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特許7410462Li2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】Li2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/12 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
C03C10/12
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022092817
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2020534997の分割
【原出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2022120047
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2019069795
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019099252
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕基
(72)【発明者】
【氏名】平野 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】東條 真
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-044282(JP,A)
【文献】特開平02-293345(JP,A)
【文献】特開平06-092681(JP,A)
【文献】特開昭61-053131(JP,A)
【文献】特開2002-097037(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017558(WO,A1)
【文献】特開2016-108201(JP,A)
【文献】特開2015-074596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、SiO 40~90%、Al 5~30%、LiO 1~10%、SnO 0.01~20%、ZrO 0~5%、MgO 1.18~10%、CaO 0~10%、SrO 0~10%、BaO 0~10%、NaO 0~10%、KO 0~10%、P 0.1~10%、TiO 0~1.98%を含有し、質量比で、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)が1.3以下、(LiO+NaO+KO)/ZrOが2以下、Al /(SnO +ZrO )が7.1超であり、主結晶としてβ-石英固溶体が析出していることを特徴とするLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項2】
さらに、質量%で、ZnO 0~10%、B 0~10%を含有することを特徴とする請求項1に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項3】
さらに、質量%で、Fe 0.10%以下を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項4】
質量比で、MgO/(LiO+MgO)が0.15以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項5】
質量%で、MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO 2%以上を含有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項6】
質量%で、ZrO+TiO 1.5~6.7%を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項7】
質量比で、(SiO+Al+LiO)/SiOが1.553未満であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項8】
質量比で、(SiO+Al+LiO)/Alが3.251超であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項9】
質量比で、ZrO/LiOが0.4以上であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項10】
質量比で、SnO/(SnO+TiO)が0.092以上であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項11】
質量比で、ZnO/(ZnO+MgO)が0.9以下であることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項12】
質量比で、TiO/ZrOが0.0001~5.0であることを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項13】
質量比で、TiO/(TiO+Fe)が0.001~0.999であることを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項14】
質量%で、HfO+Ta 0.05%未満を含有することを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項15】
質量%で、Pt 7ppm%以下を含有することを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項16】
質量%で、Rh 7ppm%以下を含有することを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項17】
質量%で、Pt+Rh 9ppm%以下を含有することを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項18】
20~200℃における熱膨張係数が、-20×10-7/℃~30×10-7/℃であることを特徴とする請求項1~1のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項19】
20~380℃における熱膨張係数が、-20×10-7/℃~30×10-7/℃であることを特徴とする請求項1~18のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項20】
20~750℃における熱膨張係数が、-20×10-7/℃~30×10-7/℃であることを特徴とする請求項1~19のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項21】
外観が透明であることを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項22】
厚み2mm、波長360nmにおける透過率が1%以上であることを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項23】
厚み2mm、波長555nmにおける透過率が10%以上であることを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項24】
厚み2mm、波長1200nmにおける透過率が35%以上であることを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項25】
液相温度が1500℃以下であることを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項26】
結晶化前後の密度変化率が1.1~10%であることを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【請求項27】
厚み2mm、波長360nmにおける透過率が1%以上であり、20~200℃における熱膨張係数が、-10×10-7/℃~30×10-7/℃であることを特徴とする請求項1~2のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLiO-Al-SiO系結晶化ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Data Assistance)等の携帯型電子機器には、小型化及び軽量化が要求されている。これに伴い、これらの電子機器に用いられる半導体チップの実装スペースも厳しく制限されており、半導体チップの高密度な実装が課題になっている。そこで、三次元実装技術、すなわち半導体チップ同士を積層し、各半導体チップ間を配線接続することにより、半導体パッケージの高密度実装を図っている。
【0003】
特許文献1にあるように、fan out型のウエハレベルパッケージ(WLP)では、複数の半導体チップを樹脂の封止材でモールドして、加工基板を形成した後に、加工基板の一方の表面に配線する工程、半田バンプを形成する工程等を有する。これらの工程は、約200℃の熱処理を伴うため、封止材が変形して、加工基板が寸法変化する虞がある。加工基板の寸法変化を抑制するためには、加工基板を支持するための支持基板を用いることが有効であり、比較的低膨張である加工基板の寸法変化を効果的に抑制させるために、支持基板には低膨張特性が要求されることがある。
【0004】
