(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】APTT測定試薬用添加剤、APTT測定試薬、APTT測定用試薬キットおよびAPTT測定法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20231227BHJP
G01N 33/86 20060101ALI20231227BHJP
C08F 8/40 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G01N33/48 K
G01N33/86
C08F8/40
(21)【出願番号】P 2020087456
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 信治
(72)【発明者】
【氏名】林 昭男
(72)【発明者】
【氏名】荏原 充宏
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-89104(JP,A)
【文献】特開2015-96567(JP,A)
【文献】特表2015-504925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C08F 8/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホリルセリン残基を側鎖に含有する高分子からなるAPTT測定試薬用添加剤。
【請求項2】
高分子が以下の式(A1):
【化1】
[式中、
nは、10以上の自然数を表す。
aは、1~3の自然数を表す。
Qは、水素原子またはメチル基を表す。]
で表わされるホスホリルセリン残基を有する(メタ)アクリル酸モノマーユニットを含有するポリマーまたはその生理学的に許容される塩である請求項1に記載のAPTT測定試薬用添加剤。
【請求項3】
式(A1)で表わされるポリマーがホスホリルセリン残基を有する(メタ)アクリル酸モノマーユニット以外の1種または2種の異なるモノマーユニットを含有する共重合体である請求項2に記載のAPTT測定試薬用添加剤。
【請求項4】
共重合体に含有される1種または2種の異なるモノマーユニットが疎水性モノマーユニットを含む請求項3に記載のAPTT測定試薬用添加剤。
【請求項5】
共重合体が水中で微粒子を形成する請求項4に記載のAPTT測定試薬用添加剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のAPTT測定試薬用添加剤を含有するAPTT測定試薬。
【請求項7】
活性化剤をさらに含有する請求項6に記載のAPTT測定試薬。
【請求項8】
活性化剤が、エラグ酸、カオリン、セライト、コロイダルシリカおよび無水ケイ酸からなる群より選択される少なくとも1種である請求項7に記載のAPTT測定試薬。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載のAPTT測定試薬用添加剤を含む第1試薬と、カルシウム塩を含む第2試薬とからなるAPTT測定用試薬キット。
【請求項10】
検体血漿と、血小板第三因子の代替物としての請求項1~5のいずれか1項に記載のAPTT測定試薬用添加剤を含む第1試薬とを混合する第1混合工程と、第1混合工程で得られた試料と、カルシウム塩を含む第2試薬とを混合する第2混合工程と、第2混合工程で得られた試料の凝固時間を測定する工程とを含むAPTT測定法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固能に関して臨床検査で利用されるAPTT測定試薬用添加剤、APTT測定試薬、APTT測定用試薬キットおよびAPTT測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査において患者血液の凝固に要する時間(以下、「凝固時間」)を測定することにより、血液凝固因子の異常を調べる検査が広く用いられている。最も一般的な血液凝固検査の1つとして活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の測定が知られている。APTTとは、出血時に血液が異物と接触することにより開始される内因系凝固経路の機能を反映する凝固時間である。内因系凝固因子の欠乏および異常のスクリーニング検査、ヘパリン療法のモニタリングなどに利用される。
【0003】
上記のAPTTの測定は、ループスアンチコアグラント(LA)の検出にも利用されている。LAは抗リン脂質抗体症候群の責任抗体の1種である。LAが患者の血液に存在する場合、LAが血液凝固に必要なリン脂質を不活性化するため、凝固時間の延長がおきる。
【0004】
APTTの測定では、厳密に一定の条件下における凝固時間を測定することにより、凝固時間の長短により被検者の診断を行える。APTT試薬に用いられる活性化剤として陰性電荷を有する活性化剤と血小板第3因子の代替物であるリン脂質があるが、前者では一般にエラグ酸(エラジン酸)、カオリン、セライト等が用いられ、特にエラグ酸は金属イオンとキレートを形成することで強力な活性化作用を示すことから特に多く用いられる(特許文献1)。後者では非特許文献1から各種動物の脳由来の粗製リン脂質が用いられる。
