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特許7410492発電装置、発電方法、および充発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】発電装置、発電方法、および充発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20231227BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20231227BHJP
   F01K 3/02 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
F01K25/10 U
H02J15/00 E
F01K3/02 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019230964
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021099054
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 信
(72)【発明者】
【氏名】藤田 顕二郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 勲
(72)【発明者】
【氏名】石田 政義
(72)【発明者】
【氏名】戸島 正剛
(72)【発明者】
【氏名】松隈 正樹
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-008042(JP,A)
【文献】特開平04-127850(JP,A)
【文献】特開2000-337170(JP,A)
【文献】特開平10-238367(JP,A)
【文献】特開平09-191586(JP,A)
【文献】特表2013-509529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/10
F01K 9/00
H02J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより発電を行う発電手段と、
前記発電手段に流入させる前の前記流体を加熱することで当該流体を液体から気体に相変化させるとともに、当該発電手段から排出した後の当該流体を冷却し、これらの間で熱交換を行う第1の熱交換手段と、
前記第1の熱交換手段から排出した前記流体に対し熱交換を行うことで当該流体をさらに冷却し、当該流体の少なくとも一部を気体から液体の状態に戻す第2の熱交換手段と、
前記第2の熱交換手段から排出する前記流体を膨張させることで当該流体をさらに液体の状態に戻す膨張手段と、
を備え、
前記第2の熱交換手段は、前記膨張手段により液体にならずに残存した気体の状態の前記流体との間で熱交換を行い、
前記膨張手段により液体にならず残存した気体は、前記発電手段から排出した後の前記流体と熱交換をした後に、当該流体が有する冷熱を利用する外部装置に送出されることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記発電手段から排出した後の前記流体は、前記膨張手段により液体にならず残存した気体の状態の当該流体との間で熱交換を行うことでさらに冷却されることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記発電手段に流入させる前の前記流体は、前記第1の熱交換手段に加え、自装置で発生する熱以外の外熱により加熱されることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
熱を蓄積する蓄熱手段をさらに備え、
前記発電手段に流入させる前の前記流体は、前記第1の熱交換手段に加え、前記蓄熱手段に蓄積された熱により加熱されることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項5】
流体が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより発電を行う発電工程と、
前記発電工程前の前記流体を加熱することで当該流体を液体から気体に相変化させるとともに、当該発電工程後の当該流体を冷却し、これらの間で熱交換を行う第1の熱交換工程と、
前記第1の熱交換工程後の前記流体に対し熱交換を行うことで当該流体をさらに冷却し、当該流体の少なくとも一部を気体から液体の状態に戻す第2の熱交換工程と、
前記第2の熱交換工程後の前記流体を膨張させることで当該流体をさらに液体の状態に戻す膨張工程と、
を備え、
前記膨張工程にて液体にならず残存した気体は、前記発電工程後の前記流体と熱交換をした後に、当該流体が有する冷熱を利用する外部装置に送出されることを特徴とする発電方法。
【請求項6】
流体が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより発電を行う発電動作と、電力を利用して気体の状態の当該流体を圧縮して当該流体に圧縮エネルギーを蓄える充電動作と、を切り換えて行う動作手段と、
前記発電動作を行うときに、前記動作手段に流入させる前の前記流体を加熱することで当該流体を液体から気体に相変化させるとともに、当該動作手段から排出した後の当該流体を冷却し、これらの間で熱交換を行う第1の熱交換手段と、
前記発電動作を行うときに、前記第1の熱交換手段から排出した前記流体をさらに冷却し、当該流体の少なくとも一部を気体から液体の状態に戻す第2の熱交換手段と、
を備える充発電システム。
【請求項7】
前記第2の熱交換手段から排出する前記流体を膨張させることで当該流体をさらに液体の状態に戻す膨張手段をさらに備え、
充電動作を行うときに、前記第2の熱交換手段は、前記膨張手段により液体にならずに残存した気体の状態の前記流体との間で熱交換を行うことで当該流体を冷却することを特徴とする請求項に記載の充発電システム。
【請求項8】
前記充電動作を行うときに、前記動作手段から排出した後の前記流体は、前記膨張手段により液体にならず残存した気体の状態の当該流体との間で熱交換を行うことで冷却されることを特徴とする請求項に記載の充発電システム。
【請求項9】
前記膨張手段により液体にならずに残存した気体の状態の前記流体を、前記動作手段に流入させる前の当該流体と混合する混合手段をさらに備えることを特徴とする請求項に記載の充発電システム。
【請求項10】
熱を蓄積する蓄熱手段をさらに備え、
前記蓄熱手段は、
前記充電動作を行うときに、前記動作手段から発生する熱を蓄え、
前記発電動作を行うときに、前記動作手段に流入させる前の前記流体を、蓄積された熱により加熱することを特徴とする請求項に記載の充発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置、充電装置、発電方法、充電方法、充発電システム、熱機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力の平準化や太陽光発電を行う設備の稼働率の向上を図るために、例えば、週末の日中などに太陽光発電において発生する余剰電力を貯蔵し、平日の朝夕時などの電力逼迫時に発電を行う電力貯蔵システムが存在している。そしてこのような電力貯蔵システムとして、熱媒体として空気等の流体を利用し、気体の状態の流体を圧縮かつ冷却することで液体とし、冷熱として電力を貯蔵するものがある。
