IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧 ▶ テスラシート株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電磁波伝送シート 図1A
  • 特許-電磁波伝送シート 図1B
  • 特許-電磁波伝送シート 図2
  • 特許-電磁波伝送シート 図3
  • 特許-電磁波伝送シート 図4
  • 特許-電磁波伝送シート 図5
  • 特許-電磁波伝送シート 図6
  • 特許-電磁波伝送シート 図7A
  • 特許-電磁波伝送シート 図7B
  • 特許-電磁波伝送シート 図8
  • 特許-電磁波伝送シート 図9
  • 特許-電磁波伝送シート 図10
  • 特許-電磁波伝送シート 図11
  • 特許-電磁波伝送シート 図12
  • 特許-電磁波伝送シート 図13
  • 特許-電磁波伝送シート 図14
  • 特許-電磁波伝送シート 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電磁波伝送シート
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/00 20240101AFI20231227BHJP
【FI】
H04B5/00 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019081407
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020178322
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516361956
【氏名又は名称】テスラシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175064
【弁理士】
【氏名又は名称】相澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】徳田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】横井 肇
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智一
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 崇
(72)【発明者】
【氏名】松山 未季
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋也
(72)【発明者】
【氏名】張 兵
(72)【発明者】
【氏名】服部 聖彦
(72)【発明者】
【氏名】加川 敏規
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/029472(WO,A1)
【文献】特開2007-082178(JP,A)
【文献】特開2010-056952(JP,A)
【文献】国際公開第2013/186968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/00 - 5/02
H04B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電層と、
前記誘電層の裏面を覆う第1の導電層と、
前記誘電層の表面を覆う第2の導電層と、を有し、
前記第2の導電層は、
ッシュ状の配線パターンを有する導電層と、絶縁体からなる保護層と、を積層したシート片を複数含み、
前記シート片の端部の少なくとも一部が、他の前記シート片に重なり合っている
電磁波伝送シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波伝送シートに関し、特に、シート上の受信位置の違いによる受信電力の分散を低減することが可能な電磁波伝送シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の誘電層(絶縁体)の表裏面を2枚のシート状の導電層(良導体)で挟んだ電磁波伝送シートが知られている。電磁波伝送シート内に電磁波を入力すると、誘導層内部を電磁波が伝搬する。ここで導電層のうち一方をメッシュ状の連続したパターンにすると、メッシュ表面にエバネッセント波が発生する。エバネッセント波の強度はメッシュ状の導電層からの距離に応じて指数的に減衰する。すなわち、導電層のうち一方をメッシュ状にすることで、その表面近傍にのみエバネッセント波が滲み出たような状態を作り出すことができる。
【0003】
