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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】紅茶の萎凋発酵装置及び萎凋発酵方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/12 20060101AFI20231227BHJP
   A23F 3/06 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A23F3/12 301Q
A23F3/06 T
A23F3/12 301C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021565244
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2019049695
(87)【国際公開番号】W WO2021124493
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 宏文
(72)【発明者】
【氏名】志村 裕也
(72)【発明者】
【氏名】井上 和紀
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】畑 英季
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-232731(JP,A)
【文献】特開2007-228964(JP,A)
【文献】特開2006-217803(JP,A)
【文献】特開2014-209892(JP,A)
【文献】特開2003-294654(JP,A)
【文献】特開平01-215241(JP,A)
【文献】紅茶揉捻機,PRODUCTS CATALOGUE,カワサキ機工株式会社,2017年07月21日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00- 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅茶とする茶葉を萎凋、揉捻及び発酵させるための紅茶の萎凋発酵装置であって、
茶葉を収容する収容部と、
前記収容部内に温風を供給する温風供給部と、
前記収容部内で回転可能とされ、当該収容部内に収容された茶葉を揉み込む揉み手と、
を備え、前記収容部内の茶葉がCTC工程の有無によって異なる製法に応じて設定可能な目標含水率に達するまで前記温風供給部から温風を供給しつつ前記揉み手により茶葉を揉み込んで茶葉の萎凋、揉捻及び発酵を同時に行わせることを特徴とする紅茶の萎凋発酵装置。
【請求項2】
前記温風供給部からの温風の温度、風量、前記揉み手の回転数又は揉み込み圧を調整して前記収容部内の茶葉を所定時間内で目標含水率とすることを特徴とする請求項1記載の紅茶の萎凋発酵装置。
【請求項3】
前記揉み手と共に前記収容部内で回転し、当該収容部内に収容された茶葉を攪拌する攪拌手を具備するとともに、当該攪拌手で茶葉を攪拌しつつ温風による萎凋及び揉み込みを行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の紅茶の萎凋発酵装置。
【請求項4】
前記収容部内の茶葉の含水率を測定可能な測定部を具備し、当該測定部の測定値に基づいて前記目標含水率に達するまで前記温風供給部から温風を供給しつつ前記揉み手により茶葉を揉み込むことを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵装置。
【請求項5】
前記揉み手による揉み込みにより茶葉の内部水分を外側に出し、且つ、前記温風供給部による温風を当てることにより、気化冷却の作用によって茶温の上昇を抑制しつつ萎凋させることを特徴とする請求項1~の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵装置。
【請求項6】
紅茶とする茶葉を萎凋、揉捻及び発酵させるための紅茶の萎凋発酵方法であって、茶葉に対して選択可能な前処理工程を行った後に、
茶葉を収容する収容部と、
前記収容部内に温風を供給する温風供給部と、
前記収容部内で回転可能とされ、当該収容部内に収容された茶葉を揉み込む揉み手と、
を備えた萎凋発酵装置により、前記収容部内の茶葉がCTC工程の有無によって異なる製法に応じて設定可能な目標含水率に達するまで前記温風供給部から温風を供給しつつ前記揉み手により茶葉を揉み込んで茶葉の萎凋、揉捻及び発酵を同時に行わせることを特徴とする紅茶の萎凋発酵方法。
【請求項7】
前記前処理工程は、処理後の含水率を異ならせることで香味を調整可能であることを特徴とする請求項6記載の紅茶の萎凋発酵方法
【請求項8】