そこで、主結晶として、低膨張結晶であるβ-石英固溶体(LiO・Al・nSiO[ただし2≦n≦4])やβ-スポジュメン固溶体(LiO・Al・nSiO[ただしn≧4])等のLiO-Al-SiO系結晶を析出してなるLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを支持基板として使用することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願2014-255236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、β―スポジュメン固溶体を主結晶として析出させたLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、紫外~赤外域の透過性が低いため、加工基板とガラス基板を固定、分離する際に用いるレーザー光(紫外光~赤外光)を透過し難いという問題があった。また、β―石英固溶体を主結晶として析出させたLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、母ガラスから結晶が析出した際の体積収縮量が大きく、表面剥離や亀裂等の割れが生じやすいという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、紫外~赤外域の透過性が高く、割れ難いLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、SiO 40~90%、Al 5~30%、LiO 1~10%、SnO 0~20%、ZrO 0~5%、MgO 0~10%、CaO 0~10%、SrO 0~10%、BaO 0~10%、NaO 0~10%、KO 0~10%、P 0~10%、TiO 0~4%を含有し、質量比で、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)が3以下であることを特徴とする。ここで、「LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)」とは、LiOの含有量をMgO、CaO、SrO、BaO、NaO、及びKOの合量で除した値である。
【0009】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、ZnO 0~10%、B 0~10%を含有することが好ましい。
【0010】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、さらに、質量%で、Fe 0.10%以下を含有することが好ましい。
【0011】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、MgO/(LiO+MgO)が0.15以上であることが好ましい。ここで、「MgO/(LiO+MgO)」とは、MgOの含有量をLiO、及びMgOの合量で除した値である。
【0012】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO 2%以上を含有することが好ましい。ここで、「MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO」とは、MgO、CaO、SrO、BaO、NaO、及びKOの合量である。
【0013】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、ZrO+TiO 1.5~6.7%を含有することが好ましい。ここで、「ZrO+TiO」とは、ZrO、及びTiOの合量である。
【0014】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、(SiO+Al+LiO)/SiOが1.553未満であることが好ましい。ここで、「(SiO+Al+LiO)/SiO」とは、SiO、Al、及びLiOの合量をSiOの含有量で除した値である。
【0015】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、(SiO+Al+LiO)/Alが3.251超であることが好ましい。ここで、「(SiO+Al+LiO)/Al」とは、SiO、Al、及びLiOの合量をAlの含有量で除した値である。
【0016】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、ZrO/LiOが0.4以上であることが好ましい。ここで、「ZrO/LiO」とは、ZrOの含有量をLiOの含有量で除した値である。
【0017】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、ZrO/(SnO+TiO)が0.092以上であることが好ましい。ここで、「ZrO/(SnO+TiO)」とは、ZrOの含有量をSnO、及びTiOの合量で除した値である。
【0018】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、ZnO/(ZnO+MgO)が0.9以下であることが好ましい。ここで、「ZnO/(ZnO+MgO)」とは、ZnOの含有量をZnO、及びMgOの合量で除した値である。
【0019】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、(LiO+NaO+KO)/ZrOが3.0以下であることが好ましい。ここで、「(LiO+NaO+KO)/ZrO」とは、LiO、NaO、及びKOの合量をZrOの含有量で除した値である。
【0020】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、TiO/ZrOが0.0001~5.0であることが好ましい。ここで、「TiO/ZrO」とは、TiOの含有量をZrOの含有量で除した値である。
【0021】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量比で、TiO/TiO+Feが0.001~0.999であることが好ましい。ここで、「TiO/(TiO+Fe)」とは、TiOの含有量をTiO、及びFeの合量で除した値である。
【0022】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、HfO+Ta 0.05%未満を含有することが好ましい。ここで、「HfO+Ta」とは、HfO、及びTaの合量である。
【0023】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、Pt 7ppm%以下を含有することが好ましい。
【0024】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、Rh 7ppm%以下を含有することが好ましい。
【0025】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、Pt+Rh 9ppm%以下を含有することが好ましい。ここで、「Pt+Rh」とは、Pt、及びRhの合量である。
【0026】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、主結晶としてβ-石英固溶体が析出していることが好ましい。このようにすれば、紫外~赤外域の透過性が高く、熱膨張係数の低い結晶化ガラスを得ることが容易になる。
【0027】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、20~200℃における熱膨張係数が、-20×10-7/℃~30×10-7/℃であることが好ましい。このようにすれば、低膨張性を求める各種の用途に好適に使用することができる。
【0028】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、20~380℃における熱膨張係数が、-20×10-7/℃~30×10-7/℃であることが好ましい。
【0029】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、20~750℃における熱膨張係数が、-20×10-7/℃~30×10-7/℃であることが好ましい。このようにすれば、広い温度範囲にて低膨張性を求める各種の用途に好適に使用することができる。
【0030】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、外観が透明であることが好ましい。
【0031】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長360nmにおける透過率が1%以上であることが好ましい。このようにすれば、紫外透過性が求められる各種の用途に好適に使用することができる。
【0032】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長555nmにおける透過率が10%以上であることが好ましい。このようにすれば、可視透過性が求められる各種の用途に好適に使用することができる。
【0033】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長1200nmにおける透過率が35%以上であることが好ましい。このようにすれば、赤外透過性が求められる各種の用途に好適に使用することができる。
【0034】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、液相温度が1500℃以下であることが好ましい。
【0035】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前後の密度変化率が1.1~10%であることが好ましい。
【0036】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長360nmにおける透過率が1%以上であり、20~200℃における熱膨張係数が、-10×10-7/℃~30×10-7/℃であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、紫外~赤外域の透過性が高く、割れ難いLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、SiO 40~90%、Al 5~30%、LiO 1~10%、SnO 0~20%、ZrO 0~5%、MgO 0~10%、CaO 0~10%、SrO 0~10%、BaO 0~10%、NaO 0~10%、KO 0~10%、P 0~10%、TiO 0~4%を含有し、質量比で、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)が3以下である。ガラス組成を上記のように限定した理由を以下に示す。なお、以下の各成分の含有量に関する説明において、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0039】
SiOはガラスの骨格を形成するとともに、LiO-Al-SiO系結晶を構成する成分である。SiOの含有量は40~90%、50~85%、52~83%、55~80%、55~75%、55~73%、55~71%、56~70%、57~70%、58~70%、59~70%、特に60~70%であることが好ましい。SiOの含有量が少なすぎると、熱膨張係数が高くなる傾向があり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。また、化学的耐久性が低下する傾向がある。一方、SiOの含有量が多すぎると、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、清澄しにくくなったりガラスの成形が難しくなって生産性が低下しやすくなる。また、クリストバライト、トリジマイトの結晶が析出してガラスが失透する傾向があり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。さらに、結晶化に要する時間が長くなり、生産性が低下しやすくなる。
