(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-26
(45)【発行日】2024-01-10
(54)【発明の名称】手押し車
(51)【国際特許分類】
B62B 9/14 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
B62B9/14
(21)【出願番号】P 2023542739
(86)(22)【出願日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2023025845
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510235969
【氏名又は名称】アクシオヘリックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】宮城 葵
(72)【発明者】
【氏名】上猶 稔
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-507306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0354270(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2227553(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第105216852(CN,A)
【文献】特開2007-062437(JP,A)
【文献】特開2005-014871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降時に補助を要する被補助者を乗せて移動する手押し車であって、
乗降のための開口部を有し、前記被補助者を覆うように収容する座席部と、
手押し用のハンドルを有し、前記座席部を支持する移動可能な支持体と、
前記開口部を開閉する開閉カバーと、
外気を濾過して前記座席部内へ供給する濾過空気供給機構と、
前記濾過空気供給機構を制御する制御部と、
前記座席部内の温度を測定する温度センサと、前記座席部内の空気を冷却する冷却機構と、
前記座席部内の湿度を測定する湿度センサと、を備え、
前記開閉カバーで前記開口部を閉じて前記座席部を略密閉とした状態で前記座席部内を濾過された清浄空気で陽圧に保つことが可能であ
り、
前記制御部は、前記温度センサの測定値に応じて前記冷却機構を制御すると共に、前記温度センサの測定値と前記湿度センサの測定値とに基づいて前記座席部内の空気の露点を算出し、算出された露点に基づいて前記冷却機構を制御して前記座席部内の湿度を制御することを特徴とする手押し車。
【請求項2】
前記座席部内の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサを備え、
前記制御部は、前記二酸化炭素濃度センサの測定値に応じて前記濾過空気供給機構の供給量を調整することを特徴とする請求項1に記載の手押し車。
【請求項3】
前記濾過空気供給機構が、前記座席部と外部とを連通する通気路と、該通気路を通る外気を濾過するフィルタと、該フィルタにより濾過された空気を前記座席部内に供給する濾過空気供給ファンと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の手押し車。
【請求項4】
前記冷却機構が、ペルチェ素子と、該ペルチェ素子の加熱面側に設けられるヒートシンクと、該ヒートシンクの熱を前記座席部外へ放熱する放熱ファンと、前記ペルチェ素子の冷却面側で冷却された空気を前記座席部内で循環させる冷気送風ファンと、を備えていることを特徴とする請求項
1に記載の手押し車。
【請求項5】
前記濾過空気供給機構が、前記座席部と外部とを連通する通気路と、該通気路を通る外気を濾過するフィルタと、該フィルタにより濾過された空気を前記座席部内に供給する濾過空気供給ファンと、を備え、前記濾過空気供給ファンが前記冷気送風ファンを兼ねることを特徴とする請求項
4に記載の手押し車。
【請求項6】
略密閉状態の前記座席部の一部を強制的に開放する開放機構を備え、
