(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】保線作業車搬送用台車
(51)【国際特許分類】
B61D 3/18 20060101AFI20231227BHJP
E01B 37/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B61D3/18 A
E01B37/00
(21)【出願番号】P 2020016102
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】麻生 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】竹村 敏男
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-002409(JP,A)
【文献】特開平07-247024(JP,A)
【文献】特開2002-017137(JP,A)
【文献】実開昭60-103076(JP,U)
【文献】実開昭60-169031(JP,U)
【文献】特開2002-021014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 3/18
E01B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道のレール上を走行して保線作業車を搬送する保線作業車搬送用台車であって、
前記レール上を走行する車輪が設けられ、保線作業車が載せられる台車本体と、
前記台車本体に着脱可能に設けられ、前記台車本体から線路の路盤上へ保線作業車を下す場合およびその逆に保線作業車を上げる場合に当該保線作業車がその上を走行する歩み板とを有し、
前記歩み板の前後両端の内、少なくとも一方には、前記台車本体の前後と前記台車本体の左右または鉄道のレールに掛止可能な掛止部が設けられ
、
前記歩み板には、回動軸により回動可能に設けられ、任意の角度に固定して保線作業車を走行可能な角度変更板が設けられていることを特徴とする保線作業車搬送用台車。
【請求項2】
鉄道のレール上を走行して保線作業車を搬送する保線作業車搬送用台車であって、
前記レール上を走行する車輪が設けられ、保線作業車が載せられる台車本体と、
前記台車本体に着脱可能に設けられ、前記台車本体から線路の路盤上へ保線作業車を下す場合およびその逆に保線作業車を上げる場合に当該保線作業車がその上を走行する歩み板とを有し、
前記歩み板の前後両端の内、少なくとも一方には、前記台車本体の前後と前記台車本体の左右または鉄道のレールに掛止可能な掛止部が設けられ、
前記歩み板は、
鉄道のレール間の幅とほぼ同じ長さを長辺方向の長さとする歩み板本体を有し、前記掛止部は、前記歩み板本体の前後両端それぞれに設けられ、
前後両端それぞれの前記掛止部を鉄道の左右のレールそれぞれ掛止することにより、保線作業車が当該歩み板の上を走行して左右のレールの一方側から他方側へ移動可能に構成されていることを特徴とする保線作業車搬送用台車。
【請求項3】
請求項1
または請求項2記載の保線作業車搬送用台車において、
前記台車本体には、保線作業車を旋回させる旋回テーブルが回転可能に設けられていることを特徴とする保線作業車搬送用台車。
【請求項4】
請求項1~
請求項3のいずれか一の請求項に記載の保線作業車搬送用台車において、
前記台車本体には、
前記歩み板を立てた状態で保持する歩み板用スタンドが設けられていることを特徴とする保線作業車搬送用台車。
【請求項5】
請求項4に記載の保線作業車搬送用台車において、
前記台車本体は、
台車本体フレームと、その台車本体フレームの前後左右の四隅にそれぞれ台車本体フレーム上面よりも高くなるようにリフトアップして設けられ、車輪を支持する車輪受けフレームとを備えており、
前記歩み板用スタンドは、前記車輪受けフレームに設けられ、前記歩み板を立てた状態で、かつ、前記歩み板の側辺と前記台車本体フレームとの間に隙間を空けて保持するように構成されていることを特徴とする保線作業車搬送用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道のレール上を走行して保線作業車を搬送する保線作業車搬送用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車を載せて搬送する作業車用搬送台車では、その台車から地面に作業車を下したり、地面から台車に作業車を上げるため歩み板を使用する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1の作業車用搬送台車では、歩み板は台車本体の後端に回動可能に設けられているため、台車本体の後方側以外では作業車を上げ下ろしすることができないという問題があった。