【0040】
Alはガラスの骨格を形成するとともに、LiO-Al-SiO系結晶を構成する成分である。Alの含有量は5~30%、7~30%、8~29%、10~28%、13~27%、15~26%、16~26%、17~26%、17~25%、17~24%、18~24%、18.1~24%、19~24%、特に20~23%であることが好ましい。Alの含有量が少なすぎると、熱膨張係数が高くなる傾向があり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。また、化学的耐久性が低下する傾向がある。一方、Alの含有量が多すぎると、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、清澄しにくくなったりガラスの成形が難しくなって生産性が低下しやすくなる。また、コランダム、ムライトの結晶が析出してガラスが失透する傾向があり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0041】
LiOはLiO-Al-SiO系結晶を構成する成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。LiOの含有量は1~10%、2~10%、2~9%、2~8%、2~7%、2.5~6%、2.5~5%、3~4.5%、特に3~4%であることが好ましい。LiOの含有量が少なすぎると、ムライトの結晶が析出してガラスが失透する傾向がある。また、ガラスを結晶化させる際に、LiO-Al-SiO系結晶が析出しにくくなり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスを得ることが困難になる。さらに、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、清澄しにくくなったりガラスの成形が難しくなって生産性が低下しやすくなる。一方、LiOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて、ガラスが失透しやすくなる傾向があり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0042】
SiO、Al、及びLiOの比率((SiO+Al+LiO)/SiO、及び(SiO+Al+LiO)/Al)を調整することにより、上述したクリストバライト、トリジマイト、コランダム、ムライト等の結晶を析出しにくくし、ガラスの失透を抑制することができる。((SiO+Al+LiO)/SiOは1.553未満、1.55以下、1.547以下、1.544以下、1.54以下、1.537以下、1.534以下、1.53以下、1.527以下、1.524以下、1.52以下、1.517以下、1.514以下、1.51以下、1.507以下、1.504以下、1.500以下、1.497以下、1.494以下、1.49以下、1.487以下、1.484以下、1.48以下、11.477以下、1.474以下、1.47以下、1.467以下、1.464以下、1.46以下、1.459以下、1.458以下、1.457以下、1.456以下、1.455以下、1.454以下、1.453以下、1.452以下、1.451以下、特に1.45以下であることが好ましく、(SiO+Al+LiO)/Alは3.251超、3.255以上、3.26以上、3.265以上、3.27以上、3.275以上、3.28以上、3.285以上、3.29以上、3.295以上、3.3以上、3.305以上、3.31以上、3.315以上、3.32以上、3.325以上、3.33以上、3.335以上、3.34以上、3.341以上、3.342以上、3.343以上、3.344以上、3.345以上、3.346以上、3.347以上、3.348以上、3.349以上、特に3.35以上であることが好ましい。
【0043】
SnOは清澄剤として作用する成分である。また、結晶化工程で結晶を析出させるための核形成成分でもある。一方で、多量に含有するとガラスの着色を著しく強める成分でもある。SnOの含有量は0~20%、0~10%、0~8%、0.01~8%、0.01~5%、0.01~4%、0.05~3%、0.05~2.5%、0.05~2%、0.05~1.5%、0.05~1.3%、0.05~1.2%、0.05~1%、0.05~0.8%、0.05~0.6%、特に0.05~0.5%であることが好ましい。SnOの含有量が多すぎると、結晶化ガラスの着色が強くなる。
【0044】
ZrOは結晶化工程で結晶を析出させるための核形成成分である。ZrOの含有量は0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0超~3%、0.1~2.9%、0.2~2.9%、0.3~2.9%、0.4~2.9%、0.5~2.9%、0.6~2.9%、0.7~2.9%、0.8~2.9%、0.9~2.9%、1~2.9%、1.1~2.9%、1.2~2.9%、1.3~2.9%、1.4~2.9%、1.4~2.8%、1.4~2.7%、1.4~2.6%、1.5~2.6%、特に1.6~2.6%であることが好ましい。ZrOの含有量が多すぎると、粗大なZrO結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0045】
MgOはLiO-Al-SiO系結晶に固溶し、LiO-Al-SiO系結晶の熱膨張係数を高くする成分である。MgOの含有量は0~10%、0~9%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3%、0~2%、0~1%、0~0.5%、特に0超~0.5%であることが好ましい。MgOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、熱膨張係数が高くなり過ぎる傾向がある。
【0046】
CaOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分である。さらに、LiO-Al-SiO系結晶に固溶しうる成分である。CaOの含有量は0~10%、0~9%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3%、0~2%、0~1%、特に0~0.5%であることが好ましい。CaOの含有量が多すぎると、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Caカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のCaカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、CaOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、CaOは不純物として混入し易いため、CaOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、CaOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
【0047】
SrOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分である。さらに、LiO-Al-SiO系結晶に固溶しうる成分である。SrOの含有量は0~10%、0~9%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3%、0~2%、0~1%、特に0~0.5%であることが好ましい。SrOの含有量が多すぎると、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Srカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のSrカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、SrOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、SrOは不純物として混入し易いため、SrOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、SrOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
【0048】
BaOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分である。さらに、LiO-Al-SiO系結晶に固溶しうる成分である。BaOの含有量は0~10%、0~9%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3%、0~2%、0~1%、特に0~0.5%であることが好ましい。BaOの含有量が多すぎると、Baを含む結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Baカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のBaカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、BaOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、BaOは不純物として混入し易いため、BaOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、BaOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
【0049】
NaOはLiO-Al-SiO系結晶に固溶しうる成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分である。NaOの含有量0~10%、0~9%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3%、0~2%、0~1%、特に0~0.5%であることが好ましい。NaOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。ただし、NaOは不純物として混入し易いため、NaOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、NaOの含有量の下限は、0.0003%以上、0.0005%以上、特に0.001%以上であることが好ましい。
