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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/24 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H01Q1/24 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021115489
(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公開番号】P2023012069
(43)【公開日】2023-01-25
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208442(JP,A)
【文献】特開2004-297534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面(42)に導体から成るアンテナ部(50)が形成された基板(40)と、
前記基板(40)が内部に配置されるとともに、内部に向かって突出する突出部(71)を有する樹脂製の筐体(21)とを備え、
前記突出部(71)は、該第1面(42)側で前記アンテナ部(50)の近傍に配置され
前記アンテナ部(50)は、前記基板(40)の端部(40a)に配置され、
前記筐体(21)は、前記基板(40)の周縁を囲む枠体(25)を有し、
前記突出部(71)は、前記枠体(25)における前記基板(40)の端部(40a)と対向する部分側から前記アンテナ部(50)に向かって突出し、
前記筐体(21)は、前記第1面(42)と直交する方向において前記基板(40)を挟んで前記突出部(71)の反対側に位置するとともに前記基板(40)を支持するように前記枠体(25)から突出する支持部(75)を有し、
前記突出部(71)および前記支持部(75)は、前記枠体(25)と一体に成形され、前記基板(40)を保持するように構成され、
前記突出部(71)が突出する第1方向における該突出部(71)の長さが、該第1方向における前記枠体からの前記支持部(75)の長さよりも短い
アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ部(50)は、前記基板(40)の前記端部(40a)の縁(40b)に沿って延び、
前記突出部(71)は、前記基板(40)の前記端部(40a)の縁(40b)に沿って延びる
請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記突出部(71)と前記アンテナ部(50)とが接触する、
または、前記突出部(71)とアンテナ部(50)との間隔が0.5mm以下である
請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記突出部(71)は、前記第1面(42)と直交する方向において、前記アンテナ部(50)と重なる
請求項1~のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ部(50)は、高周波アンテナ部(51)と、低周波アンテナ部(61) とを有し、
前記突出部(71)は、前記第1面(42)と直交する方向において、前記低周波アンテナ部(61)と重なる
請求項1~のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
第1面(42)に導体から成るアンテナ部(50)が形成された基板(40)と、
前記基板(40)が内部に配置されるとともに、内部に向かって突出する突出部(71)を有する樹脂製の筐体(21)とを備え、
前記突出部(71)は、該第1面(42)側で前記アンテナ部(50)の近傍に配置され、
前記突出部(71)は、前記第1面(42)と直交する方向において、前記アンテナ部(50)と重なり、
前記アンテナ部(50)は、ジャンパ抵抗(63)を有し、
前記ジャンパ抵抗(63)は、前記第1面(42)と直交する方向において、前記突出部(71)と重ならない
アンテナ装置。
【請求項7】
第1面(42)に導体から成るアンテナ部(50)が形成された基板(40)と、
前記基板(40)が内部に配置されるとともに、内部に向かって突出する突出部(71)を有する樹脂製の筐体(21)とを備え、
前記突出部(71)は、該第1面(42)側で前記アンテナ部(50)の近傍に配置され、
前記アンテナ部(50)は、ジャンパ抵抗(63)を有し、
前記突出部(71)には、前記ジャンパ抵抗(63)に対応する位置に切り欠き(74)が形成される
アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、導体からなるアンテナ部が形成された基板を有するアンテナ装置がある。特許文献1に記載のアンテナ装置では、誘電体基板上に導体からなるアンテナ部(放射導体パターン)が形成される。アンテナ部は、連続した折り返し部分を有する波形状をしている(特許文献1の図1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-332924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、アンテナ部の長さを長くすることで、アンテナ装置の共振周波数を低減でき、共振周波数を所望の値に設定できる。しかしながら、この場合には、アンテナ部の全長を長くする必要があり、基板におけるアンテナ部の専有面積が大きくなってしまう。
【0005】
本開示の目的は、共振周波数を低減できるアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、第1面(42)に導体から成るアンテナ部(50)が形成された基板(40)と、該前記基板(40)が内部に配置されるとともに、内部に向かって突出する突出部(71)を有する樹脂製の筐体(21)とを備え、前記突出部(71)は、該第1面(42)側で前記アンテナ部(50)の近傍に配置されるアンテナ装置である。
【0007】
第1の態様では、突出部(71)がアンテナ部(50)の近傍に配置される。突出部(71)は樹脂材料であるため、両者の距離が小さくなることにより、アンテナ部(50)の共振周波数が低下する。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記アンテナ部(50)が、前記基板(40)の端部(40a)に配置され、前記筐体(21)は、前記基板(40)の周縁を囲む枠体(25)を有し、前記突出部(71)は、前記枠体(25)における前記基板(40)の端部(40a)と対向する部分から前記アンテナ部(50)に向かって突出する。
【0009】
第2の態様では、アンテナ部(50)が基板(40)の端部(40a)に形成され、突出部(71)は、枠体(25)のうち基板(40)の端部(40a)と対向する部分から突出する。このため、突出部(71)の長さを短くできる。
【0010】
第3の態様は、前記アンテナ部(50)が、前記基板(40)の前記端部(40a)の縁(40b)に沿って延び、前記突出部(71)は、前記基板(40)の前記端部(40a)の縁(40b)に沿って延びる。このため、突出部(71)およびアンテナ部(50)が重なる領域を広げることができる。この結果、アンテナ部(50)の共振周波数の低下量が大きくなる。
【0011】
第4の態様は、第2または第3の態様において、前記筐体(21)は支持部(75)を有する。支持部(75)は、前記第1面(42)と直交する方向において前記基板(40)を挟んで前記突出部(71)の反対側に位置する。
【0012】
第4の態様では、突出部(71)と支持部(75)との間に基板(40)を位置付けることができる。
【0013】
第5の態様は、前記突出部(71)が突出する第1方向における該突出部(71)の長さが、該第1方向における前記支持部(75)の長さよりも短い。
【0014】
第5の態様では、突出部(71)の長さを短くすることで、支持部(75)と突出部(71)との間に基板(40)を位置付けやすくなる。
【0015】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記突出部(71)と前記アンテナ部(50)とが接触する、または、前記突出部(71)とアンテナ部(50)との間隔が0.5mm以下である。
【0016】
第6の態様では、突出部(71)とアンテナ部(50)とを接触させる、あるいは、突出部(71)とアンテナ部(50)との間隔を0.5mm以下とすることで、アンテナ部(50)の共振周波数が低下する。
【0017】
第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記突出部(71)は、前記第1面(42)と直交する方向において、前記アンテナ部(50)と重なる。これにより、両者の距離が小さくなり、アンテナ部(50)の共振周波数が低下する。
【0018】
第8の態様は、第1~第7のいずれか1つの態様において、前記アンテナ部(50)は、高周波アンテナ部(51)と、低周波アンテナ部(61) とを有し、前記突出部(71)は、前記第1面(42)と直交する方向において、前記低周波アンテナ部(61)と重なる。
【0019】
第8の態様では、特にアンテナ長が長くなり易い低周波アンテナ部(61)が、突出部(71)と重なる。このため、低周波アンテナ部(61)のアンテナ長を効果的に短くできる。