【0003】
特許文献1には、冷熱発電システムが記載されている。この冷熱発電システムにおいて、「空気液化工程」では、余剰電力がある場合に、この余剰電力を用いて空気液化装置の圧縮機が駆動され、原料空気が圧縮される。この空気は冷却器で冷却され、空気は熱交換器で受槽からの低温空気により冷却された後、膨張弁で断熱膨張により温度降下して液体空気となり、受槽に貯留される。「液体空気貯蔵工程」では、液体空気が貯蔵タンクに貯蔵される。「液体空気気化工程」では、貯蔵タンクの液体空気が、気化器で加熱されて高圧になる。「発電装置駆動工程」では、気化器からの高圧空気が蒸気に注入されて、タービンの出力が増強され、出力増強分、発電機の発電量が増加する。
また、特許文献2には、保冷タンクの液化層に注入した液体空気を、高圧ポンプで電熱ヒータへ高圧噴霧して加熱膨張させて発電用タービンと発電機とを駆動させた後、熱交換器に発電用タービンから排出する気化空気を流入させ、気化空気は、発電用タービンの排気圧力で保冷タンクの気化層に送り込み、その気化空気の大部分は圧力調整弁から大気に放出し、残りの気化空気は、冷凍液化機で液体空気に再生され、また、保冷タンクに注入した液体空気を、高圧ポンプで熱交換チューブに圧送し、発電用タービンから排出した気化空気を膨張弁へと圧送して、膨張弁で液体空気に再生して保冷タンクへと送り込む発電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-191586号公報
【文献】特開2012-17725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような熱媒体として空気等の流体を利用する電力貯蔵システムでは、発電の際に流体を液体から気体の状態に戻すために多くの熱を与える必要がある。また、発電後の空気には、依然として多くの冷熱が残存するが、現状のシステムでは、これをそのまま外気に放出している。この与える熱や放出する熱を有効に利用できれば、エネルギーの回収効率を上げることが可能となる。
本発明は、例えば、発電装置や充発電システムにおけるエネルギーの回収効率を上げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、流体が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより発電を行う発電手段と、発電手段に流入させる前の流体を加熱することで流体を液体から気体に相変化させるとともに、発電手段から排出した後の流体を冷却し、これらの間で熱交換を行う第1の熱交換手段と、第1の熱交換手段から排出した流体に対し熱交換を行うことで流体をさらに冷却し、流体の少なくとも一部を気体から液体の状態に戻す第2の熱交換手段と、第2の熱交換手段から排出する流体を膨張させることで流体をさらに液体の状態に戻す膨張手段と、を備え、第2の熱交換手段は、膨張手段により液体にならずに残存した気体の状態の流体との間で熱交換を行い、膨張手段により液体にならず残存した気体は、発電手段から排出した後の流体と熱交換をした後に、流体が有する冷熱を利用する外部装置に送出されることを特徴とする発電装置が提供される。この場合、第1の熱交換手段および第2の熱交換手段により、流体の再液化を行うことができ、エネルギーの回収効率を上げることができる。
【0007】
ここで、発電手段から排出した後の流体は、膨張手段により液体にならず残存した気体の状態の流体との間で熱交換を行うことでさらに冷却されるようにすることができる。この場合、気体の状態の流体の冷熱を回収することができる。
さらに、発電手段に流入させる前の流体は、第1の熱交換手段に加え、自装置で発生する熱以外の外熱により加熱されるようにすることができる。この場合、より多くの膨張エネルギーを流体に与えることができる。
またさらに、熱を蓄積する蓄熱手段をさらに備え、発電手段に流入させる前の流体は、第1の熱交換手段に加え、蓄熱手段に蓄積された熱により加熱されるようにすることができる。この場合、充電時に発生した熱を利用することができる
【0009】
さらに、本発明によれば、流体が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより発電を行う発電工程と、発電工程前の流体を加熱することで流体を液体から気体に相変化させるとともに、発電工程後の流体を冷却し、これらの間で熱交換を行う第1の熱交換工程と、第1の熱交換工程後の流体に対し熱交換を行うことで流体をさらに冷却し、流体の少なくとも一部を気体から液体の状態に戻す第2の熱交換工程と、第2の熱交換工程後の流体を膨張させることで流体をさらに液体の状態に戻す膨張工程と、を備え、膨張工程にて液体にならず残存した気体は、発電工程後の流体と熱交換をした後に、流体が有する冷熱を利用する外部装置に送出されることを特徴とする発電方法が提供される。この場合、第1の熱交換工程および第2の熱交換工程により、流体の再液化を行うことができ、エネルギーの回収効率を上げることができる。
【0011】
そして、本発明によれば、流体が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより発電を行う発電動作と、電力を利用して気体の状態の流体を圧縮して流体に圧縮エネルギーを蓄える充電動作と、を切り換えて行う動作手段と、発電動作を行うときに、動作手段に流入させる前の流体を加熱することで流体を液体から気体に相変化させるとともに、動作手段から排出した後の流体を冷却し、これらの間で熱交換を行う第1の熱交換手段と、発電動作を行うときに、第1の熱交換手段から排出した流体をさらに冷却し、流体の少なくとも一部を気体から液体の状態に戻す第2の熱交換手段と、を備える充発電システムが提供される。この場合、充電時および発電時における往復効率を上げることができる。
【0012】
ここで、第2の熱交換手段から排出する流体を膨張させることで流体をさらに液体の状態に戻す膨張手段をさらに備え、充電動作を行うときに、第2の熱交換手段は、膨張手段により液体にならずに残存した気体の状態の流体との間で熱交換を行うことで流体を冷却するようにすることができる。この場合、流体の液化を促進することができる。
また、充電動作を行うときに、動作手段から排出した後の流体は、膨張手段により液体にならず残存した気体の状態の流体との間で熱交換を行うことで冷却されるようにすることができる。この場合、気体の状態の流体の冷熱を回収することができる。
さらに、膨張手段により液体にならずに残存した気体の状態の流体を、動作手段に流入させる前の流体と混合する混合手段をさらに備えるようにすることができる。この場合、残存した気体の状態の流体の冷熱を利用して、流体の冷却を行うことができ、エネルギーの回収効率を上げることができる。
またさらに、熱を蓄積する蓄熱手段をさらに備え、蓄熱手段は、充電動作を行うときに、前記動作手段から発生する熱を蓄え、発電動作を行うときに、動作手段に流入させる前の流体を、蓄積された熱により加熱するようにすることができる。この場合、充電時に発生した熱を利用することができ、エネルギーの回収効率をさらに上げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発電装置や充発電システムにおけるエネルギーの回収効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)~(b)は、本実施の形態における充発電システムの全体構成例を示す図である。