【0005】
また、作業車が保線作業車の場合で、作業車用搬送台車で搬送した保線作業車によってレールの外側で作業を行う場合に台車本体の後方側に保線作業車を下ろした場合、踏切りまで走行してレールを超えたり、あるいは他の重機を使用してレールを跨ぐ等、レールを跨いで保線作業車を移動させる作業に手間および時間がかかるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、台車本体の後方側以外でも作業車を下したり上げて、保線作業車を使用した保線作業の効率を改善することができる保線作業車搬送用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る保線作業車搬送用台車は、鉄道のレール上を走行して保線作業車を搬送する保線作業車搬送用台車であって、前記レール上を走行する車輪が設けられ、保線作業車が載せられる台車本体と、前記台車本体に着脱可能に設けられ、前記台車本体から線路の路盤上へ保線作業車を下す場合およびその逆に保線作業車を上げる場合に当該保線作業車がその上を走行する歩み板とを有し、前記歩み板の前後両端の内、少なくとも一方には、前記台車本体の前後と前記台車本体の左右または鉄道のレールに掛止可能な掛止部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明に係る保線作業車搬送用台車では、前記歩み板には、回動軸により回動可能に設けられ、任意の角度に固定して保線作業車を走行可能な角度変更板が設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る保線作業車搬送用台車では、前記歩み板は、鉄道のレール間の幅とほぼ同じ長さを長辺方向の長さとする歩み板本体を有し、前記掛止部は、前記歩み板本体の前後両端それぞれに設けられ、前後両端それぞれの前記掛止部を鉄道の左右のレールそれぞれ掛止することにより、保線作業車が当該歩み板の上を走行して左右のレールの一方側から他方側へ移動可能に構成されていることも特徴とする。
また、本発明に係る保線作業車搬送用台車では、前記台車本体には、保線作業車を旋回させる旋回テーブルが回転可能に設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る保線作業車搬送用台車では、前記台車本体には、前記歩み板を立てた状態で保持する歩み板用スタンドが設けられていることも特徴とする。
また、本発明に係る保線作業車搬送用台車では、前記台車本体は、台車本体フレームと、その台車本体フレームの前後左右の四隅にそれぞれ台車本体フレーム上面よりも高くなるようにリフトアップして設けられ、車輪を支持する車輪受けフレームとを備えており、前記歩み板用スタンドは、前記車輪受けフレームに設けられ、前記歩み板を立てた状態で、かつ、前記歩み板の側辺と前記台車本体フレームとの間に隙間を空けて保持するように構成されていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る保線作業車搬送用台車では、歩み板の前後両端の内、少なくとも一方に、台車本体の前後だけでなく、台車本体の左右または鉄道のレールに掛止可能な掛止部を設けたため、歩み板の掛止部を台車本体の前後だけでなく、台車本体の左右または鉄道のレールに掛止することにより、台車本体の左右方向からも作業車を上げ下ろしすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車を構成する台車本体の平面図である。
【
図2】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車を構成する台車本体の側面図、正面図である。
【
図3】(a),(b)それぞれ
図1におけるA部分の要部拡大平面図、B部分の要部拡大平面図である。
【