【0005】
非特許文献2や非特許文献3から、前者の粗製リン脂質に含有される主なグリセロリン脂質種としてホスホリルエタノールアミン(PE)、ホスホリルコリン(PC)、ホスホリルセリン(PS)等が知られる。本試験で多用されるウサギ脳由来のリン脂質(セファリン)でも抽出条件等により乾燥組織当たりの含有率がそれぞれ6.4~17.8重量%、8.7~8.8重量%、1.9~2.6重量%と違いがある。リン脂質組成はAPTTの測定時間に著しい影響を及ぼすことから、供給源となる動物の維持管理やリン脂質の抽出条件を制御する必要があるほか、得られたリン脂質の分析や植物由来のリン脂質を混合させるなど品質管理の面でも多大な労力と費用を要している。
【0006】
また、抗リン脂質抗体を含有するループスアンチコアグラントの影響を低減可能な、リン脂質と免疫交差性を有しない人工高分子を用いたAPTT試薬用添加剤およびAPTT試薬が望まれていた。
【0007】
さらに、一般的に市販されるAPTT試薬は凍結保存ができず、そのために含有リン脂質の加水分解により開栓後の有効期間が7日と短いため、加水分解が生じにくい人工高分子での代替が望まれていた。
【0008】
近年、特許文献2や非特許文献4から、ホスホリルセリン残基を側鎖に含有するモノマー(MPS)からなるMPSポリマーに細胞間情報伝達分子産生信号誘発の機能があることが開示されている。当該産生信号誘発とは、マクロファージに抗炎症性サイトカインを産生させることができることである。MPSポリマーは、生体自らのプログラムされた死を引き起こしたアポトーシス細胞に対して生体が炎症を引き起こさない現象に基づくバイオミメティック材料であり、抗炎症の産生信号を誘発する。しかし、MPSポリマーを血液凝固やAPTT測定等の臨床検査に用いることにはまったく触れられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4440452号
【文献】特許第6465464号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Nature,6,174(1954)
【文献】Biochem.Biophys.Acta,316,115(1973)
【文献】Brain Res.,16,441(1969)
【文献】Chonnam Med.J.,55,1(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記事情に鑑みて、本発明は天然のリン脂質を用いることなく、血液凝固時間が安定的に測定でき、試験品質管理上も安価で簡便な血液凝固時間測定試薬用添加剤、血液凝固時間測定試薬、血液凝固時間測定用試薬キットおよび血液凝固時間の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、血液凝固時間(具体的にはAPTT)測定試薬用添加剤としてホスホリルセリン残基を側鎖に含有する高分子(MPSポリマー)を用いることにより、当該測定試薬用添加剤を含有する測定試薬の品質管理が容易で、且つ凝固時間には影響を及ぼさないことを見出して、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、以下のものである。
[1]ホスホリルセリン残基を側鎖に含有する高分子からなるAPTT測定試薬用添加剤。
[2]高分子が以下の式(A1):
【0014】
【0015】
[式中、
nは、10以上の自然数を表す。
aは、1~3の自然数を表す。
Qは、水素原子またはメチル基を表す。]
で表わされるホスホリルセリン残基を有する(メタ)アクリル酸モノマーユニットを含有するポリマーまたはその生理学的に許容される塩である[1]に記載のAPTT測定試薬用添加剤。
[3]式(A1)で表わされるポリマーがホスホリルセリン残基を有する(メタ)アクリル酸モノマーユニット以外の1種または2種の異なるモノマーユニットを含有する共重合体である[2]に記載のAPTT測定試薬用添加剤。
[4]共重合体に含有される1種または2種の異なるモノマーユニットが疎水性モノマーユニットを含む[3]に記載のAPTT測定試薬用添加剤。
[5]共重合体が水中で微粒子を形成する[4]に記載のAPTT測定試薬用添加剤。
[6][1]~[5]のいずれか1項に記載のAPTT測定試薬用添加剤を含有するAPTT測定試薬。
[7]活性化剤をさらに含有する[6]に記載のAPTT測定試薬。
[8]活性化剤が、エラグ酸、カオリン、セライト、コロイダルシリカおよび無水ケイ酸からなる群より選択される少なくとも1種である[7]に記載のAPTT測定試薬。
[9][1]~[5]のいずれか1項に記載のAPTT測定試薬用添加剤を含む第1試薬と、カルシウム塩を含む第2試薬とからなるAPTT測定用試薬キット。
