(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】インバータ装置及び送風装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231227BHJP
【FI】
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2021174832
(22)【出願日】2021-10-26
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 輝久
(72)【発明者】
【氏名】山田 和平
(72)【発明者】
【氏名】植田 成重
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-055739(JP,A)
【文献】特開2015-167426(JP,A)
【文献】特開2009-089519(JP,A)
【文献】特開2016-191478(JP,A)
【文献】実開平01-016548(JP,U)
【文献】特開平10-146061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アームの駆動部(5H)及び下アームの駆動部(5L)のいずれか一方を第1駆動部、他方を第2駆動部として、前記第1駆動部及び前記第2駆動部が第1負荷(121)に接続され、入力される制御電源電圧が許容値より低下した場合に前記第2駆動部から故障信号を出力する機能を有するパワーモジュール(5)と、
直流電源(7)からスイッチ(10)を介して前記第1駆動部に給電する第1直流電路(L1)と、
前記直流電源(7)から
直結して前記第2駆動部に給電する第2直流電路(L2)と、
を備えたインバータ装置(1)。
【請求項2】
前記第1負荷(121)の駆動条件である第2負荷(120)の停止信号を受信したとき前記スイッチ(10)が開路される請求項1に記載のインバータ装置(1)。
【請求項3】
前記パワーモジュール(5)及び前記第2負荷(120)を制御する制御部(11)を備え、
前記故障信号が前記制御部(11)に入力された場合、前記制御部(11)は、前記パワーモジュール(5)を介して前記第1負荷(121)、及び、前記第2負荷(120)を停止させる、請求項2に記載のインバータ装置(1)。
【請求項4】
前記第2負荷であるファン(120)の運転状態に基づいて前記スイッチ(10)の開閉を制御するインターロック回路(13)を備え、
前記インターロック回路(13)は、前記第2負荷(120)の回転数が所定の回転数に満たない状態のときは、前記スイッチ(10)を開路の状態とする、請求項2又は請求項3に記載のインバータ装置(1)。
【請求項5】
前記インバータ装置(1)と、
前記第1負荷としてのヒータ(121)と、
前記第2負荷としての加湿ファン又は換気ファン(120)と、
を備えた請求項3又は請求項4に記載の送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インバータ装置及びこれを用いた送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置に、換気又は加湿の機能を有する送風装置が付加されたものが、提供されている(例えば、特許文献1参照。)。暖房時には、屋外の新鮮な空気を湿気と共に取り込み、ヒータで適温に加温した空気を室内に導入することができる。海外向けの加湿ユニットでは、ヒータの運転に、高調波規制対応のため、IPM(インテリジェント・パワーモジュール)が使用されている。空気を温めるヒータの運転には送風が必要であり、何らかの原因で送風が行われていないときは、ヒータの運転も止める必要がある。
【0003】
送風していなければヒータを運転しないというインターロックを実現するには、送風していないときは、IPMに制御電源電圧を与えないのが、最も簡易かつ確実な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、空気調和装置の起動時に、換気又は加湿用の送風装置も起動させるとする。この場合、(1)送風装置においてファンが回っていないときは、(2)IPMの制御電源電圧を0Vにすることで、ヒータの運転を阻止することができる。ところが、(3)制御電源電圧が0VになったIPMは、内蔵する低電圧検知機能により、IPMの制御部である機能マイコンに対してFo(False out)信号を発報する。Fo信号を受信した機能マイコンは、空気調和装置の中枢の制御部である基本マイコンに知らせる。(4)基本マイコンは、送風装置を停止させる。