図4】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車を構成する歩み板の平面図、正面図である。
【
図5】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車を構成する歩み板の側面図、歩み板の角度変更板の角度を変更した状態を示す側面図である。
【
図6】本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車を構成する台車本体に保線作業車と共に歩み板を搭載した状態を示す側面図である。
【
図7】本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車を構成する台車本体に保線作業車と共に歩み板を搭載した状態を示す平面図である。
【
図8】本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車において保線作業車をレール間へ移動させる場合における台車本体に歩み板を掛けた状態を示す平面図である。
【
図9】本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車において保線作業車をレール間へ移動させる場合における台車本体に歩み板を掛けた状態を示す正面図である。
【
図10】
図8に示すように台車本体に歩み板を掛けて保線作業車を台車本体からレール間へ移動させている状態を示す側面図である。
【
図11】本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車において保線作業車をレールの外側へ移動させるためレールに歩み板を掛けた状態を示す平面図である。
【
図12】
図10に示すようにレールに歩み板を掛けて保線作業車をレールの外側の路盤から台車本体へ移動させている状態を示す側面図である。
【
図13】本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車において保線作業車をレールの外側の一方側から他方側に移動させるためレール間に歩み板を掛けた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、下記に説明する実施形態は、あくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で適宜変更可能である。
【0011】
<実施形態の保線作業車搬送用台車1の構成>
実施形態の保線作業車搬送用台車1は、鉄道のレール上を走行して保線作業車2を搬送する台車であって、
図1~
図3等に示すようにレール上を走行する前輪11b1および後輪11b2が設けられ、保線作業車2が載せられる台車本体11と、
図4~
図9等に示すように台車本体11に着脱可能に設けられ、台車本体11から線路の路盤上へ保線作業車2を下す場合およびその逆に保線作業車2を台車本体11に上げる場合に使用する歩み板12とを有して構成される。
【0012】
(台車本体11)
台車本体11は、
図1に示すように左右方向の中心を前後方向(縦方向)に走る中央縦材11a1から左右両側にそれぞれ平行に3本ずつ設けられた第2縦材11a2,11a2、第3縦材11a3,11a3および第4縦材11a4,11a4の合計7本の縦材11a1~11a4と、前後方向の中心を左右方向に中央横材11a5から前後両側にそれぞれ平行に2本ずつ設けられた第2横材11a6,11a6および第3横材11a7,11a7の合計5本の横材11a5~11a7とが田の字状に溶接されて構成された台車本体フレーム11aと、
図2等に示すように台車本体フレーム11aの前後左右の四隅にそれぞれ台車本体フレーム11a上面よりも高くなるようにリフトアップして設けられ、前輪11b1および後輪11b2を支持する平面視、矩形(ロ字)形状の車輪受けフレーム11bとを備えて構成される。
【0013】
ここで、レールR,R間の間隔に合わせて第4縦材11a4,11a4間の間隔は例えば1320mm、第3縦材11a3,11a3間の間隔は例えば900mmとし、第3横材11a7,11a7間の間隔は例えば1030mm、前後の前輪11b1および後輪11b2の軸心間の間隔を例えば1500mmとしている。
【0014】
