特許 7410493 デッキボード

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-12-26

(45)【発行日】2024-01-10

(54)【発明の名称】デッキボード

(51)【国際特許分類】

   B60R 5/04 20060101AFI20231227BHJP

【ＦＩ】

B60R5/04 Z

【請求項の数】 1

(21)【出願番号】P 2020000343

(22)【出願日】2020-01-06

(65)【公開番号】P2021109457

(43)【公開日】2021-08-02

【審査請求日】2022-11-04

(73)【特許権者】

【識別番号】000002967

【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社

(73)【特許権者】

【識別番号】000104674

【氏名又は名称】キョーラク株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100180644

【弁理士】

【氏名又は名称】▲崎▼山 博教

(72)【発明者】

【氏名】井上 伸也

(72)【発明者】

【氏名】佐伯 和彦

【審査官】池田 晃一

(56)【参考文献】

【文献】特開２００５－２８９２２９（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開昭６０－１１０１５１（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開２０１１－２４５９９８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－１０４４３６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６０Ｒ ５／０４

Ｂ３２Ｂ １／００ － ４３／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

車両の荷室で用いられる折り畳み可能なデッキボードであって、
前記荷室には、当該荷室の下方側に位置する下段位置、及び前記下段位置よりも上方側に位置する上段位置が設定されており、
前記デッキボードは、少なくとも一の折り畳み機構と、前記折り畳み機構を介して配された第一構成体及び第二構成体とを有すると共に、前記上段位置及び前記下段位置に配置できるものであり、
前記デッキボードが折り畳まれていない状態において表裏をなす面のうち、少なくとも一方には凹凸部が形成されており、
前記デッキボードが折り畳まれた状態において、前記凹凸部のうち少なくとも一部が嵌合するものであり、
前記第一構成体及び前記第二構成体のうちのいずれか大きい側の最大厚みは、前記デッキボードが折り畳まれた状態における前記第一構成体及び前記第二構成体が重なった最大厚みと等しいことを特徴とするデッキボード。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、車両の荷室で用いられるデッキボードに関する。

【背景技術】

【0002】

近年では、車両の荷室での使用性を高めるため、ヒンジ等により折り畳み可能なデッキボードや分割可能なデッキボードなどが提供されている。例えば、下記特許文献１には、効率的に荷室に収容することができる折り畳み式のゲッジボードが開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２００５－３０６３６１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ここで、車両の荷室には重量物が積載される場合も多く、デッキボードの強度アップが望まれている。特に、車両荷室がデッキボードを設置する位置を上段や下段など複数選択可能な仕様である場合において、車両荷室の下段にデッキボードが設置される場合には、比較的高さ方向に長尺なものが積載されることが想定できる。また、長尺な積載物は重量が比較的大きくなるため、下段にデッキボードが設置される場合には、より強度が要求される。

【0005】

ここで本発明は、折り畳み可能で使用性の高いデッキボードにおいて、強度の向上を実現することができるデッキボードの提供を目的とした。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上述の課題を解決すべく提供される本発明のデッキボードは、車両の荷室で用いられる折り畳み可能なデッキボードであって、少なくとも一の折り畳み機構を有し、前記デッキボードが折り畳まれていない状態において表裏をなす面のうち、少なくとも一方には凹凸部が形成されており、前記デッキボードが折り畳まれた状態において、前記凹凸部のうち少なくとも一部が嵌合することを特徴とするものである。

【0007】

本発明のデッキボードによれば、凹凸部の嵌合により、折り畳まれた状態において強度アップを実現することができる。特に、車両荷室の下段に折り畳まれた状態のデッキボードが設置される場合、長尺のため重量が大きくなる積載物の荷重にも耐える強度を実現することができる。

【0008】

また、本発明のデッキボードは、前記凹凸部が、前記デッキボードの長手方向あるいは幅方向に延びるように形成されているものであるとよい。

【0009】

上述の構成によれば、凹凸部をデッキボードのリンフォースとして機能させることができる。

【発明の効果】

【0010】

本発明によれば、折り畳み可能で使用性の高いデッキボードにおいて、強度の向上を実現することができるデッキボードを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本発明の実施形態に係るデッキボードを示す下方面側の斜視図である。

【図2】図１のデッキボードの上方面側のスケルトン図である。

【図3】図１のデッキボードの断面図である。（ａ）は平状態（図１のＡ－Ａ線断面図）、（ｂ）は折り畳み状態を示している。

【図4】図１のデッキボードが配置される荷室を示す斜視図である。

【図5】図４の荷室の断面図である。

【図6】図４の荷室において、フラット状態を示す斜視図である。

【図7】図４の荷室において、デッキボードが下段モードで用いられる場合の斜視図である。

【図8】図７の荷室の断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

以下、本発明の実施形態に係るデッキボード１０について、図面を参照しつつ説明する。

【0013】

デッキボード１０は、車両Ｖの荷室１００で用いられるものである（図４参照）。なお、以下では、デッキボード１０について説明した後に、デッキボード１０を荷室１００に配置させた状態について詳細に説明する。

