(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】免疫調節物質を産生する免疫隔離細胞とのワクチン接種
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20231227BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20231227BHJP
A61K 39/002 20060101ALI20231227BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20231227BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20231227BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231227BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231227BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231227BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231227BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231227BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20231227BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231227BHJP
A61K 35/28 20150101ALN20231227BHJP
A61K 38/18 20060101ALN20231227BHJP
A61K 38/19 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
A61K39/00 G
A61K39/00 H
A61K39/00 K
A61K9/50
A61K39/002
A61K39/02
A61K39/12
A61K39/39
A61K47/02
A61K47/34
A61K47/46
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P33/00
A61P35/00
A61K35/28
A61K38/18
A61K38/19
(21)【出願番号】P 2018516042
(86)(22)【出願日】2016-09-26
(86)【国際出願番号】 IB2016001968
(87)【国際公開番号】W WO2017064571
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2019-08-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2015-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518097970
【氏名又は名称】リリース セラピューティクス エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マッハ, ニコラス
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
【審判官】星 功介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/105895(WO,A1)
【文献】特表平10-506266(JP,A)
【文献】CANCER GENE THERAPY,2011年 8月,V18 N8,P553-562,URL,http://dx.doi.org/10.1038/cgt.2011.22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K39
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの回収可能な生体適合性マクロカプセルであって、ここで、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの各々が、
投与後7日間以上にわたって少なくとも20ng/24時間のGM-CSFを分泌す
る5×10
5
~1×10
6個の免疫隔離同種異系細胞を含
み、ここで、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが円筒形状を有し、長さ12~25mmである、少なくとも1つの回収可能な生体適合性マクロカプセル、および
(b)抗原成分
を含むワクチン組み合わせ物であって、
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが、
前記同種異系細胞および内部コイルを含むコアであって、前記内部コイル上のらせん間の距離
が1mm±0.1mmであり、そして、前記同種異系細胞が前記少なくとも1つのマクロカプセルのコア内において均一に分布し、前記内部コイル上に分布する、コア;および
前記コアを取り囲む半透膜であって、それを通したGM-CSFの拡散を可能にする半透膜
を含む、ワクチン組み合わせ物。
【請求項2】
前記半透膜が、ポリエーテルスルホン(PES)および熱可塑性ポリウレタンからなる群より選択される材料から構成される、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項3】
前記内部コイルがアルミニウムまたはチタンから構成される、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが
、長さ12mmである、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが以下:
i)回収チューブ;
ii)前記回収チューブに固定された回収フックであって、埋め込み後に前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの回収を容易にする回収フック;
iii)前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの前記膜を前記回収チューブに固定するコネクタ;
iv)前記細胞の装填を容易にする装填ハブ;および/または
v)チューブ本体およびチューブキャップを有する輸送チューブ
の1つまたはそれよりも多くをさらに含む、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項6】
前記コネクタの一方の端部が前記膜に挿入され、切頂円錐形状を有する、請求項5に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項7】
前記装填ハブが、前記膜にフリクションフィットされる、請求項5に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセル
が8×10
5個の免疫隔離同種異系細胞を含む、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項9】
前記免疫隔離同種異系細胞が
、少なくとも1つのさらなる免疫調節因子をさらに分泌する、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項10】
前記少なくとも1つのさらなる免疫調節因子が、IL-12、IL-15、IL-4、インターフェロンガンマ、ケモカインまたは樹状細胞成長因子、IL-3、IL-9、IL-1、IL-2、IL-7、IFNγの膜貫通受容体、可溶性または膜性幹細胞因子(SCF)、FL(Flt3リガンド)、G-CSF、TLR7アゴニスト、T細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)、グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、Vista、Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)、CD40、CD137(41BB)、CD27、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項11】
前記免疫隔離同種異系細胞が非接着性細胞
株である、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項12】
前記免疫隔離同種異系細胞が、造血起源の不死化非腫瘍性細胞である、請求項11に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが、50~150ng/日のGM-CSFを分泌する、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項14】
1つまたはそれを超えるさらなる治療
剤をさらに含む、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項15】
前記1つまたはそれを超えるさらなる治療剤が、1つまたはそれを超える免疫チェックポイント調節物質を含む、請求項14に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項16】
前記1つまたはそれを超える免疫チェックポイント調節物質が、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死タンパク質1リガンド(PD-L1)、T細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)、グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、Vista、Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)、CD40、CD137(41BBとしても公知である)、CD27、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたはそれを超える免疫調節分子を含む、請求項15に記載のワクチン組み合わせ物。
【請求項17】
請求項1に記載のワクチン組み合わせ物と、使用説明書とを含む、キットであって、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが滅菌され、滅菌パウチに個別にパッケージングされ、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が凍結され
た、キット。
【請求項18】
前記抗原成分が、1つまたは複数の抗原を産生または放出する細胞を含むか、あるいは感染因
子から得られた、請求項1
7に記載のキット。
【請求項19】
前記感染因子が、ウイルス、細菌、寄生病原体または真菌である、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
癌または感染因子の処置において使用するための、あるいは予防的ワクチン接種において使用するための、請求項1に記載のワクチン組み合わせ
物。
【請求項21】
癌または感染因子の処置において使用するための、あるいは予防的ワクチン接種において使用するための、請求項18または19に記載のキット。
【請求項22】
前記癌が、肺癌、メラノーマ、乳癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、急性白血病、慢性白血病、グリア芽細胞腫、低悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、骨癌、脳腫瘍、胃癌、食道癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、脊索腫および子宮頸癌からなる群より選択される、請求項
20に記載
のワクチン組み合わせ物。
【請求項23】
前記ウイルスが、HIV、CMV、再発性ヘルペス感染、B型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、C型肝炎およびヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群より選択され、前記細菌が、マイコバクテリア感染、Helicobacter pyloriおよび髄膜炎菌感染からなる群より選択され、
前記寄生病原体が、マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチスおよびエキノコックスからなる群より選択され、そして
前記真菌が、カンジダおよびアスペルギルスからなる群より選択される、請求項
19に記載のキット。
【請求項24】
請求項5に記載のワクチン組み合わせ物において使用される前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルを調製する方法であって、
(a)同種異系細胞がGM-CSFを確実に分泌するために、前記同種異系細胞を少なくとも2継代培養すること;
(b)前記培養細胞を細胞培養培地に再懸濁すること;
(c)滅菌空気圧下で前記細胞を前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルに装填すること;および
(d
)前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルを洗浄および冷凍保存すること
を含む、方法。
【請求項25】
前記ワクチン組み合わせ物がさらに、生理学的および/または薬学的に許容され得る担体、および/または、医薬添加物を含む、請求項1
7~1
9のいずれか一項に記載のキッ
ト。
【請求項26】
前記ワクチン組み合わせ物がさらに、生理学的および/または薬学的に許容され得る担体、および/または、医薬添加物を含む、請求項1に記載のワクチン組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年9月25日に出願された米国出願第62/232,940号および2016年9月7日に出願された米国出願第62/384,416号に基づく優先権を主張しており、これら出願の各々の内容は、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、免疫学の分野、特に腫瘍に対する細胞ベースの免疫化および感染因子に対するワクチン接種に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ワクチン接種の分野では、第1世代のワクチンは、免疫応答が望まれる抗原のみを含んでいた。しかしながら、ほとんどの場合、抗原の存在だけでは非常に低効率であるので、この免疫応答を増強するためにワクチン接種組成物が免疫調節物質として1つまたはそれを超えるアジュバント(すなわち、GM-CSF単独で、または他のアジュバントと組み合わせて)を含む第2世代のワクチンが開発された。有効であるために、アジュバントは、ワクチン接種部位において数日間にわたって安定に放出されなければならない。
【0004】
アジュバントをワクチン接種部位に提供するためのいくつかの異なる技術が報告されており、この技術の選択は免疫化の状況に依存する。
【0005】
例えば、(細胞ベースのワクチンとは対照的に)抗原ベースのワクチンの状況では、広く適用可能な技術は、ワクチン接種組成物中で抗原をアジュバントと単に組み合わせることである。得られた組成物を被験体に直接投与し、それにより、抗原およびアジュバントを同時かつ共局在的に供給する。
【0006】
しかしながら、この単純なアプローチは、すべてのワクチン接種の状況で使用することができない。例えば、ほとんどの癌(例えば、肺、結腸、胃、リンパ腫および脳)では、ワクチン接種のための有用な抗原が不明であることが多い。したがって、これらの癌型では、腫瘍に対する細胞ベースの免疫化戦略が必要である。細胞ベースのワクチンを伴う免疫化戦略では、抗原は、被験体に埋め込まれた細胞全体によって産生される。このような戦略は、アジュバントの効率的な送達を確実にするために、より精巧な技術の使用を必要とする。
【0007】
一例では、免疫調節物質は、ペグ化リポソームマイクロスフェアを使用して、「ネイキッドな」形態または徐放製剤のいずれかで、ワクチン接種部位に直接注射される。しかしながら、アジュバントの全身投与は効率的ではなく毒性であり得、GM-CSFは、ヒトの体内ではわずか数時間の半減期を有する不安定なタンパク質であるため、アジュバントとして使用されている組換えタンパク質(すなわち、GM-CSF)の局所放出は信頼性がないので、この戦略は、技術的および生化学的な困難性によって制限されることが多い。したがって、有効であるために、GM-CSFは、治療的に有効であるためにインサイチュ(in situ)で継続的に産生されなければならない。
【0008】
直接注射技術から生じる問題を回避するために使用される別の例は、免疫調節物質を局所的に産生する「バイスタンダー細胞」の使用である。これらの方法では、必要なアジュバントを産生する細胞を抗原の供給源に近接して埋め込み、それにより、ワクチン部位におけるアジュバントの効率的な局所放出を提供する。
【0009】
しかしながら、このアプローチもまた、いくつかの欠点を有する。ヒト免疫化では、複数回の免疫化が必要であり、同系バイスタンダー細胞は容易に入手可能ではないので、同種異系細胞が最も頻繁に使用される。したがって、1回目の注射後、バイスタンダー細胞は宿主の免疫系によって認識され(アロ認識)、拒絶され、それにより、免疫調節物質のさらなる安定な持続的産生が妨げられ、ワクチンの抗原性物質に対する所望の免疫応答が損なわれる。
【0010】
このアロ認識問題を克服するために、Borrelloら、(Human Gene Therapy,1999,10(12),1983-1991)には、細胞表面上でMCH分子を発現せず、HLAクラスIまたはII抗原を発現することができない細胞株K-562(ATCC寄託番号CCL-243)をGM-CSF供給細胞にし、それにより、反復免疫化によって生じるアロ反応の規模を潜在的に減少させる戦略が記載されている。しかしながら、これらの細胞はヒト癌細胞であり、HLAクラスIまたはIIタンパク質が関与せずに起こる強力な拒絶機構(これは、特異性がより低いが非常に迅速であり、細胞破壊が強力である)に対して非常に感受性である。例えば、K-562細胞は、NK細胞に対しておよびγδ T細胞に対しても非常に感受性であり、同種異系細胞の迅速な排除に至ることが公知である。
【0011】
したがって、ワクチン部位に注射されたK-562バイスタンダー細胞は、免疫調節物質の放出を有意に減少させ得る非MHC依存性細胞傷害性機構によって効率的かつ迅速に破壊され得る。
【0012】
また、NK細胞による迅速な破壊に対して非常に感受性であることに加えて、K-562細胞はまた、インターフェロンγ曝露によりMHCクラスIを発現し得る。1回目の免疫化中または反復免疫化後、ワクチン接種部位においてインターフェロンγが存在し得るかまたは放出され得るので、このようなMHCクラスIのアップレギュレーションはまた、古典的な細胞性免疫を介して迅速な細胞破壊をもたらし得る。
【0013】
これらの理由により、ワクチン接種におけるK-562などの細胞の使用は、多数の欠点を伴う。
【0014】
細胞ベースのワクチンの状況で広く使用される別の解決策は、抗原の供給源である細胞を操作して免疫調節物質も供給することによって、抗原の産生と免疫調節物質の放出とをカップルすることである。例えば、癌ワクチンでは、通常、抗原の供給源は腫瘍細胞全体であり、例えばトランスフェクションによって、必要なアジュバントを同時に産生するようにこれを操作し得る。
【0015】
マウスモデルにおいて得られた好ましい結果を考慮して、最初のヒト試験は同じ戦略を使用した。しかしながら、レトロウイルス感染のために、外科的に採取された患者の細胞をインビトロでエクスパンションする必要があり、それにより、前記方法の幅広い使用が妨げられるので、この技術は、非常に労働集約的で時間がかかることが判明した。
【0016】
レトロウイルスベクターの使用で観察される困難性を回避するために、腫瘍細胞を感染させるための他のウイルスベクターの使用も提案されている。
【0017】