[10]検体血漿と、血小板第三因子の代替物としての[1]~[5]のいずれか1項に記載のAPTT測定試薬用添加剤を含む第1試薬とを混合する第1混合工程と、第1混合工程で得られた試料と、カルシウム塩を含む第2試薬とを混合する第2混合工程と、第2混合工程で得られた試料の凝固時間を測定する工程とを含むAPTT測定法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のAPTT測定試薬用添加剤、APTT測定試薬およびAPTT測定用試薬キットにおいて、MPSポリマーを配合することにより動物の個体差や抽出条件の変動によるリン脂質の組成比の変動がなく、品質管理を容易とすることができる。さらに本発明のAPTT測定試薬およびAPTT測定用試薬キットは、従来のリン脂質の含有率を最適化した試薬やキットと同程度の測定能を有している。従って、本発明のAPTT測定試薬用添加剤およびAPTT測定用試薬キットを用いる本発明のAPTT測定方法は、従来の試薬を用いた測定方法と同様に、血液の凝固時間を測定することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)APTT測定試薬用添加剤
本発明のAPTT測定試薬用添加剤は、APTT測定試薬に配合することで効果を発揮する。
【0018】
本願明細書において、APTT測定試薬用添加剤の有効成分は「MPSポリマー」である。MPSポリマーとは主鎖であるポリマーの側鎖にホスホリルセリン残基を含有するポリマーをいう。このようなポリマーの主鎖を得るための重合法としては、重縮合、重付加、付加縮合等の逐次重合や、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合等の連鎖重合等いずれの重合法であってもよく反応機構に限定されない。
【0019】
重合されたポリマーとしては、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(アルキルメタクリルアミド)、ポリ(アクリル酸アルキル)、ポリ(メタクリル酸アルキル)、ポリ(オキシエチレンアルキルエーテル)、ポリ(脂肪酸エステル)、ポリ(アミノ酸)等を挙げることができる。
【0020】
側鎖のホスホリルセリン残基は、モノマー合成時に導入してもよく、ポリマー重合後に導入してもよい。
【0021】
重合に用いるモノマーはホスホリルセリン残基を有するモノマーのみを用いてもよく、その他の重合可能なモノマーを用いてもよい。異なるモノマーを用いた共重合で用いるモノマーは親水性残基を有するモノマーであってもよく、疎水性残基を有するモノマーであってもよい。親水性残基を有するモノマーとして、例えば(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)、(メタ)アクリル酸オキシエチル、ホスホリルコリン等が挙げられる。その中でも(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。これらのモノマーからなる共重合体は、ブロック共重合体でもよく、ランダム共重合体でもよい。好ましくは、ランダム共重合体である。
【0022】
疎水性残基を有するモノマーとして、例えばスチレンの他、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸プロピル等の中長鎖アルキルあるいは脂肪酸エステルが挙げられる。その中でも(メタ)アクリル酸ブチルが好ましい。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、ホスホリルセリン残基中のセリンは天然由来のセリンであってもよく、合成セリンであってもよい。また、ホスホリルセリン残基中のセリンはL体であってもよく、D体であってもよい。さらにラセミ体であってもよい。
【0024】
MPSポリマーの数平均分子量(Mn)は、測定されたAPTT値が従来の検査薬で得られる値と近似する点および測定値の変動係数が低く安定した値を得ることができるという臨床試薬としての性能の観点から、好ましくは1.0×102~1.0×105、より好ましくは1.0×103~5.0×104、特に好ましくは5.0×103~2.0×104であり、重量平均分子量(Mw)は、分子量分布の及ぼす臨床試薬の性能への影響の観点から、好ましくは1.0×102~1.2×105、より好ましくは1.2×103~6.0×104、特に好ましくは6.0×103~2.4×104である。なお、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、MPSポリマーは、以下の式(A1):
【0026】
【0027】
[式中、
nは、10以上の自然数を表す。
aは、1~3の自然数を表す。
Qは、水素原子またはメチル基を表す。]
で表わされるホスホリルセリン残基を有する(メタ)アクリル酸モノマーユニットを含有するポリマーまたはその生理学的に許容される塩である。
nは、APTT測定の安定化すなわち変動係数(CV値;標準偏差を平均値で割った値)の抑制の観点から、好ましくは20~1,000の自然数であり、より好ましくは100~500の自然数であり、さらに好ましくは200~500の自然数である。