エバネッセント波を媒体として信号を伝送することにより、シート上の異なる複数の位置間で通信を行うことが可能である。また、エバネッセント波を直流に整流することにより、シート上の任意の位置で電気エネルギーを取り出すことが可能である(特許文献1参照)。
【0004】
この際、導電層のメッシュ状の配線パターンをメアンダ形状とすることで、エバネッセント波の均一性及び滲み出し量を向上させ、通信性能及び給電性能を改善できることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4538594号
【文献】国際公開第2017/138475号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電磁波伝送シートにおけるエバネッセント波の強度の均一性向上についてはさらなる改善の余地がある。例えば発明者らは、特許文献2に記載のようなメアンダ形状のパターンを有する電磁波伝送シートを使用した場合においても、シート上の位置、より具体的には電磁波の入力点からの距離に応じて、取り出せる電力の大きさにばらつきが生じうることを発見した。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、シート上の受信位置の違いによる受信電力の分散を低減することが可能な電磁波伝送シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態にかかる電磁波伝送シートは、誘電層と、前記誘電層の裏面を覆う第1の導電層と、前記誘電層の表面を覆う第2の導電層と、を有し、前記第2の導電層は、メッシュ状の配線パターンを有する導電層を複数組み合わせたものであり、前記メッシュ状の配線パターンの端部の少なくとも一部が、絶縁体を介して、他の前記メッシュ状の配線パターンと重なり合っている。
本発明の一実施形態にかかる電磁波伝送シートは、前記メッシュ状の配線パターンを有する導電層と、絶縁体からなる保護層と、を積層したシート片を複数含み、前記シート片の端部の少なくとも一部が、他の前記シート片に重なり合っている。
本発明の一実施形態にかかる電磁波伝送シートは、絶縁体からなる保護層の表裏面に、前記メッシュ状の配線パターンを有する導電層がそれぞれ形成されており、一方の面に形成された前記メッシュ状の配線パターンを有する導電層の端部の少なくとも一部が、他方の面に形成された前記メッシュ状の配線パターンを有する導電層に重なり合っている。
本発明の一実施形態にかかる電磁波伝送シートは、一部領域に前記メッシュ状の配線パターンを有する導電層が形成された、絶縁体からなる保護層を複数含み、前記保護層に形成された前記メッシュ状の配線パターンを有する導電層の端部の少なくとも一部が、他の前記保護層に形成された前記メッシュ状の配線パターンを有する導電層に重なり合っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、シート上の受信位置の違いによる受信電力の分散を低減することが可能な電磁波伝送シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】従来の電磁波伝送シート1の構成を示す平面図である。
図1B】従来の電磁波伝送シート1の構成を示す断面図である。
図2】第2の導電層13のメッシュ状の配線パターンの一例を示す図である。
図3】給電ポート16の一構成例を示す図である。
図4】給電ポート16の一構成例を示す図である。
図5】給電ポート16の一構成例を示す図である。
図6】カプラ20の典型的な構造を示す断面図である。
図7A】本発明の実施の形態にかかる電磁波伝送シート1の平面図である。
図7B】本発明の実施の形態にかかる電磁波伝送シート1の平面図である。
図8】本発明の実施の形態にかかる電磁波伝送シート1の断面図である。
図9】本発明の実施の形態にかかる電磁波伝送シート1の断面図である。
図10】本発明の実施の形態にかかる電磁波伝送シート1の断面図である。
図11】本発明の実施の形態にかかる電磁波伝送シート1の断面図である。
図12】本発明の実施の形態にかかる電磁波伝送シート1の平面図である。
図13】本発明の実施の形態にかかる電磁波伝送シート1の平面図である。
図14】実験結果を示す図である。
図15】実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。はじめに、図1乃至図6を用いて、従来の電磁波伝送シート及びこれを用いた通信及び給電方法について説明する。
【0012】
図1は、従来の電磁波伝送シート1の構成を示す図である。図1Aは、電磁波伝送シート1の平面図、図1Bは、図1Aの線分X-Xにおける拡大断面図である。図1A及び図1Bに示すように、電磁波伝送シート1は、誘電層11、誘電層11の裏面11Rを覆う第1の導電層12、誘電層11の表面11Sを覆う第2の導電層13及び給電ポート16を有する。好ましくは、電磁波伝送シート1は、誘電層11の端部11Eを覆う第3の導電層14、第2の導電層13を覆う保護層15をさらに有する。