図2】充電時の充発電システムの動作を説明したフローチャートである。
図3】充電時の充発電システムのp-h線図を示した図である。
図4】発電時の充発電システムの動作を説明したフローチャートである。
図5】発電時の充発電システムのp-h線図を示した図である。
図6】発電時の従来の充発電システムのp-h線図を示した図である。
図7】(a)は、充電時の充発電システムの制御について示したフローチャートである。(b)は、発電時の充発電システムの制御について示したフローチャートである。
図8】(a)~(b)は、充発電システムの第1の変形例について示した図である。
図9】(a)~(b)は、充発電システムの第2の変形例について示した図である。
図10】(a)~(b)は、充発電システムの第3の変形例について示した図である。
図11】(a)~(b)は、充発電システムの第4の変形例について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<従来の形態>
従来の電力貯蔵システムとしては、蓄電池や水素を利用する方法が一般的である。前者は、2次電池に充電を行い電力を貯蔵する。また、後者は、水の電気分解を行うことで水素を作り出し、水素として電力を貯蔵する。この場合、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵し、逆に化学エネルギーを電気エネルギーに変換することで、電力を取り出すことができる。しかしこの場合、何れも特殊な化学材料を使用しており、長期間運用を行うと、化学材料の劣化が生じる。そのため、化学材料の交換の必要があることから、ランニングコストが高額になりやすい。
【0018】
この欠点を解決するために、例えば、圧縮空気貯蔵システムが存在する。これは、電力を利用して、空気を圧縮し、圧縮空気として電力を貯蔵する。しかし、この方法では、圧縮空気を貯蔵するタンクの容積が多大となり、多くの設置面積や設置費用を必要とする。そのため、特に都市部のような用地に対し多くの費用を要する地域での設置は、現実的でない。
【0019】
一方、空気を液体にし、液体空気として、電力を貯蔵する液体空気貯蔵システムが存在する。この液体空気貯蔵システムでは、液体空気を使用するため、圧縮空気貯蔵システムに比較して、貯蔵するタンクの容積が小さくてすみ、設置面積や設置費用をより小さくすることができる。この液体空気貯蔵システムは、例えば、電力を貯蔵する充電時にコンプレッサーで空気を圧縮するとともに熱を取り除くことで、空気を液化する。また、電力を取り出す発電時には、液体空気に対し熱を加えることで空気を気化し、その際に生じた圧力を利用して、タービンを回して発電を行い、電力を発生させる。そして、発電時には、液体空気に熱を加える必要があることから、加える熱として、ボイラー排熱を利用したり、電熱ヒータを利用することがある。また、太陽熱を活用する場合もある。即ち、外部熱源が必要となる。
【0020】
また、発電時に得られた高圧空気を、内燃機関やガスタービンにより燃焼させ、高効率に発電を行うシステムも存在するが、燃焼を行うための燃料が必要となる他、COフリーではない。また、システムのエネルギーの回収効率も低下しやすくなる。また、多数の熱交換器を使用し、エネルギーの回収効率を向上させるシステムが昨今提案されているが、システム全体として複雑化し、設備に要する費用が多大になること、および使用しきれない冷熱や排熱を外気に放出することで、システムのエネルギーの回収効率が低下しやすい。
そこで本実施の形態では、以下の充発電システム1により上記問題の抑制を図っている。
なお以下の説明では、空気を熱媒体として使用する場合について主に説明を行うが、空気に限られるものでない。即ち、液体の状態と気体の状態とで相変化可能な流体であれば、空気に限らず、熱媒体として適用が可能である。このような流体としては、窒素(N)、酸素(O)、二酸化炭素(CO)、アンモニア(NH)、フロン、エーテルなどが挙げられる。
【0021】
<充発電システム1の全体構成の説明>
図1(a)~(b)は、本実施の形態における充発電システム1の全体構成例を示す図である。このうち図1(a)は、充電時の充発電システム1について示した図である。この場合、充発電システム1は、充電装置として捉えることができる。また、図1(b)は、発電時の充発電システム1について示した図である。この場合、充発電システム1は、発電装置として捉えることができる。
【0022】
図示するように本実施の形態の充発電システム1は、空気の圧縮および発電を行う充発電機10と、熱の蓄積を行う蓄熱装置20と、熱交換を行う熱交換器30、40と、空気を膨張させる膨張弁50と、液体空気を貯留するタンク60と、温度が異なる空気の混合を行う混合弁70と、充発電システム1全体の制御を行う制御部80を備える。また、充発電システム1は、タンク60から液体空気を送り出すポンプPを備える。このように、本実施の形態の充発電システム1は、図1(a)で示す充電時と、図1(b)で示す発電時とで、同様の装置構成により動作する。
【0023】
充発電機10は、図1(a)に示す充電時には、電力を使用してモータ10aを回転させ、これによりコンプレッサー10bを動作させることで、外気から吸気して充発電機10に流入する空気K11を圧縮する。即ち、充発電機10に備えられたモータ10aを電力を使用して動作させ、空気K11の圧縮を行う。充発電機10は、充電時において、電力を利用して気体の状態の空気K11を圧縮し、空気K11に圧縮エネルギーを蓄える圧縮手段として機能する。
【0024】
一方、充発電機10は、図1(b)に示す発電時には、液体空気K21が気化した空気K23による圧力を使用し、タービン10cを回転させ、これにより発電機10dを動作させることで、発電を行う。充発電機10は、発電時において、空気K11が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより発電を行う発電手段として機能する。
【0025】
本実施の形態では、充発電機10は、空気の圧縮および発電の双方を行う装置となっている。よって、充発電機10は、空気が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより発電を行う発電動作と、電力を利用して気体の状態の空気を圧縮して空気に圧縮エネルギーを蓄える充電動作と、を切り換えて行う動作手段であると考えることもできる。
なお、便宜上、モータ10aと発電機10dとは区別して説明したが、図1に示した例では、双方とも同一の装置である。また、充発電機10は、コンプレッサー10b、モータ10a(発電機10d)、およびタービン10cが1つの軸上に並ぶ一軸式の装置である。また、図1に示すように、コンプレッサー10bおよびタービン10cを、多段式とすることが好ましい。なお、詳しくは後述するが、モータ10aと発電機10dとを分け、別々の装置としてもよい。
【0026】
蓄熱装置20は、蓄熱手段の一例であり、熱を蓄積する装置である。蓄熱装置20は、熱を蓄積する蓄熱材を備える。
蓄熱装置20は、図1(a)に示す充電時には、蓄熱材に充発電機10から発生する熱を蓄える。即ち、モータ10aにより空気K11を圧縮する際には熱が発生するため、この熱を蓄熱材に備える。
