高い流動性、低い誘電率及び低い誘電正接を両立することができる。
【0016】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品において、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれる樹脂は、誘電率が5.0未満の熱可塑性樹脂であることが好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂であることがより好ましい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、ガラス繊維強化樹脂成形品の低い誘電率、及び、低い誘電正接をより確実に担保できる。特に、ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで、ガラス繊維強化樹脂成形品の低い吸水率、低い誘電率及び低い誘電正接を両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対し10~90質量%の範囲のガラス繊維と、90~10質量%の範囲の樹脂とを含有するガラス繊維強化樹脂成形品であって、該ガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し52.0~59.5質量%の範囲のSiOと、17.5~25.5質量%の範囲のBと、9.0~14.0質量%の範囲のAlと、0.5~6.0質量%の範囲のSrOと、1.0~5.0質量%の範囲のMgOと、1.0~5.0質量%の範囲のCaOとを含み、F及びClを合計で0.1~2.5質量%の範囲で含む組成を備え、該ガラス繊維は、1~10000μmの数平均繊維長を有する。
【0019】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、前記組成を備えるガラス繊維を含有することで、10GHz以上の高周波領域において、低い誘電率及び低い誘電正接、特に低い誘電正接を有することができる。
【0020】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、該ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対しガラス繊維の含有量が10質量%未満であるか又は樹脂の含有量が90質量%を超えるときには、該ガラス繊維強化樹脂成形品において十分な引張強度及び十分な衝撃強さを得ることができない。一方、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、該ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対しガラス繊維の含有量が90質量%を超えるか又は樹脂の含有量が10質量%未満であるときには、該ガラス繊維強化樹脂成形品の製造が困難となる。
【0021】
本実施形態ガラス繊維強化樹脂成形品は、成形品の強度と、成形品の製造容易性とを両立するという観点から、該ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対し20~70質量%の範囲のガラス繊維と、80~30質量%の範囲の樹脂とを含有することが好ましく、25~60質量%の範囲のガラス繊維と、75~40質量%の範囲の樹脂とを含有することがより好ましく、30~50質量%の範囲のガラス繊維と、70~50質量%の範囲の樹脂とを含有することがさらに好ましい。
【0022】
なお、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品におけるガラス繊維の含有量は、JIS K 7052:1999に準拠して算出することができる。
【0023】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維の全量に対するSiO2の含有量が52.0質量%未満であると、ガラス繊維の機械的強度が低下し、そのため、成形品の強度が低下する。一方、前記ガラス繊維において、ガラス繊維の全量に対するSiO2の含有量が59.5質量%を超えると、ガラス繊中に分相が発生し易くなり、ガラス繊維の化学的耐久性が低下し、ガラス繊維の均質性が損なわれるため、成形品の品質安定性が低下する。
【0024】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するSiOの含有量は、53.0~58.2質量%の範囲とすることが好ましく、53.4~57.4質量%の範囲とすることがより好ましく、53.8~56.6質量%の範囲とすることがさらに好ましく、54.2~55.8質量%の範囲とすることが特に好ましい。
【0025】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するB2O3の含有量が17.5質量%未満であると、ガラス繊維の誘電率及び誘電正接を十分に低減することができず、そのため、ガラス繊維強化樹脂成形品の誘電率及び誘電正接を十分に低減できない。一方、前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するB2O3の含有量が25.5質量%を超えると、ガラス繊中に分相が発生し易くなり、ガラス繊維の化学的耐久性が低下し、ガラス繊維の均質性が損なわれるため、成形品の品質安定性が低下する。
【0026】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するBの含有量は、21.6~25.4質量%の範囲とすることが好ましく、22.0~25.2質量%の範囲とすることがより好ましく、22.4~25.0質量%の範囲とすることがさらに好ましく、22.8~24.8質量%の範囲とすることが特に好ましく、23.2~24.6質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0027】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するAlの含有量が9.0質量%未満であると、ガラス繊中に分相が発生し易くなり、ガラス繊維の化学的耐久性が低下し、ガラス繊維の均質性が損なわれるため、成形品の品質安定性が低下する。一方、ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するAlの含有量が14.0質量%を超えると、ガラス繊維の誘電率及び誘電正接を十分に低減することができず、そのため、ガラス繊維強化樹脂成形品の誘電率及び誘電正接を十分に低減できない。
