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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】車両用ドアトリム
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20231227BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20231227BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20231227BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60R7/04 T
B60J5/04 F
B60N3/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022176813
(22)【出願日】2022-11-03
(62)【分割の表示】P 2018151982の分割
【原出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2023009126
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末木 暢
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴弘
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-955(JP,U)
【文献】実開昭58-149214(JP,U)
【文献】特開昭61-54322(JP,A)
【文献】特開平11-321419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0291069(US,A1)
【文献】中国実用新案第206217597(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60R 7/04
B60N 3/00
B60J 5/00 ; 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアトリムであって、
車内側に突出し、前後方向に互いに離間する前側部分及び後側部分を有する支持部と、
前記支持部の前記前側部分及び前記後側部分の互いに対向する前後端面間に可動支持されたアームレストとを有し、
前記アームレストの前後端面のそれぞれに突設された突起及び2つの前記突起を受容するべく前記支持部の前記前後端面のそれぞれに設けられた凹部を含む嵌合構造が設けられ、
前記凹部それぞれが上下に延在する縦部と前記縦部の上端部から車内側に延びる横部とを有し、
前記縦部が上下に延在する主部と、前記主部の上下方向中央部分において、車内側に膨出する膨出部を備え、
前記膨出部の上端が車外方向かつ下方向を向く斜面により規定されている車両用ドアトリム。
【請求項2】
前記アームレストが直方体状をなし、第1面が上向きの第1位置及び前記第1面に対して離反する第2面が上向きの第2位置にあるときに、
前記突起の幅が前記縦部の下端の車幅方向の幅と等しく、前記突起の車外側又は車内側が前記縦部の前記下端に面接触するべく構成されている請求項1に記載の車両用ドアトリム。
【請求項3】
前記アームレストが、第1面が上向きの第1位置及び前記第1面に対して離反する第2面が上向きの第2位置以外にあるときには、前記突起の車幅方向の幅が、前記縦部の下端の車幅方向の幅よりも大きい請求項1に記載の車両用ドアトリム。
【請求項4】
前記突起が4角形断面形状を有する請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載の車両用ドアトリム。
【請求項5】
前記突起が円形を割線により区画される小部分を切除した断面形状を有する請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載の車両用ドアトリム。
【請求項6】
前記突起が円形を互いに直交する2つの割線により区画される2つの小部分を切除した断面形状を有する請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載の車両用ドアトリム。
【請求項7】
前記突起が円形を互いに平行な2つの割線により区画される2つの小部分を切除した断面形状を有する請求項1~請求項3のいずれか1つの項に記載の車両用ドアトリム。
【請求項8】
前記横部の車内側の部分に、上面と、下面と、上面の車内側端部及び下面の車内側端部を接続する車内側面とによって画定された回転許容部が設けられ、
前記回転許容部の上面及び前記回転許容部の下面との距離は、前記突起の最大幅よりも大きい請求項1~請求項7のいずれか1つの項に記載の車両用ドアトリム。
【請求項9】
前記支持部の前記前側部分の上面にはドアの窓を開閉するための操作部が設けられている請求項1~請求項8のいずれか1つの項に記載の車両用ドアトリム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等のドアに設けられる車両用ドアトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアトリムであって、ドアトリム本体に車幅方向に変位可能に支持されたアームレストと有するものが公知である(例えば、特許文献1)。ドアトリム本体はアームレストの前面に沿って車内側に突出する壁状の前側翼体と、アームレストの後面に沿って車内側に突出する壁状の後側翼体とを有している。両翼体には厚さ方向に貫通し、車内側に延びる支持孔が形成されている。中間支持体の前面及び後面にはそれぞれ両翼体に設けられた支持孔に突入する円柱状の支持ピンが設けられている。
【0003】