前記座席部の温度制御、湿度制御または二酸化炭素濃度制御が適切な空気質を維持する観点から前記制御部により困難と判断された場合、前記制御部は前記開放機構を動作させることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の手押し車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降時に人の補助(介添え)を要する乳幼児等の被補助者を乗せて移動する手押し車に関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児を乗せるベビーカーの座席部(乗車部)は乗り降りを容易にするため前面側が開放された基本構成となっている。特許文献1には、屋外での突然の雨や、冷たい風からベビーカーに乗っている乳幼児を保護するため、座席部全体を透明なレインカバーで覆う構成が開示されている。明記されていないが、レインカバーの両側には複数の小さな通気孔が集まった通気部が形成されていることが図面上見て取れ、略密閉状態での外部との通気を確保するためのものであると解釈できる。
【0003】
特許文献2には、日よけ、虫除け、暑さよけ、風除け、ホコリ除けを目的として座席部全体をレース生地のカバーで覆い、さらに体温調節の未熟な赤ちゃんも快適に移動できるように、複数の保冷剤ポケットを設け、日差しが強い環境下では保冷剤ポケットに保冷剤を入れて座席部内を冷却する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-62437号公報
【文献】特開2005-14871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の構成は、いずれも座席部を略密閉状態に覆う構成である。それぞれ通気部やレース生地の持つ小穴を通じて外部との通気が可能であるが、乳幼児の呼吸による座席部内の二酸化炭素濃度の上昇を抑制するほどの空気入れ替え機能はなく、長時間の乗車では座席部内の空気質の悪化を避けられない。雨天時のように湿度が高い場合には、空気質の悪化にさらに不快さが加わることになる。また、小孔による通気構成は、乳幼児の体温による熱の籠りや外気温の高さによる座席部内の温度上昇の抑制にはほとんど期待できない。
【0006】
また、コロナ等の感染症が蔓延している状況下では、特許文献1、2に記載の略密閉構成は通気孔を有しているためウイルス侵入を防ぐ観点からはウイルスとのサイズ比較で通気孔が巨大であるためあまり意味はなく、商店街等の人込みの道路を移動する場合等にはベビーカーに乗った乳幼児は、レインカバー等で略密閉状態に覆われているものの、実質的には無防備の状態で感染の危険に晒されることになる。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部環境の変化に拘わらず長時間の乗車でも乳幼児等の被補助者が快適に過ごすことができる空気質を得ることができるとともに、外部からのウイルス等の侵入にも高精度に対応できる手押し車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の手押し車(2)は、乗降時に補助を要する被補助者(3)を乗せて移動する手押し車(2)であって、乗降のための開口部(4a)を有し、被補助者(3)を覆うように収容する座席部(4)と、手押し用のハンドル(6)を有し、座席部(4)を支持する移動可能な支持体(8)と、開口部(4a)を開閉する開閉カバー(10)と、外気を濾過して座席部(4)内へ供給する濾過空気供給機構(12)と、濾過空気供給機構(12)を制御する制御部(14)と、を備え、開閉カバー(10)で開口部(4a)を閉じて座席部(4)を略密閉とした状態で座席部(4)内を濾過された清浄空気で陽圧に保つことが可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る手押し車によれば、濾過された清浄空気(フレッシュエアー)で座席部内を満たすことができるとともに、陽圧に保つことによって汚染された外気の侵入を防止でき、被補助者に快適さを与えることができる。
【0010】
また、上記の手押し車(2)では、座席部(4)内の温度を測定する温度センサ(50)と、座席部(4)内の空気を冷却する冷却機構(22)と、を備え、制御部(14)は、温度センサ(50)の測定値に応じて冷却機構(22)を制御するようにしてもよい。これによれば、被補助者の生体活動や外部気温の高さによって座席部内の温度が上昇しても速やかに抑制でき、快適さを維持することができる。
【0011】
