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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】弁付き針組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20231227BHJP
   A61M 39/06 20060101ALI20231227BHJP
   A61M 39/22 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M39/06 122
A61M39/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019233390
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101771
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-070870(JP,A)
【文献】特表2015-508010(JP,A)
【文献】特開2002-263197(JP,A)
【文献】国際公開第2019/027024(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 39/06
A61M 39/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空針の基端側に筒状のコネクタが設けられて、該中空針の先端から該コネクタの基端に至る内部流路が形成されており、該内部流路を遮断する弾性弁体が設けられていると共に、該弾性弁体の基端側には筒状の押し子が配されて、該弾性弁体のスリットが該押し子によって押し開かれる弁付き針組立体において、
前記コネクタの内側に筒状体が配されており、
前記弾性弁体の外周部分には基端側へ延び出す筒状保持部が設けられて、該筒状保持部が該コネクタと該筒状体の間で径方向に挟まれて保持されていると共に、
該筒状保持部から更に基端側へ延び出す挟持片が部分的に設けられて、該挟持片が該コネクタと該筒状体の間で径方向に挟まれて保持されている弁付き針組立体。
【請求項2】
前記弾性弁体の外周面と前記コネクタの内周面との間には軸方向に延びるエア抜き通路が設けられており、該エア抜き通路が前記挟持片を周方向に外れた位置に配されている請求項1に記載の弁付き針組立体。
【請求項3】
中空針の基端側に筒状のコネクタが設けられて、該中空針から該コネクタに至る内部流路が形成されており、内部流路を遮断する弾性弁体が設けられていると共に、該弾性弁体の基端側には筒状の押し子が配されて、該弾性弁体のスリットが該押し子によって押し開かれる弁付き針組立体において、
前記コネクタの内側に筒状体が配されていると共に、前記弾性弁体の外周部分から基端側へ延び出す挟持片が周方向で部分的に設けられて、該挟持片が該コネクタと該筒状体の間で径方向に挟まれて保持されており、
該弾性弁体の外周面と該コネクタの内周面との間を軸方向に延びるエア抜き通路が設けられて、該エア抜き通路が該挟持片を周方向に外れた位置に配されている弁付き針組立体。
【請求項4】
前記コネクタの内周面に開口する位置決め凹部に差し入れられる位置決め凸部が、前記筒状体の外周面において該筒状体の軸方向の中間部分に設けられており、
該位置決め凸部を周方向で外れた位置に配された前記挟持片が該位置決め凹部よりも基端側まで延びている請求項1~3の何れか1項に記載の弁付き針組立体。
【請求項5】
前記弾性弁体の径方向の両側に相互に対向する一対の前記挟持片が設けられている請求項1~4の何れか1項に記載の弁付き針組立体。
【請求項6】
前記挟持片を挟む前記筒状体の外周面と前記コネクタの内周面との少なくとも一方に突起が設けられている請求項1~5の何れか1項に記載の弁付き針組立体。
【請求項7】
前記挟持片の基端面が前記筒状体に対して軸方向で当接している請求項1~6の何れか1項に記載の弁付き針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管に穿刺されて輸液や採血などに供される針組立体に係り、特に、弾性弁体と弾性弁体を押し開く押し子とが設けられた弁付き針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液や採血などを行う際に用いられる針組立体が知られている。この針組立体は、中空針と、中空針の基端側に設けられるコネクタとを備えており、中空針が患者の血管に穿刺されると共に、コネクタの基端側に外部流路が接続されることで、血管から針組立体の内部流路を通じて外部流路に至る流体流路が構成されて、当該流体流路を通じて輸液や採血などが実施されるようになっている。
【0003】