中間支持体は断面が略長方形の直方体状に形成されている。支持ピンを支持孔に沿って移動させることで、アームレストはドアトリム本体に接した外位置と、ドアトリム本体から離間した内位置との間で変位させることができる。アームレストは外位置において断面の長辺に対応する側面が略水平をなすように配置されている。アームレストは内位置において外位置から前後方向を軸線として略90度回転して断面の短辺に対応する側面が略水平をなすように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のドアトリムにおいて、アームレストの断面の短辺に対応する側面にアームレストの内方に凹む収納凹部を設けることによって、ドアトリムの収納性能を向上させることが考えられる。これにより、アームレストが内位置にあるときに、収納凹部が上方に向かって開口し、収納凹部に物を収納することができる。しかしながら、支持ピンが円柱状に形成されているため、アームレストは内位置にあるときにドアトリム本体に対して回転し、収納物が収納凹部からこぼれ落ちる場合がある。
【0006】
本発明は、以上の背景を鑑み、アームレストを有する車両用ドアトリムにおいて、アームレストを第1位置と、第1位置から前後方向を軸線として回転された第2位置との間で変位可能とするとともに、各位置におけるアームレストの回転を規制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、車両用ドアトリム(1、80、90)であって、車内側に突出し、前後方向に互いに離間する前側部分(5)及び後側部分(7)を有する支持部(62)と、前記支持部の前記前側部分及び前記後側部分の互いに対向する前後端面(10、11)間に可動支持されたアームレスト(6)とを有し、前記アームレストの前後端面のそれぞれに突設された突起(41,42、81、91、101)及び前記突起をそれぞれ受容するべく前記支持部の前記前後端面のそれぞれに設けられた凹部(56、57)を含む嵌合構造(60)が設けられ、前記凹部それぞれが上下に延在する縦部(64)と前記縦部の上端部から車内側に延びる横部(65)とを有し、前記アームレストが略直方体状をなし、第1面(33)が上向きの第1位置及び前記第1面に対して離反する第2面が上向きの第2位置(34)にあるときに、前記突起の幅が前記縦部の下端と実質的に等しく、前記突起の車外側又は車内側が前記縦部の前記下端に面接触するべく構成され、前記横部の車内側の部分が前記突起の回転を許容する回転許容部(69)を含むことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、突起が縦部の下端に受容されているときに、突起の車外側又は車内側の側面が縦部の下端に面接触するため、突起の回転が規制される。アームレストが第1位置及び第2位置にあるときには突起が縦部の下端に受容されている。よって、アームレストの第1位置及び第2位置における回転を規制することができる。
【0009】
第1位置(第2位置)にあるアームレストを縦部に沿って上方に引き上げた後、横部に沿って車内側に移動させて突起を回転許容部に受容させると、アームレストの回転が許容される。アームレストを略180度回転させた後、アームレストを車外側に移動させて、押し下げると、突起が縦部の下端に受容される位置となる。このとき、アームレストは上下反転した位置、すなわち、第2位置(第1位置)となる。よって、アームレストを第1位置と第2位置との間で変位可能とすることができる。
【0010】
また、突起と凹部との嵌合構造によって、アームレストを第1位置と第2位置との間で変位可能とし、且つアームレストの各位置における回転を規制することができるため、位置固定用の部材を別途設ける必要がない。よって、ドアトリムの構成を簡素にすることができる。
【0011】
また、上記の態様において、前記アームレストが、前記第1面が上向きの第1位置及び前記第1面に対して離反する第2面が上向きの第2位置以外にあるときには、前記突起(81)の車幅方向の幅が、前記縦部の前記下端の車幅方向の幅よりも大きいとよい。
【0012】
この態様によれば、アームレストが第1位置及び第2位置にあるときのみ、突起を縦部の下端に受容させることができる。これにより、乗員がアームレストを回転させた後、車外側に移動させて押し下げたときに、アームレストが第1位置及び第2位置以外の位置となることを防止することができる。
【0013】
また、上記の態様において、前記縦部が上下に延在する主部と、前記主部の上下方向略中央部分において、車内側に膨出する膨出部(67)を備え、前記膨出部の上端が車外方向かつ下方向を向く斜面(67A)により規定されているとよい。
【0014】
この態様によれば、乗員が意図せずアームレストを車内側斜め上方に押し上げたときに、突起は膨出部に受容される。これにより、突起が縦部上端に受容される位置アームレストが移動せず、突起が回転許容部に受容された位置、すなわちアームレストが回転することができる位置に移動することが防止される。よって、乗員の意図しないアームレストの回転を防止することができる。また、膨出部の上端が車外方向かつ下方向を向く斜面によって規定されることで、突起をその斜面に衝突させることによりアームレストを車外側斜め下方に戻すことができる。
【0015】
また、上記の態様において、前記アームレストが第1位置及び前記第2位置にあるときの前記突起の車内側と上側との間の部分が面取りされ又は丸みがつけられているとよい。
【0016】
この態様によれば、突起の車内側と上側との間の部分が面取りされ又は丸みが設けられる。これにより、突起が膨出部の上端を規定する斜面に衝突したときの突起の変形を防止することができる。
【0017】
また、上記の態様において、前記突起(41、42)が概ね4角形断面形状を有するとよい。
【0018】
この態様によれば、簡素な構成によってアームレストの第1位置及び第2位置それぞれにおける回転を規制することができる。