それにもかかわらず、ほとんどの場合、試験した新たなウイルスに関連する主な問題は、感染後に、いくつかのウイルスタンパク質が腫瘍細胞から発現され、これらのウイルスタンパク質が外来感染因子として免疫系によって強く認識されるということである。したがって、弱い腫瘍抗原に対する免疫応答を増大する初期目標は歪められ、またはウイルスタンパク質に向けられ、その結果、抗腫瘍免疫応答が遮蔽され、その後の免疫化に対してレシピエントがプライミングされ、感染細胞の破壊がさらに増加し、抗腫瘍免疫化スキームの有効性が低下する可能性がある。
【0018】
したがって、抗原およびアジュバントの組み合せ供給源としての操作された自系腫瘍細胞の使用は、望ましくない免疫応答のリスクを最小化すると推測される(a priori)が、ウイルス感染の工程それ自体が重大な問題を生じさせる。
【0019】
自系細胞のウイルス感染から生じる問題を制限するために、患者の細胞を必要としない新たな戦略が開発されている。これらの技術では、類似の癌型を有する他の患者由来の細胞株によって抗原供給源が提供され、患者は、GM-CSFを分泌する放射線照射同種異系(別のヒト由来の)腫瘍細胞の反復注射によって免疫化される。これらの技術を使用した研究において免疫応答を示す患者の割合は、予想よりも低かった。
したがって、当技術分野では、免疫調節因子の一定供給源と、自然免疫系または適応免疫系との望ましくない相互作用が実質的にない抗原成分との両方を提供するワクチン組成物を開発する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【文献】Borrelloら、Human Gene Therapy,1999,10(12),1983-1991
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の要旨
優れた抗原駆動性癌免疫療法の開発は、適切な位置、適切な抗原材料(すなわち、自系腫瘍細胞)、適切な免疫刺激シグナル(例えば、GM-CSF(単独でまたは他のアジュバントと組み合わせて))、必要なアジュバントの持続的送達、アジュバントおよび抗原成分の安定かつ再現可能な送達、臨床グレードの材料のアベイラビリティ、ならびに生産をスケールアップする能力を必要とする。強力な抗癌免疫化は、腫瘍特異的抗原および強力なアジュバントを必要とする。免疫化部位において数日間にわたってGM-CSFなどの免疫調節物質を安定に局所放出することが、最も強力なアジュバントである。試験したすべてのマウス癌型において、それは、強力な長期持続性特異的抗腫瘍免疫を誘導する。しかしながら、GM-CSFの全身送達は、MSDCをリクルートして癌免疫を増強しないので、優れたアジュバントではない。
【0022】
カプセル化細胞療法(ECT)を使用して、臨床グレードの皮下プラットフォームを作製した。本発明は、二成分ワクチン組成物を利用する臨床グレード免疫化戦略に関する。ワクチン組成物の一方の成分は、抗原成分(すなわち、致死的に放射線照射された自系腫瘍細胞または1つもしくはそれを超える感染因子)であり、他方の成分は、少なくとも1週間にわたって有効量の免疫調節因子(すなわち、GM-CSF)を分泌するかまたは分泌するように遺伝子操作された免疫隔離同種異系細胞を含む少なくとも1つの回収可能な生体適合性マクロカプセルである。これらの免疫隔離同種異系細胞は、抗原成分のごく近傍において継続的かつ非免疫原性的な方法で活性型の免疫調節物質を分泌する。
【0023】
本発明は、以前の免疫化戦略に関連する欠点を克服する新たなアプローチであって、国際公開第2003/105895号(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている組成物および方法に基づく新たなアプローチを提供する。
【0024】
本明細書に記載されるワクチン接種戦略は、いかなるオーダーメイド遺伝子療法プロトコールも必要とせず、いかなるウイルスベクターの使用も伴わない。むしろ、標準アジュバント(すなわち、GM-CSF)は、抗原成分に近接してマクロカプセルから皮下放出される。この細胞ベースの免疫療法は、GM-CSFの安定な持続的標準局所放出と腫瘍特異的抗原とを合わせる。
【0025】
本明細書に記載されるワクチン組成物はいずれも、癌治療もしくは処置(本明細書では互換的にOnco-Maxi-VaxまたはMVX-ONCO-1とも称される)のための、または感染因子治療もしくは予防(本明細書では互換的にImmuno-Maxi-VaxまたはIA-Maxi-Vaxとも称される)のための治療的または予防的ワクチン接種に使用され得る。癌細胞を排除するために、抗癌治療は、患者自身の自然免疫応答機構をトリガーすることに基づくので、それは、固形腫瘍および血液関連癌の両方を含むすべての癌型において使用され得る。
【0026】
(a)少なくとも20ng/24時間のGM-CSFを分泌する約1×105~約1×106個の免疫隔離同種異系細胞(例えば、約8×105個の免疫隔離同種異系細胞)を含む少なくとも1つの回収可能な生体適合性マクロカプセル、および(b)抗原成分を含むワクチン組成物であって、該少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが、該同種異系細胞および内部コイルを含むコアであって、該同種異系細胞が該内部コイル上に分布したコア;および該コアを取り囲む半透膜であって、それを通したGM-CSFの拡散を可能にする半透膜を有するワクチン組成物が本明細書で提供される。生体適合性マクロカプセル内のいくつかの異なる濃度の同種異系細胞を試験した(例えば、5、8、10および15×105個の細胞)。非限定的な一実施形態では、最小の変動性で長期放出に適切な最良の長期安定性を提供するので、8×105個の細胞を選択した。
【0027】
半透膜は、ポリエーテルスルホン(PES)および熱可塑性ポリウレタンからなる群より選択される材料から作製され、ならびに/または内部コイルは、アルミニウムまたはチタンから作製される。いくつかの異なる孔径を有するいくつかの膜厚を試験した(例えば、PES 5、UltraPES 0.8、Ultra PES 0.7)。いくつかの実施形態では、内部コイル上のらせん間の距離は、約1mm±0.1mmである。内部コイルは、アルミニウム、チタンなどから作製され得る。
【0028】
各生体適合性カプセルは、円筒形状であり得る。いくつかの実施形態では、各生体適合性マクロカプセルは、長さ5~25mm(すなわち、長さ約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25mm)である。埋め込み、ハンドリング、製造および細胞装填の手順のための最適なサイズとして、12mmを選択した。
【0029】
マクロカプセルはまた、任意の適切な材料(限定されないが、ポリウレタンが挙げられる)から作製され得る回収チューブを含有し得る。少なくとも1つのマクロカプセルの膜は、回収チューブに固定され得る。例えば、コネクタ(例えば、ステンレス鋼コネクタ)は、回収チューブを少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの膜に固定するために使用され得る。膜に挿入されるコネクタの端部は、好ましくは、切頂円錐形状を有する。
【0030】
回収チューブは、埋め込み後に少なくとも1つのマクロカプセルの回収を容易にするための回収フックをさらに含有し得る。例えば、フックは、埋め込み中にマクロカプセルを固定するために使用され得、規定された時間後にマクロカプセルを除去するために使用され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、回収フックは、アイレットと、回収チューブへの取り付けを容易にするための少なくとも2つのレッグとを含む。
【0032】
回収フックは、限定されないが、ステンレス鋼を含む任意の適切な材料から作製され得、それは、紫外線硬化性接着剤を使用して回収チューブに固定され得る。
【0033】
埋め込み後に回収フックを固定するために、アイレットを通して縫合糸が配置され得る。
【0034】
少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルは、細胞の装填を容易にするための装填ハブをさらに含む。いくつかの実施形態では、装填ハブは、切頂円錐端部を有する。装填ハブは、膜にフリクションフィットされ得る。
【0035】
他の実施形態では、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルは、1つまたはそれを超える穴部を含有し得るチューブ本体およびチューブキャップを有する輸送チューブ内に含まれる。加えて、チューブキャップはまた、キャップにフリクションフィットされたルアーロックを含有し得る。装填ハブは、キャップ内のルアーロックに嵌合係合され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、ワクチン組成物は、2つの生体適合性マクロカプセルを含む。
【0037】
各マクロカプセル内の免疫隔離同種異系細胞は、少なくとも1週間にわたって少なくとも20ng/24時間のGM-CSFを分泌する。
【0038】
いくつかの実施形態では、抗原成分は、場合により放射線照射され得る自系腫瘍細胞である。これらの実施形態では、抗原成分は、約1×106~約1×107個の自系腫瘍細胞(例えば、約4×106個の自系腫瘍細胞)である。致死的に放射線照射された腫瘍細胞は、長期保存のために最大12カ月間(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12カ月間)凍結保存され得る。
【0039】
他の実施形態では、抗原成分は、感染因子(例えば、ウイルス、細菌、寄生病原体または真菌)に由来する。例えば、適切な抗原成分としては、不活性化病原体、感染因子溶解物、タンパク質抽出物、組換えタンパク質、ペプチドまたはDNAが挙げられる。非限定的な例として、ウイルスは、HIV、CMV、再発性ヘルペス感染、B型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、C型肝炎およびヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群より選択される;細菌は、マイコバクテリア感染、Helicobacter pyloriおよび髄膜炎菌感染からなる群より選択される;寄生病原体は、マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチスおよびエキノコックスからなる群より選択される;ならびに/または、真菌は、カンジダおよびアスペルギルスからなる群より選択される。
【0040】
本明細書に記載されるワクチン組成物ではいずれも、免疫隔離同種異系細胞は、少なくとも1つのさらなる免疫調節因子(例えば、IL-12、IL-15、IL-4、インターフェロンガンマ、ケモカインまたは樹状細胞成長因子、IL-3、IL-9、IL-1、IL-2、IL-7、IFNγの膜貫通受容体、可溶性または膜性幹細胞因子(SCF)、FL(Flt3リガンド)、G-CSF、TLR7アゴニスト、T細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)、グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、Vista、Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエーター(CD272としても公知である)(BTLA)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)(CD278としても公知である)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)(CD134またはTNFRSF4としても公知である)、CD40、CD137(41BBとしても公知である)、CD27およびそれらの組み合わせ)をさらに分泌する。
【0041】
マクロカプセルのコア内の免疫隔離同種異系細胞を取り囲む膜は、選択的透過性である。例えば、膜の分子量カットオフ(MWCO)は、約280kDaである。
【0042】
いくつかの実施形態では、免疫隔離同種異系細胞は、例えばプラスミドによるトランスフェクションまたはウイルスによる感染によって、GM-CSFを発現するように遺伝子改変される。
【0043】
免疫隔離同種異系細胞は、ヒト樹立細胞株(例えば、非接着性細胞株、例えば造血起源の細胞)である。いくつかの実施形態では、免疫隔離同種異系細胞は不死性であるかもしくは不死化され、および/または非腫瘍性である。免疫隔離同種異系細胞は、哺乳動物起源(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)のものである。いくつかの実施形態では、免疫隔離同種異系細胞は、放射線照射される。
【0044】
免疫隔離同種異系細胞は、約80~約960×10-15g/24時間のGM-CSF、10×10-15g/24時間を超えるGM-CSF、または100×10-15g/24時間を超えるGM-CSFを分泌する。
【0045】
特定の実施形態では、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルは、50~150ng/日(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145または150ng/日)のGM-CSFを分泌する。
【0046】
また、本明細書に記載されるワクチン組成物はいずれも、1つまたはそれを超えるさらなる治療剤を含有し得る。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを超えるさらなる治療剤は、免疫チェックポイント調節物質である。例えば、免疫チェックポイント調節物質は、1つまたはそれを超える免疫調節分子、例えば細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死タンパク質1リガンド(PD-L1)、TIM-3、GITR、LAG-3、Vista、BTLA、ICOS、OX40、CD40、CD137(41BBとしても公知である)、CD27、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)およびそれらの組み合わせなどをターゲティングする生成物または作用物質(例えば、タンパク質、抗体、化合物など)であり得る。
【0047】
したがって、標的が、阻害(すなわち、アンタゴニスト)能力または増強(すなわち、アゴニスト)能力を有する免疫チェックポイントであるかに応じて、カプセル化細胞は、阻害活性または増強活性のいずれかを有する分子を産生するように操作され得る。
【0048】
細胞ベースの免疫化とCTLA-4/PD-1遮断との間の相乗効果は、前臨床モデルにおいて実証されている。好ましくは、CTLA-4の局所産生が望ましい。
【0049】
少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび/または抗原成分は、凍結され、保存され、使用前に解凍され得る。
【0050】
本明細書に記載されるワクチン組成物ではいずれも、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルはまた、以下:i)回収チューブ;ii)該回収チューブに固定された回収フックであって、埋め込み後に該少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの回収を容易にする回収フック;iii)該少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの該膜を該回収チューブに固定するコネクタ;iv)該細胞の装填を容易にする装填ハブ;および/またはv)チューブ本体およびチューブキャップを有する輸送チューブを含有し得る。
【0051】
記載されるワクチン組成物のいずれかと、1つまたはそれを超える生理学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物も提供される。
【0052】
ワクチン組成物および/または医薬組成物と、使用説明書とを含むキットも提供される。例えば、このようなキットでは、抗原成分は、1つまたは複数の抗原を産生または放出する細胞、例えば場合により放射線照射された腫瘍細胞を含有し得る。あるいは、抗原成分は、感染因子(例えば、ウイルス、細菌、寄生病原体または真菌)から得られたものであり得る。
【0053】
本明細書に記載されるキットではいずれも、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルは、(例えば、使用前に)滅菌される。滅菌後、保存、輸送および/または送達のために、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルは、滅菌パウチに個別にパッケージングされ得る。
【0054】
治療的または予防的ワクチン接種(例えば、癌の治療またはワクチン接種)のための、本明細書に記載されるワクチン組成物、医薬組成物および/またはキットの使用も提供される。非限定的な例として、癌は、肺癌、メラノーマ、乳癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、急性白血病、慢性白血病、グリア芽細胞腫、低悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、骨癌、脳腫瘍、胃癌、食道癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、脊索腫および子宮頸癌からなる群より選択され得る。いくつかの実施形態では、癌は、肺癌;膵臓癌腫;卵巣癌腫;または頭頸部癌である。
【0055】
他の実施形態では、治療的または予防的ワクチン接種は、感染因子の治療またはワクチン接種である。例えば、感染因子は、ウイルス(例えば、HIV、CMV、再発性ヘルペス感染、B型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、C型肝炎またはヒトパピローマウイルス(HPV))、細菌(例えば、マイコバクテリア感染、Helicobacter pyloriまたは髄膜炎菌感染)、寄生生物(例えば、マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチスまたはエキノコックス)および真菌(例えば、カンジダまたはアスペルギルス)からなる群より選択される。
【0056】
これらの使用ではいずれも、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび抗原成分が埋め込まれ、続いて、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが除去される。例えば、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび抗原成分は、近接または接触して皮膚下に逐次投与される。抗原装填(すなわち、放射線照射癌細胞または感染因子の一部)は除去されない。むしろ、それらは、免疫系によって分解される。
【0057】
抗原成分の前に、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが埋め込まれる。
【0058】
少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルは、12日間未満;4~10日間;または5~7日間埋め込まれる。
【0059】
これらの使用ではいずれも、予防的または治療的ワクチン接種は、複数回注射、例えば規則的な間隔で行われる複数回注射を伴う。予防的または治療的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種である場合、規則的な間隔は、4週間にわたる週1回の注射とそれに続く2週間ごとに2回の追加免疫化を伴う。予防的または治療的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種である場合、規則的な間隔は、少なくとも2週間にわたる週1回の注射を伴う。好ましくは、複数回注射は、皮下注射である。
【0060】