【0006】
(5)これ以降、異常が出続けるため、送風装置は運転することができない。(6)そこで、ユーザは、一旦、空気調和装置の電源をオフにし、再起動する。しかし、再起動しても上記(1)の状態に戻り、送風装置を運転することができない。
【0007】
そこで、本開示の目的は、故障信号を出さずに、負荷(例えばヒータ)を停止させること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示のインバータ装置は、上アームの駆動部及び下アームの駆動部のいずれか一方を第1駆動部、他方を第2駆動部として、前記第1駆動部及び前記第2駆動部が第1負荷に接続され、入力される制御電源電圧が許容値より低下した場合に前記第2駆動部から故障信号を出力する機能を有するパワーモジュールと、直流電源からスイッチを介して前記第1駆動部に給電する第1直流電路と、前記直流電源から前記第2駆動部に給電する第2直流電路と、を備えている。
【0009】
このように構成されたインバータ装置では、故障信号を出さずに、第1負荷を停止させることができる。一時的な駆動条件不備の状態が解消されれば、迅速な再起動が可能である。なお、パワーモジュールとは、例えば、IPMと呼ばれているパッケージ化されたものであるが、IPMと同等の機能を個々の回路素子を用いて構成した回路も、パワーモジュールに相当するものとする。
【0010】
(2)前記(1)のインバータ装置において、前記第1負荷の駆動条件である第2負荷の停止信号を受信したとき前記スイッチが開路されるようにしてもよい。
この場合、スイッチが開路して第1駆動部への給電が停止される。給電が停止されると、ゲート電圧を維持できなくなり、第1駆動部のスイッチング素子はオフになる。
【0011】
(3)前記(2)のインバータ装置において、前記パワーモジュール及び前記第2負荷を制御する制御部を備え、前記故障信号が前記制御部に入力された場合、前記制御部は、前記パワーモジュールを介して前記第1負荷、及び、前記第2負荷を停止させる。
故障信号が発出された場合は、パワーモジュールを介して第1負荷、及び、第2負荷ともに、制御部の制御下で、停止となる。
【0012】
(4)前記(2)又は(3)のインバータ装置において、前記第2負荷であるファンの運転状態に基づいて前記スイッチの開閉を制御するインターロック回路を備え、前記インターロック回路は、前記第2負荷の回転数が所定の回転数に満たない状態のときは、前記スイッチを開路の状態とする。
これにより、第1負荷の運転には、第2負荷の回転数が所定の回転数以上であることが条件となる、というインターロックが成立する。
【0013】
(5)送風装置としては、(3)又は(4)に記載のインバータ装置と、前記第1負荷としてのヒータと、前記第2負荷としての加湿ファン又は換気ファンと、を備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】送風装置のファンを駆動するインバータ装置の回路図である。
【
図4】送風装置の動作に関するフローチャートの一例であり、
図4における丸で囲んだA,B,Cは、それぞれ、
図5における丸で囲んだA,B,Cにつながっている。
【
図5】送風装置の動作に関するフローチャートの一例であり、
図5における丸で囲んだA,B,Cは、それぞれ、
図4における丸で囲んだA,B,Cにつながっている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
《空気調和装置の外観構成》
図1は、空気調和装置100の外観の一例を示す図である。空気調和装置100は、室外機101と、室内機102とを備えている。室外機101の筐体101cは、冷媒回路を内蔵する本体ユニット101aと、上部に設けられた送風装置(換気加湿ユニット)101bとにより、構成されている。室外機101と、室内機102とは、冷媒配管103と、空気配管104とを介して互いに接続されている。