【0019】
また、上記の態様において、前記突起(91)が円形(92)を割線(93)により区画される小部分を切除した断面形状を有するとよい。
【0020】
この態様によれば、簡素な構成によってアームレストの第1位置及び第2位置それぞれにおける回転を規制することができる。
【0021】
また、上記の態様において、前記突起(101)が円形(103)を互いに直交する2つの割線(104、105)により区画される2つの小部分を切除した断面形状を有するとよい。
【0022】
この態様によれば、簡素な構成によってアームレストの第1位置及び第2位置それぞれにおける回転を規制することができる。
【0023】
また、上記の態様において、前記突起(81)が円形(82)を互いに平行な2つの割線(83、84)により区画される2つの小部分を切除した断面形状を有するとよい。
【0024】
この態様によれば、簡素な構成によってアームレストの第1位置及び第2位置それぞれにおける回転を規制することができる。
【0025】
また、上記の態様において、前記アームレストが前記第1位置及び前記第2位置にあるときに、前記アームレストの上面は前記支持部の前記前側部分の上面及び前記支持部の前記後側部分の上面にそれぞれ連続した態様をなすとよい。
【0026】
この態様によれば、アームレストが第1位置及び第2位置にあるときに、支持部の上面とアームレストの上面とが連続した態様となる。これにより、ドアトリムの意匠性が向上する。
【0027】
また、上記の態様において、前記支持部の前記前側部分の上面にはドアの窓を開閉するための操作部(5A)が設けられているとよい。
【0028】
この態様によれば、支持部の前側部分に操作部を設けることによって、ドアトリムに操作部を設けるための部分と支持部の前側部分とを別箇に設ける必要がない。これにより、ドアトリムから車内側に突出する部分を減らすことができるため、車内空間を広げることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、アームレストを備えた車両用ドアトリムであって、アームレストが第1位置及び第2位置にあるときに、突起の幅が縦部の下端と実質的に等しく、突起の車外側又は車内側が縦部の下端に面接触するべく構成され、横部の車内側の部分が、突起の回転を許容する幅を有する回転許容部を含む構成とすることによって、突起が縦部の下端に受容されているときに、突起の回転を規制することができる。アームレストが第1位置及び第2位置にあるときには突起が縦部の下端に受容されている。よって、アームレストの第1位置及び第2位置における回転を規制することができる。
【0030】
第1位置(第2位置)にあるアームレストを縦部に沿って上方に引き上げた後、横部に沿って車内側に移動させて突起を回転許容部に受容させると、アームレストの回転が許容される。アームレストを略180度回転させた後、アームレストを車外側に移動させて、押し下げると、突起が縦部の下端に受容される位置となる。このとき、アームレストは上下反転した位置、すなわち、第2位置(第1位置)となる。よって、アームレストを第1位置と第2位置との間で変位可能とすることができる。
【0031】
また、突起と凹部との嵌合構造によって、アームレストを第1位置と第2位置との間で変位可能、且つアームレストの各位置における回転を規制することができるため、位置固定用の部材を別途設ける必要がない。よって、ドアトリムの構成を簡素にすることができる。
【0032】
また、上記の態様において、アームレストが略直方体状をなし、第1面が上向きの第1位置及び第1面に対して離反する第2面が上向きの第2位置以外にあるときには、突起の幅が、縦部の下端よりも大きい幅を有する構成によれば、アームレストが第1位置及び第2位置にあるときのみ、突起を縦部の下端に受容させることができる。これにより、乗員がアームレストを回転させた後、車外側に移動させて押し下げたときに、アームレストが第1位置及び第2位置以外の位置となることを防止することができる。
【0033】
また、上記の態様において、前記縦部が上下に延在する主部と、前記主部の上下方向略中央部分において、車内側に膨出する膨出部を備え、前記膨出部の上端が車外方向かつ下方向を向く斜面により規定されている構成によれば、乗員が意図せずアームレストを車内側斜め上方に押し上げたときに、突起は膨出部に受容される。これにより、突起が縦部上端に受容される位置アームレストが移動せず、突起が回転許容部に受容された位置、すなわちアームレストが回転することができる位置に移動することが防止される。よって、乗員の意図しないアームレストの回転を防止することができる。また、膨出部の上端が車外方向かつ下方向を向く斜面によって規定されることで、突起をその斜面に衝突させることによりアームレストを車外側斜め下方に戻すことができる。
【0034】
また、上記の態様において、アームレストが第1位置及び第2位置にあるときの突起の車内側と上側との間の部分が面取りされ又は丸みがつけられている構成によれば、突起が膨出部の上端を規定する斜面に衝突したときの突起の変形を防止することができる。
【0035】
また、上記の態様において、突起が概ね4角形断面形状を有する構成によれば、簡素な構成によってアームレストの第1位置及び第2位置それぞれにおける回転を規制することができる。
【0036】
また、上記の態様において、突起が円形を割線により区画される小部分を切除した断面形状を有する構成によれば、簡素な構成によってアームレストの第1位置及び第2位置それぞれにおける回転を規制することができる。
【0037】
また、上記の態様において、突起が円形を互いに直交する2つの割線により区画される2つの小部分を切除した断面形状を有する構成によれば、簡素な構成によってアームレストの第1位置及び第2位置それぞれにおける回転を規制することができる。
【0038】