aは、既存のセファリンを用いたAPTT試薬の測定値との近似性の観点から、好ましくは1である。
【0028】
上記式(A1)で表わされるポリマーは、ホスホリルセリン残基を有する(メタ)アクリル酸モノマーユニット以外の1種または2種の異なるモノマーユニットを含有する共重合体であってもよい。該モノマーユニットとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリ(エチレングリコール)、(メタ)アクリル酸オキシエチル、ホスホリルコリン等の親水性モノマーユニット、スチレン、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸プロピル等の中長鎖アルキルまたは脂肪酸エステル等の疎水性モノマーユニットが挙げられ、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチルが好ましい。1種または2種の異なるモノマーユニットは、好ましくは疎水性モノマーユニットを含む。上記共重合体におけるホスホリルセリン残基を有する(メタ)アクリル酸モノマーユニットの含有割合は、APTT測定値の安定化および既存のセファリンを用いたAPTT試薬の測定値との近似性の観点から、全モノマーユニットに対し、好ましくは0.1~50mol%であり、より好ましくは0.5~10mol%であり、さらに好ましくは1~5mol%である。
【0029】
上記共重合体は、好ましくは水中で微粒子を形成する。微粒子を形成することによって、APTT測定の元となる生体における血液凝固反応において、血液凝固促進因子として機能する血小板第三因子との生物学的な類似性が高まる可能性が高い。
【0030】
式(A1)で表わされるホスホリルセリン残基を有する(メタ)アクリル酸モノマーユニットを含有するポリマーの生理学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0031】
本発明の実施の形態であるMPSポリマーの具体的な合成法には、「前修飾法」と「後修飾法」があり、前修飾法においては、「ホスホアミダイド法」と「COP法」がある。
【0032】
ホスホアミダイド法による前修飾法においては、官能基を保護したホスホリルセリン修飾(メタ)アクリル酸モノマーの合成工程と、官能基を保護したホスホリルセリン修飾(メタ)アクリル酸ポリマーの重合工程と、官能基を脱保護したMPSポリマーを得る脱保護工程を有する。
【0033】
該合成工程では、室温N2環境下で1つの保護基を有するホスホアミダイド化合物と2つの保護基を有し1つの水酸基を有するセリン化合物とを活性化剤イミダゾール・ハイドロクロライド存在下に反応させ3つの保護基を有するホスホリルセリン化合物を得る段階と、得られた3つの保護基を有するホスホリルセリン化合物と(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとをイミダゾール・ハイドロクロライド存在下に反応させる段階からなる。2つの保護基としてはベンジル基、tert-ブチル基、ベンジルカルボニル基およびtert-ブトキシカルボニル基からなる群から選択されたいずれか、またはそれらの2種以上の官能基である。2つの保護基を有し1つの水酸基を有するセリン化合物は市販品を用いてもよい。
【0034】
具体的には、特許文献2(特許第6465464号)に開示のようにO-ベンジル N,N,N’,N’-テトライソプロピル ホスホロジアミダイト(メルク)とN-Z-L-セリンベンジルエステル(東京化成工業)から得た反応中間体を用いて(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルを修飾して得られたモノマーを重合して得てもよく、他の異なるモノマーとの共重合により得てもよい。
【0035】
該重合工程では、合成工程で得られた官能基を保護したホスホリルセリン導入(メタ)アクリル酸モノマーの重合によりポリアルキル(メタ)アクリル酸ポリマーを主鎖とし、3つの保護基を有するホスホリルセリン基を有するMPSポリマー前駆体が得られる。合成工程で得られた官能基を保護したホスホリルセリン導入(メタ)アクリル酸モノマー以外に(メタ)アクリル酸アルキルを重合時に用いることで官能基を保護したホスホリルセリン導入(メタ)アクリル酸共重合体を得ることができる。開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)を挙げることができる。ポリアルキル(メタ)アクリル酸のアルキル基はC1~C5が好ましい。3つの保護基を有するホスホリルセリン基を有するMPSモノマー以外のモノマーとして(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸アルキルを挙げることができる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基はC1~C5が好ましい。
【0036】