【0017】
《空気調和装置の機能概略図》
図2は、空気調和装置100の機能概略図である。室外機101の本体ユニット101aは、液閉鎖弁105から順に、フィルタ106、膨張弁107、熱交換器108、四路切替弁109、圧縮機110、アキュムレータ111、ガス閉鎖弁112を備え、これらは図示のように接続された既知の冷媒回路を構成している。熱交換器108には、空気を通すファン113が設けられている。
【0018】
室内機102は、熱交換器113と、膨張弁114と、ファン115とを備え、図示のように接続されている。室外機101と、室内機102とは、液冷媒管103L及びガス冷媒管103Gにより相互接続されている。
【0019】
送風装置101bは、吸排気用のファン120と、ヒータ121と、加湿ロータ122と、吸着用送風機123と、を備えている。送風装置101bは、室内機102に取り込んだ室内空気を屋外へ排出できるほか、室外の新鮮な空気に湿気を付与して室内に送り込むことができる。また、冬期には、ヒータにより暖めた空気を室内に取り入れることができる。送風装置101bは、空気配管104を介して、室内機102と接続されている。
【0020】
《送風装置のインバータ装置》
図3は、送風装置101bのファン120及びヒータ121を駆動するインバータ装置1の回路図である。インバータ装置1の主回路部分は、交流電源2に接続されるフルブリッジの整流回路3と、平滑コンデンサ4と、IPM5とを図示のように接続して構成されている。交流電源2の交流電圧は、整流回路3により全波整流され、かつ、平滑コンデンサ4により平滑されて、直流電路6に直流電圧を提供する。直流電圧は、IPM5に供給される。なお、図示の整流回路3(AC/DCコンバータ)は一例に過ぎず、他の回路構成のAC/DCコンバータであってもよい。また、IPM5は、パッケージ化されたものを用いることができるが、これに代えて、IPMと同等の機能を個々の回路素子を用いて構成した非パッケージのインバータ回路部分としての「パワーモジュール」であってもよい。
【0021】
IPM5は、上アーム(ハイサイド)の駆動部5Hと、下アーム(ローサイド)の駆動部5Lとを備えている。上アームの駆動部5Hは、スイッチング素子Qu,Qv,Qwと、上アームのゲート駆動回路であるHVIC51と、を備えている。下アームの駆動部5Lは、スイッチング素子Qx,Qy,Qzと、下アームのゲート駆動回路であるLVIC52と、を備えている。各スイッチング素子には逆並列にダイオードが接されている。各スイッチング素子は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であるが、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であってもよい。
【0022】
スイッチング素子Quとスイッチング素子Qxとは、直流電路6の2線間にあって、互いに直列に接続されている。スイッチング素子Qvとスイッチング素子Qyとは、直流電路6の2線間にあって、互いに直列に接続されている。スイッチング素子Qwとスイッチング素子Qzとは、直流電路6の2線間にあって、互いに直列に接続されている。
【0023】
スイッチング素子Qu,Qv,Qwの各々におけるゲート及びエミッタは、HVIC51に接続されているが、ここでは、ヒータ121の駆動に関与するスイッチング素子Qu,Qwのゲート接続のみを図示し、他は省略している。同様に、スイッチング素子Qx,Qy,Qzの各々におけるゲート及びエミッタは、LVIC52に接続されているが、ここでは、ヒータ121の駆動に関与するスイッチング素子Qx,Qzのゲート接続のみを図示し、他は省略している。HVIC51には、ブートコンデンサ53,54が接続されている。ブートコンデンサ53,54は、スイッチング素子Qu,Qwに対してエミッタ電圧より高いゲート電圧を与えるためのブートストラップ回路を構成する。
【0024】