また、上記の態様において、突起が円形を互いに平行な2つの割線により区画される2つの小部分を切除した断面形状を有する構成によれば、簡素な構成によってアームレストの第1位置及び第2位置それぞれにおける回転を規制することができる。
【0039】
また、上記の態様において、前記アームレストが前記第1位置及び前記第2位置にあるときに、前記アームレストの上面は前記支持部の前記前側部分の上面及び前記支持部の前記後側部分の上面にそれぞれ連続した構成によれば、ドアトリムの意匠性が向上する。
【0040】
また、上記の態様において、前記支持部の前記前側部分の上面にはドアの窓を開閉するための操作部が設けられている構成によれば、ドアトリムに操作部を設けるための部分と支持部の前側部分とを別箇に設ける必要がない。これにより、ドアトリムから車内側に突出する部分を減らすことができるため、車内空間を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】第1実施形態に係るドアトリムであって、アームレストが支持位置にあるときの斜視図
図2】車両用シートに対するドアトリムの配置を説明するための説明図
図3】第1実施形態に係るドアトリムであって、アームレストが収納位置にあるときの斜視図
図4】第1実施形態に係るドアトリムの分解斜視図
図5】嵌合構造を説明するための説明図
図6】アームレストが(A)支持位置にあるときから回転可能な位置になるまでの突起の凹部内での移動と、(B)回転可能な位置で回転されてから収納位置になるまでの突起の凹部内での移動とを説明するための説明図
図7】(A)第2実施形態に係るドアトリムのアームレストの突起の形状と、(B)第3実施形態に係るドアトリムのアームレストの(B)突起の形状、及び(C)その突起の変形例とを説明するための説明図
図8】本発明に係るアームレストを2つの部材より構成した場合の説明図
図9】(A)本発明に係るアームレストの収容凹部を軟質の樹脂で構成した場合の例、及び(B)IXB-IXB断面図
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に本発明による車両用ドアトリムを車両の運転席である右前席のドアに適用した例を、図面を参照して説明する。図1に示すように、ドアトリムは概ね板状に形成され、鋼板から形成されたドアパネル(図示せず)の下部の車内側面(左側面)を覆うように取り付けられる。以下では、ドアが閉じられた状態を基準として、車幅方向(左右方向)、車内方向、車外方向、前後方向、及び上下方向を規定して説明する。
【0043】
<<第1実施形態>>
第1実施形態に係るドアトリム1は、図1に示すように、主面が車幅方向を向くドアトリム本体2と、ドアトリム本体2の周縁に対応する縁部3とを有する。縁部3は、ドアトリム本体2の中央部分よりも車外側に位置し、ドアパネルに当接している。ドアトリム本体2の上部には車幅方向に貫通する上部開口2Aが形成され、その内部にはドアハンドルが設けられている。ドアトリム本体2には、上部開口2Aの下方において、車外側且つ下方に窪む把持部2Bが形成され、乗員は把持部2Bに指を引っ掛けてドアを開閉することができる。
【0044】
ドアトリム本体2の上下方向における中間部には概ね車内側(右側)に向く支持壁4が形成され、その支持壁4に乗員が窓の開閉動作を行うためスイッチ部5、乗員の肘を支持するアームレスト6、及び、尾部7が前側から記載の順に設けられている。スイッチ部5及び尾部7はそれぞれ支持壁4から車内側に膨出した凸状をなしている。スイッチ部5は前後方向に延在し、スイッチ部5の後端には後方を向くスイッチ部後面10(図4参照)が形成されている。スイッチ部5の上面には乗員が窓の開閉動作を行うためのスイッチ5A(操作部)が設けられている。スイッチ部5の上面には更に、ドアを閉じた位置にロックするためのスイッチや座席の位置を調整するためのボタンが設けられていてもよい。スイッチ部後面10は車幅方向に延びる略長方形状をなしている(図4参照)。尾部7はスイッチ部5と概ね上下方向に同じ高さの位置に形成されている。尾部7もまた前後方向に延在し、尾部7の前端には前方を向く尾部前面11(図4参照)が形成されている。尾部前面11はスイッチ部後面10と同形であり、車幅方向に延びる略長方形状をなしている。
【0045】
図1及び図4に示すように、スイッチ部5及び尾部7は前後に離間し、アームレスト6はスイッチ部5及び尾部7の間に配置されている。より詳細には、図4に示すように、アームレスト6はスイッチ部後面10及び尾部前面11によって挟まれた領域である収容部12に収容されている。
【0046】
図2に示すように、ドアトリム1の車内側には、右前席を構成する車両用シート20が配置される。アームレスト6は右前席を構成する車両用シート20のシートバック21の右前方に位置している。これにより、アームレスト6は車両用シート20に着座した乗員の肘を載せることのできる位置となる。シートバック21の内部には側突時に乗員とドアトリム1との間に展開するエアバッグ22を備えたエアバッグユニット23が設けられている。更に、シートバック21の車外側側面を覆う表皮材には、エアバッグの展開時に開裂するティアライン25が設けられている。
【0047】
図4に示すように、アームレスト6は概ね水平な上面を有して前後に延びる略直方体状をなしている。アームレスト6の前端面31及び後端面32はそれぞれスイッチ部後面10及び尾部前面11と同形であり、左右に延びる略長方形状をなしている。アームレスト6の外周面であって、前後方向視で長辺側の1つの面(第1面。以下、支持面33)には略平坦な面が設けられている。図3に示すように、アームレスト6の外周面であって、支持面33に離反する側の面(第2面。以下、収納面34)にはアームレスト6の内方に凹む収納凹部35が設けられている。
【0048】