該脱保護工程では、前記の保護基を有するホスホリルセリン基を有するMPSポリマー前駆体を酸化剤により、ホスホリルセリン基のリンを3価から5価に酸化するとともに、脱保護剤によりホスホリルセリンの保護基を脱離させる。これによりMPSポリマーを得ることができる。脱保護は強酸下で行われるため、好適な脱保護剤としてTFA/CH2Cl2あるいは塩酸/メタノールが挙げられる。
【0037】
前修飾法では、合成工程でリン酸自己環状エステルとして2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-オキサホスホラン(COP)を用いる方法を用いてもよい。用いるCOPは市販品であってもよく、三塩化リンとエチレングリコールとの反応により得られる2-クロロ-1,3,2-ジオキサホスホランを酸化して得てもよい。COP法では、COPと水酸基以外の官能基を保護したセリン化合物とを反応させて得られる反応中間体に(メタ)アクリル酸ナトリウムを加えて、2つの官能基を保護したホスホリルセリン導入(メタ)アクリル酸モノマーを得ることが可能である。
【0038】
COP法を用いても、重合工程は前記と同様だが、脱保護工程では、脱保護剤によりホスホリルセリンの保護基を脱離させることのみによりMPSポリマーを得ることができる。
【0039】
後修飾法では、官能基を保護したホスホリルセリンの合成工程と、水酸基を側鎖に含有する(メタ)アクリル酸ポリマーの重合工程と、官能基を保護したホスホリルセリンと水酸基を側鎖に含有する(メタ)アクリル酸ポリマーとの修飾工程と、官能基を脱保護してホスホリルセリン(メタ)アクリル酸ポリマーを得る脱保護工程を有する。
【0040】
該重合工程では、水酸基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸モノマーの重合により水酸基を側鎖に含有する(メタ)アクリル酸ポリマーを得ることができる。水酸基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを用いることができる。ホスホリルセリンの修飾率を高めることが可能な点から好ましくは、アルキル基としてはC1~C5である。さらに好適なモノマーは(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル(C2)である。さらに、アルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリル酸モノマー以外のモノマーを含有させることも可能である。具体的には、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが好ましく、さらに好適なアルキル基としてはC1~C5である。最も好ましくは(メタ)アクリル酸ブチル(C4)である。
【0041】
該修飾工程では、O-tert-ブトキシ-N,N,N,N-テトライソプロピル ホスホロアミダイトとN-Boc-L-セリン tert-ブチルエステルに上記重合工程で得られた水酸基を側鎖に含有する(メタ)アクリル酸ポリマーを反応させて官能基を保護したホスホリルセリン(メタ)アクリル酸ポリマーを得ることができる。
【0042】
該脱保護工程では、上記修飾工程で得られた官能基を保護したホスホリルセリン(メタ)アクリル酸ポリマーを酸化剤により、ホスホリルセリン基のリンを3価から5価に酸化するとともに、脱保護剤によりホスホリルセリンの保護基を脱離させる。これによりMPSポリマーを得ることができる。
【0043】
本発明のAPTT測定試薬用添加剤は、以下で説明するAPTT測定試薬だけでなく、広く既知の血液凝固試験用試薬に適用することができる。
【0044】
(2)APTT測定試薬
本発明のAPTT測定試薬は、上記で説明した本発明のAPTT測定試薬用添加剤を含有する。当該APTT測定試薬は、活性化剤をさらに含有してもよい。活性化剤としては、内因系凝固経路に関与する接触因子(プレカリクレイン、高分子キニノゲン、第XII因子および第XI因子)を活性化する作用を有するものであれば特に限定されることはなく、例えば、エラグ酸、カオリン、セライト、コロイダルシリカ、無水ケイ酸、緩衝液(例、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、酢酸緩衝液、グッド緩衝液(HEPES、MES、TES、ACES、ADA、PIPES、コラミン塩酸、BES、トリシン、ピシン、アセトアミドグリシン)、Tris緩衝液、MOPS緩衝液等)などが挙げられ、エラグ酸、カオリン、セライト、コロイダルシリカ、無水ケイ酸が好ましい。これら活性化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明の1つの実施形態において、活性化剤としてはエラグ酸が好ましい。エラグ酸は特に限定されず、天然由来もしくは合成されたエラグ酸またはその塩を用いることができる。エラグ酸の塩としては、例えばエラグ酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0046】