ヒータ121は、スイッチング素子Quとスイッチング素子Qxとの相互接続点Puxと、スイッチング素子Qwとスイッチング素子Qzとの相互接続点Pwzとの間に、接続されている。スイッチング素子Qu,Qzが共にオンのとき、及び、スイッチング素子Qw,Qxが共にオンのとき、ヒータ121に電流が流れる。IPM5は、直流電路6の直流電圧を3相交流電圧に変換できるが、負荷がヒータ121であるので、実際にヒータ121に供給されるのは、2相分の交流電力である。スイッチング素子Qvとスイッチング素子Qyとは、ヒータ121の駆動に関与していない(常時オフ)。
【0025】
但し、ヒータ121の接続は、図示の接続に限定されるわけではない。3相のうち、任意の2相を利用すればよい。また、3相モータ巻線のようにスター結線されたヒータであれば、3相全てを利用してもよい。
【0026】
IPM5のゲート駆動には、ゲート制御信号とは別に、制御電源電圧が必要である。制御電源電圧を付与する電路には、電路VN1(電圧VN1とも言う。)と、電路VP1(電圧VP1とも言う。)と、がある。制御電源電圧の元になる電圧は、スイッチング電源とレギュレータとを含む直流電源7から供給される。直流電源7は、交流電源2の交流電圧から安定した直流電圧VN1(例えば15V)を生成する。なお、本開示に述べる電圧又は回転数の数値は、説明上の一例に過ぎず、例示した数値に限定される訳ではない。
【0027】
電路VN1は直流電源7と直結した1次側電路であり、GNDとの間にはコンデンサ8が設けられている。電路VP1は、電路VN1との間にスイッチ10を介在させた2次側電路であり、GNDとの間にはコンデンサ9が設けられている。電路VN1の電圧は、直流電源7が15Vを出力している限り、常に15Vである。電路VP1の電圧は、スイッチ10が開いているときは、例えば0.8V、スイッチ10が閉じているときは、15Vとなる。スイッチ10としては、例えばP-MOSFET(P-channel Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を用いることができるが、同等な機能を有する他の素子であってもよい。
【0028】
HVIC51には、電路VP1と接続された第1直流電路L1から制御電源電圧が供給される。LVIC52には、電路VN1と接続された第2直流電路L2から制御電源電圧が供給される。
【0029】
制御回路要素としては、制御部(機能マイコン)11と、ファン駆動回路12と、インターロック回路13とが設けられている。制御部11は、マイクロコンピュータ又は同等の機能を有するデバイスであり、HVIC51及びLVIC52にゲート信号を与える。ファン120を駆動するファン駆動回路12は、制御部11からファン120の回転数の指示を受けるとともに、実際の回転数を検知し、回転数検知信号を制御部11及びインターロック回路13に送る。
【0030】
インターロック回路13は、ファン回転数が所定値に満たない場合は、スイッチ10を開路し、ファン回転数が所定値以上であれば、スイッチ10を閉路する。制御部11は、空気調和装置100の中枢の制御部(基本マイコン)と通信可能である。なお、インターロック回路13は、この回路例では制御部11の外部回路であるが、制御部11の内部機能としてソフトウェアにより設けてもよい。
【0031】
HVIC51及びLVIC52は共に、低電圧検知機能を内蔵している。HVIC51は、電圧VP1が許容下限値より低い場合、スイッチング素子Qu,Qwの動作を停止させる。LVIC52は、電圧VN1が許容下限値より低い場合、スイッチング素子Qx,Qzの動作を停止させる。また、LVIC52は、電圧VN1が許容下限値より低い場合に、Fo信号(故障信号)を制御部11の例えばPOEポートに送る。なお、Fo信号は、その他、下アームの過電流検知や、過熱検知(温度保護)でも、LVIC52から出力される。
【0032】
POEポートがFo信号によりL(Low)レベルになると、制御部11からのゲート信号は強制的に遮断される。なお、Fo信号を入力するのは、POEポートに限らず他の汎用の入力ポートであってもよい。汎用の入力ポートにFo信号が入力された場合には、制御部11は、ソフトウェア処理により、ゲート信号をH(High)レベルからLレベルに切り替える。ソフトウェア処理が介在するため、若干の遅延時間が生じる。
【0033】