有効量の本明細書に記載されるワクチン組成物、医薬組成物またはキットのいずれかを、それを必要とする患者に投与することによる治療的または予防的ワクチン接種のための方法も提供される。例えば、治療的または予防的ワクチン接種は、癌の治療またはワクチン接種である。非限定的な例として、癌は、肺癌、メラノーマ、乳癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、急性白血病、慢性白血病、グリア芽細胞腫、低悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、骨癌、脳腫瘍、胃癌、食道癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、脊索腫および子宮頸癌からなる群より選択され得る。いくつかの実施形態では、癌は、肺癌;膵臓癌腫;卵巣癌腫;または頭頸部癌である。
【0061】
他の実施形態では、治療的または予防的ワクチン接種は、感染因子の治療またはワクチン接種である。例えば、感染因子は、ウイルス(例えば、HIV、CMV、再発性ヘルペス感染、B型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、C型肝炎またはヒトパピローマウイルス(HPV))、細菌(例えば、マイコバクテリア感染、Helicobacter pyloriまたは髄膜炎菌感染)、寄生生物(例えば、マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチスまたはエキノコックス)および真菌(例えば、カンジダまたはアスペルギルス)からなる群より選択される。
【0062】
これらの方法のいずれかでは、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび抗原成分が埋め込まれ、続いて、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが除去される。例えば、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび抗原成分が、近接または接触して皮膚下に逐次投与される。
【0063】
抗原成分の前に、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが埋め込まれる。
【0064】
少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが12日間未満、4~10日間または5~7日間埋め込まれる。
【0065】
これらの方法のいずれかでは、予防的または治療的ワクチン接種が複数回注射、例えば、規則的な間隔で行われる複数回注射を含む。予防的または治療的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種であるとき、規則的な間隔が、4週間にわたる週1回の注射とそれに続く2週間ごとの2回の追加免疫化を含む。予防的または治療的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種であるとき、規則的な間隔が、少なくとも2週間にわたる週1回の注射を含む。好ましくは、複数回注射が皮下注射である。
【0066】
最後に、本明細書に記載されるワクチン組成物のいずれかにおいて使用される少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルを調製する方法も提供される。例えば、このような方法は、(a)該同種異系細胞を、該細胞がGM-CSFを確実に分泌するために、少なくとも2継代培養する工程;(b)該培養細胞を細胞培養培地に再懸濁する工程;(c)(例えば、滅菌空気圧を使用して)該細胞を該少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルに装填する工程;および/または(d)該装填ハブを除去するために、該回収チューブを切断する工程を伴い得る。このような方法はまた、回収チューブの切断端部をシーリングする工程、ならびに/または(例えば、液体窒素の気相を使用して)少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルを洗浄および冷凍保存するさらなる工程を伴い得る。
【0067】
治療的または予防的ワクチン接種において使用するための、本明細書に記載されるワクチン組成物、医薬組成物および/またはキットも提供される。
【0068】
例えば、治療的または予防的ワクチン接種は癌の治療またはワクチン接種であり、場合により、癌は、肺癌、メラノーマ、乳癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、急性白血病、グリア芽細胞腫、低悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、骨癌、脳腫瘍、胃癌、食道癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、脊索腫および子宮頸癌からなる群より選択される。
【0069】
他の実施形態では、治療的または予防的ワクチン接種は感染因子の治療またはワクチン接種であり、場合により、感染因子は、ウイルス、細菌、寄生生物および真菌からなる群より選択される。非限定的な例として、ウイルスは、HIV、CMV、再発性ヘルペス感染、B型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、C型肝炎およびヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群より選択され得、細菌は、マイコバクテリア感染、Helicobacter pyloriおよび髄膜炎菌感染からなる群より選択され、前記寄生病原体が、マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチスおよびエキノコックスからなる群より選択され、または真菌は、カンジダおよびアスペルギルスからなる群より選択される。
【0070】
本明細書中に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキットのいずれかでは、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が埋め込まれ、続いて、少なくとも1つのマクロカプセルが除去され、場合により、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび抗原成分が、近接または接触して皮膚下に逐次投与され、または抗原成分の前に、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが埋め込まれる。例えば、本明細書中に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキットのいずれかでは、少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが12日間未満、4~10日間または5~7日間埋め込まれる。
【0071】
これらの使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキットでは、予防的または治療的ワクチン接種は複数回注射を含み、場合により、複数回注射は規則的な間隔で行われ、場合により、複数回注射は皮下注射である。
【0072】
(i)予防的または治療的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種であるとき、規則的な間隔が、4週間にわたる週1回の注射とそれに続く2週間ごとに2回の追加免疫化であるか、または(ii)予防的または治療的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種であるとき、規則的な間隔が週1回である、本明細書中に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキットもまた提供される。
【0073】
特に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験では、本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料が使用され得るが、適切な方法および材料が以下に記載される。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。加えて、材料、方法および例は例示に過ぎず、限定することを意図するものではない。
【0074】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
(a)少なくとも20ng/24時間のGM-CSFを分泌する約1×10
5
~約1×10
6
個の免疫隔離同種異系細胞を含む少なくとも1つの回収可能な生体適合性マクロカプセル、および
(b)抗原成分
を含むワクチン組成物であって、
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが、
前記同種異系細胞および内部コイルを含むコアであって、前記同種異系細胞が前記内部コイル上に分布したコア;および
前記コアを取り囲む半透膜であって、それを通したGM-CSFの拡散を可能にする半透膜
を含む、ワクチン組成物。
(項目2)
前記半透膜が、ポリエーテルスルホン(PES)および熱可塑性ポリウレタンからなる群より選択される材料から構成される、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目3)
前記内部コイルがアルミニウムまたはチタンから構成される、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目4)
前記内部コイル上のらせん間の距離が約1mm±0.1mmである、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目5)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが円筒形状を有する、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目6)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが長さ約12mmである、項目5に記載のワクチン組成物。
(項目7)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが回収チューブをさらに含む、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目8)
前記回収チューブがポリウレタンから構成される、項目7に記載のワクチン組成物。
(項目9)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの前記膜が前記回収チューブに固定されている、項目7に記載のワクチン組成物。
(項目10)
前記回収チューブが、埋め込み後に前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの回収を容易にするための回収フックをさらに含む、項目7に記載のワクチン組成物。
(項目11)
前記回収フックが、アイレットと、前記回収チューブへの取り付けを容易にするための少なくとも2つのレッグとを含む、項目10に記載のワクチン組成物。
(項目12)
前記回収フックがステンレス鋼である、項目11に記載のワクチン組成物。
(項目13)
紫外線硬化性接着剤を使用して、前記回収フックが前記回収チューブに固定されている、項目11に記載のワクチン組成物。
(項目14)
埋め込み後に前記回収フックを固定するために、前記アイレットを通して縫合糸が配置されている、項目11に記載のワクチン組成物。
(項目15)
コネクタを用いて、前記回収チューブが前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの前記膜に固定されている、項目7に記載のワクチン組成物。
(項目16)
前記コネクタがステンレス鋼である、項目15に記載のワクチン組成物。
(項目17)
前記膜に挿入される前記コネクタの端部が切頂円錐形状を有する、項目15に記載のワクチン組成物。
(項目18)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが、細胞の装填を容易にするための装填ハブをさらに含む、項目7に記載のワクチン組成物。
(項目19)
前記装填ハブが切頂円錐端部を有する、項目18に記載のワクチン組成物。
(項目20)
前記装填ハブが、前記膜にフリクションフィットされる、項目19に記載のワクチン組成物。
(項目21)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが、チューブ本体およびチューブキャップを含む輸送チューブ内に含まれる、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目22)
前記チューブ本体および前記チューブキャップが1つまたはそれを超える穴部を含む、項目21に記載のワクチン組成物。
(項目23)
前記チューブキャップがルアーロックを含み、前記ルアーロックが前記キャップにフリクションフィットされる、項目22に記載のワクチン組成物。
(項目24)
装填ハブが、前記キャップ内の前記ルアーロックに嵌合係合されている、項目23に記載のワクチン組成物。
(項目25)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが約8×10
5
個の免疫隔離同種異系細胞を含む、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目26)
2つの生体適合性マクロカプセルを含む、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目27)
各マクロカプセル内の前記免疫隔離同種異系細胞が、少なくとも1週間にわたって少なくとも20ng/24時間のGM-CSFを分泌する、項目26に記載のワクチン組成物。
(項目28)
前記抗原成分が自系腫瘍細胞を含む、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目29)
前記腫瘍細胞が放射線照射されている、項目28に記載のワクチン組成物。
(項目30)
前記抗原成分が約1×10
6
~約1×10
7
個の自系腫瘍細胞を含む、項目29に記載のワクチン組成物。
(項目31)
前記抗原成分が約4×10
6
個の自系腫瘍細胞を含む、項目30に記載のワクチン組成物。
(項目32)
前記抗原成分が感染因子に由来する、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目33)
前記感染因子が、ウイルス、細菌、寄生病原体または真菌に由来する、項目32に記載のワクチン組成物。
(項目34)
前記抗原成分が、不活性化病原体、感染因子溶解物、タンパク質抽出物、組換えタンパク質、ペプチドまたはDNAである、項目33に記載のワクチン組成物。
(項目35)
前記ウイルスが、HIV、CMV、再発性ヘルペス感染、B型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、C型肝炎およびヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群より選択される、項目33に記載のワクチン組成物。
(項目36)
前記細菌が、マイコバクテリア感染、Helicobacter pyloriおよび髄膜炎菌感染からなる群より選択される、項目33に記載のワクチン組成物。
(項目37)
前記寄生病原体が、マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチスおよびエキノコックスからなる群より選択される、項目33に記載のワクチン組成物。
(項目38)
前記真菌が、カンジダおよびアスペルギルスからなる群より選択される、項目33に記載のワクチン組成物。
(項目39)
前記免疫隔離同種異系細胞が、少なくとも1つのさらなる免疫調節因子をさらに分泌する、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目40)
前記少なくとも1つのさらなる免疫調節因子が、IL-12、IL-15、IL-4、インターフェロンガンマ、ケモカインまたは樹状細胞成長因子、IL-3、IL-9、IL-1、IL-2、IL-7、IFNγの膜貫通受容体、可溶性または膜性幹細胞因子(SCF)、FL(Flt3リガンド)、G-CSF、TLR7アゴニスト、T細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)、グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、Vista、Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)、CD40、CD137(41BB)、CD27、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目39に記載のワクチン組成物。
(項目41)
前記マクロカプセルの前記コア内の前記免疫隔離同種異系細胞を取り囲む膜が選択的透過性である、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目42)
前記膜の分子量カットオフ(molecular weight cut of)(MWCO)が約280kDaである、項目41に記載のワクチン組成物。
(項目43)
前記免疫隔離同種異系細胞が、GM-CSFを発現するように遺伝子改変されている、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目44)
前記遺伝子改変が、プラスミドによるトランスフェクションまたはウイルスによる感染によって達成される、項目43に記載のワクチン組成物。
(項目45)
前記免疫隔離同種異系細胞がヒト樹立細胞株である、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目46)
前記ヒト樹立細胞株が非接着性細胞株である、項目45に記載のワクチン組成物。
(項目47)
前記非接着性細胞株が造血起源である、項目46に記載のワクチン組成物。
(項目48)
前記免疫隔離同種異系細胞が不死性であるか、または不死化されている、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目49)
前記免疫隔離同種異系細胞が非腫瘍性である、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目50)
前記免疫隔離同種異系細胞が哺乳動物起源である、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目51)
前記免疫隔離同種異系細胞がヒトである、項目50に記載のワクチン組成物。
(項目52)
前記免疫隔離同種異系細胞が放射線照射されている、項目51に記載のワクチン組成物。
(項目53)
前記免疫隔離同種異系細胞が、約80~約960×10
-15
g/24時間のGM-CSFを分泌する、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目54)
前記免疫隔離同種異系細胞が、10×10
-15
g/24時間を超えるGM-CSFを分泌する、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目55)
前記免疫隔離同種異系細胞が、100×10
-15
g/24時間を超えるGM-CSFを分泌する、項目54に記載のワクチン組成物。
(項目56)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが、50~150ng/日のGM-CSFを分泌する、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目57)
1つまたはそれを超えるさらなる治療剤をさらに含む、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目58)
前記1つまたはそれを超えるさらなる治療剤が免疫チェックポイント調節物質である、項目57に記載のワクチン組成物。