ところで、例えば特開2016-13359号公報(特許文献1)に示された針組立体は、内部流路を遮断状態とする弾性弁体を備えている。それ故、中空針を血管に穿刺するだけでは、内部流路が弾性弁体によって遮断状態とされており、内部流路を通じた血液の流出が防止される。また、内部流路には筒状の押し子が配されており、弾性弁体のスリットが押し子によって押し開かれることによって、内部流路が弾性弁体による遮断状態から連通状態に切り替えられて、輸液や採血を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-13359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような押し子によって弾性弁体のスリットが押し広げられる構造では、押し子の弾性弁体への押付けによる外力が弾性弁体に作用することから、弾性弁体をコネクタに組み付けられた状態に保持するための保持力が大きく確保される必要がある。しかしながら、コネクタ内のスペースの制約による部品サイズの制限、弾性弁体とコネクタの間で空気の流通を許容するエア抜き通路の確保の必要性などによって、未だ十分な保持力が確保され難い場合もあった。
【0006】
本発明の解決課題は、弾性弁体をコネクタへの組付け状態に保持する保持力が十分に確保される、新規な構造の弁付き針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、中空針の基端側に筒状のコネクタが設けられて、該中空針の先端から該コネクタの基端に至る内部流路が形成されており、該内部流路を遮断する弾性弁体が設けられていると共に、該弾性弁体の基端側には筒状の押し子が配されて、該弾性弁体のスリットが該押し子によって押し開かれる弁付き針組立体において、前記コネクタの内側に筒状体が配されており、前記弾性弁体の外周部分には基端側へ延び出す筒状保持部が設けられて、該筒状保持部が該コネクタと該筒状体の間で径方向に挟まれて保持されていると共に、該筒状保持部から更に基端側へ延び出す挟持片が部分的に設けられて、該挟持片が該コネクタと該筒状体の間で径方向に挟まれて保持されているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた弁付き針組立体によれば、弾性弁体の外周部分に設けられる筒状保持部が、コネクタと筒状体の間で径方向に挟まれて保持されることにより、弾性弁体においてスリットが押し子によって押し開かれる際の外力の作用部分により近い位置で弾性弁体を保持することができる。
【0010】
また、筒状保持部だけでなく、筒状保持部から更に基端側へ延び出す挟持片も、コネクタと筒状体の間で径方向に挟まれて保持される。それ故、弾性弁体により大きな保持力を及ぼすことが可能になると共に、挟持片の数、形、大きさ、配置などを調節することによって、弾性弁体に及ぼされる保持力を調節することができる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に記載された弁付き針組立体において、前記弾性弁体の外周面と前記コネクタの内周面との間には軸方向に延びるエア抜き通路が設けられており、該エア抜き通路が前記挟持片を周方向に外れた位置に配されているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされた弁付き針組立体によれば、エア抜き通路を連通状態に保つために、筒状保持部がエア抜き通路を塞がない程度に挟まれる場合にも、エア抜き通路を外れた位置にある挟持片が十分に挟まれることで、弾性弁体の保持力が十分に確保される。
【0013】
第3の態様は、中空針の基端側に筒状のコネクタが設けられて、該中空針から該コネクタに至る内部流路が形成されており、内部流路を遮断する弾性弁体が設けられていると共に、該弾性弁体の基端側には筒状の押し子が配されて、該弾性弁体のスリットが該押し子によって押し開かれる弁付き針組立体において、前記コネクタの内側に筒状体が配されていると共に、前記弾性弁体の外周部分から基端側へ延び出す挟持片が周方向で部分的に設けられて、該挟持片が該コネクタと該筒状体の間で径方向に挟まれて保持されており、該弾性弁体の外周面と該コネクタの内周面との間を軸方向に延びるエア抜き通路が設けられて、該エア抜き通路が該挟持片を周方向に外れた位置に配されているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた弁付き針組立体によれば、挟持片が強く挟まれることで保持力が確保されていても、挟持片を周方向に外れた位置に配されたエア抜き通路は連通状態に保持される。それ故、内部流路における弾性弁体を挟んだ軸方向両側の領域が、エア抜き通路を通じて相互に連通されている。従って、例えば、中空針が血管に穿刺された状態において、弾性弁体の遮断状態における血液の内部流路への流入(逆血)が、内部流路における弾性弁体よりも先端側から基端側へのエア抜き通路を通じた空気の流動によって許容される。これにより、中空針が血管に正しく穿刺されていることを、逆血によって確認することができる。
【0015】
第4の態様は、第1~第3の何れか1つの態様に記載された弁付き針組立体において、前記コネクタの内周面に開口する位置決め凹部に差し入れられる位置決め凸部が、前記筒状体の外周面において該筒状体の軸方向の中間部分に設けられており、該位置決め凸部を周方向で外れた位置に配された前記挟持片が該位置決め凹部よりも基端側まで延びているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた弁付き針組立体によれば、筒状体に設けられた位置決め凸部が、コネクタに設けられた位置決め凹部に差し入れられることにより、筒状体がコネクタに対して位置決めされる。