Fo信号を受信した制御部11(機能マイコン)は、IPM5及びファン駆動回路12を停止させ、異常を空気調和装置100の制御部(基本マイコン)にも送信する。IPM5のFo信号を受けた機能マイコンは、その後も、リセットしなくても、Fo信号が解除されるのを待ち、異常が解消されれば、運転再開できる。基本マイコンは、機能マイコンがFo信号を受け付けている状態であっても、自己の基本動作(空調)は可能である。従って、機能マイコンの従機能が使えない状態であっても、基本マイコンによる主機能は使用できる。
【0034】
なお、一般にFo信号はLVIC52から出力されるが、HVIC51から出力されてもよい。
【0035】
《送風装置の動作》
図4、
図5は、送風装置101bの動作に関するフローチャートの一例である。
図4における丸で囲んだA,B,Cは、それぞれ、
図5における丸で囲んだA,B,Cにつながっている。フローチャートの実行主体となり得るのは、制御部11、ファン駆動回路12及びインターロック回路13である。
【0036】
まず、ステップS1において、制御部11は、自己の管理するシステム全体に異常がないかどうかを判定する(ステップS1)。異常がないか又は無くなった場合は、ファン120の状態を停止から運転に変更する(ステップS2)。続いて、ファン120の回転数が指令回転数まで上がるのを待ち(ステップS3,S4)、回転数NがA(例えば300)[rpm]を超えると、スイッチ10をオフ(開路)からオン(閉路)に切り替える(ステップS5)。これにより、HVIC51に電圧VP1としてD(例えば15V±10%)[V]が与えられる(ステップS6)。なお、ステップS3,S4,S5の動作主体は、ファン駆動回路12及びインターロック回路13である。
【0037】
LVIC52には既に電圧VN1が与えられている。次に、制御部11は、ファン120の回転数が指令回転数B(例えば1000rpm)に達するのを待ち(ステップS7,S8)、達すると、ブートコンデンサ53,54を充電する(ステップS9)。また、制御部11は、スイッチング素子Qx,Qzに対して、ゲート信号を送信する(ステップS9)。
【0038】
次に、
図5において、制御部11は、スイッチング素子Qu,Qw,Qx,Qzのゲート信号を与え、ヒータ121を駆動する(ステップS10)。なお、以下に述べる
図5におけるステップS13,S14,S15,S16,S17の実行主体は、ファン駆動回路12及びインターロック回路13である。
【0039】
ステップS11において制御部11のPOEポート(
図3)がLレベルにならず(ステップS11の「NO」)、かつ、ファンの回転数NがA[rpm]より低くならない(ステップS15の「NO」)限り、制御部11は、ヒータ121の駆動を継続する。POEポートがLレベルではないが、ファン120の回転数NがA[rpm]より低い場合は、ヒータ121の運転中にファン120の回転数不足という、ヒータ121を停止すべき状態である。
【0040】
そこで、インターロック回路13は、スイッチ10をオンからオフに切り替える(ステップS16)ことによるヒータ121の停止信号を出力する。その後、電圧VP1がC(例えば10)[V]より低くなると(ステップS17)、HVIC51はゲート信号を停止する(ステップS18)。これにより、ヒータ121は、停止となる。その後、ファン120が正常な状態に復帰すれば(ステップS19)、制御部11はステップS3(
図4)に戻る。これにより、再び、ステップS3からステップS10まで実行され、ヒータ121が駆動される。
【0041】
ステップS15からステップS19の存在により、ヒータ駆動中にファン120の回転数が不足している場合にもLVIC52にFo信号を発出させることなく、一旦ヒータ121を停止してファン120が正常な状態に復帰する機会を与えることができる。こうして、ファン120及びヒータ121の運転を再開することができる。
【0042】
一方、LVIC52が低電圧を検知し、Fo信号を発出した場合は、POEポートがLレベルになる(ステップS11の「YES」)。POEポートがLレベルになった場合は、制御部11は、ゲート信号を停止し(ステップS12)、ヒータ121の駆動を停止する。 その後、ファン120の回転数NがA[rpm]より小さくなるまで停止を続ける(ステップS12,S13)。ファン120の回転数NがA[rpm]より小さくなると、インターロック回路13は、スイッチ10をオンからオフに切り替えて(ステップS)、ステップS1(
