(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】決済装置、決済方法及び決済プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/06 20120101AFI20231227BHJP
【FI】
G06Q20/06 300
(21)【出願番号】P 2019149854
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-03-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「研究開発の計画立案と現地の調整・交通事故情報及びドローンによる上空撮影映像の解析」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(73)【特許権者】
【識別番号】519300714
【氏名又は名称】株式会社SA-GA
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】中山 功一
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕鷹
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-196394(JP,A)
【文献】特開2018-171432(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0152158(US,A1)
【文献】ブロックチェーンの衝撃,第1版第6刷,日経BP社,2017年02月20日,第174-202頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次支払者から二次支払者に譲渡され、当該二次支払者が商品を購入及び/又はサービスを受ける場合に提供者に対して代金を支払う二次支払いとして行使可能な使用権を発行する場合に、前記一次支払者のユーザ情報、前記二次支払者のユーザ情報、及び、前記二次支払者が使用可能な金額情報を含む使用権発行トランザクションを生成し、ブロックチェーンに対してブロードキャストし、当該ブロックチェーン上で登録された前記使用権の使用権IDを受け取ることで当該使用権を発行する使用権発行手段と、
前記一次支払者が前記二次支払者に対して課す前記使用権の使用制限に関する制限情報を前記二次支払者が使用可能な金額情報とは別途に登録する制限情報登録手段と、
前記二次支払いにおいて前記制限情報を満たすかどうかを確認する制限情報確認手段と、
前記ブロックチェーン上に登録された前記使用権に設定された使用可能残高を前記ブロックチェーンから取得し、当該使用可能残高と前記二次支払いの代金とを比較する使用権残高確認手段と、
前記二次支払いの代金と前記一次支払者の口座情報における残高とを比較する口座残高確認手段と、
前記二次支払いにおいて、前記制限情報を満たし、前記使用権に設定された使用可能残高が前記二次支払いの代金以上であり、前記一次支払者の口座情報における残高が前記二次支払いの代金以上である場合に、前記一次支払者の金融機関の口座情報から前記提供者の金融機関の口座情報に前記二次支払いの代金の金額分を移動して送金するための更新指示を行う口座残高更新手段と、
前記二次支払いにおいて、前記制限情報を満たし、前記使用権に設定された使用可能残高が前記二次支払いの代金以上であり、前記一次支払者の口座情報における残高が前記二次支払いの代金以上である場合に、前記二次支払者のユーザ情報、前記使用権ID、及び、前記二次支払いの代金を含む使用権更新トランザクションを生成し、前記ブロックチェーンに対してブロードキャストすることで、当該ブロックチェーン上に登録された前記使用権
に設定された使用
可能残高を、当該使用
可能残高から前記二次支払いの代金を減算した金額に更新する使用権行使手段とを備えることを特徴とする決済装置。
【請求項2】
請求項1に記載の決済装置において、
前記口座残高確認手段が、前記使用権に設定された
前記二次支払者が使用可能
な金額情報と前記一次支払者の口座情報における残高とを比較
し、前記使用権発行手段が、前記残高が前記使用可能
な金額情報以上である場合に前記ブロックチェーンに対して前記使用権
発行トランザクションをブロードキャストすることを特徴とする決済装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の決済装置において、
前記制限情報登録手段が、前記制限情報の登録処理のトランザクションを前記ブロックチェーンにブロードキャストして登録し、前記制限情報確認手段が、二次支払において前記制限情報を満たすかどうかを確認する確認処理のトランザクションを前記ブロックチェーンにブロードキャストし、前記制限情報の登録処理及び前記制限情報の確認処理が前記ブロックチェーン上で実行されることを特徴とする決済装置。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の決済装置において、
前記ブロックチェーン上には、前記一次支払者の口座情報及び前記提供者の口座情報にアクセスし、前記口座情報を確認又は更新する処理を実施する処理手段が構築されており、
前記口座残高確認手段が、前記処理手段が機能するように前記口座情報を確認する確認処理のトランザクション又は前記口座情報を更新する更新処理のトランザクションを前記ブロックチェーンにブロードキャストすることを特徴とする決済装置。
【請求項5】
コンピュータが、
一次支払者から二次支払者に譲渡され、当該二次支払者が商品を購入及び/又はサービスを受ける場合に提供者に対して代金を支払う二次支払いとして行使可能な使用権を発行する場合に、前記一次支払者のユーザ情報、前記二次支払者のユーザ情報、及び、前記二次支払者が使用可能な金額情報を含む使用権発行トランザクションを生成し、ブロックチェーンに対してブロードキャストし、当該ブロックチェーン上で登録された前記使用権の使用権IDを受け取ることで当該使用権を発行する使用権発行ステップと、
前記一次支払者が前記二次支払者に対して課す前記使用権の使用制限に関する制限情報を前記二次支払者が使用可能な金額情報とは別途に登録する制限情報登録ステップと、
前記二次支払いにおいて前記制限情報を満たすかどうかを確認する制限情報確認ステップと、
前記ブロックチェーン上に登録された前記使用権に設定された使用可能残高を前記ブロックチェーンから取得し、当該使用可能残高と前記二次支払いの代金とを比較する使用権残高確認ステップと、
前記二次支払いの代金と前記一次支払者の口座情報における残高とを比較する口座残高確認ステップと、
前記二次支払いにおいて、前記制限情報を満たし、前記使用権に設定された使用可能残高が前記二次支払いの代金以上であり、前記一次支払者の口座情報における残高が前記二次支払いの代金以上である場合に、前記一次支払者の金融機関の口座情報から前記提供者の金融機関の口座情報に前記二次支払いの代金の金額分を移動して送金するための更新指示を行う口座残高更新ステップ
と、
前記二次支払いにおいて、前記制限情報を満たし、前記使用権に設定された使用可能残高が前記二次支払いの代金以上であり、前記一次支払者の口座情報における残高が前記二次支払いの代金以上である場合に、前記二次支払者のユーザ情報、前記使用権ID、及び、前記二次支払いの代金を含む使用権更新トランザクションを生成し、前記ブロックチェーンに対してブロードキャストすることで、当該ブロックチェーン上に登録された前記使用権