【0013】
誘電層11は、誘電体を材料とするシート状(面としての広がりを持ち、厚さが薄い外形を有し、例えば板状、膜状、布状、紙状、箔状、フィルム状、メッシュ状の構造を含む)の領域である。誘電層11の材料は、例えば空気、水、布、紙、樹脂等であって良く、あるいは真空であっても良い。また、誘電層11の厚みは、使用する材料の誘電率及び電磁波の周波数に応じて適宜設定されうる。例えば、誘電層11が発泡ポリエチレン板(誘電率2.3)であり、電磁波が2.45GHz帯である場合、電磁波の入出力効率を向上させるため、厚みTは5mm前後に設定されうる。
【0014】
第1の導電層12は、良導体を材料とし、シート状に形成された部材である。例えば、第1の導電層12は、銅やアルミニウム等を材料とする厚みが0.1mm程度の金属箔である。
【0015】
第2の導電層13は、良導体を材料とし、メッシュ状の配線パターンを有するシート状に形成された部材である。例えば、第2の導電層13は、厚み0.5mm程度の絶縁体シート(樹脂シート等)に導電性を有するインクでメッシュ状の配線パターンを印刷することにより作成できる。又は、シート状の良導体に所定のパターンで開孔を施すことにより作成しても良い。
【0016】
図2は、第2の導電層13のメッシュ状の配線パターンの一例を示す図である。図2に示す配線パターンは、巨視的には、略平行な複数の直線パターン(ストライプ状のパターン)2つを略90度の角度で組み合わせたメッシュパターンであり、これにより略方形の開孔が規則的に形成されている。微視的には、各直線は折返しパターンによるメアンダ形状を成している。配線の材料は良導体であれば良く、典型的には銅やアルミニウムが使用される。配線パターン全体は電気的に接続され連続した状態となっている。第2の導電層13の線幅W及び配置ピッチは電磁波の周波数等に応じて適宜設定されうる。例えば、電磁波が2.45GHz帯である場合、電磁波の入出力効率を向上させる(インピーダンスを50Ωとする)ため、線幅Wは0.5mm以上1.5mm以下、メッシュパターンの配置ピッチPは8mm程度に設定されうる。
【0017】
第3の導電層14は、良導体を材料とし、誘電層11の端部11Eを覆う部材である。第3の導電層14は、第1の導電層12と第2の導電層13とを誘電層11の端部において短絡することで、電磁波伝送シート1の端部からの電磁波の漏洩を防止する。なお、第3の導電層14は必ずしも誘電層11の端部11E全体を覆う必要は無く、例えばメッシュ状やストライプ状に形成されて、電磁波伝送シート1の端部からの電磁波の漏洩を抑制するものであっても良い。第3の導電層14の材料は、良導体であれば良く、典型的には銅やアルミニウムが使用される。
【0018】
保護層15は、第1の保護層15A、第2の保護層15Bを含む。第1の保護層15A及び第2の保護層15Bは、絶縁体を材料とし、第1の導電層12及び第2の導電層13の外表面、すなわち誘電層11の反対側にあたる面を覆う保護部材である。保護層15の材料は、絶縁体であれば良く、ポリエチレンやポリプロピレン等のシートが使用される。保護層15を設けることで、電磁波伝送シート1の耐久性を向上させることができる。
【0019】
図3は、給電ポート16の一構成例を示す図である。給電ポート16は、電磁波伝送シート1内へ電磁波を入力するためのポートである。図3の例では、給電ポート16は逆F型アンテナであり、柱状の第1の給電体161、中空の柱状の第2の給電体162、板状の第1の給電板163、板状の第2の給電板164を少なくとも有する。第1の給電体161、第2の給電体162、第1の給電板163、第2の給電板164の材料は良導体であり、例えば銅やアルミニウム等が使用される。第1の給電体161は、誘電層11を貫通して第1の給電板163と電気的に接続されている。第2の給電体162は、第2の給電板164と電気的に接続されている。ここで図3において上方向を表側、下方向を裏側としたとき、第1の給電体161、第2の給電体162はともに表側に突出している。第2の給電体162は中空構造の柱状体であり、柱状の第1の給電体161の周囲を囲むように配置されている。第1の給電板163は、第1の保護層15Aの表面、つまり第1の導電層12から離間して設けられている。第2の給電板164は、第2の保護層15Bの表面、つまりメッシュ状の第2の導電層13から離間して設けられている。
【0020】
