(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体、1,4-ジシアノシクロヘキサン、及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/43 20060101AFI20231227BHJP
C07C 51/36 20060101ALI20231227BHJP
C07C 61/09 20060101ALI20231227BHJP
C07C 253/22 20060101ALI20231227BHJP
C07C 255/46 20060101ALI20231227BHJP
C07C 209/48 20060101ALI20231227BHJP
C07C 211/18 20060101ALI20231227BHJP
C07C 231/02 20060101ALI20231227BHJP
C07C 235/82 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
C07C51/43
C07C51/36
C07C61/09
C07C253/22
C07C255/46
C07C209/48
C07C211/18
C07C231/02
C07C235/82
(21)【出願番号】P 2020513443
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2019015726
(87)【国際公開番号】W WO2019198779
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018076270
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】飯田 昭文
(72)【発明者】
【氏名】山添 葵
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105016944(CN,A)
【文献】特開平08-157419(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080980(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/046782(WO,A1)
【文献】特開2011-006382(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101591237(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液を加熱濃縮することにより、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を結晶として析出させる工程を有する、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の製造方法であって、
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体が1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩、及び/又は4-カルボキサミドシクロヘキサン-1-カルボン酸である、製造方法。
【請求項2】
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量が、前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.01~2.00である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程において、加熱濃縮時の温度が30~200℃である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程において、加熱濃縮時の圧力が0.003~2MPaである、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体のトランス体の含有量が70.0~99.9質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液を、テレフタル酸のアンモニア水溶液を核水添することにより得る、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法により得られた1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体をアンモニアと接触させてシアノ化反応させることにより1,4-ジシアノシクロヘキサンを得る工程を有する、1,4-ジシアノシクロヘキサンの製造方法。
【請求項8】
請求項7
に記載の方法によって1,4-ジシアノシクロヘキサンを得て、次いで、得られた1,4-ジシアノシクロヘキサンを水素と接触させて水素添加反応させることにより、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得る工程を有する、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体、1,4-ジシアノシクロヘキサン、及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、エポキシ硬化剤、ポリアミド、ポリウレタン等の原料として使用される工業的に重要な化合物である。1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、シクロヘキサン環に由来するシス体とトランス体の2種類の異性体が存在する。1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを使用したポリマーは、シス体とトランス体の異性体比により物性が大きく変化することが知られている。
【0003】
例えば、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導される1,4-ビスイソシアナトメチルシクロヘキサンを用いたポリウレタンは、トランス体の含有率が高いほど各種用途に応じた要求物性が向上することが知られている(特許文献1)。
【0004】
1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法としてはいくつか挙げられるが、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸に対してアミド化及び脱水反応を行い1,4-ジシアノシクロヘキサンとし、1,4-ジシアノシクロヘキサンに対してニトリル水添反応を行うことで1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを製造する方法が知られている。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸から1,4-ジシアノシクロヘキサンを製造する際に、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸やその誘導体の結晶が原料として用いられることが多い。
【0005】
1,4-ジシアノシクロヘキサンの原料となる結晶の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸やその誘導体の製造方法には以下のような方法が知られている。特許文献2及び特許文献3には、テレフタル酸のアルカリ金属塩に対して核水添し、得られた反応液を触媒と分離後、酸を添加して1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を結晶として回収する方法が開示されている。特許文献4には、テレフタル酸に対して核水添を実施し、熱ろ過で触媒を分離後、精製後に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を回収する方法が開示されている。特許文献5には、テレフタル酸に対して核水添を実施し、核水添後にアルカリ金属塩としてから触媒と分離し、酸を添加し1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を回収する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2009/051114号
【文献】特公昭50-10581号公報
【文献】特表平7-507041号公報
【文献】特開2002-69032号公報