【0020】
第9の態様は、第1~第8のいずれか1つの態様において、前記アンテナ部(50)が、ジャンパ抵抗(63)を有し、前記突出部(71)には、前記ジャンパ抵抗(63)に対応する位置に切り欠き(74)が形成される。
【0021】
第9の態様では、突出部(71)に切り欠き(74)を形成することで、突出部(71)とジャンパ抵抗(63)が干渉することを抑制できる。したがって、ジャンパ抵抗(63)を容易に、基板(40)に取り付けたり基板(40)から取り外したりできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、アンテナ装置、およびその周辺装置の通信関係を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係るアンテナ装置が室外機に取り付けられた状態を示す斜視図である。
図3図3は、アンテナ装置の外観を示す斜視図である。
図4図4は、アンテナ装置の内部構造を示す正面図である。
図5図5は、アンテナ部を拡大した正面図である。
図6図6は、保持部の斜視図であり、通信基板を二点鎖線で表している。
図7図7は、保持部を図6と異なる角度から見た斜視図である。
図8図8は、図5のVII-VII線断面図である。
図9図9は、樹脂部とアンテナ部との距離と、共鳴周波数の関係を検証した結果を示すグラフである。
図10図10は、変形例の図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0024】
(1)空気調和装置
図1および図2に示すように、本開示のアンテナ装置(20)は、空気調和装置(10)に適用される。空気調和装置(10)は、室外機(11)と室内機(15)とを有する。室外機(11)と室内機(15)とが2本の連絡配管によって接続されることにより、冷媒回路が構成される。冷媒回路は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。本例の空気調和装置(10)は、ビルなどの室内を空調の対象空間とする。
【0025】
室外機(11)は、室外に設置される。室外機(11)は、縦長の直方体状のケーシング(12)を有する。ケーシング(12)の内部には、圧縮機、室外熱交換器、室外ファンなどの機器が収容される。室内機(15)は、室内に設置される。室内機(15)は、室内熱交換器、室内ファンなどの機器を有する。
【0026】
図1に示すように、室外機(11)は、室外制御装置(13)を有する。室内機(15)は、室内制御装置(16)を有する。室内制御装置(16)および室外制御装置(13)は、第1通信線(W1)を介して互いに接続される。第1通信線(W1)は、有線または無線であってよい。室内制御装置(16)および室外制御装置(13)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。室内制御装置(16)と室外制御装置(13)との間では、空気調和装置(10)に関する情報が相互に送受信される。空気調和装置(10)に関する情報は、制御信号、検出信号、空気調和装置(10)の運転情報などを含む
(2)アンテナ装置の概要
図2に示すように、アンテナ装置(20)は、室外機(11)のケーシング(12)に取り付けられる。図1に示すように、アンテナ装置(20)は、室外制御装置(13)の制御基板と第2通信線(W2)を介して接続される。第2通信線(W2)は有線であるが、無線であってもよい。アンテナ装置(20)は、通信基板(40)を有する。通信基板(40)は、無線回線(W3)を介してネットワーク(N)に接続される。本例の無線回線(W3)は、携帯高速通信技術(LTE,Long Term Evolution)を用いた回線である。
【0027】
アンテナ装置(20)は、ネットワーク(N)を経由して通信端末(C1)やサーバ装置(C2)に接続される。これにより、アンテナ装置(20)は、空気調和装置(10)に関する情報を、通信端末(C1)やサーバ装置(C2)に送ることができる。
【0028】
(3)アンテナ装置(20)の詳細
アンテナ装置(20)の詳細について説明する。図3は、アンテナ装置(20)の外観を表す概略の斜視図、図4は、アンテナ装置(20)の内部構造を示す正面図である。以下の説明において、「上」、「下」、「前」、後」、「右」、および「左」に関する語句は、図3の矢印で示す方向を基準とする。これらの方向は単なる一例である。
【0029】
アンテナ装置(20)は、樹脂製の筐体(21)と、筐体(21)の内部に収容される通信基板(40)とを有する。筐体(21)は、上下に縦長の箱状に形成される。筐体(21)の内部には、収容空間(S)が形成される。