前記温風供給部からの温風の温度、風量、前記揉み手の回転数又は揉み込み圧を調整して前記収容部内の茶葉を所定時間内で目標含水率とすることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の紅茶の萎凋発酵方法。
【請求項9】
前記萎凋発酵装置は、前記揉み手と共に前記収容部内で回転し、当該収容部内に収容された茶葉を攪拌する攪拌手を具備するとともに、当該攪拌手で茶葉を攪拌しつつ温風による萎凋及び揉み込みを行うことを特徴とする請求項6~8の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵方法。
【請求項10】
前記萎凋発酵装置は、前記収容部内の茶葉の含水率を測定可能な測定部を具備し、当該測定部の測定値に基づいて前記目標含水率に達するまで前記温風供給部から温風を供給しつつ前記揉み手により茶葉を揉み込むことを特徴とする請求項~9の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵方法。
【請求項11】
前記揉み手による揉み込みにより茶葉の内部水分を外側に出し、且つ、前記温風供給部による温風を当てることにより、気化冷却の作用によって茶温の上昇を抑制しつつ萎凋させることを特徴とする請求項6~10の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅茶とする茶葉を萎凋、揉捻及び発酵させるための紅茶の萎凋発酵装置及び萎凋発酵方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紅茶は、例えば茶葉に送風(温風など)を噴出させて水分を30~45%程度蒸発させる萎凋工程、葉の細胞組織をくだいて酸化発酵を促す揉捻工程、温度25~28℃程度且つ湿度90%以上の発酵室で1~2時間程度ねかせて酸化酵素を働かせる発酵工程、茶葉を100℃以上の熱風で昇温させて酸化発酵を止め、その後80℃以上の熱風で茶葉の含水率が3~5%になるまで乾燥させる乾燥工程を経ることにより得られる。
【0003】
このうち従来の萎凋方法として、室内の通気のよい場所で萎凋棚や網に生葉を薄く広げ、約12~24時間かけて茶葉重量を約30~45%程度減少させる自然萎凋、萎凋槽に積み上げた茶葉に約40~50℃の温風を供給する人工萎凋等が挙げられる。人工萎凋においては、積み上げた茶葉における上面と下面とで萎凋温度が異なってしまうため、作業者が約2~4時間毎に攪拌したり或いは送風の向きを逆転させる等の作業が必要とされていた。なお、かかる従来の萎凋方法に関する先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、自然萎凋による生葉を広げる作業や人工萎凋による茶葉の攪拌作業等が必要とされるので、広大な設備面積が必要であり、作業者による作業及び多大な時間が必要とされるとともに、茶葉の摘採後の時間、品種、熟度等の状態と環境によって加工条件が変化してしまい品質が安定しない虞や、作業者の能力によって後工程の加工条件が安定しない虞があった。このような状況の下、本出願人は、上記従来技術の問題の解決を図るとともに、萎凋に加え発酵を同時に行わせて効率的に茶葉を製造し得る萎凋発酵装置及び萎凋発酵方法を検討するに至った。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、萎凋、揉捻及び発酵工程を同時に行って効率的な加工を図りつつ自動化を図ることができるとともに、安定した品質の紅茶を得ることができる紅茶の萎凋発酵装置及び萎凋発酵方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、紅茶とする茶葉を萎凋、揉捻及び発酵させるための紅茶の萎凋発酵装置であって、茶葉を収容する収容部と、前記収容部内に温風を供給する温風供給部と、前記収容部内で回転可能とされ、当該収容部内に収容された茶葉を揉み込む揉み手とを備え、前記収容部内の茶葉がCTC工程の有無によって異なる製法に応じて設定可能な目標含水率に達するまで前記温風供給部から温風を供給しつつ前記揉み手により茶葉を揉み込んで茶葉の萎凋、揉捻及び発酵を同時に行わせることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の紅茶の萎凋発酵装置において、前記温風供給部からの温風の温度、風量、前記揉み手の回転数又は揉み込み圧を調整して前記収容部内の茶葉を所定時間内で目標含水率とすることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の紅茶の萎凋発酵装置において、前記揉み手と共に前記収容部内で回転し、当該収容部内に収容された茶葉を攪拌する攪拌手を具備するとともに、当該攪拌手で茶葉を攪拌しつつ温風による萎凋及び揉み込みを行うことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵装置において、前記収容部内の茶葉の含水率を測定可能な測定部を具備し、当該測定部の測定値に基づいて前記目標含水率に達するまで前記温風供給部から温風を供給しつつ前記揉み手により茶葉を揉み込むことを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1~の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵装置において、前記揉み手による揉み込みにより茶葉の内部水分を外側に出し、且つ、前記温風供給部による温風を当てることにより、気化冷却の作用によって茶温の上昇を抑制しつつ萎凋させることを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、紅茶とする茶葉を萎凋、揉捻及び発酵させるための紅茶の萎凋発酵方法であって、茶葉に対して選択可能な前処理工程を行った後に、茶葉を収容する収容部と、前記収容部内に温風を供給する温風供給部と、前記収容部内で回転可能とされ、当該収容部内に収容された茶葉を揉み込む揉み手とを備えた萎凋発酵装置により、前記収容部内の茶葉がCTC工程の有無によって異なる製法に応じて設定可能な目標含水率に達するまで前記温風供給部から温風を供給しつつ前記揉み手により茶葉を揉み込んで茶葉の萎凋、揉捻及び発酵を同時に行わせることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項6記載の紅茶の萎凋発酵方法において、前記前処理工程は、処理後の含水率を異ならせることで香味を調整可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項6又は請求項7記載の紅茶の萎凋発酵方法において、前記温風供給部からの温風の温度、風量、前記揉み手の回転数又は揉み込み圧を調整して前記収容部内の茶葉を所定時間内で目標含水率とすることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項6~8の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵方法において、前記萎凋発酵装置は、前記揉み手と共に前記収容部内で回転し、当該収容部内に収容された茶葉を攪拌する攪拌手を具備するとともに、当該攪拌手で茶葉を攪拌しつつ温風による萎凋及び揉み込みを行うことを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明は、請求項~9の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵方法において、前記萎凋発酵装置は、前記収容部内の茶葉の含水率を測定可能な測定部を具備し、当該測定部の測定値に基づいて前記目標含水率に達するまで前記温風供給部から温風を供給しつつ前記揉み手により茶葉を揉み込むことを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の発明は、請求項6~10の何れか1つに記載の紅茶の萎凋発酵方法において、前記揉み手による揉み込みにより茶葉の内部水分を外側に出し、且つ、前記温風供給部による温風を当てることにより、気化冷却の作用によって茶温の上昇を抑制しつつ萎凋させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1、の発明によれば、収容部内の茶葉が目標含水率に達するまで温風供給部から温風を供給しつつ揉み手により茶葉を揉み込んで茶葉の萎凋、揉捻及び発酵を同時に行わせるので、萎凋、揉捻及び発酵工程を同時に行って効率的な加工を図りつつ自動化を図ることができるとともに、安定した品質の紅茶を得ることができる。
【0019】
請求項2、8の発明によれば、温風供給部からの温風の温度、風量、揉み手の回転数又は揉み込み圧を調整して収容部内の茶葉を所定時間内で目標含水率とするので、萎凋、揉捻及び発酵が行われた一定の含水率の茶葉を所定時間内で得ることができ、より品質の安定化を図ることができる。
【0020】
請求項3、9の発明によれば、揉み手と共に収容部内で回転し、当該収容部内に収容された茶葉を攪拌する攪拌手を具備するとともに、当該攪拌手で茶葉を攪拌しつつ温風による萎凋及び揉み込みを行うので、収容部内の茶葉に対して均一な萎凋、揉捻及び発酵を行わせることができる。
【0021】
請求項4、10の発明によれば、収容部内の茶葉の含水率を測定可能な測定部を具備し、当該測定部の測定値に基づいて目標含水率に達するまで温風供給部から温風を供給しつつ揉み手により茶葉を揉み込むので、精度よく茶葉を目標含水率とすることができ、品質をより安定化させることができる。
【0023】