【文献】特許第5448987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に記載の方法では、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアルカリ金属塩を中和し、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を結晶として回収する時に塩が副生する。このため、副生した塩を含む廃液の処理、及び結晶中から塩を除去するための結晶の水洗等の工程が必要となる。特許文献4に記載の方法では、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と触媒を熱ろ過で分離している。このような方法では、得られる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の純度が低いため、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の純度を高めるための精製工程が必要である。特許文献5に記載の方法では、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸と触媒を分離する時に一旦アルカリ金属塩とし、その後1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を結晶として回収する際に中和している。具体的には、この文献の実施例に記載の方法では1,4-シクロヘキサンジカルボン酸100質量%に対して85質量%のNaClが生成する。このため、この方法もまた、特許文献3に記載の方法と同様に副生した塩を含む廃液の処理、結晶中から塩を除去するための結晶の水洗等の工程が必要となる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、新規な1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の製造方法であって、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を結晶として回収する際の塩の生成を抑制する1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の製造方法を提供することにある。更に本発明は、その製造方法によって得られる1,4-ジシアノシクロヘキサンの製造方法、及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液を加熱濃縮することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
(1)
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液を加熱濃縮することにより、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を結晶として析出させる工程を有する、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の製造方法。
(2)
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体が1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩、及び/又は4-カルボキサミドシクロヘキサン-1-カルボン酸である、(1)の製造方法。
(3)
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量が、前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.01~2.00である、(2)の製造方法。
(4)
前記工程において、加熱濃縮時の温度が30~200℃である、(1)~(3)のいずれかの製造方法。
(5)
前記工程において、加熱濃縮時の圧力が0.003~2MPaである、(1)~(4)のいずれかの製造方法。
(6)
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体のトランス体の含有量が70.0~99.9質量%である、(1)~(5)のいずれかの製造方法。
(7)
前記1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液を、テレフタル酸のアンモニア水溶液を核水添することにより得る、(1)~(6)のいずれかの製造方法。
(8)
(1)~(7)のいずれかの製造方法により得られた1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体をアンモニアと接触させてシアノ化反応させることにより1,4-ジシアノシクロヘキサンを得る工程を有する、1,4-ジシアノシクロヘキサンの製造方法。
(9)
(8)の方法により得られた1,4-ジシアノシクロヘキサンを水素と接触させて水素添加反応させることにより、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得る工程を有する、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、新規な1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の製造方法であって、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を結晶として回収する際の塩の生成を抑制する1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の製造方法を提供可能である。更に本発明によれば、その製造方法によって得られる1,4-ジシアノシクロヘキサンの製造方法、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法を提供可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0013】
本実施形態の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の製造方法(以下、「1,4-CHDA製造方法」ともいう。)は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液を加熱濃縮することにより、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を結晶として析出させる工程(以下、「加熱濃縮析出工程」ともいう。)を有する。1,4-ジシアノシクロヘキサンの原料として用いられる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を結晶として回収するために、通常、特許文献2、3及び5に記載の方法のように、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアルカリ金属塩を酸で中和する方法が用いられることが多い。しかしながら、この方法では、副生した塩を含む廃液の処理、結晶中から塩を除去するための結晶の水洗等の工程が必要となる。これに対し、本実施形態の製造方法では、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液を加熱濃縮することにより、1,4-ジシアノシクロヘキサンの原料として用いられる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を結晶として析出させる。これにより、特許文献2、3及び5に記載の方法のように、結晶として回収する際の塩の生成を抑制でき、例えば、更に、塩を含む廃液の処理等の工程が不要であるため、生産効率に優れる。一方、1,4-ジシアノシクロヘキサンの原料として用いられる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を結晶として回収するために、特許文献4に記載のように、テレフタル酸に対して核水添を実施し、熱ろ過で触媒を分離することも考えられる。しかしながら、このような方法では、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の純度が低いため、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の純度を高めるための精製工程が必要である。これに対し、本実施形態の製造方法では、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液を加熱濃縮することにより、1,4-ジシアノシクロヘキサンの原料として用いられる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を高い純度で結晶として析出できる。このため、本実施形態の製造方法では、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の純度を高めるための精製工程が不要であるため、生産効率に優れる。