【0050】
OはLiO-Al-SiO系結晶に固溶しうる成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分である。KOの含有量は0~10%、0~9%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3%、0~2%、0~1%、特に0~0.5%であることが好ましい。KOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Kカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のKカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、KOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、KOは不純物として混入し易いため、KOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、KOの含有量の下限は、0.0003%以上、0.0005%以上、特に0.001%以上であることが好ましい。
【0051】
LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、結晶化完了後の結晶相と残存ガラス相の熱膨張係数に大きな差が生じた場合、表面剥離やサンプル内部からの亀裂等の割れが発生する恐れがある。LiO-Al-SiO系結晶へのLiの固溶度が大きすぎると、結晶化時の体積収縮量が大きくなり、結晶化完了後の結晶相の熱膨張係数が低くなりすぎ、結晶相と残存ガラス相の熱膨張係数に大きな差が生じやすくなる。結果として、結晶化ガラスに表面剥離や亀裂等の割れが発生しやすくなる。そこで、MgO/(LiO+MgO)は0.15以上、0.151以上、0.152以上、0.153以上、0.154以上、0.155以上、0.156以上、0.157以上、0.158以上、0.159以上、0.16以上、0.161以上、0.162以上、0.163以上、0.164以上、0.165以上、0.166以上、0.167以上、0.168以上、0.169以上、特に0.170以上であることが好ましく、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)は3以下、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2以下、1.95以下、1.9以下、1.85以下、1.8以下、1.75以下、1.7以下、1.65以下、1.6以下、1.55以下、1.5以下、1.45以下、1.4以下、1.35以下、1.3以下、1.25以下、1.2以下、1.15以下、1.1以下、1.09以下、1.08以下、1.07以下、1.06以下、1.05以下、1.04以下、1.03以下、1.02以下、1.01以下、特に1以下が好ましい。なお、MgO/(LiO+MgO)の上限は0.9以下であることが好ましく、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)の下限は0.01以上であることが好ましい。
【0052】
LiO、NaO、KOはガラスの溶融性および成形性を向上させる成分であるが、これら成分の含有量が多すぎると低温粘度が下がりすぎ、結晶化時にガラスが流動しすぎてしまう恐れがある。また、LiO、NaO、KOは結晶化前のガラスの対候性、耐水性、耐薬品性等を悪化させうる成分である。結晶化前のガラスが水分等により改悪されると、所望の結晶化挙動、ひいては所望の特性を得られなくなる恐れがある。一方、ZrOは核形成剤として機能する成分であり、結晶化初期に優先的に結晶化し、残存ガラスの流動を抑える効果がある。また、ZrOはSiO骨格を主とするガラスネットワークの空隙部分を効率的に充填し、プロトンや各種薬品成分等のガラスネットワーク内での拡散を阻害する効果を持ち、結晶化前のガラスの対候性、耐水性、耐薬品性等を向上させる。所望の形状、特性の結晶化ガラスを得るためには、(LiO+NaO+KO)/ZrOは好適に制御されるべきである。(LiO+NaO+KO)/ZrOは3.0以下、2.8以下、2.6以下、2.5以下、2.45以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2.05以下、特に2以下であることが好ましい。
【0053】
また、MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KOは2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.41以上、2.42以上、2.43以上、2.44以上、2.45以上、2.46以上、2.47以上、2.48以上、2.49以上、特に2.5以上であることが好ましい。MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KOが少なすぎると、結晶化ガラスの熱膨張係数が高くなりすぎる、又は低くなりすぎる傾向がある。なお、MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KOの上限は40%以下であることが好ましい。
【0054】
ZrOは難溶性の核形成剤、LiOは溶融を促進するフラックスとして機能するため、ZrO/LiOが小さいと効率的にZrOを溶かすことができる。一方、ZrO/LiOが小さすぎると低温粘度が下がりすぎてしまい、比較的低温で熱処理する核形成工程においてガラスが流動しやすくなり変形の原因となる。また、低温粘度が下がりすぎることで、核形成速度が速くなりすぎてしまい、核形成工程の制御が困難になることがある。このため、ZrO/LiOは0.4以上、0.42以上、0.44以上、0.46以上、0.48以上、0.50以上、0.52以上、0.53以上、0.54以上、0.55以上、0.56以上、特に0.57以上であることが好ましい。ZrO/LiOが大きすぎると難溶性のZrOが十分に解けずに、失透ブツとして残る傾向がある。このため、ZrO/LiOの上限は4以下であることが好ましい。
【0055】
また、Al/(SnO+ZrO)は7.1超、7.2以上、7.3以上、7.4以上、7.5以上、7.6以上、7.7以上、7.8以上、7.9以上、特に8.0以上であることが好ましい。Al/(SnO+ZrO)が小さすぎると、結晶核が大きくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。この傾向はTiOを0.2%以上含有する場合に発現しやすくなる。一方、Al/(SnO+ZrO)が大きすぎると、核形成が効率的に進まず、効率的に結晶化が進行しないことがある。このため、Al/(SnO+ZrO)の上限は25以下であることが好ましい。
【0056】
は粗大なZrO結晶の析出を抑制する成分である。また、結晶核形成時の分相の起こりやすさに関与しうる。Pの含有量は0~10%、0~9%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、0.1~5%、0.2~4%、0.2~3%、0.3~3%、0.3~2.5%、0.4~2.5%、0.5~2%、1~2%、特に1.2~1.8%であることが好ましい。Pの含有量が多すぎると、LiO-Al-SiO系結晶の析出量が少なくなり、熱膨張係数が高くなる傾向がある。
【0057】
TiOは結晶化工程で結晶を析出させるための核形成成分である。一方で、多量に含有するとガラスの着色を著しく強める。特にZrOとTiOを含むジルコニアチタネート系の結晶は結晶核として作用するが、配位子である酸素の価電子帯から中心金属であるジルコニアおよびチタンの伝導帯へと電子が遷移し(LMCT遷移)、結晶化ガラスの着色に関与する。また、残存ガラス相にチタンが残っている場合、SiO骨格の価電子帯から残存ガラス相の4価のチタンの伝導帯へとLMCT遷移が起こりうる。また、残存ガラス相の3価のチタンではd-d遷移が起こり、結晶化ガラスの着色に関与する。更に、チタンと鉄が共存する場合はイルメナイト(FeTiO)様の着色が発現し、チタンと錫が共存する場合は黄色が強まることが知られている。このため、TiOの含有量は0~4%、0~3.8%、0~3.6%、0~3.4%、0~3.2%、0~3%、0超~3%、0.01~3%、0.05~3%、0.07~3%、0.09~3%、0.1~3%、0.2~3%、特に0.3~3%であることが好ましい。
【0058】
TiOとZrOはそれぞれ結晶核として機能しうる成分である。TiとZrは同族元素であり、電気陰性度やイオン半径等が似ている。このため、酸化物として似たような分子配座を取りやすく、TiOとZrOの共存下で、結晶化初期の分相が発生しやすくなることが判っている。このため、着色が許容される範囲において、TiO/ZrOは0.0001~5.0、0.0001~4.0、0.0001~3.0、0.0001~2.5、0.0001~2.0、0.0001~1.5、0.0001~1.0、0.0001~0.97、0.0001~0.95、特に0.0001~0.92であることが好ましい。TiO/ZrOが小さすぎると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する。一方、TiO/ZrOが大きすぎると、結晶核形成速度が遅くなり、製造コストが増加しうる。
【0059】
LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、結晶核形成に先立ちガラス試料内に分相領域が形成され、その分相領域内でZrOやTiOなどで構成される結晶核が形成される。ZrO+TiOは1.5~6.7%、1.8~6.7%、2.1~6.7%、2.4~6.7%、2.8~6.7%、2.81~6.7%、2.81~6.6%、2.81~6.5%、2.81~6.4%、2.81~6.3%、2.82~6.2%、2.83~6.1%、2.84~6%、2.85~5.9%、2.86~5.8%、2.87~5.7%、2.88~5.6%、2.89~5.5%、2.9~5.4%、2.9~5.3%、2.9~5.2%、特に2.9~5.1%が好ましい。ZrO+TiOが少なすぎると結晶核が形成されにくくなり、結晶化が進行しにくくなる。一方、ZrO+TiOが多すぎると分相領域が大きくなり結晶化ガラスが白濁しやすくなる。
【0060】