【0017】
位置決め凸部が筒状体の軸方向の中間部分に設けられていることから、位置決め凸部が筒状体の基端部分に設けられている場合に比して、より弾性弁体に近い先端側において筒状体がコネクタに対して位置決めされる。それ故、例えば、弾性弁体に作用するスリットを押し開く力が筒状体に伝達されたとしても、筒状体がコネクタに対して位置決めされた状態で安定して保持される。なお、位置決め凸部が筒状体の軸方向の中間部分に設けられているとは、筒状体の軸方向の中央に設けられていることだけを意味するものではなく、筒状体の先端及び基端を外れた部分に設けられていることを意味する。
【0018】
位置決め凸部を周方向で外れた位置に配された挟持片が、位置決め凹部よりも基端側まで延びていることから、位置決め凸部の位置決め凹部への差し入れによる筒状体のコネクタに対する位置決めを実現しながら、挟持片の長さが確保されて、挟持片を挟むことによって弾性弁体に及ぼされる保持力を大きく得ることができる。特に、位置決め凹部よりも基端側において挟持片を挟んで保持することにより、位置決め凸部が先端側にあることによる筒状体の安定性向上と挟持片の挟み込みによる弾性弁体の保持性向上を両立させることができる。また、挟持片において筒状体とコネクタの間で挟まれる領域を大きな自由度で設定して、筒状体の安定性と弾性弁体の保持性のバランス調節の自由度を大きく得ることができる。
【0019】
第5の態様は、第1~第4の何れか1つの態様に記載された弁付き針組立体において、前記弾性弁体の径方向の両側に相互に対向する一対の前記挟持片が設けられているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた弁付き針組立体によれば、一対の挟持片が周方向でバランスよく配置される。それ故、挟持片を筒状体とコネクタの間で挟むことで得られる保持力が、弾性弁体に対してバランスよく及ぼされて、例えば、弾性弁体の傾きや軸方向の抜け等が一層生じ難くなる。
【0021】
一対の挟持片が弾性弁体の径方向で対向して配置されていることにより、各挟持片の周方向長さを長くして、各挟持片の変形剛性を大きくすることもできる。これによれば、挟持片を挟むことによる保持力が弾性弁体に有効に伝達されて、弾性弁体の抜け等を効果的に防ぐことができる。
【0022】
第6の態様は、第1~第5の何れか1つの態様に記載された弁付き針組立体において、前記挟持片を挟む前記筒状体の外周面と前記コネクタの内周面との少なくとも一方に突起が設けられているものである。
【0023】
本態様に従う構造とされた弁付き針組立体によれば、突起の形成部分において挟持片が局所的により強く挟まれて、挟持片を挟むことによって弾性弁体に及ぼされる保持力をより大きく得ることができる。
【0024】
第7の態様は、第1~第6の何れか1つの態様に記載された弁付き針組立体において、前記挟持片の基端面が前記筒状体に対して軸方向で当接しているものである。
【0025】
本態様に従う構造とされた弁付き針組立体によれば、挟持片がコネクタと筒状体の間で径方向に挟まれる際に、挟持片の基端側への伸長変形が、挟持片の筒状体への当接によって制限される。それ故、挟持片をコネクタと筒状体との間で挟むことで生じる保持力が、より効率的に発揮される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、弾性弁体をコネクタへの組付け状態に保持する保持力を、十分に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1の実施形態としての弁付き針組立体を示す斜視図
図2図1に示す弁付き針組立体の断面図であって、図3のII-II断面に相当する図
図3図2のIII-III断面図
図4図2のIV-IV断面を拡大して示す図
図5図2のV-V断面を拡大して示す図
図6図2のVI-VI断面を拡大して示す図
図7図1に示す弁付き針組立体を構成するディスク弁の斜視図
図8図7に示すディスク弁の正面図
図9図8に示すディスク弁の平面図
図10図8に示すディスク弁の右側面図
図11図1に示す弁付き針組立体を構成する押し子ガイドの斜視図
図12図11に示す押し子ガイドの正面図
図13図12に示す押し子ガイドの平面図
図14図12に示す押し子ガイドの左側面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
先ず、図1には、本発明の第1の実施形態としての弁付き針組立体10が示されている。弁付き針組立体10は、図1~3に示すように、中空針12の基端側に筒状のコネクタ14が設けられた構造を有している。以下の説明において、軸方向とは、各部材の中心軸方向であって、中空針12の針軸方向に略相当する図2中の左右方向をいう。また、先端側とは、中空針12の穿刺される側(針先側)である図2中の左側をいう一方、基端側とは、使用者が操作する側である図2中の右側をいう。
【0030】
中空針12は、軟質の合成樹脂により形成されている。中空針12の先端部分の外周面は、図1に示すように、先端側に向かって次第に外径寸法が小さくなるテーパ状外周面16とされている。なお、中空針12の材質は、例えばステンレス等の金属製であってもよい。