【0014】
加熱濃縮析出工程では、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体のアンモニア水溶液を加熱することにより、水の少なくとも一部が除去される。また、加熱濃縮析出工程における加熱濃縮前のアンモニア水溶液中のアンモニアの濃度は、アンモニア水溶液の全体量に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0015】
加熱濃縮析出工程において、加熱濃縮時の温度(加熱温度)は、30~200℃であることが好ましい。加熱温度が上記範囲内であることにより、アンモニア水溶液から水を揮発により有効に除去して結晶としての1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を生成でき、その結果、後述するシアノ化工程での1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率が一層高くなる。同様の観点から、加熱温度は、50~200℃であることがより好ましく、100~200℃であることが更に好ましい。一方、加熱温度は、結晶としての1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体のトランス体の含有量を高める観点から、120~200℃であることが好ましく、140~200℃であることがより好ましい。
【0016】
本実施形態において、加熱濃縮析出工程において生成する1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体には、その一部に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が含まれていてもよく、含まれてなくてもよい。
【0017】
加熱濃縮析出工程において、加熱濃縮時の圧力は、0.003~2MPaであることが好ましい。加熱濃縮時の圧力が上記範囲内であることにより、アンモニア水溶液から水を揮発により有効に除去して結晶としての1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を生成でき、後述するシアノ化工程での1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率が一層高くなる。また、圧力条件は、常圧条件であってもよく、減圧条件又は加圧条件であってもよい。ただし、結晶としての1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体のトランス体の含有量を高める観点から、加圧条件であることが好ましい。
【0018】
加熱濃縮析出工程において、加熱濃縮する方法は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液から水を揮発により除去できる方法であれば、特に限定されない。加熱濃縮する方法は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液から水を揮発により、積極的に系外へ除去する観点から開放系を利用する方法が好ましい。
【0019】
加熱濃縮析出工程において、加熱濃縮物から結晶としての1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を回収する方法としては、例えば、加熱濃縮物をろ過することにより結晶を回収する方法が挙げられる。
【0020】
ろ過後の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中の母液の含液率は、操作性の観点から、5~35重量%が好ましく、10~25重量%であることがより好ましい。ろ過後の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体は母液を含液した状態で次工程に供することもできるし、一旦結晶を取り出し、乾燥した後に次工程に供することもできる。
【0021】
ろ過後の母液中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の濃度は、アンモニア100モル%に対して、50~100モル%が好ましく、70~100モル%であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態の製造方法において、加熱濃縮析出工程の回数は、1回であってもよく、複数回であってもよい。本実施形態の製造方法では、1回目の加熱濃縮析出工程により結晶を回収した後のアンモニア水溶液を、更に結晶を回収するために2回目以降の加熱濃縮析出工程に繰り返し用いることができる。本実施形態の製造方法は、加熱濃縮析出工程の回数が複数回であることにより、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体を漏れなく回収できるため、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の収率に一層優れる傾向にある。
【0023】
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体は、例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩、及び4-カルボキサミドシクロヘキサン-1-カルボン酸からなる群より選択される1種以上が挙げられ、後述するシアノ化工程での1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率が一層高くなる観点から、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩であることが好ましい。一方、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体としては、1,4-シクロヘキサンジカルボキサミドも挙げられるが、1,4-シクロヘキサンジカルボキサミドは融点が高く、反応時に溶解し難いことから、反応性の低下につながる。その結果、高沸を形成し易く、収率が悪化する傾向にある。このため、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中の1,4-シクロヘキサンジカルボキサミドの含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。一方、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩、及び4-カルボキサミドシクロヘキサン-1-カルボン酸の合計の含有量は、収率及び反応性の観点から、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0024】
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、後述するシアノ化工程での1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率が一層高くなる観点から、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、前者/後者(モル比)で、0.01~2.00であることが好ましく、1.90以下(例えば、0.10~1.90)であることがより好ましく、1.85以下(例えば、0.10~1.85)であることが更に好ましい。
【0025】
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体のトランス体の含有量は、70.0~99.9質量%であることが好ましく、75.0~99.0質量%であることがより好ましく、78.0~98.0質量%であることが更に好ましく、80.0~96.0質量%であることが特に好ましい。
【0026】
加熱濃縮析出工程において原料として用いられる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニア水溶液は、テレフタル酸のアンモニア水溶液を核水添することにより得ることが好ましい。本実施形態の1,4-CHDA製造方法は、アンモニア水溶液中のテレフタル酸に対する水素添加反応(以下、単に「核水添反応」ともいう。)によって、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を得る工程(以下、単に「核水添工程」ともいう。)を有することが好ましい。1,4-CHDA製造方法が核水添工程を有することにより、その工程を経た反応液に含まれるアンモニア水溶液の少なくとも一部を、加熱濃縮析出工程におけるアンモニア水溶液として用いることができる。そのため、アンモニアの有効活用も可能になる。