(項目59)
免疫チェックポイント調節物質が、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死タンパク質1リガンド(PD-L1)、T細胞免疫グロブリンムチン-3(TIM-3)、グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、Vista、Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエーター(BTLA)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー4(OX40)、CD40、CD137(41BBとしても公知である)、CD27、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたはそれを超える免疫調節分子をターゲティングする、項目58に記載のワクチン組成物。
(項目60)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が凍結される、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目61)
使用前に、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が解凍される、項目60に記載のワクチン組成物。
(項目62)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが、以下:
(i)回収チューブ;
(ii)前記回収チューブに固定された回収フックであって、埋め込み後に前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの回収を容易にする回収フック;
(iii)前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルの前記膜を前記回収チューブに固定するコネクタ;
(iv)前記細胞の装填を容易にする装填ハブ;および
(v)チューブ本体およびチューブキャップを含む輸送チューブ
の1つまたはそれよりも多くをさらに含む、項目1に記載のワクチン組成物。
(項目63)
項目1に記載のワクチン組成物と、生理学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物。
(項目64)
項目1に記載のワクチン組成物または項目63に記載の医薬組成物と、使用説明書とを含む、キット。
(項目65)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが滅菌される、項目64に記載のキット。
(項目66)
滅菌後に、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが滅菌パウチに個別にパッケージングされる、項目65に記載のキット。
(項目67)
前記抗原成分が、1つまたは複数の抗原を産生または放出する細胞をさらに含む、項目64に記載のキット。
(項目68)
前記1つまたは複数の抗原を産生または放出する細胞が腫瘍細胞である、項目67に記載のキット。
(項目69)
前記腫瘍細胞が放射線照射される、項目68に記載のキット。
(項目70)
前記抗原成分が感染因子から得られる、項目64に記載のキット。
(項目71)
前記感染因子が、ウイルス、細菌、寄生病原体または真菌に由来する、項目70に記載のキット。
(項目72)
治療的または予防的ワクチン接種のための、項目1に記載のワクチン組成物、項目63に記載の医薬組成物または項目64に記載のキットの使用。
(項目73)
前記治療的または予防的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種である、項目72に記載の使用。
(項目74)
前記癌が、肺癌、メラノーマ、乳癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、急性白血病、慢性白血病、グリア芽細胞腫、低悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、骨癌、脳腫瘍、胃癌、食道癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、脊索腫および子宮頸癌からなる群より選択される、項目73に記載の使用。
(項目75)
前記癌が肺癌である、項目74に記載の使用。
(項目76)
前記癌が膵臓癌腫である、項目74に記載の使用。
(項目77)
前記癌が卵巣癌腫である、項目74に記載の使用。
(項目78)
前記癌が頭頸部癌である、項目74に記載の使用。
(項目79)
前記治療的または予防的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種である、項目72に記載の使用。
(項目80)
前記感染因子が、ウイルス、細菌、寄生生物および真菌からなる群より選択される、項目79に記載の使用。
(項目81)
前記ウイルスが、HIV、CMV、再発性ヘルペス感染、B型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、C型肝炎およびヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群より選択される、項目80に記載の使用。
(項目82)
前記細菌が、マイコバクテリア感染、Helicobacter pyloriおよび髄膜炎菌感染からなる群より選択される、項目80に記載の使用。
(項目83)
前記寄生病原体が、マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチスおよびエキノコックスからなる群より選択される、項目80に記載の使用。
(項目84)
前記真菌が、カンジダおよびアスペルギルスからなる群より選択される、項目80に記載の使用。
(項目85)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が埋め込まれ、続いて、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが除去される、項目72に記載の使用。
(項目86)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が、近接または接触して皮膚下に逐次投与される、項目85に記載の使用。
(項目87)
前記抗原成分の前に、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが埋め込まれる、項目86に記載の使用。
(項目88)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが12日間未満埋め込まれる、項目87に記載の使用。
(項目89)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが4~10日間埋め込まれる、項目88に記載の使用。
(項目90)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが5~7日間埋め込まれる、項目89に記載の使用。
(項目91)
前記予防的または治療的ワクチン接種が複数回注射を含む、項目72に記載の使用。
(項目92)
前記複数回注射が規則的な間隔で行われる、項目91に記載の使用。
(項目93)
前記予防的または治療的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種を含むとき、前記規則的な間隔が、4週間にわたる週1回の注射とそれに続く2週間ごとの2回の追加免疫化を含む、項目92に記載の使用。
(項目94)
前記予防的または治療的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種を含むとき、前記規則的な間隔が、少なくとも2週間にわたる週1回の注射を含む、項目92に記載
の使用。
(項目95)
前記複数回注射が皮下注射である、項目92に記載の使用。
(項目96)
治療的または予防的ワクチン接種のための方法であって、有効量の項目1に記載のワクチン組成物、項目63に記載の医薬組成物または項目64に記載のキットをその必要のある患者に投与することを含む、方法。
(項目97)
前記治療的または予防的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種である、項目96に記載の方法。
(項目98)
前記癌が、肺癌、メラノーマ、乳癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、急性白血病、慢性白血病、グリア芽細胞腫、低悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、骨癌、脳腫瘍、胃癌、食道癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、脊索腫および子宮頸癌からなる群より選択される、項目97に記載の方法。
(項目99)
前記癌が肺癌である、項目98に記載の方法。
(項目100)
前記癌が膵臓癌腫である、項目98に記載の方法。
(項目101)
前記癌が卵巣癌腫である、項目98に記載の方法。
(項目102)
前記癌が頭頸部癌である、項目98に記載の方法。
(項目103)
前記治療的または予防的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種である、項目98に記載の方法。
(項目104)
前記感染因子が、ウイルス、細菌、寄生生物および真菌からなる群より選択される、項目103に記載の方法。
(項目105)
前記ウイルスが、HIV、CMV、再発性ヘルペス感染、B型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、C型肝炎およびヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群より選択される、項目104に記載の方法。
(項目106)
前記細菌が、マイコバクテリア感染、Helicobacter pyloriおよび髄膜炎菌感染からなる群より選択される、項目104に記載の方法。
(項目107)
前記寄生病原体が、マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチスおよびエキノコックスからなる群より選択される、項目104に記載の方法。
(項目108)
前記真菌が、カンジダおよびアスペルギルスからなる群より選択される、項目104に記載の方法。
(項目109)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が埋め込まれ、続いて、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが除去される、項目96に記載の方法。
(項目110)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が、近接または接触して皮膚下に逐次投与される、項目109に記載の方法。
(項目111)
前記抗原成分の前に、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが埋め込まれる、項目110に記載の方法。
(項目112)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが12日間未満埋め込まれる、項目109に記載の方法。
(項目113)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが4~10日間埋め込まれる、項目111に記載の方法。
(項目114)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが5~7日間埋め込まれる、項目113に記載の方法。
(項目115)
前記予防的または治療的ワクチン接種が複数回注射を含む、項目96に記載の方法。
(項目116)
前記複数回注射が規則的な間隔で行われる、項目115に記載の方法。
(項目117)
前記予防的または治療的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種を含むとき、前記規則的な間隔が、4週間にわたる週1回の注射とそれに続く2週間ごとの2回の追加免疫化を含む、項目116に記載の方法。
(項目118)
前記予防的または治療的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種を含むとき、前記規則的な間隔が、少なくとも2週間にわたる週1回の注射を含む、項目116に記載の方法。
(項目119)
前記複数回注射が皮下注射である、項目116に記載の方法。
(項目120)
項目18に記載のワクチン組成物において使用される前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルを調製する方法であって、
(a)同種異系細胞がGM-CSFを確実に分泌するために、前記同種異系細胞を少なくとも2継代培養すること;
(b)前記培養細胞を細胞培養培地に再懸濁すること;
(c)前記細胞を前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルに装填すること;および
(d)前記装填ハブを除去するために、前記回収チューブを切断すること
を含む、方法。
(項目121)
滅菌空気圧を使用して、前記細胞を前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルに装填する、項目120に記載の方法。
(項目122)
前記回収チューブの切断端部をシーリングする工程をさらに含む、項目120に記載の方法。
(項目123)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルを洗浄および冷凍保存する工程をさらに含む、項目122に記載の方法。
(項目124)
治療的または予防的ワクチン接種において使用するための、項目1~62のいずれか一項に記載のワクチン組成物、項目63に記載の医薬組成物または項目64~71のいずれか一項に記載のキット。
(項目125)
前記治療的または予防的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種であり、場合により
、前記癌が、肺癌、メラノーマ、乳癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、急性白血病、グリア芽細胞腫、低悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、骨癌、脳腫瘍、胃癌、食道癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、脊索腫および子宮頸癌からなる群より選択される、項目124に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキット。
(項目126)
前記治療的または予防的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種であり、場合により、前記感染因子が、ウイルス、細菌、寄生生物および真菌からなる群より選択される、項目124に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキット。
(項目127)
前記ウイルスが、HIV、CMV、再発性ヘルペス感染、B型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、C型肝炎およびヒトパピローマウイルス(HPV)からなる群より選択され、前記細菌が、マイコバクテリア感染、Helicobacter pyloriおよび髄膜炎菌感染からなる群より選択され、前記寄生病原体が、マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチスおよびエキノコックスからなる群より選択され、または前記真菌が、カンジダおよびアスペルギルスからなる群より選択される、項目126に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキット。
(項目128)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が埋め込まれ、続いて、前記少なくとも1つのマクロカプセルが除去され、場合により、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルおよび前記抗原成分が、近接または接触して皮膚下に逐次投与され、または前記抗原成分の前に、前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが埋め込まれる、項目124~127のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキット。
(項目129)
前記少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルが12日間未満、4~10日間または5~7日間埋め込まれる、項目128に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキット。
(項目130)
前記予防的または治療的ワクチン接種が複数回注射を含み、場合により、前記複数回注射が規則的な間隔で行われ、場合により、前記複数回注射が皮下注射である、項目124~129のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキット。
(項目131)
(i)前記予防的または治療的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種を含むとき、前記規則的な間隔が、4週間にわたる週1回の注射とそれに続く2週間ごとに2回の追加免疫化を含むか、または(ii)前記予防的または治療的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種を含むとき、前記規則的な間隔が週1回を含む、項目130に記載の使用のためのワクチン組成物、医薬組成物またはキット。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1A】
図1A~1Eは、ワクチン組成物において使用した生体適合性マクロカプセルの一連の概略図である。
図1Aは、同種異系細胞が分布した内部コイル(詳細J)と、コネクタ(詳細H)と、回収のためのフック(詳細I)とを含む生体適合性マクロカプセル全体の概略図である。
図1Bは、内部コイルの詳細図である。
図1Cは、コネクタの詳細図である。
図1Dは、埋め込み後に生体適合性マクロカプセルを適所に保持するために使用した縫合糸を示す。
図1Eは、装填ハブ/輸送チューブの詳細図である。
【
図1B】
図1A~1Eは、ワクチン組成物において使用した生体適合性マクロカプセルの一連の概略図である。
図1Aは、同種異系細胞が分布した内部コイル(詳細J)と、コネクタ(詳細H)と、回収のためのフック(詳細I)とを含む生体適合性マクロカプセル全体の概略図である。
図1Bは、内部コイルの詳細図である。
図1Cは、コネクタの詳細図である。
図1Dは、埋め込み後に生体適合性マクロカプセルを適所に保持するために使用した縫合糸を示す。
図1Eは、装填ハブ/輸送チューブの詳細図である。
【
図1C】
図1A~1Eは、ワクチン組成物において使用した生体適合性マクロカプセルの一連の概略図である。
図1Aは、同種異系細胞が分布した内部コイル(詳細J)と、コネクタ(詳細H)と、回収のためのフック(詳細I)とを含む生体適合性マクロカプセル全体の概略図である。
図1Bは、内部コイルの詳細図である。
図1Cは、コネクタの詳細図である。
図1Dは、埋め込み後に生体適合性マクロカプセルを適所に保持するために使用した縫合糸を示す。
図1Eは、装填ハブ/輸送チューブの詳細図である。
【
図1D】
図1A~1Eは、ワクチン組成物において使用した生体適合性マクロカプセルの一連の概略図である。
図1Aは、同種異系細胞が分布した内部コイル(詳細J)と、コネクタ(詳細H)と、回収のためのフック(詳細I)とを含む生体適合性マクロカプセル全体の概略図である。
