(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】イチゴの保管方法及び包装体
(51)【国際特許分類】
A01F 25/00 20060101AFI20231227BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20231227BHJP
B65D 85/34 20060101ALI20231227BHJP
A01F 25/14 20060101ALI20231227BHJP
A23B 7/144 20060101ALI20231227BHJP
A23B 7/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A01F25/00 C
B65D65/02 E
B65D85/34 160
A01F25/14 Z
A23B7/144
A23B7/00 101
(21)【出願番号】P 2020027531
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】中田 有▲祉▼
(72)【発明者】
【氏名】東野 裕広
(72)【発明者】
【氏名】渡部 智恵美
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 保仁
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-210013(JP,A)
【文献】特開昭56-140820(JP,A)
【文献】特開2017-132501(JP,A)
【文献】特開平06-219472(JP,A)
【文献】特開2017-186080(JP,A)
【文献】特開昭63-119647(JP,A)
【文献】特開2018-166450(JP,A)
【文献】特開2019-004724(JP,A)
【文献】特開平10-279703(JP,A)
【文献】特開2010-052818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 25/00 - 25/22
B65D 65/02
B65D 85/34
A01F 25/14
A23B 7/144
A23B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット上に配置したイチゴを、二酸化炭素透過度が30,000cm
3/m
2・day・atm~60,000cm
3/m
2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm
3/m
2・day・atm~20,000cm
3/m
2・day・atmの範囲内であるMA包装部材で封止して包装体を作製する第一の工程と、
前記包装体内に二酸化炭素を導入して前記包装体内の二酸化炭素濃度を15%~25%に調整する第二の工程と、をこの順で含むイチゴの保管方法。
【請求項2】
前記第二の工程の後に、包装体外の環境条件を1℃~5℃かつ湿度70%RH~90%RHとして、前記パレット上に配置したイチゴを前記MA包装部材で封止した状態にて保管する第三の工程を含む請求項1に記載のイチゴの保管方法。
【請求項3】
パレット上に配置したイチゴを、二酸化炭素透過度が30,000cm
3/m
2・day・atm~60,000cm
3/m
2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm
3/m
2・day・atm~20,000cm
3/m
2・day・atmの範囲内であるMA包装部材で封止して包装体を作製する第一の工程と、
前記包装体内の環境が安定した状態において、前記包装体内の二酸化炭素濃度を7%~18%に調整する第四の工程と、を含むイチゴの保管方法。
【請求項4】
イチゴの保管を開始した後、包装体内の環境が安定した状態となるまでの間、包装体内の二酸化炭素濃度が経時により減少する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のイチゴの保管方法。
【請求項5】
前記包装体の容積が、1×10
6cm
3~3×10
6cm
3である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のイチゴの保管方法。
【請求項6】
前記包装体の容積と包装体内のイチゴの全体積との比が100:5~100:30である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のイチゴの保管方法。
【請求項7】
前記MA包装部材が、4-メチル-1-ペンテン及び1-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体を含む請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のイチゴの保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴの保管方法及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴは、個々の生理活性の違いはあるものの、収穫後もその生理活性を維持している。しかし、収穫後におけるイチゴの流通過程で、長期間を経るとその生理活性に伴い品質は低下していく。上記品質の低下としては、例えば、イチゴにおける微生物の増殖(例えばカビの発生)、イチゴの外観劣化、イチゴの枯れ、香りの減少、味の劣化等が挙げられる。イチゴの流通過程における品質低下には、温度、湿度、ガス条件等の様々な要因が関わっている。