【0027】
(核水添工程)
核水添工程は懸濁床(回分式、半回分式)、固定床(連続式)のいずれの反応方式を採用してもよい。懸濁床では、例えば、まず、反応器内に触媒と水とを仕込んだ後に、その反応器内に水素ガスを所定の圧力になるまで導入し、その圧力を維持して加熱しながら懸濁液を撹拌して、触媒を還元することで活性化する。触媒としては、例えば、通常の核水添反応に用いられる触媒を採用することができ、具体的には、Ru、Pd、Pt及びRhのような1種又は2種以上の金属触媒、好ましくは貴金属触媒を用いることができる。触媒は、上記の活性成分としての金属触媒を、カーボン、Al2O3、SiO2、SiO2-Al2O3、TiO2、及びZrO2のような通常用いられる1種又は2種以上の担体上に担持したものであってもよい。担体を用いた場合の活性成分である金属触媒の担持量は、担体100質量%に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0028】
また、触媒の活性化における系内の圧力は常圧(気相部を水素置換)であっても、加圧であってもよい。加圧する場合の系内の圧力は0.1~8MPaであると好ましく、このような圧力を維持するよう適宜水素ガスを反応器内に導入してもよい。さらに、活性化温度は50~250℃であると好ましい。触媒の活性化時の条件が上記範囲にあることにより、更に有効かつ確実に触媒を活性化することができる。また、撹拌時間は触媒を活性化させるのに十分な時間であればよい。
【0029】
次に、反応器内を冷却し、さらに系内に残存する水素ガスを系外に排出した後、反応器内に、テレフタル酸及びアンモニア水溶液を仕込み、更に水素ガスを所定の圧力になるまで導入する。このとき、テレフタル酸の仕込み量は、反応液全体に対して2~20質量%であると好ましい。また、アンモニア水溶液の仕込み量は、テレフタル酸100モル%に対して、アンモニアが200~400モル%となるような量であると好ましい。触媒の使用量に制限はなく、担持されている金属触媒の含有量と反応に用いるテレフタル酸の量とを勘案し、目的の反応時間になるよう適宜決めればよい。各原料等を上記の範囲内の量となるように用いることで、得られる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の収率及び選択率を高めることができる。
【0030】
次いで、反応器内を所定の温度まで加熱し、核水添反応を進行させる。このときの反応温度は、40~150℃であると好ましく、反応圧力は、水素分圧で0.5~15MPaであると好ましい。なお、反応時間は、核水添反応が十分に進行する時間であればよい。反応条件を上述の範囲内に調整することで、得られる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の収率及び選択率を高めることができる。また、反応圧力を上記の範囲内に維持するよう、適宜水素ガスを反応器内に導入してもよい。
【0031】
固定床では、例えば、まず、反応器に触媒を充填する。反応器としては、液体反応液が触媒の上を通過して気体、液体、固体物質移動状態を与えるような固定床として反応器が機能する限り、特に限定されない。その反応器内に水素ガスを流通し、加熱して、触媒を還元することで活性化する。触媒としては、例えば、通常の核水添反応に用いられる触媒を採用することができ、具体的には、Ru、Pd、Pt及びRhのような1種又は2種以上の金属触媒、好ましくは貴金属触媒を用いることができる。触媒は、上記の活性成分としての金属触媒を、カーボン、Al2O3、SiO2、SiO2-Al2O3、TiO2、及びZrO2のような通常用いられる1種又は2種以上の担体上に担持したものであってもよい。担体を用いた場合の活性成分である金属触媒の担持量は、担体100質量%に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0032】
また、触媒の活性化における系内の圧力は常圧であっても、加圧であってもよい。加圧する場合の系内の圧力は0.1~8MPaであると好ましく、このような圧力を維持するよう適宜水素ガスを反応管内に導入してもよい。さらに、活性化温度は50~300℃であると好ましい。触媒の活性化時の条件が上記範囲にあることにより、更に有効かつ確実に触媒を活性化することができる。また、加熱時間は触媒を活性化させるのに十分な時間であればよい。
【0033】
次に、反応器を適宜、冷却又は加熱して反応温度とし、水素ガスを所定の圧力になるまで導入する。水素ガスは、その後、所定流量で反応器内に導入される。反応器内の圧力は常圧であっても、加圧であってもよい。加圧する場合の系内の圧力は0.5~15MPaであると好ましく、反応温度は、40~150℃であると好ましい。水素の流量は単位時間に触媒と接触するテレフタル酸100モル%に対して、水素が300~1000モル%となるような量であると好ましく、300~600モル%となるような量であるとより好ましい。
【0034】
次いで、テレフタル酸のアンモニア水溶液を調合し、ポンプを用いて反応器内に流通させる。アンモニア水溶液中のテレフタル酸の濃度は2~20質量%であると好ましい。また、アンモニア水溶液の仕込み量は、テレフタル酸100モル%に対して、アンモニアが200~400モル%となるような量であると好ましい。触媒の使用量に制限はなく、担持されている金属触媒の含有量と反応に用いるテレフタル酸の量とを勘案し、目的の転化率になるよう適宜決めればよい。また、反応時間は、核水添反応が十分に進行する時間であればよい。各反応条件を上記の範囲内に調整することで、得られる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の収率及び選択率を高めることができる傾向にある。
【0035】
上述のようにして1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を製造した場合、得られた反応液は、アンモニア水溶液と、生成した1,4-シクロヘキサンジカルボン酸とを含む。
【0036】
本実施形態の1,4-ジシアノシクロヘキサンの製造方法は、本実施形態の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体の製造方法により得られた1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体をアンモニアと接触させてシアノ化反応することにより1,4-ジシアノシクロヘキサンを得る工程(以下、単に「シアノ化工程」ともいう。)を有するものである。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体をシアノ化工程に用いることにより、例えばアンモニアガスを系内に導入することのみによってシアノ化させる場合と対比して、1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率を高めることができる。その要因は、これに限定されないが、上記加熱濃縮析出工程において加熱することにより、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中に中間体が生成し、その中間体がシアノ化反応に寄与するためと考えられる。
【0037】
シアノ化工程においては、まず、反応器内に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体と、必要に応じて溶媒、必要に応じて水と、触媒とを仕込み、系内の圧力が所定の圧力になるまで不活性ガスを導入する。その後、反応器内を所定の温度になるまで加熱して、反応器内の圧力が一定の範囲内を維持するよう、適宜不活性ガスを反応器内に導入しつつ、かつ反応器内を撹拌しながら、シアノ化反応を進行させる。
【0038】