請求項5、11の発明によれば、揉み手による揉み込みにより茶葉の内部水分を外側に出し、且つ、温風供給部による温風を当てることにより、気化冷却の作用によって茶温の上昇を抑制しつつ萎凋させるので、茶温を上げることなく萎凋することができる。また、茶葉の細胞組織を破壊することにより、葉の表皮等に存在する酸化酵素と液胞内のポリフェノール成分が酸化反応し、テアフラビン等の紅茶成分を生成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る紅茶の萎凋発酵装置を示す全体模式図
図2図1におけるII-II線断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る紅茶の萎凋発酵装置1は、紅茶とする茶葉を萎凋、揉捻及び発酵させるための専用装置(WRF;Withering Rubbing Fermentation)から成るもので、図1、2に示すように、フレームFに支持された収容部2と、攪拌手4と、揉み手5と、温風供給部9とを具備するとともに、温風供給部9を介して熱風発生装置8から収容部2内に熱風を供給し得る構成とされたものである。
【0026】
収容部2は、内部に収容空間を有して所定量の茶葉を収容するためのもので、胴部6及び取出部7を有して構成されている。かかる収容部2の底面には、所定の曲率を持った円弧状の底竹2aが敷設されており、その底竹2aの一部に開閉可能な取出部7が形成されている。そして、取出部7を開状態とすることにより、萎凋、揉捻及び発酵処理が終了した茶葉を下方に配設された振動コンベア(不図示)に落下させ得るようになっている。
【0027】
また、収容部2内には、モータ等の駆動源により回転可能な主軸3が配設されており、かかる主軸3には、攪拌手4及び揉み手5が取り付けられている。揉み手5は、主軸3の回転駆動により収容部2内で回転可能とされ、当該収容部2内に収容された茶葉を揉み込むことが可能とされている。攪拌手4は、主軸3の回転駆動により揉み手5と共に収容部2内で回転可能とされ、収容部2内に収容された茶葉を攪拌するためのものである。
【0028】
これにより、揉み手5により底竹2aとの間で茶葉を揉み込むことにより、茶葉の細胞組織を破壊し、葉の表皮等に存在する酸化酵素と液胞内のポリフェノール成分とを混合し、空気接触させることにより発酵を促すとともに、攪拌手4により茶葉を攪拌して効率的に萎凋させることができるようになっている。また、揉み手5の回転数(主軸3の回転速度)及び揉み込み圧は、任意調整可能とされている。
【0029】
温風供給部9は、収容部2内に温風を供給するもので、熱風発生装置8と接続されている。かかる熱風発生装置8は、ガンタイプバーナー8aで発生させた熱をファン8bで収容部2内に送り込むもので、発生した熱風が萎凋発酵装置1の温風供給部9を介して収容部2の内部に送風されるよう構成されている。また、温風供給部9から供給される熱風の温度、風量は、任意調整可能とされている。なお、かかる熱風の供給による処理は、60分以内の処理時間とし、茶温40℃以下、好ましくは25~35℃とすることにより、酸化酵素のポリフェノールオキシターゼの効果をより高めることができる。
【0030】
本実施形態に係る萎凋発酵装置1によれば、収容部2内の茶葉を揉み込んで内部の水分を外側に出しつつ熱風を当てることにより、気化冷却の作用で茶温を上げることなく萎凋(乾燥)することができる。特に、揉み手5による揉み込みで茶葉細胞を破砕することにより、酸化酵素のポリフェノールオキシターゼがポリフェノール成分と酸化反応し、テアフラビン等の紅茶の成分が生成することとなる。
【0031】
すなわち、揉圧及び破砕等により、茶葉液胞より水分やポリフェノール類成分を表面に出しつつ、温風にて萎凋、発酵(空気接触による酸化)させることができ、且つ、揉み手5によって茶葉の形状を整えながら均一に揉捻発酵作用を伴った萎凋が可能となる。この場合、処理時間は60分以内とされるため、従来の処理方法と比べて処理時間を短縮させることができるとともに、濡れた生葉等も処理可能であるため、製茶工場の稼働率向上及び計画的生産が可能となる。
【0032】
ここで、本実施形態に係る萎凋発酵装置1は、収容部2内の茶葉が目標含水率に達するまで温風供給部9から温風を供給しつつ揉み手5により茶葉を揉み込んで茶葉の萎凋、揉捻及び発酵を同時に行わせるよう構成されている。すなわち、前工程が如何なる工程であっても、本萎凋発酵装置1においては、収容部2内の茶葉が目標含水率に達するまで萎凋、揉捻及び発酵のための処理が行われるのである。さらに、本実施形態においては、温風供給部9からの温風の温度、風量、揉み手5の回転数又は揉み込み圧を調整して収容部2内の茶葉を所定時間内で目標含水率とすることができる。
【0033】