エラグ酸は、金属イオンとキレートを形成することで強力な活性化作用を示す。従って、本発明のAPTT測定試薬中において、エラグ酸は、亜鉛イオン(Zn2+)、マンガンイオン(Mn2+)、銅イオン(Cu2+)、鉄イオン(Fe2+)、アルミニウムイオン(Al3+)などの金属イオンとキレートを形成した状態にあることが好ましく、Al3+とキレートを形成した状態にあることがより好ましい。例えば、Al3+は、通常、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等の形態でAPTT測定試薬に添加される。
【0047】
本発明のAPTT測定試薬は、通常溶液の形態で用いられる。この溶液の溶媒は、血液凝固能の臨床検査に通常用いられる水性溶媒から選択できるが、好ましくは水および生理食塩水が挙げられる。また、溶液の形態の本発明のAPTT測定試薬のpHは6~8が生理的条件に近いため好ましく、pH7~7.6が従来の測定法として採用されてきた点からより好ましい。本試薬のpHの調整は、適宜緩衝剤を用いることで可能である。そのような緩衝剤としては、pH5~9、好ましくはpH6~8で高いpH緩衝効果を有する緩衝剤を好適に用いることができ、例えばHEPES、Tris、MOPSなどが挙げられる。溶液の形態のAPTT測定試薬中のAPTT測定試薬用添加剤の濃度は、凝固時間の測定条件などに応じて設定は制限されないが、通常0.1~100μg/mLであり、1~20μg/mLが好ましい。また、溶液の形態のAPTT測定試薬中の活性化剤の濃度は、凝固時間の測定条件などに応じて設定は制限されないが、通常0.01~1mMであり、0.05~0.5mMが好ましい。
【0048】
本発明のAPTT測定試薬は、その保存性および安定性を向上させるための添加剤をさらに含んでもよい。そのような添加剤としては、APTT測定試薬に通常使用される添加剤であればよく、例えば防腐剤、抗酸化剤、安定化剤などが挙げられる。防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウム、公知の抗生剤などが挙げられる。抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。安定化剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0049】
本発明の実施形態においては、一般的なAPTTの測定条件下で、本発明のAPTT測定試薬用添加剤を含有するAPTT測定試薬をカルシウム塩の溶液とともに適切に使用した場合、従来の血液凝固時間測定用試薬と同程度の測定結果を得ることができる。より具体的には、本発明のAPTT測定試薬用添加剤を含有するAPTT測定試薬を用いて、所定の正常血漿(コアグトロールN)を検体として測定した場合、凝固時間が15~100秒の範囲内になることが望ましく、より望ましくは、20~40秒である。
【0050】
(3)APTT測定用試薬キット
本発明のAPTT測定用試薬キット(以下、単に「試薬キット」ともいう)は、本発明のAPTT測定試薬用添加剤を含む第1試薬と、カルシウム塩を含む第2試薬とからなる。
【0051】
本発明の試薬キットは、本発明のAPTT測定試薬用添加剤と同様、APTT測定およびLAの検出に好適に用いることができる。また本発明の試薬キットの使用方法は、従来のAPTT測定用試薬キットと同様である。
【0052】
本発明の実施の形態においては、第1試薬は、活性化剤としてエラグ酸および金属イオンとしてAl3+を含む(エラグ酸とAl3+とがキレートを形成する)ことが好ましい。Al3+は、通常、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等の形態で第1試薬に添加される。本発明の別の実施形態において、第1試薬は、上記の緩衝剤、エラグ酸以外の活性化剤および添加剤から選択される少なくとも1種類をさらに含んでよい。
【0053】
第1試薬は、通常水または生理食塩水などの溶液の形態である。第1試薬中のAPTT測定試薬用添加剤の濃度は、ホスホリルセリン修飾率、水中でのポリマーの高次構造や分子間相互作用などの他、その他測定条件などにも応じて特に制限されないが、通常5~100μg/mLであり、10~50μg/mLが好ましい。また第1試薬中のエラグ酸の濃度は、凝固時間の測定条件などに応じて設定は制限されないが、通常0.01~0.5mMであり、0.05~0.2mMが好ましい。また第1試薬中のAl3+の濃度は、凝固時間の測定条件などに応じて設定は制限されないが、通常0.001~1mMであり、0.02~0.2mMが好ましい。さらに、第1試薬中の緩衝剤、エラグ酸以外の活性化剤および添加剤から選択される少なくとも1種類の濃度は、凝固時間の測定条件などに応じて設定は制限されないが、通常1~500mMであり、10~100mMが好ましい。
【0054】