【0028】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するAlの含有量は、10.0~13.5質量%の範囲とすることが好ましく、10.4~13.2質量%の範囲とすることがより好ましく、10.8~12.9質量%の範囲とすることがさらに好ましく、11.2~12.6質量%の範囲とすることが特に好ましく、11.6~12.3質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0029】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するSrOの含有量が0.5質量%未満であるか6.0質量%を超えると、ガラス繊維の誘電率及び誘電正接を十分に低減することができず、そのため、ガラス繊維強化樹脂成形品の誘電率及び誘電正接を十分に低減できない。
【0030】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するSrOの含有量は、2.0~5.0質量%の範囲とすることが好ましく、2.4~4.8質量%の範囲とすることがより好ましく、2.8~4.6質量%の範囲とすることがさらに好ましく、3.2~4.4質量%の範囲とすることが特に好ましく、3.6~4.2質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0031】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するMgOの含有量が1.0質量%未満であると、安定的なガラス繊維製造が困難になり、ガラス繊維の品質安定性が低下するため、成形品の品質安定性が低下する。一方、ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するMgOの含有量が5.0質量%を超えると、ガラス繊維の誘電率及び誘電正接を十分に低減することができず、そのため、ガラス繊維強化樹脂成形品の誘電率及び誘電正接を十分に低減できない。
【0032】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するMgOの含有量は、1.5~3.0質量%の範囲とすることが好ましく、1.6~2.8質量%の範囲とすることがより好ましく、1.7~2.6質量%の範囲とすることがさらに好ましく、1.8~2.4質量%の範囲とすることが特に好ましく、1.9~2.2質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0033】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するCaOの含有量が1.0質量%未満であると、安定的なガラス繊維製造が困難になり、ガラス繊維の品質安定性が低下するため、成形品の品質安定性が低下する。一方、ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するCaOの含有量が5.0質量%を超えると、ガラス繊維の誘電率及び誘電正接を十分に低減することができず、そのため、ガラス繊維強化樹脂成形品の誘電率及び誘電正接を十分に低減できない。
【0034】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するCaOの含有量は、1.5~3.0質量%の範囲とすることが好ましく、1.6~2.8質量%の範囲とすることがより好ましく、1.7~2.6質量%の範囲とすることがさらに好ましく、1.8~2.4質量%の範囲とすることが特に好ましく、1.9~2.2質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0035】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するF及びClの合計含有量が0.1質量%未満であると、安定的なガラス繊維製造が困難になり、ガラス繊維の品質安定性が低下するため、成形品の品質安定性が低下する。一方、ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するF及びClの合計含有量が2.5質量%を超えると、ガラス繊中に分相が発生し易くなり、ガラス繊維の化学的耐久性が低下し、ガラス繊維の均質性が損なわれるため、成形品の品質安定性が低下する。
【0036】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するF及びClの合計含有量は、0.3~2.0質量%の範囲とすることが好ましく、0.4~1.8質量%の範囲とすることがより好ましく、0.5~1.6質量%の範囲とすることがさらに好ましく、0.6~1.4質量%の範囲とすることが特に好ましく、0.7~1.2質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0037】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するFの含有量は、0.1~2.5質量%の範囲とすることが好ましく、0.3~2.0質量%の範囲とすることがより好ましく、0.4~1.8質量%の範囲とすることがさらに好ましく、0.5~1.6質量%の範囲とすることがとりわけ好ましく、0.6~1.4質量%の範囲とすることが特に好ましく、0.7~1.2質量%の範囲とすることが最も好ましい。
【0038】
前記ガラス繊維において、ガラス繊維全量に対するFの含有量が0.4質量%以上である場合には、Clを実質的に含まなくてもよい(すなわち、Clの含有量が0.01質量%未満であってもよい)。
【0039】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し、0~6.0質量%の範囲でTiOを含んでも良い。TiOを含有することで、ガラス繊維溶融物の高温での粘性を低減することが可能となり、品質の安定したガラス繊維を製造することが容易になる。前記ガラス繊維が、TiOを含む場合、ガラス繊維全量に対し、1.0~3.0質量%の範囲でTiOを含むことが好ましい。
【0040】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し、0~5.0質量%の範囲でPを含んでも良い。Pは、前記ガラス繊維の誘電率及び誘電正接の低減に寄与する。前記ガラス繊維が、Pを含む場合、ガラス繊維全量に対し、2.5~4.5質量%の範囲でPを含むことが好ましい。
【0041】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し、0~3.0質量%の範囲でFeを含んでも良い。Feを含有することで、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制することが可能となり、品質の安定したガラス繊維を製造することが容易になる。前記ガラス繊維が、Feを含む場合、ガラス繊維全量に対し、0.1~0.6質量%の範囲でFeを含むことが好ましい。