【0031】
コネクタ14は、例えば硬質の合成樹脂により形成される。コネクタ14は、図2~6に示すように、略段付き円筒形状とされており、先端部分が基端部分よりも小径とされている。コネクタ14の基端には、外周へ突出する雄ねじ18が一体的に設けられている。なお、コネクタ14と中空針12との間に可撓性のチューブを配置してもよく、可撓性のチューブは中空針12の軸方向と交わる方向に延びていてもよい。
【0032】
コネクタ14の軸方向の中間部分には、図3に示すように、内周面に開口する位置決め凹部20が形成されている。位置決め凹部20は、周方向で全周に亘って連続して延びる溝状とされている。位置決め凹部20は、側壁内面が内周側に向けて軸方向外側へ傾斜する断面形状を有していると共に、底内面が略軸方向に延びる直線的な断面形状を有している。なお、軸方向の中間とは、軸方向の中央だけをいうものではなく、軸方向の両端ではないことを意味する。
【0033】
コネクタ14における位置決め凹部20よりも先端側には、図2~4に示すように、内周面に開口する凹溝22が形成されている。凹溝22は、後述するディスク弁26及び筒状保持部30に重ね合わされる部分に形成されている。凹溝22は、複数が周方向で略均等に配置されており、本実施形態では8つが周方向に45°の間隔で設けられている。
【0034】
そして、図2,3に示すように、中空針12の基端部分がコネクタ14の先端部分に挿入されて、中空針12がコネクタ14に対して例えば接着や溶着などの手段で固定される。これにより、中空針12がコネクタ14から先端側に突出した状態で、中空針12とコネクタ14が連結されている。また、中空針12の内腔がコネクタ14の内腔に連通されており、中空針12の先端からコネクタ14の基端に至る内部流路24が、軸方向に貫通して形成されている。
【0035】
内部流路24には、弾性弁体としてのディスク弁26が設けられている。ディスク弁26は、図7~10にも示すように、略円板形状とされている。ディスク弁26は、ゴムやエラストマーなどの弾性を有する材質により形成されている。ディスク弁26の中央部分には、軸方向に貫通するスリット28が形成されている。スリット28の形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態では周方向の三方に略均等(略120°毎)に延びる放射状とされている(図10参照)。これにより、ディスク弁26の中央部分において、スリット28を挟んだ両側部分(スリット28の周方向間)が自由端とされている。
【0036】
ディスク弁26には、外周部分において基端側へ延び出す筒状保持部30が設けられている。筒状保持部30は、略円筒形状とされており、本実施形態ではディスク弁26と一体形成されている。筒状保持部30の基端面32は、ディスク弁26の基端面よりも基端側に位置している。ディスク弁26には、筒状保持部30に隣接する内周側において基端側へ向けて開口する環状の周溝34が形成されている。なお、周溝34はディスク弁26の成形時に形成されていてもよく、又は、ディスク弁26がコネクタ14に装着されることで形成されるようにしてもよい。
【0037】
また、ディスク弁26の外周部分には、筒状保持部30から更に基端側へ延び出す挟持片36が設けられている。挟持片36は、筒状保持部30の周方向で部分的に設けられている。本実施形態では、一対の挟持片36,36が筒状保持部30の径方向の両側に設けられて、径方向で相互に対向している。挟持片36の周方向長さは、筒状保持部30の1/3周よりも短く、且つ、筒状保持部30の1/10周よりも長いことが望ましい。挟持片36の軸方向の長さ寸法は、特に限定されないが、例えば、筒状保持部30の軸方向の長さ寸法よりも大きくされる。挟持片36の基端面38は、筒状保持部30の基端面32よりも基端側に位置している。
【0038】
ディスク弁26は、図2,3に示すように、コネクタ14に組み付けられて、内部流路24に配置されている。ディスク弁26は、外周面がコネクタ14の内周面に押し当てられて、径方向に圧縮された状態でコネクタ14に組み付けられている。コネクタ14の内周面においてディスク弁26が組み付けられる部分は、軸方向に略ストレートに延びる断面形状とされており、コネクタ14の内周面にディスク弁26が入り込む凹所は形成されていない。これにより、ディスク弁26自体の弾性によって、ディスク弁26のコネクタ14に対する保持力が発揮される。また、ディスク弁26のスリット28は、ディスク弁26が径方向に圧縮されてコネクタ14に組み付けられることによって、確実に遮断された状態とされている。これにより、内部流路24がディスク弁26によって遮断されており、内部流路24は、ディスク弁26よりも先端側の先端領域24aと、ディスク弁26よりも基端側の基端領域24bとに分割されている。
【0039】