【0014】

なお、以下の説明では、車両Ｖにおける上下方向を、単に「上下方向Ｈ」と記載して説明する。また、上下方向Ｈにおいて、上方を単に「上方Ｕｐ」と、下方を単に「下方Ｌｗ」と記載して説明する場合がある。

【0015】

また、以下の説明では、車両Ｖの前後方向において、前方を単に「前方Ｆｒ」と、後方を単に「後方Ｒｒ」と記載して説明する場合がある。

【0016】

図１に示すとおり、デッキボード１０は、ヒンジ部２０を有している。デッキボード１０は、ヒンジ部２０を介して折り畳み可能とされている。

【0017】

なお、以下の説明において、デッキボード１０が折り畳まれた状態を単に「折り畳み状態」と記載して説明し、デッキボード１０が折り畳まれていない状態を単に「平状態」と記載して説明する場合がある。

【0018】

また、デッキボード１０が車両Ｖの荷室１００に配置された状態において、デッキボード１０の表裏をなす面のうち、下方Ｌｗ側の面を単に「下方面１０ａ」と、上方Ｕｐ側の面を単に「上方面１０ｂ」と記載して説明する場合がある。

【0019】

図１に示すとおり、デッキボード１０は、平状態において、概ね矩形で板状の外観を有している。デッキボード１０は、第一構成体１２及び第二構成体１４がヒンジ部２０を介して連結されている。

【0020】

デッキボード１０は、長手方向が車両Ｖの幅方向Ｗと略一致するように荷室１００に配置される（図５参照）。なお、以下の説明では、デッキボード１０の平状態において、長手方向を単に「幅方向Ｗ」と記載し、幅方向Ｗと交差する方向（短手方向）を単に「奥行き方向Ｘ」と記載して説明する場合がある。

【0021】

ヒンジ部２０は、デッキボード１０の幅方向Ｗに沿うように設けられている。そのため、デッキボード１０は、奥行き方向Ｘに折り畳むことができる。図５に示すとおり、デッキボード１０は、車両Ｖの荷室１００に平状態で配置された状態において、第二構成体１４が車両Ｖの前方Ｆｒ側となり、第一構成体１２が車両Ｖの後方Ｒｒ側となる。平状態のデッキボード１０は、第二構成体１４を下方Ｌｗに向けて回転させて折り畳むことができる。

【0022】

デッキボード１０の表裏をなす面のうちの下方面１０ａには、幅方向Ｗに延びるように形成された複数の凹凸部３０（リンフォース部）が設けられている。本実施形態のデッキボード１０の凹凸部３０は、下方面１０ａからの高さが異なる段差状のものとして設けられている。

【0023】

なお、以下の説明では、凹凸部３０のうち、デッキボード１０の下方面１０ａから突出するよう形成されたもの（凸状のもの）を「凸部３２」と記載して説明する場合がある。また、凹凸部３０のうち、デッキボード１０の下方面１０ａから窪むように形成されたもの（凹状のもの）を「凹部３４」と記載して説明する場合がある。

【0024】

図３（ａ）に示すとおり、デッキボード１０には、第一構成体１２に一つの凸部３２が設けられ、第二構成体１４に二つの凸部３２が設けられている。また、デッキボード１０には、第一構成体１２及び第二構成体１４に、それぞれ一つの凹部３４が設けられている。

【0025】

なお、図２のスケルトン図に示すとおり、デッキボード１０の内部には、奥行き方向Ｘに延びるように形成された複数のリブ４０（補強部）が形成されており、凸部３２を補強している。

【0026】

図３（ｂ）に示すとおり、デッキボード１０が折り畳まれた状態では、凸部３２と凹部３４とが嵌合した状態となる。具体的には、折り畳み状態では、凸部３２の天面３２ａと凹部３４の底面３４ａとが接触した状態で凹部３４に凸部３２が嵌め込まれた状態となる。

【0027】

これにより、デッキボード１０は、折り畳み状態における強度を向上させることができる。言い方を換えれば、デッキボード１０では、凹凸部３０をリンフォースとして機能させることができる。

【0028】

＜デッキボードの荷室内での配置について＞
以下、デッキボード１０を荷室１００に配置させた状態について説明する。なお、以下の説明では、荷室１００の構成の概略について先ず説明し、次いでデッキボード１０の荷室１００における配置について説明する。

【0029】

＜荷室の構成について＞
荷室１００は、車両Ｖの室内のうち後方Ｒｒ側に設けられており、荷物などが積載される。図５に示すとおり、荷室１００は、リアシート１１０とバックドア１６０との間に形成された空間である。荷室１００には、リアフロアパネル１３０が設けられている。なお、図５及び図８では、図３において示した断面位置と同じ断面位置のデッキボード１０を示している。また、図５及び図８に示す支持部１４０は、乗せ面が投影された状態を示している。