給電ポート16には、例えば、SMA(Sub-Miniature Type A)コネクを介して同軸ケーブルが接続される。同軸ケーブルの一端に図示しない発振器が接続されることにより、給電ポート16には同軸ケーブルを介して高周波電力が供給される。給電ポート16は、第1の給電板163及び第2の給電板164により、電磁波伝送シート1と容量結合しているため、同軸ケーブルから供給される高周波電力が電磁波伝送シート1に伝達される。上述したように、給電ポート16は、逆F型アンテナとなっているため小型で高効率な電力供給を行うことができる。
【0021】
なお、図4に示すように、給電ポート16の同軸ケーブルとの接続口を電磁波伝送シート1の裏面側に設けるようにしてもよい。すなわち、図4において上方向を表側、下方向を裏側としたとき、これら第1の給電体161、第2の給電体162をともに裏側に突出させた状態とする。この場合、第1の給電板163は、第2の保護層15Bの表面、つまりメッシュ状の第2の導電層13から離間して設けられることになる。第2の給電板164は、第1の保護層15Aの表面、つまり第1の導電層12から離間して設けられることになる。
【0022】
図3の例において、第2の給電板164の端部を第1の導電層12と短絡させて、給電ポート16と電磁波伝送シート1とのインピーダンスマッチング回路を構成するようにしてもよい。図4の例においては、第1の給電板163の端部を第1の導電層12と短絡させて、給電ポート16と電磁波伝送シート1とのインピーダンスマッチング回路を構成するようにしてもよい。この際、第3の導電層14を介して、第2の給電板164又は第1の給電板163の端部を第1の導電層12と短絡させてもよい。これにより、給電ポート16と電磁波伝送シート1とのインピーダンス整合がさらに改善するので、給電効率を向上させることができる。
【0023】
図5に示すように、給電ポート16は、電磁波伝送シート1の端部の表面及び裏面を2枚の給電板で挟み込むクリップ型としてもよい。図5の例では、給電ポート16は、第1の保護層15Aの端部表面上に設けられた第1の給電板163と、第2の保護層15Bの端部表面上に設けられた第2の給電板164と、第1の給電板163と電気的に接続する柱状の第1の給電体161と、第2の給電板164と電気的に接続する中空の柱状の第2の給電体162とを備える。なお、第1の給電体161と第2の給電体162との間に絶縁体165を挟んでも良い。
【0024】
図5に示すクリップ型においても、第2の給電板164の端部を第1の導電層12と短絡させて、電磁波伝送シート1とのインピーダンスマッチング回路を構成するようにしてもよい。これにより、図3及び図4に示す給電ポート16と同様に、電磁波伝送シート1とのインピーダンス整合が改善するので、給電効率を向上させることができる。
【0025】
なお、図3乃至図5に示す第1の給電体161及び第2の給電体162の形状は、柱状に限られず、種々の形状とすることができる。また、図3乃至図5に示す第1の給電板163及び第2の給電板164の形状は、円形状又は矩形状のほか種々の形状とすることができる。
【0026】
電磁波伝送シート1を使用して通信又は給電を行う際は、図1Bに示すように、カプラ20を使用する。カプラ20は、機器30とケーブルL1などにより電気的に接続されている。図示しない発振器が給電ポート16を介して電磁波伝送シート1内部に電磁波(典型的には2.45GHz帯)を出力しているとき、カプラ20を電磁波伝送シート1の表面(メッシュ状の第2の導電層13がある側)に載置又は近接させると、カプラ20はエバネッセント波を受信して電流に変換するアンテナとして機能する。これにより、機器30は通信又は受電を行うことができる。通信を行う場合、電磁波伝送シート1内に放射されている周波数帯の電磁波を媒体として通信を行うことができる情報通信装置が、機器30としてカプラ20に接続される。給電を行う場合、カプラ20が獲得する電力を動力源とする種々の装置が、機器30としてカプラ20に接続される。
【0027】
図6は、カプラ20の典型的な構造を示す断面図である。カプラ20は、良導体からなる筐体21と、筐体21内に充填された誘電体22と、良導体からなる板状の内部電極23とを備える。良導体として、例えば銅やアルミニウム等が使用されうる。
【0028】
筐体21と内部電極23の間の誘電体22に閉じ込められた電磁波RWは、信号(図6の鎖線で示した)としてケーブルL1に伝播する。こうして、電磁波伝送シート1表面に染み出したエバネッセント波を媒体として、電磁波伝送シート1と、電磁波伝送シート1表面に載置又は近接されたカプラ20と、の間で信号を送受信することができる。電磁波伝送シート1表面に複数のカプラ20を載置又は近接させれば、電磁波伝送シート1を介して、複数のカプラ20間で信号を送受信することができる。
【0029】
また、このとき筐体21と内部電極23との間には交流電圧が発生する。この電圧変化を整流することによって、機器30を動作させるための電力が得られる。
【0030】