そして、台車本体フレーム11aの中心、すなわち中央縦材11a1と中央横材11a5との交点には、ミニバックホー等の保線作業車2を載せて回転軸11c1を中心に水平に回転する旋回テーブル11cを設けている。尚、旋回テーブル11cの直径は、積載する保線作業車2の投射面積に合わせて例えば、800mm~900mmとしている。
【0015】
そのため、旋回テーブル11cの下面側となる台車本体フレーム11aを構成する縦材11a1~11a4と横材11a5~11a7の上面には、旋回テーブル11cが傾かずに確実に保線作業車2を載せて旋回できるように、図示しないローラーが複数設けられている。
【0016】
また、
図1等に示すように台車本体11後方の車輪受けフレーム11b,11b間に横材11a5~11a7と平行に足場形成用縦材11a8を架け渡すと共に、足場形成用縦材11a8と台車本体11後方の第3横材11a7との間に3本の足場形成用横材11a9を架け渡し、足場形成用縦材11a8と3本の足場形成用横材11a9の上に作業員が乗る足場板11dを設けている。
【0017】
尚、足場板11dの後方側は、
図1等に示すように、歩み板12の後述する左右の掛止部12b,12bが足場形成用縦材11a8に引掛けることができるよう、左右両側は足場形成用縦材11a8まで延びておらず、足場板11d中央のみ足場形成用縦材11a8上部まで延びて構成されている。
【0018】
また、
図1等に示すように台車本体11後方で左側(
図1上では下側)の車輪受けフレーム11bと足場形成用横材11a9との間には、
図3(a),(b)等で詳細に示すように、足場板11dを設けずに、レバー11e1を引くことによって左右の後輪11b2,11b2間を連結する後輪軸11b3に設けられたディスク11b4を挟みブレーキを掛けて台車本体11を停止させる公知のブレーキ機構11eを設けている。
【0019】
台車本体11前方の車輪受けフレーム11bは、前輪11b1の車軸を両側から支持する車軸支持部11b5,11b6と、車軸支持部11b5,11b6の前後間をそれぞれ連結する連結部11b7,11b8とによって平面視、矩形(ロ字)形状に形成されて台車本体フレーム11a前方の左右にそれぞれ溶接され、台車本体フレーム11aの前後左右の四隅にそれぞれ台車本体フレーム11a上面よりも高くなるようにリフトアップして設けられている。
【0020】
同様に、台車本体11後方の車輪受けフレーム11bは、後輪11b2両側の車軸支持部11b5,11b6と、車軸支持部11b5,11b6の前後間をそれぞれ連結する連結部11b7,11b8とによって平面視、矩形(ロ字)形状に形成されて台車本体フレーム11a後方の左右にそれぞれ溶接され、台車本体フレーム11aの前後左右の四隅にそれぞれ台車本体フレーム11a上面よりも高くなるようにリフトアップして設けられている。尚、後輪11b2は後輪軸11b3によって連結されているため、車軸支持部11b5,11b5は後輪軸11b3を支持しない。
【0021】
そして、前後左右の車輪受けフレーム11bそれぞれの外側のフレーム、すなわち台車本体フレーム11aを構成する第4縦材11a4,11a4とほぼ同一直線上の外側の車軸支持部11b5には、それぞれ、歩み板12の長手(長辺)方向の前後両端それぞれに設けられた掛止部12bを挟んで歩み板12の長辺側が上下方向を向くように歩み板12を立てた状態で保持する歩み板用スタンド11fを設けている。
【0022】
歩み板用スタンド11fは、
図3(a),(b)等に示すように平面視平板状の第1挟持板11f1と、平面視L字形状の第2挟持板11f2とから構成されており、第1挟持板11f1と第2挟持板11f2との間で歩み板12の長手(長辺)方向の前後両端それぞれに設けられた掛止部12bを挟んで保持するように構成されている。
【0023】
また、歩み板用スタンド11fを構成する第1挟持板11f1と第2挟持板11f2は、車本体フレーム11a上面ではなく、車本体フレーム11aよりもリフトアップして設けられた前後左右の車輪受けフレーム11bそれぞれの外側の車軸支持部11b5に設けられているため、歩み板用スタンド11fに歩み板12の長辺側を下にして歩み板12を立てた状態で保持させた場合、歩み板12の長辺側下面と車本体フレーム11a上面との間に隙間が空くことにより、台車本体11に対する歩み板12の装着や取外し、さらには歩み板本体フレーム12a1に対する後述する角度変更板12a3,12a3を回動可能に支持する変更板用回動軸12a31,12a31や任意の傾斜角度で固定する固定ピン12a5と車本体フレーム11a上面との干渉を防止することができる。