SnO、TiOはいずれも核形成に関与しうる。体積結晶化ガラスの核形成初期には、核となる結晶の析出に先立って、核形成成分が分相することが判っている。また、分相は関係する成分のそれぞれ単一を含有する場合よりも複数を含有する場合のほうが起きやすい。このため、SnO/(SnO+TiO)は0.092以上、0.093以上、0.094以上、0.095以上、0.096以上、0.097以上、0.098以上、0.099以上、特に0.100以上であることが好ましい。複数成分を含有したほうが良いことから、SnO/(SnO+TiO)の上限は1未満であることが好ましい。
【0061】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、上記成分以外にも、ガラス組成中に下記の成分を含有してもよい。
【0062】
ZnOはLiO-Al-SiO系結晶に固溶し、結晶性に大きな影響を与える成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分である。ZnOの含有量は0~10%、0~9%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3%、0~2%、0~1%、特に0~0.5%であることが好ましい。ZnOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。ただし、ZnOは不純物として混入し易いため、ZnOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、ZnOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
【0063】
ZnOとMgOはガラス融液形成時のフラックスと機能する他、主結晶となりうるβ―石英固溶体に固溶し、結晶化ガラスの熱膨張係数を変化させる。このようにZnOとMgOには似たような効果が期待されるが、ZnOはMgOと比べて原料コストが高くなりやすい。このため、ZnO/(MgO+ZnO)は0.9以下、0.8以下、特に0.7以下であることが好ましく、ZnO/MgOは0.5以下、0.49以下、0.48以下、0.47以下、0.46以下、特に0.45以下であることが好ましい。
【0064】
はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶核形成時の分相の起こりやすさに関与しうる。Bの含有量は0~10%、0~9%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3%、0~2%、0~1%、特に0~0.5%であることが好ましい。Bの含有量が多すぎると、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、溶融時のBの蒸発量が多くなり、環境負荷が高くなる。ただし、Bは不純物として混入し易いため、Bを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、Bは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有しても良い。
【0065】
Feはガラスの着色を強める成分、特にTiOやSnOとの相互作用により着色を著しく強める成分でもある。Feの含有量は0.10%以下、0.08%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.035%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.015%以下、0.013%以下、0.012%以下、0.011%以下、0.01%以下、0.009%以下、0.008%以下、0.007%以下、0.006%以下、0.005%以下、0.004%以下、0.003%以下、特に0.002%以下であることが好ましい。ただし、Feは不純物として混入しやすいため、Feを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、Feの含有量の下限は0.0001%以上、0.0002%以上、0.0003%以上、0.0005%以上、特に0.001%以上であることが好ましい。
【0066】
チタンと鉄が共存する場合はイルメナイト(FeTiO)様の着色が発現することがある。特に、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、結晶化後に結晶核や主結晶として析出しなかったチタンと鉄の成分が残存ガラスに残り、上記着色の発現が促進されうる。設計上、これら成分を減量することがありえるが、TiOとFeは不純物として混入し易いため、完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。このため、製造コストを抑制するためには、前述した範囲においてTiOとFeを含有しても良く、製造コストをより安価にするためには着色が許容される範囲において、両方の成分を含有しても良い。そうした場合、TiO/(TiO+Fe)は0.001~0.999、0.001~0.998、0.003~0.997、0.005~0.995、0.007~0.993、0.009~0.991、0.01~0.99、0.01~0.95、0.01~0.92、特に0.01~0.88であることが好ましい。
【0067】
Ptはイオンやコロイド、金属等の状態でガラスに混入しうる成分であり、黄色~茶褐色の着色を発現させる。また、この傾向は結晶化後に顕著になる。さらに、鋭意検討した所、Ptが混入すると、結晶化ガラスの核形成および結晶化挙動が影響を受け、白濁しやすくなる場合があることが判明した。このため、Ptの含有量は7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1.6ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1ppm以下、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.45ppm以下、0.4ppm以下、0.35ppm以下、特に0.3ppm以下であることが好ましい。Ptの混入は極力避けるべきであるが、一般的な溶融設備を用いた場合、均質なガラスを得るためにPt部材の使用が必要になることがある。このため、Ptを完全に除去しようとすると、製造コストが増加する傾向にある。着色が許容される場合においては、製造コストの増加を抑制するために、Ptの含有量の下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。また、着色に悪影響を及ぼさない場合においては、PtをZrOやTiOと同様に、主結晶の析出を促進させる核形成剤としても良い。その際、Pt単独で核形成剤としても良く、他の成分と複合で核形成剤としても良い。また、Ptを核形成剤とする場合、特に形態は問わない(コロイド、金属結晶など)。
【0068】
Rhはイオンやコロイド、金属等の状態でガラスに混入しうる成分であり、Ptと同様に黄色~茶褐色の着色を発現させ、結晶化ガラスを白濁させる傾向がある。このため、Rhの含有量は7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1.6ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1ppm以下、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.45ppm以下、0.4ppm以下、0.35ppm以下、特に0.3ppm以下であることが好ましい。Rhの混入は極力避けるべきであるが、一般的な溶融設備を用いた場合、均質なガラスを得るためにRh部材の使用が必要になることがある。このため、Rhを完全に除去しようとすると、製造コストが増加する傾向にある。着色が許容される場合においては、製造コストの増加を抑制するために、Rhの含有量の下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。また、着色が許容される程度である場合においては、RhをZrOやTiOと同様に核形成剤としても良い。その際、Rh単独で核形成剤としても良く、他の成分と複合で核形成剤としても良い。また、Rhを主結晶の析出を促進させる核形成剤とする場合、特に形態は問わない(コロイド、金属結晶など)。
【0069】
また、Pt+Rhは9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4.75ppm以下、4.5ppm以下、4.25ppm以下、4ppm以下、3.75ppm以下、3.5ppm以下、3.25ppm以下、3ppm以下、2.75ppm以下、2.5ppm以下、2.25ppm以下、2ppm以下、1.75ppm以下、1.5ppm以下、1.25ppm以下、1ppm以下、0.95ppm以下、0.9ppm以下、0.85ppm以下、0.8ppm以下、0.75ppm以下、0.7ppm以下、0.65ppm以下、0.6ppm以下、0.55ppm以下、0.5ppm以下、0.45ppm以下、0.4ppm以下、0.35ppm以下、特に0.3ppm以下であることが好ましい。なお、PtとRhの混入は極力避けるべきであるが、一般的な溶融設備を用いた場合、均質なガラスを得るためにPtとRh部材の使用が必要になることがある。このため、PtとRhを完全に除去しようとすると、製造コストが増加する傾向にある。着色が許容される程度である場合においては、製造コストの増加を抑制するために、Pt+Rhの下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。
【0070】
なお、ガラス素材を開発するにあたり、様々な組成のガラスを様々な坩堝を用いて作製することは一般的である。このため、溶融に使用する電気炉内部には坩堝から蒸発した白金とロジウムが存在することが多々ある。電気炉内部に存在するPtとRhがガラスに混入することを確認しており、PtとRhの混入量を制御するために、使用する原料や坩堝の材質を選定するだけでなく、石英製の蓋を坩堝に装着する他、溶融温度の低温化や短時間化等を施すことにより、ガラス中のPt、Rhの含有量を制御することが可能である。
【0071】
AsやSbは毒性が強く、ガラスの製造工程や廃ガラスの処理時等に環境を汚染する可能性がある。このため、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスはこれらの成分を実質的に含有しない(具体的には、0.1質量%未満)ことが好ましい。