上記の品質に対しては、品質の低下を伴わない状態を維持しながらイチゴを保存すること等を目的として、様々な試みが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、合成樹脂フィルムから構成された果実袋であって、23℃、60%RHにおける透湿度(g/m2・day・atm)が、1.3以上、26以下である、果実袋が記載されている。
【0004】
特許文献2には、2層以上の多層構造を有するガス透過フィルムであって、透湿度(JIS Z0208に準拠、試験温度40℃、試験湿度90%)が10g/m2・24h~80g/m2・24hの範囲にあり、ヒートシール温度140℃におけるヒートシール強度が6N/15mm~50N/15mmの範囲にあり、全ヘイズが0.1%~10.0%の範囲にあり、最大径50μm以上の孔が1m2あたり1個以下であり、前記多層構造の少なくとも1層が、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を有する重合体を含有する、ガス透過フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-166450号公報
【文献】特開2017-186080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の品質低下に関わる要因の中でも、イチゴにおける微生物の増殖(例えばカビの発生)は、青果物の商品価値を喪失させる主な要因であり、改善が強く求められている。
【0007】
イチゴにおける微生物の増殖(例えばカビの発生)の原因となる灰色カビは、二酸化炭素濃度が高い環境下において増殖しにくいと考えられる。しかし、イチゴの外観劣化(例えば表面の黒色化)については、二酸化炭素濃度が高い環境下で発生する傾向にある。
即ち、灰色カビの増殖を抑制するために二酸化炭素濃度を高めた場合、イチゴ表面の黒色化が進行しやすくなり、イチゴ表面の黒色化を抑制するために二酸化炭素濃度を低くした場合、灰色カビの増殖を抑制し難くなる。
以上より、従来から、イチゴにおける微生物の増殖抑制と、黒色化の抑制とを両立することは困難であった。
【0008】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、イチゴにおける微生物の増殖抑制と、外観劣化(例えば黒色化)の抑制とを両立することについては考慮されていない。
【0009】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、イチゴにおける微生物の増殖を良好に抑制し、かつ、イチゴの外観を良好に保つことができるイチゴの保管方法及び包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための具体的な手段は、以下の通りである。
<1> パレット上に配置したイチゴを、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内であるMA包装部材で封止して包装体を作製する第一の工程と、前記包装体内に二酸化炭素を導入して前記包装体内の二酸化炭素濃度を15%~25%に調整する第二の工程と、をこの順で含むイチゴの保管方法。
<2> 前記第二の工程の後に、包装体外の環境条件を1℃~5℃かつ湿度70%RH~90%RHとして、前記パレット上に配置したイチゴを前記MA包装部材で封止した状態にて保管する第三の工程を含む<1>に記載のイチゴの保管方法。
<3> パレット上に配置したイチゴを、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内であるMA包装部材で封止して包装体を作製する第一の工程と、前記包装体内の環境が安定した状態において、前記包装体内の二酸化炭素濃度を7%~18%に調整する第四の工程と、を含むイチゴの保管方法。
<4> イチゴの保管を開始した後、包装体内の環境が安定した状態となるまでの間、包装体内の二酸化炭素濃度が経時により減少する<1>~<3>のいずれか1つに記載のイチゴの保管方法。
<5> 前記包装体の容積が、1×106cm3~3×106cm3である<1>~<4>のいずれか1つに記載のイチゴの保管方法。
<6> 前記包装体の容積と包装体内のイチゴの全体積との比が100:5~100:30である<1>~<5>のいずれか1つに記載のイチゴの保管方法。
<7> 前記MA包装部材が、4-メチル-1-ペンテン及び1-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載のイチゴの保管方法。
<8> パレットと、前記パレット上に配置した複数の青果物収容器と、二酸化炭素透過度が酸素透過度より高いMA包装部材と、部材Aと、を備え、
前記部材Aが上部を覆い、前記MA包装部材が側面を覆い、
前記部材Aと前記MA包装部材とが接合され、かつ、前記MA包装部材の一部が前記MA包装部材の他の一部と接合されることによって、前記複数の青果物収容器が封止されている包装体。
<9> 側面において、前記MA包装部材が重なり合う部分の面積が3000cm2以下である<8>に記載の包装体。