【0024】
(歩み板12)
歩み板12は、台車本体11に着脱可能に積載され、台車本体11から線路の路盤上へ保線作業車2を下す場合およびその逆に保線作業車2を上げる場合に使用するもので、
図4や
図5等に示すように、鉄道のレールR,R間の幅とほぼ同じ長さを長辺方向の長さとする一方、保線作業車2のクローラー21,21間とほぼ同じ長さを短辺方向の長さとし、その上を保線作業車2がクローラー21で長辺方向に走行可能な歩み板本体12aと、歩み板本体12aの長辺方向の前後両端それぞれに設けられ、台車本体フレーム11aの外側となる第4縦材11a4,11a4および第3横材11a7,11a7および鉄道のレールR,Rに掛止可能な掛止部12b等を備えて構成される。
【0025】
歩み板本体12aは、
図4や
図5等に示すように、保線作業車2のクローラー21の幅より少し大きい間隔で左右両側に設けられ、長手方向に延びる左右ぞれぞれの縦方向フレーム12a11,12a12と、その左右それぞれの縦方向フレーム12a11,12a12の前後端および中央に設けられた横方向フレーム12a13~12a15とから構成された歩み板本体フレーム12a1と、歩み板本体フレーム12a1の左右両側の縦方向フレーム12a11,12a12と中央横方向フレーム12a14と後側横方向フレーム12a15とで囲まれた後方の長方形部分の上面に設けられ、保線作業車2の左右両側のクローラー21,21が走行するエキスパンドメタル12a2,12a2と、歩み板本体フレーム12a1の左右両側の縦方向フレーム12a11,12a12と中央横方向フレーム12a14と前側横方向フレーム12a13とで囲まれた前方の長方形部分間であって中央の横方向フレーム12a14近傍に変更板用回動軸12a31,12a31を介して上下方向に回動可能に設けられ、任意の角度に固定して保線作業車2のクローラー21が走行する角度変更板12a3,12a3とが設けられている。
【0026】
また、角度変更板12a3,12a3は、変更板用回動軸12a31,12a31を介して上下方向に角度を変更しながらも保線作業車2のクローラー21が走行するため、その上面には歩み板本体12aと同様に、
図3や
図4等に示すよう保線作業車2のクローラー21の幅と同じかやや広いエキスパンドメタル12a4,12a4が設けられている。
【0027】
また、角度変更板12a3,12a3を任意の傾斜角度、例えば、
図5(b)に示すように11°と16°の角度で固定できるように、歩み板本体フレーム12a1の左右両側の縦方向フレーム12a11,12a12と中央横方向フレーム12a14と前側横方向フレーム12a13との間の縦方向フレーム12a11,12a12に固定ピン12a5が挿入されるピン挿入孔12a32,12a33が設けられている。
【0028】
<実施形態の保線作業車搬送用台車1の使用方法>
次に以上のように構成された実施形態の保線作業車搬送用台車1の使用方法について、
(1)台車本体11に保線作業車2および歩み板12に積載しての搬送
(2)歩み板12を利用して保線作業車2を台車本体11からレールR,R間に下す作業
(3)歩み板12を利用して保線作業車2を台車本体11からレールR,Rの外側に下す作業
(4)歩み板12を利用して保線作業車2をレールR,Rの一方側から反対側への移動
に分けて説明する。
【0029】
(1)台車本体11に保線作業車2および歩み板12に積載して搬送する場合
図6~
図8は、それぞれ、発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車1を構成する台車本体11に保線作業車2と共に歩み板12を積載した状態を示す側面図、平面図、正面図である。
【0030】
台車本体11に保線作業車2および歩み板12に積載して搬送する場合は、
図7等から明なように保線作業車2は、台車本体11に回転可能に設けられた旋回テーブル11cの上に積載する一方、歩み板12は、
図6~
図8に示すように前後左右の車輪受けフレーム11bそれぞれの外側の車軸支持部11b5に設けた歩み板用スタンド11f,11fに歩み板12の長手(長辺)方向の前後両端それぞれに設けられた掛止部12bを挟んで歩み板12の長辺側が上下方向を向くように歩み板12を立てた状態で積載する。
【0031】