次に、図7乃至図13を用いて、本発明の実施の形態にかかる電磁波伝送シート1の構造について説明する。図7A及び図7Bは電磁波伝送シート1の平面図である。図8乃至図11は、電磁波伝送シート1の一構成例を示す図であって、図7A及び図7Bの線分X-Xにおける拡大断面図である。図12及び図13は、電磁波伝送シート1の一構成例を示す平面図である。なお、ここでは従来の電磁波伝送シート1との相違点について主に説明するものとし、従来と同様の構成要素については適宜説明を省略する。
【0031】
本実施の形態にかかる電磁波伝送シート1においては、第2の導電層13は、第2の導電層13よりも面積が小さな導電層17を複数組み合わせて構成されている。各導電層17は、良導体で形成されたメッシュ状の配線パターンを有している。なお、説明の簡略化のため、図7乃至図13においては直線で構成されるメッシュパターンを示しているが、本発明はこれに限定されず、図2に示すようなメアンダ形状で構成されるメッシュパターンを採用しても良い。
【0032】
導電層17は、その端部17Eの少なくとも一部が他の導電層17に重なるように配置される。例えば図7Aに示すように、導電層17同士を、X方向に現れる端部17Eにおいて幅dxだけ重畳させ、Y方向に現れる端部17Eにおいて幅dyだけ重畳させて配置することができる。幅dx,dyは0以上の任意の値に適宜設定しうる。又は、X方向に現れる端部17Eにおいてのみ、あるいはY方向に現れる端部17Eにおいてのみ導電層17同士を重畳させても良い。例えば、図7Bに示すように、1辺が他辺より長い、長尺状の電磁波伝送シート1においては、第2の導電層13よりも面積が小さな導電層17を、Y方向に現れる端部17Eのみを幅dyだけ重畳させて、第2の導電層13を構成しても良い。いずれの形態においても、導電層17同士を重畳させる際、導電層17同士は電気的に連続しないように絶縁される。以下、実施例1乃至3として、この第2の導電層13の具体的な構成例について説明する。
【0033】
<実施例1>
図8又は図9の断面図に示すように、導電層17と絶縁層18とを積層したシート片19を複数用意する。絶縁層18は、導電層17と略同面積の絶縁体でできたシートであって、絶縁層としての機能と導電層17の基材としての機能とを兼ねる。複数のシート片19を誘電層11の上に敷き詰めるように配置することで第2の導電層13を形成する。このとき、シート片19の端部が隣接するシート片19の端部と重なり合うように組み合わせる。シート片19が重なり合う部分においては、下側に位置するシート片19の絶縁層18が、重なり合う導電層17同士を絶縁するので、両者は電気的には不連続な状態となっている。
【0034】
実施例1の手法によれば、電磁波伝送シート1よりも小さなシート片19を貼り合せることで電磁波伝送シート1を作成できるので、比較的大型の電磁波伝送シート1を作成しやすいという利点がある。
【0035】
<実施例2>
図10の断面図及び図12の平面図に示すように、電磁波伝送シート1と略同面積の絶縁層18の一部領域にのみ導電層17を積層したシート片19を複数用意する。すなわち、複数のシート片19には、導電層17として機能する領域が所定のパターンでそれぞれ配置されている(図12左上図および左下図)。導電層17の配置パターンは、複数のシート片19を誘電層11の上に重ね合わせて表面側から見たときに、複数のシート片19上に形成された導電層17同士が補完しあって誘電層11の表面を間隙なく覆うように決定されている(図12右図)。すなわち、あるシート片19において導電層17が存在しない領域には、他のシート片19において導電層17が配置されているものとする。また、表面側から見たときに端部17Eが隣接する位置関係となる導電層17同士は、互いの端部17Eが少なくとも一部重なり合うものとする。このように設計された複数のシート片19を誘電層11の上に積層することで第2の導電層13を形成することができる。本例においても、図10において下側に位置するシート片19の絶縁層18が、重なり合う導電層17同士を絶縁するので、両者は電気的には不連続な状態となっている。
【0036】
例えば図12に示すように、タイル状の導電層17が市松模様に配置された2つのシート片19を用意する。なお、図12の例では、各シート片19上に配置された複数の導電層17は角部分が重なり合っているが、必ずしも重なり合っていなくても差し支えない。2つのシート片19における導電層17の配置パターンは補間的であり、2つのシート片19を重ね合わせたときに、誘電層11の表面が導電層17により間隙なく覆われるよう設計されている。また、タイル状の導電層17のサイズは、2つのシート片19を重ね合わせたとき、導電層17の端部17Eが幾らか重なり合うように設定される。
【0037】
<実施例3>