<10> 前記MA包装部材が、4-メチル-1-ペンテン及び1-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体を含む<8>又は<9>に記載の包装体。
<11> 前記MA包装部材は、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内である<8>~<10>のいずれか1つに記載の包装体。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態によれば、イチゴにおける微生物の増殖を良好に抑制し、かつ、イチゴの外観を良好に保つことができるイチゴの保管方法及び包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示のイチゴの保管方法について、詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0014】
≪イチゴの保管方法≫
本開示のイチゴの保管方法の実施形態としては、以下の態様a及び態様bが挙げられる。
<態様a>
態様aに係るイチゴの保管方法は、パレット上に配置したイチゴを、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内であるMA包装部材で封止して包装体を作製する第一の工程と、前記包装体内に二酸化炭素を導入して前記包装体内の二酸化炭素濃度を15%~25%に調整する第二の工程と、をこの順で含む。
【0015】
イチゴは収穫後においても、呼吸を継続すると考えられる。
例えば、包装部材を用いて、収穫後のイチゴを包装部材内に密封して保存する際、イチゴ自身の呼吸によって包装部材内の二酸化炭素濃度は上昇し、酸素濃度は低下すると考えられる。これは、イチゴの黒色化を進行させると考えられる。
一方、例えば二酸化炭素の透過性が高い包装部材を用いて、収穫後のイチゴを包装部材内に密封して保存する場合、二酸化炭素濃度は低下し、酸素濃度は上昇するためカビが発生しやすくなると考えられる。
【0016】
本開示のイチゴの保管方法は、パレット上に配置したイチゴを、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内であるMA包装部材で封止して包装体を作製すること、及び、上記封止を行う際に包装体内に二酸化炭素を導入して包装体内の二酸化炭素濃度を15%~25%に調整することによって、イチゴの保存期間における、包装体内の二酸化炭素濃度、酸素濃度及びイチゴの呼吸状態を調節することができる。これによって、イチゴにおける微生物の増殖抑制、及び、イチゴの黒色化の進行抑制を両立することができると考えられる。
【0017】
<第一の工程>
本開示における第一の工程は、パレット上に配置したイチゴを、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内であるMA包装部材で封止して包装体を作製する工程である。
【0018】
≪包装体≫
本開示における包装体は、パレット上に配置したイチゴを、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内であるMA包装部材で封止して得られる。
【0019】
(包装体の容積)
包装体の容積としては、1×106cm3~3×106cm3であることが好ましい。
包装体の容積が1×106cm3~3×106cm3であることで、1つの包装体にてより大量のイチゴを保管することができる。そして、1つの包装体にてより大量のイチゴを保管する場合においても、本開示のイチゴの保管方法によれば、包装体内の環境条件を調整することが可能であり、微生物の増殖を抑制し、かつ、イチゴの外観の劣化を抑制できる。
【0020】
前記包装体の容積と包装体内のイチゴの全体積との比(包装体の容積:イチゴの全体積)が100:5~100:30であることが好ましい。
これによって、微生物の増殖をより良好に抑制し、イチゴの外観の劣化をより良好に抑制できる。
上記の観点から、包装体の容積:イチゴの全体積は、100:5~100:15であることがより好ましい。
【0021】
(MA包装部材)
本開示におけるMA包装部材は、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内である。
これによって、包装体内のイチゴの呼吸状態とMA包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度とのバランスを調整して、包装体内における酸素濃度及び二酸化炭素濃度を調節することができる。
【0022】
(二酸化炭素透過度)
MA包装部材の二酸化炭素透過度は、30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内である。
これによって、包装体内のイチゴの呼吸状態とMA包装部材の二酸化炭素透過度とのバランスを調整して、二酸化炭素濃度を良好に調節することができるため、イチゴにおける微生物の増殖抑制、及び、イチゴの黒色化の進行抑制を両立することができる。
上記同様の観点から、MA包装部材の二酸化炭素透過度は、40,000cm3/m2・day・atm~57,000cm3/m2・day・atmの範囲内であることが好ましく、45,000cm3/m2・day・atm~55,000cm3/m2・day・atmの範囲内であることがより好ましい。
二酸化炭素透過度の測定方法については後述する。
【0023】