台車本体11に保線作業車2および歩み板12を積載した後、作業者は、ブレーキ機構11eのレバー11e1等を掴みながら台車本体11を前輪11b1の方向または後輪11b2の方向へ押したり、必要あれば足場板11dの上に乗って前輪11b1の方向または後輪11b2の方向へ走行する。
【0032】
そのため、台車本体11に保線作業車2と共に歩み板12を搭載した状態で搬送することができるので、効率良く搬送することが可能となる。
【0033】
(2)保線作業車2を台車本体11からレールR,R間に下す場合
保線作業車2を台車本体11からレールR,R間の例えば、台車本体11の前方に下す場合には、
図9に示すように台車本体11の台車本体フレーム11a前方の第3横材11a7に歩み板12における角度変更板12a3,12a3側の掛止部12bを引掛ける。尚、この場合、歩み板12の一方を台車本体フレーム11aに直接引掛け、角度変更板12a3,12a3により角度を調整しないため、歩み板12における角度変更板12a3,12a3側とは反対側の掛止部12bを引掛ける台車本体フレーム11a前方の第3横材11a7に引掛けても良い。
【0034】
そして、
図10に示すように台車本体10の旋回テーブル14c上に積載した保線作業車2を動かし、台車本体フレーム11a前方の第3横材11a7に一方の掛止部12bを引掛けた歩み板12の上を走行させて、レールR,R間に下す保線作業車2を下すことが出来る。
【0035】
尚、保線作業車2によるレールR,R間での保線作業が終了し、保線作業車2をレールR,R間から台車本体10に上げる場合も、同様に台車本体11に歩み板12を設置し、保歩み板12を介し線作業車2を台車本体10に移動させる。
【0036】
また、保線作業車2を台車本体11からレールR,R間、例えば、台車本体11の後方に下す場合には、台車本体11後方の足場形成用縦材11a8に歩み板12の一方の掛止部12b,12bを引掛ければ良い。そのため、台車本体11後方の足場板11dの両側は、
図1や
図9等に示すように、歩み板12の左右の掛止部12b,12bが引掛けることができるように、足場形成用縦材11a8まで延びておらず、足場板11d中央のみ足場形成用縦材11a8上部まで延びて構成されている。
【0037】
(3)保線作業車2をレールR,Rの外側から台車本体11へ上げる場合
保線作業車2をレールR,Rの外側の路盤上から台車本体11へ上げる場合には、例えば、
図11に示すように歩み板12の角度変更板12a3,12a3側の掛止部12bを、台車本体11の台車本体フレーム11aではなく、保線作業車2側のレールRに引掛ける。尚、この状態では、歩み板12は水平方向に対し9°程度傾斜しているものとする。
【0038】
そしてこの場合には、歩み板12の角度変更板12a3,12a3側の掛止部12bをレールRに引掛けており、台車本体11の台車本体フレーム11a上面とレールR上面との間には段差があるため、このままではレールR,Rの外側の路盤上から台車本体11へ保線作業車2を移動させる際に保線作業車2がその段差のため転倒するおそれがある。
【0039】
しかし、本実施形態の歩み板12では、歩み板本体フレーム12a1に対し変更板用回動軸12a31,12a31を介し回動可能で、かつ、任意の角度に固定可能な角度変更板12a3,12a3を設けているため、角度変更板12a3,12a3上面先端の延長線が車両本体11上に向かうよう、例えば、
図5(a),(b)や
図12に示すように歩み板本体フレーム12a1の左右両側のピン挿入孔12a32に固定ピン12a5を挿入して、歩み板本体フレーム12a1に対する角度変更板12a3,12a3の傾斜角度を11°に設定する。
【0040】
すると、歩み板12は水平方向に対し9°程度傾斜しており、ピン挿入孔12a32に固定ピン12a5を挿入することにより角度変更板12a3,12a3は歩み板本体フレーム12a1に対し11°傾斜し、角度変更板12a3,12a3は水平方向に対し20°程度傾斜することになるため、歩み板12の角度変更板12a3,12a3側の掛止部12bを台車本体11の台車本体フレーム11aではなくレールRに引掛けた場合でも、角度変更板12a3,12a3上面先端の延長線が車両本体11上に向かうことになる。
【0041】
そのため、台車本体11の台車本体フレーム11a上面とレールR上面との間には段差があっても、作業員はその段差を気にせず保線作業車2を運転して、歩み板12の上を走行させ、レールR,Rの外側の路盤上から台車本体11上へ移動させることができる。