図4)に戻る。
【0043】
《開示のまとめ》
上記開示は、以下のように一般化して表現することができる。例えば、上アームの駆動部5H及び下アームの駆動部5Lのいずれか一方を第1駆動部、他方を第2駆動部として、ヒータ121を第1負荷とする。インバータ装置1は、第1駆動部及び第2駆動部が第1負荷に接続され、入力される制御電源電圧が許容値より低下した場合に第2駆動部から故障信号を出力する機能を有するパワーモジュール(IPM5)と、直流電源7からスイッチ10を介して第1駆動部に給電する第1直流電路L1と、直流電源7から第2駆動部に給電する第2直流電路L2と、を備えている。
【0044】
このように構成されたインバータ装置1では、例えば第1負荷の駆動を停止したい場合、第1直流電路のスイッチ10を開路して第1駆動部への制御電源電圧の給電を遮断するが、第2直流電路から第2駆動部への制御電源電圧の給電については、これを継続する、という給電形態を実行することができる。その結果、第1負荷は停止するが、パワーモジュール(IPM5)の第2駆動部から故障信号は出力されない。そのため、例えば一時的に第1負荷の駆動条件不備の状態が生じた場合でも、故障信号を出さないようにすることができる。こうして、故障信号を出さずに、第1負荷を停止させることができる。この場合、一時的な駆動条件不備の状態が解消されれば、迅速な再起動が可能である。
【0045】
インバータ装置1が、第1負荷の駆動条件である第2負荷(ファン120)の停止信号を受信したときはスイッチ10が開路される。この場合、スイッチ10が開路して第1駆動部への給電が停止され、ゲート信号も停止となる。なお、故障信号が発出されない限り、第2駆動部への給電は維持できる。
【0046】
インバータ装置1は、パワーモジュール(IPM5)及び第2負荷(ファン120)を制御する制御部11を備え、故障信号が制御部11に入力された場合、制御部11は、パワーモジュールを介して第1負荷、及び、第2負荷を停止させる。
故障信号が発出された場合は、パワーモジュールを介して第1負荷、及び、第2負荷ともに、制御部11の制御下で、停止となる。
【0047】
インバータ装置1のインターロック回路13は、第2負荷であるファン120の運転状態に基づいて、スイッチ10を開路する。スイッチ10の開路により、制御電源電圧(電圧VP1)を低下させて、駆動部5Hを停止させ、ヒータ121を停止することができる。この場合、故障信号は発出されないので、スイッチ10を閉路すればヒータ121を再稼働できる。
【0048】
送風装置101bとしては、上記のようなインバータ装置1と、第1負荷としてのヒータ121と、第2負荷としてのファン(加湿ファン又は換気ファン)120と、を備えたものである。このような送風装置101bでは、例えば一時的にヒータ121の駆動条件不備の状態が生じた場合でも、故障信号を出さずに、ヒータ121を停止させることができる。この場合、一時的な駆動条件不備の状態が解消されれば、ヒータ121の迅速な再起動が可能である。
【0049】
《補記》
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0050】
1:インバータ装置、2:交流電源、3:整流回路、4:平滑コンデンサ、5:IPM(パワーモジュール)、5H:駆動部、5L:駆動部、6:直流電路、7:直流電源、8,9:コンデンサ、10:スイッチ、11:制御部、12:ファン駆動回路、13:インターロック回路、51:HVIC、52:LVIC、53,54:ブートコンデンサ、100:空気調和装置、101:室外機、101a:本体ユニット、101b:送風装置、101c:筐体、102:室内機、103:冷媒配管、103L:液冷媒管、103G:ガス冷媒管、104:空気配管、105:液閉鎖弁、106:フィルタ、107:膨張弁、108:熱交換器、109:四路切替弁、110:圧縮機、111:アキュムレータ、112:ガス閉鎖弁、113:ファン、114:熱交換器、115:膨張弁、116:ファン、120:ファン(第2負荷)、121:ヒータ(第1負荷)、122:加湿ロータ、123:吸着用送風機、L1:第1直流電路、L2:第2直流電路、Pux,Pwz:相互接続点、Qu,Qv,Qw,Qx,Qy,Qz:スイッチング素子