(酸素透過度)
MA包装部材の酸素透過度は、10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内である。
これによって、包装体内のイチゴの呼吸状態とMA包装部材の酸素透過度とのバランスを調整して、酸素濃度を良好に調節することができるため、イチゴが嫌気呼吸状態になることを抑制することができる。その結果、イチゴにおける微生物の増殖抑制、及び、イチゴの黒色化の進行抑制を両立することに寄与する。
上記同様の観点から、MA包装部材の酸素透過度は、12,000cm3/m2・day・atm~18,000cm3/m2・day・atmの範囲内であることが好ましい。
【0024】
上記二酸化炭素透過度は、差圧法ガス透過率測定装置(例えばGTR-30XA、GTRテック(株))を使用して、23℃、0%RHの環境下、試験ガス(CO2)100%、試験面積15.2cm2として測定される値である。
上記酸素透過度は、差圧法ガス透過率測定装置(例えばGTR-30XA、GTRテック(株))を使用して、23℃、0%RHの環境下、試験ガス(O2)100%、試験面積15.2cm2として測定される値である。
【0025】
(透湿度)
本開示におけるMA包装部材は、温度40℃、湿度90%RHの条件下における透湿度が10g/m2・day~120g/m2・dayであることが好ましい。
透湿度は、水蒸気がMA包装部材を通過する程度を表す指標である。通常、MA包装部材の内部の湿度がMA包装部材の外部の湿度よりも高い場合には、MA包装部材の透湿度が高い程、MA包装部材の内部の水蒸気がMA包装部材の外部に向けて透過しやすい。
上記透湿度が10g/m2・day以上であることで、微生物の増殖を抑制することができる。
上記透湿度が120g/m2・day以下であることで、青果物の枯れを抑制することができる。また、保存時間が経過するに従って、青果物が有する成分(主に水分)を喪失することによる青果物の質量の減少を良好に抑制することができる。
上記の点から、上記透湿度が10g/m2・day~60g/m2・dayであることが好ましく、25g/m2・day~45g/m2・dayであることがより好ましい。
【0026】
上記透湿度は、差圧法ガス透過率測定装置(GTR-30XA、GTRテック(株)を使用して、40℃、90%RHの環境下、試験ガス(O2)100%、試験面積15.2cm2として測定される値である。
【0027】
上記の透湿度、二酸化炭素透過度及び酸素透過度は、いずれの態様で調節されてもよく、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)上述の透湿度、二酸化炭素透過度及び酸素透過度が得られるフィルムを用いてイチゴを包装する態様。
(2)上述の透湿度、二酸化炭素透過度及び酸素透過度が得られるガス透過箱を用いてイチゴを収納する態様。
上記の中でも、(1)の態様がより好ましい。
【0028】
本開示のMA包装部材の材料は、上述した範囲に二酸化炭素透過度及び酸素透過度を有するものであれば特に制限されない。
ある実施態様では、MA包装部材は4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を有する重合体(以下、4-メチル-1-ペンテン系重合体ともいう)を含む。4-メチル-1-ペンテン系重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の他のポリオレフィンに比べてかさ高い分子構造を有するため密度が低く、高いガス透過性を示す。このため、MA包装部材の材料として好適に使用できる。
【0029】
4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位のみからなる単独重合体であっても、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と、4-メチル-1-ペンテン以外の成分に由来する構成単位とを含む共重合体であってもよい。
4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の成分に由来する構成単位の比率を変更することで、MA包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を所望の範囲に調節することができる。
【0030】
4-メチル-1-ペンテン系重合体が4-メチル-1-ペンテン以外の成分に由来する構成単位を含む共重合体である場合、4-メチル-1-ペンテン以外の成分としては、エチレン又は炭素原子数が3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)が好ましく挙げられる。
【0031】
炭素原子数が3~20のα-オレフィンとして具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
これらの中でも、入手性の観点からはプロピレンが好ましく、MA包装部材に低温でのヒートシール性を付与する観点からは1-ブテンが好ましい。
【0032】
4-メチル-1-ペンテン系重合体を合成する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。4-メチル-1-ペンテン系重合体を合成する際に4-メチル-1-ペンテン以外の成分を用いる場合、4-メチル-1-ペンテン以外の成分として1種のみを用いても2種以上を用いてもよい。