【0072】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは着色に悪影響が無い限り、上記成分以外にも、例えばH、CO、CO、HO、He、Ne、Ar、N等の微量成分をそれぞれ0.1%まで含有してもよい。また、ガラス中にAg、Au、Pd、Ir、V、Cr、Sc、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、Uなどは意図的に添加すると原料コストが高くなり、製造コストが高くなる傾向にある。一方、AgやAuなどを含有させたガラスに光照射や熱処理を行うと、これら成分の凝集体が形成され、それを起点に結晶化を促進することが出来る。また、Pdなどには種々の触媒作用があり、これらを含有させることで、ガラスないし結晶化ガラスに特異な機能を付与することが可能となる。こうした事情を鑑みて、結晶化促進やその他の機能の付与を目的とする場合、上記成分をそれぞれ1%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下を含有してもよく、そうでない場合は500ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、特に10ppm以下を含有することが好ましい。
【0073】
さらに着色に悪影響が無い限り、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、SO、MnO、Cl、Y、MoO、La、WO、HfO、Ta、Nd、Nb、RfO等を合量で10%まで含有してもよい。ただし、上記成分の原料バッチは高価であり製造コストが増加する傾向にあるため、特段の事情が無い場合は添加しなくても良い。特にHfOは原料費が高く、Taは紛争鉱物になることがあるため、これら成分の合量は5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、0.05%以下、0.05%未満、0.049%以下、0.048%以下、0.047%以下、0.046%以下、特に0.045%以下であることが好ましい。
【0074】
すなわち、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを実施するにあたり好ましい組成範囲は、SiO 50~70%、Al 20~25%、LiO 1~6%、SnO 0~1.5%、ZrO 0~5%、MgO 0~5%、CaO 0~5%、SrO 0~5%、BaO 0~5%、NaO 0~5%、KO 0~5%、P 0~5%、TiO 0~4%、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)が3以下、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~2、TiO/ZrO 0.0001~0.92、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99であり、好ましくは、SiO 50~70%、Al 20~25%、LiO 1~6%、SnO 0~0.5%、ZrO 0~5%、MgO 0~5%、CaO 0~5%、SrO 0~5%、BaO 0~5%、NaO 0~5%、KO 0~5%、P 0~5%、TiO 0~4%、Fe 0~0.1%、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)が3以下、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.8、TiO/ZrO 0.0001~0.92、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99であり、より好ましくはSiO 50~70%、Al 20~25%、LiO 1~6%、SnO 0~0.5%、ZrO 0~5%、MgO 0~5%、CaO 0~5%、SrO 0~5%、BaO 0~5%、NaO 0~5%、KO 0~5%、P 0~5%、TiO 0~4%、Fe 0~0.1%、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)が3以下、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.560、TiO/ZrO 0.0001~0.92、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、Pt+Rh 0~5ppmであり、更に好ましくはSiO 50~70%、Al 20~25%、B 0~3%、LiO 1~6%、SnO 0~0.5%、ZrO 0~5%、MgO 0~5%、CaO 0~2.5%、SrO 0~5%、BaO 0~5%、NaO 0~5%、KO 0~5%、P 0~5%、TiO 0~4%、Fe 0~0.1%、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)が3以下、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/ZrO 0.0001~0.92、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、Pt+Rh 0~5ppmであり、最も好ましくはSiO 50~70%、Al 20~23%、B 0~3%、LiO 1~6%、SnO 0~0.5%、ZrO 0~5%、MgO 0~5%、CaO 0~2.5%、SrO 0~5%、BaO 0~5%、NaO 0~5%、KO 0~5%、P 0~2%、TiO 0~4%、Fe 0~0.1%、LiO/(MgO+CaO+SrO+BaO+NaO+KO)が3以下、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/ZrO 0.0001~0.92、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、Pt+Rh 0~5ppm、HfO+Ta 0~0.05%未満である。
【0075】
上記組成を有する本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、外観が透明になりやすい。
【0076】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長350nmにおける透過率が1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、特に10%以上であることが好ましく、厚み2mm、波長360nmにおける透過率が1%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、特に40%以上であることが好ましく、厚み2mm、波長370nmにおける透過率が1%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、41%以上、42%以上、43%以上、44%以上、45%以上、46%以上、47%以上、48%以上、49%以上、特に50%以上であることが好ましい。紫外光を透過する必要のある用途の場合、波長350nm、360nm、及び370nmにおける透過率が低すぎると、所望の透過能を得られなくなる恐れがある。特にYAGレーザー等を用いる場合、波長350nm、360nm、及び370nmにおける透過率は高い方が好ましい。
【0077】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長380nmにおける透過率が1%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、特に60%以上であることが好ましい。波長380nmにおける透過率が低すぎると、光の吸収又は散乱の影響からガラスの黄色の着色が強くなりすぎるとともに、結晶化ガラスの透明性が低下し所望の透過能を得られなくなる恐れがある。
【0078】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長555nmにおける透過率が10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、特に70%以上であることが好ましい。波長555nmにおける透過率が低すぎると、透明性が低くなりやすい。
【0079】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長800nmにおける透過率が35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、特に80%以上であることが好ましい。波長800nmにおける透過率が低すぎると、透明性が低くなりやすい。
【0080】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長1070nmにおける透過率が35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、特に80%以上であることが好ましく、厚み2mm、波長1200nmにおける透過率が35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、特に80%以上であることが好ましい。波長1070nm、及び1200nmにおける透過率が低すぎると、緑色になりやすくなる。
【0081】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mm、波長360nmにおける結晶化前後の透過率変化率が95%以下、92.5%以下、90%以下、87.5%以下、85%以下、82.5%以下、80%以下、77.5%以下、75%以下、72.5%以下、70%以下、68.5%以下、特に68%以下であることが好ましい。結晶化前後の透過率変化率を小さくすれば、結晶化する前に結晶化後の透過率を予測し制御することが可能になり、結晶化後に所望の透過能を得られやすくなる。なお、結晶化前後の透過率変化率は波長360nmのみならず、全波長域において小さい方が好ましい。ここで、「結晶化前後の透過率変化率」とは、{(結晶化前の透過率(%)-結晶化後の透過率(%))/結晶化前の透過率(%)}×100(%)を意味する。
【0082】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mmにおける明度L*が50以上、60以上、65以上、70%以上、75以上、80以上、85以上、90以上、91以上、92以上、93以上、特に94以上であることが好ましい。明度L*が小さすぎると、色度の大きさに関わらず灰色がかり暗く見える傾向がある。