筒状保持部30を含むディスク弁26の外周面と、コネクタ14の内周面との径方向間には、図2~4に示すように、軸方向に延びるエア抜き通路40が形成されている。エア抜き通路40は、コネクタ14に設けられた凹溝22の内周開口が、ディスク弁26及び筒状保持部30によって覆われることで構成されている。本実施形態では8つのエア抜き通路40,40,40,40,40,40,40,40が設けられており、2つのエア抜き通路40,40が周方向で一対の挟持片36,36と同じ位置に設けられていると共に、他の6つのエア抜き通路40,40,40,40,40,40が挟持片36,36を周方向に外れた位置に設けられている。8つのエア抜き通路40,40,40,40,40,40,40,40の先端側の開口が、何れも先端領域24aに連通されていると共に、挟持片36,36を周方向に外れて設けられた6つのエア抜き通路40,40,40,40,40,40の基端側の開口が、コネクタ14と押し子ガイド52(後述)の間を通じて基端領域24bに連通されている。なお、押し子ガイド52は、後述するようにコネクタ14に嵌め合わされて組み付けられるが、それらコネクタ14と押し子ガイド52の間は封止されておらず、空気の流通が許容される。エア抜き通路40の通路上及び延長上には、空気の通過を許容し、且つ、血液の通過を制限するフィルタが設けられていてもよい。
【0040】
内部流路24の基端領域24bには、図2,3に示すように、押し子42が設けられている。押し子42は、全体として略円筒形状とされており、軸方向に貫通する内腔を備えている。押し子42の基端には、外周へ突出するフランジ状部46が設けられている。また、押し子42の外周面に段差48が設けられており、段差48の先端側が基端側よりも大径とされていると共に、段差48よりも先端側が先端に向けて小径となるテーパ面50とされている。テーパ面50の最先端の外径寸法は、段差48よりも基端側の外径寸法に比して小さくされている。また、テーパ面50はスリット28より大きい外径を有し、スリット28が開口した際にディスク弁26からテーパ面50に径方向内側の圧力が加わりやすくされている。
【0041】
押し子ガイド52は、図2,3及び図11~14に示すように、軸方向に貫通する内腔54を備えた略円筒形状とされており、例えば硬質の合成樹脂などで形成されている。押し子ガイド52の先端部分は、外周へ突出する先端側突部56が全周に亘って設けられることで、外径寸法が大きくされている。押し子ガイド52の基端部分は、外周へ突出する基端側突部58が設けられることで、外径寸法が大きくされている。
【0042】
基端側突部58は、基端部分が周方向で全周に亘って連続する環状とされていると共に、先端部分が周方向の2箇所において分断されており、基端側突部58の先端部分の周方向間に凹部60が設けられている。凹部60の形成部分における押し子ガイド52の外径寸法は、先端側突部56と基端側突部58との軸方向間における押し子ガイド52の外径寸法と略同じとされている。基端側突部58は、凹部60,60を周方向に外れた部分の先端面62aが、凹部60が形成された部分の先端面62bよりも先端側に位置している。
【0043】
押し子ガイド52の外周面には、突起64が設けられている。突起64は、各凹部60の内周底面において外周へ向けて突出して設けられている。本実施形態の突起64は、略半円形断面で周方向に延びるリブ状とされている。尤も、例えばスポット状や軸方向に延びるリブ状など、別形状の突起を採用することもできる。突起64は、各凹部60の周方向の全長に亘って連続的に延びており、周方向の両端が基端側突部58に周方向でつながっている。
【0044】
また、押し子ガイド52の軸方向の中間部分に位置する基端側突部58の先端側の端部には、更に外周へ突出する位置決め凸部66が設けられている。位置決め凸部66は、コネクタ14に設けられた位置決め凹部20と対応する断面形状を有しており、軸方向両端の外周端がそれぞれ軸方向外側に向けて内周側へ傾斜するテーパ状とされている。位置決め凸部66は、一対の凹部60,60を周方向に外れた位置でそれら凹部60,60の周方向間にそれぞれ設けられている。各位置決め凸部66の周方向長さは、押し子ガイド52の1/8周以上且つ1/3周以下であることが望ましく、好適には、押し子ガイド52の1/4周程度とされる。
【0045】
押し子ガイド52は、基端部分において内周側へ突出する抜止突部68が設けられており、抜止突部68の形成部分において押し子ガイド52の内腔54が部分的に小径とされている。また、押し子ガイド52の内腔54は、軸方向両側の開口部分が何れも軸方向外側に向けて大径となるテーパ状面とされている。
【0046】
押し子ガイド52は、図2,3に示すように、コネクタ14の内周側に設けられている。即ち、押し子ガイド52は、基端側突部58がコネクタ14の基端部分に嵌合されていると共に、位置決め凸部66,66がコネクタ14の位置決め凹部20に差し入れられて嵌合されている。これにより、押し子ガイド52は、コネクタ14に対して軸方向及び径方向で位置決めされた状態で、コネクタ14に組み付けられている。
【0047】
コネクタ14に組み付けられた押し子ガイド52は、基端側突部58よりも先端側が、筒状保持部30の内周へ挿入されている。そして、筒状保持部30がコネクタ14の内周面と押し子ガイド52の外周面との間で、径方向に挟まれて保持されている。これにより、筒状保持部30と一体的に設けられたディスク弁26が、コネクタ14に対して位置決めされた状態で組み付けられている。