第2試薬に含まれるカルシウム塩は、血液凝固試験に通常用いられるカルシウム塩であればよく、無機酸または有機酸との塩から選択できる。そのようなカルシウム塩としては、例えば塩化カルシウム(CaCl2)、硫酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、酒石酸カルシウムなどが挙げられる。それらの中でもCaCl2が特に好ましい。第2試薬は、通常水、生理食塩水または生理的緩衝液などの溶液の形態である。第2試薬中のカルシウム塩の濃度は、塩の種類およびその他の測定条件に応じて特に制限されないが、通常15~50mMであり、好ましくは20~30mMである。
【0055】
本発明の試薬キットは、血液凝固時間の測定に通常用いられる試薬などを、その他の試薬としてさらに含んでいてもよい。そのような試薬としては、例えば希釈用水性溶媒、参照用血漿などが挙げられる。希釈用溶媒としては、例えば第1試薬を希釈するための生理食塩水および緩衝液が挙げられる。上記の参照用血漿としては、例えば正常血漿、精度管理用血漿などが挙げられる。
【0056】
(4)APTT測定法
本発明のAPTT測定法は、検体血漿と、血小板第三因子の代替物としての本発明のAPTT測定試薬用添加剤を含む第1試薬とを混合する第1混合工程と、第1混合工程で得られた試料と、カルシウム塩を含む第2試薬とを混合する第2混合工程と、第2混合工程で得られた試料の凝固時間を測定する工程とを含むことを特徴とする。
【0057】
本発明の1つの実施形態において、第1混合工程における第1試薬としては、上記「(3)APTT測定用試薬キット」において説明した第1試薬を用いることができる。また、第2混合工程における第2試薬としては、上記「(3)APTT測定用試薬キット」において説明した第2試薬を用いることができる。
【0058】
検体血漿としては、血液または該血液より得られた血漿が用いられる。本発明の好ましい実施形態においては、被検者から採取した血液から得られた血漿、上記参照用血漿およびそれらの混合物が用いられる。なお、血液から血漿を得る方法は一般的には、赤血球等の血液細胞の破壊による溶血を防止しながら遠心分離して血球成分を除去することである。被検者から採取した血液には、血液凝固能の臨床検査において通常用いられる抗凝固剤が添加されていてもよい。このような抗凝固剤としては、クエン酸ナトリウムが挙げられる。
【0059】
凝固時間を測定する工程では、上記の第2混合工程を光学的測定に適したバイアル中で行うことが好ましい。ガラス製バイアルを用いる場合は、ガラス中のAl3+が溶出して、第1試薬中の遊離型エラグ酸と反応し、凝固反応系に影響を及ぼし正確なAPTTが測定できない。そのため、あらかじめシリコンコートしたバイアルを用いることが凝固時間の精度を保つために好適である。APTTの測定装置としては、一般的な光学的情報を経時的に測定する装置や血液凝固試験専用の装置が挙げられる。そのような装置としては、波長550~700nmの透過光吸収についての光学的情報検出部を備える市販の分光光度計であれば特に限定されず、より好ましくは波長660nmの透過光吸収についての光学的情報検出部を備える分光光度計であることが望ましい。更に、APTT測定で用いられる専用の血液凝固測定装置が好適である。例えば、シスメックス社製のCS-5100や富士フィルム和光純薬社製のCOAG2N等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
実験例1:合成(HEMA-BMA)
100mLナス型フラスコに回転子を入れ、エタノール50mLを注ぎ、モノマーとしてBMA(メタクリル酸n-ブチル)(東京化成工業)28.1gとHEMA(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)(東京化成工業)7.7gをDMF(東京化成工業)35mLに溶解させ、ナス型フラスコに入れ0℃に保ちながら30分間、乾燥N2でバブリングした。本液を70℃に加温しながら4-シアノ-4-フェニルカルボノチオイルチオペンタン酸(CTP)(和光純薬)存在下に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(東京化成工業)40mgを混和し、21時間攪拌した。ジエチルエーテルを貧溶媒とした再沈殿法にて精製し、残留溶媒を真空ポンプで除去し乾燥物を得た。
【0062】
実験例2:合成(HEMA-BMA-MPS)
N2雰囲気下に200mLナス型フラスコに回転子、1.3g N-Boc-L-セリンtert-ブチルエステル(東京化成工業)と、200mL CH2Cl2を注ぎ、ここへ1.3g O-tert-ブトキシ-N,N,N’,N’-テトライソプロピルホスホロジアミダイト(メルク)と0.1g イミダゾール塩酸塩(和光純薬工業)を加え室温で21時間攪拌し官能基を保護したホスホリルセリン誘導体を得た。次に実験例1で得られた共重合体33gと1.4g イミダゾール塩酸塩を徐々に添加し、2時間反応させ反応中間体を得た。4℃で2-プロパノールで透析(MWCO=1,000)後、CH2Cl2中で再透析を行った。溶媒留去後のGPCによる分析からMn=1.20×104、Mw=1.30×104の高分子共重合体を確認した。得られた共重合体を200mLナス型フラスコに注ぎ、最終濃度が20体積%となるようTFAを添加し、室温下に4時間攪拌し脱保護を行った。溶媒留去後のGPCによる分析からMn=8.30×103、Mw=9.80×103の高分子共重合体を確認した。同様の操作を3回繰り返して3ロットを得た。