【0030】
(3-1)筐体
筐体(21)は、樹脂材料で構成される。筐体(21)は、ポリカーボネートで構成される。筐体本体(22)は、例えば射出成型により形成される。筐体(21)は、前側に開口(O)が形成される筐体本体(22)と、開口(O)を開閉する蓋(23)とを有する。蓋(23)は筐体(21)の前面を構成する。蓋(23)は、縦長の長方形板状に形成される。蓋(23)は、ヒンジ(図示省略)を介して筐体本体(22)の側部に取り付けられる。筐体(21)の下部には、第2通信線(W2)を接続するコネクタ(24)が設けられる。
【0031】
筐体本体(22)は、通信基板(40)の周縁を囲む枠体(25)と、枠体(25)の後側に形成される後板(30)とを有する。枠体(25)は、第1側板(26)、第2側板(27)、上板(28)、および下板(29)を有する。第1側板(26)は筐体(21)の左側面を構成し、第2側板(27)は筐体(21)の右側面を構成し、下板(29)は筐体(21)の下面を構成し、上板(28)は筐体(21)の上面を構成する。
【0032】
図3に示すように、筐体本体(22)は、複数のピン(31)を有する。ピン(31)は、後板(30)から前方に突出する。ピン(31)は、前方に向かって先細りとなる柱状に形成される。ピン(31)の先端は、通信基板(40)の後面に接触する。これにより、通信基板(40)の前後方向の位置を決定できる。
【0033】
ピン(31)は、通信基板(40)に形成した穴を貫通するように構成されてもよい。ピン(31)が通信基板(40)を貫通することで、通信基板(40)の上下方向、あるいは左右方向の位置を決定できる。
【0034】
図3に示すように、筐体本体(22)は、2つの固定部(32)を有する。固定部(32)は、後板(30)から前方に突出する柱である。本例の固定部(32)は、後板(30)の下端寄りに位置する。言い換えると、固定部(32)は、通信基板(40)の下端寄りの部分に対応する位置にある。
【0035】
固定部(32)は、円柱状に形成される。固定部(32)の先端は、通信基板(40)の後面に接触する。固定部(32)の先端には、第1穴(33)が形成される。第1穴(33)には、締結部材であるビスが締結される。通信基板(40)には、第1穴(33)に対応する位置に第2穴(41)が形成される。第1穴(33)と第2穴(41)との位置を合わせた状態で、ビスを固定部(32)に締結する。これにより、通信基板(40)が筐体本体(22)に固定される。
【0036】
(3-2)通信基板
通信基板(40)は、上下に縦長の長方形板状に形成される。通信基板(40)は、電子部品などが搭載される誘導体基板である。通信基板(40)の第1面(42)上には、電子部品などが設けられる。第1面(42)は、通信基板(40)の前面に対応する。
【0037】
図4および図5に示すように、通信基板(40)の第1面(42)には、整合回路(43)と、アンテナ部(50)とが設けられる。整合回路(43)は、アンテナ部(50)を介して所定の周波数帯域の無線信号を出力する。
【0038】
アンテナ部(50)は、導体からなるプリントパターンである。アンテナ部(50)は、通信基板(40)の端部(上端部(40a))寄りに位置する。アンテナ部(50)は、主アンテナ部(50a)と、主アンテナ部(50a)から分岐する高周波アンテナ部(51)および低周波アンテナ部(61)とを含む。
【0039】
主アンテナ部(50a)は、L字形状であり、その一端が整合回路(43)に接続する。主アンテナ部(50a)の他端は、高周波アンテナ部(51)および低周波アンテナ部(61)に連続する。低周波アンテナ部(61)の全長は、高周波アンテナ部(51)の全長よりも長い。
【0040】
高周波アンテナ部(51)は、高周波帯域の無線信号を伝送するためのアンテナである。高周波帯域の信号は、1.71GHz以上、2.17GHz以下の周波数帯域の信号である。本例の高周波アンテナ部(51)は、2GHz帯域の無線信号を伝送する。
【0041】
高周波アンテナ部(51)は、通信基板(40)の上端部(40a)に位置する第1部分(52)を含む。
【0042】
低周波アンテナ部(61)は、低周波帯域の無線信号を伝送するためのアンテナである。低周波帯域の信号は、699MHz以上、960MHz以下の周波数帯域の信号である。本例の低周波アンテナ部(61)は、700MHz以上、900MHz以下の帯域の無線信号を伝送する。
【0043】
低周波アンテナ部(61)は、通信基板(40)の上端部(40a)に位置する第2部分(62)を含む。第2部分(62)は、通信基板(40)の上端部(40a)の縁(40b)に沿って延びている。第2部分(62)は、上板(28)の下面である内面(28a)に沿って延びている。第2部分(62)は水平方向に延びている。内面(28a)は、枠体(25)のうち通信基板(40)の上端部(40a)に対向する部分である。