【0042】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し、0~1.0質量%の範囲でSnOを含んでも良い。SnOを含有することで、ガラス繊維中に含まれる気泡を抑制することが可能となり、品質の安定したガラス繊維を製造することが容易になる。前記ガラス繊維が、SnOを含む場合、ガラス繊維全量に対し、0.1~0.6質量%の範囲でSnOを含むことが好ましい。
【0043】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し、3.0質量%未満であれば、ZnOを含むことが許容できる。
【0044】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し、合計含有量1.0質量%未満であって、各成分の含有量が0.4質量%未満であれば、NaO、KO及びLiOを含むことを許容できる。
【0045】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し、0.4質量%未満であれば、ZrOを含むことが許容できる。
【0046】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、ガラス繊維全量に対し、0.05質量%未満であれば、Crを含むことが許容できる。
【0047】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、原材料に起因する不純物として、Ba、P、Mn、Co、Ni、Cu、Mo、W、Ce、Y、Laの酸化物を合計で、ガラス全量に対し、1.0質量%未満含み得る。
【0048】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、Bの含有率(質量%)X、Alの含有率(質量%)Y、SrOの含有率(質量%)Z、及び、F及びClの合計含有率(質量%)Wは、次式(2)を満たす。
【0049】
38.0≦ (W1/8×X×Y)/(1000×Z1/2)≦95.0 ・・・(2)
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、前記W、X、Y及びZは、次式(3)を満たすことが好ましい。
【0050】
50.0≦ (W1/8×X×Y)/(1000×Z1/2)≦90.0 ・・・(3)
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、前記W、X、Y及びZは、次式(4)を満たすことがより好ましい。
【0051】
60.0≦ (W1/8×X×Y)/(1000×Z1/2)≦88.0 ・・・(4)
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、前記W、X、Y及びZは、次式(5)を満たすことがさらに好ましい。
【0052】
70.0≦ (W1/8×X×Y)/(1000×Z1/2)≦86.0 ・・・(5)
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、前記W、X、Y及びZは、次式(6)を満たすことが特に好ましい。
【0053】
75.0≦ (W1/8×X×Y)/(1000×Z1/2)≦85.0 ・・・(6)
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、前記W、X、Y及びZは、次式(7)を満たすことが最も好ましい。
【0054】
78.0≦ (W1/8×X×Y)/(1000×Z1/2)≦84.5 ・・・(7)
なお、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、前述した各成分の含有量の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
【0055】
測定方法としては、初めにガラスバッチ(ガラス原料を混合して調合したもの)、又は、ガラス繊維(ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~600℃のマッフル炉で2~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる)を白金ルツボに入れ、電気炉中で1550℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化する。軽元素であるLiについてはガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素はガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有量(質量%)を求めることができる。
【0056】
なお、ガラス原料となる鉱石に含まれる成分と各成分の含有率、溶融過程における各成分の揮発量に基づき、前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給することにより、前述した組成のガラスが調製される。
【0057】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、測定周波数10GHzにおいて、4.6未満の誘電率、及び、0.0021以下の誘電正接を備え、好ましくは、4.0~4.5の範囲の誘電率、及び、0.0010~0.0020の範囲の誘電正接を備える。
【0058】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維の数平均繊維長が1μm未満であると、前記ガラス繊維強化樹脂成形品において十分な機械的強度を得ることができない。また、ガラス繊維強化樹脂成形品の製造過程で、ガラス繊維の折損が発生するので、前記ガラス繊維の数平均繊維長を10000μm超とすることは困難である。
【0059】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、ガラス繊維強化樹脂成形品の優れた機械的強度、低い誘電率及び低い誘電正接、並びに、ガラス繊維強化樹脂成形品の高い製造効率を両立させるという観点からは、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維の数平均繊維長は、100~450μmの範囲であることが好ましく、120~400μmの範囲であることがより好ましく、140~350μmの範囲であることがさらに好ましく、150~330μmの範囲であることが特に好ましく、160~300μmの範囲であることが最も好ましい。ガラス繊維の数平均繊維長がこの範囲であるガラス繊維強化樹脂成形品は、製造効率と強度のとのバランスに優れることから、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の樹脂と組み合わせて、携帯電子機器の筐体等の用途に好適である。また、製造効率と強度との優れたバランスを実現するために、ガラス繊維の数平均繊維長がこの範囲であるガラス繊維強化樹脂成形品におけるガラス繊維の含有率は、30~60質量%であることが好ましい。