一方、蓄熱装置20は、図1(b)に示す発電時には、蓄熱材から熱を放出し、空気K22を加熱する。これにより、気化した空気K22をさらに膨張させた空気K23にすることができる。
蓄熱材としては、熱を蓄積することができるものであれば、特に限られることはないが、例えば、物質の比熱を利用した顕熱蓄熱材を使用することができる。顕熱蓄熱材の例としては、水、オイル、コンクリート、レンガなどが挙げられる。また、物質の相転移を利用した潜熱蓄熱材や、化学反応時の吸熱・発熱を利用した化学蓄熱材を使用することもできる。潜熱蓄熱材の例としては、固液相転移を利用した、氷-水、酢酸ナトリウム3水和物(CHCOONa・3HO)等が挙げられる。また、化学蓄熱材の例としては、吸収反応、混合反応、水和反応を利用するものが挙げられる。
【0027】
熱交換器30、40は、温度が異なる空気の間で熱交換を行う装置である。
このうち熱交換器30は、図1(a)に示す充電時において、充発電機10により圧縮された空気K12を熱交換を行うことで冷却する熱交換手段として機能する。上述したように、モータ10aにより空気K11を圧縮する際には熱が発生し、空気K12は充発電機10に流入する前よりも高温の状態になる。また、液体空気K16を貯留するタンク60からは、詳しくは後述するが、ボイルオフガスと呼ばれる気体状態の空気K15が発生する。このボイルオフガスは、空気の沸点に近い温度を有し、極低温である。熱交換器30では、圧縮後の空気K12からボイルオフガスである空気K15に熱を遷移させ、圧縮後の空気K12の冷却を行う。これにより、圧縮後の空気K12は、液化直前の極低温にまで冷却された空気K13となる。
【0028】
熱交換器30は、図1(b)に示す発電時には、第1の熱交換手段として機能する。熱交換器30は、充発電機10に流入させる前の液体状態の液体空気K21と充発電機10から排出した後の気体状態の空気K24との間で熱交換を行う。充発電機10のタービン10cから排出した気体状態の空気K24は、タンク60から排出した液体空気K21よりも高温である。よって、熱交換器30では、タービン10cから排出した空気K24より、タンク60から排出した液体空気K21に熱を遷移させることで、液体空気K21を加熱する。そして、この熱交換により、充発電機10に流入させる前の液体空気K21を加熱し、空気を液体から気体に相変化させた空気K22にすることができる。またこの熱交換により、熱交換器30は、充発電機10から排出した後の空気K24を冷却する。
【0029】
さらに、発電時において、充発電機10から排出した後の空気K24は、ボイルオフガスである空気K27との間で熱交換を行うことでさらに冷却される。つまり充発電機10から排出した後の空気K24は、タンク60から排出した液体空気K21とボイルオフガスである空気K27の双方で冷却される。これにより、空気K24は、液化直前の極低温にまで冷却された空気K25となる。なお、熱交換器30で熱交換をした後の空気K29は、外気に放出され、排気される。ただし、空気K29は、いまだ十分な冷熱を有しており、空気K29が有する冷熱を利用する外部装置に送出されるようにしてもよい。この外部装置は、例えば、空気調和機、冷凍倉庫用の冷却装置、空気分離ガス製造装置などである。そして、空気K29が有する冷熱を利用してこれらの装置を動作させることで、これらの装置の効率が向上する。
【0030】
熱交換器40は、タンク60内に配される。
そして、熱交換器40は、図1(a)に示す充電時において、熱交換器30と同様な熱交換手段として機能する。熱交換器30から排出した空気K13は、熱交換器40により、タンク60内のボイルオフガスである空気K15との間で熱交換を行い、さらに冷却された空気K14となる。これにより、空気K14は、液体空気温度にまで冷却を行うことができる。
熱交換器40は、図1(b)に示す発電時には、熱交換器30から排出した空気K25に対し熱交換を行うことで空気K25をさらに冷却し、空気K25の少なくとも一部を気体から液体の状態に戻した空気K26とする第2の熱交換手段として機能する。このとき熱交換器40は、発電時と同様に、ボイルオフガスである空気K27との間で熱交換を行う。
【0031】
膨張弁50は、タンク60内に配される。膨張弁50は、図1(a)に示す充電時において、熱交換器40から排出する空気K14を膨張させることで空気の少なくとも一部を気体から液体の状態にする膨張手段として機能する。上述したように、熱交換器40により、空気K14は、液体空気温度にまで冷却されている。そして、膨張弁50により、急激に膨張させると、ジュールトムソン効果により、少なくとも一部が液化し、液体空気K16となる。膨張弁50は、タンク60内に配されるため、液体空気K16は、タンク60の下部に貯留される。また、膨張弁50により液体にならず残存した気体の状態の空気K15は、ボイルオフガスと呼ばれ、タンク60の上部に溜まる。そして、ボイルオフガスである空気K15が、予め定められた圧力を超えると、逆止弁60aが開く。そして、空気K15は、熱交換器30に向け排出される。
膨張弁50は、図1(b)に示す発電時には、熱交換器40から排出する空気K26を膨張させることで空気K26をさらに液体の状態に戻す膨張手段として機能する。この作用は、充電時と同様であり、膨張弁50により、急激に膨張させると、ジュールトムソン効果により、少なくとも一部が液化し、液体空気K28となる。また、膨張弁50により液体にならず残存した気体の状態の空気K27は、ボイルオフガスである。
【0032】
タンク60は、液体空気K16、K28、および空気K15、K27を貯留する。これらは、極低温であるため、タンク60は、この温度において耐性を有し、低温脆性などが生じにくい材料で製造されるとともに、断熱性に優れる必要がある。そのため、例えば、タンク60は、外壁をステンレス製の二重壁とし、この二重壁間を高真空にしたデュワー瓶構造とする。さらに、例えば、断熱材により保冷する構造とすることもできる。
【0033】
混合弁70は、図1(a)に示す充電時において使用される。混合弁70は、熱交換器30を通過した後のボイルオフガスである空気K17を、充発電機10に流入させる前の空気K11と混合する混合手段として機能する。つまり、本実施の形態では、ボイルオフガスを外気に放出せず、空気K11を冷却する用途として活用する。これにより、充発電システム1のエネルギーの回収効率を向上させることができる。また、空気K11に含まれる不純物は、冷却されることで凝縮する。これにより、空気K11に含まれる不純物を、除去することができる。この不純物は、例えば、水や二酸化炭素である。
【0034】
制御部80は、図1(a)に示す充電時には、電力を利用して液体空気K16を製造するための制御を行う。対して、制御部80は、図1(b)に示す発電時には、液体空気K16を気体の状態に戻し、気体になるときの膨張エネルギーを利用して発電機10dにより電力を発生させる制御を行う。制御部80が行う具体的な制御については、後述する。
【0035】
<充発電システム1の動作の説明>
次に、図1で示した充発電システム1の動作について説明する。
(充電時の動作)
まず、充発電システム1を使用して、電力を充電する際の動作について説明する。
図2は、充電時の充発電システム1の動作を説明したフローチャートである。また、図3は、充電時の充発電システム1のp-h線図を示した図である。図3において、横軸は比エンタルピー(h)を表し、縦軸は、圧力(p)を表す。