シアノ化工程においては無溶媒、もしくは溶媒を用いてもよく、好ましくは沸点が600℃以下の溶媒、より好ましくは沸点が500℃以下の溶媒、更に好ましくは沸点が420℃以下の溶媒を用いる。また、シアノ化反応の反応温度以上である溶媒の沸点は、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは270℃以上であり、更に好ましくは300℃以上である。沸点が300℃以上であることにより、シアノ化反応が円滑に進行し、且つ、ジシアノシクロヘキサンの三量体といったような不純物の生成を抑えることができる傾向にある。シアノ化工程において用いられる溶媒としては、ヘプタデカン、ノナデカン、ドコサン等の脂肪族アルカン;ヘプタデセン、ノナデセン、ドコセン等の脂肪族アルケン;ヘプタデシン、ノナデシン、ドコシン等の脂肪族アルキン;ウンデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン等のアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン及びアルキルナフタレン等のアルキル置換芳香族;2,5-ジクロロ安息香酸、テトラクロロフタル酸無水物等の酸または酸無水物;ウンデカンアミド、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミド化合物;テトラデカンニトリル、ヘキサデカンニトリル、2-ナフチルアセトニトリル、ステアロニトリル、1,4-ジシアノシクロヘキサン等のニトリル化合物;p-クロロジフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等のリン化合物;1,2-ジフェニルエチルアミン、トリオクチルアミン等のアミン;2,2’-ビフェノール、トリフェニルメタノール等の水酸化物;安息香酸ベンジル、フタル酸ジオクチル等のエステル;4-ジブロモフェニルエーテル等のエーテル;1,2,4,5-テトラクロロ-3-ニトロベンゼン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン等のハロゲン化ベンゼン;2-フェニルアセトフェノン、アントラキノン等のケトン並びにトリフェニルメタン;等が挙げられる。これらのうち、溶媒は、アルキルナフタレン、トリフェニルメタン、及びジシアノシクロヘキサンからなる群より選ばれる1種以上がシアノ化反応の進行を妨げ難いという観点から好ましい。
【0039】
触媒としては、通常のシアノ化反応に用いられる触媒を採用することもでき、具体的には、シリカゲル、アルミナ、シリカアルミナ、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化マンガン、酸化タングステン、五酸化バナジウム、五酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化スカンジウム等の金属酸化物であり、これらは単体でも複合酸化物でも担体に担持されたものでも良い。担持成分としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、スズ、レニウム、マンガン、モリブデン、タングステン、バナジウム、鉄、ニッケル、亜鉛、クロム、ホウ酸、塩酸、リン酸等が挙げられる。
【0040】
上記の活性成分としての金属触媒を、カーボン、ハイドロタルサイト、MgO、Al2O3、SiO2、SiO2-Al2O3、TiO2、及びZrO2のような通常用いられる1種又は2種以上の担体上に担持した触媒を用いても良い。担体を用いた場合の活性成分である金属触媒の担持量は、担体100質量%に対して、0.1~10質量%であると好ましい。
【0041】
また、触媒としては、過レニウム酸や酸化レニウム等のレニウム化合物、酸化ジブチルスズ等の有機スズ化合物、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)等のルテニウム化合物、及び酸化コバルト等も挙げられる。
【0042】
これらの中でも、触媒は、シアノ化反応をより有効かつ確実に進行させる観点から、酸化亜鉛、酸化スズ、又は、酸化鉄を含む触媒が好ましい。触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。さらに、触媒の使用量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体100質量%に対して、好ましくは0.05~20質量%である。触媒を上記の範囲内の量とすることにより、得られる1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率を高めることができる傾向にある。
【0043】
また、反応器内にアンモニアガスを適宜導入してもよい。その流量は反応のスケール等により適宜調整すればよく、通常1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体1モルに対して1時間あたり0.1~5倍モルであり、好ましくは1時間あたり0.3~4倍モルであり、より好ましくは1時間あたり0.5~3倍モルである。アンモニアガスの使用量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体100モル%に対して、200~1000モル%であると好ましい。これにより、得られる1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率及び選択率を高めることができる傾向にある。
【0044】
本実施形態の製造方法における反応温度は、シアノ化反応が進行する温度であれば特に制限されず、好ましくは270~400℃であり、より好ましくは280℃~380℃であり、さらに好ましくは290℃~350℃である。
【0045】
本実施形態の製造方法における反応圧力は、陰圧であっても常圧であっても陽圧であってもよい。
【0046】
反応時間は、シアノ化反応が十分に進行する時間であればよい。各原料の濃度や反応条件を上述の範囲内に調整することで、1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率を高めることができる傾向にある。
【0047】
このようにして得られた1,4-ジシアノシクロヘキサンを含む反応液を、必要に応じて蒸留することにより、1,4-ジシアノシクロヘキサンを回収してもよい(以下、この工程を「蒸留工程」という。)。蒸留は、例えば、蒸留器の系内の圧力が3.0kPA~4.0kPA、温度が180~230℃になるよう蒸留器を底部から加熱すると共に頂部で冷却をすることで、器内において気液接触させることで行われる。これにより、蒸留器の頂部から1,4-ジシアノシクロヘキサンを選択的に抜き出して回収することができる。
【0048】
本実施形態の1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造方法は、上述のようにして得られた1,4-ジシアノシクロヘキサンを水素と接触させて水素添加反応(以下、「ニトリル水添反応」ともいう。)させることにより、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを得る工程(以下、単に「ニトリル水添工程」ともいう。)を有するものである。
【0049】
ニトリル水添工程においては、まず、反応器内に1,4-ジシアノシクロヘキサンと、溶媒と、触媒とを仕込み、系内の圧力が所定の圧力になるまで水素ガスを導入する。その後、反応器内を所定の温度になるまで加熱して、反応器内の圧力が一定の範囲内を維持するよう、適宜水素ガスを反応器内に導入しつつ、ニトリル水添反応を進行させる。
【0050】
溶媒としては、通常のニトリル水添反応に用いられる溶媒を採用することもでき、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、及びtert-ブタノール等のアルコール、メタキシレン、メシチレン、及びプソイドキュメンのような芳香族炭化水素、液体アンモニア、及びアンモニア水が挙げられる。溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、触媒としては、通常のニトリル水添反応に用いられる触媒を採用することもでき、具体的には、Ni及び/又はCoを含有する触媒を用いることができる。一般には、Ni及び/又はCoを、Al2O3、SiO2、けい藻土、SiO2-Al2O3、及びZrO2に沈殿法で担持した触媒、ラネーニッケル、あるいはラネーコバルトが触媒として好適に用いられる。これらの中では、ニトリル水添反応をより有効かつ確実に進行させる観点から、ラネーコバルト触媒及びラネーニッケル触媒が好ましい。触媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。さらに、触媒の使用量は、1,4-ジシアノシクロヘキサン100質量%に対して、0.1~150質量%であると好ましく、0.1~20質量%であるとより好ましく、0.5~15質量%であるとさらに好ましい。触媒を上記の範囲内の量となるように用いることで、得られる1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの収率及び選択率を高めることができる傾向にある。
【0051】