【0060】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、ガラス繊維強化樹脂成形品の高い流動性、低い誘電率及び低い誘電正接を両立させるという観点からは、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維の数平均繊維長は、3~25μmの範囲であることが好ましく、5~23μmの範囲であることがより好ましく、7~22μmの範囲であることがさらに好ましく、9~21μmの範囲であることが特に好ましく、10~20μmの範囲であることが最も好ましい。ガラス繊維の数平均繊維長がこの範囲であるガラス繊維強化樹脂成形品は、流動性が高いことから、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の樹脂と組み合わせて、携帯電子機器中の微細部品等の用途に好適である。また、流動性をより高めるという観点から、ガラス繊維の数平均繊維長がこの範囲であるガラス繊維強化樹脂成形品におけるガラス繊維の含有率は、10~40質量%であることが好ましい。
【0061】
前述のガラス組成を備えるガラス繊維は、以下のように製造される。初めに、ガラス原料となる鉱石等に含まれる成分と各成分の含有率、及び、溶融過程における各成分の揮発量に基づき、前述の組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450~1550℃の範囲の温度で溶融する。次に、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を所定の温度に制御された、ブッシングの1~20000個のノズルチップから引き出して、急冷することで、ガラスフィラメントを形成する。次に、形成されたガラスフィラメントに、塗布装置であるアプリケーターを用いて集束剤又はバインダーを塗布し、集束シューを用いて、ガラスフィラメント1~20000本を集束させながら、巻取り機を用いて、チューブに高速で巻取ることで、ガラス繊維が得られる。ここで、通常、ガラスフィラメントの断面形状は円形であるが、前記ノズルチップを、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有するものとし、温度条件を制御することで、扁平な断面形状を有するガラスフィラメントが得られる。また、ノズルチップの径や、巻取り速度、及び、温度条件等を調整することで、ガラスフィラメントが円形の断面形状を有する場合の繊維径、又は、扁平な断面形状を有する場合の、ガラスフィラメントの短径及び長径を調整することができる。例えば、巻取り速度を速くすることで、繊維径、又は、短径及び長径を小さくすることができ、巻取り速度を遅くすることで、繊維径、又は、短径及び長径を大きくすることができる。
【0062】
前記ガラスフィラメントの断面形状は、通常、円形であり、扁平な断面形状を有する場合には、長円形(長方形の短辺部分を、当該短辺を直径とする半円にそれぞれ置換した形状)、楕円形、及び、長方形をとり得る。
【0063】
前記ガラスフィラメントの繊維径は、断面形状が円形の場合には、3.0~35.0μmの範囲をとり得る。また、前記ガラスフィラメントが扁平な断面形状を有する場合、ガラスフィラメントの短径は、2.0~20.0μmの範囲をとり、長径は、3.0~45.0μmの範囲をとり、短径に対する長径の比(長径/短径)は、2.0~10.0の範囲をとり、断面積を真円に換算したときの繊維径(換算繊維径)は、3.0~35.0μmの範囲をとり得る。なお、ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの繊維径の平均値を、ガラス繊維の繊維径ということもある。
【0064】
前記ガラス繊維は、複数本のガラスフィラメントが集束されることで、1~10000tex(g/km)の範囲の重量を備える。
【0065】
なお、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維は、通常、ガラスフィラメントの状態に分散して存在する。
【0066】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、ガラス繊維は、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂又は無機材料中との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、その表面を有機物で被覆されてもよい。このような有機物としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン(特にカルボン酸変性ポリプロピレン)、(ポリ)カルボン酸(特にマレイン酸)と不飽和単量体との共重合体等を挙げることができる。
【0067】
また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、ガラス繊維は、これらの樹脂に加えて、シランカップリング剤、潤滑剤、界面活性剤等を含む樹脂組成物で被覆されていてもよい。このような樹脂組成物は、樹脂組成物に被覆されていない状態における、ガラス繊維の質量を基準として、0.1~2.0wt%の割合で、ガラス繊維を被覆する。
【0068】
なお、有機物によるガラス繊維の被覆は、例えば、ガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、前記樹脂溶液又は前記樹脂組成物溶液を含む前記集束剤又はバインダーをガラス繊維に塗布し、その後、樹脂溶液又は樹脂組成物溶液の塗布されたガラス繊維を乾燥させることで行うことができる。
【0069】