【0036】
充電時には、まず充発電機10のモータ10aを電力により動作させ、外気から空気K11を吸気する(ステップ101)。このときの空気K11の圧力は、大気圧p0である。また、空気K11の温度は常温であり、例えば、25℃である。
【0037】
次に、混合弁70により、空気K11とボイルオフガスである空気K17とを混合する(ステップ102)。これにより、空気K11を冷却するとともに、空気K11中に含まれる不純物の除去を行う。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、大気圧p0であり、変化しないが、比エンタルピー(h)は、空気K17の混合により温度が低下することで低下する。
【0038】
さらに、充発電機10のコンプレッサ-10bにより、空気K11を圧縮する(ステップ103)。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)および比エンタルピー(h)は、圧縮により、ともに増大する。
【0039】
そして、この際に、蓄熱装置20の蓄熱材に、充発電機10から発生する熱を蓄積する(ステップ104)。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、変化しないが、比エンタルピー(h)は、空気K11から熱が除去され、温度が低下することにより低下する。
【0040】
なお、ステップ103およびステップ104で示した空気K11の圧縮および熱除去は、予め定められた複数回繰り返してもよい。この場合、ステップ103およびステップ104が、予め定められた回数繰り返された場合(ステップ105でYes)、ステップ106に進む。対して、予め定められた回数繰り返されていない場合(ステップ105でNo)、ステップ103に戻る。
図3のp-h線図では、充発電機10により、ステップ103およびステップ104を、2回繰り返して行った例を示している。そして、その結果、圧力(p)は、最大圧力ph1に達する。
【0041】
次に、圧縮した後の空気K11を、中間圧力pm1まで膨張させ、この膨張エネルギーによりタービン10cを回転させる(ステップ106)。上述した通り、充発電機10は、コンプレッサー10b、モータ10a(発電機10d)、およびタービン10cが1つの軸上に並ぶ一軸式の装置であるので、タービン10cにより発生した回転力は、コンプレッサー10bを動作させる動力として活用される。ステップ106は、圧縮した後の空気K11を中間圧力pm1まで断熱膨張させる工程である。この工程により、空気K11を、液化寸前まで冷却することができる。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)および比エンタルピー(h)は、断熱膨張により、ともに低下する。
【0042】
そして、充発電機10から排出された空気K12は、熱交換器30に流入し、ボイルオフガスである空気K15との間で、最初の熱交換を行う(ステップ107)。これにより、空気K12は、さらに冷却され、空気K13となる。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、中間圧力pm1のまま変化しないが、比エンタルピー(h)は、空気K12が冷却されることで低下する。
【0043】
さらに、熱交換器30から排出された空気K13は、熱交換器40に流入し、ボイルオフガスである空気K15との間で、2回目の熱交換を行う(ステップ108)。これにより、空気K13は、さらに冷却され、空気K14となる。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、中間圧力pm1のまま変化しないが、比エンタルピー(h)は、空気K13が冷却されることで低下する。また、空気K14は、液体空気温度にまで冷却され、気体および液体の混合(気液混合)状態となっていることがわかる。
【0044】
次に、空気K14は、膨張弁50によりタンク60内部で膨張する(ステップ109)。このときジュールトムソン効果により、空気K14は、温度が低下する。液体になった液体空気K16は、タンク60にて貯留される。なお、このときのタンク60内の圧力は、例えば、大気圧p0である。また、液体空気K16の温度は、例えば、-196℃である。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、低下するが、比エンタルピー(h)は、保存されるジュールトムソン膨張となっている。
上記一連の工程により、吸気した空気K11を液化し、液体空気K16とすることができる。また、上記一連の工程は、電力を液体空気K16の形で充電する工程であると考えることもできる。
また、液体にならず気体の状態の空気K15は、ボイルオフガスとして、上述したステップ107およびステップ108における、熱交換器30、40での熱交換、およびステップ102における、混合弁70における空気K11との混合に活用される。
【0045】
なお、充発電システム1の起動時には、ポンプPを動作させ、タンク60から液体空気K16を、液体空気K18として送出することが好ましい。これにより、熱交換器30を運転温度まで冷却し、充発電機10から排出された空気K12の冷却を行う。また、熱交換器30で、液体空気K18は加熱され、気体状態の空気K19となるが、これをボイルオフガスである空気K17と混合し、さらに吸気した空気K11と混合する。
【0046】
なお、上述したステップ103は、電力を利用して気体の状態の空気を圧縮し、空気に圧縮エネルギーを蓄える圧縮工程として捉えることができる。
また、ステップ107は、圧縮工程により圧縮された空気K12を熱交換を行うことで冷却する熱交換工程として捉えることができる。
さらに、ステップ109は、熱交換工程後の空気K14を膨張させることで空気の少なくとも一部を気体から液体の状態にする膨張工程として捉えることができる。
そして、ステップ102は、ステップ109の膨張工程において液体にならずに残存した気体の状態の空気K17を、ステップ103の圧縮工程前の空気と混合する混合工程として捉えることができる。
また、上述した充発電システム1の充電動作は、上述した圧縮工程、熱交換工程、膨張行程、および混合工程を含む充電方法であると考えることもできる。
【0047】
なお、空気K11は、冷却水等により、さらに冷却することが好ましい。これは、図3のp-h線図では、点T11が矢印Y11方向に移動することに対応する。また、最大圧力ph1は、大きい方がより好ましい。これは、図3のp-h線図では、最大圧力ph1が矢印Y12方向に移動することに対応する。さらに、タンク60内の圧力は、上述した例では、大気圧p0であったが、この圧力をより大きくすることで、空気の液化率をより大きくすることができる。これは、図3のp-h線図では、点T13が矢印Y13方向に移動することに対応する。このようにすることで、充発電システム1のエネルギーの回収効率がさらに向上する。
また、図3のp-h線図では、飽和圧力pcに対し、中間圧力pm1や最大圧力ph1を、小さく設定していた。即ち、pc>pm1、pc>ph1としていた。ただし、これに限られるものではなく、飽和圧力pcに対し、中間圧力pm1や最大圧力ph1を、大きく設定してもよい。即ち、pc<pm1、pc<ph1としてもよい。