図1Bは、内部コイルの詳細図である。
図1Cは、コネクタの詳細図である。
図1Dは、埋め込み後に生体適合性マクロカプセルを適所に保持するために使用した縫合糸を示す。
図1Eは、装填ハブ/輸送チューブの詳細図である。
【
図1E】
図1A~1Eは、ワクチン組成物において使用した生体適合性マクロカプセルの一連の概略図である。
図1Aは、同種異系細胞が分布した内部コイル(詳細J)と、コネクタ(詳細H)と、回収のためのフック(詳細I)とを含む生体適合性マクロカプセル全体の概略図である。
図1Bは、内部コイルの詳細図である。
図1Cは、コネクタの詳細図である。
図1Dは、埋め込み後に生体適合性マクロカプセルを適所に保持するために使用した縫合糸を示す。
図1Eは、装填ハブ/輸送チューブの詳細図である。
【0076】
【
図2】
図2は、本明細書に記載される二成分癌ワクチン戦略(Onco-Maxi-Vax)を示す概略図である。
【0077】
【
図3】
図3は、本明細書に記載される癌治療ワクチン接種戦略を示す概略図である。このプロトコールでは、自系腫瘍細胞の単一細胞懸濁液を処理し、放射線照射し、皮下注射の前に凍結する。同様に、GM-CSFを分泌する免疫隔離同種異系細胞を含む生体適合性マクロカプセルを埋め込み前に凍結する。処置の時点において、放射線照射自系腫瘍細胞を皮下注射し、マクロカプセルを同様の位置に埋め込む。皮下に埋め込んだカプセルは7日後に除去するが、放射線照射腫瘍細胞は患者の免疫系によって破壊される。このプロトコールは複数回注射を伴い、処置患者における抗腫瘍免疫応答および潜在的腫瘍退縮の誘導をもたらす。
【0078】
【
図4】
図4は、肺転移に対するMVX-ONCO-1処置の効果を示す一連の写真である。
【0079】
【
図5】
図5は、MVX-ONCO-1処置後の進行性難治性卵巣癌におけるCa125血清マーカーの減少を示すグラフである。
【0080】
【
図6】
図6は、難治性再発性脊索腫を有する患者における処置前、処置中および処置後のMRI結果を示す。部分応答が確認され、12カ月間を超えて継続中である。
【0081】
【
図7】
図7は、MVX-1細胞株によって産生されたGM-CSFの生物学的活性を決定するために実施した機能細胞ベースのアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
詳細な説明
定義
「宿主」、「被験体」、「患者」などの用語は、本明細書では、免疫化を受けている被験体を指すために互換的に使用される。
【0083】
本出願の文脈では、以下の用語は、以下のように定義される:
【0084】
本明細書で使用される「免疫調節物質」または「免疫調節因子」などの用語は、抗原または免疫原に対する免疫応答を増強、増幅または低減し得る化合物または組成物を指す。免疫調節物質の非限定的な一例は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)である。当業者であれば、当技術分野で公知の任意の他の適切な免疫調節物質が、本明細書に記載されるワクチン組成物において使用され得ることを認識し得る。
【0085】
「免疫刺激因子」または「免疫活性化因子」などは、抗原または免疫原に対する免疫応答を特異的に増強または増幅する免疫調節物質である。「免疫刺激因子」または「免疫活性化因子」という用語は、本明細書では、「アジュバント」という用語と同義的に使用される。
【0086】
宿主に導入された際、宿主の免疫応答から細胞が物理的に保護される(すなわち、細胞と免疫系のエフェクターとの間に物理的な接触がないことを条件として、細胞表面抗原、分泌タンパク質などを含むいかなる細胞成分に対しても有意な後天性免疫応答または自然免疫応答がない)場合に、細胞は「免疫隔離された」とみなされる。その結果として、宿主生物では、細胞に対する有意な抗体または細胞性免疫応答は見られない。
【0087】
免疫隔離同種異系細胞は免疫系によって検出不可能であり、それらに対するいかなる免疫応答も防止されるので、およびそれらはいかなる免疫応答からも物理的に保護されるので、それらは、宿主の免疫応答によって攻撃または破壊されない。
【0088】
本明細書で使用される「カプセル化」または「カプセル化された」などの用語は、宿主生物に対して非免疫原性の材料(例えば、プラスチック)のカプセルを含む生体適合性デバイス(すなわち、マクロカプセルまたはカプセル化細胞療法(ECT)デバイス)に細胞を免疫隔離する特定の手段を指す。生体適合性マクロカプセルなどのバリアデバイスに細胞または細胞集団を囲う操作は、マクロカプセル化として公知である。「カプセル」、「デバイス」、「マクロカプセル」などの用語は、本明細書では、本明細書に記載されるワクチン組成物の成分の1つを構成するマクロカプセルを指すために互換的に使用される。
【0089】
ワクチン組成物
治療的および/または予防的ワクチン接種における使用では、本明細書に記載されるワクチン組成物は、2つの成分(抗原成分と、免疫調節物質(すなわち、GM-CSF)を分泌する同種異系細胞を含む少なくとも1つの回収可能な生体適合性マクロカプセルと)を含む。好ましくは、カプセル化細胞は免疫調節物質を産生するように操作されるが、免疫調節物質を天然に産生する細胞および細胞株の使用も包含される。
【0090】
これとの関連で使用され得る医薬組成物およびキットも提供される。本明細書に記載されるワクチン組成物、医薬組成物またはキットはいずれも、治療的および/または予防的ワクチン接種における使用に適切である。同様に、本明細書に記載されるワクチン組成物、医薬組成物またはキットはいずれも、治療的および/または予防的ワクチン接種の方法において使用され得る。
【0091】
例えば、治療的または予防的ワクチン接種は、腫瘍もしくは癌の治療的もしくは予防的ワクチン接種、または1つもしくはそれを超える感染因子に対する治療的もしくは予防的ワクチン接種であり得る。
【0092】
産生される免疫調節因子は、マクロカプセル化同種異系細胞によって合成されたタンパク質であり得るが、それはまた、例えば、脂質などの細胞成分、または細胞によってさらに形質転換された外因性分子、例えば抗原提示細胞によってプロセシングされた抗原、または代謝産物であり得る。一実施形態では、免疫調節因子は、huGM-CSFである。細胞ベースの癌免疫化プロトコールでは、抗原は、有意な免疫応答をトリガーするためには弱すぎることが多く、この応答に関与するいくつかの分子は、それを増強または増幅することが公知であるので、免疫調節因子は、好ましくは、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)を誘引することによって機能し得る免疫刺激因子であって、CD4またはCD8 T細胞の活性も刺激し得る免疫刺激因子である。
【0093】
特に強力な免疫刺激因子は、サイトカインファミリーに属する。適切なサイトカインとしては、限定されないが、GM-CSF(顆粒球および顆粒球マクロファージ刺激因子)、IL-3、IL-4、IL-9、IL-1、IL-2、IL-7(インターロイキン)、IFNγの膜貫通受容体、可溶性または膜性SCF(幹細胞因子)、FL(Flt3リガンド)、G-CSFおよびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。好ましい免疫刺激因子は、GM-CSF(例えば、ヒトGM-CSF)およびFLである。
【0094】
癌治療との関連では、GM-CSFは、全身性抗腫瘍免疫を活性化するための最も強力なサイトカインであると確認されているので、免疫刺激因子として特に推奨される(Dranoffら、1993,Proc Natl Acad Sci USA,90(8):3539-43を参照のこと)。しかしながら、GM-CSFはまた、感染因子のワクチン接種および治療における免疫刺激因子として有効である。
【0095】
十分な免疫応答を誘導するために、異なる経路を刺激し得るいくつかの免疫調節因子を組み合わせることが非常に有利であり得る。例えば、1つの好ましい組み合わせは、GM-CSFおよびFLである。しかしながら、2つまたはそれを超える免疫調節因子の任意の他の組み合わせも使用され得る。適切な組み合わせの決定は、当該分野の技能の慣用のレベル内である。
【0096】
免疫隔離は、K-562細胞株などのHLA陰性細胞の使用に関連する重大な欠点を克服する。カプセル化細胞は、免疫系から完全に保護されるので、先天性免疫拒絶に関与する非カプセル化K-562細胞とは対照的に、それらは、先天性免疫または細胞性免疫によって破壊されない。生存し、タンパク質を長期間分泌し、複数回の免疫化を可能にするマクロカプセル化細胞の能力は、マクロカプセルの物理的バリアに直接関連する。また、カプセルの埋め込み後における患者へのGM-CSF放出の量および持続時間は、彼または彼女の先天性免疫または免疫抑制に応じて個体ごとに異なる可能性は低い。対照的に、非免疫隔離細胞(すなわち、GM-CSFを分泌するK-562細胞)が使用される場合、GM-CSF放出の安定性は、1回目の免疫化からその後の免疫化において任意の所与の患者で有意に変動し、さらには患者ごとに有意に変動する可能性が高い。
【0097】
細胞を免疫隔離する好ましい方法は、一般的な免疫系からそれらを「隠す」物理的バリアを提供することであり、細胞を含むコアと、半透膜によって取り囲まれたその上に分布した細胞を有する内部コイルとを有する生体適合性マクロカプセルなどのバリアデバイスによって達成され得る。
【0098】
免疫調節物質を分泌する細胞の免疫隔離は、遊離細胞の埋め込み(これは一般に、宿主の免疫系からそれらを保護するために免疫抑制薬を必要とする)に関連する重大な欠点を克服する。免疫攻撃を機械的に遮断することによって、マクロカプセルなどのバリアデバイスの使用は、免疫抑制療法の必要性を除去する。また、所望により、所定時間後に細胞を容易に回収し得るので、免疫調節因子の切替可能な放出が可能である。埋め込まれたデバイスを回収することによって、作用物質の放出を停止させ、免疫化プロセスの終了後に不要な分子が存在することを防止する。
【0099】
本明細書に記載されるワクチン組成物において使用される生体適合性マクロカプセルなどのバリアデバイスは、選択的透過性かつ非免疫原性の合成膜によって、宿主の免疫系から生細胞を分離する。半透膜の使用は、外部と内部との間における栄養素、タンパク質、酸素および生物治療物質の自由な交換を可能にする。小分子(例えば、細胞の生存に必要な分子)は、マクロカプセルの膜内の細孔を通過し得るのに対して、免疫細胞または抗体などの高分子量物質は排除される。この膜はまた炎症細胞を排除し、それにより、組織拒絶からカプセル化細胞を保護する。
【0100】
逆に、細胞によって産生される免疫調節因子は、細孔を通って外部培地に送達され得る。好ましくは、デバイスがその免疫防御特性を保持するために、小分子またはタンパク質および免疫調節物質がバリアを通過することが可能であり、免疫グロブリンのようなより大きいものがバリアを通過することが不可能な範囲内で、細孔の直径は選択される。
【0101】
カプセルは、様々な形状およびサイズを有し得る。具体的には、カプセルは、生物活性を維持して製品または機能の送達のためのアクセスを提供するために適切な任意の構成であり得る(例えば、円筒形状、長方形、円盤形状、パッチ形状、卵形、星形または球形を含む)。埋め込まれた後にカプセルを回収する場合、埋め込み部位からのカプセルの移動をもたらす傾向がある構成、例えばレシピエント宿主の血管中を移動するために十分小さい球状カプセルは好ましくない。長方形、パッチ、円盤、円筒および平板などの特定の形状はより大きい構造的完全性を提供し、回収が望まれる場合に好ましい。一実施形態では、マクロカプセルは、円筒形状である。
【0102】
本明細書に記載されるデバイスの半透膜は、選択的透過性かつ免疫防御性の膜から、または限外ろ過膜もしくは精密ろ過膜から作製される。当業者であれば、半透膜は、典型的には、約100nmの平均孔径を有することを認識し得る。また他の実施形態では、半透膜は、非多孔質膜材料(例えば、ヒドロゲルまたはポリウレタン)から作製され得る。
【0103】
ポリスルホン(ポリエーテルスルホン(PES)を含む)、ポリアクリレート(アクリルコポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン(熱可塑性ポリウレタンを含む)、ポリスチレン、ポリアミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル/塩化ビニル)ならびにそれらの誘導体、コポリマーおよび混合物を含む様々なポリマーおよびポリマーブレンドが、包囲半透膜を製造するために使用され得る。非限定的な例として、カプセルのためのポリマーは、熱可塑性ポリエーテルスルホン(PES)中空繊維(OD:720μm;ID:524μm、分子量カットオフ:32および80kDa;Akzo Nobel Faster AG,Wupperthal,Germany)およびAN-69ポリマー(アクリロニトリルおよびナトリウムメタリルスルホン酸アニオンコポリマー、Hospal R&D Int,Meyzieu,France)である。
【0104】
本明細書に記載されるマクロカプセルではいずれも、半透膜の公称分子量カットオフ(MWCO)は、500kDである。いくつかの実施形態では、MWCOは、約280kDである。
【0105】
いくつかの細孔寸法を有するいくつかの異なる膜厚を試験した(例えば、PES5、UltraPES 0.8およびUltraPES 0.7)。最終的に、臨床試験において使用するために、UltraPES0.7(Membrana GmbH,Wuppertal,Germany)を選択した。同様に、様々なカプセルの長さも試験し、埋め込み、ハンドリング、製造および細胞装填の手順のための最良のサイズとして12mmを選択した。
【0106】
好ましくは、半透膜は、約90~120μmの厚さである。本明細書に記載されるデバイスはいずれも、円筒形、中空繊維または平坦なシートとして構成され得る。デバイスの長さは、約4mm~15mmであり得る。いくつかの実施形態では、デバイスは、約0.9mm~1.2mmの内径を有する。デバイスの端部は、コネクタまたはメタクリル酸メチルを使用してシーリングされ得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、マクロカプセル化は、皮下に埋め込まれるように設計された膜から形成される予形成マクロカプセルを使用する。これらのマクロカプセルはまた、真皮と皮下層との間に配置される回収チューブを含む。いくつかの実施形態では、回収チューブは、医療グレードのポリマー(熱可塑性ポリウレタン、低密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレン、PEEK、ポリカーボネートウレタンならびに/または熱可塑性エラストマーを含む)から作製される。
【0108】
医師の近位にある(すなわち、膜の遠位にある)端部において、回収チューブは、埋め込み後にカプセルの回収を容易にするために使用され得るテザーフック(回収フックとも称される)を有する。好ましくは、回収フックは、一方の端部においてアイレットを有し、他方の端部において、回収チューブの内部への取り付けを容易にするための少なくとも2つのレッグを有する。非限定的な例として、回収フックは、医療グレードのステンレス鋼(すなわち、ステンレス鋼合金316LVM、316L、302および/または304)から作製される。回収フックは、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して固定され得る。非限定的な例として、それは、紫外線(UV)硬化性接着剤を使用して固定され得、および/または縫合糸は、回収フック中のアイレットを通して配置され得、マクロカプセルの埋め込み後において、これは依然として皮膚の外部にある。
【0109】
コネクタは、マクロカプセルの膜と回収チューブとの接続を容易にするために使用され得る。非限定的な例として、ステンレス鋼製コネクタが膜に接着され得る。いくつかの実施形態では、膜に挿入されるコネクタの端部は、円錐形状の端部(例えば、切頂円錐形状)を有する。
【0110】
マクロカプセルは、医療グレードの金属、例えばアルミニウムまたはチタンなどから作製された内部コイルを含有し、これは、コネクタの切頂円錐端部に挿入され得る。この内部コイルは、カプセル内部の細胞の秩序、具体的には均一な分布を保証し、壁における凝集を防止する。内部コイルはまた、細胞の凝集を防ぎ、かつデバイス内の細胞分布を改善し得る(国際公開第96/02646号を参照のこと)。
【0111】
適切な内部コイルは、1センチメートル当たり規定された数のらせん巻き(spire)を有し得る。例えば、コイルは、特定のらせん巻き間の距離(例えば、1mm±0.1mm)を有する強化バネを形成するように引き伸ばされた原材料(Hefaeus Materials)から形成され得る(
図1Bを参照のこと)。
【0112】
適切な内部コイルを形成したら、膜を強化バネ(すなわち、内部コイル)上でスライドさせ、UV硬化性接着剤を使用して回収チューブにシーリングする。一実施形態では、膜をポリウレタンコアに約2mm入れて配置し、コネクタの切頂円錐端部の直前に接着する。他の実施形態では、膜を固定するために、接着剤を回収チューブ全体に充填する。
【0113】
例えば、エチレンオキシド(EO)で滅菌された装填ハブ(例えば、BD Vasculon(商標)またはBD Insyte-W(商標)0.9mm×25mm)を使用して、内部コイルを空のマクロカプセルに装填し得る。例えば、UV光硬化性接着剤を使用して、この装填ハブを膜に固定する。いくつかの実施形態では、装填ハブは、コネクタの膜端部にフリクションフィットする切頂円錐端部を有する。
【0114】
輸送チューブは、1つまたはそれを超える穴部をチューブ本体およびツールキャップに穿孔することによって、ファルコン(Falcon)14mLチューブから改変され得る。当業者であれば、良好なEO滅菌を保証するために挿入する際に、これらの穴部を膜と整列させるべきであることを認識し得る。ルアーロックを挿入し、キャップにフリクションフィットし得る。次いで、装填ハブをルアーロックキャップに嵌合係合し得る。次いで、完成した輸送チューブを滅菌し、滅菌パウチに戻して個々にパッケージングする。
【0115】
マクロカプセルは、数マイクロメートルから3~4センチメートルの範囲の様々なサイズを有し得る。カプセルのサイズおよび細胞のサイズに応じて、200,000個もの細胞を1cmデバイスに装填し得る。いくつかの実施形態では、デバイスは円筒形状であり、約12mmの長さである。当業者であれば、いかなる過度な実験も伴わずに、本明細書に記載されるワクチン組成物において使用されるマクロカプセルのための最適な構成(すなわち、形状、サイズ、長さ、細胞数など)を決定し得る。
【0116】
本明細書に記載されるマクロカプセルにおいて使用するための適切な同種異系細胞は、液体ガス中に保存された1アリコート当たり5×106個の細胞を含むワーキングセルバンクから入手され得る。使用前にこれらの細胞を解凍し、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびG418(選択的抗生物質)を含む完全培地RPMI1640中で2~3継代培養して、細胞がGMCSFを確実に分泌するようにする。次いで、約800,000個の細胞を30μlの完全培地に再懸濁し、次いで、滅菌空気圧を使用して30μl全部を各カプセルに装填する。次いで、回収チューブを切断して装填ハブを除去し、UV接着剤を用いて回収チューブの端部をシーリングする。
【0117】
次いで、完全培地(無菌)でカプセルを洗浄し、無菌完全培地(約3~5mlの培地)を含む6ウェルディッシュ中でインキュベートする。
【0118】
マクロカプセルは、カプセル1個当たり1×105個の同種異系細胞~1×106個の同種異系細胞(例えば、8×105個の細胞)を含有し得る。これらの細胞はマクロカプセルのコア内に含まれ、マクロカプセル内の内部コイル上に分布し、半透膜によって取り囲まれる。
【0119】
培養前に、安全/品質管理(QC)工程が行われ得る。この安全QC工程の目的は、細胞の微生物学的な、マイコプラズマの、およびLAL/エンドトキシンの「状態」を評価することである。微生物学的なおよびマイコプラズマの評価は、上清をサンプリングし、それを選択寒天上で培養することによって実施される。LAL/エンドトキシンもまた、上清のサンプルにおいてではあるが、細菌エンドトキシンおよび/またはリポ多糖との反応を介して定量される。
【0120】