ニトリル水添工程における、1,4-ジシアノシクロヘキサンの濃度は、反応効率の観点から、反応液の全体量に対して、1~50質量%であると好ましく、2~40質量%であるとより好ましい。また、ニトリル水添工程における反応温度は、40~150℃であると好ましく、反応圧力は、水素分圧で0.5~15MPaであると好ましい。なお、反応時間は、ニトリル水添反応が十分に進行する時間であればよい。反応条件を上述の範囲内に調整することで、得られる1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの収率及び選択率を高めることができる傾向にある。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(核水添工程)
【0054】
(合成例1-1)
内径17mmφ及び長さ320mmを有するSUS316製の反応管に、事前に250℃で2時間気相水素還元を実施した触媒である2%Ru/C(エヌ・イー ケムキャット製)12.63gを充填した。テレフタル酸8質量%アンモニア水溶液(アンモニア/テレフタル酸=2.3mol比)を、15~27g/時間、圧力3~9MPaG、水素0.9~1.1L/時間の条件で核水添反応を実施した。反応開始から60時間後(90℃、7MPaG、原料流量15.4g/時間、水素0.9L/時間)の段階でテレフタル酸の転化率は100%となり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の収率は99.9%となった。反応開始から1351時間後(75℃、5MPG、原料流量26.6g/時間、水素1.1L/時間)の段階でテレフタル酸の転化率100%、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の収率99.9%となった。反応中、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のtrans体の含有量は20~24%で推移した。
反応液はHPLC(島津製作所製 製品名「Prominence」、カラム:ショウデックス製型式名「KC-811」、条件:溶離液:リン酸0.1質量%水溶液、流速0.7mL/min、カラム温度50℃、フォトダイオードアレイ検出器)により分析した。
【0055】
(加熱濃縮析出工程)
(合成例2-1)
攪拌羽、熱電対、冷却器、及び受器を有する300mlの4口フラスコ(フラスコ)内に東京化成株式会社製の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸16.11g、28%アンモニア水11.38g、及び水172.90gを仕込んだ。300rpmで攪拌しながら、オイルバスにより、フラスコ内を常圧にて150℃に加熱した。フラスコ内の液温が105℃となるときから留出が始まり、留出量が170.7gとなった段階で加熱を停止し、反応液を冷却した。冷却後、反応液を濾過し、結晶を回収した。得られた結晶を真空乾燥後に元素分析を行うと、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で1.14であった。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は加熱濃縮前後で変化は見られなかった。
【0056】
(合成例2-2)
攪拌羽、熱電対、冷却器、受器、及び減圧装置を有する300mlの4口フラスコ(フラスコ)内に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸16.11g、28%アンモニア水11.38g、及び水172.90gを仕込んだ。300rpmで攪拌しながら、オイルバスにより、フラスコ内を減圧(20kPa)にて90℃に加熱した。フラスコ内の液温が65℃となるとき留出が始まり、留出量が168.7gとなった段階で加熱を停止し、反応液を冷却した。冷却後、反応液を濾過し、結晶を回収した。得られた結晶を真空乾燥後に元素分析を行うと、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で1.61であった。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は加熱濃縮前後で変化は見られなかった。
【0057】
(合成例2-3)
攪拌羽、熱電対、冷却器、受器、及び減圧装置を有する300mlの4口フラスコ(フラスコ)内に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸16.11g、28%アンモニア水11.38g、及び水172.90gを仕込んだ。300rpmで攪拌しながら、オイルバスにより、フラスコ内を減圧(4.5kPa)にて70℃に加熱した。液温35℃から留出が始まり、留出量が159.2gとなった段階で加熱を停止し、反応液を冷却した。冷却後、反応液を濾過し、結晶を回収した。得られた結晶を真空乾燥後に元素分析を行うと、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で1.81であった。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は加熱濃縮前後で変化は見られなかった。
【0058】
(合成例2-4)
攪拌羽、熱電対、圧力計、冷却器、及び受器を有する300mlのSUS316製の耐圧容器内に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸16.12g、28%アンモニア水12.55g、及び水171.94gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が140℃に到達するまで昇温した。140℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。140℃到達後の内圧は0.41MPaGであり、留出中の内圧は0.26MPaGであった。留出量が137.05gになった段階で加熱を停止し、反応液を冷却した。冷却後、反応液を濾過し、結晶を回収した。得られた1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体は0.89gとなり、trans体の含有量は91.8%となった。
【0059】
(合成例2-5)
攪拌羽、熱電対、圧力計、冷却器、及び受器を有する300mlのSUS316製の耐圧容器内に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸16.12g、28%アンモニア水12.55g、及び水171.94gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が160℃に到達するまで昇温した。160℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。160℃到達後の内圧は0.57MPaGであり、留出中の内圧は0.47MPaGであった。留出量が131.21gになった段階で加熱を停止し、反応液を冷却した。冷却後、反応液を濾過し、結晶を回収した。得られた1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体は1.55gとなり、trans体の含有量は90.9%となった。
【0060】
(合成例2-6)
攪拌羽、熱電対、圧力計、冷却器、及び受器を有する300mlのSUS316製の耐圧容器内に1,4-シクロヘキサンジカルボン酸16.12g、28%アンモニア水12.55g、及び水171.94gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が200℃に到達するまで昇温した。200℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。200℃到達後の内圧は1.38MPaGであり、留出中の内圧は1.32MPaGであった。留出量が136.39gになった段階で加熱を停止し、反応液を冷却した。冷却後、反応液を濾過し、結晶を回収した。得られた1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体は7.82gとなり、trans体の含有量は98.4%となった。
【0061】
(合成例2-7)
(1回目の加熱濃縮)