【0033】
MA包装部材は、4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含むものであってもよい。
MA包装部材に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体との混合比を変更することで、MA包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を所望の範囲に調節することができる。
【0034】
MA包装部材が4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含む場合、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体としては、ポリオレフィンが好ましく、エチレン又は炭素原子数が3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)の単独重合体又は共重合体が好ましく挙げられる。
【0035】
炭素原子数が3~20のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体として具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
これらの中でも、入手性の観点からはプロピレンの単独重合体又は共重合体(プロピレン系重合体)が好ましく、MA包装部材に低温でのヒートシール性を付与する観点からは1-ブテンの単独重合体又は共重合体(1-ブテン系重合体)が好ましい。
【0036】
MA包装部材が4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含む場合、これらの重合体を混合する方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。MA包装部材が4-メチル-1-ペンテン系重合体と、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体とを含む場合、4-メチル-1-ペンテン系重合体以外の重合体として1種のみを用いても2種以上を用いてもよい。
【0037】
本開示におけるMA包装部材は、4-メチル-1-ペンテン及び1-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体を含むことが好ましい。これによって、上述の範囲に二酸化炭素透過度及び酸素透過度を有するMA包装部材を、より容易に得ることができる。
【0038】
MA包装部材は、単層構造でも、多層構造であってもよい。例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体はガス透過性に優れる一方で融点が高く低温でのヒートシール性が充分でない傾向にある。このため、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む層に加え、低温でのヒートシール性に優れる層を備える積層体であってもよい。
【0039】
MA包装部材の厚みは、特に制限されない。強度及び取り扱い性の観点からは、10μm~100μmの範囲から選択してもよい。
【0040】
<第二の工程>
本開示における第二の工程は、前記包装体内に二酸化炭素を導入して前記包装体内の二酸化炭素濃度を15%~25%に調整する工程である。
上述の通り、イチゴは収穫後においても、呼吸を継続すると考えられる。そのため、MA包装部材の内部にイチゴを密封して保存する場合、保存時間が経過すれば、イチゴ自身の呼吸によって包装部材内の二酸化炭素濃度は適切な範囲に近づくと推測される。しかし、適切な二酸化炭素濃度を得るまでの間に、微生物の増殖が進行することが推測される。
本開示のイチゴの保管方法は、上記第二の工程を含むことによって、保存の初期段階において、包装体内の二酸化炭素濃度を特定の範囲内に調整することができる。
これによって、より早い段階において微生物の増殖を抑制できる二酸化炭素濃度及び酸素濃度を得ることができる。
また、15%~25%という比較的高い二酸化炭素濃度に調整したとしても、二酸化炭素透過度及び酸素透過度が上述の値の範囲内である本開示のMA包装部材を用いることによって、良好にイチゴの外観を良好に保つことができる。
以上の結果、イチゴにおける微生物の増殖をより良好に抑制し、かつ、イチゴの外観をより良好に保つことができる
【0041】
包装体内に二酸化炭素を導入する方法としては、特に制限はない。
例えば、包装体の一部に、二酸化炭素を導入するための開閉可能な蓋を設けて、包装体を作製した後に、上記蓋を開けて包装体内に二酸化炭素を導入し、導入が完了した際に上記蓋を閉める方法であってもよい。
【0042】
(包装体内の二酸化炭素濃度)
~第二の工程における包装体内の二酸化炭素濃度~
第二の工程において、保存の初期において二酸化炭素を包装体内に導入した際、包装体内の二酸化炭素濃度を15%~25%に調整する。
上記二酸化炭素濃度が15%以上であることで、適切な二酸化炭素濃度を得るまでの間に、微生物が増殖することを抑制することができる。
上記同様の観点から、上記二酸化炭素濃度が15.5%以上であることが好ましい。
【0043】
また、上記二酸化炭素濃度が25%以下であることで、適切な二酸化炭素濃度を得るまでの間に、イチゴの黒色化が進行することを抑制することができる。