HEMA-BMA-MPS共重合体中の各モノマーユニットの含有割合:全モノマーユニットに対し、
MPSモノマーユニット:2.1mol%
HEMAモノマーユニット:21mol%
BMAモノマーユニット:76.9mol%
【0063】
実験例3:造粒(透析条件1)
実験例1で調製したHEMA-BMA共重合体および実験例2で調製したHEMA-BMA-MPS共重合体各1ロットを30mg/ml DMFに溶解させ内液とし、透析膜(MWCO=1,000)に注入し、蒸留水を外液として1夜透析を行った。内液を凍結乾燥により水分を完全に除去し自己組織化粒子を得た。日立製S-4700社製粒度分布計で平均粒径を測定したところ平均粒径900nmであった。得られた粒子を凍結乾燥させ粉末を得た。
【0064】
実験例4:造粒(透析条件2)
実験例1および実験例2で調製した共重合体をそれぞれ5mg/ml DMFおよび30mg/ml DMFに溶解させ内液とした以外実験例3と同様にして自己組織化粒子を得た。実験例3と同様にして平均粒径を測定したところ200nmであった。得られた粒子を凍結乾燥させ粉末を得た。
【0065】
実験例5:APTTの計測
あらかじめ37℃に加温した(シリコンコートしたガラス)キュベットに標準血漿として50μLコアグトロールN(シスメックス社製)を添加し、日本分光製吸光度計V-550の保温セルホルダーに装着した。ここにアクチンFSL(シスメックス社製)50μLあるいは0.1mMエラグ酸および50μM塩化アルミニウムを含有する50mM HEPES(pH7.4)緩衝液50μLに実験例3または4で得られた共重合体の粉末を最終濃度が0.002mg/mLあるいは0.02mg/mLとなるよう添加した第1試薬を添加し、5分間プレインキュベートした。第2試薬として25mM CaCl2を含有する50mM HEPES(pH7.4)緩衝液を50μL添加後660nmの吸光度の測定を開始し、添加開始から吸光度が一定になるまで経時的に計測を続けた。凝固時間は、第2試薬添加から吸光換算比((吸光度-最小吸光度)/(最大吸光度-最小吸光度))が0.5に達するまでの時間とした。
【0066】
実施例1:
実験例2に示す工程により得られたHEMA-BMA-MPS共重合体3ロットについて実験例3の造粒工程を行った。得られた粉末3ロットについて最終濃度が2μg/mLとなるよう調整し、実験例5のAPTTの計測を行い、平均値と変動係数(以下、CV値(%);標準偏差を平均値で割った値)を求めた。その結果を表1に示す。
【0067】
実施例2:
実験例2に示す工程により得られたHEMA-BMA-MPS共重合体3ロットについて実験例4の造粒工程を行った。得られた粉末3ロットについて最終濃度が2μg/mLとなるよう調整し、実験例5のAPTTの計測を行い、平均値とCV値(%)を求めた。その結果を表1に示す。
【0068】
実施例3:
実験例2に示す工程により得られたHEMA-BMA-MPS共重合体3ロットについて実験例4の造粒工程を行った。得られた粉末3ロットについて最終濃度が20μg/mLとなるよう調整し、実験例5のAPTTの計測を行い、平均値とCV値(%)を求めた。その結果を表1に示す。
【0069】
比較例1:
実験例1に示す工程により得られたHEMA-BMA共重合体3ロットについて実験例3の造粒工程を行った。得られた粉末3ロットについて最終濃度が20μg/mLとなるよう調整し、実験例5のAPTTの計測を行い、平均値とCV値(%)を求めた。その結果を表1に示す。
【0070】
比較例2:
血液凝固試験用としてPE(ホスファチジルエタノール):PC(ホスファチジルセリン):PS(ホスファチジルセリン)を平均組成比±CV%が50%±13%:30%±20%:20%±10%で含有する市販のウサギ脳由来セファリン(Pel-Freez Biologicals社、USA)0.1mg/mLの3ロットを用いて実験例5のAPTTの計測を行い、平均値とCV値(%)を求めた。その結果を表1に示す。
【0071】
【0072】
MPSポリマーから異なる条件で調製された微粒子を用いた実施例1~3は、MPSを含有しないポリマーを用いた比較例1に対してCV値は同等だが、APTT時間が短く、異なる条件による影響が少なく安定した値であり、試薬の品質管理が容易である。また、実施例1~3は、APTT試薬用に市販される天然のリン脂質を用いた比較例2に対しては、APTT値は近似するが、CV値が低く、測定値に誤差が生じにくく、安定した値であり、試薬の品質管理が容易である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、天然のリン脂質を用いることなく、血液凝固時間が安定的に測定でき、試験品質管理上も安価で簡便な血液凝固時間測定試薬用添加剤、血液凝固時間測定試薬、血液凝固時間測定用試薬キットおよび血液凝固時間の測定方法を提供することができる。