攪拌羽、熱電対、圧力計、冷却器、及び受器を有する300mlのSUS316製の耐圧容器内に合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.58gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.91MPaGであり、留出中の内圧は0.71MPaGであった。留出量が105.23gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達した後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は3.04g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.06であった。1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は96.40%となった。得られた母液の重量は40.92gとなり、ほぼ全量2回目の加熱濃縮に用いた。
【0062】
(2回目の加熱濃縮)
攪拌羽、熱電対、圧力計、冷却器、及び受器を有する300mlのSUS316製の耐圧容器内に後述する合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.58g、1回目の加熱濃縮後の母液40.82gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.87MPaGであり、留出中の内圧は0.75MPaGであった。留出量が138.16gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は7.04gであり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.14であり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は94.87%となった。得られた母液の重量は47.76gとなり、ほぼ全量3回目の加熱濃縮に用いた。
【0063】
(3回目の加熱濃縮)
耐圧容器内に合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.61g、2回目の加熱濃縮の母液47.42gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.86MPaGであり、留出中の内圧は0.70MPaGであった。留出量が141.06gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は10.23g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.33であり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は89.17%となった。得られた母液の重量は47.03gとなり、ほぼ全量4回目の加熱濃縮に用いた。
【0064】
(4回目の加熱濃縮)
耐圧容器内に合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.62g、3回目の加熱濃縮の母液46.78gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.85MPaGであり、留出中の内圧は0.70MPaGであった。留出量が138.87gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は8.78g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.30であり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は89.22%となった。得られた母液の重量は46.36gとなり、ほぼ全量5回目の加熱濃縮に用いた。
【0065】
(5回目の加熱濃縮)
耐圧容器内に合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.88g、4回目の加熱濃縮の母液47.21gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.85MPaGであり、留出中の内圧は0.69MPaGであった。留出量が139.62gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は14.75g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.43であり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は83.14%となった。得られた母液の重量は43.96gとなり、ほぼ全量6回目の加熱濃縮に用いた。
【0066】
(6回目の加熱濃縮)
耐圧容器内に合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.61g、5回目の加熱濃縮の母液44.08gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.85MPaGであり、留出中の内圧は0.65MPaGであった。留出量が141.61gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は12.82g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.39であり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は80.85%となった。得られた母液の重量は37.45gとなり、ほぼ全量7回目の加熱濃縮に用いた。
【0067】
(7回目の加熱濃縮)
耐圧容器内に合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.58g、6回目の加熱濃縮の母液33.33gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.85MPaGであり、留出中の内圧は0.65MPaGであった。留出量が125.4gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は9.81g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.31であり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は87.00%となった。得られた母液の重量は50.33gとなり、ほぼ全量8回目の加熱濃縮に用いた。
【0068】
(8回目の加熱濃縮)
耐圧容器内に合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.62g、7回目の加熱濃縮の母液49.92gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.85MPaGであり、留出中の内圧は0.65MPaGであった。留出量が138.7gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は10.29g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.31であり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は90.72%となった。得られた母液の重量は50.97gとなり、ほぼ全量9回目の加熱濃縮に用いた。
【0069】
(9回目の加熱濃縮)
耐圧容器内に合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.67g、8回目の加熱濃縮の母液51.21gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.85MPaGであり、留出中の内圧は0.65MPaGであった。留出量が140.78gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は15.80g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.45であり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は82.24%となった。得られた母液の重量は45.23gとなり、ほぼ全量10回目の加熱濃縮に用いた。
【0070】
(10回目の加熱濃縮)