【0042】
尚、保線作業車2をレールR,Rの外側の路盤上から台車本体11へ上げる場合に、歩み板12の掛止部12bを保線作業車2側のレールRではなく台車本体11の台車本体フレーム11aに引掛けても勿論良く、この場合には角度変更板12a3,12a3により角度の調整は行う必要がない。また、保線作業車2をその反対に台車本体11からレールR,Rの外側の路盤上へ下す場合も同様に歩み板12をレールRに引掛け、角度変更板12a3,12a3を傾斜させて使用すれば良い。
【0043】
(4)保線作業車2をレールR,Rの一方側から反対側へ移動させる場合
保線作業車2をレールR,Rの外側の一方側から他方側へ移動させる場合は、例えば、
図13に示すように歩み板12の前後両側の掛止部12b,12bをそれぞれ左右のレールR,Rに引掛ける。
【0044】
すると、レールR,R間に架け渡された歩み板12の上を保線作業車2が走行することにより、踏切等を走行せずにレールR,Rを横断することが可能となり、保線作業車2をレールR,Rの一方側から他方側へ容易に移動させることが可能となる。
【0045】
<実施形態の保線作業車搬送用台車1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車1では、鉄道のレールR,R上を走行して保線作業車2を搬送する保線作業車搬送用台車1であって、レールR,R上を走行する前輪11b1および後輪11b2が設けられ、保線作業車2が載せられる台車本体11と、台車本体11に着脱可能に設けられ、台車本体11から線路の路盤上へ保線作業車2を下す場合およびその逆に保線作業車2を上げる場合に使用する歩み板12とを有し、歩み板12の前後両端の内、少なくとも一方には、台車本体11の前後左右またはレールR,Rに掛止可能な掛止部12bを設けている。
【0046】
そのため、歩み板12の掛止部12bを台車本体11の前後左右のいずれかまたはレールR,Rに掛止することにより、台車本体11の後方側以外、すなわち台車本体11の前方から保線作業車2を下したり、あるいは台車本体11の前方から保線作業車2を上げたり、さらには台車本体11の左右のいずれか一方側からレールR,Rの外側へ保線作業車2を下ろしたり、あるいはその反対にレールR,Rの外側から台車本体11へ保線作業車2を上げることが可能となる。
【0047】
その結果、本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車1によれば、保線作業車搬送用台車1に保線作業車2を積載して掘削現場に到着して保線作業車2の積み下ろしの際に、踏切りまで走行してレールを超えたり、あるいは他の重機を使用してレールを跨ぐ等の保線作業車2の移動作業が不要となり、その手間および時間がかからないので、保線作業の効率を改善することができる。
【0048】
また、本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車1では、台車本体11には、保線作業車2を旋回させる旋回テーブル11cを回転可能に設けているため、台車本体11に積載した保線作業車2を台車本体11の後方側だけでなく、前方あるいは左右いずれか一方側に容易に下すことが可能となる。
【0049】
また、本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車1では、台車本体11と、歩み板12とを分離可能に構成したため、台車本体11および、歩み板12をそれぞれ単独で使用することもできる。
【0050】
また、本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車1では、台車本体11には、歩み板12の長辺側が上下方向を向くように歩み板12を立てた状態で保持する歩み板用スタンド11fを設けている。
【0051】
そのため、歩み板用スタンド11fに歩み板12の長辺側を下にして歩み板12を立てた状態で保持させることにより、台車本体11に保線作業車2を積載した状態でも歩み板12も効率良く運搬することが可能となり、堀削現場等における保線作業車2の積み下ろし作業が容易となり、この点でも作業効率を向上させることができる。
【0052】