に設定された使用
可能残高を、当該使用
可能残高から前記二次支払いの代金を減算した金額に更新する使用権行使ステッ
プとを含むことを特徴とする決済方法。
【請求項6】
一次支払者から二次支払者に譲渡され、当該二次支払者が商品を購入及び/又はサービスを受ける場合に提供者に対して代金を支払う二次支払いとして行使可能な使用権を発行する場合に、前記一次支払者のユーザ情報、前記二次支払者のユーザ情報、及び、前記二次支払者が使用可能な金額情報を含む使用権発行トランザクションを生成し、ブロックチェーンに対してブロードキャストし、当該ブロックチェーン上で登録された前記使用権の使用権IDを受け取ることで当該使用権を発行する使用権発行手段、
前記一次支払者が前記二次支払者に対して課す前記使用権の使用制限に関する制限情報を前記二次支払者が使用可能な金額情報とは別途に登録する制限情報登録手段、
前記二次支払いにおいて前記制限情報を満たすかどうかを確認する制限情報確認手段、
前記ブロックチェーン上に登録された前記使用権に設定された使用可能残高を前記ブロックチェーンから取得し、当該使用可能残高と前記二次支払いの代金とを比較する使用権残高確認手段、
前記二次支払いの代金と前記一次支払者の口座情報における残高とを比較する口座残高確認手段、
前記二次支払いにおいて、前記制限情報を満たし、前記使用権に設定された使用可能残高が前記二次支払いの代金以上であり、前記一次支払者の口座情報における残高が前記二次支払いの代金以上である場合に、前記一次支払者の金融機関の口座情報から前記提供者の金融機関の口座情報に前記二次支払いの代金の金額分を移動して送金するための更新指示を行う口座残高更新手段、
前記二次支払いにおいて、前記制限情報を満たし、前記使用権に設定された使用可能残高が前記二次支払いの代金以上であり、前記一次支払者の口座情報における残高が前記二次支払いの代金以上である場合に、前記二次支払者のユーザ情報、前記使用権ID、及び、前記二次支払いの代金を含む使用権更新トランザクションを生成し、前記ブロックチェーンに対してブロードキャストすることで、当該ブロックチェーン上に登録された前記使用権
に設定された使用
可能残高を、当該使用
可能残高から前記二次支払いの代金を減算した金額に更新する使用権行使手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする決済プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックチェーンを用いて一次支払者から二次支払者に対して使用制限が掛けられた決済を行う決済装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ブロックチェーンを利用した分散型ネットワークが実現され、ネットワーク上での決済、証明、契約等の取引を安全に行うことが可能となっている。ブロックチェーンを利用すると、第3者機関を介することなくネットワーク上で安全、且つ簡単に適正な取引を行うことができ、今後益々ネットワークを利用した取引が増えると考えられる。
【0003】
このようなブロックチェーンによる仮想通貨を利用した技術が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に示す技術は、国若しくは権限のある機関が都道府県または市町村などの地方自治体に対し、当該地方自治体に居住している年金受給者に支払うべき年金の一部又は全部を、当該地域でのみ有効な地域通貨に代えて支払うことを委託し、委託を受けた地方自治体は当該地方自治体のサーバコンピュータを介して、各年金受給者ごとに地域通貨を発行し、各受給者は地域通貨をICカードまたはスマートホンで受け取るものである。
【0004】
一方で、例えば、地方公共団体がその地方の民間企業に助成(一次支払い)した助成金に対して、助成金を受けた企業がその助成金を支払う相手(二次支払い先)を一次支払いを行った地方公共団体の管轄地域にのみ限定したり、市町村が個人に給付(一次支払い)した給付金の使用目的(二次支払い目的)として特定の用途(例えば、飲食費や遊興費)を禁止したい場合に、その制限を満たすような支払いを実現したい場面が多々ある。
【0005】
上記支払いの制限に関連し電子マネーの使用用途を制限する技術として、例えば特許文献2及び3に示す技術が開示されている。特許文献2に示す技術は、店頭端末は、対価として支払われる電子バリューの支払いに供される可搬デバイスとの間で近接通信による決済を行い、商品識別符号取得部は、購入対象である商品を示す商品識別符号を取得し、デバイス識別符号取得部は、可搬デバイスから、可搬デバイスのデバイス識別符号を取得し、問合せ部は、取得されたデバイス識別符号にかかる可搬デバイスにて取得された商品識別符号の商品を購入可能であるか否かを、サーバに問い合わせ、出力部は、サーバにより商品が購入不可と判定された場合、当該商品が購入不可である旨を示す情報を出力するものである。
【0006】
特許文献3に示す技術は、電子バリューの残額と、電子バリューの用途情報とを含む残額情報を記憶する電子バリュー記憶手段から、残額情報を取得する残額情報取得部と、電子バリューの増減額値と用途情報とを含む決済情報を取得する決済情報取得部と、残額情報に含まれる用途情報と、決済情報に含まれる用途情報とが予め定められた所定の条件を満たした場合、電子バリュー記憶手段に記憶されている電子バリューを増減額する決済処理を実行する決済部と、を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-195224号公報
【文献】国際公開第2017/056197号
【文献】国際公開第2017/154331号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記各特許文献に開示されているいずれの技術も、ブロックチェーン技術を用いて二次支払者による支払を一次支払者が制限できるものではない。また、いずれの技術もブロックチェーンによる支払い処理の安全性を前提として、金融機関の口座に対してお金の移動を行うものではない。
【0009】
本発明は、ブロックチェーンにより安全性が確保された使用権に一次支払者から二次支払者への使用制限を設定することで、使用制限を確実に満たした支払いによる決済を実現することができる決済装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る決済装置は、一次支払者から二次支払者に譲渡され、当該二次支払者が商品を購入及び/又はサービスを受ける場合に提供者に対する代金の支払いとして行使可能な使用権を発行する使用権発行手段と、前記一次支払者が前記二次支払者に対して課す前記使用権の使用制限に関する制限情報を登録する制限情報登録手段と、登録された前記制限情報を満たす前記使用権の行使が行われた場合に、当該使用権の行使情報を更新する使用権行使手段と、前記使用権の行使に応じて前記一次支払者の金融機関の口座情報及び前記提供者の金融機関の口座情報を更新するための更新指示を行う口座残高更新手段とを備え、少なくとも前記使用権の登録及び行使情報の更新がブロックチェーン上で管理されるものである。
【0011】