耐圧容器内に合成例1-1で製造した反応液(反応開始から541~962時間の間に定期的に抽出した反応液)155.68g、9回目の加熱濃縮の母液45.17gを仕込んだ。600rpmで攪拌しながら、内温が180℃に到達するまで昇温した。180℃到達後、パージバルブを微開とし、ガス成分を冷却器で凝縮させ留分を取得した。180℃到達後の内圧は0.85MPaGであり、留出中の内圧は0.65MPaGであった。留出量が135.78gになった段階で加熱を停止し、反応液を45℃まで冷却した。内温が45℃到達後、反応液を濾過し、結晶と母液を回収した。得られた結晶の真空乾燥後の重量は10.89g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.27であり、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体中のtrans体の含有量は89.79%となった。得られた母液の重量は49.05gとなった。
【0071】
(シアノ化工程)
(合成例3-1)
撹拌羽根、ガス導入管、熱電対及び脱水装置を有する300mLの5口フラスコ内に、合成例2-7記載の方法で製造した1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニウム塩51.6g(1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量が、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.34)、触媒として酸化亜鉛(関東化学株式会社製)0.20g及び1,4-ジシアノシクロヘキサン50gを仕込んだ。その後、加熱を開始し、170℃で窒素ガス(流量:34NmL/min)と、アンモニアガス(流量:174NmL/min)とを導入した。さらに昇温し、270℃にて反応液でのバブリングを開始し、300℃にまで昇温した。300rpmで撹拌しながら7時間、シアノ化反応を行った。反応終了後、反応生成物をテトラヒドロフランに溶解させ、さらに液中の触媒を濾過にて除去した後、ガスクロマトグラフィー(以下、GCとも記載する。)(島津製作所社製型式名「GC2010 PLUS」、カラム:製品名「HP-5ms」、アジレント・テクノロジー株式会社製、長さ30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)により分析した。その結果、1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率は90.8mol%であった。
【0072】
(合成例3-2)
撹拌羽根、ガス導入管、熱電対及び脱水装置を有する100mLの5口フラスコ内に、実施例2-7記載の方法で製造した1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニウム塩51.6g(1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量が、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.34)、触媒として酸化亜鉛(関東化学株式会社製)0.20gを仕込んだ。その後、加熱を開始し、170℃で窒素ガス(流量:34NmL/min)と、アンモニアガス(流量:174NmL/min)とを導入した。さらに昇温し、270℃にて反応液でのバブリングを開始し、300℃にまで昇温した。300rpmで撹拌しながら7時間、シアノ化反応を行った。反応終了後、合成例3-1と同様の操作を行い、GCにより分析を行った。1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率は92.8mol%であった。
【0073】
(合成例3-3)
撹拌羽根、ガス導入管、熱電対及び脱水装置を有する500mLの5口フラスコ内に、実施例2-7記載の方法で製造した1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のアンモニウム塩103.2g(1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中のアンモニアの含有量が、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸アンモニウム塩中の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸の含有量に対して、モル比で0.34)、触媒として酸化亜鉛(関東化学株式会社製)0.40g及びバーレルプロセス油B-28AN(松村石油製)200gを仕込んだ。その後、加熱を開始し、170℃で窒素ガス(流量:34NmL/min)と、アンモニアガス(流量:174NmL/min)とを導入した。さらに昇温し、270℃にて反応液でのバブリングを開始し、300℃にまで昇温した。300rpmで撹拌しながら8時間、シアノ化反応を行った。反応終了後、合成例3-1と同様の操作を行い、GCにより分析を行った。1,4-ジシアノシクロヘキサンの収率は92.1mol%であった。
【0074】
(ニトリル水添工程)
(合成例4-1)
300mLのSUS316製耐圧容器内に、1,4-ジシアノシクロヘキサン24.4g、溶媒としてのメタノール37.3gと28%アンモニア水(和光純薬工業株式会社製)28.4g、及び、触媒としてラネーコバルト触媒(和光純薬工業株式会社製)0.56gを仕込み、水素ガスを4.5MPaの反応圧力になるまで導入した。次いで、容器内を80℃の反応温度まで加熱し、温度を一定に保持し、容器内を電磁式攪拌羽根にて750rpmで撹拌しながら、水素添加によるアミノ化反応(ニトリル水添反応)を240分間、進行させた。反応終了後、触媒を濾過にて除去した後、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製型式名「GC2010 PLUS」、カラム:製品名「HP-5ms」、アジレント・テクノロジー株式会社製、長さ30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)により分析した。その結果、1,4-ジシアノシクロヘキサンの転化率は100%、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの選択率は97.0%、収率は97.0%であった。
【0075】
(合成例4-2)
300mLのSUS316製耐圧容器内に、1,4-ジシアノシクロヘキサン38.2g、溶媒としての液体アンモニア111.6g、及び、触媒としてラネーコバルト触媒(和光純薬工業株式会社製)3.31gを仕込み、水素ガスを8.0MPaの反応圧力になるまで導入した。次いで、容器内を90℃の反応温度まで加熱し、温度を一定に保持し、容器内を電磁式攪拌羽根にて750rpmで撹拌しながら、水素添加によるアミノ化反応(ニトリル水添反応)を60分間、進行させた。反応終了後、合成例4-1と同様の操作を行い、GCにより分析を行った。その結果、1,4-ジシアノシクロヘキサンの転化率は100%、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの選択率は99.4%、収率は99.4%であった。
【0076】
(比較例1)
300mLのSUS316製耐圧容器内に、テレフタル酸(東京化成工業社製)25g、触媒として5%Ru/C触媒(エヌ・イーケムキャット株式会社製、Aタイプ、含水率:52.8質量%)5.30g(乾燥ベースで2.5g)、水100g、及び5N NaOH水溶液(和光純薬製)75mlを仕込んだ。次いで、容器内を100℃の反応温度まで加熱し、温度を一定に保持し、水素ガスを8MPaの反応圧力になるまで導入し、水素圧力を一定に保持し、容器内を電磁式攪拌羽根にて800rpmで撹拌しながら、核水添反応を360分間、進行させた。反応終了後、反応液中の触媒を濾過にて除去した。次いで、反応液に5N HCl水溶液(和光純薬製)75mlを滴下し、結晶を析出させた。析出した結晶をろ過にて回収し、回収した結晶を純水で洗浄した。結晶中のNaClを除去するには純水で2回洗浄する必要があった。母液・洗浄液中にも1,4-シクロヘキサンジカルボン酸は溶解しており、ロスによる収率低下に繋がる。NaClは仕込んだNaOHとHClに対応する量が生成した。
【0077】
本出願は、2018年4月11日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2018-076270)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の製造方法により得られる1,4-シクロヘキサンジカルボン酸誘導体及び1,4-ジシアノシクロヘキサンは、ポリアミド、ポリウレタン等に用いるプラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基板、フィルター等の光学材料として有効なビス(アミノメチル)シクロヘキサンの原料となるため、そのような分野において、産業上の利用可能性がある。