【0048】
(発電時の動作)
次に、充発電システム1を使用して、発電する際の動作について説明する。
図4は、発電時の充発電システム1の動作を説明したフローチャートである。また、図5は、発電時の充発電システム1のp-h線図を示した図である。
【0049】
発電時には、まず、ポンプPを利用し、タンク60から液体空気K28を、液体空気K21として送出する(ステップ201)。この際、ポンプPにより、液体空気K21は、昇圧される。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、ポンプPにより昇圧されることで、最大圧力ph2に達する。
【0050】
次に、液体空気K21は、熱交換器30に流入し、充発電機10から排出された空気K24との間で、熱交換を行う(ステップ202)。これにより、液体空気K21は、加熱され、空気K22となる。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、変化しないが、比エンタルピー(h)は、加熱されることとで増大する。またこのとき、空気K22は、気体および液体の混合状態となることがわかる。ただし、これに限られるものではなく、ステップ202後の空気K22が、気体だけの状態、または液体だけの状態になるようにしてもよい。
【0051】
そして、空気K22は、蓄熱装置20に蓄積された熱によりさらに加熱される(ステップ203)。これにより、液体空気K21は、加熱され、気体状態の空気K23となる。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、変化しないが、比エンタルピー(h)は、加熱されることとでさらに増大する。またこのとき、空気K23は、気体の状態になることがわかる。空気K23は、比エンタルピー(h)が最大となり、このときの温度は、例えば、常温の25℃である。
【0052】
なお、ステップ202およびステップ203において、空気K22や空気K23は、自装置で発生する熱以外の外熱によりさらに加熱されるとよい。外熱は、特に限られるものではないが、具体的には、常温の大気から供給される熱を利用する。また、常温の水を利用してもよい。なお、外熱を供給するための熱交換器をさらに設置してもよい。
【0053】
次に、空気K23は、充発電機10に流入し、その膨張エネルギーにより、タービン10cを回転させ、これにより発電機10dを動作させることで、発電を行う。(ステップ204)。ステップ204は、空気K23を断熱膨張させる工程である。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)および比エンタルピー(h)は、断熱膨張により、ともに低下する。このとき、圧力(p)は、中間圧力pm2まで低下する。
【0054】
充発電機10から排出された空気K24は、熱交換器30に流入し、ボイルオフガスである空気K27との間で、最初の熱交換を行う(ステップ205)。さらにこのとき、ステップ202で説明したように、空気K24は、液体空気K21との間で、熱交換を行う(ステップ206)。これらの熱交換により、空気K24は、冷却され、空気K25となる。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、中間圧力pm2のまま変化しないが、比エンタルピー(h)は、空気K24が冷却されることで、低下する。
なお、ステップ205とステップ206とは、これとは逆の順で行ってもよい。つまり、空気K24が液体空気K21との間で熱交換を行う工程(上述のステップ206)の後に、空気K24がボイルオフガスである空気K27との間で熱交換を行う工程(上述のステップ205)を行うようにしてもよい。即ち、ステップ205とステップ206とは、何れを先としてもよい。
【0055】
次に、熱交換器30から排出された空気K25は、熱交換器40に流入し、ボイルオフガスである空気K27との間で、2回目の熱交換を行う(ステップ207)。これにより、空気K25は、さらに冷却され、空気K26となる。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、中間圧力pm2のまま変化しないが、比エンタルピー(h)は、空気K25が冷却されることで低下する。また、空気K26は、液体空気温度にまで冷却され、気体および液体の混合状態となっていることがわかる。
【0056】
次に、空気K26は、膨張弁50によりタンク60内部で膨張する(ステップ208)。このときジュールトムソン効果により、空気K26は、温度が低下する。液体になった液体空気K28は、タンク60にて貯留される。なお、このときのタンク60内の圧力は、例えば、大気圧p0である。また、液体空気K28の温度は、例えば、-196℃である。このときのp-h線図を参照すると、圧力(p)は、低下するが、比エンタルピー(h)は、保存されるジュールトムソン膨張となっている。
また、液体にならず気体の状態の空気K27は、ボイルオフガスとして、上述したステップ205およびステップ207における、熱交換器30、40での熱交換に活用される。
【0057】
なお、ステップ204は、液体空気K21が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより発電を行う発電工程であると捉えることができる。
また、ステップ202およびステップ206は、発電工程前の液体空気K21を加熱することで空気を液体から気体に相変化させるとともに、発電工程後の空気を冷却し、これらの間で熱交換を行う第1の熱交換工程として捉えることができる。
さらに、ステップ207は、第1の熱交換工程後の空気に対し熱交換を行うことで空気をさらに冷却し、空気の少なくとも一部を気体から液体の状態に戻す第2の熱交換工程として捉えることができる。
そして、上述した充発電システム1の発電動作は、上述した発電工程、第1の熱交換工程、および第2の熱交換工程を含む発電方法であると考えることもできる。
【0058】
なお、ステップ202、203において、空気K22や空気K23は、より温度を高くすることが好ましい。これは、図5のp-h線図では、点T21が矢印Y21方向に移動することに対応する。また、中間圧力pm2は、より小さくすることが好ましい。これは、図5のp-h線図では、点T22が矢印Y22方向に移動することに対応する。このようにすることで、充発電システム1のエネルギーの回収効率がさらに向上する。
【0059】
本実施の形態の充発電システム1は、充電時では、ボイルオフガスを、外気から吸気した空気K11と混合することに特徴を有する。これにより、上述したように、充発電システム1のエネルギーの回収効率を向上させることができるとともに、空気K11に含まれる不純物を除去することができる。
【0060】
また、本実施の形態の充発電システム1は、発電時では、液体状態から気体状態にし、発電を行った後の空気を、その後冷却し、液体空気として再液化することに特徴を有する。つまり、発電を行った後の空気K24は、冷熱を多量に有することから、少なくともその一部を再液化することで、冷熱を回収することができる。これにより、従来のように、発電を行った後の空気を、外気に放出する方法よりも、冷熱を無駄に放出することが抑制でき、充発電システム1のエネルギーの回収効率が向上する。