【0048】
図4にも示すように、ディスク弁26と一体的に設けられた筒状保持部30が、コネクタ14と押し子ガイド52の間で略全周に亘って挟まれて保持されていることにより、ディスク弁26の保持力が大きく確保されている。本実施形態では、筒状保持部30が、コネクタ14と押し子ガイド52の径方向間で圧縮されて保持されており、より大きな保持力がディスク弁26に及ぼされている。ディスク弁26に近い位置で筒状保持部30が略全周に亘って挟まれて保持されていることにより、スリット28を押し開く外力がディスク弁26に作用しても、筒状保持部30の挟み込みによる保持力が外力の作用点に近い位置で効率的に及ぼされて、ディスク弁26のコネクタ14に対する位置ずれや抜け等が防止される。
【0049】
筒状保持部30の基端面32は、図3に示すように、押し子ガイド52の基端側突部58の先端面62aに対して、軸方向で当接している。それ故、筒状保持部30がコネクタ14と押し子ガイド52の間で挟まれて径方向で圧縮される場合に、筒状保持部30の基端側への伸びが基端側突部58の先端面62aへの当接によって制限される。これにより、筒状保持部30が基端側への伸びによって逃げることなくコネクタ14と押し子ガイド52の間で効率的に保持されることから、ディスク弁26に及ぼされる保持力を有利に得ることができる。
【0050】
また、筒状保持部30から更に基端側へ延び出した挟持片36,36が、押し子ガイド52の凹部60,60に差し入れられて、図2,5,6に示すように、コネクタ14と押し子ガイド52の間で挟まれて保持されている。これにより、筒状保持部30を挟むことによる保持力に加えて、挟持片36,36を挟むことによる補助的な保持力を得ることができる。その結果、コネクタ14やディスク弁26等を大型化することなく、ディスク弁26のコネクタ14に対する安定した保持が実現可能とされている。
【0051】
本実施形態では、図7~10にも示すように、一対の挟持片36,36が径方向で相互に対向して設けられていることから、それら挟持片36,36の周方向の大きさをそれぞれ大きく確保し易く、コネクタ14と押し子ガイド52の間で挟まれる面積を大きく得ることができる。更に、各挟持片36の変形剛性が高められることから、各挟持片36の挟み込みによって発揮される保持力がディスク弁26の保持力として効率的に作用する。
【0052】
挟持片36の周方向長さは、図5,6に示すように、凹部60の周方向長さよりも小さくされている。これにより、挟持片36の周方向外側への伸びがコネクタ14と挟持片36と押し子ガイド52の固定に影響を及ぼす可能性を低減でき、挟持片36を押し子ガイド52に安定して組み付けることができる。なお、挟持片36の周方向長さを凹部60の周方向長さに比して略同じ或いは大きくして、挟持片36を挟むことによりディスク弁26の保持力を強固にすることもできる。
【0053】
挟持片36の基端面38は、図2に示すように、押し子ガイド52の基端側突部58の先端面62bに対して、軸方向で当接している。それ故、挟持片36がコネクタ14と押し子ガイド52の間で挟まれて径方向で圧縮される場合に、挟持片36の基端側への伸びが基端側突部58の先端面62bへの当接によって制限される。これにより、挟持片36が基端側への伸びによって逃げることなくコネクタ14と押し子ガイド52の間で効率的に保持されることから、ディスク弁26に及ぼされる保持力を有利に得ることができる。なお、挟持片36の基端面38を基端側突部58の先端面62bに対して軸方向で離隔させることにより、挟持片36の寸法誤差が許容されるようにしてもよい。
【0054】
挟持片36は、位置決め凹部20よりも基端側まで延びている。これにより、位置決め凸部66と位置決め凹部20の嵌合によるコネクタ14と押し子ガイド52の位置決めを実現しつつ、図6に示すように、位置決め凹部20よりも基端側において挟持片36をコネクタ14と押し子ガイド52の間で挟むことができる。それ故、押し子ガイド52の位置決めが押し子ガイド52の先端付近で行なわれて、押し子ガイド52ががたついた場合にディスク弁26の固定に与える影響を小さくすることができ、ディスク弁26と押し子ガイド52の固定の安定性が向上する。また、挟持片36の挟み込みによる保持力をより大きく設定することができ、ディスク弁26変形時のディスク弁26の脱落リスクが低減される。
【0055】
押し子ガイド52の先端部は、図2,3に示すように、ディスク弁26の周溝34に挿入されている。そして、周溝34の外周側壁部が、コネクタ14と押し子ガイド52の先端側突部56との間でより大きく圧縮される。これにより、ディスク弁26においてスリット28を押し開くための外力が入力される部分により近い位置で、筒状保持部30の挟み込みによる保持力がより強く発揮される。
【0056】
コネクタ14に組み付けられた押し子ガイド52の内腔54には、押し子42の先端部分が挿入されている。押し子42は、テーパ面50の基端において押し子ガイド52の内周面に当接していると共に、先端面がディスク弁26の基端面に当接し、更に段差48が押し子ガイド52の抜止突部68に軸方向で当接している。これらによって、押し子42が内部流路24において所定の向きで位置決めされている。押し子42の基端部分は、押し子ガイド52よりも基端側へ突出している。