【0083】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mmにおける色度a*が±7.0以内、±6.0以内、±5.0以内、±4.0以内、±3.0以内、±2.8以内、±2.4以内、特に±2以内であることが好ましい。明度a*がマイナス方向に大きすぎると緑色に、プラス方向に大きすぎると赤色に見える傾向がある。
【0084】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み2mmにおける色度b*が±7.0以内、±6.0以内、±5.0以内、±4.0以内、±3.0以内、±2.8以内、±2.4以内、特に±2以内であることが好ましい。明度b*がマイナス方向に大きすぎると青色に、プラス方向に大きすぎると黄色に見える傾向がある。
【0085】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前のガラスの状態で、歪点(ガラスの粘度が約1014.5dPa・sに相当する温度)が600℃以上、605℃以上、610℃以上、615℃以上、620℃以上、630℃以上、635℃以上、640℃以上、645℃以上、650℃以上、特に655℃以上であることが好ましい。歪点温度が低すぎると、結晶化前のガラスを成形した際に割れやすくなる。
【0086】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前のガラスの状態で、徐冷点(ガラスの粘度が約1013dPa・sに相当する温度)が680℃以上、685℃以上、690℃以上、695℃以上、700℃以上、705℃以上、710℃以上、715℃以上、720℃以上、特に725℃以上であることが好ましい。徐冷点温度が低すぎると、結晶化前のガラスを成形した際に割れやすくなる。
【0087】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、主結晶としてβ-石英固溶体が析出していることが好ましい。β─石英固溶体を主結晶として析出させれば、結晶粒径が100nm以下になりやすく、紫外~赤外域の透過性が高まりやすい。また結晶化ガラスの熱膨張係数を低くしやすくなる。
【0088】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、20~200℃における熱膨張係数が-20×10-7/℃~30×10-7/℃、-10×10-7/℃~30×10-7/℃、-9×10-7/℃~30×10-7/℃、-8×10-7/℃~30×10-7/℃、-7×10-7/℃~30×10-7/℃、-6×10-7/℃~30×10-7/℃、-5×10-7/℃~30×10-7/℃、-5×10-7/℃~28×10-7/℃、-5×10-7/℃~26×10-7/℃、-4×10-7/℃~25×10-7/℃、特に-3×10-7/℃~25×10-7/℃であることが好ましい。20~200℃における熱膨張係数が低すぎても高すぎても、加工基板の寸法変化が大きくなりやすくなる。
【0089】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、20~380℃における熱膨張係数が-20×10-7/℃~30×10-7/℃、-10×10-7/℃~30×10-7/℃、-9×10-7/℃~30×10-7/℃、-8×10-7/℃~30×10-7/℃、-7×10-7/℃~30×10-7/℃、-6×10-7/℃~30×10-7/℃、-5×10-7/℃~30×10-7/℃、-5×10-7/℃~28×10-7/℃、-5×10-7/℃~26×10-7/℃、-4×10-7/℃~25×10-7/℃、特に-3×10-7/℃~25×10-7/℃、2×10-7/℃~25×10-7/℃、-1.5×10-7/℃~25×10-7/℃、-1×10-7/℃~25×10-7/℃、-0.5×10-7/℃~25×10-7/℃、0~25×10-7/℃、0.5×10-7/℃~25×10-7/℃、1×10-7/℃~25×10-7/℃、1.5×10-7/℃~25×10-7/℃、2×10-7/℃~25×10-7/℃、2.5×10-7/℃~25×10-7/℃、2.5×10-7/℃~24×10-7/℃、2.5×10-7/℃~23×10-7/℃、2.5×10-7/℃~22×10-7/℃、2.5×10-7/℃~21×10-7/℃、特に2.5×10-7/℃~20×10-7/℃であることが好ましい。であることが好ましい。20~380℃における熱膨張係数が低すぎても高すぎても、加工基板の寸法変化が大きくなりやすくなる。
【0090】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、20~750℃における熱膨張係数が-20×10-7/℃~30×10-7/℃、-10×10-7/℃~30×10-7/℃、-9×10-7/℃~30×10-7/℃、-8×10-7/℃~30×10-7/℃、-7×10-7/℃~30×10-7/℃、-6×10-7/℃~30×10-7/℃、-5×10-7/℃~30×10-7/℃、-5×10-7/℃~28×10-7/℃、-5×10-7/℃~26×10-7/℃、-4×10-7/℃~25×10-7/℃、特に-3×10-7/℃~25×10-7/℃、2×10-7/℃~25×10-7/℃、-1.5×10-7/℃~25×10-7/℃、-1×10-7/℃~25×10-7/℃、-0.5×10-7/℃~25×10-7/℃、0~25×10-7/℃、0.5×10-7/℃~25×10-7/℃、1×10-7/℃~25×10-7/℃、1.5×10-7/℃~25×10-7/℃、2×10-7/℃~25×10-7/℃、2.5×10-7/℃~25×10-7/℃、2.5×10-7/℃~24×10-7/℃、2.5×10-7/℃~23×10-7/℃、2.5×10-7/℃~22×10-7/℃、2.5×10-7/℃~21×10-7/℃、特に2.5×10-7/℃~20×10-7/℃であることが好ましい。20~750℃における熱膨張係数が低すぎても高すぎても、加工基板の寸法変化が大きくなりやすくなる。
【0091】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、液相温度が1500℃未満、1495℃以下、1490℃以下、1485℃以下、1480℃以下、1475℃以下、1470℃以下、1465℃以下、1460℃以下、1455℃以下、1450℃以下、1445℃以下、1444℃以下、1443℃以下、1442℃以下、1441℃以下、特に1440℃以下であることが好ましい。液相温度が高すぎると、溶融ガラス中に失透物が発生しやすくなる。一方、1480℃以下であれば、ロール法などでの製造が容易になり、1450℃以下であれば、鋳込み法などでの製造が容易になる。なお液相温度は約120×20×10mmの白金ボートに粉砕した試料を充填して線形の温度勾配を有する電気炉に20時間投入し、顕微鏡によって判定した結晶析出箇所の温度を電気炉の温度勾配グラフから算出する方法によって求めることができる。
【0092】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前後の密度変化率が1.1~10%、1.1~9%、1.1~8%、1.1~7%、1.1~5.5%、1.1~5.4%、1.1~5.3%、1.1~5.2%、1.1~5.1%、1.1~5%、1.2~5%、特に1.3~5%であることが好ましい。結晶化前後の密度変化率が小さすぎると、ガラスが十分に結晶化しておらず所望の熱膨張係数を得にくくなる。一方、結晶化前後の密度変化率が大きすぎると、結晶化時の体積収縮量が大きく、割れが発生しやすくなる。ここで、「結晶化前後の密度変化率」とは、{(結晶化後の密度(g/cm)-結晶化前の密度(g/cm))/結晶化前の密度(g/cm)}×100(%)を意味する。
【0093】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、ヤング率が60~120GPa、70~110GPa、75~110GPa、75~105GPa、80~105GPa、特に80~100GPaであることが好ましい。ヤング率が低すぎても高すぎても、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0094】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、剛性率が25~50GPa、27~48GPa、29~46GPa、特に30~45GPaであることが好ましい。剛性率が低すぎても高すぎても、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0095】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、ポアソン比が0.35以下、0.32以下、0.3以下、0.28以下、0.26以下、特に0.25以下であることが好ましい。ポアソン比が大きすぎると、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
【0096】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、化学強化等を施しても良い。化学強化処理の処理条件はガラス組成、結晶化度、溶融塩の種類などを考慮して、処理時間や処理温度を適切に選択すればよい。例えば、結晶化後に化学強化しやすくなるように、残存ガラスに含まれうるNaOを多く含んだガラス組成を選択しても良く、結晶化度を意図的に下げても良い。また、溶融塩はLi、Na、K等のアルカリ金属を単独で含んでも良いし、複数含んでも良い。さらに、通常の一段階強化だけでなく、多段階での化学強化を選択しても良い。この他に、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前に化学強化等で処理することで、試料表面のLiO含有量を試料内部よりも減らすことができる。こうしたガラスを結晶化させると、試料表面の結晶化度が試料内部よりも低くなり、相対的に試料表面の熱膨張係数が高くなり、熱膨張差に起因する圧縮応力を試料表面に入れることができる。また、試料表面の結晶化度が低い場合、表面にガラス相が多くなり、ガラス組成の選択によっては耐薬品性やガスバリア性を向上させることが出来る。
【0097】
次に本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを製造する方法を説明する。
【0098】
まず、上記組成のガラスとなるように調製した原料バッチを、ガラス溶融炉に投入し、1500~1750℃で溶融した後、成形する。なお、ガラス溶融時はバーナー等を用いた火炎溶融法、電気加熱による電気溶融法などを用いて良い。また、レーザー照射による溶融やプラズマによる溶融も可能である。また、試料形状は板状、繊維状、フィルム状、粉末状、球状、中空状等にすることができ、特段制限はない。