7日間の培養後、上清は、GM-CSF分泌について測定される。好ましくは、デバイスは、少なくとも20ng/カプセル/日を分泌する。典型的には、約50~150ng/カプセル/日が分泌される。したがって、特許請求の範囲に記載されているマクロカプセルは、低用量の免疫刺激因子(すなわち、GM-CSF)の持続的送達に適切である。
【0121】
マクロカプセル内のいくつかの濃度の細胞を試験した(例えば、5、8、10および15×105個の細胞)。8×105個の細胞は、最小の変動で長期放出のための最良の長期安定性を提供するので、選択した濃度であった。
【0122】
製造したら、当技術分野で公知の任意の方法を使用して、使用前にマクロカプセルデバイスを冷凍保存し得る。例えば、いくつかの実施形態では、冷凍保存は、液体窒素の気相で実施される。
【0123】
本明細書に記載されるワクチン組成物において使用される免疫隔離同種異系細胞は生きており、好ましくは、選択された免疫調節因子を長期的に(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日間またはそれを超えて)提供する。一実施形態では、免疫隔離細胞は、少なくとも7日間にわたって免疫調節因子を分泌する。
【0124】
免疫隔離同種異系細胞は免疫調節因子を天然に産生するか、またはそれらは免疫調節因子を発現するように遺伝子操作され得る。免疫調節因子を通常は産生しない細胞を遺伝子操作することによって、ワクチン組成物は、それを天然に産生する細胞に限定されない。突然変異タンパク質が改善された活性を発揮することがあることは公知であるので、適切な免疫調節因子は、天然に存在するものに限定されない。したがって、免疫調節因子は、野生型タンパク質に代えて改変型のタンパク質であり得る。いくつかの場合では、その分泌を達成するために、細胞は、可溶性の膜タンパク質を分泌するように遺伝子操作される。
【0125】
また、細胞を遺伝子改変することによって、免疫調節因子の発現レベルを制御することも可能である。1つの特に魅力的な状況は、使用される細胞において非常に強力であることが公知のプロモーターの制御下にその配列をクローニングすることによる作用物質の過剰発現である。このようにして、改変細胞は、高レベルの免疫調節因子を産生する操作された工場になる。免疫調節物質発現のレベルの制御のために、プロモーターは、その活性にしたがって選択され得る。別の実施形態では、免疫調節因子の遺伝子を天然に含む細胞が使用され得、前記遺伝子は、その特定の細胞において転写的にサイレントである。この状況では、転写は、適切な調節配列の挿入によって、例えば相同組換えによって活性化され得る。物質、光などの特異的刺激に応答する誘導性調節配列も使用され得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、免疫調節因子分泌細胞は、10ng/細胞106個/24時間を超える免疫調節因子(例えば、GM-CSF)を分泌し得る。例えば、細胞は、100ng/細胞106個/24時間に等しいもしくはそれを超える、または500ng/細胞106個/24時間を超える量の免疫調節因子を分泌し得る。10×10-15g/24時間を超える免疫調節因子、または100×10-15g/24時間を超える免疫調節因子を分泌する同種異系細胞が使用され得る。例えば、80~960×10-15g/24時間または500×10-15g/24時間を超える免疫調節因子を分泌する同種異系細胞が使用され得る。本明細書に記載されるデバイスは、少なくとも20ng/カプセル/日を分泌し得る。例えば、デバイスは、50~150ng/カプセル/日(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145または150ng/カプセル/日)を分泌し得る。
【0127】
必要であれば、所望の分泌レベルを達成するために、いくつかのカプセル(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれを超える)が同時に埋め込まれ得る。
【0128】
当技術分野で公知の任意の遺伝子改変方法が、免疫隔離同種異系細胞を遺伝子改変するために使用され得る。例えば、トランスフェクションによって導入される操作されたプラスミドおよび感染によって導入されるウイルスが使用され得る。レトロウイルスは、免疫調節因子をコードする遺伝子を宿主細胞のゲノムに導入するように操作され得るので使用され得る。
【0129】
適切な同種異系細胞は、目的の免疫調節因子を天然に産生する細胞に限定されない。むしろ、様々な細胞が使用され得る。好ましくは、細胞は、形質転換またはトランスフェクト、培養および増殖が容易なものである。本明細書に記載されるワクチン組成物ではいずれも、バイスタンダー免疫調節物質産生源として腫瘍細胞を使用する必要は必ずしもない。当業者であれば、異なる細胞型、例えば不死化非腫瘍性線維芽細胞、筋芽細胞、腫瘍細胞、内皮細胞、線維芽細胞または造血起源の細胞などを利用し得る。適切な細胞型の決定は、当該分野の技能の慣用のレベル内である。
【0130】
製造上の理由により、容易に凍結保存され得る非接着性細胞(線維芽細胞または上皮細胞を除く)が使用され得る。安全上の理由により、バイオセーフティーレベル1の細胞のみを試験した。カプセル化を受ける能力について、5つの異なる細胞株:CCL243、CCL246、CCL246.1、TIB202およびCRL1582を試験した。最終的に、CCL243(造血起源の細胞)を選択し、続いて、huGM-CSFを発現するように遺伝子改変した。MVX-1は、遺伝子改変CCL243細胞株の単一細胞クローニングから得られた細胞株である。最大18カ月間(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18カ月間まで)の長期保存のために効率的に凍結される能力により、MVX-1細胞を装填したカプセルを選択した。機能細胞ベースのアッセイでは、MVX-1細胞株によって産生されるGM-CSFは、市販のGM-CSFと同等であるとみなされた(以下の実施例6を参照のこと)。
【0131】
いくつかの実施形態では、同種異系細胞は、不死性細胞株または不死化細胞株であり、これらは一度遺伝子改変されたら、本明細書に記載されるすべての組成物および方法に使用され得る。細胞は、生体適合性マクロカプセル内で免疫隔離されているので、それらは宿主の免疫系によって危険にさらされず、不死化細胞の使用は、それらの近傍の他の細胞を危険にさらさない。
【0132】
重要なことに、細胞はマクロカプセル化されるので、同種異系細胞または異種細胞が使用され得る。したがって、自己細胞を利用する必要は必ずしもない。ワクチン組成物において使用される細胞は、好ましくは、ヒト細胞である。
【0133】
免疫調節因子の供給源はユニークな個体に限定されないので、当業者であれば、細胞を生体適合性マクロカプセル内に免疫隔離することが有利であることを認識し得る。
【0134】
マクロカプセル内の同種異系細胞は生きているので、免疫調節物質は、少なくとも数日間(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20日間またはそれを超える日数)にわたって継続的に産生される。
【0135】
埋め込み(implantation)
冷凍保存カプセルを解凍し、埋め込み前に少なくとも7日間培養する。1~4日目には完全培地中で培養を行い、5~7日目にはペニシリンおよびストレプトマイシンを欠く還元培地中で培養を行う。次いで、7日目に、GM-CSF分泌について、カプセルをアッセイする。埋め込み前に、カプセルをインキュベーター内で維持し、還元培地を含むファルコン(Falcon)15mLチューブに入れ、手術室または埋め込み室に移す。
【0136】
適切な埋め込みプロトコールの決定は、当該分野の技能の慣用のレベル内である。
【0137】
非限定的な例として、患者は、埋め込み前に局所麻酔薬を投与され得る。医師は、回収縫合糸ループ(例えば、ポリアミド縫合糸ループ)を回収ループに取り付け、14ゲージ針を使用してカテーテル(例えば、B Braun 14ゲージVasofitカテーテル)を導入し得る。次いで、カプセルをカテーテルに挿入し、挿入器具を使用して、カプセルをカテーテルのバレルの下方に移動させる。次いで、カテーテルを取り外すが、挿入ツールを使用して、取り外しの間にカプセルが皮下の適所に確実に留まるようにする。
【0138】
免疫隔離同種異系細胞は、数日間、例えば12日間未満(例えば、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1日間未満)、例えば4~10日間、例えば5~7日間埋め込まれる。このような短期間にわたる免疫隔離同種異系細胞の埋め込みは、免疫調節因子の放出によって誘導される顕著な線維症をもたらさない。また、ワクチン接種部位における、および/またはマクロカプセル周辺の炎症は、カプセル内における細胞生存率の減少を誘導しないので、その時間枠内における免疫調節因子の産生および放出を妨げない。
【0139】
埋め込み前に、マクロカプセルは、例えば、X線によって放射線照射され得る。放射線照射は、カプセルの破壊が起こった場合であっても、封入細胞が確実に増殖することができないようにする。また、放射線照射は、免疫調節因子の分泌が、放射線照射誘導細胞死により約10日後に確実に停止するようにする。そして、分泌された免疫調節因子が激しい炎症反応を生じさせる場合、これは有利であり得る。具体的には、GM-CSFを分泌するマクロカプセル化免疫隔離同種異系細胞の皮下埋め込みは、15日間~1カ月間を超えて埋め込まれた場合に、皮膚壊死を誘導し得る。埋め込み前のカプセルまたは細胞の放射線照射は、その後のカプセルの回収を妨げない。
【0140】
特定の実施形態では、2つのカプセルは、約5~15mm離れて(すなわち、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mm離れて)患者に埋め込まれる。重要なことに、本明細書に記載される治療方法の固有の作用機構により、腫瘍に近接して埋め込みを行うべきではない。カプセルの適切な位置および分離距離の選択は、当該分野の技能の慣用のレベル内である。
【0141】
カプセルが患者に埋め込まれる際、それらが埋め込み部位から移動することを防止するために、それらは、ステリストリップなどのパッチで固定され得る。ワクチン接種部位をモニタリングするために、患者の皮膚から突き出る縫合糸を有する埋め込まれたカプセルは、透明パッチでカバーされる。
【0142】
MVX-ONCO-1
本明細書に記載されるワクチン組成物、医薬組成物またはキットはいずれも、癌治療との関連で、または癌の処置方法において使用され得る。この製品は、「MVX-ONCO-1」(これは、免疫化の間に物理的に近接する2つの成分から作製される治療用製品(治療用ワクチン)である)と命名されている。
【0143】
MVX-ONCO-1系の1つの成分は腫瘍抗原の供給源(すなわち、抗原成分)であり、処置すべき患者から採取された放射線照射自系細胞から作製され、各患者に特異的である。好ましくは、患者組織は、非放射線照射患者から取られる。使用前に、病理学者は、切除腫瘍または癌細胞が切除されたことを確認し得る。固形腫瘍の場合、約5~10g(例えば、5、6、7、8、9または10g)の組織が切除される。
【0144】
一実施形態では、1つの成分は、約1×106~約1×107個の自系腫瘍細胞(例えば、約4×106個の自系腫瘍細胞)を含む。最大抗原曝露を確実にするために、抗原の供給源は、生検、手術または穿刺(tap)から得られ得る各患者自身の腫瘍細胞から作製される。
【0145】
胸水(または他の液体サンプル)の場合、約1リットルを収集し、液体サンプルを遠心分離し、緩衝液(すなわち、ハンクス平衡塩類溶液)で洗浄し、細胞を計数する。
【0146】
固体サンプルの場合、組織を消化するために、GMPグレードのコラゲナーゼIVを使用し得る。あるいはまたは加えて、組織を小片に切断するために、手術用メスによる機械的消化を使用し得る。次いで、得られた組織片をプラスチックバッグに入れ、実験用パドルまたはブレードブレンダーを使用してさらに機械的圧力で消化する。
【0147】
次に、消化組織断片を50mLファルコンチューブに分与し、遠心分離する。上清を廃棄し、Ca2+およびMg2+を欠く緩衝液でペレットを洗浄して、コラゲナーゼ(これは、活性のために二価カチオンの存在を必要とする)を不活性化する。次いで、ペレットを再懸濁し、70μmメッシュ(これは、単一細胞の通過を許容する)でろ過する。次いで、細胞を再びペレット化し、細胞を計数する。当業者であれば、細胞生存性のためのトリパンブルー試験も実施し得ることを認識し得る。
【0148】
細胞懸濁液を得るために、液体または固形腫瘍サンプルのいずれかから得られた細胞を消化し、次いで、液体窒素中で分割保存する前に10000Rad(すなわち、15~150グレイ(Gy))で放射線照射する。患者に再注射されている腫瘍細胞のいかなる成長も防止するために、安全対策として放射線照射が実施される。致死的に放射線照射された腫瘍細胞は、最大12カ月間(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12カ月間まで)の長期保存のために凍結され得る。
【0149】
ワクチン接種プロセスが癌分野において使用される場合、抗原成分は、腫瘍細胞全体である。いくつかの抗原は同じ系統からの多くの腫瘍上に存在するので、腫瘍細胞は同種異系のものであり得る。しかしながら、腫瘍細胞は、患者に対して自系である。
【0150】
放射線照射自系細胞は、単回ワクチン接種のための適切な用量に等分され得る。好ましくは、微生物学的な、マイコプラズマおよび/またはエンドトキシンのスクリーニングのために、上清を貯蔵する。次いで、個々のアリコートをジメチルスルホキシド(DMSO)で冷凍保存し得る。埋め込み前に、DMSOを洗い流し得、少量の懸濁液を調製し得る。非限定的な例として、4×106個の細胞のHBSS溶液500μlを調製し得る。
【0151】
すべての患者に共通するMVX-ONCO-1の他の成分は、免疫調節因子プロバイダーである。この成分は、免疫調節因子を分泌する免疫隔離同種異系細胞を含む少なくとも1つの回収可能な生体適合性マクロカプセルを含む。一実施形態では、マクロカプセルは、少なくとも20ng/24時間のGM-CSF(例えば、20~500ng/24時間)を分泌する約1×105~約1×106個の免疫隔離同種異系細胞(例えば、約8×105個の細胞)を含む。様々な実施形態では、免疫隔離同種異系細胞は、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500ng/24時間またはそれを超えるGM-CSF)を分泌する。
【0152】
MVX-ONCO-1ワクチン組成物では、カプセル化細胞は、免疫刺激分子(例えば、GM-CSF)を分泌するように遺伝子操作され、ワクチン接種部位において強力な免疫刺激シグナルを産生および分泌する免疫隔離バイオリアクターとして機能する。現在のところ、GM-CSFは、抗腫瘍免疫応答を生成するための最も強力な免疫刺激分子である。したがって、カプセル化細胞は、GM-CSFのみを分泌するように遺伝子操作され得る。しかしながら、相乗作用研究に応じて、容易に他の免疫調節分子を追加しまたはGM-CSFと置き換え得る。例えば、他のサイトカイン、例えばIL-12、IL-15、IL-4、インターフェロンガンマ、ケモカインまたは樹状細胞成長因子、IL-3、IL-9、IL-1、IL-2、IL-7、IFNγの膜貫通受容体、可溶性または膜性幹細胞因子(SCF)、FL(Flt3リガンド)、G-CSF、TLR7アゴニスト、TIM-3、GITR、TIM-3 GITR、LAG-3、Vista、BTLA、ICOS、OX40、CD40、CD137(41BBとしても公知である)、CD27およびそれらの任意の組み合わせを追加し、またはGM-CSFと置き換え得る。
【0153】
本明細書に記載される癌ワクチン組成物の2つの成分は、近接または接触して患者の皮膚下に配置される。例えば、放射線照射自系細胞を含む溶液が、2つのマクロカプセル間に埋め込まれ得る。いくつかの実施形態では、免疫学的に平静な(un-disturbed)位置においてワクチン接種を実施するために、成分は、原発腫瘍または転移から遠隔の部位に埋め込まれる。しかしながら、いくつかの実施形態では、ワクチン組成物を腫瘍の近傍に投与することも可能である。
【0154】
埋め込みの5~7日後、カプセルは、例えば、それに取り付けられたフック、テザーまたは糸を使用して除去される。抗原成分は除去されない。むしろ、それは徐々にプロセシングされ、天然に存在する機構を介して患者の免疫系によって除去される。
【0155】
Onco-Maxi-Vaxによるワクチン接種処置は、反復免疫化を伴う。フレキシブルなワクチン接種スケジュールを維持することが重要である。例えば、ワクチン組成物は、4週間にわたって皮下投与され得、続いて、2週間ごとに2回追加免疫化され得る。反復免疫化は、患者の体の同一または同様の位置において行われ得る。1つのプロトコールでは、4つの異なる埋め込み部位が用いられ(例えば、両腕および両大腿)、ワクチンの埋め込みは、処置の経過の間に各部位全体でローテーションされる。
【0156】
癌治療に使用される場合、自系腫瘍細胞の用量は、患者から採取された細胞の量に応じて調整され得る。試験に必要な細胞(すなわち、28×106個)に加えて、免疫化1回当たり約106~107個の細胞とすることが推奨される。自系腫瘍細胞の用量の決定および/または調整は、当該分野の技能の慣用のレベル内である。
【0157】
いくつかの実施形態では、抗原成分の供給源である腫瘍細胞と、免疫調節成分の供給源である免疫隔離同種異系細胞とは異なり、腫瘍細胞は、採取および/または放射線照射以外の操作が不要であるので、過去のワクチン接種戦略に対して有利である。
【0158】
この抗腫瘍免疫化は、広範な腫瘍型に対して実施され得る。上記のように、カプセル化免疫隔離同種異系細胞は、あらゆる患者について同一である。しかしながら、抗原成分は患者に固有であり、固形原発腫瘍から、転移から、および/または腫瘍細胞を含む流体(胸膜、腹膜、骨髄または血液)から採取され得る腫瘍細胞から得られ得る。
【0159】
臨床腫瘍学では、ほとんどの患者は、原発腫瘍または転移性病変を示す。しかしながら、すべての腫瘍または転移が等しく処理容易なわけではない。したがって、試験される腫瘍型は、実行可能性の点で様々な基準を満たす必要がある。採取され得る原発腫瘍を有する可能性が高い癌としては、限定されないが、グリア芽細胞腫などの中枢神経系腫瘍;肺腫瘍(非小細胞肺癌);前立腺腫瘍;胃癌腫;乳癌腫;リンパ腫;膵臓癌腫;肝細胞癌腫(肝腫瘍);結腸癌腫;腎細胞癌腫;卵巣癌腫;子宮癌腫;肉腫(軟組織);白血病(リンパ節または血液);および/または多発性骨髄腫(血液、骨髄、リンパ節、軟組織)が挙げられる。
【0160】
採取され得る転移を有する可能性が高い癌は、転移の位置に依存する。技術的な理由により、骨転移を採取することは他の位置よりも困難である。これらの癌としては、限定されないが、頭頸部癌腫(リンパ節転移);肺癌(肺、肝臓、軟組織、脳、副腎転移);前立腺(非骨転移);乳癌腫(肺、肝臓、軟組織、胸膜液);胃癌腫(肝臓);膵臓癌腫(肝臓);結腸癌腫(肝臓);メラノーマ(肺、リンパ節、軟組織、肝臓、脳);腎細胞癌腫(肺、肝臓);卵巣癌腫(腹水または胸膜液、肝臓);胚腫瘍(肺);および/または膀胱癌腫(肝臓、リンパ節)が挙げられ得る。
【0161】
本明細書に記載されるワクチン組成物、医薬組成物およびキットはいずれも、癌に対する治療免疫化のために、または癌の処置方法において使用され得る。非限定的な例として、処置される癌としては、限定されないが、肺癌、メラノーマ、乳癌、結腸癌、膵臓癌、腎臓癌、急性白血病、慢性白血病、グリア芽細胞腫、低悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫、多発性骨髄腫、肉腫、骨癌、脳腫瘍、胃癌、食道癌、頭頸部癌、甲状腺癌、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、脊索腫および子宮頸癌が挙げられ得る。
【0162】
ワクチン接種後、腫瘍進行は、当技術分野で公知の任意の方法を使用してモニタリングされ得る。例えば、CTスキャンなどのイメージングは、固形腫瘍効果判定(RECIST)基準または免疫関連応答基準(irRC)などの有効なツールに基づいて、腫瘍体積の変化を記録するために使用され得る。同様に、限定されないが、CA153、CA19-9、CEA、AFP、NSE、CA125を含む血清学的腫瘍マーカーがモニタリングされ得る。