スイッチ部5及び尾部7によって、アームレスト6は図1に示すように支持面33が上向きの支持位置(第1位置)と、図3に示すように、支持位置から上下反転され、収納面34が上向きの収納位置(第2位置)との間で変位可能に支持(可動支持)されている。以下では、アームレスト6が支持位置にあるときを基準とし、スイッチ部5、アームレスト6、及び尾部7の構造を図4及び図5を参照してより詳細に説明する。
【0049】
図4に示すように、アームレスト6の前端面31及び後端面32にはそれぞれ、前後方向外方向に突出する突起41、42が設けられている。前端面31に突設された突起41と後端面32に突設された突起42とは前後対称をなし、実質的に同等である。そのため、以下では、後端面32に突設された突起42について説明し、前端面31に突設された突起41については説明を省略する。
【0050】
突起42はアームレスト6の端面(すなわち、後端面32)の略中心から前後方向外方(後方)に突出している。図4及び図5に示すように、突起42は支持面33に略平行な一対の横面46、47と、両横面46、47に垂直な一対の縦面48、49とを有する略四角柱状をなしている。図5に示すように、本実施形態では突起42の断面は略正方形状をなしている。以下、横面46、47のうち支持面33の側の面を第1横面46と記載し、収納面34の側の面を第2横面47と記載する。縦面48、49のうちアームレスト6が支持位置にあるときに車内側に位置する面を第1縦面48と記載し、車外側に位置する面を第2縦面49と記載する。
【0051】
図5に示すように、第1横面46と第1縦面48との間には、第1横面46と第1縦面48との間の部分が面取りされることによって形成された第1角面50が設けられている。図6(A)に示すように、アームレスト6が支持位置にあるとき、第1角面50は車内側上方を向いている。第2横面47と第2縦面49との間には、第2横面47と第2縦面49との間の部分が面取りされることによって形成された第2角面51が設けられている。アームレスト6が支持位置にあるとき、第2角面51は車外側下方を向いている。第1角面50及び第2角面51は略平行であり、突起42の軸線を中心に対称をなしている。
【0052】
図4に示すように、スイッチ部後面10には前方に凹む凹部56が形成されている。アームレスト6の前端面31に設けられた突起41はスイッチ部後面10に設けられた凹部56に突入して受容されている。尾部前面11には後方に凹む凹部57が形成されている。アームレスト6の後端面32に設けられた突起42は尾部前面11に設けられた凹部57に突入して受容されている。これにより、両突起41、42と対応する凹部56、57とが嵌め合うことによって嵌合構造60(図5参照)が構成されている。この嵌合構造60によって、アームレスト6はスイッチ部5及び尾部7に支持されている。すなわち、スイッチ部5及び尾部7はアームレスト6を支持する支持部62として機能している。スイッチ部5は支持部62の前側部分を構成し、尾部7は支持部62の後側部分を構成している。
【0053】
スイッチ部後面10に設けられた凹部56と尾部前面11に設けられた凹部57とは前後に対向している。2つの凹部56、57は面対称をなし、実質的に同等である。そのため、以下では、尾部前面11に設けられた凹部57について説明し、スイッチ部後面10に設けられた凹部56については説明を省略する。
【0054】
図5に示すように、凹部57は上下に延在する縦部64と縦部64の上端部から車内側に延びる横部65とを有している。縦部64は車幅方向に一定の幅を有して上下に延在する縦側主部66と、縦側主部66の上下方向略中央部分から車内側に膨出する膨出部67とを備えている。縦側主部66の車幅方向の幅、すなわち縦部64の下端の車幅方向の幅は突起42の第1縦面48及び第2縦面49の距離と実質的に等しい。ここでいう実質的に等しいとは、縦部64の下端の車幅方向の幅が、突起42が縦側主部66の下端に受容されたときに、第1縦面48及び第2縦面49がそれぞれ縦側主部66を画定する左右一対の壁面66A、66Bに上下方向に十分な幅を有する面で面接触するように設定されていることを意味している。より具体的には、縦部64の下端の車幅方向の幅は両縦面48、49の距離に概ね等しく、より正確には前者は後者に比べて若干大きい。縦側主部66の上端は車内側において横部65の車外側端部に接続している。縦側主部66の下端は概ね尾部前面11の中心の位置にあるとよい。これにより、第1横面46が上方を向くように突起42が縦部64の下端に受容されているときに、アームレスト6の支持面33がスイッチ部5の上面及び尾部7の上面に連続する態様となる。
【0055】
膨出部67は上面67Aと、下面67Bと、上面67Aの車内側端部及び下面67Bの車内側端部を接続する車内側面67Cとによって画定されている。上面67Aは車外方向かつ下方向を向く斜面であり、膨出部67の上端を規定している。下面67Bは上面の下側に位置する上方を向く面であり、膨出部67の下端を規定している。車内側面67Cは上下に延在し、且つ車外側を向く面であり、膨出部67の車内側の端部を規定している。上面67Aの水平方向に対する傾斜角度は、第1角面50の第1横面46に対する傾斜角度と等しくなるように設定されているとよい。これにより、第1横面46又は第2横面47が上方を向くように突起41が縦部64の下端に受容されているときに、膨出部67の上面67Aは第1角面50及び第2角面51に略平行となる。
【0056】
横部65は縦側主部66の上端に車内側から接続する横側主部68と、横側主部68の車内側の部分、より詳細には横側主部68の車内側端部に設けられた回転許容部69とを有している。横側主部68は上下方向に一定の幅を有して車内側に延びている。回転許容部69は突起42の回転が許容される部分であり、突起42の回転を許容する上下方向の幅と車幅方向の長さとを有している。
【0057】