このように、本発明に係る決済装置においては、ブロックチェーン上で安全性が確保された使用権を、発行時に一次支払者が登録した制限情報を満たした行使が二次支払者により行われた場合にのみ一次支払者の金融機関の口座から提供者の金融機関の口座にお金が移動するため、二次支払者は一次支払者が登録した使用制限を満たさないような支払いを行うことができず、一次支払者が所望する使用目的に応じた決済を確実に実現することができるという効果を奏する。
【0012】
また、使用権がブロックチェーン上で管理されるため、安全性及び信頼性を確保した使用権の行使を行うことが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る決済システムを使用する一次支払者、二次支払者及び提供者の関係を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る決済システムのシステム構成図である。
【
図3】第1の実施形態に係る決済システムにおける新規利用者登録に関する構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図3の新規利用者登録処理を示すフローチャートである。
【
図5】第1の実施形態に係る決済システムにおけるシステムログインに関する構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図5のシステムログイン処理を示すフローチャートである。
【
図7】第1の実施形態に係る決済システムにおける一次支払いに関する構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】
図7の一次支払い処理を示すフローチャートである。
【
図9】第1の実施形態に係る決済システムにおける二次支払いに関する構成を示す機能ブロック図である。
【
図10】
図9の二次支払い処理を示す第1のフローチャートである。
【
図11】
図9の二次支払い処理を示す第2のフローチャートである。
【
図12】第1の実施形態に係る決済システムで利用されるデータの一例を示す図である。
【
図13】第2の実施形態に係る決済システムにおける一次支払いに関する構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】第2の実施形態に係る決済システムにおける二次支払いに関する構成を示す機能ブロック図である。
【
図15】第3の実施形態に係る決済システムにおける新規利用者登録に関する構成を示す機能ブロック図である。
【
図16】第3の実施形態に係る決済システムにおける一次支払いに関する構成を示す機能ブロック図である。
【
図17】第3の実施形態に係る決済システムにおける口座情報記憶部の一例を示す図である。
【
図18】第3の実施形態に係る決済システムにおける二次支払いに関する構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る決済装置を用いた決済システムについて、
図1ないし
図12を用いて説明する。本実施形態に係る決済装置は、一次支払者から二次支払者に譲渡され、当該二次支払者が商品を購入及び/又はサービスを受ける場合に提供者に対する代金の支払いとして行使可能な使用権をブロックチェーン上で管理すると共に、当該使用権の使用制限に関する制限情報を登録し、この制限情報を満たす使用権の行使が行われた場合に、ブロックチェーン上で管理されている当該使用権の行使情報を更新し、この使用権の行使に応じて一次支払者の金融機関の口座情報及び提供者の金融機関の口座情報を更新するものである。
【0015】
図1は、本実施形態に係る決済システムを使用する一次支払者、二次支払者及び提供者の関係を示す図である。
図1において、一次支払者は、二次支払者に対して一次支払いをするシステム利用者であり、二次支払者に使用権(一次支払者の金融機関の口座から一次支払い額分のお金を使用する権利)を譲渡する。このとき、譲渡される使用権に対しては使用金額や使用制限を設定可能となっており、使用権の情報と対応付けて金額情報と制限情報とが記憶される。制限情報としては、例えば使用権を行使する相手、日時、期限等の情報が含まれる。二次支払者は、商品やサービスを提供する提供者から当該商品やサービスを購入し、それに対して二次支払いをするシステム利用者であり、一次支払者から譲渡された使用権を行使することで提供者からの商品やサービスの提供を受ける。この二次支払いによる使用権の行使は、上記の制限情報に係る制限が満たされている場合にのみ実行することが可能となっている。使用権が行使されると、一次支払者の金融機関の口座から提供者の金融機関の口座に、行使された使用権に相当する額のお金が移動する。
【0016】
図2は、本実施形態に係る決済システムのシステム構成図である。本実施形態に係る決済システム1は、一次支払者や二次支払者等のユーザが使用するユーザ端末11と、システム全体を管理及び運営するための決済管理装置10と、使用権の発行・行使を管理するための分散台帳であるブロックチェーン12と、一次支払者や提供者が口座を所有する金融機関の金融システム13とを備えており、各構成要素は電気通信可能に接続されている。
【0017】
ブロックチェーン12は、分散型データベース技術により構築された分散型データベースに、分散型データベースの編集履歴を共有するための編集履歴共有処理機構を加えたものが、ネットワークで接続された複数のコンピュータ(ノード)により構築されたものである。また、本実施形態におけるブロックチェーン12は、ブロックチェーン12上に構成される仮想マシンで所定の処理を自律的に実行する実行手段を備えるものであってもよい。この実行手段とは、ブロックチェーンの一種であるイーサリアム(Ethereum)ではスマートコントラクトと呼ばれるものである。実行手段を実行する前記仮想マシンは、ブロックチェーンネットワークに接続された複数のコンピュータのうち、マイナーと呼ばれるブロックチェーンのデータベースを更新するために計算資源を提供しているコンピュータにより実行される。マイナーにより提供された計算資源により仮想マシンを実行することで、実行手段を実行したりブロックチェーンデータベースを更新したりすることをマイニングと呼ぶ。
【0018】
なお、ブロックチェーン12は、イーサリアムやビットコイン(Bitcoin)のように、一方向ハッシュ関数の特性に基づいて分散型データベースの編集履歴を共有する処理機構を有するものに限らず、その他の仕組みで編集履歴を共有する処理機構を有することで、分散型データベースを共有するものであっても良い。
【0019】
また、ブロックチェーン12は、イーサリアムやビットコインのように、分散型データベースに追加していくデータをブロックとしてひとまとまりにして追加して更新する機構を有するものに限らず、個々のデータを一つずつ逐次的に追加して更新する機構を有するものや、不定期に追加して更新する機構を有するもの、又はその他の形態で追加して更新する機構を有するものであっても良い。
【0020】
さらに、ブロックチェーン12は、イーサリアムやビットコインのように、分散型データベース上に記録されるデータを、1本のチェーンのように連続した1次元的なデータとして追加していくものに限らず、データを複数のチェーンに並行して追加していくものやネットワーク状に追加していくもの、2次元平面的に追加していくもの、3次元など多次元的に追加していくもの、又はその他の形態で追加していくものであっても良い。
【0021】