【0044】
低周波アンテナ部(50)は、2つのジャンパ抵抗(63)を有する。ジャンパ抵抗(63)は、第1面(42)に着脱可能に取り付けられる。ジャンパ抵抗(63)の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。ジャンパ抵抗(63)は、第2部分(62)の中途部に設けられる。ジャンパ抵抗(63)を取り外すことで、低周波アンテナ部(50)の全長を変更できる。これにより、アンテナ装置(20)の受信先の仕様に応じて、共振周波数を任意に調節できる。
【0045】
(3-3)保持部
保持部(70)の詳細について図5図8を参照しながら詳細に説明する。枠体(25)には、樹脂製の保持部(70)が設けられる。保持部(70)は、枠体(25)と一体に成形される。保持部(70)は、枠体(25)の上板(28)の内面(28a)に設けられる。保持部(70)は、通信基板(40)の上端部(40a)側に配置される。本例の保持部(70)は、アンテナ装置(20)の仮止め部および位置決め部として機能する。
【0046】
保持部(70)は、通信基板(40)の前側に位置する突出部(71)と、通信基板(40)の後側に位置する支持部(80)と、突出部(71)および支持部(75)の間に形成される一対の中間部(78)とを有する。
【0047】
(3-3-1)突出部
突出部(71)は、通信基板(40)の第1面(42)側に位置する。突出部(71)は、上板(28)の内面(28a)から通信基板(40)のアンテナ部(50)に向かって突出する。突出部(71)は、第1方向である下方に向かって突出する。突出部(71)は、通信基板(40)の上端部(40a)の縁(40b)に沿って延びる。突出部(71)は、アンテナ部(50)の第2部分(62)に沿って延びる。突出部(71)は、左右の横長の平板状に形成される。突出部(71)は、基部(72)と突出片(73)とを有する。
【0048】
基部(72)は、上板(28)の内面(28a)に連続する。基部(72)は、保持部(70)の左右両端に亘る平板状に形成される。
【0049】
突出片(73)は、基部(72)の下方に位置し、基部(72)の下面に連続する。突出片(73)は、保持部(70)の左側寄りに形成される。突出片(73)は、通信基板(40)の上端部(40a)の縁(40b)に沿って延びる。突出片(73)は、アンテナ部(50)の第2部分(62)に沿って延びる。突出片(73)は、通信基板(40)の第1面(42)に対向する。
【0050】
突出部(71)には、2つのジャンパ抵抗(63)に対応する位置に切り欠き(74)が形成される。これにより、突出片(73)の左右の長さが基部(72)の左右の長さよりも短くなっている。ジャンパ抵抗(63)は、筐体本体(22)の開口(O)を通じて筐体(21)の外部に露出する。
【0051】
突出片(73)は、第1面(42)と直交する方向において、アンテナ部(50)の一部と重なる。第1面(42)と直交する方向は、本例の前後方向である。以下では、第1面(42)と直交する方向を第2方向という場合もある。
【0052】
突出片(73)は、第2方向において、低周波アンテナ部(61)と重なる。突出片(73)は、第2方向において、高周波アンテナ部(51)とは重ならない。つまり、突出部(71)は、第2方向において、低周波アンテナ部(61)および高周波アンテナ部(51)のうち、低周波アンテナ部(61)のみと重なる。突出片(73)は、第2方向において、ジャンパ抵抗(63)とは重ならない。
【0053】
(3-3-2)支持部
支持部(75)は、通信基板(40)を支持するための部材である。支持部(75)は、通信基板(40)の第1面(42)と反対側に位置する。支持部(75)は、第2方向において、通信基板(40)を挟んで突出部(71)と反対側に位置する。支持部(75)は、上板(28)の内面(28a)から通信基板(40)に向かって突出する。支持部(75)は、第1方向である下方に向かって突出する。支持部(75)は、通信基板(40)の上端部(40a)の縁(40b)に沿って延びる。支持部(75)は、一対の側壁(76)と、一対の側壁(76)の間に形成される1つの中間板(77)とを有する。
【0054】
一対の側壁(76)は、左右方向に所定の間隔を置いて配列される。一対の側壁(76)の一方は保持部(70)の左端に位置し、他方は保持部(70)の右端に位置する。側壁(76)は、後側に向かうにつれて上下の高さ寸法が小さくなる略台形板状に形成される。具体的には、側壁(76)の下側部分は、後側に向かうにつれて上方に近づくように傾斜している。側壁(76)の上面は、上板(28)の内面(28a)に連続するように前後に延びている。