ここで、シランカップリング剤としては、アミノシラン(γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等)、クロルシラン(γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等)、メルカプトシラン(γ-メルカプトトリメトキシシラン等)、ビニルシラン(ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、アクリルシラン(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、カチオニックシラン(N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等)が挙げられる。前記シランカップリング剤は、これらの化合物を単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0070】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油(牛脂等)及びこの水素添加物、植物油(大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等)及びこの水素添加物、動物性ワックス(蜜蝋、ラノリン等)、植物性ワックス(キャンデリラワックス・カルナバワックス等)、鉱物系ワックス(パラフィンワックス、モンタンワックス等)、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物(ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等)、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等)、第4級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等)が挙げられる。前記潤滑剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0071】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0072】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0073】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩(酢酸塩や塩酸塩等)、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
【0074】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0075】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン等のベタイン型、イミダゾリン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0076】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品において、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂である。
【0077】
ここで、前記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、スチレン/無水マレイン酸樹脂、スチレン/マレイミド樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン(ACS)樹脂、アクリロニトリル/エチレン/スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸メチル(ASA)樹脂、スチレン/アクリロニトリル(SAN)樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー(LCP)、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン/酢酸ビニル(EVA)樹脂、アイオノマー(IO)樹脂、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン樹脂、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、オレフィン/ビニルアルコール樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸等を挙げることができる。
【0078】
具体的に、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。
【0079】
ポリプロピレンとしては、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0080】
ポリスチレンとしては、アタクチック構造を有するアタクチックポリスチレンである汎用ポリスチレン(GPPS)、GPPSにゴム成分を加えた耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、シンジオタクチック構造を有するシンジオタクチックポリスチレン等が挙げられる。
【0081】
メタクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、脂肪酸ビニルエステルのうち一種を単独重合した重合体、又は二種以上を共重合した重合体等が挙げられる。
【0082】
ポリ塩化ビニルとしては、従来公知の乳化重合法、懸濁重合法、マイクロ懸濁重合法、塊状重合法等の方法により重合される塩化ビニル単独重合体、または、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体、または、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト重合したグラフト共重合体等が挙げられる。
【0083】
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリパラキシリレンアジパミド(ナイロンPXD6)、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロン5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)、ポリテトラメチレンイソフタルアミド(ナイロン4I)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテレフタルアミド(ナイロンPACMT)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンイソフタルアミド(ナイロンPACMI)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノヘキシル)メタンテトラデカミド(ナイロンPACM14)等の成分のうち1種、もしくは2種以上の複数成分を組み合わせた共重合体やこれらの混合物等を挙げることができる。