【0057】
押し子42は、段差48が押し子ガイド52の抜止突部68に軸方向で係止されることにより、押し子ガイド52に対する基端側への相対変位が制限されている。本実施形態では、押し子42の段差48が押し子ガイド52の抜止突部68に予め当接しており、押し子42の基端側への変位が阻止されている。しかしながら、例えば、段差48が抜止突部68から先端側へ離れた位置に配されており、押し子42の押し子ガイド52に対する基端側への変位が、段差48が抜止突部68に対して軸方向で当接するまで許容されていてもよい。
【0058】
かくの如き構造とされた弁付き針組立体10は、中空針12が図示しない血管に経皮的に穿刺される。中空針12の血管への経皮的な穿刺は、例えば、特開2019-51220号公報に示されているように、鋭利な先端を有する図示しない内針が中空針12に挿通された状態で実施される。そして、中空針12が内針とともに穿刺された後、内針が中空針12から抜去されることにより、中空針12が血管への挿入状態で留置される。
【0059】
中空針12の先端開口部が血管に正しく挿入されると、血液が中空針12を通じて内部流路24の先端領域24aに導入される。先端領域24a内の空気がエア抜き通路40を通じて基端領域24bへ流動可能とされていることから、血液の先端領域24aへの導入が空気ばねによって妨げられるのを防ぐことができる。それ故、中空針12が血管に対して正しく穿刺されたことを、先端領域24aへの血液の導入(逆血)によって確認することができる。コネクタ14は、逆血を確認し易いように、少なくとも先端領域24aの壁部が内部の血液を視認可能な透明或いは半透明であることが望ましい。
【0060】
エア抜き通路40の連通状態を維持するために、ディスク弁26の径方向の圧縮と筒状保持部30の径方向の挟み込みが、エア抜き通路40が遮断されない程度に制限されたとしても、挟持片36,36を十分に強く挟むことでディスク弁26の保持力が確保される。また、エア抜き通路40は、挟持片36,36を周方向で外れた位置にも設けられていることから、挟持片36,36を強く挟み込んだとしても、全てのエア抜き通路40が遮断されることはない。従って、挟持片36,36の締め代をエア抜き通路40の確保とは独立して設定することができて、挟持片36,36の挟み込みによって得られる保持力の大きさを締め代によって調節することもできる。
【0061】
中空針12が図示しない血管に穿刺された状態で、シリンジ或いは輸液ライン等によって構成された外部流路70が、内部流路24に接続される。即ち、外部流路70を構成するシリンジ或いは輸液ライン等は、例えば、コネクタ14の雄ねじ18に螺着されることでコネクタ14に接続されると共に、雄ルアー72がコネクタ14の内腔に挿入されて、雄ルアー72の先端面が押し子42の基端面に押し当てられる。そして、シリンジ或いは輸液ライン等のコネクタ14への接続によって、雄ルアー72が押し子42を先端側へ押し込んで、押し子42の先端がディスク弁26に押し付けられる。その結果、ディスク弁26のスリット28が押し子42によって押し広げられて、内部流路24における先端領域24aと基端領域24bとが開放されたスリット28を通じて連通される。これにより、血管内と外部流路70が弁付き針組立体10の内部流路24を通じて相互に連通されて、外部流路70から血管への輸液や薬液の注入、或いは血管から外部流路70への血液の採取等が実施される。
【0062】
ディスク弁26のスリット28が押し子42によって押し広げられる際に、ディスク弁26に対して押し子42の当接による外力が加えられる。ディスク弁26は、この外力の作用に際して、位置のずれや脱落などが生じない程度の保持力で保持されている必要がある。ここにおいて、ディスク弁26と一体的に設けられた筒状保持部30と挟持片36,36が、コネクタ14と押し子ガイド52の間で挟まれることにより、筒状保持部30の挟み込みによる保持力に加えて、挟持片36,36の挟み込みによる補助的な保持力も発揮される。それ故、ディスク弁26がコネクタ14に対して十分に位置決めされた状態に保持されており、例えば、ディスク弁26のスリット28が押し子42による押し広げとその解除とを繰り返されたとしても、ディスク弁26がコネクタ14に対する位置のずれや抜けなどを生じ難い。
【0063】
例えば、挟持片36の形状、サイズ、配置、数などを、必要とされるディスク弁26の保持力に応じて適宜に設定することにより、ディスク弁26に作用する保持力を簡単に調節することが可能である。例えば、挟持片36は、2つが径方向で対向して設けられる態様に限定されず、1つ或いは3つ以上の複数が設けられていてもよい。また、一対を含む複数の挟持片36が設けられる場合には、それら挟持片36は、形状やサイズが相互に異なっていてもよい。
【0064】
なお、輸液、投薬、採血等の終了時または中断時において、コネクタ14からシリンジや輸液ラインなどの雄ルアー72が抜き取られることにより、押し子42がディスク弁26の弾性によって基端側へ自動的に移動するのが好ましい。これによれば、雄ルアー72の抜去によってディスク弁26のスリット28が閉鎖されることから、スリット28を通じた血液の流出が速やかに防止される。