【0163】
可能な限り、腫瘍構造の任意の変化を記録するために、転移の外科的切除が試行される。二次元測定による古典的な腫瘍評価は、免疫化処置の潜在的な有効性を評価するための最良の評価方法ではない可能性があることが十分に記載されている。腫瘍細胞の破壊は非常に効率的であり得、放射線検査における検出可能なサイズ変化を伴わずに、線維細胞または炎症細胞で置き換えられ得る。この状況では、PETスキャンによる評価としての代謝活性が適切であり得る。免疫化後の腫瘍病変の分析は、処置によってターゲティングされる腫瘍抗原候補の特性評価などの免疫学的分析のために非常に重要である。
【0164】
IA-Maxi-Vax
別の実施形態では、本明細書に記載されるワクチン組成物はいずれも、様々な感染性疾患に対する治療的または予防的免疫化との関連で使用される。この製品は、「IA-Maxi Vax」(感染因子)と称される。
【0165】
MVX-ONCO-1のように、「IA-Maxi-Vax」は、物理的に近接した2つの成分から作製される治療用または予防用製品(ワクチン)として使用され得る。
【0166】
IA-Maxi-Vaxでは、抗原成分は、感染因子由来の1つまたはそれを超える成分を含む。したがって、特定の感染症を患っているかまたはそれを発症するリスクを有する患者はすべて、同じ製品で処置される。ウイルス、細菌、寄生生物または真菌病原体によって引き起こされる感染性疾患において、多くの公知の抗原成分が記載されており、免疫化戦略に現在使用されている。これらの抗原はいずれも、不活性化病原体、感染因子の溶解物、タンパク質抽出物、組換えタンパク質、ペプチド、DNAまたは他の形態として使用され得る。いくつかの症状では、感染因子または宿主の病状に応じて、免疫化は弱いかまたは非防御性であり、有意な罹患率または死亡率につながる。
【0167】
IA-Maxi-Vaxワクチン組成物では、ワクチンの1つの成分は、所定の感染因子のための抗原の組み合わせまたは抗原のプールを含む。MVX-ONCO-1と同様に、IA-Maxi-Vaxの他の成分は、GM-CSFを分泌する免疫隔離同種異系細胞を含む少なくとも1つの生体適合性マクロカプセルである。
【0168】
「IA-Maxi-Vax」によるワクチン接種処置は、異なる皮下部位における反復免疫化を伴う。ワクチン接種の総回数は、プロトコールおよび投与量に依存し、具体的な各症例において調整されなければならない。例えば、ワクチン接種は、少なくとも2週間(例えば、2、3、4、5、6、7週間またはそれを超える)にわたって週1回の注射を必要とし得る。投与量の決定および/または調整は、当該分野の技能の慣用のレベル内である。
【0169】
「IA-Maxi-Vax」を使用して予防または処置され得る症状の例としては、限定されないが、以下のものが挙げられる:
・ウイルス感染症:
標的:様々な病期のHIV患者(初期ステージは、より強力な免疫系を有するより良好な候補であり得る)
標的:特定の症状におけるCMV感染症(臓器移植の前または後)
標的:再発性ヘルペス感染症
B型肝炎またはエプスタイン・バーウイルス
C型肝炎
ヒトパピローマウイルス(HPV)
・細菌感染症:
標的:マイコバクテリア感染症は、HIV患者などの特定の集団である
標的 Helicobacter pylori。H.pyloriは、胃潰瘍または胃炎の大部分の原因因子である。
・寄生生物感染症:
マラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチス、エキノコッカス(Echinoccus)
・真菌感染症:
カンジダ、アスペルギルス
【0170】
遅延型過敏症(DTH)
遅延型過敏症(DTH)反応は、単核白血球によって誘発される炎症反応である。遅延という用語は、抗原曝露の48~72時間後に現れる二次細胞応答と、抗原チャレンジの12分以内に一般に現れる即時型過敏性反応とを区別するために使用される。これらの反応は、抗体ではなくT細胞および単球/マクロファージによって媒介される。それらはまた、IV型過敏性反応と称される。
【0171】
腫瘍免疫療法との関連では、DTH試験は、非罹患皮膚に皮内注射される放射線照射自系腫瘍細胞を用いて実施される。24時間および48時間の時点で、局所炎症反応の存在および規模は、肥厚表皮のサイズを評価することによって記録される。DTHは、MVX-ONCO-1治療前、MVX-ONCO-1治療中およびMVX-ONCO-1治療後に実施される。
【0172】
通常、処置中および/または処置後に陰性処置前DTHが陽性DTHに変わる患者は、本明細書に記載されるワクチン組成物によって、より良好な転帰を示す傾向がある。その結果、ワクチン接種前にDTH+応答について患者を試験することが有用である。DTH+応答試験は、少なくとも3×106個の細胞(ワクチン接種前に1×106個の細胞;5~6週目に1×106個の細胞;およびワクチン接種後12週目に1×106個の細胞)を必要とする。
【0173】
好ましくは、DTH応答は、カプセル埋め込み部位とは反対の身体部位で試験される。
【0174】
適切な投薬スケジュールおよび/または埋め込み部位の決定は、当該分野の技能の慣用のレベル内である。投薬スケジュールの非限定的な一例は、以下の表に示されている:
【表1】
【0175】
十分なワクチン接種および試験プロトコールのために、少なくとも28×106個またはそれを超える細胞が必要である:
ワクチン接種のために6×4×106個の細胞;
DTH試験のために3×1×106個の細胞;ならびに
0.5×106個の放射線照射細胞および0.5×106個の非放射線照射細胞(これらを10日間培養して計数する)。放射線照射アリコートの細胞は、0.5×106個未満でなければならない。細胞が適切に放射線照射されたことを保証するために、この試験は実施される。
【0176】
医薬組成物およびキット
本明細書に記載されるワクチン組成物を含む医薬組成物およびキットも本明細書で提供される。これらの製品はすべて、デバイスの「万能(universal)」特徴により大量生産が容易であるので、工業生産に特に適切である。同種異系細胞は免疫隔離されているので、同じカプセル化細胞は、すべての患者に適切である。ワクチンまたは医薬組成物の複数回注射が必要とされる癌治療では、この「万能」特徴は特に興味深い。
【0177】
本発明の医薬組成物は、生理学的および/または薬学的に許容され得る担体と組み合わされた医薬組成物を含む。当技術分野で公知の任意の適切な生理学的または薬学的に許容され得る担体が使用され得る。このような組成物はまた、細胞の生存のために、および投与または埋め込みの成功のために必要な任意の医薬添加物を含有し得る。
【0178】
使用説明書と一緒に、本明細書に記載されるワクチン組成物を含むキットが本明細書で提供される。
【0179】
治療的および/または予防的ワクチン接種において使用するためのワクチン組成物、医薬組成物およびキットのいずれかの使用、ならびに本明細書に記載されるワクチン組成物、医薬組成物および/またはキットのいずれかを使用した治療的および/または予防的ワクチン接種の方法も本明細書で提供される。例えば、ワクチン接種は、癌の治療的ワクチン接種または感染因子に対する治療的もしくは予防的ワクチン接種であり得る。癌の免疫化では、患者は、典型的には、処置前に疾患を患っている。感染因子の免疫化では、患者は、疾患もしくは障害を患っているか、またはそれらを発症するリスクを有する。
【0180】
好ましくは、被験体はヒト患者であるが、動物も企図される。予防的免疫化は、良性疾患のような場合に好ましく、または例えば重篤な流行病の場合に必要であるので、被験体は、様々な理由によりワクチン接種を必要とし得る。
【0181】
遅かれ早かれ患者は抗原成分と接触するので、感染因子のワクチン接種は予防的であり得る。同様に、患者は抗原成分と既に接触していたが、自身では十分な免疫応答を発生させることができないので、感染因子の免疫化は治療的でもあり得る。
【0182】
所望のワクチン接種の性質に応じて、異なるワクチン接種プロトコールが使用され得る。両成分の投与は、同時に、別個にまたは逐次に行われ得る。投与を時間的に切り離すことが有利であり得る。実際、同種異系細胞は、生体適合性マクロカプセル中で免疫隔離されているので、それらは、典型的には長期持続性効果を有する。対照的に、抗原成分は、宿主の免疫系によって非常に迅速にプロセシングおよび排除される可能性が高い。このような事例では、成分の投与が切り離される場合、抗原成分の投与は、免疫隔離同種異系細胞の単回投与で反復され得る。
【0183】
最適な効果を生じさせるために、抗原性因子および免疫調節因子は共局在しなければならない。
【0184】
最適化免疫化プロセスでは、投与は、規則的な間隔で数回反復される。例えば、予防的または治療的ワクチン接種が癌の治療またはワクチン接種である場合、規則的な間隔は、4週間にわたる週1回の注射とそれに続く2週間ごとに隔週2回の追加免疫化である。同様に、予防的または治療的ワクチン接種が感染因子の治療またはワクチン接種である場合、規則的な間隔は、2週間にわたる週1回の注射である。
【0185】
いくつかの実施形態では、皮下位置は樹状細胞が豊富であるので、ワクチン組成物はこの領域に投与される。しかしながら、当業者であれば、投与が皮内的に、または予想免疫応答を促す可能性が高い他の任意の位置において行われ得ることを認識し得る。例えば、投与組成物は注射され得、摂取され得、埋め込まれ得、適用され得、または任意の他の投与手段であり得る。
【実施例】
【0186】
本発明を説明してきたが、以下の実施例は、限定ではなく例示目的で提供される。
【0187】
実施例
実施例1:いかなる標準治療も不適またはもはや不適の固形腫瘍患者におけるMVX-ONCO-1の安全性および忍容性を評価する非盲検第I相臨床試験(臨床試験NCT02193503)
目的:
研究の目的は、進行中の進行性転移性固形腫瘍を有する患者であって、彼らの腫瘍疾患のいかなる標準治療も不適またはもはや不適の患者に皮下投与(注射およびカプセル埋め込み)したMVX-ONCO-1(臨床グレードのカプセル化細胞療法(ECT)製品)の6回のワクチン投与の安全性および忍容性を評価することであった。
【0188】
評価項目:
研究の主要評価項目は、有害かつ重篤な有害事象(発生率、因果関係、重症度)、施された治験処置に対する局所耐性および全身耐性、固形腫瘍患者における検査値および生命徴候の変化を含む安全性および実行可能性パラメータを評価することであった。研究の副次的評価項目は、臨床活性および免疫モニタリングを評価する(例えば、イメージング技術、血清学的腫瘍マーカーおよび代謝モニタリングを使用していくつかの腫瘍応答を測定する)ことであった。
【0189】
研究デザイン:
これは非盲検第I相試験であり、難治性のまたは標準化学療法に不適の進行性固形腫瘍を有する15人の患者が含まれていた。
【0190】
倫理的な理由により、この研究のための腫瘍材料を得ることを唯一の目的として外科手術を実証することは許容不可能である。したがって、悪性細胞を含む液体を除去するために肋膜穿刺もしくは腹水穿刺を受けている患者、または臨床プロトコールに関係のない医学的な理由により必要であった手術を受けている患者からのみ、腫瘍材料は入手可能であった。
【0191】
腫瘍組織の調達:術前および手術
患者は、術前および臨床インフォームドコンセント用紙に署名し、自系腫瘍細胞ワクチンの生産のために余分な腫瘍組織を使用および操作することを許可した。
【0192】
外科的および組織病理学的な記録
手術室で、または腫瘍細胞にアクセスする滅菌手順によって、患者の自系細胞を採取した(腹水穿刺、胸水、骨髄、CTガイド生検)。細胞採取の手術報告は、疾患の程度、および標本と共に隣接器官が摘出されたか否かについての具体的な言及を伴う手術所見の記載を含んでいた。
【0193】
解離および自系腫瘍細胞ワクチンの製造
個々の各患者から得られた組織に対して、ワクチン調製のための腫瘍細胞の処理を行った。LTC標準操作手順(SOP)にしたがって無菌技術を厳密に遵守した現行の医薬品適正製造基準(cGMP)条件下で、解離およびワクチン用量の製造を行った。プロセスが完了したら、細胞を凍結し、専用タンクの液体窒素の気相中に保存した。
【0194】
処置および短期経過観察
腫瘍沈着から離れた健常皮膚において、免疫化を実施した。4×106個の放射線照射自系腫瘍細胞と、7日間にわたって20ng/24時間を超えるhuGMCSFを産生するように遺伝子操作した8×105個のMVX-1細胞をそれぞれ含む2つのマクロカプセルとを組み合わせた6回の皮下(sc)免疫化(1-2-3-4-6-8週目)で、患者を処置した。
【0195】
適格患者は、研究1日目(SD1)から4週間にわたってワクチン処置を毎週受け、続いて、2週離してで2回の追加注射を受けた。研究18週目の終了時(完全ワクチン接種サイクルのための9週間+経過観察の9週間)において、安全性および有効性の分析を実施した。ベースライン時において、ならびに6週目、12週目および18週目において、腫瘍サイズを評価した。
【0196】
7日後にマクロカプセルを除去し、huGM-CSF産生について分析した。
【0197】
長期経過観察
研究1日目(SD1)以後死亡または5年目のいずれか早い方まで、安全性について患者を経過観察する。また、重大なプロトコール違反、管理不良の重篤な合併症または重篤な有害事象、プロトコール不履行または管理上の理由によZW、患者は研究から除外した。
【0198】
研究対象集団:
研究対象集団には、進行中の進行性転移性固形腫瘍を有する患者であって、彼らの腫瘍型のいかなる標準治療も不適またはもはや不適の患者が含まれていた。
組み入れ基準:
・すべての認められている処置が尽きたか、または実行不可能な様々な部位の進行中の進行性転移性癌[肺(小細胞または非小細胞のいずれか)、結腸、乳房、膵臓(外分泌または内分泌)、胃、食道、頭頚部、甲状腺、腎臓、膀胱、前立腺、卵巣、子宮(子宮頸部または子宮体部)の癌腫;軟組織、骨、子宮の肉腫、メラノーマ;原発脳腫瘍]を有する18歳またはそれを超える年齢の男性患者または女性患者
・平均余命:少なくとも4カ月間の推定
・一般状態グレード0~2(WHO悪性度分類)
・重大な肝機能障害なし(ALTが正常範囲の上限の2.5倍未満であり、ビリルビンが正常範囲内である(例外:肝転移:ALTがULNの5倍未満である;ビリルビンがULNの3倍未満である)
・重大な腎機能障害なし(クレアチニンが正常範囲の上限の1.5倍以下である)
・重大な骨髄機能障害なし(ヘモグロビンが9.0g/dl超であり、WBCが2.5×109/L超であり、好中球が1.5×109/l以上であり、血小板が50×109/l以上である)
・原発腫瘍および/または転移が部分的/全体的な手術または穿刺に適したものであり、その後の細胞採取推定値が細胞27×106個超である
・臨床試験のコンセプトを理解する能力
・患者情報用紙およびインフォームコンセント用紙を理解することができる
・書面によるインフォームドコンセントの提出
除外基準:
・前4週間において他の治験研究に参加していたか、または研究を妨げると考えられる実験的治療手順を受けていた
・前4週間において化学療法処置を受けていた
・重篤な合併症
・治癒目的で処置され、完全寛解が5年間未満であった二次癌の病歴
・通常の薬物療法によって管理されない癌以外の全身性疾患を有する患者
・未処置の脳転移(無症候性患者であってもスクリーニングCTまたはMRIが必須)。脳転移の病歴を有する患者であって、スクリーニング時において手術/放射線療法後に脳再発の証拠がない患者は参加することができる
・30mg/日を超えるかまたはそれに等しいコルチゾンの慢性免疫抑制処置(ステロイドを含む)
・クマリンまたは連続静脈内ヘパリンによる抗凝固治療。皮下埋め込みの数時間前に処置を差し控えることができる限り、低分子量ヘパリン(LMWH)は許容される
・陽性HIV-1、HIV-2、HTLV-1、B型肝炎表面抗原またはC型肝炎抗体
・妊娠もしくは授乳しているか、または適切な避妊(手術、ホルモンまたは二重障壁、すなわちコンドームおよびペッサリー)を使用していない出産可能な女性
・ペニシリン、ストレプトマイシンのような研究製品(MVX-ONCO-1)中の試薬に対する既知のアレルギー。
【0199】
治験医薬品(IMP):
製造上の理由により、容易に凍結保存され得る非接着性細胞(線維芽細胞または上皮細胞を除く)を使用することができる。安全上の理由により、バイオセーフティーレベル1の細胞のみを試験した。カプセル化を受ける能力について、5つの異なる細胞株:CCL243、CCL246、CCL246.1、TIB202およびCRL1582を試験した。最終的に、CCL243(造血起源の細胞)を選択し、続いて、huGM-CSFを発現するように遺伝子改変した。MVX-1は、遺伝子改変CCL243細胞株の単一細胞クローニングから得られた細胞株である。
【0200】
MVX-ONCO-1は、活性特異的免疫療法(ASI)(腫瘍細胞に対する患者の免疫応答を刺激および/または増大するプロセス)の一形態である。
【0201】
MVX-ONCO-1は、
a.免疫保護マクロカプセル化遺伝子改変同種異系細胞株(MVX-1)から放出される免疫調節物質(GM-CSF:顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)、および
b.抗原の供給源としての放射線照射自系腫瘍細胞
から構成される細胞ベースの患者特異的免疫療法である。
【0202】
最大18カ月間(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18カ月間まで)の長期保存のために効率的に凍結される能力により、MVX-1細胞を装填したカプセルを選択した。MVX-1細胞を装填したマクロカプセルを処理し、凍結保存する。
【0203】
ワクチン投与:
1回の埋め込みは、7日間にわたって安定量の(20ng/24時間を超える)GM-CSFを放出するように遺伝子操作したMVX-1細胞株と、最低4×106個の自系腫瘍細胞とを含む2つのマクロカプセルから構成されていた。
【0204】
優良医薬品製造基準(GMP)条件で、すべての治療用製品を処理した。
【0205】
投与:
局所麻酔下で、2つのマクロカプセルを平行して1cm離して皮下に埋め込んだ。放射線照射自系細胞を2つのカプセル間に皮下注射した。最低27×106個の放射線照射自系腫瘍細胞(4×106個の細胞による6回のワクチン+1×106個の細胞による3回の遅延型皮膚過敏症試験)が利用可能である場合にのみ、患者を処置した。
【0206】
投与量およびスケジュール:
抗原装填の最適量に関する文献には、データが存在しなかった。したがって、この最初の臨床試験では、腫瘍細胞数を増加させなかった。安定疾患または部分応答/完全応答のいずれかを示す試験患者については、最初の6回の注射後に自系細胞が依然として利用可能である場合には、長期免疫化を月1回提供した。
【0207】
ヒトGM-CSFを産生する8×105個のMVX-1細胞をそれぞれ装填した2つの生体適合性マクロカプセルと、4×106個の放射線照射自系腫瘍細胞の皮下注射とを4週間にわたって週1回投与した。2回の追加投与を2週間ごとに与えた。埋め込みの7日後(すなわち、埋め込み第8日目)、マクロカプセルを外植した。
【0208】
データ分析および統計:
最後の参加患者が18週目(W18)の評価を完了したら、データ管理および統計分析を行った。すべての有効性パラメータを記述的に分析した。患者の生存曲線に応じて、補足分析を規則的な間隔で行った。
【0209】
スクリーニング段階で評価した患者の特徴を目視比較のために集計した。定量的変数については、以下の記述統計を示した:N、平均、標準偏差、最小値、中央値および最大値;定性的変数については、患者の頻度および割合を提供した。
【0210】
ベースラインで、以下のパラメータを記載した:
・患者人口統計
・診断、疾患活動性の状況、以前の処置を含むベースライン疾患特徴。
・治療を含む二次症状。
・病歴。
・過去および併用の薬
【0211】
予測集積:
安全上の理由により、1番目の患者が最初の4つのワクチンを服用した後にのみ、2番目の患者はワクチン接種を受けた。2番目の患者が彼らの最初の4つのワクチンを服用した後にのみワクチン接種を受けた3番目の患者について、同じ待機/観察期間を観察した。続いて、隔週で1人の参加者を集積平均した(12人の患者でさらに24週間)。
【0212】
患者による研究期間:
スクリーニング+細胞採取+ワクチン用量の製造(2週間)+1回の完全ワクチン接種処置(9週間)+経過観察(9週間):約6カ月間。