そして、本実施の形態の充発電システム1は、ボイルオフガスである空気K27を、ステップ205およびステップ207における、熱交換器30、40での熱交換に活用する。即ち、ボイルオフガスの冷熱を無駄に外気に放出することが抑制できる。そのため、充発電システム1のエネルギーの回収効率をさらに向上することができる。
また、図5のp-h線図では、飽和圧力pcに対し、中間圧力pm2や最大圧力ph2を、小さく設定していた。即ち、pc>pm2、pc>ph2としていた。ただし、これに限られるものではなく、飽和圧力pcに対し、中間圧力pm2や最大圧力ph2を、大きく設定してもよい。即ち、pc<pm2、pc<ph2としてもよい。
【0061】
図6は、発電時の従来の充発電システムのp-h線図を示した図である。
図示するように、従来の充発電システムでは、発電時では、発電を行った後の空気は、外気に放出していた。
これに対し、図5に図示する本実施の形態の充発電システム1のp-h線図では、図6で示したp-h線図に対し、ステップ205以降の過程を組み込むことで、発電を行った後の空気K24の少なくともその一部を再液化する。
また、図5に図示する本実施の形態の充発電システム1のp-h線図では、図6で示したp-h線図に対し、ボイルオフガスである空気K27を、ステップ205およびステップ207における、熱交換器30、40での熱交換に活用する過程が組み込まれる。
【0062】
本実施の形態の充発電システム1は、蓄電池や水素を利用する方法に比較して、特殊な化学材料を使用しない。そのため、ランニングコストも低廉になりやすい。また、可燃性の部材を使用しないため、安全性の向上を図ることができる。
さらに、本実施の形態の充発電システム1は、圧縮空気として電力を貯蔵する方法に比較して、容積のより小さい液体空気を利用してエネルギーを貯蔵する。そのため、エネルギー貯蔵密度が高く、充発電システム1を構成する装置の小型化を図ることができる。
また、本実施の形態の充発電システム1は、液体空気を気体の状態にするのに、発電を行った後の空気K24を利用するため、外熱の利用をより少なくすることができる。通常は、外熱は、常温の大気から供給される熱で足りる。よって従来のように、ボイラー排熱、電熱ヒータ、太陽熱等を利用しなくてもよい。
またさらに、本実施の形態の充発電システム1は、燃焼を行うための燃料は必要としない。そのため、COの排出を抑制することができる。
そして、本実施の形態の充発電システム1は、基本的に熱交換器は、熱交換器30および熱交換器40の2つで足りる。そのため、充発電システム1の装置構成を簡略化でき、経済性を向上させることができる。
【0063】
また、発電時における充発電システム1は、図5のp-h線図に従い、下記の熱サイクル(a)~(d)を使用する熱機関であると捉えることもできる。
(a)空気等の流体が液体から気体になるときの膨張エネルギーを利用して仕事を行う仕事過程
(b)仕事過程前における流体と仕事過程後における流体との間で第1の熱交換を行い、仕事過程前における流体を加熱する加熱過程
(c)第1の熱交換により、仕事過程後における流体を冷却する第1の冷却過程
(d)第1の冷却過程後の流体に対し第2の熱交換を行うことで流体をさらに冷却し、流体の少なくとも一部を気体から液体の状態に戻す第2の冷却過程
【0064】
なお、次の熱サイクル(e)~(f)を加えることもできる。
(e)第2の冷却工程から排出する流体を膨張させることで流体をさらに液体の状態に戻す膨張過程
(f)膨張過程の前段に液体を加圧する加圧過程
【0065】
(a)の仕事過程は、上述した例では、ステップ204に対応する。即ち、液体空気K21が液体から気体になるときの膨張エネルギーにより、タービン10cを回転させ、発電機10dを動作させることで、発電を行う過程に対応する。
(b)の加熱過程は、上述した例では、ステップ202に対応する。即ち、熱交換器30において、液体空気K21が、空気K24との間で、熱交換を行い、液体空気K21を加熱する過程に対応する。
(c)の第1の冷却過程は、上述した例では、ステップ205やステップ206に対応する。即ち、熱交換器30において、液体空気K21が、空気K24との間で、熱交換を行い、空気K24を冷却する過程に対応する。
(d)の第2の冷却過程は、上述した例では、ステップ207に対応する。即ち、熱交換器40において、空気K25が、ボイルオフガスである空気K27との間で、熱交換を行い、空気K26とする過程に対応する。
(e)の膨張過程は、上述した例では、ステップ208に対応する。即ち、空気K26が、膨張弁50によりタンク60内部で膨張し、このときジュールトムソン効果により、空気K26の温度が低下する過程に対応する。
(f)の加圧過程は、上述した例では、ステップ201に対応する。即ち、ポンプPを利用し、昇圧して液体空気K21を送出する過程に対応する。
【0066】
上記熱サイクル(a)~(f)は、実際の工程では、(f)→(b)→(a)→(c)→(d)→(e)の順で進行する。
なお、ここで仕事を行うことは、上述した例では、発電することであるが、他の例としては、動力源であるエンジンやモータを回転させる仕事を行うことなども該当する。
【0067】
<充発電システム1の制御の説明>
次に、制御部80が行う充発電システム1の制御について説明する。ここでは、熱交換器30と熱交換器40の間を流れる空気K13、K25の温度を測定する温度センサ(図示せず)、および圧力を測定する圧力センサ(図示せず)が設置されているものとし、これらから取得した温度および圧力を基に制御部80が制御を行う場合について説明する。ただし、これに限られるものではなく、他の箇所に温度センサや圧力センサを設置し、これらから取得した温度および圧力を基に制御を行ってもよい。また、温度や圧力のみならず、例えば、流量センサから取得した空気の流量や、タンク60内に設置したレベルセンサから取得した液体空気の量等を基にして制御を行ってもよい。
(充電時の動作)
図7(a)は、充電時の充発電システム1の制御について示したフローチャートである。
まず、制御部80が、温度センサから、空気K13の温度を取得する(ステップ301)。次に、制御部80が、圧力センサから空気K13の圧力を取得する(ステップ302)。
そして、制御部80は、取得した温度から目標圧力を設定する(ステップ303)。目標圧力は、温度から目標圧力を求めるための予め定められた算出式を使用して求めてもよく、温度と目標圧力が対になったLUT(Look up Table)を用意しておき、このLUTを参照することで求めてもよい。
【0068】
次に、制御部80は、ステップ302で取得した圧力が、目標圧力から予め定められた範囲内であるか否かを判断する(ステップ304)。
その結果、予め定められた範囲内であった場合(ステップ304でYes)、モータ10aに投入される電力を維持する(ステップ305)。
対して、予め定められた範囲内でなかった場合(ステップ304でNo)、モータ10aに投入する電力を調節する(ステップ306)。具体的には、取得した圧力が、目標圧力より大きかったときは、モータ10aに投入する電力を減少させる。これにより、モータ10aの回転数が減少し、圧力は、目標圧力に向かい減少することが期待できる。一方、取得した圧力が、目標圧力より小さかったときは、モータ10aに投入する電力を増加させる。これにより、モータ10aの回転数が増加し、圧力は、目標圧力に向かい増加することが期待できる。また、取得した圧力と目標圧力との差分に応じ、電力の変化量を増減させてもよい。