以下、本実施形態に係る決済システムの構成及び処理について詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る決済システムにおける新規利用者登録に関する構成を示す機能ブロック図、
図4は、
図3の新規利用者登録処理を示すフローチャート、
図5は、本実施形態に係る決済システムにおけるシステムログインに関する構成を示す機能ブロック図、
図6は、
図5のシステムログイン処理を示すフローチャート、
図7は、本実施形態に係る決済システムにおける一次支払いに関する構成を示す機能ブロック図、
図8は、
図7の一次支払い処理を示すフローチャート、
図9は、本実施形態に係る決済システムにおける二次支払いに関する構成を示す機能ブロック図、
図10及び
図11は、
図9の二次支払い処理を示すフローチャート、
図12は、本実施形態に係る決済システムで利用されるデータの一例を示す図である。
【0022】
図3に示す機能ブロック図では、「新規利用者登録」機能を実現する。なお、
図3においては、「新規利用者登録」機能に関する処理部のみを記載しているが、決済管理装置10やブロックチェーン12は、後述するようにその他の機能や情報管理等を実現するための処理部も備えるものである。
【0023】
図3において、ユーザ端末11は、利用者(一次支払者、二次支払者、提供者等)からの入力を受け付けたり、利用者に対して情報を提示する入出力部111と、インターネットを介してクラウド上のシステム(決済管理装置10)にアクセスするためのWebブラウザ112とを備える。
【0024】
決済管理装置10は、ユーザ端末11から送信される情報に基づいて新規利用者登録の処理を制御する新規登録制御部101と、新規登録の際にユーザ端末11で入力されたユーザID、パスワードの情報をログイン情報記憶部103(
図12(A)を参照)に登録するログイン情報登録部102と、ブロックチェーン12に対して新規にブロックチェーンアドレス(以下、BCアドレスという)及びブロックチェーン秘密鍵(以下、BC秘密鍵という)の生成をリクエストすると共に、生成されたBCアドレス、BC秘密鍵をブロックチェーン12から受け取るBC情報取得部104と、生成されたBCアドレス、BC秘密鍵の情報をBC情報記憶部106(
図12(B)を参照)に登録するBC情報登録部105と、新規登録の際にユーザ端末11で入力された金融機関の口座情報を口座情報記憶部108(
図12(C)を参照)に登録する口座情報登録部107とを備える。
【0025】
ブロックチェーン12は、BC情報取得部104からのリクエストに応じて、新規利用者のBCアドレス、BC秘密鍵を生成し、そのままBC情報取得部104に返すBC情報生成部121を備える。
【0026】
図4は、
図3の構成で実現される「新規利用者登録」の処理を示すフローチャートである。ユーザ端末11の入出力部111にユーザID、パスワード、口座情報が入力され、Webブラウザ112を介してそれらの情報が新規登録制御部101に渡される(S1)。新規登録制御部101は、ログイン情報登録部102にユーザID、パスワードの情報を渡し、ログイン情報登録部102は、
図12(A)に示すログイン情報記憶部103にユーザID、パスワードを保存する(S2)。新規登録制御部101は、BC情報取得部104にユーザIDの情報を渡し、BC情報取得部104はブロックチェーン12にBCアドレス、BC秘密鍵の生成をリクエストする(S3)。ブロックチェーン12では、ブロックチェーン12内のBC情報生成部121が、ユーザIDに対応するBCアドレス、BC秘密鍵を生成し、BC情報取得部104に渡す(S4)。BC情報取得部104は、BC情報登録部105にそれぞれが対応付けられたユーザID、BCアドレス、BC秘密鍵の情報を渡し、BC情報登録部105は、
図12(B)に示すBC情報記憶部106にユーザID、BCアドレス、BC秘密鍵の情報を保存する(S5)。新規登録制御部101は、口座情報登録部107にユーザID、口座情報を渡し、口座情報登録部107は、
図12(C)に示す口座情報記憶部108にユーザID、口座情報を保存する(S6)。S1~S6までの処理が正常に完了したら、新規登録制御部101がユーザ端末11に新規利用者登録完了の旨の情報を送って(S7)、処理を終了する。利用者はユーザ端末11のWebブラウザ112にて新規利用者登録が完了した旨を確認することが可能となる。
【0027】
図5に示す機能ブロック図では、「システムログイン」機能を実現する。なお、
図5においては、「システムログイン」機能に関する処理部のみを記載しているが、決済管理装置10は、その他の機能や情報管理等を実現するための処理部も備えるものである。なお、ユーザ端末11の構成は、
図3の場合と同じである。
【0028】
決済管理装置10は、ユーザ端末11から送信される情報に基づいてログイン処理を制御するログイン制御部201と、ユーザ端末11から入力された情報と
図12(A)に示すログイン情報記憶部103に登録されている情報とを比較して確認するパスワード確認部202と、利用者のユーザIDがログイン状態であることを管理するためにセッションデータ記憶部205(
図12(D)を参照)にセッションデータを登録するログインセッション登録部204とを備える。
【0029】
図6は、
図5の構成で実現される「システムログイン」の処理を示すフローチャートである。ユーザ端末11の入出力部111にユーザID、パスワードが入力され、Webブラウザ112を介してそれらの情報がログイン制御部201に渡される(S1)。ログイン制御部201は、パスワード確認部202にユーザID、パスワードの情報を渡し、パスワード確認部202は、S1で入力されたパスワードと
図12(A)に示すログイン情報記憶部103内の入力されたユーザIDに対応するパスワードとが一致することを確認する(S2)。パスワード確認部202は、ログイン制御部201に照合の正否結果を渡す(S3)。ログイン制御部201は、ログインセッション登録部204に入力されたユーザIDを渡し、ログインセッション登録部204は、
図12(D)に示すセッションデータ記憶部205内でセッションIDが重複しないように新たなセッションIDを生成し、セッションデータ記憶部205にユーザID、セッションIDを保存する(S4)。ログインセッション登録部204は、生成されたセッションIDをログイン制御部201に渡し、ログイン制御部201は、ユーザ端末11のWebブラウザ112にセッションIDを渡す(S5)。Webブラウザ112は、Webブラウザ内のCookieにセッションIDを保存し、入出力部111を通じて利用者にログイン完了を通知する(S6)。
【0030】
図7に示す機能ブロック図では、「一次支払い」機能を実現する。なお、
図7においては、「一次支払い」機能に関する処理部のみを記載しているが、決済管理装置10やブロックチェーン12は、その他の機能や情報管理等を実現するための処理部も備えるものである。
【0031】
ユーザ端末11の構成は
図3の場合と同じであるが、この一次支払い処理においてはユーザ端末11を使用するのは一次支払者となる。一次支払者により入出力部111に入力される情報は、二次支払者のユーザID、一次支払いの金額、二次支払いの制限情報となる。
【0032】
決済管理装置10は、ユーザ端末11から送信される情報に基づいて一次支払い処理を制御する一次支払制御部301と、ユーザ端末11からのセッションIDに基づいて、