【0055】
中間板(77)は、一対の側壁(76)に亘るように左右に延びている。中間板(77)は、上板(28)の内面(28a)から通信基板(40)に向かって突出する。中間板(77)は、通信基板(40)の上端部(40a)の縁(40b)に沿って延びる。中間板(77)は、アンテナ部(50)の第2部分(62)に沿って延びる。中間板(73)は、左右に横長の平板状に形成される。中間板(77)は、突出部(71)と略平行である。中間板(77)は、第2方向において、通信基板(40)を挟んで突出部(71)と反対側に位置する。中間板(77)の前面は、通信基板(40)の後面と接触する。
【0056】
(3-3-3)中間部
一対の中間部(78)は、突出部(71)と保持部(70)との間に形成される。中間部(78)は、矩形板状に形成される。一対の中間部(78)の一方は保持部(70)の左端に位置し、他方は保持部(70)の右端に位置する。左側の中間部(78)は、左側の側壁(76)と基部(72)の左端とに亘って形成される。右側の中間部(78)は、右側の側壁(76)と基部(72)の右端とに亘って形成される。
【0057】
基部(72)と中間板(77)と一対の中間部(78)との間には、横長の四角柱状の空間(79)が形成される。
【0058】
(3-3-4)突出部と支持部の長さの関係
図6に示すように、保持部(70)では、突出部(71)の突出方向(第1方向)における突出部(71)の長さL1が、支持部(75)(厳密には、中間板(77))の第1方向の長さL2よりも短い。ここで、長さL1は、突出部(71)の基端から先端までの長さである。長さL2は、支持部(33)(厳密には、中間板(77))の基端から先端までの長さである。
【0059】
(4)保持部による通信基板の保持について
本例の保持部(70)は、通信基板(40)を保持する。換言すると、突出部(71)および支持部(75)は、通信基板(40)を保持する。ここでいう「保持」とは、通信基板(40)を他の部品に固定するまでの間、通信基板(40)を仮止めすることも含む意味である。
【0060】
保持部(70)には、通信基板(40)の上端部(40a)が保持される。通信基板(40)を筐体(21)に取り付ける作業においては、人(作業者)が通信基板(40)を突出部(71)と支持部(75)との間に差し込む。突出部(71)の長さL1は支持部(75)の長さL2よりも短い。
【0061】
仮に突出部(71)の長さL1と支持部(75)の長さL2とが等しい場合、保持部(70)に対する通信基板(40)の実質的な差込長が長くなる。このため、通信基板(40)の取り付け作業が困難となったり、差込長を補うための筐体(21)のスペースが大きくなったりする。
【0062】
これに対し、突出部(71)の長さL1は支持部(75)の長さL2よりも短いため、保持部(70)に対する通信基板(40)の実質的な差込長が短くなる。また、突出部(71)は支持部(75)よりも筐体本体(22)の開口(O)の近くに位置する。このため、人は、筐体本体(22)の開口(O)側から通信基板(40)を容易に保持部(70)に差し込むことができる。また、人は、通信基板(40)を斜め上方に移動させつつ、保持部(70)に差し込むことができる。その結果、通信基板(40)を差し込むためのスペースが不要となるため、筐体(21)を小さくできる。
【0063】
通信基板(40)を突出部(71)と支持部(75)との間に差し込むと、通信基板(40)と支持部(75)とが接触する。同時に、通信基板(40)の第2部分(62)と、突出部(71)とが実質的に接触する。これにより、通信基板(40)の上下方向、および前後方向の位置決めを行うことができる。加えて、通信基板(40)の上端部(40a)を保持部(70)により保持できる。
【0064】
通信基板(40)を保持部(70)により保持した後、人は、通信基板(40)をビスによって固定部(32)に固定する。これにより、通信基板(40)が筐体(21)に固定される。
【0065】
(5)共鳴周波数について
図8に示すように、本実施形態では、樹脂製の突出部(71)がアンテナ部(50)の近傍に配置される。突出部(71)とアンテナ部(50)とが、第2方向において重なる。具体的には、本例の突出部(71)(厳密には、突出片(73))は、低周波アンテナ部(61)と隙間なく接触する。この構成により、低周波アンテナ部(61)における共鳴周波数を低減できるので、低周波アンテナ部(61)の全長を短くできる。このことを検証した結果について説明する。
【0066】