また、上記の手押し車(2)では、座席部(4)内の湿度を測定する湿度センサ(52)を備え、制御部(14)は、温度センサ(50)の測定値と湿度センサ(52)の測定値とに基づいて座席部(4)内の空気の露点を算出し、算出された露点に基づいて冷却機構(22)を制御して座席部(4)内の湿度を制御するようにしてもよい。これによれば、外部環境によって座席部内の湿度が上昇しても速やかに抑制でき、快適さを維持することができる。
【0012】
また、上記の手押し車(2)では、座席部(4)内の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサ(54)を備え、制御部(14)は、二酸化炭素濃度センサ(54)の測定値に応じて濾過空気供給機構(12)の供給量を調整するようにしてもよい。これによれば、被補助者の呼吸によって座席部内の二酸化炭素濃度が上昇しても速やかに抑制でき、快適さを維持することができる。
【0013】
また、上記の手押し車(2)では、濾過空気供給機構(12)が、座席部(4)と外部とを連通する通気路(32)と、該通気路(32)を通る外気を濾過するフィルタ(34)と、該フィルタ(34)により濾過された空気を座席部(34)内に供給する濾過空気供給ファン(36)と、を備えている構成としてもよい。これによれば、濾過空気供給ファンの回転量を変えることにより清浄空気の供給量を調整でき、座席部内の状況に応じて清浄空気を供給することができる。
【0014】
また、上記の手押し車(2)では、冷却機構(22)が、ペルチェ素子(40)と、該ペルチェ素子(40)の加熱面側に設けられるヒートシンク(42)と、該ヒートシンク(42)の熱を座席部(4)外へ放熱する放熱ファン(44)と、ペルチェ素子(40)の冷却面側で冷却された空気を座席部(4)内で循環させる冷気送風ファンと、を備えている構成としてもよい。これによれば、座席部内の温度が上昇しても速やかに冷却することができる。
【0015】
また、上記の手押し車(2)では、濾過空気供給機構(12)が、座席部(4)と外部とを連通する通気路(32)と、該通気路(32)を通る外気を濾過するフィルタ(34)と、該フィルタ(34)により濾過された空気を座席部(4)内に供給する濾過空気供給ファン(36)と、を備え、濾過空気供給ファン(36)が冷気送風ファンを兼ねる構成としてもよい。これによれば、構成の簡易化を図ることができるとともに、濾過された清浄空気を直接冷却して供給できるので、座席部内の空気質の改変速度を迅速にすることができる。
【0016】
また、上記の手押し車(2)では、略密閉状態の座席部(4)の一部を強制的に開放する開放機構(28)を備え、座席部(4)の温度制御、湿度制御または二酸化炭素濃度制御が適切な空気質を維持する観点から制御部(14)により困難と判断された場合、制御部(14)は開放機構(28)を動作させる構成としてもよい。これによれば、座席部内の空気質が悪化して良好に制御できない場合でも、略密閉状態を解除して被補助者へのダメージを回避できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外部環境の変化に拘わらず長時間の乗車でも乳幼児等の被補助者が快適に過ごすことができる空気質を得ることができるとともに、外部からのウイルス等の侵入にも高精度に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るベビーカーの斜視図である。
【
図2】
図1で示したベビーカーの概要断面図である。
【
図3】
図1で示したベビーカーにおける開放機構の構成を示す図で、
図3Aは閉じている状態を示す図、
図3Bは開放した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0020】
図1及び
図2は、乗降時に補助を要する被補助者を乗せて移動する手押し車の一例であるベビーカー2を示している。本実施形態に係るベビーカー2は、前方に乗降のための開口部4aを有し、被補助者である乳幼児3を覆うように収容する座席部4と、手押し用のハンドル6を有し、座席部4を支持する移動可能な支持体8と、開口部4aを開閉する開閉カバー10と、外気を濾過して座席部4内へ供給する濾過空気供給機構12と、濾過空気供給機構12を制御する制御部14と、を備え、開閉カバー10で開口部4aを閉じて座席部4を略密閉とした状態(
図1及び
図2に示す状態)で座席部4内を濾過された清浄空気で陽圧に保つことが可能である。
【0021】