例えば、本実施形態に係る萎凋発酵装置1は、処理対象の茶葉の重量を約35%程度減少(取出重量約35%減)させるものとし、目標含水率は、例えばドライベースで200%程度に設定するのが好ましい。また、目標含水率は、求める製品に応じて変更可能とされており、例えば後工程においてCTC工程を有するアンオーソドックス製法の場合は、処理対象の茶葉の重量を約35%程度減少(取出重量約35%減)させるものとし、目標含水率は、例えばドライベースで200%程度に設定するとともに、後工程がオーソドックス製法の場合は、処理対象の茶葉の重量を約45%程度減少(取出重量約45%減)させるものとし、目標含水率は、例えばドライベースで160%程度に設定する。
【0034】
なお、本萎凋発酵装置1による処理後の後工程として、揉捻機による揉捻工程と、茶葉の発酵を行うための発酵工程と、茶葉を昇温させて発酵酵素を失活させることにより発酵を止めるための発酵止め工程と、茶葉を乾燥させる乾燥工程とを有したオーソドックス製法、揉捻工程、ローターバン工程、発酵工程、発酵止め工程及び乾燥工程を順次行うセミオーソドックス製法、及びCTC(Crush(押し潰す)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める))装置によるCTC工程と、茶葉の発酵を行うための発酵工程と、茶葉を昇温させて発酵酵素を失活させることにより発酵を止めるための発酵止め工程と、茶葉を乾燥させる乾燥工程とを有したアンオーソドックス製法が挙げられる。
【0035】
さらに、本実施形態に係る萎凋発酵装置1は、収容部2内の茶葉の含水率を測定可能な測定部を具備するよう構成してもよく、この場合、測定部の測定値に基づいて目標含水率に達するまで温風供給部9から温風を供給しつつ揉み手5により茶葉を揉み込むようにする。これにより、収容部2内の茶葉の含水率を精度よく検出することができ、その含水率が予め設定された目標含水率に達するまで処理を継続して行わせることができる。
【0036】
次に、本実施形態に係る萎凋発酵装置1による処理前の前処理工程について説明する。すなわち、以下の第1~3の前処理工程のうち何れか1つ又は複数を組み合わせた前処理工程を行った後、萎凋発酵装置1による萎凋、揉捻及び発酵処理を行うことができる。
(第1の前処理工程)
本前処理工程においては、生葉(含水率をドライベース380%で算出)を120cm以下程度の茶層になるようにコンテナ等に保持し、0.2m3/分/kg以下程度の送風又は加湿送風することにより、生葉の重量を約10%程度減少(取出重量約10%減)させ、含水率をドライベースで332%程度とする。
【0037】
かかる第1の前処理工程を行った後、萎凋発酵装置1による処理が行われる場合、90℃以下程度且つ約2m3/分/kg以下程度の温風が供給されて40℃以下(25~35℃)の茶温を保ちつつ60分程度の揉み手5による揉み込み処理及び攪拌手4による攪拌を行うことにより、処理対象の茶葉が目標含水率(オーソドックス製法の場合はドライベースで160%前後、アンオーソドックス製法の場合はドライベースで200%前後の目標含水率)に達するようになっている。このように第1の前処理工程を経て製造された紅茶は、香気が少ないものの色は明るく良好且つストロングとなり、CTC工程を有するアンオーソドックス製法の場合に有効である。
【0038】
(第2の前処理工程)
生葉(含水率をドライベース380%で算出)を50cm程度の茶層になるように萎凋槽に保持し、0.6m3/分/kg以下且つ60℃以下程度の温風を供給するとともに、所定時間毎に天地を返しつつ2~8時間(4時間程度が好ましい)処理を行うことにより、生葉の重量を約30%程度減少(取出重量約30%減)させ、含水率をドライベースで236%程度とする(アンオーソドックス製法及びオーソドックス製法の何れであっても共通)。
【0039】
かかる第2の前処理工程を行った後、萎凋発酵装置1による処理が行われる場合、90℃以下且つ約2m3/分/kg以下程度の温風が供給されて45分以下程度の揉み手5による揉み込み処理及び攪拌手4による攪拌を行うことにより、処理対象の茶葉が目標含水率(オーソドックス製法の場合はドライベースで160%前後、アンオーソドックス製法の場合はドライベースで200%前後の目標含水率)に達するようになっている。このように第2の前処理工程を経て製造された紅茶は、ストロングの傾向はあるものの、色、香味とも良好で、特に香味の調整が可能とされる。
【0040】
(第3の前処理工程)
生葉(含水率をドライベース380%で算出)を天日に1時間以下程度曝した後、60cm以下程度の茶層となるように萎凋槽に保持し、0.2m3/分/kg以下且つ17~30℃程度の温度と50~80%程度の湿度に調整して加湿送風し、茶温を25℃以下程度に保ち、4~12時間程度萎凋させつつ1~4時間毎に揺青することにより、生葉の重量を約25%程度減少(取出重量約25%減)させ、含水率をドライベースで260%程度とする(アンオーソドックス製法及びオーソドックス製法の何れであっても共通)。なお、天日に曝す代わりに紫外線及び赤外線を照射しつつ加温するものとしてもよい。天日にさらさないで萎凋槽で萎凋、揺青させてもよいが、その場合、香気が劣ってしまう。