【0065】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、筒状体は、前記実施形態に示す押し子ガイド52のように全体が一体とされていてもよいが、例えば、2つ以上の部品が組み合わされて構成されていてもよい。具体的には、例えば、筒状体の内周部分と外周部分を別部品で構成したり、筒状体の先端部分と基端部分を別部品で構成することもできる。
【0066】
筒状体は、押し子の移動を案内するガイド機能を備えていなくてもよい。例えば、弾性弁体をコネクタに対して保持させる部品と、押し子を軸方向に案内する部品とが、相互に独立して別々に設けられており、弾性弁体をコネクタに対して組み付ける部品によって筒状体を構成することもできる。より具体的には、筒状保持部及び挟持片をコネクタとの間で挟む筒状体と、コネクタの内周面に固定されて押し子に外挿される筒状のガイド部材とが、軸方向で相互に離れて独立して設けられ得る。
【0067】
前記実施形態では、筒状体としての押し子ガイド52に一体形成された位置決め凸部66と、コネクタ14の位置決め凹部20の内面との係止によって、押し子ガイド52がコネクタ14に対して軸方向で位置決めされていたが、例えば、位置決め凸部66と位置決め凹部20は必須ではない。例えば、筒状体の基端側に、筒状体とは別体のリング部材がコネクタに固定されており、筒状体がリング部材に当接することでコネクタに対して軸方向で位置決めされるようにしてもよい。更に、例えば、コネクタの内周面に突出する係止突部がコネクタに一体的に設けられて、筒状体の基端面が係止突部に軸方向で係止されることによっても、筒状体がコネクタに対して軸方向で位置決めされ得る。また、位置決め凸部66を挟持片36と対向させて、位置決め凸部66と位置決め凹部20で挟持片36を挟み込むこともできる。即ち、位置決め凸部66と周方向で同じ位置に挟持片36を設けることもできる。
【0068】
前記実施形態では、押し子ガイド52の外周面に突起64が設けられていたが、突起は、コネクタ14の内周面に設けられていてもよい。また、押し子ガイド52の外周面とコネクタ14の内周面との両方にそれぞれ突起を設けることもできる。
【0069】
コネクタ14は、複数の部品を組み合わせて構成されていてもよい。具体的には、例えば、中空針12が固着される硬質の先端部分と、ディスク弁26、押し子42、押し子ガイド52を収容する硬質の基端部分とが、柔軟なチューブによって連結された構造とされ得る。これによれば、弁付き針組立体10が血管への穿刺状態で留置される場合に、先端部分をテープなどで患者の皮膚に固定しつつ、チューブを曲げることで基端部分の向きを変えることができて、基端部分への外部流路70の接続を容易にすることができる。
【0070】
中空針12の先端が非鋭利とされ、鋭利な先端を有する内針が中空針12に内挿されて、外針としての中空針12及び内針からなる二重針構造とされてもよいし、中空針12の先端を鋭利にし、中空針12のみからなる単針構造としてもよい。なお、内針が存在しない中空針12のみからなる単針構造の場合、中空針12とコネクタ14の間に長い可撓性のチューブを設けて、公知の透析用留置針構造としてもよい。コネクタ14は、二重針構造の場合、内部に内針が内挿されるようであってもよいし、中空針12とコネクタ14の間に分岐部を設けて、コネクタ14内に内針が位置しないようにしてもよい。
【0071】
前記実施形態のエア抜き通路40は、コネクタ14の内周面に設けられた凹溝22によって形成されていたが、例えば、ディスク弁26及び筒状保持部30の外周面に開口して軸方向に延びる凹溝が、コネクタ14で覆われることによっても形成され得る。
【0072】
前記実施形態では、挟持片36の厚さ寸法が筒状保持部30の厚さ寸法と略同じとされており、挟持片36が筒状保持部30の周方向で部分的に設けられていたが、挟持片36の厚さ寸法は、筒状保持部30の厚さ寸法と同じである必要はない。例えば、挟持片36の厚さ寸法が筒状保持部30の厚さ寸法よりも小さくされて、挟持片36が筒状保持部30の厚さ方向で部分的に設けられていてもよく、挟持片36の厚さ寸法を適宜に設定することでディスク弁26に及ぼされる保持力の調節を図ることも可能である。なお、複数の挟持片36が設けられる場合には、各挟持片36の厚さ寸法は相互に異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 弁付き針組立体
12 中空針
14 コネクタ
16 テーパ状外周面
18 雄ねじ
20 位置決め凹部
22 凹溝
24 内部流路
24a 先端領域
24b 基端領域
26 ディスク弁(弾性弁体)
28 スリット
30 筒状保持部
32 基端面
34 周溝
36 挟持片
38 基端面
40 エア抜き通路
42 押し子
46 フランジ状部
48 段差
50 テーパ面
52 押し子ガイド(筒状体)
54 内腔
56 先端側突部
58 基端側突部
60 凹部
62a 先端面
62b 先端面
64 突起
66 位置決め凸部
68 抜止突部
70 外部流路
72 雄ルアー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14