上記同様の観点から、上記二酸化炭素濃度が、23%以下であることが好ましく、21%以下であることがより好ましい。
【0044】
~安定状態における包装体内の二酸化炭素濃度~
本開示のイチゴの保管方法によってイチゴを保管した場合、時間の経過によって包装体内の環境条件が安定する。
本開示において、「包装体内の環境が安定した状態(本開示において、単に安定状態ともいう)」とは、包装体内の湿度の変動が、30時間前の包装体内の湿度を基準として-3%~+3%であり、包装体内における二酸化炭素濃度及び酸素濃度の変動が、30時間前の包装体内の二酸化炭素濃度及び酸素濃度を基準として-3%~+3%である状態となることを意味する。
【0045】
安定状態における包装体内の二酸化炭素濃度は、7%~18%であることが好ましい。
上記二酸化炭素濃度が7%以上であることで、微生物の増殖を良好に抑制することができる。また、上記二酸化炭素濃度が7%以上であることで、青果物の呼吸活動を抑え休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、品質低下を抑制することができる。
上記と同様の観点から、上記二酸化炭素濃度は8.5%以上であることがより好ましい。
【0046】
上記二酸化炭素濃度が18%以下であることで、イチゴの黒色化を良好に抑制することができる。
上記同様の観点から、上記二酸化炭素濃度は15%以下であることがより好ましく、12%以下であることがさらに好ましい。
なお、包装体内の二酸化炭素濃度は、CheckPoint3(MOCONEurope社製)を用いて測定できる。
【0047】
(包装体内の酸素濃度)
~保存初期における包装体内の酸素濃度~
保存初期における包装体内の酸素濃度は、7%~20%であることが好ましい。
上記酸素濃度が7%以上であることで、青果物の呼吸に必要な酸素を確保できるため、嫌気呼吸状態による品質低下を防止することができる。
酸素濃度が20%以下であることで、青果物の呼吸活動を抑え休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、品質低下を抑制することができる。
上記と同様の観点から、上記酸素濃度は13%~20%であることがより好ましく、17%~19%であることがさらに好ましい。
【0048】
~安定状態における包装体内の酸素濃度~
安定状態における包装体内の酸素濃度は、5%~13%であることが好ましい。
上記酸素濃度が5%以上であることで、青果物の呼吸に必要な酸素を確保できるため、嫌気呼吸状態による品質低下を防止することができる。
酸素濃度が13%以下であることで、青果物の呼吸活動を抑え休眠状態にすることにより、有用成分の分解が抑制され、品質低下を抑制することができる。
上記同様の観点から、安定状態における包装体内の酸素濃度は、9%~12%であることがより好ましい。
なお、包装体内の酸素濃度は、CheckPoint3(MOCON Europe社製)を用いて測定できる。
【0049】
本開示において、二酸化炭素濃度及び酸素濃度の単位である「%」は体積%を指す。
【0050】
(包装体内の湿度)
包装体内の湿度としては、特に制限はないが、60%RH~90%RHであることが好ましい。
上記湿度が60%RH以上であることで、青果物の枯れを良好に抑制することができる。また、保存時間が経過するに従って、青果物が有する成分(主に水分)を喪失することによる青果物の質量の減少を良好に抑制することができる。
上記湿度が90%RH以下であることで、微生物の増殖を抑制することができる。
上記と同様の観点から、包装体内の湿度は70%RH~88%RHが好ましい。
本開示における湿度は、相対湿度を指し、ハイグログロン(温湿度ロガー、KNラボラトリーズ製)を包装体の内部に設置して測定される値である。
【0051】
(包装体外の環境条件)
包装体を用いてイチゴを保管する際の、包装体外の環境条件について説明する。
【0052】
~温度~
本開示のイチゴの保管方法において、包装体を用いてイチゴを保管する際の、包装体外の温度としては、-1℃~30℃であることが好ましい。温度が-1℃以上であることで、低温障害を防ぐことができる。温度が30℃以下であることで、微生物の増殖速度を遅くすることができる。
温度は、より好ましくは0℃~15℃であり、1℃~5℃がさらに好ましい。
【0053】
~湿度~
本開示のイチゴの保管方法において、包装体を用いてイチゴを保管する際の、包装体外の湿度としては、60%RH~95%RHであることが好ましい。
上記湿度が60%RH以上であることで、青果物の枯れを良好に抑制することができる。また、保存時間が経過するに従って、青果物が有する成分(主に水分)を喪失することによる青果物の質量の減少を良好に抑制することができる。
上記湿度が95%RH以下であることで、微生物の増殖を抑制することができる。
上記と同様の観点から、包装体内の湿度は70%RH~90%RHが好ましい。
【0054】
本開示のイチゴの保管方法において、前記第二の工程の後に、包装体外の環境条件を調整することが好ましい。例えば、本開示のイチゴの保管方法は、前記第二の工程の後に、以下の第三の工程を含むことが好ましい。
【0055】
<第三の工程>
本開示のイチゴの保管方法は、前記第二の工程の後に、包装体外の環境条件を1℃~5℃かつ湿度70%RH~90%RHとして、前記パレット上に配置したイチゴを前記MA包装部材で封止した状態にて保管する第三の工程を含むことが好ましい。