図12(D)に示すセッションデータ記憶部205から一次支払者のログインを確認すると共に、一次支払者のセッションIDに基づいて、セッションデータ記憶部205から一次支払者のユーザIDを取得するログインセッション確認部302と、
図12(C)に示す口座情報記憶部108に記憶されている口座情報に基づいて、金融機関のシステムにアクセスして一次支払者の口座情報を取得し、口座の残高を確認する口座残高確認部303と、一次支払者のユーザID、二次支払者のユーザID、一次支払いの金額の情報、及び
図12(B)に示すBC情報記憶部106に記憶されている一次支払者のBC秘密鍵、二次支払者のBCアドレスに基づいて、二次支払者のBCアドレスに一次支払いの金額を含む使用権発行トランザクションを生成し、ブロックチェーン12にブロードキャストすると共に、発行された使用権の使用権IDを受け取る使用権発行部304と、使用権発行ユーザ記憶部305(
図12(E)を参照)に発行された使用権IDに対応付けて一次支払者のユーザIDを登録する使用権発行ユーザ登録部306と、二次支払いの制限情報を制限情報記憶部307(
図12(F)を参照)に登録する制限情報登録部308とを備える。
【0033】
ブロックチェーン12は、使用権発行部304からのトランザクションに応じて使用権記憶部309(
図12(G)を参照)に使用権を登録する使用権登録部310を備える。
【0034】
図8は、
図7の構成で実現される「一次支払い」の処理を示すフローチャートである。一次支払者により、ユーザ端末11の入出力部111に二次支払者のユーザID、一次支払いの金額、二次支払いの制限情報が入力され、Webブラウザ112を介してそれらの情報が一次支払制御部301に渡される(S1)。このとき、Webブラウザ112は、当該Webブラウザ112のCookieに保存しておいた一次支払者のセッションIDを一緒に渡す。一次支払制御部301は、ログインセッション確認部302に一次支払者のセッションIDを渡し、ログインセッション確認部302が、
図12(D)に示すセッションデータ記憶部205より一次支払者のログインを確認する(S2)。ログインセッション確認部302は、一次支払者のセッションIDに基づいて一次支払者のユーザIDを取得し、一次支払制御部301に渡す(S3)。
【0035】
一次支払制御部301は、口座残高確認部303に一次支払者のユーザID、一次支払いの金額を渡し、口座残高確認部303は、
図12(C)に示す口座情報記憶部108より一次支払者のユーザIDに対応する一次支払者の口座情報を取得する(S4)。口座残高確認部303は、一次支払者の口座情報をもとに金融機関から一次支払者の口座残高を取得し、口座残高が一次支払いの金額以上であることを確認して、一次支払制御部301にその結果を返す(S5)。
【0036】
一次支払制御部301は、使用権発行部304に一次支払者のユーザID、二次支払者のユーザID、一次支払いの金額を渡し、使用権発行部304は、一次支払者のユーザID、二次支払者のユーザIDをもとに、
図12(B)に示すBC情報記憶部106から一次支払者のBC秘密鍵、二次支払者のBCアドレスを取得する(S6)。使用権発行部304は、二次支払者のBCアドレス、一次支払いの金額を含む使用権発行トランザクションを生成し、一次支払者のBC秘密鍵で署名し、ブロックチェーン12にブロードキャストする(S7)。ブロックチェーン12上では、使用権登録部310が
図12(G)に示す使用権記憶部309に発行された使用権を登録する。そして、発行された使用権にはブロックチェーン12上で使用権IDが付与され、使用権発行部304に返信され、使用権発行部304は、一次支払制御部301に使用権IDを渡す(S8)。
【0037】
一次支払制御部301は、使用権発行ユーザ登録部306に使用権ID、一次支払者のユーザIDを渡し、使用権発行ユーザ登録部306は、
図12(E)に示す使用権発行ユーザ記憶部305に使用権IDに対応付けて一次支払者のユーザIDを記憶する(S9)。一次支払制御部301は、制限情報登録部308に使用権ID、二次支払いの制限情報を渡し、制限情報登録部308は、
図12(F)に示す制限情報記憶部307に使用権IDに対応付けて二次支払いの制限情報を記憶する(S10)。一次支払制御部301は、ユーザ端末11を介して利用者(一次支払者)に一次支払い完了の旨を通知して(S11)、処理を終了する。
【0038】
図9に示す機能ブロック図では、「二次支払い」機能を実現する。なお、
図9においては、「二次支払い」機能に関する処理部のみを記載しているが、決済管理装置10やブロックチェーン12は、その他の機能や情報管理等を実現するための処理部も備えるものである。
【0039】
ユーザ端末11の構成は
図3の場合と同じであるが、この二次支払い処理においてはユーザ端末11を使用するのは二次支払者となる。二次支払者により入出力部111に入力される情報は、二次支払いに使う使用権の使用権ID、提供者のユーザID、二次支払いの金額となる。
【0040】
決済管理装置10は、ユーザ端末11から送信される情報に基づいて二次支払い処理を制御する二次支払制御部401と、ユーザ端末11からのセッションIDに基づいて、
図12(D)に示すセッションデータ記憶部205から二次支払者のログインを確認すると共に、二次支払者のセッションIDに基づいて、セッションデータ記憶部205から二次支払者のユーザIDを取得するログインセッション確認部302と、
図12(F)に示す制限情報記憶部307に記憶されている制限情報に基づいて、提供者のユーザIDが二次支払いの制限対象でないかどうか確認する制限情報確認部402と、ブロックチェーン12から使用権残高を取得し、二次支払いの金額よりも多いかどうかを確認する使用権残高確認部403と、二次支払いの際に行使する使用権IDをもとに、
図12(E)に示す使用権発行ユーザ記憶部305から使用権IDに対応する一次支払者のユーザIDを取得する使用権発行ユーザ確認部404と、一次支払者のユーザIDをもとに
図12(C)に示す口座情報記憶部108から一次支払者の口座残高を取得し、口座残高が二次支払いの金額以上であるかどうかを確認する口座残高確認部303と、一次支払者のユーザIDと提供者のユーザIDとに基づいて、二次支払いの金額を一次支払者の口座から提供者の口座に移動して更新する口座残高更新部405と、二次支払いの際に行使する使用権の使用権ID、二次支払い後の使用権残高(使用権残高-二次支払いの金額)を含む使用権更新トランザクションを生成し、
図12(B)に示すBC情報記憶部106に記憶されている二次支払者のBC秘密鍵で署名し、ブロックチェーン12にブロードキャストして使用権の情報を更新する使用権行使部406とを備える。
【0041】
ブロックチェーン12は、使用権残高確認部403からのトランザクションに応じて
図12(G)に示す使用権記憶部309から使用権の残高を取得して使用権残高確認部403に返す使用権確認部407と、使用権行使部406からのトランザクションに応じて
図12(G)に示す使用権記憶部309の使用権残高を更新する使用権更新部408と、使用権を行使した結果、使用権残高が0になる使用権を
図12(G)に示す使用権記憶部309から削除する使用権削除部409とを備える。
【0042】