【0069】
(発電時の動作)
図7(b)は、発電時の充発電システム1の制御について示したフローチャートである。
まず、制御部80が、温度センサから、空気K25の温度を取得する(ステップ401)。次に、制御部80が、圧力センサから空気K25の圧力を取得する(ステップ402)。
そして、制御部80は、取得した温度から目標圧力を設定する(ステップ403)。目標圧力の設定は、図7(a)のステップ303と同様の方法で行うことができる。
【0070】
次に、制御部80は、ステップ402で取得した圧力が、目標圧力から予め定められた範囲内であるか否かを判断する(ステップ404)。
その結果、予め定められた範囲内であった場合(ステップ404でYes)、ポンプPに投入される電力を維持する(ステップ405)。
対して、予め定められた範囲内でなかった場合(ステップ404でNo)、ポンプPに投入する電力を調節する(ステップ406)。具体的には、取得した圧力が、目標圧力より大きかったときは、ポンプPに投入する電力を減少させる。一方、取得した圧力が、目標圧力より小さかったときは、ポンプPに投入する電力を増加させる。
【0071】
充電時および発電時において、制御部80が上記制御を行い、これを繰り返すことで、フィードバック制御を行うことができる。
【0072】
次に、充発電システム1の変形例について説明する。
<変形例1>
図8(a)~(b)は、充発電システム1の第1の変形例について示した図である。
図示する充発電システム1は、図1に示した充発電システム1に比較して、充発電機10が、圧縮装置11と発電装置12とに分かれる点で異なり、他は同様である。
つまり、図1に示した充発電システム1は、充電時には、モータ10aを回転させることで、コンプレッサー10bを動作させ、空気K11の圧縮を行う。また、発電時には、空気K23によりタービン10cを回転させ、発電機10dを動作させることで、発電を行う。そして、モータ10aと発電機10dとは、同じ装置であり、共用である。
一方、図8の充発電システム1では、図8(a)で示す充電時には、圧縮装置11が動作し、発電機12は動作しない。この場合、圧縮装置11のモータ10aを回転させることで、コンプレッサー10bを動作させ、空気K11の圧縮を行う。また、図8(b)で示す発電時には、発電機12が動作し、圧縮装置11は動作しない。この場合、空気K23により、発電機12のタービン10cを回転させることで、発電機10dを動作させることで、発電を行う。この場合、モータ10aと発電機10dとは、別々の装置である。そして、圧縮装置11と発電機12との軸は別々であり、充発電機10は、二軸式の装置である。
【0073】
<変形例2>
図9(a)~(b)は、充発電システム1の第2の変形例について示した図である。
図示する充発電システム1は、図1に示した充発電システム1に比較して、熱交換器91が加わる点で異なり、他は同様である。
熱交換器91には、水が流入しており、空気K19、K22が、この水との間で熱交換を行う。これにより、空気K19、K22は、水により加熱される。つまり、図1に示した充発電システム1では、例えば、発電時では、液体空気K21および空気K22は、熱交換器30、蓄熱装置20および外熱により、加熱されていたが、図9の充発電システム1では、さらに、熱交換器91により、加熱を行うことができる。
熱交換器91で使用する水は、特に限られるものではないが、例えば、常温の水であり、水道水、井水、工業用水、冷却水などを使用することができる。冷却水は、通常は、機器等を冷却するために使用されるが、この場合、空気K19、K22に比べれば、十分に高温である。よって、空気K19、K22を加熱することができる。
また、熱交換器91を、蓄熱装置20とタービン10cとの間に設置してもよい。これにより、空気K23に、さらに大きな膨張エネルギーを付与することができる。
【0074】
<変形例3>
図10(a)~(b)は、充発電システム1の第3の変形例について示した図である。
図示する充発電システム1は、図1に示した充発電システム1に比較して、熱交換器92が加わる点で異なり、他は同様である。
熱交換器92には、LN(液体窒素)やLNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)が流入しており、空気K13、K25が、このLNやLNGとの間で熱交換を行う。これにより、空気K13、K25は、LNやLNGによりさらに冷却される。つまり、図1に示した充発電システム1では、空気K12、K24は、熱交換器30により冷却されていたが、図9の充発電システム1では、熱交換器30から排出した空気K13、K25を、熱交換器92によりさらに冷却する。つまり、熱交換器92により、冷却のアシストを行う。
【0075】
<変形例4>
図11(a)~(b)は、充発電システム1の第4の変形例について示した図である。
図示する充発電システム1は、図1に示した充発電システム1に比較して、熱交換器30を、熱交換器31と熱交換器32とに分けた点で異なり、他は同様である。
つまり、図1に示した充発電システム1は、例えば、発電時には、熱交換器30において、空気K24は、液体空気K21およびボイルオフガスである空気K27との間で熱交換を行い、冷却される。一方、図11の充発電システム1では、空気K24は、まず、熱交換器31において、ボイルオフガスである空気K27との間で熱交換を行い、冷却される。さらに、空気K24は、熱交換器32において、液体空気K21との間で熱交換を行い、冷却される。つまり、図11の充発電システム1では、熱交換器30が有する機能を、熱交換器31と熱交換器32とで分担している。
【実施例
【0076】
以下、本発明を実施例を用いて、より詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
本実施例では、図1に示す充発電システム1を使用し、充電および発電を行った。また、流体として窒素を使用した。
充電時には、図1(a)や図2で説明したような方法で、充発電システム1を動作させ、電力を充電した。このとき、141kJ/kgの電力を投入して窒素を液化し、液体窒素(LN)とした。このときの窒素の液化率は25%であったため、液体窒素1kgを製造する電力として、564kJ/LNkg必要であった。
発電時には、図1(b)や図4で説明したような方法で、充発電システム1を動作させ、発電を行った。このとき発電した電力は、111kJ/kgであった。このときの窒素の液化率は50%であったため、液体窒素1kgを消費して発電した電力は、222kJ/LNkgとなる。
よって、往復効率は、222/564≒39%と高効率である。即ち、充発電システム1は、エネルギーの回収効率に優れることがわかる。
【0077】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更または改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0078】
1…充発電システム、10…充発電機、20…蓄熱装置、30、31、32、40、91、92…熱交換器、50…膨張弁、60…タンク、70…混合弁、80…制御部
図1
図2
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図10
図11