【0084】
ポリアセタールとしては、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とする単独重合体、および、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2~8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を含有する共重合体等が挙げられる。
【0085】
ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、エチレングリコールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0086】
ポリブチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,4-ブタンジオールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0087】
ポリトリメチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸またはその誘導体と、1,3-プロパンジオールを重縮合することにより得られる重合体等が挙げられる。
【0088】
ポリカーボネートとしては、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを溶融状態で反応させるエステル交換法により得られる重合体、又は、ジヒドロキシアリール化合物とホスゲンとを反応するホスゲン法により得られる重合体が挙げられる。
【0089】
ポリアリーレンサルファイドとしては、直鎖型ポリフェニレンサルファイド、重合の後に硬化反応を行うことで高分子量化した架橋型ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンサルファイドサルフォン、ポリフェニレンサルファイドエーテル、ポリフェニレンサルファイドケトン等が挙げられる。
【0090】
変性ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリスチレンとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/無水マレイン酸共重合体とのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとポリアミドとのポリマーアロイ、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルとスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体とのポリマーアロイ等が挙げられる。
【0091】
ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)等が挙げられる。
【0092】
液晶ポリマー(LCP)としては、サーモトロピック液晶ポリエステルである芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族ジヒドロキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、脂肪族ジヒドロキシ単位、脂肪族ジカルボニル単位等から選ばれる1種以上の構造単位からなる(共)重合体等が挙げられる。
【0093】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、フッ化エチレンプロピレン樹脂(FEP)、フッ化エチレンテトラフルオロエチレン樹脂(ETFE)、ポリビニルフロライド(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)等が挙げられる。
【0094】
アイオノマー(IO)樹脂としては、オレフィンまたはスチレンと不飽和カルボン酸との共重合体であって、カルボキシル基の一部を金属イオンで中和してなる重合体等が挙げられる。
【0095】
オレフィン/ビニルアルコール樹脂としては、エチレン/ビニルアルコール共重合体、プロピレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物、プロピレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物等が挙げられる。
【0096】
環状オレフィン樹脂としては、シクロヘキセン等の単環体、テトラシクロペンタジエン等の多環体、環状オレフィンモノマーの重合体等が挙げられる。
【0097】
ポリ乳酸としては、L体の単独重合体であるポリL-乳酸、D体の単独重合体であるポリD-乳酸、またはその混合物であるステレオコンプレックス型ポリ乳酸等が挙げられる。
【0098】
セルロース樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等を挙げることができる。また、前記熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ(EP)樹脂、メラミン(MF)樹脂、フェノール樹脂(PF)、ウレタン樹脂(PU)、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリイミド(PI)、ユリア(UF)樹脂、シリコン(SI)樹脂、フラン(FR)樹脂、ベンゾグアナミン(BR)樹脂、アルキド樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂、ジアリルフタレート樹脂(PDAP)等を挙げることができる。
【0099】
具体的に、不飽和ポリエステルとしては、脂肪族不飽和ジカルボン酸と脂肪族ジオールをエステル化反応させることで得られる樹脂が挙げられる。
【0100】
ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、ノボラック系ビニルエステル樹脂が挙げられる。
【0101】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシリデンビスフェノール型エポキシ樹脂)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタンノボラック型エポキシ樹脂,縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂やフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6‐トリアミノ‐1,3,5‐トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体が挙げられる。フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、または、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられ、この中の一種、もしくは、二種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0102】