なお、制限情報確認部402は、制限情報記憶部307に「制限者」として登録されているユーザIDが提供者のユーザIDと一致するかどうかを確認してもよいし、制限情報記憶部307に「制限者ではない者」として登録されているユーザIDが提供者のユーザIDと一致しているかどうかを確認するようにしてもよい。また、その他に、行使できる日時の制限を満たすかどうか、行使できる期間を満たすかどうか、行使できる用途を満たすかどうか、行使できる回数を満たすかどうか、行使できる場所を満たすかどうか、行使する理由(目的)を満たすかどうか等を確認するようにしてもよい。
【0043】
また、使用権残高確認部403が確認する使用権の残高は、二次支払者が有する(提供者に対して支払可能な)残高である。すなわち、一人の一次支払者に対して一人の二次支払者が本システムを利用する場合は、使用権残高確認部403が確認する使用権の残高=二次支払者が有する使用権の残高=一次支払者が譲渡した使用権の残高となる。一方、複数の一次支払者に対して一人の二次支払者が本システムを利用する場合は、使用権残高確認部403が確認する使用権の残高=二次支払者が有する使用権の残高=一次支払者が譲渡した使用権の合計残高となる。
【0044】
図10及び
図11は、
図9の構成で実現される「二次支払い」の処理を示すフローチャートである。二次支払者により、ユーザ端末11の入出力部111に使用権ID、提供者のユーザID、二次支払いの金額が入力され、Webブラウザ112を介してそれらの情報が二次支払制御部401に渡される(S1)。このとき、Webブラウザ112は、当該Webブラウザ112のCookieに保存しておいた二次支払者のセッションIDを一緒に渡す。二次支払制御部401は、ログインセッション確認部302に二次支払者のセッションIDを渡し、ログインセッション確認部302が、
図12(D)に示すセッションデータ記憶部205より二次支払者のログインを確認する(S2)。ログインセッション確認部302は、二次支払者のセッションIDに基づいて二次支払者のユーザIDを取得し、二次支払制御部401に渡す(S3)。
【0045】
二次支払制御部401は、制限情報確認部402に二次支払いに使う使用権の使用権ID、提供者のユーザIDを渡し、制限情報確認部402は、使用権IDをもとに
図12(F)に示す制限情報記憶部307から制限情報を取得する(S4)。制限情報確認部402は、制限情報と提供者のユーザIDとを照合し、提供者が二次支払いの制限対象ではないことを確認して、二次支払制御部401にその結果を返す(S5)。
【0046】
二次支払制御部401は、使用権残高確認部403に、二次支払いに使う使用権の使用権ID、二次支払いの金額を渡し、使用権残高確認部403は、使用権IDをもとにブロックチェーン12から使用権残高の情報を取得する(S6)。使用権残高確認部403は、二次支払いに使う使用権の使用権残高が二次支払いの金額以上であることを確認し、二次支払制御部401にその結果を返す(S7)。
【0047】
二次支払制御部401は、使用権発行ユーザ確認部404に、二次支払いに使う使用権の使用権IDを渡し、使用権発行ユーザ確認部404は、使用権IDをもとに
図12(E)に示す使用権発行ユーザ記憶部305から一次支払者のユーザIDを取得し、二次支払制御部401に渡す(S8)。
【0048】
二次支払制御部401は、口座残高確認部303に一次支払者のユーザID、二次支払いの金額を渡し、口座残高確認部303は、
図12(C)に示す口座情報記憶部108より一次支払者のユーザIDに対応する一次支払者の口座情報を取得する(S9)。口座残高確認部303は、一次支払者の口座情報をもとに金融機関から一次支払者の口座残高を取得し、口座残高が二次支払いの金額以上であることを確認して、二次支払い制御401にその結果を返す(S10)。
【0049】
二次支払制御部401は、口座残高更新部405に一次支払者のユーザID、提供者のユーザID、二次支払いの金額を渡し、口座残高更新部405は、一次支払者のユーザID、提供者のユーザIDをもとに
図12(C)に示す口座情報記憶部108から一次支払者の口座情報、提供者の口座情報を取得する(S11)。口座残高更新部405は、一次支払者の口座情報及び提供者の口座情報をもとに、金融機関の口座残高を操作し、一次支払者の口座から提供者の口座に二次支払いの金額分の残高を移動する(S12)。
【0050】
二次支払制御部401は、使用権行使部406に二次支払者のユーザID、使用権ID、二次支払いの金額を渡し、使用権行使部406は、二次支払者のユーザIDをもとに
図12(B)に示すBC情報記憶部106からBC秘密鍵を取得する(S13)。使用権行使部406は、二次支払いに使う使用権の使用権ID、二次支払い後の使用権残高(使用権残高-二次支払いの金額)を含む使用権更新トランザクションを生成し、二次支払者のBC秘密鍵で署名し、ブロックチェーン12にブロードキャストする(S14)。ブロックチェーン12上では、使用権更新部408が
図12(G)に示す使用権記憶部309の使用権残高を更新する(S15)。二次支払制御部401は、ユーザ端末11を介して利用者(二次支払者)に二次支払い完了の旨を通知して(S16)、処理を終了する。
【0051】
なお、
図12に示すデータ構造やデータ内容はあくまで一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0052】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る決済装置を用いた決済システムについて、
図13及び
図14を用いて説明する。以下に説明する本実施形態に係る決済装置は、前記第1の実施形態に係る決済装置及び決済システムのシステム構成を変えた変形例であり、一次支払者が設定する制限情報をブロックチェーン上で管理することで制限情報自体の改竄等を防止した適正な決済を実現するものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0053】
図13は、本実施形態に係る決済システムにおける一次支払いに関する構成を示す機能ブロック図、
図14は、本実施形態に係る決済システムにおける二次支払いに関する構成を示す機能ブロック図である。
【0054】
図13に示す機能ブロック図では、「一次支払い」機能を実現する。なお、
図13においては、「一次支払い」機能に関する処理部のみを記載しているが、決済管理装置10やブロックチェーン12は、その他の機能や情報管理等を実現するための処理部も備えるものである。また、新規利用者登録やシステムログインの処理は第1の実施形態と同じであるため説明は省略する。
【0055】
図13において、ユーザ端末11の構成は前記第1の実施形態における
図3の場合と同じである。一次支払い処理においてはユーザ端末11を使用するのは一次支払者であり、一次支払者により入出力部111に入力される情報は、二次支払者のユーザID、一次支払いの金額、二次支払いの制限情報である。
【0056】
決済管理装置10の構成において
図7の場合と異なるのは、制限情報記憶部307及び使用権発行ユーザ記憶部305を有していないことと、使用権発行ユーザ登録部306がBC情報記憶部106の情報を用いて使用権発行ユーザの登録処理のトランザクションをブロックチェーン12にブロードキャストすることと、制限情報登録部308がBC情報記憶部106の情報を用いて制限情報の登録処理のトランザクションをブロックチェーン12にブロードキャストすることである。
【0057】