【0099】
次に得られた結晶性ガラス(結晶化可能なガラス)を熱処理して結晶化させる。結晶化条件としては、まず核形成を700~950℃(好ましくは750~900℃)で0.1~100時間(好ましくは1~60時間)行い、続いて結晶成長を800~1050℃(好ましくは800~1000℃)で0.1~50時間(好ましくは0.2~10時間)行う。このようにしてβ-石英固溶体結晶が主結晶として析出した透明なLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを得ることができる。なお、熱処理はある特定の温度のみで行って良く、二水準以上の温度に保持し段階的に熱処理しても良く、温度勾配を与えながら加熱しても良い。
【0100】
また、音波や電磁波を印加、照射することで結晶化を促進しても良い。さらに、高温にした結晶化ガラスの冷却速度はある特定の温度勾配で行って良く、二水準以上の温度勾配で行っても良い。耐熱衝撃性を十分に得たい場合、冷却速度を制御して残存ガラス相の構造緩和を十分に行うことが望まれる。800℃から25℃までの平均冷却速度は、結晶化ガラスの最も表面から遠い肉厚内部の部分において3000℃/分、1000℃/分以下、500℃/分以下、400℃/分以下、300℃/分以下、200℃/分以下、100℃/分以下、50℃/分以下、25℃/分以下、10℃/分以下、特に5℃/分以下であることが好ましい。また、長期間にわたる寸法安定性を得たい場合は、さらに2.5℃/分以下、1℃/分以下、0.5℃/分以下、0.1℃以下/分以下、0.05℃/分以下、0.01℃/分以下、0.005℃/分以下、0.001℃/分以下、0.0005℃/分以下、特に0.0001℃/分以下であることが好ましい。風冷、水冷等による物理強化処理を行う場合を除き、結晶化ガラスの冷却速度は表面~表面から最も遠い肉厚内部の部分における冷却速度は近しいことが望ましい。表面から最も遠い肉厚内部の部分における冷却速度を表面の冷却速度で除した値は、0.0001~1、0.001~1、0.01~1、0.1~1、0.5~1、0.8~1、0.9~1、特に1であることが好ましい。1に近いことで、結晶化ガラス試料の全位置において、残留歪が生じにくく、長期の寸法安定性を得やすくなる。なお、表面の冷却速度は接触式測温や放射温度計で見積もることができ、内部の温度は高温状態の結晶化ガラスを冷却媒体中に置き、冷却媒体の熱量および熱量変化率を計測し、その数値データと結晶化ガラスと冷却媒体の比熱、熱伝導度等から見積もることができる。
【実施例
【0101】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。表1~8は本発明の実施例(試料No.1~16)を示している。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【0109】
【表8】
【0110】
まず表1、3、5、7に記載の組成を有するガラスとなるように、各原料を酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の形態で調合し、ガラスバッチを得た。得られたガラスバッチを白金とロジウムを含有する坩堝、ロジウムを含有しない強化白金坩堝、耐火物坩堝、又は石英坩堝に入れ、1600℃で4~100時間溶融後、1650~1680℃に昇温して0.5~20時間溶融し、5mmの厚さにロール成形し、さらに徐冷炉を用いて700℃で30分間熱処理し、徐冷炉を室温まで100℃/hで降温することにより、結晶性ガラスを得た。なお、前記溶融はガラス素材の開発に広く使用される電気溶融法で行った。
【0111】
なお、試料No.11のガラス組成物を用いて、バーナー加熱、通電加熱、レーザー照射等によりガラスを溶融できることを確認しており、それに引き続き、プレス法、リドロー法、スプレー法、ロール法、フィルム法、オーバーフロー(フュージョン)法、手吹き法などにより、ガラス試料を半球状、球状、ファイバー状、粉末状、薄板状、管状、バルブ状に成形できることを確認した。さらに、試料No.13のガラス組成物を用いて、試料No.13よりも比重の大きい液体上にガラス融液を流し出し、引き続く冷却によりガラス組成物を板状に固化できることを確認した。ちなみに、いずれの方法で作製したガラスも、表に記載の条件で結晶化することができた。
【0112】
作製試料のPt、Rh含有量分析はICP-MS装置(AGILEINTTECHNOLOGY製 Agilent8800)を用いて分析した。まず、作製したガラス試料を粉砕し純水で湿潤した後、過塩素酸、硝酸、硫酸、フッ酸などを添加して融解させた。その後、試料のPt、Rh含有量をICP-MSで測定した。予め準備しておいた濃度既知のPt、Rh溶液を用いて作成した検量線に基づき、各測定試料のPt、Rh含有量を求めた。測定モードはPt:Heガス/HMI(低モード)、Rh:HEHeガス/HMI(中モード)とし、質量数はPt:198、Rh:103とした。尚、作製試料のLiO含有量は原子吸光分析装置(アナリティクイエナ製 ContrAA600)を用いて分析した。ガラス試料の融解の流れ、検量線を用いた点などは基本的にPt、Rh分析と同様である。また、その他成分に関しては、Pt、Rh、LiOと同様にICP-MSないし原子吸光分析で測定するか、予めICP-MSもしくは原子吸光分析装置を用いて調べた濃度既知のガラス試料を検量線用試料とし、XRF分析装置(RIGAKU製ZSX PrimusIV)で検量線を作成した後、その検量線に基づき、測定試料のXRF分析値から実際の各成分の含有量を求めた。XRF分析の際、管電圧や管電流、露光時間等は分析成分に応じて随時調整した。
【0113】
作製したガラスに対して、表中に記載の熱処理条件で核形成を行った後、結晶成長を行い結晶化させた。得られた結晶化ガラスについて、透過率、明度、色度、析出結晶、熱膨張係数、液相温度、密度、ヤング率、剛性率、ポアソン比、割れ、及び透明性を評価した。また、結晶化前の結晶性ガラスについては透過率、明度、色度等は結晶化ガラスと同様の方法で測定した。また、結晶性ガラスについては粘度、液相温度を測定した。
【0114】
透過率は、肉厚2mmに両面光学研磨した結晶化ガラス板について、分光光度計を用いた測定により評価した。測定には日本分光製分光光度計 V-670を用いた。なお、V-670には積分球ユニットである「ISN-723」を装着しており、測定した透過率は全光透過率に相当する。また、測定波長域は200~1500nm、スキャンスピードは200nm/分、サンプリングピッチは1nm、バンド幅は200~800nmの波長域で5nm、それ以外の波長域で20nmとした。測定前にはベースライン補正(100%合わせ)とダーク測定(0%合わせ)を行った。ダーク測定時はISN-723に付属された硫酸バリウム板を取った状態で行った。測定した透過率を用い、JISZ8781-42013およびそれに対応する国際規格に基づいて三刺激値XYZを算出し、各刺激値から明度及び色度を算出した(光源C/10°)。
【0115】
析出結晶は、X線回折装置(リガク製 全自動多目的水平型X線回折装置 Smart Lab)を用いて評価した。スキャンモードは2θ/θ測定、スキャンタイプは連続スキャン、散乱および発散スリット幅は1°、受光スリット幅は0.2°、測定範囲は10~60°、測定ステップは0.1°、スキャン速度は5°/分とし、同機種パッケージに搭載された解析ソフトを用いて主結晶および結晶粒径の評価を行った。
【0116】
熱膨張係数は、20mm×3.8mmφに加工した結晶化ガラス試料を用いて、20~200℃、20~380℃、20~750℃の温度域で測定した平均線熱膨張係数により評価した。測定にはNETZSCH製Dilatometerを用いた。
【0117】
液相温度は次の方法で評価した。まず、約120×20×10mmの白金ボートに300~500マイクロメートルに揃えたガラス粉末を充填し、電気炉に投入し1600℃で30分間溶融した。その後、線形の温度勾配を有する電気炉に移し替え、20時間投入し、失透を析出させた。測定試料を室温まで空冷した後、白金ボートとガラスの界面に析出した失透を観察し、失透析出箇所の温度を電気炉の温度勾配グラフから算出して液相温度とした。また、得られた液相温度をガラスの高温粘度曲線に内挿し、液相温度に相当する粘度を液相粘度とした。なお、各表記載のガラスの初相はX線回折、組成分析等(日立製走査電子顕微鏡日立製S3400N TyPE2、堀場製 EMAX ENERGY EX250X)等を用いて分析した。
【0118】
密度は、アルキメデス法にて測定した。
【0119】
歪点、徐冷点はファイバーエロンゲーション法で評価した。なお、結晶性ガラスを手引き法にてファイバー試料を作製した。
【0120】
高温粘度は白金球引き上げ法で評価した。評価の際は塊状のガラス試料を適正な寸法に破砕し、なるべく気泡が巻き込まれないようにしてアルミナ製坩堝に投入した。続いてアルミナ坩堝を加熱して、試料を融液状態とし、複数の温度におけるガラスの粘度の計測値を求め、Vogel-Fulcher式の定数を算出して粘度曲線を作成し、各粘度における温度を算出した。
【0121】
ヤング率、剛性率、及びポアソン比は、1200番アルミナ粉末を分散させた研磨液で表面を研磨した板状試料(40mm×20mm×2mm)について、自由共振式弾性率測定装置(日本テクノプラス製JE-RT3)を用いて室温環境下にて測定した。
【0122】
割れは、目視にて結晶化ガラスに割れが確認されなかったものを「○」、割れが確認されたものを「×」として評価した。
【0123】
透明性は、目視にて結晶化ガラスが透明であったものを「○」、透明でなかったものを「×」として評価した。
【0124】
表1~8から明らかなように、試料No.1~16の結晶化ガラスではβ-石英固溶体が主結晶として析出しており、紫外~赤外域の透過率が高く、熱膨張係数が低かった。また、割れが確認されず、透明であった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、紫外~赤外域の透過性が高く、低熱膨張であるため、特に半導体用基板に好適である。また、石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、カラーフィルターやイメージセンサー用基板等のハイテク製品用基板、電子部品焼成用セッター、光拡散板、半導体製造用炉心管、半導体製造用マスク、光学レンズ、寸法測定用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用容器、電磁調理用トッププレート、耐熱食器、耐熱カバー、防火戸用窓ガラス、天体望遠鏡用部材、宇宙光学用部材等にも好適である。