【0030】

リアシート１１０は、着座する乗員の座面となるシートクッション（図示を省略）と、乗員の背中を支えるシートバック１１２とを有している。リアシート１１０は、シートバック１１２を前方に倒すことが可能な可倒式シートである。

【0031】

リアシート１１０は、シートバック１１２が起こされた状態では座席として使用されると共に、その前方の車室と荷室１００との仕切りとなる。また、図６に示すとおり、リアシート１１０は、シートバック１１２が前方Ｆｒに倒された状態では、シートバック１１２の背面１１２ａ上を荷室空間として利用することができる。このように、車両Ｖでは、リアシート１１０を前倒しすることにより荷室空間を拡張することができる。

【0032】

リアフロアパネル１３０は、荷室１００の床面を形成している。図７に示すとおり、荷室１００の側壁（デッキサイド１５０）であって、リアフロアパネル１３０よりも上方Ｕｐ側には、室内側に突出するように形成された支持部１４０が形成されている。支持部１４０は、シートバック１１２が前方Ｆｒに倒された状態において、背面１１２ａが配置される高さと略一致する高さとなる位置（上段位置Ｐ１）に設けられている（図５参照）。支持部１４０は、後述するフラットモードにおいて、デッキボード１０を支持する。

【0033】

＜上段位置でのデッキボードの配置＞
デッキボード１０は、平状態において、荷室１００の床面の大きさ（リアフロアパネル１３０の大きさ）よりもひと回り大きい面積を有している。また、図５に示すとおり、デッキボード１０は、平状態において、幅方向Ｗの両端（左右の両側）が支持部１４０に支持され、後方Ｒｒ側の端部が車両Ｖの後方Ｒｒ側の開口縁に支持される。すなわち、デッキボード１０は、支持部１４０が設けられた上段位置Ｐ１の高さに支持される。

【0034】

図６に示すとおり、デッキボード１０が上段位置Ｐ１に支持された状態において、シートバック１１２を前方Ｆｒに倒すと、デッキボード１０の高さとシートバック１１２の背面１１２ａの高さとが略一致するような状態となり、荷室１００がデッキボード１０に加え背面１１２ａまで拡張され、これらが略平坦な面を形成する状態（フラットモード）となる。

【0035】

このように、デッキボード１０を上段位置Ｐ１に配置させる場合は、デッキボード１０を折り畳むことなく設置し、シートバック１１２を折り畳んだ際のシートバック１１２の高さ（背面１１２ａの高さ）と略同一の高さとなり、フルフラットな荷室１００を実現することができる。

【0036】

＜下段位置でのデッキボードの配置＞
デッキボード１０は、折り畳み状態においてリアフロアパネル１３０と略一致する大きさとなる。そのため、図８に示すとおり、デッキボード１０をリアフロアパネル１３０の上に積置して、荷室１００の床面の高さをリアフロアパネル１３０よりも少し上方Ｕｐの高さ（折り畳み状態のデッキボード１０が積置された状態の高さ）とすることができる（下段位置Ｐ２）。

【0037】

荷室１００の床面を下段位置Ｐ２とした場合には、比較的長尺なものが積載されることが想定されることに加え、このような長尺物は重量が大きいことが想定される。

【0038】

ここで、上述のとおり、デッキボード１０は、折り畳み状態において、凹凸部３０の嵌合により、強度の向上を実現している（図３（ｂ）参照）。そのため、下段位置Ｐ２とされた荷室１００において、重量物の積載に耐えることができる。

【0039】

このように、デッキボード１０は、荷室１００の上段位置Ｐ１での使用と、下段位置Ｐ２での使用との、双方に対応して荷室１００の使用性を向上させることができる。

【0040】

なお、上述の実施形態に係るデッキボード１０では、幅方向Ｗに延びるように形成された三つの凸部３２を設けた例を示したが、本発明のデッキボードは上述の実施形態に限定されない。

【0041】

例えば、本発明のデッキボード１０は、二つの凸部を設けたものであってもよいし、四つ以上の凸部を設けたものであってもよい。また、凹凸部は、奥行き方向に延びるように形成されたものであってもよいし、略矩形あるいは略円形の凸部を設け、これに嵌合する凹部を設けたものとしてもよい。

【0042】

さらに、上述の実施形態に係るデッキボード１０では、二つの構成体により構成され、一つのヒンジ部２０を設けた例を示したが、本発明のデッキボードは上述の実施形態に限定されない。本発明のデッキボードは、二つ以上のヒンジ部と、三つ以上の構成体を有するものであってもよい。

【産業上の利用可能性】

【0043】

本発明は、車両の荷室に用いられるデッキボードとして、好適に採用することができる。

【符号の説明】

【0044】

１０ デッキボード
１２ 第一構成体
１４ 第二構成体
２０ ヒンジ部
３０ 凹凸部
３２ 凸部（凹凸部）
３４ 凹部（凹凸部）
Ｖ 車両

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】