ブロックチェーン12は、使用権登録部310及び使用権記憶部309に加えて、使用権発行ユーザ登録部306からのトランザクションに応じて、使用権発行ユーザの登録処理を実行して新たな使用権のIDを使用権発行ユーザ記憶部(BC)305aに登録する使用権発行ユーザ登録部(BC)306aと、制限情報登録部308からのトランザクションに応じて、制限情報を制限情報記憶部(BC)307aに登録する制限情報登録部(BC)308aとを備える。
【0058】
つまり、前記第1の実施形態で説明した
図7においては、制限情報記憶部307及び使用権発行ユーザ記憶部305を決済管理装置10で管理する構成となっていたが、本実施形態においては、それらに代わって制限情報記憶部(BC)307a及び使用権発行ユーザ記憶部(BC)305aをブロックチェーン12上で管理する構成となっている。
【0059】
次に、
図14に示す機能ブロック図では、「二次支払い」機能を実現する。なお、
図14においては、「二次支払い」機能に関する処理部のみを記載しているが、決済管理装置10やブロックチェーン12は、その他の機能や情報管理等を実現するための処理部も備えるものである。
【0060】
図14において、ユーザ端末11の構成は前記第1の実施形態における
図3の場合と同じである。二次支払い処理においてはユーザ端末11を使用するのは二次支払者であり、二次支払者により入出力部111に入力される情報は、二次支払いの際に行使する使用権の使用権ID、提供者のユーザID、二次支払いの金額となる。
【0061】
決済管理装置10の構成において
図9の場合と異なるのは、制限情報記憶部307及び使用権発行ユーザ記憶部305を有していないことと、使用権発行ユーザ確認部404が使用権発行ユーザの確認処理のトランザクションをブロックチェーン12にブロードキャストすることと、制限情報確認部402がBC情報記憶部106の情報を用いて制限情報の確認処理のトランザクションをブロックチェーン12にブロードキャストすることである。
【0062】
ブロックチェーン12の構成において
図9の場合と異なるのは、使用権発行ユーザ確認部404からのトランザクションに応じて、使用権発行ユーザの確認処理を実行して使用権IDに対応するユーザIDを使用権発行ユーザ記憶部(BC)305aから取得し、使用権発行ユーザ確認部404に返す使用権発行ユーザ確認部(BC)404aと、制限情報確認部402からのトランザクションに応じて、制限情報を制限情報記憶部(BC)307aから取得し、制限情報確認部402に返す制限情報確認部(BC)402aとを備えることである。
【0063】
つまり、制限情報記憶部307及び使用権発行ユーザ記憶部305に代わって制限情報記憶部(BC)307a及び使用権発行ユーザ記憶部(BC)305aをブロックチェーン12上で管理すると共に、決済管理装置10からのトランザクションに応じて、ブロックチェーン12上でそれらの記憶部から必要な情報を抽出し、決済管理装置10に返すものとなっている。
【0064】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る決済装置を用いた決済システムについて、
図15ないし
図18を用いて説明する。以下に説明する本実施形態に係る決済装置は、前記第2の実施形態に係る決済装置及び決済システムのシステム構成を変えた変形例であり、銀行が管理する口座情報へのアクセスをブロックチェーン上で実現するものである。なお、本実施形態において前記第1及び第2の実施形態と重複する説明は省略する。
【0065】
図15は、本実施形態に係る決済システムにおける新規利用者登録に関する構成を示す機能ブロック図、
図16は、本実施形態に係る決済システムにおける一次支払いに関する構成を示す機能ブロック図、
図17は、本実施形態に係る決済システムにおける口座情報記憶部の一例を示す図、
図18は、本実施形態に係る決済システムにおける二次支払いに関する構成を示す機能ブロック図である。
【0066】
図15に示す機能ブロック図では、「新規利用者登録」機能を実現する。なお、
図15においては、「新規利用者登録」機能に関する処理部のみを記載しているが、決済管理装置10やブロックチェーン12は、その他の機能や情報管理等を実現するための処理部も備えるものである。また、システムログインの処理は第1の実施形態と同じであるため説明は省略する。
【0067】
図15において、ユーザ端末11の構成は前記第1の実施形態における
図3の場合と同じである。また、決済管理装置10の構成において、前記第1の実施形態における
図3の場合と異なるのは、口座情報記憶部108を有しておらず、代わりに口座情報記憶部(BC)108aをブロックチェーン12上に備えると共に、ブロックチェーン12上では、口座情報登録部107のトランザクションに応じて口座情報登録部(BC)107aが口座情報記憶部(BC)108aに新規利用者の口座情報を登録することである。
【0068】
なお、口座情報をブロックチェーン12上で管理することで、これらの口座情報を不特定多数の人が参照可能となるが、内容を暗号化したり秘匿化ブロックチェーンなどを利用することで秘匿性を担保するようにしてもよい。また、口座情報は金融機関の口座を特定できればよいことから、個人が特定されない必要最小限の情報のみをブロックチェーン12上の口座情報記憶部(BC)108aにて管理することが望ましい。
【0069】
次に、
図16に示す機能ブロック図では、「一次支払い」機能を実現する。なお、
図16においては、「一次支払い」機能に関する処理部のみを記載しているが、決済管理装置10やブロックチェーン12は、その他の機能や情報管理等を実現するための処理部も備えるものである。
【0070】
図16において、ユーザ端末11の構成は前記第1の実施形態における
図3の場合と同じである。一次支払い処理においてはユーザ端末11を使用するのは一次支払者であり、一次支払者により入出力部111に入力される情報は、二次支払者のユーザID、一次支払いの金額、二次支払いの制限情報である。
【0071】
決済管理装置10の構成において
図13の場合と異なるのは、口座情報記憶部108及び使用権発行ユーザ登録部306を有しておらず、口座残高確認部303が金融機関のシステムにアクセスして口座残高を確認するのではなく、ブロックチェーン12を介して金融機関の口座残高を取得することである。
【0072】
ブロックチェーン12の構成において
図13の場合と異なるのは、口座残高確認部303からのトランザクションに応じて、口座情報記憶部(BC)108aから口座情報を取得して金融機関のシステムにアクセスし、金融機関の口座残高を取得して口座残高確認部303に返す口座残高確認部(BC)303aを備えることと、使用権発行ユーザ登録部(BC)306a及び使用権発行ユーザ記憶部(BC)305aを備えていないことである。
【0073】
ここで、口座情報記憶部(BC)108aについて、口座情報記憶部108の一例を示した
図12(C)では、ユーザIDに対応付けて口座情報を記憶する構成となっているが、本実施形態においては、
図17に示すようにBCアドレスに対応付けて口座情報を記憶するように構成されている。すなわち、口座情報にアクセスするために第1の実施形態や第2の実施形態に行っていたような、使用権発行ユーザ記憶部305を用いた使用権IDの情報に基づくユーザIDの取得の必要性がなくなっている。したがって、
図12(E)や