図11の断面図及び図13の平面図に示すように、電磁波伝送シート1と略同面積の1枚の絶縁層18の両面に導電層17を積層することでシート片19を構成し、これを第2の導電層13とすることも可能である。
【0038】
例えば、実施例1においてあるシート片19に形成されていた導電層17を本例の絶縁層18の一方の面に積層し、前記シート片19に隣接して配置されていた他のシート片19に形成されていた導電層17を本例の絶縁層18の他方の面に積層することで、実施例1における複数のシート片19を1枚にまとめることができる。
【0039】
また、実施例2においてあるシート片19に形成されていた市松模様の導電層17を本例の絶縁層18の一方の面に積層し、他のシート片19に形成されていた市松模様の導電層17を本例の絶縁層18の他方の面に積層することで、実施例2における複数のシート片19を1枚にまとめることができる。
【0040】
本例においては、絶縁層18が、表裏面に積層された導電層17同士を絶縁するので、両者は電気的には不連続な状態となっている。なお、本例においては、絶縁層18の表面に積層された導電層17が外部に露出した状態となる。これを保護するため、露出した導電層17の外側にさらにもう1つの保護層を設けても良い。この場合、本例のシート片19を複数重ね合わせたとしても、下側に位置するシート片19の絶縁層18が、重なり合う導電層17同士を絶縁するので、両者は電気的には不連続な状態を保つことができる。
【0041】
<効果>
本発明の効果を実証するため比較実験を行った。図7B及び図9に示した構成を有する電磁波伝送シート1と、従来の電磁波伝送シート1(第2の導電層13の構造以外の諸元は同一である)とに対し、10Wの2.45GHzマイクロ波をそれぞれ入力し、カプラ20により獲得できる電力(W)を測定した。この際、電磁波伝送シート1の表面を4×6=24のブロックに仮想的に分割し、各ブロックの代表点において測定を行った。なお、給電ポート16は左上のセル(0,0)に設置した。この場合、セル(0,0)にはカプラ20を設置できないことから(給電ポート16と干渉するため)、セル(0,0)では電力(W)を測定していない。
【0042】
図14は、従来の電磁波伝送シート1、すなわち電気的に連続するメッシュパターンがシート表面全体に形成された電磁波伝送シート1を使用した場合の実験結果である。メッシュパターンは、図2に示すメアンダ形状を有し、ピッチPは約8mm、線幅Wは約1mmであった。この場合、出力の最大値は約1(W)、最小値は約0.2(W)、平均は0.522(W)、分散は0.037であった。
【0043】
図15は、図7B及び図9に示した構成を有する電磁波伝送シート1、すなわち互いに電気的に絶縁された複数の導電層を組み合わせて作成された電磁波伝送シート1を使用した場合の実験結果である。各導電層には、図2に示すメアンダ形状のメッシュパターンが形成されており、ピッチPは約8mm、線幅Wは約1mmであった。また、各導電層は、Y方向の端部においてそれぞれ約2.5P(約20mm)の幅dyをもって重ね合わされていた。この場合、出力の最大値は約0.65(W)、最小値は約0.2(W)、平均は0.363(W)、分散は0.015であった。
【0044】
両者を比較すると、従来の電気的に連続するメッシュパターンがシート表面全体に形成された電磁波伝送シート1では、シート上の受信位置による電力のばらつきが比較的大きい。一方、互いに電気的に絶縁された複数の導電層を組み合わせて作成された電磁波伝送シート1では、受信電力の分散が大幅に抑えられている。これにより、本発明によれば、シート上の受信位置の違いによる出力の分散を低減できることが実証された。
【0045】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上述した実施形態には限定されない。すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。例えば、実施例1乃至3の構成要素を適宜組み合わせてなる第2の導電層13を含む電磁波伝送シート1は、すべて本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 電磁波伝送シート
11 誘電層
11S 表面
11R 裏面
11E 端部
12 第1の導電層
13 第2の導電層
14 第3の導電層
15 保護層
15A 保護層
15B 保護層
16 給電ポート
165 絶縁体
161 第1の給電体
162 第2の給電体
163 第1の給電板
164 第2の給電板
17 導電層
17E 端部
18 保護層
19 シート片
20 カプラ
21 筐体
22 誘電体
23 内部電極
30 機器
L1 ケーブル
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15