回転許容部69は上面69Aと、下面69Bと、上面69Aの車内側端部及び下面69Bの車内側端部を接続する車内側面69Cとによって画定されている。上面69Aは下方を向く略水平な面であり、上面69Aは回転許容部69の上端を規定している。下面69Bは上面69Aの下側に設けられ、上方を向く略水平な面であり、回転許容部69の下端を規定している。車内側面69Cは上面69Aの車内側端部及び下面69Bの車内側端部を前後方向視で半円弧状に接続している。回転許容部69の上面69A及び下面69Bの距離は突起42の最大幅よりも大きい。より詳細には、回転許容部69の上面69A及び下面69Bの距離は、第1横面46及び第2縦面49の間の稜線と第2横面47及び第1縦面48との間の稜線との距離に概ね等しく、より正確には前者は後者に比べて若干大きい。回転許容部69の車内側面69Cの内径は回転許容部69の上面69A及び下面69Bの距離に等しい。また、回転許容部69の上面69A及び下面69Bはそれぞれ車幅方向に、少なくとも第1横面46及び第2縦面49の間の稜線と第2横面47及び第1縦面48との間の稜線との距離の半分の以上の長さを有している。
【0058】
横側主部68の上下方向の幅は少なくとも第1横面46及び第2横面47との距離以上に設定されている。本実施形態では、横側主部68の上下方向の幅は回転許容部69の上面69A及び下面69Bの距離に等しく、横側主部68の上面68Aは回転許容部69の上面69Aに連続し、横側主部68の下面68Bは回転許容部69の下面69Bに連続している。すなわち、横側主部68の上下方向の幅は第1横面46及び第2縦面49の間の稜線と第2横面47及び第1縦面48との間の稜線との距離と概ね等しく、より正確には前者は後者に比べて若干大きい。突起41が回転許容部69に受容されたときにアームレスト6の回転がドアトリム本体2に阻害されない位置となるように、横側主部68は車幅方向に十分な長さを有している。横側主部68の車幅方向の長さは、例えば、アームレスト6の前端面31の対角線の長さとその長辺の長さとの差の半分以上の長さに設定されるとよい。
【0059】
次にこのように構成したドアトリム1の動作、及びその効果について説明する。アームレスト6が支持位置にあるとき、図6(A)に示すように、第1横面46がそれぞれ上方を向くように、突起41、42はそれぞれ対応する凹部56、57の縦部64の下端に受容されている。このとき、第1縦面48と第2縦面49とがそれぞれ縦部64の下端を画定する壁面66A、66Bに面接触している。これにより、突起41、42が車内側及び車外側において縦部64の下端を画定する壁面にそれぞれ面接触し、突起41、42の回転が規制されるため、支持位置にあるアームレスト6は回転することがない。
【0060】
乗員がアームレスト6をドアトリム本体2に対して上方に引き上げると、突起41,42はそれぞれ上方に移動して、対応する凹部56、57の縦部64の上端に達する。その後、乗員がアームレスト6を車内側に引き出すと、突起41、42はそれぞれ対応する凹部56、57内において車内側に移動して、回転許容部69に達する。このとき、凹部56、57における突起41、42の回転が許容されて、アームレスト6の前後方向を軸線とする回転が可能となる(図6(A)の実線の矢印を参照)。次に、乗員はアームレスト6を収納面34が上向くように180度回転させる。更に、アームレストを車外側に押し出して、その後、下方に押し下げる。これにより、突起41、42は回転許容部69から車外側に移動して縦部64の上端に達し、その後、第2横面47が上方を向くように、突起41、42が縦部64の下端に受容される(図6(B)の実線の矢印を参照)。このとき、アームレスト6は収納面34が上向く収納位置となっている。図6(B)に示すように、アームレスト6が収容位置にあるときには、第1縦面48と第2縦面49とはそれぞれ縦部64の下端を画定する壁面66A、66Bに面接触しているため、アームレスト6は回転することがない。また、このとき、突起41、42がアームレスト6の前端面31の略中央部に設けられているため、アームレスト6は前端面31の中心及び後端面32の中心を通る軸線として上下反転した位置となる。これにより、収納面34の収納凹部以外の部分がスイッチ部5の上面及び尾部7の上面に連続した態様となる。このように、アームレスト6が支持位置及び収納位置のいずれの位置においても、アームレスト6の上面がスイッチ部5の上面及び尾部7の上面に連続した態様となるため、ドアトリム1の意匠性が向上する。また、本実施形態では、アームレスト6が支持位置及び収納位置のいずれの位置にあるときにも、スイッチ部後面10及び尾部前面11が露出せず、ドアトリム1の意匠性がより高められている。
【0061】
このように、アームレスト6を支持位置と、支持位置から前後方向を軸線として180度回転された収納位置とに変位させることができ、且つ、それぞれの位置におけるアームレスト6の回転を規制することができる。また、アームレスト6を支持する嵌合構造60によってアームレスト6の支持位置及び収納位置における回転を規制することができるため、各位置で回転を規制するための位置固定用の部材を設ける必要がなく、ドアトリム1の構成を簡素にすることができる。また、突起41、42が2つの稜線で面取りされた概ね4角形断面形状を有しているため、突起41、42の構造が簡素である。
【0062】
乗員がアームレスト6を回転させることを意図せず、アームレスト6を車内側斜め上方に押し上げると、突起41、42はそれぞれ膨出部67に受容される(図6(A)及び(B)の一点鎖線を参照)。これにより、突起41、42が縦部64の上端に到達することが防止されて、突起41、42が回転許容部69に受容される位置にアームレスト6が移動しない。これにより、乗員の意図しないアームレスト6の回転を防止することができる。
【0063】
支持位置にあるアームレスト6が車内側斜め上方に押し上げられると、突起41、42は第1角面50において上面67Aに衝突し、そのエネルギーが吸収される。また、上面67Aが車外方向かつ下方向を向く斜面であるため、衝突時に突起41、42には上面67Aから車外方向かつ下方向に荷重が加わる(図6(A)の一点鎖線の矢印を参照)。これにより、アームレスト6は車外側斜め下方、すなわち支持位置の側に戻される。これにより、乗員はアームレスト6を支持位置に容易に戻すことができる。