特に、本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車1では、歩み板用スタンド11fを台車本体フレーム11aではなく、台車本体フレーム11a上面よりも高くリフトアップして設けた車輪受けフレーム11bに設けているので、歩み板12の長辺側下面と車本体フレーム11a上面との間に隙間が空くことにより、台車本体11に対する歩み板12の装着や取外しが容易になると共に、角度変更板12a3,12a3を回動可能に支持する変更板用回動軸12a31,12a31や任意の傾斜角度で固定する固定ピン12a5と車本体フレーム11a上面との干渉を防止して歩み板12を積載することができ、この点でも歩み板12も効率良く運搬して、作業効率を向上させることができる。
【0053】
また、本発明に係る保線作業車搬送用台車1では、歩み板12には、回動軸により回動可能に設けられ、任意の角度に固定して保線作業車2を走行可能な角度変更板12a3,12a3を設けている。
【0054】
そのため、歩み板12の掛止部12bを
図10に示すようにレールRに引掛けてレールR,Rの外側から台車本体11へあるいはその反対に台車本体11からレールR,Rの外側へ保線作業車2を移動させる場合、
図11に示すように角度変更板12a3,12a3の角度を変えることによって、レールR上面と台車本体11上面との間に段差を吸収することができるので、保線作業車2をレールR,Rの外側から台車本体11へあるいはその反対に台車本体11からレールR,Rの外側へ保線作業車2を転倒させずスムーズかつ確実に走行させることができる。
【0055】
また、本発明に係る実施形態の保線作業車搬送用台車1では、歩み板12の歩み板本体12aは、鉄道のレールR,R間の幅とほぼ同じ長さを長辺方向の長さとする一方、保線作業車2のクローラー21,21間とほぼ同じ長さを横方向の長さにしたため、
図12に示すように歩み板本体12aの前後両端それぞれの掛止部12b,12bをそれぞれレールR,Rに掛止することにより、歩み板12を台車本体11への保線作業車2の上げ下ろしに使用するだけでなく、左右のレールR,Rの一方側から他方側への移動させる際にも使用でき、使い勝手を非常に向上させることができる。
【0056】
尚、上記実施形態の説明では、歩み板12の前後両端それぞれに掛止部12b,12bを設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、鉄道のレールR,R間に歩み板12を渡してレールRの一方側から他方側への保線作業車2の移動に歩み板12を使用しない場合には、歩み板12の一方側、すなわち段差を吸収する角度変更板12a3,12a3を設ける側の端部側にのみ掛止部12bを設けても勿論良い。
【0057】
また、上記実施形態の説明では、台車本体11の左右両側の前後それぞれに歩み板12の長辺側が上下方向を向くように歩み板12を立てた状態で保持する歩み板用スタンド11fを設けて説明したが、本発明ではこれに限らず、台車本体11の左右両側のいずれか一方側のそれぞれに歩み板用スタンド11fを設けても勿論良い。
【0058】
また、上記実施形態の説明では、台車本体11の後輪11b2側に足場板11dおよびブレーキ機構11eを設けて説明したが、台車本体11は前後に走行可能なため、台車本体11の後輪11b2側を前方としても勿論良い。
【符号の説明】
【0059】
1 保線作業車搬送用台車
11 台車本体
11a 台車本体フレーム
11a1 中央縦材
11a2 第2縦材
11a3 第3縦材
11a4 第4縦材
11a5 中央横材
11a6 第2横材
11a7 第3横材
11a8 足場形成用縦材
11a9 足場形成用横材
11b 車輪受けフレーム
11b1 前輪(車輪)
11b2 後輪(車輪)
11b3 後輪軸
11b4 ディスク
11b5,11b6 車軸支持部
11b7,11b8 連結部
11c 旋回テーブル
11c1 回転軸
11d 足場板
11e ブレーキ機構
11e1 レバー
12 歩み板
12a 歩み板本体
12a11,12a12 縦方向フレーム
12a13~12a15 横方向フレーム
12a2 エキスパンドメタル
12a3,12a3 角度変更板
12a31,12a31 変更板用回動軸
12a32,12a33 ピン挿入孔
12a4,12a4 エキスパンドメタル
12a5 固定ピン
12b 掛止部
2 保線作業車
21 クローラー
R レール
M マクラギ