【0056】
本開示のイチゴの保管方法は、前記第二の工程の後に包装体外の環境条件を調整することによって、イチゴの保管を開始した後、包装体内の環境が安定した状態となるまでの間、包装体内の二酸化炭素濃度を経時により減少させることができる。
これによって、包装体内の二酸化炭素濃度を、イチゴにおける微生物の増殖を抑制し、かつ、イチゴの外観の劣化を抑制できる濃度へと導くことができる。
即ち、安定状態における包装体内の二酸化炭素濃度を、イチゴにおける微生物の増殖を抑制し、かつ、イチゴの外観の劣化を抑制できる濃度へと導くことができる。
具体的には、本開示のイチゴの保管方法は、以下の第四の工程を含むことが好ましい。
【0057】
<態様b>
態様bに係るイチゴの保管方法は、パレット上に配置したイチゴを、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内であるMA包装部材で封止して包装体を作製する第一の工程と、前記包装体内の環境が安定した状態において、前記包装体内の二酸化炭素濃度を7%~18%に調整する第四の工程と、を含む。
【0058】
<第四の工程>
第四の工程は、前記包装体内の環境が安定した状態において、前記包装体内の二酸化炭素濃度を7%~18%に調整する工程である。
これによって、イチゴの保存期間における、包装体内の二酸化炭素濃度を、イチゴにおける微生物の増殖抑制、及び、イチゴの黒色化の進行抑制を両立することができる濃度とすることができる。
【0059】
態様bに係るイチゴの保管方法において、他の工程を含んでもよい。例えば上述の第二の工程又は第三の工程を含むことが好ましく、上述の第二の工程及び第三の工程を含むことがより好ましい。
【0060】
態様bにおける第一の工程は、上述の第一の工程と同様であり、好ましい態様も同様である。
態様bにおける包装体は、上述の包装体と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0061】
<包装体の態様>
本開示における包装体の一実施態様としては、以下の態様が挙げられる。
本開示における包装体は、パレットと、前記パレット上に配置した複数の青果物収容器と、二酸化炭素透過度が酸素透過度より高いMA包装部材と、部材Aと、を備え、前記部材Aが上部を覆い、前記MA包装部材が側面を覆い、前記部材Aと前記MA包装部材とが接合され、かつ、前記MA包装部材の一部が前記MA包装部材の他の一部と接合されることによって、前記複数の青果物収容器が封止されている包装体であってもよい。
【0062】
上記態様において、パレット上に配置した複数の青果物収容器の上に部材Aを配置し、包装体の側面を、MA包装部材を用いて覆うことで、包装体内部の青果物収容器の配置される位置を保持することができる。上記態様の包装体であれば、例えば、輸送の際に発生する小さな衝撃によって荷崩れを起こし、イチゴが青果物収容器からこぼれ落ちることを防ぐことができる。
【0063】
また、例えばMA包装部材の透湿度を調節することで包装体内の湿度を調整することが好ましい。これによって、高湿度条件下にて部材Aが水分を吸収することに起因する荷崩れを回避することができる。
【0064】
上記態様における包装体は、側面において、前記MA包装部材が重なり合う部分の面積が3000cm2以下であることが好ましい。
MA包装部材が重なり合う部分の面積が3000cm2以下であることで、より良好に包装体内の環境条件を調節しやすくなり、イチゴにおける微生物の増殖をより良好に抑制し、かつ、イチゴの外観の劣化をより良好に抑制できる。
【0065】
上記態様におけるMA包装部材としては、上述の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を有するMA包装部材を用いることが好ましい。
即ち、上記態様におけるMA包装部材は、二酸化炭素透過度が30,000cm3/m2・day・atm~60,000cm3/m2・day・atmの範囲内であり、酸素透過度が10,000cm3/m2・day・atm~20,000cm3/m2・day・atmの範囲内であることが好ましい。
また、上記態様におけるMA包装部材として上述の二酸化炭素透過度及び酸素透過度を有するMA包装部材を用いる場合、二酸化炭素透過度、酸素透過度等の好ましい範囲は上述と同様であり、MA包装部材の材質等の好ましい態様も同様である。
【0066】
上記態様におけるMA包装部材としては、4-メチル-1-ペンテン及び1-ブテンからなる群より選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を有する重合体を含むことが好ましい。
【0067】
部材Aとしては、包装体の上部を覆うことができるものであれば、特に制限はない。例えば、木製の板、ダンボールの板等が挙げられる。
【0068】
本開示のイチゴの保管方法に用いられるパレットとしては、特に制限はない。例えば、木製パレット、合成樹脂製パレット、金属製パレット、紙製パレット等が挙げられる。
なお、本開示においてパレットとは、平板形状の部材の平面の少なくとも一部と、他の平板形状の部材の平面の少なくとも一部とが、脚部を介して連結されている部材を意味する。
パレットの上にイチゴを配置することによって、例えば、平板形状の部材の面上にイチゴを収容した青果物収容器を載せ、パレットの脚部と脚部との間にフォークリフト、ハンドリフト等の爪を差し込んで持ち上げることができ、運搬の際に利便性が向上する。