図9は、同一の特性のアンテナ装置について、突出部とアンテナ部との距離Dを変更し、その際のアンテナ装置の共鳴周波数と、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio,電圧定在波比とを測定した結果である。図9の実線で示す波形は、突出部とアンテナ部との接触させたもの(距離D=0)であり、本実施例に対応する。図9の二点鎖線で示す波形は、距離Dを0.5mmとしたものである。図9の一点鎖線で示す波形は、突出部とアンテナ部とを重ねない構成としたものである。
【0067】
図9から明らかなように、距離D=0としたアンテナ装置では、突出部とアンテナとを重ねないアンテナ装置よりも、共鳴周波数が全体的に低くなる。図9の円形の枠で囲んだ低周波数帯域においては、D=0とすることで共鳴周波数が約30MHz低下した。このことから、本実施形態の構成により、低周波アンテナ部(61)の共鳴周波数を低減できることがわかる。
【0068】
低周波アンテナ部(61)の長さにより共鳴周波数を低減させる場合、高周波アンテナ部(51)と比較してアンテナ部の全長をより長くする必要がある。これに対し、本実施形態では、突出部(71)と低周波アンテナ部(61)とを重ねることで、低周波アンテナ部(61)の共鳴周波数を容易に低減できる。その結果、低周波アンテナ部(61)の全長が長くなってしまうことを抑制できる。
【0069】
(6)特徴
(6-1)樹脂製の突出部(71)は、第1面(42)側でアンテナ部(50)の近傍に配置される。これにより、アンテナ部(50)の長さを長くすることなく、アンテナ部(50)の共鳴周波数を低減できる。アンテナ部(50)の長さが短くなると、通信基板(40)のサイズを小さくできる。この結果、筐体(21)、あるいはアンテナ装置(20)のサイズを小さくできる。
【0070】
(6-2)筐体(21)は、通信基板(40)の周縁を囲む枠体(25)を有する。突出部(71)は、枠体(25)における通信基板(40)の端部(40a)と対向する部分(内面(28a))からアンテナ部(50)に向かって突出する。この構成では、突出部(71)の基端からアンテナ部(50)までの距離が短くなるため、突出部(71)の長さを短くできる。これにより、保持部(70)の構造を簡単にできる。
【0071】
(6-3)アンテナ部(50)は通信基板(40)の端部(40a)の縁(40b)に沿って延び、突出部(71)は、通信基板(40)の端部(40a)の縁(40b)に沿って延びる。これにより、突出部(71)とアンテナ部(50)とが重なる領域が広くなるので、アンテナ部(50)の共鳴周波数をさらに低減できる。
【0072】
(6-4)筐体(21)は支持部(75)を有する。支持部(75)は、第1面(42)と直交する方向において、通信基板(40)を挟んで突出部(71)の反対側に位置する。これにより、突出部(71)と支持部(75)の間に、通信基板(40)を保持できる。言い換えると、突出部(71)は、共鳴集は須を低減するための部材と、通信基板(40)を保持するための部材を兼用するので、部品点数を削減できる。
【0073】
(6-5)突出部(71)が突出する第1方向における突出部(71)の長さL1が、第1方向における支持部(75)の長さL2よりも短い。これにより、通信基板(40)を突出部(71)と支持部(75)との間に挿入するための差込長が短くなる。加えて、通信基板(40)を支持部(75)に対して斜め方向に移動させつつ、通信基板(40)を突出部(71)と支持部(75)の間に差込ことができる。この結果、通信基板(40)を差し込むための筐体(21)内のスペースを小さくできるので、筐体(21)を小型化できる。
【0074】
(6-6)本実施形態では、突出部(71)とアンテナ部(50)とが接触する。これにより、図9に示すように、共鳴周波数を効果的に低減できる。その結果、アンテナ長を短くでき、アンテナ装置(20)の小型化を図ることができる。
【0075】
(6-7)突出部(71)は、第1面(42)と直交する方向において、アンテナ部(50)と重なる。これにより、突出部(71)とアンテナ部(50)との距離が短くなり、共鳴周波数を低減できる。特に、本例では、突出部(71)がアンテナ部(50)の一部と重なる。これにより、突出部(71)が大きくなることを抑制できる。
【0076】
(6-8)アンテナ部(50)は、高周波アンテナ部(51)と、低周波アンテナ部(61) とを有し、突出部(71)は、第1面(42)と直交する方向において、低周波アンテナ部(61)と重なる。低周波アンテナ部(61)の共鳴周波数を小さくする場合、高周波アンテナ部(51)と比較して、そのアンテナ長をより長くする必要がある。これに対し、本実施形態では、低周波アンテナ部(61)のアンテナ長を長くすることなく、共鳴周波数を低減できる。したがって、低周波アンテナ部(61)のアンテナ長が長くなることに起因して通信基板(40)が大きくなることを効果的に抑制できる。