メラミン樹脂としては、メラミン(2,4,6‐トリアミノ‐1,3,5‐トリアジン)とホルムアルデヒドとの重縮合からなる重合体が挙げられる。
【0103】
フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂、または、アリールアルキレン型フェノール樹脂等が挙げられ、この中の一種、もしくは、二種以上を組み合わせたものが挙げられる。
【0104】
ユリア樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる樹脂が挙げられる。
【0105】
前記熱可塑性樹脂又は前記熱硬化性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0106】
ガラス繊維強化樹脂成形品の低い誘電率及び誘電正接をより確実に担保するために、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品で用いられる樹脂は、誘電率が5.0未満の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂からなる群から選択される樹脂であることがより好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂又はポリアミド樹脂であることがさらに好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリエーテルエーテルケトン樹脂であることが特に好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂であることが最も好ましい。
【0107】
なお、樹脂の誘電率は、測定周波数10GHzにおいて、JIS C 2565に準拠した方法及び装置により測定することができる。
【0108】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、本発明の目的を阻害しない範囲で、前記ガラス繊維及び前記樹脂以外の成分を含むことができる。このような成分としては、前記ガラス繊維以外のガラス繊維(例えば、Eガラス繊維、Sガラス繊維)、ガラス繊維以外の強化繊維(例えば、炭素繊維、金属繊維)、ガラス繊維以外の充填剤(例えば、ガラスパウダー、タルク、マイカ)、難燃剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、流動性改良剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、核剤、抗菌剤、顔料等を挙げることができる。また、本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、ガラス繊維強化樹脂成形品の全量に対し、これらの成分を合計で0~40質量%の範囲で含有することができる。
【0109】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、前述のガラス繊維、前述の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、及び、前述のガラス繊維以外の添加剤からなる混合物を、射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、中空成形法、発泡成形法(超臨界流体発泡成形法含む)、インサート成形法、インモールドコーティング成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法、スタンピング成形法、インフュージョン法、ハンドレイアップ法、スプレイアップ法、レジントランスファーモールディング法、シートモールディングコンパウンド法、バルクモールディングコンパウンド法、プルトルージョン法、フィラメントワインディング法等の公知の成形法から、樹脂及び添加剤の特性やガラス繊維強化樹脂成形品の用途に合わせて適宜選択される成形法によって成形することで得ることができる。
【0110】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、射出成形法により得られた、ガラス繊維強化樹脂射出成形品であることが好ましい。射出成形法は、他の成形法に比べ成形サイクルに優れているため、ガラス繊維強化樹脂成形品の効率的な製造に適している。
【0111】
この中でも、ガラス繊維を含有する熱可塑性樹脂ペレットを用いた射出成形法が好ましく採用される。この場合、熱可塑性樹脂ペレットに含有させるガラス繊維としては、ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数(集束本数)が好ましくは1~20000本、より好ましくは50~10000本、さらに好ましくは1000~8000本のガラス繊維(ガラス繊維束又はガラスストランドともいう)を、長さが好ましくは1.0~30,0mm、より好ましくは2.0~15.0mm、さらに好ましくは2.3~7.8mmに切断したチョップドストランド、又は、前記ガラス繊維を、長さが好ましくは0.001~0.900mm、より好ましくは、0.010~0.700mm、さらに好ましくは0.020~0.500mmになるように、ボールミル又はヘンシルミキサー等の公知の方法により粉砕したカットファイバーを用いることができる。なお、ガラス繊維の形態としては、チョップドストランド及びカットファイバー以外に、例えば、ガラス繊維を構成するガラスフィラメントの本数が10~30000本で、切断を行わない、ロービングが挙げられる。
【0112】
熱可塑性樹脂ペレットの製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記のようなチョップドストランドやカットファイバーと、熱可塑性樹脂とを、使用される熱可塑性樹脂にあわせた公知の混練条件で、二軸混練機等を用いて溶融混練し、混練物を押出成形することによって製造することができる。そして、この熱可塑性樹脂ペレットを用いて、使用される熱可塑性樹脂にあわせた公知の射出成形条件で、射出成型機により射出成形することによって、ガラス繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