【0064】
収納位置にあるアームレスト6が車内側斜め上方に押し上げられると、支持位置にあるときと同様に、突起41、42は第2角面51において上面67Aに衝突する。このとき、上面67Aから車外方向かつ下方向に荷重が加わる(図6(B)の一点鎖線の矢印を参照)ため、アームレスト6は収納位置の側に戻される。これにより、乗員はアームレスト6を収納位置に容易に戻すことができる。
【0065】
アームレスト6が車内側斜め上方に押し上げられたときには、突起41、42は第1角面50又は第2角面51において上面67Aに衝突する。このとき、上面67Aから第1角面50又は第2角面51の全体に荷重が加えられる。一方、突起41、42が面取りされていない場合には突起41、42の稜線部分に荷重が集中するため、突起41、42や上面67Aが変形し易い。すなわち、突起41、42を面取りすることによって、上面67Aへの衝突時の突起41、42及び上面67Aの変形を防止することができる。
【0066】
アームレスト6は前側においてスイッチ部5に支持されているため、ドアトリム本体2にアームレスト6の前側を支持すべく車内側に突出する部分とスイッチ部5とを別箇に設ける必要がない。これにより、ドアトリム1の構造が簡素になるとともに、ドアトリム1の車内側に突出する部分を少なくすることができるため、車内空間を広げることができる。また、アームレスト6をティアライン25の前方に設けたため、アームレスト6と乗員との間にエアバッグ22が展開する。これにより、アームレスト6の乗員側への移動を防止することができるため、乗員を保護することができる。
【0067】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係るドアトリム80は、第1実施形態に係るドアトリム1と比べて、アームレスト6に設けられた突起81の形状のみが異なるため、他の部分については説明を省略する。図7(A)に示すように突起81は円柱をその軸線を中心として相対する略平行な面で切断した形状をなしている。すなわち、突起81は円形82を、互いに平行な2つの割線83、84により区画される2つの小部分を切除した断面形状をなしている。突起81には略平行をなし、互いに離反する方向を向く2つの縦面85、86と、2つの縦面の相対する縁部を互いに接続する2つの横面87、88とを有している。2つの縦面85、86はそれぞれ平坦な面であり、支持面33に略垂直をなしている。2つの横面87、88はそれぞれ外方に湾曲する曲面であり、前後方向視で円弧状をなしている。2つの横面87、88のうち、支持面33の側の面を第1横面87と記載し、収納面34の側の面を第2横面88と記載する。
【0068】
2つの縦面85、86の間の距離は概ね縦部64の下端の幅と実質的に等しい。よって、突起81は縦面85、86がそれぞれ車幅方向を向くときに、縦側主部66の下端、すなわち縦部64の下端を画定する壁面66A、66Bに面接触して収容される。
【0069】
また、第1横面87が第2横面88の上側に位置するように、突起81が縦部64の下端に受容されたときには、アームレスト6は支持面33が上方を向く支持位置となる。第2横面88が第1横面87の上側に位置するように、突起81が縦部64の下端に受容されたときには、アームレスト6は収納面34が上方を向く収納位置となる。アームレスト6が支持位置及び収納位置のいずれの位置にあるときにも、突起81が縦部64の下端に受容され、縦面85、86はそれぞれ縦部64の下端を画定する壁面66A、66Bに面接触している。すなわち、アームレスト6が支持位置及び収納位置のいずれの位置にあるときにも、アームレスト6の回転が規制されている。
【0070】
突起81の車幅方向の幅は縦面85、86がそれぞれ車幅方向を向くときに最小となる。また、縦部64の下端の車幅方向の幅は縦面85、86の間の距離に概ね等しいため、突起81は縦面85、86がそれぞれ車幅方向を向くときのみ、突起81を縦部64の下端に受容させることができる。よって、アームレスト6の回転が規制されて、回転が不能となる位置を支持位置又は収納位置に限定することができる。これにより、乗員がアームレスト6を、腕の載置に適した支持位置、及び収納物が収納凹部35から漏れ出し難い収納位置以外の位置に配置することを防止することができる。これにより、乗員がアームレスト6を収納凹部35から収容物が漏れ出し易い位置とすることが防止でき、ドアトリム1の利便性を向上させることができる。
【0071】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係るドアトリム90は、第1実施形態に係るドアトリム1と比べて、アームレスト6に設けられた突起91の形状のみが異なるため、他の部分については説明を省略する。図7(B)に示すように、突起91は直円柱をその延在方向に平行な1つの平面によって切り出した形状をなしている。突起91は半径Rの円形92を中心から距離r離れた割線93により区画された小部分を切除した断面形状を有する。突起91はその外周面に平面状の平面部94及び平面部94の縁部を接続する曲面部95を有している。平面部94は支持面33及び収納面34に略垂直をなしている。平面部94が曲面部95の車内側にあるときには支持面33が上面にあり、平面部94が曲面部95の車外側にあるときには収納面34が上面となるように構成されている。また、半径Rは回転許容部69の上下方向の幅の半分より若干小さく、縦部64の下端の幅は半径Rと円形92の中心と割線93との距離rの和と実質的に等しい。
【0072】