【0069】
本開示のイチゴの保管方法に用いられるイチゴとしては、特に制限はない。例えば、栃木産スカイベリー、栃木産とちおとめ等を用いることができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例において、透湿度、酸素透過度、及び二酸化炭素透過度は、上述の測定方法と同様の方法により測定した。
【0071】
(MA包装部材の準備)
本実施例に用いるMA包装部材として、表1に記載の厚さ、二酸化炭素透過度、酸素透過度及び透湿度を有する各種MA包装部材を準備した。
【0072】
【0073】
表1中の記載の詳細は以下の通りである。
・M1は、特開2018-075822号公報の実施例12の製造方法と同様の製造方法で製造したフィルムである。なお、共押出を行う際に、表面層/ガス透過層/ヒートシール層の厚みの比率を10/30/10として、全体の厚みが50μmとなるように調整した。
・M2は、特開2018-075822号公報の実施例1の製造方法と同様の製造方法で製造したフィルムである。なお、共押出を行う際に、表面層/ガス透過層/ヒートシール層の厚みの比率を10/20/10として、全体の厚みが40μmとなるように調整した。
・M3は、特開2018-075822号公報の実施例1の製造方法と同様の製造方法で製造したフィルムである。なお、共押出を行う際に、表面層/ガス透過層/ヒートシール層の厚みの比率を15/20/15として、全体の厚みが50μmとなるように調整した。
【0074】
<実施例1>
(包装体の作製)
まず、表2に記載のイチゴを収容した青果物収容器を複数用意して、複数の青果物収容器をパレットの上に配置した。そして、複数の青果物収容器の全てを覆うように、開閉可能な二酸化炭素交換口が取り付けられた、表2に記載のMA包装部材を覆い被せた。
次に、パレットとMA包装部材とを接合することで、上記複数の青果物収容器をMA包装部材の内部に封止した。即ち、上記複数の青果物収容器に収容されるイチゴをMA包装部材の内部に封止して包装体を作製した。
なお、青果物収容器に収容したイチゴの全体積は1.9×105cm3であり、全質量は1.9×105gであった。
【0075】
(二酸化炭素の導入)
上記封止を行った後のMA包装部材に対して、前記二酸化炭素交換口から二酸化炭素をMA包装部材内へ導入し、MA包装部材内における、二酸化炭素導入直後の二酸化炭素濃度を表2に記載の通りとして、二酸化炭素交換口を閉めた。
【0076】
(イチゴの保存)
上記二酸化炭素の導入後、内部にイチゴ及び青果物収容器を封止した包装体を、温度1℃及び72%RH条件下に保持された部屋に保存した。
保存に際しては、包装体の上に物が載ったり、包装体にファンの風が直撃したりしないように、包装体を静置した。
【0077】
<実施例2~実施例3、及び比較例1~比較例2>
表2に記載のMA包装部材及びイチゴを用いて包装体を作製した以外は、実施例1と同様の方法でイチゴを保存した。
【0078】
<比較例3>
二酸化炭素の導入を行なわず、表2に記載のMA包装部材及びイチゴを用いて包装体を作製した以外は、実施例1と同様の方法でイチゴを保存した。
【0079】
<比較例4>
イチゴ及び青果物収容器を包装せず(即ち、無包装)、かつ、二酸化炭素の導入を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法でイチゴを保存した。
【0080】
(評価)
保存の初期(即ち、二酸化炭素導入直後)及び保存後15日が経過した際に、イチゴの品質を評価した。評価の項目、評価方法、及び評価基準を以下に示す。また、評価結果を表2に示す。
なお、保存後15日が経過した際に、包装体内の環境は安定した状態であった。
【0081】
〔カビの発生〕
保存の初期及び保存後15日が経過した際のイチゴにおけるカビの発生率を算出した。
具体的には、目視にてカビが発生している部分の表面積を測定し、カビが発生している部分の表面積をイチゴの全表面積で除した値に、100を積算してカビの発生率(%)とした。
そして、上記カビの発生率について下記評価基準に従って評価することで、イチゴにおける微生物の増殖の指標とした。結果は表2に記載した。
-評価基準-
A:目視にてカビの発生が確認できない。
B:カビの発生率が5%未満であった。
C:カビの発生率が5%以上であった。
【0082】
〔外観〕
保存の初期及び保存後15日が経過した際のイチゴにおける黒色化の発生率を算出した。
具体的には、目視にて黒色化している部分の表面積を測定し、黒色化している部分の表面積をイチゴの全表面積で除した値に、100を積算して黒色化の発生率(%)とした。
そして、上記黒色化の発生率について下記評価基準に従って評価することで、イチゴにおける外観評価の指標とした。結果は表2に記載した。
-評価基準-
A:目視にて黒色化の発生が確認できない。
B:黒色化の発生率が10%未満であった。
C:黒色化の発生率が10%以上であった。
【0083】
【0084】
表2に示す通り、実施例は、保存後15日経過後において、カビの発生及び外観に優れていた。
MA包装部材の二酸化炭素透過度及び酸素透過度が低い比較例1及び比較例2は、外観に劣っていた。
また、二酸化炭素の導入を行わなかった比較例3及び比較例4は、保存後15日が経過した時点でカビが発生しており、微生物の増殖抑制に劣っていた。