【0077】
(6-9)アンテナ部(50)がジャンパ抵抗(63)を有する。突出部(71)には、ジャンパ抵抗(63)に対応する位置に切り欠き(74)が形成される。このため、突出部(71)とジャンパ抵抗(63)とが干渉することがないので、ジャンパ抵抗(63)を通信基板(40)から容易に取り外す、あるいは容易に取り付けることができる。加えて、突出部(71)とジャンパ抵抗(63)とが接触することに伴い、ジャンパ抵抗(63)が破損してしまうことを抑制できる。
【0078】
(7)変形例
上述した実施形態については、以下の変形例の構成としてもよい。以下では、実施形態と異なる点について説明する。
【0079】
(7-1)変形例1:突出部とアンテナ部との距離
図10に示すように、突出部(71)とアンテナ部(50)とは必ずしも接触していなくてもよい。本例では、突出部(71)とアンテナ部(50)との間の第2方向における間隔Dが、0.5mm以下に設定される。この構成においても、図9に示すように、突出部(71)を有さない構成と比較して、共鳴周波数を低減することができる。
【0080】
(7-2)変形例2:突出部の位置
突出部(71)は、蓋(23)の内面に設けてもよい。突出部(71)は、第1面(42)側においてアンテナ部(50)と対向する位置に配置される。突出部(71)は、蓋(23)の内面からアンテナ部(50)に向かって突出する。突出部(71)の先端部とアンテナ部(50)とが、第2方向において重なる。具体的には、突出部(71)の先端部とアンテナ部(50)とが接触する、または突出部(71)の先端部とアンテナ部(50)との第2方向の間隔Dが0.5mm以下に設定される。これにより、変形例2においても、アンテナ部(50)の共鳴周波数を低減できる。
【0081】
突出部(71)は、第2方向において、アンテナ部(50)と必ずしも重ならなくてもよい。突出部(71)は、アンテナ部(50)の近傍であれば、第2方向において互いにずれた位置であってもよい。この場合にも、突出部(71)とアンテナ部(50)とが互いに接触する、あるいは突出部(71)とアンテナ部(50)との間隔Dが0.5mm以下であるのが好ましい。
【0082】
突出部(71)は、第2方向において、アンテナ部(50)の全部と重なってもよい。
【0083】
(7-3)変形例3:間隔Dを調整する調整機構
アンテナ装置(20)は、間隔Dを調節する調整機構を備えていてもよい。例えば調整機構は、突出部(71)を第2方向において移動させる機構である。間隔Dを変化させると、共鳴周波数を変化させることができる。したがって、調整機構による間隔Dの調整に伴い、共鳴周波数を所望の値に合わせることができる。
【0084】
(7-4)変形例4:アンテナ装置が適用される機器
アンテナ装置(20)は、空気調和装置(10)以外の冷凍装置に適用されてもよい。冷凍装置は、冷凍サイクルにより対象物を冷却または加熱する装置である。冷凍装置は、冷蔵庫、冷凍庫、コンテナなどの庫内を冷却する冷却装置、熱媒体を冷却または加熱するチリングユニット、給湯装置、床暖房装置などを含む。アンテナ装置(20)は、空気清浄機、加湿装置、除湿装置などの空気処理装置に適用されてもよい。アンテナ装置(20)は、冷凍装置や空気処理装置以外の他の機器に適用されてもよい。
【0085】
(7-5)変形例5:低周波帯域および高周波帯域
上述した実施形態では、高周波アンテナ部(51)の高周波帯域、および低周波アンテナ部(61)の低周波帯域の数値範囲としてLTE通信の例を挙げたが、高周波帯域および低周波帯域はこれに限られない。高周波アンテナ部(51)および低周波アンテナ部(61)を有する場合に、低周波アンテナ部(61)のみの近傍に突出部(71)が配置すれば、これらの周波数帯域の数値は上記の範囲に限られない。
【0086】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0087】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上に説明したように、本開示は、アンテナ装置について有用である。
【符号の説明】
【0089】
20 アンテナ装置
21 筐体
25 枠体
40 基板
40a 上端部(端部)
40b 縁
42 第1面
50 アンテナ部
51 高周波アンテナ部
61 低周波アンテナ部
63 ジャンパ抵抗
71 突出部
75 支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10