【0213】
研究フローチャートの概要は、以下の表に示されている:
【表2】
【0214】
結果:
治療試験に含まれる15人の患者全員を処置した。臨床試験のGMPおよびSOPにしたがって、各患者のMVX-ONCO-1を成功裏に製造し、MVX-ONCO-1のエンドトキシンおよび/またはマイコプラズマに関する細菌試験はすべて陰性であった。
【0215】
調製した治療用ワクチン組成物はいずれも、品質上の懸念により廃棄しなければならないものはなかった。
【0216】
MVX-ONCO-1で処置される癌型としては、卵巣、頭頸部、膵臓、前立腺、結腸直腸が挙げられる。これまでに、77個のワクチンを投与した。
【0217】
皮下埋め込み前の装填済カプセルからのGM-CSF分泌のレベルは、すべての場合において指定限界内であった。加えて、皮下に埋め込んだマクロカプセルはすべて、埋め込みの7日後に成功裏に除去した。除去後、その後のGM-CSF放出についてすべてのマクロカプセルを試験したところ、すべてが安定な高レベルの分泌を示した。除去後、1つのカプセルが壊れた。
【0218】
この試験との関連では、疑われる予想外の重篤な有害反応(SUSAR)は観察されなかった。また、重篤な有害事象(SAE)または全身有害事象(AE)は、MVX-ONCO-1製品との関係で報告されなかった。むしろ、すべてのSAEは、疾患進行に関係していた。22件の関連AEが報告されたが、いずれも重篤ではなかった。6件は、マクロカプセルの小欠陥によるものであり、1件のグレード2の埋め込み部位外傷および5件のグレード1の埋め込み部位外傷をもたらした。16件の報告された重篤ではない薬物関連薬物有害反応のうち、12件はグレード1の埋め込み部位血腫であり、3件はグレード1の微熱であり、1件はグレード3の血管迷走神経反応であった。ワクチン接種部位におけるグレード1~2の局所AEは、埋め込み中の痛み、局所の不快感、および/または限定的な炎症を含んでいた。
【0219】
実行可能性の結果の概要は、以下に示されている:
【表3】
【0220】
したがって、この研究の結果は、MVX-ONCO-1製品が安全でありかつ非常に忍容性良好であることを示しており、これらの結果は、臨床グレードのIMPの製造およびこの革新的戦略による患者の処置が実行可能であることを示している。加えて、MVX-ONCO-1製品はまた、99.5%GMPグレードのIMPとしてロバストである。
【0221】
短期経過観察の終了時(18週目)において、6人の患者(40%)が生存しており、9人が死亡(60%)した。長期経過観察では、4人の患者が死亡し、2人の患者が生存していた。全生存期間(OS)は、46日間~441日間の範囲であった(平均:199日間(SD:121日間)、中央値134日間)。RECIST 1.1.基準によれば、15人の患者のうち2人(13.33%)は部分応答を示し、6人(40.00%)は、任意の時点における最良の全体反応として安定疾患を示した。
【0222】
有効性の結果の概要は、以下に示されている:
【表4】
【0223】
結論:
ヒトにおけるこの最初の試験により、この細胞ベースの新規な患者特異的免疫療法の非常に優れた安全性プロファイルおよび実行可能性が実証された。また、副次的評価項目により、進行中の進行性難治性固形悪性腫瘍を有する患者の相当割合について臨床的利益が示された。免疫モニタリングパラメータの早期分析は、MVX-ONCO-1による免疫化時に、自身の腫瘍細胞に対して遅延型過敏症反応を誘導することができる患者が、より良好な生存を有する傾向があることを示している。加えて、長期部分応答を有する1人の患者におけるMVX-ONCO-1による免疫化前、免疫化中および免疫化後のリンパ球サブセットの予備分析により、抗原特異的免疫応答が示された。
【0224】
いくつかの腫瘍型(例えば、進行性膵臓癌腫、卵巣癌腫および/または頭頸部扁平上皮癌腫)および免疫チェックポイント調節物質との併用療法において、MVX-ONCO-1を用いた第2相試験が計画されている。例えば、以下の第IIa相臨床試験(コントロールアームなし)が企図されている:
-頭頸部癌におけるMVX-ONCO-1
-肺癌における単剤としてMVX-ONCO-1
-タキソールおよびカルボプラチンの標準的な第1選択療法後に再発した後の卵巣癌における有効性を改善するためのアジュバントとして、化学療法と組み合わせたMVX-ONCO-1
-膵臓癌における単剤としてMVX-ONCO-1
【0225】
以下の理由により、頭頸部癌に関する臨床試験が企図されている:
-これらの腫瘍から細胞を容易に採取することができる、
-典型的には、この癌は予後不良(6カ月未満)である、
-それらは頻繁に生じる癌である、
-これらの腫瘍はPD1/PDL-1応答性であり、そしてそれ故、それらは免疫原性腫瘍である
【0226】
これらの研究の評価項目は、6カ月時点における全生存率である。
【0227】
実施例2:自系腫瘍細胞の採取(抗原装填)
処置すべき患者から腫瘍塊(原発病変または転移)を外科的に採取した。採取した材料の悪性性質を確認するために、前記塊の一部に対して、標準的な病理学検査を実施した。次いで、単一細胞懸濁液を得るために、それを処理した。機械的方法および酵素的方法の両方によって、これを実施した。
【0228】
最初に、解剖顕微鏡を使用して腫瘍塊をより小さな片に切断し、次いで、様々な酵素(コラゲナーゼ)を含む滅菌溶液を含む滅菌バッグに腫瘍を入れた。バッグを細胞混合器(Stomacher Lab System)に挿入し、生成物を細胞懸濁液に処理した。37℃で数時間にわたる酵素的活性および機械的活性の組み合わせは、腫瘍の細胞外マトリックスの効率的な解離を可能にし、それを単一細胞懸濁液にした。無血清溶液中で、これを実施した。
【0229】
次いで、4℃、5分間、700rpmで冷却遠心機(Sorvall)を使用して、HBSSで細胞を3回洗浄し、HBSSに再懸濁した。次いで、トリパンブルー(Fluka)溶液およびNeubauerチャンバーを使用して、細胞を計数した。
【0230】
選択濃度で細胞を再懸濁し、臨床用途専用の照射器によって10000radで放射線照射し、等分し、10%DMSOを含む凍結培地で凍結した。
【0231】
実施例3:免疫隔離サイトカインプロバイダー
a)GM-CSF産生細胞の作製。
カプセルに導入されるべき細胞は、(ヒト細胞株から得られた)同種異系であった。不測の毒性を防止するために、臨床プロトコールにおいて既に承認されている細胞株、例えば不死化線維芽細胞または筋芽細胞を使用した。最初に、ヒトGM-CSF cDNAをこれらの細胞に安定トランスフェクトした。
【0232】
2つのトランスフェクション方法を使用した:レトロウイルスおよびエレクトロポレーション。レトロウイルストランスフェクションでは、hGM-CSF cDNAをMFGレトロウイルスベクターにインフレームで挿入し、ウイルスのLTRによって転写を駆動した。プラスミドは、いかなる選択マーカーまたは抗生物質耐性遺伝子も含んでいなかった。
【0233】
エレクトロポレーションによるトランスフェクションでは、hGM-CSF cDNAはCMVプロモーター下にあり、プラスミドは、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)を含む。
【0234】
トランスフェクションのための異なる種類の細胞および異なるGM-CSFプラスミドも使用することができるので、地元の衛生局の規制に対してより柔軟性がある。
【0235】
標準的な技術を使用して、5%CO2、無血清培地中で、サイトカイン産生細胞を37℃で培養した。以下のように採取を実施した:10cm培養プレート中のコンフルエントな接着性細胞の上清を除去し、5mlの加熱滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で細胞を5分間かけて37℃で1回洗浄した。次いで、PBSを除去し、2mlのトリプシン-EDTA 0.5%(Life Technologies N°25300054)を追加し、細胞を37℃で4分間インキュベートした。トリプシン/EDTAは、接着性腫瘍細胞の分離を可能にした。次いで、2mlピペットを用いて細胞を採取し、5mlのハンクス平衡塩類溶液(HBSS Life Technologies N°24020091)に希釈した。4℃、5分間、700rpmで冷却遠心機(Sorvall)を使用して、HBSSで細胞を3回洗浄し、HBSSに再懸濁した。次いで、トリパンブルー(Fluka)溶液およびNeubauerチャンバーを使用して、細胞を計数した。
【0236】
細胞によって産生および分泌されたhGM-CSFの量を、ろ過細胞上清に対するElisa(R&D system and Pharmingen kits)によって評価した。この分析は、最良のサイトカイン産生細胞株の選択を可能にした。
【0237】
b)サイトカイン産生細胞の免疫隔離
同種異系細胞によるサイトカインの持続的放出を保証し、反復免疫化を可能にするために、レシピエントの免疫系からサイトカイン産生細胞を免疫隔離することが必要であった。いずれかのマクロカプセル化によって、これを実施した。
【0238】
サイトカイン産生細胞をマクロカプセルに装填した。本明細書に記載されるマクロカプセルのいずれかを利用することができる。細胞懸濁液を10.5ul/分の速度でカプセルに装填した。カプセルのシーリングをポリマー接着剤によって達成したが、加熱または外科的クリップによっても行うことができる。GM-CSF分泌細胞を含むカプセル化細胞の上清の分析により、装填後少なくとも15日間にわたってGM-CSFの安定な継続放出が達成され、サイトカインレベルが約70ng/細胞105個/24時間であることが示された。
【0239】
実施例4:免疫化
Onco-Maxi-Vaxの免疫化は、ワクチン組成物の2つの成分を密接して皮下注射することを必要とした。
【0240】
局所麻酔下で皮膚小切開を使用して、サイトカイン産生細胞を含むカプセルを皮下組織中に入れた。サージカルテープで皮膚を閉じた。
【0241】
患者由来の放射線照射腫瘍細胞(=抗原装填)を解凍し、0.9%NaCl滅菌溶液で2回洗浄し、次いで、24ゲージ針を使用してカプセルのごく近傍に皮下注射した。
【0242】
ワクチン接種を規則的な間隔で反復した。ワクチン接種部位は、各免疫化で異なっていた(腹壁、上腕、大腿、胸郭など)。
【0243】
実施例5:比較データ
先行技術(例えば、国際公開第2003/105895号)に記載されているカプセルに対して様々な改善および/または変更を行うことによって、本明細書に記載されるワクチン組成物の「万能」成分を最適化しようと努めた。
【0244】
例えば、本明細書に記載されるワクチン組成物は、好ましくは、マクロカプセル内で非接着性細胞型を利用する。また、線維芽細胞または上皮起源の細胞の使用を企図した以前のデバイスとは対照的に、MVX-1細胞株は造血起源である。
【0245】
加えて、本明細書に記載されるワクチン組成物、使用および方法は、国際公開第2003/105895号に記載されている組成物では使用されなかった新規な凍結方法および別個のGMP調整レジメンを利用する。
【0246】
実施例6:GM-CSF生物学的活性アッセイ
MVX-1細胞株によって産生されたGM-CSFの生物学的活性を決定するために、細胞ベースの機能アッセイを実施した。LanthaScreen(商標)Cellular Assay(ThermoFisher Scientific)(これは、テルビウム標識リン酸化部位特異的抗体(PSSA)と緑色蛍光タンパク質(特定のキナーゼ基質のGFP融合物)との間の時間分解共鳴エネルギー移動(TR-FRET)を使用して、レシオメトリックかつロバストなアッセイ読み出し情報であって、ハイスループットスクリーニング(HTS)用途に適したアッセイ読み出し情報を提供する)を使用して、産生されたGM-CSFを含む細胞上清の2つのサンプルを2回反復で試験した。単一の検出抗体と一緒に標的のGFP融合物を使用することは、他の2抗体「サンドイッチ」アプローチと比べて、アッセイプロトコールを簡素化し、ビーズまたはさらなる試薬の必要性を排除し、アッセイを簡素化する。
【0247】
アッセイ条件
試験化合物
最初に、100%DMSO中、1000×濃度ですべての試験化合物を調製する。試験化合物の連続希釈(1/2log)をDMSO中で調製する。この同じ方法で、既知の阻害剤を調製する。
【0248】
アッセイプレート
Corning384ウェルホワイト平底ポリスチレン組織培養処理アッセイプレート(Corning #3570)。
【0249】
アッセイ培地
経路活性化を低下させ、その後の分析のためのベースラインを提供するために、LanthaScreen細胞アッセイは、典型的には、低血清(または無血清培地)中で行われる。
【0250】
溶解緩衝液
完全LanthaScreen細胞アッセイ溶解緩衝液は、20mM Tris-HCl、pH7.4、5mM EDTA、5mM NaF、150mM NaCl、1%NP-40(または等価物)、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma #P8340)、ホスファターゼ阻害剤カクテル(Sigma #P2850)および2~5nMの適切なTb-PSSAからなる。
アゴニストアッセイプロトコール(一般)
1. アッセイ培地で適切な細胞密度に希釈した32μLの細胞をアッセイプレートに追加する。必要な場合には、化合物を追加する前に、(細胞株の特性に応じて)細胞を37℃/5%CO2で0~24時間インキュベートする。
2. 40nLの1000×化合物または既知の活性化剤滴定をアッセイプレート中の細胞に追加する。8μLのアッセイ培地をこれらのウェルに追加する。
3. 8μLのアッセイ培地を残りの対照ウェルに追加して、容量を40μLにする。
4. 加湿インキュベーター内で、アッセイプレートを37℃/5%CO2で所定時間インキュベートする(細胞株/アッセイ特異的)。
5. 所定濃度のTb標識Abを有する溶解緩衝液の追加によって、細胞を溶解する(アッセイ特異的)。
6. 暗所で、アッセイプレートを室温で所定時間インキュベートする(アッセイ特異的)。
7. 蛍光プレートリーダーによってプレートを読み取る。
アンタゴニストアッセイプロトコール(一般)
1. アッセイ培地で適切な細胞密度に希釈した32μLの細胞をアッセイプレートに追加する。必要な場合には、化合物を追加する前に、(細胞株の特性に応じて)細胞を37℃/5%CO2で0~24時間インキュベートする。
2. 40nLの1000×化合物または既知の阻害剤滴定+4μLのアッセイ培地をアッセイプレート中の細胞に追加し、加湿インキュベーター内、37℃/5%CO2で30分間インキュベートする。
3. アクチベーターアッセイで決定した4μLのEC80濃度の活性化剤を、試験化合物および既知の阻害剤を含むすべてのウェルに追加して、最終アッセイ容量を40μLにする。
4. 4μLのアッセイ培地を残りの対照ウェルに追加して、容量を40μLにする。
5. 加湿インキュベーター内で、アッセイプレートを37℃/5%CO2で所定時間インキュベートする(細胞株/アッセイ特異的)。
6. 所定濃度のTb標識Abを有する溶解緩衝液の追加によって、細胞を溶解する(アッセイ特異的)。
7. 暗所で、アッセイプレートを室温で所定時間インキュベートする(アッセイ特異的)。
8. 蛍光プレートリーダーによってプレートを読み取る。
【0251】
アッセイ対照
個々の各アッセイについて、あらゆるアッセイプレート上で、以下の対照を作製する:
【0252】
MAX STIM対照(該当する場合)
MAX STIM対照(または0%阻害対照)によって、最大TR-FRETシグナル(発光比;520nm/490nm)を確立する。これらの対照ウェルは、0.1%DMSOの存在下、EC100濃度のアゴニストで刺激したGFP+細胞を含む。
【0253】
UNSTIM対照
UNSTIM対照によって、最小TR-FRETシグナルを確立する。これらの対照ウェルは、0.1%DMSOの存在下で非刺激細胞を含む。
【0254】
EC80対照(阻害剤モードのみ)
EC80対照は、活性化剤実験によって決定したアッセイ培地中の既知の活性化剤の濃度である。阻害剤モードでは、EC80対照を使用して、活性化または0%阻害の実際のベースラインを決定する。
【0255】
0%阻害
0.1%DMSOの存在下、EC80濃度のアゴニストで刺激した細胞を含むウェルから得られたTR-FRETシグナル(化合物は存在しない)。
【0256】
既知の阻害剤滴定(該当する場合)
既知の阻害剤対照標準曲線(10点滴定)を各アッセイプレートで行って、予想IC50範囲内でアッセイが確実に阻害されるようにする。
【0257】
スクリーニングに利用可能な関連LanthaScreen細胞株は、以下に示されている:
【表5】
【0258】
STAT5 A/B[pTyr694/699]-LanthaScreen STAT5 TF-1-活性化剤スクリーニング、GM-CSF刺激
細胞を解凍し、アッセイ培地(OPTI-MEM、0.5%csFBS、0.1mM NEAA、1mM ピルビン酸ナトリウム、100U/mL/100μg/mL Pen/Strep)に再懸濁して、細胞3,125,000個/mLの濃度とする。32μLの細胞懸濁液をホワイトTC処理アッセイプレート(細胞100,000個/ウェル)の各ウェルに追加し、加湿インキュベーター内、37℃/5%CO2で16~24時間インキュベートする。40nLの対照活性化剤GM-CSFまたは試験化合物を適切なアッセイウェルに追加し、続いて、8μLのアッセイ培地を追加する。加湿インキュベーター内で、アッセイプレートを37℃/5%CO2で30分間インキュベートする。5nMのLanthaScreen抗STAT5 A/B[pTyr694/699]抗体および10nMのTb-抗マウス抗体を含む30μLのLanthaScreen細胞アッセイ溶解緩衝液をウェルに追加する。アッセイプレートを室温で120分間インキュベートする。蛍光プレートリーダーを用いて、アッセイプレートを読み取る。
【0259】
STAT5 A/B[pTyr694/699]-LanthaScreen STAT5 TF-1-阻害剤スクリーニング、GM-CSF刺激
細胞を解凍し、アッセイ培地(OPTI-MEM、0.5%csFBS、0.1mM NEAA、1mM ピルビン酸ナトリウム、100U/mL/100μg/mL Pen/Strep)に再懸濁して、細胞3,125,000個/mLの濃度とする。32μLの細胞懸濁液をホワイトTC処理アッセイプレート(細胞100,000個/ウェル)の各ウェルに追加し、加湿インキュベーター内、37℃/5%CO2で16~24時間インキュベートする。40nLの対照阻害剤JAK阻害剤Iまたは試験化合物を適切なアッセイウェルに追加し、続いて、4μLのアッセイ培地を追加する。加湿インキュベーター内で、アッセイプレートを37℃/5%CO2で30~60分間インキュベートする。所定EC80濃度の4μLの10×対照活性化剤GM-CSFを、対照阻害剤または化合物を含むウェルに追加する。加湿インキュベーター内で、アッセイプレートを37℃/5%CO2で30分間インキュベートする。5nMのLanthaScreen抗STAT5 A/B[pTyr694/699]抗体および10nMのTb-抗マウス抗体を含む30μLのLanthaScreen細胞アッセイ溶解緩衝液をウェルに追加する。アッセイプレートを室温で120分間インキュベートする。蛍光プレートリーダーを用いて、アッセイプレートを読み取る。
【0260】
このアッセイの結果はすべて陽性であった(
図7を参照のこと)。MVX-1細胞株によって産生されたGM-CSFは、アッセイの限度内で市販のGM-CSFと同等であるとみなされた。
【0261】
等価物
本発明の1つまたはそれを超える実施形態の詳細は、上記付随説明に示されている。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が記載されている。本発明の他の特徴、目的および利点は、前記説明および特許請求の範囲から明らかであろう。本明細書および添付の特許請求の範囲では、文脈上特に明確に指示がない限り、単数形は、複数の指示対象を含む。他に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書で引用されるすべての特許および刊行物は、参照により組み込まれる。
【0262】
上記説明は例示目的で示されているに過ぎず、開示されている厳密な形態に本発明を限定することを意図するものではなく、本明細書に添付の特許請求の範囲によることが意図される。