図13に示すような、使用権発行ユーザ記憶部305、使用権発行ユーザ登録部(BC)305a、使用権発行ユーザ記憶部(BC)305aは、本実施形態においては不要となっている。その代わり、二次支払いの処理において後述するように、使用権IDの情報に基づいて、
図12(G)に示す使用権記憶部309を参照することで渡BCアドレスの情報を取得し、当該渡BCアドレスを利用して口座情報等にアクセスすることとなる。
【0074】
つまり、本実施形態においては、口座情報記憶部108に代わって、口座情報記憶部(BC)108aをブロックチェーン12上で管理すると共に、金融機関のシステムへのアクセスを決済管理装置10からではなく、口座残高確認部(BC)303aによりブロックチェーン12上から行うと共に、取得した口座残高の情報を決済管理装置10に返すものである。
【0075】
次に、
図18に示す機能ブロック図では、「二次支払い」機能を実現する。なお、
図18においては、「二次支払い」機能に関する処理部のみを記載しているが、決済管理装置10やブロックチェーン12は、その他の機能や情報管理等を実現するための処理部も備えるものである。
【0076】
図18において、ユーザ端末11の構成は前記第1の実施形態における
図3の場合と同じである。二次支払い処理においてはユーザ端末11を使用するのは二次支払者であり、二次支払者により入出力部111に入力される情報は、二次支払いの際に行使する使用権の使用権ID、提供者のユーザID、二次支払いの金額となる。
【0077】
決済管理装置10の構成において
図14の場合と異なるのは、口座情報記憶部108を有していないことと、口座残高確認部303が口座残高の確認処理のトランザクションをブロックチェーン12にブロードキャストすることと、口座情報更新部405が口座情報の更新処理のトランザクションをブロックチェーン12にブロードキャストすることである。
【0078】
ブロックチェーン12の構成において
図14の場合と異なるのは、口座情報記憶部(BC)108aを備えることと、使用権発行ユーザ確認部404からのトランザクションに応じて、使用権発行ユーザ確認処理を実行して使用権IDに対応する渡BCアドレスを使用権記憶部309から取得し、使用権発行ユーザ確認部404に返す使用権発行ユーザ確認部(BC)404aと、口座残高確認部303からのトランザクション(一次支払者のBCアドレス=渡BCアドレスの情報を含む)に応じて、一次支払者のBCアドレスに対応する口座情報を口座情報記憶部(BC)108aから取得し、この口座情報をもとに金融機関から一次支払者の口座残高を取得して口座残高確認部303に返す口座残高確認部(BC)303aと、口座情報更新部405からのトランザクション(一次支払者のBCアドレス、BC情報記憶部106に基づく提供者のBCアドレスの情報を含む)に応じて、一次支払者のBCアドレスに対応する口座情報と提供者のBCアドレスに対応する口座情報とを口座情報記憶部(BC)108aから取得し、この口座情報をもとに金融機関の口座を操作し、一次支払者の口座から提供者の口座に二次支払いの金額を移動する口座残高更新部(BC)405aとを備えることである。
【0079】
すなわち、本実施形態に係る決済管理システムは、口座情報記憶部(BC)108aをブロックチェーン12上で管理すると共に、口座残高確認部(BC)303aや口座残高更新部(BC)405aによる金融機関のシステムへのアクセスをブロックチェーン12から行って口座情報を操作するものとなっている。
【0080】
なお、本実施形態に係る決済管理システムにおいて、ブロックチェーン12から金融機関のシステムにアクセスする際にアクセスを承認するための処理を行うようにしてもよい。例えば、口座残高確認部(BC)303や口座残高更新部(BC)405aが、金融機関のシステムにアクセスする際に、一旦決済管理装置10に備えられた承認処理部(図示しない)で承認を受け、許可が出たユーザ(口座)である場合のみアクセスできるようにしてもよい。
【0081】
また、二次支払者が使用権を行使して提供者に対して支払いを行う際に、もし使用権残高が不足している場合には、二次支払者の金融機関の口座の残高から不足分を補えるようにしてもよい。すなわち、二次支払者は、使用権を行使することで支払う対価と二次支払者自身や有する口座の残高とを合算して支払いを行えるようにしてもよい。
【0082】
さらに、複数の一次支払者から共通の二次支払者に対して使用権が譲渡された場合、二次支払者は複数の一次支払者から譲渡された使用権の残高を合算して利用できるようにしてもよい。例えば、複数の保護者から学校に対して給食費として使用権が譲渡された場合は、学校は各保護者からの使用権の金額を合算して給食のための支払い(給食センター等への支払い)を行えるようにしてもよい。
【0083】
さらにまた、上記では一次支払者と二次支払者と提供者との関係について説明しているが、例えば、二次支払者が三次支払者に使用権を譲渡した場合や、さらに三次支払者が四次支払者に使用権を譲渡した場合等、n次支払者が使用権を行使する場合でも本願の装置を適用することが可能である。つまり、一次支払者から1又は複数の支払者を経由してn次支払者に譲渡され、当該n次支払者が商品を購入及び/又はサービスを受ける場合に提供者に対する代金の支払いとして行使可能な使用権を発行する使用権発行手段と、前記一次支払者が前記n次支払者(又は経由する1又は複数の支払者)に対して課す前記使用権の使用制限に関する制限情報を登録する制限情報登録手段と、登録された前記制限情報を満たす前記使用権の行使が行われた場合に、当該使用権の行使情報を更新する使用権行使手段と、前記使用権の行使に応じて前記一次支払者の金融機関の口座情報及び前記提供者の金融機関の口座情報を更新するための更新指示を行う口座残高更新手段とを備え、少なくとも前記使用権の登録及び行使情報の更新がブロックチェーン上で管理される決済装置であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 決済システム
10 決済管理装置
11 ユーザ端末
12 ブロックチェーン
13 金融システム
101 新規登録制御部
102 ログイン情報登録部
103 ログイン情報記憶部
104 BC情報取得部
105 BC情報登録部
106 BC情報記憶部
107 口座情報登録部
107a 口座情報登録部(BC)
108 口座情報記憶部
108a 口座情報記憶部(BC)
111 入出力部
112 Webブラウザ
121 BC情報生成部
201 ログイン制御部
202 パスワード確認部
204 ログインセッション登録部
205 セッションデータ記憶部
301 一次支払い制御部
302 ログインセッション確認部
303 口座残高確認部
303a 口座残高確認部(BC)
304 使用権発行部
305 使用権発行ユーザ記憶部
305a 使用権発行ユーザ記憶部(BC)
306 使用権発行ユーザ登録部
306a 使用権発行ユーザ登録部(BC)
307 制限情報記憶部
307a 制限情報記憶部(BC)
308 制限情報登録部
308a 制限情報登録部(BC)
309 使用権記憶部
310 使用権登録部
401 二次支払い制御部
402 制限情報確認部
402a 制限情報確認部(BC)
403 使用権残高確認部
404 使用権発行ユーザ確認部
404a 使用権発行ユーザ確認部(BC)
405 口座残高更新部
405a 口座残高更新部(BC)
406 使用権行使部
407 使用権確認部
408 使用権更新部
409 使用権削除部