座席部4を安定的に支持する支持体8は棒材やパイプ材を結合して構成されており、ロックレバー付きの車輪16で移動可能となっている。支持体8の斜め上方に延びる一対のシャフト8a、8aのハンドル6の近傍には水平バー18が固定されており、水平バー18にはL字状の一対のブラケット20がベビーカー2の幅方向に間隔をおいて固定されている。一対のブラケット20の先端側は水平バー21で連結固定されており、ブラケット20上には座席部4内を冷却する冷却機構22が固定されている。濾過空気供給機構12は冷却機構22の後方側(ハンドル6側)に連設されており、
図1では明示していない。
図1において、符号24は支持体8に固定されたスマートフォンホルダを示しており、26は乳幼児3を補助する者が使うスマートフォンを示している。また、符号28は、略密閉状態の座席部4の一部を強制的に開放する開放機構(後述)を模式的に示している。
【0022】
座席部4の周囲は日差しが差し込みにくい柔軟性の生地からなる座席カバー30で覆われており、開閉カバー10も同様の生地で作られている。開閉カバー10は座席カバー30に線状ファスナーや面状ファスナーで取り付けられるようになっており、開閉カバー10を取り付けたときは座席部4は略密閉状態の空間となる。
【0023】
図2に示すように、濾過空気供給機構12は、座席部4とベビーカー2の外部とを連通するエルボ型の通気路32と、該通気路32を通る外気を濾過するフィルタ34と、該フィルタ34により濾過された空気を座席部4内に供給する濾過空気供給ファン36と、を備えている。後述するように制御部14によって濾過空気供給ファン36が動作すると、矢印で示すように外気が通気路32に吸引され、フィルタ34で除染されて冷却機構22内に供給される。フィルタ34としては、例えばHEPAフィルタや茶カテキンフィルタを採用できる。
【0024】
冷却機構22は、ブラケット20に固定されたケーシング38と、該ケーシング38内にベビーカー2の前後方向に間隔をおいて配置された2つのペルチェ素子40と、ペルチェ素子40の加熱面側に配置されたヒートシンク42と、ヒートシンク42の熱を座席部4外へ放熱する2つの放熱ファン44と、ペルチェ素子40の冷却面側で冷却された空気を座席部4内で循環させる冷気送風ファンと、を備えている。
【0025】
本実施形態では、濾過空気供給ファン36が冷気送風ファンの機能を兼ねる構成となっている。濾過空気供給機構12のフィルタ34は、ケーシング38と通気路32の連通部位に設けられており、濾過された空気はペルチェ素子40で冷却されながらケーシング38内を矢印方向(図中右方向)に移動し、座席部4内に供給される。ケーシング38の先端側は冷却空気が座席部4内へ効率的に供給されるように湾曲形成されている。ケーシング38の底面には、ペルチェ素子40の冷却面に結露して落下する水分を吸収する水分吸収材46が配置されている。水分吸収材46としては高分子吸収材やシリカゲルなどを用いることができる。
【0026】
座席部4内の座席カバー30にはセンサ基板48が固定されており、センサ基板48には、座席部4内の温度を測定する温度センサ50と、座席部4内の湿度を測定する湿度センサ52と、座席部4内の二酸化炭素濃度を測定する二酸化炭素濃度センサ54が集約的に配置されている。座席部4の下面には収容ボックス56が設けられており、収容ボックス56には制御部14とバッテリーとしての直流電源58が収容されている。上記の各ファンやセンサ及び各ペルチェ素子40は不図示の線で直流電源58に電気的に接続されている。
【0027】
図3は開放機構28の具体的構成を示す図である。開放機構28は、略密閉状態の座席部4の一部を強制的に開放する機構である。座席部4内の温度制御、湿度制御または二酸化炭素濃度制御、あるいはこれらの複合的制御が適切な空気質を維持する観点から制御部14により困難と判断された場合、制御部14は開放機構28を動作させる制御を行う。
【0028】
開放機構28は、支持体8の一対のシャフト8aの一方に固定され、ガイドレール60aを有するベースプレート60と、ベースプレート60に形成された開口部62と、ガイドレール60aに摺動可能に嵌合された開閉板64と、ベースプレート60に固定され、可動ロッド60bを介して開閉板64を移動させるソレノイド等の直動方式のアクチュエータ66と、を備えている。座席カバー30は開口部62に対応した開口を有しており、該開口が開口部62に重なるようにベースプレート60の内面側に貼り付けられている。
図3(a)は開口部62が開閉板64で塞がれた状態を示し、
図3(b)はアクチュエータ66が動作して開口部62が開放された状態、すなわち、略密閉状態の座席部4内が部分的に開放された状態を示している。開閉板64の内面側には柔軟性を有するシール材が設けられており、開閉板64は気密状態で摺動する。