【0113】
ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維の数平均繊維長L(μm)は、熱可塑性樹脂ペレットに含有させるチョップドストランド又はカットファイバーの長さや、ペレット作成から射出成形に至るまでの混練条件や、射出成形条件によって調整することができる。例えば、ガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維の数平均繊維長L(μm)は、熱可塑性樹脂ペレット製造工程において、10~1000rpmの範囲で、二軸混練時のスクリュ回転数を低くすることによって長くすることができ、二軸混練時のスクリュ回転数を高くすることによって短くすることができる。
【0114】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品の用途としては、例えば、電子機器筐体、電子部品(コネクタ、ソケット、LED、封止成形品)、車車両外装部材(バンパー、フェンダー、ボンネット、エアダム、ホイールカバー等)、車両内装部材(ドアトリム、天井材、コンビネーションスイッチ等)、車両エンジン周り部材(シリンダーヘッドカバー、オイルパン、エンジンカバー、インテークマニホールド、インテークエアーダクト、エアーパイプ、冷却ファン、チェーンガイド、テンショナー、エンジンマウント用オリフィス、インペラー、エアーフローメーター、イグニッションコイルカバー、アクチュエーターケース、クイックコネクター、エキゾーストマニホールド等)、車両電装部品、車両機構部品(ペダルモジュール、シフトレバーベース、プーリー、シールリング、ギア、軸受)、マフラー関連部材(消音部材等)を挙げることができる。低い誘電率及び低い誘電正接を兼ね備えることが求められることから、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品の用途としては、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機等の携帯電子機器の筐体又は部品が好ましい。なお、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、高周波領域の信号が流れる環境に好適であるが、高周波領域の信号が流れない環境においても有用に使用することができる。
【0115】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例
【0116】
[ガラス組成]
表1に示す3種類のガラス組成を用いた。ここで、組成Aは本発明のガラス繊維強化樹脂成形品に用いるガラス繊維のガラス組成であり、組成Bは特許文献1のガラス繊維強化樹脂成形品に用いるガラス繊維の組成であり、組成Cは汎用的なEガラス組成である。なお、表1中、誘電率及び誘電正接は、測定周波数が1MHzの場合は、IEC 62631-2-1に準拠して測定されたものであり、測定周波数が1GHz又は10GHzの場合は、JIS C 2565:1992に準拠して測定されたものである。
【0117】
【表1】
【0118】
[樹脂]
ポリブチレンテレフタレート樹脂(表中、PBTとして表記する)として、ジュラネックス 2000(商品名、ポリプラスチックス株式会社製)を用いた。また、測定周波数1GHzにおける誘電率が3.31であって、誘電正接が0.00187であり、測定周波数10GHzにおける誘電率が3.18であって、誘電正接が0.00287である、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(表中、PEEKとして表記する)を用いた。
【0119】
[誘電率]
ガラス繊維強化樹脂成形品の誘電率は、JIS C 2565に準拠して測定した。測定周波数は1GHz又は10GHzである。
【0120】
[誘電正接]
ガラス繊維強化樹脂成形品の誘電正接は、JIS C 2565に準拠して測定した。測定周波数は1GHz又は10GHzである。
【0121】
〔実施例1、比較例1-2〕
表2に示すとおり、それぞれ組成A、組成B又は組成Cを備える、繊維長3mmのガラスチョップドストランドと、PBTとを、二軸混練機(東芝機械(株)製、商品名:TEM-26SS)にて混練して樹脂ペレットを作製し、得られた樹脂ペレットを用い、射出成形機(日清樹脂工業(株)製、商品名:NEX80)により射出成形をすることで得られた、ガラス繊維強化樹脂成形品(厚さ1mmの平板)について、前記した方法でガラス繊維の数平均繊維長、誘電率及び誘電正接を評価した。
【0122】
【表2】
【0123】
表2に示されるとおり、本発明に規定されるガラス組成(組成A)を備える実施例1のガラス繊維強化樹脂成形品は、ガラス組成以外は実施例1と全く同一の構成を備える比較例1又は2のガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、10GHzにおける誘電率及び誘電正接が低減されており、特に、10GHzにおける誘電正接が大きく低減されていることが分かる。
【0124】
〔実施例2、比較例3〕
表3に示すとおり、前記組成Aを備える、繊維長0.030mmのカットファイバー、又は、前記組成Bを備える、繊維長0.030mmのカットファイバー(なお、前記組成Bを備えるカットファイバーは、0.001~0.300mmの範囲の繊維長をとりうる)と、PBTとを、二軸混練機(東芝機械(株)製、商品名:TEM-26SS)にて混練して樹脂ペレットを作製し、得られた樹脂ペレットを用い、射出成形機(日清樹脂工業(株)製、商品名:NEX80)により射出成形をすることで得られた、ガラス繊維強化樹脂成形品(厚さ1mmの平板)について、前記した方法で、ガラス繊維の数平均繊維長、誘電率及び誘電正接を評価した。
【0125】
【表3】
【0126】
〔実施例3、比較例4〕
表4に示すとおり、それぞれ組成A、又は、組成Bを備える、繊維長3mmのガラスチョップドストランドと、PEEKとを、二軸混練機(東芝機械(株)製、商品名:TEM-26SS)にて混練して樹脂ペレットを作製し、得られた樹脂ペレットを用い、射出成形機(日清樹脂工業(株)製、商品名:NEX80)により射出成形をすることで得られた、ガラス繊維強化樹脂成形品(厚さ1mmの平板)について、前記した方法でガラス繊維の数平均繊維長、誘電率及び誘電正接を評価した。
【0127】
【表4】

【0128】
表4に示されるとおり、本発明に規定されるガラス組成(組成A)を備える実施例3のガラス繊維強化樹脂成形品は、ガラス組成以外は実施例1と全く同一の構成を備える比較例4のガラス繊維強化樹脂成形品と比較して、10GHzにおける誘電率及び誘電正接が低減されており、特に、10GHzにおける誘電正接の上昇が大きく抑制されていることが分かる。