突起91の車幅方向の幅は平面部94が車幅方向を向くとき、すなわちアームレスト6が支持位置又は収納位置にあるときに最小となり、縦部64の下端に収容可能となる。また、突起91が縦部64の下端に収容されたときには、平面部94が縦部64の下端に面接触する。これにより、アームレスト6が支持位置又は収納位置にあるときの回転が規制できる。また、突起91は円柱を1つの平面によって切り出した形状をなしているため、突起91の構造が簡素である。
【0073】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記実施形態ではアームレスト6の前端面31及び後端面32はそれぞれアームレスト6が支持位置にあるときに車幅方向に延びる略長方形状をなしていたが、この態様には限定されない。アームレスト6の前端面及び後端面は略正方形状をなしていてもよい。アームレスト6は略正方形状を含む略長方形状の断面を実質的に有していればよく、アームレスト6は互いに直交する4つの外周面を有する角柱状をなしていればよい。
【0074】
上記第1実施形態では、突起41、42を面取りすることによって、第1角面50及び第2角面51が形成されていたが、この態様には限定されない。例えば、第1横面46及び第1縦面48の間と、第2横面47及び第2縦面49の間とに、外方に凸に湾曲した丸みをつけた部分が設けられていてもよい。これにより、突起41、42が上面67Aへの衝突したときに、突起41、42や上面67Aの変形を防止することができる。
【0075】
また、図7(C)に示すように、突起101は、第2実施形態の突起91を更に、平面部94に直交する平面102によって切り出した形状をなしていてもよい。突起101は半径Rの円形103を大部分及び小部分に区画するとともに、互いに直交する2つの割線104、105によって区画し、割線104、105によって区画された小部分のそれぞれを切除した断面形状を有している。この場合も第2実施形態と同様に、突起101が縦部64の下端に収容されたときには、平面部94が車外側及び車内側において縦部64の下端に左右一対の面に面接触するため、アームレスト6の支持位置又は収納位置にあるときの回転が規制できる。また、突起101は円柱を2つの直交する平面によって切り出した形状をなしているため、突起101の構造が簡素である。
【0076】
上記実施形態では、アームレスト6は樹脂製の単一の部材によって構成されていたが、この態様には限定されない。アームレスト6は複数の部材によって構成されていてもよい。例えば、図8に示すように、アームレスト110は前後方向に延在する略直方体状のアームレスト本体111と、略平板状のクッション部材112とを含んでいても良い。アームレスト本体111は硬質の樹脂によって形成されている。クッション部材112の主面のうち、一方側の面(以下、表面)には、クッション性のある樹脂が設けられている。アームレスト本体111の外周面の一つにはアームレスト本体111の内方に向かって凹む収納凹部113が設けられている。これにより、アームレスト本体111の収納凹部113が設けられた面は収納面114として機能する。クッション部材112は裏面において、アームレスト本体111の外周面のうち、収納面114に離反する側の面115に締結されている。これにより、クッション部材112の表面は支持面116として機能する。このようにアームレスト本体111とクッション部材112とによってアームレスト110を構成することで、クッション部材112の取り替えが可能となり、支持面116のやわらかさや模様などを乗員の好みに合わせて変更することができる。
【0077】
また、アームレスト120は、前後に延在するフレーム(不図示)と、フレームの外周に設けられたパッド部材121(図9(B)参照)と、パッド部材121の表面を覆う表皮材122(図9(B)参照)とを含んでいてもよい。このとき、パッド部材121はウレタン等の弾性部材によって形成され、表皮材122は合成皮革や布等によって形成されている。
【0078】
図9(A)に示すように、アームレスト120の収納面123の側には、収納凹部124を形成するフォルダ125が設けられている。フォルダ125は有底な四角筒状をなし、収納面123において開口している。パッド部材121には内方に凹むフォルダ受容部126が形成され、フォルダ125はそのフォルダ受容部126に受容されている。フォルダ125は表皮材122に縫合可能な、例えばエラストマ等の軟質な樹脂素材(ソフトシェル素材)によって形成されている。
【0079】
表皮材122にはフォルダ受容部126に対応する位置に四角形状の開口が設けられている。図9(B)に示すように、フォルダ125の開口縁には外方に延出するフランジ127が設けられている。フランジ127は延出端128において表皮材122の開口を画定する縁部129と重なり合っている。フランジ127の延出端128と表皮材122の縁部129とは互いに縫合されて、アームレスト120の内方に向かって折り曲げられている。アームレスト120は、フォルダ125が縫合された表皮材122をフレームに被せた後、その表皮材122の内部に発泡性樹脂原液を注入して発泡させることによって形成される。このとき、アームレスト120の前端面31及び後端面32に設けられる突起41、42は、硬質の樹脂によって形成された部材を表皮材122の表面に接着することによって形成されるとよい。
【符号の説明】
【0080】
1 :第1実施形態に係るドアトリム
5 :スイッチ部
6 :アームレスト
7 :尾部
10 :スイッチ部後面
11 :尾部前面
33 :支持面
34 :収納面
41、42 :突起
56、57 :凹部
60 :嵌合構造
62 :支持部
64 :縦部
67 :膨出部
67A :上面
69 :回転許容部
80 :第2実施形態に係るドアトリム
81 :突起
82 :円形
83 :割線
84 :割線
90 :第3実施形態に係るドアトリム
91 :突起
92 :円形
93 :割線
101 :突起
103 :円形
104 :割線
105 :割線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9