【0029】
図4は制御ブロック図である。制御部14はCPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を含むマイクロコンピュータである。制御部14には温度センサ50、湿度センサ52、二酸化炭素濃度センサ54から測定値が入力され、制御部14はこれらの測定データに応じて濾過空気供給機構12の濾過空気供給ファン36、冷却機構22の放熱ファン44、直流電源58、ペルチェ素子40、アクチュエータ66等を制御する。制御部14は通信I/F68を介して外部の通信機器、例えばスマートフォン26と通信できるようになっている。
【0030】
以下に、ベビーカー2の制御について説明する。
【0031】
開口部4aが開放された状態で座席部4に乳幼児3を乗せ、その後開閉カバー10で開口部4aを閉じる。これにより座席部4は略密閉状態となる。乳幼児3が乗った圧力で座席面内方に配置された不図示のスイッチがオンすると、制御部14は濾過空気供給ファン36を作動させ、フィルタ34で濾過された清浄空気を座席部4内に供給する。一定時間が経過すると座席部4内は清浄空気で満たされ、略密閉状態の隙間から清浄空気が外部に漏れながら陽圧状態が維持される。これにより、ベビーカー2の移動中、外部の空気が座席部4内へ侵入することが抑制されるので、コロナ等の感染症が蔓延している状況下でも乳幼児3は保護される。座席部4内は略密閉状態であるので、雨天時や風が強い日、あるいはホコリの多い日でも乳幼児3を快適な状態で移動できる。
【0032】
座席部4内の温度が、予めROM等のメモリに記憶されている所定値より高くなったことが温度センサ50により検知されると、制御部14は冷却機構22を作動させ、清浄な冷却空気を座席部4内に供給して座席部4内の温度を下げる制御を行う。
【0033】
座席部4内の湿度が、予めROM等のメモリに記憶されている所定値より高くなったことが湿度センサ52により検知されると、制御部14は、温度センサ50の測定値と、湿度センサ52の測定値(相対湿度)とから露点を算出し、算出された露点に基づいて冷却機構22を制御して座席部4内の湿度を制御する。具体的には算出された露点に基づいてペルチェ素子40への電圧を制御する。
【0034】
乳幼児3の呼吸により、座席部4内の二酸化炭素濃度が、予めROM等のメモリに記憶されている所定値より高くなったことが二酸化炭素濃度センサ54により検知されると、制御部14は濾過空気供給ファン36の回転量を増加させ、座席部4内の浄化空気の割合を高めて二酸化炭素濃度を低下させる制御を行う。
【0035】
これらの各制御は複合的に同時に行ってもよい。各制御または同時制御において制御が困難であると制御部14が判断した場合、すなわち制御を行っても座席部4内の空気質を改善することが困難と判断した場合には、制御部14は開放機構28を作動させ、略密閉状態の座席部4の一部を強制的に開放する制御を行う。この場合、強制開放と並行してその旨を音や文字でスマートフォン26に通知する。このようにすれば、座席部4内の空気質が悪化したことをベビーカー2を押す人(乳幼児3の補助者)に迅速に知らせることができ、その後の対応を迅速にとることができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態ではベビーカー2での実施を例示したが、介護が必要な高齢者等の被補助者を乗せて移動する車椅子においても同様に実施することができる。ベビーカー2や車椅子は電動アシスト機能が付いていてもよい。開閉カバー10は柔軟性を有するマジックミラーで形成してもよい。このようにすれば日差しの座席部4内への入り込みを大幅にカットしてこれによる温度上昇を抑制できるとともに、座席部4内が暗くなり過ぎることを防止できる。
【要約】
外部環境の変化に拘わらず長時間の乗車でも乳幼児等の被補助者が快適に過ごすことができる空気質を得ることができるとともに、外部からのウイルス等の侵入にも高精度に対応できる手押し車を提供する。
ベビーカー2は、乗降のための開口部4aを有し、被補助者である乳幼児3を覆うように収容する座席部4と、手押し用のハンドル6を有し、座席部4を支持する移動可能な支持体8と、開口部4aを開閉する開閉カバー10と、外気を濾過して座席部4内へ供給する濾過空気供給機構12と、濾過空気供給機構12を制御する制御部14と、を備え、開閉カバー10で開口部4aを閉じて座席部4を略密閉とした状態で座席部4内を濾過された清浄空気で陽圧に保つことが可能である。