【0041】
かかる第3の前処理工程を行った後、萎凋発酵装置1による処理が行われる場合、約90℃以下且つ約0.2m3/分/kg以下程度の温風が供給されて45分以下程度の揉み手5による揉み込み処理及び攪拌手4による攪拌を行うことにより、処理対象の茶葉が目標含水率(オーソドックス製法の場合はドライベースで160%前後、アンオーソドックス製法の場合はドライベースで200%前後の目標含水率)に達するようになっている。このように第3の前処理工程を経て製造された紅茶は、花の香りのする独特な特徴を有しており、香り高い紅茶を得ることができる。なお、香味は、第3の前処理工程の条件を変更することにより調整が可能とされる。
【0042】
上記実施形態に係る萎凋発酵装置1によれば、収容部2内の茶葉が目標含水率に達するまで温風供給部9から温風を供給しつつ揉み手5により茶葉を揉み込んで茶葉の萎凋、揉捻及び発酵を同時に行わせるので、萎凋、揉捻及び発酵工程を同時に行って効率的な加工を図りつつ自動化を図ることができるとともに、安定した品質の紅茶を得ることができる。特に、本実施形態によれば、温風供給部9からの温風の温度、風量、揉み手5の回転数又は揉み込み圧を調整して収容部2内の茶葉を所定時間内で目標含水率とするので、萎凋、揉捻及び発酵が行われた一定の含水率の茶葉を所定時間内で得ることができ、より品質の安定化を図ることができる。
【0043】
また、揉み手5と共に収容部2内で回転し、当該収容部2内に収容された茶葉を攪拌する攪拌手4を具備するとともに、当該攪拌手4で茶葉を攪拌しつつ温風による萎凋及び揉み込みを行うので、収容部2内の茶葉に対して均一な萎凋、揉捻及び発酵を行わせることができる。さらに、収容部2内の茶葉の含水率を測定可能な測定部を具備し、当該測定部の測定値に基づいて目標含水率に達するまで温風供給部9から温風を供給しつつ揉み手5により茶葉を揉み込むようにすれば、精度よく茶葉を目標含水率とすることができ、品質をより安定化させることができる。またさらに、本実施形態に係る目標含水率は、求める製品に応じて変更可能とされたので、求める製品に適した茶葉の含水状態とすることができ、最終工程で得られる紅茶の品質をより一層安定化させることができる。
【0044】
しかるに、従来の萎凋方法では、葉、茎全体が均一の水分になるように減少させるために、茎から葉への水分移行に時間がかかるため、葉だけが乾きすぎないように、時間をかけて萎凋させていた。これに対し、本実施形態に係る萎凋発酵装置では、温風を与えながら、揉み手により茶葉を揉み込むことで、葉や茎が軟らかくなり、葉及び茎全体の水分を均一に減少させることができ、萎凋にかかる時間を短くすることができる。
【0045】
またさらに、揉み手5による揉み込みにより茶葉の内部水分を外側に出し、且つ、温風供給部9による温風を当てることにより、気化冷却の作用によって茶温の上昇を抑制しつつ萎凋させるので、茶温を上げることなく萎凋することができる。また、茶葉の細胞組織を破壊することにより、葉の表皮等に存在する酸化酵素と液胞内のポリフェノール成分が酸化反応し、テアフラビン等の紅茶成分を生成させることができる。
【0046】
以上、本実施形態に係る紅茶の萎凋発酵装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば前処理工程を他の形態の工程としてもよく、後工程は、上記の如くオーソドックス製法による後工程、セミオーソドックス製法による後工程及びアンオーソドックス製法による後工程に限定されず、他の種々工程を有したものであってもよい。特に、オーソドックス製法の場合、萎凋発酵装置で揉み込みを行うと、細よれした形状となり、良品が約5%向上し、歩留まりが向上する。また、熱風発生装置8は、他の形態の装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
収容部内の茶葉が目標含水率に達するまで温風供給部から温風を供給しつつ揉み手により茶葉を揉み込んで茶葉の萎凋、揉捻及び発酵を同時に行わせる紅茶の萎凋発酵装置及び紅茶の萎凋発酵方法であれば、装置の外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。また、萎凋発酵装置の前工程に蒸機を導入すれば、紅茶と緑茶の両方の製造が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 萎凋発酵装置
2 収容部
2a 底竹
3 主軸
4 攪拌手
5 揉み手
6 胴部
7 取出部
8 熱風発生装置
8a ガンタイプバーナー
8b ファン
9 温風供給部
F フレーム
図1
図2